AzureとAWSのサービスを比較!違いと選び方を徹底解説
はじめに:クラウドコンピューティングの二巨頭
現代のビジネスにおいて、クラウドコンピューティングは必要不可欠な基盤となっています。サーバーの購入や維持管理、ソフトウェアライセンスといったITインフラの構築・運用にかかる膨大なコストと手間を削減し、ビジネスの俊敏性やスケーラビリティを高めることができるからです。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、ビッグデータ分析、AI/機械学習の活用といった先端技術の導入には、クラウドの存在が不可欠です。
世界のクラウドインフラストラクチャ市場において、圧倒的なシェアを誇るのがAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureです。この二社で市場の過半数を占めており、多くの企業がどちらか、あるいは両方のクラウドサービスを利用しています。
しかし、AWSとAzureは、提供するサービスのカテゴリは似ているものの、その詳細な機能、思想、得意とする領域、料金体系、サポート体制などに違いがあります。どちらのプラットフォームを選択するかは、企業の既存IT環境、技術スキル、ビジネス要件、コスト戦略など、様々な要素によって異なります。
本記事では、AWSとAzureの主要サービスをカテゴリ別に比較し、それぞれの特徴、強み、弱みを掘り下げて解説します。さらに、料金体系やサポート体制の違いにも触れ、最終的に自社に最適なクラウドプラットフォームを選ぶための具体的なポイントを詳細に解説します。約5000語にわたり、AWSとAzureを徹底的に比較分析し、皆様のクラウド選定の一助となることを目指します。
AWS (Amazon Web Services) の概要
Amazon Web Services(AWS)は、2006年にサービスを開始した、クラウドコンピューティング市場のパイオニアであり、現在も世界最大のプロバイダーです。当初はストレージサービス(S3)やコンピューティングサービス(EC2)といったシンプルなサービスから始まりましたが、現在では200以上の多岐にわたるサービスを提供しており、そのサービスの幅広さと深さは他を圧倒しています。
歴史と成熟度:
AWSは長年のサービス提供を通じて、多くのエンタープライズ顧客やスタートアップからのフィードバックを取り入れ、サービスを改良・拡充してきました。その結果、信頼性、可用性、スケーラビリティにおいて非常に高いレベルを実現しています。クラウドネイティブな開発手法やマイクロサービスアーキテクチャを前提としたサービスが豊富に用意されており、アジリティを重視する開発者に支持されています。
サービスの幅広さ、深さ:
コンピューティング、ストレージ、データベースといった基本的なカテゴリはもちろん、AI/機械学習、IoT、ブロックチェーン、衛星データ処理、量子コンピューティングといった先端技術分野においても、非常に多くの専門的なサービスを提供しています。特定の用途に特化したマネージドサービスが豊富に存在するため、インフラ構築の手間を大幅に削減し、アプリケーション開発に注力できます。
特徴:
* 圧倒的なサービス数と機能: 特定のニーズに対応するためのニッチなサービスまで網羅しており、選択肢が非常に豊富です。
* 成熟したエコシステム: 長い歴史を持つため、情報源(ドキュメント、ブログ)、コミュニティ、サードパーティ製ツール、パートナー企業が非常に充実しています。
* 高い柔軟性: 仮想マシンレベルから、コンテナ、サーバーレスまで、多様なコンピューティングオプションを提供し、ユーザーは自社の要件に合わせて柔軟にアーキテクチャを選択できます。
* 開発者中心のアプローチ: 新しいテクノロジーやサービスが積極的に導入され、開発者が迅速にイノベーションを起こせる環境が整備されています。
* コスト管理の複雑さ: サービスの数が多すぎるため、最適なサービス選定やコスト構造の理解が難しく、意図せず高額な請求になる可能性があります。
主要なサービスカテゴリーの紹介:
- コンピューティング:
- Amazon EC2 (Elastic Compute Cloud): 仮想マシン。多様なインスタンスタイプ(CPU、メモリ、GPUなど)から選択可能。
- AWS Lambda: サーバーレスコンピューティング。コードをイベント駆動で実行。
- Amazon ECS (Elastic Container Service): Dockerコンテナ管理サービス。
- Amazon EKS (Elastic Kubernetes Service): マネージドKubernetesサービス。
- AWS Fargate: サーバー管理不要のコンテナ実行サービス(ECS, EKSに対応)。
- ストレージ:
- Amazon S3 (Simple Storage Service): オブジェクトストレージ。ウェブサイトホスティング、バックアップ、アーカイブなど。
- Amazon EBS (Elastic Block Store): EC2インスタンス向けのブロックストレージ(仮想ハードディスク)。
- Amazon EFS (Elastic File System): マネージドファイルストレージ(NFSプロトコル対応)。
- Amazon Glacier: 長期アーカイブストレージ(低コスト)。
- AWS Storage Gateway: オンプレミスとAWSクラウド間のストレージ連携。
- データベース:
- Amazon RDS (Relational Database Service): マネージド型リレーショナルデータベース。PostgreSQL, MySQL, MariaDB, Oracle, SQL Server, Amazon Auroraをサポート。
- Amazon Aurora: AWSが開発したMySQL/PostgreSQL互換のリレーショナルデータベース(高性能・高可用性)。
- Amazon DynamoDB: マネージド型NoSQLデータベース(キーバリュー、ドキュメント)。
- Amazon Redshift: フルマネージド型のデータウェアハウス。
- Amazon ElastiCache: マネージド型インメモリデータストア(Redis, Memcached)。
- Amazon DocumentDB: MongoDB互換のマネージド型ドキュメントデータベース。
- ネットワーキング:
- Amazon VPC (Virtual Private Cloud): 隔離された仮想ネットワーク。
- Elastic Load Balancing (ELB): ロードバランサー。HTTP/S, TCP/UDPトラフィックを分散。
- Amazon Route 53: マネージド型DNSサービス。
- Amazon CloudFront: コンテンツ配信ネットワーク(CDN)。
- AWS Direct Connect: オンプレミスからAWSへの専用ネットワーク接続。
- AI/ML:
- Amazon SageMaker: 機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイのための統合開発環境。
- Amazon Rekognition: 画像・動画分析。
- Amazon Comprehend: 自然言語処理(感情分析、エンティティ認識など)。
- Amazon Translate: 機械翻訳。
- Amazon Lex: 会話型インターフェース(チャットボット)構築。
- 開発者ツール:
- AWS CodeCommit: マネージド型Gitリポジトリ。
- AWS CodeBuild: フルマネージド型ビルドサービス。
- AWS CodeDeploy: アプリケーションデプロイサービス。
- AWS CodePipeline: リリースパイプライン自動化サービス。
- AWS CloudFormation: インフラストラクチャのコード化(IaC)。
- セキュリティ、ID管理:
- AWS IAM (Identity and Access Management): ユーザー、グループ、ロールのアクセス権管理。
- AWS WAF (Web Application Firewall): Webアプリケーションを一般的な脆弱性から保護。
- AWS Security Hub: セキュリティアラートとコンプライアンス状態の一元管理。
- AWS KMS (Key Management Service): 暗号化キー管理。
- 管理、運用:
- Amazon CloudWatch: リソースとアプリケーションの監視。
- AWS Systems Manager: サーバーと仮想マシンの運用管理自動化。
- AWS Config: AWSリソースの構成変更追跡とコンプライアンス監査。
Azure (Microsoft Azure) の概要
Microsoft Azureは、Microsoftが提供するクラウドプラットフォームで、2010年に「Windows Azure」としてサービスを開始し、後に現在の名称に変更されました。エンタープライズ分野で圧倒的なシェアを持つMicrosoft製品(Windows Server, SQL Server, Active Directory, Office 365など)との強力な連携を最大の強みとしています。
Microsoftのエンタープライズ顧客基盤:
Microsoftは長年にわたり、世界中の大企業や政府機関にソフトウェアとサービスを提供してきました。この既存の顧客基盤に対し、クラウド移行やハイブリッドクラウド構築の選択肢としてAzureを提案することで、急速に市場シェアを拡大しています。既存のMicrosoftライセンスをAzureに持ち込める(Azure Hybrid Benefit)など、エンタープライズ顧客にとってのメリットが多いのが特徴です。
ハイブリッドクラウド戦略の強み:
Azureは、オンプレミス環境とクラウド環境をシームレスに連携させるハイブリッドクラウド戦略に特に力を入れています。Azure ArcやAzure Stack Familyといったサービスを通じて、オンプレミスのサーバーやKubernetesクラスター、データサービスなどをAzure上で一元管理・統合できる機能を提供しています。
特徴:
* Microsoft製品との親和性: Windows Server, SQL Server, Active DirectoryといったMicrosoft製品との連携が非常にスムーズで、移行や運用が容易です。
* ハイブリッドクラウド機能: オンプレミスとクラウドを連携させるための機能が充実しており、段階的なクラウド移行やハイブリッド環境の運用に適しています。
* 統合されたID管理: Azure Active Directory (Azure AD) を中心とした強力なID管理機能を提供し、オンプレミスのActive Directoryとの同期も容易です。
* Azure Hybrid Benefit: 既存のWindows ServerやSQL ServerのライセンスをAzure上で利用できるため、コスト削減につながる場合があります。
* エンタープライズ向けサポート: 大規模企業向けのサポートやコンプライアンス要件への対応が手厚い傾向があります。
* オープンソースへの対応: 近年ではLinux VMやKubernetes、様々なOSSデータベースなど、Microsoft以外のテクノロジーへの対応も積極的に進めています。
主要なサービスカテゴリーの紹介:
- コンピューティング:
- Azure Virtual Machines (VMs): 仮想マシン。Windows Serverだけでなく、多様なLinuxディストリビューションもサポート。
- Azure Functions: サーバーレスコンピューティング(イベント駆動)。
- Azure Kubernetes Service (AKS): マネージドKubernetesサービス。
- Azure Container Instances (ACI): サーバー管理不要のコンテナ実行サービス。
- Azure App Service: Webアプリケーション、API、モバイルバックエンドのホスティング。
- ストレージ:
- Azure Blob Storage: オブジェクトストレージ。非構造化データ向け。
- Azure Disk Storage: Azure VMs向けのブロックストレージ(仮想ハードディスク)。
- Azure Files: マネージドファイルストレージ(SMB/NFSプロトコル対応)。
- Azure NetApp Files: 高性能ファイルストレージ(NFS/SMBプロトコル対応)。
- Azure Archive Storage: 長期アーカイブストレージ(低コスト)。
- Azure Data Box: 大容量データ転送デバイス。
- データベース:
- Azure SQL Database: マネージド型リレーショナルデータベース(SQL Server互換)。
- Azure SQL Managed Instance: マネージド型SQL Serverインスタンス(オンプレミスSQL Serverとの互換性が高い)。
- Azure Database for MySQL/PostgreSQL/MariaDB: マネージド型オープンソースリレーショナルデータベース。
- Azure Cosmos DB: グローバル分散型マルチモデルNoSQLデータベース。様々なAPI(SQL, MongoDB, Cassandra, Tables, Gremlin)をサポート。
- Azure Synapse Analytics: エンタープライズデータウェアハウスとビッグデータ分析の統合サービス。
- Azure Cache for Redis: マネージド型Redis(インメモリデータストア)。
- ネットワーキング:
- Azure Virtual Network (VNet): 隔離された仮想ネットワーク。
- Azure Load Balancer: ロードバランサー(レイヤー4)。
- Azure Application Gateway: Webアプリケーションファイアウォール機能を持つロードバランサー(レイヤー7)。
- Azure DNS: マネージド型DNSサービス。
- Azure Content Delivery Network (CDN): コンテンツ配信ネットワーク。
- Azure ExpressRoute: オンプレミスからAzureへの専用ネットワーク接続。
- AI/ML:
- Azure Machine Learning: 機械学習モデルの開発、トレーニング、デプロイのためのプラットフォーム。
- Azure Cognitive Services: 事前学習済みAIモデル(Vision, Speech, Language, Search, Decision)。
- Azure Bot Service: 会話型AI(チャットボット)開発。
- Azure Databricks: Apache Sparkベースの分析プラットフォーム。
- 開発者ツール:
- Azure DevOps: CI/CD、リポジトリ、プロジェクト管理などを統合したサービス。
- Azure Repos: マネージド型Gitリポジトリ。
- Azure Pipelines: CI/CDパイプライン。
- Azure Boards: アジャイル開発向けプロジェクト管理ツール。
- Azure Resource Manager (ARM) Templates: インフラストラクチャのコード化(IaC)。
- セキュリティ、ID管理:
- Azure Active Directory (Azure AD): 包括的なIDおよびアクセス管理サービス。Office 365や多くのSaaSアプリとも連携。
- Azure Security Center: クラウドワークロードのセキュリティ管理と脅威防御。
- Azure Firewall: マネージドネットワークファイアウォールサービス。
- Azure Key Vault: 暗号化キー、シークレット、証明書の管理。
- 管理、運用:
- Azure Monitor: リソースとアプリケーションの監視。
- Azure Automation: クラウドとオンプレミスのタスク自動化。
- Azure Policy: リソースのガバナンスとコンプライアンス確保。
サービスカテゴリー別比較
AWSとAzureは、提供するサービスのカテゴリ構成が非常に似ています。しかし、それぞれのサービスの詳細や機能、得意な領域には違いがあります。ここでは、主要なサービスカテゴリごとに両者を比較します。
1. コンピューティング
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仮想マシン (VM):
- AWS: EC2 (Elastic Compute Cloud)
- Azure: Virtual Machines (VMs)
- 比較:
- インスタンスタイプ: どちらも非常に多種多様なインスタンスタイプを提供しており、汎用、コンピューティング最適化、メモリ最適化、ストレージ最適化、アクセラレーテッドコンピューティング(GPUなど)といったカテゴリがあります。AWSの方が歴史が長く、ニッチな用途向けのインスタンスタイプや最新世代のCPU/GPUへの対応が早い傾向があります。AzureはWindows Server VMに強く、既存のWindowsライセンスを持ち込めるAzure Hybrid Benefitが大きなメリットです。Linux VMのサポートも充実しています。
- OSサポート: どちらもWindows Serverと様々なLinuxディストリビューションをサポートしています。AzureはWindowsエコシステムとの連携が強みですが、近年ではAWSもMicrosoft製品(SQL Server on EC2など)への対応を強化しています。
- スケーリング: Auto Scaling Group (AWS) と Virtual Machine Scale Sets (Azure) により、需要に応じてVM数を自動的に増減できます。機能的には大きな差はありません。
- 一時的なインスタンス: スポットインスタンス (AWS) と Spot Virtual Machines (Azure) は、未使用のインスタンスを低価格で利用できるサービスです。どちらも価格変動リスクがありますが、コスト削減に有効です。
-
コンテナサービス:
- AWS: ECS (Elastic Container Service), EKS (Elastic Kubernetes Service), Fargate
- Azure: AKS (Azure Kubernetes Service), ACI (Azure Container Instances), Azure Web Apps for Containers
- 比較:
- Kubernetes: どちらもマネージドKubernetesサービス(EKS vs AKS)を提供しています。AKSは比較的新しいサービスですが、機能面ではEKSに追いつき、Azureの他のサービス(Azure AD, Azure DevOpsなど)との連携に優れています。EKSはより歴史があり、安定性や機能の豊富さに定評があります。
- 独自コンテナオーケストレーション: AWSは独自のECSを提供しています。シンプルでAWSエコシステムとの連携が容易です。Azureには直接的な競合サービスはありませんが、App Serviceがコンテナホスティングに対応しています。
- サーバーレスコンテナ: Fargate (AWS) と ACI (Azure) は、基盤となるVMを管理することなくコンテナを実行できるサービスです。FargateはECS/EKSと連携し、ACIは単一コンテナまたは小規模なコンテナグループの実行に適しています。どちらもインフラ管理の負担を軽減します。
-
サーバーレスコンピューティング:
- AWS: Lambda
- Azure: Functions
- 比較:
- 機能: どちらもイベント駆動型のコード実行サービスで、リクエスト数や実行時間に基づいて課金されます。Webフック、データベース変更、ファイルアップロードなどのイベントをトリガーにコードを実行できます。
- エコシステムとの連携: LambdaはAWSの豊富なサービス(S3, DynamoDB, API Gatewayなど)との連携が容易です。FunctionsもAzureのサービス(Blob Storage, Cosmos DB, Event Gridなど)やMicrosoft製品との連携がスムーズです。近年では、どちらもHTTPトリガーによるAPIバックエンドとしての利用が増えています。
- 実行環境: どちらも多様な言語(Node.js, Python, Java, C#, Goなど)やカスタムランタイムをサポートしています。
2. ストレージ
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オブジェクトストレージ:
- AWS: S3 (Simple Storage Service)
- Azure: Blob Storage
- 比較:
- 歴史と成熟度: S3はオブジェクトストレージのデファクトスタンダードであり、非常に成熟しています。機能、サードパーティ連携、ドキュメント、コミュニティ全てにおいて優位性があります。Blob Storageも機能的にはS3に追いついてきており、階層的なNamespaceやAzure ADとの連携といった独自の強みもあります。
- ストレージクラス/ティア: どちらもアクセス頻度に応じた複数のストレージクラス(標準、低頻度アクセス、アーカイブなど)を提供し、コスト最適化が可能です。名称やティアの数に違いがありますが、基本的な機能は似ています。
- 整合性モデル: S3は新規オブジェクト書き込みに対して「結果整合性」(後に強い整合性になった部分あり)でしたが、現在は強い整合性を提供しています。Blob Storageはデフォルトで強い整合性を提供します。
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ブロックストレージ:
- AWS: EBS (Elastic Block Store)
- Azure: Disk Storage
- 比較:
- 用途: どちらも仮想マシン(EC2/VMs)にアタッチして使用する、永続的なブロックレベルのストレージです。OSのインストールやアプリケーションデータ保存に利用されます。
- タイプ: SSDベース(汎用、プロビジョンドIOPS)やHDDベースなど、パフォーマンスとコストの異なる複数のタイプを提供しています。どちらもスナップショット機能や暗号化機能を備えています。
- パフォーマンス: 特定のIOPSやスループット要件に応じて適切なタイプを選択できます。どちらも高いパフォーマンスを発揮しますが、ユースケースに応じて詳細なベンチマーク比較が必要です。
-
ファイルストレージ:
- AWS: EFS (Elastic File System)
- Azure: Azure Files, Azure NetApp Files
- 比較:
- マネージドサービス: EFSはNFSプロトコルに対応したマネージドファイルシステムです。複数のEC2インスタンスから同時にアクセスできます。Azure FilesはSMBプロトコルとNFSプロトコルに対応したマネージドファイル共有です。Windows共有フォルダのように利用できます。Azure NetApp Filesは、より高性能でエンタープライズクラスのNFS/SMBファイルストレージが必要な場合に利用されます。
- プロトコル: Azure FilesがSMBとNFSの両方に対応している点が特徴です。既存のファイルサーバーからの移行において、SMBサポートは重要です。EFSは主にNFSです。
- パフォーマンスとコスト: EFSはアクセス量に応じて自動的にスケールする従量課金制です。Azure Filesは容量ベースのプロビジョニングとトランザクションベースの課金があります。Azure NetApp Filesは高性能ですがコストも高くなります。
-
アーカイブストレージ:
- AWS: Glacier, S3 Glacier Deep Archive
- Azure: Archive Storage
- 比較:
- 用途: 長期間データを保管し、アクセス頻度が非常に低いデータの保存に特化しており、コストが非常に安いのが特徴です。バックアップやコンプライアンス目的のデータ保管に適しています。
- 取り出し時間/コスト: GlacierやArchive Storageからのデータ取り出しには時間がかかり、取り出し量に応じた費用も発生します。取り出し時間とコストはティアによって異なります(例: S3 Glacier Deep Archiveは取り出しに数時間かかるが最も低コスト)。Azure Archive Storageも同様の特性を持ちます。
3. データベース
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リレーショナルデータベース (RDBMS):
- AWS: RDS (Relational Database Service), Aurora
- Azure: Azure SQL Database, Azure SQL Managed Instance, Azure Database for MySQL/PostgreSQL/MariaDB
- 比較:
- サポートDBエンジン: AWS RDSはPostgreSQL, MySQL, MariaDB, Oracle, SQL Serverをサポートしています。AzureはAzure SQL Database/Managed Instance(SQL Server)、Azure Database for MySQL/PostgreSQL/MariaDBとしてそれぞれサービスを提供しています。Microsoft製品であるSQL Serverに関しては、Azureの方がより多様なサービス形態(Database, Managed Instance, VM上のSQL Server)を提供しており、オンプレミスからの移行オプションが豊富です。
- マネージドレベル: どちらもパッチ適用、バックアップ、フェイルオーバーといった管理タスクを自動化するマネージドサービスです。Azure SQL Managed Instanceは、SQL Serverのインスタンスレベルの互換性が高く、既存アプリケーションの変更を最小限に抑えたい場合に有利です。
- 高性能オプション: AWS Auroraは、MySQL/PostgreSQL互換でありながら、高いパフォーマンスと可用性を実現したAWS独自のサービスです。Azure Synapse Analyticsの一部としてもSQLプール(旧SQL Data Warehouse)がありますが、これはデータウェアハウス向けです。
-
NoSQLデータベース:
- AWS: DynamoDB
- Azure: Cosmos DB
- 比較:
- 機能: DynamoDBはキーバリューおよびドキュメントデータベースです。非常に高いパフォーマンスとスケーラビリティが特徴です。Cosmos DBは、Microsoftが開発したグローバル分散型マルチモデルデータベースです。キーバリュー、ドキュメント、グラフ、カラム指向など、複数のデータモデルをサポートし、異なるAPI(SQL, MongoDB, Cassandra, Tables, Gremlin)でアクセスできる点が大きな特徴です。
- グローバル分散: Cosmos DBは設計当初からグローバル分散を考慮しており、複数のリージョンに簡単にデータを複製し、低遅延でアクセスできる機能が強力です。DynamoDBもグローバルテーブル機能で分散配置が可能ですが、Cosmos DBの分散機能はより柔軟で洗練されています。
- APIサポート: Cosmos DBはMongoDB APIなどをサポートするため、既存のMongoDBアプリケーションからの移行が比較的容易です。
-
データウェアハウス:
- AWS: Redshift
- Azure: Azure Synapse Analytics
- 比較:
- 機能: どちらも大量の構造化データを分析するためのマネージド型データウェアハウスサービスです。大規模な分析クエリを高速に実行できます。
- 統合: Azure Synapse Analyticsは、データウェアハウス機能(SQLプール)だけでなく、Apache Sparkベースのビッグデータ処理、データ統合(Pipeline)、監視、管理機能を統合したプラットフォームとして提供されています。データレイク(Azure Data Lake Storage)との連携も緊密です。Redshiftも周辺サービス(Redshift Spectrum, Redshift MLなど)と連携しますが、Synapse Analyticsはより包括的な分析プラットフォームを目指しています。
4. ネットワーキング
-
仮想ネットワーク:
- AWS: VPC (Virtual Private Cloud)
- Azure: VNet (Virtual Network)
- 比較:
- 基本機能: どちらもクラウド内に論理的に隔離されたネットワーク環境を構築し、サブネット分割、ルーティング設定、ファイアウォール設定(セキュリティグループ/ネットワークセキュリティグループ)を行うことができます。機能的には非常に似通っています。
- 名称と概念: VPCは「リージョン内」のネットワーク、VNetは「リージョン内」のネットワークという基本的な考え方は同じです。AWSのサブネットは可用性ゾーンと紐づく一方、AzureのサブネットはVNet内の論理的な区分けであり、可用性ゾーンはVM自体で選択するという違いがあります。
-
ロードバランサー:
- AWS: ELB (Elastic Load Balancing) – ALB, NLB, GLB, CLB
- Azure: Azure Load Balancer (Basic/Standard), Azure Application Gateway, Azure Front Door
- 比較:
- タイプ: AWSはアプリケーション層 (ALB)、ネットワーク層 (NLB)、ゲートウェイロードバランサー (GLB)、旧世代 (CLB) と多様なタイプを提供しています。Azure Load Balancerは主にネットワーク層 (レイヤー4) のロードバランシングを提供します。Azure Application Gatewayはアプリケーション層 (レイヤー7) のロードバランシングに特化しており、WAF機能も搭載できます。Azure Front Doorはグローバルなレイヤー7ロードバランサーで、CDN機能も兼ね備えます。
- 機能: ALB/Application GatewayはHTTP/SヘッダーベースのルーティングやSSLオフロード、WebSocketなど、高度なアプリケーション層の機能を提供します。NLB/Azure Load Balancer (Standard) はよりシンプルなTCP/UDPレベルでの高パフォーマンスな負荷分散に適しています。
-
DNS:
- AWS: Route 53
- Azure: Azure DNS
- 比較:
- 機能: どちらもマネージド型のDNSサービスで、ドメイン登録、ゾーン管理、様々なルーティングポリシー(シンプル、重み付け、遅延ベース、位置情報ベースなど)をサポートします。
- 付加価値: Route 53は、ドメイン登録サービスやヘルスチェックに基づいた自動フェイルオーバーといった機能も提供しており、DNSサービスとしての歴史と機能の豊富さでやや優位性があります。
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CDN (Content Delivery Network):
- AWS: CloudFront
- Azure: Azure CDN
- 比較:
- 機能: どちらも静的コンテンツや動的コンテンツをエッジロケーションにキャッシュし、ユーザーに低遅延で配信するサービスです。ウェブサイトの表示速度向上やオリジンサーバーの負荷軽減に貢献します。
- プロバイダー: Azure CDNはMicrosoft自身が提供するエッジネットワークに加え、AkamaiやVerizonといった主要CDNプロバイダーのネットワークを選択できる点が特徴です。CloudFrontはAWS自身のエッジネットワークを利用します。
5. AI/ML
- AWS: SageMaker, Rekognition, Comprehend, Translate, Lexなど
- Azure: Azure Machine Learning, Cognitive Services, Bot Service, Databricksなど
- 比較:
- 統合プラットフォーム: SageMaker (AWS) と Azure Machine Learning (Azure) は、機械学習モデルの準備、構築、トレーニング、デプロイ、管理をエンドツーエンドでサポートする統合プラットフォームです。どちらもJupyterノートブック環境や自動ML (AutoML) 機能などを提供しています。SageMakerはサービスの細分化が進んでおり、特定のタスクに特化した多くの機能を提供しています。Azure Machine Learningは比較的シンプルに統合されています。
- 事前学習済みモデル: AWSはRekognition (画像)、Comprehend (自然言語)、Translate (翻訳)、Lex (会話) など、特定のAIタスク向けのAPIベースのサービスを多数提供しています。AzureもCognitive Servicesとして、Vision (画像)、Speech (音声)、Language (言語)、Search (検索)、Decision (判断) といったカテゴリで豊富なAPIを提供しています。MicrosoftはAzure Cognitive Servicesの提供に力を入れており、種類が豊富で使いやすいという評価もあります。
- データ分析基盤連携: どちらも、データレイクやデータウェアハウスサービス(S3/Data Lake Storage, Redshift/Synapse Analytics)と連携し、大規模なデータを用いたML開発をサポートします。Azure Databricksは、Apache Sparkベースの高性能分析プラットフォームとして、大規模データ処理とML開発の両方に利用できます。
6. 開発者ツール
- AWS: CodeCommit, CodePipeline, CodeBuild, CodeDeploy, CloudFormation
- Azure: Azure DevOps (Repos, Pipelines, Boards, Test Plans, Artifacts), ARM Templates
- 比較:
- CI/CD: AWSはCodeCommit (Gitリポジトリ)、CodeBuild (ビルド)、CodeDeploy (デプロイ)、CodePipeline (パイプライン orchestration) といった独立したサービス群でCI/CDパイプラインを構成します。AzureはAzure DevOpsという統合サービスの中に、Azure Repos (Git/TFVCリポジトリ)、Azure Pipelines (CI/CDパイプライン)、Azure Boards (プロジェクト管理) などの機能がまとめられています。Microsoft製品(Visual Studio, GitHub)との連携が強力です。
- Infrastructure as Code (IaC): AWSはCloudFormationが主要なIaCツールですが、CDK (Cloud Development Kit) やTerraformといったサードパーティ製ツールも広く利用されています。AzureはARM Templatesが標準のIaCツールです。こちらもTerraformが広く利用されています。
- 統合性: Azure DevOpsは、リポジトリからビルド、テスト、デプロイ、プロジェクト管理までを一つのプラットフォームで提供するため、開発チームにとって使いやすい場合があります。AWSのCodeシリーズは個々のサービスは強力ですが、連携設定が必要になります。
7. セキュリティ、ID管理
- AWS: IAM, WAF, Security Hub, KMS
- Azure: Azure AD, Security Center, Azure Firewall, Key Vault
- 比較:
- ID管理: AWS IAMはAWSリソースへのアクセス制御に特化しています。ユーザー、グループ、ロール、ポリシーを定義します。Azure ADは、Azureリソースだけでなく、Office 365や多数のSaaSアプリケーション、オンプレミスのActive Directoryとの連携によるシングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)といった、より包括的なIDおよびアクセス管理機能を提供します。企業の既存Active Directoryとの連携が重要な場合、Azure ADは強力な選択肢となります。
- セキュリティ管理: AWS Security Hubは、AWSアカウント全体のセキュリティ状態を統合的に表示し、セキュリティアラートやコンプライアンスチェックの結果を集約します。Azure Security Center (現在はMicrosoft Defender for Cloudの一部) は、Azureリソースだけでなく、オンプレミスや他のクラウド(AWS, GCP)のワークロードのセキュリティポスチャ管理、脅威防御、対応策を提供します。
- WAF: AWS WAFとAzure Application GatewayのWAF機能は、一般的なウェブの脆弱性(SQLインジェクション、XSSなど)からアプリケーションを保護します。機能的には類似していますが、詳細なルール設定やマネージドルールの提供元に違いがあります。
- キー管理: AWS KMSとAzure Key Vaultは、暗号化キーやシークレット(パスワード、接続文字列など)を安全に保管・管理するためのサービスです。どちらもHSM (Hardware Security Module) をバックエンドに使用し、高いセキュリティを提供します。
8. 管理、運用
- AWS: CloudWatch, Systems Manager, Config
- Azure: Azure Monitor, Azure Automation, Azure Policy, Azure Resource Manager
- 比較:
- 監視: CloudWatch (AWS) と Azure Monitor (Azure) は、リソースの使用状況、パフォーマンスメトリック、ログデータを収集・分析し、アラームを設定できる監視サービスです。どちらもサービス連携により包括的な監視が可能です。
- 自動化: AWS Systems Managerは、EC2やオンプレミスサーバーのパッチ適用、設定管理、コマンド実行などを自動化します。Azure Automationは、Runbookによるタスク自動化、構成管理、アップデート管理などの機能を提供します。
- リソース管理/IaC: AWS CloudFormationとAzure Resource Manager (ARM) は、テンプレートを使用してクラウドインフラをコードとして定義し、デプロイ、更新、削除を自動化するサービスです。ARMはAzureの全てのリソースを管理する基盤となっており、Policy機能と組み合わせてリソースのガバナンスを強制できます。
9. ハイブリッドクラウド
- AWS: Outposts, Wavelength, Local Zones
- Azure: Azure Stack (Hub, HCI, Edge), Azure Arc
- 比較:
- オンプレミス拡張: AWS Outpostsは、AWSインフラストラクチャを顧客のオンプレミスデータセンターに設置し、そこでEC2やS3といったAWSサービスを実行できるようにするサービスです。Azure Stack Family (Hub, HCI, Edge) は、オンプレミス環境でAzureサービスの一部を実行するためのハードウェアとソフトウェアの統合システムです。Azure Stackは、特定のハードウェアパートナーを通じて提供されるアプライアンスであるのに対し、OutpostsはAWSが設計・提供するラックです。
- ハイブリッド管理: Azure Arcは、オンプレミスや他のクラウドプロバイダー(AWS, GCP)上のサーバー、Kubernetesクラスター、データサービスなどをAzure上で一元管理できるようにするサービスです。Azure Portalを通じて、これらのリソースをAzureリソースとして管理し、Azureの監視、セキュリティ、Policyなどのサービスを適用できます。AWSにはAzure Arcに直接相当するサービスはありませんが、Systems ManagerやCloudWatch Agentなどを用いてオンプレミスリソースの一部を管理することは可能です。Azure Arcのハイブリッド戦略への注力は顕著です。
料金体系の比較
クラウドの利用料金は、サービス選定において非常に重要な要素です。AWSとAzureの料金体系は基本的な考え方は似ていますが、詳細な部分に違いがあります。
- 基本モデル: どちらも基本的に従量課金制です。利用したリソースの種類(仮想マシン、ストレージ容量、データ転送量など)と量、時間に応じて課金されます。
- 仮想マシン (VM) の課金:
- オンデマンドインスタンス/VMs: 利用した時間(分または秒)に応じて課金。最も柔軟ですが、コストは最も高くなります。
- リザーブドインスタンス (RI)/Azure Reserved Virtual Machine Instances: 1年または3年の利用を確約することで、オンデマンド料金から大幅な割引(最大7割程度)が得られます。利用量が一定しているワークロードに適しています。
