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a接点・b接点の電気記号まとめ【回路図の読み方入門】
はじめに:電気回路図は「電気の言葉」を読み解く鍵
電気の学習や仕事において、回路図を読み解く能力は非常に重要です。回路図は、電気機器や設備の「設計図」「取扱説明書」「故障診断マニュアル」のようなものであり、そこに描かれた記号や線が、電気がどのように流れ、各部品がどのように連携して動作するのかを教えてくれます。
しかし、初めて回路図を見たとき、たくさんの線や記号が複雑に絡み合っているように見え、どこから読み始めたら良いか分からないと感じるかもしれません。特に、同じような形をしているのに動作が異なる「接点」の記号は、多くの初心者がつまずきやすいポイントです。
この記事では、電気回路図の基本中の基本でありながら、非常に重要な要素である「接点」に焦点を当て、特に最も頻繁に使用される「a接点(常開接点)」と「b接点(常閉接点)」について、その記号の意味、動作原理、回路での使われ方、そしてなぜそれが重要なのかを、初心者の方にも分かりやすく、徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、a接点とb接点の違いが明確になり、回路図の中でこれらの記号を見つけたときに、それがどのような役割を果たしているのかを理解できるようになっているはずです。これは、より複雑な回路図を読み解くための確固たる第一歩となるでしょう。
さあ、電気回路図の読み方という「電気の言葉」を学ぶ旅を始めましょう。
第1章:電気接点とは何か? なぜ「a」と「b」があるのか?
電気回路図における「接点(Contact)」とは、電気回路を開閉する機能を持つ部品の一部を指します。最も身近な例は、照明のスイッチです。スイッチをオンにすると回路が繋がり電気が流れて電気が点き、オフにすると回路が切れて電気が止まります。この「回路を繋いだり切ったりする部分」が接点です。
接点は、スイッチだけでなく、リレー、電磁接触器(コンタクタ)、押しボタン、リミットスイッチ、圧力スイッチなど、様々な制御機器に内蔵されています。これらの機器は、何らかの信号(手動操作、電気信号、物理的な動きなど)を受けて、接点の状態(開いているか、閉じているか)を変化させ、別の回路の電流を制御します。
さて、なぜ接点には「a接点」と「b接点」という区別があるのでしょうか? これは、「何も力が加わっていない、本来の状態(専門用語で『無励磁時』や『無操作時』といいます)」において、その接点がどのような状態にあるかによって分類されているからです。
- a接点(常開接点:Normal Open – NO): 無励磁時または無操作時に開いている(電気が流れない)接点です。力が加わる(リレーに電気が流れる、ボタンが押されるなど)と、閉じて(電気が流れるように)なります。
- b接点(常閉接点:Normal Closed – NC): 無励磁時または無操作時に閉じている(電気が流れる)接点です。力が加わる(リレーに電気が流れる、ボタンが押されるなど)と、開いて(電気が流れなくなる)なります。
この「正常な状態(Normal)」という考え方が非常に重要です。回路図を読むときは、まずその機器が「何もされていないとき」にどうなっているかを想像することから始めます。
では、なぜこのような2種類の接点が必要なのでしょうか?
これは、様々な制御の要求に応じるためです。
- 何かを「開始」させたいとき: 通常は電気が流れていない回路に、操作時にだけ電気を流したい場合(例:モーターをスタートさせる、ランプを点ける)。これはa接点が適しています。
- 何かを「停止」させたいとき: 通常は電気が流れている回路を、操作時にだけ電気を止めたい場合(例:非常停止ボタンで機械を止める、安全カバーが開いたら機械を止める)。これはb接点が適しています。
また、特にb接点は「安全回路」によく使われます。もしb接点につながる線が断線した場合、それは接点が開いたのと同じ状態になり、回路が遮断されます。これは、危険な状態(例:非常停止ボタンの線が切れる)になったときに、意図せず機械が動き続けるのを防ぐための「フェイルセーフ」の考え方に基づいています。
このように、a接点とb接点は、それぞれ異なる役割を持ち、電気回路におけるON/OFF制御の基本的な構成要素となっています。次に、それぞれの記号とその詳細な動作を見ていきましょう。
第2章:a接点(常開接点:Normal Open – NO)を徹底理解する
2.1 a接点の基本的な考え方と動作
a接点(エーせってん)は、「Normal Open(ノーマルオープン)」とも呼ばれ、記号では「NO」と表記されることもあります。名前が示す通り、「通常は開いている(オープン)」状態の接点です。
ここでいう「通常」とは、その接点を動かすための外部からの力が加わっていない状態、つまり
* リレーや電磁接触器の場合は、コイルに電流が流れていない「無励磁」の状態。
* 押しボタンやスイッチの場合は、ボタンが押されていない、レバーが倒されていない「無操作」の状態。
* リミットスイッチの場合は、検出対象物に当たっていない状態。
* 圧力スイッチの場合は、設定圧に達していない状態。
* 温度スイッチの場合は、設定温度になっていない状態。
などを指します。
