HTML formatterの機能・使い方・おすすめツールを徹底解説
WebサイトやWebアプリケーション開発において、HTMLコードの記述は避けて通れません。しかし、手作業でHTMLコードを整形し、常に統一されたスタイルを維持するのは非常に手間がかかり、非効率的です。そこで活躍するのが「HTML formatter」です。
HTML formatterは、記述されたHTMLコードを自動的に整形し、一貫性のある美しいコードに整えてくれるツールです。個人の開発効率を上げるだけでなく、チーム開発におけるコード品質の統一や、コードレビューの効率化にも貢献します。
この記事では、HTML formatterの基本的な機能から、具体的な使い方、そしておすすめのツールまでを徹底的に解説します。この記事を読むことで、HTML formatterを効果的に活用し、より高品質でメンテナンスしやすいコードを書くための知識が得られるでしょう。
はじめに:なぜHTML formatterが必要なのか?
HTMLコードを書く際、特に意識せずに記述していると、インデントの深さ、改行の位置、属性の順序、空白の入れ方などが人によってバラバラになりがちです。たとえ一人の開発者が書いたコードであっても、時間が経つと規約を忘れてスタイルが崩れることがあります。
整形されていない、あるいはスタイルが統一されていないHTMLコードには、以下のような問題点があります。
- 可読性の低下: コードの構造が一目で理解しにくくなります。どこからどこまでが親要素で、どの要素が子要素なのか、インデントがバラバラだと把握が困難です。コードを読むのに余計な時間がかかり、精神的な負担も増えます。
- メンテナンス性の低下: 読みにくいコードは、修正や機能追加の際にコードの意図を理解するのに時間がかかります。また、手作業での修正中に誤ってタグを閉じ忘れたり、余計な空白を入れてしまったりといったミスも発生しやすくなります。
- バグの見落とし: 整形されていないコードの中では、小さな記述ミスや論理的な構造の誤りを見落としやすくなります。例えば、閉じタグの忘れや、ネストの誤りなどが発見しにくくなります。
- チーム開発での非効率: 複数の開発者が一つのプロジェクトに携わる場合、コーディングスタイルが統一されていないと、各開発者が読むコードのスタイルが異なり、コードレビューに時間がかかったり、無用なスタイルに関する指摘が発生したりします。Pull Requestなどで差分を見た際も、整形による差分なのか、実際のコード変更なのかが分かりにくくなります。
- コピペミスの誘発: 整形が不十分なコードは、一部をコピー&ペーストする際に不要な空白を含めてしまったり、必要な部分を取りこぼしたりするリスクが高まります。
これらの問題は、開発効率を著しく低下させ、プロジェクトの進行を妨げる可能性があります。HTML formatterは、これらの問題を解決するための強力な味方です。コードを機械的に、設定されたルールに従って整形することで、常に一貫性があり、可読性の高いコードを自動生成します。これにより、開発者はコードの整形に気を取られることなく、本質的なロジックの実装やデザインの実現に集中できるようになります。
HTML formatterは、もはや現代のWeb開発において必須と言えるツールの一つです。個人のプロジェクトから大規模なチーム開発まで、あらゆる場面でその恩恵を受けることができます。
HTML formatterの主な機能
HTML formatterが提供する主な機能は多岐にわたります。これらの機能を組み合わせることで、様々なスタイルのHTMLコードを自動生成できます。代表的な機能を以下に挙げます。
1. インデントの調整(スペース vs タブ、インデント幅)
HTMLコードの構造を視覚的に分かりやすくするために、インデントは非常に重要です。HTML formatterは、要素の親子関係に応じて適切なインデントを自動的に挿入します。
- スペースかタブか: インデントにスペースを使用するか、タブを使用するかを設定できます。スペースを使う場合は、1回のインデントに何個のスペースを使うか(例: 2個、4個)も指定できます。
- インデント幅: 1レベル深くなるごとに何文字(または何タブ)のインデントを入れるかを設定します。
例:
整形前:
“`html
Hello
整形後 (スペース2個インデント):
html
Hello
“`
2. タグ属性の並べ替え/整形
HTMLタグが持つ属性(class
, id
, src
, href
など)が多い場合、属性の並び順や改行のルールを統一することで可読性が向上します。
- 属性の並び順: アルファベット順、特定の属性(
id
,class
など)を優先、短い属性を先に、長い属性を後に、といったルールで属性の並び順を自動的に並べ替えます。 - 属性の改行: 属性が多くて行が長くなる場合、属性ごとに改行を入れるかどうか、何個の属性で改行するかなどを設定できます。
例:
整形前:
html
<a href="/about" class="link-primary" id="nav-link" target="_blank">About</a>
整形後 (特定の属性を優先し、アルファベット順、かつ行幅に応じて改行):
html
<a id="nav-link" class="link-primary"
href="/about" target="_blank">About</a>
3. 空行の削除/追加
HTMLコードのブロック間や特定の要素の前後には、視覚的な区切りとして空行を入れると可読性が向上します。一方で、不要な空行が多すぎると、逆にコードが間延びして読みにくくなることもあります。
- 不要な空行の削除: 連続する複数の空行を1つに減らしたり、ブロックの最初や最後の不要な空行を削除したりします。
- 論理的な区切りへの空行挿入:
<section>
,<article>
,<div>
などのブロックレベル要素の前後や、特定のコメントの前などに空行を挿入する設定ができるツールもあります。
例:
整形前:
“`html
Paragraph 1
Paragraph 2
整形後:
html
Paragraph 1
Paragraph 2
“`
4. コメントの整形
HTMLコメント(<!-- ... -->
)も、インデントや空白を調整することでコード全体のスタイルに統一感を持たせることができます。
- コメントのインデント: コメントをそれが属する要素のインデントレベルに合わせます。
- コメント内の空白: コメントマーカー(
<!--
や-->
)の直後の空白の数を調整します。
例:
整形前:
“`html
Content
整形後:
html
Content
“`
5. コードの折り返し(改行)
1行が非常に長くなった場合(特に属性が多いタグや、インライン要素が続く場合など)、可読性を損ないます。Formatterは、設定された行幅を超えた場合に自動的に改行を挿入します。
- 最大行幅: 1行の最大文字数(例: 80文字、120文字)を設定します。
- 折り返しルール: 属性の途中で折り返すか、属性ごとに折り返すか、特定の要素内は折り返さないかなどを設定できます。
例: (最大行幅80文字の場合)
整形前:
html
<img src="path/to/image.jpg" alt="A very long alt text that exceeds the line width limit." class="responsive-img" data-id="123">
整形後:
html
<img src="path/to/image.jpg"
alt="A very long alt text that exceeds the line width limit."
