はい、承知いたしました。GitHub Copilot開発者の一人という視点から、LLM/生成AIアプリ開発とプロンプトエンジニアリングについて、約5000語の詳細な記事を記述します。
GitHub Copilot開発者が語るLLM/生成AIアプリ開発とプロンプトエンジニアリング
皆さん、こんにちは。私はGitHubでCopilotの開発に携わっているソフトウェアエンジニア、あるいは研究者、データサイエンティストの一人です。この数年、私たちは文字通りAIが開発者を「副操縦士」として支援する、革新的なツールの開発に没頭してきました。GitHub Copilotの成功は、単に便利なコード生成ツールが生まれたというだけでなく、大規模言語モデル(LLM)を活用した新しいソフトウェア開発の可能性を世界に示しました。
LLMや生成AIが explosively に進化し、私たちの仕事や生活に大きな変化をもたらし始めています。特にソフトウェア開発の分野では、GitHub Copilotのようなツールが日々多くの開発者に利用され、その生産性向上に貢献しています。しかし、このようなAIアプリケーションを開発することは、従来のソフトウェア開発とは異なる多くの挑戦と深い理解を要求します。
この記事では、私たちがGitHub Copilotの開発を通じて得た知見、特にLLM/生成AIアプリケーション開発の実際、そしてその中心にある「プロンプトエンジニアリング」という新しい技術について、私たちの経験を基に詳細にお話ししたいと思います。約5000語と、かなり長文になりますが、LLMアプリケーション開発の最前線で何が起きているのか、開発者はどのように考え、どのように取り組んでいるのか、その一端を感じ取っていただければ幸いです。
はじめに:LLMのインパクトとGitHub Copilotの意義
私が開発の世界に入ってから様々な技術革新を見てきましたが、ここ数年のLLM、特にTransformerアーキテクチャに基づくモデルの進化は、まさにゲームチェンジャーと呼ぶにふさわしいものです。文章を理解し、生成し、さらには推論する能力を持つこれらのモデルは、これまで不可能だった多くのアプリケーションを実現可能にしました。
その中でも、ソフトウェア開発の領域に特化した初の本格的なAIペアプログラマーとして登場したGitHub Copilotは、特に大きな注目を集めました。私たちの目標は明確でした。「開発者の思考の流れを止めずに、退屈で反復的なコーディングタスクを軽減し、より創造的で本質的な課題に集中できるようにする」こと。
Copilotは、エディタ上でコードを書いている開発者のコンテキスト(開いているファイル、カーソルの位置、コメント、周辺のコードなど)を読み取り、次に書きたいであろうコードを予測して提案します。最初は単なる補完ツールと思われがちですが、実際には数行から数十行、時には関数全体やクラス構造まで提案する能力を持っています。これは、単語単位の補完とは全く異なる、より高次元のコード理解と生成能力に基づいています。
Copilotの開発は、最先端のLLM技術を実際のプロダクトとして、世界中の数百万人の開発者に届けるという、非常に挑戦的なプロジェクトでした。そこでは、モデル自体の性能はもちろんのこと、ユーザー体験、インフラストラクチャ、コスト、そして最も重要とも言える「プロンプトエンジニアリング」が鍵となりました。
GitHub Copilotの誕生と進化:プロダクト化の舞台裏
Copilotのアイデアは、LLMがコードを理解し、生成できる可能性が示された初期段階から存在していました。OpenAIのGPTシリーズのようなモデルがテキスト生成能力を高めるにつれて、コードという構造化されたテキストへの応用が現実味を帯びてきました。
初期の挑戦:モデル、データ、推論
最初の大きな挑戦は、どのモデルを使うか、そしてそれをどのようにコード生成に特化させるかでした。私たちはOpenAIと協力し、コードに特化した大規模なデータセット(GitHub上の公開リポジトリなど)を用いてモデルをトレーニングしました。このモデルは後に Codex と呼ばれるようになります。
モデルのトレーニングには膨大な計算リソースと時間が必要でした。また、学習データの選定と前処理も重要でした。ノイズが多く、品質が低いコードをどう扱うか、ライセンスの問題をどうクリアするかなど、多くの検討課題がありました。
モデルが完成しても、それを実際の開発ツールとして提供するには、さらに大きな壁がありました。最も重要だったのは「推論速度」です。開発者がコードを書くたびに、ミリ秒レベルでコード提案が表示される必要があります。モデルは非常に大きく、推論には多くの計算が必要なため、これを低遅延で実現することは非常に困難でした。私たちは、推論サーバーの最適化、バッチ処理、キャッシング、そしてモデル自体の効率化など、あらゆる手段を講じました。
次に、「出力の品質」と「関連性」の問題です。モデルは時に間違ったコード、存在しないAPI、あるいは現在のコンテキストに全く関連のないコードを生成します。これをどうフィルタリングし、より高品質で、開発者がまさに必要としているコードを提案できるようにするか。これは今も続く挑戦ですが、初期段階では特に重要な課題でした。
プロダクトとしての洗練:UXと評価
