これからRHEL 10 を使う人へ:基本から応用までの紹介

はい、承知いたしました。RHEL 10 をこれから使う人へ向けた、基本から応用までを網羅した詳細な記事を記述します。約5000語を目指し、各トピックを深く掘り下げて説明します。


これからRHEL 10 を使う人へ:基本から応用までの徹底解説

はじめに:エンタープライズLinuxの新たな標準へ

サーバーOSの世界で、安定性、信頼性、そして長期サポートは最も重要な要素です。Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、長年にわたりこれらの要素を満たし、エンタープライズ環境におけるデファクトスタンダードの一つとしての地位を確立してきました。そして今、その進化の最新章、RHEL 10が登場(あるいは登場が間近)となります。

RHEL 10は、これまでのRHELが培ってきた堅牢性を引き継ぎつつ、最新のテクノロジーを取り込み、クラウド、コンテナ、自動化といった現代のITニーズにさらに最適化されています。システムのパフォーマンス向上、セキュリティ機能の強化、管理ツールの洗練など、多岐にわたるアップデートが期待されます。

この記事は、「これからRHEL 10を使い始める」という方、あるいは「既存のRHELや他のLinuxディストリビューションからRHEL 10への移行を検討している」という方を対象としています。RHEL 10の基本的な概念から、システム管理の核心、注目の新機能、セキュリティ対策、そして応用的な活用方法まで、網羅的に、かつ詳細に解説することを目的としています。

RHELは単なるOSではなく、その上に構築されるビジネスアプリケーションやサービスを支える基盤です。この基盤を深く理解し、適切に活用することは、システムの安定稼働、運用効率の向上、そしてビジネスの成功に直結します。

さあ、RHEL 10の世界へ踏み出し、その強力な機能を最大限に引き出すための知識を身につけましょう。この記事が、あなたのRHEL 10ジャーニーの確かな一歩となることを願っています。

【ご注意】 本記事執筆時点(2024年X月Y日)において、RHEL 10はまだ正式リリースされていない可能性があります。記事の内容は、RHEL 9およびCentOS Stream 9、公開されている技術情報、そしてLinuxコミュニティの一般的な動向に基づいた予測や一般的な説明を含みます。正式リリース時には仕様や機能が変更される可能性がありますことをご了承ください。最新かつ正確な情報は、Red Hat社の公式ドキュメントをご確認ください。本記事は、RHEL 10が概ねどのようなOSとなるかを理解し、学習の指針を得るための一助となることを意図しています。

RHEL 10の基本:何を知るべきか

RHEL 10とは?その位置づけと特徴

RHEL 10は、Red Hat社が開発・提供する商用Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」のメジャーバージョンアップ版です。エンタープライズ、つまり企業や組織での利用に特化しており、その最大の特徴は、長期にわたる安定したサポートと徹底的な品質保証です。

RHELの開発は、コミュニティ主導のLinuxディストリビューションであるFedoraをアップストリームとして行われます。Fedoraで新しい技術や機能を積極的に実験・採用し、その中からエンタープライズ環境で必要とされる安定性・信頼性を満たすと判断されたものが、RHELに取り込まれます。RHELはFedoraのような最先端を追うディストリビューションとは異なり、一度リリースされたバージョンの主要なパッケージ(カーネル、主要ライブラリなど)は基本的に変更されず、バグ修正やセキュリティアップデートのみが提供される方針がとられます。これにより、システムの予期せぬ挙動変化を防ぎ、長期にわたる安定稼働を実現します。

RHELのもう一つの重要なアップストリーム、あるいはRHELのマイナーリリースに先行する開発ブランチとして、CentOS Streamがあります。CentOS Streamは、RHELの次のマイナーリリース(例:RHEL 9.1, 9.2など)の開発版として機能し、コミュニティからのフィードバックをRHELの開発に早期に取り込むための仕組みです。RHEL 10の開発も、先行するCentOS Streamのバージョンに基づいて進められると考えられます。

RHELのライフサイクルは非常に長く、通常10年以上に及びます。この長期サポートにより、企業は一度導入したシステムを安心して使い続けることができ、OSの頻繁なアップグレードに伴うコストやリスクを軽減できます。RHEL 10も同様に長期サポートが提供される見込みであり、これがエンタープライズ環境でRHELが選ばれる大きな理由の一つです。

システム要件:RHEL 10を動かすために

RHEL 10をインストール・実行するためのシステム要件は、具体的なバージョンや用途(最小インストール、GUI環境、特定のサービスなど)によって異なりますが、一般的な目安として以下のようなリソースが必要となります。正確な要件は、RHEL 10の公式ドキュメントで確認してください。

  • CPU: x86-64アーキテクチャが主流ですが、PowerPCやIBM Z、ARM 64など他のアーキテクチャもサポートされる可能性があります。コア数やクロック周波数は用途に依存しますが、最低限の動作には数コアが必要でしょう。
  • メモリ (RAM): 最小インストールであれば数GB(例えば2GB程度)で動作する可能性もありますが、GUI環境やサーバー用途では8GB以上が推奨されることが一般的です。多くのサービスを実行する場合や仮想マシンホストとする場合は、数十GBから数百GBが必要になります。
  • ストレージ: 最小インストールで数十GB、GUI環境や開発ツールを含める場合は100GB以上が必要になるでしょう。/var/home などのパーティションには、ログやユーザーデータ、アプリケーションが格納されるため、十分な容量を確保する必要があります。システムディスクとしてはSSDが推奨されます。
  • ネットワーク: インストールメディアのダウンロードや、インストール後のアップデート、リモートアクセス、各種サービスのためにネットワーク接続は必須です。有線LANインターフェースが一般的ですが、無線LANもサポートされます。
  • グラフィックス (GUI利用時): グラフィカルなデスクトップ環境を利用する場合は、対応したグラフィックスカードとモニターが必要です。サーバー用途でCUIのみの場合は不要です。
  • インストールメディア: インストール元のISOイメージを格納するためのDVDドライブ、USBメモリ、またはネットワークブート環境。

仮想化環境 (VMware vSphere, KVM, Hyper-Vなど) や、AWS, Azure, Google Cloud Platformなどのパブリッククラウド上でもRHEL 10は公式にサポートされます。これらの環境では、必要なリソースを柔軟に割り当てて利用します。

インストール方法:RHEL 10の導入

RHEL 10のインストールは、主に以下のステップで進めます。公式な手順はRHEL 10のドキュメントを参照してください。

  1. インストールメディアの入手:

    • Red HatカスタマーポータルからRHEL 10のISOイメージファイルをダウンロードします。利用にはRed Hat Subscriptionが必要です(評価版もあります)。
    • ダウンロードしたISOイメージをDVDに書き込むか、dd コマンドや専用ツール(Rufusなど)を使ってUSBメモリに書き込み、起動可能なインストールメディアを作成します。
  2. ターゲットシステムの起動:

    • 作成したインストールメディアをターゲットシステムにセットし、BIOS/UEFI設定でメディアから起動するように変更します。
    • システムを起動すると、インストーラー(Anaconda)の初期画面が表示されます。言語選択などを行います。
  3. Anacondaインストーラーの操作:

    • AnacondaはGUIベースのインストーラーです。左ペインに設定項目、右ペインに概要が表示されます。
    • 日付と時刻: タイムゾーンを設定します。
    • キーボード: 使用するキーボードレイアウトを選択します。
    • 言語サポート: インストールする言語を選択します。
    • ソフトウェアの選択: ここでシステムの用途に応じたベース環境と追加のソフトウェアを選択します。
      • 「最小インストール (Minimal Install)」:必要最低限のコマンドライン環境。サーバー用途で、必要なサービスを個別にインストールする場合に最適です。ディスク容量とメモリを節約できます。
      • 「サーバーGUI (Server with GUI)」:サーバー用途でGUI環境も利用する場合。CockpitなどのWebコンソールを利用する場合にも便利です。
      • 「ワークステーション (Workstation)」:デスクトップPCとして利用する場合。GUI環境や開発ツールなどが含まれます。
      • その他、開発、仮想化ホストなど、特定の用途向けの選択肢があります。
    • インストール先: ディスクのパーティショニングを行います。
      • 「自動構成」:インストーラーがディスクを自動的に分割します。初心者向けですが、柔軟性に欠けます。
      • 「手動構成」:自分でパーティションを作成・編集します。/, /boot, /home, swap などのパーティションをLVM(Logical Volume Manager)を使って構成するのが一般的です。ファイルシステムはXFSが推奨されます。RHEL 10でBtrfsが選択肢に入るか、あるいはデフォルトになるかなど、ファイルシステム周りのアップデートがあるかもしれません。
    • KDUMP: システムクラッシュ時のデバッグ情報を収集するための機能です。有効化するか選択します。
    • ネットワークとホスト名: IPアドレス、ネットマスク、ゲートウェイ、DNSサーバーを設定し、ホスト名を決定します。DHCPで自動取得することも可能です。
    • セキュリティポリシー: SELinuxの設定モードなどを選択します。
    • CONNECT TO RED HAT: Red Hat Subscription Managerに登録します。インストール後に行うことも可能です。
    • これらの設定が完了したら、「インストールの開始」をクリックします。
  4. インストールの進行とユーザー設定:

    • インストーラーがパッケージのコピーと設定を行います。この間に、rootパスワードを設定し、一般ユーザーアカウントを作成します。セキュリティのため、rootパスワードは強力なものを設定し、日常的な操作は一般ユーザーで行い、必要に応じてsudoを使用するのが良い慣習です。
    • インストールが完了したら、システムを再起動します。インストールメディアを取り出すのを忘れないようにしましょう。

基本的な操作:ログインからコマンドまで

システムが正常に起動すると、ログインプロンプト(CUIの場合)またはログイン画面(GUIの場合)が表示されます。

  • CUI (Command Line Interface) でのログイン:

    • Login: プロンプトにユーザー名を入力し、Enterキーを押します。
    • Password: プロンプトにパスワードを入力し、Enterキーを押します。(パスワードは画面に表示されません)
    • 認証に成功すると、コマンドプロンプトが表示されます。デフォルトのシェルはBash(Bourne-Again SHell)です。プロンプトは通常 [ユーザー名@ホスト名 現在のディレクトリ]$ (一般ユーザー)または [root@ホスト名 現在のディレクトリ]# (rootユーザー)の形式です。
  • GUI (Graphical User Interface) でのログイン:

    • ログイン画面でユーザーを選択し、パスワードを入力してEnterキーを押すか、ログインボタンをクリックします。
    • 認証に成功すると、デスクトップ環境が表示されます。RHELのデフォルトデスクトップ環境はGNOMEが使われることが多いです。

ログインしたら、システムを操作するための基本的なコマンドを学びましょう。

  • ファイルシステム階層 (Filesystem Hierarchy Standard – FHS):
    Linuxのファイルシステムは、ルートディレクトリ / を頂点とするツリー構造になっています。主要なディレクトリの意味を理解することは重要です。

    • /: ルートディレクトリ。すべてのファイルとディレクトリの起点。
    • /bin: ユーザーが利用する基本的なコマンド(バイナリ)。
    • /sbin: システム管理者が利用する基本的なコマンド。
    • /etc: 設定ファイル。
    • /home: 一般ユーザーのホームディレクトリ。
    • /root: rootユーザーのホームディレクトリ。
    • /usr: アプリケーション、ライブラリ、ドキュメントなど。
    • /var: 可変データ。ログファイル、スプールファイルなど。
    • /opt: サードパーティ製ソフトウェアのインストール場所。
    • /tmp: 一時ファイル。システム起動時にクリアされることが多い。
    • /dev: デバイスファイル。ハードウェアを表す。
    • /proc: カーネルやプロセスの情報を含む仮想ファイルシステム。
    • /sys: デバイス情報などを含む仮想ファイルシステム。
  • 主要なコマンド:

    • pwd: 現在の作業ディレクトリを表示。
    • ls: ファイルやディレクトリの一覧を表示。(ls -l で詳細表示、ls -a で隠しファイルも表示)
    • cd: ディレクトリを移動。(cd .. で親ディレクトリへ、cd ~ でホームディレクトリへ)
    • cp: ファイルやディレクトリをコピー。(cp source destination)
    • mv: ファイルやディレクトリを移動または名前変更。(mv source destination)
    • rm: ファイルやディレクトリを削除。(rm file, rm -r directory) – 注意:削除されたファイルは通常ゴミ箱には移動せず、復旧が困難です。
    • mkdir: ディレクトリを作成。(mkdir directory_name)
    • rmdir: 空のディレクトリを削除。
    • cat: ファイルの内容を表示。
    • less: ファイルの内容をページ単位で表示。大きなファイルの閲覧に便利。(スペースキーで次ページ、Bキーで前ページ、Qキーで終了)
    • head: ファイルの先頭部分を表示。(デフォルトで最初の10行)
    • tail: ファイルの末尾部分を表示。(デフォルトで最後の10行、tail -f file でファイルの追記をリアルタイムに表示)
    • grep: ファイルの内容から特定のパターンを検索。
    • echo: 文字列を表示。
    • man: コマンドのマニュアルページを表示。(man command_name)
    • info: コマンドやトピックに関する詳細な情報を表示。(info command_name)
    • exit: 現在のシェルセッションを終了。

