PCゲームでFatal D3D Errorに悩んだら試すべきこと:詳細トラブルシューティングガイド
PCゲーマーにとって、ゲーム中に突然発生するエラーほど興奮を冷ますものはありません。中でも「Fatal D3D Error」(致命的なD3Dエラー)は、多くのプレイヤーが一度は遭遇したことがある、あるいは耳にしたことがある厄介な問題でしょう。このエラーが発生すると、ゲームが強制終了したり、起動すらできなくなったりすることがあります。「D3D」とはDirect3Dの略であり、Windows環境で3Dグラフィックスを描画するために不可欠なDirectXという技術の一部です。つまり、このエラーはグラフィックス関連の処理で深刻な問題が発生したことを意味します。
Fatal D3D Errorの原因は一つではなく、ソフトウェア、ハードウェア、設定など、多岐にわたります。そのため、解決策も様々であり、試行錯誤が必要となることがほとんどです。しかし、闇雲に試すのではなく、体系的に可能性を潰していくことで、問題を特定し、解決にたどり着ける可能性が高まります。
この記事では、Fatal D3D Errorが発生した場合に考えられる原因と、それぞれに対する詳細な解決策を、初心者の方にも分かりやすいように解説します。約5000語にわたるボリュームで、一般的なトラブルシューティングから、やや専門的な内容まで網羅的に紹介します。このガイドを参考に、あなたのPCゲーム環境を再び快適なものにしてください。
1. はじめに:Fatal D3D Errorとは何か?
ゲームの世界に没頭している最中、突如として画面がフリーズし、デスクトップに戻された後、「Fatal D3D Error」といったエラーメッセージが表示される。この経験は、多くのPCゲーマーにとって非常にストレスフルなものです。このエラーは、DirectXというWindowsの基幹技術に含まれるDirect3Dが、グラフィックスの描画処理中に修復不可能なエラーに遭遇したことを示しています。
DirectXとDirect3Dの役割
Windowsオペレーティングシステムは、ゲームやマルチメディアアプリケーションが効率的にハードウェア(特にグラフィックスカードやサウンドカード)を利用するためのAPI(Application Programming Interface)群として「DirectX」を提供しています。このDirectXの中に、3Dグラフィックスの描画を担当する「Direct3D」があります。
ゲームが3Dグラフィックスを表示する際、ゲームプログラムはDirect3Dに対して「このオブジェクトをこの場所に、このテクスチャを使って、この光源で描画してほしい」といった指示を出します。Direct3Dはこれらの指示を受け取り、PCに搭載されているグラフィックスカード(GPU)が理解できる形式に変換し、GPUドライバを通じてGPUに処理を依頼します。GPUは強力な計算能力を使って実際に3Dシーンをレンダリングし、その結果をモニターに表示します。
Fatal D3D Errorが発生する仕組み
Fatal D3D Errorは、この「ゲームプログラム -> Direct3D -> GPUドライバ -> GPUハードウェア」という一連の処理フローのどこかで、深刻な問題が発生した場合に起こります。考えられる原因は以下の通りです。
- GPUドライバの問題: ドライバのバグ、破損、古いバージョン、他のソフトウェアとの競合など。これが最も一般的な原因の一つです。
- ハードウェアの問題: GPU自体の故障、オーバーヒート、メモリ(RAM)の不足や故障、電源ユニット(PSU)の電力不足や不安定化。
- ソフトウェアの問題: DirectX本体の破損、ゲームファイルの破損、ゲーム自体のバグ、バックグラウンドで実行されている他のソフトウェアとの競合、OSのシステムファイルの破損。
- ゲーム内の設定: 高すぎるグラフィック設定、特定の描画オプションがハードウェアやドライバと相性が悪い場合。
- オーバークロック: CPUやGPU、メモリのオーバークロックによる不安定化。
Fatal D3D Errorは、ゲームがGPUとの通信に失敗したり、GPUが要求された処理を完了できなかったり、予期しない状態に陥ったりした場合に発生します。多くの場合、ゲームはこれを致命的なエラーと判断し、続行不能となってクラッシュに至ります。
この記事では、これらの可能性を一つずつ検証し、具体的な解決策を実行していくためのガイドを提供します。これから紹介する方法は、簡単なものから順に試していくことをお勧めします。
2. Fatal D3D Errorの基本的な理解とエラーメッセージの例
Fatal D3D Errorのメッセージは、必ずしも具体的な原因を示してくれるわけではありませんが、表示される内容によってある程度の推測が可能です。典型的なエラーメッセージの例とその意味を見てみましょう。
代表的なエラーメッセージ例
エラーメッセージはゲームやDirectXのバージョンによって異なりますが、以下のようなキーワードが含まれていることが多いです。
D3D Error: Device Lost: Direct3Dデバイス(GPUとのインターフェース)が失われた、つまりゲームがGPUとの通信ができなくなった状態を示唆します。これは、GPUドライバのクラッシュ、GPUの物理的な問題、または他のアプリケーションがGPUを占有しようとした場合に発生する可能性があります。D3D Error: Device Removed:Device Lostと似ていますが、より直接的に「GPUがシステムから取り外されたかのように応答しなくなった」ことを示します。これは、GPUドライバが完全にクラッシュして復旧できなかったり、GPUが物理的に不安定になったり、電源供給が不安定になったりした場合に起こりやすいです。D3D Error: Driver Crashed: GPUドライバ自体がクラッシュしたことを明確に示すメッセージです。ドライバのバグ、ハードウェアとの非互換性、オーバークロックなどが原因として考えられます。D3D Error: Out of Video Memory: GPUが利用できるVRAM(ビデオメモリ)容量を超えてしまったことを示します。高解像度、高テクスチャ品質、多くのエフェクトなどを設定している場合に発生しやすいです。これはFatal D3D Errorとは少し異なりますが、同様にグラフィック関連の致命的なエラーとして表示されることがあります。D3D Error: Invalid Call: ゲームプログラムがDirect3Dに対して無効な命令を発行した場合に発生します。これはゲーム自体のバグである可能性が高いですが、ドライバやDirectXのバージョンによっては発生することもあります。D3D Error: Creation Failed: Direct3Dデバイスの作成に失敗した場合に発生します。ゲーム起動時によく見られます。DirectXが正しくインストールされていない、GPUがゲームの要求するDirectXバージョンをサポートしていない、またはシステムリソースが不足している場合に発生する可能性があります。
