はい、承知いたしました。「vLLM徹底紹介:大規模言語モデルの推論パフォーマンスを改善」と題して、約5000語の詳細な技術解説記事を作成します。
vLLM徹底紹介:大規模言語モデルの推論パフォーマンスを劇的に改善する
はじめに: LLM推論のボトルネックと高性能化の必要性
近年、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(Large Language Models; LLM)は、私たちの生活やビジネスに革命的な変化をもたらしています。文章生成、質問応答、翻訳、コード生成など、その応用範囲は日ごとに拡大しています。しかし、これらの強力なモデルを利用するには、膨大な計算資源が必要です。特に、学習済みのモデルを使って実際にユーザーからの入力を処理し、出力を生成する「推論(Inference)」の段階は、そのコストとパフォーマンスが実用化における大きな課題となっています。
LLMのパラメータ数は数十億から数兆に達し、使用するGPUメモリは数百ギガバイトにも及びます。このような巨大なモデルを用いた推論では、単一のユーザーからのリクエストを処理するだけでも、相当な時間と計算能力が必要です。さらに、多数のユーザーが同時にモデルを利用するようなサービスでは、これらのリクエストを効率的に捌き、低いレイテンシ(応答時間)と高いスループット(単位時間あたりの処理数)を実現することが極めて重要になります。
従来のLLM推論サービングフレームワークでは、リソースの利用効率やバッチ処理の仕組みに限界があり、特に大量のリクエストが同時に発生する場合や、出力される文章の長さがリクエストごとに異なる場合に、GPUリソースの浪費や不必要な待機時間が発生しやすいという問題がありました。これは、結果として高い運用コストやユーザーエクスペリエンスの低下につながります。
このような背景のもと、LLM推論のパフォーマンスを劇的に改善することを目的として開発されたのが、UC BerkeleyのLianmin Zhengらによって提唱され、現在はオープンソースプロジェクトとして活発に開発が進められている高性能な推論ライブラリ「vLLM」です。vLLMは、革新的なアルゴリズムと高度な最適化によって、既存のフレームワークと比較してスループットを大幅に向上させ、同時にレイテンシを低減することを可能にしました。
この記事では、vLLMがなぜこれほどまでに高性能なのか、その秘密である中核技術「Paged Attention」と「Continuous Batching」を中心に、vLLMの仕組み、従来の課題との比較、その他の最適化技術、そして具体的な利用方法について、徹底的に解説していきます。LLMの推論パフォーマンスに課題を感じている方、より効率的なLLMサービング基盤を構築したいと考えている方にとって、この記事がvLLMの理解と活用の一助となれば幸いです。
大規模言語モデル(LLM)推論における本質的な課題
vLLMの優位性を理解するためには、まずLLM推論が抱える根本的な課題を把握する必要があります。
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巨大なモデルサイズと計算量:
LLMは、Transformerアーキテクチャを基盤としており、数多くのレイヤーとアテンションヘッドから構成されます。パラメータ数が数百億、数兆にもなると、モデル自体がGPUメモリを大量に消費します。推論時には、入力されたトークンとモデルのパラメータを用いた膨大な行列計算(主に行列積)が発生し、これは計算資源、特にGPUの演算能力を強く要求します。 -
KVキャッシュのメモリ消費:
Transformerモデルがトークンを逐次生成していく過程では、すでに計算された過去のトークンに関する情報(KeyベクトルとValueベクトル)を保持しておく必要があります。これを「KVキャッシュ」と呼びます。次のトークンを生成する際、モデルは入力トークンだけでなく、このKVキャッシュを参照してアテンション計算を行います。KVキャッシュのサイズは、バッチサイズ(同時に処理するリクエスト数)とシーケンス長(入力および出力トークンの合計長)に比例して増大します。特に長いシーケンスを扱う場合、KVキャッシュはモデルパラメータと同等かそれ以上のGPUメモリを消費することがあります。このKVキャッシュの効率的な管理が、LLM推論パフォーマンスの鍵となります。 -
レイテンシとスループットのトレードオフ:
推論サービングシステムは、一般的に「レイテンシ」(個々のリクエストに対する応答時間)と「スループット」(単位時間あたりに処理できるリクエスト数)という二つの指標で評価されます。レイテンシを低く保つためには、バッチサイズを小さくしてリクエストを速やかに処理開始・完了させるのが有効ですが、これはGPUの並列処理能力を十分に活用できず、スループットが低下します。逆に、スループットを最大化するためには、多数のリクエストを一つのバッチにまとめて並列処理するのが効率的ですが、これはバッチ内の全てのリクエストが完了するまで待機が発生し、個々のリクエストに対するレイテンシが悪化します。この二律背反する要求を満たすことが難しいのが実情です。 -
バッチ処理における非効率性:パディングと動的な出力長:
従来の推論サービングでは、「静的バッチ処理」が一般的でした。これは、事前に決められた固定サイズのバッチにリクエストを集めてから処理を開始する方式です。この方法にはいくつかの課題があります。- パディング: バッチ内の全てのリクエストが同じ長さになるように、短いシーケンスには無意味なトークン(パディングトークン)を追加する必要があります。これは、パディング部分の計算が無駄なGPUリソースを消費することを意味します。
- 待機時間: バッチサイズに満たないリクエスト数の場合でも、バッチが埋まるまで(あるいはタイムアウトまで)待機が発生します。
- 動的な出力長: LLMの出力長は、入力やモデルの生成過程によってリクエストごとに大きく異なります。静的バッチ処理では、バッチ内の全てのリクエストが「最も長い出力長」に達するまで待機する必要があります。たとえ短い出力長で完了したリクエストがあっても、バッチ全体が終わるまでGPUリソースが解放されず、非効率です。これは、特に多数の短い応答を高速に返したい場合に大きな問題となります。
これらの課題、特にKVキャッシュの非効率な管理と静的バッチ処理の限界が、LLM推論のパフォーマンスを大きく妨げていました。vLLMは、これらのボトルネックを根本から解決するための革新的なアプローチを導入しています。
vLLMとは何か? その目的と概要
vLLMは、大規模言語モデルの推論サービングにおいて、高いスループットと低いレイテンシを同時に実現することを目的とした、高速かつ効率的なオープンソースライブラリです。カリフォルニア大学バークレー校のSkyPilotチームによって開発され、その後、独立したプロジェクトとして多くのコントリビューターによって開発が進められています。
vLLMの最大の特長は、従来のLLM推論サービングフレームワークが抱えていたKVキャッシュ管理の非効率性とバッチ処理の限界を克服する、二つの中核技術にあります。
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Paged Attention:
これはvLLMが提案する、KVキャッシュを効率的に管理するための新しいアルゴリズムです。仮想記憶システムにおけるページングの概念をLLMのKVキャッシュ管理に応用することで、KVキャッシュメモリの断片化を解消し、メモリ使用効率を劇的に向上させます。これにより、より多くのリクエストやより長いシーケンス長を同時に処理できるようになり、スループット向上に大きく貢献します。 -
Continuous Batching:
これは、リクエストの到着と進行状況に応じて、実行中のバッチを動的に再構築する手法です。従来の静的バッチ処理とは異なり、リクエストが到着次第すぐに処理を開始し、完了したリクエストをバッチから取り除き、常にGPUが可能な限り多くの「実行中の」リクエストを処理できるようにバッチを最適化します。これにより、GPUの利用率が最大化され、スループットが向上するとともに、不必要な待機時間が削減されるためレイテンシも改善されます。
これらの主要技術に加え、vLLMは高性能なCUDAカーネル、様々なモデル並列化手法のサポート、量子化への対応など、多くの最適化技術を取り入れています。その結果、公式ベンチマークでは、他の主要なフレームワークと比較してスループットが最大24倍向上したという報告もあり、LLM推論の分野でデファクトスタンダードとなりつつあります。
vLLMは、Llama, GPT-2, MPT, Falcon, Baichuanなど、Hugging FaceのTransformersライブラリでサポートされている多くの人気LLMアーキテクチャをサポートしており、簡単に既存のモデルをロードして利用できます。また、OpenAI API互換のサーバー機能も提供しており、既存のアプリケーションからの移行も容易です。
次のセクションからは、vLLMの心臓部ともいえる「Paged Attention」と「Continuous Batching」について、その仕組みと効果を詳しく見ていきましょう。
vLLMの中核技術 I: Paged Attention – KVキャッシュ管理の革新
Transformerモデルにおいて、各トークンを生成する際には、それまでに生成された全てのトークンに対するKeyベクトルとValueベクトル(KVキャッシュ)が必要になります。アテンション計算はこのKVキャッシュを参照して行われるため、推論時にはKVキャッシュをGPUメモリ上に保持しておく必要があります。
従来のKVキャッシュ管理の課題
従来のLLM推論フレームワークでは、KVキャッシュのメモリを管理するために、しばしば静的なアロケーションが行われていました。これは、事前に「最大バッチサイズ」と「最大シーケンス長」を想定し、そのサイズに基づいて全てのシーケンスに対してKVキャッシュ用のメモリ領域を確保しておく方式です。
この静的アロケーション方式には、いくつかの深刻な課題があります。
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メモリの断片化と浪費:
リクエストごとに実際のシーケンス長は異なります。しかし、静的アロケーションでは、最大シーケンス長に合わせてメモリが確保されます。例えば、最大シーケンス長が1024トークンと設定されていても、実際には100トークンしか必要としないリクエストがあった場合、残りの924トークン分のKVキャッシュメモリは未使用となります。多数のリクエストをバッチ処理する場合、この未使用領域が積み重なり、GPUメモリの深刻な浪費を引き起こします。メモリが断片化し、連続した大きな領域を確保できなくなることもあります。 -
