これで完璧!Ubuntuでの画面録画マスターガイド
はじめに:画面録画の重要性とUbuntuでの可能性
現代において、画面録画は様々なシーンで不可欠なツールとなっています。ソフトウェアの使い方を教えるチュートリアル動画、白熱したゲームプレイの記録、オンラインプレゼンテーション、開発者向けのバグ報告、あるいは単なるデスクトップ操作の記録など、その用途は多岐にわたります。特に技術情報を共有する際や、遠隔でのサポートを行う際には、言葉や静止画だけでは伝えきれない情報を効率的に共有するための強力な手段となります。
オープンソースのオペレーティングシステムとして人気を博しているUbuntuも、もちろん画面録画に対応しています。WindowsやmacOSと比較して、Ubuntuには様々な性質を持つ録画ツールが存在します。標準機能として手軽に利用できるものから、プロフェッショナルな配信や高度な編集作業にも対応できる高機能なものまで、ユーザーのニーズや目的に合わせて幅広い選択肢が用意されています。
しかし、選択肢が多いということは、同時に「どれを選べば良いのか分からない」「どのように設定すれば最適な録画ができるのか」といった疑問を生むことにも繋がります。また、Linux特有の環境設定(例えばWaylandとXorgの違い、音声システムの違いなど)が画面録画に影響を与えることも少なくありません。
この記事は、Ubuntuユーザーが画面録画を完全にマスターするための、包括的なガイドとなることを目指しています。標準機能の使い方から始まり、人気の高いサードパーティ製ツールの詳細な解説、高品質な録画のための設定方法、そして発生しうる問題とその解決策まで、画面録画に関するあらゆる側面を網羅します。この記事を読み終える頃には、あなたはUbuntu上で自信を持って、そして効果的に画面を録画できるようになっているはずです。
さあ、Ubuntuでの画面録画の世界に飛び込みましょう。
Ubuntu標準の画面録画機能:手軽さの裏にある機能制限
Ubuntuデスクトップ環境(特にデフォルトのGNOMEデスクトップ)には、特別なソフトウェアをインストールすることなく利用できる標準の画面録画機能が組み込まれています。これは、ちょっとした画面操作を素早く記録したい場合や、一時的なデモンストレーションに非常に便利な機能です。
1. GUIツール(GNOME標準の画面録画)
最も手軽な標準機能は、特定のキーボードショートカットで起動できるGUIベースの録画機能です。
起動方法:
多くのUbuntu環境(GNOMEデスクトップ)では、以下のショートカットキーで画面録画を開始できます。
- Ctrl + Alt + Shift + R
このショートカットを押すと、通常は画面右上に赤い丸いアイコンが表示され、録画が開始されたことを示します。もう一度同じショートカットを押すか、アイコンをクリックすると録画が停止します。
機能:
この標準GUIツールの主な機能と特徴は以下の通りです。
- 録画範囲: 基本的には全画面のみが録画されます。特定のウィンドウや領域を指定することはできません。
- 音声: マイク音声は録音されません。システムが出力するデスクトップ音声も録音されません。純粋に画面上の映像のみを記録する機能です。
- 時間制限: 多くのGNOMEバージョンでは、この方法での録画には約30秒の時間制限があります。これは、長時間の録画ではなく、短い操作記録やバグ報告のために設計されているためです。制限時間は環境によって異なる場合や、設定で変更できる場合もありますが、デフォルトでは短い時間となっています。
- ファイル形式と保存場所: 録画されたファイルは通常、
WebM
形式で、ホームディレクトリのビデオ
(またはVideos
)フォルダに自動的に保存されます。ファイル名はタイムスタンプに基づいて自動生成されます(例:Screencast from 2023-10-27 10-00-00.webm
)。
手軽さのメリットと機能制限のデメリット:
- メリット:
- 追加のインストールが不要。
- ショートカットキー一つで即座に開始・停止できる。
- 非常にシンプルで分かりやすい操作。
- デメリット:
- 全画面しか録画できない。
- 音声が録音されない(マイクもデスクトップ音声も)。
- 録画時間に制限がある。
- 録画設定(解像度、フレームレートなど)を細かく制御できない。
- 多くの場合はWaylandセッションでのみ機能します。Xorgセッションでは機能しないことがあります。
このGUIツールは、例えば「このダイアログを出すにはこう操作します」といった短いデモンストレーションや、「この操作をするとエラーが出ます」といったバグ報告のために、音声や特定の範囲指定が必要ない場合に非常に有用です。しかし、チュートリアル動画の作成やゲームプレイ録画、音声付きのプレゼンテーション記録など、より高度な用途には向きません。
2. コマンドラインツール(GNOME Shellの組み込み機能)
GNOME Shellには、GUIツールと同じ基盤を使った、より柔軟な録画機能をコマンドラインから利用する方法も存在します。これは主にスクリプトからの実行や、GUIツールでは実現できない設定を行いたい場合に利用されます。
GNOME Shellの画面録画機能はD-Busインターフェースを通じて制御されます。コマンドラインからこれを操作するには、dbus-send
コマンドなどを使用します。
基本的な使用例(D-Bus):
録画を開始するコマンドの例:
bash
dbus-send --session --type=method_call --dest=org.gnome.Shell /org/gnome/Shell/Screencast org.gnome.Shell.Screencast.Start allow-mic boolean:true filename \"'/tmp/my-screencast.webm'\"
このコマンドは、マイク音声を有効にして、/tmp/my-screencast.webm
というファイル名で録画を開始します。allow-mic boolean:true
の部分をboolean:false
にすればマイク音声は無効になります。ファイル名パスは環境に合わせて変更してください。
録画を停止するコマンドの例:
bash
dbus-send --session --type=method_call --dest=org.gnome.Shell /org/gnome/Shell/Screencast org.gnome.Shell.Screencast.Stop
コマンドラインツールの特徴:
- 柔軟性: マイク音声の有効/無効、出力ファイル名の指定などが可能です。
- スクリプトからの実行: バッチ処理や自動化されたタスクの一部として画面録画を組み込むことができます。
- 機能制限: GUIツールと同様に、録画範囲の指定(全画面のみ)やその他の詳細な設定オプションは限られています。録画時間制限も存在する場合があります。