class="responsive-img" data-id="123">
6. 引用符の統一(シングル vs ダブル)
HTML属性の値は通常ダブルクォート("
)で囲みますが、シングルクォート('
)も有効です。チーム内でどちらかに統一することで一貫性が生まれます。
- 引用符スタイルの指定: ダブルクォートまたはシングルクォートのどちらを使用するかを設定します。
例:
整形前:
html
<a href='/about' class="link">About</a>
整形後 (ダブルクォートに統一):
html
<a href="/about" class="link">About</a>
7. 不要な空白の削除
タグの内側や要素間に存在する不要な空白は、コードの見た目を悪くしたり、時には予期しない表示結果(特にインライン要素間)を引き起こしたりします。
- タグの内側の空白:
< p >
のようなタグ名と閉じ括弧の間の空白などを削除します。 - インライン要素間の空白:
<span>Hello </span> <span>World</span>
のような不要な空白を調整します。ただし、要素間の半角スペースが必要な場合(単語間のスペースなど)は残すように設定します。
例:
整形前:
html
< p > Hello < /p >
<span> First </span> <span>Second</span>
整形後:
“`html
Hello
First Second
``
FirstSecond
※インライン要素間の空白は、にするか
First Second` にするかなど、ツールや設定によって挙動が異なります。これはHTMLの仕様上、インライン要素間の空白がレンダリングに影響するため、デリケートな部分です。
8. 要素間の空白の制御
前述の不要な空白削除と関連しますが、ブロック要素間の空白行の数や、特定の要素(例: <br>
, <hr>
)の扱いに関する空白を調整します。
9. 大文字/小文字の統一(タグ名、属性名)
HTMLのタグ名や属性名は大文字・小文字を区別しませんが、一般的には小文字で記述することが推奨されています(XHTMLなど一部の古い標準を除く)。統一することで可読性が向上します。
- ケースの指定: タグ名と属性名をすべて小文字にするか、大文字にするかなどを設定します。現代のHTML開発では通常「小文字」を指定します。
例:
整形前:
“`html
Content
整形後 (小文字に統一):
html
Content
“`
これらの機能は、各formatterツールによって提供される範囲やカスタマイズ性が異なります。多くのツールでは、設定ファイルを通じてこれらの機能の詳細なルールをカスタマイズできます。
HTML formatterの導入方法
HTML formatterを開発ワークフローに組み込む方法はいくつかあります。プロジェクトの規模や開発環境に応じて最適な方法を選択できます。
-
エディタ・IDEに内蔵されている機能を使う:
多くの高機能なテキストエディタや統合開発環境(IDE)には、基本的なコード整形機能が内蔵されています。特に新しいエディタでは、デフォルトである程度のHTMLフォーマット機能が提供されています。- メリット: 追加のインストールが不要で手軽に始められる。
- デメリット: カスタマイズ性が限られる場合が多い。機能がシンプル。
-
拡張機能・プラグインとして追加する:
エディタやIDEのマーケットプレイスから、高機能なformatterの拡張機能やプラグインをインストールして使用します。これが最も一般的な導入方法です。- メリット: 豊富な選択肢から高機能なformatterを選べる。エディタ上でリアルタイムに整形したり、保存時に自動実行したりできる。
- デメリット: エディタごとにインストールが必要。
-
コマンドラインツールとして使う:
formatterツールをCLI(Command Line Interface)としてインストールし、ターミナルからコマンドを実行してファイルを整形します。- メリット: エディタに依存しない。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)やビルドプロセスに組み込みやすい。複数のファイルをまとめて処理しやすい。
- デメリット: エディタ連携のようなリアルタイムなフィードバックは得にくい(保存時自動実行などは設定が必要)。
-
オンラインツールとして使う:
Webサイト上で提供されているformatterサービスを利用します。コードをウェブサイト上のテキストエリアに貼り付けたり、ファイルをアップロードしたりして整形します。- メリット: ソフトウェアのインストールが一切不要で、すぐに使える。一時的な整形に便利。
- デメリット: 大量のコードや頻繁な利用には不向き。インターネット接続が必要。機密情報を含むコードを貼り付ける場合はセキュリティリスクに注意が必要。
これらの導入方法は排他的ではなく、組み合わせて使うことも可能です。例えば、日常の開発ではエディタの拡張機能で自動整形し、コミット前やCI環境ではCLIツールで一括チェック・整形を行うといったワークフローが一般的です。
主要なHTML formatterツールの紹介と比較
現在、様々なHTML formatterツールが存在します。ここでは、特に人気が高く、機能も豊富なツールをいくつか紹介します。
1. Prettier
- 特徴: 「意見を持つ(opinionated)」フォーマッタとして知られ、設定項目を意図的に少なくすることで、コーディングスタイルの議論を減らし、チーム内での一貫性を容易に実現することを目指しています。JavaScriptエコシステムで絶大な人気を誇り、HTMLだけでなく、CSS、JavaScript、TypeScript、JSON、Markdown、GraphQLなど、非常に多くの言語に対応しています。
- HTMLフォーマットの挙動: デフォルト設定でも非常に優れた整形を提供します。インデント、属性の折り返し、引用符の統一など、主要な機能をカバーしています。HTMLの構文ツリーに基づいて賢く整形を行います。例えば、インライン要素が連続する場合は改行を抑制するなど、HTMLの特性を考慮した整形が可能です。
- 導入方法:
- Node.jsとnpmまたはYarnが必要です。
- プロジェクトの依存関係としてインストールします(
npm install --save-dev prettier
またはyarn add --dev prettier
)。 - VS Code, Sublime Text, Atom, WebStormなど、主要なエディタ・IDE向けの公式または非公式の拡張機能が豊富に提供されています。
- CLIツールとしても利用可能です。
- 使い方:
- エディタ拡張機能を使えば、保存時に自動整形、またはコマンドパレットから手動整形が可能です。
- プロジェクトルートに
.prettierrc
という名前の設定ファイル(JSON, YAML, JSなどの形式)を作成することで、デフォルト設定を上書きできます。 - CLIでは
npx prettier . --write
