【2024年最新】Clash Vergeの使い方・メリットを徹底解説

【2024年最新】Clash Vergeの使い方・メリットを徹底解説

はじめに

インターネットの利用が多様化し、セキュリティやプライバシーの保護、あるいは地理的な制限を回避するために、プロキシツールの需要は高まっています。数あるプロキシツールの中でも、高度なルーティング機能と柔軟な設定が可能な「Clash」はそのパワフルさから多くのユーザーに支持されています。

しかし、Clashの初期のインターフェースは必ずしも直感的ではなく、特に初心者にとっては敷居が高いと感じられることもありました。そこで登場したのが、Clashコアを基盤としながらも、より洗練されたモダンなユーザーインターフェース(UI)を提供し、利便性を大幅に向上させた派生プロジェクトです。その中でも特に注目を集めているのが「Clash Verge」です。

Clash Vergeは、Windows、macOS、Linuxといった主要なデスクトップOSに対応し、Clashの強力な機能を維持しつつ、誰もが使いやすいグラフィカルインターフェース(GUI)を提供します。本記事では、2024年におけるClash Vergeの最新情報に基づき、その基本的な使い方から詳細な設定方法、利用する上でのメリットや注意点まで、徹底的に解説します。Clash Vergeの導入を検討している方、既に利用しているものの更に深く使いこなしたいと考えている方にとって、必読の内容となるでしょう。

Clash Vergeとは? 基本を理解する

Clash Vergeは、高機能プロキシクライアントである「Clash」のコアエンジン(clash-core)をベースにしたGUIアプリケーションです。元々人気を博していた「Clash for Windows (CfW)」が開発を停止した後、その後継となるプロジェクトとして多くの派生が登場しましたが、Clash Vergeはその中でも活発に開発が進められており、モダンなUIと豊富な機能で多くのユーザーを獲得しています。

Clash for Windowsからの進化:

Clash Vergeは、CfWの哲学を受け継ぎつつも、よりモダンなウェブ技術(Electronなど)を使用してUIを再構築しています。これにより、見た目が洗練されただけでなく、操作性も向上しました。また、CfWがWindowsのみの対応だったのに対し、Clash VergeはmacOSやLinuxにも対応範囲を広げています。

Clash Vergeの主な特徴:

  1. モダンで直感的なUI: ダークモードやカスタムテーマにも対応し、視覚的に分かりやすいインターフェースを提供します。プロファイルの切り替え、ノードの選択、ルールの確認などが簡単に行えます。
  2. クロスプラットフォーム対応: Windows、macOS、Linuxの各OSで利用可能です。
  3. 高いパフォーマンス: バックエンドにはRust言語で記述されたClashコアが使用されており、高速かつ安定した動作を実現します。
  4. 豊富な機能: 基本的なプロキシ機能に加え、詳細なルーティング設定、プロキシグループ、接続情報のリアルタイム表示、ログ確認、メトリック表示など、Clashの強力な機能を全て利用できます。
  5. 活発な開発: オープンソースプロジェクトとして積極的に開発・メンテナンスが行われており、新しい機能の追加やバグ修正が頻繁に行われています。

なぜClash Vergeが注目されているのか?

Clashのコアエンジンはそのままであるため、他のClashクライアントと設定ファイルの互換性があります。これは、既存のClashユーザーがClash Vergeへ移行しやすいことを意味します。さらに、CfWの代替として、より洗練されたUIとマルチプラットフォーム対応という点が多くのユーザーに評価されています。プロキシツールに高度な設定を求めるユーザーにとって、Clash Vergeは強力な選択肢となっています。

Clash Vergeのインストールと初期設定

Clash Vergeを使い始めるための最初のステップは、お使いのコンピューターにインストールすることです。

1. 公式ダウンロード先へアクセスする

Clash Vergeの公式リリースは、GitHubのリリースページで公開されています。最新版を入手するために、以下のリンクにアクセスします。

https://github.com/clash-verge-rev/clash-verge-rev/releases

注意: オープンソースプロジェクトは開発者の変更などにより、リポジトリの場所が変更される可能性もゼロではありません。常に最新の情報を確認することをお勧めします。上記のリンクは2024年時点での主要なリポジトリです。

2. お使いのOSに対応するファイルをダウンロードする

リリースページには、各OSに対応した様々なファイルがリストアップされています。

  • Windows:
    • .exe: インストーラー形式です。通常はこちらを選びます。x64版(64ビット)が主流です。
    • .zip: ポータブル版です。インストール不要で、展開したフォルダーから実行できます。設定ファイルなども同じフォルダーに保存されるため、USBメモリなどに入れて持ち運ぶことも可能です。_x64__arm64_など、お使いのCPUアーキテクチャに合わせたものを選択してください。
  • macOS:
    • .dmg: ディスクイメージファイルです。通常はこちらを選び、アプリケーションフォルダーにドラッグ&ドロップしてインストールします。_x64 (Intel Mac向け) または _arm64 (Apple Silicon Mac向け) を確認してください。
    • .tar.gz: ポータブル版や開発者向けです。通常ユーザーは.dmgで十分です。
  • Linux:
    • .AppImage: 多くのLinuxディストリビューションで実行可能な形式です。ダウンロード後、実行権限を付与して実行します。
    • .deb: Debian/Ubuntuベースのディストリビューション向けのパッケージファイルです。
    • .rpm: Fedora/CentOS/RHELベースのディストリビューション向けのパッケージファイルです。
    • .tar.gz: バイナリアーカイブです。手動でインストールする場合に使用します。

ご自身のOSと環境に合った最新版のファイルをダウンロードしてください。通常は.exe (Windows), .dmg (macOS), .AppImage または .deb/.rpm (Linux) を選びます。