- 複雑さ: コマンドラインインターフェースに慣れていないユーザーには敷居が高いかもしれません。
GUI版との関連性:
先に説明したGUIツール(Ctrl+Alt+Shift+R)も、内部的にはこのD-Busインターフェースを呼び出しているに過ぎません。コマンドラインからD-Busを直接操作することで、ショートカットキーでは提供されていないオプション(例:マイク音声の有効化)を利用できるようになります。
まとめ:標準機能の使い分けと限界:
- Ctrl+Alt+Shift+R: 最も手軽に、視覚的な操作のみを短時間(約30秒)記録したい場合に最適。音声不要、全画面でOKならこれで十分。
- D-Busコマンド: スクリプトからの自動実行や、マイク音声を含めて記録したい場合に利用。ただし、やはり機能は限定的。
標準機能は「手軽さ」が最大の利点ですが、「高機能さ」や「カスタマイズ性」に関しては大きな限界があります。長時間の録画、特定の領域の録画、高画質での録画、複数の音声ソースの混合、そして動画編集を前提としたファイル形式の選択など、より高度なニーズに応えるためには、後述するサードパーティ製の録画ツールを検討する必要があります。
サードパーティ製画面録画ツールの紹介と比較
Ubuntuには、標準機能の限界を補う、あるいはそれを遥かに凌駕する高機能なサードパーティ製画面録画ツールが数多く存在します。これらのツールは、それぞれ異なる特徴を持ち、ユーザーの様々な要求に応えることができます。ここでは、特に人気が高く、機能が充実している代表的なツールをいくつかピックアップし、詳細に解説します。
1. OBS Studio (Open Broadcaster Software Studio)
OBS Studioは、画面録画だけでなく、ライブストリーミングのためのオープンソースソフトウェアとして、世界中の多くのクリエイターに利用されています。非常に高機能で柔軟性が高く、プロフェッショナルな用途にも対応できます。
-
特徴:
- 多機能: シーン、ソース(画面キャプチャ、ウィンドウキャプチャ、ウェブカメラ、画像、テキストなど)、オーディオミキサー、トランジション、フィルターなど、非常に多くの機能を持ちます。
- 高画質・高音質: 詳細な設定が可能で、PC性能に応じた最適な品質で録画できます。
- エンコーダー: ソフトウェアエンコーディング(x264, VP9など)だけでなく、NVIDIA NVENC, Intel Quick Sync Video, AMD VCE/VCEなどのハードウェアエンコーディングにも対応しており、CPU負荷を軽減できます。
- ストリーミング対応: YouTube, Twitchなどのプラットフォームへのライブストリーミング機能も内蔵しています。
- クロスプラットフォーム: Windows, macOS, Linuxで利用できます。
-
インストール方法:
OBS Studioは、aptパッケージマネージャー、公式PPA、Snap、Flatpakなど、様々な方法でインストールできます。公式PPAからのインストールが最新版を利用しやすいためおすすめです。PPAを追加してインストール:
bash
sudo add-apt-repository ppa:obsproject/obs-studio
sudo apt update
sudo apt install obs-studioSnapでインストール:
bash
sudo snap install obs-studioFlatpakでインストール: (先にFlatpakをインストールする必要があります)
bash
sudo apt install flatpak
sudo flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
sudo flatpak install flathub com.obsproject.Studio -
基本的な設定と使い方:
- 起動: インストールしたOBS Studioを起動します。初回起動時には「自動構成ウィザード」が表示され、録画またはストリーミングに最適な設定をガイドしてくれます。まずはウィザードに従ってみるのが良いでしょう。
- シーンとソース: OBS Studioは「シーン」と「ソース」という概念で画面を構成します。「ソース」は録画・配信したい個々の要素(ディスプレイ、ウィンドウ、マイク、ウェブカメラなど)を指し、「シーン」はこれらのソースの組み合わせです。
- 左下の「シーン」エリアで新しいシーンを作成します(例:「画面録画」)。
- その右隣の「ソース」エリアで、作成したシーンに追加したいソースを選択します。
- ディスプレイキャプチャ (Xcomposite/PipeWire): デスクトップ全体を録画します。Waylandセッションの場合はPipeWireを使用するオプションを選択します。Xorgセッションの場合はXcompositeを使用します。
- ウィンドウキャプチャ (Xcomposite): 特定のウィンドウのみを録画します(Waylandでは制限がある場合があります)。
- 音声入力キャプチャ (PulseAudio/PipeWire): マイクなどの音声入力を録音します。
- 音声出力キャプチャ (PulseAudio/PipeWire): PCから出力されるデスクトップ音声を録音します。
- 各ソースを追加したら、中央のプレビュー画面で配置やサイズを調整します。
- 音声ミキサー: 中央下にある「音声ミキサー」で、各音声ソースの音量バランスを調整できます。ノイズゲートやコンプレッサーなどのフィルターを適用することも可能です。
-
設定: 右下の「設定」ボタンをクリックして、詳細な設定を行います。
- 出力:
- 「出力モード」を「詳細」にすると、より詳細な設定が可能です。
- 「録画」タブで、録画ファイルの保存先、ファイル形式(MKV, MP4, MOVなど)、エンコーダー、録画品質、レート制御、ビットレートなどを設定します。
- 最初はシンプルな設定で始め、慣れてきたら品質やファイルサイズを最適化するための設定を試すのがおすすめです。特にエンコーダーは、PCに搭載されているハードウェアエンコーダー(NVENC, QSV, VCEなど)を利用できるか確認し、可能であれば選択するとCPU負荷を大幅に減らせます。
- 映像: 録画のベース解像度(PCの画面解像度)と出力解像度、フレームレート(FPS)を設定します。通常は30 FPSまたは60 FPSを選択します。
- ホットキー: 録画開始、停止、一時停止などの操作に任意のショートカットキーを割り当てると便利です。
- 出力:
-
録画開始・停止: 右下の「録画開始」ボタンをクリックすると録画が始まります。「録画停止」ボタンで終了します。
-
メリット:
- 非常に高機能で柔軟性が高い。
- 高品質な録画が可能。
- ハードウェアエンコーディングに対応。
- ストリーミング機能も充実。
- 豊富な設定オプション。
- デメリット:
- 初心者には設定項目が多く、習得に時間がかかる可能性がある。
