Git for Windowsのインストール方法【初心者向け詳細解説】
はじめに:バージョン管理システム「Git」とは?なぜ使うの?
あなたがもし、プログラミングを始めようとしていたり、ウェブサイトを作成しようとしていたり、あるいは単に文章やデータファイルを頻繁に更新・管理する必要があるとしたら、「バージョン管理システム」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。中でも最も有名で、世界中で使われているのが「Git」(ギット)です。
「バージョン管理システム」とは、一言でいうと「ファイルの変更履歴を記録・追跡するためのシステム」です。例えば、あなたがレポートを作成しているとしましょう。
- 「レポート_最終_提出用.docx」
- 「レポート_最終_提出用_修正1.docx」
- 「レポート_最終_提出用_本当に最後.docx」
- 「レポート_最終_提出用_山田先生確認済み.docx」
このように、ファイルを更新するたびに別名で保存していく…というのは、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。しかし、これではファイルがどんどん増えて混乱しますし、「あの修正はいつやったんだっけ?」「あの時消した内容を確認したい」といった場合に、いちいちファイルを開いて確認する必要があります。
Gitのようなバージョン管理システムを使うと、このような問題が劇的に解決します。Gitは、あなたのプロジェクト(ファイルやフォルダの集まり)に加えられたすべての変更を、いつ、誰が、どのような意図で行ったかという情報と共に、効率的かつ安全に記録してくれます。これにより、以下のようなメリットが得られます。
- 過去の任意の時点に戻れる: 間違えてファイルを消してしまった、大幅な変更を加えたけどうまくいかなかった…そんな時でも、Gitを使っていれば、過去の安定した状態に簡単に戻すことができます。
- 変更内容を正確に追跡できる: 各変更(「コミット」と呼びます)には、その変更の目的や詳細を記したメッセージを添えることができます。これにより、「この機能を追加した時の変更だ」「あのバグを修正した時の変更だ」といったことが一目で分かります。
- 複数人での共同作業が容易になる: Gitは、複数人が同じプロジェクトを同時に作業するのに非常に適しています。それぞれの人が自分の担当箇所を開発し、後でそれらの変更を安全に合体(「マージ」と呼びます)させることができます。誰かが間違った変更を加えても、それが他の人にすぐに影響を与えることなく、問題があればすぐに発見して修正できます。
- 変更の差分を確認できる: どのファイルがどのように変更されたかを具体的に確認できます。「前のバージョンから、この行が追加されて、あの行が削除された」といった差分を分かりやすく表示できます。
これらのメリットから、Gitは特にソフトウェア開発の現場で不可欠なツールとなっています。しかし、プログラミング以外でも、論文執筆、ウェブサイト作成(HTML/CSSなど)、設定ファイルの管理など、テキストベースのファイルを扱う様々な場面で非常に役立ちます。
Git for Windowsとは?
Gitは本来、LinuxなどのUnix系OSで生まれたツールです。WindowsでGitを使うためには、「Git for Windows」というソフトウェアをインストールするのが最も一般的です。
「Git for Windows」は、Git本体に加えて、Windows上でGitを使うために必要なツール一式(特に「Git Bash」というLinuxライクなコマンドラインツールや、GUIツールなど)をまとめて提供してくれます。これにより、Windows環境でもGitの強力な機能をフルに活用できるようになります。
この記事では、Git for Windowsをあなたのパソコン(Windows)にインストールする手順を、初心者の方にも分かりやすいように、一つ一つのステップを丁寧に解説していきます。約5000語というボリュームで、単なる手順だけでなく、途中で表示される様々な選択肢についても、それぞれが何を意味し、初心者にはどれが推奨されるのかを詳しく説明します。
Gitのインストールは、バージョン管理の世界への第一歩です。さあ、一緒に進めていきましょう!
Git for Windowsをインストールする前に
Git for Windowsのインストール作業に入る前に、いくつか確認しておきたいことがあります。
1. システム要件の確認
ほとんどの場合、現代のWindows PCであればシステム要件を満たしています。公式には、Windows 7以降がサポートされています。Windows 10や11を使っている場合は問題ありません。Windows XPなど、非常に古いOSではサポートされていない可能性があるため注意が必要です。
2. ダウンロードする場所
Git for Windowsは、公式サイトからダウンロードするのが最も安全で推奨される方法です。検索エンジンで「Git for Windows」と検索するか、以下のURLに直接アクセスしてください。
- Git for Windows 公式サイト: https://gitforwindows.org/
偽サイトや信頼できない場所からのダウンロードは、マルウェアなどが含まれている可能性があり危険です。必ず公式サイトからダウンロードしましょう。
3. 現在のGitバージョンの確認(もし既にインストールされている場合)
もしかしたら、既にGitがインストールされているかもしれません。他のソフトウェアや開発環境のインストール時に、Gitが一緒にインストールされることがあります。確認方法は簡単です。
- Windowsのスタートボタンをクリックし、「cmd」と入力して「コマンド プロンプト」を開くか、「powershell」と入力して「Windows PowerShell」を開きます。
-
開いた黒い画面(または青い画面)に、以下のコマンドを入力してEnterキーを押してください。
bash
git --version
もしGitがインストールされていれば、以下のようにバージョン情報が表示されます。
git version 2.xx.x.windows.x
もし「’git’ は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のようなエラーが表示された場合は、Gitはインストールされていません。安心して次のステップに進みましょう。
Gitが既にインストールされている場合でも、最新版を使いたい、あるいはインストール方法を学びたいということであれば、この記事の手順に従って再インストール(上書きインストール)することも可能です。ただし、特別な理由がなければ、既存のインストールをそのまま使うこともできます。
Git for Windowsのダウンロード
それでは、公式サイトからGit for Windowsのインストーラーをダウンロードしましょう。
-
公式サイトにアクセス:
ウェブブラウザを開き、Git for Windowsの公式サイト (https://gitforwindows.org/) にアクセスします。 -
ダウンロードボタンを探す:
サイトにアクセスすると、中央付近に大きなダウンロードボタンがあるはずです。通常は「Download」や「Download Git for Windows」といったボタンです。これをクリックしてください。 -
バージョンの選択(通常は最新版):
ダウンロードページに遷移するか、自動的にダウンロードが開始されることがあります。通常、最新の安定版が大きく表示されていますので、そちらをダウンロードすれば問題ありません。 -
32bit版か64bit版か?