この「通常開いている」状態では、接点は離れており、その二つの端子間には電気が流れません。例えるなら、蛇口が閉まっていて水が出ていない状態です。
そして、外部から力が加わる(リレーのコイルが励磁される、ボタンが押されるなど)と、接点は閉じます(メイク:Make)。二つの端子が電気的に繋がり、電気が流れるようになります。これは、蛇口を開けると水が出る状態に対応します。
力が解除されると、接点は再び開いて(ブレーク:Break)、電気は流れなくなります。多くの接点にはスプリングなどが内蔵されており、力がなくなると元の「通常開いている」状態に戻るようになっています。
2.2 a接点の電気記号とその見方
a接点の電気記号は、いくつかの種類がありますが、基本的な形は共通しています。最も一般的に使われる記号は、以下のような形です。
──┤ ├──
または、端子番号や関連する機器の記号と組み合わせて描かれます。
(コイル記号)
───
│ K1 │
───
│
─┴─ K1
┤ ├──
記号の見方のポイントは以下の通りです。
- 二本の線の間に「隙間」があること: これは、通常時(無励磁/無操作時)に接点が開いていて、電気が流れない状態であることを示しています。
-
可動側の接点(斜めの線)が、固定側の接点(縦の線)に「当たっていない」位置にあること: これは、力が加わると可動側が動いて固定側に触れる(閉じる)ことを示唆しています。JISやIECなどの規格によって、斜めの線の向きが異なることがありますが、隙間がある(=通常開いている)という本質は変わりません。例えば、IEC規格では以下のような表現も一般的です。
───┬───
│
│
─┴─
NO
または───┬───
│
│
─●─
NO
(●は固定接点を示す)これらの記号でも、可動部が通常は固定部に接触していない様子が表現されています。回路図によっては、接点の近くに「NO」という文字や、対応するリレーやスイッチの名称(例: K1, PB1, LS-A)が記されています。
-
端子番号: 多くの接点記号には、その接点の物理的な端子番号が近くに書かれています。例えば、リレーのデータシートを見ると、「a接点:端子13-14」のように記載されています。回路図上の記号の横に「13」「14」といった番号があれば、それはその接点の物理的な接続ポイントを示しています。これは、実際の機器の配線を行う際に非常に重要になります。
2.3 a接点が使われる回路例
a接点が最もシンプルに使われるのは、「何かを開始させる」「何かを有効にする」という場面です。
例1:押しボタンでランプを点灯させる回路
電源 ── スイッチ(a接点) ── ランプ ── 電源に戻る
電源ライン ───┤ スイッチ記号 ├─── ランプ記号 ─── 電源ラインに戻る
│ (a接点) │
───┴───
(無操作時: 開)
この回路では、スイッチが押されていない通常の状態では、a接点が開いているためランプに電気が流れません。スイッチを押すとa接点が閉じ、ランプに電気が流れて点灯します。指を離すとスイッチが通常状態に戻り、a接点が開いてランプは消灯します。これは「モーメンタリ(押している間だけON)」な動作です。
例2:リレーを使って別の回路の機器をON/OFFする回路
制御回路(低電圧):
電源 ── 制御スイッチ ── リレーコイル(K1) ── 電源に戻る
主回路(高電圧):
電源 ── リレー接点(K1のa接点) ── モーター/ヒーターなど ── 電源に戻る
“`
(制御回路)
電源 ─── スイッチ ─── コイル記号(K1) ─── 電源に戻る
(主回路)
電源 ───┬──── 負荷記号(モーターなど) ─── 電源に戻る
│ K1
─┴─
┤ ├── (K1のa接点)
“`
この例では、制御回路のスイッチがONになると、リレーK1のコイルに電流が流れてリレーが励磁されます。リレーが励磁されると、そのリレーに付属するa接点(K1のa接点)が閉じます。主回路では、このK1のa接点が閉じると負荷(モーターなど)に電気が流れて動作を開始します。制御回路のスイッチをOFFにするとリレーK1の励磁が解除され、K1のa接点が開いて主回路の負荷への電気が止まります。
このように、a接点は「操作や信号があったときに回路を閉じる」という、最も直感的で一般的なスイッチングの役割を果たします。
2.4 a接点の代表的な用途
a接点は非常に汎用性が高く、様々な場面で使用されます。
* 開始・起動: 機器やシステムの起動ボタン、モーターのスタート指令。
* 有効化: 特定の条件が満たされたときに機能を有効にする(例: 温度が設定値を超えたらヒーターをON)。
* 検出: センサーが何かを検出したときに信号を出す(例: 物体がリミットスイッチに当たった)。
* 表示: 特定の動作中にランプを点灯させる(例: モーター運転中ランプ)。
* インターロック: 複数の条件がすべて満たされたときにだけ動作を許可する(複数のa接点を直列に接続)。
a接点は、回路図の中で最も頻繁に見かける接点の一つであり、その動作を理解することは、回路図を読む上で不可欠です。
第3章:b接点(常閉接点:Normal Closed – NC)を徹底理解する
3.1 b接点の基本的な考え方と動作
b接点(ビーせってん)は、「Normal Closed(ノーマルクローズド)」とも呼ばれ、記号では「NC」と表記されることもあります。この名前が示す通り、「通常は閉じている(クローズド)」状態の接点です。