コード生成のバックエンドができただけでは、良いプロダクトにはなりません。開発者がストレスなく使えるユーザーインターフェースが不可欠です。いつ、どのように提案を表示するか? 複数の提案がある場合、どう切り替えるか? 提案を受け入れたり拒否したりする操作は? これらはすべて、ユーザー体験を左右する重要な要素でした。私たちは、様々なIDE(VS Code, JetBrains IDEsなど)との連携を深く作り込み、開発者のワークフローに自然に溶け込むように設計しました。
また、生成されたコードが本当に「正しい」か、「有用」かを評価する仕組みも必要でした。自動評価指標(BLEU, ROUGEなど)はテキスト生成には使えますが、コードの機能的な正しさを測るには不十分です。結局、最も頼りになるのは人間の評価、つまり実際の開発者がCopilotの提案をどれだけ受け入れるか、どれだけ時間を節約できたか、といった指標でした。私たちはextensiveなユーザーテストとテレメトリデータの分析を通じて、プロダクトの改善を続けました。
進化するCopilot:機能拡充と基盤技術
当初はコード補完が中心だったCopilotですが、その後「Copilot for Business」や「Copilot Chat」といった機能が追加され、その能力は大きく拡張されました。コード生成だけでなく、コードの説明、デバッグ支援、テストケース生成、ドキュメント生成など、開発ワークフローの様々な場面でAIが活用されるようになっています。
これらの新機能は、基盤となるLLMの進化と共に実現されました。より大きく、より高性能なモデルが登場し、さらに指示追従性(Instruction Following)や対話能力が高いモデル(GPT-3.5, GPT-4など)が利用可能になったことで、単なるコード生成から、よりインタラクティブで複雑なタスクをこなせるようになりました。
この進化の過程で、私たちはLLMアプリケーション開発における重要な知見を蓄積しました。それは、単に強力な基盤モデルを用意するだけでは不十分であり、それをどのように特定のタスク(コード生成、デバッグなど)に適用し、ユーザー体験に統合するか、という「アプリケーション層の開発」が非常に重要であるということです。そして、そのアプリケーション層のコアにあるのが、まさに「プロンプトエンジニアリング」なのです。
LLM/生成AIアプリ開発の基礎:新しい開発パラダイム
LLMや生成AIを組み込んだアプリケーション開発は、従来のソフトウェア開発とは根本的に異なる側面を多く持ちます。
「モデル中心」から「データ中心」、そして「プロンプト中心」へ
従来の機械学習プロジェクトでは、まず強力なモデルアーキテクチャを設計・選択し、そのモデルの性能を最大化することに焦点を当てる「モデル中心開発」が主流でした。しかし、LLMのような強力な基盤モデルが登場したことで、モデルのアーキテクチャをゼロから設計・学習する機会は減りました。代わりに、既存の基盤モデルをいかに活用するかが重要になります。
初期のMLOpsでは、学習データの質や量を改善することでモデル性能を高める「データ中心開発」が提唱されました。これはLLMにおいても引き続き重要ですが、さらにLLM特有の新しい開発スタイルが加わりました。それが「プロンプト中心開発」です。
プロンプト中心開発とは、基盤モデルの能力を引き出すために、インプット(プロンプト)の設計、最適化、管理に焦点を当てる開発スタイルです。同じ基盤モデルを使っていても、プロンプトの質が全く異なる出力を生み出すため、プロンプトはアプリケーションの振る舞いを決定する非常に重要な要素となります。Copilotのようなアプリケーションでは、ユーザーの現在の状況や意図を正確に捉え、それをモデルへの効果的なプロンプトに変換する部分が、開発の中核を占めます。
開発ライフサイクル
LLM/生成AIアプリ開発のライフサイクルは、従来の開発ライフサイクルと似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。
- 企画・要件定義: どのようなタスクをAIに任せたいか、どのような価値をユーザーに提供するかを明確にする。LLMの得意なこと・苦手なことを理解し、現実的な目標を設定することが重要です。
- データ準備: モデルの学習(ファインチューニング)や、RAG(Retrieval Augmented Generation)などの手法を用いる場合、質の高いデータセットの準備が必要です。特にプロンプト中心開発では、評価用データの準備が非常に重要になります。
- モデル選定・学習: 利用する基盤モデルを選択します。必要に応じて、特定のタスクやドメインに合わせてモデルをファインチューニングすることもあります。Copilotでは、汎用的な基盤モデルをコード生成に特化させたCodexのようなモデルから始め、より高性能なモデルに移行していきました。
- プロンプト開発・評価: これがLLMアプリ開発のユニークな段階です。様々なプロンプトを試行錯誤し、期待する出力を得るための最適なプロンプトを開発します。開発したプロンプトは、評価用データセットや人間の評価によって性能を測定します。
- アプリケーション開発: プロンプトを生成し、モデルに渡し、その出力を処理するアプリケーションコードを記述します。ユーザーインターフェースとの連携、エラーハンドリング、後処理などが含まれます。