のように実行して、指定したファイルやディレクトリ内の対応ファイルを一括整形できます。
- メリット:
- 設定がシンプルで導入が容易。
- 多くの言語に対応しているため、フロントエンドプロジェクト全体(HTML, CSS, JS)のフォーマットを一元化できる。
- コミュニティが活発で、情報が多く、拡張機能も豊富。
- 「意見を持つ」ことで、チーム内のスタイルガイド決定コストを削減できる。
- デメリット:
- カスタマイズ性が他のツールに比べて低い。細かいスタイルの好みに合わせられない場合がある。
- デフォルト設定が強力すぎる、と感じるユーザーもいる。
PrettierのHTML関連主要設定オプション例:
tabWidth
: インデントのスペース数(デフォルト: 2)useTabs
: タブを使うかスペースを使うか(デフォルト: false – スペースを使う)singleQuote
: シングルクォートを使うか(デフォルト: false – ダブルクォートを使う)printWidth
: 1行の最大文字数(デフォルト: 80)htmlWhitespaceSensitivity
: HTMLの空白をどう扱うか(css
: CSSdisplay
プロパティに従う,strict
: すべての空白を考慮,ignore
: すべての空白を無視)attributeSeparator
: HTML/JSX属性の区切り方("lf"
: 属性ごとに改行,"as-needed"
: 必要に応じて改行,"preserve"
: 元の改行を維持,"style"
: スタイルガイドに従う – デフォルト"style"
)
.prettierrc.json
設定ファイル例:
json
{
"tabWidth": 2,
"useTabs": false,
"singleQuote": false,
"printWidth": 100,
"htmlWhitespaceSensitivity": "css",
"attributeSeparator": "as-needed"
}
2. VS Codeの標準フォーマット機能
- 特徴: Visual Studio Code (VS Code) にデフォルトで内蔵されているHTMLフォーマット機能です。拡張機能をインストールすることなく利用できます。基本的な整形機能を提供します。
- HTMLフォーマットの挙動: VS Codeの設定(
html.format.*
)に基づき、インデント、改行、属性の折り返し、大文字/小文字などの基本的な整形を行います。 - 導入方法: VS Codeをインストールすればすぐに利用可能です。
- 使い方:
- ファイルを開いて右クリックメニューから「ドキュメントのフォーマット」を選択するか、ショートカットキー(Windows:
Shift + Alt + F
, macOS:Shift + Option + F
, Linux:Ctrl + Shift + I
)を押します。 - 設定(
settings.json
)でeditor.formatOnSave: true
とすることで、保存時に自動整形させることも可能です。 - デフォルトで使用するフォーマッタを設定できます(複数のformatter拡張を入れている場合)。
- ファイルを開いて右クリックメニューから「ドキュメントのフォーマット」を選択するか、ショートカットキー(Windows:
- メリット:
- 最も手軽に始められる。追加インストール不要。
- VS Codeユーザーにとってはデフォルト機能として親しみやすい。
- デメリット:
- カスタマイズ性がPrettierなどの専門ツールに比べて限定的。
- 高度なルール設定や、他の言語との一元的なスタイル管理には向かない。
- チーム開発で、他のエディタを使っているメンバーとのスタイル統一が難しい。
VS CodeのHTMLフォーマット関連主要設定オプション例 (settings.json):
json
{
"html.format.indentInnerHtml": false, // <body>や<head>内のインデント
"html.format.indentHandlebars": false, // Handlebarsなどのテンプレート言語のインデント
"html.format.wrapLineLength": 120, // 行の折り返し長さ
"html.format.unformatted": "...", // フォーマットしない要素のリスト
"html.format.contentUnformatted": "...", // 内容をフォーマットしない要素のリスト
"html.format.extraLiners": "...", // 前後に空行を追加する要素のリスト
"html.format.preserveNewLines": true, // 既存の改行を維持するか
"html.format.maxPreserveNewLines": null, // 維持する改行の最大数
"html.format.indentChar": " ", // インデント文字
"html.format.indentSize": 2, // インデントサイズ
"html.format.wrapAttributes": "auto" // 属性の折り返し方法 ("auto", "force", "force-aligned", "force-expand-multiline", "aligned-multiple", "preserve", "preserve-aligned")
}
3. JS-Beautify (Beautify)
- 特徴: JavaScript, CSS, HTMLに対応した、歴史のあるフォーマッタです。非常に豊富な設定オプションを持っており、高いカスタマイズ性が特徴です。過去には多くのエディタのデフォルト整形エンジンとして採用されていました。
- HTMLフォーマットの挙動: 細かいインデントルール、改行ルール、空白の扱いなどを詳細に設定できます。テンプレート言語(Handlebars, Vueなど)やインラインスクリプト/スタイルの整形にも対応しています。
- 導入方法:
- npmでインストールできます(
npm install --save-dev js-beautify
)。 - 主要エディタ向けの拡張機能も提供されています(VS Codeでは「Beautify」拡張機能が広く使われています)。
- CLIツールとしても利用可能です。
- npmでインストールできます(
- 使い方:
- CLIで
js-beautify index.html
のように実行します。 - プロジェクトルートに
.jsbeautifyrc
という設定ファイル(JSON形式)を配置することで、整形ルールをカスタマイズできます。 - エディタ拡張機能を使えば、エディタ上で利用できます。
- CLIで
- メリット:
- 非常に高いカスタマイズ性。好みに合わせて細かく整形ルールを設定できる。
- HTML, CSS, JavaScriptをまとめて整形できる。
- デメリット:
- 設定項目が多いため、初期設定がやや複雑に感じられる場合がある。
