Microsoft Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)とは? なぜ必要?徹底解説
あなたのWindows PCを使っていると、「MSVCR*.dllが見つかりません」といったエラーメッセージを目にしたり、アプリケーションをインストールする際に「Microsoft Visual C++ 20xx Redistributable (x86/x64) のインストール」という項目が表示されたりした経験はありませんか? これらはすべて、「Microsoft Visual C++ Runtime Library」、通称「Visual C++ 再頒布可能パッケージ」と呼ばれるものに関連しています。
このパッケージは、多くのWindowsアプリケーションが正しく動作するために不可欠な、いわば「基盤」のようなものです。しかし、その名前だけでは具体的に何をしているのか、なぜ必要なのか、複数のバージョンがあるのはなぜか、といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、Microsoft Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)について、その正体から役割、必要性、歴史、バージョン、インストール方法、そしてよくあるトラブルシューティングまで、約5000語にわたる詳細な説明を通して徹底的に解説します。この記事を読めば、なぜこのパッケージがあなたのPCに必要なのか、そしてそれがPCの安定稼働にいかに貢献しているのかが理解できるはずです。
導入:見慣れない名前の重要性
多くのPCユーザーにとって、Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)は、意識することなくPCにインストールされている、あるいはアプリケーションのインストール過程で自動的にインストールされる存在かもしれません。しかし、いざこれが欠けていたり、バージョンが合わなかったりすると、特定のアプリケーションが起動しない、エラーメッセージが表示される、といった不具合に直面することがあります。
これは、Visual C++で開発されたプログラムが、実行時に特定の「道具」や「機能」を必要とし、それらがこのパッケージに含まれているからです。例えるなら、ある特定の国の製品(アプリケーション)を使うために、その国の言語を理解するための「通訳」や、特定の規格に合った「道具」が必要になるようなものです。再頒布可能パッケージは、まさにその「通訳」や「道具箱」の役割を果たしています。
この記事では、まずMicrosoft Visual C++とは何か、そしてランタイムライブラリという概念について説明し、その上でVisual C++ Runtime Libraryが具体的に何であり、なぜ「再頒布可能」という形をとるのかを掘り下げていきます。さらに、複数のバージョンが存在する理由や、それらがPC上でどのように管理されているのかについても解説します。そして、もしあなたがランタイムライブラリに関連する問題に遭遇した場合の対処法も提供します。
さあ、あなたのPCの安定稼働を支える、見慣れないけれど重要な存在であるMicrosoft Visual C++ Runtime Libraryの世界を深く見ていきましょう。
1. Microsoft Visual C++ とは?
まず、Visual C++ Runtime Libraryを理解するために、それを作り出す「Microsoft Visual C++」そのものについて簡単に触れておきましょう。
Microsoft Visual C++ (MSVC) は、Microsoftが開発・提供している統合開発環境(IDE: Integrated Development Environment)の一部です。主に、Windows上で動作するアプリケーションを開発するために、C、C++、およびC++/CLIといったプログラミング言語をサポートしています。
開発者はVisual C++ IDEを使って、ソースコードの記述、コンパイル(人間が書いたコードをコンピューターが理解できる機械語に変換する作業)、リンク(コンパイルされた複数のコード断片やライブラリを結びつけて実行可能なプログラムにする作業)、デバッグ(プログラムのバグを見つけて修正する作業)など、一連の開発プロセスを行います。
Visual C++は、Windowsアプリケーション開発において非常に強力で広く利用されているツールです。オペレーティングシステムのカーネルレベルのプログラムから、ユーザーインターフェースを持つデスクトップアプリケーション、高性能なゲーム、さらにはウェブサーバーアプリケーションの一部など、多岐にわたるソフトウェアがVisual C++を使用して開発されています。
では、このVisual C++で開発されたプログラムと、「Runtime Library」はどのような関係にあるのでしょうか?
2. ランタイムライブラリとは何か?
