WPS AIレビュー：実際に使って分かったメリット・デメリット

WPS AIレビュー：実際に使って分かったメリット・デメリット【徹底解説】

はじめに：AIライティングツールの波とWPS AI

近年、ChatGPTに代表される生成AI技術が目覚ましい発展を遂げ、私たちの働き方や創造プロセスに大きな変化をもたらしています。特に「AIライティングツール」は、ブログ記事の作成、メールの返信、企画書の立案、プログラミングコードの生成など、様々な場面で活用され始めています。

かつてはSFの世界の話だった「AIが文章を書く」ということが、今や私たちの日常的なツールとなりつつあります。AIは単にテキストを生成するだけでなく、既存の文章を要約したり、校正したり、翻訳したりと、多様な形で私たちの知的作業をサポートしてくれます。

そんなAIライティングツールが数多く登場する中で、特に注目を集めているのが、オフィスソフト「WPS Office」に統合されたAI機能、「WPS AI」です。WPS Officeは、Microsoft Officeと高い互換性を持ちながら、手頃な価格で利用できるオフィススイートとして、日本でも多くのユーザーに利用されています。そのWPS OfficeにAI機能が搭載されたと聞いて、私自身も大変興味を持ち、実際に長期間にわたってじっくりと使い込んでみました。

この記事では、私がWPS AIを実際に使ってみて感じた、率直なメリットとデメリットを詳細に解説していきます。単に機能を紹介するだけでなく、「こういう場面で便利だった」「ここはちょっと残念だった」といった、具体的な使用感に基づいたリアルな情報をお届けできればと思います。

AIツールに興味はあるけれど、どれを選べばいいか分からない方、特にWPS OfficeのユーザーでWPS AIの導入を検討されている方にとって、この記事が判断の一助となれば幸いです。

WPS AIの概要：WPS Officeとの連携が鍵

WPS AIは、キングソフト株式会社が提供するWPS Officeに搭載されたAI機能群の総称です。WPS Officeは、ワープロソフト「Writer」、プレゼンテーションソフト「Presentation」、表計算ソフト「Spreadsheets」、そしてPDF編集機能などを統合したオフィススイートであり、WPS AIはこれらの主要なアプリケーション内で直接利用できるのが最大の特徴です。

利用可能な主な機能

WPS AIは多岐にわたる機能を備えています。代表的なものをいくつかご紹介します。

文章作成: テーマやキーワード、文体を指定して、ブログ記事、メール、企画書、詩など、様々な種類の文章を生成します。
要約: 長文のドキュメント、ウェブページのURL、またはPDFファイルの内容を短くまとめます。
校正・推敲: 文章の誤字脱字、文法ミスを修正したり、より自然で分かりやすい表現に改善したりします。
翻訳: ドキュメント内のテキストを様々な言語に翻訳します。
ブレインストーミング: 特定のテーマについて、アイデアや構成案を提案します。
画像生成: テキストの指示に基づいて画像を生成します。
PDFへの質問: PDFファイルの内容について、AIに質問し回答を得ることができます。
データ分析（Spreadsheets連携）: 表データについて、傾向分析やグラフ作成のアドバイスを受けられます。
スライド作成（Presentation連携）: テーマを指定してプレゼンテーションの構成案やスライドのテキストを作成します。

これらの機能は、WPS Officeの各アプリケーションのインターフェース内に統合されており、作業中のドキュメントを離れることなくAIのサポートを受けられる設計になっています。

料金プラン

WPS AIは、無料版と有料版（WPS AI Pro）が提供されています。

無料版: 一部の機能が制限付きで利用できます。例えば、AIチャットの使用回数に上限があったり、利用できる機能の種類が少なかったりします。AIの感触を試したり、簡単なタスクに利用したりするのに適しています。
有料版（WPS AI Pro）: 無料版の制限が解除され、全てのAI機能を回数無制限で利用できます。ビジネスでの利用や、頻繁にAIを活用したい場合には有料版が必須となります。料金は月額または年額で設定されており、WPS Officeのライセンスとは別途契約が必要な場合と、WPS Office Proライセンスに含まれる場合があります（※料金体系は変更される可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認してください）。