これらの基本的なコマンドを組み合わせることで、Linuxシステム上でのファイル操作や情報確認を効率的に行うことができます。最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し使うことで自然と身につきます。

システム管理の基本:RHEL 10を運用する

RHEL 10をサーバーとして、あるいは管理されたワークステーションとして運用するには、基本的なシステム管理の知識が不可欠です。ここでは、ユーザー管理、パッケージ管理、サービス管理、ネットワーク設定、ストレージ管理など、運用に必要な要素を解説します。

ユーザーとグループの管理

Linuxシステムはマルチユーザーシステムであり、適切なユーザーとグループの管理はセキュリティと運用の基本です。

  • ユーザーアカウント:

    • ユーザーアカウントは、システムへのログイン、ファイルへのアクセス権、プロセス実行権限などを制御します。
    • root ユーザーはシステム上のあらゆる操作を実行できる特権ユーザーです。日常的な作業にはリスクが伴うため、一般ユーザーでログインし、必要に応じて sudo を利用するのが推奨されます。
    • ユーザー情報は /etc/passwd ファイルに(ユーザー名、UID、GID、ホームディレクトリ、シェルなどの情報)、パスワードハッシュは /etc/shadow ファイルに格納されています。
    • ユーザー作成: useradd [オプション] ユーザー名
      • 例: sudo useradd myuser (デフォルト設定でmyuserを作成)
      • 例: sudo useradd -m -s /bin/bash myuser2 (ホームディレクトリを作成し、シェルをbashに指定)
    • パスワード設定: passwd ユーザー名
      • 例: sudo passwd myuser (myuserのパスワードを設定)
    • ユーザー情報変更: usermod [オプション] ユーザー名
      • 例: sudo usermod -G group1,group2 myuser (myuserを指定したグループに追加)
      • 例: sudo usermod -l newname oldname (ユーザー名を変更)
    • ユーザー削除: userdel [オプション] ユーザー名
      • 例: sudo userdel myuser (myuserを削除、ホームディレクトリは残る)
      • 例: sudo userdel -r myuser (myuserとホームディレクトリを削除)
  • グループ:

    • グループは、複数のユーザーをまとめることで、ファイルやリソースに対するアクセス権限を一括管理するための仕組みです。
    • ユーザーを作成すると、通常はユーザー名と同じ名前のプライマリグループが自動的に作成され、そのユーザーがそのグループに所属します。
    • ユーザーは複数のセカンダリグループに所属できます。
    • グループ情報は /etc/group ファイルに格納されています。
    • グループ作成: groupadd グループ名
      • 例: sudo groupadd developers
    • グループ情報変更: groupmod [オプション] グループ名
    • グループ削除: groupdel グループ名
      • 例: sudo groupdel developers
    • ユーザーが所属するグループを確認: groups [ユーザー名]
  • 権限管理:

    • ファイルやディレクトリには、所有者(User)、所有グループ(Group)、その他のユーザー(Others)に対する読み取り(r)、書き込み(w)、実行(x)の権限が設定されています。
    • 権限の確認: ls -l コマンドの出力の最初の10文字で確認できます。
      • 例: -rw-r--r-- (ファイル、所有者: rw-, グループ: r–, その他: r–)
    • 権限の変更: chmod [モード] ファイル/ディレクトリ
      • モードは数値形式(例: 755)または記号形式(例: u+w, go-r)で指定します。
      • 例: chmod 755 myscript.sh (所有者: rwx, グループ: r-x, その他: r-x)
      • 例: chmod ug+w data.txt (所有者とグループに書き込み権限を追加)
    • 所有者と所有グループの変更: chown [オプション] 所有者[:所有グループ] ファイル/ディレクトリ
      • 例: sudo chown myuser:developers myproject (myprojectディレクトリの所有者をmyuserに、所有グループをdevelopersに変更)
  • sudoの利用:

    • sudo コマンドを使用すると、一般ユーザーが一時的にroot権限(または他のユーザーの権限)でコマンドを実行できます。これにより、rootユーザーで常時ログインするリスクを減らせます。
    • sudo を利用できるユーザーや実行できるコマンドは /etc/sudoers ファイルで設定します。このファイルを直接編集する際は visudo コマンドを使用するのが安全です。
    • 例: sudo systemctl restart httpd (Apacheサービスをroot権限で再起動)

パッケージ管理:DNFの活用

RHEL 10では、引き続きDNF (Dandified YUM) が標準のパッケージ管理ツールとして使用されるでしょう。DNFは、以前のYUMの機能を拡張し、依存関係の解決やパフォーマンスが改善されています。

  • リポジトリ:

    • パッケージはリポジトリ(ソフトウェアが保管されている場所)から取得されます。RHELのリポジトリは通常、Red Hat Subscription Manager経由で提供されます。
    • リポジトリの設定ファイルは /etc/yum.repos.d/ ディレクトリに .repo 拡張子で格納されています。
    • 主要なリポジトリ:BaseOS, AppStreamなど。
  • 基本的なDNFコマンド:

    • sudo dnf check-update: アップデート可能なパッケージを確認します。
    • sudo dnf update: システム全体のパッケージをアップデートします。
    • sudo dnf install パッケージ名: 指定したパッケージをインストールします。依存関係にあるパッケージも自動的にインストールされます。
      • 例: sudo dnf install httpd (Apache HTTPサーバーをインストール)
    • sudo dnf remove パッケージ名: 指定したパッケージを削除します。
      • 例: sudo dnf remove httpd
    • dnf search 検索語: パッケージ名や説明文からパッケージを検索します。
      • 例: dnf search mysql-server
    • dnf info パッケージ名: パッケージの詳細情報を表示します。
      • 例: dnf info httpd
    • dnf list [installed|available]: インストール済みのパッケージまたは利用可能なパッケージを一覧表示します。
    • dnf provides コマンド/ファイルパス: 特定のコマンドやファイルを提供しているパッケージを検索します。
      • 例: dnf provides /usr/sbin/httpd
  • モジュールストリーム (Application Streams):

    • RHEL 8以降で導入された機能で、同じソフトウェアでも複数のバージョン(ストリーム)を選択してインストールできるようにします。開発者向けのツールやランタイム(Python, Node.js, Ruby, MySQLなど)でよく利用されます。
    • 利用可能なモジュールの一覧: dnf module list
    • 特定のモジュールの有効化: sudo dnf module enable モジュール名:ストリーム名
      • 例: sudo dnf module enable python38 (Python 3.8ストリームを有効化)
    • 有効化したモジュールのインストール: sudo dnf install モジュール名
      • 例: sudo dnf install python38 (有効化したストリームのPython 3.8をインストール)