3. インストールまたは展開

  • インストーラー版 (.exe, .dmg, .deb, .rpm): ダウンロードしたファイルをダブルクリックし、画面の指示に従ってインストールを進めます。インストール先などを聞かれることがありますが、特に理由がなければデフォルト設定で問題ありません。
  • ポータブル版 (.zip, .tar.gz, .AppImage):
    • .zip, .tar.gz: ダウンロードしたファイルを任意の場所に展開(解凍)します。展開されたフォルダー内にある実行ファイル(Windowsなら.exeファイル)をダブルクリックして起動します。
    • .AppImage: ダウンロードしたファイルに実行権限を付与します(例: ターミナルでchmod +x your_clash_verge.AppImage)。その後、ファイルをダブルクリックまたはコマンドラインから実行します。

4. 初回起動と基本的な画面構成

インストールまたは展開後、Clash Vergeを起動します。初回起動時には、簡単なセットアップウィザードが表示される場合や、まっさらな設定画面が表示される場合があります。

Clash Vergeのメインウィンドウは、通常、左側にナビゲーション用のサイドバーがあり、右側に選択した項目に対応する内容が表示される構成になっています。

  • サイドバーの主要項目:
    • Home (ホーム): サービスの状態表示、プロファイルの選択、モードの切り替えなど、主要な操作を行う画面です。
    • Profiles (プロファイル): 設定ファイル(プロファイル)の管理を行う画面です。新しいプロファイルのインポートや既存のプロファイルの編集・削除が行えます。
    • Proxies (プロキシ): 現在選択されているプロファイルに含まれるプロキシノードやプロキシグループの一覧が表示されます。ノードの遅延テストや手動選択が可能です。
    • Rules (ルール): 現在選択されているプロファイルに含まれるルーティングルールの一覧が表示されます。ルールの有効/無効を切り替えたり、並び順を確認したりできます。
    • Connections (接続): Clash Vergeを介して行われているリアルタイムのネットワーク接続が表示されます。接続元、接続先、使用しているプロキシなどが確認できます。不要な接続を切断することも可能です。
    • Logs (ログ): Clashコアの動作ログが表示されます。エラーや警告を確認したり、トラブルシューティングに役立てたりできます。
    • Settings (設定): Clash Vergeアプリケーション自体の設定を行います。システムプロキシの設定、起動設定、ネットワーク設定、UI設定などが含まれます。
    • Metrics (メトリック): トラフィック量など、Clash Vergeの動作に関する統計情報が表示されます。

インストールが完了したら、次はClash Vergeの「心臓部」となる設定ファイル(プロファイル)を準備し、インポートする作業に進みます。

プロファイル(設定ファイル)の準備とインポート

Clashとその派生クライアントは、すべてYAML形式の設定ファイル(プロファイル)に基づいて動作します。このファイルには、利用可能なプロキシサーバー(ノード)の情報、それらをどのようにグループ化するか、そしてどの通信をどのプロキシまたは直接接続にルーティングするか、といった重要な設定が記述されています。

1. 設定ファイル(プロファイル)の入手方法

設定ファイルを入手する方法はいくつかあります。

  • プロバイダーからのサブスクリプション: 最も一般的な方法です。プロキシサービスを提供する多くのプロバイダーは、Clash形式のサブスクリプションURLを提供しています。このURLにアクセスすると、最新の設定ファイルがダウンロードできます。
    • 利点: プロバイダー側でノードの追加・削除や設定の変更があった場合、プロファイルを更新するだけで自動的に反映されます。常に最新の状態を保ちやすいです。
    • 形式: 通常、http://your-provider.com/path/to/clash/config?paramsのようなURL形式です。
  • 手動作成: 自分でプロキシサーバー(例: Shadowsocks, V2Rayなど)を運用している場合や、特定の目的のために独自のルーティングルールを設定したい場合は、YAML形式で設定ファイルをゼロから手動で作成することも可能です。ただし、YAMLの構造やClashのルール構文に関する知識が必要です。
  • 既存ファイルからのインポート: 既にClash for Windowsなどの別のクライアントで使用していた設定ファイル(ローカルの.yamlファイル)がある場合は、それをClash Vergeにインポートすることも可能です。

2. Clash Vergeでのプロファイルのインポート方法

設定ファイルを入手したら、Clash Vergeにインポートします。

  • サブスクリプションURLからのインポート:

    1. Clash Vergeのサイドバーから「Profiles」を選択します。
    2. 画面上部にある「New Profile」または似たようなボタンをクリックします。
    3. インポート方法として「URL」を選択します。
    4. 入手したサブスクリプションURLを「URL」フィールドに貼り付けます。
    5. プロファイルに分かりやすい名前を付けます(例: 「My Provider Config」など)。
    6. 必要に応じて、更新間隔(Update Interval)を設定します。これにより、指定した間隔で自動的にプロファイルが更新されるようになります(通常は数時間に一度で十分です)。
    7. Import」ボタンをクリックします。
    8. Clash VergeがURLから設定ファイルをダウンロードし、プロファイルリストに追加します。
  • ローカルファイルからのインポート:

    1. Clash Vergeのサイドバーから「Profiles」を選択します。
    2. 画面上部にある「New Profile」または似たようなボタンをクリックします。
    3. インポート方法として「File」を選択します。
    4. Browse」ボタンをクリックし、インポートしたい.yaml設定ファイルをコンピューター上で選択します。
    5. プロファイルに分かりやすい名前を付けます。
    6. Import」ボタンをクリックします。
    7. 選択したファイルがプロファイルリストに追加されます。注意: ローカルファイルの場合、自動更新はされません。ファイルの内容を変更した場合は、再度インポートし直す必要があります。
  • 手動で設定を貼り付け:

    1. Clash Vergeのサイドバーから「Profiles」を選択します。
    2. 画面上部にある「New Profile」または似たようなボタンをクリックします。
    3. インポート方法として「Manual」を選択します。
    4. YAML形式の設定ファイルの内容をテキストエリアに直接貼り付けます。
    5. プロファイルに分かりやすい名前を付けます。
    6. Import」ボタンをクリックします。