これらのメッセージはあくまでヒントですが、特に「Device Lost」「Device Removed」「Driver Crashed」は、GPUドライバやハードウェアの問題を強く示唆しています。
3. 試すべき基本的な解決策
ここからは、Fatal D3D Errorに遭遇した場合に、まず試すべき比較的簡単で効果的な解決策を紹介します。
3.1 PCの再起動
最も単純ですが、意外と効果的な方法です。PCを再起動することで、一時的なシステムリソースの枯渇や、バックグラウンドで実行されているプログラムの干渉が解消されることがあります。また、Windowsやドライバの一時的な不具合がリフレッシュされる効果も期待できます。
3.2 ゲームファイルの整合性確認
ゲームファイル自体が破損していると、ゲームはDirect3Dに対して正しい指示を出せなくなり、エラーの原因となることがあります。多くのゲームプラットフォームには、インストールされているゲームファイルの破損をチェックし、必要に応じて修復・再ダウンロードする機能があります。
Steamの場合:
- Steamライブラリを開きます。
- 問題が発生するゲームを右クリックします。
- 「プロパティ」を選択します。
- 左側のメニューから「ローカルファイル」を選択します。
- 「ゲームファイルの整合性を確認」ボタンをクリックします。
- Steamがファイルのチェックと修復を行います。完了するまで待ちます。
Epic Games Storeの場合:
- Epic Games Launcherを開き、「ライブラリ」に移動します。
- 問題が発生するゲームの下にある「…」アイコンをクリックします。
- 表示されるメニューから「検証」を選択します。
- Epic Games Launcherがファイルのチェックと修復を行います。完了するまで待ちます。
EA App (Origin) の場合:
- EA Appを開き、「マイ・コレクション」に移動します。
- 問題が発生するゲームをクリックします。
- ゲームページの右上に表示される「…」アイコンをクリックします。
- 「修復」を選択します。
- EA Appがファイルのチェックと修復を行います。完了するまで待ちます。
その他のプラットフォーム(Ubisoft Connect, Battle.netなど)でも同様の機能が提供されていることが多いので、各プラットフォームのヘルプを参照してください。
3.3 ゲームとOSの互換性確認
ゲームが動作を保証しているOSのバージョン(Windows 10、Windows 11など)や、32bit版か64bit版かを確認してください。古いゲームを最新OSでプレイしようとしている場合、互換性の問題が発生することがあります。
- ゲームのシステム要件の確認: ゲームの公式サイトやストアページで、OS、CPU、メモリ、GPU、DirectXバージョンなどのシステム要件を確認し、お使いのPCがそれを満たしているかチェックします。
- 互換モードで実行: 古いゲームの場合、ゲームの実行ファイル(.exe)を右クリックし、「プロパティ」->「互換性」タブを開き、「互換モードでこのプログラムを実行する」にチェックを入れ、以前のバージョンのWindowsを選択して試してみてください。
3.4 ゲーム内のグラフィック設定変更
最も可能性の高い原因の一つとして、PCのスペックに対してゲームのグラフィック設定が高すぎる場合があります。これによりGPUに過度な負荷がかかり、Direct3Dエラーが発生することがあります。
- 設定を全体的に下げる: ゲーム内のグラフィック設定メニューで、画質プリセットを「中」や「低」に下げるか、個別の設定項目を下げてみてください。
- 解像度: モニターのネイティブ解像度より一段階下げる。
- テクスチャ品質: VRAM使用量に大きく影響します。設定を下げるとVRAMの負荷が軽減されます。
- シャドウ品質: 負荷が高い設定項目です。下げることでフレームレートと安定性が向上することがあります。
- アンチエイリアシング: 負荷が高い項目です。MSAAなどの高品質な設定から、TAAやFXAA、あるいはオフにしてみてください。
- ポストプロセスエフェクト: ブルーム、被写界深度、モーションブラーなども負荷の原因となることがあります。
- ディスプレイモードの変更: フルスクリーン、ウィンドウモード、ボーダーレスウィンドウモードを切り替えて試してみてください。特定のモードがGPUドライバやOSのウィンドウ管理機能と相性が悪い場合があります。
- Vsync (垂直同期) またはFPSリミッター: Vsyncをオンにすると、モニターのリフレッシュレートに合わせて描画が同期され、GPUの描画ペースが一定になります。これにより、GPUへの急激な負荷変動が抑えられ、安定性が向上する可能性があります。FPSリミッターでフレームレートに上限を設けるのも同様の効果が期待できます。逆に、Vsyncが原因でエラーが発生する場合もあるため、オン/オフを切り替えて試す価値があります。
これらの設定変更でエラーが解消された場合、GPUの処理能力に対して設定が高すぎたか、特定のグラフィック設定が不安定化を招いていた可能性が高いです。設定を下げて安定することを確認したら、少しずつ設定を上げていき、どこでエラーが発生するかを特定することも可能です。
4. ドライバ関連の解決策
Fatal D3D Errorの最も一般的な原因の一つは、グラフィックドライバの問題です。ドライバは、OSとGPUハードウェア間の「通訳者」のような役割を果たしており、この部分に不具合があると、Direct3Dからの命令が正しくGPUに伝わらなかったり、GPUからの応答をOSが正しく解釈できなかったりします。
4.1 グラフィックドライバの更新
最新のグラフィックドライバには、新しいゲームへの最適化や、既知のバグの修正が含まれていることがよくあります。まず、グラフィックドライバを最新バージョンに更新してみましょう。
-
NVIDIA GeForceの場合:
- NVIDIAの公式ウェブサイトのドライバダウンロードページにアクセスします。
- お使いのGPUのシリーズ、製品、OSなどの情報を入力して検索します。
- 最新の「Game Ready Driver」または「Studio Driver」(ゲーム用途ならGame Readyが推奨)をダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラを実行します。
