RF50mm F1.2L USMを徹底紹介!驚異的な描写と特徴

RF50mm F1.2L USMを徹底紹介!驚異的な描写と特徴

キヤノンRFシステムが登場して以来、その中心的存在として多くの写真家を魅了し続けているレンズがあります。それが「RF50mm F1.2L USM」です。このレンズは、まさにRFマウントのポテンシャルを最大限に引き出すために生まれたと言っても過言ではありません。開放F値1.2という圧倒的な明るさがもたらす未体験の描写性能は、従来のレンズの概念を覆すほどの衝撃を与えました。

単なるスペック上の明るさだけでなく、Lレンズの名にふさわしい徹底した光学設計、最新のAF技術、そして堅牢な鏡筒構造。その全てが高次元で融合し、このレンズは唯一無二の存在感を放っています。ポートレート、スナップ、風景、そして動画撮影まで、あらゆるシーンで最高のパフォーマンスを発揮し、クリエイターの想像力を掻き立てる力を秘めています。

この記事では、RF50mm F1.2L USMがなぜこれほどまでに称賛され、多くの写真家から支持されているのかを徹底的に掘り下げていきます。その驚異的な描写性能の秘密、最新技術がもたらす特徴、そしてこのレンズを使いこなすことによって生まれる表現の可能性について、詳細にご紹介しましょう。

1. はじめに:RFマウントを象徴する大口径標準単焦点

キヤノンのRFマウントは、新しいミラーレスシステムのためにゼロから設計されました。ショートバックフォーカス、大口径マウント、そして新開発の12ピン電子接点。これらの革新的な構造は、レンズ設計の自由度を飛躍的に向上させました。RF50mm F1.2L USMは、このRFマウントの恩恵を最も色濃く受けたレンズの一つです。

伝統的に、50mmという焦点距離は「標準レンズ」と呼ばれ、人間の視野に近い自然な遠近感を持つことから、ポートレートからスナップ、風景まで幅広く使われる万能な焦点距離です。多くの写真家が最初に手にする単焦点レンズとしても知られています。その標準的な焦点距離に、F1.2という規格外の明るさが組み合わさることで、どのような世界が広がるのでしょうか。

F1.2という明るさは、まず圧倒的な光量を取り込むことができます。これにより、光量の少ない場所でも感度を上げずにシャッタースピードを稼ぐことが可能となり、手持ちでの撮影領域が大きく広がります。また、浅い被写界深度が生み出す、とろけるような大きなボケは、被写体を際立たせ、独特の立体感や空気感を表現するための強力な武器となります。

RF50mm F1.2L USMは、単なる明るいレンズではありません。開放F1.2から画面全域で驚異的な解像性能を発揮し、かつ美しいボケ描写を両立するという、従来の光学設計では困難だった課題を、RFマウントのポテンシャルと最新の光学技術によって克服したレンズです。それは、まさにキヤノンの光学技術の粋を集めて生み出された、RFシステムを象徴するフラッグシップ標準単焦点と言えるでしょう。

2. RF50mm F1.2L USMの主な特徴

RF50mm F1.2L USMは、そのスペックだけでなく、様々な側面において優れた特徴を備えています。ここでは、その主な特徴を掘り下げて見ていきましょう。

2.1. 光学性能:開放F1.2で未体験の解像度とボケ描写

このレンズの最も注目すべき特徴は、やはりその光学性能です。F1.2という大口径でありながら、開放から妥協のない描写を実現するために、贅沢なレンズ構成が採用されています。

