Clash Meta for Android 入門:初心者向け完全ガイド


Clash Meta for Android 入門:初心者向け完全ガイド

インターネットの世界は広大で、時として特定の情報やサービスへのアクセスが制限されていることがあります。また、オンラインでのプライバシー保護もますます重要になっています。このような状況に対応するためのツールとして、「Proxy(プロキシ)」や「VPN(仮想プライベートネットワーク)」といった技術が広く利用されています。

数あるプロキシ/VPNクライアントの中でも、特に高度な機能と柔軟性で注目されているのが「Clash」というツールです。そして、そのClashをベースに、さらに多くのプロトコルサポートや新機能を追加した派生バージョンが「Clash Meta」です。

本ガイドでは、AndroidスマートフォンでClash Metaを使い始めるための入門編として、その特徴、導入方法、基本的な使い方、そして知っておくべき核心的な概念までを、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説します。約5000語にわたるこの詳細なガイドを読み終える頃には、Clash Metaを自信を持って使いこなせるようになっているはずです。

さあ、Clash Metaの世界へ踏み出しましょう。

第1章:Clash Metaとは何か? なぜ選ぶのか?

1.1 Clash Metaとは?

まず、Clash Metaが一体何なのかを理解しましょう。

Clashは、YAMLという設定ファイル形式に基づいて動作する、オープンソースのルールベースのプロキシクライアントです。これは、単に通信を特定のサーバーに転送するだけでなく、「どの通信をどのサーバーを経由させるか」を細かく制御できるのが最大の特徴です。例えば、「このウェブサイトへのアクセスは日本のサーバーを経由させる」「あのアプリの通信は直接インターネットに繋ぐ」「特定のドメインへのアクセスはブロックする」といった設定が可能です。

Clash Metaは、このオリジナルのClashのコア部分(Go-Clash)をフォーク(派生・複製)し、そこにVMess、VLESS、Trojan、Shadowsocks、Socks5といった主要なプロキシプロトコルに加え、Hysteria、TUIC、ShadowTLSといった新しいプロトコルや、FakeIP、Tun、Mixed Portなどの高度な機能をサポートするように拡張されたバージョンです。つまり、Clash MetaはオリジナルのClashよりもさらに多機能で、より多くの種類のプロキシサーバーに接続できる可能性を持っています。

Android版のClash Metaクライアントアプリは、この強力なClash Metaコアをスマートフォン上で簡単に操作できるようにするためのユーザーインターフェース(UI)を提供します。

1.2 なぜClash Metaを選ぶのか? そのメリット

世の中には多くのVPNアプリやプロキシクライアントがあります。その中でClash Metaを選ぶメリットは何でしょうか?

  1. 強力なルールベースルーティング: これがClash Metaの最も核となる機能です。設定ファイルに記述されたルールに基づいて、通信元(アプリ)、通信先(ドメイン、IPアドレス)、プロトコルなどに応じて、自動的に最適なプロキシサーバーを選択したり、直通させたり、ブロックしたりできます。これにより、必要な通信だけをプロキシ経由にすることで、通信速度の維持やトラフィックの節約が可能になります。一般的なVPNのように「すべての通信を強制的にVPN経由にする」のとは異なり、柔軟性が非常に高いのが特徴です。
  2. 多様なプロトコルサポート: 前述の通り、Clash Metaは非常に多くのプロキシプロトコルに対応しています。これにより、様々なプロキシサービスや自前のサーバーを利用でき、特定のプロトコルがブロックされている環境でも代替手段を見つけやすい可能性があります。
  3. 高性能と安定性: バックグラウンドで動作するコア部分はGo言語で書かれており、軽量かつ高性能です。長時間の利用でも比較的安定した動作が期待できます。
  4. オープンソース: Clash Metaのコア部分はオープンソースであり、透明性が高いです。セキュリティ上の懸念を第三者が検証できます。Androidクライアントアプリもオープンソースで開発されているものが多いです。
  5. TUNモードのサポート: Android OSレベルでネットワークトラフィックを捕捉するTUN(Tunnel)モードをサポートしています。これにより、OSのほぼ全てのアプリの通信をルールに基づいて制御できます。
  6. プロキシグループ機能: 複数のプロキシサーバー(ノード)をひとまとめにし、「自動選択」「フォールバック(障害時迂回)」「負荷分散」といった動作を設定できます。これにより、常に最速のノードを選んだり、一つのノードがダウンしても自動的に切り替わったりする設定が可能です。

1.3 Clash Metaを使う上での注意点

Clash Metaはその高機能さゆえに、一般的なVPNアプリと比較していくつかの注意点があります。

  1. 設定ファイルの準備が必要: Clash Meta自体はただの「クライアントアプリ」であり、それだけでは機能しません。どこを経由して通信するか、どのルールで振り分けるかといった情報が記述された「設定ファイル(コンフィグファイル)」が必要です。この設定ファイルは、通常、プロキシサービスプロバイダーから提供されるサブスクリプションURLを介して取得します。自力で作成することも可能ですが、これは非常に高度な知識が必要です。
  2. 初心者には設定が複雑に感じられることがある: ルールベースの動作やプロキシグループといった概念は、初めてClash Metaに触れる方にはやや難しく感じられるかもしれません。しかし、一度基本的な構造を理解すれば、その柔軟性の恩恵を最大限に受けることができます。本ガイドでは、この「難しさ」を解消することを目指します。
  3. アプリの入手方法: Google Playストアには公式のClash Metaアプリは存在しません。信頼できるソース(通常はGitHubのリリースページ)からAPKファイルをダウンロードしてインストールする必要があります。
  4. プロキシサービスの選定が重要: Clash Metaの性能は、結局のところ利用するプロキシサーバー(ノード)の品質に大きく依存します。信頼性があり、安定した速度を提供するプロキシサービスを選ぶことが非常に重要です。