- 重要なのは「クリーンインストール」を選択することです。 これにより、古いドライバの設定ファイルなどが完全に削除され、新しいドライバがまっさらな状態でインストールされます。カスタムインストールを選択し、「クリーンインストールの実行」にチェックを入れてインストールを進めてください。
-
AMD Radeonの場合:
- AMDの公式ウェブサイトのドライバ&サポートページにアクセスします。
- お使いのGPUを選択するか、自動検出ツールを利用して最新ドライバ(通常はRecommended (WHQL) バージョンが推奨)をダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラを実行します。
- インストーラには通常「ファクトリーリセット」(Factory Reset)または「クリーンインストール」のオプションがあります。これを選択してインストールを進めてください。これにより、古いドライバが完全に削除されます。
-
Intel Integrated Graphicsの場合:
- Intelの公式ウェブサイトのサポート -> ダウンロードとソフトウェアページにアクセスします。
- お使いのプロセッサー(GPU内蔵の場合)またはグラフィックス製品を選択するか、Intel Driver & Support Assistantツールを利用して最新ドライバをダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラを実行し、指示に従ってインストールします。通常、クリーンインストールオプションが含まれています。
クリーンインストールの重要性:
グラフィックドライバの更新は、通常古いドライバの上に新しいドライバを上書きインストールしますが、古い設定やファイルの一部が残存し、新しいドライバと干渉して問題を引き起こすことがあります。クリーンインストールはこれを防ぎ、ドライバ関連の問題を解決する上で非常に効果的です。
4.2 DDU (Display Driver Uninstaller) を使った完全削除と再インストール
通常のクリーンインストールでも問題が解決しない場合、または以前のドライバが原因でトラブルが発生した可能性がある場合は、DDUというサードパーティ製のツールを使用して、グラフィックドライバ関連ファイルをシステムから徹底的に削除し、その後最新ドライバをクリーンインストールする方法が推奨されます。
DDUの使用手順:
DDUは非常に強力なツールであり、誤った使用はシステムを不安定にする可能性があります。必ず手順を正確に守り、自己責任で使用してください。
- DDUのダウンロード: Wagnardsoftの公式ウェブサイトから最新版のDDUをダウンロードします。
- グラフィックドライバインストーラのダウンロード: 使用したい(最新の)グラフィックドライバインストーラを、インターネットから切断する前にダウンロードしておきます。
- インターネット接続を切断: LANケーブルを抜くか、Wi-Fiをオフにします。これは、Windowsが削除されたドライバを自動的に再インストールするのを防ぐためです。
- PCをセーフモードで起動:
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「設定」を開きます。
- 「更新とセキュリティ」(Windows 10)または「システム」->「回復」(Windows 11)を選択します。
- 「回復」メニュー内の「PCの起動をカスタマイズする」または「今すぐ再起動」を選択します。
- PCが再起動したら、「オプションの選択」画面が表示されます。「トラブルシューティング」->「詳細オプション」->「スタートアップ設定」->「再起動」を選択します。
- 再起動後、「スタートアップ設定」画面が表示されます。通常、「4) セーフモードを有効にする」または「5) ネットワークを有効にしたセーフモードを有効にする」を選択します(ドライバインストーラがローカルにあるなら4、必要なら5)。キーボードの対応する数字キーを押します。
- セーフモードでDDUを実行:
- セーフモードでWindowsが起動したら、ダウンロードしておいたDDUの実行ファイルを探します。
- DDUを起動すると、「オプション」や「推奨」などが表示されます。基本的にはデフォルト設定で問題ありません。
- 右上のドロップダウンメニューで「デバイスの種類」を「GPU」に設定します。
- その下のドロップダウンメニューで「GPU」メーカー(NVIDIA、AMD、INTEL)を選択します。
- 「クリーンして、再起動」ボタンをクリックします。
- DDUがグラフィックドライバ関連ファイルを削除し、自動的にPCを再起動します。
- 通常モードでPCを起動し、ドライバを再インストール:
- PCがセーフモードではない通常モードで起動したら、最初にダウンロードしておいたグラフィックドライバインストーラを実行します。
- この際、クリーンインストールオプションがあれば再度選択(NVIDIAなど)。基本的にはそのままインストールを進めます。
- インターネット接続を戻し、Windows Updateを実行:
- ドライバのインストールが完了したら、インターネット接続を元に戻します。
- Windows Updateを実行し、OSが最新の状態であることを確認します。Windows Updateを通じて、不足しているドライバやコンポーネントが自動的にインストールされることがあります。
このDDUを使用した手順は、グラフィックドライバ起因の複雑な問題を解決する上で非常に有効です。
4.3 古い安定版ドライバへのロールバック
最新ドライバに更新してからFatal D3D Errorが発生するようになった場合、その最新ドライバ自体に問題があるか、お使いの環境と相性が悪い可能性があります。この場合は、一つ前のバージョンなど、以前の安定していたドライババージョンに戻すことが解決策となることがあります。
- GPUメーカーのウェブサイト: 各GPUメーカーのウェブサイトには、最新版だけでなく、過去のドライババージョンもアーカイブされています。問題が発生する直前に使用していたバージョンや、コミュニティで安定していると評判のバージョンを探してダウンロードします。インストール方法は、最新版と同様にクリーンインストール(またはDDUを使用してからインストール)を推奨します。
- デバイスマネージャーからのロールバック: もし最近ドライバを更新したばかりで、まだWindowsが以前のドライバファイルを保持している場合、デバイスマネージャーからロールバックできることがあります。
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「デバイスマネージャー」を開きます。