「ランタイムライブラリ (Runtime Library)」とは、プログラムが実行時 (Runtime) に必要とする、あらかじめ用意されたコードの集まりのことです。プログラムの開発者は、ゼロからすべての機能を作るのではなく、よく使われる基本的な機能(例えば、画面に文字を表示する、ファイルからデータを読み書きする、計算をする、メモリを管理するなど)については、オペレーティングシステムが提供するものや、プログラミング言語の標準ライブラリ、あるいは開発ツールが提供するライブラリを利用します。これらの利用可能な機能の集まりを「ライブラリ」と呼びます。
ランタイムライブラリは、特にプログラムが実行されている間に呼び出される関数やデータ構造を提供します。これは、プログラムがコンパイルされる時点ですべてのコードが一つにまとめられる「コンパイル時」のライブラリとは区別される概念です。
ランタイムライブラリは、大きく分けて二つの形式でプログラムに組み込まれます。
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静的リンク (Static Linking): ライブラリのコードが、プログラムの実行可能ファイル(.exeファイル)の中に直接コピーされて組み込まれる方式です。
- 利点: プログラム単体で実行可能になるため、ライブラリがインストールされていない環境でも動作します。
- 欠点: プログラムのファイルサイズが大きくなります。また、同じライブラリを使用する複数のプログラムがある場合、それぞれの実行可能ファイルにライブラリのコードが複製されるため、ディスク容量やメモリが無駄になる可能性があります。さらに、ライブラリにセキュリティ修正やバグ修正があった場合、そのライブラリを使用しているすべてのプログラムを再コンパイル・再配布する必要があります。
-
動的リンク (Dynamic Linking): ライブラリのコードが、プログラムの実行可能ファイルの中には直接組み込まれず、プログラムが実行される際に別途用意されたファイルから読み込まれる方式です。Windowsでは、この別途用意されたファイルが「動的リンクライブラリ (DLL: Dynamic Link Library)」です。
- 利点: プログラムのファイルサイズが小さくなります。複数のプログラムが同じDLLファイルを共有できるため、ディスク容量やメモリの使用効率が向上します。DLLファイルだけを更新すれば、そのDLLに依存しているすべてのプログラムがアップデートの恩恵を受けられます(セキュリティ修正などが容易になります)。
- 欠点: プログラムを実行するためには、必要なDLLファイルがそのシステム上に存在している必要があります。もしDLLファイルが見つからない、あるいは互換性のないバージョンである場合、プログラムは起動できません(これが「DLLが見つかりません」エラーの一般的な原因です)。
Microsoft Visual C++で作成されたプログラムは、多くの場合、この「動的リンク」方式でランタイムライブラリを利用します。そして、そのランタイムライブラリの実体が、後述する「Microsoft Visual C++ Runtime Library」であり、それをユーザーのPCにインストールするための仕組みが「再頒布可能パッケージ」なのです。
3. Microsoft Visual C++ Runtime Library (MSVCRT) とは?
Microsoft Visual C++ Runtime Libraryは、Visual C++でコンパイルされたCおよびC++言語プログラムが実行時に必要とする、特定のDLLファイルの集まりを指します。これらのDLLは、CおよびC++の標準ライブラリ機能や、Visual C++固有の機能を提供します。
具体的には、以下のような機能が含まれています。
- 標準Cライブラリ関数:
printf
(画面出力),scanf
(入力読み込み),malloc
(メモリ確保),free
(メモリ解放),strcpy
(文字列コピー),fopen
(ファイルオープン) など、C言語の標準で定められた基本的な入出力、文字列操作、メモリ管理、数学関数など。 - 標準C++ライブラリ関数: C++言語の標準ライブラリ(STL: Standard Template Libraryを含む)で定められた、コンテナ(
vector
,list
,map
など)、アルゴリズム、入出力ストリーム(cout
,cin
など)、例外処理、スレッド関連機能など。 - Visual C++固有の機能: Microsoftが提供するWindows APIへのアクセスを容易にするためのヘルパー関数や、特定の最適化機能に関連するコードなど。
これらの機能は、Visual C++で開発されたほとんどすべてのプログラムで利用される基本的な処理です。開発者はこれらのライブラリ関数を呼び出すことで、複雑な処理を自分でゼロから書く手間を省き、効率的にプログラムを開発できます。
ランタイムライブラリは、Windowsシステム上のDLLファイルとして存在します。歴史的に、そしてバージョンによって、これらのDLLファイルには様々な名前が付けられています。代表的なものとしては、以下のようなファイル名があります(バージョンによって異なります)。
msvcr*.dll
(Microsoft Visual C Runtime – C言語系機能)msvcp*.dll
(Microsoft Visual C++ Runtime – C++言語系機能)vcruntimexx.dll
(例:vcruntime140.dll
– Visual Studio 2015/2017/2019/2022系の共通部分)ucrtbase.dll
(Universal C Runtime – Windows 10以降の共通C Runtime)
これらのDLLファイルが、プログラムが必要とするランタイムライブラリのコードを保持しています。プログラムが起動されると、Windowsローダーはプログラムが必要とするDLLを特定し、メモリに読み込みます。もし必要なDLLが見つからなかったり、適切なバージョンでなかったりすると、プログラムは起動に失敗し、「DLLが見つかりません」といったエラーが表示されます。
4. なぜ「再頒布可能パッケージ」なのか?
さて、ランタイムライブラリがDLLファイルの集まりであることは分かりました。では、なぜわざわざ「再頒布可能パッケージ (Redistributable Package)」という形で提供され、ユーザーのPCにインストールされるのでしょうか?なぜ開発者が自分のプログラムと一緒にこれらのDLLを同梱しないのでしょうか?