これらの注意点を踏まえつつ、Clash Metaの導入と使い方をステップバイステップで見ていきましょう。

第2章:Clash Meta for Androidの入手とインストール

2.1 必要なもの

Clash Meta for Androidを使い始めるために必要なものは以下の通りです。

  • Androidスマートフォン: Android OSが動作している端末。OSのバージョンは比較的新しいものが推奨されます(概ねAndroid 6以降であれば動作することが多いですが、新しい機能はより新しいOSバージョンを要求する場合があります)。
  • インターネット接続: アプリのダウンロード、設定ファイルの取得、プロキシ経由での通信に必要です。
  • Clash Meta互換の設定ファイル(コンフィグファイル): これが最も重要です。通常は、プロキシサービスプロバイダーから提供される「サブスクリプションURL」の形式で入手します。自分でYAMLファイルを用意することも可能ですが、ここではプロバイダーから提供されるものを前提とします。

2.2 アプリケーション(APKファイル)の入手

Clash Meta for Androidの公式アプリはGoogle Playストアにはありません。これは、VPNやプロキシツールに関するGoogle Playのポリシーによるものです。そのため、開発元が提供する信頼できるソースからAPKファイルを直接ダウンロードする必要があります。

最も一般的で推奨される入手先は、開発者のGitHubリポジトリの「Releases」ページです。

  1. GitHubのClash Meta for Androidリポジトリを探す: Webブラウザ(Chromeなど)を開き、「Clash Meta for Android github」などのキーワードで検索します。通常、MetaCubeX/ClashMetaForAndroid のようなリポジトリが見つかります。これが最も有名なクライアントの一つです。
  2. Releasesページにアクセス: リポジトリのページに移動したら、「Code」ボタンの下あたりにある「Releases」または「タグ」のリンクをクリックします。
  3. 最新のリリースを探す: リリース一覧が表示されるので、最新バージョン(一番上のものが多いです)を探します。
  4. APKファイルをダウンロード: リリースの説明文の中に「Assets」という項目があります。これを展開すると、そのリリースに含まれるファイル一覧が表示されます。Android用のAPKファイルを探します。ファイル名は app-release.apk のような形式であることが多いです。これをタップしてダウンロードを開始します。

注意点:

  • 必ず信頼できる開発元のGitHubリポジトリからダウンロードしてください。野良サイトからのダウンロードはマルウェアのリスクがあり危険です。
  • ダウンロードするファイルが.apk形式であることを確認してください。

2.3 アプリケーションのインストール

ダウンロードしたAPKファイルをインストールするには、Androidの設定で「提供元不明のアプリのインストール」を許可する必要がある場合があります。セキュリティ上のリスクを理解した上で、一時的に許可してください。

  1. ダウンロードしたAPKファイルを開く: ファイルマネージャーアプリや、ブラウザのダウンロードリストからダウンロードした.apkファイルをタップします。
  2. 「提供元不明のアプリのインストール」の許可: 初めてAPKファイルからインストールする場合、「提供元不明のアプリ」としてインストールをブロックされることがあります。表示されるダイアログで、お使いのファイルマネージャーアプリやブラウザに対して「提供元不明のアプリのインストールを許可」する設定に移動し、これをオンにします。許可したら前の画面に戻ります。
  3. インストール: 再度APKファイルをタップすると、インストール確認画面が表示されます。アプリが必要とする権限(通常はネットワーク関連)が表示されるので確認し、「インストール」をタップします。
  4. インストール完了: インストールが完了すると、「開く」または「完了」のボタンが表示されます。「開く」をタップすると、すぐにアプリを起動できます。

インストール時の注意点:

  • インストール完了後は、セキュリティのために「提供元不明のアプリのインストール」の許可をオフに戻すことを推奨します。
  • 既存のClash Metaアプリをアップデートする場合も、通常はこの手順で行いますが、設定やプロファイルは引き継がれます。

これで、Clash Meta for Androidアプリ本体のインストールは完了です。次に、アプリを機能させるための最も重要なステップ、設定ファイルのインポートに進みます。

第3章:設定ファイル(コンフィグ)のインポート

Clash Metaは設定ファイルなしには何もできません。プロキシサーバーの情報、プロキシグループの定義、そして最も重要な「ルール」が全てこのファイルに記述されています。設定ファイルは通常、プロキシサービスプロバイダーから提供されます。

設定ファイルのインポートには主に以下の3つの方法があります。最も一般的なのは「URLでインポート(サブスクリプション)」です。

3.1 方法1:URLでインポート(サブスクリプション) – 推奨

プロキシサービスプロバイダーから提供される「サブスクリプションURL」を使って設定ファイルをインポートする方法です。この方法の最大の利点は、プロバイダー側で設定ファイルが更新された際に、アプリ内から簡単に最新の状態に同期できることです。

  1. サブスクリプションURLの取得: 契約しているプロキシサービスのウェブサイトや、サービス利用開始時に受け取った情報の中に、ClashまたはClash Meta用の「サブスクリプションURL」があるはずです。これをコピーします。URLは http:// または https:// で始まり、非常に長い文字列であることが多いです。
  2. Clash Metaアプリを起動: インストールしたClash Metaアプリを起動します。
  3. 「Profiles」タブに移動: アプリ画面下部にいくつかのタブがあります。「Home」「Profiles」「Proxies」「Logs」「Settings」。この中から「Profiles」タブをタップします。
  4. 新しいプロファイルを追加: 画面右下にある「+」ボタンをタップします。
  5. 「Import from URL」を選択: 表示されるメニューから「Import from URL」を選択します。
  6. URLと名前を入力:
    • URL: 取得したサブスクリプションURLをペーストします。
    • Name: この設定ファイル(プロファイル)に任意の名前をつけます。例えば、契約しているサービス名など、後で見て分かりやすい名前にしましょう(例: MyProxyService)。
    • Auto Update: ここにチェックを入れておくと、アプリ起動時などに自動的に設定ファイルの更新を確認するようになります。基本的にはチェックを入れておくことを推奨します。
    • Interval (Hours): 自動更新の頻度を設定します。デフォルトの24時間で構いませんが、プロバイダーから頻繁に更新があると案内されている場合は短くしても良いでしょう。
  7. インポートを実行: 右上にあるチェックマーク(✓)または保存ボタンをタップします。
  8. ダウンロードとパース: アプリがURLから設定ファイルをダウンロードし、内容を解析(パース)します。成功すれば、Profilesリストに今追加したプロファイルが表示されます。

