失敗しない翻訳サービス・翻訳会社の選び方

【完全版】失敗しない翻訳サービス・翻訳会社の選び方 – 失敗事例から学ぶ成功の秘訣

はじめに:なぜ「失敗しない」選び方が重要なのか

グローバル化が加速し、インターネットを通じて世界中の情報にアクセスできる現代において、言語の壁はビジネス、研究、文化交流などあらゆる場面で大きな課題となります。この言語の壁を越えるために不可欠なのが「翻訳」です。契約書、プレゼン資料、ウェブサイト、マーケティングコンテンツ、技術マニュアル、学術論文など、正確で分かりやすい翻訳は、ビジネスチャンスを掴み、信頼関係を築き、知識を共有するための生命線とも言えます。

しかし、翻訳サービスや翻訳会社は数多く存在し、その品質、価格、得意分野、対応力は様々です。「とりあえず安さだけで選んでしまった」「ウェブサイトの雰囲気が良さそうだったから決めた」といった安易な選択は、後々大きな失敗に繋がりかねません。

翻訳の失敗は、単なる誤訳に留まりません。

  • ビジネスチャンスの損失: 重要な契約の締結が遅れたり、海外市場でのプレゼンス確立に失敗したりします。
  • ブランドイメージの低下: 不自然な翻訳や文化的に不適切な表現は、企業の信頼性を損ないます。
  • 法的な問題: 契約書や法律文書の誤訳は、深刻なトラブルや訴訟に発展する可能性があります。
  • 非効率な手戻り: 低品質な翻訳を修正するために、社内リソースや追加費用が発生します。
  • 情報の誤解: 技術情報や研究論文の誤訳は、技術開発の遅延や研究の方向性を誤らせる原因になります。

このような失敗を避けるためには、翻訳サービス・翻訳会社を慎重に、そして計画的に選ぶ必要があります。この記事では、あなたが翻訳を依頼する際に「失敗しない」ための、準備段階から依頼、そして納品後の対応に至るまでの包括的なガイドを提供します。具体的な選び方の基準、比較検討のポイント、よくある失敗事例と対策、そして翻訳会社との良好な関係構築の秘訣まで、約5000語にわたって詳細に解説します。この記事を読むことで、あなたは翻訳サービス選定における不安を解消し、最適なパートナーを見つけるための実践的な知識を身につけることができるでしょう。

翻訳サービスの多様性とその理解

翻訳と一口に言っても、そのサービス形態は多岐にわたります。それぞれの特徴を理解し、自身のニーズに合ったサービスを選ぶことが第一歩です。

  1. 翻訳会社:

    • 概要: 多数の翻訳者、チェッカー、プロジェクトマネージャーなどを抱える組織です。様々な分野の翻訳に対応し、品質管理体制が整っていることが一般的です。
    • メリット:
      • 専門性の高い翻訳者プールを持つため、多分野・多言語に対応可能。
      • 複数段階のチェック体制(翻訳、校正、ネイティブチェックなど)による品質の安定性。
      • プロジェクトマネージャーが窓口となり、進行管理や品質管理を一元的に行ってくれる。
      • 大量の文書や短納期の依頼にも対応できる場合が多い。
      • 秘密保持契約(NDA)の締結など、セキュリティ面での信頼性が高い。
    • デメリット:
      • フリーランスやクラウドソーシングに比べて費用が高めになる傾向がある。
      • 小規模な依頼には不向きな場合がある。
    • 適しているケース: 高い品質が求められるビジネス文書、契約書、技術マニュアル、ウェブサイト、マーケティング資料、大量の文書、急ぎの依頼など。
  2. フリーランス翻訳者:

    • 概要: 個人で活動している翻訳者です。特定の専門分野や言語に特化していることが多いです。
    • メリット:
      • 翻訳会社を介さないため、比較的費用を抑えられる場合がある。
      • 直接コミュニケーションが取れるため、細かいニュアンスや指示を伝えやすい。
      • 特定の分野で高い専門性を持つ翻訳者を見つけられれば、非常に高品質な翻訳が期待できる。
    • デメリット:
      • 品質管理は基本的に翻訳者個人に依存するため、スキルにばらつきがある。
      • 大量の文書や短納期の依頼には対応できない場合がある。
      • 急病などによる納期遅延のリスクがある。
      • 個人との契約になるため、契約や秘密保持に関する確認を自分で行う必要がある。
      • 自分で翻訳者を探し、スキルや実績を見極める必要がある。
    • 適しているケース: 専門性の高いニッチな分野の翻訳、継続的に同じ翻訳者に依頼したい場合、費用を抑えたいが品質もある程度求めたい場合(ただし、優秀なフリーランスを見つけるのが前提)。
  3. クラウドソーシング:

    • 概要: オンラインプラットフォーム上で、不特定多数の翻訳者に依頼する形式です。
    • メリット:
      • 非常に多くの翻訳者が登録しており、すぐに翻訳者を見つけられる可能性がある。
      • 価格競争が働きやすく、費用を大幅に抑えられる場合がある。
      • システム上で依頼、進捗管理、支払いが完結できる。
    • デメリット:
      • 翻訳者のスキルや経験に大きなばらつきがあるため、品質が安定しない。
      • 品質管理体制が基本的に存在しないか、依頼者自身が行う必要がある。
      • 専門性の高い文書には不向きな場合が多い。
      • 機密保持の観点からリスクが高い場合がある。
      • コミュニケーションに手間がかかる場合がある。
    • 適しているケース: 専門性をあまり必要としない一般的な内容の文書、個人的な翻訳、コスト最優先の場合、多くの言語に対応したい場合(ただし品質は二の次)。
  4. 機械翻訳+ポストエディット:

    • 概要: まず機械翻訳ツール(Google翻訳、DeepLなど)で翻訳し、その結果を人間が修正・校正する(ポストエディット)方法です。翻訳会社によっては、このサービスを提供しているところもあります。
    • メリット:
      • 翻訳スピードが非常に速い。
      • コストを大幅に削減できる可能性がある。
    • デメリット:
      • 機械翻訳の精度に依存するため、原文の質や専門性によってはポストエディットに多大な工数がかかる。
      • 文化的ニュアンスや文脈を完全に捉えきれない場合がある。
      • ポストエディットを行う人間のスキルによって最終的な品質が大きく左右される。
      • 創造性や説得力が求められるマーケティング翻訳などには不向き。
    • 適しているケース: 内容を大まかに把握したい文書、スピードが最優先される場合、ある程度の品質で十分な場合(ただし、ポストエディットのスキルが重要)。情報量が非常に多く、コストとスピードを両立したい場合。

自身の依頼内容や予算、納期、求められる品質レベルを考慮し、これらのサービス形態の中から最適なものを絞り込むことが、失敗しない選び方の第一歩です。ビジネスにおいて高品質な翻訳が不可欠な場合は、品質管理体制が整った「翻訳会社」を中心に検討するのが賢明でしょう。

失敗しないための準備段階:依頼の前にすべきこと

翻訳を成功させるためには、翻訳会社に依頼する前の準備が非常に重要です。この準備を怠ると、後々認識のずれが生じたり、期待した品質が得られなかったりするリスクが高まります。

  1. 翻訳の目的・用途の明確化:

    • 「なぜその文書を翻訳する必要があるのか?」「翻訳された文書はどのように使われるのか?」を具体的に定義します。
    • 例:
      • 海外の潜在顧客に製品・サービスを紹介するため(ウェブサイト、パンフレット、プレゼン資料)
      • 海外企業と契約を締結するため(契約書、覚書)
      • 海外のパートナーと技術情報を共有するため(技術マニュアル、仕様書)
      • 海外の投資家向けにIR情報を開示するため(決算短信、有価証券報告書)
      • 学術会議で研究成果を発表するため(論文、発表資料)
      • 社内での情報共有のため(メール、議事録)
    • 目的が明確であれば、翻訳会社も最適な翻訳スタイルや用語、翻訳者を提案しやすくなります。例えば、マーケティング資料なら読者の心を掴む魅力的な表現が、契約書なら正確性と法的厳密性が最優先されます。
  2. ターゲット読者の設定:

    • 翻訳された文書を読むのは誰ですか?(専門家、一般消費者、特定の年齢層、特定の文化圏の人々など)
    • 読者の知識レベル、文化背景、期待するトーンなどを想定します。
    • 例:
      • 技術専門家向け: 専門用語を正確に使用し、簡潔で論理的な表現を好む。
      • 一般消費者向け: 分かりやすい言葉遣い、親しみやすいトーン、比喩などを効果的に使う。
      • 子ども向け: 優しい言葉、短い文章、楽しさを盛り込む。
    • ターゲット読者が明確であれば、翻訳者は適切な語彙、表現、スタイルを選択できます。これにより、翻訳された文書が読者に響き、目的を達成しやすくなります。
  3. 翻訳対象文書の整理と準備:

    • 翻訳を依頼する全ての文書を準備します。ファイル形式(Word, Excel, PowerPoint, PDF, InDesignなど)を確認し、可能な限り編集可能な形式で提供できるように整理します。PDFなど編集できない形式の場合、DTP費用が発生したり、翻訳精度が落ちたりする可能性があります。
    • 文書量(文字数、ワード数)を確認します。多くの翻訳会社はこれに基づいて見積もりを作成します。
    • 文書内に図や画像が含まれる場合、翻訳対象とするか、DTP作業が必要かを確認します。
    • 参考資料の準備: 過去に作成した関連文書の翻訳、専門用語リスト、会社独自の用語集、スタイルガイド、参考となるウェブサイトなどがあれば、必ず翻訳会社に提供します。これにより、翻訳の統一性や精度が向上し、手戻りを減らすことができます。特に、固有名詞(会社名、製品名、サービス名など)や重要用語の訳し方を指定したい場合は、リスト化して提供することが不可欠です。
  4. 納期と予算の設定:

    • 「いつまでに翻訳が必要か」を明確に設定します。翻訳会社は通常、文書量や難易度に基づいて納期を算出します。現実的な納期を設定することが重要です。急ぎの依頼は特急料金が発生することが一般的です。
    • 翻訳にかけられる予算を決めます。予算の上限を事前に伝えることで、翻訳会社は予算内で最適なサービス内容(例: チェック体制の簡略化、機械翻訳+ポストエディットの提案など)を提案しやすくなります。ただし、予算だけで判断せず、品質とのバランスを考慮することが重要です。
  5. 評価基準の検討:

    • 翻訳会社を選ぶ際に、何を最も重視するかを事前に検討します。(例: 品質、スピード、コスト、専門分野への対応、セキュリティ、コミュニケーションなど)
    • これらの基準に優先順位をつけ、候補となる翻訳会社を評価する際の軸とします。

これらの準備を丁寧に行うことで、翻訳会社とのコミュニケーションがスムーズになり、見積もりや納期設定も正確になります。また、翻訳会社もあなたのニーズをより深く理解し、最適な翻訳サービスを提供できるようになります。

翻訳会社・サービスの選定基準

翻訳会社を選ぶ際の具体的な評価基準は多岐にわたります。ここでは、特に重要な基準を詳細に解説します。

  1. 実績と専門性:

    • 得意分野: 翻訳会社にはそれぞれ得意とする分野があります。法律、医療、技術(IT, 機械、電気、化学など)、金融、マーケティング、特許、エンターテイメントなど、あなたの依頼する文書の分野に特化した専門知識を持つ翻訳者がいるかどうかが重要です。ウェブサイトなどで過去の実績や得意分野を確認しましょう。
    • 過去の実績・ポートフォリオ: これまでにどのようなクライアントの、どのような文書の翻訳を手掛けてきたかを確認します。可能であれば、具体的な事例や成果(例: ウェブサイト翻訳後の問い合わせ増加など)について質問してみましょう。ただし、機密保持の観点から具体的なクライアント名を明かせない場合もあります。その場合は、業界や文書の種類について確認します。
    • 対応言語: 必要な言語ペア(例: 日本語→英語、英語→中国語など)に対応しているかを確認します。特にマイナーな言語や、特定の地域の言語(例: ブラジルポルトガル語、カナダフランス語など)に対応しているか確認が必要です。
    • 翻訳者の質: 最も重要な要素の一つです。
      • 経歴・資格: 翻訳者の学歴、実務経験年数、専門分野での実務経験(例: 元エンジニアが技術翻訳をする、元弁護士が法律翻訳をするなど)、翻訳関連の資格(例: 翻訳技能検定、TAUSなど)を確認します。
      • ネイティブチェックの有無: ターゲット言語のネイティブスピーカーによるチェック体制があるか確認します。これは自然で文化的に適切な翻訳を実現するために非常に重要です。
      • 登録翻訳者数: 抱えている翻訳者の数が多いほど、特定の分野や言語に強い翻訳者を見つけやすい可能性があります。
      • 翻訳者への教育・評価体制: 翻訳会社が翻訳者に対してどのような教育や評価を行っているかを確認すると、品質への取り組み姿勢が見えます。
  2. 品質管理体制:

    • 翻訳プロセス: 翻訳→校正(プルーフリーディング)→ネイティブチェック→最終チェックなど、どのような複数段階のチェックプロセスを踏んでいるかを確認します。品質の高い翻訳会社ほど、多くのチェック段階を設けています。
    • ISO認証など国際的な品質基準: ISO 17100(翻訳サービスに関する国際規格)などの認証を取得しているか確認します。これは翻訳プロセスや品質管理が一定の基準を満たしていることの証明になります。
    • 用語集・スタイルガイドの作成・活用: 過去の翻訳資産(翻訳メモリ)や、顧客固有の用語集、スタイルガイドをどのように管理・活用しているかを確認します。これにより、翻訳の統一性が保たれます。特に専門用語が多い文書や、継続的に翻訳を依頼する場合は、この体制が非常に重要です。
    • フィードバックへの対応: 納品後に翻訳内容に懸念があった場合、どのように対応してくれるか、修正依頼は可能か、その際の費用はどうなるかを確認します。誠実に対応してくれる会社を選びましょう。
  3. 納期と対応力:

    • 柔軟な納期対応: 通常納期はもちろん、特急対応や、段階的な納品(例: 優先度の高い部分から順に納品)が可能か確認します。
    • 緊急対応の可否: 緊急性の高い依頼が発生した場合、どこまで対応可能か、その場合の追加料金はどの程度かを確認します。
    • 担当者のコミュニケーション能力、レスポンス速度: 問い合わせや見積もり依頼に対するレスポンスが迅速か、担当者の説明は分かりやすいか、こちらの意図を正確に汲み取ってくれるかを確認します。円滑なコミュニケーションは、翻訳プロジェクトを成功させる上で非常に重要です。
    • 問い合わせ体制: 窓口の対応時間、土日祝日の対応の可否などを確認します。
  4. 料金体系と見積もり:

    • 料金の計算方法: 多くの場合、原文の文字数(日本語)またはワード数(英語など)に基づいて計算されます。その他、ページ数、時間単位、難易度、納期などによって料金が変動する場合があります。どのような基準で計算されるかを明確に確認します。
    • 追加料金の有無: 特急料金、専門分野料金、DTP料金、ファイル形式による追加料金(例: PDFからの翻訳)、休日対応料金など、見積もり以外にかかる可能性のある費用について事前に確認します。
    • 見積もりの詳細さ、透明性: 見積もり書の内訳が分かりやすく、料金計算の根拠が明示されているか確認します。不明瞭な点があれば必ず質問しましょう。
    • 予算に応じた提案の可否: 予算の上限を伝えた際に、予算内で可能な代替案(例: 品質レベルを少し下げる、チェック体制を一部省略するなど)を提案してくれるかどうかも、柔軟な対応力を見る指標になります。ただし、過度な価格交渉は品質低下を招く可能性があるため注意が必要です。
  5. セキュリティと機密保持:

    • NDA(秘密保持契約)の締結: 重要な機密情報を含む文書の翻訳を依頼する場合は、必ずNDAを締結できるか確認します。多くの翻訳会社は標準でNDAを用意していますが、自社指定のNDAに対応可能かも確認が必要です。
    • 情報の取り扱いポリシー: 顧客情報の管理方法、翻訳データの保管期間、利用目的などに関するポリシーを確認します。
    • 物理的・技術的なセキュリティ対策: オフィスへの入退室管理、ファイル共有方法、使用するツール(翻訳支援ツールなど)のセキュリティレベル、従業員へのセキュリティ教育などについても可能であれば確認します。特に、機密性の高い情報を扱う場合は、この点を非常に重視する必要があります。
  6. 付加サービス:

    • 翻訳だけでなく、関連する他のサービスも必要か確認します。
      • DTP(デスクトップパブリッシング): 翻訳後の文書を元のレイアウトに合わせて調整するサービス。パンフレットやマニュアルなど、デザインが重要な文書で必要になります。
      • ローカリゼーション: ウェブサイトやソフトウェアなどを、特定の地域や文化に合わせて最適化するサービス。単なる翻訳だけでなく、文化的な慣習、通貨、単位、日付形式などを考慮した調整が含まれます。
      • 動画翻訳: 字幕作成や吹き替えサービス。
      • 用語集作成: 継続的に依頼する場合に、専門用語リストを構築・管理するサービス。
      • 通訳サービス: 会議や商談などで通訳が必要な場合、まとめて依頼できるか確認します。

これらの基準を総合的に評価し、自社のニーズに最も合致する翻訳会社を選びます。

具体的な比較・検討方法

候補となる複数の翻訳会社をどのように比較検討すれば良いでしょうか。

  1. 複数の会社から見積もりを取る:

    • 少なくとも3社以上の翻訳会社から見積もりを取ることを推奨します。同じ文書を複数の会社に見積もってもらうことで、料金体系や納期、対応力などを比較できます。
    • 見積もり依頼時には、翻訳対象文書、希望納期、目的、ターゲット読者、参考資料の有無、必要とする品質レベルなど、準備段階で明確にした情報を全て伝えます。情報が少ないと正確な見積もりが得られません。
    • 見積もり書の内容を詳細に確認します。総額だけでなく、単価(文字単価、ワード単価)、追加料金の内訳、納期、支払い条件、キャンセルポリシーなどを比較します。
  2. トライアル翻訳の活用:

    • 特に初めて依頼する会社や、重要度の高い文書(契約書、ウェブサイトのトップページ、重要なプレゼン資料など)の翻訳を依頼する場合は、トライアル翻訳を依頼することを強く推奨します。
    • トライアル翻訳は、実際の文書の一部(数百文字〜1000文字程度)を無料で、あるいは割引料金で翻訳してもらうサービスです。
    • トライアル翻訳の結果を通じて、翻訳の品質(正確性、自然さ、用語の適切さ、スタイル)、翻訳会社の対応力、コミュニケーションのスムーズさなどを評価できます。
    • トライアルの結果を評価する際は、自社内でネイティブスピーカーにチェックしてもらう、または他の翻訳会社のネイティブチェッカーに評価を依頼するなど、客観的な視点を入れることが重要です。
  3. ウェブサイトやパンフレットで情報を収集:

    • 会社の沿革、実績、得意分野、品質管理体制、セキュリティ対策、顧客の声などを確認します。情報が充実しているか、分かりやすいかなども評価のポイントになります。
  4. 口コミや評判を参考にする:

    • インターネット上の口コミサイト、業界関係者からの評判、知人の紹介などを参考にします。ただし、口コミは主観的な意見も含まれるため、鵜呑みにせず、あくまで参考情報として活用します。可能であれば、実際に利用したことのある人に直接話を聞いてみるのが最も参考になります。
  5. 問い合わせ時の対応を評価する:

    • 見積もり依頼や問い合わせに対するレスポンスの速さ、丁寧さ、的確さを評価します。担当者のコミュニケーション能力は、今後のプロジェクト進行に大きく影響します。こちらの質問に対して、誠実に、そして分かりやすく回答してくれるかどうかが重要です。
  6. 営業担当者との面談・相談:

    • 可能であれば、営業担当者やプロジェクトマネージャーと直接会って話を聞く機会を設けます。会社の雰囲気、担当者の人柄、サービスに対する熱意などを感じ取ることができます。自社のニーズを具体的に伝え、それに対してどのような提案をしてくれるかを確認します。

これらの方法を組み合わせることで、複数の候補の中から最も自社に適した翻訳会社を絞り込むことができます。

契約と依頼時の注意点

翻訳会社を選定したら、いよいよ契約、そして実際の依頼となります。ここでいくつか注意すべき点があります。

  1. 契約書の内容確認:

    • 必ず契約書を締結し、その内容を詳細に確認します。特に以下の項目は注意深く確認しましょう。
      • 作業範囲: 翻訳対象の文書、言語ペア、翻訳のスタイル(例: 逐語訳、意訳、ローカリゼーションなど)、チェック体制(例: 翻訳+ネイティブチェックなど)。
      • 納期: 最終的な納品日、中間納品があるかなど。納期遅延が発生した場合の対応やペナルティについても確認が必要です。
      • 料金: 合計金額、単価、支払い条件(前払い、後払い、分割など)。追加料金が発生するケース(例: 原文変更、特急対応など)とその際の料金体系。
      • 秘密保持: NDAの内容、機密情報の取り扱い方法。
      • 責任範囲: 誤訳などがあった場合の修正対応、損害賠償の上限など。翻訳会社によって責任範囲の規定は異なります。
      • キャンセルポリシー: 依頼後のキャンセルが発生した場合の料金。
      • 準拠法、紛争解決: 契約に関するトラブルが発生した場合の対応。
    • 不明な点や懸念がある場合は、契約前に必ず翻訳会社に確認し、必要であれば契約内容の修正を依頼します。
  2. 詳細な指示書の提供:

    • 翻訳会社に依頼する際は、準備段階で明確にした情報を盛り込んだ、詳細な指示書(ブリーフィング資料)を添付することが非常に重要です。
    • 指示書に含めるべき内容の例:
      • 翻訳の目的・用途: 例: 「海外のウェブサイト訪問者に製品の魅力を伝えるため」「社内での情報共有のため」
      • ターゲット読者: 例: 「一般消費者向け」「エンジニア向け」「投資家向け」
      • 希望するトーン・スタイル: 例: 「親しみやすく」「権威的に」「客観的に」「マーケティング向け」「学術的」
      • 専門用語・固有名詞の指定訳: 会社名、製品名、サービス名、役職名、固有技術名など、訳し方を指定したい用語リスト。
      • 使用禁止用語: 使用してほしくない言葉や表現。
      • 参照すべき資料: 過去の翻訳、用語集、スタイルガイド、参考ウェブサイトなど。
      • 特殊な要件: 例: SEOを意識したキーワードを盛り込む、特定の文字数に収める、特定のファイル形式で納品する、画像内の文字も翻訳・編集する(DTP)。
      • 特に注意してほしい点: 例: この部分は非常に重要なので念入りにチェックしてほしい、この技術名称は〇〇と訳してほしい。
    • 指示書が明確であればあるほど、翻訳者はあなたの意図を正確に理解し、質の高い翻訳を提供しやすくなります。
  3. 参考資料・用語集の共有:

    • 前述の通り、過去の翻訳資産や用語集は必ず翻訳会社と共有します。これにより、翻訳の統一性を保ち、特に継続的な依頼において、都度指示する手間を省き、品質の安定化と効率化に繋がります。
  4. 疑問点の事前確認:

    • 依頼内容や文書について翻訳会社から質問があった場合、迅速かつ丁寧に対応します。お互いの疑問点を解消しておくことが、スムーズなプロジェクト進行に不可欠です。

これらの点に注意して依頼することで、翻訳会社との間に認識のずれが生じるのを防ぎ、円滑にプロジェクトを進めることができます。

納品後のチェックとフィードバック

翻訳された文書が納品されたら、それで終わりではありません。品質を確認し、必要に応じてフィードバックを行うことが、翻訳プロジェクトを成功させ、今後の依頼に活かすために重要です。

  1. 翻訳物の確認方法:

    • 納品された翻訳物が、依頼時に指定したファイル形式やレイアウトになっているかを確認します。
    • 翻訳の品質を確認します。理想的には、ターゲット言語のネイティブスピーカーや、その分野に詳しい社内の担当者にチェックしてもらうのが良いでしょう。
    • 品質チェックの観点:
      • 正確性: 原文の意味やニュアンスが正確に伝わっているか。誤訳や訳抜けはないか。数字や固有名詞は正しいか。
      • 自然さ: ターゲット言語として自然な表現になっているか。直訳調で不自然な箇所はないか。文法やスペルミスはないか。
      • 用語の統一: 用語集や指示書に基づき、用語が統一して使用されているか。
      • スタイル・トーン: 依頼時に指定したスタイルやトーンに合っているか。ターゲット読者に適した表現になっているか。
      • フォーマット: 図や表、脚注などが元の文書と同じように表示されているか。DTPを依頼した場合、レイアウトが崩れていないか。
  2. 社内でのレビュー体制:

    • 可能であれば、翻訳文書の内容を理解できる複数人の担当者(原文の内容を知っている人、ターゲット言語のネイティブスピーカー、その分野の専門家など)でレビューチームを組み、多角的にチェックします。一人でのチェックでは見落としが発生しやすくなります。
  3. 修正依頼の方法と期間:

    • 品質に問題があった場合、翻訳会社に修正を依頼します。契約で定められた修正対応期間内に行う必要があります。
    • 修正箇所を具体的に、そして分かりやすく伝えることが重要です。可能であれば、修正が必要な箇所を原文と翻訳文の両方で特定し、どのように修正してほしいかの具体的な提案を添えると、翻訳会社も対応しやすくなります。修正依頼リストを作成するのも効果的です。
    • 修正の理由(例: 「原文の意味と違う」「この用語は社内では別の訳を使用している」「この表現はターゲット国の文化に合わない」など)を伝えると、翻訳会社が今後の翻訳に活かすことができます。
  4. フィードバックの重要性:

    • 納品された翻訳物の品質に対するフィードバック(良かった点、改善してほしい点)を翻訳会社に伝えることは、非常に重要です。
    • 翻訳会社にとって: フィードバックは品質改善のための重要な情報源となります。用語集や翻訳メモリの更新にも役立ちます。
    • 依頼者にとって: フィードバックを通じて翻訳会社のサービスを「教育」することができます。特に継続的に依頼する場合、フィードバックを繰り返すことで、翻訳会社はあなたの会社のニーズや好みをより深く理解し、翻訳の品質が向上していきます。
    • フィードバックは、ネガティブなものだけでなく、ポジティブなもの(「この部分の表現が素晴らしかった」「納期通りに納品してくれて助かった」など)も伝えるように心がけると、翻訳会社との良好な関係構築に繋がります。

よくある失敗例とその対策

翻訳サービス選びや依頼プロセスでよく起こる失敗例と、それを防ぐための具体的な対策を見ていきましょう。

  1. 失敗例1: 目的・読者が不明確で、頓珍漢な翻訳になる

    • 原因: 翻訳会社に翻訳を依頼する際、「とにかく〇〇語にしてください」としか伝えず、翻訳の目的やターゲット読者を明確に伝えなかった。
    • 結果: 契約書なのにマーケティング風の表現になった、技術マニュアルなのに一般向けのような平易すぎる言葉遣いになったなど、文書の用途に合わない翻訳になった。読者に意図が正確に伝わらず、目的を達成できなかった。
    • 対策: 準備段階で、翻訳の目的、用途、ターゲット読者を徹底的に明確にする。 そして、翻訳会社に依頼する際に、これらの情報を詳細な指示書として必ず提供する。どのような読者が、翻訳された文書を読んでどう行動してほしいのか、具体的に伝える。
  2. 失敗例2: 専門知識がなく、誤訳や不自然な訳が多く発生する