- 高機能ゆえに、他のツールに比べてややリソースを消費する場合がある。
- Waylandセッションでの画面キャプチャには一部制限がある場合がある(PipeWire経由でのキャプチャは改善されてきている)。
OBS Studioは、本格的に画面録画に取り組みたい、高品質な動画を作成したい、あるいは将来的にストリーミングも行ってみたい、というユーザーに最も推奨できるツールです。
2. SimpleScreenRecorder
SimpleScreenRecorderは、その名の通り「シンプル」であることを重視した画面録画ツールです。OBS Studioほど多機能ではありませんが、その分分かりやすく、必要十分な機能を備えています。軽量で安定していることも特徴です。
-
特徴:
- シンプル: 直感的で分かりやすいユーザーインターフェース。
- 軽量: 他のツールと比較してリソース消費が少ない傾向があります。
- 安定性: 安定した録画が可能です。
- 柔軟な録画範囲: 全画面、特定のウィンドウ、選択した矩形領域、OpenGLアプリケーション(ゲームなど)の録画に対応しています。
- 音声録音: マイクとデスクトップ音声の両方に対応しています。
- プリセット: 一般的な用途に合わせたプリセットが用意されています。
-
インストール方法:
SimpleScreenRecorderはUbuntuのリポジトリに含まれているため、aptパッケージマネージャーで簡単にインストールできます。bash
sudo apt update
sudo apt install simplescreenrecorder
64bitシステムの場合は、32bitアプリケーション(古いゲームなど)を録画するために以下のパッケージも合わせてインストールすることが推奨されています。
bash
sudo apt install simplescreenrecorder-lib:i386 -
基本的な設定と使い方:
- 起動: インストールしたSimpleScreenRecorderを起動します。
- 設定ウィザード: 初回起動時や新しいプロファイル作成時には設定ウィザードが表示されます。基本的な設定項目(録画範囲、フレームレートなど)をステップバイステップで設定できます。
- 録画範囲:
- “Record the entire screen” (全画面)
- “Record fixed rectangle” (固定矩形領域) – 座標とサイズを指定
- “Follow the cursor” (カーソル追従矩形領域)
- “Record window” (特定のウィンドウ) – リストから選択
- “Record OpenGL application” (OpenGLアプリ) – リストから選択
の中から選択します。
- 映像設定: フレームレート(FPS)、カーソルを含めるかどうか、デスクトップを録画するかどうかなどを設定します。
- 音声設定: 音声入力ソース(マイクなど)と音声出力ソース(デスクトップ音声)を選択し、それぞれの録音を有効にするか設定します。PulseAudioまたはALSAからの選択が可能です。
- 出力設定:
- 録画ファイルの保存先とファイル名を設定します。
- コンテナ形式(MP4, MKV, WebM, OGGなど)と映像エンコーダー(H.264, VP8, Theoraなど)、音声エンコーダー(AAC, MP3, Vorbisなど)を選択します。
- エンコーダー設定(品質、ビットレートなど)を行います。H.264(libx264)やVP9(libvpx-vp9)などが一般的です。
- 録画開始・停止: 設定が完了したら「録画開始」ボタンをクリックします。「録画一時停止」や「録画停止」ボタンで操作します。設定したホットキーでも操作可能です。
- 録画後の保存: 録画停止後、設定したファイル名で保存されます。
-
メリット:
- 非常に分かりやすく、初心者でもすぐに使える。
- 軽量で動作が安定している。
- 必要な録画範囲指定機能は揃っている。
- プリセットが便利。
- インストールが容易。
- デメリット:
- OBS Studioのような高度な編集・ストリーミング機能はない。
- 見た目はモダンではないかもしれない。
SimpleScreenRecorderは、特別な高機能は求めないが、標準機能よりも柔軟な録画範囲指定や音声録音を、簡単かつ安定して行いたいユーザーに最適なツールです。
3. Kooha
Koohaは、GNOMEデスクトップ環境に調和する、モダンでシンプルなユーザーインターフェースを持つ画面録画ツールです。Flatpakでの提供が中心で、比較的新しいツールですが、使いやすさに重点を置いて設計されています。
-
特徴:
- モダンなGUI: GNOME HIG (Human Interface Guidelines) に沿った、洗練された見た目と操作感。
- シンプル: 不要な機能を削ぎ落とし、画面録画の基本的な操作に特化しています。
- 録画範囲: 全画面または選択領域の録画に対応。
- 音声録音: マイク音声を含めるか選択できます(デスクトップ音声は直接は録音できない場合があります、環境による)。
- 出力形式: WebMまたはMP4形式で出力できます。
-
インストール方法:
KoohaはFlatpakでの提供が最も推奨されています。Flatpakでインストール: (先にFlatpakをインストールする必要があります)
bash
sudo apt install flatpak
sudo flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
sudo flatpak install flathub io.github.kooha -
基本的な設定と使い方:
- 起動: インストールしたKoohaを起動します。非常にシンプルなウィンドウが表示されます。
- 設定: ウィンドウ下部の設定ボタンをクリックすると、設定パネルが開きます。
- 録画範囲(全画面または領域選択)
- フレームレート (30/60 fps)
- マイクを含めるかどうか
- カーソルを含めるかどうか
- 出力形式 (WebM/MP4)
- 保存先フォルダ
- ショートカットキー
などを設定できます。
- 録画開始: 設定後、録画開始ボタンをクリックします。領域選択を選んだ場合は、画面上で録画したい範囲をドラッグして指定します。
- 録画停止: 画面右上のインジケーター領域に表示されるKoohaアイコンをクリックするか、設定したショートカットキーで録画を停止します。
- 保存: 録画ファイルは設定した保存先フォルダに自動的に保存されます。
-
メリット:
- 見た目が綺麗で操作が直感的。
- 基本的な画面録画機能を素早く利用できる。
- Flatpakで簡単にインストール可能。
- デメリット:
- SimpleScreenRecorderよりもさらに機能が限定的。
- デスクトップ音声の録音が直接サポートされていない場合がある。