KVキャッシュによるOut-of-Memory (OOM)エラー:
KVキャッシュのサイズは、(バッチサイズ) × (シーケンス長) × (アテンションヘッド数) × (ヘッド次元) × 2 (KeyとValue) × (モデルのレイヤー数) に比例します。特にバッチサイズやシーケンス長が大きい場合、KVキャッシュがGPUメモリの大部分を占有し、最終的にOut-of-Memoryエラーを発生させ、処理可能なリクエスト数やシーケンス長に大きな制限を課します。 -
Fork操作(例:Beam Search)の非効率性:
Beam Searchのような生成手法では、ある時点から複数の候補シーケンスに分岐します。従来のKVキャッシュ管理では、このような分岐が発生した場合、親シーケンスのKVキャッシュ全体を子シーケンスにコピーする必要がありました。これは、大量のメモリコピーと追加のメモリ消費を伴い、非常に非効率です。
Paged Attentionの仕組み:仮想記憶からの着想
vLLMのPaged Attentionは、これらの課題を解決するために、オペレーティングシステムにおける仮想記憶管理の手法、特に「ページング」の概念をKVキャッシュ管理に応用しています。
仮想記憶システムでは、プログラムが連続した大きな仮想メモリアドレス空間を使用できる一方で、実際の物理メモリは小さな固定サイズの「ページ」に分割され、必要に応じてページ単位で物理メモリにロードされたり、ディスクにスワップアウトされたりします。プログラムが参照する仮想アドレスは、OSのページテーブルによって対応する物理アドレスにマッピングされます。
Paged Attentionも同様に、KVキャッシュを固定サイズの小さなブロック(Paged Attentionではこれを「ブロック」と呼びます)に分割して管理します。
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KVキャッシュのブロック化:
KVキャッシュは、トークンごとにKeyベクトルとValueベクトルから構成されます。Paged Attentionでは、連続する複数のトークンのKVベクトルをまとめて、固定サイズの「ブロック」として扱います。例えば、1ブロックあたり16トークン分のKVキャッシュを格納するといった具合です。 -
論理ブロックと物理ブロック:
各シーケンス(リクエスト)は、自身のKVキャッシュを格納するために、連続した「論理ブロック」のリストを必要とします。例えば、40トークンのシーケンスであれば、1ブロック16トークンとすると、3つの論理ブロック(16 + 16 + 8 = 40トークン)が必要になります。
一方、GPUメモリ上の実際のKVキャッシュ格納場所は「物理ブロック」として管理されます。物理ブロックは固定サイズで、多数存在します。 -
ブロックテーブル:
Paged Attentionでは、各シーケンスごとに「ブロックテーブル」を持ちます。このブロックテーブルは、そのシーケンスの論理ブロックのインデックスが、GPUメモリ上のどの物理ブロックに対応しているかをマッピングする役割を果たします。例:「このシーケンスの論理ブロック0は、物理ブロック番号15に対応している」「論理ブロック1は、物理ブロック番号32に対応している」のようにです。 -
トークン生成時のブロック管理:
新しいトークンが生成されるたびに、そのトークンのKVベクトルを格納するための領域が必要になります。vLLMのPaged Attentionでは、現在処理中の論理ブロックに対応する物理ブロックがまだ割り当てられていなければ、空いている物理ブロックを探して割り当て、ブロックテーブルを更新します。現在の論理ブロックが満杯になった場合は、新しい論理ブロック(とそれに対応する物理ブロック)を割り当てます。不要になったブロックは解放され、他のシーケンスが利用できるようになります。
このブロックテーブルと物理ブロックの管理により、KVキャッシュはシーケンスごとに連続している必要がなく、物理メモリ上の非連続な領域に配置されていても、論理的には連続したKVキャッシュとして扱われます。アテンション計算を行う際には、ブロックテーブルを参照して必要な物理ブロックからKVデータを読み出して利用します。
Paged Attentionの効果
Paged Attentionによって、以下の点でKVキャッシュ管理の効率が大幅に向上します。
- メモリ使用効率の向上: KVキャッシュメモリは、シーケンスの実際の長さに応じて必要なブロックだけが割り当てられます。静的アロケーションのような最大シーケンス長に基づく無駄な領域確保が不要になるため、メモリの断片化が解消され、GPUメモリの使用効率が劇的に向上します。これにより、同じGPUメモリ量でより多くの同時リクエストや、より長いシーケンスを処理できるようになります。
- オーバーヘッドの削減: KVキャッシュの管理がシンプルになり、不要なコピーや移動が削減されます。