パッケージ管理は、システムを最新の状態に保ち、セキュリティ脆弱性を修正し、必要なソフトウェアを導入するために非常に重要です。定期的に dnf update を実行することを推奨します。

サービスの管理:systemd

RHEL 7以降、Systemdがinitシステムの標準となっています。Systemdは、システムの起動プロセスの管理、サービスの起動・停止・再起動、ログ管理など、多岐にわたる機能を提供します。

  • systemctlコマンド:
    Systemdサービスを操作するための主要コマンドです。

    • sudo systemctl status サービス名: サービスの現在の状態(active, inactive, failedなど)と直近のログを表示します。
      • 例: sudo systemctl status sshd (SSHサーバーの状態を確認)
    • sudo systemctl start サービス名: サービスを開始します。
    • sudo systemctl stop サービス名: サービスを停止します。
    • sudo systemctl restart サービス名: サービスを再起動します。
    • sudo systemctl reload サービス名: 設定ファイルを再読み込みします(サービスを停止せずに設定を反映できる場合)。
    • sudo systemctl enable サービス名: システム起動時にサービスが自動的に開始されるように設定します。
    • sudo systemctl disable サービス名: システム起動時の自動開始を無効化します。
    • systemctl list-units --type=service: 実行中のサービスユニット一覧を表示します。
    • systemctl is-enabled サービス名: サービスが自動起動設定されているか確認します。
  • ユニットファイル:
    Systemdは「ユニット」という概念で様々なリソースを管理します。サービスは .service ユニットファイルで定義されます。これらのファイルは /usr/lib/systemd/system//etc/systemd/system/ ディレクトリに配置されます。/etc/systemd/system/ に配置されたファイルは、/usr/lib/systemd/system/ のファイルを上書きします。

  • ジャーナルログ (journalctl):
    Systemdは独自のログ管理システムであるjournaldを提供します。様々なサービスやカーネルからのログを一元管理します。

    • journalctl: すべてのログを表示します。
    • journalctl -f: 最新のログをリアルタイムに表示します(tail -f のような挙動)。
    • journalctl -u サービス名: 指定したサービスに関するログのみを表示します。
      • 例: journalctl -u httpd.service
    • journalctl -p priority: 指定した重要度(emerg, alert, crit, err, warning, notice, info, debug)以上のログを表示します。
      • 例: journalctl -p err
    • journalctl --since "YYYY-MM-DD HH:MM:SS" / --until "YYYY-MM-DD HH:MM:SS": 指定した期間のログを表示します。

Systemdとjournalctlを理解し使いこなすことは、RHEL 10システムの運用状況の把握やトラブルシューティングにおいて非常に重要です。

ネットワーク設定

RHEL 10のネットワーク設定は、NetworkManagerというサービスによって管理されます。NetworkManagerは、有線、無線、VPNなどの接続を抽象化し、様々なツールから設定・制御できるようにします。

  • NetworkManagerのツール:

    • nmcli: コマンドラインツール。スクリプトからの利用や、CUI環境での設定に適しています。
      • 例: nmcli device status (ネットワークデバイスの状態一覧)
      • 例: nmcli connection show (定義されているネットワーク接続一覧)
      • 例: nmcli connection add type ethernet con-name my-eth ifname eth0 ip4 192.168.1.100/24 gw4 192.168.1.1 (静的IPアドレスで新しい有線接続を作成)
      • 例: nmcli connection modify my-eth ipv4.dns "8.8.8.8 8.8.4.4" (DNSサーバーを設定)
      • 例: nmcli connection up my-eth (接続を有効化)
    • nmtui: テキストユーザーインターフェースツール。CUI環境で対話的にネットワーク設定ができます。
      • sudo nmtui で起動します。接続の編集、有効化/無効化、ホスト名の設定などが可能です。
    • GUIツール: デスクトップ環境では、設定メニューからグラフィカルにネットワーク設定が行えます。
    • ifcfgファイル (Legacy): 以前のバージョンで使われていた /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-* ファイルも、互換性のために引き続き利用可能かもしれません(ただしNetworkManagerによる管理が推奨されます)。
  • ホスト名:
    システムの名前を設定します。

    • 確認: hostname または hostnamectl
    • 設定: sudo hostnamectl set-hostname your-hostname
  • ファイアウォール:firewalld
    RHELのデフォルトファイアウォールはfirewalldです。これは iptables/nftables のフロントエンドとして機能し、動的なファイアウォール管理を提供します。

    • firewalldは「ゾーン」という概念でネットワークインターフェースを分類し、各ゾーンに異なるルールを適用します。デフォルトゾーン(public, internalなど)があります。
    • sudo systemctl status firewalld: firewalldの起動状態を確認します。
    • sudo systemctl start firewalld: firewalldを起動します。
    • sudo systemctl enable firewalld: システム起動時に自動起動するように設定します。
    • sudo firewall-cmd --get-active-zones: 現在アクティブなゾーンを確認します。
    • sudo firewall-cmd --list-all --zone=public: publicゾーンに設定されているルール(サービス、ポートなど)を確認します。
    • sudo firewall-cmd --zone=public --add-service=http --permanent: publicゾーンにhttpサービス(TCP 80)を永続的に許可します。--permanent オプションをつけないと再起動で消えます。
    • sudo firewall-cmd --zone=public --remove-service=http --permanent: publicゾーンからhttpサービスを永続的に削除します。
    • sudo firewall-cmd --zone=public --add-port=8080/tcp --permanent: publicゾーンにTCP 8080ポートを永続的に許可します。
    • sudo firewall-cmd --reload: 設定変更をfirewalldに再読み込みさせます(--permanent で変更した場合に必要)。

ファイアウォールの設定は、外部からの不正アクセスを防ぐ上で非常に重要です。必要最小限のサービスとポートのみを開放するように設定しましょう。

ストレージ管理

ディスクの管理、ファイルシステムの作成、マウントは、システムのデータを安全に保存するために不可欠です。

  • ディスクの識別:

    • lsblk: ブロックデバイス(ディスク、パーティション、LVMボリュームなど)のツリー構造を表示します。デバイス名(例: sda, sdb, nvme0n1など)、サイズ、マウントポイントなどが確認できます。
    • fdisk -l: 従来のパーティション情報表示コマンド。
    • parted -l: より高機能なパーティション管理ツール。
  • パーティショニング:

    • 新しいディスクを追加した場合、まずパーティショニングが必要です。
    • fdisk /dev/sdX または parted /dev/sdX コマンドを使用して対話的にパーティションを作成します。
    • ディスクラベル(GPTまたはMBR)を選択します。GPTが推奨されます。
    • パーティションタイプ(例: Linux filesystem, Linux swap)とサイズを指定します。
  • ファイルシステムの作成:

    • パーティションを作成したら、その上にファイルシステムを作成します。RHELの標準ファイルシステムはXFSです。RHEL 10でBtrfsがどのように扱われるかは注目点です。
    • sudo mkfs.xfs /dev/sdXY: 指定したパーティションにXFSファイルシステムを作成します。
    • sudo mkfs.ext4 /dev/sdXY: 互換性が必要な場合はext4も利用可能です。
    • sudo mkswap /dev/sdXY: スワップ領域を作成します。
  • ファイルシステムのマウント/アンマウント:

    • 作成したファイルシステムは、ディレクトリにマウントすることでシステムからアクセスできるようになります。
    • 手動マウント: sudo mount /dev/sdXY /mnt/mountpoint (指定したデバイスを/mnt/mountpointにマウント)
    • 手動アンマウント: sudo umount /mnt/mountpoint
    • システム起動時に自動マウントするには、/etc/fstab ファイルにエントリを記述します。
      • /etc/fstab の書式:デバイス マウントポイント ファイルシステムタイプ マウントオプション ダンプ チェック
      • デバイスは /dev/sdXY のようなデバイス名、UUID (UUID=...)、またはファイルシステムラベル (LABEL=...) で指定できます。UUIDやLABELを使う方がデバイス名の変動に強く推奨されます。blkid コマンドでUUIDやLABELを確認できます。
      • 例: UUID=xxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx /data xfs defaults,nofail 0 0 (UUIDで指定したデバイスを/dataにXFSとして自動マウント)
  • LVM (Logical Volume Manager):

    • 複数の物理ディスクやパーティションを一つにまとめ(物理ボリューム – PV)、それをさらに論理的なボリューム(論理ボリューム – LV)に分割してファイルシステムを作成する技術です。
    • LVMを使用すると、ファイルシステムのサイズ変更やスナップショット取得などが容易になります。
    • 基本的な手順:
      1. 物理ボリューム(PV)を作成: sudo pvcreate /dev/sdX1 /dev/sdY1
      2. ボリュームグループ(VG)を作成: sudo vgcreate myvg /dev/sdX1 /dev/sdY1
      3. 論理ボリューム(LV)を作成: sudo lvcreate -L 10G -n mylv myvg (myvgから10GBのmylvを作成)
      4. LV上にファイルシステムを作成: sudo mkfs.xfs /dev/myvg/mylv
      5. 作成したLVをマウント: sudo mount /dev/myvg/mylv /mnt/data
      6. /etc/fstab にエントリを追加して自動マウント設定。

LVMは柔軟なストレージ管理を可能にするため、サーバー環境では広く利用されています。

ログ管理

システムの挙動を監視し、問題発生時に原因を特定するためには、ログの確認が不可欠です。RHELでは主にsystemd-journaldがログを管理します。

  • journalctl: 前述のサービス管理の項で紹介したように、journalctl コマンドでログを確認します。-u, -p, --since, --until などのオプションを活用して、必要なログを絞り込むことができます。
  • rsyslog: 従来のsyslogプロトコルを受け付け、ログをファイルに書き出すサービスです。systemd-journaldはrsyslogにログを転送することもできます。ログファイルは /var/log/ ディレクトリに格納されます(例: /var/log/messages, /var/log/secure)。
  • ログローテーション: ログファイルは時間とともに増大するため、定期的に古いログを削除したり圧縮したりする必要があります。これはlogrotateサービスによって行われます。設定ファイルは /etc/logrotate.conf/etc/logrotate.d/ ディレクトリにあります。

ログはシステムの健全性を示す重要な指標です。定期的にログを確認し、異常がないかをチェックする習慣をつけましょう。

RHEL 10の新機能・注目機能 (予想されるもの)

RHEL 10はメジャーバージョンアップとして、カーネルの更新を含む多くの変更が加えられるでしょう。以下に、RHEL 10で期待される、あるいは注目すべき機能や変更点(RHEL 9やCentOS Stream 9の動向からの予想を含む)を挙げます。

  • 最新カーネルの搭載: RHEL 10は、リリース時点での比較的最新のLinuxカーネルバージョンをベースとするでしょう。これにより、新しいハードウェアのサポート、パフォーマンスの向上、新機能の利用が可能になります。
  • 主要パッケージバージョンの更新: GCC, Python, OpenSSL, Glibcなどの主要な開発ツールやライブラリが新しいバージョンに更新されます。これにより、よりモダンなアプリケーションの開発や実行環境が提供されます。Application Streamsを通じて、複数のバージョンの言語ランタイムやデータベースが提供されるモデルは引き継がれるでしょう。
  • セキュリティ機能の強化:
    • SELinuxのポリシールールや管理ツールの改善。
    • OpenSCAP (Security Content Automation Protocol) を用いたシステムのスキャン、脆弱性評価、コンプライアンスチェック機能の強化。
    • 暗号化関連ライブラリ(OpenSSLなど)のアップデートと新しい暗号規格への対応。
    • SCAP WorkbenchなどのGUIツールの改良。
  • コンテナ技術への対応強化:
    • Podman, Buildah, Skopeoといったコンテナツール群の最新版が提供されるでしょう。これらはDockerデーモン不要でコンテナを扱えるため、セキュリティやオーケストレーションにおいて利点があります。
    • Podmanを使ったコンテナ管理機能(Podの概念、Systemdとの連携など)がさらに成熟している可能性があります。
    • RHEL CoreOSとの連携や、OpenShift (Kubernetesプラットフォーム) の基盤としての機能強化。
  • 仮想化技術 (KVM) の進化:
    • QEMU/KVMの最新版が搭載され、仮想マシンのパフォーマンス向上や管理機能の強化が期待されます。
    • Virtioドライバの改良によるI/O性能の向上。
  • クラウド対応と自動化:
    • AWS, Azure, GCPなどの主要なパブリッククラウド環境での最適化されたイメージ提供と連携機能。
    • Ansible System Rolesの拡充や改善。これにより、RHELシステムの標準的な設定や管理タスク(ストレージ設定、ネットワーク設定、SELinux設定など)をAnsibleで効率的に自動化できます。
    • Image Builderツールを使ったカスタムイメージ作成機能の強化。
  • Webコンソール (Cockpit) の改良:
    • Cockpitは、Webブラウザ経由でRHELシステムを管理できるツールです。システムの状態監視、ログ確認、ストレージ管理、ネットワーク設定、ユーザー管理、コンテナ管理など、多くの管理タスクをGUIで実行できます。
    • RHEL 10では、Cockpitの機能がさらに拡充され、より多くの設定や監視が可能になるでしょう。特に新しい機能(例えばRHEL 10で導入される可能性のあるファイルシステムなど)への対応が期待されます。
  • パフォーマンスツールとプロファイル:
    • Performance Co-Pilot (PCP) などのシステム監視・パフォーマンス分析ツールが強化されるでしょう。
    • システム全体や特定のアプリケーションのパフォーマンスをプロファイリングするためのツール(perfなど)の最新版が提供されます。
  • ファイルシステム関連の動向:
    • デフォルトは引き続きXFSである可能性が高いですが、Btrfsなど他のファイルシステムへの対応や機能強化があるかもしれません。RHEL 9でBtrfsのサポート状況が変化したことから、RHEL 10での扱いも注目されます。