- エンコーダーなどの詳細な設定はできない。
Koohaは、GNOMEデスクトップのルック&フィールを重視し、とにかくシンプルに画面とマイク音声を録画したい、というユーザーに向いています。
4. Peek
Peekは、デスクトップの一部を選択し、短いGIFアニメーションまたはWebM/MP4ビデオとして録画することに特化したツールです。ソフトウェアの簡単な操作方法をアニメーションで共有したい場合などに非常に便利です。
-
特徴:
- GIF作成: 画面の一部を録画し、GIFアニメーションとして出力する機能がメインです。
- シンプル: 非常に簡単な操作で録画できます。
- 軽量: システムへの負荷が小さいです。
- 出力形式: GIFだけでなく、WebMやMP4形式での出力も可能です(ただし、長時間録画には向きません)。
-
インストール方法:
PeekはUbuntuのリポジトリに含まれています。bash
sudo apt update
sudo apt install peek
または、PPAを追加することで最新版を利用できます。
bash
sudo add-apt-repository ppa:peek-developers/stable
sudo apt update
sudo apt install peek -
基本的な設定と使い方:
- 起動: インストールしたPeekを起動します。透過ウィンドウが表示されます。
- 録画範囲: この透過ウィンドウのサイズと位置を調整して、録画したいデスクトップ上の領域を囲みます。
- 設定: ウィンドウ下部の設定ボタンをクリックすると、設定が開きます。
- フレームレート (FPS)
- 録画の遅延時間
- 出力形式 (GIF, WebM, MP4, APNG)
- マイク音声を録音するかどうか(ただし、GIFには音声は含まれません)
- カーソルを含めるかどうか
などを設定できます。
- 録画開始: 設定後、「Record」ボタンをクリックします。設定した遅延時間の後に録画が開始されます。
- 録画停止: 「Stop」ボタンをクリックすると録画が停止し、設定した出力形式でファイルが保存されます。
-
メリット:
- GIFアニメーション作成に最適化されている。
- 操作が非常に簡単。
- 軽量。
- デメリット:
- 長時間録画や高画質・高音質での録画には向かない。
- 機能は限定的。
Peekは、短い操作アニメーションやデモンストレーションを素早く作成・共有したい場合に非常に役立つツールです。
5. その他(Kdenlive, VLC Media Playerなど)
- Kdenlive: これは主にノンリニア動画編集ソフトウェアですが、デスクトップ録画機能も内蔵しています。録画から編集まで一貫して行いたい場合に便利です。高機能な編集ツールであるため、画面録画機能も柔軟な設定が可能ですが、画面録画単体ツールとしての起動性は劣ります。FlatpakやPPAからインストールできます。
- VLC Media Player: 多くのUbuntuユーザーが既にインストールしているであろうVLCにも、画面キャプチャ機能が隠されています。「メディア」メニューの「キャプチャデバイスを開く」から、「キャプチャモード」を「デスクトップ」に設定することで、デスクトップ画面を録画できます。ただし、設定できる項目は限られており、主に映像ソースとしての利用に留まります。
各ツールの比較表
ツール名 | 主な用途 | 機能 | 難易度 | 特徴 | インストール方法 |
---|---|---|---|---|---|
GNOME標準 | 短い操作記録、バグ報告 | 全画面、無音声 | 易 | インストール不要、ショートカット一発、約30秒制限 | デフォルトで利用可能 |
OBS Studio | 高品質録画、ストリーミング、複雑なシーン | 高機能、多用途 | 難 | シーン/ソース、ミキサー、フィルター、ハードウェアエンコード対応 | apt(PPA), Snap, Flatpak |
SimpleScreenRecorder | 簡単な録画、範囲指定、音声 | シンプル、軽量 | 中 | 直感的UI、柔軟な範囲指定、安定動作 | apt |
Kooha | シンプルな録画、モダンUI | シンプル、音声可 | 易 | GNOMEに調和、モダンUI、Flatpak推奨 | Flatpak |
Peek | 短いGIF/WebM作成 | GIF特化 | 易 | 簡単操作、透過ウィンドウ、アニメーション作成に特化 | apt(PPA) |
Kdenlive | 録画+編集 | 編集機能主、録画 | 難 | 高機能ノンリニアエディタ、録画も可能 | apt(PPA), Flatpak |
VLC Media Player | プレイヤーの追加機能 | 録画機能限定 | 易 | 多機能プレイヤー、簡単なキャプチャ | apt |
画面録画の準備と設定
選択したツールに関わらず、高品質でスムーズな画面録画を行うためには、事前の準備と適切な設定が不可欠です。
1. ハードウェアの確認
画面録画、特に高画質・高フレームレートでの録画は、PCにある程度の負荷をかけます。快適な録画を行うために、以下の点をチェックしましょう。
- CPU: 画面の描画処理やエンコーディング処理を担います。特にソフトウェアエンコーディング(例: x264)を使用する場合は、CPU性能が重要になります。マルチコアCPUが推奨されます。
- RAM (メモリ): 十分なメモリ容量があると、アプリケーションの切り替えや複数のタスク実行中に録画が中断されにくくなります。最低8GB、可能であれば16GB以上が望ましいです。
- ストレージ空き容量: 高解像度・高フレームレートで長時間録画すると、ファイルサイズが非常に大きくなります。十分な空き容量のあるストレージ(SSDがアクセス速度の点で有利)を用意しましょう。例えば、フルHD (1920×1080) 60 FPSでH.264エンコードした場合、1分あたり100MB〜300MB(ビットレートによる)程度の容量を消費することもあります。
- GPU (グラフィックボード): 多くの録画ツールは、GPUに搭載されたハードウェアエンコーダー(NVIDIA NVENC, Intel Quick Sync Video, AMD VCEなど)を利用できます。これを使うとCPUの負荷を大幅に軽減し、スムーズな録画が可能になります。お使いのGPUがハードウェアエンコーディングに対応しているか確認し、対応している場合は積極的に利用設定を行いましょう。また、最新のグラフィックスドライバーをインストールしておくことも重要です。
- マイクとウェブカメラ: 音声解説や自分の顔を含めた録画を行う場合は、品質の良いマイクやウェブカメラを用意しましょう。USB接続のものがUbuntuで認識されやすくおすすめです。
2. ソフトウェアのインストールと依存関係
選択したツールのインストール手順は前述の各ツール解説で説明しましたが、いくつかの一般的な注意点があります。