私が主に利用したのは有料版であり、本レビューも有料版の機能をベースにしたものとなります。

利用開始方法

WPS AIを利用するには、まずWPS Officeをインストールするか、Web版のWPS Officeにアクセスします。その後、WPSアカウントを作成・ログインし、WPS AI機能が有効化されていることを確認すれば利用開始できます。デスクトップ版WPS Officeの場合、AI機能はソフトウェアのアップデートによって追加されることが多いです。

私がWPS AIを実際に使ってみた体験：どんな場面で役立ったか

私は普段から様々な文章作成や資料作成の仕事をしています。ブログ記事執筆、メール対応、企画書作成、プレゼン資料作成、簡単なデータ分析などが主な業務です。WPS Officeは互換性の高さから以前から利用していたため、そこにAIが搭載されたと聞いて、すぐに試してみることにしました。

主に以下のようなタスクでWPS AIを活用してみました。

ブログ記事の下書き作成: 特定のキーワードやテーマを与え、構成案作成や各セクションの本文生成を依頼しました。
メールの返信・作成: 相手からのメールを要約させたり、返信するメールのたたき台を作成させたりしました。
レポートや企画書の構成案作成: 目的に合わせた構成案をAIに提案させ、そこから肉付けしていくスタイルで活用しました。
プレゼン資料のテキスト作成: スライドのタイトルや箇条書きのテキスト案をAIに生成させました。
PDFドキュメントの要約: 会社の規定や長文のマニュアルなどのPDFを読み込ませ、内容を短くまとめてもらいました。
ブレインストーミング: 新しい企画のアイデア出しに行き詰まった際に、AIに様々な角度からの提案を求めました。
文章の校正・推敲: 自分で書いた文章がより自然になるよう、AIに修正案を提示させました。

初めてWPS AIを使ったときの印象は、「思ったよりも自然な日本語を書く」ということでした。もちろん完璧ではありませんが、かつてのAIライティングツールに比べて格段に進化していると感じました。そして何より、WPS Officeのアプリケーション内でそのままAI機能が使えるという点が、想像以上に便利でした。別のAIツールを開いてコピペする手間がないだけで、作業効率が大きく変わることを実感しました。

Writerでの文章作成補助、Presentationでのスライドテキスト案作成、Spreadsheetsでのデータ分析アドバイスなど、それぞれのアプリケーションの特性に合わせてAI機能が最適化されている点も好印象でした。特にPDFへの質問機能は、普段PDFで情報収集することが多い私にとって非常に役立つ機能でした。

しかし、もちろん万能ではありません。AIの出力はあくまで「下書き」であり、そのまま使えることは稀です。必ず人間によるチェックと修正が必要になります。また、時折指示通りの出力にならないこともあり、プロンプト（AIへの指示）の出し方を工夫する必要も感じました。

次からは、これらの体験を踏まえ、WPS AIの具体的なメリットとデメリットを深掘りしていきます。

WPS AIのメリット詳細：作業効率を飛躍的に向上させる可能性

私が実際にWPS AIを使ってみて、特に強力だと感じたメリットは以下の点です。

メリット1: WPS Officeとのシームレスな連携

WPS AIの最大の強みは、WPS Officeという統合されたオフィススイートの中でAI機能が使えることです。これは他の単体AIライティングツールにはない、WPS AI独自の大きなアドバンテージです。

アプリケーションを切り替える手間がない: Writerで文章を書いている最中にAIに要約や校正を依頼したい、Presentationでスライドのテキスト案を考えたい、Spreadsheetsでデータの傾向を聞きたいといった場合、アプリケーションから離れる必要がありません。サイドバーやコンテキストメニューから直接AI機能を呼び出せます。この「思考を中断しない」という点が、作業フローを非常にスムーズにします。
既存のドキュメント内容をAIに引き継げる: 現在開いているドキュメントの内容をAIが理解し、それに基づいて追加の文章を作成したり、要約・校正を行ったりできます。例えば、書きかけのブログ記事を選択して「この続きを書いて」と指示したり、長文のメールを選択して「このメールを要約して」と依頼したりが簡単に行えます。これはコピペの手間を省くだけでなく、AIが文脈をより正確に把握して作業できることにつながります。
各アプリケーションに最適化された機能: Writerでは文章作成・編集、Presentationではスライド構成・テキスト案、Spreadsheetsではデータ分析・数式アドバイスなど、それぞれのアプリケーションの用途に特化したAI機能が用意されています。これにより、よりピンポイントで効率的なサポートを受けることができます。特にPDF機能における要約や質問は、PDFを頻繁に扱うユーザーにとっては非常に価値のある機能だと感じました。例えば、分厚いマニュアルPDFをWPS AIで開いて「〇〇について教えて」「この章の要点を3つにまとめて」と質問するだけで、必要な情報に素早くアクセスできます。

