はい、承知いたしました。Pandasのqcut
の使い方について、詳細な説明と様々な側面を含む約5000語の記事を作成します。
以下に記事の内容を直接表示します。
Pandas qcutの使い方入門:データを等分割する賢い方法
データ分析の世界では、データを理解し、パターンを発見し、モデリングに適した形に整形することが不可欠です。そのための一般的な手法の一つに「データのビン分割(ビニング)」があります。これは、連続的な数値データをいくつかの離散的なカテゴリ(ビン)に分割するプロセスです。例えば、年齢データを「20代」「30代」「40代」といったグループに分けたり、売上データを「低」「中」「高」といったランクに分けたりします。
Pandasライブラリは、このビン分割を行うための強力なツールを提供しており、その中でも特によく使われるのがpd.cut
とpd.qcut
です。pd.cut
は値を基準にビンを分割するのに対し、pd.qcut
はデータの分布(順位)を基準に、各ビンにほぼ等しい数のデータポイントが含まれるように分割するという特徴を持ちます。
この記事では、Pandasのqcut
関数に焦点を当て、その基本的な使い方から、様々なパラメータによる詳細な制御、そして実際のデータ分析における応用例までを徹底的に解説します。約5000語をかけて、qcut
の奥深さと便利さを余すところなくお伝えします。
1. なぜデータをビン分割するのか?データ分析におけるビニングの重要性
まず、なぜデータをビン分割する必要があるのでしょうか?連続値データを離散的なカテゴリに変換することには、いくつかの重要な利点があります。
- 理解の容易さ: 数値の羅列よりも、「高」「中」「低」のようなカテゴリで示された方が、データの全体像や傾向を直感的に把握しやすくなります。例えば、顧客の購買金額を生の値で見るよりも、「高額購入者」「中額購入者」「低額購入者」に分けて分析する方が、それぞれのグループの特性を捉えやすくなります。
- 外れ値の影響を軽減: 極端に大きな値や小さな値(外れ値)は、平均値などの統計量に大きな影響を与える可能性があります。データをビン分割することで、外れ値を特定のビンの「端」として扱えるようになり、分析における外れ値の影響をある程度抑えることができます。特に、順位ベースの
qcut
は、外れ値がビンの幅に与える影響をcut
よりも小さくできます。 - 非線形関係のモデリング: 機械学習モデルの中には、連続値データと目的変数との関係が非線形である場合に性能が低下するものがあります。ビニングによって非線形な関係を捉え直すことができ、モデルの性能向上に繋がることがあります。例えば、ある年齢を境に関係が大きく変わる場合などです。
- カテゴリ変数としての利用: 多くの機械学習アルゴリズムはカテゴリ変数を受け付けることができます。ビニングによって連続値をカテゴリ変数に変換することで、より幅広いモデルでデータを利用できるようになります。
- 可視化の改善: ヒストグラムや棒グラフなど、カテゴリデータを用いた可視化は、データの分布やグループ間の比較を分かりやすく示せます。ビン分割されたデータは、このような可視化に適しています。
- メモリ効率: 連続値データよりも、カテゴリカル型に変換されたデータの方がメモリ効率が良い場合があります。
2. pd.cut
vs pd.qcut
:2つの主要なビニング方法の違い
Pandasにはpd.cut
とpd.qcut
という主要なビン分割関数があります。両者は似ていますが、データの分割方法において根本的に異なります。この違いを理解することが、どちらの関数を使うべきかを判断する鍵となります。
-
pd.cut
:- 分割基準: 値の範囲。指定されたビンエッジ(区切り値)またはビンの数に基づいて、データがそれぞれの値の範囲に属するように分割されます。
- ビンの幅: 通常は均等な幅になります(ビンエッジを明示的に指定しない場合)。
- 各ビンに含まれるデータ数: ビンの幅が均等であっても、データの分布によっては、あるビンには多くのデータが含まれ、別のビンにはほとんどデータが含まれないということが起こりえます。
- 適したケース: 年齢層(0-10歳, 10-20歳など)やグレード(0-50点, 50-80点, 80-100点など)のように、明確な値の閾値に基づいてグループ分けしたい場合。データの分布に関わらず、特定の範囲で区切りたい場合に有用です。
-
pd.qcut
:- 分割基準: データの順位(ランク)または分布。指定されたビンの数(または分位数)に基づいて、データがその順位に従って分割されます。
- ビンの幅: ビンの幅は、データの分布によって大きく異なる可能性があります。疎な領域のビンは広く、密な領域のビンは狭くなります。
- 各ビンに含まれるデータ数: それぞれのビンに、入力データセットのほぼ等しい数のデータポイントが含まれるように分割されます。これが
qcut
の最大の特徴です。 - 適したケース: 所得データを「上位25%」「次の25%」「その次の25%」「下位25%」に分けたい場合(四分位数)。試験成績を「上位10%」「次の20%」「中位40%」「次の20%」「下位10%」に分けたい場合(カスタム分位数)。このように、データの「相対的な位置」や「ランク」に基づいてグループ分けしたい場合に非常に有用です。特に、データが大きく歪んでいる場合や、外れ値が含まれている場合でも、各ビンのデータ数を均等に保つことができるため、その後の分析やモデリングにおいて各グループをバランス良く扱えます。
つまり、pd.cut
は「値で区切る」、pd.qcut
は「数で区切る(各グループのデータ数を揃える)」と考えると分かりやすいでしょう。
この記事の主役であるqcut
は、特にデータの分布が偏っている場合や、各カテゴリに十分な数のデータを含めて分析したい場合に真価を発揮します。
3. qcut
の基本的な使い方
それでは、pd.qcut
の基本的な使い方を見ていきましょう。まずはシンプルな例から始めます。
qcut
関数は、PandasのSeriesオブジェクトやNumPyの配列のような一次元データを入力として受け取ります。最も基本的な使い方は、データをビン分割したいデータのSeriesと、分割したいビンの数(q