- 「ディスプレイアダプター」を展開します。
- お使いのグラフィックカードを右クリックし、「プロパティ」を選択します。
- 「ドライバー」タブを開きます。
- 「ドライバーを元に戻す(R)」ボタンが有効になっている場合、それをクリックしてロールバックします。ボタンが灰色で無効になっている場合は、この方法は利用できません。
4.4 チップセットドライバの更新
グラフィックドライバほど直接的ではありませんが、マザーボードのチップセットドライバも、システムバスやデバイス間の通信安定化に影響を与える可能性があります。チップセットドライバが古い場合や破損している場合、システム全体の安定性が損なわれ、それがIndirectにグラフィック関連の問題を引き起こすことも考えられます。
- マザーボードメーカー(ASUS, GIGABYTE, MSI, ASRockなど)またはCPUメーカー(Intel, AMD)の公式ウェブサイトにアクセスします。
- お使いのマザーボードのモデル名またはCPUのモデル名で検索し、サポートページから最新のチップセットドライバをダウンロードしてインストールします。
4.5 サウンドドライバの更新
非常にまれなケースですが、特定のゲームや環境において、サウンドドライバがグラフィックパイプラインと競合し、Fatal D3D Errorの原因となる可能性もゼロではありません。これは、オーディオ処理とグラフィック処理が密接に関連する特定のゲームエンジンや、オーディオ効果をGPUで処理する場合などに起こり得ます。
- マザーボードに内蔵されたサウンド機能を利用している場合は、マザーボードメーカーの公式サイトから最新のサウンドドライバ(Realtek Audio Driverなど)をダウンロードしてインストールします。
- 別途サウンドカードを使用している場合は、そのメーカーの公式サイトから最新ドライバを入手します。
5. DirectX関連の解決策
Fatal D3D ErrorはDirectXの一部であるDirect3Dに関連するエラーですから、DirectX本体に問題がある可能性も考慮する必要があります。
5.1 Windows Updateの実行
DirectXの主要なコンポーネントは、Windowsのアップデートによって提供されます。OSを最新の状態に保つことで、DirectXも最新かつ安定した状態に保たれる可能性が高まります。
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「設定」を開きます。
- 「更新とセキュリティ」(Windows 10)または「Windows Update」(Windows 11)を選択します。
- 「更新プログラムのチェック」をクリックし、利用可能なアップデートがあればすべてインストールします。必要に応じてPCの再起動を求められます。
5.2 DirectXエンドユーザーランタイムの確認/インストール
ほとんどの最新ゲームはWindows Updateで提供されるDirectXのバージョンを利用しますが、古いゲームの中には、特定の古いDirectXコンポーネント(DirectX 9, 10, 11などの古いランタイムファイル)を必要とする場合があります。Windows Updateで提供されるDirectXは最新版ですが、古いバージョンのすべてのコンポーネントが含まれているわけではありません。
- Microsoftの公式サイトから「DirectX エンドユーザー ランタイム Web インストーラー」をダウンロードして実行します。このツールは、PCに不足している古いDirectXコンポーネントを検出してインストールしてくれます。
- すでに新しいDirectXがインストールされているというメッセージが表示されても、不足している古いファイルがある可能性があるので、完了まで実行することをお勧めします。
6. ハードウェア関連の解決策
Fatal D3D Errorはグラフィック処理に関わるため、GPUを中心としたハードウェアの不安定性や故障が原因となることもあります。
6.1 GPUのオーバークロック解除
グラフィックカードメーカーが出荷時に設定しているファクトリーオーバークロック(工場出荷時のOC)や、ユーザー自身がMSI Afterburnerなどのツールで設定したオーバークロックは、性能向上に寄与しますが、その一方で安定性を損なう可能性があります。特に不安定なOC設定は、高負荷時に予期しないエラーを引き起こし、Fatal D3D Errorの原因となることがあります。
- ファクトリーOC: 使用しているGPUがファクトリーOCモデル(例:RTX 3070 OCエディションなど)の場合、まれにその初期設定が原因で不安定になることがあります。GPUメーカーが提供するユーティリティソフト(例:ASUS GPU Tweak, GIGABYTE AORUS Engine, MSI Dragon Center/Afterburnerなど)を使用して、クロック設定をリファレンスデザイン(定格)の値に戻してみてください。
- 手動OC: 自分でクロック周波数や電圧などを調整している場合は、設定を完全にデフォルト(OC解除)に戻してみてください。メモリクロック、コアクロック、電圧など、すべての設定を定格に戻すか、ユーティリティソフトをアンインストールして確認します。UEFI/BIOSでCPUやメモリをオーバークロックしている場合も、それがGPUとの連携に影響を与えている可能性があるため、一度デフォルト設定に戻してみる価値があります。
6.2 GPUの温度監視
GPUは高負荷時に発熱します。適切に冷却されないと、温度が上昇しすぎ(一般的に80℃〜85℃以上で注意が必要、90℃を超えると危険水域)て、GPUが性能を制限したり、不安定になったり、最悪の場合は保護機能が働いてクラッシュしたりします。これがFatal D3D Errorの原因となることがあります。
- 温度監視ツールの利用: HWiNFO, MSI Afterburner, TechPowerUp GPU-Zなどのツールを使用して、ゲームプレイ中のGPU温度を監視します。これらのツールは、GPU使用率、温度、ファン速度、クロック周波数などをリアルタイムで表示できます。MSI Afterburnerなどでは、ゲーム画面上にこれらの情報をオーバーレイ表示することも可能です。
- 適切な冷却の確認:
- PCケース内のエアフローは良好か?(吸気ファンと排気ファンが適切に配置されているか)
- PCケース内やGPU本体にホコリが溜まっていないか?(ファンやヒートシンクにホコリが詰まっていると冷却効率が著しく低下します)エアダスターなどで清掃してください。
- GPUのファンは正常に回転しているか?