- Prettierに比べると、現代の開発ワークフロー(特にCLI連携やCI/CD)における統合の容易さでは一歩譲る面がある(ただし、CLIツールとしては普通に強力)。
- 近年はPrettierの勢いに押され気味。
JS-BeautifyのHTML関連主要設定オプション例 (.jsbeautifyrc):
json
{
"indent_size": 2,
"indent_char": " ",
"indent_with_tabs": false,
"eol": "\n", // 改行コード
"end_with_newline": false, // ファイルの最後に改行を追加するか
"unformatted": ["area", "base", ...], // フォーマットしない要素のリスト
"content_unformatted": ["pre", "textarea"], // 内容をフォーマットしない要素のリスト
"wrap_attributes": "auto", // 属性の折り返し方法 ("auto", "force", ...)
"wrap_attributes_indent_size": 2, // 折り返した属性のインデントサイズ
"extra_liners": ["head", "body", "/html"], // 前後に空行を追加する要素/セレクタ
"indent_scripts": "normal", // インライン<script>のインデント方法 ("normal", "keep", "separate")
"indent_inner_html": false, // <body>や<head>内のインデント
"brace_style": "collapse,preserve-inline", // 波括弧のスタイル(CSS/JS用だがHTMLに影響する場合も)
"indent_empty_lines": false // 空行にインデントを入れるか
}
4. HTML-Tidy
- 特徴: 古くから存在する、HTML文書の整形、バリデーション、およびエラー修正を行うためのツールです。フォーマット機能だけでなく、古くなったタグや属性の指摘、アクセシビリティに関するチェックなども行えます。W3Cによって開発が支援されていました。
- HTMLフォーマットの挙動: HTML標準への準拠を強く意識した整形を行います。インデントや改行の基本的な整形に加え、引用符の修正、不要な終了タグの追加(HTML5では必須ではない場合でも)、要素構造の修正などを試みます。バリデーション機能が一体となっているのが最大の特徴です。
- 導入方法:
- OSごとにインストール方法が異なります(多くのLinuxディストリビューションやmacOSではパッケージマネージャーでインストール可能)。
- npmパッケージもあります(
html-tidy2
など、非公式なラッパーが多い)。 - CLIツールとして使用するのが一般的です。エディタ連携はJS-BeautifyやPrettierほど多くありません。
- 使い方:
- CLIで
tidy -m index.html
のように実行します(-m
はファイルを直接書き換えるオプション)。 .tidyrc
や--config
オプションで設定ファイルを指定し、整形ルールやバリデーションルールを細かくカスタマイズできます。
- CLIで
- メリット:
- 整形だけでなく、バリデーションや簡単なエラー修正も同時に行える。
- HTML標準への準拠を助ける。
- 非常に多機能。
- デメリット:
- JS-BeautifyやPrettierに比べて、現代のフロントエンド開発のワークフロー(npm/Yarn, 最新エディタ連携)への統合がやや手間がかかる場合がある。
- 設定ファイルが他のツールと異なり、独特の記述形式を持つ。
- 「修正」機能は強力な反面、意図しない変更をもたらす可能性もあるため注意が必要。
HTML-TidyのHTML関連主要設定オプション例 (.tidyrc):
ini
indent: auto
indent-spaces: 2
wrap: 80
markup: yes
output-xml: no
input-xml: no
show-warnings: yes
show-errors: 6
numeric-entities: yes
quote-attributes: yes
vertical-space: no
tidy-mark: no // Tidyによる整形マークをコメントで挿入しない
doctype: strict
※これはiniファイル形式に似た独自の設定ファイル形式です。
5. オンラインHTML Formatter
- 特徴: インストール不要で、ウェブブラウザからアクセスして利用できるサービスです。Code Beautify, HTML Formatter, dirtyMarkupなど、様々なサービスが提供されています。
- HTMLフォーマットの挙動: サービスによって提供される機能や設定は異なりますが、基本的なインデント、改行、属性整形などは大抵可能です。多くの場合、JS-Beautifyなどの既存のライブラリをバックエンドで使用しています。
- 導入方法: ウェブサイトにアクセスするだけです。
- 使い方: テキストエリアにHTMLコードを貼り付け、「Format」ボタンなどをクリックすると整形されたコードが表示されます。ファイルをアップロードして整形できるサービスもあります。
- メリット:
- 最も手軽。ソフトウェアのインストールや設定が一切不要。
- 一時的にサッと整形したい場合に便利。
- デメリット:
- 大量のファイルや頻繁な利用には不向き。
- 設定オプションが少ない場合が多い。
- セキュリティリスク: 業務で扱う機密情報を含むコードを外部のオンラインサービスに貼り付けることは、情報漏洩のリスクを伴うため避けるべきです。個人の学習やサンプルコードの整形に限って利用するのが安全です。
- オフラインでは利用できない。
代表的なオンラインHTML Formatterの例:
* Code Beautify (HTML Beautifier): https://codebeautify.org/html-beautifier
* HTML Formatter: https://html-formatter.com/
* DirtyMarkup (HTML, CSS, JS対応): https://www.dirtymarkup.com/
その他のformatter
上記以外にも、特定のエディタ・IDEに特化したformatterや、よりニッチなツールも存在します。例えば、WebStormには強力なコード整形機能が内蔵されていますし、一部のフレームワーク(Vueなど)向けの特殊なformatter(Vetur拡張機能に含まれるものなど)もあります。しかし、現代的なWeb開発においては、Prettierがその多機能性、シンプルさ、そして広いエコシステムサポートから最もデファクトスタンダードに近い存在となっています。
具体的なHTML formatterの使い方(例: PrettierをVS Codeで使用)