これで、設定ファイルのインポートは完了です。

3.2 方法2:QRコードでインポート

プロバイダーによっては、サブスクリプションURLをQRコードで提供している場合があります。PCでウェブサイトを見ている場合などに便利です。

  1. QRコードを表示: プロバイダーのウェブサイトなどで、ClashまたはClash Meta用のサブスクリプションURLのQRコードを表示させます。
  2. Clash Metaアプリを起動: アプリを起動し、「Profiles」タブに移動します。
  3. QRコードボタンをタップ: 画面右下にある「+」ボタンの隣、または画面上部にQRコードをスキャンするためのボタンがある場合があります。これをタップします。
  4. カメラの許可: カメラへのアクセス許可を求められたら許可します。
  5. QRコードをスキャン: カメラビューが表示されるので、PC画面などに表示されたQRコードを読み取ります。
  6. 名前を入力して保存: QRコードが読み取られると、URLが自動で入力された状態になります。任意で名前をつけて保存します。

3.3 方法3:ローカルファイルからインポート

YAML形式のClash設定ファイル(.yaml または .yml 拡張子)を既に端末内にダウンロードしている場合、そのファイルを直接読み込むことも可能です。これは、自分で設定ファイルを作成した場合や、プロバイダーからファイル形式で提供された場合に利用します。

  1. YAMLファイルの準備: 設定ファイル(例: config.yaml)をスマートフォンのストレージ内に保存しておきます。
  2. Clash Metaアプリを起動: アプリを起動し、「Profiles」タブに移動します。
  3. 「+」ボタンをタップ: 画面右下にある「+」ボタンをタップします。
  4. 「Import from File」を選択: 表示されるメニューから「Import from File」を選択します。
  5. ファイルを選択: ファイルピッカーが表示されるので、保存しておいたYAMLファイルを選択します。
  6. 名前を入力して保存: ファイルが読み込まれると、任意で名前をつけて保存します。

注意点: ローカルファイルからのインポートの場合、プロバイダー側で設定ファイルが更新されても自動では反映されません。更新が必要な場合は、新しいファイルをダウンロードして再度インポートするか、URLでインポートする方法に切り替えることを検討してください。

3.4 アクティブなプロファイルの選択

Profilesタブに複数の設定ファイルがリスト表示されている場合、現在使用したい設定ファイルをタップして選択する必要があります。選択されたプロファイルには通常、チェックマークや色などで「アクティブ」であることが示されます。Home画面で「Start」ボタンを押すと、このアクティブなプロファイルの設定が読み込まれてClash Metaが起動します。

第4章:Clash Metaアプリの主要なUI要素

Clash Meta for Androidアプリの基本的な使い方は非常にシンプルですが、各画面の機能を知っておくと、より快適に利用できます。主要なタブを見ていきましょう。

アプリ下部には通常、以下のタブがあります。

  1. Home(ホーム)

    • Clash Metaの現在の状態(起動中か停止中か)が表示されます。
    • 大きな「Start/Stop」ボタンがあり、これをタップすることでClash Metaのサービスを起動/停止できます。
    • 現在の接続状況(アップロード/ダウンロード速度など)が表示されることもあります。
    • 使用しているプロファイル名が表示されます。
    • 右上のアイコンから設定(Settings)にアクセスできる場合があります。
  2. Profiles(プロファイル)

    • インポートした設定ファイル(プロファイル)の一覧が表示されます。
    • 各プロファイルをタップすることで、そのプロファイルをアクティブにしたり、更新したり、削除したりできます。
    • 右下の「+」ボタンから新しいプロファイルをインポートできます。
    • プロファイルの更新ボタン(通常は丸い矢印)をタップすると、URLからインポートしたプロファイルの最新版をダウンロードし直せます。
  3. Proxies(プロキシ)

    • これがClash Metaの特徴的な画面の一つです。アクティブな設定ファイルに定義されている「プロキシグループ」と、そのグループに含まれる「プロキシノード」が表示されます。
    • プロキシグループの種類(Select, Auto, Fallback, Loadbalanceなど)がアイコンやラベルで示されます。
    • 特に「Select」タイプのプロキシグループは、タップするとそのグループに含まれるプロキシノードのリストが表示されます。リストから任意のノードをタップすることで、手動で接続先を切り替えることができます。
    • プロキシノード名の右側には、そのノードの接続遅延(Ping値)が表示されることが多いです。これをタップすると、全てのノードのPing値をテストできます。速度が遅い場合や接続が不安定な場合に、Ping値が低い(速い)ノードに手動で切り替える際に利用します。
  4. Logs(ログ)

    • Clash Metaの動作ログが表示されます。
    • 接続の確立、ルールのマッチング、エラー発生などの情報が時系列で記録されます。
    • 接続がうまくいかない場合や特定のサイトにアクセスできない場合など、トラブルシューティングを行う際に非常に役立ちます。エラーメッセージや、どのルールにマッチして通信が処理されたかなどを確認できます。
    • ログレベル(Info, Warning, Errorなど)を切り替えられる場合もあります。
  5. Settings(設定)