インポートが成功すると、「Profiles」画面に新しいプロファイルがリスト表示されます。

3. 複数のプロファイルの管理

Clash Vergeは複数のプロファイルを同時に管理できます。異なるプロバイダーの設定や、特定の用途に合わせた独自設定などを切り替えて利用することが可能です。

「Profiles」画面には、インポートしたプロファイルの一覧が表示されます。各プロファイルに対して以下の操作が行えます。

  • Select (選択): そのプロファイルを現在有効な設定として使用します。
  • Edit (編集): 内蔵のYAMLエディターでプロファイルの内容を直接編集できます。注意: YAML構文に慣れていない場合は、誤った変更が原因で動作しなくなる可能性があります。
  • Update (更新): サブスクリプションURLからインポートしたプロファイルを手動で最新版に更新します。
  • Delete (削除): プロファイルリストから削除します。

4. プロファイル更新の設定

サブスクリプションURLからインポートしたプロファイルの場合、定期的に自動更新を設定しておくことを強く推奨します。これにより、プロバイダー側での変更(ノードの追加/削除/変更など)が自動的にClash Vergeに反映され、常に最適な状態で利用できます。

プロファイルのインポート時に更新間隔を設定するか、または「Profiles」画面で既存のプロファイルを選択し、設定を編集することで更新間隔を変更できます。

Clash Vergeの基本的な使い方

プロファイルのインポートが完了したら、いよいよClash Vergeを使ってプロキシ接続を開始します。

1. サービスの開始/停止

Clash Vergeの核となるClashコアのサービスは、必要に応じて開始/停止できます。

  1. サイドバーから「Home」を選択します。
  2. 画面上部に、サービスのステータスが表示されます(例: Stopped, Running)。
  3. サービスを開始するには「Start」ボタンをクリックします。
  4. サービスを停止するには「Stop」ボタンをクリックします。

サービスが「Running」の状態になっていることが、プロキシ機能が有効になっていることを意味します。

2. プロファイルの選択と有効化

Clash Vergeで利用できるプロファイルが複数ある場合、現在どのプロファイルを使用するかを選択する必要があります。

  1. サイドバーから「Home」を選択します。
  2. 「Profile」または「Configuration」といった項目で、インポート済みのプロファイルがドロップダウンリストまたはリスト表示されています。
  3. 使用したいプロファイルをクリックして選択します。
  4. プロファイルを選択すると、Clash Vergeは自動的にその設定をロードし、Clashコアに適用します。

3. システムプロキシ設定の有効化/無効化

Clash Vergeがプロキシとして機能するためには、オペレーティングシステムのネットワーク設定をClash Vergeに向ける必要があります。これにより、ウェブブラウザや他のアプリケーションからの通信がClash Vergeを通過するようになります。

  1. サイドバーから「Home」を選択します。
  2. 「System Proxy」または「Service Mode」といった項目があります。
  3. システムプロキシを有効にするには、対応するトグルスイッチまたはチェックボックスをオンにします。
  4. システムプロキシを無効にするには、オフにします。

システムプロキシを有効にすると、お使いのOSのネットワーク設定が変更され、通常はローカルホスト(127.0.0.1)の指定されたポート(Clashのデフォルトは7890)をHTTP/SOCKSプロキシとして使用するように設定されます。これにより、システム全体またはシステムプロキシ設定を使用するアプリケーションからの通信がClash Vergeを経由するようになります。

注意: システムプロキシ設定は、他のプロキシツールやVPNと競合する場合があります。通常は一度に一つのツールのみをシステムプロキシとして設定してください。

4. グローバルモード、ルールモード、ダイレクトモードの切り替え

Clashの強力な機能の一つは、通信ごとに異なる処理(プロキシ経由、直接接続)を行う「ルールベースルーティング」です。Clash Vergeでは、これを簡単に切り替えるためのモードが用意されています。

  1. サイドバーから「Home」を選択します。
  2. 「Mode」または「Rule Mode」といった項目があります。
  3. 利用可能なモードは通常以下の通りです。
    • Rule (ルールモード): これがClashの標準的な動作モードです。プロファイルに記述されたルーティングルールに従って、通信ごとにプロキシ経由にするか、直接接続にするか、あるいは特定のプロキシグループを使用するかを判断します。通常はこのモードを使用します。
    • Global (グローバルモード): 全ての通信を、現在選択されているグローバルプロキシ(通常はプロキシグループの「Select」タイプで指定されたノード)を経由させます。ルールは無視されます。特定のノード経由で全ての通信を行いたい場合に便利ですが、国内サービスなどもプロキシ経由になるため注意が必要です。
    • Direct (ダイレクトモード): 全ての通信をプロキシを経由せず、直接接続させます。Clashのサービス自体は起動したままですが、プロキシとしては機能しません。一時的にプロキシを無効にしたい場合に便利です。

通常は「Rule」モードにしておき、設定ファイルに記述されたルールに従って通信を振り分けるのが最も柔軟で効率的な使い方です。

5. ノード(プロキシサーバー)の選択方法

プロファイルには複数のプロキシサーバー(ノード)が含まれていることがほとんどです。どのノードを使用するかは、プロキシグループの設定やルールによって自動的に決定されますが、ユーザーが手動で特定のノードを選択することも可能です。

  1. サイドバーから「Proxies」を選択します。
  2. 現在選択されているプロファイルに含まれるプロキシノードやプロキシグループが一覧表示されます。
  3. プロキシグループが「Select」タイプの場合、そのグループ名の下に利用可能なノードがリスト表示されます。
  4. 手動でノードを切り替えたい場合、そのノード名をクリックします。これにより、そのプロキシグループを使用する通信は、選択したノードを経由するようになります。
  5. リスト上部のグループ名をクリックすると、そのグループ内で自動的にノードを選択させたり(例: url-test)、手動選択に戻したりすることができます。