パラメータ)を指定することです。
“`python
import pandas as pd
import numpy as np
再現性のためにシードを設定
np.random.seed(42)
サンプルデータの生成(0から100の間の一様分布データ 100個)
data_uniform = pd.Series(np.random.uniform(0, 100, 100))
qcutを使ってデータを4つのビンに分割(四分位数)
q=4 はデータを4等分することを意味します
binned_data_uniform = pd.qcut(data_uniform, q=4)
結果を表示
print(“元のデータ(一部):”)
print(data_uniform.head())
print(“\nビン分割されたデータ(一部):”)
print(binned_data_uniform.head())
各ビンにいくつのデータが含まれているか確認
print(“\n各ビンのデータ数:”)
print(binned_data_uniform.value_counts().sort_index())
結果のデータ型を確認
print(“\nビン分割されたデータの型:”, type(binned_data_uniform))
print(“ビン分割されたデータの要素の型:”, type(binned_data_uniform.iloc[0]))
“`
コードの解説:
import pandas as pd
とimport numpy as np
で必要なライブラリをインポートします。np.random.seed(42)
で乱数生成器のシードを固定し、毎回同じ結果が得られるようにします(任意ですが、例を示す際には便利です)。pd.Series(np.random.uniform(0, 100, 100))
で0から100の間の一様分布に従う100個の乱数を持つSeriesを作成します。pd.qcut(data_uniform, q=4)
がqcut
の呼び出しです。- 最初の引数
data_uniform
はビン分割したいデータです。 q=4
はデータを4つのビンに分割することを指示しています。q=4
は四分位数を意味し、各ビンには全体の約1/4 (25%) のデータが含まれるようになります。
- 最初の引数
binned_data_uniform.head()
で結果の最初の数行を表示します。結果はCategorical
型のSeriesになります。各要素はInterval
オブジェクトで、そのデータポイントが属するビンの範囲を示しています。例えば(0.0, 25.0]
は「0より大きく25以下の範囲」を意味します。(PandasのInterval
はデフォルトで右側を含む、つまり(a, b]
の形式です。ただし、最初の区間は最小値を含むように特別に扱われます。)binned_data_uniform.value_counts().sort_index()
で、各ビンにいくつのデータポイントが含まれているかを確認します。qcut
の性質上、これらの数はほぼ等しくなります。100個のデータを4分割しているので、それぞれのビンには約25個のデータが含まれているはずです。結果を見ると、25個ずつに分割されていることがわかります(一様分布なので、ぴったり25個になります)。type()
で結果のデータ型を確認すると、pandas.core.series.Series
であることがわかります。そして、その要素の型はpandas.Interval
です。qcut
はデフォルトでは、ビンの範囲を示すInterval
オブジェクトをラベルとして持つCategorical型を返します。
ビン分割されたデータをDataFrameに追加する:
通常、qcut
の結果は元のDataFrameに新しい列として追加して使います。
“`python
DataFrameの作成
df_uniform = pd.DataFrame({‘Value’: data_uniform})
qcutの結果を新しい列として追加
df_uniform[‘Value_Quartile’] = pd.qcut(df_uniform[‘Value’], q=4)
print(“\nDataFrameにビン分割結果を追加(一部):”)
print(df_uniform.head())
新しい列のデータ数を確認
print(“\nDataFrameに追加した新しい列の各ビンのデータ数:”)
print(df_uniform[‘Value_Quartile’].value_counts().sort_index())
“`
このように、新しい列を追加することで、元のデータとビン分割されたカテゴリを関連付けて分析を進めることができます。
4. qcut
の主要パラメータの詳細
qcut
関数には、データのビン分割をより細かく制御するための様々なパラメータが用意されています。それぞれのパラメータについて詳しく見ていきましょう。
4.1. q
パラメータ:ビンの数を指定する
q
パラメータはqcut
の最も重要なパラメータです。これは、データをいくつのビンに分割するかを指定します。
-
整数: 指定した数(k)だけビンを作成し、各ビンに約
n/k
個のデータが含まれるようにします(nはデータ数)。q=4
: 四分位数 (Quartiles) – データを4等分します。q=10
: 十分位数 (Deciles) – データを10等分します。q=100
: 百分位数 (Percentiles) – データを100等分します。
-
分位数のリスト/配列: カスタムの分位数(パーセンタイル)を指定してビンを分割することも可能です。リストや配列として、0から1の間の値を指定します。これらの値が、ビンの境界となる分位点を定義します。リストの最初と最後はそれぞれ0と1を含む必要があります(データの最小値と最大値を考慮するため)。
例:カスタム分位数の使用
データを、下位30%、中位40%、上位30%の3つのビンに分割したい場合を考えます。分位点は0.3と0.7になります。リストの始まりは0、終わりは1です。