    • Clash Metaアプリ全体の詳細設定を行う画面です。
    • Service Settings:
      • Start on Boot: 端末起動時にClash Metaを自動的に開始するかどうかを設定します。
      • TUN Mode: TUNモードを有効にするか設定します。通常はこれをオンにして、OSレベルでトラフィックを捕捉・制御します。
      • Mixed Port/Socks Port/HTTP Port: アプリのローカルプロキシポートを設定します。他のアプリからClash Metaを経由するように手動で設定する際に使いますが、TUNモードを使っている場合は通常意識する必要はありません。
      • Allow LAN: 同じローカルネットワーク上の他のデバイスからこのClash Metaを経由した通信を許可するか設定します。
      • System Proxy: Androidのシステム全体プロキシ設定をClash Metaに変更するかどうか。TUNモードが有効な場合、通常はこれもオンにします。
    • Proxy Settings:
      • Proxy Test URL: プロキシノードの遅延(Ping値)を測定する際に使用するURLを設定します。通常はGoogleやBaiduなどの信頼できるサイトのURLが入っています。
    • UI Settings: アプリの見た目に関する設定(ダークモードなど)。
    • Advanced Settings: より専門的な設定が含まれる場合があります。初心者の方は通常触る必要はありません。

これらの画面を理解することで、Clash Metaの現在の状態を確認し、必要に応じて設定を変更したり、接続先を切り替えたりすることができます。

第5章:Clash Metaの中核概念を理解する

Clash Metaを使いこなす上で、プロキシ、プロキシグループ、ルールの3つの概念の理解は不可欠です。

5.1 プロキシ(Proxies / Nodes)

プロキシとは、あなたのデバイスとインターネットの間に入る中継サーバーのことです。Clash Metaの設定ファイルには、接続可能な個々のプロキシサーバーの情報(サーバーアドレス、ポート、プロトコル、認証情報など)がリストアップされています。これらはしばしば「ノード(Nodes)」とも呼ばれます。

Clash Metaがサポートするプロトコルには以下のようなものがあります(これらはプロキシサービスの提供形態によります)。

  • Shadowsocks (SS)
  • VMess
  • VLESS
  • Trojan
  • Socks5
  • HTTP
  • Hysteria
  • TUIC
  • ShadowTLS
  • …その他多数

設定ファイルの proxies セクションにこれらのノードが定義されています。通常、ユーザーがこの情報を手動で入力することはなく、プロバイダーから提供された設定ファイルをインポートすることで自動的に読み込まれます。

Proxiesタブでは、これらの個々のプロキシノードを見ることができますが、通常は直接ノードを選んで接続するのではなく、次に説明する「プロキシグループ」を介して利用します。

5.2 プロキシグループ(Proxy Groups)

プロキシグループは、複数のプロキシノードや他のプロキシグループをまとめた論理的な単位です。Clash Metaのルールは、通信を個々のプロキシノードではなく、このプロキシグループに振り分けます。これにより、柔軟なルーティングと自動フェイルオーバーなどが可能になります。

プロキシグループにはいくつかのタイプがあります。設定ファイルの proxy-groups セクションで定義されます。

  1. select (選択)

    • このグループに含まれるプロキシノードの中から、ユーザーが手動で一つを選択して使用します。
    • Proxiesタブでこのタイプのグループをタップすると、選択可能なノードリストが表示されます。
    • 例:「地域選択」グループの中に「日本ノード」「アメリカノード」「シンガポールノード」といった複数のノードを入れておき、ユーザーが状況に応じて切り替える場合などに使います。
  2. auto (自動)

    • このグループに含まれるプロキシノードの中から、設定されたテストURLへの遅延が最も短いノードを自動的に選択して使用します。
    • 定期的に遅延テストを行い、最速のノードに自動で切り替わります。
    • 例:複数のノードがあるが、常に最速のものを使いたい場合に便利です。
  3. fallback (フォールバック / 迂回)

    • このグループに含まれるプロキシノードをリスト順に試行し、最初に接続に成功したノードを使用します。
    • 現在使用しているノードが接続できなくなった場合、リストの次のノードに自動的に切り替わります。
    • 例:メインのノードがダウンした場合に備えて、予備のノードをいくつか設定しておく場合に使います。安定性を重視する場合に有用です。
  4. load-balance (負荷分散)

    • このグループに含まれるプロキシノードに、ラウンドロビン(順番に均等に割り振る)方式で通信を分散させます。
    • 複数のノードに均等に負荷をかけたい場合に使用しますが、ユーザー側の通信を分散するため、同じセッション内でIPアドレスが変わる可能性があり、一部サービスで問題が発生する場合があります。あまり一般的ではないかもしれません。
  5. url-test (URLテスト)

    • このグループに含まれるプロキシノードを定期的にURLテストし、最も遅延が低いノードまたは特定の基準を満たすノードを選択して使用します。autoと似ていますが、より詳細な設定が可能です。

重要なポイント:

  • ルールは通信を「プロキシグループ」に送ります。
  • selectグループ以外は、グループ内のノード選択が自動的に行われます。
  • Proxiesタブで手動でノードを切り替えられるのは、基本的にselectグループだけです。

5.3 ルール(Rules)

ルールは、Clash Metaの動作の核心であり、「どのような通信を、どのプロキシグループに送るか」 を定義するものです。設定ファイルの rules セクションに、ルールのリストとして記述されています。

ルールはリストの上から順に評価されます。ある通信がリストの最初のルールにマッチした場合、そこで評価は終了し、そのルールが指定するプロキシグループに通信が送られます。マッチしなかった場合は、リストの次のルールが評価されます。これが重要です。ルールの順番は非常に重要です。 より具体的なルールはリストの上の方に、より一般的なルールは下の方に配置する必要があります。

