【プロが解説】富士フイルム X-H2S/X-H2の魅力と特徴を紹介

【プロが解説】富士フイルム X-H2S/X-H2の魅力と特徴を紹介

富士フイルムのXシリーズは、その美しい色再現、コンパクトなボディ、そして写真撮影における道具としての哲学で、世界中の写真愛好家からプロフェッショナルまで、幅広い層に支持されてきました。特に、フラッグシップモデルは常にその時代の技術の粋を集めた存在であり、新たな撮影体験を提案してきました。

そんなXシリーズの新たなフラッグシップとして登場したのが、X-H2SとX-H2です。これまでのXシリーズのフラッグシップといえば、伝統的なダイヤル操作を重視したX-T系や、レンジファインダーライクなX-Pro系が主役でした。しかし、X-Hシリーズは、より現代的な操作性、堅牢性、そして何よりも高いパフォーマンスを追求したシリーズとして、X-H1から始まり、この度X-H2SとX-H2という2つの個性的なモデルとして大きく進化しました。

この記事では、プロの視点から見たX-H2SとX-H2の魅力と特徴を、詳細かつ実践的に解説していきます。両モデルが持つ共通の素晴らしいプラットフォーム、そしてそれぞれが持つ独自性の深い部分に迫り、どのようなユーザーに、どのようなメリットをもたらすのかを明らかにします。

1. X-Hシリーズとは何か? その立ち位置

まず、X-HシリーズがXシステムの中でどのような位置づけにあるのかを理解することが重要です。初代X-H1は、強力なボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載し、動画性能も従来のXシリーズから大きく向上させたモデルでした。これは、静止画性能に加えて、動画や手持ち撮影の安定性を求めるユーザーへの明確なメッセージでした。

そして、X-H2SとX-H2は、このコンセプトをさらに推し進め、「プロフェッショナルの要求に応える最高のパフォーマンス」を追求した結果として誕生しました。これまでのX-TやX-Proが「写真撮影の体験そのもの」を重視する側面があったのに対し、X-Hは「結果としてのハイクオリティな静止画・動画」を効率的かつ確実に得るための「ツールとしての性能」を最大限に引き上げたシリーズと言えます。

操作系も、X-T/X-Proのような独立ダイヤル方式ではなく、モードダイヤルを中心とした現代的なUIを採用しています。これは、特に動画撮影や多様な撮影設定を頻繁に切り替えるプロの現場において、迅速かつ直感的な操作を可能にするための選択です。大型のグリップやサブ液晶の搭載なども、この「プロの道具」としての思想を反映しています。

2. X-H2S vs X-H2: 決定的な違い「センサー」

X-H2SとX-H2は、同じボディプラットフォーム、同じ画像処理エンジン「X-Processor 5」、同じ強力なIBIS、同じ高性能EVFを共有しながらも、決定的に異なる点があります。それは、搭載しているイメージセンサーです。このセンサーの違いこそが、両モデルの性格とターゲットユーザーを明確に分けています。

2.1. X-H2S: スピードと動画性能の「S」(Speed)

X-H2Sに搭載されているのは、新開発の「有効約2616万画素 積層型(Stacked)CMOSセンサー」です。このセンサーは、その名の通りセンサーの構造が積層型になっており、データ読み出し速度が従来のセンサーと比較して圧倒的に高速です。

この高速読み出しがもたらす最大のメリットは以下の3点です。

  • 超高速連続撮影: 電子シャッター使用時にブラックアウトフリーで最大40コマ/秒の連続撮影が可能です(対象レンズ、設定に依存)。これは動体撮影において決定的瞬間を逃さないための強力な武器となります。メカニカルシャッターでも最大15コマ/秒と高速です。
  • ローリングシャッター歪みの抑制: 高速な読み出しにより、電子シャッター使用時の動体撮影や、パンニング時に発生しやすい画像の歪み(ローリングシャッター現象)が大幅に抑制されます。これにより、より安心して電子シャッターを使用できます。
  • 動画性能の向上: センサー全体を高速で読み出すことが可能になったため、6.2K/30Pのオープンゲート(3:2)、4K/120Pなどの高解像度・高フレームレート動画を実現しました。また、内部でProResコーデック(ProRes 422 HQ, ProRes 422, ProRes 422 LT)での記録にも対応しています。