これには、いくつかの重要な理由があります。
-
ファイルサイズの削減: もしVisual C++で開発されたすべてのプログラムが、使用するランタイムライブラリのDLLファイルをそれぞれ同梱して配布した場合、同じDLLファイルがユーザーのPC上に何十、何百と重複して存在することになります。これはディスク容量の無駄遣いです。再頒布可能パッケージとしてDLLを共有することで、システム上に各DLLのコピーが一つ(またはバージョンごとに数個)あれば済むため、全体のディスク使用量を大幅に削減できます。
-
メモリ使用効率の向上: 動的リンクされたDLLは、複数のプログラムから共有して使用できます。Windowsのメモリ管理において、同じDLLが複数のプロセスで使用されている場合、そのDLLのコード部分はメモリ上で一度だけ読み込まれ、各プロセスから共有されることがあります。これにより、システム全体のメモリ使用効率が向上します。もし各プログラムがランタイムライブラリを静的にリンクしていたり、DLLを個別に同梱していたりした場合、同じコードがメモリ上の異なる場所に何度も読み込まれることになり、メモリを浪費します。
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セキュリティと信頼性: Microsoftが公式に提供する再頒布可能パッケージを使用することで、ユーザーは信頼できるソースからライブラリファイルを入手できます。もし開発者が独自にDLLファイルを配布した場合、そのファイルが悪意のあるコードを含んでいたり、不完全であったりするリスクが考えられます。公式パッケージはMicrosoftによって署名・保証されており、セキュリティ上の懸念を軽減します。
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アップデートの容易さ: ランタイムライブラリには、セキュリティ上の脆弱性が発見されたり、パフォーマンスを改善するためのバグ修正が行われたりすることがあります。Microsoftはこれらの修正を含む新しいバージョンの再頒布可能パッケージをリリースします。ユーザーがこの新しいパッケージをインストールするだけで、システム上の該当するDLLファイルが更新され、そのDLLに依存しているすべてのプログラムが修正の恩恵を受けられます。もし各プログラムがDLLを個別に同梱していた場合、各プログラムを個別にアップデートする必要があり、非常に非効率的です。
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互換性とバージョンの管理: Visual C++のバージョンが異なると、生成されるランタイムライブラリも異なります。また、同じVisual C++のバージョンでも、サービスパックの適用状況などによって微妙に異なるバージョンのDLLが存在することがあります。さらに、32ビット版プログラムと64ビット版プログラムでは、使用するランタイムライブラリも異なります。再頒布可能パッケージは、これらの異なるバージョンやアーキテクチャ(x86/x64)を適切に管理し、システム上の共存を可能にします。これにより、異なるバージョンのVisual C++で開発された複数のプログラムが、一つのシステム上で問題なく動作できるようになります。
これらの理由から、Visual C++で開発されたプログラムを配布する際、開発者は通常、必要なランタイムライブラリのDLLファイルをプログラムに静的にリンクしたり同梱したりするのではなく、Microsoftが提供する「再頒布可能パッケージ」をユーザーにインストールしてもらう、という形式をとるのです。このパッケージをインストールすることで、システムに必要なDLLファイルが適切な場所に配置され、登録され、プログラムがそれらを実行時に利用できるようになります。
5. なぜ必要か?(より深く理解する)
前述の通り、Visual C++ Runtime Libraryは、Visual C++で作成された多くのプログラムが依拠する基本的な機能を提供しています。したがって、これらのパッケージが必要な主な理由は、依存関係の解決にあります。
プログラムは、特定の処理を実行するためにランタイムライブラリ内の関数(例えば、画面に文字を表示するprintf
や、メモリを確保するmalloc
)を呼び出すように作られています。これはプログラムの「設計図」の一部です。プログラムを実行するコンピューターには、この「設計図」通りに処理を実行するための「道具箱」、すなわち必要なDLLファイルがなければなりません。
もし、プログラムが特定のバージョンのmsvcr120.dll
を必要としているのに、そのDLLファイルがシステム上に存在しない、あるいは互換性のない古いバージョンしかない場合、プログラムは実行に必要な機能を見つけることができません。その結果、Windowsのローダー(プログラムを起動する役割を担うOSの機能)はプログラムの実行を中断し、「msvcr120.dll
が見つかりません」といったエラーメッセージを表示するのです。
これは、プログラムが「この処理はランタイムライブラリの〇〇という関数を使ってね」と指示しているのに、その〇〇関数が定義されているファイル(DLL)がPCにない、という状況です。例えるなら、家具の組み立て説明書に「付属の六角レンチを使ってください」と書いてあるのに、六角レンチが同梱されていない、というようなものです。付属の六角レンチ(特定のDLL)がなければ、家具(プログラム)を組み立てる(実行する)ことはできません。
特に、以下のような場合にVisual C++ Runtime Libraryが必要不可欠となります。
- 多くのサードパーティ製アプリケーション: ゲーム、グラフィックソフトウェア、開発ツール、ユーティリティなど、多くのWindows用アプリケーションはVisual C++で開発されています。これらのアプリケーションは、ほぼ確実にランタイムライブラリに依存しています。
- 古いアプリケーション: 過去のバージョンのVisual C++で開発されたアプリケーションは、当時のバージョンのランタイムライブラリを必要とします。
- Windowsの特定の機能: Windows自身の一部や、Windows上で動作する特定のコンポーネントも、Visual C++ Runtime Libraryに依存している場合があります。
したがって、あなたのPCにインストールされている様々なアプリケーションを安定して動作させるためには、それらのアプリケーションが必要とするバージョンのVisual C++ Runtime Libraryが適切にインストールされていることが非常に重要になります。
6. ランタイムライブラリのバージョンと共存
Visual C++ Runtime Libraryをさらに複雑にしているのが、「バージョン」の問題です。Microsoft Visual C++は数年ごとに新しいバージョンがリリースされており(例:Visual C++ 2005, 2008, 2010, 2012, 2013, 2015, 2017, 2019, 2022など)、各バージョンでコンパイルされたプログラムは、原則としてそのバージョンに対応するランタイムライブラリを必要とします。
なぜバージョンごとに異なるライブラリが必要なのでしょうか?