“`python
サンプルデータ(今回は歪んだ分布を生成してみましょう)
np.random.seed(43)
data_skewed = pd.Series(np.random.lognormal(0, 1, 200)) # 対数正規分布で歪んだデータを生成
カスタム分位数 [0, 0.3, 0.7, 1.0] でデータを分割
これは、[min, 30%点], (30%点, 70%点], (70%点, max] の3つのビンを作成します
binned_data_skewed_custom_q = pd.qcut(data_skewed, q=[0, 0.3, 0.7, 1.0])
print(“\n歪んだデータのカスタム分位数によるビン分割(一部):”)
print(binned_data_skewed_custom_q.head())
print(“\n歪んだデータのカスタム分位数による各ビンのデータ数:”)
print(binned_data_skewed_custom_q.value_counts().sort_index())
元のデータで単純にq=3で分割した場合と比較
binned_data_skewed_q3 = pd.qcut(data_skewed, q=3)
print(“\n歪んだデータの単純な3等分による各ビンのデータ数:”)
print(binned_data_skewed_q3.value_counts().sort_index())
“`
解説:
歪んだデータを使用していますが、q=[0, 0.3, 0.7, 1.0]
と指定したカスタム分位数による分割では、データ数がそれぞれ約 200 * 0.3 = 60個、200 * 0.4 = 80個、200 * 0.3 = 60個 となっていることがわかります。実際には分位点の計算やデータ重複の影響で厳密に一致しない場合がありますが、おおよそ指定した割合になるようにデータが分割されます。
一方、単純に q=3
で分割した場合は、約200/3 = 66または67個ずつに分割されます。これは「各ビンにデータ数を均等に」というqcut
のデフォルトの振る舞いです。
カスタム分位数を使用することで、「単純な等分」ではなく、「特定の割合での分割」を実現できます。これは、例えば顧客を購買履歴の上位N%に絞り込みたい場合などに便利です。
4.2. labels
パラメータ:ビンのラベルを指定する
qcut
のデフォルトの出力は、ビンの範囲を示すIntervalオブジェクトをラベルとするCategorical型です。しかし、これらの範囲をより分かりやすい文字列ラベルに置き換えることができます。これにはlabels
パラメータを使用します。
False
(デフォルトではない):labels=False
を指定すると、Categorical型ではなく、ビンの整数コード(0からq-1
までの整数)を要素とするndarrayまたはSeriesが返されます。これは、カテゴリ名そのものよりも、単純な数値コードが必要な場合に便利です。- ラベルのリスト/配列: ビンの数(またはカスタム分位数の数-1)と一致する長さのリストや配列を指定します。これらの値が、それぞれのビンに対応するラベルとして使用されます。通常は文字列のリストを指定します。
例:文字列ラベルの使用
先ほどの一様分布のデータを4つのビンに分割し、「低」「中低」「中高」「高」というラベルを付けます。ビンの数は4つなので、ラベルのリストは4つの要素が必要です。
“`python
一様分布のデータを使って、q=4で分割しラベルを付ける
labels_quartiles = [‘低’, ‘中低’, ‘中高’, ‘高’]
binned_data_uniform_labeled = pd.qcut(data_uniform, q=4, labels=labels_quartiles)
print(“\nラベル付きビン分割されたデータ(一部):”)
print(binned_data_uniform_labeled.head())
print(“\nラベル付きビン分割されたデータの各データ数:”)
print(binned_data_uniform_labeled.value_counts().sort_index())
print(“\nラベル付きビン分割されたデータの型:”, type(binned_data_uniform_labeled))
print(“ラベル付きビン分割されたデータの要素の型:”, type(binned_data_uniform_labeled.iloc[0]))
“`
解説:
labels=labels_quartiles
を指定することで、結果のSeriesの要素がIntervalオブジェクトではなく、指定した文字列ラベル '低'
, '中低'
, '中高'
, '高'
になっています。value_counts()
の出力もこれらの文字列ラベルをインデックスとして表示しています。データ型は引き続きCategoricalですが、要素の型はstrではなく、そのCategorical型のcategoriesとなります。
例:labels=False
の使用
“`python
q=4で分割し、labels=Falseを指定
binned_data_uniform_codes = pd.qcut(data_uniform, q=4, labels=False)
print(“\n整数コード付きビン分割されたデータ(一部):”)
print(binned_data_uniform_codes.head())
print(“\n整数コード付きビン分割されたデータの各データ数:”)
print(binned_data_uniform_codes.value_counts().sort_index())
print(“\n整数コード付きビン分割されたデータの型:”, type(binned_data_uniform_codes))
print(“整数コード付きビン分割されたデータの要素の型:”, type(binned_data_uniform_codes.iloc[0]))
“`
解説:
labels=False
を指定すると、出力はCategorical型のSeriesになりますが、その要素はIntervalではなく、各データポイントが属するビンのインデックス(0から q-1
まで)を表す整数コードになります。これは、機械学習モデルにカテゴリカルな特徴量として入力する場合など、数値コードが必要な場合に便利です。value_counts()
も0, 1, 2, 3をインデックスとしてデータ数を表示しています。
4.3. retbins
パラメータ:ビンの境界値を取得する
qcut
がデータを分割する際に実際に使用したビンの境界値(分位点の値)を知りたい場合があります。これにはretbins=True
を指定します。
retbins=True
を指定すると、qcut
関数はビニングされたデータ(SeriesまたはCategorical型)と、ビンの境界値を格納したNumPy配列の2つの要素を持つタプルを返します。
例:retbins=True
の使用
“`python
q=4で分割し、境界値も取得
binned_data_uniform_retbins, bins_uniform = pd.qcut(data_uniform, q=4, retbins=True)
print(“\nretbins=True の結果(ビン分割データ):”)
print(binned_data_uniform_retbins.head())
print(“\nretbins=True の結果(ビンの境界値):”)
print(bins_uniform)
境界値の意味を確認
print(f”\n第1四分位数 (25パーセンタイル): {bins_uniform[1]:.2f}”)
print(f”中央値 (50パーセンタイル): {bins_uniform[2]:.2f}”)
print(f”第3四分位数 (75パーセンタイル): {bins_uniform[3]:.2f}”)
“`
解説:
pd.qcut(data_uniform, q=4, retbins=True)
の結果を binned_data_uniform_retbins, bins_uniform
という2つの変数で受け取っています。
binned_data_uniform_retbins
は、先ほどまで見てきたビン分割されたデータです。bins_uniform
は、qcut
が計算したビンの境界値(分位点の値)を持つNumPy配列です。q=4
の場合、境界値は5つになります(最小値、25%、50%、75%、最大値に対応)。配列の最初の要素はデータの最小値、最後の要素はデータの最大値に対応し、その間の要素がそれぞれの分位点の値を示します。
この境界値を利用することで、「上位25%に入るには、値がいくつ以上であればよいか」といった具体的な数値を把握することができます。例えば、この例ではデータが0〜100の一様分布なので、境界値は約0, 25, 50, 75, 100に近い値になっています。歪んだ分布データで試すと、境界値が均等な間隔にならないことが確認できます。
“`python
歪んだデータでretbins=Trueを使用
binned_data_skewed_retbins, bins_skewed = pd.qcut(data_skewed, q=4, retbins=True)
print(“\n歪んだデータのretbins=Trueの結果(ビンの境界値):”)
print(bins_skewed)
“`
解説:
対数正規分布で生成した歪んだデータでは、四分位数の境界値が等間隔になっていないことがわかります。これは、データが小さい値の領域に密集しており、大きい値の領域では疎になっているためです。qcut
はこのような分布であっても、データ数を均等にするために、ビンの境界をデータの密度に合わせて調整します。retbins=True
は、この調整の結果として得られた実際の境界値を教えてくれます。
4.4. duplicates
パラメータ:重複する境界値の処理
qcut
はデータをソートし、分位点に対応する位置の値をビンの境界として使用します。しかし、データに多くの重複する値がある場合、異なる分位点に対応する位置が、同じ値を持つことがあります。例えば、データの多くの要素が同じ値 X
であり、その X
という値が同時に25パーセンタイル、50パーセンタイル、75パーセンタイルに該当してしまうようなケースです。
このような場合、計算されたビンの境界値の中に重複が生じます。qcut
はこの重複をどのように扱うかをduplicates
パラメータで制御します。
'raise'
(デフォルト): 重複する境界値が見つかった場合にエラー(ValueError
)を発生させます。これは、意図しないビンの崩壊を防ぐための安全策です。'drop'
: 重複する境界値を無視して、一意な境界値のみを使用します。これにより、リクエストしたビンの数(q
で指定した数)よりも少ない数のビンが生成される可能性があります。
例:重複する値を含むデータでの duplicates
パラメータ
多くの重複値を持つデータを作成します。
“`python
重複値が多いサンプルデータの生成
data_duplicates = pd.Series([10]50 + [20]50 + [30]50 + [40]50 + [50]*50) # 250個のデータ
値の分布: 10 (50個), 20 (50個), 30 (50個), 40 (50個), 50 (50個)
q=4 で分割しようとしてみる(四分位数)
250個のデータの四分位点は、約 62.5番目, 125番目, 187.5番目の値
62.5番目の値 -> 20
125番目の値 -> 30
187.5番目の値 -> 40
境界値候補: 10 (min), 20 (25%), 30 (50%), 40 (75%), 50 (max)
このケースでは境界値に重複はないですね。もっと極端な例を考えます。
重複値が多い、より極端なサンプルデータ
data_extreme_duplicates = pd.Series([10]100 + [20]10 + [30]*100) # 合計210個