ダウンロードボタンが複数ある場合、しばしば「64-bit Git for Windows Setup」と「32-bit Git for Windows Setup」のように分かれています。現在使われているほとんどのWindows PCは64bit版です。お使いのWindowsが64bit版であれば「64-bit」を選択してください。分からない場合は、以下の手順で確認できます。- Windows 10/11の場合: スタートボタンを右クリックし、「システム」を選択。「デバイスの仕様」セクションの「システムの種類」を確認します。「64 ビット オペレーティング システム」と表示されていれば64bit版です。
- 古いWindowsの場合: コントロールパネルから「システム」を開いて確認します。
もし32bit版のWindowsを使っている場合は「32-bit」を選択します。基本的にはお使いのOSのビット数に合わせればOKです。迷ったら64bit版を試してみて、もし実行できなかった場合に32bit版を試すという手もありますが、まずはOSのビット数を確認するのが確実です。
ダウンロードが完了すると、「Git-2.xx.x-64-bit.exe」(バージョン番号によってファイル名は異なります)のような実行ファイルがダウンロードフォルダに保存されます。これでインストーラーの準備は完了です。
Git for Windowsのインストール手順
ダウンロードしたインストーラーを使って、いよいよGit for Windowsをインストールします。インストーラーは多くの設定項目がありますが、初心者向けに推奨設定を中心に丁寧に解説していきます。
ダウンロードしたインストーラーファイル(例: Git-2.xx.x-64-bit.exe
)をダブルクリックして起動します。
1. ライセンス規約の同意 (GNU General Public License)
インストーラーを起動すると、最初にライセンス規約(GNU General Public License v2.0)が表示されます。これはGitがオープンソースソフトウェアであることを示すものです。内容を確認し、同意する場合は「Next >」ボタンをクリックします。同意しないとインストールはできません。
2. インストール先の選択
次に、Git for Windowsをどこにインストールするかを選択します。
-
Select Destination Location
デフォルトでは
C:\Program Files\Git
のような場所に設定されています。特別な理由がない限り、デフォルトのインストール先を変更しないことを強く推奨します。パスに日本語や空白文字が含まれていると、後々予期しない問題が発生する可能性があります。デフォルトのパスは通常、そのような問題を避けるように設計されています。必要なディスク容量も表示されますので確認しておきましょう。通常、数百MB程度です。
インストール先を確認・決定したら「Next >」をクリックします。
3. コンポーネントの選択
どのコンポーネント(Gitと一緒にインストールされる追加機能やツール)をインストールするかを選択します。ここにはいくつか重要な項目があります。
-
Select Components
コンポーネント 説明 推奨設定(初心者) Git Bash
Gitのコマンドライン操作を行うためのツール。Linuxライクな強力なシェル環境を提供します。必須級。 チェックを入れる Git GUI
Gitの操作をグラフィカルに行うためのツール。コマンド操作に不慣れな場合に役立ちますが、全ての操作ができるわけではありません。 チェックを入れる(任意) – 後からでも追加・削除可能。 Git LFS (Large File Support)
動画や音声ファイルのような大きなサイズのファイルを効率的に管理するための拡張機能。必要になるまでチェックを外しておいてOKです。 チェックを外す Associate .git* configuration files with the default text editor
.gitconfig
などのGit設定ファイルを、デフォルトのテキストエディタで開くように関連付けます。便利なのでチェックを推奨します。チェックを入れる Associate .sh files to be run with Bash
.sh
(シェルスクリプト) ファイルをGit Bashで実行するように関連付けます。Windowsでシェルスクリプトを実行する機会があるなら便利です。チェックを入れる(任意) – 通常はチェックでOK。 Check daily for Git for Windows updates
Git for Windowsの新しいバージョンが毎日チェックされるようになります。常に最新版を使いたい場合は便利ですが、不要ならチェックを外しても構いません。 チェックを外す(任意) – 手動でアップデートしても問題ありません。アップデート頻繁でない場合は不要。 (Windows Explorer integration)
エクスプローラーの右クリックメニューにGitの機能を追加します。 以下の2つ両方にチェックを入れることを強く推奨。 Git Bash Here
エクスプローラーで開いているフォルダ内で右クリックメニューからGit Bashを素早く開けるようになります。非常に便利。 チェックを入れる Git GUI Here
エクスプローラーで開いているフォルダ内で右クリックメニューからGit GUIを素早く開けるようになります。GUIを使う場合に便利。 チェックを入れる(任意) – GUIを使うならチェック。
初心者の方には、特に「Git Bash Here」「Git GUI Here」にチェックが入っていることを確認することをお勧めします。これにより、特定のフォルダでGit操作を始めたいときに、そのフォルダを開いて右クリックするだけでGit BashやGit GUIを起動できるようになり、非常に便利です。