これらの機能は、RHEL 10が現代の複雑なIT環境において、より安全、効率的、そして柔軟に対応できるOSとなることを目指していることを示しています。

セキュリティ:RHEL 10を堅牢にする

エンタープライズシステムにおいて、セキュリティは最優先事項です。RHEL 10は、その設計思想においてセキュリティが重視されており、多くの機能を提供しています。

SELinux (Security-Enhanced Linux)

SELinuxは、強制アクセス制御 (MAC) メカニズムを提供するLinuxカーネルセキュリティモジュールです。従来の任意アクセス制御 (DAC, ファイル所有者などが権限を決定) よりも強力なセキュリティを提供します。SELinuxを正しく理解し、活用することはRHELのセキュリティを語る上で欠かせません。

  • SELinuxの動作モード:
    • enforcing: ポリシーに基づいてアクセス制御を強制します。違反は拒否され、ログに記録されます。推奨されるモードです。
    • permissive: アクセス制御を強制しませんが、違反が発生した場合にログに記録します。デバッグやポリシー開発に利用します。
    • disabled: SELinuxが無効化されます。最も危険な状態であり、通常は推奨されません。
  • モードの確認と変更:
    • 確認: getenforce または sestatus
    • 一時的な変更: sudo setenforce [Enforcing|Permissive|1|0] (再起動で元に戻ります)
    • 永続的な変更: /etc/selinux/config ファイルを編集し、SELINUX= の値を変更します(変更は再起動後に有効になります)。
  • コンテキスト (Context):
    SELinuxは、ファイル、プロセス、ユーザー、ポートなどのオブジェクトに割り当てられた「コンテキスト」に基づいてアクセスを判断します。コンテキストは user:role:type:level の形式ですが、通常は type がアクセス制御の主体となります(例: httpd_t はApacheプロセス、httpd_sys_content_t はApacheが読み取り可能なWebコンテンツディレクトリ)。

    • ファイルやプロセスのコンテキスト確認: ls -Z [ファイル/ディレクトリ] または ps -efZ | grep [プロセス名]
    • ファイルのコンテキスト変更: sudo chcon [オプション] コンテキスト ファイル/ディレクトリ (一時的な変更)
    • ファイルのコンテキストの復元: sudo restorecon [オプション] ファイル/ディレクトリ (ポリシーに基づいてデフォルトのコンテキストに戻します)
  • 真偽値 (Booleans):
    SELinuxポリシーには、特定の振る舞いを許可/不許可する真偽値 (Boolean) が多数用意されています。例えば、httpd_can_network_connect を有効にすると、Apacheがネットワーク接続を確立できるようになります。

    • 真偽値の一覧と状態確認: getsebool -a
    • 真偽値の一時的な変更: sudo setsebool 真偽値名 on|off
    • 真偽値の永続的な変更: sudo setsebool -P 真偽値名 on|off
  • ログとaudit2allow:
    SELinuxがアクセスを拒否すると、ログ(通常 /var/log/audit/audit.log)に記録されます。これらのログを分析することで、何が拒否されたのか、なぜ拒否されたのかを特定できます。

    • 拒否ログの確認: sudo ausearch -m AVC,USER_AVC,DENIED -ts recent
    • audit2allow ツールは、拒否ログを解析して、そのアクセスを許可するためのカスタムポリシールール(モジュールファイル)を生成するのに役立ちます。これは、デフォルトポリシーが不十分な場合に、SELinuxをPermissiveにするのではなく、必要なアクセスのみを許可するルールを追加するために使用します。
      • 例: sudo ausearch -m AVC -ts recent | audit2allow -M mypolicy (最近の拒否ログからmypolicyという名前のモジュールを作成)
      • sudo semodule -i mypolicy.pp (作成したモジュールをロード)

SELinuxは強力ですが、理解と設定には学習が必要です。最初はPermissiveモードで動作を確認し、拒否ログを見ながら必要なルールや真偽値を設定していくのが良いアプローチです。

ファイアウォール:firewalldの詳細

ファイアウォールの設定は、ネットワークセキュリティの第一線です。firewalldのゾーンとルールの管理をマスターしましょう。

  • ゾーン:
    インターフェースを割り当てることで、異なる信頼レベルを持つネットワークを区別します。

    • public: 公開されているネットワーク(インターネットなど)。信頼性が低い。
    • internal: 内部ネットワーク。信頼性が高い。
    • trusted: 信頼できるネットワーク。すべてのトラフィックを許可。
    • drop, block: すべてまたは特定のトラフィックを破棄/拒否。
    • 特定のインターフェースをゾーンに割り当てる: sudo firewall-cmd --zone=internal --change-interface=eth1 --permanent
  • サービスとポート:
    • firewalldは、SSH, HTTP, HTTPSなどの一般的なサービス名を認識します。これらは /usr/lib/firewalld/services//etc/firewalld/services/ にXMLファイルとして定義されています。
    • 特定のサービスを許可する場合: sudo firewall-cmd --zone=public --add-service=ssh --permanent
    • 特定のポート番号を許可する場合: sudo firewall-cmd --zone=public --add-port=ポート番号/プロトコル --permanent (例: 2222/tcp
  • ポートフォワーディング (Masquerading/NAT):
    firewalldを使って、特定のポートへのアクセスを別のホストやポートに転送したり、内部ネットワークから外部への通信をNATしたりできます。

    • Masqueradeを有効化: sudo firewall-cmd --zone=public --add-masquerade --permanent
    • ポートフォワーディングを設定: sudo firewall-cmd --zone=public --add-forward-port=port=80:proto=tcp:toport=8080 --permanent (publicゾーンのTCP 80番ポートへのアクセスを同じホストのTCP 8080番に転送)
    • ポートフォワーディングを別のホストへ: sudo firewall-cmd --zone=public --add-forward-port=port=80:proto=tcp:toaddr=192.168.1.100:toport=8080 --permanent (publicゾーンのTCP 80番ポートへのアクセスを内部ホスト192.168.1.100のTCP 8080番に転送)

firewalldの設定は、--permanent オプションを付けて設定ファイルを変更し、sudo firewall-cmd --reload で実行中の設定に反映させるのが一般的な流れです。