- 後方互換性の問題: プログラミング言語の標準が改定されたり、ライブラリの実装が変更されたりすると、新しいバージョンのライブラリは古いバージョンでコンパイルされたプログラムとは互換性がなくなる場合があります。例えば、特定の関数の引数の順序が変わったり、データ構造の内部表現が変わったりすると、古いプログラムは新しいライブラリを正しく呼び出せなくなります。
- 機能の追加・変更: 新しいバージョンのVisual C++やC++標準では、新しい機能が追加されたり、既存の機能が改良されたりします。これらの新しい機能は、対応する新しいバージョンのランタイムライブラリに含まれています。古いライブラリでは新しい機能を利用できません。
そのため、あるPC上でVisual C++ 2010で開発されたプログラムと、Visual C++ 2015で開発されたプログラムの両方を実行したい場合、それぞれに対応するランタイムライブラリ(Visual C++ 2010 再頒布可能パッケージと Visual C++ 2015 再頒布可能パッケージ)の両方が必要になります。
幸いなことに、Windowsは「Side-by-Side (SxS)」と呼ばれる仕組みを持っており、異なるバージョンのVisual C++ Runtime Libraryが同じシステム上に共存できるようになっています。各バージョンのランタイムライブラリは、システムの特定のディレクトリ(例えばC:\Windows\System32
やC:\Windows\SysWOW64
)のサブフォルダに格納され、マニフェストファイルによって管理されます。プログラムが起動される際、Windowsローダーはプログラムのマニフェスト(または埋め込み情報)を参照し、どのバージョンのランタイムライブラリが必要かを判断し、適切なバージョンのDLLを読み込みます。
これにより、ユーザーは意識することなく、複数のバージョンのVisual C++ 再頒布可能パッケージをインストールし、それぞれ異なるパッケージに依存する多数のアプリケーションを同時に実行できるようになっています。
主なVisual C++ Runtime Libraryのバージョン:
以下は、一般的にPC上で見かける可能性のあるVisual C++ Runtime Libraryのバージョンとその対応するVisual Studioのバージョンです。
- Visual C++ 2005 Redistributable: Visual Studio 2005で開発されたプログラム用 (
msvcr80.dll
,msvcp80.dll
など) - Visual C++ 2008 Redistributable: Visual Studio 2008で開発されたプログラム用 (
msvcr90.dll
,msvcp90.dll
など) - Visual C++ 2010 Redistributable: Visual Studio 2010で開発されたプログラム用 (
msvcr100.dll
,msvcp100.dll
など) - Visual C++ 2012 Redistributable: Visual Studio 2012で開発されたプログラム用 (
msvcr110.dll
,msvcp110.dll
など) - Visual C++ 2013 Redistributable: Visual Studio 2013で開発されたプログラム用 (
msvcr120.dll
,msvcp120.dll
など) - Visual C++ 2015, 2017, 2019, 2022 Redistributable: Visual Studio 2015以降、ランタイムライブラリの主要部分が共通化されました。これらのバージョンに対応するパッケージは、「Visual C++ 2015-2022 Redistributable」といった名称で提供されることが多く、
vcruntime140.dll
,msvcp140.dll
,msvcp140_1.dll
,msvcp140_2.dll
,msvcp140_va.dll
など、そしてWindows 10以降に統合されたUniversal C Runtime (ucrtbase.dll
) を含みます。Visual Studio 2015、2017、2019、2022でビルドされたプログラムは、この単一のパッケージで対応できる場合が多いです。
さらに、各バージョンには32ビット版 (x86) と64ビット版 (x64) が存在します。32ビット版のプログラムは32ビット版のランタイムライブラリを必要とし、64ビット版のプログラムは64ビット版のランタイムライブラリを必要とします。64ビット版のWindowsでは、両方のアーキテクチャのプログラムが実行される可能性があるため、多くの場合、対応する各バージョンのx86版とx64版の両方がインストールされているのが一般的です。
あなたのPCの「プログラムと機能」リストを見ると、これらの異なるバージョンやアーキテクチャのパッケージが複数インストールされていることが確認できるでしょう。これは異常ではなく、むしろ様々なアプリケーションを適切に実行するために必要な状態です。
7. インストール方法
Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)は、通常、以下のいずれかの方法であなたのPCにインストールされます。
-
アプリケーションのインストーラーに同梱: これが最も一般的な方法です。多くのサードパーティ製アプリケーションのインストーラーは、そのアプリケーションが必要とするバージョンのVisual C++ 再頒布可能パッケージを検出し、もしインストールされていなければ自動的にインストールする、またはインストールをユーザーに促すように設計されています。あなたが意識しないうちに、アプリケーションのインストールの一部としてパッケージがインストールされていることが多いでしょう。
-
Microsoft公式ダウンロードセンターからの手動インストール: 特定のバージョンのパッケージが必要な場合、または既存のインストールが破損している疑いがある場合など、手動でインストールすることも可能です。Microsoftは、各バージョンの再頒布可能パッケージを公式ダウンロードセンターで提供しています。
