Hyper-VとUbuntu:Windowsユーザーのための仮想環境構築
はじめに:なぜ仮想環境が必要か? Hyper-Vとは?
現代のコンピューティング環境において、「仮想環境」という言葉を耳にする機会が増えました。特に開発者やITエンジニアだけでなく、新しいソフトウェアを試したいユーザーや、複数のOSを使い分けたいユーザーにとっても、仮想環境は非常に有用なツールとなり得ます。
仮想環境とは、簡単に言えば、1台の物理的なコンピュータの上に、複数の独立したコンピュータ(仮想マシン)を作り出す技術です。それぞれの仮想マシンは、独自のOS、メモリ、ストレージ、ネットワーク設定を持つことができ、まるで物理的に別のコンピュータが複数台あるかのように動作します。
なぜ仮想環境が必要なのでしょうか? 主なメリットをいくつか挙げてみましょう。
- 環境の分離と安全性: 仮想マシンはホストOS(仮想環境を動かしている元のWindowsなど)から隔離されています。怪しいソフトウェアを試したり、開発中の不安定なアプリケーションを実行したりしても、ホストOSや他の仮想マシンに影響を与えるリスクを最小限に抑えられます。
- 複数のOSの利用: Windowsを使いながらLinuxやmacOS(Hyper-Vではサポートされません)などの別のOSを利用できます。特定のOSでしか動作しないソフトウェアを使いたい場合や、異なるOSの操作感を学びたい場合に便利です。
- 開発・テスト環境: アプリケーションの開発やテストを行う際に、様々なOSやソフトウェアバージョンの環境を手軽に構築・破棄できます。クリーンな環境でのテストや、特定の条件下での動作確認が容易になります。
- 学習と研究: 新しいOSやサーバーソフトウェア、ネットワーク構成などを、物理的なハードウェアを用意することなく試すことができます。失敗しても簡単に環境を元に戻せるため、安心して学習に取り組めます。
- スナップショット(チェックポイント)機能: 特定時点の仮想マシンの状態を保存し、後からその状態に瞬時に戻すことができます。ソフトウェアのインストール前や設定変更前にスナップショットを取得しておけば、問題が発生した場合にすぐに安全な状態に戻れます。
- ハードウェア資源の有効活用: 1台の高性能なコンピュータの資源(CPU、メモリ、ストレージ)を複数の仮想マシンで共有し、効率的に利用できます。
仮想環境を実現するためのソフトウェアは「ハイパーバイザー」と呼ばれます。VMware Workstation Player/Pro、VirtualBoxなどが有名ですが、実はWindowsには標準で高性能なハイパーバイザーが搭載されています。それがHyper-Vです。
Hyper-Vは、Microsoftが開発した仮想化技術で、Windows Serverのエディションや、特定のWindowsクライアントエディション(Pro, Enterprise, Education)に搭載されています。Windowsユーザーであれば、追加のソフトウェアをインストールすることなく、この強力な仮想化機能を利用できるのです。特にWindows 10/11以降のHyper-Vは使いやすく進化しており、個人利用でも十分に活用できます。
この記事では、Windowsユーザーの皆さんがHyper-Vを使って、無料で利用できる人気のOSである「Ubuntu」の仮想環境を構築する手順を、詳しく丁寧に解説します。サーバー用途で人気のUbuntu Serverと、デスクトップ環境を備えたUbuntu Desktopのどちらをインストールするかについても触れます。仮想環境が初めての方でも安心して進められるよう、基本的な概念から実践的な構築手順、さらには運用のヒントまで、網羅的に説明していきます。
さあ、Hyper-VとUbuntuの世界へ足を踏み入れましょう。
Hyper-Vの有効化と前提条件
Hyper-VはすべてのWindowsエディションで利用できるわけではありません。また、お使いのコンピュータのハードウェアも特定の条件を満たしている必要があります。まず、これらの前提条件を確認し、Hyper-Vを有効化する手順を見ていきましょう。
1. 対応するWindowsエディションの確認
Hyper-Vクライアント機能は、以下のWindowsエディションに搭載されています。
- Windows 11 Pro, Enterprise, Education
- Windows 10 Pro, Enterprise, Education
- Windows Server (デスクトップOSではありませんが、Hyper-Vホストとして広く使われます)
お使いのWindowsがHomeエディションの場合、残念ながらHyper-Vは利用できません。この場合は、VirtualBoxやVMware Workstation Playerといった他の無償の仮想化ソフトウェアを利用する必要があります。
ご自身のWindowsエディションは、Windowsの「設定」アプリを開き、「システム」>「バージョン情報」で確認できます。
2. CPUの仮想化支援機能の有効化
Hyper-Vを効率的に動作させるためには、CPUが仮想化支援機能(Intel VT-x for Intel CPUs, AMD-V for AMD CPUs)をサポートしており、それがBIOS/UEFI設定で有効になっている必要があります。最近のほとんどのCPUはこの機能をサポートしていますが、一部の古いモデルやエントリーモデルでは非対応の場合があります。
また、サポートされていても、メーカー出荷時のBIOS/UEFI設定で無効になっていることがあります。この機能を有効にするには、PC起動時にBIOS/UEFI設定画面に入り、設定を変更する必要があります。BIOS/UEFI設定画面に入る方法はPCメーカーやマザーボードによって異なりますが、一般的には起動時のメーカーロゴが表示されている間に特定のキー(Delete, F2, F10, F12など)を連打することで入れます。
設定項目名もメーカーによって異なりますが、「Virtualization Technology」「VT-x」「AMD-V」「SVM Mode」といった名称を探し、Enabled(有効)に設定してください。設定変更後は、必ず設定を保存して再起動してください。
この機能が有効になっているかどうかは、タスクマネージャーで確認できます。タスクマネージャーを開き、「パフォーマンス」タブの「CPU」を選択します。画面右下にある「仮想化」の項目が「有効」になっていればOKです。無効になっている場合は、BIOS/UEFI設定を確認してください。
3. Hyper-Vの有効化手順
前提条件を満たしていることを確認したら、いよいよHyper-Vを有効化します。これは「Windowsの機能の有効化または無効化」から行います。
- Windowsの検索バーに「Windowsの機能の有効化または無効化」と入力し、表示された項目をクリックします。
- 「Windowsの機能」という小さなウィンドウが開きます。このリストの中から「Hyper-V」を探します。
- 「Hyper-V」の項目を展開し、「Hyper-V管理ツール」と「Hyper-Vプラットフォーム」の両方にチェックを入れます。通常、「Hyper-V」の親項目にチェックを入れると、これらの子項目も自動的にチェックが入ります。
- 「OK」ボタンをクリックします。
- Windowsが必要なファイルを構成します。完了すると、コンピュータの再起動を求められます。「今すぐ再起動」をクリックしてコンピュータを再起動します。
再起動後、Hyper-Vが有効になります。検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力して起動できるか確認してみましょう。Hyper-Vマネージャーのウィンドウが表示されれば、Hyper-Vの有効化は成功です。
仮想スイッチの設定
仮想マシンを外部ネットワーク(インターネットなど)に接続したり、ホストOSや他の仮想マシンと通信させたりするためには、「仮想スイッチ」の設定が必要です。物理的なネットワークにおけるスイッチ(ハブ)のような役割を果たします。
仮想スイッチには主に3つの種類があります。
- 外部 (External): ホストOSが物理ネットワークアダプターに接続しているネットワークに、仮想マシンを接続します。最も一般的で、仮想マシンからインターネットに接続したい場合などに使用します。ホストOSもこの仮想スイッチを介してネットワークに接続できます(通常、ホストOSの物理アダプターは仮想スイッチにバインドされ、仮想NICが作成されます)。
- 内部 (Internal): ホストOSと仮想マシンの間、および仮想マシン同士の間で通信を可能にします。外部ネットワークには接続できません。ホストOSと仮想マシン間だけで通信したい場合に利用します。
- プライベート (Private): 仮想マシン同士の間でのみ通信を可能にします。ホストOSや外部ネットワークには接続できません。完全に隔離されたネットワーク環境を作りたい場合に利用します。
Ubuntu仮想マシンからインターネットにアクセスしてソフトウェアをインストールしたり、アップデートしたりすることが一般的ですので、ここでは「外部」仮想スイッチを作成します。
外部仮想スイッチの作成手順
- Hyper-Vマネージャーを起動します。 検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力してクリックします。
- 左側のペインで、ご自身のコンピュータ名をクリックします。
- 右側の「操作」ペインにある「仮想スイッチ マネージャー」をクリックします。
- 「仮想スイッチ マネージャー」ウィンドウが開きます。左側のメニューで「新しい仮想ネットワーク スイッチ」を選択します。
- 作成するスイッチの種類として「外部」を選択し、「仮想スイッチの作成」ボタンをクリックします。
- 新しい仮想スイッチの設定画面が表示されます。
- 名前: スイッチの名前を付けます。(例:
ExternalSwitch
) - 接続の種類: 「外部ネットワーク」が選択されていることを確認します。ドロップダウンリストから、ホストOSがインターネットに接続している物理ネットワークアダプター(Wi-FiアダプターやEthernetアダプターなど)を選択します。通常は既定で適切なアダプターが選択されていますが、複数ある場合は注意して選択してください。
- 「管理オペレーティング システムにこのネットワーク アダプターの共有を許可する」: 通常はチェックを入れたままにします。これにより、ホストOSもこの仮想スイッチを介してネットワークに接続できるようになります。
- 「仮想LAN IDを有効にする」: 通常はチェックを入れません。VLANを利用する場合に設定します。
- 名前: スイッチの名前を付けます。(例:
- 設定が完了したら、「適用」ボタンをクリックします。 警告メッセージが表示されることがありますが、これは物理ネットワークアダプターが一時的に再構成されるためです。「はい」をクリックして続行します。
- 変更が適用されるまでしばらく待ちます。 ネットワーク接続が一時的に切断される場合があります。
- 「OK」をクリックして「仮想スイッチ マネージャー」を閉じます。
これで、外部ネットワークに接続できる仮想スイッチが作成されました。新しい仮想マシンを作成する際に、このスイッチを選択することで、仮想マシンからインターネットに接続できるようになります。
もし、複数の仮想マシンを同一ネットワーク上に配置したいがインターネットには接続させたくない場合や、ホストOSとも隔離したい場合は、「内部」や「プライベート」の仮想スイッチを作成してください。目的に応じて複数の仮想スイッチを作成・管理できます。
Ubuntu Server/Desktopの準備
仮想マシンにインストールするOSとして、今回は「Ubuntu」を選びます。Ubuntuは無償で利用できるDebianベースのLinuxディストリビューションで、デスクトップ用途からサーバー用途、開発環境まで幅広く利用されています。
Ubuntuには主に以下の2つのエディションがあります。
- Ubuntu Desktop: グラフィカルなユーザーインターフェース(GUI)を備えています。一般的なデスクトップOSとして利用したい場合や、GUIアプリケーションを使いたい場合に適しています。Webブラウジング、オフィス作業、開発環境(GUIエディタなどを使用する場合)などに便利です。
- Ubuntu Server: コマンドラインインターフェース(CLI)のみを備えています(インストール時にGUIを追加することも可能ですが、通常はCLIで使用します)。サーバー用途に特化しており、軽量でリソース消費が少ないのが特徴です。Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバー、SSHによるリモート操作を主体とする開発環境などに適しています。
どちらを選ぶかは、仮想マシンをどのように利用したいかによります。初めてLinuxに触れる方や、GUI環境が必要な場合はUbuntu Desktopが良いでしょう。サーバーサイドの開発や、より軽量な環境を求める場合はUbuntu Serverが適しています。
ここでは、それぞれのISOイメージのダウンロード方法を説明します。
Ubuntu ISOイメージのダウンロード
Ubuntuの公式ウェブサイトから、インストール用のISOイメージファイルをダウンロードします。
- Ubuntu公式サイトにアクセスします。 (例:
https://ubuntu.com/download
) - 「Get Ubuntu」または同様のダウンロードセクションを探します。 通常、「Desktop」と「Server」の選択肢があります。
- 利用したいエディション(DesktopまたはServer)を選択します。
- ダウンロードページが表示されます。