コンポーネントを選択したら「Next >」をクリックします。
4. スタートメニューフォルダーの選択
スタートメニューに作成されるGitのショートカットを、どのフォルダーに入れるかを選択します。
-
Select Start Menu Folder
デフォルトでは
Git
という名前のフォルダーが提案されます。通常はこれを変更する必要はありません。問題なければ「Next >」をクリックします。
5. GitのPATH環境変数設定(超重要!)
ここがGit for Windowsのインストールにおいて最も重要な設定項目の一つです。Gitコマンドを、どのコマンドライン環境(コマンドプロンプト、PowerShell、Git Bashなど)から実行できるようにするかを設定します。
-
Adjusting your PATH environment
3つの選択肢が表示されます。それぞれの意味と、初心者向け推奨設定を解説します。
-
Use Git from Git Bash only
(推奨しない)- Git Bashの中からのみ
git
コマンドを実行できるようになります。 - Windowsの標準コマンドプロンプト (
cmd.exe
) やPowerShellからはgit
コマンドを実行できません。 - 最も安全な設定ではありますが、コマンドプロンプトやPowerShellを使う際にGitコマンドが使えず不便です。
- Git Bashの中からのみ
-
Use Git from the Windows Command Prompt
(初心者向け推奨!)- Git Bash、コマンドプロンプト、PowerShellを含む、どのコマンドライン環境からでも
git
コマンドを実行できるようになります。 - Gitの実行ファイルへのパスが、Windowsの環境変数
PATH
に追加されます。 - これが最も一般的で便利な設定です。ほとんどのチュートリアルや情報サイトでは、この設定を前提としています。
- Git Bash、コマンドプロンプト、PowerShellを含む、どのコマンドライン環境からでも
-
Use Git and optional Unix tools from the Command Prompt
(注意が必要)- 上記の「Use Git from the Windows Command Prompt」の設定に加えて、
find
,sort
,grep
など、Git Bashに含まれるいくつかのUnix系コマンドもコマンドプロンプトやPowerShellから実行できるようになります。 - 注意点: Windowsにも同名の標準コマンド(
find
やsort
など)が存在します。この設定を選択すると、Windows標準のコマンドではなく、Git Bashに含まれるUnix系のコマンドが優先して実行されるようになる可能性があります。これにより、既存のバッチファイルなどが意図しない動作をする可能性があります。 - 初心者の方が、Windows標準コマンドとGit Bashのコマンドのどちらが優先されるかなどを意識する必要が出てくるため、通常は推奨されません。
- 上記の「Use Git from the Windows Command Prompt」の設定に加えて、
結論として、初心者の方は迷わず
Use Git from the Windows Command Prompt
を選択しましょう。 これが最も柔軟で、Windowsの標準コマンドライン環境からもGitを簡単に使えるようになる設定です。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
6. SSH実行ファイルの選択
Gitでリモートリポジトリ(GitHubやGitLabなどのオンライン上のリポジトリ)と通信する際に、HTTPSまたはSSHというプロトコルが使われます。SSHを使う場合、SSHクライアントが必要です。Git for WindowsはSSHクライアントを同梱しています。
-
Choosing the SSH executable
2つの選択肢が表示されます。
-
Use bundled OpenSSH
(推奨)- Git for Windowsに同梱されているOpenSSHというSSHクライアントを使用します。
- GitをインストールするだけでSSH通信に必要なツールも揃うため、別途SSHクライアントを用意する必要がありません。
- 初心者の方はこの設定を選ぶのが最も簡単です。
-
Use external OpenSSH
(既存のSSHクライアントがある場合)- 既に別のソフトウェア(例えばPuTTYなど)でSSHクライアントをインストールして使っている場合に、そちらを使用する設定です。
- 既存の環境をそのまま使いたいなどの理由がなければ、あえてこちらを選ぶ必要はありません。
結論として、初心者の方は
Use bundled OpenSSH
を選択しましょう。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
7. HTTPSトランスポートバックエンドの選択
GitがHTTPSプロトコルを使ってリモートリポジトリと通信する際に、SSL/TLS証明書を検証するためのライブラリを選択します。
-
Choosing the HTTPS transport backend
2つの選択肢が表示されます。
-
Use the OpenSSL library
(推奨)- オープンソースのSSL/TLSライブラリであるOpenSSLを使用します。
- ほとんどの環境で問題なく動作する標準的な設定です。
-
Use the native Windows Secure Channel library
- Windows標準のSSL/TLSライブラリを使用します。
- Windowsの証明書ストアに登録された証明書を利用できるというメリットがありますが、特に必要がなければOpenSSLで問題ありません。
結論として、初心者の方は
Use the OpenSSL library
を選択しましょう。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
8. 改行コードの設定(重要!)