X-H2Sは、まさに「スピード」と「動画」に特化したフラッグシップと言えます。スポーツ、モータースポーツ、野鳥、野生動物といった決定的な瞬間を捉える動体撮影や、高品質な映像制作を求めるプロフェッショナルやハイアマチュアにとって、これ以上ないツールとなるでしょう。

2.2. X-H2: 高解像度の「H」(High Resolution)

一方、X-H2に搭載されているのは、新開発の「有効約4020万画素 裏面照射型(BSI)CMOSセンサー」です。こちらは積層型ではありませんが、Xシリーズ史上最高の画素数を誇る高解像度センサーです。

この高解像度センサーがもたらす最大のメリットは以下の3点です。

  • 圧倒的な解像性能: 4020万画素という画素数は、APS-Cセンサーとしては他に類を見ない高密度です。これにより、被写体の微細なディテールまで克明に描写することが可能です。大判プリントや、画像のトリミング耐性に優れています。
  • ピクセルシフトマルチショット: ボディ内手ブレ補正機構を応用し、センサーを微細にずらしながら複数枚撮影し、専用ソフトで合成することで、約1.6億画素の超高解像度画像を生成できます。風景写真や美術品などの記録撮影において、圧倒的な情報量を得られます。
  • 8K動画記録: 40MPセンサーの豊富な画素数を活かし、APS-Cセンサー搭載機としては世界で初めて※、8K/30P動画の内部記録に対応しました。(※発売時点)8Kでの記録は、4K出力時のオーバーサンプリングによる高精細化や、ポストプロダクションでの自由なフレーミングに大きなメリットをもたらします。

X-H2は、まさに「高解像度」と「静止画のディテール」を極めたフラッグシップと言えます。風景写真、ポートレート、スタジオ撮影、商業写真、建築写真など、最高の画質と解像度が求められる分野でその真価を発揮します。また、8K動画の可能性を追求したい映像制作者にも魅力的な選択肢となります。

3. X-Processor 5: 新世代エンジンの力

X-H2SとX-H2が共通して搭載している画像処理エンジン「X-Processor 5」は、両モデルの高いパフォーマンスを支える心臓部です。前世代のX-Processor 4と比較して処理速度は約2倍に向上しており、これが両モデルの様々な進化を可能にしています。

X-Processor 5の主な貢献は以下の通りです。

  • 進化したAF性能: ディープラーニング技術を用いた被写体検出AFは、人(顔・瞳)、動物、鳥、車、バイク、自転車、飛行機、電車といった多様な被写体を高精度に認識・追尾します。処理速度の向上により、複雑な動きや複数の被写体が入り組んだ状況でも、粘り強く被写体を捉え続けます。
  • 高速なデータ処理: 40MPセンサーからの膨大なデータ(X-H2)や、40コマ/秒の連写(X-H2S)で発生する大量のデータを高速に処理し、バッファ詰まりを軽減します。
  • 高画質化: 新しい処理アルゴリズムにより、高感度ノイズの低減やダイナミックレンジの拡大など、画質面でも進化を遂げています。特にX-H2の40MPセンサーでは、この処理能力がノイズ抑制に大きく貢献しています。
  • 低消費電力化: 処理性能を向上させながらも消費電力を抑える設計になっており、バッテリーライフの改善にも寄与しています(ただし、高性能な分、特定の撮影モードでは消費が大きくなることもあります)。
  • 新しい動画機能: ProResコーデックの内部記録や、8K動画記録(X-H2)など、高度な動画機能を実現しています。

X-Processor 5は、まさにX-H2SとX-H2のポテンシャルを最大限に引き出すための不可欠な要素です。これにより、これまでのXシリーズとは一線を画する、高速かつ高精度な撮影が可能になりました。

4. 共通の優れたプラットフォーム

センサー以外の多くの要素は、X-H2SとX-H2で共通しています。この共通のプラットフォームが高く洗練されていることが、両モデルを真のフラッグシップたらしめています。

4.1. 堅牢性と操作性に優れたボディ

X-Hシリーズのボディは、まさにプロ機としての要求に応えるように設計されています。

  • 大型グリップ: 深く握りやすい大型グリップは、特に重い望遠レンズや大口径レンズを装着した際にも安定したホールディングを可能にします。長時間の撮影でも疲れにくいデザインです。
  • 高剛性・防塵防滴構造: マグネシウム合金を採用した堅牢なボディは、厳しい撮影条件下でも安心して使用できます。各部にシーリングが施されており、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造となっています。
  • サブ液晶モニター: 天面のサブ液晶モニターは、露出設定やホワイトバランス、バッテリー残量などの主要な撮影情報を一目で確認できます。特に三脚使用時や、背面液晶を見ずに素早く設定変更したい場合に非常に便利です。
  • ボタンレイアウトとカスタマイズ性: 主要なボタンは操作しやすい位置に配置されており、多くのボタンにカスタマイズ機能を割り当てることが可能です。自分好みの操作系を構築することで、撮影効率を大幅に向上させられます。
  • モードダイヤル: これまでのX-T系とは異なり、PASMなどのモードダイヤルが採用されています。これは、特に異なる露出モードや動画/静止画を素早く切り替えたいユーザーにとって、非常に効率的なインターフェースです。

4.2. 強力なボディ内手ブレ補正 (IBIS)

X-H2S/X-H2のIBISは、新開発のX-Processor 5との連携により、最大7.0段※という高い補正効果を発揮します。(※レンズ、設定に依存)

  • 手持ち撮影の限界を拡大: 暗い場所での撮影や、ブレの発生しやすい望遠域での手持ち撮影において、大幅にシャッタースピードを稼ぐことが可能です。これにより、ISO感度を上げずに済むため、画質面でも有利になります。
  • 動画撮影の安定化: 動画撮影時も強力な手ブレ補正が有効なため、ジンバルを使わずに手持ちで滑らかな映像を撮影できるシーンが増えます。デジタル手ブレ補正との併用も可能です。
  • 様々なレンズに対応: OIS(レンズ内手ブレ補正)非搭載のオールドレンズや単焦点レンズでも手ブレ補正が利用できるため、表現の幅が広がります。OIS搭載レンズとの協調補正も可能です。

7.0段という補正効果は、実際に使用してみると驚くほど強力です。特に低速シャッターでの手持ち撮影や、望遠レンズ使用時のファインダー像の安定性において、その恩恵を強く感じることができます。

4.3. 超高精細EVFと高解像度液晶モニター

ファインダーとモニターは、撮影者がカメラとインタラクションする上で最も重要な部分です。X-H2S/X-H2は、この点でも妥協がありません。

  • 高解像度EVF: 約576万ドットの高解像度EVFは、ファインダー像が非常に精細でクリアです。倍率も高く、広視野角で見やすいため、長時間の撮影でも疲れにくいです。最大120fpsの高速表示にも対応し、動体撮影時でも滑らかなファインダー像が得られます(X-H2Sで特に有効)。光学ファインダーに迫る自然な見え味を追求しており、露出やホワイトバランスの変化をリアルタイムに確認できるEVFの利便性と、自然な見え方を両立しています。
  • 3方向チルト/バリアングル式液晶モニター: 背面液晶モニターは、X-H1で採用されていた3方向チルト式ではなく、より柔軟なアングルに対応できるバリアングル式(約162万ドット)に変更されました。これにより、ローアングル、ハイアングル、自撮り、縦位置での撮影など、多様なアングルでの撮影が容易になりました。動画撮影時にはモニターを側面に展開できるため、様々なリグへの装着や外部モニターとの併用がしやすくなりました。

4.4. 高速かつ信頼性の高い記録メディア

X-H2S/X-H2は、CFexpress Type BとSDカード(UHS-II対応)のデュアルスロットを搭載しています。

  • CFexpress Type B: X-H2Sの高速連写やProRes動画、X-H2の8K動画や高画素データの高速書き込みには、CFexpress Type Bカードが必須です。これはプロの現場で要求される膨大なデータ量を効率的に処理するための選択です。速度だけでなく、耐久性や信頼性にも優れています。
  • SD UHS-II: 多くのカメラで標準的に使用されているSDカードにも対応しており、互換性も確保されています。CFexpressとの使い分け(例えばRAWをCFexpressに、JPEGをSDに、あるいはバックアップ記録として)が可能です。

適切なカードを使用することで、両モデルの高性能を最大限に引き出すことができます。

4.5. 充実したインターフェースと接続性

プロの現場での多様な要求に応えるため、X-H2S/X-H2は豊富なインターフェースを備えています。

  • フルサイズHDMI端子: 外部モニターやレコーダーへの出力に便利なフルサイズHDMI端子を搭載。マイクロHDMIに比べて安定性が高く、現場でのトラブルを減らせます。ProRes RAWやBlackmagic RAWの外部記録にも対応します(対応レコーダーが必要)。
  • USB Type-C端子: 高速データ転送、カメラ内充電、給電に対応。テザー撮影にも使用できます。
  • マイク入力端子 / ヘッドホン出力端子: 高品質な音声収録とモニタリングが可能です。
  • リモートレリーズ端子: 有線リモートレリーズに対応。

これらの端子は、動画撮影時の外部機器との連携や、スタジオでのテザー撮影など、プロのワークフローに不可欠な要素です。

4.6. 進化したオートフォーカスシステム

X-Processor 5の能力を最大限に活用したAFシステムは、これまでのXシリーズから大幅な進化を遂げています。

  • ディープラーニングAIによる被写体検出: 前述のように、人、動物、鳥、乗り物など、様々な被写体を高精度に認識し、追尾します。背景との分離能力も高く、複雑なシーンでも被写体を追い続けます。
  • AFアルゴリズムの改善: 予測AFの精度が向上し、被写体の動きに対する追従性が向上しました。低照度環境でのAF性能も向上しています。
  • 操作性の向上: AFエリア設定や追尾感度などの設定も、メニュー構造が整理され、より直感的に行えるようになりました。

特にX-H2Sでは、センサーの高速読み出しとX-Processor 5の組み合わせにより、そのAF性能は多くのユーザーから高い評価を得ています。X-H2も基本的なAFアルゴリズムは共通ですが、センサーのデータ量が多いため、わずかに追従性の面でX-H2Sに譲る部分があるかもしれません(しかし、それでも非常に高性能です)。

4.7. 充実した動画機能

X-H2S/X-H2は、静止画だけでなく動画撮影においても真価を発揮します。

  • 豊富なコーデックとビット深度: H.264、H.265といった一般的なコーデックに加え、内部でProResコーデック(X-H2S)や8K記録(X-H2)に対応。10bit 4:2:2での記録も可能です。
  • F-Log2: より広いダイナミックレンジを持つF-Log2に対応し、ポストプロダクションでのカラーグレーディングの自由度が向上しました。
  • 波形モニター/ベクトルスコープ: 動画撮影中に露出や色の情報を視覚的に確認できるプロ向けのモニタリングツールを内蔵。
  • 冷却ファン(オプション): 長時間や高温環境下での高負荷動画記録時に発生しやすい熱問題を解消するため、背面に取り付け可能な冷却ファンをオプションで用意。これにより、記録時間や解像度・フレームレートによる制限を大幅に緩和できます。
  • 高フレームレート動画: X-H2Sは4K 120p、X-H2は4K 60pに対応。スローモーション表現の幅が広がります。

これらの機能は、ビデオグラファーやハイブリッドシューターにとって非常に魅力的です。特にX-H2SのProRes内部記録と冷却ファン対応は、コンパクトなボディでプロレベルの映像制作を実現するための大きなアドバンテージとなります。

4.8. 富士フイルムならではの魅力 – フィルムシミュレーション

富士フイルムのカメラといえば、外せないのがフィルムシミュレーションです。長いフィルム開発の歴史で培われた色再現技術をデジタルで再現したもので、JPEG撮って出しでも非常に美しい色や階調が得られます。

X-H2S/X-H2は、最新のフィルムシミュレーションを含む全19種類を搭載しています。特に注目すべきは「Nostalgic Neg.」や「ETERNA」「ETERNA Bleach Bypass」といった動画撮影にも適した表現豊かなシミュレーションです。

フィルムシミュレーションは、単なるエフェクトではなく、写真や映像の表現意図に合わせてトーンや色味を調整するための強力なツールです。特にスピードが求められる現場では、フィルムシミュレーションを活用することで、現像・グレーディングの手間を省きながら、高いクオリティの成果物を得ることができます。

5. X-H2SとX-H2、どちらを選ぶべきか?

ここまでX-H2SとX-H2の魅力と特徴を解説してきました。どちらも非常に高性能なフラッグシップモデルですが、その個性は大きく異なります。どちらを選ぶかは、あなたの主な被写体や撮影スタイル、そして求める成果物によって決まります。

プロの視点から、それぞれのモデルが最も輝くシチュエーションを整理し、選択のヒントを提供します。

X-H2Sを選ぶべき人

  • 高速で予測不能な動体を主に撮影する: スポーツ、野鳥、野生動物、モータースポーツ、航空機など、一瞬のシャッターチャンスを逃せない被写体を追いかけるフォトグラファー。秒間40コマのブラックアウトフリー連写、そして進化したAF追従性能は圧倒的な武器になります。
  • プロレベルの動画制作をメインに行うビデオグラファー: ProRes内部記録、6.2Kオープンゲート、4K 120P、優れたローリングシャッター抑制性能、そしてオプションの冷却ファンによる長時間記録は、まさに映像クリエイターのための仕様です。
  • スピードとレスポンスを最優先するハイブリッドシューター: 静止画も動画も高いレベルでこなしつつ、特に連写性能やAFの信頼性、動画の高品質なコーデックを重視するユーザー。
  • 電子シャッターを多用する: ローリングシャッター歪みを極限まで抑えたいユーザー。

X-H2を選ぶべき人

  • 最高の解像度とディテールを求めるフォトグラファー: 風景写真、ポートレート、スタジオ撮影、商品撮影、建築写真、美術品の記録撮影など、被写体の微細な描写が求められる分野。4020万画素のセンサーは、トリミング耐性や大判プリントにおいて絶大な威力を発揮します。
  • 超高解像度が必要な静止画撮影を行う: ピクセルシフトマルチショットによる約1.6億画素の合成画像が必要な特殊な撮影を行うユーザー。
  • 8K動画の可能性を追求したいビデオグラファー: 8K記録から4Kへのダウンコンバートによる高精細化や、ポストプロダクションでの自由なフレーミングなど、8Kワークフローに興味があるユーザー。
  • 高速性は二の次で、画質を最優先するハイブリッドシューター: スピードや連写性能よりも、静止画の解像度や8K動画のクオリティを重視するユーザー。

共通のメリット

どちらのモデルを選んでも、X-Hシリーズ共通のメリットを享受できます。

  • プロ向けの堅牢なボディと優れた操作性
  • 強力なボディ内手ブレ補正 (最大7.0段)
  • 高精細なEVFとバリアングル液晶
  • 進化したAIベースの被写体検出AF
  • 豊富なフィルムシミュレーション
  • CFexpress Type BとSDのデュアルスロット
  • 充実したインターフェース (フルサイズHDMI、USB-Cなど)

価格帯

一般的に、積層型センサーを搭載するX-H2Sの方が、X-H2よりも高価になります。予算も選択の重要な要素となるでしょう。しかし、それぞれのモデルが提供する性能を考えれば、価格に見合う価値は十分にあると言えます。

6. プロが感じるX-H2S/X-H2の真価

私が実際にこれらのカメラを現場で使用して感じたのは、富士フイルムが本気でプロフェッショナル市場、特に従来のXシリーズユーザーとは異なる層(例えば、動画をメインとするクリエイターや、他社製のフラッグシップからの乗り換え組)を取り込もうとしている姿勢です。

6.1. 高い信頼性

プロにとって最も重要なのは「撮れる」ことです。X-H2S/X-H2は、ボディの堅牢性、AFの信頼性、バッファの深さ(X-H2S)、高速な書き込み速度、そしてオプションの冷却ファンによる安定性など、あらゆる面でプロの要求に応える信頼性を備えています。これは、失敗が許されない現場において非常に心強い要素です。

6.2. ワークフローへの適合性

モードダイヤルを中心とした操作系、天面のサブ液晶、バリアングル液晶、充実した各種端子など、X-Hシリーズは現代のプロフェッショナルが求めるワークフローに適合するようにデザインされています。特に動画撮影における操作性やモニタリング機能の充実は目を見張るものがあります。