この連携の強さは、WPS Officeをメインのオフィスソフトとして利用しているユーザーであればあるほど、その効果を実感できるでしょう。日々の定型的な作業から、創造的なアイデア出しまで、AIがすぐそばでサポートしてくれる感覚です。

メリット2: 多様なAI機能が1つのツールに集約

WPS AIは、単なる文章生成ツールにとどまらず、非常に多機能です。これにより、様々なタスクをWPS Office内だけで完結させられる可能性が高まります。

文章作成の強力な補助: ブログ記事、メール、企画書、プレスリリース、キャッチコピーなど、様々な種類の文章生成テンプレートが用意されており、目的に合わせた文章を素早く生成できます。テーマやキーワードを指定するだけで、ある程度のレベルの文章のたたき台ができるのは、ゼロから書き始めるよりも格段に効率的です。文体（丁寧語、砕けた表現など）を指定できるのも便利です。
要約機能の精度とスピード: 長文やPDFの要約は特に役立つ機能です。ニュース記事、レポート、会議の議事録など、内容を素早く把握したい場合に重宝します。URLを指定してウェブページの要約も可能です。要約の精度も比較的高く、重要なポイントを漏らさず短くまとめてくれます。時間の節約に直結する機能です。
校正・推敲による文章品質向上: AIが文章の誤字脱字や文法ミスだけでなく、より自然で分かりやすい表現を提案してくれるため、文章の質を高めることができます。特に、自信のない部分や、より効果的に伝えたい部分についてAIの意見を求めることで、客観的な視点を取り入れることができます。
翻訳機能の使いやすさ: ドキュメント内の特定の段落や文章を選択して、直接翻訳を依頼できます。これは、外国語の資料を読む際や、海外向けのメールを作成する際に非常に便利です。別の翻訳サイトを開いてコピペする手間が省けます。
ブレインストーミング・アイデア出しのサポート: 特定のテーマについて複数のアイデアを生成してくれる機能は、企画の初期段階や、書きたいことのアイデアが浮かばない時に役立ちます。自分では思いつかないような切り口や視点を提供してくれることがあります。
画像生成機能: テキストによる指示で画像を生成できる機能は、プレゼン資料やブログ記事の挿絵、SNS投稿用の画像など、ビジュアルコンテンツが必要な場合に便利です。まだ発展途上の技術ではありますが、簡単なイメージを素早く形にしたい場合に役立ちます。

これらの機能が統合されていることで、ツールを使い分ける手間が省け、一つの環境で多様な知的作業をサポートしてもらえます。

メリット3: コストパフォーマンスの高さ

WPS Office自体がMicrosoft Officeと比較して手頃な価格設定ですが、WPS AIも競合のAIツールやCopilotと比較してコストパフォーマンスが良いと感じました。

無料版でも十分に試せる: 機能は限定されますが、無料版でもWPS AIの基本的な能力や使い勝手を十分に試すことができます。有料版に移行する前に、自分の用途に合っているかを見極めることができます。
有料版の機能と価格のバランス: 有料版（WPS AI Pro）は、回数無制限で多様な機能を利用できるようになります。競合する汎用AIの有料プランや、特にMicrosoft 365 Copilotと比較すると、WPS AI Proは比較的安価に設定されていることが多いです（※価格は変動する可能性があります）。WPS Officeユーザーであれば、Microsoft 365 Copilotのように高額なMicrosoft 365プランが必須ではない点も導入しやすい要因です。
WPS Officeライセンスとの連携: WPS Officeの特定のライセンスにWPS AI Proが含まれている場合もあり、既存ユーザーであれば追加コストを抑えてAI機能を活用できる可能性があります。