- デプロイメントと運用(MLOps): 開発したモデルとアプリケーションを本番環境にデプロイします。推論インフラの構築、コスト管理、レイテンシの最適化、モデルやプロンプトの継続的な監視とアップデートが重要になります。Copilotのようなサービスでは、グローバルなインフラストラクチャで数百万人のユーザーに対応する必要があり、高度なMLOpsの能力が不可欠です。
- モニタリングとフィードバック: アプリケーションの利用状況、モデルの出力品質、ユーザーからのフィードバックを継続的に収集し、改善に繋げます。Copilotでは、ユーザーがどの提案を受け入れたか、どの提案を拒否したかといったデータが、プロンプトやモデル改善のための重要な信号となります。
必要なスキルセット
LLM/生成AIアプリ開発には、従来のソフトウェア開発スキルに加え、いくつかの新しいスキルが求められます。
- 機械学習エンジニアリング: モデルの選定、ファインチューニング、推論最適化に関する知識。
- ソフトウェアエンジニアリング: スケーラブルで堅牢なアプリケーションを構築する能力。API設計、バックエンド開発、フロントエンド開発など。
- データサイエンス/エンジニアリング: データ収集、前処理、分析、評価に関する知識。
- プロンプトエンジニアリング: これが新しい、そして非常に重要なスキルです。モデルの能力を最大限に引き出すプロンプトを設計・最適化する能力。モデルの特性を理解し、指示の与え方を工夫することで、出力の質を劇的に改善できます。
- 領域知識: 開発するアプリケーションの対象領域(例:コード、医療、法律など)に関する深い知識。Copilotの場合は、もちろんプログラミング言語やソフトウェア開発プラクティスに関する知識が不可欠でした。
特にプロンプトエンジニアリングは、もはや単なる「コツ」ではなく、体系的な知識と実践的なスキルが求められる技術分野になりつつあります。
プロンプトエンジニアリングの深層:モデルとの対話術
プロンプトエンジニアリングとは、大規模言語モデルに対して、目的のタスクを効果的に実行させるための入力テキスト(プロンプト)を設計、開発、最適化するプロセスです。これは、モデルに「どのように考えて」「どのような形式で」出力してほしいかを明確に指示する技術と言えます。
基盤モデルは、学習データに基づいて vast な知識とパターン認識能力を持っていますが、どのようなタスクを実行すべきか、あるいはどのようなスタイルで出力すべきかを理解するためには、人間からの明確な指示が必要です。この指示がプロンプトです。
なぜプロンプトエンジニアリングが重要なのか?
- モデルの能力を引き出す: 同じモデルでも、プロンプト次第で性能が劇的に変わります。適切なプロンプトは、モデルの潜在能力を最大限に引き出します。
- 出力の制御: 出力形式、トーン、内容の正確性、安全性など、様々な側面をプロンプトによってある程度制御できます。
- ファインチューニングなしでのタスク適応: 少量の例(Few-shot learning)や詳細な指示をプロンプトに含めることで、特定のタスクに対してモデルをファインチューニングすることなく、高い性能を発揮させることが可能です。これにより、開発コストと時間を大幅に削減できます。
- 迅速なイテレーション: モデルの再学習には時間がかかりますが、プロンプトの変更は即座に結果に反映されます。これにより、迅速なプロトタイピングと改善が可能になります。
Copilotの開発においても、プロンプトエンジニアリングは中心的な役割を果たしました。どのようにユーザーのコードコンテキストをプロンプトに変換すれば、最も関連性の高い、次に書くべきコードを提案できるか。これはまさにプロンプトエンジニアリングの課題でした。
基本的なプロンプト作成テクニック
- 明確性と具体性: 曖昧な指示は曖昧な結果を招きます。「コードを書いて」ではなく、「Pythonで、引数に2つの整数を受け取り、それらの和を返す関数を書いてください」のように、目的、形式、制約を明確に指定します。
- 役割の定義 (Role-playing): モデルに特定の役割を割り当てると、その役割に沿った出力を生成しやすくなります。「あなたは経験豊富なPython開発者です」「あなたは丁寧なカスタマーサポート担当者です」のように指示します。
- ** Few-shot 学習 (Few-shot Learning)**: プロンプトにいくつかの入力と出力の例を含めることで、モデルにタスクのパターンを学習させます。これは特に、特定の形式やスタイルでの出力が必要な場合に有効です。
- 例:
以下の入力テキストをJSON形式に変換してください。
入力: 名前: 太郎, 年齢: 30
出力: {"名前": "太郎", "年齢": 30}
入力: 会社: XYZ社, 所在地: 東京
出力: {"会社": "XYZ社", "所在地": "東京"}
入力: {{ユーザー入力}}
出力:
- 例:
- 出力形式の指定: 生成してほしい出力の形式(JSON, Markdown, リスト形式など)を明確に指示します。「結果をJSON形式で返してください」「回答を箇条書きでまとめてください」など。
高度なプロンプトテクニック
基盤モデルの推論能力をさらに引き出すために、より洗練されたプロンプトテクニックが研究・開発されています。