これは非常に重要な設定です。テキストファイルにおける「改行」の扱い方は、WindowsとUnix系OS(Linux, macOSなど)で異なります。
- Windows: CR+LF (キャリッジリターン + ラインフィード)
- Unix系OS: LF (ラインフィード)
Gitで複数のOSのユーザーと共同作業する場合や、異なるOS上で動作するサーバーにファイルをデプロイする場合など、この改行コードの違いが問題になることがあります。Gitは、コミット時やチェックアウト時(リポジトリからファイルをローカルに取り出す時)に、改行コードを自動変換する機能を持っています。
-
Configuring the line ending conversions
3つの選択肢が表示されます。
-
Checkout Windows-style, commit Unix-style line endings
(初心者向け推奨!)- リポジトリからファイルを取り出す(チェックアウトする)際は、改行コードを Windows形式 (CRLF) に変換します。ローカルでの作業はWindows標準の改行コードで行えます。
- ファイルをリポジトリに保存する(コミットする)際は、改行コードを Unix形式 (LF) に変換します。これにより、リポジトリに保存されるファイルはプラットフォームに依存しない標準的なLF形式になります。
- Windowsユーザーが、Unix/Linux環境や他のOSのユーザーと共同作業する場合に最も推奨される設定です。 自分がWindows上で作業し、コミット時に自動でLFに変換してくれるため、他のOSのユーザーに迷惑をかけません。
-
Checkout as-is, commit Unix-style line endings
(クロスプラットフォーム開発向け)- リポジトリからファイルを取り出す際は、リポジトリに保存されている改行コードをそのまま維持します。
- コミットする際は、改行コードをUnix形式 (LF) に変換します。
- リポジトリにLF形式のファイルがあればLFのまま取り出されるため、Windows上でLF形式のファイルを扱いたい場合に適しています。ただし、Windows標準のテキストエディタ(メモ帳など)で開くと、改行が正しく表示されない(全体が1行に見える)ことがあります。
- クロスプラットフォーム開発で、ローカルでもLF形式でファイルを扱いたい上級者向けの設定です。
-
Checkout as-is, commit as-is
(非推奨)- チェックアウト時もコミット時も、改行コードの自動変換を一切行いません。
- リポジトリにCRLFとLFが混在している場合、そのまま混在した状態でファイルが保存されます。
- 改行コードの問題が発生しやすいため、特別な理由がない限りこの設定は非推奨です。
結論として、あなたが主にWindowsを使って開発を行う初心者であれば、
Checkout Windows-style, commit Unix-style line endings
を強く推奨します。 これが最も一般的なシナリオで問題を起こしにくい設定です。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
9. ターミナルエミュレーターの選択
Git Bashを使用する際に、どのターミナルソフトを使用するかを選択します。
-
Configuring the terminal emulator to use with Git Bash
2つの選択肢が表示されます。
-
Use MinTTY (the default terminal of MSYS2)
(推奨)- Git Bashのデフォルトとして使用されている、高機能なターミナルエミュレーターMinTTYを使用します。
- 文字コード(UTF-8)のサポートがしっかりしており、Linuxライクなコマンドライン環境として使いやすいです。日本語表示なども比較的安定しています。
-
Use Windows' default console window
- Windows標準のコマンドプロンプト (
cmd.exe
) ベースのコンソールウィンドウを使用します。 - MinTTYに比べて機能が少なく、日本語表示などの問題が発生しやすい傾向があります。
- Windows標準のコマンドプロンプト (
結論として、初心者の方は
Use MinTTY (the default terminal of MSYS2)
を強く推奨します。 Git Bashを快適に使うために必須と言える設定です。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
10. git pull
のマージ戦略の選択
git pull
コマンドは、リモートリポジトリから最新の変更を取得し、それを現在のブランチに統合する際に使用します。統合方法には主に「マージ (Merge)」と「リベース (Rebase)」の2種類があり、ここでそのデフォルトの動作を選択できます。
-
Choose the default behavior of
git pull
3つの選択肢が表示されます。
-
Default (fast-forward or merge)
(推奨)- リモートの変更がローカルの変更の先頭に単に追加されるだけで履歴に分岐が発生しない場合(「ファストフォワード」可能な場合)は、ファストフォワードを行います。
- 履歴に分岐が発生しておりファストフォワードできない場合は、新しいマージコミットを作成して統合します。
- これがGitの最も標準的で一般的な
git pull
の動作です。初心者の方にはこの設定を推奨します。
-
Rebase
- リモートの変更を取得した後、ローカルでのコミットを一時的に退避させ、リモートの変更を適用し、その後にローカルのコミットをリモートの変更の「上」に再適用(リベース)します。
- これにより、コミット履歴が分岐せず、常に直線的で綺麗な履歴を保つことができます。
- 履歴が綺麗になるというメリットがある一方で、使い方を誤ると履歴の書き換えにつながり、共同開発時には注意が必要です。
- リベースの概念を理解しており、直線的な履歴を重視する場合に選択します。初心者には少し高度な概念かもしれません。
-
Only ever fast-forward
(非推奨)- リモートの変更を取得し、ファストフォワード可能な場合のみ統合します。
- ファストフォワードできない場合(履歴に分岐がある場合)、統合を行わずエラーとなります。
- これは非常に制限的な設定であり、通常の使用では不便なため非推奨です。
結論として、初心者の方は
Default (fast-forward or merge)
を選択しましょう。 Gitの標準的な動作であり、多くの場面で適切に機能します。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
11. 資格情報ヘルパーの選択(重要!)