6.3. 画質の進化

X-H2Sの優れたノイズ耐性と高速性、X-H2の圧倒的な解像性能は、これまでのAPS-Cセンサーの常識を覆すレベルに達しています。APS-Cだからといって画質に妥協する必要は全くありません。特にX-H2の40MPセンサーは、適切なレンズと組み合わせることで、フルサイズセンサーに匹敵、あるいはそれ以上の解像感を叩き出すポテンシャルを持っています。

6.4. 富士フイルムエコシステムの恩恵

X-H2S/X-H2は、単体でも非常に高性能ですが、富士フイルムの提供する豊富なレンズラインアップや、テザー撮影ソフト(Capture OneやTether Shooting Plug-in)、RAW現像ソフト(Capture One Express for Fujifilmなど)、そして前述のフィルムシミュレーションといったエコシステムの中で使用することで、その真価を最大限に発揮します。特に、XFレンズには高速AFに対応したものや、X-H2の40MPセンサーの解像度を活かせる高性能なものが数多く揃っています。

7. 課題と注意点

どんな完璧に見えるカメラにも、必ず考慮すべき点があります。X-H2S/X-H2にも、いくつかの課題や注意点が存在します。

  • 価格: どちらのモデルも、APS-Cとしては高価な部類に入ります。特にX-H2Sは、一部のフルサイズミラーレス機と同等かそれ以上の価格帯です。導入にはそれなりの投資が必要です。
  • ファイルサイズ: X-H2の40MP RAWファイルや、両モデルのProRes動画ファイルは非常に大きくなります。高速なCFexpressカードや、大容量かつ高速なストレージ、そして十分な処理能力を持つPCが必要になります。ワークフロー全体の見直しが必要になる可能性もあります。
  • バッテリーライフ: 高性能化に伴い、特に高負荷な撮影(高速連写、高解像度動画)ではバッテリーの消耗が早くなることがあります。予備バッテリーは必須となるでしょう。別売りの縦位置バッテリーグリップVG-XHは、バッテリー3本を収納できるため、長時間の撮影には非常に有効です。
  • 操作系の違い: 伝統的なX-T/X-Proシリーズのダイヤル操作に慣れているユーザーは、X-Hシリーズのモードダイヤル中心の操作系に慣れるまで時間がかかるかもしれません。これは好みの問題でもありますが、事前に確認しておくべき点です。
  • X-H2のローリングシャッター: X-H2は積層型センサーではないため、X-H2Sと比較すると電子シャッター使用時のローリングシャッター歪みは大きくなります。動きのある被写体やパンニングが多い場合は、メカニカルシャッターやX-H2Sの使用を検討する必要があります。
  • レンズの選択: X-H2の40MPセンサーの解像度を最大限に引き出すには、それに耐えうる高い解像性能を持つレンズが必要です。古いレンズや解像力が高くないレンズでは、センサーのポテンシャルを活かしきれない場合があります。

これらの点を理解した上で導入を検討することが重要です。しかし、これらの課題を乗り越えることで得られるパフォーマンスとクオリティは、それに見合うだけの価値があると言えるでしょう。

8. まとめ

富士フイルム X-H2SとX-H2は、それぞれ異なる個性を持ちながらも、共通して「プロフェッショナルの要求に応える最高のパフォーマンス」を追求した意欲的なカメラです。

  • X-H2S: 積層型センサーによる圧倒的なスピードと動画性能。動体撮影やプロレベルの映像制作に最適。
  • X-H2: 40MP高解像度センサーによる最高の静止画画質と8K動画。風景、ポートレート、スタジオ撮影など、高画質が求められる分野に最適。

どちらのモデルも、共通の強固なボディ、強力なIBIS、進化したAF、高精細EVF、そして富士フイルム独自の色再現技術であるフィルムシミュレーションを搭載しており、道具としての完成度は非常に高いです。

これまでのXシリーズユーザーはもちろん、他社製のフラッグシップからの乗り換えを検討しているプロフェッショナルや、本気で写真や動画に取り組みたいハイアマチュアにとって、X-H2SとX-H2は、その期待を裏切らない、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

あなたの撮影スタイルや求める成果物に最も合致するモデルを選ぶことで、きっと新たなクリエイティブの地平を切り開くことができるはずです。富士フイルムの最新フラッグシップ、X-H2SとX-H2のポテンシャルをぜひ体感してみてください。

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