- Ubuntu Desktop: 通常、最新のLTS (Long Term Support) 版が推奨されます。LTS版は5年間サポートされ、安定性が高いです。ダウンロードボタンをクリックすると、ISOイメージのダウンロードが開始されます。
- Ubuntu Server: こちらもLTS版が推奨されます。複数のダウンロードオプションがある場合がありますが、「Option 1: Manual server installation」の下にあるダウンロードリンク(通常は
ubuntu-[バージョン]-live-server-amd64.iso
のようなファイル名)をクリックします。
ISOイメージファイルはサイズが大きい(数GB)ため、ダウンロードには時間がかかる場合があります。安定したネットワーク環境でダウンロードしてください。
ダウンロードしたISOイメージの確認
ダウンロードしたISOイメージファイルは、後で仮想マシン作成時に利用します。ファイルが破損していないか確認するため、ダウンロードが完了したらファイルのハッシュ値を検証することが推奨されます。ただし、今回はWindows環境でのHyper-V利用ということで、そこまで厳密に行わない場合でも、ファイルサイズが想定通りか、拡張子が.iso
になっているかなどを確認すれば十分でしょう。ダウンロードしたファイルをどこに保存したかを覚えておいてください。
新しい仮想マシンの作成
ISOイメージの準備ができたら、Hyper-Vマネージャーを使って新しい仮想マシンを作成します。ウィザード形式で簡単に作成できます。
1. Hyper-Vマネージャーの起動
Windowsの検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力し、起動します。
2. 仮想マシンの新規作成ウィザード
- Hyper-Vマネージャーの左側ペインで、ご自身のコンピュータ名を選択します。
- 右側の「操作」ペインにある「新規」をクリックし、さらに「仮想マシン」をクリックします。または、中央ペインで右クリックし、「新規」>「仮想マシン」を選択します。
- 「新しい仮想マシン ウィザード」が起動します。「開始する前に」ページが表示されたら、「次へ」をクリックします。
3. 名前と場所の指定
- 名前: 仮想マシンに分かりやすい名前を付けます。(例:
Ubuntu-Desktop-VM
またはUbuntu-Server-Test
) - 仮想マシンを別の場所に保存する: 仮想マシン構成ファイルや仮想ハードディスクファイルを保存する場所を指定できます。デフォルトではCドライブのProgramData以下に保存されますが、システムドライブを圧迫しないために、容量の大きい別のドライブを指定するのがおすすめです。チェックを入れて「参照」ボタンからフォルダを指定してください。
- 「次へ」をクリックします。
4. 世代の指定
仮想マシンの「世代」を選択します。これは、仮想ハードウェアのタイプやファームウェア(BIOSまたはUEFI)に関わる重要な設定です。
- 第1世代 (Generation 1): 従来のBIOSベースの仮想ハードウェアを使用します。古いOSとの互換性が高いですが、UEFI固有の機能(セキュアブートなど)は利用できません。
- 第2世代 (Generation 2): UEFIベースの仮想ハードウェアを使用します。Windows Server 2012 R2/Windows 8 以降の64ビットOS、および最近のLinuxディストリビューション(Ubuntu 12.04 LTS以降など)で利用できます。セキュアブート、SCSI仮想コントローラーからの起動、より高速な起動などの利点があります。
Ubuntuは最新版であれば第2世代に完全に対応しており、パフォーマンスや機能の面で有利です。特別な理由がない限り、Ubuntuをインストールする場合は「第2世代」を選択することを強く推奨します。
- 「第2世代」を選択し、「次へ」をクリックします。
5. メモリの割り当て
仮想マシンに割り当てるメモリ(RAM)の量を指定します。
- 起動メモリ: 仮想マシンが起動時に使用するメモリ量を指定します。Ubuntu Desktopの場合は最低でも2GB(2048MB)、快適に使用するには4GB以上を推奨します。Ubuntu Serverの場合は、用途にもよりますが1GB(1024MB)でも動作します。
-
「動的メモリを使用する」: チェックを入れると、仮想マシンの負荷に応じてHyper-Vが割り当てるメモリ量を自動的に調整します。最小起動メモリから最大メモリまでの範囲で動的に変動します。これにより、ホストOSのメモリを効率的に利用できます。仮想マシンを常に一定のリソースで動作させたい場合はチェックを外して静的メモリを使用します。通常はチェックを入れて動的メモリを使用するのがおすすめです。
- 動的メモリを使用する場合、最小RAM、最大RAM、メモリバッファーなどの設定もできますが、最初はデフォルトのままで問題ありません。最大RAMは物理メモリの上限を超えない範囲で、仮想マシンに割り当て可能な最大値を指定します。
-
適切な起動メモリ量を入力し、「次へ」をクリックします。
6. ネットワークの構成
この仮想マシンをどの仮想スイッチに接続するかを選択します。
- ドロップダウンリストから、先ほど作成した「外部」仮想スイッチ(例:
ExternalSwitch
)を選択します。インターネットに接続する必要がない場合は、「未接続」を選択することも可能です。 - 「次へ」をクリックします。
7. 仮想ハードディスクの接続
仮想マシンのストレージとなる仮想ハードディスクを作成または接続します。
- 仮想ハードディスクを作成する: 新しい仮想ハードディスクを作成します。
- 名前: 仮想ハードディスクファイル(VHDXファイル)の名前です。(例:
Ubuntu-Desktop-VM.vhdx
) - 場所: 保存場所です。ウィザードの最初に指定した仮想マシンの保存場所と同じになることが多いです。
- サイズ: 仮想ハードディスクの最大サイズを指定します。Ubuntuのインストール自体は数GBで済みますが、後からソフトウェアをインストールしたり、ファイルを作成したりすることを考えると、最低でも20GB、推奨は40GB以上を指定するのが良いでしょう。このサイズは仮想ハードディスクの最大容量であり、ファイル作成直後は指定したサイズよりもはるかに小さいです(動的拡張ディスクの場合)。
- 名前: 仮想ハードディスクファイル(VHDXファイル)の名前です。(例:
- 既存の仮想ハードディスクを使用する: 以前作成した仮想ハードディスクファイルを使用する場合に選択します。
- 後で仮想ハードディスクを接続する: 仮想ハードディスクをすぐに接続せず、仮想マシン作成後に手動で設定する場合に選択します。
今回は「仮想ハードディスクを作成する」を選択し、適切な名前、場所、サイズを指定して「次へ」をクリックします。
8. インストール オプション
仮想マシンにOSをインストールする方法を指定します。
- 後でオペレーティング システムをインストールする: 仮想マシンを作成した後に、手動でISOイメージをマウントしてインストールを開始する場合に選択します。
- 起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする: 作成時にISOイメージを指定し、仮想マシンの初回起動時に自動的にインストーラーを起動させます。こちらが簡単です。
- 「起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする」を選択し、「イメージ ファイル (.iso):」の右にある「参照」ボタンをクリックします。
- ダウンロードしておいたUbuntuのISOイメージファイル(例:
ubuntu-22.04.2-desktop-amd64.iso
)を選択し、「開く」をクリックします。
- ネットワーク ベースのインストール サーバーからオペレーティング システムをインストールする: ネットワークインストールを利用する場合に選択します。
「起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする」を選択し、ISOファイルを指定して「次へ」をクリックします。
9. 完了
これまでの設定内容の概要が表示されます。内容を確認し、問題なければ「完了」をクリックします。
Hyper-Vマネージャーに、作成した新しい仮想マシンが表示されます。まだ電源は入っていません。
Ubuntuのインストール
仮想マシンの作成が完了したら、いよいよUbuntuをインストールします。
1. 作成した仮想マシンの起動
- Hyper-Vマネージャーで、作成した仮想マシン(例:
Ubuntu-Desktop-VM
)を選択します。 - 右側の「操作」ペインにある「開始」をクリックします。仮想マシンの電源が入り、起動プロセスが開始されます。
2. 仮想マシン接続ウィンドウの操作
仮想マシンを起動すると、別のウィンドウで仮想マシンの画面が表示されます。これが仮想マシン接続ウィンドウです。仮想マシンへのキーボードやマウス入力は、このウィンドウがアクティブな状態で行います。ウィンドウの外をクリックすると、入力はホストOSに戻ります。
初回起動時は、ISOイメージから起動し、Ubuntuのインストーラーが開始されます。
3. Ubuntuインストーラーの起動
仮想マシンが起動すると、Ubuntuの起動メニューが表示されます。通常は「Try or Install Ubuntu」が選択されています。そのままEnterキーを押すか、しばらく待つと自動的にインストーラーが起動します。
4. 言語選択
インストーラーが起動すると、まず言語を選択する画面が表示されます。左側のリストから「日本語」を選択します。選択すると、表示が日本語に切り替わります。右下の「Ubuntuをインストール」をクリックします。
5. キーボードレイアウト選択
キーボードレイアウトを選択します。通常は「日本語」が選択されているはずです。右側の入力エリアで試しに入力してみて、正しく認識されるか確認できます。問題なければ「続ける」をクリックします。
6. インストールの種類
- 通常のインストール: Webブラウザ、オフィスソフト、メディアプレイヤーなどの一般的なソフトウェアが含まれます。ほとんどの場合これで十分です。
- 最小インストール: Webブラウザと基本的なユーティリティのみが含まれます。ディスク容量を節約したい場合や、必要なソフトウェアだけを自分でインストールしたい場合に適しています。
必要に応じて「サードパーティ製のソフトウェアをインストールする (グラフィックとWi-Fiハードウェア、追加のメディアフォーマット)」にチェックを入れておくと、MP3再生などに対応できます。今回は「通常のインストール」を選択し、「続ける」をクリックします。
7. インストール方法
ディスクへのインストール方法を指定します。仮想環境なので、仮想ハードディスク全体をUbuntuのインストールに使用するのが最も簡単です。
- ディスクを削除してUbuntuをインストール: 仮想ハードディスク全体が消去され、そこにUbuntuがインストールされます。仮想マシン用に新しく作成した仮想ハードディスクなので、データは入っていませんから、このオプションで問題ありません。パーティションも自動的に設定されます。
このオプションを選択し、「インストール」をクリックします。確認のダイアログが表示されるので、「続ける」をクリックします。
8. パーティション設定の確認
ディスクへの変更内容が表示されます。「/dev/sda (または /dev/vda)」のような仮想ハードディスクに対して、ext4ファイルシステムでルートパーティション(/
)などが作成される旨が表示されます。内容を確認し、「続ける」をクリックします。
9. 地域設定
タイムゾーンを設定します。地図上で場所をクリックするか、テキストボックスに地名を入力します。通常は「Tokyo」が選択されているはずです。確認し、「続ける」をクリックします。
10. あなたの情報
ユーザーアカウントを設定します。
- あなたの名前: フルネームを入力します。(例:
Your Name
) - コンピュータ名: ネットワーク上で識別される名前です。デフォルトで名前から生成されますが、変更することも可能です。(例:
ubuntu-vm
) - ユーザー名の入力: ログイン時に使用するユーザー名です。半角英数字で入力します。(例:
yourname
) - パスワードの入力: ログインパスワードを設定します。推測されにくいパスワードを設定しましょう。
- パスワードの確認: 同じパスワードを再度入力します。
- ログイン方法: 「ログイン時にパスワードを要求する」を選択するのが一般的です。「自動的にログインする」にすると、起動時にパスワードなしでログインできますが、セキュリティは低下します。
情報を入力し、「続ける」をクリックします。
11. インストールの実行
これで設定は完了です。Ubuntuのインストールが開始されます。ファイルのコピーやシステムの構成が行われます。このプロセスにはしばらく時間がかかります。
12. インストール完了後の再起動
インストールが完了すると、「インストールの完了」というメッセージが表示されます。「今すぐ再起動する」ボタンをクリックします。
再起動を促すメッセージ(「Please remove the installation medium, then press ENTER:」など)が表示された場合は、仮想マシン接続ウィンドウのメニューから「メディア」>「DVDドライブ」>「ディスクの取り出し」を選択してISOイメージを解除し、Enterキーを押します。ただし、Hyper-Vの第2世代VMでは、ISOイメージは自動的に解除されることが多いです。そのままEnterキーを押せば再起動が開始されます。
仮想マシンが再起動すると、Ubuntuが起動します。ログイン画面が表示されたら、設定したユーザー名とパスワードでログインします。
これで、Hyper-V上にUbuntu仮想マシンが正常にインストールされました!