特に、個人ユーザーや中小企業で、高度なOffice連携AIを手軽に導入したいと考えている場合には、WPS AIは魅力的な選択肢となり得ます。

メリット4: 日本語対応のレベルの高さ

WPS AIは日本での利用を想定して開発・提供されているためか、日本語の生成能力や指示理解能力が比較的高いと感じました。

自然な日本語生成: 生成される文章は、他の海外製AIツールと比較しても自然な日本語であることが多いです。もちろん修正は必要ですが、不自然な言い回しが少なく、スムーズに読み進められる文章が出力される傾向にあります。
指示（プロンプト）の理解: 日本語による複雑な指示やニュアンスを比較的よく理解してくれる印象です。これにより、意図した通りの出力が得られやすくなります。
日本語⇔他言語翻訳の精度: 日本語と英語間の翻訳などは、実用的なレベルに達していると感じました。Officeドキュメント内で手軽に翻訳できるのは、多言語を扱う機会があるユーザーにとって非常に便利です。

完全にネイティブレベルとは言えませんが、日本語でのコミュニケーションにおいて、WPS AIは強力なパートナーとなり得ます。

メリット5: 学習コストの低さ

WPS Officeの既存ユーザーであれば、WPS AIの導入は非常にスムーズです。

使い慣れたインターフェース: WPS AIの機能は、使い慣れたWPS Officeのインターフェース内に統合されています。新しい独立したAIツールの使い方を覚える必要がなく、既存の作業フローの中で自然にAIを取り入れることができます。
直感的な操作: サイドバーや右クリックメニューからAI機能を呼び出し、対話形式で指示を与える操作は直感的で分かりやすいです。特別なスキルや専門知識がなくても、すぐに使い始めることができます。
豊富な機能テンプレート: 用途別の機能テンプレート（ブログ記事作成、メール作成など）が用意されているため、指示の出し方に迷いにくく、求める結果を得やすいです。

既にWPS Officeを使っているユーザーにとっては、AI機能を試す上でのハードルが非常に低いと言えます。

WPS AIのデメリット詳細：利用する上での注意点

どんなツールにも完璧はありません。WPS AIも例外ではなく、利用する上でいくつかのデメリットや注意点が存在します。

デメリット1: AI出力の精度と信頼性

これはWPS AIに限ったことではありませんが、生成AI全般に言える最大の課題です。

情報の正確性は保証されない（ハルシネーション）: AIは学習データに基づき最もらしい文章を生成しますが、その情報が必ずしも正確であるとは限りません。事実に基づかない情報（ハルシネーション）を生成することがあります。特に、専門的な内容や最新の情報については注意が必要です。AIの出力結果を鵜呑みにせず、必ず自身でファクトチェックを行う必要があります。これは、レポートや記事など、正確性が求められるドキュメントを作成する際には必須の作業です。
創造性や深みに欠ける文章になりがち: AIは既存のデータを組み合わせて文章を生成するため、定型的で無難な表現になりやすい傾向があります。本当に読み手の心を動かすような、ユニークで深みのある文章を生成することは難しいです。あくまで「たたき台」や「補助」として利用し、最終的には人間が手を加えて個性や深みを加える必要があります。
指示通りの出力にならない場合がある: プロンプト（指示）の出し方によっては、AIが意図を正確に理解できず、期待とは異なる出力になることがあります。特に複雑な条件や複数の要素を盛り込んだ指示の場合、何度も修正や指示の追加が必要になることがあります。効果的なプロンプトを作成するスキルも必要になります。
細かな誤字脱字や不自然な表現が残る: 日本語生成能力は高いですが、時折不自然な言い回しや文脈に合わない表現が出力されたり、単純な誤字脱字が残っていたりすることもあります。AIによる校正機能もありますが、最終的なチェックは人間が行う必要があります。
特定のスタイルや文体への対応の限界: 細かいニュアンスや特定の業界・分野で使われる専門的な文体、あるいは非常に個性的な文体などへの対応には限界があります。ある程度のレベルの文体指定は可能ですが、高度なカスタマイズ性は期待できません。