6. ノードの遅延テスト(Ping/Latency Test)の実行方法と解釈

プロキシノードの応答速度や安定性を確認するために、遅延テスト(PingまたはLatency Test)を実行できます。遅延が小さいほど、そのノードは高速である可能性が高いです。

  1. サイドバーから「Proxies」を選択します。
  2. 画面上部またはノードリストの近くに「Latency Test」または「Ping」ボタンがあります。これをクリックします。
  3. Clash Vergeが各ノードに対して遅延テストを実行し、結果(ミリ秒単位の数値)をノード名の近くに表示します。
  4. 数値が小さいほど遅延が少なく、高速であることを意味します。通常は100ms以下のノードが快適に利用できる目安とされますが、これは接続元のネットワーク環境やノードの場所によって大きく変動します。
  5. テスト結果を参考に、使用するノードを手動で選択したり、プロキシグループの自動選択設定(url-testなど)に反映させたりできます。

これらの基本的な操作をマスターすれば、Clash Vergeを使ってプロキシ接続を開始し、目的のウェブサイトにアクセスしたり、サービスを利用したりできるようになります。

Clash Vergeの詳細設定とカスタマイズ

Clash Vergeの真価は、その詳細な設定とカスタマイズ性にあります。プロファイルを深く理解し、自身のニーズに合わせて設定を調整することで、より効率的で柔軟なプロキシ環境を構築できます。

Clash Vergeの設定は、主に「プロファイル自体に記述される設定」と「Clash Vergeアプリケーション側の設定」の二種類に分かれます。ここでは主にプロファイルに含まれる重要な設定項目について解説します。

1. プロキシグループ(Proxy Group)の活用

プロキシグループは、複数のプロキシノードをまとめたもので、通信をどのように分散または選択するかを定義します。これにより、特定の目的(例: 複数のサーバーへの負荷分散、最速サーバーの自動選択、特定のサービス専用のサーバー指定など)に合わせてノードの利用方法を細かく制御できます。

プロキシグループにはいくつかのタイプがあります。

  • select: ユーザーがリストの中から手動でノードを選択します。Clash Vergeの「Proxies」画面でノードを手動で切り替える際に使用される最も基本的なグループタイプです。
    “`yaml
    proxy-groups:

    • name: 手動選択グループ
      type: select
      proxies:

      • ノードA
      • ノードB
      • ノードC
        “`
  • auto: エイリアス(古いタイプ)。通常はurl-testfallbackを使用します。
  • url-test: グループ内のノードに対して定期的にURLテスト(指定したURLへのアクセス速度テスト)を実行し、最も高速なノードを自動的に選択します。安定して最速のノードを使用したい場合に便利です。urlinterval(テスト間隔)、tolerance(許容誤差)などの設定があります。
    “`yaml
    proxy-groups:

    • name: 最速自動選択
      type: url-test
      url: http://www.gstatic.com/generate_204 # テスト用URLの例 (プロバイダー指定の場合が多い)
      interval: 300 # 300秒 (5分) ごとにテスト
      tolerance: 50 # テスト結果の許容誤差 ms
      proxies:

      • ノードA
      • ノードB
      • ノードC
        “`
  • fallback: グループ内のノードを上から順番にテストし、最初に到達可能(テストに成功)だったノードを使用します。もしそのノードがダウンしたら、リストの次のノードに自動的に切り替わります。障害発生時の代替(フォールバック)として機能させたい場合に便利です。urlintervalなどの設定があります。
    “`yaml
    proxy-groups:

    • name: フォールバックグループ
      type: fallback
      url: http://www.gstatic.com/generate_204
      interval: 300
      proxies:

      • 主要ノード
      • 代替ノード1
      • 代替ノード2
        “`
  • load-balance: グループ内の複数のノードに通信を均等に分散させます。特定の単一ノードへの負荷集中を避けたい場合に利用できます。strategy(分散戦略)、intervalなどの設定があります。
    “`yaml
    proxy-groups:

    • name: 負荷分散グループ
      type: load-balance
      strategy: consistent-hash # または round-robin
      proxies:

      • ノードA
      • ノードB
      • ノードC
        “`
  • relay: 一つのプロキシグループ内のノードを順番に経由させます(多段プロキシ)。非常に特殊な用途向けです。
  • block: そのグループに割り当てられた通信を遮断します。広告ブロックなどに利用できます。
  • direct: そのグループに割り当てられた通信を直接接続させます。特定の国内サービスなど、プロキシを経由させたくない通信に割り当てます。

プロファイル内のproxy-groupsセクションでこれらのグループを定義し、後述のrulesセクションで特定の通信をこれらのグループに割り当てます。

2. ルール(Rules)の理解と設定

ルールはClashの最も強力な機能であり、どの通信をどのプロキシグループ(または直接接続、遮断)にルーティングするかを決定します。ルールはリスト形式で定義され、上から順番にマッチングが試行されます。最初にマッチしたルールが適用されます。

各ルールは通常、以下の形式で記述されます。

RULE_TYPE,MATCHING_VALUE,PROXY_GROUP_OR_ACTION[,OPTIONS]