値の分布: 10 (100個), 20 (10個), 30 (100個)
q=3 で分割しようとしてみる(3等分)
210個のデータの3等分は、約 70番目, 140番目の値
70番目の値 -> 10 (10が100個あるため、70番目も10)
140番目の値 -> 30 (10が100個, 20が10個の後なので、111番目以降は30)
境界値候補: 10 (min), 10 (33.3%), 30 (66.7%), 30 (max)
境界値に重複が発生しています (10が2回, 30が2回)
print(“\n重複値が多いデータ:”)
print(data_extreme_duplicates.value_counts().sort_index())
duplicates=’raise’ の場合 (デフォルト)
try:
pd.qcut(data_extreme_duplicates, q=3, duplicates=’raise’)
except ValueError as e:
print(f”\nduplicates=’raise’ の場合のエラー:\n{e}”)
duplicates=’drop’ の場合
binned_data_duplicates_dropped = pd.qcut(data_extreme_duplicates, q=3, duplicates=’drop’)
print(“\nduplicates=’drop’ によるビン分割(一部):”)
print(binned_data_duplicates_dropped.head())
print(“\nduplicates=’drop’ による各ビンのデータ数:”)
print(binned_data_duplicates_dropped.value_counts().sort_index())
retbins=True で境界値を確認
binned_data_duplicates_dropped_retbins, bins_dropped = pd.qcut(data_extreme_duplicates, q=3, duplicates=’drop’, retbins=True)
print(“\nduplicates=’drop’ によるビンの境界値:”)
print(bins_dropped)
“`
解説:
data_extreme_duplicates
は、値10が100個、値20が10個、値30が100個含まれています。合計210個のデータです。これをq=3
(3等分)しようとすると、それぞれのビンに約70個のデータが含まれることになります。
- 最初の70個のデータはすべて値が10です。
- 次の70個のデータは、100個ある値10のうち残りの30個、そして値20の10個、さらに値30の30個が含まれます。
- 最後の70個のデータは、値30の残りの70個です。
これを分位数(パーセンタイル)の観点から見ると:
- 約33.3パーセンタイル(210 * 0.333 ≈ 70番目)の値は
10
です。 - 約66.7パーセンタイル(210 * 0.667 ≈ 140番目)の値は
30
です(10が100個、20が10個の後なので、111番目以降は30)。
したがって、計算された境界値には10
と30
が重複して含まれることになります。
duplicates='raise'
(デフォルト) の場合は、この重複が検出され、エラーが発生します。duplicates='drop'
の場合は、重複する境界値が無視され、一意な境界値(この例では最小値10、最大値30、そして計算上唯一生き残った境界値として30、もしくは境界値リストから重複が取り除かれ [10, 30] のようになる)に基づいてビンが作成されます。結果として、ビンの数がリクエストした3つよりも少なく(この例では2つに)なります。value_counts()
を見ても、生成されたビンは2つ(Interval[10.0, 20.0]
と(20.0, 30.0]
)しかないことがわかります。retbins=True
の結果を見ると、境界値は[10., 20., 30.]
となり、qcut
が内部で実際に使用したエッジが確認できます。このエッジにより、[10, 20]と(20, 30]の2つのビンが作られました。
duplicates='drop'
は、データに多数の重複値があり、どうしてもqcut
でビニングしたいがエラーを回避したい場合に便利です。ただし、意図した数のビンが得られない可能性があることに注意が必要です。このようなデータの特性を理解し、適切な処理を選択することが重要です。多数の重複値がある場合は、qcut
よりも、特定の値をまとめて1つのカテゴリとするなどの別の手法が適している場合もあります。
4.5. precision
パラメータ:ビンの境界値の表示精度
qcut
のデフォルト出力(Intervalオブジェクト)やretbins=True
で取得できるビンの境界値は、浮動小数点数で表されます。precision
パラメータは、これらの浮動小数点値を文字列として表示する際の小数点以下の桁数を指定します。これは、出力を見やすくするために使用できます。計算の精度自体には影響しません。
“`python
retbins=True で境界値を取得 (デフォルト精度)
_, bins_default_precision = pd.qcut(data_uniform, q=4, retbins=True)
print(“\nデフォルト精度のビンの境界値:”)
print(bins_default_precision)
precision=1 を指定
_, bins_precision_1 = pd.qcut(data_uniform, q=4, retbins=True, precision=1)
print(“\nprecision=1 のビンの境界値:”)
print(bins_precision_1)
precision=3 を指定
_, bins_precision_3 = pd.qcut(data_uniform, q=4, retbins=True, precision=3)