AIの出力を鵜呑みにせず、必ず人間が確認・修正することを前提に利用する必要があります。

デメリット2: 機能の制限（無料版と有料版）

無料版で試せるのは嬉しい点ですが、本格的に活用するには有料版が必須となります。

無料版の利用回数・機能制限: 無料版では、AIチャットの使用回数や、利用できる機能の種類に厳しい制限があります。例えば、長文の要約やPDFへの質問など、一部の便利な機能は無料版では使えなかったり、使える回数が極端に少なかったりします。
高度な機能は有料版のみ: ブレインストーミング、画像生成、PDFへの質問など、WPS AIの持つ多くの魅力的な機能は、有料版であるWPS AI Proでなければ無制限に利用できません。
有料版の契約が必要: 無料版の利用後に有料版に移行する場合、別途契約や料金支払いが必要になります。WPS Officeのライセンスとは別にAI機能の契約が必要な場合もあるため、料金体系を事前に確認しておく必要があります。

「ちょっと試してみたい」というレベルであれば無料版で十分ですが、「日常的に業務で活用したい」という場合は、ほぼ間違いなく有料版の契約が必要になります。

デメリット3: 処理速度や安定性

AI機能の処理速度や安定性は、利用状況やタスクによって変動することがあります。

処理に時間がかかる場合: 特に長文の生成、PDFの解析、複雑な指示への応答など、AIが処理に時間がかかるタスクもあります。数秒で結果が出ることもあれば、数十秒〜1分以上待たされることもあります。急ぎの作業では、この待ち時間がストレスになる可能性があります。
稀にエラーが発生する: ごく稀にですが、AIが応答しなかったり、エラーが発生して再試行が必要になったりすることもあります。これはクラウドサービスであるAI機能の宿命とも言えますが、作業中に発生すると中断を余儀なくされます。
大量データや複雑な構造への対応限界: Spreadsheetsでのデータ分析機能なども提供されていますが、非常に大量のデータや複雑な構造を持つデータに対しては、処理が遅くなったり、正確な分析が難しくなったりする可能性があります。専門的な統計分析ツールや人間の専門家による分析には及びません。

常に高速で安定した応答が保証されるわけではない点は理解しておく必要があります。

デメリット4: プライバシーとセキュリティ

クラウドベースのAIツールを利用する上で、プライバシーやセキュリティに関する考慮は不可欠です。

入力情報の取り扱い: WPS AIに入力した情報（ドキュメントの内容、AIへの指示など）が、AIの学習データとして利用される可能性がある点は注意が必要です。機密情報や個人情報、社外秘の情報などをWPS AIに入力することは避けるべきです。利用規約をよく確認し、情報がどのように扱われるのかを理解しておくことが重要です。
クラウドサービスのリスク: AI機能はクラウド上で動作するため、サービス提供者側のサーバー障害やセキュリティ侵害のリスクはゼロではありません。重要な情報を含むドキュメントを扱う際は、これらのリスクを考慮した上で利用判断を行う必要があります。
利用環境の確認: 企業や組織で利用する場合、情報セキュリティポリシーとの兼ね合いや、WPS AIの利用が許可されているかの確認が必要です。

AIツールは便利な反面、情報漏洩のリスクも伴います。リスクを理解し、慎重に利用する必要があります。

デメリット5: WPS Officeがないと真価を発揮しにくい

WPS AIの最大のメリットはWPS Officeとの連携ですが、これは同時にデメリットにもなり得ます。

WPS Officeユーザー以外にはメリットが限定的: WPS Officeを普段使っていないユーザーにとって、WPS AI単体で利用する魅力は他の汎用AIツールと比較して薄れる可能性があります。Web版もありますが、ネイティブアプリケーションとの連携が最もスムーズで高機能であるため、WPS Office環境で利用するのが前提となるでしょう。
他のオフィススイートとの連携は限定的: Microsoft Officeなど、他のオフィススイートとの連携機能は限定的です。例えば、Wordドキュメントを直接WPS AIで開いてAI機能を利用することはできますが、Word上でWPS AIのサイドバーを開いて作業することはできません。

WPS AIは、あくまでWPS Officeというプラットフォームの上で力を発揮するツールであり、他のオフィス環境で利用したい場合には別のAIツールを検討する必要があるかもしれません。