  • RULE_TYPE: マッチングに使用する方法を指定します。
    • DOMAIN-SUFFIX: 指定したドメイン名で終わる全てのドメインにマッチします(例: DOMAIN-SUFFIX,google.comwww.google.com, mail.google.comなどにマッチ)。
    • DOMAIN-KEYWORD: 指定したキーワードを含む全てのドメインにマッチします(例: DOMAIN-KEYWORD,googlegoogle.com, google.co.jp, marketing.google.comなどにマッチ)。
    • DOMAIN: 指定した完全に一致するドメイン名にのみマッチします(例: DOMAIN,www.google.comwww.google.comにのみマッチ)。
    • FULL: DOMAINと同じ。
    • GEOIP: IPアドレスの地理情報(国コード)に基づいてマッチします(例: GEOIP,CN は中国のIPアドレスにマッチ)。特定の国へのアクセスを直接接続にしたり、特定の国のノードを経由させたりするのに便利です。
    • IP-CIDR: 指定したIPアドレス範囲にマッチします(例: IP-CIDR,192.168.1.0/24 はそのネットワーク内の全てのIPにマッチ)。特定のローカルネットワークや、特定のサービスのIP帯を指定するのに便利です。
    • SRC-IP-CIDR: 接続元のIPアドレスに基づいてマッチします(あまり一般的ではありません)。
    • RULE-SET: 外部のルールセットファイルをインポートして使用します。大量のルールを管理するのに便利です。
    • MATCH: どのルールにもマッチしなかった場合の最後のルールとして使用します。常にルールの最後に記述する必要があります。
  • MATCHING_VALUE: RULE_TYPEに対応する具体的な値(ドメイン名、IPアドレス、国コードなど)を指定します。
  • PROXY_GROUP_OR_ACTION: このルールにマッチした場合に適用するプロキシグループ名(前述のproxy-groupsセクションで定義したもの)または特別なアクション(DIRECT, REJECT, GLOBAL)を指定します。
    • DIRECT: プロキシを経由せず、直接接続します。
    • REJECT: 接続を遮断します。
    • GLOBAL: グローバルプロキシ設定(Globalモードで指定されるノード)を使用します。
  • OPTIONS: オプション設定(例: GEOIPルールでの国コード、no-resolveなど)。

カスタムルールの追加・編集方法:

Clash Vergeでは、内蔵のYAMLエディターを使ってプロファイルにカスタムルールを追加したり、既存のルールを編集したりできます。

  1. サイドバーから「Profiles」を選択します。
  2. 編集したいプロファイルの横にある「Edit」ボタン(通常は鉛筆アイコン)をクリックします。
  3. YAMLエディターが表示されます。
  4. rules:セクションを見つけます。
  5. リスト形式でルールが記述されています。新しいルールを追加するには、既存のルールの下に新しい行としてルールを記述します。
    • 例: 特定のウェブサイトを常に直接接続したい場合
      “`yaml
      rules:

      • DOMAIN,example.com,DIRECT
      • DOMAIN-SUFFIX,example.net,DIRECT
        # … 既存の他のルール …
      • MATCH,Proxy # 最後のルール
        “`
    • 例: 中国のIPアドレスへの通信を直接接続したい場合
      “`yaml
      rules:

      • GEOIP,CN,DIRECT,no-resolve # no-resolve は IP 直接指定時に名前解決不要を指定
        # … 既存の他のルール …
      • MATCH,Proxy
        “`
  6. 編集が終わったら、画面上部の「Save」ボタンをクリックします。
  7. 設定を有効にするために、プロファイルを再度選択し直すか、Clashサービスを再起動する必要がある場合があります。

ルールセット(Rule Set)の利用:

大量のルール(例: 広告ブロックリスト、特定のサービスのドメインリスト)をプロファイル本体に直接記述すると見づらくなります。Clashは外部のURLやローカルファイルからルールリストを読み込む「Rule Set」機能をサポートしています。

プロファイルのrule-providersまたはrulesセクションでルールセットを定義し、それをrulesセクションで参照します。

“`yaml
rule-providers:
adblock:
type: http
behavior: domain # or ipcidr or classical
url: “http://example.com/adblock.txt” # 広告ブロックリストのURL
interval: 86400 # 1日ごとに更新
path: ./rules/adblock.yaml # ダウンロードしたファイルを保存するパス

rules:
– RULE-SET,adblock,REJECT # 広告ブロックリストにマッチしたら遮断
# … 他のルール …
– MATCH,Proxy
“`
これにより、ルール本体を簡潔に保ちつつ、外部ソースから最新のルールリストを自動的に取得して適用できます。

3. ルーティング設定

上記で説明したプロキシグループとルールを組み合わせることで、高度なルーティング設定が可能になります。一般的な設定例をいくつか示します。

  • 海外サイトはプロキシ、国内サイトは直接接続:
    多くのプロバイダーが提供するデフォルト設定はこの形式です。GEOIP,CN,DIRECTなどのルールや、主要な国内サービスのドメインリストをDIRECTに割り当てるルールが先に定義され、それ以外の通信はデフォルトでプロキシグループ(通常はMATCHルールで指定)に送られます。
  • 特定の動画サービスは特定の国のノード経由:
    例えば、アメリカ限定のサービスを利用したい場合。
    “`yaml
    rules:

    • DOMAIN-SUFFIX,streaming-service.com,アメリカノードグループ # 特定のサービスはアメリカノードグループへ
      # … 他のルール …
    • MATCH,Proxy # それ以外の通信はデフォルトプロキシへ
      ``アメリカノードグループは、アメリカのサーバーのみを含むselecturl-test、またはfallback`グループとして定義します。
  • ゲーム通信は低遅延のゲーム用ノードへ:
    オンラインゲームのサーバーIP帯やドメインを特定し、低遅延を重視したプロキシグループに割り当てます。
    “`yaml
    rules:

    • IP-CIDR,ゲームサーバーIP帯/CIDR,ゲームノードグループ,no-resolve
      # … 他のルール …
    • MATCH,Proxy
      ``ゲームノードグループは、ゲームに最適なノードのみを含むurl-testselect`グループとして定義します。

これらの設定は、プロファイル内のproxy-groupsrulesセクションを適切に編集することで実現できます。

4. その他の設定 (Clash Verge アプリケーション設定)