SSHのセキュリティ強化

リモートからRHELシステムにアクセスする際に広く使われるSSHは、セキュリティ対策が重要です。

  • パスワード認証の無効化と鍵認証の利用: パスワードクラックのリスクを減らすため、鍵認証を強く推奨します。
    1. クライアント側でSSH鍵ペア(公開鍵と秘密鍵)を生成: ssh-keygen
    2. クライアントの公開鍵をサーバーの /home/ユーザー名/.ssh/authorized_keys ファイルに追加。
    3. サーバーのSSH設定ファイル /etc/ssh/sshd_config を編集し、PasswordAuthentication no を設定します。
    4. sshdサービスを再起動: sudo systemctl restart sshd
  • デフォルトポート(22番)の変更: ポートスキャンによる攻撃のリスクを減らすため、SSHサーバーの待ち受けポートを変更することも考慮できます。
    1. /etc/ssh/sshd_config を編集し、Port 22 の行を変更または追加します(例: Port 2222)。
    2. firewalldで新しいポートを許可します。
      • sudo firewall-cmd --zone=public --add-port=2222/tcp --permanent
      • sudo firewall-cmd --reload
    3. SELinuxポリシーで新しいポートをsshポートとして許可します。
      • sudo semanage port -a -t ssh_port_t -p tcp 2222
    4. sshdサービスを再起動: sudo systemctl restart sshd
  • rootログインの禁止: /etc/ssh/sshd_configPermitRootLogin no を設定し、rootユーザーが直接SSHログインできないようにします。管理が必要な場合は、一般ユーザーでログインしてから sudo su - などでrootになります。

その他のセキュリティ対策

  • ソフトウェアアップデート: 定期的な sudo dnf update の実行は、既知の脆弱性を修正するために最も重要です。
  • 監査ログ (auditd): システム上の重要なイベント(ファイルアクセス、システムコールなど)を詳細に記録するサービスです。セキュリティインシデント発生時の原因調査に役立ちます。設定ファイルは /etc/audit/auditd.conf/etc/audit/rules.d/ にあります。ausearchaureport コマンドでログを分析できます。
  • ユーザーと権限の最小化: 各ユーザーやサービスには、業務遂行に必要な最小限の権限のみを与える「最小権限の原則」を適用します。
  • 不要なサービスの停止: システム上で稼働しているサービスを確認し (systemctl list-units --type=service)、不要なサービスは停止・無効化 (systemctl stop/disable) します。
  • SCAP Workbenchとコンプライアンス: SCAP Workbenchは、SELinuxポリシーやfirewalld設定などが、CISベンチマークやDISA STIGなどのセキュリティ基準に準拠しているか評価するためのGUIツールです。定期的にシステムをスキャンし、セキュリティポスチャを確認・改善することが推奨されます。

応用的な利用と活用:RHEL 10を使いこなす

RHEL 10は、単なるサーバーOSにとどまらず、自動化、コンテナ、開発など、様々な応用的な利用が可能です。

自動化

システム管理タスクを自動化することは、運用効率の向上、ヒューマンエラーの削減、構成管理の徹底に不可欠です。

  • Ansible: Red Hatが提供する自動化ツールです。エージェントレスで、SSH経由でターゲットホストを操作します。YAML形式のPlaybookでタスクを記述し、システムの構成、アプリケーションのデプロイ、タスクの実行などを自動化できます。
    • Ansible System Roles: RHELの標準的な設定タスク(ネットワーク、ストレージ、SELinuxなど)を自動化するためのAnsible Playbook集です。RHEL 10でも提供・拡充されるでしょう。これを利用することで、手作業での設定ミスを防ぎ、RHEL環境を標準化できます。
  • シェルスクリプト: Bashなどのシェルスクリプトは、シンプルなタスクや複数のコマンドを連続して実行するのに便利です。ただし、複雑なロジックや冪等性(複数回実行しても結果が変わらないこと)の保証が必要な場合は、Ansibleなどの構成管理ツールの方が適しています。
  • cron: 定期的なタスク実行をスケジュールするためのサービスです。
    • crontab -e: 現在のユーザーのcrontabエントリを編集します。
    • crontab -l: 現在のユーザーのcrontabエントリを表示します。
    • システム全体のcron設定は /etc/crontab/etc/cron.d/ ディレクトリに配置します。

監視とトラブルシューティング

システムの健全性を維持し、問題発生時に迅速に対処するためには、適切な監視とトラブルシューティングの手法を知っておく必要があります。

  • リソース監視:
    • top または htop (より高機能): システム全体のCPU使用率、メモリ使用量、実行中のプロセスなどをリアルタイムに表示します。
    • vmstat: 仮想メモリ統計、プロセスの待ち行列、CPU使用率などを表示します。
    • iostat: ディスクI/Oの統計情報を表示します。
    • sar: システムのアクティビティを収集・報告するツールです(Sysstatパッケージに含まれます)。CPU、メモリ、I/O、ネットワークなどの過去の統計情報を確認できます。
  • ネットワーク監視:
    • ss: ソケットの統計情報を表示します(netstat の後継コマンド)。ss -tuln でTCP/UDPのリッスンポートを確認できます。
    • netstat: ネットワーク接続、ルーティングテーブル、インターフェース統計などを表示します(非推奨になりつつあります)。
    • tcpdump: ネットワークインターフェースを通過するパケットをキャプチャし、分析します。
    • ping, traceroute: ネットワークの到達性や経路を確認します。
  • ログ解析:
    • journalctl: systemdジャーナルログを確認します。
    • grep: ログファイルから特定のキーワードを含む行を検索します。
    • awk, sed: テキスト処理コマンド。ログファイルから情報を抽出・加工するのに使われます。
  • パフォーマンス分析ツール:
    • perf: Linuxカーネルの性能測定ツールです。CPU使用率、キャッシュミス、システムコールなどを詳細に分析できます。
  • クラッシュダンプ解析 (kdump):
    システムクラッシュ時にカーネルのメモリダンプを取得し、後で分析することで原因を特定するのに役立つ機能です。RHELのインストール時に有効化を設定できます。

適切な監視ツール(Nagios, Zabbix, Prometheusなど)やログ収集・分析システム(ELK Stack, Splunkなど)と連携することで、より高度な監視環境を構築できます。

コンテナ活用

コンテナ技術は、アプリケーションのポータビリティとデプロイメントを大きく変えました。RHEL 10は、Podmanを中心としたコンテナエコシステムをサポートします。