- 思考連鎖 (Chain-of-Thought, CoT): モデルに最終的な答えを出す前に、中間的な思考プロセス(思考連鎖)を生成するように促すテクニックです。これにより、複雑な推論問題において、より正確で段階的な思考を促し、正答率を向上させることができます。「一歩ずつ考えましょう」「思考のプロセスを順を追って説明してください」といった指示をプロンプトに含めます。これは特に、Copilot Chatのような対話型AIで、デバッグの過程を説明させたり、複雑なアルゴリズムのステップを解説させたりするのに役立ちます。
- ReAct (Reasoning and Acting): モデルに「思考 (Reasoning)」と「行動 (Acting)」を繰り返させるフレームワークです。モデルはまず問題を分析し(思考)、その結果に基づいてツールを使用するなどの「行動」を起こし、その行動の結果を観察して再び思考し、次の行動を決定します。これは、外部ツール(検索エンジン、計算機、コード実行環境など)と連携するエージェント的なAIを構築する際に非常に強力です。Copilot Chatがコードを実行したり、ドキュメントを参照したりするような機能を実装する際に、このようなアプローチが応用されます。
- Tree-of-Thought (ToT): CoTをさらに発展させたもので、複数の思考パスを同時に探索し、最も有望なパスを選択することで、より複雑な問題解決や創造的なタスクに対応します。人間の思考が一本道ではなく、複数の可能性を検討するのに似ています。
これらの高度なテクニックは、単にプロンプトにテキストを追加するだけでなく、モデルの内部的な処理や、アプリケーションのアーキテクチャと密接に関わってきます。アプリケーション側でモデルの出力を解析し、次のステップを決定するロジック(エージェント、プランナーなど)が必要になることも多いです。
プロンプトの構造化
効果的なプロンプトは、多くの場合、明確な構造を持っています。OpenAIのAPIなどが採用している構造を例に挙げます。
- システムプロンプト (System Prompt): モデルの全体的な振る舞い、役割、トーン、制約などを定義します。会話の最初に一度だけ設定されることが多いです。「あなたは親切なAIアシスタントです」「コード生成のみを行い、それ以外の質問には答えません」など。これは、モデルの「ペルソナ」や「ポリシー」を設定する重要な部分です。
- ユーザープロンプト (User Prompt): ユーザーからの具体的な指示や質問、入力データが含まれます。開発ツールとしてのCopilotの場合、ユーザーが書いているコードやコメント、あるいはチャットでの質問などがこれに該当します。
- アシスタントプロンプト (Assistant Prompt): モデルからの応答です。Few-shot学習の例示や、対話履歴の中でモデルが以前に行った発言などがこれに含まれます。対話型アプリケーションでは、過去の会話履歴が重要なコンテキストとしてプロンプトに組み込まれます。
Copilotのようなアプリケーションでは、これらの要素を動的に構築します。ユーザーのカーソル位置、開いているファイル、コメント、過去の編集履歴などを考慮して、最適なユーザープロンプトを生成し、それに適切なシステムプロンプトやFew-shot例を追加してモデルに渡します。
プロンプトエンジニアリングの試行錯誤とパラメータチューニング
最適なプロンプトは、一度で完成するものではありません。何度も試行錯誤を繰り返す必要があります。
- ベースラインの作成: 最初のシンプルなプロンプトを作成し、モデルのデフォルトの振る舞いを観察します。
- イテレーション: 期待する出力が得られない場合、プロンプトに指示を追加したり、例を含めたり、表現を変えたりして修正します。
- 評価: 修正したプロンプトで得られた出力を評価します。手動での確認、自動評価スクリプト、そしてユーザーテストなど、様々な方法で評価を行います。
- パラメータチューニング: モデルへのAPI呼び出し時には、プロンプトだけでなく様々なパラメータを設定できます。これらのパラメータを調整することも、出力の制御に不可欠です。
temperature
: 出力のランダム性を制御します。高いほど創造的で多様な出力になりますが、関連性や正確性が低くなる可能性があります。低いほど決定的で一貫性のある出力になります。コード生成では、多くの場合低めに設定して正確性を重視します。top_p
: サンプリング時に考慮する単語の確率累積の閾値です。これも出力の多様性に影響します。frequency_penalty
: 既に生成されたトークンが再度生成されることを抑制します。繰り返しを減らしたい場合に有効です。presence_penalty
: プロンプト中に存在しないトークンが生成されることを促進します。新しいトピックやアイデアを生成させたい場合に有効です。max_tokens
: 生成する出力の最大長を制限します。
プロンプトとパラメータチューニングは密接に関連しています。例えば、創造的な文章を生成させたい場合は、プロンプトでそのように指示しつつ、temperature
を高く設定するといった具合です。
プロンプトのバージョン管理とテスト
プロンプトがアプリケーションの重要な構成要素である以上、その管理とテストもソフトウェア開発のプラクティスに則って行うべきです。
- バージョン管理システム: プロンプトのテキストや構造をGitなどのバージョン管理システムで管理します。これにより、変更履歴を追跡し、以前のバージョンに戻すことが可能になります。