- ダウンロード手順:
- ウェブブラウザを開き、「Microsoft ダウンロードセンター」を検索するか、直接Microsoftの公式ウェブサイトにアクセスします。
- 検索バーに「Visual C++ 再頒布可能パッケージ」または「Visual C++ Redistributable」と入力して検索します。
- 表示された検索結果の中から、目的のバージョン(例:「Visual C++ 2015-2022 Redistributable」や「Visual C++ 2013 Redistributable」など)を選択します。必ずMicrosoftの公式ドメイン(microsoft.com)からのダウンロードであることを確認してください。非公式なサイトからのダウンロードは、マルウェア感染などのリスクを伴うため絶対に避けてください。
- ダウンロードページには、通常、32ビット版 (x86) と64ビット版 (x64) のファイル(通常は.exe形式)が提供されています。あなたのPCのアーキテクチャ(ほとんどの場合64ビット版ですが、古いPCや特定の環境では32ビット版の場合もあります)と、必要とするプログラムがどちらのアーキテクチャであるかに応じて、適切なファイルを選択してダウンロードします。64ビット版のWindowsを使用している場合、32ビット版と64ビット版の両方のプログラムを実行する可能性があるため、両方のパッケージをインストールするのが安全です。
- ダウンロードした.exeファイルを実行します。インストーラーが起動し、使用許諾契約への同意を求められた後、インストールが開始されます。インストールが完了するまで、画面の指示に従ってください。
- ダウンロード手順:
-
Windows Update: Windows 10以降に導入されたUniversal C Runtime (UCRT) のように、一部のランタイムコンポーネントはWindows Updateを通じて提供される場合があります。これは、OSの一部として扱われるため、ユーザーが個別にインストールする必要はありません。Windows Updateを定期的に実行していれば、最新の状態に保たれます。
適切なバージョンの選び方:
どのバージョンのパッケージをインストールすればよいか分からない場合、一般的には以下を参考にします。
- エラーメッセージが出ている場合: エラーメッセージに表示されているDLLファイル名(例:
msvcr110.dll
)の数字部分(例:110
)は、多くの場合、対応するVisual C++のバージョンを示唆しています。110
はVC++ 2012、120
はVC++ 2013、140
以降はVC++ 2015-2022系に対応します。エラーメッセージに合わせて、そのバージョンのパッケージをインストールします。 - 特定のアプリケーションが必要としている場合: アプリケーションのドキュメントやサポート情報に、必要なVisual C++ 再頒布可能パッケージのバージョンが記載されていることがあります。
- 多くのアプリケーションに対応させたい場合: 一般的には、比較的新しいバージョン(Visual C++ 2015-2022 Redistributable)をインストールしておけば、多くの新しいアプリケーションに対応できます。古いアプリケーションのために、必要に応じてVC++ 2013、2010などの古いバージョンもインストールします。
不安な場合は、必要なバージョンのx86版とx64版の両方をMicrosoftの公式ダウンロードセンターからダウンロードして実行するのが最も確実な方法です。すでにインストールされている場合は修復または再インストールが提案され、インストールされていない場合は新規にインストールされます。
8. インストールされているランタイムライブラリを確認する方法
あなたのPCに現在インストールされているVisual C++ 再頒布可能パッケージを確認したい場合は、Windowsの「プログラムと機能」(Windows 10/11では「アプリと機能」)を利用します。
- コントロールパネルを開く:
- Windows 10/11の場合: スタートボタンを右クリックし、「アプリと機能」を選択します。
- Windows 7/8.1の場合: スタートボタンをクリックし、「コントロールパネル」を開き、「プログラム」セクションの「プログラムのアンインストール」または「プログラムと機能」を選択します。
- リストを確認: 表示されたプログラムの一覧をスクロールダウンし、「Microsoft Visual C++」という名前で始まる項目を探します。
リストには、以下のような名前で複数の項目が表示されているはずです。
- Microsoft Visual C++ 2005 Redistributable (x86)
- Microsoft Visual C++ 2005 Redistributable (x64)
- Microsoft Visual C++ 2008 Redistributable – x86 9.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2008 Redistributable – x64 9.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2010 Redistributable – x86 10.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2010 Redistributable – x64 10.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2012 Redistributable (x86) – 11.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2012 Redistributable (x64) – 11.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2013 Redistributable (x86) – 12.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2013 Redistributable (x64) – 12.0.xxxxxx