    • 原因: 依頼する文書の専門分野(医療、法律、特定の技術など)に関する知識や経験が不足している翻訳者が担当になった。または、翻訳会社の得意分野と依頼内容が合っていなかった。
    • 結果: 専門用語の誤訳、文脈を理解していない不自然な表現、技術的な内容の誤解などが発生し、修正に多大な手間と時間がかかった。内容の正確性が損なわれた。
    • 対策: 依頼する文書の専門分野に強い実績と専門性を持つ翻訳会社を選ぶ。 翻訳会社のウェブサイトや実績紹介で得意分野を確認し、問い合わせ時に自社の分野についてどれだけ経験があるか具体的に質問する。可能であれば、トライアル翻訳を依頼し、専門分野の翻訳品質を評価する。 自社の専門用語リストや参考資料を必ず提供する。
  3. 失敗例3: 納期遅延が発生し、ビジネス機会を損失する

    • 原因: 文書量に対して非現実的な納期を提示した。翻訳会社のプロジェクト管理能力が不足していた。想定外の修正や確認作業に時間がかかった。
    • 結果: プレゼン資料が会議に間に合わなかった、海外への製品出荷が遅れた、契約締結が延期になったなど、ビジネス上の重要な機会を逃した。
    • 対策: 現実的な納期を設定する。 大量の文書や難易度の高い文書は、翻訳に相応の時間がかかることを理解する。翻訳会社に依頼する際、納期について正確に確認し、遅延した場合の対応についても契約で確認しておく。翻訳会社の納期遵守率やプロジェクト管理体制について質問する。 特急対応が必要な場合は、事前に可能か確認し、追加料金を了承する。
  4. 失敗例4: 見積もり外の追加料金が発生し、予算をオーバーする

    • 原因: 見積もり時の情報が不十分だった(例: 文書量の変更、ファイル形式がPDFだった、急な仕様変更が発生した)。見積もり書に記載されていない追加料金項目があった。
    • 結果: 予算を大幅に超過し、計画が狂った。翻訳会社との間で料金に関するトラブルになった。
    • 対策: 見積もり依頼時には、可能な限り正確な情報(文書量、ファイル形式、仕様など)を提供する。 見積もり書を詳細に確認し、含まれているサービス(翻訳、校正、ネイティブチェック、DTPなど)と、追加料金が発生するケース(特急対応、PDFからの翻訳、原文変更など)について事前に明確に確認しておく。 不明瞭な点は必ず質問する。
  5. 失敗例5: 情報漏洩のリスクが発生する

    • 原因: 翻訳会社のセキュリティ体制が不十分だった。機密保持契約(NDA)を締結しなかった、あるいは内容が不十分だった。クラウドソーシングなど、不特定多数の翻訳者が関わるサービスを安易に利用した。
    • 結果: 企業秘密や個人情報が漏洩し、信頼失墜や法的な問題に発展した。
    • 対策: 必ずNDAを締結する。 翻訳会社のセキュリティ体制(物理的、技術的対策、従業員教育など)について確認する。機密性の高い文書の場合は、実績があり、セキュリティ対策を重視している翻訳会社を選ぶ。クラウドソーシングなど、個人情報や機密情報を含む文書の依頼には適さないサービス形態があることを理解する。
  6. 失敗例6: 納品物の品質にばらつきがある

    • 原因: 翻訳者ごとにスキルや経験が異なり、品質管理体制が不十分だった。用語集やスタイルガイドがなく、翻訳の統一性が保たれなかった。翻訳会社任せで、納品後のチェックやフィードバックを十分に行わなかった。
    • 結果: 同じプロジェクト内で翻訳された文書なのに、訳文の質や表現スタイルがバラバラになり、全体の統一感が失われた。読者に違和感を与えた。
    • 対策: 品質管理体制が整っている翻訳会社を選ぶ(複数チェック、ISO認証など)。 用語集やスタイルガイドを作成し、翻訳会社と共有・活用する。トライアル翻訳で品質の安定性を評価する。 納品後には必ず品質チェックを行い、必要に応じて具体的なフィードバックを翻訳会社に提供する。継続的に依頼し、翻訳会社との関係性を深めることで、自社のニーズを理解してもらい、品質の安定化を図る。
  7. 失敗例7: コミュニケーション不足による誤解が発生する