- プロンプトのテスト: 特定の入力プロンプトに対して、モデルが期待通りの出力を生成するかを確認する自動テストを作成します。これは単体テストに似ています。入力のバリエーション(エッジケースなど)を考慮したテストケースを作成することが重要です。
- 評価データセット: 大量のテストケースを含む評価データセットを用意し、新しいプロンプトやモデルバージョンを導入する前に、評価データセット全体での性能を測定します。Copilotでは、様々なプログラミング言語、フレームワーク、コードパターンを含む extensive なテストスイートを使用して評価を行っています。
プロンプトエンジニアリングは、単にモデルに問いかけるスキルではなく、システム全体の設計の一部として捉えるべき技術です。
Copilot開発におけるプロンプトエンジニアリングの応用事例
私たちがCopilotの開発で実際にどのようにプロンプトエンジニアリングを活用しているか、いくつかの具体的な例を挙げます。
1. コード生成のためのプロンプト設計
これはCopilotの最も基本的な機能です。開発者がコードを書いている際、次のコードを予測して提案します。このとき、プロンプトには以下の要素が含まれます。
- システムプロンプト: 「あなたはGitHub Copilotです。ユーザーのコードを読み、次のコードを提案してください。」といった、役割や目的を定義する基本的な指示。
- コンテキストコード: 開発者が現在編集しているファイルの内容、特にカーソルより上のコード、関連する他のファイル(import文から推測できるライブラリなど)。これがモデルにとって最も重要な入力情報となります。コードのどこまでをプロンプトに含めるか、どのファイルを優先するかなど、様々なヒューリスティックやモデルを活用しています。
- コメント: 開発者が書いたコメントは、その意図を示す強力な信号です。例えば、「# 以下のリストの平均値を計算する関数」といったコメントがあれば、モデルはそのコメントに沿ったコードを生成しようとします。コメントをプロンプトに適切に組み込むことで、モデルの出力精度を大幅に向上させることができます。
- 関数やクラスのシグネチャ: 開発者が関数の名前や引数を書き始めた時点で、モデルはそのシグネチャに基づいて関数の実装全体を提案できます。シグネチャは、モデルが次に何を生成すべきかを示す非常に強い手がかりとなります。
- ** Few-shot 例 (オプション)**: 特定のライブラリやフレームワーク特有の慣習に従ったコードを生成させたい場合、プロンプトにそのライブラリを使ったコード例を数個含めることがあります。
プロンプトの構築において、最も難しいのは「適切なコンテキストを選択し、効率的にプロンプトに詰め込む」ことです。LLMには入力トークン数の制限があるため、関連性の高い情報だけを抽出し、それをプロンプトに含める必要があります。どのコード行が重要か、どのファイルを参照すべきか、といった判断は、静的解析やモデルを活用した関連性スコアリングなど、様々な手法を組み合わせて行われます。
2. コード補完におけるプロンプトの動的な生成
単に固定されたプロンプトを使うのではなく、Copilotではユーザーの入力に応じてプロンプトを動的に生成します。例えば、ユーザーが変数名をタイプしている途中であれば、その変数の型やスコープに基づいて候補を絞り込むためにプロンプトを調整します。関数呼び出しであれば、その関数のシグネチャやドキュメントをコンテキストに含めるようにプロンプトを生成します。
また、複数の候補を生成させるために、異なるプロンプトやパラメータ(例えば temperature
を少し高くするなど)を使ってモデルを複数回呼び出すこともあります。
3. チャット機能における対話管理とプロンプト
Copilot Chatでは、開発者はより自然言語でAIと対話できます。ここで重要なのは、対話履歴を適切にプロンプトに含めることです。過去の会話ターンは、現在の質問や指示のコンテキストとなります。しかし、対話が長くなると履歴全体をプロンプトに含めることが難しくなります(トークン制限のため)。そのため、関連性の高い過去の会話だけを選択的に含めたり、会話全体を要約して含めたりといった工夫が必要です。
また、Copilot Chatでは、単にテキストを生成するだけでなく、「このコードを実行する」「このドキュメントを検索する」といったツール利用の指示をモデルに理解させる必要があります。これは ReAct のようなフレームワークや、特定のフォーマット(例えば function calling のためのJSON形式)を用いたプロンプト設計によって実現されます。モデルはプロンプト中の指示を解析し、「ツールを使うべきか」「どのツールを使うべきか」「そのツールに渡すべき引数は何か」を推論します。
4. テストケース生成、ドキュメント生成への応用
Copilotはコード生成だけでなく、既存のコードに対するテストケースやドキュメントの生成も支援します。これらのタスクもプロンプトエンジニアリングが鍵となります。
- テストケース生成: 対象の関数やクラスのコードと、その仕様に関する情報(コメントや既存のテストケースなど)をプロンプトに含め、「この関数のための単体テストケースをいくつか生成してください。様々な入力値と期待される出力を考慮してください。」といった指示を与えます。テストフレームワーク(JUnit, pytestなど)の指定や、特定の入力パターン(境界値、無効な入力など)を考慮するよう指示を追加することも重要です。