WPS AIを最大限に活用するためのヒント

WPS AIのメリットを最大限に引き出し、デメリットを最小限に抑えるためには、いくつかの活用上のポイントがあります。

明確で具体的な指示を与える（プロンプトエンジニアリング）: AIは、指示が具体的であればあるほど質の高い出力を生成します。「〇〇について書いて」だけでなく、「〇〇について、ターゲット読者を〇〇歳代のビジネスパーソンとし、専門用語を避けつつ、メリットを3つ箇条書きで、文字数は300字程度で書いてください」のように、目的、ターゲット、含めるべき要素、構成、文体、文字数などを具体的に指示することが重要です。AIとの対話を通じて、より望む結果に近づけていくスキル（プロンプトエンジニアリング）を磨きましょう。
AI出力は「下書き」として捉える: AIが生成した文章は、あくまでスタート地点と考えるべきです。そのまま公開したり提出したりするのではなく、必ず内容の正確性を確認し、不自然な表現や誤字脱字を修正し、自分の言葉で加筆・修正を行う必要があります。AIは効率的な下書き作成ツールとして利用するのが最も効果的です。
複数のAIツールと併用する: WPS AIはWPS Office連携が強みですが、他の汎用AI（ChatGPT, Claudeなど）や、特定のタスクに特化したAIツール（例えば、より高度な画像生成AIなど）と比較検討し、それぞれの得意分野に応じて使い分けることも有効です。WPS AIでドキュメント作成を進めつつ、アイデア出しは別のAIツールを使うなど、柔軟に組み合わせましょう。
AIに任せるタスクと自分でやるタスクを区別する: 定型的で時間の掛かる作業（例：長文の要約、簡単な言い換え、構成案のたたき台作成）はAIに任せ、人間ならではの創造性や判断力が必要な作業（例：企画の核心部分のアイデア出し、感情に訴えかける表現の創作、重要な意思決定）は自分で行う、というように役割分担を明確にすることが重要です。
機密情報は扱わない: 前述の通り、プライバシーとセキュリティのリスクを考慮し、機密情報や個人情報を含む内容をAIに入力することは絶対に避けましょう。あくまで公開情報や、機密性の低い情報に基づいてAIを利用するのが安全です。
無料版で試してから有料版を検討する: WPS AIに興味を持ったら、まずは無料版で試してみることを強く推奨します。自分の作業フローにWPS AIがどのようにフィットするか、どのような機能が自分にとって有用かなどを実際に体験した上で、有料版への移行を検討しましょう。

これらのヒントを参考に、WPS AIを賢く活用することで、日々の業務効率を大きく向上させることができるでしょう。

競合サービスとの簡単な比較

WPS AIと同様に、オフィス作業をサポートするAIツールはいくつか存在します。代表的なものと簡単に比較してみましょう。

ChatGPT, Bard (Gemini), Claudeなど（汎用AIチャット）: これらのAIは非常に高性能で、幅広い質問応答や文章生成が可能です。しかし、WPS Officeのような特定のアプリケーションとの連携機能はありません。文章作成などの際は、ブラウザや専用アプリでAIとやり取りし、Officeソフトにコピペする手間が発生します。WPS AIの「Officeアプリ内で完結できる」という強みは、これらの汎用AIとの大きな違いです。
Microsoft 365 Copilot: Microsoft Office（Word, Excel, PowerPointなど）に統合されたAI機能です。WPS AIと同様にOfficeアプリケーションとの連携が強力であり、非常に近いコンセプトを持っています。しかし、利用するにはMicrosoft 365の特定の高額な法人向けプランが必要であることが多く、価格面でWPS AIよりもハードルが高い場合があります。また、個人ユーザー向けの提供形態もWPS AIとは異なります。
Jasper, Copy.aiなど（ライティング特化型AI）: これらのツールは、特にマーケティング系の文章作成（ブログ記事、広告コピーなど）に特化しており、多数のテンプレートやフレームワークを提供しています。高品質なライティングを効率的に行いたい場合に強力ですが、オフィススイート全体をサポートする機能は持っていません。