    • 原因: 依頼時の指示が曖昧だった。翻訳会社からの質問に適切に回答しなかった。担当者との連携が悪かった。
    • 結果: こちらの意図とは異なる翻訳になった。手戻りが発生し、納期が遅れた。翻訳会社との信頼関係が損なわれた。
    • 対策: 詳細な指示書を作成し、依頼時に提供する。 翻訳会社からの質問には迅速かつ正確に回答する。担当者とのコミュニケーションを密にし、進捗状況を定期的に確認する。 問い合わせ時の翻訳会社の対応(レスポンス速度、説明の分かりやすさなど)を選定基準の一つとする。信頼できる担当者を見つけることが重要。

これらの失敗例と対策を知っておくことで、事前にリスクを回避し、より成功率の高い翻訳サービス選びと依頼が可能になります。

翻訳サービスとの長期的な関係構築

単発の依頼だけでなく、翻訳会社と長期的なパートナーシップを構築することには、多くのメリットがあります。

  1. 信頼できるパートナーを見つけるメリット:

    • 自社のビジネスや業界、製品・サービスに対する理解が深まる。
    • 品質が安定し、予測可能になる。
    • コミュニケーションがスムーズになる(指示の手間が減る)。
    • 急な依頼にも対応してもらいやすくなる。
    • 用語集や翻訳メモリが蓄積され、翻訳の統一性が向上し、長期的にコスト削減や納期短縮に繋がる可能性がある。
  2. 継続的な依頼による品質向上・効率化:

    • 同じ翻訳者チームが担当することで、文書間の用語や表現の統一性が保たれます。
    • 翻訳会社があなたの会社のスタイルや好みを学習し、よりニーズに合った翻訳を提供できるようになります。
    • 翻訳メモリ(過去の翻訳資産をデータベース化したもの)の活用により、同じような表現をゼロから翻訳する必要がなくなり、翻訳スピードが向上し、コストが削減される場合があります。
  3. 担当者との良好な関係維持:

    • 頻繁にコミュニケーションを取り、フィードバックを積極的に行うことで、担当者との信頼関係を築きます。困った時に相談しやすくなり、より柔軟な対応を期待できます。
    • 良い翻訳者が担当になった場合は、可能であればその翻訳者に継続して依頼できるよう翻訳会社に伝えてみるのも良いでしょう。

翻訳は一度きりの取引ではなく、グローバルな活動においては継続的に発生するものです。信頼できる翻訳会社と長期的なパートナーシップを築くことは、あなたのビジネスを成功させる上で非常に強力な資産となります。

まとめ:事前の準備と適切な評価が成功の鍵

失敗しない翻訳サービス・翻訳会社の選び方について、詳細に解説してきました。最も重要なのは、事前の「準備」と、候補となる翻訳会社を多角的に「評価」することです。

失敗しないためのステップを改めて確認しましょう。

  1. 依頼前の徹底的な準備: 翻訳の目的、用途、ターゲット読者を明確にし、文書を整理し、納期と予算を設定する。参考資料や用語集を準備する。
  2. 多様なサービス形態の理解: 自身のニーズに最適なサービス形態(翻訳会社、フリーランスなど)を絞り込む。
  3. 多角的な選定基準での評価: 実績、専門性、品質管理体制、納期、対応力、料金体系、セキュリティ、付加サービスなど、様々な観点から候補を評価する。
  4. 具体的な比較・検討: 複数の会社から見積もりを取り、可能であればトライアル翻訳を活用する。ウェブサイトや評判、問い合わせ時の対応も参考に比較検討する。
  5. 契約内容の確認と詳細な指示: 契約書を熟読し、不明点がないようにする。翻訳会社には詳細な指示書を提供し、意思疎通を図る。
  6. 納品後の品質チェックとフィードバック: 納品された翻訳物を必ずチェックし、必要に応じて具体的なフィードバックを行う。

翻訳は、単に言葉を別の言語に置き換える作業ではありません。文化やニュアンスを伝え、読者の心に響き、目的を達成するためのコミュニケーションです。そのためには、あなたのビジネスやメッセージを深く理解し、高品質な翻訳を提供できる信頼できるパートナーを見つけることが不可欠です。

この記事で解説したポイントを参考に、時間をかけてでも慎重に翻訳会社を選んでください。事前の準備と適切な評価にかけた時間は、必ず高品質な翻訳という形で報われ、あなたのビジネスやプロジェクトの成功に繋がるはずです。

もしあなたが現在、翻訳サービスの選定で悩んでいるのであれば、この記事を参考に、まずは自社のニーズを明確にすることから始めてみてください。そして、複数の翻訳会社に問い合わせ、比較検討を進めていく中で、きっと最適なパートナーが見つかるでしょう。

グローバルな舞台での活躍を、高品質な翻訳が力強く後押しすることを願っています。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール