Azure AI Fundamentalsを徹底紹介!概要から学習法、資格まで
はじめに:なぜ今、AIとAzure AI Fundamentalsなのか
現代において、人工知能(AI)はもはやSFの世界の話ではなく、私たちの生活やビジネスに深く浸透し、変革をもたらす不可欠な技術となっています。スマートフォンの音声アシスタント、オンラインショッピングの推薦システム、医療分野での画像診断、製造業における不良品検出など、枚挙にいとまがありません。AI技術の進展は目覚ましく、多くの企業が競争力を維持・強化するためにAIの活用を模索しています。
しかし、AIと聞くと、「なんだか難しそう」「専門的な数学やプログラミングの知識が必要なのでは?」と感じ、敬遠してしまう方も少なくありません。確かに、AIの最先端の研究開発には高度な専門知識が求められますが、AIを活用したり、その基本的な概念を理解したりすることは、多くの人にとって十分に可能です。
特に、クラウドプラットフォームの進化により、AIの専門家でなくとも、強力なAIサービスやツールを比較的容易に利用できるようになりました。その代表的な例が、Microsoftが提供するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」です。Azureは、機械学習、コンピュータービジョン、自然言語処理、会話型AIなど、幅広いAIサービスを提供しており、これらのサービスを活用することで、専門知識がなくてもAI機能をアプリケーションやサービスに組み込むことができます。
このような背景から、AIの基礎知識とAzure上でのAIサービスの利用方法を体系的に学ぶことの重要性が増しています。そこで注目されるのが、Microsoftが提供する認定資格「Azure AI Fundamentals (AI-900)」です。この資格は、AIや機械学習に関する基本的な概念と、Azure上で利用できる主要なAIサービスについて、基礎レベルの知識を証明するものです。
この記事は、Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格について、「そもそもAI Fundamentalsとは何か」という概要から、試験範囲の詳細、効果的な学習方法、そして資格取得によって得られるメリットまで、徹底的に解説することを目的としています。AIに興味はあるけれど、どこから学び始めれば良いか分からない方、AzureのAIサービスについて体系的に学びたい方、AI-900資格の取得を目指している方にとって、この記事が確かな一歩を踏み出すためのガイドとなることを願っています。
さあ、AIの世界へ、そしてAzure AI Fundamentalsの世界へ、一緒に旅を始めましょう。
Azure AI Fundamentals (AI-900) の概要
AI-900資格が目指すもの
Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格は、AIと機械学習に関する基礎知識、そしてMicrosoft Azureが提供するAI関連サービスについて、概念レベルの理解を証明することを目的としています。この資格は、AIの技術的な詳細や深い専門知識よりも、AIが何であるか、どのような種類の問題に適用できるか、そしてAzure上で利用可能な主要なAIサービスがそれぞれどのような機能を提供し、どのようなワークロードに適しているのか、といった全体像の把握に重点を置いています。
対象者
この資格は、AIや機械学習の経験がない、あるいは少ない方を主な対象としています。具体的には以下のような方々です。
- AIに興味があるビジネスプロフェッショナル: AIが自社のビジネスにどのように貢献できるかを知りたい、AIプロジェクトに関わる可能性のある方。
- テクノロジー分野の初心者: AIという新しい分野について、基礎から体系的に学びたい方。
- 学生: 将来AI関連分野に進みたいと考えている方、AIの基本的な概念を理解したい方。
- 開発者やデータ専門家: AIに関する深い経験はないが、AzureのAIサービスを活用したいと考えている方。
- IT意思決定者: AI技術の導入を検討する際に、その基本的な特性や可能性を理解しておきたい方。
この資格を取得するために、プログラミング経験やデータサイエンスに関する高度な知識は必須ではありません。ただし、一般的なITリテラシーやクラウドコンピューティング(特にAzureの基本的な概念)について、ある程度の知識があると学習がよりスムーズに進む可能性があります(Azure Fundamentals AZ-900資格で得られるような知識が役立ちます)。
試験範囲の全体像
AI-900試験は、以下の主要な4つのパート(以前は5つのパートでしたが、更新により統合されています)から構成されています。それぞれのパートで、AIの基本的な概念、AzureのAIサービス、そして関連する技術について問われます。
- AIの基本原則とワークロードの説明 (Describe AI workloads and considerations):
- 一般的なAIワークロード(機械学習、コンピュータービジョン、自然言語処理、会話型AI)の定義とユースケース。
- AIの倫理的および責任ある考慮事項。
- Azureでの機械学習の基本原則の説明 (Describe fundamental principles of machine learning on Azure):
- 機械学習の基本概念(教師あり学習、教師なし学習、ディープラーニングなど)。
- 回帰と分類、クラスタリングといった一般的な機械学習タスク。
- 機械学習モデルの評価方法。
- Azure Machine Learningの概要。
- Azureでのコンピュータービジョンの基本原則の説明 (Describe fundamental principles of computer vision on Azure):
- コンピュータービジョンのワークロード(画像分類、物体検出、顔認識、OCRなど)。
- Azureのコンピュータービジョン関連サービス。
- Azureでの自然言語処理と会話型AIの基本原則の説明 (Describe fundamental principles of Natural Language Processing (NLP) on Azure):
- 自然言語処理のワークロード(感情分析、キーフレーズ抽出、エンティティ認識、音声認識、翻訳など)。
- 会話型AIのワークロード(チャットボット)。
- Azureの自然言語処理および会話型AI関連サービス。
これらのパートは、それぞれ独立した領域でありながら、AIという大きなテーマの中で相互に関連しています。試験では、これらの概念やサービスについて、具体的な利用シーンや特性に関する理解が問われます。
この資格を取得するメリット
Azure AI Fundamentals資格を取得することで、以下のようなメリットが得られます。
- AIの基本概念を体系的に理解できる: AI、機械学習、ディープラーニングといった基本的な用語や概念について、曖昧な理解から脱却し、明確な定義と関連性を理解できます。
- Azure AIサービスの全体像を把握できる: Azureが提供する豊富なAIサービス群の中から、それぞれのサービスがどのような機能を提供し、どのような目的に適しているのかを知ることができます。これにより、将来AIプロジェクトに関わる際に、適切なサービスを選択するための基礎ができます。
- キャリアの可能性を広げる: AIは多くの業界で求められるスキルです。AIの基礎知識を身につけることは、新しいキャリアパスを切り開く第一歩となります。特に、クラウドとAIの両方の基礎を理解していることは、現代のIT環境において大きな強みとなります。
- 他のAzure資格への足がかりとなる: AI-900は、Azureのより高度なAI関連資格(例: Azure Data Scientist Associate DP-100, Azure AI Engineer Associate AI-102)への入門として最適です。また、データ関連資格(DP-900)、開発者関連資格(AZ-204)、クラウド全般の資格(AZ-900)など、他のAzure資格を学習する上でも、AIの基礎知識は役立ちます。
- 自信を持ってAIについて語れるようになる: 体系的な学習を通じて、AIやAzure AIサービスについて、自信を持って説明したり議論したりできるようになります。
Azure AI Fundamentals資格は、AIの世界への扉を開く鍵であり、Azureという強力なプラットフォーム上でAIを活用するための確かな土台を築くための第一歩となります。
試験範囲の詳細解説
ここからは、AI-900試験の各パートについて、さらに詳しく解説していきます。試験で問われる可能性のある具体的な概念やサービスについて、その定義や役割、Azureにおける関連サービスなどを掘り下げて説明します。
パート1: AIの基本原則とワークロードの説明 (Describe AI workloads and considerations)
このパートでは、AIという分野の全体像を捉え、AIがどのような問題解決に利用されるのか、そしてAI開発や利用において考慮すべき倫理的な側面について学習します。
1. 一般的なAIワークロードの定義とユースケース
AIは様々なタスクを自動化したり、人間の知的な活動を模倣したりするために利用されますが、そのアプローチや応用分野によっていくつかの主要なワークロードに分類できます。AI-900では、以下の4つの主要なワークロードについて理解が必要です。
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機械学習 (Machine Learning – ML):
- 定義: 明示的にプログラムされることなく、データからパターンやルールを学習し、予測や意思決定を行う技術です。大量のデータを与え、そこから自ら学習するモデルを構築します。
- ユースケース:
- 顧客の購買履歴からの商品推薦(Amazonの「おすすめ商品」など)
- クレジットカード詐欺の検出
- 株価や売上の予測
- スパムメールのフィルタリング
- 製造ラインでの不良品検出
- Azureにおける関連サービス: Azure Machine Learning
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コンピュータービジョン (Computer Vision):
- 定義: 画像や動画の内容をコンピューターが理解・解釈できるようにする技術です。人間の視覚能力を模倣します。
- ユースケース:
- 画像内の物体の識別や検出(防犯カメラ映像からの人物・車両検出)
- 顔認識と分析(写真の人物タグ付け、感情分析)
- 手書きや印刷された文字の認識(OCR – Optical Character Recognition)
- 画像分類(犬か猫か、風景写真か人物写真かなど)
- 自動運転車における周囲環境の認識
- Azureにおける関連サービス: Azure Cognitive Services for Vision (Computer Vision, Custom Vision, Face, Form Recognizerなど)
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自然言語処理 (Natural Language Processing – NLP):
- 定義: 人間が日常的に使用する「自然言語」(日本語、英語など)をコンピューターが理解、解析、生成できるようにする技術です。
- ユースケース:
- 文章の感情分析(カスタマーレビューのポジティブ・ネガティブ判定)
- テキストからの重要な情報抽出(キーフレーズ抽出、エンティティ認識)
- 機械翻訳(Google翻訳など)
- 音声認識とテキスト化(議事録作成支援、音声入力)
- 要約や文章生成
- Azureにおける関連サービス: Azure Cognitive Services for Language (Text Analytics, Language Understanding (LUIS), QnA Makerなど)、Azure Speech Service, Azure Translator
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会話型AI (Conversational AI):
- 定義: 人間とコンピューターが自然な言葉で対話できるようにする技術です。チャットボットや仮想アシスタントなどが含まれます。
- ユースケース:
- カスタマーサポートチャットボット(FAQ応答、手続き案内)
- 社内ヘルプデスクボット
- スマートスピーカー(Alexa, Google Assistantなど)との対話
- タスク実行型ボット(会議室予約、情報検索など)
- Azureにおける関連サービス: Azure Bot Service, Azure Cognitive Services (特にLanguage Understanding (LUIS), QnA Maker, Speech Service)
これらのワークロードは、それぞれ異なる種類の問題に対応しますが、しばしば組み合わせて利用されます(例: 音声認識で会話をテキスト化し、NLPで意図を解析し、チャットボットとして応答を返す)。
2. AIの倫理的および責任ある考慮事項
AI技術の社会への浸透に伴い、その開発と利用における倫理的および責任ある側面が極めて重要視されています。AI-900でも、以下の主要な考慮事項について基礎的な理解が求められます。これらの原則は、Microsoftが提唱する「責任あるAI」の6つの原則に基づいています。
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公平性 (Fairness):
- 内容: AIシステムが、人種、性別、年齢、収入などの属性に関わらず、すべての人に対して公平な結果を提供するべきであるという原則です。訓練データに偏りがあると、特定のグループに対して不当な扱いをするモデルが構築される可能性があります。
- 考慮事項: 訓練データの多様性の確保、モデルのバイアス評価と低減手法。
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信頼性と安全性 (Reliability and Safety):
- 内容: AIシステムが意図した通りに機能し、予測可能で安全な振る舞いをすること。誤動作や予期せぬ結果が、人命や財産に損害を与えないようにすること。
- 考慮事項: モデルの頑健性テスト、異常検知、安全設計、継続的な監視と評価。
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プライバシーとセキュリティ (Privacy and Security):
- 内容: AIシステムが個人情報や機密データを適切に保護すること。データ収集、保存、処理、利用の各段階でプライバシーを侵害しないこと、悪意のある攻撃からシステムを保護すること。
- 考慮事項: データの匿名化・仮名化、アクセス制御、暗号化、セキュリティパッチ適用、GDPRなどのプライバシー規制遵守。
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包括性 (Inclusiveness):
- 内容: AIシステムが、多様なバックグラウンドを持つすべての人々にとって利用可能で、そのニーズに対応できること。障害を持つ人々や、様々な言語・文化を持つ人々への配慮。
- 考慮事項: アクセシビリティガイドラインへの準拠、多言語対応、多様なユーザーグループからのフィードバック収集。
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透明性 (Transparency):
- 内容: AIシステムがどのように機能し、なぜ特定の結果を出力したのかを、ユーザーや関係者が理解できるようにすること。特に、重要な判断に関わるAIについては、その決定根拠を説明できる「説明可能なAI (Explainable AI – XAI)」が求められます。
- 考慮事項: モデルの動作原理の説明、予測の根拠の提示、AIシステムの能力と限界の明確化。
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責任主体 (Accountability):
- 内容: AIシステムの開発、デプロイ、運用において、誰が責任を負うかを明確にすること。AIが問題を起こした場合に、責任の所在が不明確にならないようにすること。
- 考慮事項: ガバナンス体制の構築、社内ポリシーの策定、責任者の明確化、規制遵守。
これらの原則は、AI技術が社会に受け入れられ、信頼されるために不可欠です。AI-900試験では、これらの倫理的・責任ある側面について、基本的な理解があるかどうかが問われます。
パート2: Azureでの機械学習の基本原則の説明 (Describe fundamental principles of machine learning on Azure)
このパートでは、AIの最も広く利用されている分野である機械学習に焦点を当て、その基本的な概念とAzure上での実現方法について学習します。
1. 機械学習の基本概念
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教師あり学習 (Supervised Learning):
- 定義: 入力データと、それに対応する正しい出力(ラベル)のペアを含む「訓練データ」を用いてモデルを学習させる方法です。モデルは、入力データと出力の間の関係を学習します。
- 代表的なタスク:
- 回帰 (Regression): 数値の連続値を予測するタスクです。(例: 住宅価格予測、気温予測)
- 分類 (Classification): データを事前に定義されたカテゴリやクラスに分類するタスクです。(例: スパムメール判定、病気の診断、画像の内容分類)
- 代表的なアルゴリズム(AI-900では詳細な理解は不要ですが、名前を知っていると役立ちます): 線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン (SVM)、ニューラルネットワークなど。
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教師なし学習 (Unsupervised Learning):
- 定義: ラベルのないデータを用いて、データ自身の内部構造やパターンを発見することを目的とする学習方法です。
- 代表的なタスク:
- クラスタリング (Clustering): 似たデータポイントをグループ化するタスクです。(例: 顧客のセグメンテーション、文書のトピック分類)
- 次元削減 (Dimensionality Reduction): データの次元(特徴量の数)を減らすことで、データの可視化やノイズ除去を行うタスクです。(例: PCA – 主成分分析)
- アソシエーション分析 (Association Analysis): データ項目間の関連性や規則を発見するタスクです。(例: バスケット分析 – 「この商品を買った人は、この商品も買う」)
- 代表的なアルゴリズム: K-Means法 (クラスタリング)、PCA (次元削減) など。
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強化学習 (Reinforcement Learning):
- 定義: エージェントが環境の中で行動を選択し、その結果として得られる報酬を最大化するように学習する方法です。試行錯誤を通じて最適な行動戦略を見つけ出します。
- ユースケース: ゲームAI、ロボット制御、自動運転。
- (AI-900では基本的な概念に触れる程度です)
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ディープラーニング (Deep Learning):
- 定義: 多層構造を持つニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)を用いた機械学習の一種です。特に、画像、音声、テキストなどの複雑な非構造化データの扱いに強みを発揮します。教師あり学習、教師なし学習、強化学習のいずれのアプローチとも組み合わせて利用されます。
- ユースケース: 画像認識、音声認識、自然言語処理、生成AI。
2. 回帰と分類、クラスタリング
教師あり学習の主要なタスクである回帰と分類、および教師なし学習の代表的なタスクであるクラスタリングについて、その目的と入力・出力形式を明確に理解することが重要です。
- 回帰: 入力データに基づいて、数値(例: 75,000ドル、18.5度)を予測します。出力は連続的な数値です。
- 分類: 入力データに基づいて、事前に定義されたカテゴリ(例: スパム/非スパム、Aクラス/Bクラス/Cクラス、犬/猫/鳥)にデータを割り当てます。出力は離散的なカテゴリやクラスです。
- クラスタリング: ラベルのないデータセットの中から、類似性の高いデータポイントを集めてグループ(クラスター)を作成します。グループの数は事前に指定する場合も、アルゴリズムが自動的に決定する場合もあります。
3. 分類モデルと回帰モデルの評価
機械学習モデルを構築したら、その性能を評価する必要があります。評価指標は、タスク(分類か回帰か)によって異なります。
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分類モデルの評価指標:
- 精度 (Accuracy): 正しく分類できたデータポイントの割合。((真陽性+真陰性) / 全体)
- 適合率 (Precision): 「陽性」と予測したうち、実際に陽性だった割合。(真陽性 / (真陽性+偽陽性))
- 再現率 (Recall) または 感度 (Sensitivity): 実際に陽性だったデータポイントのうち、正しく「陽性」と予測できた割合。(真陽性 / (真陽性+偽陰性))
- F1スコア (F1-score): 適合率と再現率の調和平均で、両方のバランスを考慮した指標。
- 混同行列 (Confusion Matrix): 実際のクラスと予測したクラスの組み合わせを行列形式で示したもので、真陽性、真陰性、偽陽性、偽陰性の数が確認できます。
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回帰モデルの評価指標:
- 平均絶対誤差 (Mean Absolute Error – MAE): 実際の値と予測値の差の絶対値の平均。予測誤差の絶対値の平均的な大きさを表します。
- 平均二乗誤差 (Mean Squared Error – MSE): 実際の値と予測値の差の二乗の平均。大きな誤差に対してより敏感です。
- 二乗平均平方根誤差 (Root Mean Squared Error – RMSE): MSEの平方根。MAEと同様に誤差の平均的な大きさを表しますが、MSEと同様に大きな誤差を強調します。元の単位で誤差の大きさを解釈しやすい利点があります。
- 決定係数 (R-squared): モデルがどれだけデータの変動を説明できているかを示す指標。0から1の値を取り、1に近いほどモデルの当てはまりが良いとされます。
これらの評価指標がそれぞれ何を意味し、どのような場合に利用されるのかを理解することが重要です。
4. Azure Machine Learningの概要
Azure Machine Learning (Azure ML) は、機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイ、管理を行うためのエンドツーエンドのプラットフォームです。AI-900では、Azure MLの以下の基本的な機能やコンポーネントについて学習します。
- ワークスペース (Workspace): Azure MLを利用するための論理的なコンテナです。データ、モデル、実験、パイプラインなどを一元管理します。
- Azure Machine Learning designer: コーディングなしで機械学習モデルを構築できるドラッグ&ドロップ式のビジュアルツールです。データの準備、モデルの選択、トレーニング、評価などのステップをGUIで直感的に操作できます。
- 自動機械学習 (Automated ML – AutoML): データセットと目標指標を指定するだけで、様々なアルゴリズムとハイパーパラメータの組み合わせを自動的に試行し、最適なモデルを見つけ出してくれる機能です。モデル選択やチューニングの専門知識がなくても、高性能なモデルを効率的に構築できます。
- コンポーネントとパイプライン (Components and Pipelines): 機械学習のワークフロー(データ準備、トレーニング、評価など)を再利用可能な「コンポーネント」として定義し、それらを組み合わせて一連の処理の流れ「パイプライン」を構築できます。これにより、ワークフローの自動化や管理が容易になります。
- データストアとデータセット (Datastores and Datasets): 訓練データや評価データをAzureストレージなどから読み込むための機能です。データストアはストレージサービスへの接続情報を管理し、データセットは特定のデータファイルを指し示します。
- モデルの登録とデプロイ (Model Registration and Deployment): トレーニング済みのモデルを登録し、REST APIエンドポイントとしてデプロイすることで、他のアプリケーションから予測サービスとして利用可能にします(例: Azure Container Instances, Azure Kubernetes Service)。
AI-900では、これらの機能を使って具体的にどのようにモデルを構築・デプロイするかといった詳細な手順は問われませんが、「それぞれの機能がどのような目的で使われるのか」といった概念レベルの理解が求められます。特に、DesignerとAutoMLは、コーディング経験が少ない人でも機械学習を利用できるAzure MLの重要な機能として説明されます。
パート3: Azureでのコンピュータービジョンの基本原則の説明 (Describe fundamental principles of computer vision on Azure)
このパートでは、コンピュータービジョンという分野の基本的な概念と、Azureが提供する関連サービスについて学習します。Azureでは、Microsoft Cognitive Servicesの一部として、様々なコンピュータービジョン関連のAPIが提供されています。
1. コンピュータービジョンのワークロード
コンピュータービジョンは、画像を分析し、その内容を理解するための様々なタスクを含みます。AI-900では、以下の主要なワークロードについて理解が必要です。
- 画像分類 (Image Classification): 画像全体の内容に基づいて、事前に定義されたカテゴリに画像を分類するタスクです。(例: 猫の写真、犬の写真、風景写真)
- 物体検出 (Object Detection): 画像内に写っている特定の物体を検出し、その位置(バウンディングボックス)と種類を特定するタスクです。(例: 画像内のすべての車、人、信号機を検出する)
- セマンティックセグメンテーション (Semantic Segmentation): 画像中の各ピクセルが何を表しているか(例: 空、道路、建物、人など)を分類し、ピクセルレベルで領域を分割するタスクです。
- インスタンスセグメンテーション (Instance Segmentation): セマンティックセグメンテーションに加え、同じカテゴリに属する個々の物体(例: 画像中のそれぞれの車)を区別して領域分割するタスクです。
- 顔認識 (Face Recognition): 画像中の顔を検出し、その顔が誰であるか(特定の人物か、特定の人物のリストの中に含まれるかなど)を識別するタスクです。また、顔の属性(年齢、性別、感情など)を分析する機能も含まれます。
- 光学式文字認識 (Optical Character Recognition – OCR): 画像中に含まれるテキスト(手書きや印刷された文字)を認識し、編集可能なテキストデータに変換するタスクです。
- 画像分析 (Image Analysis): 画像の内容全般(タグ付け、キャプション生成、モデレートなど)を分析するタスクです。
AI-900では、これらのワークロードがどのような問題解決に利用されるのか、そしてそれぞれがどのような出力(例: 画像分類はラベル、物体検出はバウンディングボックスとラベル)を生成するのかを理解することが重要です。
2. Azureのコンピュータービジョン関連サービス
Azureでは、これらのコンピュータービジョンワークロードを実現するために、以下のCognitive Servicesが提供されています。これらのサービスは、事前にトレーニングされたモデルとして提供されるため、自分で機械学習モデルを構築する手間なく、APIを呼び出すだけで高度な画像分析機能を利用できます。
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Azure Cognitive Service for Vision (以前のComputer Vision):
- 一般的な画像分析機能を提供します。
- 主な機能:
- 画像分析 (Analyze Image): 画像にタグ付け(例: #tree, #mountain)、キャプション生成、カテゴリ分類を行います。成人向けコンテンツや暴力的なコンテンツの検出(モデレート)機能もあります。
- 物体検出 (Detect Objects): 画像内の一般的な物体を検出し、位置とラベルを返します。
- 顔検出 (Detect Faces): 画像内の顔を検出し、位置やランドマーク(目の位置など)を返します。顔認識機能は別のサービスで提供されます。
- OCR (Read API): 画像やPDFドキュメントに含まれるテキストを認識し、テキストデータとして抽出します。手書き文字や複雑なレイアウトのドキュメントにも対応しています。
- スマートトリミング (Generate Thumbnails): 画像の重要な領域を自動的に判断し、指定されたサイズでトリミングします。
- これらの機能は、REST APIまたはSDKを通じて利用できます。
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Azure Custom Vision:
- 独自の画像分類や物体検出モデルを、少量のカスタムデータセット(独自の製品画像など)を使ってトレーニングできるサービスです。ドラッグ&ドロップのインターフェースやAPIを通じて利用できます。
- 一般的な物体ではなく、特定の種類の物体(例: 自社製品の特定のモデル、特定の種類の植物)を認識させたい場合に適しています。
- モデルのトレーニング、評価、エクスポート、デプロイをサポートします。
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Azure Face:
- 顔関連の高度な機能に特化したサービスです。
- 主な機能:
- 顔検出: 画像中の顔を検出し、位置や属性(年齢、性別、感情、眼鏡、ひげなど)を分析します。
- 顔認識: 登録済みの人物リストの中から、画像中の顔が誰であるかを識別します。
- 類似顔検索: 複数の顔画像の中から、特定の顔に似ている顔を検索します。
- 顔の検証: 2つの顔画像が同じ人物のものであるかを確認します。
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Azure Form Recognizer (現在はAzure AI Document Intelligence):
- 請求書、領収書、注文書、身分証明書などのドキュメントから、キーと値のペア、テーブル、構造化されたデータなどの情報を自動的に抽出するサービスです。OCR機能と組み合わせて利用されます。
- 事前に定義されたモデル(請求書モデル、領収書モデルなど)や、独自のドキュメント形式に対応するためのカスタムモデルのトレーニングが可能です。
AI-900試験では、これらのサービスがどのような目的で使われ、どのような機能を提供しているか(例: 画像分類ならCustom Vision、一般的な物体検出やOCRならComputer Vision、個人の特定ならFaceサービスなど)を、具体的なユースケースと関連付けて理解しているかが問われます。
パート4: Azureでの自然言語処理と会話型AIの基本原則の説明 (Describe fundamental principles of Natural Language Processing (NLP) on Azure)
このパートでは、人間の言語をコンピューターが処理・理解する自然言語処理(NLP)と、それを利用した会話型AIの基本的な概念、そしてAzureが提供する関連サービスについて学習します。Azureでは、NLPや音声関連機能もCognitive Servicesの一部として提供されています。
1. 自然言語処理 (NLP) のワークロード
NLPは、テキストや音声といった自然言語データを分析し、そこから意味や情報を抽出、あるいは新しいテキストや音声を生成するための様々なタスクを含みます。AI-900では、以下の主要なNLPワークロードについて理解が必要です。
- 感情分析 (Sentiment Analysis): テキストが肯定的、否定的、中立のいずれの感情を表しているかを判断するタスクです。(例: カスタマーレビューやSNS投稿の感情分析)
- キーフレーズ抽出 (Key Phrase Extraction): テキストの中から、その内容を代表する重要なキーワードやフレーズを抽出するタスクです。(例: 記事の要約やタグ付けに利用)
- エンティティ認識 (Entity Recognition): テキストの中から、人名、組織名、地名、日付などの特定の種類の固有表現(エンティティ)を識別し、抽出するタスクです。(例: 文書からの重要情報の自動抽出)
- 言語検出 (Language Detection): 与えられたテキストがどの言語で書かれているかを判断するタスクです。
- 言語モデルと生成AI (Language Modeling and Generative AI): テキストデータを用いて言語の統計的構造や意味的な関係を学習し、新しいテキストを生成したり、文章の続きを予測したりするタスクです。最近注目されている大規模言語モデル (LLM) もこれに含まれます。
- 音声認識 (Speech to Text): 人間の音声をテキストデータに変換するタスクです。(例: 音声入力、議事録作成、字幕生成)
- 音声合成 (Text to Speech): テキストデータを人間の声のような音声に変換するタスクです。(例: 音声アシスタント、ナレーション生成)
- 翻訳 (Translation): ある言語のテキストや音声を、別の言語に変換するタスクです。
2. 会話型AIのワークロード
会話型AIは、NLPや音声処理技術を利用して、人間とコンピューターの間で自然な対話を実現するワークロードです。
- チャットボット (Chatbots): テキストベースまたは音声ベースでユーザーと対話するプログラムです。FAQ応答、情報提供、タスク実行などを行います。
- 仮想アシスタント (Virtual Assistants): チャットボットよりも広範な機能とより自然な対話能力を持つAIです。(例: Cortana, Siri, Alexa)
3. Azureの自然言語処理および会話型AI関連サービス
Azureでは、これらのNLPおよび会話型AIワークロードを実現するために、以下のCognitive Servicesなどが提供されています。
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Azure Cognitive Service for Language (以前のText Analytics, LUIS, QnA Makerなどが統合):
- 様々なNLP機能を提供します。
- 主な機能:
- 感情分析: テキストの感情を分析します。
- キーフレーズ抽出: テキストから重要なフレーズを抽出します。
- エンティティ認識: テキストから固有表現(人名、組織名など)を認識します。
- 言語検出: テキストの言語を検出します。
- 質問応答 (Question Answering – QnA): FAQペアや非構造化ドキュメントから知識ベースを構築し、ユーザーの自然言語の質問に対して適切な回答を返します。(以前のQnA Makerの機能を含む)
- 意図認識 (Intent Recognition): ユーザーの発話(Utterance)に含まれる「意図」(例: ホテルを予約したい、電車の遅延情報を知りたい)と、「エンティティ」(例: ホテル名、駅名、日付)を特定します。(以前のLUIS – Language Understanding Intelligent Serviceの機能を含む)
- 会話型言語理解 (Conversational Language Understanding – CLU): 意図認識やエンティティ認識を、より複雑な会話形式の入力に対応できるように拡張した機能です。
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Azure Speech Service:
- 音声関連の機能を提供します。
- 主な機能:
- 音声認識 (Speech to Text): 音声をテキストに変換します。リアルタイム処理や、特定のドメイン(医療、金融など)に特化したカスタム音声モデルの作成も可能です。
- 音声合成 (Text to Speech): テキストを自然な音声に変換します。様々な言語、声質、感情表現に対応しており、独自のカスタム音声を作成することも可能です。
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Azure Translator:
- テキストやドキュメントを異なる言語間で自動翻訳するサービスです。リアルタイム翻訳や、専門用語に対応するためのカスタム翻訳システムの構築も可能です。
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Azure Bot Service:
- チャットボットを構築、接続、管理するための統合プラットフォームです。様々なチャンネル(Webサイト、Microsoft Teams, Facebook, Slackなど)に対応しており、Cognitive Services(特にLanguage ServiceのQnAや意図認識)と連携して高度な対話機能を持つボットを開発できます。
- Bot Framework SDKやBot Framework Composerといった開発ツールも提供されていますが、AI-900では概念的な理解が中心です。
AI-900試験では、これらのNLPおよび会話型AIサービスが、どのような種類の自然言語処理タスクや会話型AIのシナリオに利用できるか(例: FAQボットならAzure Bot ServiceとLanguage ServiceのQnA機能、音声認識ならSpeech Service、多言語対応ならTranslatorなど)を理解しているかが問われます。特に、意図認識とエンティティ認識が、チャットボットがユーザーの発話を理解するための基本的な要素であることを理解することが重要です。
学習方法:AI-900合格へのロードマップ
Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格取得を目指す上で、効果的な学習方法は成功の鍵となります。ここでは、様々なリソースを活用した学習方法と、おすすめの学習計画について解説します。
公式リソースの活用
Microsoftが提供する公式リソースは、試験範囲を網羅しており、最も信頼性の高い情報源です。
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Microsoft Learn (AI-900 ラーニングパス):
- Microsoft Learnは、Microsoft製品やテクノロジーについて無料でインタラクティブに学べるプラットフォームです。AI-900向けのラーニングパスが提供されており、試験範囲の各パートに対応したモジュールが用意されています。
- 各モジュールは、概念の説明、簡単な知識チェック、演習(サンドボックス環境でAzureサービスを実際に操作できるハンズオンラボ)で構成されています。
- AI-900のラーニングパスを完了することは、試験範囲を体系的に学ぶ上で最も推奨される方法です。試験で問われる概念やサービスについて、網羅的かつ正確な知識を得られます。
- AI-900のラーニングパスの主な構成モジュール例:
- AIの基本原則を調査する
- Azureでコンピュータービジョンワークロードを調査する
- Azureで自然言語処理ワークロードを調査する
- Azureで会話型AIワークロードを調査する
- Azureで機械学習ワークロードを調査する
- Azureで責任あるAIの原則を調査する
- これらのモジュールを順番に進めることで、試験範囲全体をカバーできます。
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公式ドキュメント:
- Azure AIサービスに関する公式ドキュメントは、Microsoft Learnよりもさらに詳細な情報を提供しています。特定のサービスについて深く理解したい場合や、Microsoft Learnのモジュールで説明されている概念についてさらに情報を得たい場合に参照すると良いでしょう。
- ただし、AI-900レベルではドキュメントのすべての内容を理解する必要はなく、Microsoft Learnで説明されている範囲を重点的に学習すれば十分です。
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Azure Free Accountを活用した実践:
- Microsoft Learnのハンズオンラボだけでなく、Azure Free Accountを取得して、実際にAzure Portal上でCognitive ServicesなどのAIサービスを作成し、APIを呼び出してみることを強く推奨します。
- 実際にサービスをプロビジョニングし、キーを取得して、簡単なコードやツール(例: Postman)からAPIを呼び出す経験は、概念的な理解を深め、サービスがどのように機能するかを肌で感じるのに役立ちます。
- Free Accountでは一定額の無料クレジットや、特定のサービスの無料利用枠が提供されるため、費用をかけずに試すことが可能です。
- 実践例:
- Computer Visionサービスを作成し、APIを使って画像のタグ付けをしてみる。
- Text Analyticsサービスを作成し、APIを使って感情分析やキーフレーズ抽出を試してみる。
- Faceサービスを作成し、APIを使って顔検出や属性分析を試してみる。
- Custom Visionで簡単な画像分類モデルをトレーニングしてみる。
- QnA Maker(Language Serviceの一部)で簡単な知識ベースを作成し、テストしてみる。
- Azure Machine Learning designerで簡単な回帰または分類モデルを構築し、実行してみる。
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公式模擬試験 (Practice Test):
- Microsoftの公式サイトや、公式認定パートナーが提供する模擬試験は、試験の形式、問題のレベル、出題傾向を把握する上で非常に役立ちます。
- 学習の進捗を確認したり、自分の弱点を見つけたりするために活用しましょう。
非公式リソースの活用
公式リソースだけでなく、様々な非公式リソースも学習をサポートしてくれます。
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オンライン学習プラットフォーム (Udemy, Coursera, edXなど):
- これらのプラットフォームでは、AI-900試験対策に特化した質の高いビデオ講座が多数提供されています。講師による解説は、公式ドキュメントを読むよりも理解しやすい場合があります。
- 自分のペースで学習を進められる点や、視覚的に学べる点がメリットです。ただし、コースの内容が最新の試験範囲に対応しているか確認が必要です。
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YouTubeの解説動画:
- YouTubeには、Azure AI Fundamentalsに関する解説動画やデモ動画が多数アップロードされています。特定の概念やサービスについて、視覚的な説明やハンズオンを見るのに役立ちます。
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技術ブログ、コミュニティ:
- AI-900の合格体験記や学習方法に関する技術ブログ記事は、他の学習者の経験を参考にしたり、モチベーションを維持したりするのに役立ちます。
- Microsoft Tech Communityなどのオンラインコミュニティで質問したり、他の学習者と交流したりするのも良いでしょう。
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書籍:
- Azure AI Fundamentalsに関する書籍も出版されています。体系的にじっくり学びたい場合に適しています。最新の試験範囲に対応しているか確認しましょう。
効果的な学習計画
AI-900に効率的に合格するためには、計画的な学習が重要です。
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目標設定と期間設定:
- いつまでに資格を取得したいか、具体的な目標期日を設定します。
- 自身の現在の知識レベルや学習に充てられる時間に応じて、現実的な学習期間(例: 1ヶ月、2ヶ月)を設定します。
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学習リソースの選択と確保:
- 主に利用する公式リソース(Microsoft Learn必須)と、補足的に利用する非公式リソースを決め、準備します。
- Azure Free Accountを取得しておきましょう。
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試験範囲の分割と時間配分:
- AI-900の試験範囲(4つの主要パート)を学習単位に分割します。
- それぞれのパートに費やす時間や日数を計画します。苦手なパートには多めに時間を配分しましょう。
- Microsoft Learnのラーニングパスの構成に従って進めるのが効率的です。
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学習スケジュールの作成:
- 毎日、または週に数日など、定期的に学習する時間を確保し、具体的なスケジュールを作成します。
- 例: 平日は夜1時間、週末は午前中に2時間など。
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理論と実践のバランス:
- Microsoft Learnで概念を学習するだけでなく、Azure Free Accountを使って実際にサービスを操作する時間を必ず設けます。ハンズオンは理解を定着させる上で非常に効果的です。
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定期的な復習と知識チェック:
- 学習した内容を定期的に復習します。
- Microsoft Learnの知識チェックを活用したり、章末問題や簡単なクイズを作って自己テストしたりします。
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模擬試験の活用:
- ある程度学習が進んだ段階(試験範囲の学習が完了した頃)で、模擬試験を受けてみましょう。
- 模擬試験の結果を見て、理解が不十分な箇所や弱点を特定し、その部分を集中的に復習します。
- 試験直前にもう一度模擬試験を受けて、本番の形式に慣れておきましょう。
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休憩と継続:
- 集中力を維持するために、適度に休憩を挟みましょう。
- 毎日少しずつでも継続することが、長期的な知識の定着につながります。
学習時のヒント
- 用語を覚える: AI-900では多くの新しい用語が出てきます。各用語の意味を正確に理解し、自分なりの言葉で説明できるようになりましょう。
- サービスの目的を理解する: 各Azure AIサービスが「何を解決するためのサービスなのか」「どのような機能を提供しているのか」を具体的なユースケースと関連付けて理解することが重要です。各サービスの機能の詳細な設定方法などはAI-900では通常問われません。
- 図や絵で理解する: 概念やサービスの構成は、図や絵を描いて整理すると理解しやすくなります。
- 人に説明してみる: 学習した内容を他の人に説明してみることで、自分の理解度を確認できます。
- 最新情報を確認する: クラウドサービスや試験内容は頻繁にアップデートされる可能性があります。学習開始時や試験前に、公式サイトで最新の試験範囲や推奨される学習リソースを確認しましょう。
Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格取得のメリット
AI-900資格を取得することは、単に試験に合格すること以上の価値があります。これは、AIという未来の技術分野への第一歩を踏み出し、自身のキャリアやスキルセットをアップデートするための重要なマイルストーンとなり得ます。
AIの基本概念を体系的に理解できる
AI-900の学習プロセスを通じて、AI、機械学習、ディープラーニング、コンピュータービジョン、自然言語処理、会話型AIといった、AI分野における基本的な概念や用語を体系的に学ぶことができます。これまで断片的にしか理解していなかったAI関連のニュースや技術トレンドが、この学習によってより深く理解できるようになります。
Azure AIサービスの全体像を把握できる
Azureは、非常に多岐にわたるAIサービスを提供しています。AI-900の学習は、これらのサービスの「カタログ」として機能します。それぞれのサービスがどのような問題を解決するために設計されており、どのような機能を持っているのかを知ることで、将来AIプロジェクトに関わる際に、どのサービスを利用すれば良いのかを判断するための基礎知識が得られます。特定のサービスに深く潜り込む前の、広範な理解を得るのに最適です。
キャリアにおけるアドバンテージ
- AI分野への第一歩: AI-900資格は、AI分野でのキャリアをスタートさせたいと考えている方にとって、有効な証明となります。特に非技術系職種の方でも、AIに関する基礎知識があることをアピールでき、AIプロジェクトに関わるチャンスが増える可能性があります。
- 既存のスキルとの組み合わせ: 開発者、データアナリスト、IT運用担当者など、既存のITスキルにAIの基礎知識を組み合わせることで、自身の市場価値を高めることができます。例えば、アプリケーション開発者がCognitive Servicesの利用方法を知っていれば、AI機能を持つアプリケーションを構築できるようになります。
- 採用や昇進におけるアピールポイント: 多くの企業がAI人材を求めています。AI-900資格は、AIに対する関心と基礎的な知識があることを示す客観的な証拠となり、採用選考や社内での昇進において有利に働くことがあります。
他のAzure資格への足がかりとなる
AI-900は、AzureのFundamentals(基礎)資格の一つです。この資格で得られるAIの基礎知識とAzureの基本的な概念理解は、Azureのより専門的なAI関連資格(例: Azure Data Scientist Associate DP-100, Azure AI Engineer Associate AI-102)やデータ関連資格(DP-900, DP-203)、あるいは開発者資格(AZ-204)などを目指す上での強力な土台となります。AI-900で自信をつけ、さらに深く学びたい分野へと進むことができます。
自信の向上
新しい分野であるAIについて、体系的に学習し、資格を取得することで、自身の知識とスキルに対する自信を高めることができます。この自信は、仕事での発言や新しいプロジェクトへの挑戦において、大きな原動力となります。
組織におけるAI活用推進への貢献
組織内でAIの活用を推進する際、AIの基本を理解している人材がいることは非常に重要です。AI-900取得者は、非技術部門のメンバーとのコミュニケーションを円滑にしたり、外部ベンダーの提案を評価したりする上で貢献できる可能性があります。
試験の申し込みと準備
AI-900試験の申し込み方法や、試験当日に向けた準備について解説します。
試験形式と概要
- 形式: コンピューターベーステスト (CBT) です。通常、多肢選択、複数選択、ドラッグ&ドロップなどの形式で出題されます。
- 問題数: 通常40〜60問程度ですが、変動する可能性があります。
- 試験時間: 通常60分(それに加えてチュートリアルなどの時間があります)。合計で約80分程度を見込んでおくと良いでしょう。
- 合格点: 700点(1000点満点中)です。ただし、これは素点ではなく、Microsoftが統計的に正規化したスコアです。
- 言語: 多くの言語で受験可能ですが、日本語も選択できます。
注意点: 試験形式、問題数、合格点、試験時間などの詳細は、予告なく変更される可能性があります。必ずMicrosoftの公式サイトで最新の情報をご確認ください。
試験費用の確認
試験費用は国や地域によって異なります。日本円での最新の試験費用は、Microsoftの公式サイト(Pearson VUEまたはCertiportからの申し込みページ)で確認できます。学生割引が適用される場合もありますので、対象となるか確認してみましょう。
申し込み手順
AI-900試験は、通常Pearson VUEまたはCertiportを通じて申し込みます。
- Microsoft Learningサイトにアクセス: Microsoftの公式サイトで、AI-900の試験詳細ページにアクセスします。
- 試験のスケジュールを選択: 試験詳細ページから「スケジュール」ボタンをクリックします。これにより、Pearson VUEまたはCertiportのサイトにリダイレクトされます。
- アカウントの作成またはログイン: 利用する試験プロバイダーのサイトでアカウントを作成するか、既存のアカウントでログインします。
- 試験の選択: AI-900試験を選択します。
- 受験方法の選択:
- テストセンターでの受験: 最寄りのテストセンターを選択し、希望する日時を選択します。
- オンライン受験 (OnVUE): 自宅や職場のPCから、オンラインで試験官の監視のもと受験します。オンライン受験を選択する場合は、受験環境(PC、インターネット接続、静かな部屋など)に関するシステム要件を確認する必要があります。
- 日時と場所の確定: 希望する日時と場所(テストセンターまたはオンライン)を選択し、確定します。
- 支払いの手続き: 試験費用を支払います。クーポンコードやバウチャーがある場合はここで適用します。
- 予約の確認: 申し込み完了後、確認メールが届きます。試験日時、場所、受験に関する重要な情報が記載されていますので、必ず内容を確認し、保存しておきましょう。
試験当日の注意点(特にオンライン受験)
- 本人確認書類: 有効な本人確認書類(パスポート、運転免許証など、写真付きのもの2点が必要な場合が多い)を準備します。オンライン受験の場合は、試験開始前にカメラで本人確認が行われます。
- 受験環境の準備 (オンライン受験):
- PC: 試験プロバイダーのサイトで示されているシステム要件を満たすPCを準備します。試験前にシステムチェックツールで環境を確認しておきましょう。
- インターネット接続: 安定した高速インターネット接続が必要です。
- 部屋: 他の人の出入りがなく、静かで明るい部屋を準備します。机の上や周囲には、許可されたもの以外は何も置かないようにします。
- カメラとマイク: 試験官とのやり取りや監視のために必要です。
- 早めに準備: オンライン受験の場合、試験開始時間の30分前にはサインインして、システムチェックや環境確認を済ませておくことが推奨されます。テストセンター受験の場合も、予約時間の15分前には到着しておきましょう。
- 試験中のルール: 試験中は、話すこと、部屋を離れること、許可されていないものを参照することなどは厳しく制限されています。不正行為と見なされないよう、試験官の指示に注意深く従いましょう。
事前の準備をしっかり行うことで、試験当日は落ち着いて臨むことができます。
AI Fundamentalsの次のステップ
Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格は、AIとAzureのAIサービスの基礎を学ぶための優れた出発点ですが、これはあくまでFundamentals(基礎)レベルです。AI分野やAzureスキルをさらに深めたい場合は、いくつかの次のステップが考えられます。
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より高度なAzure AI関連資格:
- Azure Data Scientist Associate (DP-100): Azure上で機械学習ソリューションを設計、構築、デプロイするデータサイエンティスト向けの資格です。データ前処理、モデルのトレーニング、評価、デプロイといった機械学習のライフサイクル全体にわたる実践的なスキルが問われます。AI-900で得られた機械学習の基本とAzure MLの概要知識が土台となります。
- Azure AI Engineer Associate (AI-102): Azure上でCognitive ServicesやAzure Bot Serviceなどを活用してAIソリューションを設計、実装するAIエンジニア向けの資格です。コンピュータービジョン、NLP、会話型AIといった特定のAIワークロードに焦点を当て、サービスの利用方法や統合に関する実践的なスキルが問われます。AI-900で得られた各AIワークロードの概念とAzure Cognitive Servicesの概要知識が土台となります。
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他のAzure Fundamentals資格:
- Azure Fundamentals (AZ-900): Azureのクラウドサービス全般に関する基礎資格です。AI-900よりも前に取得しているとAI-900の学習がスムーズに進みますが、AI-900の後に取得してAzure全体の知識を広げるのも良いでしょう。
- Azure Data Fundamentals (DP-900): Azureでのデータ関連サービス(リレーショナル、非リレーショナル、ビッグデータ、データ分析など)に関する基礎資格です。AI、特に機械学習はデータと密接に関わるため、データに関する基礎知識を深めることは非常に有益です。
- Power Platform Fundamentals (PL-900): Power Platformを活用したビジネスソリューション構築に関する基礎資格です。Power PlatformはAI Builderなどの機能を通じてAIとも連携します。
- Security, Compliance, and Identity Fundamentals (SC-900): クラウドセキュリティに関する基礎資格です。AIシステムを安全に運用するためには、セキュリティやコンプライアンスの基礎知識も重要です。
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特定のAzure AIサービスの深掘り:
- AI-900で概要を掴んだAzure Cognitive ServicesやAzure Machine Learningについて、公式ドキュメントを参照したり、より高度なハンズオンやチュートリアルを実施したりして、具体的な使い方や機能を深く学習します。
- 特定の興味のある分野(例: 画像認識、チャットボット開発)に焦点を当て、関連するAzureサービスを徹底的に使い込んでみるのも良いでしょう。
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関連技術の学習:
- AI分野をさらに探求するなら、統計学、線形代数、微積分などの数学の基礎、Pythonなどのプログラミング言語、データ分析ライブラリ(Pandas, NumPy)、機械学習ライブラリ(Scikit-learn, TensorFlow, PyTorch)などを学ぶことも非常に有益です。ただし、これらはAI-900の試験範囲外です。
AI-900は、AIの広大な世界への入口です。この資格を足がかりに、自身の興味やキャリアの目標に合わせて、さらに学びを深めていくことで、AI技術の可能性を最大限に引き出し、自身の市場価値を一層高めることができるでしょう。
まとめ:AI-900から広がるAIの世界
この記事では、Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格について、その概要、試験範囲の詳細、効果的な学習方法、資格取得のメリット、そして試験の申し込み方法から次のステップまで、徹底的に解説しました。
AI-900資格は、AIや機械学習の経験がない方、あるいは経験が浅い方でも、AIの基本概念とAzureが提供するAIサービスの全体像を体系的に学ぶための優れた機会を提供します。機械学習、コンピュータービジョン、自然言語処理、会話型AIといった主要なAIワークロードがどのようなもので、どのような問題に適用できるのか、そしてAzure上でそれらを実現するためにどのようなサービスが用意されているのかを理解することは、現代のテクノロジーリテラシーとして非常に価値があります。
また、AI開発・利用における倫理的および責任ある考慮事項について学ぶことは、技術を社会的に受け入れられる形で活用するために不可欠な知識です。
Microsoft Learnを中心とした公式リソースを活用し、Azure Free Accountでの実践的な学習を取り入れることで、試験合格に必要な知識と理解を着実に深めることができます。計画的な学習と模擬試験の活用も、効果的な学習には欠かせません。
AI-900資格の取得は、AI分野でのキャリアをスタートさせたい方、既存のスキルにAIを加えたい方にとって、大きなアドバンテージとなります。また、この資格は、Azureのより高度なAI関連資格やデータ関連資格へのスムーズな移行を可能にする確かな土台となります。
AI技術は進化を続けており、その可能性は日々広がっています。Azure AI Fundamentals (AI-900) 資格の学習を通じて得られる知識と経験は、このエキサイティングな分野で活躍するための強力な一歩となるでしょう。
もしあなたがAIに興味があり、どこから学び始めれば良いか迷っているなら、Azure AI Fundamentals (AI-900) は間違いなく検討に値する素晴らしい選択肢です。この資格の学習を通じて、AIの世界への扉を開き、未来のテクノロジーを使いこなすための基礎を築いてください。
さあ、AI-900への挑戦を始めましょう!あなたのAI学習ジャーニーが実り多きものとなることを応援しています。