ここでは、現在最も一般的で効率的なワークフローの一つである「PrettierをVS Codeで利用する」方法を、ステップバイステップで解説します。
前提:
- Visual Studio Code がインストールされていること。
- Node.js および npm または Yarn がインストールされていること。
ステップ 1: プロジェクトの準備
新しいプロジェクトでFormatterを導入する場合、まずプロジェクトディレクトリを作成し、npmまたはYarnで初期化します。
bash
mkdir my-html-project
cd my-html-project
npm init -y # または yarn init -y
これにより package.json
ファイルが作成されます。
ステップ 2: Prettierのインストール
プロジェクトのローカル開発依存関係としてPrettierをインストールします。これにより、プロジェクトごとに異なるバージョンのPrettierを使用したり、チーム内で同じバージョンを共有したりできます。
“`bash
npm install –save-dev prettier
または
yarn add –dev prettier
``
package.jsonの
devDependenciesに
“prettier”` が追加されます。
ステップ 3: VS Code拡張機能「Prettier」のインストール
VS Codeを開き、拡張機能ビュー(サイドバーの四角いアイコン)に移動します。「Prettier – Code formatter」と検索し、開発元が Esben Petersen の拡張機能をインストールします。
(これは例示であり、実際のUIは異なる場合があります)
この拡張機能により、VS Code上でPrettierの機能を利用できるようになります。
ステップ 4: VS Codeの設定
PrettierをデフォルトのFormatterとして設定し、保存時に自動で整形されるように設定するのがおすすめです。
- VS Codeの設定を開きます(ファイル > ユーザー設定 > 設定 または ショートカットキー
Ctrl + ,
またはCmd + ,
)。 - 検索バーで
editor.defaultFormatter
と検索し、ドロップダウンから「Prettier – Code formatter」を選択します。 - 検索バーで
editor.formatOnSave
と検索し、チェックボックスをオンにします。 - 検索バーで
editor.codeActionsOnSave
と検索し、settings.json
で以下のように設定を追加または編集します。これは、保存時にコードアクション(リンターの自動修正など)と合わせてフォーマットを実行するための設定です。
json
"editor.codeActionsOnSave": {
"source.fixAll.eslint": true, // ESLintを使っている場合
"source.fixAll.stylelint": true, // Stylelintを使っている場合
"editor.formatOnSave": true // これも追加または確認
},
"editor.defaultFormatter": "esbenp.prettier-vscode" // Prettierの拡張機能ID
もしeditor.formatOnSave
が既にtrue
であれば、editor.codeActionsOnSave
の設定は必須ではありませんが、他の自動修正と連携させる場合は便利です。
これで、VS CodeでHTMLファイル(や、Prettierが対応している他の言語のファイル)を保存するたびに、自動的にPrettierによって整形されるようになります。
ステップ 5: Prettierの設定ファイルを作成(任意だが推奨)
デフォルト設定でも十分なことが多いですが、チーム内でスタイルを統一したり、特定のオプションを変更したりする場合は、プロジェクトルートに設定ファイルを作成します。最も一般的なのは .prettierrc.json
です。
プロジェクトのルートディレクトリに .prettierrc.json
という名前のファイルを作成し、以下のように記述します(例)。
json
// .prettierrc.json
{
"tabWidth": 2,
"useTabs": false,
"singleQuote": false,
"printWidth": 100,
"semi": true, // JavaScriptのセミコロンに関する設定ですが、共通設定として記述することが多いです
"trailingComma": "es5", // JavaScript/JSONの末尾カンマに関する設定
"htmlWhitespaceSensitivity": "css",
"attributeSeparator": "as-needed"
}
このファイルは、プロジェクト内でPrettierを実行する際に読み込まれ、設定が適用されます。チームメンバーが同じリポジトリをクローンすれば、同じフォーマット設定が共有されます。
ステップ 6: 手動でのフォーマット実行
保存時の自動フォーマットに加えて、特定の箇所だけ整形したい場合や、自動整形がオフになっている場合は、手動で実行できます。
- ファイルを開いた状態で、コマンドパレット(
F1
またはCtrl + Shift + P
/Cmd + Shift + P
)を開き、「Format Document」と入力・選択します。 - 複数のFormatterがインストールされている場合、「Format Document With…」を選択し、「Prettier – Code formatter」を選びます。
ステップ 7: CLIでのフォーマット実行(チーム開発やCI向け)
CLIコマンドを使って、プロジェクト全体のファイルを一括で整形したり、CI環境でフォーマットされているかチェックしたりできます。
package.json
に整形用のnpm scriptsを追加しておくと便利です。
json
// package.json
{
"name": "my-html-project",
"version": "1.0.0",
"scripts": {
"format": "prettier . --write",
"check-format": "prettier . --check"
},
"devDependencies": {
"prettier": "^latest_version"
}
}
npm run format
またはyarn format
: プロジェクトディレクトリ内のすべての対応ファイルをPrettierの設定に従って整形し、変更を保存します。npm run check-format
またはyarn check-format
: プロジェクトディレクトリ内のファイルがPrettierの設定に従って整形されているかチェックし、整形が必要なファイルがあればリスト表示しますが、ファイル自体は変更しません。CI環境でコードが規約通りかチェックする際に便利です。
prettier . --write
のドット .