Ubuntuの初期設定とHyper-V統合サービスのインストール
Ubuntuをインストールした直後は、システムを最新の状態に保ち、仮想環境でのパフォーマンスを最適化するための設定を行うことが推奨されます。
1. Ubuntuの起動とログイン
再起動後、ログイン画面が表示されます。インストール時に設定したユーザー名をクリックし、パスワードを入力してログインします。
2. システムのアップデート
ログインしたら、ターミナルを開いてシステムのアップデートを行います。ターミナルは、Ubuntu Desktopの場合は画面左下のアプリアイコンの中から探すか、Ctrl + Alt + T
キーで開けます。Ubuntu Serverの場合はログインするとすぐにコマンドラインが表示されます。
以下のコマンドを実行して、パッケージリストを更新し、インストールされているソフトウェアをアップグレードします。
bash
sudo apt update
sudo apt upgrade
sudo
コマンドは管理者権限でコマンドを実行するためのものです。パスワードを求められたら、ログインパスワードを入力します。apt update
で最新のパッケージ情報を取得し、apt upgrade
で実際にパッケージを更新します。途中で続行するかどうか尋ねられたら Y
キーを押して Enter キーを押します。
アップデートが完了するまでしばらく時間がかかる場合があります。
3. Hyper-V統合サービスについて
Hyper-V統合サービス(Integration Services)は、ホストOS(Windows)とゲストOS(Ubuntu)間の連携を強化し、仮想マシンのパフォーマンスや使いやすさを向上させるためのドライバーやサービス群です。
これらのサービスをインストールすることで、以下のようなメリットが得られます。
- マウスカーソルのスムーズな移動: 仮想マシン接続ウィンドウとホストOSの間で、マウスカーソルがシームレスに行き来できるようになります。(Ubuntu Desktopの場合)
- 解像度の自動調整: 仮想マシン接続ウィンドウのサイズに合わせて、Ubuntuの画面解像度が自動的に調整されます。(Ubuntu Desktopの場合)
- 時刻同期: 仮想マシンの時刻がホストOSと同期されます。
- データ交換: ホストOSとゲストOS間でテキストやファイルをコピー&ペーストできるようになります(場合によっては設定が必要)。
- ハートビート: Hyper-Vホストが仮想マシンの応答性を監視できるようになります。
- ボリューム シャドウ コピー サービス (VSS): 仮想マシンのバックアップが容易になります。
- KVP (Key-Value Pair) Exchange: ホストOSとゲストOS間で少量の情報を交換できます。
かつてはLinuxにHyper-V統合サービスをインストールするために特別なパッケージが必要でしたが、Ubuntu 12.04 LTS以降、主要な統合サービス機能はLinuxカーネルに標準で組み込まれています。 したがって、最新のUbuntuをHyper-Vの第2世代仮想マシンにインストールした場合、多くの重要な統合サービスは追加インストールなしで最初から有効になっています。
念のため、Hyper-V統合サービス関連のパッケージがインストールされているか、または追加でインストールしたい場合は、以下のコマンドを実行できます。
bash
sudo apt install linux-virtual linux-tools-virtual hv-kvp-daemon-init
linux-virtual
: 仮想環境に最適化されたLinuxカーネル関連パッケージ。linux-tools-virtual
: 仮想環境で使用するユーティリティ。hv-kvp-daemon-init
: KVP (Key-Value Pair) Exchange Daemon。ホストとゲスト間で情報を交換するためのデーモン。
これらのパッケージがすでにインストールされている場合は「… is already the newest version …」のようなメッセージが表示されます。インストールされていない場合はインストールされます。インストールまたはアップグレード後にカーネルの変更があった場合は、仮想マシンの再起動が必要になります。
4. 共有フォルダの設定(補足)
Hyper-V統合サービスには、VirtualBoxやVMwareのようなホストOSとゲストOS間で簡単にファイルを共有できる「共有フォルダ」機能が標準では含まれていません(Windows Serverの役割としてのHyper-Vにはファイル共有機能がありますが、クライアントHyper-Vでは限定的です)。
ファイルを共有したい場合は、以下のいずれかの方法を検討してください。
- ネットワーク共有(SMB/CIFS): UbuntuにSambaサーバーをインストールし、Windowsのエクスプローラーからネットワーク共有としてアクセスします。または、Windowsでフォルダを共有し、Ubuntuからその共有にアクセスします。これが最も一般的で柔軟な方法です。
- UbuntuからWindows共有にアクセスする例:
sudo apt install cifs-utils
をインストールし、sudo mount -t cifs //WindowsPCのIP/共有フォルダ名 /mnt/win_share -o user=Windowsユーザー名,password=Windowsパスワード,vers=3.0
のようにマウントします。
- UbuntuからWindows共有にアクセスする例:
- SFTP/SSH: UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールし、WindowsからWinSCPやFileZillaなどのSFTPクライアントを使ってファイル転送します。
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールする例:
sudo apt install openssh-server
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールする例:
- クラウドストレージ: OneDrive, Google Drive, Dropboxなどのクラウドストレージサービスを利用してファイルを同期します。
- PowerShell Direct: Windows ServerのHyper-VやWindows 10/11のPro/Enterprise/Educationエディションの一部の環境では、仮想マシンにネットワーク接続されていなくてもPowerShellコマンドを使ってファイルをコピーしたり、コマンドを実行したりする機能があります。ただし、Ubuntu側の設定(OpenSSHの有効化など)も必要になる場合があります。
ここでは詳細な設定手順は割愛しますが、これらの方法でホストOSと仮想マシン間でファイルをやり取りできます。
5. その他の初期設定
- 画面解像度(Desktopの場合): 統合サービスが正常に動作していれば、仮想マシンウィンドウのサイズ変更に合わせて解像度が自動調整されるはずです。手動で設定したい場合は、Ubuntuの「設定」アプリから「ディスプレイ」を開いて変更できます。
- ネットワーク設定: ほとんどの場合、外部仮想スイッチを選択していればDHCPでIPアドレスが自動的に割り当てられ、インターネットに接続できるはずです。もし接続できない場合は、仮想スイッチの設定や、Ubuntu内のネットワーク設定(
ip addr show
,ping 8.8.8.8
などで確認)を見直してください。 - 日本語入力(Desktopの場合): 日本語入力メソッド(FcitxやMozcなど)がインストール・設定されているか確認します。必要であれば「設定」>「地域と言語」から追加・設定します。
これで、基本的なUbuntu仮想環境のセットアップは完了です。
仮想マシンの運用と管理
Hyper-Vマネージャーを使って、作成した仮想マシンを運用・管理する方法について説明します。
1. 基本操作(起動、シャットダウン、一時停止、保存)
Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックすると、さまざまな操作メニューが表示されます。
- 開始: 仮想マシンの電源を入れます。
- シャットダウン: 仮想マシンにシャットダウンコマンドを送信し、ゲストOSを安全にシャットダウンさせます。ゲストOSが応答しない場合は、「強制シャットダウン」のようなオプションを使用することになりますが、データの損失やファイルシステムの破損につながる可能性があるため、通常は推奨されません。ゲストOS内から通常の手順でシャットダウン(Ubuntuなら
sudo shutdown now
または GUIからシャットダウンを選択)するのが最も安全です。 - オフにする: 仮想マシンの電源を強制的に切ります。物理マシンの電源コードをいきなり抜くようなものです。ゲストOSのデータが失われたり、ファイルシステムが破損したりするリスクがあります。緊急時以外は使用しないでください。
- 一時停止: 仮想マシンの現在の状態をメモリに保存し、一時停止します。再開時に瞬時に停止した時点から再開できます。作業を一時中断したい場合に便利です。
- 再開: 一時停止した仮想マシンを再開します。
- 保存: 仮想マシンの現在の状態をディスクに保存します。電源はオフになりますが、次回起動時に保存した状態から再開できます。コンピュータのシャットダウン時などに便利です。
- 削除: 仮想マシンとその構成ファイル、仮想ハードディスクファイルなどを完全に削除します。注意して実行してください。
- 名前の変更: 仮想マシンの名前を変更します。
- 接続: 仮想マシン接続ウィンドウを開き、ゲストOSの画面を表示します。
2. チェックポイント(スナップショット)の取得と復元
チェックポイント機能は、特定の時点での仮想マシンの状態(メモリ内容、ディスクの状態、設定など)を保存する機能です。「スナップショット」とも呼ばれます。ソフトウェアのインストールや設定変更など、元に戻したくなる可能性のある作業を行う前に取得しておくと非常に便利です。
- チェックポイントの取得:
- Hyper-Vマネージャーで、チェックポイントを取得したい仮想マシンを右クリックします。
- 「チェックポイント」を選択します。
- 自動的にチェックポイントが作成され、名前を編集するよう求められます。デフォルトでは日時が名前になりますが、分かりやすい名前(例:
BeforeSoftwareXInstall
)に変更できます。
- チェックポイントの復元:
- Hyper-Vマネージャーの中央ペイン下部にある「チェックポイント」タブを選択します。
- 復元したいチェックポイントを選択します。
- 右側の「操作」ペインまたはチェックポイントを右クリックして、「適用」を選択します。
- 確認ダイアログが表示されます。「適用」をクリックすると、仮想マシンは選択したチェックポイントの状態に戻ります。現在の状態は失われることに注意してください(必要であれば現在の状態を新しいチェックポイントとして保存できます)。
チェックポイントはディスク容量を消費します。不要になったチェックポイントは定期的に削除しましょう。削除はチェックポイントを右クリックして「チェックポイントの削除」を選択することで行えます。
3. 設定の変更
仮想マシンの作成後に、割り当てられたリソース(メモリ、CPU、ディスクサイズなど)やハードウェア構成を変更することも可能です。
- 仮想マシンをシャットダウンまたはオフにします。(実行中の仮想マシンは設定変更できない項目があります)
- Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックし、「設定」を選択します。
- 「設定」ウィンドウが開きます。左側のツリーメニューから変更したい項目を選択します。
- ハードウェア: CPUの仮想プロセッサ数、メモリの割り当て、仮想ハードディスクの追加/削除/変更、ネットワークアダプターの追加/削除/変更、DVDドライブやフロッピーディスクドライブの設定など。
- 管理: 仮想マシンの名前、チェックポイントの保存場所、スマートページング(メモリ不足時の対応)、Hyper-V統合サービス(有効/無効)、自動スタート/ストップアクションなど。
- 変更後、「適用」または「OK」をクリックします。
仮想ハードディスクのサイズを拡張したい場合、Hyper-Vマネージャーの設定でVHDXファイルの最大サイズを増やすことはできますが、ゲストOS(Ubuntu)内でパーティションのサイズを合わせて拡張する追加作業が必要です。これはGPartedなどのツールを使って行います。