プロファイル設定とは別に、Clash Vergeアプリケーション自体の動作に関する設定も「Settings」画面で行えます。

  • System Proxy (システムプロキシ):
    • Enable System Proxy: OSのプロキシ設定をClash Vergeに向けるかどうかのオン/オフ。
    • Mode: システムプロキシの適用範囲。通常は「Global」で全てのアプリに適用しますが、「Rule」や「Direct」などのオプションがある場合もあります。
    • Port: Clash VergeがリッスンするHTTP/SOCKSプロキシポート番号。デフォルトは7890です。
    • Allow LAN: ローカルネットワーク内の他のデバイスからの接続を許可するかどうか。ホームネットワークで他のデバイスからもClash Vergeをプロキシとして使用したい場合にオンにします。
  • Startup (起動):
    • Launch at Startup: OS起動時にClash Vergeを自動的に起動するかどうか。
    • Start Service at Startup: アプリケーション起動時にClashサービスも自動的に開始するかどうか。
    • Minimize on Startup: 起動時にウィンドウを最小化するかどうか。
  • Network (ネットワーク):
    • IPv6: IPv6通信を処理するかどうか。
    • Mixed Port, HTTP Port, Socks Port: Clashがリッスンするポート番号を個別に設定できます。
    • TUN Mode: OSレベルでネットワークトラフィックを横取りするTUN/TAPデバイスを使用するかどうか。システムプロキシ設定をサポートしないアプリケーション(ゲームなど)の通信もClash経由にできますが、OSや環境によっては設定が複雑になります。
  • UI:
    • Theme: アプリケーションのテーマ(ライト/ダークモードなど)を変更します。
    • Language: 表示言語を変更します。日本語に対応している場合が多いです。
  • Advanced (高度な設定):
    • External Controller: ClashのAPIに外部からアクセスするための設定。リモート管理ツールなどを使用する際に設定します。
    • Clash Core: 使用するClashコアのバージョンを選択またはダウンロードできます。
    • Log Level: 表示するログの詳細度を設定します。

これらの設定項目を適切に調整することで、Clash Vergeの動作をより自身の環境や好みに合わせることができます。

Clash Vergeの便利な機能

Clash Vergeは、単にプロキシとして機能するだけでなく、現在のネットワーク状況を把握したり、問題を診断したりするための便利な機能を多数搭載しています。

1. リアルタイム接続表示(Connections)

Clash Vergeを介して行われている全てのTCP/UDP接続をリアルタイムで確認できます。

  1. サイドバーから「Connections」を選択します。
  2. 現在確立されている接続の一覧が表示されます。
  3. 各接続について、以下の情報などが確認できます。
    • Source (送信元): 接続を開始したローカルのアプリケーションやIPアドレス、ポート番号。
    • Destination (宛先): 接続先のドメイン名またはIPアドレス、ポート番号。
    • Proxy/Rule (プロキシ/ルール): その接続がどのプロキシノードまたはプロキシグループを経由しているか、あるいはどのルールが適用されたか。
    • Upload/Download (アップロード/ダウンロード): その接続でのデータ転送量。
    • Start Time (開始時間): 接続が開始された時刻。
    • Duration (継続時間): 接続が継続している時間。
  4. 不要な接続や予期しない接続がある場合、接続を選択して「Close」ボタンをクリックすることで強制的に切断できます。
  5. この機能は、特定のアプリケーションが期待通りにプロキシを経由しているか確認したり、問題発生時にどの通信が影響を受けているか診断したりするのに非常に役立ちます。

2. ログ表示(Logs)

Clashコアの動作ログは、設定エラーやネットワークの問題をトラブルシューティングする上で非常に重要です。

  1. サイドバーから「Logs」を選択します。
  2. Clashコアが出力するログメッセージがリアルタイムで表示されます。
  3. ログには、設定の読み込み状況、ルールマッチングの結果、接続エラー、プロキシノードへの接続試行結果などが記録されます。
  4. エラー(Error)や警告(Warning)レベルのログは、特に問題解決のヒントになります。
  5. ログレベルは「Settings」画面で変更できます(通常はDebugレベルにすると最も詳細な情報が得られますが、ログ量が多くなります)。
  6. 接続できない、特定のサイトにアクセスできないなどの問題が発生した場合、このログを確認することで原因を特定できることがあります。

3. メトリック表示(Metrics)

Clash Vergeの全体的なトラフィック状況を視覚的に確認できます。

  1. サイドバーから「Metrics」を選択します。
  2. 総アップロード/ダウンロード量、現在の通信速度などがグラフや数値で表示されます。
  3. これにより、Clash Vergeを介してどれくらいのデータがやり取りされているか、ネットワーク帯域がどの程度使用されているかなどを把握できます。

4. 設定ファイルの編集機能(YAMLエディター)

前述の通り、Clash Vergeにはプロファイル設定を直接編集できる内蔵エディターがあります。YAML構文とClashの設定構造を理解しているユーザーにとっては、外部エディターを使わずに手軽に設定を調整できる便利な機能です。

  1. 「Profiles」画面でプロファイルを選択し、「Edit」をクリックします。
  2. エディター上で設定を修正・追加し、「Save」します。
  3. YAML構文エラーがあると、保存時に警告が表示される場合があります。

5. 外部コントローラー(External Controller)の活用

ClashコアはAPI(Application Programming Interface)を提供しており、外部のツールやスクリプトからその状態を監視したり、設定を変更したりできます。これを「External Controller」機能と呼びます。

Clash Vergeの「Settings」→「Advanced」でExternal Controllerの設定(ポート番号、アクセス許可)を有効にすることで、以下の様なことが可能になります。

  • リモート管理ツール: スマートフォンや別のコンピューターから、ネットワーク内のClash Vergeの状態を確認したり、ノードを切り替えたりできるWebベースの管理ツール(例: Clash Dashboard, Yasuoなど)を利用できます。
  • カスタムスクリプト: 自動化や特定の処理を行うカスタムスクリプトを作成できます。