GitがGitHubやGitLabなどのリモートリポジトリにアクセスする際に、認証情報(ユーザー名やパスワード、パーソナルアクセストークンなど)が必要になります。資格情報ヘルパーは、この認証情報の管理を助けてくれるツールです。
-
Choose a credential helper
いくつかの選択肢が表示されます。表示される選択肢はGit for Windowsのバージョンによって少し異なる場合がありますが、最も重要なのは「Git Credential Manager」に関連する項目です。
-
Git Credential Manager
(推奨)- GitHub, GitLab, Azure DevOpsなどの主要なホスティングサービスに対応した、比較的新しく高機能な資格情報ヘルパーです。
- OAuth認証、パーソナルアクセストークン(PAT)、SSHエージェント転送など、様々な認証方式に対応しています。
- 一度認証に成功すれば、長期間パスワードなどを入力する必要がなくなるため、非常に便利です。特にHTTPS経由でGitHubなどに接続する場合は、これを使うことで認証の手間が大幅に省けます。
- 初心者の方にはこの
Git Credential Manager
を強く推奨します。
-
None
- 資格情報ヘルパーを使用しません。リモートリポジトリにアクセスするたびに、手動でユーザー名とパスワード(またはPATなど)を入力する必要があります。非常に手間がかかります。
表示される選択肢の中から
Git Credential Manager
を含む項目を選択してください。バージョンによっては「Git Credential Manager Core」のように表示されることもあります。結論として、初心者の方は
Git Credential Manager
を選択しましょう。 これにより、リモートリポジトリへのアクセスが格段に楽になります。設定を選択したら「Next >」をクリックします。
-
12. その他のオプションの選択
ここでは、実験的な機能や特定の環境で役立つ追加オプションを選択します。
-
Configuring extra options
通常、表示される項目は以下の通りです。
-
Enable file system caching
(推奨)- ファイルシステムデータをメモリにキャッシュすることで、Gitの操作(特にステータスの確認など)のパフォーマンスを向上させます。
- チェックを入れることを推奨します。
-
Enable symbolic links
(注意が必要)- 「シンボリックリンク」(特定のファイルやフォルダへのショートカットのようなもの)の作成を有効にします。
- Gitリポジトリ内でシンボリックリンクを使用する場合に必要ですが、Windowsでシンボリックリンクを作成するには通常、管理者権限が必要になります。 管理者権限のないユーザーがこのオプションを有効にしても、シンボリックリンクを作成・利用できない場合があります。また、管理者権限でGit Bashを開くのが手間になることもあります。
- 一般的な用途ではシンボリックリンクはあまり使われません。特に必要がなければチェックを外しておいて構いません。
-
(バージョンによっては、より実験的なオプションが表示されることもあります。不明な場合はチェックを外しておきましょう。)
結論として、
Enable file system caching
にはチェックを入れ、Enable symbolic links
は必要に応じて判断しますが、通常はチェックを外しておいて問題ありません。設定を選択したら「Install」をクリックします。
-
13. インストールの実行
「Install」ボタンをクリックすると、実際のファイルのコピーや設定の書き込みが始まります。これには数分かかる場合があります。進捗バーが表示されますので、完了するまで待ちましょう。
ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログが表示された場合は、「はい」をクリックしてインストールを許可してください。
14. インストールの完了
インストールが完了すると、完了画面が表示されます。
-
Completing the Git for Windows Setup Wizard
Launch Git Bash
- チェックを入れた状態で「Finish」をクリックすると、すぐにGit Bashが起動します。
View Release Notes
- チェックを入れた状態で「Finish」をクリックすると、Gitのリリースノートが表示されます。新機能や変更点を確認できますが、初心者には難しい内容が多いかもしれません。
通常は
Launch Git Bash
にチェックを入れたまま「Finish」をクリックし、Git Bashを起動してインストールが成功したか確認するのが良いでしょう。View Release Notes
はチェックを外しても構いません。
「Finish」をクリックしてインストーラーを閉じます。
インストール後の確認
Git for Windowsのインストールが無事完了したかを確認しましょう。
1. Git Bashの起動とバージョン確認
インストール完了画面で Launch Git Bash
にチェックを入れた場合は、自動的にGit Bashが起動します。チェックを外した場合や、もう一度確認したい場合は、以下の手順で起動できます。
- Windowsのスタートボタンをクリックします。
- アプリ一覧から「Git」フォルダーを探します。
- その中の「Git Bash」をクリックします。
黒い背景のコマンドラインウィンドウが表示されたら成功です。これがGit Bashです。ここで、Gitが正しくインストールされているかバージョンを確認します。
bash
git --version
Enterキーを押すと、インストールしたGitのバージョンが表示されるはずです。
git version 2.xx.x.windows.x
この表示があれば、Git BashからGitコマンドを実行できる状態になっています。
2. コマンドプロンプトまたはPowerShellでのバージョン確認
インストール手順の「PATH環境変数設定」で Use Git from the Windows Command Prompt
を選択した場合、コマンドプロンプトやPowerShellからもGitコマンドが使えるようになっているはずです。確認してみましょう。
- Windowsのスタートボタンをクリックし、「cmd」と入力して「コマンド プロンプト」を開くか、「powershell」と入力して「Windows PowerShell」を開きます。
-
開いたウィンドウに、以下のコマンドを入力してEnterキーを押します。
cmd
git --version
または
powershell
git --versionここでもGitのバージョンが表示されれば成功です。
もし「’git’ は、内部コマンドまたは外部コマンド…」のようなエラーが表示された場合は、PATHの設定がうまくいっていない可能性があります。パソコンを再起動すると環境変数が反映される場合がありますので試してみてください。それでもダメな場合は、インストール手順5のPATH設定を確認するか、再インストールを検討する必要があります。