- Microsoft Visual C++ 2015-2022 Redistributable (x86) – 14.xx.xxxx
- Microsoft Visual C++ 2015-2022 Redistributable (x64) – 14.xx.xxxx
このように、異なるバージョン(2005, 2008, … 2015-2022)と、異なるアーキテクチャ(x86/x64)のパッケージがリストアップされているのが一般的です。これにより、どのランタイムライブラリがシステムに提供されているかを確認できます。
9. アンインストールについて
「プログラムと機能」のリストを見て、たくさんの「Microsoft Visual C++ Redistributable」があるのを知り、「ディスク容量を節約するためにいくつか消してしまおうか?」と考える方もいるかもしれません。しかし、安易なアンインストールは強く推奨しません。
その理由は、前述の通り、システム上の多くのアプリケーションがこれらのパッケージに依存している可能性があるためです。あなたが普段利用しているアプリケーションのどれが、どのバージョンのランタイムライブラリに依存しているかを正確に把握するのは困難です。もし、あるアプリケーションが必要とするバージョンのパッケージをアンインストールしてしまうと、そのアプリケーションが起動できなくなったり、実行中にエラーが発生したりする可能性があります。
たとえ今は使っていないアプリケーションであっても、将来再び使う可能性があるなら、そのアプリケーションが依存していたランタイムライブラリはそのまま残しておくのが安全です。
ランタイムライブラリのパッケージは、バージョンやアーキテクチャごとにDLLファイルを共有するため、個々のパッケージが占めるディスク容量は通常それほど大きくありません。複数のバージョンがインストールされていても、全体として劇的にディスク容量を圧迫するわけではないことがほとんどです。
ただし、例外的にアンインストールを検討するケース:
- トラブルシューティング: 特定のランタイムライブラリのインストールが破損している疑いがあり、再インストールを試みる前に一度クリーンな状態にしたい場合。この場合も、アンインストール後はすぐに公式パッケージをダウンロードして再インストールする必要があります。
- 非常に古い、不要なバージョン: 例えば、サポートが終了した古いOS(Windows XPなど)で使われていた非常に古いバージョンのパッケージ(VC++ 2005など)が、新しいPCに何らかの理由で引き継がれており、それに依存するプログラムが一切インストールされていないことが確実な場合。しかし、これもリスクを伴うため、慎重な判断が必要です。
基本的には、「プログラムと機能」に表示されているVisual C++ 再頒布可能パッケージは、そのままにしておくのが最も安全でトラブルが少ない方法です。
10. よくあるトラブルシューティング
Visual C++ Runtime Libraryに関連して最もよく遭遇するトラブルは、「DLLが見つかりません」というエラーメッセージが表示されてプログラムが起動しない、というものです。このセクションでは、その原因と対処法について説明します。
エラーメッセージの例:
- “The program can’t start because MSVCR110.dll is missing from your computer. Try reinstalling the program to fix this problem.”
(「MSVCR110.dll がコンピューターにないため、プログラムを開始できません。この問題を解決するには、プログラムを再インストールしてみてください。」) - “The code execution cannot proceed because VCRUNTIME140.dll was not found. Reinstalling the program may fix this problem.”
(「VCRUNTIME140.dll が見つからなかったため、コードの実行を続行できません。プログラムを再インストールすると、この問題が解決する可能性があります。」)
これらのエラーメッセージは、実行しようとしているプログラムが依存している特定のランタイムライブラリのDLLファイルが、システム上の適切な場所に見つからないことを示しています。
原因として考えられること:
- 必要なバージョンのパッケージがインストールされていない: プログラムが必要とするVisual C++ 再頒布可能パッケージが、そもそもPCにインストールされていません。
- 必要なバージョンのパッケージが破損している: インストールはされているものの、何らかの理由でDLLファイルが破損していたり、誤って削除されたりしています。
- 異なるアーキテクチャのパッケージしかインストールされていない: 64ビット版のプログラムを実行しようとしているのに、32ビット版のパッケージしかインストールされていない、あるいはその逆。
- プログラムまたはパッケージのインストールが正しく完了しなかった: インストールプロセス中にエラーが発生し、必要なファイルが適切に配置されなかった。
対処法:
- エラーメッセージを確認する: どのDLLファイル(例:
MSVCR110.dll
,VCRUNTIME140.dll
)が見つからないのか、エラーメッセージに表示されているファイル名を正確に確認します。 - 対応するVisual C++ 再頒布可能パッケージを特定する:
msvcr110.dll
やmsvcp110.dll
は Visual C++ 2012 に対応します。msvcr120.dll
やmsvcp120.dll
は Visual C++ 2013 に対応します。vcruntime140.dll
,msvcp140.dll