- 長期間(数年以上)使用しているGPUの場合、GPUクーラーとGPUチップ間のサーマルペーストが劣化している可能性があります。経験があれば、サーマルペーストの塗り直しを検討しても良いでしょう(ただし分解が必要なため、保証が無効になる場合や、破損リスクを伴います)。
- 室温が高すぎないか?
GPUが高温になっていることが確認された場合は、冷却対策を強化することでエラーが解決する可能性があります。
6.3 メモリ(RAM)関連の問題
システムメモリ(RAM)の不足、故障、またはオーバークロックによる不安定化も、Fatal D3D Errorの間接的な原因となることがあります。ゲームは実行時に多くのメモリを使用し、VRAMだけでなくシステムメモリとの間でデータをやり取りするためです。
- メモリ不足: ゲームの推奨システム要件を満たすだけのメモリ容量があるか確認します。タスクマネージャー(Ctrl+Shift+Escで起動)を開き、「パフォーマンス」タブの「メモリ」で、ゲーム実行中のメモリ使用率を監視します。物理メモリ容量ギリギリか、常にページファイル(仮想メモリ)へのスワップが頻繁に発生しているような状況では、メモリ不足が原因で不安定になっている可能性があります。
- メモリのオーバークロック(XMP/DOCP): UEFI/BIOSでメモリのXMP (Intel) またはDOCP (AMD) プロファイル設定を有効にしている場合、これはメモリを定格以上のクロックや電圧で動作させるオーバークロック設定です。多くの環境では安定して動作しますが、マザーボードやCPU、メモリ自体の相性によっては不安定化の原因となります。一度XMP/DOCPを無効にして、メモリをDDR4-2133やDDR5-4800などのJEDEC標準速度で動作させてみてください。これで安定する場合は、メモリ設定を見直すか、XMPを諦める必要があるかもしれません。
- メモリの物理的故障: メモリ自体が物理的に故障している場合、データが正しくやり取りできず、システム全体の不安定化やゲームクラッシュを引き起こします。
- Windowsメモリ診断ツール: Windowsに標準搭載されているツールです。Windows検索バーに「メモリ診断」と入力して実行します。PCの再起動が必要で、再起動時に診断が実行されます。
- MemTest86+: より詳細で信頼性の高いメモリ診断ツールです。USBメモリにツールを書き込み、そのUSBからPCを起動して診断を行います。時間がかかりますが、メモリの故障を高精度で検出できます。
- 複数のメモリを搭載している場合は、1枚ずつ挿した状態でゲームを実行してみることで、特定のメモリが原因かどうかを特定できることがあります。
6.4 ストレージ関連の問題
ゲームがインストールされているストレージ(SSDやHDD)の空き容量不足や、ストレージ自体の健康状態の悪化も、ゲームのデータ読み込みに問題を引き起こし、エラーの原因となることがあります。
- 空き容量: ゲームがインストールされているドライブに十分な空き容量があるか確認します。Windowsやゲームは一時ファイルなどを生成するため、ドライブ全体の15〜20%程度の空き容量を確保することが推奨されます。
- ストレージの健康状態: CrystalDiskInfoなどのS.M.A.R.T.情報表示ツールを使用して、SSDやHDDの健康状態を確認します。異常が見られる場合は、ストレージの交換を検討する必要があります。
6.5 電源ユニット(PSU)関連の問題
PC全体の各パーツに電力を供給する電源ユニット(PSU)が、PCの構成に対して容量不足であるか、劣化や故障により不安定になっている場合、特に高負荷がかかるゲーム実行時に必要な電力を安定して供給できなくなり、システムやGPUが不安定化してFatal D3D Errorを引き起こすことがあります。
- 容量の確認: お使いのGPUやCPUなどのパーツ構成に対して、PSUの容量が十分か確認します。GPUメーカーのウェブサイトでは、そのGPUを使用する際の推奨PSU容量が記載されています。PC全体の消費電力(TDP)を計算し、PSU容量に十分な余裕があるか(一般的に最大消費電力の1.5倍以上の容量が推奨)確認します。
- 劣化・故障: 長年使用しているPSUや、信頼性の低い安価なPSUは、劣化により定格通りの電力を供給できなくなったり、電圧が不安定になったりすることがあります。テスターなどで電圧を測定するのは専門知識が必要ですが、目視での異常(コンデンサの膨らみなど)がないか確認したり、信頼性の高い新しいPSUに交換してみることも、特に他の原因が考えにくい場合に有効な手段となります。
7. ソフトウェア/システム関連の解決策
OSの設定や、バックグラウンドで実行されている他のソフトウェアが、ゲームやDirectXの動作に干渉し、エラーを引き起こすことがあります。
7.1 バックグラウンドアプリケーションの終了
ゲーム実行中に多くのバックグラウンドアプリケーション(ブラウザ、動画プレイヤー、Officeアプリ、ファイル転送ソフトなど)を起動していると、システムリソース(CPU、メモリ、GPU、ネットワーク帯域)を消費し、ゲームの動作に悪影響を与えたり、特定のアプリケーションがDirect3DやGPUにアクセスしようとして競合を引き起こしたりすることがあります。
- ゲームを起動する前に、不要なアプリケーションはすべて終了させます。
- 特に、ゲーム中にオーバーレイ表示機能を持つアプリケーション(Discord Overlay, NVIDIA GeForce Experience In-Game Overlay, Xbox Game Barなど)は、DirectXフックを使用して画面上に情報を表示するため、グラフィック処理に干渉しやすく、D3Dエラーの原因となることがあります。これらのオーバーレイ機能を一時的に無効にして、エラーが発生するか確認してください。