ここでの「通常」の意味はa接点の場合と同じく、外部からの力が加わっていない、無励磁/無操作の状態を指します。
この「通常閉じている」状態では、接点は接触しており、その二つの端子間には電気が流れています。例えるなら、蛇口が開いていて水が出ている状態です。
そして、外部から力が加わる(リレーのコイルが励磁される、ボタンが押されるなど)と、接点は開きます(ブレーク:Break)。二つの端子の電気が遮断され、電気が流れなくなります。これは、蛇口を閉めると水が止まる状態に対応します。
力が解除されると、接点は再び閉じて(メイク:Make)、電気は再び流れるようになります。b接点も、力がなくなると元の「通常閉じている」状態に戻るようになっています。
3.2 b接点の電気記号とその見方
b接点の電気記号もいくつかの種類がありますが、基本的な形は「通常閉じている」ことを示す形になっています。最も一般的に使われる記号は、以下のような形です。
───┬───
│
─┬─
または、関連する機器の記号と組み合わせて描かれます。
(コイル記号)
───
│ K1 │
───
│
─┴─ K1
─┬─
───┼───
記号の見方のポイントは以下の通りです。
- 二本の線が「繋がっている」ように見えること: これは、通常時(無励磁/無操作時)に接点が閉じていて、電気が流れる状態であることを示しています。
-
可動側の接点(斜めの線)が、固定側の接点(縦の線)に「当たっている」位置にあること: これは、通常時に接触しており、力が加わると可動側が動いて固定側から離れる(開く)ことを示唆しています。a接点と同様、斜めの線の向きは規格によって異なることがありますが、接触している(=通常閉じている)という本質は変わりません。IEC規格では以下のような表現も一般的です。
───┬───
│
│
─┬─
NC
または───┬───
│
│
─●─
NC
(●は固定接点を示す)これらの記号でも、可動部が通常は固定部に接触している様子が表現されています。回路図によっては、接点の近くに「NC」という文字や、対応するリレーやスイッチの名称(例: K1, PB2, LS-B)が記されています。
-
端子番号: b接点にも端子番号が記載されていることがあります。リレーのデータシートでは、「b接点:端子21-22」のように記載されることが一般的です(これはヨーロッパ系の規格によく見られますが、メーカーによって異なります)。回路図上の記号の横にこれらの番号があれば、物理的な接続先を示しています。
3.3 b接点が使われる回路例
b接点が使われるのは、「何かを停止させる」「何かを禁止する」という場面や、前述の「フェイルセーフ」を考慮する場合です。
例1:押しボタンでランプを消灯させる回路
電源 ── スイッチ(b接点) ── ランプ ── 電源に戻る
電源ライン ───┬─── ランプ記号 ─── 電源ラインに戻る
│
─┬─ スイッチ記号
│ (b接点)
───┴───
(無操作時: 閉)
この回路では、スイッチが押されていない通常の状態では、b接点が閉じているためランプに電気が流れて点灯しています。スイッチを押すとb接点が開くため、ランプへの電気が遮断されて消灯します。指を離すとスイッチが通常状態に戻り、b接点が閉じてランプは再び点灯します。これは「モーメンタリ(押している間だけOFF)」な動作です。
例2:非常停止ボタンで機械を停止させる回路
電源 ── 非常停止ボタン(b接点) ── 機械の運転回路 ── 電源に戻る
電源ライン ───┬─── 機械運転回路(例: モーター制御リレーコイルなど) ─── 電源に戻る
│
─┬─ 非常停止ボタン記号
│ (b接点)
───┴───
(無操作時: 閉)
この回路では、非常停止ボタンが押されていない通常の状態では、b接点が閉じているため機械の運転回路に電気が供給されています。機械は正常に動作できます。しかし、非常事態が発生して非常停止ボタンが押されると、b接点が開いて機械運転回路への電気が遮断され、機械は停止します。
この例がb接点のフェイルセーフ特性をよく示しています。もし非常停止ボタンの線が断線した場合、b接点は「開いた」状態と同じになるため、機械運転回路への電気が供給されず、機械は停止します。これは、線が切れても危険な運転が続かないように設計されているということです。もしここでa接点を使っていたら、線が切れても「開いた」状態のままで、非常停止ボタンが効かなくなってしまいます。
3.4 b接点の代表的な用途
b接点は、特に安全や停止、または「〜ではない」という条件に使用されます。
* 停止・遮断: 機器やシステムの停止ボタン、非常停止ボタン。
* 禁止: 特定の条件が満たされている間、動作を禁止する(例: カバーが開いている間は機械を動かさない)。
* 検出(不在): センサーが何かが「ない」ことを検出したときに信号を出す(例: 安全柵が閉まっている間)。
* 安全インターロック: 危険な状態でないことを確認してから動作を許可する(b接点を直列に接続。例: 全ての安全ドアが閉じている)。
* デフォルトON: 特に制御信号がない状態ではONにしておきたい回路。
b接点は、a接点と対照的な役割を果たし、回路の安全性や確実な停止機構を構築するために不可欠な要素です。
第4章:c接点(切換接点:Change-over – CO)とは?