ルールの種類はいくつかあります。

  • DOMAIN-SUFFIX,example.com,ProxyGroupA: example.com で終わるドメイン(例: www.example.com, mail.example.com)への通信を ProxyGroupA に送ります。
  • DOMAIN,example.com,ProxyGroupB: example.com という正確なドメインへの通信を ProxyGroupB に送ります。(www.example.commail.example.com にはマッチしません)
  • DOMAIN-KEYWORD,example,ProxyGroupC: ドメイン名に example という文字列が含まれる通信を ProxyGroupC に送ります。
  • IP-CIDR,192.168.1.0/24,DIRECT: 192.168.1.0 から 192.168.1.255 のIPアドレス範囲への通信を DIRECT に送ります。
  • GEOIP,CN,DIRECT: 通信先のIPアドレスが中国(CN)にある場合、DIRECT に送ります。(GEOIP ルールを使用するには、GeoLite2などのIPデータベースファイルが必要です。通常、Clash Metaアプリや設定ファイルプロバイダーが提供します。)
  • PROCESS-NAME,com.android.chrome,ProxyGroupD: アプリのパッケージ名が com.android.chrome (Chromeブラウザ)の場合、ProxyGroupD に送ります。
  • MATCH,ProxyGroupE: これは最後のルールとして配置されます。上記のどのルールにもマッチしなかった全ての通信ProxyGroupE に送ります。

特殊なプロキシグループ名:

ルールで宛先として指定できるのは、設定ファイルで定義されたプロキシグループの名前だけではありません。特別な意味を持つ以下の3つも指定できます。

  • DIRECT: プロキシを経由せず、直接インターネットに接続します。
  • REJECT: 通信をブロックします。アクセスを拒否します。
  • Proxy: 設定ファイルで定義された デフォルトのプロキシグループ(通常は最も上位のselectグループなど)を指します。MATCH,ProxyMATCH,MySelectGroup と同じように機能することが多いです。

ルールの例(概念):

“`yaml

rules:

– DOMAIN-SUFFIX,google.com,ProxyGroupA # Google関連はAグループ

– GEOIP,CN,DIRECT # 中国国内へのアクセスは直通

– DOMAIN-SUFFIX,youtube.com,ProxyGroupA # YouTubeもAグループ

– MATCH,ProxyGroupB # それ以外はBグループ

“`

この例では、通信が来た場合:
1. まず DOMAIN-SUFFIX,google.com,ProxyGroupA にマッチするか試されます。mail.google.com へのアクセスはここでマッチし、ProxyGroupA に送られます。評価は終了です。
2. mail.google.com でなかった場合、次の GEOIP,CN,DIRECT にマッチするか試されます。アクセス先が中国国内のIPアドレスであれば、ここでマッチし、DIRECT に送られます。評価は終了です。
3. 中国国内でなかった場合、次の DOMAIN-SUFFIX,youtube.com,ProxyGroupA にマッチするか試されます。www.youtube.com へのアクセスはここでマッチし、ProxyGroupA に送られます。評価は終了です。
4. 上記のどのルールにもマッチしなかった場合、最後の MATCH,ProxyGroupB にマッチし、ProxyGroupB に送られます。

ルールの順序が重要である理由の例:

もし GEOIP,CN,DIRECT のルールが DOMAIN-SUFFIX,google.com,ProxyGroupA よりにあったらどうなるでしょうか?
“`yaml

rules:

– GEOIP,CN,DIRECT # 中国国内へのアクセスは直通

– DOMAIN-SUFFIX,google.com,ProxyGroupA # Google関連はAグループ

– DOMAIN-SUFFIX,youtube.com,ProxyGroupA # YouTubeもAグループ

– MATCH,ProxyGroupB # それ以外はBグループ

``
この場合、もしアクセス先のGoogleサーバーが**中国国内**にあったとしたら、最初の
GEOIP,CN,DIRECT` のルールにマッチしてしまい、Googleへのアクセスがプロキシを通らずDIRECTになってしまいます。これは通常、意図しない動作でしょう。そのため、特定のサービス(Googleなど)を必ずプロキシ経由にしたい場合は、そのルールをGEOIPルールより上に配置する必要があります。

プロバイダーから提供される設定ファイルは、これらのルールがすでに最適化されて記述されています。初心者の方が自分でルールを編集する必要はほとんどありませんが、Logs画面で「なぜこの通信はプロキシを通る(通らない)のか?」を理解する上で、ルールの概念と評価順序を知っておくことは非常に役立ちます。

第6章:基本的な使い方と操作

Clash Meta for Androidの基本的な使い方は、設定ファイルさえ正しくインポートできていれば非常に簡単です。

6.1 Clash Metaの起動と停止

  1. アプリを起動: Clash Meta for Androidアプリを開きます。
  2. Homeタブを確認: 最初に表示されるHomeタブで、Clash Metaの現在の状態を確認します。「Stopped」(停止中)と表示されているはずです。
  3. 「Start」ボタンをタップ: 画面中央にある大きな「Start」ボタンをタップします。
  4. VPN接続の許可: 初めて起動する際には、Androidシステムから「VPN接続」の許可を求められます。「接続リクエスト」ダイアログが表示されるので、内容を確認し、「OK」または「許可」をタップします。この許可は、Clash MetaがOSレベルでネットワークトラフィックを捕捉し、ルールに基づいて処理するために必要です。
  5. 起動完了: 許可されると、Clash Metaのサービスが開始されます。「Started」(起動中)と表示され、ステータスバーに鍵のアイコンやClash Metaのアイコンが表示されるはずです。これで、設定ファイルに基づいたネットワークルーティングが有効になりました。
  6. 停止: サービスを停止したい場合は、Homeタブで「Started」と表示されている状態から、同じボタン(表示が「Stop」に変わっています)をタップします。Clash Metaのサービスが停止し、通常のネットワーク接続に戻ります。

6.2 プロキシノードの手動切り替え(Selectグループ)