7.2 セキュリティソフトの一時的な無効化
アンチウイルスソフトやファイアウォールなどのセキュリティソフトが、ゲームの実行ファイルや通信を誤って脅威と判断し、アクセスをブロックしたり、ゲームプロセスを監視・スキャンしようとしてゲームの動作に干渉したりすることがあります。
- 一時的な無効化: ゲームを起動してプレイする間だけ、セキュリティソフトのリアルタイムスキャンやファイアウォールを一時的に無効化してみてください。ただし、これはセキュリティリスクを伴うため、自己責任で行い、ゲーム終了後は必ず元に戻してください。
- 除外設定: セキュリティソフトの設定で、ゲームのインストールフォルダや実行ファイルをスキャン対象から除外する設定を追加します。
7.3 Windowsのクリーンブート
Windowsのクリーンブートは、OS起動時に読み込まれる必要最低限のサービスとスタートアッププログラムだけでシステムを起動する診断モードです。これにより、サードパーティ製のサービスやスタートアッププログラムが原因で発生している問題を特定することができます。
クリーンブートの手順:
- Windows検索バーに「msconfig」と入力し、「システム構成」アプリを起動します。
- 「サービス」タブを開きます。
- 「Microsoft のサービスをすべて隠す」に必ずチェックを入れます。 (これを忘れると、OSに必要なサービスを無効にしてしまい、Windowsが起動しなくなる可能性があります。)
- チェックを入れたら、表示されている残りのサービスの中で、無効化しても問題なさそうなもの(セキュリティソフト、各種アップデートサービス、ユーティリティソフトなど)を無効にするか、一時的にすべて無効にします。「すべて無効」ボタンをクリックするのが手っ取り早いですが、後で元に戻すのが大変になる可能性もあります。
- 「スタートアップ」タブを開き、「タスクマネージャーを開く」をクリックします。
- タスクマネージャーの「スタートアップ」タブで、リストされているすべてのスタートアップ項目を右クリックして「無効化」します。これはPC起動時に自動実行されるプログラムです。
- システム構成ウィンドウに戻り、「OK」をクリックします。
- PCの再起動を求められるので、再起動します。
クリーンブート状態でPCが起動したら、ゲームを実行してFatal D3D Errorが発生するか確認します。
- エラーが発生しない場合: 問題の原因は無効化したサービスまたはスタートアッププログラムの中にあります。システム構成ウィンドウに戻り、無効化したサービスやスタートアッププログラムを一つずつ有効に戻してはPCを再起動し、どの項目を有効にするとエラーが再発するかを特定していきます。原因が特定できたら、そのプログラムをアンインストールするか、設定を変更するなどの対応を行います。
- エラーが解決しない場合: 問題の原因は無効化したサービスやスタートアッププログラムにはない可能性が高いです。システム構成ウィンドウに戻り、「通常スタートアップ」を選択するか、無効化したサービスとスタートアッププログラムをすべて有効に戻して、元の設定に戻します。
7.4 OSファイルの破損チェック
Windowsのシステムファイル自体が破損していると、DirectXを含むOSの機能が正常に動作せず、Fatal D3D Errorの原因となることがあります。Windowsにはシステムファイルの破損をチェックし、修復するツールが搭載されています。
-
システムファイルチェッカー (SFC):
- Windows検索バーに「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックして「管理者として実行」を選択します。
- コマンドプロンプトウィンドウに
sfc /scannowと入力し、Enterキーを押します。 - システムファイルのチェックと修復が始まります。完了するまで待ちます。破損が見つかれば自動的に修復を試みます。
-
DISM (Deployment Image Servicing and Management): SFCツールが正常に機能しない場合や、OSイメージ自体に問題がある可能性がある場合、DISMツールを使用します。
- 管理者としてコマンドプロンプトを実行します(上記SFCの手順1と同様)。
- 以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth - Windows Updateを使用して破損したシステムファイルを置き換えようとします。完了するまで時間がかかる場合があります。
- DISMコマンドの実行後、再度
sfc /scannowを実行することが推奨されます。
7.5 仮想メモリ(ページファイル)の設定確認
仮想メモリは、物理メモリ(RAM)が不足した場合に、ストレージの一部をメモリのように使用する機能です。この設定が不適切であったり、仮想メモリが使用されるドライブに問題があったりすると、ゲームの動作が不安定になることがあります。
- 設定の確認:
- Windows検索バーに「システムの詳細設定」と入力し、「システムの詳細設定の表示」を選択します。
- 「システムのプロパティ」ウィンドウが表示されるので、「詳細設定」タブを選択し、「パフォーマンス」セクションの「設定」ボタンをクリックします。
- 「パフォーマンスオプション」ウィンドウが表示されるので、「詳細設定」タブを選択します。
- 「仮想メモリ」セクションの「変更」ボタンをクリックします。