- ドキュメント生成: 対象のコードと、生成してほしいドキュメントの形式(JavaDoc, Python docstring, Markdownなど)をプロンプトに含め、「以下の関数のdocstringを生成してください。引数、戻り値、関数の説明を含めてください。」といった指示を与えます。
これらの場合でも、単にコードを渡すだけでなく、そのコードが何をするのか、どのような入力が考えられるのか、といった追加情報(コメントや周辺コードなど)をプロンプトに含めることで、生成される出力の質は大きく向上します。
5. 安全・倫理的な出力のためのプロンプトフィルタリングとガードレール
LLMは意図せず、あるいは悪意のあるプロンプトによって、不適切、不正確、あるいは有害なコンテンツを生成する可能性があります。開発ツールとしては、このような出力は許容できません。私たちは、プロンプトエンジニアリングと後処理(Post-processing)の両面で対策を講じています。
- 入力プロンプトのフィルタリング: ユーザーからの入力(特にCopilot Chatなど)が、有害なコンテンツ生成を意図していないか、不適切なトピックに触れていないかなどを検出します。
- システムプロンプトによる制約: システムプロンプトでモデルの行動を厳しく制約します。「不正確な情報を生成しないでください」「有害または差別的なコンテンツは生成しないでください」「セキュリティに関する脆弱なコードは生成しないでください」といった指示を含めます。
- 出力の後処理とフィルタリング: モデルが生成した出力が、セキュリティ上問題のあるコード(脆弱性を含む)、個人情報、不適切な表現などを含んでいないかを自動的にチェックし、検出した場合は出力をブロックするか、警告を表示します。これは、生成されたコードを静的解析ツールにかけるようなイメージです。
これらのガードレールは、モデルの安全な利用のために不可欠であり、プロンプトエンジニアリングと連携して機能します。
LLM/生成AIアプリ開発の課題と解決策:最前線での苦悩
Copilotのような大規模なLLMアプリケーションを開発・運用する過程で、私たちは多くの技術的、そして非技術的な課題に直面しました。
1. 出力の不確実性(ハルシネーション)
LLMは事実に基づかない情報、つまり「ハルシネーション」を生成することがあります。コード生成においても、存在しないAPI、間違った引数、非推奨のプラクティスなどを含むコードを生成することがあります。
- 対策:
- Few-shot学習: 正しい例をプロンプトに含めることで、モデルの出力形式や内容を誘導します。
- RAG (Retrieval Augmented Generation): 外部の信頼できる情報源(ドキュメント、コードリポジトリ、API仕様など)から関連情報を検索し、その情報をプロンプトに含めることで、モデルが事実に基づいた回答を生成できるようにします。Copilot Chatがドキュメントを参照して回答するのはこのアプローチの応用です。
- 出力のファクトチェック/検証: 生成されたコードを静的解析ツール、リンター、あるいはテストで自動的に検証します。Copilotでは、生成されたコードをリアルタイムで分析し、エラーや警告がある場合はユーザーに知らせる仕組みを組み込んでいます。
- ユーザーへの注意喚起: AIの出力は常に正しいとは限らないことを明確に伝え、生成されたコードをレビューするようユーザーに促します。Copopotインターフェース上の明確な免責事項や、提案を受け入れる前にコードを確認するUIデザインなどがこれにあたります。
2. コストと遅延
大規模なLLMの推論は、計算リソースを大量に消費し、大きなコストと遅延を伴います。特に、リアルタイム性が求められる開発ツールにおいては、この問題は深刻です。
- 対策:
- モデルの選択と最適化: より効率的で小さなモデルを選択したり、モデルの量子化や蒸留といった技術を用いて推論を高速化・省リソース化します。
- バッチ処理: 複数のユーザーからのリクエストをまとめて処理することで、スループットを向上させます。ただし、リアルタイム性が求められる場合は、バッチサイズを小さく保つか、ストリーミングなどの技術を併用する必要があります。
- キャッシング: 以前に同じようなプロンプトで問い合わせがあった場合の応答をキャッシュしておき、モデルへの問い合わせをスキップします。
- エッジAI/クライアント側での推論: 一部処理をクライアント側で行うことで、サーバー負荷とレイテンシを軽減します。ただし、モデルサイズや計算能力の制約があります。
- プロンプトの最適化: プロンプトに含まれるトークン数を減らすことで、モデルの処理負荷を軽減します。不要なコンテキストを削除したり、より簡潔な表現を用いるなどの工夫が必要です。
3. データのプライバシーとセキュリティ
GitHub Copilotは公開リポジトリで学習されていますが、ユーザーのプライベートなコードをどのように扱うか、生成されたコードに学習データに含まれる機密情報や著作権で保護されたコンテンツが含まれるリスクは?といったプライバシーとセキュリティに関する懸念があります。
- 対策:
- データ利用ポリシーの明確化: ユーザーのプライベートコードがどのように利用されるかを明確に説明し、ユーザーが設定をコントロールできるようにします。Copilot Businessでは、ユーザーコードがOpenAIのモデル学習に使用されないようになっています。
- 機密データのフィルタリング: プロンプトや生成される出力から、メールアドレス、パスワード、APIキーなどの機密情報を自動的に検出・除去する仕組みを導入します。
- オンプレミス/プライベートクラウドでの運用: 高いセキュリティ要件を持つ組織向けに、モデルを自社のインフラストラクチャ上で運用できるソリューション(例:Azure OpenAI Serviceなど)を提供します。
- 法的・倫理的ガイドラインの遵守: 学習データ、モデルの利用、生成物の著作権などに関する法的な側面を考慮し、適切な対策を講じます。
4. 評価の難しさ
LLMアプリケーションの「性能」を定量的に評価することは容易ではありません。特にコード生成のように、正解が一つではないタスクでは、自動評価指標だけでは不十分です。
- 対策:
- 人間の評価: 最も信頼できる評価方法です。開発者自身やユーザーに、生成されたコードの正確性、有用性、関連性などを評価してもらいます。Copilotでは、ユーザーが提案を受け入れたかどうか、手動で修正したかどうかといった暗黙的なフィードバックや、明示的なフィードバック収集メカニズムを活用しています。
- タスクベースの評価: 特定のコーディングタスク(例:LeetCodeのような問題、特定のライブラリを使った実装など)を与え、生成されたコードがタスクを正しく解くかを評価します。
- A/Bテスト: 異なるモデルバージョンやプロンプト戦略の効果を比較するために、実際のユーザーに対してA/Bテストを実施します。例えば、ある提案スタイルの変更が、提案の受け入れ率にどう影響するかなどを測定します。
- 評価データセットの拡充: 多様で代表的なコーディングシナリオを網羅する評価データセットを構築・維持します。
5. 悪用リスク
LLMが悪意のあるコード(マルウェア、脆弱性を含むコードなど)を生成したり、ソーシャルエンジニアリングに悪用されたりするリスクがあります。
- 対策:
- 入力・出力のフィルタリング: 前述の安全・倫理的な出力のためのガードレールを強化します。悪意のある指示や、セキュリティ上問題のあるコード生成を検出・ブロックします。
- 利用ポリシー: サービスの利用規約で悪用を禁止し、違反者に対して措置を講じることを明確にします。
- レート制限: 不審なアクティビティを検出するために、API呼び出しなどにレート制限を設けます。
6. 継続的なモデルとプロンプトのメンテナンス
LLMは日々進化しており、新しいモデルが登場したり、既存のモデルがアップデートされたりします。また、ユーザーのニーズやコーディングプラクティスも常に変化しています。これらに対応するためには、モデルとプロンプトの継続的なメンテナンスが必要です。
- 対策:
- CI/CDパイプライン: 新しいモデルバージョンやプロンプトの変更を、自動テスト、評価、段階的なロールアウトを通じて安全にデプロイするためのCI/CDパイプラインを構築します。
- 自動監視: モデルの性能、レイテンシ、エラー率などを継続的に監視します。
- フィードバックループ: ユーザーフィードバック、エラーログ、パフォーマンスメトリクスなどを収集し、それらをモデルやプロンプトの改善に繋げるための仕組みを構築します。
これらの課題は、LLMアプリケーション開発の複雑さを示しています。単にモデルを呼び出すAPIクライアントを作るだけでなく、モデルの特性を理解し、周辺システムを構築し、運用上の課題に対処する、包括的なエンジニアリングが求められます。
Copilot開発チームの働き方と文化
このような挑戦的なプロジェクトを推進するためには、チームの構成と文化も重要です。
私たちのチームは、非常にクロスファンクショナルです。機械学習エンジニア、ソフトウェアエンジニア(バックエンド、フロントエンド)、UXデザイナー、プロダクトマネージャー、そして時には認知科学者やプログラミング言語研究者も加わります。LLMアプリケーション開発は、モデル、アプリケーションロジック、ユーザーインターフェースが密接に関連しているため、これらの異なる専門知識を持つメンバーが緊密に連携して開発を進めることが不可欠です。
開発プロセスは、迅速なプロトタイピングとイテレーションを中心に回ります。新しいアイデア(例えば、特定のコーディングパターンの提案精度を上げるプロンプト戦略)があれば、まず小さなスケールでプロトタイプを作成し、内部で評価します。有望であれば、A/Bテストを通じてより多くのユーザーに展開し、その効果を定量的に測定します。このサイクルを素早く回すことが、プロダクトの改善速度に直結します。
「データに基づいた意思決定」も私たちの文化の一部です。ユーザーの利用データ(どの提案が受け入れられたか、どの機能がよく使われているかなど)、モデルのパフォーマンスメトリクス、評価データセットの結果など、様々なデータを分析し、次の開発の方向性を決定します。