- Copy-on-Writeによる効率的なFork: Beam Searchなどでシーケンスが分岐する際、親シーケンスのKVキャッシュ全体をコピーする必要がありません。子シーケンスは親シーケンスのブロックテーブルをコピーし、物理ブロックを共有します。子シーケンスが新しいトークンを生成し、そのトークンに対応するKVベクトルを書き込む必要が生じた場合にのみ、共有している物理ブロックをコピーして自分専用のブロックを作成します(Copy-on-Write)。これにより、分岐時のメモリ消費とコピー時間を大幅に削減できます。
このように、Paged AttentionはKVキャッシュ管理における根本的なボトルネックを解消し、vLLMの高いメモリ効率とスケーラビリティの基盤となっています。
vLLMの中核技術 II: Continuous Batching – スループット最大化の鍵
LLM推論のもう一つの大きな課題は、多数の同時リクエストをいかに効率的に処理するかという点です。従来のフレームワークが採用していた静的バッチ処理には、前述の通り、パディングによる無駄な計算や、出力長が不揃いなことによる待機時間といった非効率性がありました。vLLMが導入する「Continuous Batching」は、この課題を解決するための革新的なアプローチです。
従来の静的バッチ処理の限界
静的バッチ処理では、以下のステップでリクエストが処理されます。
- 一定数のリクエスト(バッチサイズで定義)が集まるか、あるいは一定時間(タイムアウト)が経過するまで待機する。
- 集まったリクエストを一つの固定サイズのバッチとしてまとめる。
- バッチ内の全てのシーケンスが同じ長さになるようにパディングを行う。
- GPUでバッチ全体を推論カーネルに通す(例えば、1トークンを生成するための計算)。
- バッチ内の全てのリクエストが完了(終了条件を満たすか、最大出力長に達する)するまで、ステップ3と4を繰り返す。
このプロセスでは、以下のような非効率が発生します。
- 待機時間の発生: バッチが埋まるまで、あるいはタイムアウトまでリクエストは処理されません。これにより、特にリクエスト数が少ない場合や、バッチ処理のイテレーション間に不必要な遅延が発生します。
- GPUのアイドル時間: バッチ全体が次のイテレーションの準備ができるまで、GPUは待機状態になることがあります。また、バッチ内のいくつかのリクエストが既に完了している場合でも、バッチ全体が終わるまでそれらのリクエストが占有していたGPUリソース(特にKVキャッシュメモリ)は解放されません。
- パディングによる無駄な計算: パディングされたトークンに対しても計算リソースが費やされます。
- 出力長の不揃い: バッチ内の全てのリクエストが最も長いシーケンスの長さに合わせて進行するため、短い応答で済むリクエストでも、他の長いリクエストが完了するまで待機しなければなりません。これは、応答速度が重要なインタラクティブなアプリケーションで大きな問題となります。
これらの要因が合わさることで、従来の静的バッチ処理はGPUリソースの利用効率が低く、特に高いスループットと低いレイテンシを同時に実現するのが困難でした。
Continuous Batchingの仕組み:動的なバッチ最適化
vLLMのContinuous Batchingは、従来の静的バッチ処理の代わりに、リクエストの到着と進行状況に基づいてバッチをイテレーションごとに動的に再構築する手法です。その名前が示すように、リクエストを「途切れることなく(Continuously)」効率的な単位でバッチ処理し続けることを目指します。
Continuous Batchingの基本的な考え方は以下の通りです。
- リクエスト到着と即時処理: リクエストが到着すると、すぐに処理可能な状態であれば、待機キューに入れられるのではなく、現在進行中のバッチに即座に追加される可能性があります。
- イテレーションごとのバッチ再構築: 各推論イテレーション(つまり、バッチ内の各シーケンスが次のトークンを1つ生成するステップ)の直前に、vLLMは現在のGPUの状態(空きメモリ、実行中のリクエストの数など)と待機キューのリクエストを評価し、次のイテレーションで処理する最適なバッチを動的に構築します。
- 完了したリクエストの削除: 既に完了条件を満たしたリクエスト(例えば、EOSトークンを生成した、最大出力長に達したなど)は、次のイテレーションからはバッチから除外され、そのリソース(KVキャッシュメモリなど)は解放されます。
- 新しいリクエストの追加: 完了したリクエストによってリソースに余裕ができたり、GPUがアイドル状態になったりすると、待機キューから新しいリクエストが次のバッチに追加されます。
- バッチ内リクエストの追跡: 各リクエストの現在の進捗状況(生成済みのトークン数、使用しているKVキャッシュブロックなど)はvLLMによって精密に追跡されます。次のイテレーションでは、各リクエストはそれぞれの現在の状態から計算を再開します。
この動的なバッチ再構築プロセスは、GPUが常に最大限に活用されるように行われます。GPUが空いている時間があれば、待機中のリクエストがすぐにバッチに追加されて処理が開始されます。逆に、GPUが忙しい場合は、新しいリクエストの開始を一時的に遅らせて、実行中のリクエストがスムーズに完了できるようにします。
Continuous Batchingの効果
Continuous Batchingは、以下の点でLLM推論のスループットとレイテンシを劇的に改善します。