  • レンズ構成: 9群15枚という多枚数構成です。この中に、キヤノンが誇る特殊レンズが惜しみなく投入されています。
  • 特殊レンズの採用:
    • UDレンズ(特殊低分散ガラス): 1枚採用。主に軸上色収差(ピント面の前後に発生する色のズレ)や倍率色収差(画面の周辺部で色のにじみとして現れる現象)といった色収差の発生を効果的に抑制します。特に大口径レンズで問題となりやすい軸上色収差を、F1.2という明るさでも良好に補正しています。
    • 非球面レンズ: 3枚採用(研削非球面レンズ2枚、ガラスモールド非球面レンズ1枚)。球面収差、コマ収差、歪曲収差など、様々な収差を補正する上で非常に重要な役割を果たします。特に画面周辺部における像の流れや歪みを抑制し、開放F1.2でも画面全体で均一性の高いシャープな描写を実現するために不可欠な存在です。研削非球面レンズは特に高い精度が求められ、その製造には高度な技術が必要です。
  • 光学設計思想: RFマウントのショートバックフォーカスと大口径を活かし、後玉径を大きく設計することが可能になりました。これにより、レンズ設計者は像面湾曲(画面の中心と周辺でピント位置がずれる現象)を抑制しつつ、周辺光量の低下を抑える設計を実現しています。また、後玉をイメージセンサーに近づけることで、光線をより垂直に近い角度でイメージセンサーに導くことができ、センサー性能を最大限に引き出すことが可能になっています。
  • 開放F1.2の意義: F1.2という明るさは、単にボケ量を増やすだけでなく、いくつかの重要な利点をもたらします。
    • 圧倒的なボケ量: 標準50mmという焦点距離でありながら、中望遠レンズのような大きなボケを得られます。特に被写体との距離が近いほど、背景はとろけるように溶け出し、被写体を強烈に浮かび上がらせます。
    • 低照度撮影: F1.2はF1.4に比べて約1段、F1.8に比べて約2段の光を取り込めます。これにより、暗い室内や夜間でもISO感度を上げずに済むため、ノイズの少ないクリアな画像が得られます。手ブレ補正が搭載されていないレンズですが、開放F1.2の明るさでシャッタースピードを稼ぐことが、実質的な手ブレ抑制効果につながります。
    • ファインダー像の明るさ: 光学ファインダーを持つ一眼レフとは異なり、ミラーレスカメラの電子ビューファインダー(EVF)は、レンズの明るさに関わらず一定の明るさで見えるのが一般的です。しかし、AF性能やフレーミングの正確性を高める上で、より多くの光がセンサーに届くことは有利に働きます。また、ライブビュー撮影時にも、明るいファインダー像はピントの山を掴みやすく、快適な撮影をサポートします。

2.2. AF性能:高速・高精度なUSMによる快適なピント合わせ

RF50mm F1.2L USMは、キヤノンの誇るリングタイプの超音波モーター(USM)を搭載しています。

  • リングUSM: 従来のマイクロUSMなどと比較して、圧倒的な高速性と高精度、そして静粛性を両立するAF駆動方式です。大型のトルクを発生させることが可能で、大口径レンズの重いフォーカス群を迅速かつ正確に動かすことができます。
  • 高速・高精度AF: RFシステムとリングUSMの組み合わせにより、RF50mm F1.2L USMは非常に高速かつ高精度なAFを実現しています。特に、EOS Rシリーズが搭載する高性能な瞳AFや顔追従AFとの連携は抜群です。開放F1.2という極めて浅い被写界深度において、わずかなピントのズレも致命的となりますが、このレンズとカメラの組み合わせは、ピンポイントで被写体の瞳にピントを合わせ続けることができます。
  • 静粛性: リングUSMはその駆動音が非常に静かであることも特徴です。これにより、静寂が求められるシーンでの撮影や、動画撮影時にもAF駆動音が気になることがありません。
  • フルタイムマニュアルフォーカス: AF作動中でも、AF/MFスイッチを切り替えることなく、フォーカスリングを回すだけで即座にマニュアルフォーカスによるピント微調整が可能です。これは、特に開放F1.2でのシビアなピント合わせを行う際に非常に便利な機能です。