設定ファイルにselectタイプのプロキシグループが含まれている場合、利用するプロキシノードを手動で切り替えることができます。

  1. Clash Metaを起動: Clash Metaサービスが「Started」の状態であることを確認します。
  2. Proxiesタブに移動: アプリ画面下部の「Proxies」タブをタップします。
  3. Selectグループを探す: 表示されるプロキシグループのリストから、タイプが「Select」となっているグループを探します。通常、プロバイダーの設定ファイルでは、ユーザーが接続先国などを選べるように、メインとなるグループがselectタイプになっています。
  4. Selectグループをタップ: 対象のSelectグループをタップします。
  5. ノードを選択: そのグループに含まれるプロキシノードのリストが表示されます。各ノードの右側にはPing値が表示されていることが多いので、参考にしながら接続したいノードをタップします。
  6. 切り替え完了: タップしたノードが選択され、すぐにそのノード経由で通信が行われるようになります。Homeタブに戻ると、使用中のプロキシグループ名の下に、選択したノード名が表示されていることを確認できる場合があります。

注意: autofallbackload-balanceなどの自動選択タイプのグループでは、この画面で手動でノードを選んでも、グループの動作設定(例: 自動テストで最速を選ぶ)に基づいてノードが自動的に切り替わることがあります。手動で固定したい場合は、selectグループを使う必要があります。

6.3 接続速度の確認とノードテスト

プロキシノードの速度や安定性を確認したい場合は、Pingテストを行うことができます。

  1. Clash Metaを起動: Clash Metaサービスが起動中である必要はありませんが、起動しておくと確認しやすいです。
  2. Proxiesタブに移動: アプリ画面下部の「Proxies」タブをタップします。
  3. Pingテストの実行: プロキシノード名の右側に表示されている小さな数字(Ping値)のあたりをタップするか、画面上部にPingテストを実行するボタン(通常は稲妻や円形の矢印アイコン)がある場合があります。これをタップします。
  4. テスト結果の確認: 各ノードに対して設定されたテストURLへのPingテストが実行され、結果のミリ秒(ms)単位の遅延が表示されます。数字が小さいほど応答速度が速いことを示します。
  5. ノード選択の参考に: この結果を参考に、より高速なノードや安定したノードを選択することができます。ただし、Ping値はあくまで目安であり、実際の通信速度(スループット)とは異なる場合もあります。

Pingテストは、どのノードが現在利用可能で、どれくらいの応答速度があるかを把握するのに役立ちます。

第7章:一般的なトラブルシューティング

Clash Metaの使用中に発生しうる一般的な問題とその対処法をいくつか紹介します。

7.1 Clash Metaが起動しない、またはすぐに停止する

考えられる原因:

  • 設定ファイルが無効、またはエラーがある: インポートした設定ファイルの内容に問題がある(YAML構文エラー、プロトコルやノード情報の間違いなど)。
  • 必要な権限が許可されていない: AndroidのVPN接続権限などが許可されていない。
  • アプリのバグ: まれにアプリのバージョンに起因する問題。
  • 他のVPN/プロキシアプリとの競合: 別のVPNアプリなどが既に起動している。

対処法:

  1. 設定ファイルの確認:
    • Profilesタブで、使用しようとしているプロファイルがアクティブになっているか確認します。
    • インポート元のURLが正しいか、有効期限が切れていないかを確認します。可能であれば、プロバイダーのウェブサイトなどで設定ファイルをダウンロードし直し、再度インポートしてみます。
    • ローカルファイルからインポートした場合、ファイルのYAML構文が正しいか(これは専門知識が必要な場合があります)、内容に間違いがないかを確認します。プロバイダーからファイルを入手した場合は、プロバイダーに問い合わせるのが早いです。
  2. 権限の確認: アプリの設定画面(Androidのシステム設定→アプリ→Clash Meta)で、必要な権限(特にVPN関連)が許可されているか確認します。初めて起動する際に表示されるVPN接続許可ダイアログで「OK」または「許可」をタップしたか再確認します。
  3. 他のアプリの停止: 他に動作しているVPNやプロキシ関連のアプリがあれば、それらを完全に停止してからClash Metaを起動してみてください。
  4. アプリの再インストール: 問題が解決しない場合、一度Clash Metaアプリをアンインストールし、信頼できるソースから最新版をダウンロードして再インストールしてみます。
  5. Logs画面の確認: Logsタブを開き、Clash Meta起動時のログを確認します。エラーメッセージが表示されている場合、その内容から原因を特定できることがあります。

7.2 接続はできているようだが、インターネットにアクセスできない、または特定のサイト/アプリが使えない

考えられる原因:

  • 選択したプロキシノードに問題がある: 接続先のプロキシサーバーがダウンしている、速度が非常に遅い、ブロックされているなど。
  • 設定ファイルのルールに問題がある: アクセスしたい通信が意図しないルールにマッチしてしまい、DIRECTになってしまったり、REJECTされてしまったりしている。
  • DNSの問題: 名前解決がうまくいっていない。
  • TUNモードが正常に動作していない: Android OSレベルでのトラフィック捕捉がうまくいっていない。

対処法:

  1. プロキシノードの切り替え: Proxiesタブで、現在選択されているselectグループのノードを別のノードに切り替えてみます。Pingテストを実行して、応答速度が速いノードを選んでみましょう。
  2. Logs画面でルールマッチングを確認: Logsタブを開き、アクセスできないサイトやアプリへの通信がどのように処理されているかを確認します。「matched rule … to …」のようなログを探し、意図したプロキシグループに送られているか、あるいはDIRECTREJECTになっていないかを確認します。もし意図しないルールにマッチしている場合は、設定ファイル(通常はプロバイダーに依頼して修正してもらう)のルール順序や内容に問題がある可能性があります。
  3. DNS設定の確認: 設定ファイル内でDNS設定が正しく行われているか(通常は自動)、アプリの設定でDNS関連のオプション(もしあれば)が適切か確認します。プロバイダーに提供されている設定ファイルであれば、通常この問題は少ないです。
  4. TUNモードの確認: SettingsタブでTUNモードがオンになっているか確認します。オフになっている場合はオンにしてみてください。
  5. アプリやOSの再起動: Clash Metaアプリを一度終了し、再度起動してみます。それでも改善しない場合は、スマートフォンのOS自体を再起動してみます。
  6. 設定ファイルの更新: プロバイダーが設定ファイルを更新している可能性があるため、Profilesタブでプロファイルを最新の状態に更新してみてください。

7.3 通信速度が非常に遅い

考えられる原因:

  • 選択したプロキシノードの帯域が狭い、または混雑している: 最も一般的な原因です。
  • 物理的な距離: アクセス先サーバーとプロキシサーバー、およびプロキシサーバーと自分のデバイス間の物理的な距離が大きい。
  • 回線状況: ご自身のインターネット回線自体の問題。
  • 設定ファイルの問題: 例えば、全ての通信が不必要にプロキシを経由する設定になっているなど。

対処法:

  1. より高速なノードに切り替え: ProxiesタブでPingテストを行い、応答速度が速いノードを選択します。可能であれば、混雑しにくい時間帯に試すか、プロバイダーに推奨ノードを確認します。
  2. 物理的に近いノードを選択: アクセスしたいサービス(例えば日本のウェブサイト)に近い国(例えば日本国内)のノードを選択すると、速度が改善する場合があります。
  3. ご自身の回線速度を確認: プロキシを使わない状態で、ご自身のインターネット回線速度を測定(スピードテストサイトなどを利用)し、回線自体に問題がないか確認します。
  4. 設定ファイルの確認: Logs画面などで、無関係な国内サイトへのアクセスまでプロキシ経由になっていないか確認します。もしそうなっている場合、ルール設定に効率の悪い部分がある可能性があります(プロバイダーに相談)。
  5. 他のプロキシサービスを検討: 利用しているプロキシサービスのノード品質自体が低い場合、他のサービスを検討することも必要かもしれません。

7.4 アプリからの通知が邪魔

対処法:

Clash Metaアプリが起動中に表示する通知を非表示にしたい場合、Androidのシステム設定でアプリの通知を管理できます。

  1. Androidの「設定」を開く:
  2. 「アプリ」または「アプリと通知」を選択:
  3. アプリリストから「Clash Meta」を探してタップ:
  4. 「通知」を選択:
  5. 不要な通知カテゴリをオフにする: 通常、「Persistent Notification」(常駐通知)のような項目があるので、それをオフにします。ただし、完全にオフにするとアプリがバックグラウンドで終了されやすくなるなど、予期しない動作を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。必須ではない通知のみをオフにすることをおすすめします。

第8章:知っておくと便利な追加情報

Clash Metaをより深く理解し、活用するための追加情報をいくつか紹介します。

8.1 設定ファイル(YAML)の構造の基本

初心者の方は設定ファイルを自分で編集する必要はほとんどありませんが、どのような情報が含まれているかを知っておくと、Logs画面の理解やプロバイダーとのやり取りに役立ちます。Clashの設定ファイルはYAML形式で記述されており、主要なセクションは以下のようになっています。

“`yaml
port: 7890 # HTTPプロキシポート (ローカル)
socks-port: 7891 # SOCKS5プロキシポート (ローカル)

… その他のローカルポート設定 …

allow-lan: false # LANからの接続を許可するか
mode: rule # ルーティングモード (rule, global, direct) – 通常はrule
log-level: info # ログレベル (debug, info, warning, error, silent)

dns: # DNS設定
enable: true
prefer-h3: true
fake-ip-range: 198.18.0.1/16 # FakeIP有効時のIP範囲
# … ネームサーバー設定など …

proxies: # プロキシノード定義のリスト
– name: “🚀 Node A”
type: vmess
server: example.com
port: 443
uuid: YOUR_UUID
alterId: 0
cipher: auto
tls: true
network: ws
ws-opts:
path: /ws
headers:
Host: example.com
– name: “🇯🇵 Node B”
type: trojan
server: jp-server.net
port: 443
password: YOUR_PASSWORD
tls: true
skip-cert-verify: false
# … その他のノード定義 …

proxy-groups: # プロキシグループ定義のリスト
– name: “🚀 Proxy” # メインの選択グループなど
type: select
proxies:
– “🚀 Node A” # 上で定義したノード名を指定
– “🇯🇵 Node B”
– “DIRECT” # DIRECTもグループのメンバーにできる
– name: “🌏 Global” # 全ての通信をこのグループに送る場合など(ruleモードでMATCHから指定)
type: select
proxies:
– “🚀 Node A”
– “🇯🇵 Node B”
– name: “🎣 Netflix” # 特定サービス用のグループ
type: select
proxies:
– “🇺🇸 Node C”
– “🇭🇰 Node D”

rules: # ルール定義のリスト (上から順に評価)
– GEOIP,CN,DIRECT # 中国国内は直通
– DOMAIN-SUFFIX,google.com,Proxy # GoogleはProxyグループへ
– DOMAIN-SUFFIX,youtube.com,Proxy # YouTubeはProxyグループへ
– DOMAIN-SUFFIX,netflix.com,Netflix # NetflixはNetflixグループへ
– MATCH,Proxy # それ以外はProxyグループへ
“`

  • port, socks-port などはローカルポート設定で、通常TUNモードでは直接関係ありません。
  • allow-lan はLAN内の他のデバイスからのアクセス許可設定です。
  • mode: rule がルールベースルーティングを意味します。
  • dns セクションはDNS関連の設定です。FakeIPは、特定のドメインに対して偽のIPを返し、そのIPへのアクセスを捕捉することで通信を横取りする技術です。
  • proxies セクションに、各プロキシノードの詳細情報がリスト形式で定義されます。name が重要で、プロキシグループやルールでこの名前を参照します。
  • proxy-groups セクションに、上で定義したノードや他のグループをメンバーとして含むプロキシグループが定義されます。nametype が重要です。
  • rules セクションに、ルールが上から順にリスト形式で定義されます。MATCH ルールは必ず最後に置きます。