- コーデック: 録画したファイルを再生したり、特定の形式で出力したりするために、必要なコーデックがシステムにインストールされている必要があります。Ubuntuでは、
ubuntu-restricted-extras
パッケージをインストールすることで、MP4 (H.264/AAC) やMP3などの一般的な非フリーコーデックをまとめてインストールできます。
bash
sudo apt update
sudo apt install ubuntu-restricted-extras - ドライバー: グラフィックスドライバー(特にNVIDIAなどのプロプライエタリドライバー)、サウンドドライバーが正しくインストールされ、最新の状態になっているか確認しましょう。これはハードウェアエンコーディングの利用や音声録音の安定性に影響します。
3. 基本的な設定
録画ツールをインストールしたら、録画を開始する前に以下の基本的な設定を行います。
- 録画範囲の決定:
- 全画面: デスクトップ全体を録画します。画面全体の操作を見せたい場合に適しています。
- 特定のウィンドウ: 特定のアプリケーションのウィンドウだけを録画します。不要な情報が映り込まないようにしたい場合に便利です。
- カスタム領域: 画面上の任意の矩形領域を指定して録画します。ウィンドウの一部や、特定のコントロール部分だけを録画したい場合に便利です。
選択したツールがどの範囲指定に対応しているか確認し、目的に合ったものを選択します。
- 解像度とフレームレートの設定:
- 解像度: 録画する映像のサイズです(例: 1920×1080、1280×720)。元の画面解像度と同じか、それを下回る値を設定します。視聴者が快適に見られる解像度(YouTubeなどでは720pまたは1080pが一般的)を選択しつつ、PCの性能やファイルサイズも考慮します。
- フレームレート (FPS – Frames Per Second): 1秒間に何枚の画像を記録するかを示します。値が大きいほど滑らかな映像になります。一般的な操作記録やプレゼンなら30 FPSで十分ですが、ゲームプレイや高速なアニメーションを含む場合は60 FPSを選択するとより滑らかになります。ただし、フレームレートを高くするとPCへの負荷やファイルサイズが増加します。PC性能と目的に合わせて選択しましょう。
- エンコーダーの選択:
- ソフトウェアエンコーディング: CPUの処理能力を使ってエンコードします(例: x264, VP9)。高品質な映像を生成できますが、CPU負荷が高くなります。
- ハードウェアエンコーディング: GPUなどの専用ハードウェアを使ってエンコードします(例: NVENC, QSV, VCE)。CPU負荷を大幅に軽減できますが、ソフトウェアエンコーディングに比べて品質オプションが限られる場合があります。お使いのPCにハードウェアエンコーダーが搭載されている場合は、可能であればこれを利用することを強く推奨します。OBS Studioなどでエンコーダーオプションを確認し、利用可能なハードウェアエンコーダーが表示されているか確認しましょう。
- 音声入力の設定:
- マイク: 自分の声や解説を録音したい場合は、使用するマイクを選択し、録音を有効にします。マイクの音量レベルが適切か(ピークで大きすぎず、小さすぎない)をテスト録音で確認しましょう。
- デスクトップ音声: PCから出力される音(アプリケーションの音、ゲームの音など)を録音したい場合は、デスクトップ音声(PulseAudio/PipeWire/ALSAなど)を選択し、録音を有効にします。
- 両方録音する場合は、それぞれの音量バランスを調整します。ツールによっては、それぞれの音声を個別のトラックで録音するオプションもあり、編集時に便利です。
- 出力形式と保存先:
- コンテナ形式: 録画された映像・音声データを格納するファイル形式です(例: MP4, MKV, WebM)。YouTubeなどでの共有にはMP4が広く互換性があり便利ですが、録画中にPCがクラッシュした場合などにファイルが破損しにくいMKV形式で一度録画し、後でMP4に変換するというワークフローも推奨されます(OBS Studioなどで設定可能)。
- エンコーダー設定: 映像エンコーダー(H.264, VP9など)や音声エンコーダー(AAC, MP3, Vorbisなど)の設定(ビットレート、品質設定など)を行います。ビットレートを高くすると品質が向上しますが、ファイルサイズも大きくなります。目的に応じてバランスを取りましょう。
- 保存先: 録画したファイルを保存するフォルダを指定します。十分な空き容量がある場所に設定しましょう。
- ホットキーの設定:
録画中にツールウィンドウを操作するのは難しい場合があるため、録画開始/停止、一時停止/再開などの操作にグローバルホットキー(ツールがアクティブでなくても機能するショートカットキー)を割り当てておくと非常に便利です。
これらの設定項目は、選択したツールによって名称や詳細度は異なりますが、基本的な考え方は共通です。まずはシンプルな設定でテスト録画を行い、結果を見て調整していくのが良い方法です。
高品質な画面録画のためのヒントとコツ
単に画面を記録するだけでなく、視聴者にとって見やすく、聞き取りやすい高品質な動画を作成するためには、いくつかの追加の工夫が必要です。
1. パフォーマンス最適化
スムーズでカクつきのない映像を得るためには、録画中のPC負荷を最小限に抑えることが重要です。
- 不要なアプリケーションを閉じる: 録画対象ではない、CPUやGPUリソースを消費するアプリケーション(ウェブブラウザの多数のタブ、ゲーム、動画編集ソフトなど)は閉じておきましょう。
- デスクトップ効果の無効化(必要な場合のみ): 一部のデスクトップ環境(GNOME, KDEなど)には、ウィンドウアニメーションや透明化などの視覚効果があります。これらが録画パフォーマンスに影響を与える場合は、一時的に無効にすることを検討します(多くのモダンな環境では影響は小さいです)。軽量なデスクトップ環境(Xfce, LXQtなど)やコンポジター設定の調整も有効な場合があります。
- 適切なエンコーダーを選択する: 前述の通り、可能であればハードウェアエンコーダー(NVENC, QSV, VCE)を利用しましょう。これにより、CPU負荷が大幅に軽減され、多くのシステムでスムーズな録画が可能になります。
- 解像度やフレームレートを下げる: PC性能に対して設定が高すぎる場合は、録画中にカクつきやコマ落ちが発生します。まずは解像度やフレームレートを下げてテスト録画を行い、問題がなければ徐々に設定を上げていくというアプローチが有効です。
- ストレージ速度: 録画データはリアルタイムでストレージに書き込まれます。HDDよりもSSDの方が書き込み速度が速いため、録画の安定性に寄与します。可能な限りSSDに録画ファイルを保存するようにしましょう。
2. 音声のクリアさ
音声解説やシステムサウンドは、動画の品質に大きく影響します。