- 通常は「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」にチェックが入っている「システム管理サイズ」が推奨されます。これが選択されているか確認してください。
- 特定のドライブにカスタムサイズを設定している場合、そのドライブ(特にゲームがインストールされているドライブやOSドライブ)に十分な空き容量があるか、またそのドライブの健康状態が良好か確認してください。カスタムサイズを物理メモリの1.5倍~2倍程度に設定していることが多いですが、SSDの場合、仮想メモリの使用は書き込み回数を増やし寿命を縮める可能性がある点に注意が必要です。一時的に「システム管理サイズ」に戻して、エラーが解消するか試してみるのも良いでしょう。
7.6 他のソフトウェアとの競合
特定の常駐ソフトや、ゲームに関連するツール(例:Modローダー、グラフィック設定ツール、PC監視ツールなど)が、ゲームやDirectXと競合してエラーを引き起こすことがあります。心当たりがある場合は、それらのソフトウェアを一時的に終了またはアンインストールして、エラーが解消するか確認してください。
7.7 ユーザープロファイルの問題
ごくまれに、Windowsのユーザープロファイル自体が破損しており、それが原因で特定のアプリケーション(ゲームを含む)が正常に動作しないことがあります。
- 新規ユーザーアカウントの作成: 新しいWindowsユーザーアカウントを作成し、そのアカウントでログインしてゲームを実行してみることで、既存のユーザープロファイルに問題があるかどうかを切り分けることができます。
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「設定」を開きます。
- 「アカウント」->「家族とその他のユーザー」を選択します。
- 「その他のユーザーをこのPCに追加」をクリックします。
- Microsoftアカウントを使わずにローカルアカウントを作成する場合は、「このユーザーのサインイン情報がありません」->「Microsoft アカウントを持たないユーザーを追加する」を選択し、新しいアカウント名とパスワードを設定します。
- 作成した新しいアカウントでPCにログインし、ゲームをインストールまたは起動してエラーが発生するか確認します。
8. 特定のゲームやエラーコードに関する情報収集
ここまで紹介した汎用的な解決策を試しても改善しない場合、問題が特定のゲームや特定の環境に固有のものである可能性が高まります。この段階では、より具体的な情報収集が重要になります。
- 正確なエラーメッセージとゲーム名で検索: Fatal D3D Errorの具体的なメッセージが表示されている場合、そのメッセージ全文とエラーが発生しているゲームの名前を組み合わせて検索します。
例:「[ゲーム名] Fatal D3D Error [エラーコードまたはメッセージ]」 - ゲームの公式フォーラムやコミュニティ: プレイしているゲームの公式フォーラム、Redditのサブレディット、Steamコミュニティハブなどを確認します。他のプレイヤーが同じエラーに遭遇していないか、開発元から何らかのアナウンスがないか、他のユーザーが共有している解決策がないかを探します。特定のゲームのバージョンやアップデート、特定のハードウェア構成で発生しやすいエラーである可能性もあります。
- 開発元のサポート情報: ゲーム開発元やパブリッシャーの公式ウェブサイトに、既知の問題リストやFAQ、トラブルシューティングガイドが掲載されていることがあります。サポートページを確認し、関連情報がないか探します。
- GPUメーカーのフォーラム/サポート: NVIDIA GeForce ForumsやAMD Community Forumsなど、GPUメーカーの公式フォーラムも有用な情報源となることがあります。特定のゲームタイトルと組み合わせたドライバ関連の問題について議論されている可能性があります。
特定の情報が見つかることで、問題の原因を絞り込んだり、より効果的な解決策(例:特定のドライババージョンへの変更、ゲーム内の特定のオプションを無効にするなど)が見つかったりすることがあります。
9. それでも解決しない場合
ここまで様々な方法を試してもFatal D3D Errorが解決しない場合、問題はより根深く、ハードウェアの故障やOSの深刻な問題、あるいは特定の環境に起因する複雑な競合である可能性があります。
9.1 システム情報の収集とサポートへの問い合わせ
原因を特定し、他者にサポートを求めるためには、お使いのPC環境と問題の詳細な情報を整理することが重要です。
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システム情報のリストアップ:
- OSの正確なバージョンとビルド番号(例:Windows 11 Pro 23H2 ビルド 22631.3007)
- CPUのモデル名(例:Intel Core i7-12700K, AMD Ryzen 7 5800X)
- GPUのモデル名(例:NVIDIA GeForce RTX 4070, AMD Radeon RX 7800 XT)
- GPUドライバのバージョン
- 搭載メモリ(RAM)の容量と規格(例:32GB DDR4-3200)
- マザーボードのメーカーとモデル名
- PSUのメーカーと容量
- ゲームがインストールされているストレージの種類(SSD/HDD)と空き容量
- 問題が発生しているゲーム名とバージョン
- 表示されるFatal D3D Errorの正確なメッセージまたはエラーコード
- エラーが発生する状況(ゲーム起動時、特定の場面、プレイ中にランダムに発生など)