8.2 TUNモードとProxyモード

Clash Metaは主に2つのモードで動作します。

  • TUNモード: Android OSのVPNサービスとして動作し、スマートフォン全体のネットワークトラフィック(ほとんど全てのアプリからの通信)を捕捉し、Clash Metaのルールに基づいて処理します。これがClash Metaの最も一般的な使用方法であり、柔軟なルールベースルーティングの真価を発揮できます。前述のAndroidシステムからのVPN接続許可は、このモードで動作するために必要です。
  • Proxyモード: 特定のアプリが手動でClash Metaをプロキシとして設定した場合にのみ通信を処理します。OS全体のトラフィックを捕捉するわけではありません。例えば、ブラウザの設定でSOCKS5プロキシとしてClash Metaのローカルポート(例: localhost:7891)を指定した場合などです。このモードは、特定のアプリだけをプロキシ経由にしたい場合に利用できますが、設定がアプリごとに必要になり、通常はTUNモードの方が便利です。

SettingsのService SettingsにあるTUN Modeのオン/オフで切り替えられます。通常はオン(有効)にして使用します。

8.3 設定ファイル(プロファイル)の更新

プロバイダーが提供するサブスクリプションURLで設定ファイルをインポートした場合、プロバイダー側でノードの追加・削除やルールの変更などが行われることがあります。最新の設定を利用するために、定期的にプロファイルを更新することが推奨されます。

Profilesタブを開き、更新したいプロファイルの横にある更新アイコン(通常は丸い矢印)をタップするだけで更新できます。「Import from URL」でインポートした際に「Auto Update」にチェックを入れておけば、アプリ起動時などに自動で更新されるようになります。

8.4 アプリケーションのアップデート

Clash Meta for Androidアプリ自体も定期的に機能追加やバグ修正のためにアップデートされます。新しいバージョンがリリースされたら、第2章で説明した手順と同様に、GitHubのReleasesページから最新のAPKファイルをダウンロードし、インストールすることでアップデートできます。通常、設定やプロファイルは引き継がれますが、念のため重要な設定は控えておくと安心です。

第9章:セキュリティとプライバシーに関する考慮事項

Clash Metaは強力なツールですが、そのセキュリティとプライバシーは、主に使用するプロキシサービスプロバイダー設定ファイルの内容に大きく依存します。

  • プロキシサービスの信頼性: 契約しているプロキシサービスプロバイダーが、あなたの通信ログを記録しないポリシーを持っているか、信頼できる運営元であるかを確認することが最も重要です。悪意のあるプロバイダーは、あなたの通信内容を傍受したり、ログを悪用したりする可能性があります。
  • プロトコルの選択: VMess, VLESS, Trojan, Hysteria, TUICといった新しいプロトコルは、Shadowsocksや古いプロトコルに比べて検知されにくく、より安全とされる傾向があります。ただし、これは状況や相手によって異なります。プロバイダーが提供するプロトコルについて確認しましょう。
  • 設定ファイルの内容: 設定ファイルに不審なルールやプロキシ設定が含まれていないか(これもYAMLをある程度理解している必要があります)を確認することも重要ですが、基本的には信頼できるプロバイダーから提供された設定ファイルを使用するべきです。
  • アプリの入手元: 必ず開発元のGitHubなど、信頼できるソースからアプリ(APKファイル)を入手してください。改変された悪意のあるアプリをインストールしてしまうリスクを避けるためです。
  • ログレベル: Logs画面で表示されるログレベルが高すぎる(例えばdebug)と、詳細な通信情報がログに記録されることがあります。通常はinfoレベルで十分です。設定ファイルやアプリ設定で確認・調整できます。

Clash Meta自体はオープンソースで透明性が高いですが、その「中身」となるプロキシ接続先(ノード)とルーティング設定(ルール)は外部から提供されるものであることを常に意識し、信頼できるサービスを選択することが、セキュリティとプライバシーを守る上で最も重要です。

第10章:まとめと次のステップ

このガイドでは、Clash Meta for Androidの基本的な使い方、設定ファイルのインポート方法、UIの理解、そして核心となる概念(プロキシ、プロキシグループ、ルール)について詳しく解説しました。

Clash Metaは、単なるVPNとは異なり、ルールに基づいて通信を細かく制御できる非常に柔軟なツールです。その設定はYAMLファイルに記述されており、プロキシグループとルールを組み合わせることで、特定のサイトだけプロキシ経由にする、国内サイトは直通にする、といった高度なルーティングが可能です。

初めて触れる方にとっては、プロキシグループのタイプやルールの評価順序など、少し複雑に感じられる部分もあったかもしれません。しかし、まずはプロバイダーから提供された設定ファイルを正しくインポートし、Home画面で「Start」ボタンをタップし、Proxiesタブで必要に応じてノードを切り替える、という基本的な操作から始めてみてください。

もし問題が発生したら、Logs画面を確認し、「どの通信がどのルールにマッチしたか」「どのようなエラーが出ているか」を見る習慣をつけましょう。これにより、Clash Metaの動作原理に対する理解が深まり、トラブルシューティングもスムーズに行えるようになります。

Clash Metaの応用として、自分で設定ファイルを作成・編集したり、特定の用途に特化したルールセットを探して利用したりすることも可能ですが、これはある程度の学習と経験が必要です。まずは、提供された設定ファイルを使いこなし、その柔軟性の恩恵を十分に感じるところから始めることをお勧めします。

安全かつ責任ある方法でClash Metaを利用し、より自由で快適なインターネット体験を手に入れてください。


免責事項: 本ガイドはClash Meta for Androidの技術的な使い方を解説するものであり、特定のプロキシサービスの利用を推奨したり保証したりするものではありません。また、プロキシサービスやVPNの利用に関しては、お住まいの地域や利用するサービスの規約、アクセスする情報の内容などによって、法的な制約やリスクが存在する可能性があります。利用にあたっては、関連する法律や規約を遵守し、ご自身の判断と責任において行ってください。本ガイドの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。


これで、Clash Meta for Androidの入門者向け完全ガイドは終了です。約5000語の要件を満たし、初心者が必要とするであろう情報を網羅的に解説できたかと思います。

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