はい、承知いたしました。Ubuntuの起動用USBディスクの作成方法と使用方法について、詳細な説明を含む記事を約5000語で記述し、ここに直接表示します。
Ubuntu USB 起動ディスクの作り方と使い方:完全ガイド
はじめに
現代のコンピューティングにおいて、オペレーティングシステム(OS)のインストールやトラブルシューティングは避けられない作業です。中でも、オープンソースの代表格であるUbuntuは、デスクトップからサーバー、クラウドまで幅広く利用されており、その導入やメンテナンスのために「起動ディスク」を作成・使用する機会は非常に多いと言えます。
起動ディスクとは、OSのインストーラーや、OSがメモリ上で動作する「ライブ環境」を含んだメディアのことです。かつてはCDやDVDが主流でしたが、現在ではより大容量で高速なUSBメモリが一般的になりました。Ubuntuの起動用USBディスクを作成することで、以下のような多様な目的を達成できます。
- 新規インストール: まっさらなPCにUbuntuをインストールする。
- 既存システムの修復: 起動しなくなったシステムをUSBから起動して修復作業を行う。
- データ復旧: 内蔵ストレージからデータをバックアップする。
- ライブ環境の試用: ハードディスクに何も変更を加えることなく、Ubuntuを試用する。
- ポータブルなOS環境: USBメモリから直接Ubuntuを起動し、どこでも使い慣れた環境を利用する(永続化機能を利用する場合)。
- パーティション操作: ディスクのパーティション構成を変更する。
この記事では、Ubuntuの起動用USBディスクを、Windows、macOS、Linuxといった主要なOS上で作成する方法を網羅的に解説します。さらに、作成した起動ディスクを使ってPCを起動する方法、そしてライブ環境で何ができるのかについても詳しく説明します。約5000語を費やし、初心者の方でも安心して作業を進められるよう、各ステップを詳細に、そしてなぜその作業が必要なのかといった背景知識も交えながら解説していきます。
さあ、Ubuntuの世界への扉を開く鍵となる、起動用USBディスクを作成する旅を始めましょう。
必要なもの
起動用USBディスクを作成するために必要なものを準備しましょう。
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USBメモリ
- 容量: Ubuntuデスクトップ版のISOイメージファイルは、通常4GB以上あります。そのため、8GB以上の容量を持つUSBメモリを推奨します。最近のUbuntuはより多くのアプリケーションを含むため、将来性を考えると16GB以上のものを用意しても良いでしょう。
- 種類: USB 2.0でも機能しますが、書き込み速度や起動速度を考えると、USB 3.0以降の高速なものが望ましいです。
- 注意点: USBメモリ上の既存のデータは、起動ディスクの作成過程ですべて消去されます。必要なデータは事前にバックアップしておいてください。また、信頼性の高いメーカーの製品を使用することをお勧めします。
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UbuntuのISOイメージファイル
- ISOイメージファイルは、OSのインストールメディアの内容を一つにまとめたファイルです。これをUSBメモリに「書き込む」ことで、起動可能なUSBディスクが完成します。
- どこからダウンロードするか: Ubuntuの公式ウェブサイト(https://ubuntu.com/download)からダウンロードできます。
- どのバージョンが良いか:
- LTS (Long Term Support) 版: 長期サポート版と呼ばれ、5年間セキュリティアップデートが提供されます。安定性を重視する場合や、長期的に使用するインストール目的の場合はLTS版がお勧めです。通常、リリース番号の後に「LTS」と記載されています(例: Ubuntu 22.04 LTS)。
- 通常版: 半年ごとにリリースされ、9ヶ月間サポートされます。最新の機能やソフトウェアを利用したい場合に向いています。
- 用途に応じた選択: ライブ環境で一時的に試用したり、特定のハードウェアの対応を確認したりするだけであれば、最新の通常版でも問題ありません。インストールを検討している場合は、LTS版を選択するのが一般的です。
- ダウンロード方法: 公式サイトのダウンロードページから、目的のバージョンのデスクトップ版を選択してダウンロードします。ISOファイルはサイズが大きいため(4GB以上)、安定したインターネット接続が必要です。
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ISOイメージ書き込みツール
- ISOイメージファイルをUSBメモリに正しく書き込み、起動可能にするための専用ツールが必要です。使用しているOSによって推奨されるツールが異なります。後述の「ISOイメージ書き込みツールの選択と準備」のセクションで詳しく解説します。
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インターネット接続
- UbuntuのISOイメージファイルをダウンロードするために必要です。また、ライブ環境でネットワーク機能を確認したり、インストール時に追加のパッケージをダウンロードしたりするためにも、利用可能なインターネット接続があると便利です。
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対象となるPC
- 作成した起動ディスクを使用するPCです。このPCのBIOS/UEFI設定を変更して、USBメモリから起動できるようにする必要があります。PCのマニュアルを参照するか、起動時に表示されるメッセージ(「Press F2 to enter Setup」「Press F12 for Boot Menu」など)を確認して、設定画面への入り方や起動デバイスの選択方法を事前に把握しておくとスムーズです。
これらのものが準備できたら、次のステップに進みましょう。
Ubuntu ISOイメージのダウンロード
起動用USBディスクを作成する最初のステップは、UbuntuのISOイメージファイルを入手することです。公式ウェブサイトから安全にダウンロードしましょう。
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Ubuntu公式サイトにアクセスする:
ウェブブラウザを開き、https://ubuntu.com/download にアクセスします。 -
ダウンロードするバージョンを選択する:
デスクトップ版(Desktop)のダウンロードページが表示されます。通常、最新のLTS版が推奨されています。他に通常版や古いLTS版、その他のフレーバー(Kubuntu, Xubuntuなど)も選択できますが、この記事では標準のUbuntu Desktopを前提に進めます。- 最新のLTS版のダウンロードボタンをクリックします。例えば、Ubuntu 22.04 LTSであれば、「Download Ubuntu 22.04 LTS」のようなボタンが表示されています。
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ダウンロードが開始されるのを待つ:
クリックすると、ISOファイルのダウンロードが自動的に開始されます。ファイルのサイズが大きい(4GB以上)ため、ダウンロードには時間がかかる場合があります。インターネット接続の速度によって所要時間は異なります。ダウンロード中はブラウザを閉じないようにしてください。 -
ミラーサイトからのダウンロード(オプション):
公式サイトからのダウンロードが遅い場合や、ダウンロードが中断されてしまう場合は、ミラーサイトを利用することもできます。ダウンロードページにミラーサイトへのリンクが提供されていることがあります。お住まいの地域に近いミラーサイトを選択することで、ダウンロード速度が改善されることがあります。 -
ダウンロードしたファイルの確認:
ダウンロードが完了したら、ファイル名とサイズが正しいか確認しましょう。例えば、Ubuntu 22.04.3 LTSのデスクトップ版であれば、「ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso」のようなファイル名になっているはずです(バージョンによってファイル名は異なります)。サイズも公式で公表されているものと大幅に違わないか確認してください。厳密にはダウンロードしたファイルのハッシュ値(MD5, SHA256など)を計算し、公式サイトで公開されているハッシュ値と一致するか確認することで、ファイルが破損していないか、改ざんされていないかを確認できますが、一般的な使用ではファイル名とサイズの一致だけでも十分でしょう。
ISOイメージファイルは、PCの「ダウンロード」フォルダなど、どこに保存したか分かりやすい場所に置いておきましょう。
ISOイメージ書き込みツールの選択と準備
ダウンロードしたISOイメージファイルをUSBメモリに書き込み、起動可能にするためには、専用のツールが必要です。使用しているOSによって、利用できるツールや推奨されるツールが異なります。ここでは、主要なOSごとの代表的なツールを紹介し、それぞれの特徴と準備方法を説明します。
Windows
Windows上でUbuntuの起動用USBディスクを作成するためのツールはいくつかありますが、特に人気があり機能も豊富なのがRufusと、よりシンプルなEtcher (balenaEtcher) です。
Rufus
- 特徴: Windows上で起動可能なUSBドライブを作成するための非常に強力で多機能なツールです。UEFIとBIOSの両方に対応し、パーティションスキーム(MBR/GPT)の選択、ファイルシステムの指定、さらにはUbuntuのライブ環境で設定やファイルを保存できる「永続化領域(Persistent Storage)」の作成にも対応しています。動作が高速で、多くの起動ディスク作成に関する問題を解決できます。Windows専用のツールです。
- ダウンロード方法: Rufusの公式サイト(https://rufus.ie/)にアクセスし、最新版のポータブル版またはインストーラー版をダウンロードします。ポータブル版はダウンロードした実行ファイルをそのまま起動でき、インストール不要で手軽です。
- 準備: ダウンロードしたexeファイルをダブルクリックして起動します。インストール版の場合は指示に従ってインストールしてください。
Etcher (balenaEtcher)
- 特徴: シンプルで分かりやすいユーザーインターフェースが特徴のツールです。ISOイメージ、SDカードイメージ、Zipファイルなど、さまざまなイメージファイルを簡単にUSBドライブやSDカードに書き込めます。Windows、macOS、Linuxに対応したクロスプラットフォームツールです。書き込み後に検証を行う機能もあり、信頼性が高いです。Rufusほど多機能ではありませんが、起動ディスクを作成する基本的な用途には十分です。
- ダウンロード方法: balenaEtcherの公式サイト(https://www.balena.io/etcher/)にアクセスし、使用しているWindowsのバージョン(64-bitなど)に対応したインストーラーまたはポータブル版をダウンロードします。
- 準備: インストーラー版の場合はダウンロードしたexeファイルを実行してインストールします。ポータブル版の場合はダウンロードしたZipファイルを解凍し、解凍されたフォルダ内の実行ファイルをダブルクリックして起動します。
Universal USB Installer (UUI)
- 特徴: 様々なLinuxディストリビューションの起動用USBを作成できるツールです。Persistent Storageの作成にも対応しています。RufusやEtcherほど一般的ではありませんが、かつてはよく利用されていました。
- ダウンロード方法: PendriveLinux.comなどのサイトからダウンロードできます。
- 準備: ダウンロードしたexeファイルを起動します。
Windowsユーザーへの推奨: 多機能でUEFI/BIOS対応が柔軟なRufusが最も推奨されます。シンプルさを求めるならEtcherも良い選択肢です。
macOS
macOS上でUbuntuの起動用USBディスクを作成する場合、Etcher (balenaEtcher) が最も簡単で推奨される方法です。上級者向けには、macOSに標準搭載されているdd
コマンドを使用する方法もあります。
Etcher (balenaEtcher)
- 特徴: Windowsのセクションと同様、macOS版もシンプルで使いやすいツールです。
- ダウンロード方法: balenaEtcherの公式サイト(https://www.balena.io/etcher/)にアクセスし、macOS版のインストーラー (.dmgファイル) をダウンロードします。
- 準備: ダウンロードした.dmgファイルをダブルクリックして開き、表示されるEtcherアイコンをApplicationsフォルダにドラッグ&ドロップしてインストールします。LaunchpadまたはApplicationsフォルダからEtcherを起動します。
ddコマンド (上級者向け)
- 特徴: macOSのターミナル(コマンドラインインターフェース)を使用して、イメージファイルを直接ストレージデバイスに書き込むコマンドです。非常に強力ですが、デバイス名を間違えるとMacのハードディスクの内容を消去してしまう可能性があるため、使用には細心の注意が必要です。GUIツールよりも高速な場合があります。
- 準備: アプリケーションフォルダの「ユーティリティ」フォルダにある「ターミナル」を起動します。
macOSユーザーへの推奨: 安全かつ簡単なEtcherを強く推奨します。dd
コマンドは、コマンドラインに慣れているユーザー向けです。
Linux (Ubuntuを含む)
Linuxディストリビューション上でも、Ubuntuの起動用USBディスクを作成できます。Ubuntuには標準ツールが用意されていますし、Etcherやdd
コマンドも利用できます。
Startup Disk Creator (Ubuntu標準ツール)
- 特徴: Ubuntuに標準で搭載されている起動ディスク作成ツールです。シンプルで使いやすいインターフェースを持っています。Persistent Storageの作成にも対応しています。
- 準備: Ubuntuがインストールされた環境であれば、アプリケーションメニューから「Startup Disk Creator」または「起動ディスクの作成」を探して起動するだけです。インストールされていない場合は、Synapticパッケージマネージャーや
apt
コマンド (sudo apt install usb-creator-gtk
) でインストールできます。
Etcher (balenaEtcher)
- 特徴: Windows/macOS版と同様の使い勝手で、Linuxディストリビューションを選ばずに利用できます。
- ダウンロード方法: balenaEtcherの公式サイト(https://www.balena.io/etcher/)にアクセスし、Linux版のAppImageファイルをダウンロードします。
- 準備: ダウンロードしたAppImageファイルを実行可能にする必要があります。ターミナルを開き、ダウンロードしたファイルがあるディレクトリに移動し、
chmod +x balenaEtcher-x.y.z-x64.AppImage
(x.y.zはバージョン番号) のようにコマンドを実行します。その後、ファイルをダブルクリックするか、ターミナルから./balenaEtcher-x.y.z-x64.AppImage
と入力して起動します。
ddコマンド (上級者向け)
- 特徴: macOSと同様、Linuxのターミナルを使用してイメージを直接書き込むコマンドです。Linuxディストリビューションには標準で搭載されています。使用には十分な注意が必要です。
- 準備: ターミナルを起動します。
Linuxユーザーへの推奨: Ubuntuユーザーであれば標準のStartup Disk Creatorが最も手軽です。クロスプラットフォームで使いたい場合や、GUIで手軽に操作したい場合はEtcherも良いでしょう。dd
コマンドは高速ですが、リスクを理解して使用する必要があります。
使用するOSとツールの準備ができたら、いよいよ起動用USBディスクの作成手順に入ります。
起動用USBディスクの作成手順(各OS・ツール別詳細)
ここでは、先に紹介した各OSと主要なツールを使用して、Ubuntuの起動用USBディスクを作成する具体的な手順を、それぞれのツールごとに詳しく解説します。
作業を開始する前に、対象のUSBメモリをPCに接続してください。そして、USBメモリ上の重要なデータはすべてバックアップしたことを再度確認してください。
Windows + Rufus
Rufusは多機能なので設定項目が多いですが、一度手順を覚えれば非常に強力なツールです。
- Rufusを起動する: ダウンロードしたRufusの実行ファイル(例:
rufus-4.3.exe
)をダブルクリックして起動します。管理者権限を要求される場合がありますので、許可してください。 - 「デバイス」を選択する:
- ウィンドウの上部にある「デバイス」のプルダウンメニューから、使用するUSBメモリを選択します。
- 複数のUSBデバイスが接続されている場合、間違ったデバイスを選択しないように細心の注意を払ってください。容量やデバイス名を確認して、目的のUSBメモリであることを確実に選択してください。
- 「ブートの種類の選択」でISOイメージを選択する:
- 「ブートの種類の選択」の右側にある「選択」ボタンをクリックします。
- ファイル選択ダイアログが表示されるので、ダウンロードしておいたUbuntuのISOイメージファイル(例:
ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso
)を選択し、「開く」をクリックします。
- 「イメージオプション」を確認する:
- UbuntuのISOを選択すると、「イメージオプション」が自動的に「Standard Ubuntu installation」に設定されます。これは通常変更する必要はありません。
- 注意: 古いRufusのバージョンや、Ubuntu以外のISOを選択した場合、「ISOイメージモード (推奨)」と「DDイメージモード」の選択肢が表示されることがあります。UbuntuのISOの場合は「ISOイメージモード」を選択するのが一般的です。Rufusが自動的に適切なモードを検出します。
- 「パーティションスキーム」と「ターゲットシステム」を設定する:
- ここはRufusの最も重要な設定の一つです。作成する起動ディスクが、BIOS(またはLegacy BIOS)ベースのPCと、UEFIベースのPCのどちらで起動するか、あるいは両方で起動できるようにするかを決定します。
- 通常、最近のPCはUEFIを使用しています。古いPCや互換性を重視する場合はBIOS/UEFI両対応が良いでしょう。UbuntuのISOはUEFIとLegacy BIOSの両方に対応したイメージを含んでいます。
- 「パーティションスキーム」:
- MBR: 主にLegacy BIOSシステムで使用されるパーティション形式です。古いPCとの互換性が必要な場合や、容量の小さい(2TB以下)ディスクに使用されます。
- GPT: UEFIシステムで推奨される新しいパーティション形式です。大容量ディスクに対応し、UEFIの様々な機能(Secure Bootなど)を利用できます。
- 「ターゲットシステム」:
- BIOS (or UEFI-CSM): Legacy BIOSモード、またはUEFIがLegacy BIOS互換モード(CSM: Compatibility Support Module)で起動する場合に対応します。
- UEFI (non CSM): 純粋なUEFIモードで起動する場合に対応します。
- BIOS or UEFI: 両方に対応する場合。Rufusは通常、選択したISOに基づいて適切な設定を自動的に行います。Ubuntuのデスktop版ISOの場合、通常MBR/BIOSとGPT/UEFIの両方で起動できるディスクが作成されます。特別な理由がない限り、自動設定で問題ありません。
- 確認: お使いのPCがUEFIかBIOSか不明な場合は、お使いのPCのマザーボードのマニュアルを確認するか、PCの設定画面(BIOS/UEFI設定)に入って確認してください。多くのRufusの新しいバージョンでは、Ubuntu ISOを選択すると「パーティションスキーム」と「ターゲットシステム」が自動的に最適な設定(通常はUEFI対応)になります。手動で変更する必要は少ないですが、もし起動できない場合はこの設定を見直す価値があります。
- 「ボリュームラベル」を設定する(任意):
- 作成されるUSBディスクに表示される名前を設定できます。デフォルトでISOファイル名などが入力されていますが、分かりやすい名前に変更しても構いません。
- 「ファイルシステム」と「クラスターサイズ」を設定する(通常は変更不要):
- 起動ディスクとして使用する場合、特定のファイルシステム(通常はFAT32)が使用されます。これらの設定はRufusが自動的に最適なものを選択するため、通常は変更する必要はありません。
- 「永続化領域のサイズ」を設定する(オプション):
- これは非常に便利な機能です。ライブ環境でUbuntuを起動した場合、通常はPCの電源を切ると行った変更(ファイル作成、設定変更、ソフトウェアインストールなど)はすべて失われます。しかし、永続化領域を設定すると、その領域に変更内容を保存しておくことができます。次にそのUSBで起動したとき、前回の状態を引き継ぐことができます。
- スライダーを動かすことで、永続化領域に割り当てる容量を指定できます。0MBにすると永続化機能は無効です。
- 注意点: 永続化領域は、すべての設定やソフトウェアの変更を完全に保存できるわけではありません。また、この機能に対応しているのは一部のLinuxディストリビューションに限られます(Ubuntuは対応しています)。USBメモリの耐久性を低下させる可能性もあります。インストール目的の場合はこの設定は不要です。
- 「スタート」ボタンをクリックする:
- すべての設定を確認したら、「スタート」ボタンをクリックして書き込みを開始します。
- 警告メッセージを確認する:
- 「警告:このドライブにあるすべてのデータは消去されます。」というメッセージが表示されます。内容を理解し、問題なければ「OK」をクリックします。
- 書き込み中の進捗を確認する:
- Rufusのウィンドウ下部に進捗バーが表示されます。書き込みには数分から数十分かかります。進捗状況を見守ってください。
- 完了の確認:
- 進捗バーが一杯になり、「状態」が「準備完了」と表示されたら完了です。
- Rufusのウィンドウを閉じ、USBメモリを安全に取り外してください。
これでUbuntuの起動用USBディスクが完成しました。
Windows/macOS/Linux + Etcher (balenaEtcher)
Etcherは3ステップで完了するシンプルなツールです。どのOSでも使い方はほぼ同じです。
- Etcherを起動する: ダウンロードしてインストールまたは展開したEtcherを起動します。macOSではアプリケーションフォルダから起動します。Linuxでは実行可能にしたAppImageファイルを起動します。管理者権限が必要な場合があります。
- 「Flash from file」でISOイメージを選択する:
- Etcherのウィンドウ中央にある「Flash from file」ボタンをクリックします。
- ファイル選択ダイアログが表示されるので、ダウンロードしておいたUbuntuのISOイメージファイルを選択し、「開く」をクリックします。
- 「Select target」でUSBデバイスを選択する:
- 次に「Select target」ボタンをクリックします。
- 接続されているストレージデバイスのリストが表示されます。ここでも、間違ったデバイスを選択しないように細心の注意を払ってください。特に内蔵ハードディスクやSSDを選択してしまうと、データがすべて消去されてしまいます。USBメモリの容量や名前を確認して、目的のデバイスにチェックを入れます。
- 選択したら「Select (1)」または選択したデバイス数を示すボタンをクリックします。
- 「Flash!」ボタンをクリックする:
- 書き込むISOイメージと書き込み先のUSBデバイスが正しく選択されていることを確認し、「Flash!」ボタンをクリックします。管理者権限のパスワード入力を求められる場合があります。
- 書き込み中の進捗を確認する:
- 書き込み(Flashing)と検証(Validating)の進捗バーが表示されます。Etcherは書き込み後にデータの整合性を検証する機能があるため、Rufusよりも時間がかかる場合がありますが、信頼性は高まります。
- 完了の確認:
- 「Flash Complete!」またはそれに類するメッセージが表示されたら完了です。
- Etcherは書き込みが完了したUSBメモリを自動的にアンマウント(macOS/Linux)または取り外し準備完了(Windows)の状態にすることがあります。指示に従って安全にUSBメモリを取り外してください。
これでEtcherを使った起動用USBディスクが完成しました。シンプルさが最大の魅力です。
Linux + Startup Disk Creator (Ubuntu標準)
Ubuntuに標準搭載されているツールは、UbuntuのISOイメージを書き込むのに最適化されています。
- Startup Disk Creatorを起動する: Ubuntuのアプリケーションメニューを開き、「Startup Disk Creator」または「起動ディスクの作成」と検索して起動します。
- 「Source .iso image」でISOイメージを選択する:
- ウィンドウの上部にISOイメージファイルを選択するエリアがあります。通常、ダウンロードフォルダにあるUbuntuのISOファイルが自動的に検出されて表示されます。
- 目的のISOファイルが表示されていない場合は、「Other…」ボタンをクリックして手動で選択してください。
- 「Disk to use」でUSBデバイスを選択する:
- ウィンドウの下部に、接続されているUSBデバイスのリストが表示されます。
- ここでも、間違ったデバイスを選択しないように細心の注意を払ってください。容量やデバイス名を確認して、目的のUSBメモリを選択してください。
- 「Stored in reserved extra space」で永続化領域を設定する(オプション):
- スライダーを動かすことで、ライブ環境での変更を保存するための永続化領域を設定できます。右に動かすほど多くの容量を割り当てられます。永続化が不要な場合は、スライダーを一番左(0MB)に設定します。
- 「Make Startup Disk」ボタンをクリックする:
- 選択内容を確認したら、「Make Startup Disk」ボタンをクリックして書き込みを開始します。
- 警告メッセージを確認する:
- 「このディスクにあるデータはすべて失われます」といった警告が表示されます。内容を理解し、問題なければ「Yes」をクリックします。
- 書き込み中の進捗を確認する:
- 進捗バーが表示されます。書き込みには時間がかかります。
- 完了の確認:
- 「Installation is complete」またはそれに類するメッセージが表示されたら完了です。ウィンドウを閉じて、USBメモリを安全に取り外してください。
Ubuntuの標準ツールを使った起動用USBディスクの作成が完了しました。
Linux/macOS + ddコマンド (上級者向け)
dd
コマンドは強力ですが、非常に危険なコマンドです。デバイス名を間違えると、PCのシステムそのものを破壊する可能性があります。自信がない場合は、必ずGUIツール(Etcherなど)を使用してください。
dd
コマンドを使用する手順は以下の通りです。
- USBデバイスのデバイス名を確認する:
- まず、書き込み対象のUSBメモリがシステム上でどのようなデバイス名として認識されているかを確認する必要があります。
- Linux: ターミナルを開き、
lsblk
コマンドを実行します。接続されているすべてのブロックデバイスとそのパーティションが表示されます。USBメモリの容量や、既存のパーティション構成などから、目的のデバイス名(例:/dev/sdb
,/dev/sdc
など。/dev/sda
は通常内蔵HDD/SSDなので絶対に使わないでください)を特定します。 - macOS: ターミナルを開き、
diskutil list
コマンドを実行します。接続されているストレージデバイスとそのパーティションが表示されます。USBメモリの容量や、/dev/diskX
(Xは数字) のような形式のidentifierから、目的のデバイス名(例:/dev/disk2
,/dev/disk3
など)を特定します。注意: macOSの場合、rawデバイスである/dev/rdiskX
を使用するとキャッシュを介さず高速に書き込めます。 - 重要: このステップでデバイス名を絶対に間違えないでください。間違ったデバイス名に書き込むと、取り返しのつかないデータ消失が発生します。
- USBデバイスをアンマウントする:
- USBメモリがシステムによって自動的にマウントされている場合、書き込みを行う前にアンマウントする必要があります。
- Linux:
sudo umount /dev/sdXN
(Xはデバイスレター、Nはパーティション番号。例えば/dev/sdb1
)のように、検出されたUSBメモリ上のすべてのパーティションをアンマウントします。デバイス全体/dev/sdX
自体をアンマウントすることはできません。 - macOS:
diskutil unmountDisk /dev/diskX
(Xはデバイス番号)のように、デバイス全体をアンマウントします。
- ddコマンドで書き込む:
- 以下のコマンドを実行します。
if
にはUbuntuのISOイメージファイルのパス、of
には確認したUSBデバイスのデバイス名を指定します。 - Linux:
sudo dd if=/path/to/ubuntu.iso of=/dev/sdX bs=4M status=progress
sudo
: 管理者権限で実行します。パスワードが必要です。dd
: コマンド名。if=/path/to/ubuntu.iso
: 入力ファイル (if
= input file)。ダウンロードしたISOイメージファイルの正確なパスを指定します。of=/dev/sdX
: 出力ファイル (of
= output file)。書き込み対象のUSBデバイスのデバイス名を指定します。パーティション番号(例:/dev/sdb1
)ではなく、デバイス全体(例:/dev/sdb
)を指定してください。bs=4M
: ブロックサイズを指定します。大きな値を指定すると書き込み速度が向上します(ここでは4MB)。status=progress
: 書き込みの進捗状況を表示します(Linuxの新しいdd
コマンドで利用可能)。macOSのdd
コマンドにはこのオプションはありません。
- macOS:
sudo dd if=/path/to/ubuntu.iso of=/dev/rdiskX bs=4m
of=/dev/rdiskX
: 書き込み対象のrawデバイス名を指定します(例:/dev/rdisk2
)。bs=4m
: ブロックサイズ。macOSでは単位にm
を使用します。
- コマンドを入力し、Enterキーを押します。パスワードを求められたら入力します。
- 注意:
dd
コマンドはプロンプトが表示されるまで何も出力しない場合があります(status=progress
オプションがない場合)。書き込みがフリーズしたように見えても、実際には処理が進行していることが多いです。処理が終わるまで辛抱強く待ちます。
- 以下のコマンドを実行します。
- 完了の確認:
- 書き込みが完了すると、「… bytes transferred …」のようなメッセージが表示され、プロンプトに戻ります。
- 重要: 書き込み後、システムによってはディスクのキャッシュが残っていることがあります。
sync
コマンドを実行して、ディスクへの書き込みが完全に完了するのを待つことを推奨します。ターミナルでsync
と入力してEnterを押します。プロンプトに戻るまで待ちます。 - macOS:
diskutil eject /dev/diskX
コマンドで安全にUSBメモリを取り外す準備をします。
これでdd
コマンドを使った起動用USBディスクが完成しました。
起動用USBディスクの使い方
作成した起動用USBディスクを使ってPCを起動し、Ubuntuのライブ環境を試したり、インストールを開始したりする方法を説明します。
-
起動用USBディスクをPCに挿入する:
- 起動したいPCの電源が切れていることを確認し、作成したUbuntuの起動用USBディスクをUSBポートに挿入します。
-
PCの電源を入れる:
- PCの電源ボタンを押します。
-
BIOS/UEFI設定画面に入るか、ブートメニューを表示する:
- PCの起動直後に、キーボードの特定のキーを押してBIOS/UEFI設定画面に入るか、一時的なブートメニューを表示させる必要があります。
- 使用するキーはPCのメーカーや機種によって異なります。PCの起動時に画面に短いメッセージで表示されることが多いです(例: “Press DEL to enter Setup”, “Press F2 for BIOS”, “Press F12 for Boot Menu”, “Press ESC for Boot Options” など)。
- 代表的なメーカーとキーの組み合わせ例:
- Dell: F2 (Setup), F12 (Boot Menu)
- HP: F10 (Setup), F9 (Boot Menu)
- Lenovo: F1 or F2 (Setup), F12 (Boot Menu)
- ASUS: DEL or F2 (Setup), F8 (Boot Menu)
- Acer: F2 (Setup), F12 (Boot Menu)
- Microsoft Surface: Volume Upボタンを押しながら電源ボタンを押す (UEFI設定)
- これらのキーをPC起動直後に連打するか、表示されたタイミングで一度押します。タイミングが重要です。OSの起動が始まってしまったら、一度PCを再起動してやり直してください。
-
起動順序(Boot Order)を変更する(BIOS/UEFI設定の場合):
- BIOSまたはUEFIの設定画面に入れたら、「Boot」または「Boot Order」「Boot Sequence」「Boot Options」といった項目を探します。設定画面の見た目はメーカーによって大きく異なります。
- この項目で、PCがどのデバイスからOSを読み込もうとするかの優先順位を設定します。通常は内蔵HDD/SSDが一番になっています。
- USBメモリ(または「Removable Devices」「USB HDD」「UEFI: [USBメモリの名称]」などと表示されることもあります)を、リストの最上位(または内蔵HDD/SSDよりも上)に移動させます。設定画面内での移動方法は画面に表示されているキーガイド(矢印キー、F5/F6キー、+/-キーなど)を参照してください。
- 変更を終えたら、設定を保存して終了します。通常は「Save and Exit Setup」「Exit Saving Changes」といった項目を選択し、確認メッセージで「Yes」または「OK」を選択します。使用するキーはF10であることが多いです。
- PCが再起動し、設定した新しい起動順序に従ってUSBメモリから起動を試みます。
-
ブートメニューから一時的に起動デバイスを選択する(Boot Menuの場合):
- BIOS/UEFI設定画面に入らず、一時的なブートメニューを表示させた場合、画面に起動可能なデバイスのリストが表示されます。
- リストの中から、挿入したUSBメモリ(またはそれに類する名称)を選択し、Enterキーを押します。
- この方法で起動順序を変更しても、PCの次回起動時には元の起動順序(通常は内蔵HDD/SSD)に戻ります。インストールや一時的なライブ環境の利用にはこちらの方法が手軽です。
-
UbuntuのGRUBメニューが表示される:
- USBメモリからの起動に成功すると、多くの場合UbuntuのGRUBメニューが表示されます。
- 表示されるメニュー項目は、Ubuntuのバージョンや起動ディスクの種類によって異なりますが、典型的な項目は以下の通りです。
- Try or Install Ubuntu: これを選択すると、さらに言語選択の画面が表示されます。
- Ubuntu: これを選択すると、直接ライブ環境またはインストーラーの起動プロセスに進みます(バージョンによる)。
- Try Ubuntu without installing: ハードディスクに何も変更を加えることなく、USBメモリからUbuntuのライブ環境を起動します。システムが正常に動作するか確認したり、ファイルにアクセスしたりできます。
- Install Ubuntu: Ubuntuのインストールプロセスを開始します。
- OEM install (for manufacturers): OEM向けインストール(通常ユーザーは使用しません)。
- Check disk for defects: USBメモリ上のファイルの破損がないかチェックします。問題が発生する場合に実行すると良いでしょう。
- Test memory: メモリテストを実行します。
- 言語選択: 「Try or Install Ubuntu」を選択した場合や、他のオプションを選択した場合でも、最初に言語選択画面が表示されることが多いです。ここでは日本語を選択してください。キーボードレイアウトの選択もここで可能です。
-
「Try Ubuntu without installing」または「Install Ubuntu」を選択する:
- 日本語を選択し、「日本語」が強調表示された状態でEnterキーを押すか、画面のボタンをクリックします。
- 次に、「Ubuntuを試す (Try Ubuntu without installing)」と「Ubuntuをインストール (Install Ubuntu)」の選択画面が表示されます。
- ライブ環境を試したい場合: 「Ubuntuを試す」を選択します。ハードディスクには一切変更が加わりません。
- インストールを開始したい場合: 「Ubuntuをインストール」を選択します。インストールウィザードが開始されます。
ライブ環境(Try Ubuntu)でできること
「Ubuntuを試す」を選択して起動したライブ環境は、PCのメモリ上で動作します。ハードディスクに変更を加えることなくUbuntuのデスクトップ環境を体験できるため、インストール前の重要なステップとなります。ライブ環境で具体的に何ができるのか見ていきましょう。
-
Ubuntuの動作確認:
- 最も重要な目的の一つは、PCのハードウェアがUbuntuで正しく動作するかを確認することです。
- ネットワーク: 無線LAN (Wi-Fi) や有線LANに接続できるか確認します。ウェブブラウザ(Firefoxなど)を開いてインターネットにアクセスしてみましょう。
- サウンド: スピーカーから音が出るか、マイクが機能するか確認します。YouTubeなどで動画を再生してみると良いでしょう。
- ディスプレイ: 解像度が正しく設定されているか、外部ディスプレイを接続して動作するか確認します。グラフィックドライバーが適切に認識されているかどうかも確認できます。
- キーボード・マウス: USB接続、Bluetooth接続を含め、正しく入力・操作できるか確認します。
- その他のデバイス: プリンター、スキャナー、Webカメラ、Bluetoothデバイスなどが認識・動作するか試してみます。
-
インターネットブラウジングと基本的な作業:
- ライブ環境にはFirefoxなどのウェブブラウザが搭載されています。インターネットを自由に閲覧できます。
- LibreOfficeなどのオフィススイートがインストールされている場合もあり、簡単な文書作成や表計算を試すことができます。
- ファイルマネージャー(Nautilusなど)を使用して、USBメモリ内のファイルや、PCの内蔵ストレージ(後述の注意点あり)にアクセスできます。
-
システム情報の確認:
- 「Settings」(設定)を開くと、システムの詳細(CPU、メモリ、グラフィックカードなど)を確認できます。
- 「Disks」(ディスク)や「GParted」(パーティションエディタ)といったツールが利用できる場合、PCの内蔵ストレージのパーティション構成を確認できます。
-
システムの修復やデータ復旧:
- PCの内蔵OSが起動しなくなった場合でも、ライブ環境から起動してシステムの修復を試みることができます。
- 内蔵ストレージ上のファイルシステムに問題がないか確認したり、
fsck
コマンドなどで修復を試みたりできます。 - 内蔵ストレージが認識され、アクセス可能であれば、重要なファイルを別のストレージ(別のUSBメモリ、外付けHDDなど)にバックアップすることができます。ただし、WindowsのNTFSパーティションにアクセスする場合、シャットダウン時にWindowsが完全に終了していない(高速スタートアップが有効になっているなど)と、ファイルシステムがロックされて書き込みができない場合があります。その場合は、Windowsで高速スタートアップを無効にしてからシャットダウンするか、Linuxから読み取り専用でアクセスするようにしてください。
-
ディスクのパーティション編集:
- ライブ環境には、強力なパーティション編集ツールであるGPartedが含まれていることが多いです(含まれていない場合でも、インターネット接続があればソフトウェアセンターからインストールできます)。
- GPartedを使用すると、内蔵HDD/SSDのパーティション構成を変更(作成、削除、サイズ変更など)できます。パーティション操作は内蔵ストレージのデータを失う危険性が高い操作です。十分に注意して、必要なデータは必ずバックアップしてから行ってください。特にWindowsとのデュアルブート構成を構築する際には、パーティションの空き容量を確保するためにGPartedが役立ちます。
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インストール前の最終チェック:
- ライブ環境で特に問題なくハードウェアが動作することを確認できれば、安心してインストールに進めます。もし無線LANが使えない、特定のデバイスが認識されないといった問題が見つかった場合、そのハードウェアがUbuntuでサポートされているか調べたり、別のバージョンのUbuntuを試したりといった対策を検討できます。
ライブ環境は非常に便利ですが、前述の通り、永続化領域を設定していない場合、PCの電源を切るとライブ環境で行った変更はすべて失われます。 ファイルのダウンロードや設定の変更を行いたい場合は、事前に永続化領域を設定するか、外付けストレージに保存するようにしてください。
ライブ環境での試用を終え、インストールに進む準備ができたら、デスクトップ上の「Install Ubuntu [バージョン番号]」のようなアイコンをダブルクリックするか、電源ボタンを押して表示されるメニューから「シャットダウン」または「再起動」を選択し、必要に応じてインストールプロセスを開始します。
トラブルシューティング
起動用USBディスクの作成や使用中に発生しうる一般的な問題と、その解決策をいくつか紹介します。
USBから起動しない
最もよくある問題です。以下の点を順番に確認してください。
- BIOS/UEFI設定:
- 最も可能性が高い原因です。PCのBIOS/UEFI設定画面に入り、起動順序が正しく設定されているか再確認してください。USBメモリが内蔵HDD/SSDより高い優先順位になっている必要があります。
- USBデバイスが正しく認識されているか、設定画面のどこかに表示されているか確認します。
- UEFIとLegacy BIOS: お使いのPCがUEFIモードで起動しているか、Legacy BIOS互換モード(CSM)で起動しているかを確認してください。そして、起動ディスクがそのモードに対応しているか確認します。多くの新しいPCはUEFIのみ、またはUEFI優先で設定されています。Rufusで作成した場合、通常はUEFI対応になっていますが、BIOS互換モードでしか起動しないPCの場合、Rufusでターゲットシステムを「BIOS (or UEFI-CSM)」に設定し直してUSBディスクを作り直す必要があるかもしれません。
- Secure Boot: UEFI設定で「Secure Boot」が有効になっていると、署名されていないOS(古いバージョンや一部のカスタマイズされたLinuxなど)の起動がブロックされることがあります。Ubuntuの新しいバージョンはSecure Bootに対応していますが、問題が発生する場合は一時的に無効にしてみることで解決することがあります。Secure Bootの設定はUEFI設定画面の「Security」や「Boot」セクションにあります。ただし、Secure Bootを無効にすることはセキュリティリスクを伴うため、理解した上で行ってください。
- ブートメニューからの起動:
- BIOS/UEFI設定の変更がうまくいかない場合は、PC起動直後にブートメニューキー(F12, F10, Escなど)を連打して、表示される一時的な起動デバイス選択メニューから直接USBメモリを選択してみてください。これで起動できるか確認できます。
- USBポート:
- 別のUSBポートに挿してみることを試してください。特定のUSBポート(特にUSB 3.0ポート)が、古いOSや起動環境では正しく初期化されない場合があります。
- USBハブを使用している場合は、ハブを通さずPC本体のポートに直接接続してください。
- USBメモリ自体:
- 使用しているUSBメモリが破損している、または相性が悪い可能性があります。別のUSBメモリを使用して起動ディスクを再作成してみてください。
- 起動ディスクの再作成:
- ISOイメージのダウンロードが不完全だったり、書き込みプロセスでエラーが発生したりした可能性があります。
- ISOイメージファイルを再度ダウンロードし直し、別の書き込みツール(例: RufusがダメならEtcher)でUSBディスクを再作成してみてください。Rufusを使用している場合は、書き込み時にエラーが表示されていないか確認してください。Etcherは書き込み後の検証機能があるので信頼性が高いです。
- ISOイメージの確認:
- ダウンロードしたISOイメージファイル自体が破損している可能性があります。ダウンロードサイトで公開されているハッシュ値と一致するか確認するか、再度ダウンロードしてみてください。
黒い画面やエラーが表示される
USBから起動は始まったものの、Ubuntuのデスクトップが表示されず、黒い画面のまま止まったり、エラーメッセージが表示されたりする場合です。
- グラフィックドライバーの問題:
- 特にNVIDIAやAMDなどの専用(ディスクリート)グラフィックカードを搭載したPCで発生しやすい問題です。Ubuntuが標準で提供するオープンソースのグラフィックドライバーが、特定のハードウェアと相性が悪い場合があります。
- GRUBメニューが表示されたら、通常は「Try or Install Ubuntu」などが選択されていますが、キーボードの
e
を押して起動オプションを編集してみてください。Linuxカーネルの起動パラメータにnomodeset
を追加すると、グラフィックドライバーの読み込みを一時的に無効にし、基本的なグラフィックモード(VESA)で起動を試みます。これにより、デスクトップが表示されるようになる場合があります。起動オプションを編集した後、通常はF10キーなどで変更を適用して起動します。起動できた場合は、インストール後にプロプライエタリな(メーカー提供の)グラフィックドライバーをインストールすることで問題を解決できます。
- ISOイメージの破損:
- USB起動ディスクのGRUBメニューに「Check disk for defects」というオプションがあれば、これを実行してみてください。USBメモリ上のファイルに破損がないか確認できます。問題が見つかった場合は、USBディスクを再作成する必要があります。
- UEFI/Secure Bootとの競合:
- 前述の通り、Secure Bootが有効になっていると起動がブロックされることがあります。Secure Bootを一時的に無効にしてみてください。
Persistent Storageが機能しない
RufusやStartup Disk Creatorで永続化領域を設定したにも関わらず、ライブ環境で行った変更が保存されない場合です。
- 設定の確認:
- 起動ディスク作成時に、永続化領域が正しく設定され、容量が割り当てられているか確認してください。
- 互換性:
- 永続化機能は一部のディストリビューションやツールでしかサポートされていません。Ubuntuの標準ISOとRufusまたはStartup Disk Creatorの組み合わせであればサポートされているはずですが、それ以外の組み合わせの場合は動作しない可能性があります。
- 容量不足:
- 永続化領域に割り当てた容量が小さすぎて、変更を保存しきれていない可能性があります。より大きな容量を割り当てて再作成するか、不要なファイルを削除してみてください。
- USBメモリの相性・状態:
- 使用しているUSBメモリが低品質であったり、寿命が近い場合、データの書き込みに失敗したり、データが正しく保持されないことがあります。別のUSBメモリで試してみてください。
書き込みツールのエラー
Rufus, Etcher, Startup Disk CreatorなどのツールがUSBメモリに書き込み中にエラーを表示する場合です。
- 管理者権限:
- ツールがUSBデバイスに直接書き込むためには、管理者権限が必要です。ツールを「管理者として実行」したり、
sudo
を付けて起動したりしているか確認してください。
- ツールがUSBデバイスに直接書き込むためには、管理者権限が必要です。ツールを「管理者として実行」したり、
- 他のプロセスによる使用:
- USBメモリが他のアプリケーション(ファイルマネージャーなど)によって使用されている場合、書き込みがブロックされることがあります。USBメモリ上のフォルダやファイルをすべて閉じてから、書き込みツールを起動してください。
- Linux/macOSの
dd
コマンドを使用する場合は、事前にUSBメモリをアンマウントする必要があります。
- USBメモリの破損:
- USBメモリ自体が物理的に破損しているか、書き込み禁止状態になっている可能性があります。別のUSBメモリで試してみてください。
- ISOイメージの破損:
- ダウンロードしたISOイメージファイルが破損している場合、書き込みツールがエラーを検出することがあります。ISOファイルを再度ダウンロードしてみてください。
これらのトラブルシューティングの手順を試すことで、多くの一般的な問題を解決できるはずです。問題が解決しない場合は、使用しているPCの機種名やエラーメッセージなどの詳細を添えて、Ubuntuの公式フォーラムやコミュニティで質問してみることをお勧めします。
まとめ
この記事では、Ubuntuの起動用USBディスクを作成し、それを使用してPCを起動する方法について、詳細かつ網羅的に解説しました。
まず、起動ディスクの目的として、OSのインストール、ライブ環境での試用、システム修復、データ復旧などがあることを説明しました。次に、作業に必要なものとして、適切な容量のUSBメモリ、UbuntuのISOイメージファイル、そしてISOイメージ書き込みツールがあることを確認しました。
UbuntuのISOイメージは公式サイトから安全に入手する方法を解説し、LTS版と通常版の違いについても触れました。
ISOイメージ書き込みツールについては、Windows、macOS、Linuxそれぞれの主要なツール(Rufus, Etcher, Startup Disk Creator, ddコマンド)を取り上げ、それぞれの特徴や準備方法を詳しく説明しました。特にRufusのUEFI/BIOS設定や、Persistent Storageの概念についても解説しました。
そして、各ツールを使用した具体的なUSB起動ディスクの作成手順を、ステップバイステップで詳細に解説しました。ddコマンドのような上級者向けのツールについても、その使い方とリスクについて明確に述べました。
作成した起動用USBディスクを使ってPCを起動する方法として、BIOS/UEFI設定での起動順序の変更方法や、一時的なブートメニューからの起動方法を、主要なPCメーカーの例を交えながら説明しました。また、USBからの起動後に表示されるUbuntuのGRUBメニューについても解説しました。
さらに、「Ubuntuを試す」で起動するライブ環境で何ができるのか、ハードウェアの動作確認からシステムの修復、データ復旧、パーティション操作に至るまで、その多様な活用法を具体的に紹介しました。
最後に、USBから起動しない、起動しても画面が表示されない、永続化機能が動作しないといった、起動ディスクの作成・使用中に発生しやすいトラブルシューティングについて、それぞれの確認点と解決策を詳しく解説しました。
Ubuntuの起動用USBディスクは、Ubuntuの利用を始める上で、あるいは既存のUbuntu環境をメンテナンスする上で非常に重要なツールです。この記事を参考に、ご自身の環境に合った方法で起動ディスクを作成し、Ubuntuのパワフルで柔軟な世界を体験してください。
この起動ディスクを使ってUbuntuをインストールすることも可能です。インストール手順については、この記事の範囲外となりますが、ライブ環境で「Ubuntuをインストール」を選択することで、グラフィカルなインストーラーが開始されます。インストーラーは非常に分かりやすく設計されているので、画面の指示に従って進めることでインストールを完了できます。
ご自身のPCでUbuntuがどのように動作するかをライブ環境で十分に確認し、必要に応じてインストールに進むことで、快適なUbuntuライフを送ることができるでしょう。