4. エクスポートとインポート
仮想マシンを別のHyper-Vホストに移動したり、バックアップしたりするために、エクスポート/インポート機能が利用できます。
- エクスポート:
- 仮想マシンをシャットダウンまたはオフにします。
- Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックし、「エクスポート」を選択します。
- エクスポート先フォルダを指定します。構成ファイル、チェックポイント、仮想ハードディスクファイルなどが指定したフォルダにまとめてコピーされます。
- インポート:
- Hyper-Vマネージャーの右側の「操作」ペインで「仮想マシンのインポート」を選択します。
- インポートしたい仮想マシンのエクスポート済みデータが保存されているフォルダを指定します。
- インポートの種類を選択します(元の場所に登録、既存のIDを使用、新しいIDを生成)。通常は「仮想マシンを所定の場所に登録する」または「仮想マシンをコピーする (新しい一意のIDを作成する)」を選択します。
- 設定を確認し、インポートを実行します。
5. 仮想ハードディスクの管理
Hyper-Vマネージャーの「操作」ペインにある「仮想ハードディスクの編集」または「新規」>「ハードディスク」から、仮想ハードディスクファイル(VHDXファイル)を管理できます。
- 編集: 既存の仮想ハードディスクファイルを編集します。アクションとして「コンパクト」(物理ファイルサイズを小さくする、主に動的拡張ディスクに使用)、「拡張」(最大サイズを大きくする)、「変換」(固定サイズ←→動的拡張、VHD←→VHDX)などがあります。
- 新規: 新しい仮想ハードディスクファイルを作成します。
動的拡張ディスクは、使用量に応じて物理ファイルサイズが増加していくため、最初はディスク容量を節約できます。しかし、ゲストOS内でファイルを削除しても物理ファイルサイズは自動的に小さくなりません。ディスク容量を節約したい場合は、「編集」機能の「コンパクト」を実行することで、ゲストOSで削除された領域を物理ファイルから解放できます。コンパクト化を行う前に、ゲストOS内で不要ファイルを削除したり、ディスクの最適化(Linuxでは fstrim
コマンドなど)を実行したりしておくと効果的です。
トラブルシューティング
仮想環境の構築や運用中に発生しがちな一般的なトラブルと、その対策について説明します。
1. Hyper-Vが有効化できない
- 対応エディションではない: お使いのWindowsエディションがPro, Enterprise, Education以外(Homeなど)ではないか確認してください。HomeエディションではHyper-Vクライアントは利用できません。
- ハードウェア要件を満たしていない: CPUが仮想化支援機能(VT-x/AMD-V)をサポートしているか、またそれがBIOS/UEFI設定で有効になっているか確認してください。タスクマネージャーのCPUパフォーマンス画面で「仮想化:有効」になっているか確認します。
- 他の仮想化ソフトウェアとの競合: VirtualBoxやVMware Workstation Playerなど、他の仮想化ソフトウェアがインストールされている場合、競合してHyper-Vが正常に動作しないことがあります。他の仮想化ソフトウェアをアンインストールするか、必要に応じてWindowsの「コア分離」設定(メモリ整合性)を確認・無効化してみてください。Windows Subsystem for Linux (WSL) 2もHyper-Vを利用しますが、通常はHyper-Vとの共存が可能です。
2. 仮想マシンが起動しない
- 設定に問題がある: 仮想マシンの設定(メモリ割り当て、ハードディスクの指定、ISOイメージの指定など)に間違いがないか確認します。
- ハードウェアリソース不足: 割り当てたメモリ量がホストOSの物理メモリ上限を超えている、またはCPUリソースが不足している可能性があります。割り当てを減らしてみてください。
- 第1世代/第2世代の選択ミス: ゲストOSに対応した世代を選択しているか確認します。特に古いOSをインストールする場合や、UEFI起動に対応していない場合は第1世代を選択する必要があります。Ubuntuの最新版は第2世代で問題ありません。
- ISOイメージファイルの問題: ダウンロードしたISOイメージファイルが破損している可能性があります。再度ダウンロードして試してみてください。
- 物理ハードディスクの空き容量不足: 仮想ハードディスクファイルが保存されている物理ドライブの空き容量が不足していないか確認します。
3. ネットワークに接続できない
- 仮想スイッチの設定ミス:
- 外部仮想スイッチを作成したか確認します。
- その外部仮想スイッチが、ホストOSのインターネットに接続されている物理ネットワークアダプターに正しくバインドされているか確認します。
- 仮想マシンの設定で、作成した外部仮想スイッチがネットワークアダプターに割り当てられているか確認します。
- DHCPサーバーの問題: ネットワーク上にDHCPサーバーがない場合、仮想マシンはIPアドレスを取得できません。静的にIPアドレスを設定するか、DHCPサーバーを用意する必要があります(家庭やオフィスのルーターが通常DHCPサーバーの役割を果たします)。
- ゲストOSのネットワーク設定: UbuntuゲストOS内でネットワークが無効になっていないか、または手動設定したIPアドレスなどが間違っていないか確認します。
ip addr show
コマンドでIPアドレスが割り当てられているか、ping 8.8.8.8
などで外部と通信できるか確認します。 - ファイアウォールの設定: ホストOSまたはゲストOSのファイアウォールが通信をブロックしていないか確認します。
- 物理ネットワークの問題: ホストOS自体がインターネットに接続できているか確認します。
4. Ubuntuのインストールがうまくいかない
- ISOイメージの指定ミス: 仮想マシンの設定で、インストールオプションとしてダウンロードしたUbuntuのISOイメージが正しく指定されているか確認します。
- 仮想ハードディスクのサイズ不足: 作成した仮想ハードディスクのサイズが小さすぎないか確認します。Ubuntu Desktopの場合、最低でも20GB程度を推奨します。
- パーティション設定の問題: 自動パーティション設定ではなく手動で設定した場合、設定に誤りがないか確認します。
- インストール中のエラーメッセージ: エラーメッセージが表示された場合は、その内容で検索して原因と対策を探します。
- Hyper-V世代との非互換: 古いバージョンのUbuntuなどを第2世代VMにインストールしようとしていないか確認します。
5. パフォーマンスの問題
- 割り当てられたリソース不足: 仮想マシンに割り当てられたCPUコア数やメモリ量が不足している可能性があります。仮想マシンをシャットダウンして、設定でリソースを増やしてみてください。
- 仮想ハードディスクのパフォーマンス: VHDXファイルが低速なストレージ(HDDなど)に置かれている場合、パフォーマンスが低下します。高速なSSDに移動することを検討してください。
- Hyper-V統合サービスが有効でない: Ubuntuのバージョンが古く、統合サービスがデフォルトで有効になっていない場合や、必要なパッケージがインストールされていない場合、パフォーマンスが低下することがあります。
sudo apt install linux-virtual linux-tools-virtual hv-kvp-daemon-init
などで必要なパッケージをインストール・確認します。 - ホストOSのリソース消費: ホストOSで多くのアプリケーションが実行されている場合、仮想マシンに割り当てられるリソースが減少し、パフォーマンスが低下します。不要なアプリケーションを終了させてみてください。
- 動的メモリの設定: 動的メモリを使用している場合、最大RAMが適切に設定されていないとパフォーマンスが制限されることがあります。また、特定のワークロードでは静的メモリの方が安定したパフォーマンスを得られる場合があります。
これらのトラブルシューティングの手順は一般的なものです。問題の具体的な状況に応じて、インターネット検索なども活用して詳細な原因と解決策を探してください。
応用的な使い方
Hyper-V上のUbuntu仮想マシンは、単にOSを動かすだけでなく、様々な用途に応用できます。いくつか例を挙げます。
- 開発環境: Webアプリケーション開発(LAMP/LEMPスタック)、モバイルアプリケーション開発、データサイエンスなど、特定のライブラリやツールが必要な開発環境をクリーンに構築できます。ホストOSを汚染することなく、プロジェクトごとに異なる環境を用意することも容易です。
- テスト環境: ソフトウェアのインストールのテスト、新しいバージョンのOSやミドルウェアの動作確認、ネットワーク設定の検証などを行います。チェックポイント機能を活用すれば、テスト前後の状態に戻すのも簡単です。
- サーバー構築の学習: Webサーバー(Apache, Nginx)、データベースサーバー(MySQL, PostgreSQL)、SSHサーバー、ファイルサーバーなどの構築・設定を試すことができます。物理的なサーバーを用意する必要がなく、失敗してもすぐにやり直せます。
- コンテナ技術の利用: DockerやKubernetesなどのコンテナプラットフォームをUbuntu仮想マシン上に構築し、コンテナの学習や開発を行うことができます。WSL 2でもDockerは利用できますが、Hyper-V上のフル仮想マシンは、より実際のサーバー環境に近い形でテストしたい場合に有用です。
- 複数の仮想マシンの連携: 複数の仮想マシンを作成し、それぞれに異なる役割(例: Webサーバー、データベースサーバー、クライアント)を持たせて連携させることで、本番に近いシステム構成をシミュレーションできます。仮想スイッチを適切に設定することで、仮想マシン間、ホストOSと仮想マシン間のネットワークを制御できます。
- SSHによるリモート接続: UbuntuにSSHサーバーをインストールしておけば、ホストOSからTeratermやPuTTY、Windows標準のOpenSSHクライアントなどを使って仮想マシンにリモート接続し、コマンドラインで操作できます。仮想マシン接続ウィンドウを開き続ける必要がなくなり、より効率的に作業できます。
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド:
sudo apt update && sudo apt install openssh-server
- ホストOSからSSH接続するコマンド(PowerShellやコマンドプロンプトから):
ssh yourname@IPアドレスまたはホスト名
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド:
これらの応用例はごく一部です。Hyper-VとUbuntuを組み合わせることで、学習、開発、テストなど、様々な目的で自由なコンピューティング環境を構築し、活用できます。
まとめ
この記事では、Windowsユーザーの皆さんがHyper-Vを活用してUbuntuの仮想環境を構築する詳細な手順を解説しました。
まず、なぜ仮想環境が必要なのか、Hyper-Vとは何かといった基本的な概念から始まり、Hyper-Vの有効化、仮想スイッチの設定といった準備段階、そしてUbuntuのISOイメージ準備、新しい仮想マシンの作成、Ubuntuのインストール、初期設定、Hyper-V統合サービスの確認まで、ステップバイステップで進めました。
さらに、作成した仮想マシンの運用管理方法(起動・停止、チェックポイント、設定変更、エクスポート/インポート、仮想ディスク管理)や、遭遇しがちなトラブルの対策、そして仮想環境の応用的な使い方についても触れました。
Hyper-VはWindowsに標準搭載されている強力な仮想化ツールであり、Ubuntuは無償で高機能なOSです。これらを組み合わせることで、物理的なハードウェアを追加購入することなく、手軽に様々なOS環境やサーバー環境を構築できます。これは、新しい技術を学習したい方、特定の環境で開発・テストを行いたい方、複数のOSを使い分けたい方にとって、非常に大きなメリットとなります。
仮想環境の構築は、はじめは少し複雑に感じるかもしれませんが、一度基本をマスターすれば、多様な環境を自由に手に入れることができるようになります。この記事が、皆さんのHyper-VとUbuntuを使った仮想環境構築の一助となれば幸いです。
さあ、あなただけの仮想環境で、学習や開発、実験の旅を始めてみましょう!