- スポットインスタンス/Spot VMs: 未使用のキャパシティを非常に安価に利用できますが、市場価格が上昇すると中断される可能性があります。バッチ処理など、中断されても問題ないワークロードに適しています。
- 比較: 割引率は利用状況や期間によって変動するため、一概にどちらが安いとは言えません。ワークロードの特性に合わせて最適な購入オプションを選択することが重要です。Azure Hybrid Benefitは、既存のWindows Server/SQL ServerライセンスをAzure VMに持ち込むことで、VMの料金自体を大幅に削減できるため、Microsoftライセンスを多く保有する企業にとっては大きなメリットとなります。
- ストレージの課金: ストレージ容量、操作回数、データ転送量によって課金されます。オブジェクトストレージ(S3/Blob Storage)は、アクセス頻度に応じた異なるティアを選択することでコストを最適化できます。
- データ転送費用: クラウドからインターネットへのデータ転送(アウトバウンド)は、どちらも基本的に有料です。リージョン内やアベイラビリティゾーン間のデータ転送も課金される場合があります。クラウドへのデータ転送(インバウンド)は基本的に無料です。データ転送量はアプリケーションアーキテクチャやユーザーの所在地によって大きく変動するため、考慮が必要です。一般的に、アウトバウンドのデータ転送費用は無視できないコストになることがあります。
- 無料利用枠: どちらも、特定のサービスを一定量まで無料で利用できる無料利用枠を提供しています。クラウドを試したり、小規模なアプリケーションを運用したりするのに役立ちます。
- コスト管理ツール: AWS Cost ExplorerやAzure Cost Management + Billingといったツールを提供しており、利用状況やコストの内訳を可視化し、予算設定や予測を行うことができます。これらのツールを活用してコストを最適化することが重要です。
- 全体的な傾向: 特定のサービスや構成においては、どちらかのプラットフォームが安価になる場合があります。例えば、Windows ServerやSQL Serverのライセンスを多く持つ場合はAzure Hybrid Benefitが強力です。LinuxやOSSベースのワークロード、特定の先端サービスにおいてはAWSが優位な場合もあります。重要なのは、個々のサービス料金だけでなく、システム全体のアーキテクチャに基づいて総コストを試算することです。また、割引オプション(リザーブドインスタンス、Savings Plansなど)や無料利用枠、データ転送費用も考慮に入れる必要があります。
サポート体制の比較
クラウド環境を安定して運用するためには、ベンダーによるサポート体制も重要な選定ポイントです。
- サポートプラン: どちらも無料(ベーシック)プランから、開発者、ビジネス、エンタープライズといった有料プランを提供しています。有料プランでは、より迅速な応答時間、技術サポートの範囲拡大、専任のテクニカルアカウントマネージャー(TAM)によるプロアクティブなサポートなどが提供されます。
- サポート内容: 有料サポートでは、技術的な問題に関する問い合わせ、ベストプラクティスに関する助言、アーキテクチャレビューなどが受けられます。エンタープライズプランでは、大規模な障害発生時の対応、コンプライアンスに関する支援なども含まれる場合があります。
- コミュニティサポート: どちらも活発な開発者コミュニティ、フォーラム、ドキュメントが充実しています。基本的な問題や一般的な疑問は、これらのリソースで解決できることが多いです。
- エンタープライズ向け: Azureは、Microsoftの長年のエンタープライズ顧客との関係を背景に、大規模組織向けのサポートや契約条件において強みを持つ場合があります。専任のTAMや高度なエスカレーション体制などが整備されています。AWSもエンタープライズサポートを提供しており、大企業顧客への対応経験は豊富です。
- 日本語サポート: どちらも日本語によるサポートを提供していますが、サポートレベルやプランによって対応範囲や時間が異なります。海外ベンダーのクラウドサービスを利用する上で、日本語での技術的なやり取りの円滑さは重要な要素です。
導入事例/得意領域
AWSとAzureはどちらもあらゆる業界、あらゆる規模の企業に利用されていますが、それぞれ特に強みを発揮する領域があります。
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AWS:
- スタートアップ/Webサービス: サービス数が非常に豊富で、新しいテクノロジーや開発者向けの機能が充実しているため、アジリティを重視するスタートアップやWebサービス企業に多く利用されています。
- 幅広い業界: eコマース、メディア、エンターテイメント、製薬、自動車など、あらゆる業界で利用されており、特定の業界に特化せず、幅広いユースケースに対応しています。
- クラウドネイティブ: サーバーレス、コンテナ、マイクロサービスといったクラウドネイティブなアーキテクチャの構築事例やノウハウが豊富です。
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Azure:
- エンタープライズ: 既存のMicrosoft製品(Windows Server, SQL Server, Active Directory, Office 365など)を多く利用している大企業や政府機関に特に強いです。既存IT資産のクラウド移行やハイブリッドクラウド構築の選択肢として選ばれることが多いです。
- 金融、医療、公共機関: 厳格なコンプライアンスや規制要件に対応するための機能や認証取得に力を入れており、これらの業界での採用が進んでいます。
- ハイブリッドクラウド: オンプレミスとの連携を重視する企業にとって、Azure ArcやAzure Stackといったハイブリッドクラウド機能は大きな魅力となります。
AWSとAzureの選び方
AWSとAzureのどちらを選ぶべきか、あるいは両方を利用するマルチクラウドを選択すべきかは、企業の個別の状況によって判断が必要です。以下の観点を考慮して、自社にとって最適なプラットフォームを検討しましょう。
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既存システムとの親和性:
- Microsoft製品を多く利用しているか?: Windows Server、SQL Server、Active DirectoryなどがIT基盤の中心である場合、Azureは非常に親和性が高く、移行や運用が容易です。Azure Hybrid Benefitによるライセンスコスト削減も大きなメリットです。
- オープンソースや特定のミドルウェアが多いか?: Linuxベース、特定のOSSデータベース(PostgreSQL, MySQLなど)、特定のWebサーバーやミドルウェアなどを多く利用している場合、AWSはこれらの技術への対応が早く、幅広い選択肢と豊富なドキュメント/コミュニティ情報があります。もちろんAzureもOSS対応を進めていますが、歴史的な蓄積でAWSに一日の長がある分野もあります。
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チームの技術スキルセット:
- チームにAWSまたはAzureの経験者が多いか?: チームのエンジニアがどちらかのプラットフォームに慣れている場合、そのプラットフォームを選択することで、スムーズな導入と運用が期待できます。新しいスキルを習得するコストや時間を考慮に入れる必要があります。
- Microsoft製品の管理経験者が多いか?: Windows ServerやSQL Serverの管理経験者はAzure VMやAzure SQL Databaseに適応しやすい傾向があります。
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ハイブリッドクラウド戦略の必要性:
- オンプレミス環境との連携が必須か?: 全てをすぐにクラウドに移行するのではなく、オンプレミスとクラウドを連携させて運用するハイブリッドクラウドが必要な場合、AzureはAzure ArcやAzure Stackといった強力な機能を提供しており、優位性があります。AWS Outpostsも同様の機能を提供しますが、Azureのハイブリッド戦略はより幅広いシナリオに対応しています。
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特定のサービス要件:
- 特定のユニークなサービスが必要か?: 例えば、グローバルに分散されたマルチモデルNoSQLデータベースが必要ならAzure Cosmos DB、特定の高度なAIサービスが必要ならAWS SageMakerの特定の機能、といったように、自社のコアビジネス要件を満たす独自のサービスがある場合は、そのプラットフォームが有力な候補となります。
- 特定の業界向けサービスや認証が必要か?: 金融、医療、公共など、特定の業界に特化したコンプライアンス要件や認証が必要な場合、両者が取得している認証や提供するサービス内容を確認する必要があります。
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コスト:
- 総保有コスト (TCO) の試算: 単純なサービス料金の比較だけでなく、既存ライセンスの活用(Azure Hybrid Benefit)、割引オプション(RI, Savings Plans)、データ転送費用、運用管理コストなどを全て含めたTCOを試算することが重要です。特定のワークロードに対して両者で見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
- 価格変動や割引戦略: どちらのベンダーも価格改定や新しい割引プランを頻繁に発表します。長期的なコスト予測には、これらの動向も考慮に入れる必要があります。
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サポート要件:
- どのレベルのサポートが必要か?: ミッションクリティカルなシステムであれば、迅速な応答時間や専任のサポートが必要になります。両者のサポートプランの内容とコストを比較検討します。
- 日本語サポートの質: 日本語での技術的なやり取りのしやすさも考慮に入れるべき点です。
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規制・コンプライアンス要件:
- 特定の業界規制や地理的な要件: 金融、医療、政府機関など、特定の規制や、データの物理的な保管場所に関する要件がある場合、両者が提供するリージョン、認証、および関連サービスが要件を満たすかを確認します。
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ベンダーロックインへの懸念:
- 特定のクラウドに深く依存することによるベンダーロックインをどの程度避けたいかによっても選択が変わります。共通技術(Kubernetes, OSSデータベースなど)を多く利用することで、将来的に他のクラウドへの移行を容易にする設計も可能です。Cosmos DBのように複数のAPIをサポートするサービスは、ある程度のロックインを回避できる設計要素を含んでいます。
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マルチクラウド戦略:
- 両方を利用する選択肢: 単一のプラットフォームに絞らず、AWSとAzureのそれぞれの強みを活かして、ワークロードやアプリケーションごとに最適なプラットフォームを選択するマルチクラウド戦略も広く採用されています。例えば、WebアプリケーションはAWS、既存Microsoft資産はAzureといった使い分けです。運用管理は複雑になりますが、ベンダーロックイン回避やリスク分散、特定の最高性能サービス利用といったメリットがあります。
まとめ
Amazon Web Services (AWS) と Microsoft Azure は、世界のクラウド市場を牽引する二大巨頭であり、それぞれに独自の強みと特徴を持っています。
AWSは、長年の歴史に裏打ちされた圧倒的なサービス数と成熟したエコシステム、開発者中心の豊富な機能が特徴です。あらゆる分野で幅広い選択肢を提供しており、特にクラウドネイティブな開発やアジリティを重視する企業に適しています。
一方、Azureは、Microsoftの強力なエンタープライズ顧客基盤と既存Microsoft製品との親和性、そしてハイブリッドクラウド戦略への注力が最大の特徴です。Active Directoryとの連携やAzure Hybrid Benefitなど、既存のMicrosoft資産を活用したい企業や、オンプレミスとの連携を重視する企業にとって非常に魅力的な選択肢となります。
どちらのプラットフォームが優れているという単純な結論はありません。重要なのは、自社のビジネス要件、既存のIT環境、技術スキル、コスト戦略、将来の展望などを総合的に評価し、最適なプラットフォームを選択することです。
本記事で解説した各サービスカテゴリの比較、料金体系、サポート体制、そして選び方の観点(親和性、スキル、ハイブリッド、コスト、規制など)が、皆様のクラウド選定の参考になれば幸いです。多くの場合、ワークロードや部門ごとに最適なプラットフォームが異なることもあり、マルチクラウド戦略も現実的な選択肢となり得ます。
クラウドコンピューティングの世界は常に進化しています。AWSもAzureも、新しいサービスを発表し、既存サービスを改善し続けています。この競争が、ユーザーである私たちにとってより良いサービスとイノベーションをもたらす原動力となっています。自社のニーズに合わせて両者を比較検討し、最適なクラウドジャーニーを歩み始めてください。