print(“\nprecision=3 のビンの境界値:”)
print(bins_precision_3)
qcutの出力ラベルにprecisionが適用される例
binned_data_uniform_precision_1 = pd.qcut(data_uniform, q=4, precision=1)
print(“\nprecision=1 を指定したqcut出力ラベル(一部):”)
print(binned_data_uniform_precision_1.head())
“`
解説:
precision
パラメータは、ビンの境界値を浮動小数点数として 表示 する際の丸めを指定します。デフォルトではある程度の桁数が表示されますが、precision
を指定することで、例えば小数点以下第1位まで (precision=1
) や第3位まで (precision=3
) といった表示にすることができます。これは、特にビンの境界値をレポートや可視化に使用する際に見やすくするために役立ちます。
5. 欠損値 (NaN
) の扱い
qcut
は入力データに含まれる欠損値 (NaN
) を自動的に無視してビン分割を行います。結果として、入力データでNaN
だった位置には、出力でもNaN
がそのまま保持されます。
“`python
欠損値を含むサンプルデータ
data_with_nan = pd.Series([10, 20, 30, np.nan, 50, 60, np.nan, 80, 90, 100]) # 10個中2個がNaN
q=4 でビン分割 (NaNは無視される)
NaN以外の8個のデータ (10, 20, 30, 50, 60, 80, 90, 100) が対象となる
8個を4等分なので、各ビンに2個ずつ
binned_data_with_nan = pd.qcut(data_with_nan, q=4)
print(“\n欠損値を含むデータ:”)
print(data_with_nan)
print(“\n欠損値を含むデータのビン分割結果:”)
print(binned_data_with_nan)
print(“\nビン分割結果のデータ数 (NaNを除く):”)
print(binned_data_with_nan.value_counts(dropna=False).sort_index()) # dropna=FalseでNaNもカウント
“`
解説:
入力データ data_with_nan
には NaN
が2つ含まれています。qcut
はこれらのNaN
を無視して、残りの8個のデータ (10, 20, 30, 50, 60, 80, 90, 100
) を対象に四分位数を計算します。8個を4等分するので、それぞれのビンには2個ずつデータが入ります。
出力を見ると、入力で NaN
だった位置(インデックス3と6)は、出力でも NaN
になっていることがわかります。value_counts(dropna=False)
を使用すると、NaN
の数も含めて表示できます。ビン分割されたデータは合計で8個の非NaN
値と2個のNaN
値から構成されていることが確認できます。
この自動的なNaN処理は、多くの場合便利ですが、分析の目的によってはNaN
を事前に補完したり、特定のカテゴリとして扱ったりする必要があるかもしれません。その場合は、qcut
を呼び出す前にデータの欠損値処理を行ってください。
6. qcut
の応用例:データ分析での活用
qcut
は、単にデータを分割するだけでなく、データ分析パイプラインの中で非常に有用なステップとなり得ます。ここでは、いくつかの応用例を紹介します。
6.1. 所得データなどの歪んだ分布の分析
所得や資産などのデータは、少数の高額保有者と多数の低額保有者によって構成されることが多く、典型的に右に歪んだ分布を示します。このようなデータを等幅で分割するcut
を使うと、多くのデータが最初の少数のビンに集中してしまい、高額層のデータを細かく分析するのが難しくなります。qcut
を使えば、高額層のデータも他の層と同じ数のデータポイントを含むビンに分割できるため、よりバランスの取れた分析が可能になります。
“`python
歪んだ所得データのシミュレーション
np.random.seed(44)
低所得層が厚く、高所得層が薄い分布をシミュレーション
income_data = pd.Series(np.random.exponential(scale=20000, size=500) + 10000) # 平均2万に最低1万を加算
qcutで5等分 (Quintiles)
income_quintiles = pd.qcut(income_data, q=5, labels=[‘第1五分位(低)’, ‘第2五分位’, ‘第3五分位’, ‘第4五分位’, ‘第5五分位(高)’])
cutで等幅5分割と比較
binエッジはデータの最小値と最大値の間で等間隔に設定される
min_income = income_data.min()
max_income = income_data.max()
bins_cut = np.linspace(min_income, max_income, 6) # 6つのエッジで5つのビン
income_cut_bins = pd.cut(income_data, bins=bins_cut, include_lowest=True, labels=[‘ビン1’, ‘ビン2’, ‘ビン3’, ‘ビン4’, ‘ビン5’])
print(“\n所得データの分布:”)
print(income_data.describe())
print(“\n所得データのビン分割 (qcutによる5等分):”)
print(income_quintiles.value_counts().sort_index())
print(“\n所得データのビン分割 (cutによる等幅5分割):”)
print(income_cut_bins.value_counts().sort_index())
“`
解説:
シミュレーションした所得データは平均値が約3万ですが、標準偏差も大きく、分布は大きく歪んでいます (describe()