a接点とb接点の他に、よく見られるのが「c接点」と呼ばれるものです。c接点(シーせってん)は、「Change-over(チェンジオーバー)」または「Transfer(トランスファー)」とも呼ばれ、一つの可動接点が、通常時はb接点側の固定接点に繋がっており、力が加わるとa接点側の固定接点に切り替わる、という動作をします。
つまり、c接点には「共通端子(Common Terminal)」があり、この共通端子が、外部からの力が加わっていない通常時にはb接点側の端子に繋がっています。力が加わると、共通端子はb接点側から離れてa接点側の端子に繋がります。
4.1 c接点の電気記号とその見方
c接点の電気記号は、共通端子から伸びた可動接点が、a接点側とb接点側の両方の固定接点に向かっている形で描かれます。
(共通端子)
───●───┬─── (a接点側)
│ │
├──┤
│ │
─┴─ (可動接点)
│
│
───┬──── (b接点側)
│
─┬─
別の表現方法としては、以下のようなものもあります。
───┬─── (a接点側)
│
│
─┴─
│
───●─── (共通端子)
│
─┬─
│
───┬─── (b接点側)
記号の見方のポイントは以下の通りです。
- 「共通端子」があること: 通常は●などで示され、可動接点がここから伸びています。
- 可動接点が、通常時に「b接点側」の固定接点に繋がっていること: 上記の記号では、可動接点(斜めの線)が下側の固定接点(縦の線)に接触しています。
- 「a接点側」の固定接点も描かれていること: 可動接点が力が加わった際に切り替わる先の固定接点です。通常時は離れています。
c接点は、言い換えれば「a接点とb接点が一体になったもの」であり、特に「SPDT(Single Pole, Double Throw)」や「DPDT(Double Pole, Double Throw)」といったスイッチやリレーの仕様でよく使われます。SPDTは1回路2接点、DPDTは2回路2接点(ただし切り替え先が2方向)という意味です。
4.2 c接点が使われる回路例
c接点は、「一方をOFFにすると同時に他方をONにする」といった切り替え動作に便利です。
例1:一つのスイッチで二つのランプを交互に点灯させる回路
電源 ── スイッチ(c接点)の共通端子 ───
│
├─── ランプA ─── 電源に戻る (a接点側)
│
├─── ランプB ─── 電源に戻る (b接点側)
電源ライン ───●───┬─── ランプA ─── 電源ラインに戻る (a接点側)
│ │
├──┤ スイッチ記号 (c接点)
│ │
─┴─ (無操作時: ランプB側)
│
│
───┬──── ランプB ─── 電源ラインに戻る (b接点側)
│
─┬─
この回路では、スイッチが押されていない通常の状態では、共通端子がb接点側に繋がっているため、ランプBに電気が流れて点灯します。ランプAは消灯しています。スイッチを押すとc接点が切り替わり、共通端子がa接点側に繋がるため、ランプBへの電気が遮断されて消灯し、同時にランプAに電気が流れて点灯します。
例2:リレーで負荷の接続先を切り替える回路
制御回路:
電源 ── 制御スイッチ ── リレーコイル(K1) ── 電源に戻る
主回路:
電源 ── リレー接点(K1のc接点)の共通端子 ───
│
├─── 負荷A ─── 電源に戻る (a接点側)
│
├─── 負荷B ─── 電源に戻る (b接点側)
この例では、リレーK1が励磁されていない通常状態では、K1のc接点の共通端子がb接点側(負荷B)に繋がっています。リレーK1が励磁されると、c接点が切り替わり、共通端子がa接点側(負荷A)に繋がります。これにより、制御信号に応じて負荷Aと負荷Bの間で電源供給先を切り替えることができます。
4.3 c接点の代表的な用途
- 切り替え: 二つの回路や負荷の間で電源や信号の接続先を切り替える。
- 交互運転: 二台のモーターなどを交互に運転する回路。
- 状態表示: 例えば、機器が停止中は赤ランプを点灯させ、運転中は緑ランプを点灯させる(共通端子に電源を繋ぎ、b接点側に赤ランプ、a接点側に緑ランプを繋ぐ)。
- 極性反転: DCモーターの回転方向を切り替える(DPDT接点を使用)。
c接点は、a接点とb接点の機能を組み合わせたものであり、より柔軟で高度な制御を行うために使用されます。
第5章:コイルと接点の関係性を理解する
これまで、a接点、b接点、c接点がそれぞれ「力が加わったとき」に状態を変化させることを説明しました。では、この「力」とは具体的に何でしょうか?