3. Windows Explorerでのコンテキストメニュー確認
インストール手順3のコンポーネント選択で「Git Bash Here」や「Git GUI Here」にチェックを入れた場合、エクスプローラーの右クリックメニューにこれらの項目が追加されています。
- 任意のフォルダをエクスプローラーで開きます。
- フォルダの何も表示されていない場所で右クリックします。
- メニューの中に「Git Bash Here」や「Git GUI Here」が表示されていれば成功です。これらの項目をクリックすると、そのフォルダをカレントディレクトリとしてGit BashまたはGit GUIが起動します。
初期設定(必須の手順)
Git for Windowsのインストールは完了しましたが、Gitを使い始める前に、誰がコミットを行ったのかを記録するために、あなたの名前とメールアドレスを設定する必要があります。これはGitを使う上で必須の設定です。
設定は、先ほど開いたGit Bash、コマンドプロンプト、またはPowerShellのいずれかで行います(PATH設定でGitコマンドが使える環境ならどれでも構いません)。ここではGit Bashを使う例で説明します。
- Git Bashを開きます。
-
以下のコマンドを入力し、あなたのユーザー名を設定します。ユーザー名は何でも構いませんが、通常はあなたの本名やGitHubなどで使っているユーザー名を指定します。
bash
git config --global user.name "あなたの名前"
例:git config --global user.name "Taro Yamada"
(「あなたの名前」の部分は二重引用符で囲んでください) -
次に、あなたのメールアドレスを設定します。Gitホスティングサービス(GitHubなど)を利用する場合は、そこに登録しているメールアドレスを指定するのが一般的です。
bash
git config --global user.email "あなたのメールアドレス"
例:git config --global user.email "[email protected]"
(「あなたのメールアドレス」の部分も二重引用符で囲んでください)
--global
オプションは、これらの設定があなたのコンピューター上のすべてのGitリポジトリに適用されることを意味します。もし特定のプロジェクトだけで別の名前やメールアドレスを使いたい場合は、リポジトリのフォルダ内で --global
を付けずに git config user.name "名前"
のように実行することも可能ですが、通常は --global
で設定しておけば問題ありません。
設定の確認
設定が正しく行われたかを確認するには、以下のコマンドを使います。
bash
git config --global --list
これにより、グローバル設定の一覧が表示されます。その中に、先ほど設定した user.name
と user.email
が含まれているはずです。
user.name=あなたの名前
user.email=あなたのメールアドレス
...(他の設定項目)...
これで、Gitを使うための基本的な初期設定は完了です!コミットを行う際に、ここで設定した名前とメールアドレスが記録されるようになります。
Gitの基本的な使い方(超入門)
インストールと初期設定が完了したところで、Gitの基本的なコマンドをいくつか紹介します。これらはGitを使ったバージョン管理の出発点となるコマンドです。
1. リポジトリの作成 (git init
)
新しいプロジェクトでGitによるバージョン管理を開始したい場合、そのプロジェクトのフォルダを「Gitリポジトリ」にする必要があります。
- 管理したいプロジェクトのフォルダをエクスプローラーで開きます。
- そのフォルダ内で右クリックし、「Git Bash Here」を選択してGit Bashを開きます。
-
以下のコマンドを実行します。
bash
git init実行すると、「Initialized empty Git repository in C:/path/to/your/project/.git/」のようなメッセージが表示されます。これにより、そのフォルダ内に
.git
という隠しフォルダが作成されます。この.git
フォルダが、あなたのプロジェクトの全ての変更履歴や設定情報などを記録する、Gitリポジトリの本体です。
2. ファイルの追加 (git add
)
プロジェクト内のファイルに加えた変更をGitに記録(コミット)するためには、まずその変更を「ステージングエリア」に追加する必要があります。ステージングエリアは、次のコミットに含める変更を一時的に置いておく場所です。
例えば、index.html
というファイルを新規作成または編集したとします。その変更を次のコミットに含めるには、以下のコマンドを実行します。
bash
git add index.html
特定のフォルダ内の全てのファイル変更をまとめて追加したい場合は、フォルダ名を指定します。
bash
git add css/
現在のフォルダ以下の全てのファイル変更を追加したい場合は、ドット (.
) を使います。
bash
git add .
(これはよく使われる便利なコマンドですが、意図しないファイルまで追加しないよう注意が必要です)
git add
を実行しても何もメッセージが表示されないことが多いですが、エラーが出なければ成功です。
現在のファイルの状態(変更されたファイル、ステージングされているファイルなど)を確認するには、git status
コマンドを使います。
bash
git status
git status
を実行すると、ステージングされているファイル、変更はされたがまだステージングされていないファイルなどが確認できます。
3. コミット (git commit
)
ステージングエリアに追加した変更内容を、正式に履歴としてGitリポジトリに記録するのが「コミット」です。コミットを行う際には、その変更がどのような内容であったかを説明する「コミットメッセージ」を必ず付けます。
bash
git commit -m "コミットメッセージ"
例: git commit -m "Initial commit"
(最初のコミットの場合)
例: git commit -m "Add navigation bar to index page"
(ナビゲーションバーを追加した場合)
-m
オプションを使うと、コマンドライン上で短いメッセージを指定できます。より長いメッセージや複数行のメッセージを書きたい場合は、-m
オプションを付けずに git commit
だけを実行します。すると、設定したテキストエディタ(デフォルトではVimなど)が起動し、メッセージを入力できるようになります。Vimなどのエディタの使い方が分からない場合は、まずは -m
オプションを使うのが簡単です。