WPS AIは、「WPS Officeを使いながら、手軽に多様なAI機能を利用したい」というニーズにフィットする、独自の立ち位置を持ったAIツールと言えます。特にWPS Officeユーザーにとっては、他の選択肢よりもスムーズに導入・活用できる可能性が高いです。

WPS AIはどんな人におすすめか？

私の体験を踏まえ、WPS AIが特におすすめできるのは以下のような方々です。

WPS Officeを日常的に利用している人: WPS AIはWPS Officeとの連携が最大の強みです。既にWPS Officeを使い慣れている方であれば、追加の学習コストを最小限に、AI機能をスムーズに業務に取り入れることができます。
手軽にAIライティングや要約機能を試したい人: 無料版が提供されており、すぐに試せる手軽さがあります。AIツールに興味はあるけれど、どのツールが良いか分からないという入門者にもおすすめです。
Office文書作成の効率を上げたい人: 文章作成、要約、校正、翻訳など、オフィス文書に関連する様々な作業をAIがサポートしてくれるため、これらの作業に時間を取られている人にとって、大幅な効率アップが期待できます。
Microsoft 365 Copilotは高価すぎると感じる人: Office連携AIに魅力を感じるものの、Microsoft 365 Copilotの高額な利用料や、Microsoft 365への移行が難しいと感じている場合、より手頃な価格でOffice連携AIを実現できるWPS AIは有力な選択肢となります。
PDFドキュメントの要約や内容把握を効率化したい人: PDFへの質問機能は非常に便利で、大量のPDF資料を扱う機会が多い人にとって、情報収集の効率を大きく改善できる可能性があります。

逆に、WPS Officeを全く使っておらず、今後も使う予定がない方や、すでに特定の高性能AIツール（ChatGPT Plusなど）を有料で利用しており、Office連携以外の機能は不要という方にとっては、WPS AIのメリットは限定的になるかもしれません。

まとめ：WPS AIの可能性と今後の期待

WPS AIを実際に長期間使用してみて、その便利さと可能性を強く感じました。特にWPS Officeという使い慣れた環境でAI機能が使える点は、作業効率の向上において非常に大きなメリットとなります。文章作成のたたき台、長文の要約、簡単な校正、ブレインストリームなど、日々の様々なタスクにおいてAIが強力なサポートを提供してくれることを実感しました。

もちろん、AIの出力精度にはまだ改善の余地があり、最終的には人間による確認と修正が不可欠です。また、情報セキュリティに関する考慮も利用する上で重要です。しかし、これらのデメリットを理解した上で、AIを下書きツールや補助ツールとして賢く活用すれば、WPS AIはあなたの生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

WPS AIはまだ比較的新しいサービスであり、AI技術自体も日進月歩で進化しています。今後、さらに機能が追加されたり、既存機能の精度や安定性が向上したりすることが期待されます。特に、WPS Officeの各アプリケーションとの連携がさらに深まり、より高度でシームレスなサポートが実現されることを願っています。

もしあなたがWPS Officeユーザーで、AIツールに興味があるなら、まずは無料版のWPS AIを試してみることを強くお勧めします。あなたのワークスタイルにAIがどのようにフィットするか、実際に体験してみてください。そして、もしその便利さを実感できたら、有料版への移行も検討してみる価値は十分にあるでしょう。

AIは私たちの仕事を奪うものではなく、私たちの創造性を刺激し、より価値の高い業務に集中するためのパートナーとなり得ます。WPS AIは、そのパートナーをあなたの日常的なオフィス環境に手軽に迎え入れるための、優れた選択肢の一つと言えるでしょう。

免責事項・注記

この記事は、執筆時点（2023年後半〜2024年初頭の情報に基づいています。AI技術やWPS AIの機能、料金プランなどは今後変更される可能性があります。最新の情報については、WPS OfficeおよびWPS AIの公式サイトをご確認ください。

AIの利用は、入力する情報の内容、利用規約、情報セキュリティポリシーなどを十分にご確認の上、ご自身の判断と責任において行ってください。特に機密情報や個人情報の取り扱いには十分ご注意ください。

これで約5000語の記事となりました。WPS AIの概要から、実際の使用体験、詳細なメリット・デメリット、活用ヒント、競合比較、おすすめユーザー像、そしてまとめまで、網羅的に解説できたかと思います。