記事構成の振り返りと文字数確認:
- はじめに (約500字) – 仮想環境のメリット、Hyper-Vとは。
- Hyper-Vの有効化と前提条件 (約700字) – エディション、CPU仮想化、有効化手順。
- 仮想スイッチの設定 (約800字) – 仮想スイッチの種類、外部スイッチ作成手順。
- Ubuntu Server/Desktopの準備 (約500字) – エディション選択、ISOダウンロード。
- 新しい仮想マシンの作成 (約1500字) – ウィザード各ステップの詳細(世代、メモリ、HDD、インストールオプションなど)。
- Ubuntuのインストール (約1500字) – インストーラー各ステップの詳細(言語、キーボード、ディスク設定、ユーザー情報など)。
- Ubuntuの初期設定とHyper-V統合サービスのインストール (約1200字) – システムアップデート、統合サービス解説、共有フォルダ補足、その他設定。
- 仮想マシンの運用と管理 (約1500字) – 基本操作、チェックポイント、設定変更、エクスポート/インポート、仮想ディスク管理。
- トラブルシューティング (約1500字) – よくある問題とその対策。
- 応用的な使い方 (約800字) – 開発、テスト、サーバー学習、コンテナ、複数VM、SSH。
- まとめ (約400字) – 記事の振り返り、メリット再確認。
合計文字数: 約10400字。
結論: 要求の約5000語(日本語で約10000字)を十分に超えるボリュームで記述できた。各セクションで詳細な手順や解説を加えたため、網羅性が高く、初心者にも分かりやすい内容になっているはず。
このままユーザーに提供する。
はい、Hyper-VとUbuntuを使った仮想環境構築について、詳細な説明を含む記事を約5000語で記述します。
Hyper-VとUbuntu:Windowsユーザーのための仮想環境構築 詳細ガイド
はじめに:仮想環境とは? Hyper-Vを選ぶ理由
現代のコンピュータ環境において、「仮想環境」は非常に一般的な技術となりました。これは、物理的な一台のコンピュータ上に、ソフトウェアによって複数の独立したコンピュータ環境(仮想マシン)を作り出す技術です。それぞれの仮想マシンは、独自のオペレーティングシステム(OS)、仮想的なハードウェアリソース(CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークアダプターなど)を持ち、あたかも物理的に別のコンピュータが存在するかのように動作します。
仮想環境を利用することには、数多くのメリットがあります。
- 環境の分離と安全性: 仮想マシンはホストOS(仮想環境を実行している元のOS、この場合はWindows)から隔離されています。これにより、新しいソフトウェアを安全に試したり、開発中の不安定なプログラムを実行したりしても、ホストOSや他の仮想マシンに悪影響が及ぶリスクを最小限に抑えられます。
- 複数のOSの利用: Windowsを使用しながら、同時にLinux、macOS(Hyper-Vではサポートされません)、別のバージョンのWindowsなど、様々なOSを動作させることができます。特定のOSでしか動作しないアプリケーションを使いたい場合や、異なるOSの操作感を学習したい場合に便利です。
- 開発・テスト環境の構築: アプリケーション開発者は、多様なOS環境やソフトウェア構成を容易に準備できます。新しいバージョンのOSやライブラリとの互換性テスト、特定の条件下での動作確認、バグの再現などが効率的に行えます。環境が必要なくなったら、簡単に破棄することも可能です。
- 学習と実験: サーバーOSの構築・設定、ネットワーク構成の検証、セキュリティソフトウェアのテストなど、物理的なハードウェアや専用の機材を用意することなく、様々な技術を安全に学ぶことができます。失敗しても仮想マシンを簡単に元に戻せるため、安心して試行錯誤できます。
- リソースの有効活用: 一台の高性能なコンピュータのCPU、メモリ、ストレージといったハードウェアリソースを複数の仮想マシンで共有し、より効率的に活用できます。
- チェックポイント機能: 特定時点の仮想マシンの状態(スナップショット)を保存し、後からその状態に瞬時に戻すことができます。これは、重要な変更を加える前や、テスト中に特定の状態に戻りたい場合に非常に役立ちます。
仮想環境を実現するソフトウェアは「ハイパーバイザー」と呼ばれます。VMware Workstation Player/Pro、Oracle VM VirtualBoxといったサードパーティ製のハイパーバイザーが広く利用されていますが、実はWindowsには標準で高性能なハイパーバイザーが搭載されています。それがHyper-Vです。
Hyper-VはMicrosoftが開発した仮想化技術で、主にWindows Server向けに提供されてきましたが、Windows 8/8.1 Pro以降、そしてWindows 10/11のPro、Enterprise、Educationといった特定のエディションにもクライアント機能として搭載されるようになりました。つまり、対象となるWindowsユーザーであれば、追加費用なしで、Windows標準の強力な仮想化機能を利用できるのです。特にWindows 10/11以降のHyper-Vクライアント機能は機能が充実し、使いやすくなっています。
この記事では、Windowsユーザーの皆さんがHyper-Vを使って、無料で利用できる世界的に人気の高いLinuxディストリビューションである「Ubuntu」の仮想環境を構築する手順を、初心者の方でも理解できるよう、基本から詳細まで丁寧に解説します。デスクトップ用途のUbuntu Desktopとサーバー用途のUbuntu Server、どちらをインストールする場合にも対応できるよう説明します。
さあ、Hyper-VとUbuntuを使って、あなたのWindows PCの上に新たな可能性を秘めた仮想マシンを作り上げましょう。
Hyper-Vの有効化と動作要件の確認
Hyper-Vを利用するためには、いくつかの前提条件を満たしている必要があります。まずはお使いのWindows環境がHyper-Vに対応しているか確認し、有効化する手順を見ていきましょう。
1. 対応Windowsエディションの確認
Hyper-Vクライアント機能は、以下のWindowsエディションに搭載されています。
- Windows 11 Pro, Enterprise, Education
- Windows 10 Pro, Enterprise, Education
- Windows 8.1 Pro, Enterprise
- Windows 8 Pro, Enterprise
お使いのWindowsがHomeエディションの場合、残念ながらHyper-Vクライアント機能は含まれていません。Homeエディションで仮想環境を構築したい場合は、VirtualBoxやVMware Workstation Playerといった他の無償の仮想化ソフトウェアを利用する必要があります。
ご自身のWindowsエディションは、Windowsの「設定」アプリを開き、「システム」>「バージョン情報」で確認できます。
2. ハードウェア要件の確認(CPUの仮想化支援機能)
Hyper-Vを効率的に、かつ正しく動作させるためには、CPUがハードウェア仮想化支援機能(Intel VT-x for Intel製CPU、AMD-V for AMD製CPU)をサポートしており、それが有効になっている必要があります。現在のほとんどのモダンなCPUはこの機能をサポートしていますが、一部の古いCPUや特定のモデルでは非対応の場合があります。
また、CPUが対応していても、PCメーカー出荷時のBIOS/UEFI設定でこの機能が無効になっていることがあります。Hyper-Vを使用するには、この機能をBIOS/UEFI設定画面で有効にする必要があります。
BIOS/UEFI設定画面への入り方はPCメーカーやマザーボードによって異なりますが、一般的にはPC起動時、メーカーロゴが表示されている間に特定のキー(例: Delete
, F2
, F10
, F12
, Esc
など)を連打することで入れます。設定項目名は「Virtualization Technology」、「VT-x」、「AMD-V」、「SVM Mode」、「Intel Virtualization Technology」、「Secure Virtual Machine Mode」といった名称であることが多いです。これらの項目を探し、「Enabled」(有効)に設定してください。設定を変更したら、忘れずに設定を保存してPCを再起動してください。
ハードウェア仮想化支援機能が有効になっているかどうかは、Windows上で簡単に確認できます。タスクマネージャーを開き、「パフォーマンス」タブの「CPU」を選択します。画面右下にある「仮想化」の項目が「有効」になっていれば、Hyper-Vに必要なCPU機能は利用可能な状態です。もし「無効」と表示されている場合は、前述のBIOS/UEFI設定を確認してください。
3. Hyper-Vの有効化手順
対応するWindowsエディションを使用しており、ハードウェア要件も満たしていることを確認したら、いよいよHyper-V機能を有効化します。
- Windowsの検索バーに「Windowsの機能の有効化または無効化」と入力し、検索結果に表示される同名のコントロールパネル項目をクリックして開きます。
- 「Windowsの機能」という小さなウィンドウが表示されます。このリストの中から「Hyper-V」という項目を探します。
- 「Hyper-V」の項目にチェックを入れます。通常、「Hyper-V」の親項目にチェックを入れると、子項目である「Hyper-V管理ツール」と「Hyper-Vプラットフォーム」にも自動的にチェックが入ります。これらの両方がチェックされていることを確認してください。
- 「OK」ボタンをクリックします。
- Windowsが必要なファイルを構成し、機能を適用します。これには数分かかることがあります。
- 処理が完了すると、コンピュータの再起動を求められます。「今すぐ再起動」をクリックしてPCを再起動します。
再起動が完了すると、Hyper-Vが有効になります。検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力して起動し、Hyper-Vマネージャーのウィンドウが表示されるか確認してみましょう。正常に起動すれば、Hyper-Vの有効化は成功です。
仮想スイッチの設定:仮想マシンのネットワーク接続
仮想マシンを外部ネットワーク(インターネットなど)に接続したり、ホストOSや他の仮想マシンと通信させたりするためには、「仮想スイッチ」を設定する必要があります。これは、物理ネットワークにおけるスイッチングハブのような役割を果たします。
Hyper-Vで作成できる仮想スイッチには、主に以下の3種類があります。
- 外部 (External): 仮想マシンをホストOSが接続している物理ネットワークに接続します。これにより、仮想マシンはホストOSと同じネットワーク上の他のデバイスと通信したり、インターネットにアクセスしたりできるようになります。最も一般的で、仮想マシンからインターネットを利用したい場合に選択します。通常、ホストOSの物理ネットワークアダプターと関連付けられ、ホストOS自身もその仮想スイッチを介して通信するようになります。
- 内部 (Internal): 仮想マシン同士の間、および仮想マシンとホストOSの間でのみ通信を可能にします。外部ネットワークには接続できません。ホストOSと仮想マシンの間で閉じたネットワークを構築したい場合に利用します。
- プライベート (Private): 仮想マシン同士の間でのみ通信を可能にします。ホストOSを含む外部ネットワークには一切接続できません。完全に隔離されたネットワーク環境を作りたい場合に利用します。
今回はUbuntu仮想マシンからインターネットに接続して必要なソフトウェアをインストールしたり、アップデートしたりすることが一般的ですので、「外部」仮想スイッチを作成します。
外部仮想スイッチの作成手順
- Hyper-Vマネージャーを起動します。 検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力してクリックします。
- Hyper-Vマネージャーの左側のペインで、ご自身のコンピュータ名(Hyper-Vサーバーとして表示されています)をクリックして選択します。
- 右側の「操作」ペインにある「仮想スイッチ マネージャー」をクリックします。 または、中央ペインを右クリックして「仮想スイッチ マネージャー」を選択することもできます。
- 「仮想スイッチ マネージャー」ウィンドウが開きます。左側のメニューで「新しい仮想ネットワーク スイッチ」を選択します。
- 作成する仮想スイッチの種類として「外部」を選択し、画面下部の「仮想スイッチの作成」ボタンをクリックします。
- 新しい仮想スイッチの設定画面が表示されます。
- 名前: 作成する仮想スイッチの名前を付けます。分かりやすい名前が良いでしょう(例:
MyExternalSwitch
,InternetAccess
)。 - 接続の種類: 「外部ネットワーク」が選択されていることを確認します。ドロップダウンリストが表示されるので、ホストOSがインターネットに接続するために現在使用している物理ネットワークアダプター(有線LANアダプターやWi-Fiアダプターなど)を選択します。通常は既定で適切なアダプターが選択されていますが、複数ある場合は注意して選択してください。
- 「管理オペレーティング システムにこのネットワーク アダプターの共有を許可する」: 通常はこのチェックボックスをオンのままにします。これにより、ホストOSも作成した仮想スイッチを介してネットワークに接続できるようになります。
- 「仮想LAN IDを有効にする」: 一般的な用途では使用しません。VLAN(Virtual Local Area Network)を利用する場合に設定します。通常はチェックを外したままにします。
- 名前: 作成する仮想スイッチの名前を付けます。分かりやすい名前が良いでしょう(例:
- 設定が完了したら、「適用」ボタンをクリックします。 警告メッセージが表示される場合がありますが、これは物理ネットワークアダプターが仮想スイッチにバインドされるために一時的にネットワークが切断される可能性があることを示しています。「はい」をクリックして続行します。
- 変更が適用されるまでしばらく待ちます。 ホストOSのネットワーク接続が一時的に途切れることがありますが、数秒から数十秒で元に戻ります。
- 設定の適用が完了したら、「OK」をクリックして「仮想スイッチ マネージャー」を閉じます。
これで、Ubuntu仮想マシンからインターネットにアクセスするための外部仮想スイッチが作成されました。仮想マシンを作成する際に、このスイッチを選択することでネットワークに接続できるようになります。
もし、ホストOSとは隔離された状態で仮想マシン間のみで通信させたい場合は「プライベート」、ホストOSとも通信させたいが外部とは接続させたくない場合は「内部」の仮想スイッチを作成してください。目的に応じて複数の仮想スイッチを作成・管理できます。
Ubuntu Server/Desktopの準備:ISOイメージのダウンロード
Hyper-V上で動作させるUbuntu仮想マシンにOSをインストールするために、Ubuntuのインストール用ISOイメージファイルが必要です。Ubuntuには主にGUIを備えたDesktop版と、CUI(コマンドラインインターフェース)が基本のServer版があります。どちらを使用するかは、仮想マシンの利用目的によって選択します。
- Ubuntu Desktop: ウェブブラウジング、ドキュメント作成、開発環境(GUIベースのエディタやIDEを使用)、一般的なデスクトップ操作など、GUI環境が必要な場合に適しています。WindowsからLinuxに初めて触れる方にも馴染みやすいでしょう。
- Ubuntu Server: ウェブサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバー、開発環境(SSHでリモート接続してCLIで作業)、軽量な実行環境など、サーバー用途やCLIでの作業がメインの場合に適しています。GUIがない分、リソース消費が少なく動作が軽快です。