を見ても、最大値が異常に大きいことがわかります)。
qcut
で5等分した場合、それぞれのビンには約500/5 = 100個のデータが含まれていることがわかります。これにより、「低所得層」から「高所得層」まで、各層にバランス良くデータが含まれたカテゴリを作成できました。- 一方、
cut
で等幅5分割した場合、最初のビン(低所得層に対応)にデータが極端に集中し、最後のビン(高所得層に対応)にはごく少数のデータしか含まれていないことがわかります。これでは、高所得層の詳細な分析が難しくなります。
この例から、歪んだデータのビニングにはqcut
が非常に有効であることが理解できます。
6.2. グループごとの集計分析
qcut
で作成したカテゴリ列は、他の列と組み合わせてグループごとの集計分析を行う際のキーとして非常に便利です。例えば、所得の五分位数ごとに平均購買金額を比較する、といった分析が可能です。
“`python
サンプルDataFrameを作成
df_income = pd.DataFrame({‘Income’: income_data, ‘Purchase_Amount’: income_data * np.random.uniform(0.1, 0.5, size=500)})
df_income[‘Income_Quintile’] = pd.qcut(df_income[‘Income’], q=5, labels=[‘低’, ‘中低’, ‘中’, ‘中高’, ‘高’])
所得五分位数ごとに平均購買金額を集計
average_purchase_by_quintile = df_income.groupby(‘Income_Quintile’)[‘Purchase_Amount’].mean()
print(“\n所得五分位数ごとの平均購買金額:”)
print(average_purchase_by_quintile)
cutで分割した場合の比較 (例として)
df_income[‘Income_Cut_Bin’] = pd.cut(df_income[‘Income’], bins=bins_cut, include_lowest=True, labels=[‘ビン1’, ‘ビン2’, ‘ビン3’, ‘ビン4’, ‘ビン5’])
average_purchase_by_cut = df_income.groupby(‘Income_Cut_Bin’)[‘Purchase_Amount’].mean()
print(“\nIncome Cut Bin ごとの平均購買金額:”)
print(average_purchase_by_cut) # こちらはビンごとのデータ数が偏るため、分析結果の信頼性が低い可能性がある
“`
解説:
DataFrameに所得データと購買金額データがあると仮定します。qcut
で所得を五分位数に分割し、新しい列Income_Quintile
として追加します。その後、このIncome_Quintile
列をキーとしてDataFrameをグループ化し、Purchase_Amount
の平均値を計算しています。
これにより、「所得の低い層」「中間層」「高い層」といった、データ数が均等なグループごとに購買行動の傾向を比較することができます。もしcut
で分割した場合、低所得層のビンにデータが集中するため、そのビンの平均値は信頼性が高いかもしれませんが、高所得層のビンはデータ数が少なくなり、平均値の信頼性が低下する可能性があります。qcut
を使うことで、どのビンも比較的多くのデータを含むため、各グループの集計結果がより安定し、比較可能性が高まります。
6.3. ランク付けやスコアリング
qcut
は、データをランク付けしたり、スコアリングしたりするためにも使用できます。例えば、顧客の活動度を10段階評価する場合など、単純に値を区切るのではなく、相対的な順位に基づいて評価したい場合に適しています。q=10
を指定すれば、データを10段階(十分位数)で評価できますし、labels
パラメータでカスタムのスコアやランク名を割り当てることも可能です。
6.4. 機械学習モデルの前処理
一部の機械学習モデル(特に決定木ベースでないモデルや、距離ベースのモデル)は、入力データの特徴量のスケールや分布に影響を受けやすいことがあります。また、連続値の特徴量をカテゴリ化することが、モデルの性能向上に繋がる場合もあります。qcut
を使って連続値特徴量を分位数ベースでカテゴリ化することで、データの非線形性を捉えたり、外れ値の影響を軽減したりする効果が期待できます。
7. qcut
を使う上での注意点とベストプラクティス
qcut
は非常に強力なツールですが、使用する際にはいくつかの注意点があります。
- ユニークな値の数:
qcut
はデータを分位数で分割するため、入力データに含まれるユニークな値の数が指定したビンの数 (q
) よりも少ない場合、意図した数のビンを作成できないことがあります。特に、多くのデータポイントが同じ値を持つ場合に問題となりやすいです。この場合、duplicates='drop'
オプションを使用することもできますが、結果としてビンの数が減ってしまう可能性があることを理解しておく必要があります。ユニークな値が極端に少ないデータに対しては、cut
を使うか、別のカテゴリ化手法を検討する方が適切な場合があります。 - ビンの境界値の解釈:
qcut
で生成されるビンの境界値は、データの分布によって決まります。等間隔にならないことがほとんどです。retbins=True
を使用して実際の境界値を確認し、どのようにデータが分割されたのかを理解することが重要です。 cut
との使い分け: データの性質や分析の目的に応じて、qcut
とcut
を適切に使い分けることが重要です。「等しいデータ数」で分けたいならqcut
、「等しい値の範囲」で分けたいならcut
、という基本原則を覚えておきましょう。- ラベル付け: デフォルトのIntervalオブジェクトは正確な範囲を示しますが、分析結果を報告したり、他の人に共有したりする際には、
labels
パラメータを使って分かりやすい文字列ラベルを付けることを強く推奨します。 - Categorical型:
qcut
の出力はデフォルトでCategorical型です。これはメモリ効率が良く、特定の操作(groupby
など)でパフォーマンスが向上することがあります。Categorical型について理解しておくと、より効率的にデータを扱えます。
8. qcut
とcut
の比較をより深く掘り下げる
両者の違いをさらに明確にするために、同じデータに対してcut
とqcut
を適用し、結果を詳細に比較してみましょう。
“`python
サンプルデータ (少し歪ませたデータ)
np.random.seed(45)
data_compare = pd.Series(np.random.rand(200)**2 * 100) # 0から100までの間に歪んだ分布
qcutで4等分
binned_qcut = pd.qcut(data_compare, q=4)
cutで等幅4分割
binエッジはデータの最小値と最大値の間で等間隔に設定
min_val = data_compare.min()
max_val = data_compare.max()
bins_cut_edges = np.linspace(min_val, max_val, 5) # 5つのエッジで4つのビンを作成
binned_cut = pd.cut(data_compare, bins=bins_cut_edges, include_lowest=True) # include_lowest=Trueで一番左のビンも含む
print(“\n比較用データの分布:”)
print(data_compare.describe()) # 中央値が平均値より小さい、右に歪んだ分布
print(“\nqcut (4等分) の結果:”)
print(binned_qcut.value_counts().sort_index())
_, qcut_edges = pd.qcut(data_compare, q=4, retbins=True)
print(“qcut のビンの境界値:”, qcut_edges)
print(“\ncut (等幅4分割) の結果:”)
print(binned_cut.value_counts().sort_index())
print(“cut のビンの境界値:”, bins_cut_edges) # numpy.linspaceで計算したエッジ
“`
比較結果の考察:
- データ分布:
describe()
を見ると、データは平均値よりも中央値が小さく、最大値が非常に大きいことから、右に歪んだ分布(小さい値にデータが集中)であることがわかります。 qcut
の結果:value_counts()
を見ると、4つのビンそれぞれにほぼ50個のデータ(合計200個を4等分)が含まれています。これはqcut
の「データ数を均等にする」という性質通りです。- ビンの境界値を見ると、最初の境界値
[0.00, 6.40]
の幅は非常に狭いですが、最後の境界値(43.79, 99.72]
の幅は非常に広いことがわかります。これは、データが小さい値の領域に密集しているため、データ数を均等にするためには狭い範囲で多くのデータをカバーする必要があるからです。
cut
の結果:value_counts()
を見ると、最初のビン[-0.003, 24.93]
に圧倒的に多くのデータ(130個)が集中し、残りの3つのビンには少数のデータしか含まれていないことがわかります。これはcut
が「値の範囲を均等にする」ために、データの分布の偏りをそのまま反映してしまった結果です。- ビンの境界値は、最小値と最大値の間で等間隔に設定されています。
この比較により、qcut
とcut
がどのようにデータを分割するのか、そしてデータの分布が偏っている場合にそれぞれの結果がどうなるのかが明確に理解できたかと思います。どちらを選択するかは、分析の目的によって異なります。
9. まとめ:qcut
をマスターするために
この記事では、Pandasのpd.qcut
関数について、その基本的な使い方から詳細なパラメータ、応用例、そしてpd.cut
との比較まで、幅広く深く掘り下げて解説しました。
qcut
は、データを分位数に基づいて、各ビンにほぼ等しい数のデータポイントが含まれるように分割するための強力なツールです。特に、所得や購買金額、Webサイトの滞在時間など、分布が大きく歪んだ連続値データを分析する際に真価を発揮します。
qcut
を使いこなすためのポイント:
q
パラメータ: ビンの数を指定する基本的な方法。整数で指定するほか、カスタムの分位点のリストで柔軟な分割を行うことも可能です。labels
パラメータ: デフォルトのIntervalオブジェクトを、分かりやすい文字列ラベルや整数コードに置き換えることで、結果の解釈や後続の分析を容易にします。retbins
パラメータ:qcut
が実際に使用したビンの境界値(分位点の値)を取得し、データの分割基準を具体的に把握するために役立ちます。duplicates
パラメータ: データに多くの重複値が含まれる場合に発生しうるエラーを制御します。ただし、'drop'
を使用する場合は、意図したビンの数にならない可能性があることに注意が必要です。- 欠損値の扱い:
qcut
はNaN
を自動的に無視します。必要に応じて事前に欠損値処理を行いましょう。 cut
との使い分け: データ数で等分したい場合はqcut
、値の範囲で等分したい場合はcut
、という基準で選択しましょう。
qcut
で作成したカテゴリ列は、グループごとの集計分析や可視化のキーとして、また機械学習モデルの特徴量として、様々なデータ分析タスクで活用できます。
最初はqcut
の出力するIntervalオブジェクトやCategorical型に戸惑うかもしれませんが、実際にコードを書いて様々なパラメータを試すうちに、その挙動と便利さが理解できるようになるはずです。
この記事が、皆さんがPandas qcut
の使い方をマスターし、日々のデータ分析作業をより効率的かつ洞察に富んだものにするための一助となれば幸いです。ぜひ、お手元のデータでqcut
を試してみてください。