- 静かな環境で録音する: 周囲のノイズが入らない静かな場所で録音しましょう。エアコンの音、キーボードの打鍵音、外部の雑音などはマイクで拾われやすいです。
- マイクの選定と設置: 用途に合ったマイクを選びましょう。コンデンサーマイクは高感度ですが、周囲の音も拾いやすいです。ダイナミックマイクは比較的周囲の音を拾いにくい特性があります。マイクは口元から適切な距離に設置し、ポップガードなどを使用すると、破裂音(パ行、バ行など)を軽減できます。
- ノイズキャンセリング機能の利用: 録画ツール(OBS Studioなど)やシステムレベル(PipeWireなど)の音声設定で、ノイズ抑制やノイズゲートといったフィルター機能が利用できる場合があります。これらを適切に設定することで、不要な背景ノイズを軽減できます。
- マイクレベルの調整: マイクの入力レベルが適切であることを確認します。レベルメーターを見ながら、話すときにピークが振り切れない範囲で、かつ十分な音量になるように調整します。小さすぎると後で編集で音量を上げたときにノイズも大きくなってしまいます。
- デスクトップ音声の調整: デスクトップ音声も録音する場合は、マイク音声とのバランスを調整します。解説音声が聞き取りやすいように、システムサウンドやゲーム音は少し小さめに設定するのが一般的です。
3. 視覚的なクリアさ
視聴者が見やすい映像を作成するためのヒントです。
- カーソルハイライトやクリック表示: マウスカーソルやクリック操作を強調表示する機能があると、視聴者は操作を追いやすくなります。録画ツール(SimpleScreenRecorderなど)や別途ツール(Key-n-Strokeなど)で設定できるか確認しましょう。
- 画面の拡大/縮小: 特定の細かい部分を見せたい場合は、その部分を拡大して録画するか、後から編集でズームインすると良いでしょう。録画中にリアルタイムでズームを行う機能を持つツール(OBS Studioの一部プラグインなど)や、編集で対応する方法があります。
- スケーリングの調整: 高解像度ディスプレイを使用している場合、OSの表示スケーリングを有効にしているかもしれません。録画ツールがこのスケーリングを正しく処理できるか確認しましょう。ツールによっては、スケーリングを考慮した解像度設定が必要な場合があります。また、録画対象のアプリケーション自体のフォントサイズなどを調整することも有効です。
- ウィンドウの整理: 特定のウィンドウを録画する場合、そのウィンドウが他のウィンドウに隠れたり、頻繁に移動したりしないように整理しておきましょう。
4. 計画と構成
ぶっつけ本番ではなく、事前に計画を立てることで、スムーズで分かりやすい録画ができます。
- 何を録画するかの明確化: 録画を通して何を伝えたいのか、目的を明確にしましょう。
- スクリプトや手順を用意する: 話す内容や操作の手順を簡単にメモしておくと、迷わずにスムーズに録画を進められます。
- テスト録画の実施: 本番録画の前に、数分程度のテスト録画を行いましょう。映像や音声の品質、パフォーマンスに問題がないか、設定通りに録画できているかを確認します。特に、 Wayland 環境と特定のツールとの相性や、 PulseAudio/PipeWire の設定などが原因で音声が録音されない、といった問題はテスト録画で発見しやすいです。
よくある問題とそのトラブルシューティング
Ubuntuでの画面録画中に発生しやすい問題と、その解決策について説明します。
1. 録画がカクつく、遅延する、コマ落ちが多い
これは最も一般的な問題で、主にPCの性能不足や設定の不備が原因です。
- 原因:
- CPUまたはGPUの負荷が高すぎる。
- ストレージの書き込み速度が遅い、または空き容量不足。
- 録画設定(解像度、フレームレート、ビットレート)が高すぎる。
- ソフトウェアエンコーディングを使用しているが、CPU性能が追いついていない。
- 録画対象のアプリケーション(特にゲームなど)が大量のリソースを消費している。
- 対策:
- 録画設定を下げる: 解像度、フレームレート、ビットレートを下げてみてください。例えば、60 FPSから30 FPSに、フルHDからHD (720p) に変更するだけでも大きく改善することがあります。
- ハードウェアエンコーディングを利用する: お使いのPCが対応している場合は、OBS Studioなどでハードウェアエンコーダー(NVENC, QSV, VCE)を選択してください。これが最も効果的な改善策の一つです。
- 不要なプロセスを停止する: 録画中に実行する必要のないアプリケーションやバックグラウンドプロセスを終了させます。
- 録画ツール自体の設定: 録画ツールの設定で、プレビューの解像度を下げる、プレビューを無効にする、といったオプションがあれば試してみてください。
- ストレージの確認: 録画ファイルの保存先ストレージに十分な空き容量があるか確認し、可能であればより高速なストレージ(SSD)に保存先を変更します。
- カーネルやドライバーの更新: 最新のカーネルやグラフィックスドライバーに更新することで、ハードウェアのサポートが向上し、パフォーマンスが改善されることがあります。
2. 音声が録音されない、小さい、大きい
音声に関する問題もよく発生します。
- 原因:
- 録画ツールの音声入力設定で、正しいマイクやデスクトップ音声が選択されていない、または無効になっている。
- Ubuntuのサウンド設定(PulseAudio Volume Controlなど)で、マイクがミュートになっている、入力レベルが低すぎる、または出力レベルが高すぎる。
- ALSA/PulseAudio/PipeWireといった音声システムの競合や設定問題。特にWayland環境でPipeWireを使用している場合、設定が異なることがあります。
- アプリケーション側の音声設定が影響している。
- 対策:
- 録画ツールの設定確認: 使用している録画ツールの音声ミキサーや入力設定で、目的のデバイス(マイク、デスクトップ音声など)が有効になっており、音量レベルが適切に設定されているか確認します。
- Ubuntuのサウンド設定確認:
- PulseAudioの場合:
pavucontrol
(PulseAudio Volume Control) を起動し、「入力デバイス」タブでマイクがミュートになっていないか、レベルが適切か確認します。「出力デバイス」タブや「再生」タブで、デスクトップ音声のレベルや、録画ツールが正しいデバイスから音声を取得できているか確認します。 - PipeWireの場合: PipeWireを使用している場合は、通常PulseAudio互換の設定が利用できますが、専用のGUIツール(例えばKDEなら
helvum
やqpwgraph
のようなグラフベースのツール)や設定ファイルで詳細を確認・調整できる場合があります。Ubuntu 22.04以降ではPipeWireがデフォルトになっていることが多いです。録画ツールがPipeWireに対応しているか確認が必要です。
- PulseAudioの場合:
- マイクの接続確認: マイクが正しくPCに接続されているか確認します。USBマイクの場合は、システムが認識しているか確認します。
- テスト録音: 短時間録画を行い、音声が正しく録音されているか、音量バランスは適切かを確認します。
- 特定のアプリケーションの音声: ゲームなどの特定のアプリケーションの音声を録音したい場合、そのアプリケーションの音声出力設定がシステム設定と一致しているか確認します。
3. ファイルサイズが大きい
録画設定が高すぎると、ファイルのサイズが膨大になります。
- 原因:
- 高すぎる解像度またはフレームレート。
- 高すぎるビットレート設定。
- 非効率なエンコーダーや設定。
- 対策:
- 解像度・フレームレートを下げる: 目的とする視聴環境に合わせて、必要以上に高くない解像度やフレームレートを選択します。
- ビットレートを下げる: エンコーダー設定で、ビットレート(データ量)を下げます。ただし、下げすぎると画質が著しく低下するため、テスト録画でバランスを確認しながら調整します。可変ビットレート(VBR)や品質ベースのエンコーディング(CRFなど)を利用できる場合は、固定ビットレート(CBR)よりも効率的な場合があります。
- より効率的なエンコーダーを選択する: 同じ画質でも、エンコーダーによってファイルサイズは異なります。一般的にH.265 (HEVC) やVP9はH.264よりも高い圧縮率を持っていますが、エンコード・デコードに高い処理能力が必要になります。ハードウェアエンコーダーによっては、特定のコーデックに最適化されている場合があります。
- 編集ソフトで再エンコード・圧縮: 録画後に動画編集ソフトウェア(Kdenlive, Shotcutなど)で動画を読み込み、より低いビットレートや別の形式で再エンコード(書き出し)することで、ファイルサイズを小さくできます。
4. 録画ファイルが再生できない、一部のプレイヤーでしか開けない
録画したファイルが開けなかったり、特定のプレイヤーでしか再生できなかったりする場合があります。
- 原因:
- システムに必要なコーデックがインストールされていない。
- ファイルが破損している(録画中にシステムがクラッシュした場合など)。
- 特定のコンテナ形式やエンコーダーが使用されているが、プレイヤーが対応していない。
- 対策:
- コーデックをインストールする: 前述の
ubuntu-restricted-extras
パッケージをインストールしてみてください。また、VLC Media Playerは多くのコーデックを内蔵しているため、再生できるか試してみるのも有効です。 - 別のプレイヤーを試す: VLC Media Player, MPV, Paroleなど、別の動画プレイヤーで再生できるか試してみましょう。
- ファイル形式の確認: 録画ツールの設定で、より互換性の高いファイル形式(MP4 H.264/AACなど)で出力するように設定を変更します。
- 破損の確認: 録画中に予期せず停止した場合などにファイルが破損している可能性があります。その場合は再録画が必要です。MKV形式は録画中のクラッシュに強い特性があるため、心配な場合はMKVで録画し、後でMP4に変換するワークフローを検討しましょう。
- コーデックをインストールする: 前述の
5. 特定のアプリケーションやゲームが録画できない
特定のアプリケーションのウィンドウや、OpenGL/Vulkanを使用するゲームの画面が正しく録画できないことがあります。
- 原因:
- Wayland vs Xorg: 現在のデスクトップセッションがWaylandかXorgかによって、画面キャプチャの仕組みが異なります。Waylandはセキュリティモデルが厳格なため、Xorgで簡単にできていたウィンドウキャプチャなどが難しくなる場合があります。WaylandではPipeWireを使った新しいキャプチャ方法が主流になっています。
- 権限問題: SnapやFlatpakでインストールしたアプリケーション(録画ツールや録画対象アプリ)はサンドボックス内で実行されるため、画面へのアクセスに制限がある場合があります。
- 特定のグラフィックスAPI: OpenGLやVulkanを使用する一部のゲームは、特別な方法(例: SimpleScreenRecorderのOpenGLアプリケーション録画モード、OBS StudioのGame Capture Linuxプラグインなど)でキャプチャする必要がある場合があります。
- 対策:
- セッションを変更する: ログイン画面でデスクトップセッションを「Ubuntu」(Wayland)から「Ubuntu on Xorg」(Xorg)に変更して試してみてください。Xorgセッションの方が画面キャプチャの互換性が高い場合があります。ただし、Waylandは新しい技術であり、セキュリティやパフォーマンス面でメリットがあるため、可能であればWaylandで動作するツールや設定を探るのが今後の主流となるでしょう。
- Snap/Flatpakの設定を確認する: SnapやFlatpak版の録画ツールを使用している場合、画面録画に必要な権限(
screencast
インターフェースなど)が付与されているか確認します。snap connections obs-studio
のようなコマンドで確認できます。必要な場合は権限を接続します (sudo snap connect obs-studio:screencast
). - 録画ツールのキャプチャモードを変更する: OBS Studioであれば、「ディスプレイキャプチャ (Xcomposite)」「ディスプレイキャプチャ (PipeWire)」「ウィンドウキャプチャ (Xcomposite)」など、異なるソースタイプを試してみてください。SimpleScreenRecorderであれば、「Record OpenGL application」を試す価値があります。
- ゲーム側の設定: 一部のゲームには、ウィンドウモードやボーダーレスフルスクリーンモードで実行することで、画面キャプチャツールからの認識が改善される場合があります。
Waylandセッションでの画面録画の注意点
Ubuntu 21.04以降(特に22.04 LTS以降)では、デフォルトのGNOMEデスクトップセッションがWaylandになっています。WaylandはXorgに代わる新しいディスプレイサーバープロトコルであり、セキュリティやパフォーマンスの向上を目指しています。しかし、画面キャプチャに関してはXorgとは異なるアプローチが必要になります。
- キャプチャ方法: Waylandでは、アプリケーションが他のアプリケーションのウィンドウ内容を直接キャプチャすることは原則としてできません。画面全体のキャプチャやウィンドウごとのキャプチャは、PipeWireというシステムを経由して行われるのが一般的です。