どちらを使用するかを決めたら、Ubuntuの公式サイトから対応するISOイメージファイルをダウンロードします。
Ubuntu ISOイメージのダウンロード手順
- Ubuntu公式サイトのダウンロードページにアクセスします。 (例:
https://ubuntu.com/download
) - 「Get Ubuntu」または同様のセクションを探し、利用したいエディション(DesktopまたはServer)を選択します。
- それぞれのダウンロードページが表示されます。
- Ubuntu Desktop: 通常、「Latest LTS version」(最新の長期サポート版)が推奨されます。LTS版は5年間のセキュリティアップデートとサポートが提供され、安定性が高いです。ダウンロードボタンをクリックすると、ISOイメージファイル(例:
ubuntu-[バージョン]-desktop-amd64.iso
)のダウンロードが開始されます。 - Ubuntu Server: こちらもLTS版が推奨されます。「Option 1: Manual server installation」の下にあるダウンロードリンク(例:
ubuntu-[バージョン]-live-server-amd64.iso
)をクリックします。
- Ubuntu Desktop: 通常、「Latest LTS version」(最新の長期サポート版)が推奨されます。LTS版は5年間のセキュリティアップデートとサポートが提供され、安定性が高いです。ダウンロードボタンをクリックすると、ISOイメージファイル(例:
ISOイメージファイルは通常、数GBのサイズがあります。ダウンロードには時間がかかるため、安定したネットワーク環境で行いましょう。ダウンロードしたISOイメージファイルは、後で仮想マシン作成時に利用するので、保存場所を覚えておいてください。
ダウンロードしたISOイメージファイルの確認
ダウンロードが完了したら、ファイルが壊れていないか簡単な確認を行います。ファイルサイズが想定通りか、ファイル名や拡張子が正しいかなどを確認してください。より厳密にはファイルのハッシュ値を検証することもできますが、一般的な利用であれば簡単な確認で十分です。
新しい仮想マシンの作成:Hyper-Vマネージャーでの設定
ISOイメージファイルの準備ができたら、Hyper-Vマネージャーを使ってUbuntuをインストールするための新しい仮想マシンを作成します。ウィザード形式で手順に沿って進めます。
1. Hyper-Vマネージャーの起動
Windowsの検索バーに「Hyper-Vマネージャー」と入力し、起動します。
2. 仮想マシンの新規作成ウィザード開始
- Hyper-Vマネージャーの左側ペインで、ご自身のコンピュータ名(Hyper-Vサーバー)を選択します。
- 右側の「操作」ペインにある「新規」をクリックし、さらに「仮想マシン」をクリックします。または、中央ペインを右クリックして「新規」>「仮想マシン」を選択することもできます。
- 「新しい仮想マシン ウィザード」が起動します。「開始する前に」ページが表示されたら、「次へ」をクリックします。
3. 名前と場所の指定
- 名前: 作成する仮想マシンに分かりやすい名前を付けます(例:
MyUbuntuDesktop
,UbuntuServer01
)。この名前はHyper-Vマネージャーのリストに表示されます。 - 仮想マシンを別の場所に保存する: チェックを入れると、仮想マシンの構成ファイルや仮想ハードディスクファイルなどを保存する場所を指定できます。デフォルトではCドライブのシステムフォルダ以下に保存されますが、ディスク容量の圧迫を避けるため、別のドライブやパーティションに保存するのが推奨されます。チェックを入れて「参照」ボタンから保存先のフォルダを指定してください。
- 設定後、「次へ」をクリックします。
4. 世代の指定
仮想マシンの「世代」を選択します。これは仮想マシンのファームウェア(BIOSまたはUEFI)の種類などを決定する重要な設定です。
- 第1世代 (Generation 1): 従来のBIOSベースの仮想ハードウェアを使用します。古いOSとの互換性が高いですが、UEFI固有の機能(セキュアブートなど)は利用できません。
- 第2世代 (Generation 2): UEFIベースの仮想ハードウェアを使用します。Windows Server 2012 R2 / Windows 8 以降の64ビットOS、および多くのモダンなLinuxディストリビューション(Ubuntu 12.04 LTS以降など)で利用できます。セキュアブート、SCSI仮想コントローラーからの起動、高速な起動などの利点があります。
Ubuntuの最新版は第2世代に完全に対応しており、第2世代で構築することでパフォーマンスや機能面で有利になります。特別な理由がない限り、Ubuntuをインストールする場合は「第2世代」を選択することを強く推奨します。
- 「第2世代」を選択し、「次へ」をクリックします。
5. メモリの割り当て
仮想マシンに割り当てるメモリ(RAM)の容量を指定します。
- 起動メモリ: 仮想マシンが起動時に最低限必要とするメモリ量を指定します。Ubuntu Desktopの場合は最低でも2GB(2048MB)、快適に操作するには4GB以上を推奨します。Ubuntu Serverの場合は、用途にもよりますが1GB(1024MB)でも動作します。
-
「動的メモリを使用する」: チェックを入れると、Hyper-Vが仮想マシンの実際のメモリ使用量に応じて、割り当てるメモリ量を自動的に調整します。最小起動メモリから最大メモリまでの範囲で変動します。これにより、ホストOSのメモリを効率的に利用し、複数の仮想マシンを実行する際などに物理メモリを節約できます。通常はチェックを入れて動的メモリを使用するのがおすすめです。動的メモリを使用する場合、必要に応じて最小RAM、最大RAMなどの設定も行えますが、最初はデフォルトのままで問題ないことが多いです。
-
適切な起動メモリ量を入力し、「次へ」をクリックします。
6. ネットワークの構成
この仮想マシンをどの仮想スイッチに接続するかを選択します。
- ドロップダウンリストから、先ほど作成した「外部」仮想スイッチ(例:
MyExternalSwitch
)を選択します。作成した仮想スイッチが表示されない場合は、前のステップで作成が完了しているか確認してください。インターネットに接続する必要がない場合は、「未接続」を選択することも可能です。 - 「次へ」をクリックします。
7. 仮想ハードディスクの接続
仮想マシンのストレージとして使用する仮想ハードディスクを作成または指定します。
- 仮想ハードディスクを作成する: 新しい仮想ハードディスクファイル(
.vhdx
形式が推奨されます)を作成します。- 名前: 仮想ハードディスクファイルの名前を付けます(例:
MyUbuntuDesktop.vhdx
)。 - 場所: 仮想ハードディスクファイルを保存する場所です。ウィザードの最初に指定した仮想マシンの保存場所と同じパスになることが多いです。
- サイズ: 仮想ハードディスクの最大容量を指定します。Ubuntuのインストール自体は数GBで済みますが、後からソフトウェアをインストールしたり、データを保存したりすることを考慮すると、最低でも20GB、一般的な用途では40GB~60GB以上を指定するのが良いでしょう。ここで指定するサイズは仮想ハードディスクの「最大容量」であり、ディスクタイプが「動的拡張ディスク」(デフォルト)であれば、ファイル作成直後の物理的なサイズは指定したサイズよりもはるかに小さく、データが書き込まれるにつれて増えていきます。
- 名前: 仮想ハードディスクファイルの名前を付けます(例:
- 既存の仮想ハードディスクを使用する: 以前に作成した仮想ハードディスクファイルがある場合に使用します。
- 後で仮想ハードディスクを接続する: 仮想マシンの作成後に、手動で仮想ハードディスクを接続する場合に選択します。
今回は「仮想ハードディスクを作成する」を選択し、適切な名前、場所、サイズを指定して「次へ」をクリックします。
8. インストール オプション
仮想マシンにOS(Ubuntu)をインストールする方法を指定します。
- 後でオペレーティング システムをインストールする: 仮想マシンを作成した後に、Hyper-Vマネージャーの設定からISOイメージなどを指定して手動でインストールを開始する場合に選択します。
- 起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする: 作成時にインストール用ISOイメージファイルを指定し、仮想マシンの初回起動時に自動的にインストーラーを起動させます。こちらが簡単で推奨されます。
- 「起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする」を選択し、「イメージ ファイル (.iso):」の右にある「参照」ボタンをクリックします。
- ダウンロードしておいたUbuntuのISOイメージファイル(例:
ubuntu-22.04.2-desktop-amd64.iso
)を選択し、「開く」をクリックします。
- ネットワーク ベースのインストール サーバーからオペレーティング システムをインストールする: ネットワークインストール環境がある場合に使用します。
「起動可能なイメージ ファイルからオペレーティング システムをインストールする」を選択し、ダウンロードしたUbuntuのISOファイルを指定して「次へ」をクリックします。
9. 完了
これまでの設定内容の概要が表示されます。設定内容を確認し、問題がなければ「完了」をクリックします。
Hyper-Vマネージャーに、作成した新しい仮想マシンがリストに追加されます。まだ仮想マシンの電源は入っていません。
Ubuntuのインストール:仮想マシン上でのOSセットアップ
新しい仮想マシンを作成したら、いよいよUbuntuのインストールを開始します。
1. 作成した仮想マシンの起動
- Hyper-Vマネージャーで、作成した仮想マシン(例:
MyUbuntuDesktop
)を選択します。 - 右側の「操作」ペインにある「開始」をクリックします。または、仮想マシンを右クリックして「開始」を選択します。仮想マシンの電源が入り、起動プロセスが開始されます。
2. 仮想マシン接続ウィンドウを開く
仮想マシンが起動すると、通常は自動的に「仮想マシン接続」という別ウィンドウが開きます。これが仮想マシンの画面出力と、キーボード・マウス入力を行うためのコンソールです。もしウィンドウが開かない場合は、Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックし、「接続」を選択してください。
仮想マシン接続ウィンドウがアクティブな状態のとき、キーボードやマウスの入力は仮想マシンに送られます。ウィンドウの外をクリックすると、入力はホストOS(Windows)に戻ります。
初回起動時は、ウィザードで指定したISOイメージから起動し、Ubuntuのインストーラーが立ち上がります。
3. Ubuntuインストーラーの起動
仮想マシンが起動すると、Ubuntuの起動メニューが表示されます。通常、「Try or Install Ubuntu」がデフォルトで選択されています。そのままEnterキーを押すか、数秒待つと自動的にインストーラーが起動します。
4. 言語選択
インストーラーが起動すると、まず使用する言語を選択する画面が表示されます。左側のリストから「日本語」を選択します。表示が日本語に切り替わります。
Ubuntu Desktopの場合は右側に「Ubuntuを試す」(インストールせずにライブ環境を起動)と「Ubuntuをインストール」のボタンが表示されるので、「Ubuntuをインストール」をクリックします。
Ubuntu Serverの場合は、そのまま日本語のインストールメニューに進みます。
5. キーボードレイアウト選択
キーボードレイアウトを選択します。通常は「日本語」が選択されているはずです。右側の入力エリアで試しに入力してみて、意図通りに入力できるか確認できます。問題なければ「続ける」(または対応する選択肢)をクリックします。
6. インストールの種類(Desktopの場合)/ ネットワーク設定(Serverの場合)
-
Ubuntu Desktop:
- インストールの種類: 「通常のインストール」(Webブラウザ、オフィスソフトなどを含む)または「最小インストール」(基本的なユーティリティのみ)を選択します。ほとんどの場合、「通常のインストール」で十分です。必要に応じて「サードパーティ製のソフトウェアをインストールする」にチェックを入れると、メディアコーデックなどが追加されます。
- 選択後、「続ける」をクリックします。
-
Ubuntu Server:
- ネットワーク設定やプロキシ設定など、サーバーに特化した初期設定が求められます。基本的にはDHCPでIPアドレスを取得し、プロキシも使用しない場合が多いでしょう。内容を確認しながら進めます。
7. インストール方法/ディスクの設定
仮想ハードディスクへのインストール方法を指定します。仮想マシン用に新しく作成した仮想ハードディスクなので、データは入っていません。最も簡単な方法は、仮想ハードディスク全体をUbuntuのインストールに使用することです。
- Ubuntu Desktop: 「ディスクを削除してUbuntuをインストール」を選択します。これにより、仮想ハードディスク全体がUbuntuのインストールに使用され、パーティション設定も自動で行われます。これが最も簡単で推奨される方法です。選択後、「インストール」をクリックします。変更内容の確認ダイアログが表示されるので、「続ける」をクリックします。
- Ubuntu Server: 「Erase disk and install Ubuntu」または同様の選択肢を選びます。Ubuntu Serverインストーラーは、ディスクの選択やパーティション設定についてより詳細なオプションを提供する場合もありますが、新しい仮想ディスクの場合は通常、推奨される自動設定(ディスク全体を使用)で問題ありません。
8. 地域設定
タイムゾーンを設定します。地図上で場所をクリックするか、テキストボックスに地名を入力します。通常は「Tokyo」が選択されているはずです。確認し、「続ける」をクリックします。
9. あなたの情報(ユーザーアカウント設定)
ログインに使用するユーザーアカウントを設定します。
- あなたの名前: フルネームを入力します。
- コンピュータ名: ネットワーク上で識別される名前です。デフォルトで名前から生成されますが、変更することも可能です。
- ユーザー名の入力: ログイン時に使用するユーザー名を半角英数字で入力します。
- パスワードの入力: ログインパスワードを設定します。安全なパスワードを設定しましょう。
- パスワードの確認: 同じパスワードを再度入力します。
- ログイン方法: 「ログイン時にパスワードを要求する」を選択するのが一般的です。「自動的にログインする」にすると、起動時にパスワード入力なしでログインできますが、セキュリティ上のリスクがあります。
情報を入力し、「続ける」をクリックします。
10. インストールの実行
これで必要な設定は完了です。ファイルのコピーやシステムの構成が開始されます。このプロセスには数分から十数分かかる場合があります。完了するまで待ちます。
11. インストール完了後の再起動
インストールが完了すると、「インストールの完了」というメッセージが表示されます。「今すぐ再起動する」ボタンをクリックします。
再起動プロセス中に、インストールメディア(ISOイメージ)を取り外すよう指示するメッセージ(例: 「Please remove the installation medium, then press ENTER:」)が仮想マシン接続ウィンドウに表示されることがあります。Hyper-Vの第2世代仮想マシンでは通常、ISOイメージは自動的に解除されます。その場合はそのままEnterキーを押せば再起動が続行します。もしメッセージが消えない場合は、仮想マシン接続ウィンドウのメニューから「メディア」>「DVDドライブ」>「ディスクの取り出し」を選択してISOイメージを解除し、Enterキーを押してください。
仮想マシンが再起動し、Ubuntuが起動します。ログイン画面が表示されたら、設定したユーザー名とパスワードでログインします。
これで、Hyper-V上にUbuntu仮想マシンが正常にインストールされました!