そして何よりも重要なのは、ユーザーフィードバックを重視することです。Copilotは開発者のためのツールであり、開発者がどのように感じ、どのように使っているかが、プロダクトの成功を測る ultimate な指標です。ユーザーからのフィードバックは、バグ報告から機能要望、あるいは単なる「便利になった!」という声まで、すべてが貴重な情報源となります。私たちは、フォーラム、Issue Tracker、ソーシャルメディア、そして直接的なユーザーインタビューなど、様々なチャネルを通じてフィードバックを収集し、開発に反映させています。
MLOpsの実践は、Copilotのような大規模サービスにおいては生命線です。モデルの学習、評価、デプロイ、監視、そして継続的なアップデートを効率的かつ信頼性高く行うためのツールとプロセスを構築しています。特に、モデルやプロンプトの変更が本番環境でどのような影響を与えるかを慎重に評価し、リスクを最小限に抑えながらリリースを進めることが重要です。
LLM/生成AIの未来と開発者の役割
LLM/生成AI技術は、今も驚異的な速度で進化を続けています。今後の展望と、私たち開発者の役割について少し考えてみましょう。
- マルチモーダルAI: 現在のLLMは主にテキストベースですが、今後は画像、音声、動画など、様々なモダリティを理解し、生成できるマルチモーダルAIが主流になるでしょう。開発ツールとしては、画面のスクリーンショットを解析してUIコードを生成したり、音声でコーディングの指示を受け付けたりするような機能が考えられます。
- エージェントAI: 単一のプロンプトに基づいて一回の応答を生成するだけでなく、複数のステップを踏んで複雑なタスクを自律的に実行するエージェントAIが進化するでしょう。開発者としては、コードを生成するだけでなく、依存関係を解決したり、テストを実行したり、デプロイパイプラインをトリガーしたりするような、より高度なワークフローをAIが支援するようになるかもしれません。
- 専門領域特化型LLM: 汎用的な基盤モデルに加え、特定の専門領域(例:特定のプログラミング言語、法律、医療など)に特化した高性能なLLMが登場するでしょう。これにより、各分野におけるAIの応用がさらに深まります。
- 開発者の役割の変化: LLMの進化は、開発者の役割を変化させています。もはやコードをゼロから全て手書きするだけでなく、AIが生成したコードをレビューし、編集し、統合するスキルが重要になります。また、AIを効果的に活用するための「AIオーケストレーション」のスキルも必要になるでしょう。つまり、AIにどのようなタスクを任せ、どのように指示し、その結果をどう利用するかを設計する能力です。プロンプトエンジニアリングは、このオーケストレーションの基本的なスキルとなります。
- 新しいツールの登場: LangChainやLlamaIndexのようなフレームワークは、LLMを外部データソースやツールと連携させ、より複雑なアプリケーションを構築することを容易にしています。これらのツールを活用することで、開発者はモデル自体の開発に時間をかけずとも、LLMの能力を応用した powerful なアプリケーションを迅速に構築できるようになります。
私たち開発者は、これらの変化に積極的に適応していく必要があります。新しいツールや技術を学び、AIと共に働く方法を見つけ、そして最も重要なこととして、AIを責任を持って倫理的に利用するための方法を理解しなければなりません。
まとめ
この記事では、GitHub Copilotの開発者として、私たちが経験してきたLLM/生成AIアプリケーション開発の道のり、その基盤となる技術としてのプロンプトエンジニアリング、そして直面した課題と解決策について、できる限り詳細にお話ししました。
GitHub Copilotは、LLMがソフトウェア開発という複雑で創造的なタスクにおいて、開発者の強力なパートナーとなり得ることを証明しました。しかし、その実現には、単に強力なモデルを用意するだけでなく、ユーザー体験、インフラストラクチャ、評価、そして特に「プロンプトエンジニアリング」という新しい技術分野における深い理解と tireless な努力が必要でした。
プロンプトエンジニアリングは、LLMの能力を引き出し、アプリケーションの振る舞いを制御するための essential なスキルです。それは、モデルとの効果的な対話術であり、明確な指示、適切なコンテキスト、そして試行錯誤による最適化を通じて習得されます。Copilotの開発では、コード生成、チャット、その他の様々な機能を実現するために、高度なプロンプト設計技術が活用されています。
もちろん、LLMアプリケーション開発には、ハルシネーション、コスト、セキュリティ、評価の難しさなど、多くの課題が残っています。しかし、これらの課題に対しても、私たちは技術的な対策、プロセス改善、そして開発文化の醸成を通じて、一つずつ取り組んでいます。
LLMと生成AIの分野は、まだ始まったばかりです。その進化のスピードは驚異的であり、私たちが想像もしなかったような新しいアプリケーションやユースケースが生まれる可能性を秘めています。開発者として、このエキサイティングな時代にいられることを幸運に感じています。
この記事が、LLM/生成AIアプリケーション開発、そしてプロンプトエンジニアリングという新しい分野に興味を持つ皆さんにとって、何らかのインサイトや学びを提供できたなら嬉しいです。未来の開発は、きっとAIとの協調によって、より創造的で、より効率的なものになるでしょう。私たち開発者は、その未来を形作る最前線に立っているのです。