- スループットの大幅な向上: GPUのアイドル時間が最小限に抑えられ、常に「有用な」計算が行われます。パディングによる無駄な計算がなくなり、完了したリクエストはすぐにバッチから外されるため、GPUリソース(特にKVキャッシュメモリ)が効率的に再利用されます。これにより、単位時間あたりに処理できるリクエスト数(スループット)が大幅に向上します。
- レイテンシの削減: リクエストが到着してから処理が開始されるまでの待機時間が短縮されます。また、出力長の短いリクエストは、長いリクエストの完了を待つことなく自身の処理が完了次第すぐに結果を返すことができるため、応答時間(レイテンシ)が短縮されます。特にインタラクティブなアプリケーションにおいて、このレイテンシ削減はユーザーエクスペリエンスに直結します。
- リソース利用率の向上: GPUの計算リソース(CUDAコアなど)とメモリリソース(KVキャッシュ)の両方が、より効率的に活用されます。これにより、同じハードウェアでより多くのワークロードを処理できるようになり、インフラコストの削減にもつながります。
Paged Attentionによるメモリ効率の向上と、Continuous BatchingによるGPU利用率の向上および柔軟なバッチ管理が組み合わさることで、vLLMは従来のフレームワークを凌駕する推論パフォーマンスを実現しています。Paged Attentionが「より多くのリクエストや長いシーケンスをメモリに乗せられる」ようにし、Continuous Batchingが「メモリに乗っているリクエストを可能な限り効率的に処理する」役割を担っていると言えます。
その他のvLLMの最適化技術
vLLMは、Paged AttentionとContinuous Batchingという主要技術に加え、さらなるパフォーマンス最適化のために様々な技術を採用しています。
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高性能なCUDAカーネル:
vLLMは、Transformerモデルの計算(特にアテンション計算、行列乗算、活性化関数など)を高速に実行するために、高度に最適化されたCUDAカーネルを多数含んでいます。これには、Attention計算を高速化するFlashAttentionカーネルや、カスタム実装された各種演算カーネルが含まれます。これらのカーネルは、GPUのハードウェア特性(例:Tensorコア)を最大限に活用するように設計されており、演算スループットを向上させます。 -
モデル並列化のサポート:
巨大なLLM(例:70Bパラメータ以上のモデル)は、単一のGPUには収まりきらない場合があります。vLLMは、このような大規模モデルを複数のGPUやノードに分散して推論を行うためのモデル並列化手法をサポートしています。- テンソル並列 (Tensor Parallelism): モデルの特定の層(特に線形層やアテンション層)の行列計算を複数のGPUに分割して実行します。これは、GPUメモリが不足する場合に有効です。
- パイプライン並列 (Pipeline Parallelism): モデルの層を複数のGPUグループに分割し、各グループがバッチ内の異なるリクエストや異なる段階を同時に処理します。これは、バッチサイズが大きい場合にスループット向上に寄与します。
vLLMはこれらの並列化手法を組み合わせることで、単一GPUでは推論が困難な超巨大モデルにも対応可能です。
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量子化 (Quantization) のサポート:
モデルのパラメータを、例えばFP16からINT8やINT4のような低精度に量子化することで、モデルサイズとメモリ帯域幅の要求を大幅に削減できます。vLLMは、AWQ (Activation-aware Weight Quantization) や SqueezeLLM のような先進的な量子化手法をサポートしており、精度を大きく損なうことなくモデルを量子化し、より少ないGPUメモリで推論を実行することを可能にします。これにより、より多くのモデルを同時にロードしたり、より低コストのハードウェアで推論を実行したりすることが可能になります。 -
様々なサンプリング手法:
LLMの出力生成は確率的なプロセスであり、様々なサンプリング手法が用いられます。vLLMは、Greedy Search、Beam Search、Top-p sampling、Top-k sampling、Temperature samplingなど、主要なサンプリング手法を効率的にサポートしています。特にPaged AttentionのCopy-on-Write機能は、Beam Searchのような分岐を伴うサンプリング手法において、KVキャッシュのコピーオーバーヘッドを劇的に削減し、パフォーマンス向上に貢献します。 -
マルチGPU / マルチノード対応:
vLLMは、複数のGPUを搭載した単一サーバー内、さらには複数のサーバーにまたがる分散環境での推論をサポートしています。これにより、極めて高いスループットが要求されるエンタープライズレベルのアプリケーションにも対応できます。
これらの最適化技術は、Paged AttentionとContinuous Batchingによってもたらされる基本的な効率向上をさらに補完し、vLLMを現在のLLM推論サービングライブラリの中でも最高クラスのパフォーマンスを持つものにしています。