- ツールの対応状況: 多くのモダンな画面録画ツール(OBS Studioの新しいバージョン、Koohaなど)はPipeWire経由での画面キャプチャに対応していますが、古いツールや一部の機能(例: 特定のウィンドウだけを追跡する機能など)はWaylandでは正しく機能しない場合があります。
- 権限: Waylandセッションで画面をキャプチャするには、PipeWireからのアクセス許可が必要になります。通常は録画開始時にシステム側から許可を求めるプロンプトが表示されます。
- 互換性の問題: 一部の古いアプリケーションや、Wayland/PipeWireへの対応が十分でないツールでは、画面録画がうまく機能しない可能性があります。
もしWaylandセッションでの画面録画に問題が生じる場合は、一時的にXorgセッションに切り替えて録画を行うことも有効な回避策です。ただし、今後の主流はWaylandになるため、Waylandに対応したツールや設定方法を習得することが長期的な視点では重要です。
画面録画後の作業(簡易紹介)
画面録画は、動画作成プロセスの一部に過ぎません。録画した素材をより分かりやすく、魅力的にするためには、しばしば録画後の編集作業が必要になります。
1. 編集
録画しただけの動画は、不要な部分が含まれていたり、解説が不足していたりすることがあります。動画編集ソフトウェアを使って、これらの問題を解消します。
- カット、トリミング、結合: 不要な開始・終了部分や、録画中のミス、沈黙部分などをカットし、必要な部分だけを繋ぎ合わせます。
- テロップ、ナレーション追加: 画面上の操作に補足説明を加えるためのテロップ(文字情報)を挿入したり、後から音声解説(ナレーション)を録音して追加したりします。
- BGM、効果音: 動画の雰囲気を良くするためにBGMを追加したり、特定の操作(クリックなど)に効果音を付けたりします。
- ズーム、パン: 画面の特定の部分を強調するためにズームインしたり、画面全体をスムーズに移動させるパン効果を適用したりします。
- 主要な編集ツール(Ubuntu向け):
- Kdenlive: 高機能で人気のあるノンリニア編集ソフトウェア。Ubuntuにインストール可能です(apt, Flatpak, PPA)。
- Shotcut: シンプルながらも機能が充実したフリーの動画編集ソフトウェア。FlatpakやAppImageで利用可能です。
- Olive Video Editor: 比較的新しいながらも、プロフェッショナルな機能を目指している非破壊編集ソフトウェア。Flatpakで利用可能です。
- DaVinci Resolve: 非常に高機能なプロフェッショナル向け動画編集ソフトウェア(主にカラーグレーディングで有名)。Linux版も提供されていますが、有料版の機能が多く、ハードウェア要件も高いです。
これらの編集ツールを使って、録画素材を加工し、最終的な動画を完成させます。
2. エンコードと共有
編集が完了したら、動画を書き出し(エンコード)ます。この際、ファイル形式や設定によって、ファイルサイズや画質、互換性が大きく変わります。
- 最適な出力設定: 動画をどこで公開するか(YouTube, Vimeo, ウェブサイトなど)に合わせて、最適なエンコード設定を選択します。一般的には、H.264(AVC)またはH.265(HEVC)コーデックを使用し、適切なビットレート、解像度、フレームレートでMP4形式で出力するのが一般的です。
- ファイルサイズと品質のバランス: ビットレートを高くすれば画質は向上しますが、ファイルサイズが大きくなります。低くすればファイルサイズは小さくなりますが、画質は劣化します。視聴環境や用途に合わせてバランスを取ります。
- 共有: エンコードされた動画ファイルを、YouTubeなどの動画共有プラットフォームにアップロードしたり、クラウドストレージに保存したりして共有します。プラットフォームによっては、推奨されるエンコード設定が公開されているので、参考にすると良いでしょう。
まとめ:Ubuntuでの画面録画の可能性を最大限に引き出す
この記事では、Ubuntu環境での画面録画について、標準機能から多機能なサードパーティ製ツール、準備、設定、高品質化のヒント、そしてトラブルシューティングまで、幅広く解説しました。
Ubuntuには、特定のキーボードショートカットで素早く画面を記録できる標準機能があり、ちょっとした用途には十分便利です。しかし、より長時間の録画、音声解説の追加、特定の範囲の指定、そして何よりも高品質な映像制作を目指す場合は、OBS Studio、SimpleScreenRecorder、Koohaといったサードパーティ製ツールの導入が不可欠です。
- 手軽さ重視なら: GNOME標準機能やKooha
- シンプルさと安定性なら: SimpleScreenRecorder
- 高機能と柔軟性、プロ用途なら: OBS Studio
- 短いGIFアニメーションなら: Peek
このように、Ubuntuには様々な特性を持つツールが存在するため、あなたの目的、PCのスペック、そして使いやすさの好みに合わせて最適なツールを選択することが、画面録画マスターへの第一歩となります。
ツールを選択し、インストールしたら、次に重要なのは適切な設定です。ハードウェアの確認、解像度、フレームレート、エンコーダー、音声設定、出力形式など、多くの設定項目がありますが、これらは全て「見やすく、聞き取りやすい」高品質な動画を作成するために必要なステップです。まずは基本的な設定でテスト録画を行い、結果を見ながら少しずつ調整していくのが上達の近道です。
録画中に発生する可能性のあるカクつき、音声問題、ファイルサイズの増加といった問題に対処するためには、PCのリソース管理、適切なエンコーダーの選択、そしてUbuntuの音声システム(PulseAudioやPipeWire)やディスプレイシステム(WaylandやXorg)に関する基本的な知識が役立ちます。特にWayland環境は比較的新しいため、一部ツールとの互換性問題が発生しやすいですが、対応は日々進んでいます。
最後に、録画した素材をより価値のあるものにするために、動画編集は強力な手段となります。不要な部分をカットし、テロップや音声解説を加えることで、視聴者にとってより分かりやすい、洗練された動画に仕上がります。
Ubuntuでの画面録画は、WindowsやmacOSと比較して、ツールの選択肢が豊富である一方、環境設定(Wayland/Xorg, PulseAudio/PipeWireなど)に関する考慮事項がやや多いという側面もあります。しかし、この記事で解説した知識と手順を参考に、それぞれのツールの使い方を学び、あなたのPC環境に最適な設定を見つけ出すことで、Ubuntuでの画面録画を自在に行えるようになるはずです。
これで、あなたはUbuntuでの画面録画をマスターするための知識とツールを手に入れました。チュートリアル、ゲーム実況、プレゼンテーション、バグ報告など、あなたのクリエイティビティやコミュニケーションを助ける強力な手段として、ぜひ画面録画を活用してください。
さあ、素晴らしい画面録画を始めましょう!