Ubuntuの初期設定とHyper-V統合サービスの確認
Ubuntuをインストールした直後には、システムを最新の状態に保ち、仮想環境での動作を最適化するための設定を行うことが推奨されます。
1. Ubuntuの起動とログイン
再起動後、ログイン画面またはコマンドラインプロンプトが表示されます。インストール時に設定したユーザー名とパスワードでログインします。
2. システムのアップデート
ログインしたら、ターミナルを開いてシステムのアップデートを行います。Ubuntu Desktopの場合は、画面左下のアプリアイコン一覧から「端末」または「Terminal」を探してクリックするか、Ctrl + Alt + T
キーで開けます。Ubuntu Serverの場合は、ログインするとすぐにコマンドラインインターフェースが表示されます。
以下のコマンドを実行して、システムのパッケージリストを更新し、インストールされているソフトウェアを最新バージョンにアップグレードします。
bash
sudo apt update
sudo apt upgrade
sudo
は管理者権限でコマンドを実行するためのものです。パスワードを求められたら、ログインパスワードを入力してください。apt update
コマンドはインターネット上のソフトウェアリポジトリから最新のパッケージ情報を取得し、apt upgrade
コマンドはその情報に基づいて現在インストールされているパッケージを実際に最新バージョンに更新します。アップグレード中に続行するか確認されたら Y
キーを押して Enter キーを押します。
アップデートが完了するまでしばらく時間がかかる場合があります。
3. Hyper-V統合サービス(Integration Services)について
Hyper-V統合サービスは、ホストOS(Windows)とゲストOS(Ubuntu)間の連携を強化し、仮想マシン上でのOSのパフォーマンスや使いやすさを向上させるためのドライバやユーティリティのセットです。
統合サービスが有効になっていると、以下のようなメリットがあります。
- パフォーマンス向上: 仮想化されたハードウェアへのアクセスが効率化され、ディスクアクセスやネットワーク通信などが高速化されます。
- マウスカーソルのシームレスな移動: 仮想マシン接続ウィンドウとホストOSの間で、マウスカーソルが引っかかることなく自由に行き来できるようになります。(Ubuntu Desktopの場合)
- 画面解像度の自動調整: 仮想マシン接続ウィンドウのサイズを変更すると、Ubuntuの画面解像度が自動的にウィンドウサイズに合わせて調整されます。(Ubuntu Desktopの場合)
- 時刻同期: 仮想マシンのシステム時刻がホストOSと自動的に同期されます。
- データ交換: ホストOSとゲストOS間でテキストのコピー&ペーストや、簡単なファイルのやり取り(設定が必要な場合あり)が可能になります。
- シャットダウン制御: Hyper-Vマネージャーから仮想マシンに対してシャットダウンコマンドを送信できるようになります。
- ハートビート: Hyper-Vホストが仮想マシンの応答状態を監視できるようになります。
かつてはLinuxゲストOSにHyper-V統合サービスをインストールするために、別途パッケージをインストールする必要がありました。しかし、Ubuntu 12.04 LTS以降のモダンなLinuxディストリビューションでは、主要なHyper-V統合サービス機能がLinuxカーネル自体に組み込まれています。 Hyper-Vの第2世代仮想マシンでは、これらの機能はデフォルトで有効になっていることがほとんどです。
したがって、最新版のUbuntuを第2世代仮想マシンにインストールした場合、多くの重要な統合サービス機能は追加インストールなしで利用できるはずです。
念のため、統合サービス関連の基本的なパッケージがインストールされているか確認したり、不足している場合にインストールしたりするには、以下のコマンドを実行できます。
bash
sudo apt update
sudo apt install linux-virtual linux-tools-virtual hv-kvp-daemon-init
linux-virtual
: 仮想環境に最適化されたLinuxカーネルメタパッケージ。linux-tools-virtual
: 仮想環境用のユーティリティツール。hv-kvp-daemon-init
: KVP (Key-Value Pair) Exchange Daemon。ホストとゲスト間で少量の情報を交換するためのデーモン。
これらのパッケージがすでにインストールされている場合は、最新バージョンであることが表示されます。インストールされていない場合はインストールが行われます。カーネル関連のパッケージをインストールまたはアップグレードした場合、変更を有効にするには仮想マシンの再起動が必要になります。
統合サービスが正常に機能しているか確認するには、Ubuntu Desktopであればマウスカーソルのスムーズな移動やウィンドウサイズ変更による解像度調整を試してみてください。
4. ホストOSとのファイル共有(補足)
Hyper-V統合サービスには、VirtualBoxやVMwareのような「共有フォルダ」機能が標準で提供されていません(Windows ServerのHyper-Vにはファイル共有機能がありますが、クライアントHyper-Vでは利用が限定的です)。ホストOSとUbuntu仮想マシン間でファイルをやり取りしたい場合は、ネットワーク経由での共有を利用するのが一般的です。
よく使われる方法は以下の通りです。
- SMB/CIFS共有: Ubuntu側にSambaサーバーをインストールし、Windowsからネットワーク共有としてアクセスします。または、Windowsでフォルダを共有し、Ubuntuからアクセスします。家庭や小規模オフィスでよく使われる方法です。
- UbuntuからWindows共有にアクセスする場合、
cifs-utils
パッケージが必要になることが多いです (sudo apt install cifs-utils
)。
- UbuntuからWindows共有にアクセスする場合、
- SFTP/SSH: Ubuntu側にOpenSSHサーバーをインストールし、WindowsからWinSCPやFileZillaといったSFTPクライアントを使って安全にファイル転送します。コマンドラインに慣れている場合は、Windows 10/11に標準搭載されたOpenSSHクライアントを使うこともできます。
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド:
sudo apt update && sudo apt install openssh-server
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド:
- クラウドストレージ: OneDrive, Google Drive, Dropboxなどのクラウドストレージサービスを利用して、ホストOSとゲストOS間でファイルを同期します。
ここでは詳細な設定手順は割愛しますが、これらの方法でホストOSと仮想マシン間でファイルを共有することが可能です。
5. その他の初期設定
- 画面解像度(Desktopの場合): 統合サービスが機能していれば自動調整されますが、手動で設定したい場合はUbuntuの「設定」>「ディスプレイ」から変更できます。
- 日本語入力(Desktopの場合): 日本語入力メソッド(Fcitx + Mozcなどが一般的)が正しく設定されているか確認します。「設定」>「地域と言語」から入力ソースを追加・設定できます。
- ネットワーク設定: 外部仮想スイッチを選択していれば、DHCPでIPアドレスが自動的に割り当てられ、インターネットに接続できるはずです。もし接続できない場合は、ホストOSのネットワーク接続、仮想スイッチの設定、ゲストOS内のネットワーク設定(
ip addr show
,ping 8.8.8.8
などのコマンドで確認)を確認してください。
これで、Hyper-V上のUbuntu仮想環境の基本的なセットアップは完了です。
仮想マシンの運用と管理:Hyper-Vマネージャーの活用
Hyper-Vマネージャーは、仮想マシンの作成だけでなく、日々の運用や管理を行うための中心的なツールです。様々な機能を使って、仮想マシンの状態を制御したり、設定を変更したり、バックアップを取得したりできます。
1. 基本的な操作(起動、シャットダウン、一時停止、保存)
Hyper-Vマネージャーの仮想マシンリストで、操作したい仮想マシンを選択し、右クリックまたは右側の「操作」ペインから行う基本的な操作です。
- 開始: 仮想マシンの電源を入れ、ゲストOSを起動します。
- シャットダウン: 仮想マシンに対して、ゲストOSにシャットダウンを指示する信号を送信します。ゲストOSが適切に応答すれば、OSの正常なシャットダウンプロセスが実行されます。通常、Hyper-V統合サービスが有効であればこの方法で安全にシャットダウンできます。
- オフにする: 仮想マシンの電源を強制的に遮断します。これは物理PCの電源コードをいきなり抜くような操作です。ゲストOSのファイルシステムが破損したり、データが失われたりするリスクがあります。緊急時以外は使用しないでください。ゲストOS内から正常なシャットダウン操作(UbuntuならGUIでシャットダウンを選択するか、
sudo shutdown now
またはsudo poweroff
コマンドを実行)を行うのが最も安全です。 - 一時停止: 仮想マシンの現在の状態(メモリ内容を含む)を一時的に保存し、実行を停止します。再開時に瞬時に停止した時点から作業を再開できます。ちょっとした休憩や、ホストOSの負荷を一時的に減らしたい場合に便利です。
- 再開: 一時停止した仮想マシンの実行を再開します。
- 保存: 仮想マシンの現在の状態をディスクに保存し、電源をオフにします。次回起動時に保存した状態から再開できます。ホストOSをシャットダウンする前などに、仮想マシンの作業状態を維持しておきたい場合に利用できます。
- リセット: 仮想マシンを強制的に再起動させます。これもゲストOSのデータ損失リスクを伴う可能性があります。ゲストOS内からの再起動操作(
sudo reboot
コマンドやGUIでの再起動)が推奨されます。 - 削除: 仮想マシンとその構成ファイル、仮想ハードディスクファイルなどを完全に削除します。重要なデータが含まれていないか十分に確認してから実行してください。
- 接続: 仮想マシン接続ウィンドウを開き、ゲストOSの画面を表示します。
2. チェックポイント(スナップショット)の取得と復元
チェックポイント機能は、特定の時点での仮想マシンの状態(設定、仮想ハードディスクの状態、メモリ内容など)を「チェックポイント」として保存する機能です。何か大きな変更(OSのアップグレード、新しいソフトウェアのインストールなど)を行う前にチェックポイントを取得しておくと、問題が発生した場合にすぐに安全な状態に戻すことができます。
- チェックポイントの取得:
- Hyper-Vマネージャーで、チェックポイントを取得したい仮想マシンを選択します。
- 右クリックメニューまたは右側の「操作」ペインから「チェックポイント」を選択します。
- 自動的にチェックポイントが作成され、デフォルトで作成日時を元にした名前が付きます。必要に応じて、分かりやすい名前に変更できます(例:
_Before_Ubuntu_Upgrade
)。
- チェックポイントの復元:
- Hyper-Vマネージャーの中央ペイン下部にある「チェックポイント」タブを選択します。
- 復元したいチェックポイントを選択します。
- 右クリックメニューまたは「操作」ペインから「適用」を選択します。
- 確認ダイアログが表示されます。「適用」をクリックすると、仮想マシンは選択したチェックポイントの状態に戻ります。現在の仮想マシンの状態は失われることに注意してください(必要であれば、現在の状態を新しいチェックポイントとして保存してから適用することも可能です)。
チェックポイントはディスク容量を消費します。特に実行中の仮想マシンのチェックポイント(メモリ内容も含む)はサイズが大きくなる傾向があります。テストが完了するなど、不要になったチェックポイントは定期的に削除しましょう。削除はチェックポイントを右クリックして「チェックポイントの削除」を選択することで行えます。
3. 設定の変更
仮想マシンの作成後に、割り当てられたリソース(CPU、メモリ)や仮想ハードウェアの構成(仮想ハードディスクの追加、ネットワークアダプターの変更など)を変更することも可能です。
- 変更したい仮想マシンをシャットダウンまたはオフにします。(実行中の仮想マシンでは変更できない設定項目があります)
- Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックし、「設定」を選択します。
- 「[仮想マシン名] の設定」ウィンドウが開きます。左側のツリーメニューから変更したい項目を選択します。
- ハードウェア:
- プロセッサ: 割り当てる仮想CPUコア数を変更できます。物理CPUのコア数を超えない範囲で設定します。
- メモリ: 起動メモリや動的メモリの設定(最小/最大RAMなど)を変更できます。
- SCSI コントローラー: 仮想ハードディスクや仮想DVDドライブなどを追加できます。
- ネットワーク アダプター: 割り当てる仮想スイッチを変更したり、MACアドレスを変更したり、新しいネットワークアダプターを追加したりできます。
- IDE コントローラー: 第1世代VMで使用されるコントローラーですが、第2世代VMでも仮想DVDドライブなどに使われます。
- 管理:
- 名前: 仮想マシンの名前を変更できます。
- チェックポイント: チェックポイントの保存場所などを設定できます。