はカレントディレクトリ(プロジェクトルート)以下を対象とするという意味です。特定のディレクトリやファイルだけを対象としたい場合はパスを指定します(例: prettier src/**/*.html --write
)。
また、.prettierignore
ファイルをプロジェクトルートに作成することで、特定のファイルやディレクトリをフォーマット対象から除外できます(例: node_modules
, dist
, ./src/legacy.html
など)。記述方法は .gitignore
と似ています。
この一連のステップで、Prettierを使った効率的なHTMLフォーマット環境を構築できます。
HTML formatterを使う上でのベストプラクティス
HTML formatterの効果を最大限に引き出し、特にチーム開発で問題なく運用するためには、いくつかのベストプラクティスがあります。
1. チーム内での設定共有
最も重要なプラクティスの一つです。Formatterの設定が開発者ごとに異なると、整形結果がばらつき、せっかくFormatterを導入した意味が薄れてしまいます。
- 設定ファイルをバージョン管理する:
.prettierrc
,.jsbeautifyrc
などの設定ファイルをプロジェクトのリポジトリに含め、Gitなどのバージョン管理システムで共有します。これにより、チームメンバー全員が同じ設定をローカルに持つことができます。 -
.editorconfig
を利用する:.editorconfig
ファイルは、インデントスタイル(スペース/タブ)、インデント幅、改行コード、文字コードなどの基本的なエディタ設定をプロジェクトで統一するためのファイルです。多くのエディタやFormatterがこれをサポートしています。Formatterの設定と合わせて.editorconfig
を使うことで、より広範なコーディングスタイルを統一できます。“`ini
.editorconfig
root = true
[*] # すべてのファイル
charset = utf-8
end_of_line = lf
insert_final_newline = true
indent_style = space
indent_size = 2[*.md] # Markdownファイル
trim_trailing_whitespace = false
“` -
READMEに記述する: プロジェクトのリポジトリのREADMEファイルに、Formatterの導入方法、使用するツール、設定ファイルの説明、CLIコマンドなどを記述しておくと、新規参加メンバーがスムーズに環境構築できます。
2. バージョン管理システム(Git)との連携
Formatterによる整形は、コードの見た目だけを変更するものであり、機能的な変更ではありません。しかし、整形によって発生する差分(Diff)は、実際のコード変更の邪魔になることがあります。これを管理するための連携方法があります。
-
コミット前のフック(Pre-commit hook): Gitの機能であるフックを利用して、コミットを実行する前に自動的にFormatterをかけるように設定できます。
husky
やlint-staged
といったツールを使うと、Gitにステージング(追加)されたファイルだけを対象にPrettierなどのコマンドを実行できます。これにより、「コミットされたコードは常に整形済みである」という状態を維持できます。例:
lint-staged
の設定 (package.json
or.lintstagedrc
)
json
// package.json
{
"husky": {
"hooks": {
"pre-commit": "lint-staged"
}
},
"lint-staged": {
"*.{html,css,js,json,md}": "prettier --write"
},
...