コミットが成功すると、そのコミットに関する情報(どのブランチにコミットされたか、コミットIDなど)が表示されます。
コミットした履歴を確認するには、git log
コマンドを使います。
bash
git log
これにより、これまでのコミットが新しい順に一覧表示されます。
4. リポジトリのクローン (git clone
)
既にGitHubなどのリモートリポジトリに存在するプロジェクトを作業したい場合は、そのリポジトリをローカルに複製(クローン)します。
クローンしたいリポジトリのURL(HTTPSまたはSSH)が必要です。GitHubなどのサイトで確認できます。
bash
git clone [リポジトリのURL]
例: git clone https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名.git
このコマンドを実行すると、指定したURLのリポジトリの内容が、カレントディレクトリ(コマンドを実行した場所)に、リポジトリ名と同じ名前のフォルダとしてダウンロードされます。ダウンロードされたフォルダがローカルリポジトリとなります。
5. プッシュ (git push
)
ローカルリポジトリで行ったコミットを、GitHubなどのリモートリポジトリにアップロードするのが「プッシュ」です。
bash
git push origin [ブランチ名]
例: git push origin main
(main
ブランチをプッシュする場合)
最初のプッシュの際は、origin
と main
(または master
) の関連付けを行うために、-u
オプションを付けて実行することが多いです。
bash
git push -u origin main
origin
はデフォルトでリモートリポジトリを指す名前、main
は現在作業しているブランチ名です。これにより、あなたのローカルでの変更がリモートリポジトリに反映され、他の共同作業者もその変更を取得できるようになります。
6. プル (git pull
)
リモートリポジトリに、他の人が行った変更がある場合、それをローカルリポジトリに取り込むのが「プル」です。
bash
git pull origin [ブランチ名]
例: git pull origin main
このコマンドを実行すると、リモートの main
ブランチの最新の変更がローカルに取り込まれ、現在のブランチに統合されます。インストール時の設定で「Default (fast-forward or merge)」を選択していれば、自動的にマージ(またはファストフォワード)が行われます。
これらのコマンドが、Gitを使った開発ワークフローの基本となります。
git clone
でリモートリポジトリを取得するか、git init
でローカルに新しいリポジトリを作成する。- ファイルを編集する。
git status
で変更を確認する。git add
でコミットしたい変更をステージングする。git commit
で変更を履歴に記録する。- (リモートリポジトリと連携している場合)
git pull
で他の人の変更を取り込む。 - (リモートリポジトリと連携している場合)
git push
で自分の変更をリモートにアップロードする。
このサイクルを繰り返しながら開発を進めていきます。
Git for Windowsのアンインストール方法
Git for Windowsが不要になった場合や、クリーンな状態で再インストールしたい場合は、Windowsの標準機能を使ってアンインストールできます。
- Windowsのスタートボタンをクリックし、「設定」(歯車アイコン)を開きます。
- 「アプリ」->「アプリと機能」を選択します。
- アプリの一覧が表示されるまでしばらく待ちます。
- 一覧の中から「Git」を探します。
- 「Git」をクリックし、「アンインストール」ボタンが表示されたらクリックします。
- 再度「アンインストール」をクリックして確認します。
- Git for Windowsのアンインストーラーが起動します。
- 「Uninstall」ボタンをクリックします。
- ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログが表示されたら「はい」をクリックします。
- アンインストールが完了したら、「Finish」をクリックしてアンインストーラーを閉じます。
これでGit for WindowsがあなたのPCから削除されます。ただし、あなたがGitリポジトリとして作成したフォルダ内の .git
フォルダは削除されないため、必要に応じて手動で削除してください。また、初期設定で設定したユーザー名やメールアドレスなどの設定情報も、削除されずに残る場合があります。これらも完全に削除したい場合は、以下のファイルを削除します(ただし、他のソフトでGitを使っている場合は影響が出る可能性があるので注意)。
C:\Users\あなたのユーザー名\.gitconfig
よくあるトラブルシューティング
Git for Windowsを使っていて遭遇しやすい問題と、その解決策をいくつか紹介します。
1. git
コマンドが見つからない
- 症状: コマンドプロンプトやPowerShellで
git --version
と入力すると、「’git’ は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」というエラーが出る。 - 原因:
- インストール時にPATH設定で
Use Git from Git Bash only
を選択した。 - インストール時にPATH設定で
Use Git from the Windows Command Prompt
を選択したが、環境変数がまだ反映されていない。 - インストールが正しく完了しなかった。
- インストール時にPATH設定で
- 解決策:
- Git BashでGitコマンドが使えるか確認する (
git --version
をGit Bashで実行)。Git Bashで使えるなら、Git本体はインストールされているが、PATH設定が原因です。 - PCを再起動する。多くの場合、これで環境変数が再読み込みされ、コマンドプロンプトなどからも使えるようになります。
- Gitをアンインストールし、再度インストールする。その際、インストール手順5のPATH設定で
Use Git from the Windows Command Prompt
を必ず選択する。
- Git BashでGitコマンドが使えるか確認する (
2. SSH接続ができない
- 症状:
git clone
やgit push
をSSH形式のURL ([email protected]:user/repo.git
のような形式) で実行すると、認証エラーや接続エラーが発生する。 - 原因:
- SSH鍵ペアが生成されていない。
- 公開鍵がGitHubなどのリモートホスティングサービスに登録されていない。
- SSHエージェントが実行されていない、または鍵がエージェントに追加されていない。
- Git for Windowsのインストール時に、
Use bundled OpenSSH