2.3. 操作性と信頼性:Lレンズにふさわしいビルドクオリティ

RF50mm F1.2L USMは、キヤノンの最高級レンズラインである「Lレンズ」に属しており、その操作性と信頼性も高い水準にあります。

  • コントロールリング: RFレンズの大きな特徴の一つであるコントロールリングを搭載しています。このリングには、絞り値、シャッタースピード、ISO感度、露出補正など、様々な機能を割り当てることができます。撮影中にファインダーから目を離すことなく、直感的に設定を変更できるため、撮影のリズムを崩すことなく集中できます。心地よいクリック感があり、誤操作を防ぎつつ確実な操作が可能です(設定でクリック感をなくすことも可能)。
  • レンズ鏡筒の質感・デザイン: Lレンズらしい、堅牢で質感の高い金属鏡筒を採用しています。マットなブラック仕上げは高級感があり、RFボディとのデザイン的な親和性も高いです。鏡筒のデザインはシンプルながらも洗練されており、持つ喜びを感じさせます。
  • 防塵防滴構造: マウント部、スイッチ部、フォーカスリング部に防塵防滴に配慮したシーリング処理が施されています。これにより、雨天時やホコリの多い場所といった厳しい撮影環境下でも安心して撮影を続けることができます。ただし、完全防水ではありませんので、過度な水濡れは避ける必要があります。
  • フィルター径: 77mm径を採用しています。これは多くのレンズで採用されている一般的なフィルター径であるため、PLフィルターやNDフィルターなどを共有しやすいという利点があります。
  • 質量・サイズ: 大口径F1.2というスペックのため、質量は約950g、最大径は約89.8mm、長さは約108mmと、それなりの大きさ・重さがあります。特にEFマウントのEF50mm F1.2L USM(約580g)と比較すると大幅に重量が増しています。しかし、これはRFマウントの光学設計の恩恵(後玉を大きく、イメージセンサーに近づける設計)によるものであり、そのトレードオフとして得られる圧倒的な描写性能を考えれば納得できる範囲と言えるでしょう。ボディとのバランスは、EOS Rシリーズの大型ボディ(R5, R6, R3など)であれば良好ですが、小型ボディ(RP, R10など)ではややフロントヘビーに感じるかもしれません。
  • Lレンズとしての品質: Lレンズは、キヤノンの厳しい品質基準に基づいて製造されています。光学性能だけでなく、耐久性、耐候性、操作感など、プロフェッショナルユースに耐えうる高い信頼性が確保されています。RF50mm F1.2L USMも例外ではなく、長く安心して使い続けられるレンズです。

3. 驚異的な描写性能の深掘り

RF50mm F1.2L USMが「驚異的」と称される所以は、その描写性能にあります。特に開放F1.2での描写は、他のレンズでは決して得られない独自の魅力を持っています。ここでは、その描写性能をさらに詳しく掘り下げていきましょう。

3.1. 開放F1.2での描写

このレンズの真価は、開放F1.2でこそ発揮されます。

  • 中央部の解像度: 一般的に、大口径レンズは開放絞りでは収差の影響を受けやすく、中央部でも若干甘くなる傾向があります。しかし、RF50mm F1.2L USMは、その常識を覆します。開放F1.2から、画面中央部は驚くほどシャープで解像感が高い描写を見せます。被写体の細部まで克明に描き出し、髪の毛一本一本や肌の質感なども立体的に描写されます。これは、贅沢な特殊レンズの採用と、RFマウントのポテンシャルを活かした光学設計の賜物です。
  • 周辺部の解像度: 開放F1.2では、画面の隅に行くほど像の流れや解像度の低下が見られるのが一般的です。RF50mm F1.2L USMは、中央部ほどの圧倒的なシャープネスではないものの、周辺部でも比較的良好な解像度を維持しています。非球面レンズの効果により、コマ収差などの影響が抑えられ、画面全体として破綻のない描写を実現しています。もちろん、周辺光量落ち(ビネット)は発生しますが、これは大口径レンズの特性であり、特に開放F1.2では顕著に現れます。しかし、この周辺光量落ちは、被写体を画面中央に浮かび上がらせ、雰囲気を高める効果として捉えることもできます。デジタル補正で簡単に修正することも可能です。
  • 軸上色収差・倍率色収差の抑制: 大口径レンズ、特に明るい単焦点レンズで最も問題となりやすいのが色収差です。ピント面の前後に発生する軸上色収差は、被写体の輪郭などにマゼンタやグリーンの色がにじむ現象で、開放絞りでは避けられない宿命とも言えます。RF50mm F1.2L USMは、UDレンズを効果的に配置することで、この軸上色収差を非常に高いレベルで抑制しています。ピントの合った箇所だけでなく、ボケの前後においても色の滲みが少なく、クリアな描写が得られます。倍率色収差も、画面周辺部で極めて良好に補正されており、色のにじみがほとんど見られません。
  • コントラスト、ヌケ感: 開放F1.2という厳しい条件下でありながら、コントラストが高く、クリアな描写が得られます。光を適切に透過させ、不要な反射を抑えるASC(Air Sphere Coating)などの先進的なコーティング技術が貢献しています。これにより、逆光に近い状況でも被写体が白っぽくならず、階調豊かな描写が可能です。