}
この設定では、コミット時にステージングされている.html
,.css
,.js
,.json
,.md
ファイルに対してprettier --write
コマンドが実行されます。 -
CI/CDでのフォーマットチェック: Jenkins, GitHub Actions, GitLab CIなどのCI/CDパイプラインに、Formatterによるチェックを組み込みます。
prettier --check
のようなコマンドを実行し、整形が必要なファイルが見つかったらビルドを失敗させます。これにより、整形されていないコードがマージされるのを防ぎ、コードベース全体の品質を維持できます。 -
Git Blameでの対処: Formatterを導入すると、既存の大量のコードを一括整形することがあります。これにより、Git Blame(コードの各行を誰がいつ変更したかを表示する機能)の履歴がFormatterによる整形コミットで埋め尽くされて見にくくなることがあります。これを軽減するために、Gitの機能である
.git-blame-ignore-revs
ファイルを使用し、Formatterによる整形コミットのリビジョン(ハッシュ値)を無視するように設定できます。
3. リンターとの連携
Formatterはコードの「見た目」を整形するツールですが、リンター(ESLint, Stylelintなど)はコードの「品質」や「潜在的なエラー」、「アンチパターン」をチェックするツールです。両者は異なる役割を持っていますが、連携させることでより効果的なコード品質管理が可能です。
- 役割分担を理解する: Formatterはスタイルの一貫性を保証し、リンターは構文エラー、論理エラー、不要なコード、セキュリティ問題などを指摘・修正します。
- 競合を防ぐ: リンターの中には、Formatterと競合するスタイルのルール(例: インデントのルールなど)を持つものがあります。PrettierなどのFormatterを使う場合は、リンターのスタイリングに関するルールをオフにする設定(例:
eslint-config-prettier
,stylelint-config-prettier
)を適用し、Formatterにスタイリングを任せるように設定します。
4. ビルドプロセスへの組み込み
一部のプロジェクトでは、ビルドやデプロイの前にFormatterを自動実行するステップを組み込むことがあります。これにより、どんな環境でビルドしても、最終的にデプロイされるコードは常に整形済みであることが保証されます。
例えば、npm scriptsやGulp, Webpackなどのタスクランナーを使って、コンパイルやバンドル処理の前にフォーマット処理を実行します。
カスタマイズと設定
多くのHTML formatterは、設定ファイルを通じてその挙動を細かくカスタマイズできます。主要な設定項目はツール間で共通する部分が多いです。
一般的な設定項目
- インデント:
indent_size
/tabWidth
: インデント幅(スペース数)indent_char
/useTabs
: インデント文字(スペースまたはタブ)
- 改行と折り返し:
printWidth
/wrapLineLength
: 1行の最大文字数。これを超えると自動的に改行が挿入されます。wrap_attributes
/attributeSeparator
: タグの属性が多い場合の折り返しルール。全ての属性を改行するか、必要に応じて改行するか、特定の属性数で改行するかなど。preserveNewLines
/maxPreserveNewLines
: 元のコードにある空行や改行をどの程度維持するか。
- 空白:
htmlWhitespaceSensitivity
: HTML要素間の空白をどの程度考慮するか。インライン要素間の空白は表示に影響する場合があるため、デリケートな設定です。indent_inner_html
:<body>
や<head>
の子要素にインデントを適用するかどうか。extra_liners
: 特定の要素(例:div
,section
)の前後に追加の空行を挿入するかどうか。
- 引用符:
singleQuote
/quote-attributes
: 属性値を囲む引用符にシングルクォートを使うかダブルクォートを使うか。
- その他:
unformatted
/content_unformatted
: フォーマットを適用しない特定の要素(例:<pre>
,<textarea>
,<code>
など、内部の空白や改行が重要な要素)を指定します。indent_scripts
/indent_styles
:<script>
や<style>
タグ内のコードをインデントするかどうか、またその方法。doctype
: HTML-Tidyなどで、生成されるDOCTYPEを指定(HTML5, Strict, Transitionalなど)。
ツールごとの設定方法の違い
前述の「主要なHTML formatterツールの紹介」セクションで示したように、各ツールは独自の設定ファイル形式やオプション名を持っています。
- Prettier:
.prettierrc
(json, yaml, js, etc.) またはpackage.json
にprettier
フィールド - JS-Beautify:
.jsbeautifyrc
(json) - HTML-Tidy:
.tidyrc
(iniライクな形式) または CLIオプション
ツールを導入する際は、まずそのツールの公式ドキュメントで利用可能な設定オプションを確認することが重要です。
特定ファイル・行を除外する方法
Formatterの適用から特定のファイルやディレクトリ、あるいは特定のコードブロックを除外したい場合があります。
- 無視ファイル: 多くのFormatterは、
.prettierignore
や.jsbeautifyignore
といった無視ファイルをサポートしています。これに無視したいファイルやディレクトリのパスを記述します(.gitignore
の記述形式と似ています)。 -
コメントによる制御: コード内の特定の箇所だけFormatterの適用を無効にしたい場合は、Formatterが提供するコメントによる制御構文を使用します。
例 (Prettier):
“`html
Content…長い、整形したくない内容…
“`
これらのコメントを挿入することで、コメントで囲まれた(または直後の)コードブロックはPrettierによる整形を受けなくなります。これは、手動で調整したレイアウトを崩したくない場合などに便利です。
HTML formatterのメリットとデメリット
最後に、HTML formatterを導入することの全体的なメリットと、考慮すべきデメリットをまとめます。
メリット
- 可読性の飛躍的な向上: インデント、改行、空白、属性の並びなどが統一されることで、コードの構造が視覚的に把握しやすくなり、他の開発者(や未来の自分)がコードを理解する速度が格段に上がります。
- エラーやバグの削減: 整形されたコードは記述ミスや構造上の問題が見えやすくなります。また、コピペミスなどのヒューマンエラーを減らす効果も期待できます。
- 開発効率の向上: 手動での整形にかかっていた時間が不要になり、コード記述そのものに集中できます。保存時の自動整形を利用すれば、整形の手間を一切意識することなく常にきれいなコードを書くことができます。
- チーム開発における一貫性の担保: コーディング規約について議論する時間や、スタイルに関するコードレビューの指摘を減らせます。ツールが自動でスタイルを強制してくれるため、人手によるチェックよりも確実で効率的です。
- コードレビューの容易化: コードレビュー時にスタイルの違いに惑わされることなく、ロジックや機能に関する変更点に集中できます。整形による大量の差分が発生した場合も、
.git-blame-ignore-revs
などの対策を講じることで、レビューがスムーズになります。 - 新規メンバーのオンボーディング容易化: 新しい開発者がプロジェクトに参加した際、スタイルガイドを細かく覚える必要なく、ツールによって自動的に正しいスタイルでコードを書くことができます。
デメリット
- 初期設定の手間: プロジェクトへの導入、チーム内での設定共有、エディタ連携などの初期設定に多少の時間と労力がかかります。
- 個人の好みの違いとの衝突: 特に「意見を持つ」Formatter(Prettierなど)はカスタマイズ性が低い場合があり、開発者個人のスタイルの好みに合わない整形結果になることがあります。しかし、これはチーム全体での一貫性を優先するためのトレードオフと考えるべきです。
- 既存コードへの適用による大量の差分: 既に存在する整形されていないコードベースにFormatterを初めて適用すると、すべてのファイルが変更されたかのような大量の差分が発生します。これは過去のGit履歴を見にくくする可能性があります(対策は前述の
.git-blame-ignore-revs
などを参照)。計画的に導入するか、新規コードから適用を始めるなどの工夫が必要です。 - 過度な自動化による意図しない変更: まれに、Formatterがコードの特定の構造(特にインライン要素の扱いなど)を意図しない形で変更したり、表示結果に影響を与えたりする可能性があります。これはFormatterの設定を調整するか、該当箇所をFormatterの対象から除外するなどの対応が必要です。
これらのデメリットを考慮しても、特にチーム開発においては、Formatterを導入することによるメリットが遥かに上回ると言えるでしょう。デメリットは適切なプラクティスと設定によって最小限に抑えることが可能です。
よくある質問(FAQ)
Q: どのHTML formatterを選ぶべきですか?