などは Visual C++ 2015, 2017, 2019, 2022 に対応します。- ファイル名から直接バージョンが特定しにくい場合(特に古いバージョンや、Windows 10以降のUCRT関連など)、エラーメッセージを出しているプログラムの名前で検索し、「(プログラム名) 必要なランタイム」といったキーワードで情報を探すのも有効です。
- Microsoft公式ダウンロードセンターから適切なパッケージをダウンロードする:
- 手順7で説明したように、Microsoftの公式ダウンロードセンターにアクセスします。
- 特定したバージョンのVisual C++ 再頒布可能パッケージを見つけます。
- 重要: エラーが出ているプログラムが32ビット版か64ビット版かに合わせて、適切なアーキテクチャ(x86 または x64)のパッケージを選択します。64ビット版のWindowsで32ビット版プログラムを使う場合、x86版が必要です。
- ダウンロードした.exeファイルを実行します。
- パッケージをインストールまたは修復する:
- ダウンロードした.exeファイルを実行すると、インストーラーが起動します。
- もし同じバージョンのパッケージがすでにインストールされている場合、インストーラーは「修復 (Repair)」または「再インストール (Reinstall)」のオプションを提示することがあります。この場合、「修復」または「再インストール」を選択します。これにより、既存のファイルがチェックされ、破損していれば修復されたり、不足していれば補われたりします。
- もしパッケージがインストールされていない場合は、通常のインストールプロセスが開始されます。使用許諾契約に同意し、インストールを完了させます。
- PCを再起動する (推奨): インストールまたは修復が完了したら、PCを再起動することで変更がシステム全体に反映され、問題が解決する可能性が高まります。
- プログラムを再度起動してみる: PC再起動後、エラーが発生していたプログラムを再度起動してみてください。問題が解決していれば、正常に起動するはずです。
その他のトラブルシューティングのヒント:
- 管理者権限で実行: 再頒布可能パッケージのインストーラーは、システムファイルを変更するため、管理者権限が必要です。インストーラーの.exeファイルを右クリックし、「管理者として実行」を選択してください。
- 他のプログラムを閉じる: インストール中に他のプログラムがランタイムライブラリファイルを使用していると、インストールが妨げられることがあります。可能な限り、他のすべてのアプリケーションを終了させてからインストールを実行してください。
- Windows Updateの確認: 特にWindows 10以降では、OSの重要なコンポーネントとしてUniversal C Runtime (UCRT) が含まれており、これはWindows Updateを通じて更新されます。Windows Updateが最新の状態になっているか確認してください。
- システムファイルチェッカー: システムファイル自体が破損している可能性がある場合、コマンドプロンプトを管理者として実行し、「
sfc /scannow
」コマンドを実行してみるのも有効です。これにより、保護されたシステムファイルがスキャンされ、破損していれば修復が試みられます。 - 非公式なDLLダウンロードサイトは絶対に利用しない: 「○○.dll ダウンロード」などと検索すると、DLLファイルを個別にダウンロードできると謳う非公式なウェブサイトが多数表示されることがあります。これらのサイトからダウンロードしたDLLファイルは、マルウェアやウイルスが含まれている、バージョンが不正である、システムに不整合を引き起こすなど、極めて危険です。ランタイムライブラリは、必ずMicrosoftの公式ダウンロードセンターから再頒布可能パッケージとして入手してください。
これらの手順を踏むことで、多くのVisual C++ Runtime Libraryに関連する問題を解決できるはずです。
11. 開発者視点:なぜ再頒布可能パッケージを選ぶのか
ここまでユーザー視点で説明してきましたが、開発者側から見ると、なぜ自分のプログラムにランタイムライブラリを静的リンクするのではなく、再頒布可能パッケージに依存させるのか、その理由がより明確になります。
- 配布の容易さ: プログラムの実行可能ファイルにランタイムライブラリ全体を静的にリンクすると、ファイルサイズが非常に大きくなります。また、ライブラリのアップデートがあった場合に、プログラム自体を再コンパイル・再配布する必要があります。再頒布可能パッケージを利用すれば、プログラムの配布物は最小限になり、アップデートもパッケージの更新によってユーザー側でまとめて行えます。
- ディスク容量とメモリの効率化: ユーザーのシステム上で同じライブラリを複数のプログラムが共有できるため、ディスク容量とメモリ使用量の観点から非常に効率的です。
- アップデートの恩恵: ランタイムライブラリには、セキュリティ修正やパフォーマンス向上、バグ修正などが定期的に適用されます。動的リンクを選択し、ユーザーに最新の再頒布可能パッケージをインストールしてもらうことで、開発者は自身のプログラムにこれらの修正を自動的に取り込ませることができます。もし静的リンクしていた場合、これらの修正を反映するためには、新しいライブラリでプログラムを再コンパイルし、ユーザーに再度ダウンロード・インストールしてもらう必要があります。これはユーザーにとっても開発者にとっても負担が大きいです。
- 標準的な配布方法: Visual C++で開発されたプログラムの多くが再頒布可能パッケージを前提としているため、この方法を選択することは、ユーザーの期待に沿った標準的な配布形態となります。インストーラーでパッケージの検出とインストールを行うことは、もはや一般的なプラクティスです。
- Side-by-Side (SxS) 共存の活用: SxS技術により、異なるバージョンのライブラリがシステム上で衝突せずに共存できます。これは、開発者が特定のバージョンのライブラリに依存してプログラムを開発しても、それがユーザーのPCにインストールされている他のプログラムに影響を与えないことを保証する助けとなります。