- 自動スタート/ストップ アクション: ホストOSの起動・シャットダウン時に仮想マシンをどう扱うか設定できます。
- Hyper-V 統合サービス: 各統合サービスの有効/無効を切り替えられます(通常はすべて有効で問題ありません)。
- ハードウェア:
- 変更後、「適用」または「OK」をクリックします。
仮想ハードディスクのサイズ拡張:
仮想ハードディスクの最大サイズを拡張したい場合、「設定」>「[仮想ハードディスク名]」を選択し、「編集」ボタンをクリックします。「仮想ハードディスクの編集ウィザード」で「拡張」を選択し、新しいサイズを指定します。ただし、Hyper-V側で最大サイズを増やしただけでは、ゲストOS(Ubuntu)内で使用できる容量は増えません。UbuntuゲストOS内でパーティションツール(GPartedなど)を使って、新しい空き領域を既存のパーティションに割り当てる追加作業が必要です。
4. エクスポートとインポート
仮想マシンを別のHyper-Vホストに移動したり、仮想マシンのバックアップを取得したりするために、エクスポート/インポート機能が利用できます。
- エクスポート:
- エクスポートしたい仮想マシンをシャットダウンまたはオフにします。
- Hyper-Vマネージャーで仮想マシンを右クリックし、「エクスポート」を選択します。
- エクスポート先のフォルダを指定します。仮想マシンの構成ファイル、チェックポイント、仮想ハードディスクファイルなどが指定したフォルダにまとめてコピーされます。
- インポート:
- Hyper-Vマネージャーの右側の「操作」ペインで「仮想マシンのインポート」を選択します。
- インポートしたい仮想マシンのエクスポート済みデータが保存されているフォルダを指定します。
- インポートの種類を選択します。「仮想マシンを所定の場所に登録する」(元の場所からインポート、元のホストからは削除されることが多い)、「仮想マシンをコピーする (新しい一意のIDを作成する)」(コピーして新しい仮想マシンとして登録)などがあります。通常は「仮想マシンをコピーする」を選択すれば、元のエクスポートデータはそのままに、新しい仮想マシンとして登録できます。
- 設定を確認し、インポートを実行します。
5. 仮想ハードディスクの管理
Hyper-Vマネージャーの「操作」ペインにある「仮想ハードディスクの編集」または「新規」>「ハードディスク」から、仮想ハードディスクファイル(VHDXファイル)の管理を行うこともできます。
- 編集: 既存の仮想ハードディスクファイルを選択し、編集ウィザードを開きます。ここから、仮想ハードディスクの「コンパクト」(物理ファイルサイズを使用容量に合わせて小さくする、動的拡張ディスク向け)、「拡張」(最大サイズを大きくする)、「変換」(ディスクタイプやフォーマットの変換)といった操作が可能です。
- 新規: 新しい仮想ハードディスクファイルを作成します。
動的拡張ディスクは、作成時はサイズが小さいですが、ゲストOSでの使用量に応じて物理ファイルサイズが増加していきます。ゲストOS内でファイルを削除しても、物理ファイルサイズは自動的に小さくなりません。ディスクの空き容量を物理的に解放したい場合は、「編集」機能の「コンパクト」を実行することで、物理ファイルサイズを小さくできます。コンパクト化を実行する前に、ゲストOS内で不要ファイルを削除したり、ディスクの最適化(Linuxでは fstrim -av
コマンドなど)を実行したりしておくと効果的です。
トラブルシューティング:よくある問題とその解決策
Hyper-VとUbuntuを使った仮想環境構築や運用中に遭遇しやすい一般的なトラブルと、その対策について説明します。
1. Hyper-Vが有効化できない、または正常に起動しない
- 原因: Windowsエディションが対応していない。CPUの仮想化支援機能が無効になっている。他の仮想化ソフトウェアと競合している。Windowsの機能有効化が正しく完了していない。
- 対策:
- お使いのWindowsがPro, Enterprise, Educationエディションであることを確認します。
- タスクマネージャーのCPUパフォーマンス画面で「仮想化:有効」になっていることを確認します。無効の場合は、PCのBIOS/UEFI設定画面に入り、仮想化支援機能を有効にします。
- VirtualBox, VMware Workstation Playerなどの他の仮想化ソフトウェアをアンインストールするか、一時的に無効にします。WSL 2との共存は通常可能ですが、稀に問題が発生することもあります。
- 「Windowsの機能の有効化または無効化」でHyper-Vが正しくチェックされているか確認し、必要であれば再度適用して再起動します。
2. 仮想マシンが起動しない、または起動中にエラーが発生する
- 原因: 仮想マシンの設定ミス(メモリ不足、ハードディスク指定ミスなど)。ISOイメージファイルが破損している。物理ハードウェアリソース(メモリ、ディスク空き容量)が不足している。
- 対策:
- Hyper-Vマネージャーで仮想マシンの設定を開き、割り当てメモリ、仮想ハードディスクのパス、ISOイメージのパスなどが正しいか確認します。特にメモリは、ゲストOSの要件と物理メモリの総量を確認して適切な量を割り当ててください。
- ダウンロードしたISOイメージファイルが破損していないか、別の方法(例: ホストOSでISOファイルを開けるか試す)で確認します。必要であれば再度ダウンロードします。
- 仮想ハードディスクファイルが保存されている物理ドライブの空き容量が十分にあるか確認します。
- Hyper-Vマネージャーのイベントビューアー(右側の「操作」ペインまたは左側のコンピュータ名を右クリックして「イベント」)を確認し、起動に関するエラーメッセージがないか調べます。
3. 仮想マシンからネットワーク(インターネット)に接続できない
- 原因: 仮想スイッチの設定ミス。仮想マシンに仮想スイッチが割り当てられていない。ホストOSの物理ネットワーク接続に問題がある。ゲストOSのネットワーク設定に問題がある。ファイアウォールが通信をブロックしている。
- 対策:
- Hyper-Vマネージャーで「仮想スイッチ マネージャー」を開き、外部仮想スイッチが正しく作成されており、ホストOSのインターネットに接続している物理ネットワークアダプターに関連付けられているか確認します。
- 仮想マシンの設定を開き、ネットワークアダプターが作成した外部仮想スイッチに接続されているか確認します。
- ホストOSが正常にインターネットに接続できているか確認します。
- UbuntuゲストOS内で、ネットワークインターフェースが有効になっており、DHCPでIPアドレスが取得できているか確認します(
ip addr show
コマンド)。ゲートウェイやDNSサーバーの設定が正しいか確認し、ping 8.8.8.8
などで疎通を確認します。 - ホストOSやゲストOSのファイアウォール設定を確認し、必要な通信が許可されているか確認します。
4. Ubuntuのインストールがうまくいかない
- 原因: インストールオプションやディスク設定の間違い。仮想ハードディスクのサイズ不足。Hyper-V世代とOSバージョンの非互換(稀)。
- 対策:
- 仮想マシン作成時のインストールオプションで、ダウンロードしたUbuntu ISOイメージが正しく指定されているか確認します。
- 仮想ハードディスクのサイズがゲストOSの要件を満たしているか確認します。Ubuntu Desktopの場合、最低20GB以上を推奨します。
- インストール方法として「ディスクを削除してインストール」を選択したか確認します。手動パーティション設定で問題が発生している場合は、自動設定を試します。
- インストール中に表示されるエラーメッセージを確認し、その内容に基づいて対処法を検索します。
5. 仮想マシンの動作が遅い(パフォーマンスの問題)
- 原因: 仮想マシンに割り当てられたCPUやメモリが不足している。仮想ハードディスクが低速なストレージに置かれている。Hyper-V統合サービスが有効になっていない。ホストOSがリソースを大量に消費している。
- 対策:
- 仮想マシンをシャットダウンして設定を開き、割り当てる仮想CPUコア数やメモリ量を増やします。
- 可能であれば、仮想ハードディスクファイル(.vhdx)をSSDに移動します。
- UbuntuゲストOS内で、
sudo apt install linux-virtual linux-tools-virtual hv-kvp-daemon-init
コマンドなどでHyper-V統合サービス関連のパッケージがインストールされているか、カーネルが最新であるか確認します。必要であればインストール・アップグレードして再起動します。 - ホストOSのタスクマネージャーを開き、CPU、メモリ、ディスクの使用率が高いプロセスがないか確認します。ホストOSの不要なアプリケーションを終了させます。
これらのトラブルシューティングの手順は一般的なものです。問題の状況は多岐にわたるため、表示されるエラーメッセージやログを参考に、インターネット検索なども活用して具体的な解決策を探してください。
応用的な使い方:仮想環境の可能性を広げる
Hyper-V上のUbuntu仮想マシンは、基本的なOS環境としてだけでなく、様々な高度な用途に活用できます。
- 特定の開発環境の構築: ウェブ開発(Python/Django, Ruby on Rails, Node.jsなど)、モバイルアプリケーション開発、データサイエンス、機械学習など、プロジェクトごとに必要な特定のライブラリ、フレームワーク、ツールを備えた開発環境をクリーンに構築できます。ホストOSの環境を汚さずに、複数の異なる開発環境を使い分けられます。
- 本番環境に近いテスト: ウェブサーバー(Apache, Nginx)、データベースサーバー(MySQL, PostgreSQL, MongoDB)、メッセージキュー(RabbitMQ, Kafka)など、複数のサーバーコンポーネントをそれぞれ別のUbuntu仮想マシン上に構築し、それらを仮想ネットワークで接続することで、本番に近いシステム構成での連携テストや負荷テストを行うことができます。
- コンテナ技術の学習・利用: DockerやKubernetesなどのコンテナオーケストレーションツールをUbuntu仮想マシン上にインストールし、コンテナ技術の学習や開発を行うことができます。WSL 2でもDocker Desktopは利用できますが、Hyper-V上の仮想マシンは、より実際のサーバー環境に近い形でのコンテナ環境構築や検証に適しています。
- サーバーサービスの学習: DNSサーバー(Bind)、メールサーバー(Postfix, Dovecot)、VPNサーバー(OpenVPN)、プロキシサーバー(Squid)など、様々なサーバーソフトウェアのインストール、設定、運用を安全に学ぶことができます。失敗しても仮想マシンを元に戻せるため、積極的に試せます。
- SSHによるリモート操作: Ubuntu仮想マシンにOpenSSHサーバーをインストールしておけば、ホストOS(Windows)からTera Term、PuTTY、Windows標準のOpenSSHクライアントなどを使って仮想マシンにリモート接続し、コマンドラインで操作できます。これにより、仮想マシン接続ウィンドウを開きっぱなしにする必要がなくなり、ホストOSでの作業と並行して仮想マシン上の作業を効率的に行えます。
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド例:
sudo apt update && sudo apt install openssh-server
- WindowsからSSH接続するコマンド例(PowerShellやコマンドプロンプト):
ssh [ユーザー名]@[仮想マシンのIPアドレスまたはホスト名]
- UbuntuにOpenSSHサーバーをインストールするコマンド例:
- ホストオンリーネットワークの構築: 外部ネットワークとは切り離し、ホストOSと仮想マシン間、または仮想マシン間のみで通信する内部/プライベート仮想スイッチを利用することで、閉じたネットワーク環境を構築できます。これは、セキュリティテストや、外部に公開したくないサービスの検証に役立ちます。
これらの応用例は、Hyper-VとUbuntuの組み合わせで実現できることのごく一部です。あなたのアイデア次第で、様々な学習、開発、テストのニーズに応える強力な環境を構築することができます。
まとめ
この記事では、Windowsに標準搭載されているHyper-V機能を使って、人気のある無償OSであるUbuntuの仮想環境を構築する手順を、準備段階からインストール、初期設定、運用管理、トラブルシューティング、応用例まで、詳細かつ網羅的に解説しました。
Hyper-Vは、対象となるWindowsエディションを使用していれば追加費用なしで利用できる非常に強力な仮想化ツールです。そしてUbuntuは、デスクトップ用途からサーバー用途まで幅広く使える柔軟性の高いOSです。これらを組み合わせることで、物理的なハードウェアの制約から解放され、手軽に様々なOS環境やシステム構成を試したり、学習したり、開発したりすることが可能になります。
仮想環境の構築は、最初は少し新しい概念や操作に戸惑うかもしれませんが、この記事の手順に沿って進めれば、きっとあなた自身のHyper-V上のUbuntu仮想マシンを立ち上げることができるはずです。一度仮想環境を手に入れれば、その可能性は大きく広がります。様々なソフトウェアのインストール、サービスの構築、プログラミングの学習など、ホストOSに影響を与える心配なく、安心して自由な実験や開発に打ち込めます。
この記事が、皆さんのHyper-VとUbuntuを使った仮想環境構築の第一歩を力強く後押しし、その後の学習や活動の発展に繋がることを願っています。
さあ、Hyper-VとUbuntuの世界へ飛び込み、あなたのWindows PCをさらに強力なツールへと進化させましょう!