この機能はより高度な使い方になりますが、環境によっては非常に便利です。

6. バージョンアップデートの方法

Clash Vergeは活発に開発されているため、定期的にアップデートが行われます。アップデートにより、新機能の追加、バグ修正、セキュリティの改善などが期待できます。

Clash Vergeを起動すると、新しいバージョンが利用可能になった場合に通知が表示されることがあります。通知に従ってダウンロードページにアクセスするか、GitHubのリリースページを定期的に確認して最新版をダウンロードし、再度インストール(または上書き展開)することでアップデートできます。インストーラー版の場合は、通常、新しいバージョンをインストールする際に古いバージョンを自動的にアンインストールまたは上書きします。ポータブル版の場合は、新しいバージョンのファイルをダウンロードし、古いフォルダーの中身を置き換えることでアップデートできます。

Clash Vergeのメリット

Clash Vergeが他のプロキシツールやClashの他のクライアントと比較して優れている点、選ぶ価値のある理由をまとめてみましょう。

  1. モダンで直感的なUI: これはClash Vergeの最大のメリットの一つです。Clash for WindowsもGUIを提供していましたが、Clash Vergeはより洗練されたデザインと分かりやすい操作感を実現しています。特にプロファイル管理、ノード選択、接続表示などの基本的な操作がスムーズに行えます。初心者でも比較的容易に使い始めることができます。
  2. 高い互換性とクロスプラットフォーム対応: Windowsだけでなく、macOSやLinuxでも同じように使える点は大きな強みです。複数のOSを使用しているユーザーにとって、同じツールで設定や操作ができることは非常に便利です。
  3. 豊富なカスタマイズ性: Clashコアの持つ強力なルーティング機能(プロキシグループ、詳細なルール設定)をGUIからアクセスしやすい形で提供しています。特定のサービスやドメイン、IPに対して柔軟なルーティングを設定できるため、様々なニーズに対応できます。
  4. 高速なパフォーマンス: バックエンドにRustで記述されたClashコアを使用しているため、プロキシとしての処理が高速かつ効率的です。多数のルールやノードがあっても、パフォーマンスへの影響は最小限に抑えられます。
  5. 多機能性: リアルタイム接続表示、詳細なログ、メトリック表示といった機能は、プロキシの動作状況を把握したり、問題発生時に原因を特定したりする上で非常に有用です。これらの機能がGUI上で手軽に利用できる点は大きなメリットです。
  6. 活発な開発とコミュニティ: オープンソースプロジェクトとして多くの貢献者によって積極的に開発が進められています。これにより、バグ修正が迅速に行われたり、新しい機能が追加されたりする頻度が高いです。また、GitHubのIssueやコミュニティフォーラムなどで開発者や他のユーザーと交流し、情報交換や問題解決のためのサポートを得やすい環境があります。
  7. オープンソースとしての透明性: ソースコードが公開されているため、セキュリティ上の懸念がないか、どのような処理が行われているかなどを誰でも確認できます。これはクローズドソースのソフトウェアにはない信頼性につながります。

これらのメリットから、Clash VergeはClashのパワーを最大限に引き出しつつ、ユーザーフレンドリーな環境でプロキシを利用したいユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢と言えます。

Clash Vergeのデメリット・注意点

Clash Vergeは非常に優れたツールですが、利用にあたってはいくつかのデメリットや注意点も存在します。

  1. Clashコア自体の学習コスト: Clash VergeはあくまでClashコアのGUIラッパーです。プロキシグループやルールの設定といった高度なカスタマイズを行うには、YAML形式のClash設定ファイルの構造や、ルールの記述方法に関する基本的な知識が必要になります。特に手動でプロファイルを編集する場合、YAML構文エラーやルールの記述ミスがあると、正しく動作しなくなったり、意図しないルーティングが行われたりする可能性があります。
  2. 公式配布元の変動の可能性: オープンソースプロジェクトは、開発者の移行やリポジトリの変更などにより、プロジェクトの場所やメンテナーが変動する可能性があります。Clash Verge自体も、過去に開発リポジトリが変更された経緯があります。常に最新の公式情報を確認し、信頼できるソースからダウンロードすることが重要です。非公式な配布元からのダウンロードは、マルウェアなどが含まれているリスクがあるため避けるべきです。
  3. サポートがコミュニティ主体であること: プロジェクトの性質上、公式なカスタマーサポート窓口はありません。問題が発生した場合、基本的にGitHubのIssueを検索したり、作成したりするか、コミュニティフォーラムや関連するオンラインコミュニティで質問することになります。迅速な個別サポートを期待することは難しい場合があります。
  4. Clash Verge特有のバグ: Clashコア自体は安定していますが、Clash VergeのGUI部分やOSとの連携部分で、まだ軽微なバグが存在する可能性はあります。これは活発に開発されているソフトウェアにはつきものですが、利用中に予期しない挙動に遭遇する可能性もゼロではありません。
  5. プロバイダー依存性: 利用するプロキシノードや多くのルールは、プロファイルを提供しているプロバイダーに依存します。プロバイダー側の問題(サーバーダウン、品質低下、サービス終了など)は、Clash Vergeの利用に直接影響します。信頼できるプロバイダーを選択することが非常に重要です。

これらのデメリットを理解した上で利用することが、Clash Vergeを快適に使うための鍵となります。特に設定ファイルの編集には注意が必要ですが、多くのユーザーはプロバイダーから提供されるサブスクリプションURLをそのまま使うだけでも十分な機能を得られるでしょう。

Clash Vergeを活用するためのヒント

Clash Vergeをより効果的に、そして安全に利用するためのヒントをいくつかご紹介します。

  • 信頼できるプロバイダーからのサブスクリプション利用: 自分でサーバーを運用したり、手動で設定を作成したりするのは高度な知識が必要です。ほとんどのユーザーにとっては、信頼できるプロキシサービスプロバイダーと契約し、提供されるClash形式のサブスクリプションURLを利用するのが最も手軽で推奨される方法です。プロバイダーはサーバーの運用やメンテナンス、最新のルールの提供などを行ってくれるため、ユーザーはClash Vergeの設定に集中できます。プロバイダー選びは慎重に行いましょう。
  • 公式ドキュメントやコミュニティフォーラムの活用: Clash VergeやClashコアに関する詳細な情報やトラブルシューティングのヒントは、GitHubのリポジトリにあるドキュメントや、関連するオンラインコミュニティ(フォーラム、Discordサーバーなど)に豊富に存在します。問題に直面したり、より高度な設定に挑戦したい場合は、これらのリソースを活用しましょう。
  • セキュリティに関する考慮事項:
    • ダウンロードは公式リリースから: 必ずGitHubの公式リリースページからダウンロードしてください。非公式なサイトやフォーラムで配布されているファイルは危険な場合があります。
    • ファイアウォールの設定: Clash Vergeがローカルネットワーク上でプロキシとして機能するため、ファイアウォールの設定を確認してください。不要なポートが開いていないか、不審な通信が発生していないかなどに注意しましょう。
    • 信頼できるプロバイダーの選択: プロキシ通信はプロバイダーを経由します。信頼できないプロバイダーを利用すると、通信内容が傍受されたり、悪用されたりするリスクがあります。契約前にプロバイダーの評判やポリシーをよく確認しましょう。
    • 重要な情報の取り扱い: Clash Vergeを含むいかなるプロキシ/VPNツールを使用している最中でも、個人情報や機密情報を送受信する際は、SSL/TLSなどの暗号化が適切に行われているウェブサイト(URLがhttps://で始まる)やアプリケーションを使用することを徹底してください。

よくある質問 (FAQ)

Clash Vergeに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. Clash Vergeは無料ですか?
A1. はい、Clash Vergeはオープンソースソフトウェアであり、無料で利用できます。ただし、Clash Vergeを使ってプロキシ接続を行うためには、別途プロキシサーバーの提供者(プロバイダー)と契約し、サブスクリプション料金を支払う必要がある場合がほとんどです。Clash Verge自体はあくまでクライアントアプリケーションです。

Q2. Clash for Windows (CfW) とどう違いますか?
A2. Clash VergeはClashコアを共有していますが、GUI部分が異なります。Clash VergeはCfWよりもモダンで洗練されたUIを持ち、WindowsだけでなくmacOSやLinuxにも対応しています。CfWの開発が停止した現在、Clash Vergeはその後継の一つとして活発に開発されています。

Q3. 設定ファイル(プロファイル)はどこで入手できますか?
A3. 主にプロキシサービスプロバイダーと契約することで、Clash形式のサブスクリプションURLが提供されます。そのURLをClash Vergeにインポートして使用するのが一般的です。自分でプロキシサーバーを運用している場合は、手動でYAMLファイルを作成することも可能です。

Q4. 接続できない場合の対処法は?
A4. いくつかの原因が考えられます。
* プロファイルの確認: プロファイルが正しくインポートされ、選択されているか確認してください。
* サービスの開始: Clashサービスが「Running」状態になっているか確認してください。「Start」ボタンをクリックしてください。
* システムプロキシの有効化: OSのシステムプロキシがClash Vergeに向くように設定されているか確認してください。「Enable System Proxy」がオンになっているか確認してください。
* ノードの確認: 使用しているプロキシノードが有効で接続可能か、遅延テストを実行して確認してください。遅延が大きい、またはテストに失敗する場合は、別のノードに切り替えてみてください。
* ルール設定の確認: 特定のサイトにアクセスできない場合、ルール設定によって意図せずDIRECTREJECTにルーティングされていないか確認してください。必要であれば「Connections」や「Logs」で確認します。
* ファイアウォール/セキュリティソフト: ファイアウォールやセキュリティソフトがClash Vergeの通信をブロックしていないか確認してください。
* プロバイダーの状況: プロバイダー側のサーバーに問題が発生している可能性も考えられます。プロバイダーのサポート情報を確認してください。
* ログの確認: 「Logs」画面でエラーメッセージがないか確認します。
* Clash Vergeの再起動: 一時的な問題であれば、Clash Vergeを一度終了して再起動することで解決する場合があります。

Q5. 日本語化は可能ですか?
A5. はい、Clash Vergeは多言語に対応しており、設定から表示言語を日本語に変更することが可能です。

まとめ

Clash Vergeは、パワフルなClashコアを基盤としながらも、モダンで使いやすいGUIを提供することで、プロキシツールの利用体験を大きく向上させた優れたアプリケーションです。クロスプラットフォーム対応、豊富なカスタマイズ性、リアルタイムの接続情報表示といった多くのメリットを持ち、特に詳細なルーティング設定を柔軟に行いたいユーザーにとって最適な選択肢の一つと言えるでしょう。

プロファイル(設定ファイル)の準備とインポート、基本的なサービスの開始やモードの切り替えといった使い方をマスターすれば、すぐにClash Vergeの恩恵を受けることができます。さらに、プロキシグループやルールの詳細設定を掘り下げることで、自身のネットワーク環境や利用目的に合わせてClash Vergeを最大限に活用することが可能になります。

一方で、Clashの設定構造にある程度の学習コストが必要な点や、オープンソースプロジェクトならではの変動性、サポート体制といった注意点も理解しておくことが重要です。しかし、活発なコミュニティや豊富な情報源を活用することで、これらの課題を乗り越え、Clash Vergeの強力な機能を存分に使いこなせるはずです。

2024年においても、Clash Vergeは進化を続けており、多くのユーザーに支持されています。本記事が、Clash Vergeの導入から活用までの一助となれば幸いです。ぜひClash Vergeを試して、快適で安全なインターネット環境を構築してください。

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