主に、リレーや電磁接触器における「コイルの励磁」によって発生する電磁力が、接点を物理的に動かす役割を果たします。
5.1 リレー/電磁接触器の基本動作
リレーや電磁接触器は、コイルと接点から構成される電磁石を利用したスイッチです。
- コイル: 電気信号(電流)が流れると磁界を発生させます。
- 鉄心・可動鉄片(アーマチュア): コイルによって発生した磁界によって引きつけられる、または反発する部品です。
- 接点: 可動鉄片の動きと連動して開閉する部分です。
動作原理:
制御回路からリレー/電磁接触器のコイルに電流を流す(励磁する)と、コイルが電磁石となり磁力を発生させます。この磁力によって可動鉄片が引きつけられ、それに連動して接点が開閉します。
コイルへの電流を止めると(無励磁)、磁力は消滅し、スプリングなどの力で可動鉄片と接点は元の状態(無励磁時=通常状態)に戻ります。
つまり、コイルへのON/OFF信号が、接点のON/OFF動作を引き起こすトリガーとなるのです。
5.2 回路図におけるコイルと接点の関連付け
回路図では、複数の接点を持つリレーや電磁接触器の場合、どの接点がどのコイルに属するのかを明確にする必要があります。これは、記号の近くに同じ「符号(リファレンス)」を記入することで行われます。
例えば、「K1」という符号のリレーがあったとします。そのリレーのコイルと、それに付属する複数の接点は、回路図の異なる場所に描かれていても、すべて「K1」という符号が付けられます。
“`
(制御回路)
電源 ─── スイッチ ─── コイル記号 ─── 電源に戻る
K1
(主回路 1)
電源 ───┬──── モーター1 ─── 電源に戻る
│ K1
─┴─
┤ ├── (K1のa接点)
(主回路 2)
電源 ───┬──── ヒーター ─── 電源に戻る
│ K1
─┬─
───┼─── (K1のb接点)
(主回路 3 – 別ページなど)
電源 ───●───┬─── ランプA ─── 電源に戻る
│ K1 │
├──┤ (K1のc接点)
│ │
─┴─
│
───┬──── ランプB ─── 電源に戻る
│
─┬─
“`
このように、コイル記号の近くに書かれた符号(K1)と、各接点記号の近くに書かれた同じ符号(K1)によって、これらの接点が一つのリレー(K1)によって制御されていることが分かります。
リレーや電磁接触器には、コイル端子番号と接点端子番号が割り当てられています。回路図の記号の近くにこれらの番号が記載されていれば、実際の機器のどの端子に配線すれば良いのかを特定できます。例えば、K1のコイル端子がA1-A2、a接点端子が13-14、b接点端子が21-22だった場合、回路図には以下のように記載されます。
“`
(制御回路)
電源 ─── スイッチ ─── コイル記号(A1)─── (A2)電源に戻る
K1
(主回路 1)
電源 ───┬──── モーター1 ─── 電源に戻る
│ (13)K1(14)
─┴─
┤ ├── (K1のa接点)
(主回路 2)
電源 ───┬──── ヒーター ─── 電源に戻る
│ (21)K1(22)
─┬─
───┼─── (K1のb接点)
“`
このように、符号と端子番号を追うことで、回路図上の論理的な接続と物理的な配線を結びつけることができます。
第6章:回路図で接点を見つける・読み解くためのステップ
回路図を読み始めるとき、闇雲に追うのではなく、いくつかのステップを踏むと理解しやすくなります。特に接点を含む制御回路を読む際には、以下のステップを参考にしてください。
- 電源を見つける: 回路図の左側または上側に、電源ライン(L1, L2, L3, N, +, -など)が描かれています。ここから電気が流れ始めます。
- 制御対象(負荷)を見つける: 回路図の右側または下側に、モーター、ランプ、ヒーター、ソレノイドなどの負荷が描かれています。電気が最終的にどこに流れ、何をするのかを確認します。リレーや電磁接触器の場合は、その「コイル」が制御回路における負荷となります。
- 制御回路の電源ラインを追う: 電源から制御対象(またはリレーのコイルなど)へ向かうラインを視覚的に追っていきます。この途中に様々な接点やスイッチが直列または並列に接続されています。
- 各記号を特定する: 追っていく中で出てくる記号が何かを特定します。スイッチ、リレーコイル、タイマー、センサーなど、その記号が表す部品は何でしょうか。
- 接点記号を見つける: スイッチやリレーなどの記号に付随する形で、a接点、b接点、c接点の記号が描かれています。
- 接点の「通常状態」を判断する: 見つけた接点がa接点(通常開)なのか、b接点(通常閉)なのか、c接点(切換)なのかを記号の形で判断します。
- 接点を「動かす元」を特定する: その接点がどの機器(リレー、スイッチ、センサーなど)の接点なのかを、近くに書かれた符号(K1, PB1, LS-Aなど)から特定します。回路図上でその「動かす元」の本体(コイル記号や本体記号)を探します。
- 回路の状態を仮定する:
- 「通常状態」を仮定する: どのスイッチも操作されておらず、どのリレーも励磁されていない状態を想像します。このとき、各a接点は開いており、各b接点は閉じています。この状態で、電源から負荷まで電気が流れるか(回路が閉じているか)を確認します。
- 特定の操作/条件を仮定する: 例えば、「スタートボタンPB1が押されたら」という状況を想像します。PB1がリレーK1のa接点だった場合、K1のコイルに電気が流れるかを判断します。K1のコイルに電気が流れると判断できたら、今度は回路図上の他の場所にあるK1という符号の付いた接点すべてが「動いた」状態になると考えます。K1のa接点は閉じ、K1のb接点は開きます。この新しい接点状態で、再び電源から負荷まで電気が流れるかを確認します。
- 回路の動作を論理的に追う: 上記の仮定と接点の動作原理を繰り返し適用して、回路がどのような条件で、どのように動作するのか(どの機器が動き出し、どの機器が止まるのか)を段階的に追っていきます。これは、複数の接点が直列・並列に組み合わさっている場合、AND条件(直列接続)やOR条件(並列接続)を考慮して判断します。
このステップを繰り返し練習することで、回路図の読み取り能力は向上します。特に、接点が「通常状態」と「動作状態」でどう変わるのか、そしてどの接点がどの機器によって動かされるのかを明確にすることが重要です。
第7章:様々な機器に内蔵される接点
a接点、b接点、c接点は、リレーや電磁接触器だけでなく、様々な電気制御機器に内蔵されています。これらの機器の基本的な記号と、そこにどのように接点が表現されるかを知っておくと、回路図を読む際に役立ちます。
-
押しボタン・スイッチ:
- 押しボタン: 押している間だけ状態が変化する(モーメンタリ)。離すと元に戻る。スタートボタン(a接点)、ストップボタン(b接点)、非常停止ボタン(b接点)など。
- セレクタスイッチ: レバーなどを回してON/OFFや切り替えの状態を保持する(維持)。例えば「手動/自動」切り替えなど。複数の接点を持つものが多い。
- 記号例:
- 押しボタン(a接点):
──┤ ├─ PB1
- 押しボタン(b接点):
──┬─ PB2
- セレクタスイッチ(a接点):
──┤ ├─ SW-M
- セレクタスイッチ(b接点):
──┬─ SW-A
- セレクタスイッチ(c接点):
──●──┬─── (a側)
、────┬──── (b側)
SW1
- 押しボタン(a接点):
-
リミットスイッチ (位置検出スイッチ): 物体が特定の場所に到達したかどうかを物理的な接触や非接触で検出するスイッチ。機械の端部検出や、部品の有無検出などに使う。物体が「無い」ときに閉じているb接点や、「有る」ときに閉じるa接点、またはその両方(c接点タイプ)がある。
- 記号例:
- リミットスイッチ(a接点):
──┤ ├─ LS-A
(矢印で検出方向を示すことも) - リミットスイッチ(b接点):
──┬─ LS-B
- リミットスイッチ(a接点):
- 記号例:
-
感圧スイッチ (圧力スイッチ): 流体(空気、油など)の圧力が設定値を超えたときに動作するスイッチ。
- 記号例:
- 圧力スイッチ(a接点):
──┤ ├─ PS1
- 圧力スイッチ(b接点):
──┬─ PS2
- 圧力スイッチ(a接点):
- 記号例:
-
感熱スイッチ (温度スイッチ): 温度が設定値を超えたときに動作するスイッチ。温度ヒューズやサーマルリレーの接点もこれに類する。
- 記号例:
- 温度スイッチ(a接点):
──┤ ├─ TS1
- 温度スイッチ(b接点):
──┬─ TS2
- サーマルリレー(過負荷検出用b接点):
──┬─ TH1
(モーター過負荷時に開く)
- 温度スイッチ(a接点):
- 記号例:
-
タイマーリレー: 設定した時間だけ遅延して接点が動作するリレー。コイル励磁から一定時間後にa接点が閉じる「ONディレイ」や、コイル無励磁から一定時間後にb接点が開く「OFFディレイ」などがある。タイマー接点には、それがタイマー接点であることを示す記号(半円や矢印など)が付加されることが多い。
- 記号例:
- ONディレイタイマー(a接点):
──┤ ├─ TMR1
(半円で遅延を示す) - OFFディレイタイマー(b接点):
──┬─ TMR2
(半円で遅延を示す)
- ONディレイタイマー(a接点):
- 記号例:
これらの機器記号と接点記号を組み合わせて読むことで、回路が物理的な動きや時間経過、圧力や温度といった条件にどのように反応して制御されるのかを理解できます。
第8章:実践!簡単な回路図を読んでみよう
a接点とb接点の理解を深めるために、簡単な制御回路図の読み方を実践してみましょう。最も基本的なモーターの起動・停止回路です。
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(制御回路)
L1 ───┬─── 緊急停止ボタン(b接点) ───┬─── 停止ボタン(b接点) ───┬─── スタートボタン(a接点) ───┬─── リレーコイル(K1) ─── N
│ │ │ │
│ │ │ ├─── K1のa接点 ─────────┘ (自己保持)
│ │ │
└── 過負荷継電器(b接点) ───────────┘
(主回路)
L1 ─── 電磁接触器(MC1)のa接点 ─── モーター ─── N
L2 ─── 電磁接触器(MC1)のa接点 ─── ───
L3 ─── 電磁接触器(MC1)のa接点 ─── ───
MC1のコイルに K1のa接点を繋ぐ
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※上記の図は簡略化しています。実際の回路図はより詳細です。特に主回路のMC1のa接点は、制御回路のリレーK1によって動かされることが関連付けられています。ここでは、簡単のため、「K1がONになったらMC1もONになる」と考えてください。(実際の回路では、K1のa接点がMC1のコイルを励磁します)
この回路図を、ステップを踏んで読んでみましょう。
- 電源: L1, N (単相電源と仮定。実際は三相の場合が多いですが、制御回路は単相やDC24Vが多い)
- 制御対象: 制御回路の負荷はリレーコイル K1。主回路の負荷はモーター。
- 制御回路を追う: L1から始まり、Nで終わるラインを追います。
- 記号を特定: 緊急停止ボタン、停止ボタン、スタートボタン、過負荷継電器、リレーコイル K1、K1のa接点が見つかります。
- 接点の通常状態:
- 緊急停止ボタン: b接点(通常閉)
- 停止ボタン: b接点(通常閉)
- スタートボタン: a接点(通常開)
- 過負荷継電器: b接点(通常閉、モーター過負荷時に開く)
- K1のa接点: a接点(通常開、K1コイル励磁時に閉じる)
- 動かす元: 緊急停止、停止、スタートはそれぞれのボタン、過負荷継電器はモーターの過負荷、K1のa接点はK1コイル自身。
-
回路の状態を仮定:
- 通常状態(何も押されていない、過負荷なし):
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 開いている
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 開いている
- L1からK1コイルまでの経路を見ると、スタートボタン(a接点)とK1のa接点が開いているため、K1コイルには電気が流れません。モーターも動きません。
- スタートボタンを押したとき:
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 閉じる
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 開いている(まだK1コイルは励磁されていない)
- L1 → 緊急停止(閉) → 停止(閉) → スタート(閉) → 過負荷(閉) → K1コイル → N と電流が流れる経路が一時的にできます! K1コイルが励磁されます。
-
K1コイルが励磁された後:
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 押されている間は閉じている
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 閉じる
- スタートボタンから指を離す前の電流経路は L1 → 緊急停止(閉) → 停止(閉) → スタート(閉) → 過負荷(閉) → K1 → N です。
- ここで回路図のもう一つのラインに注目します。スタートボタンと並列に接続されている「K1のa接点」のラインです。スタートボタンが閉じたことでK1が励磁され、その結果K1のa接点が閉じました。
- スタートボタンから指を離すと:
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 開く
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 閉じている
- このとき、電流は L1 → 緊急停止(閉) → 停止(閉) → K1のa接点(閉) → 過負荷(閉) → K1コイル → N という経路で流れ続けます! これを「自己保持(セルフホールド)」といいます。スタートボタンは一時的に閉じただけですが、K1コイルは励磁状態を維持します。モーターも運転継続します。
-
運転中に停止ボタンを押したとき:
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 開く
- スタートボタン(a): 開いている
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 閉じている
- L1 → 緊急停止(閉) → 停止(開) の時点で回路が切断されます。K1コイルへの電流が遮断され、K1は無励磁になります。
- K1が無励磁になると、K1のa接点は開きます。これにより、たとえ停止ボタンから指を離して停止ボタン(b)が閉じても、自己保持の経路(K1のa接点のライン)が開いているため、再びK1が励磁されることはありません。モーターは停止します。
-
運転中に緊急停止ボタンを押したとき:
- 緊急停止ボタン(b): 開く
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 開いている
- 過負荷継電器(b): 閉じている
- K1のa接点: 閉じている
- L1 → 緊急停止(開) の時点で回路が切断されます。停止ボタンの場合と同様にK1コイルへの電流が遮断され、K1は無励磁、モーターは停止します。
- 緊急停止ボタンがb接点であるため、どこか途中で断線した場合も回路が開となり、K1は無励磁、モーターは停止します(フェイルセーフ)。
-
運転中に過負荷になったとき:
- 緊急停止ボタン(b): 閉じている
- 停止ボタン(b): 閉じている
- スタートボタン(a): 開いている
- 過負荷継電器(b): 開く
- K1のa接点: 閉じている
- L1 → 緊急停止(閉) → 停止(閉) → K1のa接点(閉) → 過負荷(開) の時点で回路が切断されます。K1コイルへの電流が遮断され、K1は無励磁、モーターは停止します。
- 通常状態(何も押されていない、過負荷なし):
この簡単な回路図一つを見ても、a接点とb接点がどのように組み合わされて、起動・停止、そして安全停止・保護の機能を実現しているかが分かります。スタートボタン(a接点)と自己保持用のK1のa接点は「ONにする」役割、停止ボタン(b接点)と緊急停止ボタン(b接点)、過負荷継電器(b接点)は「OFFにする(遮断する)」役割を果たしています。そして、停止や緊急停止、過負荷検知には、フェイルセーフの観点からb接点が採用されていることが理解できます。
第9章:よくある疑問と注意点
回路図の読み方、特に接点に関して初心者が疑問に思うことや注意すべき点をいくつか挙げます。
- 記号の形が微妙に違う?: 国際規格(IEC)、日本の規格(JIS)、北米の規格(NEMA)など、電気記号にはいくつかの標準があります。また、メーカー独自の記号を使用する場合もあります。a接点やb接点の基本的な考え方は同じですが、斜め線の向きや固定接点の描き方などが異なることがあります。重要なのは、記号の基本的な構造(隙間があるか繋がっているか)と、近くに書かれた文字(NO/NC)や記号の定義表を参照することです。
- リレーに複数の接点がある場合、全部動くの?: はい、一つのリレーコイルが励磁されると、そのリレーに付属するすべての接点(a接点、b接点、c接点など)が同時に状態を変化させます。回路図上で同じ符号(K1など)が付いている接点は、すべて連携して動きます。
- 接点の「定格」とは?: 各接点には、安全に開閉できる電圧(定格電圧)と電流(定格電流)の上限が定められています。回路図を読むだけでなく、実際に機器を選定・使用する際は、これらの定格が接続する負荷の仕様を満たしているか確認する必要があります。特にモーターなどの大きな電流が流れる負荷を直接開閉する場合、リレーではなく電磁接触器を使用するのが一般的です。
- 「メイク・ビフォア・ブレーク」と「ブレーク・ビフォア・メイク」: c接点には、切り替わる際に古い接続が切れてから新しい接続が繋がる「ブレーク・ビフォア・メイク(BBM)」と、新しい接続が繋がってから古い接続が切れる「メイク・ビフォア・ブレーク(MBB)」という種類があります。多くの一般的なリレー接点はBBMタイプです。これは、切り替え時にa接点側とb接点側が同時に短絡(ショート)しないようにするためです。特殊な用途ではMBBが必要な場合もあり、回路図で区別して描かれることがあります。初心者はまずBBMが一般的であることを理解しておけば十分でしょう。
- 接点の「チャタリング」: 接点が開閉する際に、微細な振動によって短時間でON/OFFを繰り返す現象を「チャタリング」と言います。制御回路でこのチャタリングが問題になる場合は、タイマーで遅延させたり、PLCの機能でチャタリングを除去したりする設計がされます。
第10章:まとめと次のステップ
この記事では、電気回路図の最も基本的な要素である「a接点(常開接点)」と「b接点(常閉接点)」、そして関連する「c接点(切換接点)」について、その記号、動作原理、回路での役割、そして読み解き方について詳細に解説しました。
- a接点: 通常は開いており、力が加わると閉じる。何かを「開始」「有効化」する際に使う。記号は「隙間」がある形。
- b接点: 通常は閉じており、力が加わると開く。何かを「停止」「禁止」する際に使う。安全回路でのフェイルセーフにも重要。記号は「繋がっている」ように見える形。
- c接点: 共通端子を持ち、通常はb接点側に、力が加わるとa接点側に切り替わる。二つの回路を切り替える際に使う。
これらの接点は、リレーやスイッチ、センサーなど様々な機器に内蔵されており、それらを動かす「力」は多くの場合、リレーコイルの励磁やボタンの操作などです。回路図では、機器の符号(K1など)によって、どの接点がどの機器に属するのかが示されています。
回路図を読む際は、電源から負荷への経路を追いながら、各接点の「通常状態」と「動作状態」での変化、そしてそれを引き起こす元を特定することが鍵となります。特にb接点が直列に入っている部分は、その接点が一つでも開くと回路全体が遮断される重要な安全・停止ポイントとなります。
この記事で解説した内容は、電気制御回路を理解するための強固な土台となります。しかし、回路図の世界は広大です。この知識を活かして、次に進むべきステップは以下の通りです。
- 簡単な回路図をたくさん読む: 実際に様々な制御回路図(インターネット上のサンプル、機器の取扱説明書、教科書など)を見て、a接点、b接点、c接点を繰り返し見つける練習をしてください。それぞれの接点が回路の中でどのような役割を果たしているのかを、論理的に追ってみましょう。
- 実際の機器を見る: 可能であれば、実際の電気部品(リレー、押しボタン、リミットスイッチなど)を見て、回路図の記号と実際の端子がどのように対応しているかを確認してください。端子番号も確認してみましょう。
- より高度な記号や回路を学ぶ: タイマー接点、カウンター、各種センサー(近接、光電など)、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)など、制御回路にはさらに多くの要素があります。これらの記号や、それらが組み合わされた複雑な回路図の読み方を少しずつ学んでいきましょう。PLCのラダー図は、接点の記号が豊富に使われており、この記事で学んだ知識が直接役立ちます。
- 簡単な回路を自分で考えてみる: 「特定のボタンを押したらランプが点き、別のボタンを押したら消える回路」や「扉が開いている間はブザーが鳴る回路」など、簡単な制御をa接点とb接点の組み合わせでどう実現できるかを考えて、簡単な回路図を描いてみるのも良い練習になります。
電気回路図の読み方は、まるで外国語を学ぶようなものです。最初は記号や文法に戸惑うかもしれませんが、基本的な単語(接点!)をしっかりと覚え、文章(回路)を読む練習を重ねることで、必ず理解できるようになります。
この記事が、あなたが電気回路図の世界へ一歩踏み出すための助けとなれば幸いです。根気強く学習を続け、電気の「言葉」をマスターしてください。応援しています!