3.2. ボケ描写

RF50mm F1.2L USMのもう一つの最大の魅力は、その美しいボケ描写です。

  • 圧倒的なボケ量: F1.2という明るさによる、被写界深度の極めて浅い世界は、標準レンズとは思えないほどの大きなボケを生み出します。背景は完全に整理され、主題である被写体を際立たせることができます。特に、被写体との距離が近いほどボケは大きくなり、背景が抽象的な光の玉や色彩のグラデーションへと変化します。
  • ボケの質: RF50mm F1.2L USMのボケは、非常に滑らかで美しいと評価されています。「とろけるような」「クリーミーな」と形容されることが多く、背景の硬い部分や複雑な要素を柔らかく溶かし込んでくれます。これは、収差補正が適切に行われていることに加え、9枚羽根の円形絞りを採用していることによるものです。絞り羽根の枚数が多いほど、絞った際にも円形に近いボケが得られますが、RF50mm F1.2L USMは開放F1.2の時から美しい円形のボケを生み出すように設計されています(ただし、画面周辺部では口径食により若干レモン型になる傾向はあります)。
  • 二線ボケの抑制: 背景の硬い要素(枝や柵など)が二重線のようにボケてしまう「二線ボケ」は、ボケの質を損なう嫌われる現象の一つです。RF50mm F1.2L USMは、この二線ボケが極めて少なく、背景が自然で滑らかに描写されます。
  • 口径食: 画面の中心から離れるにつれて、ボケの形が円形からレモン型に変形する現象を口径食と呼びます。RF50mm F1.2L USMも、開放F1.2では画面の隅の方で若干の口径食が見られますが、他の大口径レンズと比較しても比較的良好に抑えられている方です。絞りを少し絞る(F1.4やF1.8など)ことで、口径食はすぐに目立たなくなります。
  • ボケとピント面の分離感: 圧倒的なボケ量と開放からの高い解像性能によって、ピントの合った被写体とボケた背景との間に強烈な分離感が生まれます。これにより、被写体がまるで浮き上がってくるかのような、強い立体感を持った写真表現が可能になります。

3.3. 絞ったときの描写

F1.2の開放描写ばかりが注目されがちですが、RF50mm F1.2L USMは絞ったときの描写性能も非常に優れています。

  • 画面全体の均一性: F2.8やF4といった絞り値まで絞ると、画面中央部はさらにシャープネスが増し、周辺部の解像度やコントラストも向上します。画面全体が驚くほど均一でシャープな描写となり、風景や建築物など、画面全体にピントを合わせたいシーンでも安心して使用できます。
  • 小絞り時の回折現象: 絞りをF8やF11、それ以上に絞っていくと、光の回折現象により解像度が低下する「小絞りボケ」が発生します。これはレンズの光学的な限界ですが、RF50mm F1.2L USMは比較的高い解像度を維持できる傾向にあります。ただし、高画素機を使用する場合は、回折の影響が出やすくなるため、絞りすぎには注意が必要です。
  • 光芒: 夜景撮影などで強い点光源を画面に入れると、絞り羽根の枚数に応じた筋状の光芒が発生します。RF50mm F1.2L USMは9枚羽根の円形絞りですので、絞ると18本の美しい光芒が得られます。

3.4. 逆光耐性

キヤノンの最新レンズに採用されているASCなどのコーティング技術により、RF50mm F1.2L USMは非常に高い逆光耐性を誇ります。

  • フレア・ゴーストの抑制: 太陽などの強い光源を画面内に入れても、フレア(画面全体が白っぽくなる現象)やゴースト(光源の形をした光の玉や筋)の発生が極めて少なく、コントラストの低下も最小限に抑えられています。これにより、逆光を活かしたドラマチックな表現や、光源を写し込む作画にも積極的に挑戦できます。
  • ヌケの良い描写: 光源が画面のすぐ外にあるような厳しい状況でも、画面全体のヌケが良く、クリアな描写が得られます。

3.5. 被写体別の描写特性

  • ポートレート描写: このレンズは、ポートレート撮影において真価を発揮します。開放F1.2で撮影すれば、被写体の瞳に鋭くピントを合わせつつ、髪の毛や肌の輪郭は自然にボケ始め、背景は完全に抽象化されます。これにより、被写体が画面から浮き上がるような強烈な立体感と、夢のような美しい背景ボケを得られます。肌の質感描写も非常に滑らかで、モデルの魅力を最大限に引き出します。F1.4、F1.8、F2.8と少し絞ると、被写界深度が増し、ピント合わせの難易度が下がりつつも、十分なボケ量と高いシャープネスを両立した描写が得られます。
  • 風景・スナップ描写: 絞って使用すれば、風景やスナップ撮影においても優れた描写を発揮します。画面全体で均一性の高いシャープな描写は、風景の細部まで克明に描き出します。50mmという焦点距離は、見たままを切り取るような自然な構図を作りやすく、スナップ撮影にも最適です。開放F1.2を活かして、手前の小物にピントを合わせ、奥の風景を大きくぼかすといった表現も可能です。
  • テーブルフォト・物撮り: 最短撮影距離は0.4mです。テーブルフォトや小物の撮影では、被写体に寄ることでF1.2のボケ量を最大限に活かすことができます。ピント面のシャープネスと、とろけるようなボケの対比により、被写体を印象的に描写できます。
  • 動画撮影における描写: RF50mm F1.2L USMは、動画撮影においても非常に強力なツールとなります。開放F1.2の明るさは、低照度下での撮影を可能にし、ISO感度の上昇を抑えることでノイズの少ないクリアな映像を得られます。また、その圧倒的なボケ量は、被写体を際立たせたシネマティックな映像表現を可能にします。滑らかで静粛なAFは、動画撮影中のピント合わせも快適に行えます。

4. RF50mm F1.2L USMの使いこなし

RF50mm F1.2L USMは、その高性能ゆえに使いこなすためのいくつかのポイントがあります。特に開放F1.2での撮影は、浅い被写界深度との戦いでもあります。

4.1. 被写体別の最適な使い方

  • ポートレート: 開放F1.2で撮影する場合は、被写体との距離、カメラの角度、背景の要素(光源、色、距離)などを慎重に選びましょう。背景に玉ボケになりやすい光源や、色彩豊かな要素を配置すると、より幻想的な描写が得られます。瞳AFを常にオンにして、確実に瞳にピントが合っているか確認することが重要です。全身やバストアップではF1.2〜F2.0、アップではF2.0〜F2.8など、写したい範囲に応じて絞りを調整すると、ボケ量とピントが合った範囲のバランスが取りやすくなります。
  • スナップ: 50mmという焦点距離は、街角のスナップに最適です。F8程度まで絞ってパンフォーカス気味に撮影するもよし、開放F1.2で手前の特定の要素や人物にピントを合わせ、背景を大胆にぼかすもよし。様々な表現が可能です。コントロールリングに露出補正を割り当てておくと、素早い露出調整が可能です。
  • テーブルフォト・物撮り: 最短撮影距離の0.4mまで寄って、F1.2のボケを最大限に活用しましょう。テーブルの質感や背景を大きくぼかすことで、主題である料理や小物を際立たせることができます。ライティングと組み合わせることで、よりドラマチックな描写が可能です。
  • 夜景・低照度撮影: 開放F1.2は、夜景や暗い室内など、光量が少ないシーンで絶大な威力を発揮します。ISO感度を上げずに済むため、ノイズを抑え、クリアで高画質な写真を撮ることができます。手ブレを防ぐために、シャッタースピードをしっかり稼ぐことができるのも大きな利点です。点光源を絞って写し込めば、美しい18本の光芒が得られます。

4.2. ピント合わせの難しさ(F1.2)と対策

開放F1.2の被写界深度は極めて薄く、数cm、場合によっては数mmのズレがピンボケにつながります。しかし、現代のミラーレスカメラの高性能なAFシステムと組み合わせることで、この難しさは大きく軽減されます。

  • 瞳AF、顔追従AFの重要性: EOS Rシリーズの高いAF性能、特に瞳AFや顔追従AFは、F1.2でのポートレート撮影において必須と言えるほど重要です。カメラが自動で被写体の瞳を認識し、そこに正確にピントを合わせ続けてくれるため、フレーミングに集中できます。複数の人物がいる場合も、タッチ操作などで簡単にピントを合わせたい人物を選択できます。
  • 拡大表示、ピーキングの活用: AFだけでなく、マニュアルフォーカスで撮影する場合や、よりシビアなピント合わせが必要な場合は、カメラの拡大表示機能やピーキング機能を活用しましょう。画面を拡大してピントの山を正確に確認したり、ピーキングでピントが合っている箇所を色付きで表示させたりすることで、目視でのピント合わせ精度が格段に向上します。
  • ボディ内手ブレ補正: RF50mm F1.2L USM自体にはレンズ内手ブレ補正(IS)は搭載されていません。しかし、EOS R5, R6, R3などのボディ内手ブレ補正(IBIS)搭載機種と組み合わせることで、手ブレによるピンボケを効果的に抑制できます。特に低速シャッターでの撮影や、ピント位置のわずかなズレを防ぐ上で、ボディ内ISは非常に有効です。IBIS非搭載のボディ(R, RPなど)で使用する場合は、より一層手ブレに注意が必要です。

4.3. コントロールリングの活用例

コントロールリングには、様々な機能を割り当てられますが、特に便利なのは以下の設定です。

  • 露出補正: 最も一般的な設定の一つです。ファインダーを覗いたまま、素早く露出を調整できます。特に刻々と光が変化する状況や、意図的に露出を調整したいシーンで威力を発揮します。
  • 絞り値: マニュアル露出モードや絞り優先AEモードで、コントロールリングを回すだけで絞り値を変更できます。ボケ量を調整したい場合に便利です。
  • ISO感度: ISO感度を頻繁に変更する場合に便利です。

自分の撮影スタイルに合わせて最適な機能を割り当て、使いこなすことで、よりスムーズで直感的な撮影が可能になります。

4.4. レンズフィルター

77mm径のレンズフィルターが使用可能です。

  • 保護フィルター: 高価なレンズですので、前玉の保護のためにクリアな保護フィルターを装着しておくと安心です。ただし、安価なフィルターは描写性能に悪影響を与える可能性もあるため、信頼できるメーカーの高品質なフィルターを選びましょう。
  • PLフィルター: 空の色を濃くしたり、水面やガラスの反射を除去したりする際に使用します。風景やスナップ撮影で活躍します。
  • NDフィルター: 光量を減らすフィルターです。日中の明るい場所でも開放F1.2で撮影したい場合や、動画撮影で適切なシャッタースピード(フレームレートの倍数)を維持したい場合に必須となります。可変NDフィルターも便利です。

5. 他の50mmレンズとの比較

RF50mm F1.2L USMは、キヤノンの50mmレンズラインナップの中でも最高峰に位置づけられます。他のレンズと比較することで、このレンズの立ち位置と価値がより明確になります。

5.1. EF50mm F1.2L USMとの比較

キヤノンの一眼レフシステムにおけるフラッグシップ50mm単焦点でした。RFマウントに移行する際、最も比較される対象の一つです。

  • 光学性能・描写: EF50mm F1.2L USMも開放F1.2の明るさを持ち、美しいボケで人気を博しました。しかし、開放絞りでの描写はやや甘く、特に画面周辺部や色収差の補正において、RF50mm F1.2L USMには及びません。RF50mm F1.2L USMは、開放から中央部の圧倒的なシャープネス、周辺部まで良好な解像度、そして色収差の極めて少ない描写を実現しており、光学性能はEF版から大きく進化しています。
  • AF性能: EF50mm F1.2L USMもUSMを搭載していますが、フォーカス群の重量や駆動方式の違いにより、RF版ほどの高速・高精度なAFは得られません。特に動体追従性や、高画素機でのシビアなピント合わせにおいて、RF版が圧倒的に優位です。
  • サイズ・質量: RF50mm F1.2L USM(約950g)は、EF50mm F1.2L USM(約580g)よりも大幅に重く、サイズも大きくなっています。これは、RFマウントの光学設計思想(後玉を大きくする)によるものであり、描写性能向上のためのトレードオフと言えます。
  • 価格: RF50mm F1.2L USMは、EF50mm F1.2L USMと比較して、発売当初の価格、現在の市場価格ともに高価です。

結論として、RF50mm F1.2L USMは、EF50mm F1.2L USMの後継というよりは、RFマウントの新しい設計思想に基づいて、性能を大幅に向上させた、全く別次元のレンズと考えるべきです。

5.2. RF50mm F1.8 STMとの比較

RFマウントにおける、もう一つの標準単焦点レンズです。通称「撒き餌レンズ」と呼ばれ、手頃な価格とコンパクトさが魅力です。

  • 光学性能・描写: F1.8という明るさもボケを楽しむには十分ですが、F1.2のボケ量には及びません。描写性能も、価格を考えれば非常に優秀ですが、RF50mm F1.2L USMのような開放からの圧倒的なシャープネスや、色収差・ボケの質の高さには及びません。F1.2LはLレンズらしい描写の「粘り」や「空気感」のようなものが感じられます。
  • AF性能: STM(ステッピングモーター)を搭載しており、静粛性は高いですが、リングUSMのRF50mm F1.2L USMほどの高速性や追従性はありません。
  • サイズ・質量: RF50mm F1.8 STMは、約160gという驚異的な軽さとコンパクトさが最大の魅力です。携帯性は圧倒的に優れています。RF50mm F1.2L USMとは対極に位置するレンズと言えます。
  • 価格: RF50mm F1.8 STMは非常に安価で、気軽に手に入れられる価格帯です。RF50mm F1.2L USMは、その数倍の価格となります。

RF50mm F1.8 STMは、気軽に持ち歩いて写真を楽しむためのレンズであり、RF50mm F1.2L USMは、最高の描写性能を追求し、プロフェッショナルワークにも耐えうるフラッグシップレンズです。どちらが良い・悪いではなく、用途や予算に応じて選択すべきレンズです。

5.3. 他のRF L単焦点レンズとの関係

RFシステムには、RF85mm F1.2L USMやRF85mm F1.2L USM DSといった、さらにF1.2の大口径単焦点レンズが存在します。

  • RF85mm F1.2L USM: ポートレートレンズとして絶大な人気を誇るレンズです。50mmよりも焦点距離が長いため、より大きく、より圧縮されたボケが得られます。描写性能はRF50mm F1.2L USMと同等、あるいはそれ以上の高次元なものです。描写特性は似ていますが、焦点距離によるパースペクティブの違いが大きな選択基準となります。
  • RF85mm F1.2L USM DS: RF85mm F1.2L USMに、ボケをより滑らかにするDS(Defocus Smoothing)コーティングを施したモデルです。ボケの質に究極を求める場合に選択肢となります。

RF50mm F1.2L USMは、これらの85mm F1.2Lレンズと並んで、RFシステムのフラッグシップ単焦点ラインナップを形成しています。標準焦点距離でF1.2の描写を得たい場合に、RF50mm F1.2L USMが最適な選択肢となります。

6. 購入を検討している人へ

RF50mm F1.2L USMは、決して安価なレンズではありません。しかし、その価格に見合うだけの価値がこのレンズにはあります。どのような人におすすめできるレンズなのか、購入を検討する上で考慮すべき点について考えてみましょう。

  • このレンズはどんな人におすすめか?

    • 最高の描写性能を求める写真家: 開放F1.2から妥協のないシャープネスと美しいボケ描写を両立した描写性能は、他のレンズでは得られません。画質に一切妥協したくないという写真家にとって、間違いなく満足できる一本です。
    • ポートレート撮影を極めたい人: 圧倒的なボケ量と立体感のある描写は、ポートレートにおいて被写体をドラマチックに描き出す強力な武器となります。特にモデルや被写体の魅力を最大限に引き出したいと考える人におすすめです。
    • 低照度下での撮影が多い人: F1.2という明るさは、暗い場所での手持ち撮影を可能にし、ノイズの少ないクリアな画像を得られます。イベント、ライブ、室内ポートレート、夜景スナップなど、光量の少ないシーンでの撮影が多い人にとって大きなメリットとなります。
    • 表現の幅を広げたい人: 標準レンズとは思えないほどの浅い被写界深度が生み出す独自の表現は、写真の可能性を大きく広げます。今までになかった視点で被写体を捉えたい、新しい表現に挑戦したいというクリエイターにおすすめです。
    • RFシステムを最大限に活かしたい人: このレンズは、RFマウントのポテンシャルを象徴する一本です。EOS Rシリーズの高いAF性能や操作性と組み合わせることで、その真価を発揮します。
  • 価格に見合う価値があるか?