以外を選択した、またはOpenSSHのパスが正しくない。 - ファイアウォールやプロキシによってSSH接続がブロックされている。
- 解決策:
- SSH鍵ペアを生成し、公開鍵をリモートホスティングサービスに登録する。Git Bashで
ssh-keygen -t rsa -b 4096 -C "あなたのメールアドレス"
のようなコマンドで生成できます。 - Git Bashを起動し、SSHエージェントを開始し、秘密鍵をエージェントに追加する。
bash
eval $(ssh-agent -s)
ssh-add ~/.ssh/id_rsa
(.ssh/id_rsa
は生成した秘密鍵のパスに合わせてください) - プライベートネットワークなどで接続が制限されていないか確認する。HTTPS接続 (
https://github.com/user/repo.git
) に切り替えることで回避できる場合もあります。
- SSH鍵ペアを生成し、公開鍵をリモートホスティングサービスに登録する。Git Bashで
3. 改行コードの問題
- 症状:
- Windowsで編集したファイルをGitで管理し、Linux環境などに持っていくと、各行の終わりに余分な文字(
^M
などと表示されることがあります)が付いているように見える。 - Linuxで編集されたファイルをWindowsで開き、Windows標準のテキストエディタ(メモ帳など)で見ると、改行が正しく表示されず全てが1行に見える。
- Windowsで編集したファイルをGitで管理し、Linux環境などに持っていくと、各行の終わりに余分な文字(
- 原因: Gitの改行コード自動変換設定が適切でない。
- 解決策:
- インストール手順8で推奨した
Checkout Windows-style, commit Unix-style line endings
に設定されているか確認する。 - 既にリポジトリを作成してしまっている場合は、以下のコマンドで設定を変更できます。
bash
git config --global core.autocrlf true
(true
はチェックアウト時にCRLFに、コミット時にLFに変換する設定に相当します。クロスプラットフォーム開発でローカルでもLFで扱いたい場合はinput
に設定します。false
は変換しない設定です。) - 設定変更後、一度リポジトリ内のファイルを削除し、再度クローンまたはチェックアウトし直すことで、設定が反映された改行コードのファイルを取得できます。
- インストール手順8で推奨した
4. 認証エラー (HTTPS)
- 症状:
git clone
やgit push
をHTTPS形式のURLで実行すると、ユーザー名とパスワードの入力を求められるか、認証エラーが発生する。 - 原因:
- ユーザー名やパスワードが間違っている。
- GitHubなどのサービスで、パスワード認証が廃止され、パーソナルアクセストークン(PAT)の使用が必須になっている場合がある。
- 資格情報ヘルパーが正しく機能していない。
- 解決策:
- 入力しているユーザー名とパスワードが正しいか確認する。
- GitHubなど、パスワード認証が使えなくなっているサービスの場合は、PATを生成し、パスワードの代わりにPATを入力する。
- インストール手順11で
Git Credential Manager
が選択されていることを確認する。選択されていなかった場合は、Gitをアンインストール・再インストールして設定を変更するか、手動でCredential Managerをインストールすることを検討する。Git Credential Managerを使えば、PATなどを安全に保存して、以降は入力不要になります。
5. Git Bashでの日本語表示問題
- 症状: Git Bashでファイル名やコミットメッセージに日本語が含まれていると、文字化けして正しく表示されない。
- 原因: Git Bashのターミナルエミュレーター(MinTTY)の文字コード設定が、システムまたはGitの設定と一致していない。
- 解決策:
- Git Bashのウィンドウを右クリックし、「Options…」を選択します。
- 「Text」カテゴリを選択し、「Locale」を
ja_JP
、「Charset」をUTF-8
に設定します。 - 「Appearance」カテゴリを選択し、日本語フォント(例: MS Gothic, Meiryo)を指定すると表示が改善される場合があります。
- これらの設定を変更後、Git Bashを再起動します。
- それでも改善しない場合は、Gitの設定で表示文字コードを指定する必要があるかもしれません。
bash
git config --global core.quotepath off
git config --global gui.encoding utf-8
git config --global i18n.commitencoding utf-8
git config --global i18n.logoutputencoding utf-8
これらの設定を行うことで、ファイル名などがUTF-8で表示されるようになります。
これらのトラブルシューティングは一般的なものです。もし解決しない場合は、エラーメッセージ全文と、どのような操作を行ったかを添えて、インターネット検索やGitのコミュニティで質問してみてください。
まとめ:Gitの世界へようこそ!
これで、Git for Windowsのダウンロードからインストール、基本的な初期設定、そして簡単な使い方までを理解できたはずです。約5000語という詳細な解説を通じて、各設定項目の意味や、なぜ推奨設定が良いのかについても深く掘り下げました。
Gitのインストールは、バージョン管理という強力なツールを使い始めるための第一歩です。バージョン管理は、個人の開発作業を効率化するだけでなく、複数人での共同開発をスムーズに進める上で不可欠なスキルです。
インストールが完了したら、次は実際にGitを使ってみましょう。まずは簡単なファイルでローカルリポジトリを作成し、add
、commit
の操作を繰り返してみてください。慣れてきたら、GitHubやGitLabなどのサービスにアカウントを作成し、リモートリポジトリと連携して clone
、push
、pull
を試してみるのが良いでしょう。
Gitにはこの記事で紹介した以外にも、ブランチ、マージ、リベース、スタッシュ、タグなど、多くの便利な機能があります。しかし、焦る必要はありません。まずは基本的な「追加 (add) -> 記録 (commit)」のサイクルと、リモートとの連携 (pull
/push
) をしっかりとマスターすることから始めましょう。
Gitは最初は少し難しく感じるかもしれませんが、使えば使うほどその便利さを実感できるはずです。困ったことがあれば、Git Bashの -h
オプションや、インターネット上の豊富なドキュメントやチュートリアルがあなたの助けになるでしょう。
Git for Windowsのインストール、本当にお疲れ様でした!これで、あなたもバージョン管理の世界に飛び込む準備が整いました。素晴らしい開発ライフ、Gitライフを!