A: プロジェクトの状況やチーム構成によって異なります。
- 現代のフロントエンド開発、特にJavaScriptエコシステム中心の場合: Prettierが最もおすすめです。設定がシンプルで多くの言語に対応しており、VS Codeなどの主要エディタとの連携も強力です。チーム内でのスタイル統一が容易です。
- 高いカスタマイズ性が欲しい場合: JS-Beautifyも良い選択肢です。細部にわたる整形ルールを定義できます。
- HTMLのバリデーションや簡単な修正も同時に行いたい場合: HTML-Tidyが候補になりますが、現代的なワークフローへの統合は他のツールより手間がかかる可能性があります。
- VS Codeだけを使っており、手軽に始めたい場合: VS Codeの標準フォーマット機能から試してみるのも良いでしょう。
基本的には、まずはPrettierを試してみるのが現代的な開発においては最も無難で推奨されるアプローチです。
Q: HTMLだけでなく、CSSやJavaScriptもフォーマットできますか?
A: 多くの高機能なFormatter、特にPrettierやJS-Beautifyは、HTMLだけでなくCSS, JavaScript, JSON, Markdownなど、複数の言語に対応しています。これらのツールを使えば、プロジェクト全体のコードスタイルを一つのツールで統一的に管理できます。
Q: フォーマットでコードが壊れることはありますか?
A: 基本的にFormatterはコードの構文木に基づいて処理を行うため、コードの意味が変わったり、壊れたりすることはほとんどありません。しかし、非常に特殊な記述方法や、Formatterが対応していない独自の構文(特定のテンプレートエンジンのタグなど)が含まれている場合、予期しない整形結果になる可能性はゼロではありません。また、HTMLにおいてはインライン要素間の空白がレンダリングに影響する場合があるため、この部分のFormatterの挙動には注意が必要です。ほとんどの場合、設定の調整やFormatterの適用除外で対応可能です。
Q: チームでFormatterの設定を共有するにはどうすれば良いですか?
A: 最も推奨される方法は、.prettierrc
や .jsbeautifyrc
といったFormatterの設定ファイルをプロジェクトのリポジトリに含めてバージョン管理することです。加えて、.editorconfig
ファイルも利用して基本的なエディタ設定を統一するとより効果的です。READMEファイルにFormatterの使用方法や設定について記述しておくことも重要です。
Q: コミット前に自動的に整形させるには?
A: husky
と lint-staged
といったツールを組み合わせて、Gitのpre-commitフックを設定するのが一般的です。これにより、git commit
コマンドを実行した際に、コミット対象のファイルのみをFormatterで整形してからコミットに進むようにできます。
まとめ
HTML formatterは、HTMLコードの可読性、メンテナンス性、そしてチーム開発における一貫性を劇的に向上させるための強力なツールです。インデント、改行、属性の並び替え、空白、引用符、大文字/小文字の統一など、多岐にわたる整形機能を自動で行ってくれます。
導入方法としては、エディタの拡張機能を利用するのが最も手軽で、保存時自動整形といった便利な機能も使えます。中でもPrettierは、そのシンプルさと多機能性、そして広範なエコシステムサポートから、現代のWeb開発において非常に人気があり、おすすめのツールです。VS Codeユーザーであれば、Prettier拡張機能の導入と設定が最も一般的なワークフローとなるでしょう。
HTML formatterを最大限に活用するためには、単にツールを導入するだけでなく、設定ファイルをチームで共有し、バージョン管理システムやCI/CDパイプラインと連携させるといったベストプラクティスを実践することが重要です。リンターとFormatterの役割を理解し、適切に連携させることも、より質の高いコードベースを維持するために役立ちます。
初期設定やチームでのルールの決定に多少の労力は伴いますが、HTML formatterを導入することで得られる開発効率の向上やコード品質のメリットは、それを補って余りあるものです。まだHTML formatterを使っていない方、あるいはツールの乗り換えを検討している方は、ぜひこの記事を参考に、ご自身の開発環境やプロジェクトに最適なFormatterを導入・活用してみてください。コードの整形から解放され、より本質的な開発に集中できるようになるはずです。