vLLMのパフォーマンス
vLLMはその設計思想と最適化技術により、従来のLLM推論フレームワークと比較して顕著なパフォーマンス向上を実現しています。公式のベンチマーク結果は、その優位性を明確に示しています。
(注:具体的なベンチマーク結果は、使用するハードウェア、モデル、バッチサイズ、シーケンス長、比較対象のフレームワークのバージョンなど、様々な要因によって変動します。以下は一般的な傾向を示すものです。最新かつ詳細なベンチマーク結果は、vLLMの公式GitHubリポジトリや関連論文、ブログ記事を参照してください。)
公式ベンチマークの一般的な傾向:
- スループット: vLLMは、特に同時リクエスト数が多い高負荷なシナリオにおいて、従来の静的バッチ処理を行うフレームワーク(例:Hugging FaceのTransformersライブラリを用いた標準的なパイプライン、初期のText Generation Inferenceなど)と比較して、スループットが数倍から数十倍向上することが報告されています。これは、主にContinuous BatchingによるGPU利用率の最大化と、Paged Attentionによるメモリ効率の向上によって、より多くのリクエストを効率的に並列処理できるようになったためです。
- レイテンシ: 低負荷時(リクエスト数が少ない場合)の初回トークン生成までのレイテンシは、他のフレームワークと大きな差がないか、あるいはContinuous Batchingの効果により若干低減される傾向があります。重要なのは、高負荷時でもスループットが維持・向上されるにも関わらず、個々のリクエストに対するレイテンシの悪化が比較的抑えられる点です。これは、完了したリクエストが速やかにバッチから除外され、待機時間が削減される Continuous Batching の効果です。
- メモリ効率: Paged AttentionによりKVキャッシュのメモリ使用効率が向上するため、同じGPUメモリ量でより大きなバッチサイズやより長いシーケンス長を処理可能になります。これは、利用可能なハードウェアリソースを最大限に活用できることを意味します。
例えば、Llama-7Bモデルを使用し、多数の同時リクエストを処理するベンチマークでは、vLLMがHugging Face TGIなどと比較して、スループットで3倍、GPT-J-6Bモデルでは最大24倍もの性能向上を達成したという初期の報告があります。(これらの具体的な数値はあくまで例であり、最新のベンチマーク結果は変動する可能性があります)。
この高いパフォーマンスは、LLMを活用したサービスを運用する上で、コスト削減とユーザーエクスペリエンス向上の両面で大きなメリットをもたらします。より少ないGPUリソースで同じワークロードを処理できる、あるいは同じリソースでより多くのユーザーにサービスを提供できるため、運用コストを削減できます。また、応答速度が速くなることで、ユーザーはより快適にサービスを利用できるようになります。
vLLMは、単なる研究プロジェクトに留まらず、AnyScaleやFireworks.aiといったLLM推論サービスプロバイダーのバックエンドとしても採用されており、その実環境での高いパフォーマンスと信頼性が証明されています。
vLLMの利用方法
vLLMの利用は非常に簡単です。Pythonライブラリとして提供されており、いくつかの簡単なステップでインストールし、既存のモデルをロードして推論を実行できます。
インストール
vLLMはPyPIで公開されています。GPU環境が整っている場合、以下のコマンドでインストールできます。
bash
pip install vllm
特定のCUDAバージョンやハードウェアに最適化されたビルドが必要な場合は、ソースからビルドすることも可能です。詳細は公式ドキュメントを参照してください。
基本的な推論コード
vLLMを使ってテキスト生成を行う基本的なPythonコードは以下のようになります。
“`python
from vllm import LLM, SamplingParams
モデルをロードします
Hugging FaceモデルIDを指定できます
quantization=’awq’ などの引数で量子化モデルも指定可能
llm = LLM(model=”meta-llama/Llama-2-7b-chat-hf”,
dtype=”auto”, # 自動で適切なデータ型を選択 (e.g., float16, bfloat16)
gpu_memory_utilization=0.9, # GPUメモリ使用率の上限を設定
tensor_parallel_size=1) # テンソル並列数 (単一GPUなら1)
テキスト生成のためのパラメータを設定します
sampling_params = SamplingParams(temperature=0.8, top_p=0.95, max_tokens=100)
プロンプトのリストを準備します
prompts = [
“The capital of France is”,
“Write a short poem about nature.”,
“Explain the concept of Paged Attention in simple terms.”