- これまでに試したすべての解決策のリスト
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サポートへの問い合わせ: 上記情報を整理し、関係各所に問い合わせを行います。
- ゲーム開発元/パブリッシャーのサポート: ゲーム自体のバグや特定の環境との相性問題である可能性。
- GPUメーカーのサポート: ドライバやGPUハードウェアの問題である可能性。
- PCメーカーのサポート: プリビルドPCの場合、ハードウェア構成全体の問題である可能性。
9.2 ハードウェアの物理的な確認
PCケースを開けて、ハードウェアが正しく装着されているか、ケーブルがしっかり接続されているかなどを物理的に確認することも有効です。
- PCの電源を切り、電源ケーブルを抜き、数分待って内部の電気が完全に放電されてから作業を行います。
- GPU: マザーボードのPCI Expressスロットにしっかりと挿入されているか確認します。補助電源ケーブル(6ピン、8ピン、12VHPWRなど)がGPU本体とPSU/ケーブルにしっかり接続されているか確認します。
- メモリ: マザーボードのメモリスロットにしっかりと挿入されているか確認します。
- その他のケーブル: マザーボードへの電源ケーブル、ストレージへのSATA/電源ケーブルなどが緩んでいないか確認します。
- ホコリの除去: PCケース内、特にファンやヒートシンクに溜まったホコリをエアダスターなどで丁寧に除去します。ホコリは冷却効率を低下させ、ハードウェアの不安定化を招きます。
9.3 OSのクリーンインストール
他のすべての方法を試しても問題が解決しない場合の最終手段として、Windowsオペレーティングシステムのクリーンインストールを検討します。これにより、OSやDirectXを含むすべてのシステムファイルが最新かつクリーンな状態になります。
OSクリーンインストールの前に:
- 必要なデータ(ドキュメント、写真、動画、ゲームのセーブデータなど)は必ず外部ストレージにバックアップしてください。クリーンインストールではシステムドライブの内容が消去されます。
- Windowsのプロダクトキー、ゲームのインストールメディア/ダウンロードファイル、各種ドライバファイル(特にネットワークアダプターのドライバ。クリーンインストール後にインターネットに接続するために必要になる場合があります)を準備しておきます。
クリーンインストールの方法:
- Windowsのリカバリ機能: Windowsの設定から「回復」->「このPCをリセット」を選択し、「すべて削除する」を選んでPCを初期状態に戻す方法があります。
- インストールメディアを使用: MicrosoftのウェブサイトからMedia Creation ToolをダウンロードしてUSBインストールメディアを作成し、それを使用してPCを起動してWindowsをクリーンインストールする方法がより完全なクリーンインストールとなります。
OSのクリーンインストールは時間と手間がかかりますが、ソフトウェア的な問題が原因である場合は、多くの問題を解決する強力な手段となり得ます。クリーンインストール後、まずOSのアップデートをすべて適用し、グラフィックドライバを含む必要なドライバを最新版でインストールし、その後ゲームをインストールして動作を確認します。
10. まとめ
PCゲームにおけるFatal D3D Errorは、GPUドライバ、ハードウェア、OS、ゲーム自体の問題など、様々な要因が複雑に絡み合って発生する可能性があります。そのため、問題を解決するには、一つずつ可能性を潰していく体系的なトラブルシューティングが不可欠です。
この記事で紹介した解決策は以下の通りです。
- 基本的な確認: PCの再起動、ゲームファイルの整合性確認、互換性チェック、ゲーム設定の変更(グラフィック設定を下げる、ディスプレイモードやVsyncの調整)。
- ドライバ関連: グラフィックドライバの更新(クリーンインストール推奨)、DDUを使用した完全削除と再インストール、古い安定版ドライバへのロールバック、チップセットドライバやサウンドドライバの更新。
- DirectX関連: Windows Updateの実行、DirectXエンドユーザーランタイムの確認/インストール。
- ハードウェア関連: GPUのオーバークロック解除、GPU温度の監視と冷却対策、メモリ不足の確認とメモリ診断、ストレージの空き容量と健康状態の確認、電源ユニットの容量と安定性の確認。
- ソフトウェア/システム関連: バックグラウンドアプリケーションの終了、セキュリティソフトの一時的な無効化または除外設定、Windowsのクリーンブートによる競合原因の特定、OSファイルの破損チェック(SFC/DISM)、仮想メモリ設定の確認、新規ユーザーアカウントでのテスト。
- 情報収集: 特定のゲームやエラーコードでの情報検索、公式フォーラムやサポート情報の確認。
- 最終手段: システム情報の整理とサポートへの問い合わせ、ハードウェアの物理的確認、OSのクリーンインストール。
多くの場合、グラフィックドライバの更新(特にクリーンインストールやDDUの使用)、ゲーム設定の調整、またはバックグラウンドで干渉しているソフトウェアの特定によって問題が解決します。しかし、まれにハードウェアの物理的な問題やOSの深刻な破損が原因であることもあります。
Fatal D3D Errorのトラブルシューティングは根気がいる作業ですが、原因を特定し、適切な対策を講じることで、再び快適なPCゲームライフを取り戻すことができるはずです。一つずつ手順を踏み、諦めずに試してみてください。このガイドが、あなたのFatal D3D Error解決の一助となれば幸いです。