  • Podman:
    • Docker Daemonなしでコンテナを実行できます。root権限なしでコンテナを実行できる「ルートレスコンテナ」機能は、セキュリティ上の大きなメリットです。
    • Docker CLIと互換性のあるコマンド体系 (podman run, podman build, podman ps, podman images など) を持っています。
    • Podの概念をサポートしており、KubernetesのPodと同様に複数の関連するコンテナを一つの単位として管理できます。
    • コンテナからSystemdサービスを生成する機能 (podman generate systemd) など、RHELとの連携機能も豊富です。
  • Buildah: コンテナイメージをビルドするためのツールです。Dockerfileだけでなく、スクリプト形式でイメージをビルドすることも可能です。
  • Skopeo: コンテナイメージのコピー、検査、署名などを扱うツールです。様々なコンテナレジストリ間でのイメージ転送に利用できます。
  • Container Registry: 独自のコンテナレジストリを構築することで、社内でビルドしたコンテナイメージを一元管理できます。RHELにはRegistryパッケージが提供されています。
  • Kubernetesとの連携 (OpenShift): RHELはKubernetesのエンタープライズ向けプラットフォームであるRed Hat OpenShiftの基盤としても利用されます。Podmanなどでローカルに開発したコンテナをOpenShift環境に容易にデプロイできます。

コンテナを活用することで、開発者はアプリケーションの開発に集中し、運用者はインフラ管理の負担を軽減できます。RHEL 10は、このコンテナネイティブなワークロードに最適化された環境を提供します。

開発環境

RHEL 10は、サーバー用途だけでなく、開発ワークステーションとしても利用できます。主要なプログラミング言語や開発ツールが利用可能です。

  • プログラミング言語: Application Streamsを利用して、Python, Node.js, Ruby, Perl, PHPなどの複数のバージョンを共存させてインストールできます。Java (OpenJDK), Goなども利用可能です。
  • 開発ツール: GCC (C/C++コンパイラ), Make, Git (バージョン管理), GDB (デバッガ), RPM build toolなどが標準で提供されます。
  • 仮想環境: Pythonの venvvirtualenv、Rubyの rbenvrvm など、言語固有のバージョン管理や仮想環境ツールを利用できます。これにより、プロジェクトごとに異なるバージョンのライブラリやランタイムを使用できます。
  • 統合開発環境 (IDE): デスクトップ環境をインストールしている場合は、VS Code, Eclipse, GNOME BuilderなどのIDEをインストールして利用できます。
  • コンテナを使った開発環境: Podmanなどを使って、開発に必要なミドルウェア(データベース、キャッシュサーバーなど)や特定のバージョンの言語ランタイムをコンテナとして実行し、ホスト環境を汚染せずに開発を進めることができます。

RHEL 10は、安定した開発基盤を提供し、様々な開発ニーズに対応できます。

サポートとコミュニティ:RHEL 10と共に歩む

RHELは商用ディストリビューションであり、Red Hat社からの公式サポートが最大の強みです。しかし、コミュニティもRHELエコシステムにおいて重要な役割を果たしています。

  • Red Hat Subscription:
    RHELを利用するには、Red Hat Subscriptionが必要です。Subscriptionには、ソフトウェアの利用権だけでなく、以下の重要なメリットが含まれます。

    • 公式アップデートとパッチ: セキュリティ修正、バグ修正、機能強化を含む公式なソフトウェアアップデートを受け取ることができます。
    • 技術サポート: Red Hatのエキスパートによる技術サポートを利用できます。問題発生時の原因調査や解決策の提供を受けられます。
    • ナレッジベースへのアクセス: Red Hatカスタマーポータルにある豊富な技術資料、FAQ、ソリューションにアクセスできます。
    • ツールとサービス: Red Hat Insights (予防的な分析とガイダンス)、Satellite (システム管理プラットフォーム) などのツールやサービスを利用できます。
  • Red Hat カスタマーポータル:
    Subscriptionユーザー向けのWebポータルです。ソフトウェアのダウンロード、Subscriptionの管理、サポートケースのオープン、ナレッジベースの検索、セキュリティ勧告の確認など、様々な情報とサービスが提供されます。
  • コミュニティ版との関係性:
    RHELはFedora(開発最前線)とCentOS Stream(RHELの次期マイナーリリースの開発ブランチ)というコミュニティプロジェクトと密接に関連しています。これらはRHELの将来像を知る上で役立ちますが、RHEL自体はRed Hat社がエンタープライズ向けに安定性・信頼性を保証して提供するものです。ミッションクリティカルな環境では、公式サポートのあるRHELを選択するのが一般的です。
  • 関連技術コミュニティ:
    Linux Foundationをはじめとする様々な技術コミュニティが、Linuxカーネルやオープンソースソフトウェア全般の開発を支えています。これらのコミュニティの活動は、RHELの進化にも大きく貢献しています。

まとめ:RHEL 10で未来を築く

この記事では、これからRHEL 10を使い始める人へ向け、その基本から応用までを詳細に解説しました。

RHEL 10は、エンタープライズLinuxとしての揺るぎない安定性と長期サポートを基盤としつつ、最新の技術トレンドを積極的に取り込んだモダンなOSです。Systemdによる効率的なサービス管理、DNFによる信頼性の高いパッケージ管理、firewalldとSELinuxによる強力なセキュリティ、そしてPodmanを中心としたコンテナエコシステムのサポートは、現代のIT環境における要求に応えるものです。

インストールから始まり、コマンドラインでの基本操作、ユーザー・グループ管理、パッケージ管理、サービス管理、ネットワーク・ストレージ設定といったシステム管理の基本を学びました。さらに、RHEL 10で期待される新機能、セキュリティ対策の重要性とその実践方法、そして自動化、監視、コンテナ活用といった応用的な側面に触れました。

RHEL 10の学習は、一朝一夕にはいきませんが、この記事で紹介した内容を一歩ずつ習得していくことで、あなたは確実にRHEL 10システムを自信を持って管理できるようになるでしょう。公式ドキュメントを参照したり、実際にシステムを触ってみたりしながら、理解を深めていくことが重要です。

RHEL 10は、オンプレミス環境からクラウド、エッジまで、あらゆる場所であなたのビジネスやプロジェクトを支える堅牢な基盤となり得ます。その強力な機能を理解し、最大限に活用することで、システムの安定稼働を実現し、変化の速いIT環境に柔軟に対応していくことができるでしょう。

あなたのRHEL 10での挑戦を応援しています!


【補足】 記事の文字数は、記載されている内容や具体例の詳しさによって変動しますが、上記の構成と詳細度であれば、5000語に近い、あるいはそれ以上のボリュームになる可能性が高いです。必要に応じて、各セクションの具体的なコマンド例や設定ファイルの記述、機能の背景説明などをさらに加筆することで、容易に5000語を超えることが可能です。上記は構成と主要な説明内容を詳細に記述したものです。

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