]
テキスト生成を実行します
vLLMがContinuous Batchingを使って効率的に処理します
outputs = llm.generate(prompts, sampling_params)
結果を表示します
for output in outputs:
prompt = output.prompt
generated_text = output.outputs[0].text
print(f”Prompt: {prompt!r}, Generated text: {generated_text!r}”)
“`
この例では、vllm.LLMクラスをインスタンス化してモデルをロードし、vllm.SamplingParamsで生成パラメータを設定し、llm.generate()メソッドにプロンプトのリストを渡すだけで、vLLMが内部でContinuous BatchingやPaged Attentionを駆使して効率的に推論を実行します。
OpenAI API互換サーバー
vLLMは、OpenAI APIと互換性のあるRESTful APIサーバーとして起動する機能も提供しています。これにより、OpenAI APIを利用するように設計された既存のアプリケーションから、コードをほとんど変更することなくvLLMを利用できるようになります。
サーバーを起動するには、以下のコマンドを実行します。
bash
python -m vllm.entrypoints.api_server \
--model meta-llama/Llama-2-7b-chat-hf \
--tensor-parallel-size 1 \
--gpu-memory-utilization 0.9 \
--port 8000 \
--host 0.0.0.0
このコマンドは、指定されたモデルをロードし、8000番ポートでAPIサーバーを起動します。クライアントからは、OpenAI APIのエンドポイント(例:v1/completions, v1/chat/completions)に対してHTTPリクエストを送信することで推論を実行できます。
例(Python, openaiライブラリを使用):
“`python
import openai
vLLMサーバーのエンドポイントを指定
openai.api_base = “http://localhost:8000/v1”
openai.api_key = “EMPTY” # vLLMサーバーではAPIキーは不要(またはダミー値)
テキスト生成リクエストを送信
response = openai.Completion.create(
model=”meta-llama/Llama-2-7b-chat-hf”, # サーバー起動時に指定したモデル名
prompt=”The capital of France is”,
max_tokens=100,
temperature=0.8
)
print(response.choices[0].text)
Chat Completion APIも利用可能
response = openai.ChatCompletion.create( … )
“`
このOpenAI API互換サーバー機能は、vLLMの導入障壁を大きく下げ、既存のLLMアプリケーションを高性能なvLLMバックエンドに簡単に切り替えることを可能にします。
設定オプション
vllm.LLMクラスやAPIサーバー起動コマンドには、様々な設定オプションが用意されています。
model: 使用するモデルの名前またはパス (Hugging FaceモデルIDなど)。tensor_parallel_size: テンソル並列に使用するGPU数。dtype: モデルのデータ型 (‘auto’, ‘half’, ‘bfloat16’, ‘float’). ‘auto’が推奨されます。gpu_memory_utilization: GPUメモリ使用率の最大値を0.0から1.0で指定。KVキャッシュなどに使用されるメモリ量を制限できます。OOMを防ぐために重要です。quantization: 使用する量子化手法 (‘awq’, ‘squeezellm’, Noneなど)。disable_sliding_window: Sliding Window Attentionを持つモデルで、Sliding Window Attentionを無効にするかどうかのフラグ。max_model_len: モデルが処理できる最大シーケンス長。
これらのオプションを適切に設定することで、特定のハードウェア環境やワークロードに合わせてvLLMのパフォーマンスをさらに最適化できます。
vLLMは、その使いやすさも大きな特長の一つです。複雑な設定やチューニングなしに、高いデフォルトパフォーマンスを提供します。
vLLMの応用とエコシステム
vLLMはその高いパフォーマンスと使いやすさから、様々なLLM関連プロジェクトやプロダクトの基盤として広く採用され始めています。
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商用LLM推論サービス:
AnyScale, Fireworks.ai, Together AI, DeepInfraなど、多くの商用LLM推論サービスプロバイダーがvLLMをバックエンドのエンジンとして採用しています。これは、vLLMが高いスループットと低いレイテンシを、コスト効率よく実現できることの証明と言えるでしょう。 -
社内LLMインフラストラクチャ:
多くの企業が、独自のLLMアプリケーションを構築・運用するためにvLLMを社内インフラストラクチャに導入しています。これにより、プライベートデータを用いたファインチューニングモデルのデプロイや、特定のワークロードに最適化された推論環境を構築することが可能になります。 -
研究・開発:
研究者や開発者は、vLLMの高速な推論能力を活用して、新しいモデルアーキテクチャの評価、強化学習を用いたモデルチューニング(RLHFなど)、大規模なデータセットを用いた生成実験などを効率的に行うことができます。 -