もちろん、静的リンクが全く使われないわけではありません。非常に小さなユーティリティや、特定の環境でのみ動作し、依存関係の問題を最小限に抑えたい場合などでは、静的リンクが選ばれることもあります。しかし、一般的なデスクトップアプリケーション開発においては、動的リンクと再頒布可能パッケージの組み合わせが主流であり、多くのメリットを享受できます。
開発者は、Visual C++のプロジェクト設定において、ランタイムライブラリを動的リンクするか静的リンクするか(C/C++ > Code Generation > Runtime Library の設定)を選択できます。デフォルトでは動的リンクが選択されていることが多く、開発者は自身のインストーラーに、プログラムが依存するバージョンのVisual C++ 再頒布可能パッケージを含める(またはインストールを促す)ことになります。
12. 今後の展望 / 最新情報
Visual C++ Runtime Libraryは、Visual Studioの進化と共に更新され続けています。Visual Studio 2015以降、ランタイムライブラリの主要部分は共通化され、「Visual C++ 2015-2022 Redistributable」という単一のパッケージで提供されるようになりました。これは、過去のようにVisual Studioのバージョンごとに個別のパッケージが必要だった時代からの大きな変化であり、ユーザーが管理すべきパッケージの数を減らすことにつながっています。
また、Windows 10以降では、Universal C Runtime (UCRT) という概念が導入され、C標準ライブラリの多くの機能がOSの一部として提供されるようになりました。ucrtbase.dll
などがこれにあたります。これにより、開発者はWindows 10以降をターゲットとする場合、OSが提供するUCRTに依存することで、ランタイムライブラリの配布をよりシンプルにすることができます。Visual C++ 2015-2022 Redistributable パッケージも、UCRTを含む形で提供されています。
Visual Studioの最新バージョンであるVisual Studio 2022で開発されたプログラムも、このVisual C++ 2015-2022 Redistributable パッケージを必要とします。今後もVisual Studioが進化しても、しばらくの間はこの共通パッケージが使われ続ける可能性が高いです。
WindowsやVisual Studioのアップデートを通じて、ランタイムライブラリも継続的に改善され、最新のセキュリティ修正やパフォーマンス最適化が適用されていきます。ユーザーとしては、Windows Updateを適用し、必要に応じて最新のVisual C++ 再頒布可能パッケージをMicrosoft公式から入手することで、PC上のアプリケーションを安全かつ快適に利用できるようになります。
13. まとめ
Microsoft Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)は、Visual C++で開発された多くのWindowsアプリケーションが、実行時に必要とする共通の機能を提供する重要なDLLファイルの集まりです。これらのパッケージがユーザーのPCにインストールされることで、アプリケーションは標準的な入出力、メモリ管理、文字列操作などの機能を、オペレーティングシステムから効率的に利用できるようになります。
なぜ再頒布可能パッケージという形をとるのかというと、プログラムごとにランタイムライブラリを個別に配布するのではなく、Microsoftが提供する共通のパッケージをインストールすることで、ディスク容量やメモリ使用量の効率化、セキュリティの向上、アップデートの容易さ、そして異なるバージョンのアプリケーションがシステム上で共存できるといった多くのメリットが得られるからです。
PC上で「DLLが見つかりません」といったエラーメッセージが表示された場合、それは通常、そのプログラムが必要とする特定のバージョンのVisual C++ Runtime Libraryがインストールされていないか、破損していることが原因です。このような場合は、エラーメッセージに表示されているDLL名から必要なバージョンを特定し、Microsoftの公式ダウンロードセンターから対応するVisual C++ 再頒布可能パッケージ(適切なバージョンとアーキテクチャのx86版/x64版)をダウンロードしてインストールまたは修復することで、ほとんどの問題は解決できます。
あなたのPCの「プログラムと機能」リストに複数のVisual C++ 再頒布可能パッケージが表示されていても、それは異常なことではなく、むしろ様々なアプリケーションが正しく動作するために必要な状態です。安易なアンインストールは、依存しているプログラムが動作しなくなるリスクがあるため避けるべきです。
Visual C++ Runtime Libraryは、Windowsエコシステムにおいて非常に重要な役割を果たしている基盤的なコンポーネントです。その仕組みと必要性を理解することで、PC上で発生する様々なソフトウェアトラブルの原因を特定しやすくなり、より安全で快適なPC利用につながるでしょう。
終わりに
この記事では、Microsoft Visual C++ Runtime Library(再頒布可能パッケージ)について、その定義から必要性、技術的な背景、バージョン管理、インストール、トラブルシューティングまで、可能な限り詳細に解説しました。約5000語にわたる長文でしたが、このパッケージが単なる「よく分からないおまけ」ではなく、あなたのPCの安定した動作を支える重要な要素であることがお分かりいただけたかと思います。
もしあなたが現在、ランタイムライブラリに関連する問題に直面しているなら、この記事で紹介したトラブルシューティングの手順をぜひ試してみてください。そして、今後アプリケーションをインストールしたり、システムメンテナンスを行ったりする際に、Visual C++ 再頒布可能パッケージの存在を意識することで、よりスムーズなPCライフを送ることができるはずです。
安全なダウンロードは常にMicrosoftの公式ソースから行うことを忘れずに、あなたのPC環境を適切に保ちましょう。