    • RF50mm F1.2L USMは、非常に高価なレンズです。しかし、その価格は単にF1.2という明るさだけでなく、贅沢な光学設計、最新のコーティング技術、高精度なAF、そしてLレンズとしての高い信頼性など、全てを含んだものです。開放F1.2から実用になる描写性能、そして他のレンズでは代替できない独特の描写は、プロフェッショナルユースはもちろん、アマチュアであっても写真表現を深く追求したいと考える人にとっては、十分価格に見合う、あるいはそれ以上の価値を提供します。
    • ただし、単に明るいレンズが欲しいだけであれば、RF50mm F1.8 STMや、将来的に登場するかもしれないF1.4クラスのレンズなども選択肢に入ってきます。RF50mm F1.2L USMの価値を理解し、その描写を活かせるシーンが自分の撮影スタイルにあるかどうかをよく検討することが重要です。
  • RFマウントシステムにおける位置づけ:

    • RF50mm F1.2L USMは、RFシステムの「顔」とも言える存在です。このレンズの登場は、RFマウントが従来のEFマウントを超越する光学性能を実現できることを世界に示しました。それは、RFシステムで写真表現の可能性をさらに広げようとするキヤノンの決意の表れでもあります。RFシステムを本格的に運用していく上で、いずれ手に入れたいレンズとして、多くのRFユーザーの憧れの的となっています。
  • 購入前に確認すべき点:

    • 予算: 高価なレンズですので、予算が許すかどうかが最も現実的な問題です。
    • 撮影スタイル: どのような被写体を、どのような状況で撮影することが多いか。F1.2の明るさやボケを活かせるシーンがどれだけあるか。
    • 他のレンズとのバランス: すでに他のレンズを持っている場合、自分のレンズラインナップの中でRF50mm F1.2L USMがどのような役割を果たすか。他の焦点距離のLレンズや、ズームレンズとの組み合わせなどを考慮しましょう。
    • サイズと質量: 約950gという質量は、ボディによってはかなり重く感じられます。実際に手に取って、自分のボディとのバランスや、長時間撮影できるかなどを確認しておくと良いでしょう。

もしこれらの点を検討し、このレンズの持つ独自の魅力に強く惹かれるのであれば、それはきっとあなたにとって素晴らしい投資となるでしょう。

7. まとめ

キヤノン RF50mm F1.2L USMは、単なる大口径標準単焦点レンズではありません。それは、RFマウントの新しい可能性を示し、写真表現の領域を切り拓くための、キヤノンの技術と情熱の結晶です。

開放F1.2という圧倒的な明るさがもたらす未体験の解像度と、とろけるような美しいボケ。特殊レンズを贅沢に採用した光学設計により、開放から画面全域で驚異的なシャープネスと収差の抑制を実現し、従来の常識を覆す描写性能を誇ります。リングUSMによる高速・高精度AFは、特に薄い被写界深度での撮影を強力にサポートし、高画素機や高性能な瞳AFとの組み合わせで、被写体を意のままに捉えることができます。

Lレンズにふさわしい堅牢な鏡筒構造と防塵防滴性能は、厳しい撮影環境下でも安心して使用できる高い信頼性を提供します。コントロールリングの搭載は、新しい操作体験をもたらし、撮影効率と集中力を高めます。

ポートレートにおける被写体の立体感、低照度下でのノイズの少ない描写、背景を絵画のように変えるボケ味。RF50mm F1.2L USMは、これらの特徴を最大限に活かすことで、写真家の創造性を刺激し、見る者の心を揺さぶるような作品を生み出す力を秘めています。

決して手軽に手に入れられるレンズではありませんが、その価格に見合う、いやそれ以上の価値を提供してくれることは間違いありません。このレンズと共にシャッターを切るたびに、あなたはRFシステムの、そしてキヤノンの光学技術の凄みを実感することでしょう。RF50mm F1.2L USMは、あなたの写真表現をネクストレベルへと引き上げてくれる、かけがえのない一本となるはずです。

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