他のAIライブラリとの連携:
vLLMはPythonライブラリとして提供されており、他の主要なAI/MLライブラリとの連携も容易です。- LangChain / LlamaIndex: これらのオーケストレーションフレームワークは、vLLMをバックエンドのLLMとして簡単に組み込むことができます。例えば、LangChainの
ChatPromptTemplateやLLMChainとvLLMを組み合わせて、高性能なRAG(Retrieval Augmented Generation)システムやエージェントを構築できます。 - Hugging Face Ecosystem: vLLMはHugging FaceのTransformersライブラリでサポートされているモデル形式と互換性があり、Hugging Face Hubからモデルを直接ロードできます。
- LangChain / LlamaIndex: これらのオーケストレーションフレームワークは、vLLMをバックエンドのLLMとして簡単に組み込むことができます。例えば、LangChainの
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CLIツールやデモ:
vLLMは、APIサーバー以外にも、簡単なコマンドラインインターフェースやStreamlitを用いたデモアプリケーションなども提供しており、手軽にその性能を試すことができます。
vLLMの活発な開発コミュニティと、オープンソースという性質は、そのエコシステムをさらに拡大させていくでしょう。新しいモデルアーキテクチャのサポート、さらなる最適化、便利な機能の追加などが継続的に行われています。
今後の展望
vLLMプロジェクトは現在も活発に開発が続けられており、今後のさらなる進化が期待されています。
- 対応モデルの拡大: より多様なLLMアーキテクチャや、マルチモーダルモデルへの対応が進む可能性があります。
- さらなる最適化: Paged AttentionやContinuous Batching、カスタムカーネルなど、既存の技術に対するさらなるチューニングや改善が行われ、パフォーマンスの限界が押し上げられるでしょう。
- 分散システム機能の強化: 大規模クラスタ環境での運用をより容易にし、高いスケーラビリティと耐障害性を持つ推論サービスを構築するための機能が強化されることが考えられます。
- 新しいハードウェアへの対応: NVIDIA GPUだけでなく、AMD GPU、Intel Gaudi、TPUなど、他の種類のハードウェアやアクセラレーターへの対応が進む可能性があります。
- 運用・管理ツールの拡充: ロギング、モニタリング、オートスケーリングなど、本番環境での運用・管理を容易にするためのツールや機能が追加されるでしょう。
- 研究との連携: 最先端のLLM研究(新しいアテンションメカニズム、より効率的なモデル構造など)で得られた知見を積極的に取り込み、推論パフォーマンスに反映させていくでしょう。
vLLMは、LLMの推論パフォーマンスという、実用化における最も重要なボトルネックの一つを解消する上で、現在最も有望なソリューションの一つです。今後の開発によって、さらに多くのユーザーや組織がLLMをより低コストで、より高性能に活用できるようになることが期待されます。
まとめ
本記事では、大規模言語モデル(LLM)の推論パフォーマンスを劇的に改善するオープンソースライブラリvLLMについて、その詳細を解説しました。
LLM推論は、巨大なモデルサイズ、KVキャッシュの膨大なメモリ消費、そして静的バッチ処理における非効率性といった、いくつかの本質的な課題を抱えています。これらの課題が、高いレイテンシや低いスループット、そして高コストの原因となっていました。
vLLMは、これらの課題に対して革新的なアプローチを提供します。
- Paged Attention: 仮想記憶のページングに着想を得て、KVキャッシュを固定サイズのブロックに分割管理することで、KVキャッシュメモリの利用効率を劇的に向上させます。これにより、より多くの同時リクエストや長いシーケンス長を少ないメモリで処理できるようになりました。
- Continuous Batching: リクエストの到着と進行状況に応じてバッチを動的に再構築し、GPUが常に稼働状態を維持するように最適化します。これにより、GPUのアイドル時間が最小限に抑えられ、スループットが大幅に向上し、同時に不要な待機時間が削減されることでレイテンシも改善されます。
これらの主要技術に加え、vLLMは高性能なCUDAカーネル、モデル並列化、量子化サポートなど、様々な最適化技術を組み合わせることで、他のフレームワークと比較して圧倒的なパフォーマンスを実現しています。公式ベンチマークでは、スループットが最大で数十倍向上したという結果も報告されています。
vLLMは、その高いパフォーマンスだけでなく、インストールや利用の容易さも特長です。pipで簡単にインストールでき、数行のコードで基本的な推論を実行できます。また、OpenAI API互換サーバー機能を提供しているため、既存のアプリケーションからの移行も容易です。
現在、vLLMは商用LLM推論サービスや企業の社内インフラなど、幅広いシーンで活用されており、その実力と信頼性が証明されています。活発な開発コミュニティによって、対応モデルの拡充、さらなる最適化、新機能の追加などが継続的に行われており、今後の進化にも大きな期待が寄せられています。
LLMの推論パフォーマンスは、その実用化と普及において極めて重要な要素です。vLLMは、この分野におけるブレークスルーとして、より高性能でコスト効率の高いLLMアプリケーションの開発・運用を可能にする強力なツールです。LLMを活用したサービスを構築・運用されている方、あるいはこれから取り組もうと考えている方は、ぜひ一度vLLMを試してみて、その圧倒的なパフォーマンスを体感されることをお勧めします。
vLLMの登場により、大規模言語モデルをより身近で、より強力なツールとして活用できる未来が、着実に近づいています。