macOS Mojave (10.14) とは? 特徴とダウンロードガイド
はじめに:macOS Mojaveへの旅
macOS Mojave(バージョン10.14)は、Appleが2018年9月24日にリリースしたmacOSのメジャーバージョンアップです。このOSは、前バージョンであるHigh Sierra(10.13)の後継として登場し、ユーザーインターフェイスや標準アプリケーションに多くの新機能と改善をもたらしました。特に注目すべきは、UI全体を暗くする「ダークモード」の導入、デスクトップの整理を助ける「スタック」、そしてFinderの強化やMac App Storeの刷新などです。
Mojaveは、その後のmacOS Catalina(10.15)で32ビットアプリケーションのサポートが終了する前の最後のバージョンであり、多くのユーザーにとって重要な移行ポイントとなりました。本記事では、macOS Mojaveの主要な特徴、対応機種、そしてダウンロードおよびインストール方法について、詳細かつ網羅的に解説します。5000語を超える長文となりますが、Mojaveの全てを理解し、必要に応じて導入するための完全ガイドとしてご活用ください。
macOS Mojaveの主要な特徴:ユーザー体験を豊かにする新機能
macOS Mojaveは、見た目だけでなく、日々のMacでの作業効率を向上させるための様々な新機能と改善が含まれています。ここでは、その中でも特に重要な特徴を深く掘り下げてご紹介します。
1. ダークモード (Dark Mode): 目に優しく、集中力を高める新しい見た目
Mojaveの最も象徴的で、多くのユーザーに待ち望まれていた機能の一つが「ダークモード」です。この機能は、メニューバー、Dock、ウィンドウ、そして多くの標準アプリケーションの背景を明るい色から暗い色に変更します。
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なぜダークモード?
- 目の負担軽減: 特に夜間や暗い環境での作業において、画面のまぶしさを軽減し、目の疲れを和らげます。長時間の作業でも快適さを維持しやすくなります。
- コンテンツへの集中: 明るいフレームが抑制されることで、ユーザーは作業中のコンテンツ(文章、画像、コードなど)に集中しやすくなります。UI要素が背景に溶け込むような印象を与え、主たる作業領域が際立ちます。
- 美的側面: プロの写真家やビデオ編集者など、ビジュアルコンテンツを扱うクリエイターにとって、暗いインターフェイスは作品の色やトーンをより正確に確認するのに役立ちます。また、単に見た目が洗練されていると感じるユーザーも多いでしょう。
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ダークモードの設定:
- システム環境設定の「一般」から簡単に切り替えることができます。「外観モード」のオプションで、「ライト」と「ダーク」を選択できます。
- この設定を有効にすると、Finderウィンドウ、標準アプリケーション(Mail, Safari, Messages, Notes, Calendar, Photosなど)、そしてApple純正のプロ向けアプリケーション(Final Cut Pro, Logic Proなど)のインターフェイスが暗くなります。
- 多くのサードパーティ製アプリケーションもMojaveのリリースに合わせてダークモードに対応しました。未対応のアプリは、引き続き従来の明るい表示になります。
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ダークモードとダイナミックデスクトップの連携:
- 次に説明するダイナミックデスクトップと組み合わせることで、時間帯によってデスクトップ背景が変化するだけでなく、UIの表示モードも自動的に切り替わるような設定も可能です(ただし、Mojave標準のダイナミックデスクトップは時間で背景が変わるのみで、UIモードの自動切り替えはCatalina以降に導入された機能です。MojaveではUIモードは手動で切り替えるか、特定のユーティリティアプリを使用する必要があります)。
ダークモードは、macOSのUIデザインにおける大きな一歩であり、その後のバージョンでも重要な機能として引き継がれています。
2. ダイナミックデスクトップ (Dynamic Desktop): 時間と共に変化する壁紙
macOS Mojaveでは、「ダイナミックデスクトップ」という新しい壁紙の概念が導入されました。これは、一日の時間帯に合わせてデスクトップの背景画像が自動的に変化する機能です。
- 仕組み: Mojaveに標準で含まれるダイナミックデスクトップの壁紙は、時間の経過とともに移り変わる砂漠の風景(Mojave Desert)やグラデーション(Solar Gradients)を捉えた複数枚の画像セットです。Macの内蔵時計と位置情報(オプション)に基づいて、朝、昼、夕方、夜と壁紙がシームレスに切り替わります。
- 設定方法: システム環境設定の「デスクトップとスクリーンセーバ」パネルで、ダイナミックデスクトップとして提供されている壁紙を選択します。
- ユーザー体験: 作業中の時間帯を意識させるとともに、デスクトップに単調さではなく時間の流れや変化を感じさせることで、より生き生きとしたコンピューター環境を提供します。特に、ダークモードと組み合わせることで、夜間の壁紙は暗いUIに自然と溶け込みます。
- その後の展開: macOS Catalina以降では、さらに多くのダイナミックデスクトップが追加され、ユーザーが独自のダイナミック壁紙を作成するツールも登場しました。Mojaveのダイナミックデスクトップは、その先駆けとなる機能です。
3. スタック (Stacks): 散らかったデスクトップを自動で整理
デスクトップにファイルを一時的に保存したり、ダウンロードしたものを置いたりしているうちに、アイコンだらけで何がどこにあるか分からなくなる…そんな経験はありませんか? macOS Mojaveの「スタック」機能は、この悩みを解消するために設計されました。
- 仕組み: デスクトップ上のファイルを、種類(画像、書類、PDF、スプレッドシートなど)、日付(最終開封日、作成日、追加日、変更日)、タグ、またはその他の基準に基づいて自動的にグループ化します。同じカテゴリのファイルは、デスクトップ上で一つの「スタック」としてまとめられます。
- 使い方: デスクトップの右クリック(またはControl+クリック)メニューから「スタックを使用」を選択するだけで有効になります。
- スタックをクリックすると、そのスタックに含まれるファイルが展開され、個別のファイルアイコンが表示されます。もう一度クリックすると、再び一つのスタックにまとまります。
- スタックの上でスクロールホイールを回すと、スタックに含まれるファイルがプレビューされ、目的のファイルを素早く見つけることができます。
- 設定オプション: スタックのグループ化基準は、右クリックメニューの「スタックをグループ化」サブメニューから変更できます。デフォルトは「種類」ですが、「最終開封日」や「タグ」など、自分のワークフローに合わせて設定できます。
- メリット:
- デスクトップの整頓: ファイルが自動的に整理されるため、デスクトップが常にクリーンな状態を保ちやすくなります。
- ファイルの発見効率向上: 関連するファイルがグループ化されるため、目的のファイルを素早く見つけ出すことができます。特に、ファイル名の記憶がおぼろげな場合でも、種類や日付で絞り込んで探すのに役立ちます。
- 視覚的なノイズの軽減: 多数のアイコンがデスクトップに並ぶことによる視覚的なノイズが減り、より集中して作業に取り組める環境を作れます。
スタックは、日々のMac操作において、地味ながらも非常に効果的な機能強化と言えます。
4. Finderの進化:ギャラリー表示とクイックアクション
macOS Mojaveでは、Finderにもいくつかの重要な改良が加えられました。特に目立つのは、新しいファイル表示オプションと、ファイルに対する素早い操作を可能にする機能です。
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ギャラリー表示 (Gallery View):
- Finderの表示形式に、従来のアイコン、リスト、カラム、Cover Flowに加えて「ギャラリー」表示が追加されました。これは、ファイル、特に画像やPDF、動画などのメディアファイルに最適な表示形式です。
- 特徴: ウィンドウの上部に大きなプレビューが表示され、下部には他のファイルがサムネイルとして並んで表示されます。左右の矢印キーやクリックで簡単に他のファイルのプレビューに切り替えることができます。
- 情報表示: ウィンドウの右側には、選択中のファイルのメタデータ(Exif情報、解像度、作成日など)と「クイックアクション」が表示されます。これにより、ファイルをプレビューしながら詳細情報を確認し、そのまま簡単な編集を行うことができます。
- メリット: 写真の選別、PDFの内容確認、動画のサムネイルチェックなどが非常に効率的に行えるようになりました。特にクリエイティブな作業を行うユーザーにとって有用な機能です。
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クイックアクション (Quick Actions):
- Finderやギャラリー表示、Quick Lookから、選択したファイルに対して素早く簡単な操作を実行できる機能です。ファイルの右クリックメニューや、ギャラリー表示・Quick Lookのサイドバーに表示されます。
- 標準アクション: 標準で提供されるクイックアクションには以下のようなものがあります。
- 画像の回転: 画像ファイルを90度回転させます。
- マークアップ: 画像やPDFに直接手書きの注釈や図形を追加します。
- PDFを作成: 選択した複数の画像ファイルを一つのPDFに結合します。
- ビデオのトリミング: ビデオファイルの開始点と終了点を調整して、一部を切り出します。
- カスタムアクション: Automatorを利用して、独自のクイックアクションを作成することも可能です。これにより、特定のファイル操作(リネーム、ファイル形式変換、フォルダへの移動など)をワンクリックで実行できるようになります。
- メリット: ファイルを開くことなく、Finder上やプレビュー画面から直接簡単な編集や操作ができるため、ワークフローが大幅に効率化されます。特に、画像やドキュメントの簡単な加工や整理において威力を発揮します。
これらのFinderの改善は、日々のファイル管理と操作をより直感的かつ効率的にするための重要なステップでした。
5. スクリーンショット機能の強化と画面収録
macOS Mojaveでは、スクリーンショットを撮る際の操作性と機能が大幅に向上しました。単に画面をキャプチャするだけでなく、その後の編集や管理もスムーズに行えるようになっています。
- 新しいショートカット:
Shift + Command + 5
という新しいショートカットキーが導入されました。これを押すと、画面の下部にスクリーンショットと画面収録のためのツールバーが表示されます。- ツールバーの機能:
- 画面全体を撮影
- 選択したウィンドウを撮影
- 選択した範囲を撮影
- 画面全体を収録
- 選択した範囲を収録
- 保存先(デスクトップ、書類、クリップボード、プレビュー、Mail, Messagesなど)の選択
- タイマー設定 (5秒後、10秒後)
- マウスポインタを含めるかどうかの設定
- 従来のショートカット (
Shift + Command + 3
で画面全体、Shift + Command + 4
で選択範囲) も引き続き利用可能ですが、新しいツールバーを使うことでより多くのオプションに素早くアクセスできます。
- ツールバーの機能:
- フローティングサムネイル (Floating Thumbnail):
- スクリーンショットを撮影すると、iPhoneやiPadのように、画面の右下隅に小さなサムネイルが一時的に表示されます。
- 機能:
- サムネイルをクリックすると、マークアップツールが開かれ、撮影した画像に直接手書きの注釈や図形、テキストなどを追加できます。
- サムネイルをドラッグ&ドロップして、Mail, Messages, Notesなどのアプリケーションに直接貼り付けたり、Finderのフォルダに保存したりできます。
- サムネイルを右にスワイプすると、すぐに指定した場所に保存されます。
- メリット: 撮影した画像をすぐに確認、編集、共有できるため、ワークフローの中断を最小限に抑えられます。特に、資料作成や情報共有のために頻繁にスクリーンショットを撮るユーザーにとって、この機能は非常に便利です。
- 画面収録機能の統合: 画面収録機能がスクリーンショットツールバーに統合されたことで、画面の一部または全体の操作をビデオとして記録するのが非常に簡単になりました。チュートリアル動画の作成や問題発生時の状況説明などに役立ちます。
これらの改善により、macOSでのスクリーンショットと画面収録は、よりパワフルで使いやすいものになりました。
6. マークアップ機能の拡張とContinuity Markup
前述のスクリーンショット機能の強化と関連して、画像やPDFなどへのマークアップ機能もmacOSシステム全体で拡張されました。さらに、MacとiPhone/iPad間の連携機能「Continuity Markup」も導入されています。
- どこからでもマークアップ:
- Finderのクイックアクションやギャラリー表示から画像やPDFを選択し、直接マークアップツールを開けるようになりました。
- スクリーンショットのフローティングサムネイルからすぐにマークアップを開始できます。
- Quick Lookでファイルを表示中にもマークアップツールが利用できます。
- マークアップツールの機能: ツールバーには、ペン、マーカー、鉛筆、図形(線、矢印、円、四角、吹き出しなど)、テキスト入力、署名追加、画像サイズ調整などのツールが含まれています。色の変更や線の太さ調整も可能です。
- Continuity Markup (連携マークアップ):
- Mac上で開いている画像やPDFなどにマークアップを行う際、iPhoneやiPadをApple Pencil(または指)を使った入力デバイスとして利用できる機能です。
- 使い方: Mac上のマークアップツールバーに表示される連携マークアップのアイコンをクリックし、対象のiPhone/iPadを選択します。すると、iPhone/iPadの画面にMac上で開いているファイルが表示され、そちらでApple Pencilなどを使って書き込みや描画を行うことができます。書き込んだ内容はリアルタイムでMacの画面に反映されます。
- メリット: マウスやトラックパッドでは難しい、自然な手書きの注釈や署名を簡単に追加できます。特に、iPad ProとApple Pencilの組み合わせは、紙に書くような感覚で正確なマークアップを可能にします。
- Continuity Camera (連携カメラ):
- macOS Mojaveのもう一つの便利な連携機能です。MacのFinder、Mail, Messages, Notes, Pages, Numbers, Keynote, TextEditといった対応アプリケーションで作業中、コンテキストメニューから「写真を取り込む」または「書類をスキャン」を選択すると、自動的に近くにあるiPhoneやiPadのカメラが起動します。
- iPhone/iPadで撮影した写真やスキャンした書類は、自動的にMacのアプリケーション上のカーソル位置に挿入されます。
- メリット: Macで書類を作成中に、スマートフォンで撮った写真を挿入したい場合などに、写真ファイルをFinder経由でコピー&ペーストする手間を省き、シームレスな連携を実現します。特に書類のスキャン機能は、紙の書類を簡単にデジタル化してMacに取り込むのに役立ちます。
これらの連携機能は、Appleエコシステム全体でのデバイス間の連携を強化し、ユーザーの生産性を向上させることを目的としています。
7. Mac App Storeの刷新
macOS Mojaveでは、Mac App Storeのデザインとコンテンツが大幅に刷新されました。iOSのApp Storeで好評だった新しいデザイン要素を取り入れ、Macユーザーが新しいアプリケーションを発見しやすくなっています。
- 新しいデザイン:
- 大きく、魅力的な画像やビデオが使用され、各アプリケーションの紹介ページが見やすくなりました。
- ナビゲーションが改善され、「Today」「Create」「Work」「Play」「Develop」といったタブで興味のある分野のアプリケーションを探しやすくなっています。
- 「Today」タブ:
- App Storeのエディターが選んだおすすめのアプリケーションや、デベロッパーへのインタビュー、特定のテーマに沿ったアプリケーションの特集記事などが毎日更新されます。
- 単なるアプリのリストではなく、読み物としても楽しめるコンテンツが提供されるようになりました。
- キュレーションとストーリー:
- 特定のタスク(例えば、プレゼンテーション作成、写真編集、プログラミング学習など)に役立つアプリケーションのリストや、専門家によるレビュー、アプリケーションの使いこなしのヒントなどが豊富に掲載されるようになりました。
- これにより、ユーザーは自分の目的やニーズに合ったアプリケーションを見つけやすくなりました。
- 主要アプリケーションの掲載:
- MojaveのMac App Storeの大きなニュースの一つは、Microsoft Office 365やAdobe Creative Cloudといった、これまでApp Storeでは提供されていなかった主要なサードパーティ製アプリケーションが掲載されるようになったことです(ただし、これらの提供方法はApp Store経由のダウンロードではなく、App Storeのページから開発元のサイトに誘導される形が主でした)。
- これにより、Macで利用できる主要なアプリケーションの情報を一元的に確認できるようになりました。
- メリット: アプリケーションの発見、評価、そして購入・ダウンロードがよりスムーズになり、Macでのアプリケーション体験が向上しました。特に「Today」タブやキュレーションされたコンテンツは、新しいお気に入りのアプリを見つけるきっかけになります。
8. セキュリティとプライバシーの強化
Appleは常にユーザーのセキュリティとプライバシーを重視しており、macOS Mojaveでもその取り組みが強化されました。
- データ保護の強化:
- アプリケーションが、以下のようなユーザーの個人情報を含むデータにアクセスしようとする際に、許可を求めるプロンプトが表示されるようになりました。
- Mailデータベース
- Messagesデータベース
- Safariの履歴とデータ
- Time Machineのバックアップ
- iTunesのバックアップ
- 連絡先、カレンダー、リマインダー、写真など
- これにより、ユーザーはどのアプリケーションが自分のデータにアクセスしているかを明確に把握し、許可・拒否を選択できるようになりました。
- アプリケーションが、以下のようなユーザーの個人情報を含むデータにアクセスしようとする際に、許可を求めるプロンプトが表示されるようになりました。
- マイクとカメラへのアクセス:
- 特定のアプリケーションがMacの内蔵マイクまたはカメラにアクセスしようとする際も、明示的に許可を求めるプロンプトが表示されるようになりました。プライバシー侵害のリスクが高い機能であるため、この強化は重要です。
- インテリジェント・トラッキング防止機能の強化 (Safari):
- Safariのインテリジェント・トラッキング防止機能がさらに進化し、ウェブサイトがユーザーのブラウズ履歴を追跡するのをより効果的に阻止できるようになりました。これにより、ユーザーのオンラインプライバシーが保護されます。
- また、Safariはユーザーの同意なしにウェブサイトが「フィンガープリント」(ユーザーのデバイスや設定情報を組み合わせて個人を特定する手法)を作成するのを防ぐようになりました。ウェブサイトに表示されるシステムフォントの情報などを匿名化することで実現しています。
- 強力なパスワードの自動生成: Safariで新しいアカウントを作成する際、安全で推測されにくいパスワードを自動生成し、iCloudキーチェーンに安全に保存する機能が追加されました。
- Gatekeeperの進化: App Store以外からダウンロードしたアプリケーションを実行する際にセキュリティチェックを行うGatekeeper機能が強化され、開発者が公証(Notarization)を受けていないアプリケーションに対して警告を表示するようになりました(これはCatalinaで必須化される前の段階です)。
これらのセキュリティとプライバシーの強化は、ユーザーデータをより安全に保護し、デジタルライフの安心感を高めるための重要なアップデートでした。
9. iOSからの移植アプリ (News, Stocks, Home, Voice Memos)
macOS Mojaveでは、iOSで親しまれているいくつかの標準アプリケーションが初めてMacに登場しました。これは、Appleが「UIKit For Mac」(当時は「Marzipan」というコードネームで知られていたプロジェクト)として進めていた、iOSアプリケーションをMacに移植しやすくするための技術の初期段階を示すものでした。
- News: カスタマイズ可能なフィードで、様々な出版社のニュース記事をまとめて読むことができます。iOS版と同期するため、iPhoneやiPadでチェックした記事の続きをMacで読んだり、Macで興味を持ったトピックを後でモバイルデバイスでチェックしたりできます。
- Stocks: 複数の株式市場の株価情報や、関連ニュースを確認できます。ウォッチリストをiOS版と同期できます。
- Home: HomeKit対応のスマートホームデバイス(照明、ロック、サーモスタットなど)をMacから操作できます。家の中のデバイスの状態を確認したり、シーンを実行したりできます。iPhoneやiPadを取り出すことなく、Mac作業中にスマートホームをコントロールできます。
- Voice Memos: 音声メモを簡単に録音、再生、編集できます。iCloud経由でiOSデバイスとも同期するため、通勤中にiPhoneで録音したメモをMacで編集したり、Macで会議の議事録代わりに録音したりできます。
これらのアプリケーションは、Macユーザーに新たな機能を提供するとともに、iOSとの連携をさらに深めました。また、デベロッパーが将来的にiOSアプリをMacに簡単に持ち込めるようにするための技術的な土台を築く役割も果たしました。
10. 32-bitアプリケーションへの警告
macOS Mojaveは、Appleが将来的に32ビットアプリケーションのサポートを完全に終了することを明確にしたバージョンでもあります。
- Mojaveでは、初めて32ビットアプリケーションを起動しようとすると、「このアプリケーションは将来のバージョンのmacOSでは動作しない可能性があります」という警告メッセージが表示されるようになりました。
- この警告は、デベロッパーとユーザーに対して、使用しているアプリケーションが64ビットに対応しているか確認し、必要に応じてアップデートや代替を探すよう促すためのものでした。
- 実際に、Mojaveの次のバージョンであるmacOS Catalina(10.15)では、32ビットアプリケーションは一切起動できなくなりました。
- ユーザーへの影響: 特に古いアプリケーションや、開発元によるアップデートが停止しているソフトウェアを使用しているユーザーは、Mojaveへのアップグレード前に互換性を確認する必要がありました。これは、Mojaveを最後の砦として使い続けるか、互換性のある代替ソフトを探して新しいOSに移行するかという決断を迫られることになったからです。
この変更は、macOSのアーキテクチャを現代化し、将来的なパフォーマンスとセキュリティの向上を図る上で必要なステップでしたが、一部のユーザーにとっては大きな障壁となりました。
macOS Mojaveのシステム要件と互換性
macOS Mojaveは、その前身であるHigh Sierraよりも対応機種が限定されました。特に、2012年以前にリリースされたMacの多くがサポート対象外となっています。Mojaveにアップグレードする前に、お使いのMacが以下の要件を満たしているか確認することが重要です。
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対応機種リスト:
- MacBook (Early 2015 以降)
- MacBook Air (Mid 2012 以降)
- MacBook Pro (Mid 2012 以降)
- Mac mini (Late 2012 以降)
- iMac (Late 2012 以降)
- iMac Pro (2017)
- Mac Pro (Late 2013 以降、およびMetal対応のグラフィックスカードを搭載したMid 2010またはMid 2012モデル)
注意: Mac Pro Mid 2010/Mid 2012モデルでMojaveをインストールするには、Appleが推奨するMetal対応グラフィックスカード(例:AMD Radeon RX 570, RX 580, RX Vega 56, RX Vega 64など)への換装が必要です。
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メモリ (RAM): 少なくとも2GBのメモリが必要とされていますが、快適に動作させるためには4GB以上、できれば8GB以上が強く推奨されます。
- ストレージ容量: アップグレードには、ダウンロードとインストールプロセスを含めて、通常15GB程度の空き容量が必要とされます。ただし、アプリケーションやデータの移行、一時ファイルの生成などを考慮すると、20GB〜30GB以上の空き容量を確保しておくのが安全です。
- アップグレードパス: OS X Mountain Lion (10.8) 以降のバージョンから直接macOS Mojaveにアップグレードできます。それ以前のバージョン(Lion 10.7など)を使用している場合は、一度El Capitan (10.11) やHigh Sierra (10.13) などの中間バージョンにアップグレードしてからMojaveに進む必要がある場合があります。
macOS Mojaveのダウンロードとインストールガイド
お使いのMacがmacOS Mojaveの要件を満たしていることを確認したら、次に進むのはダウンロードとインストールです。スムーズに進めるための準備と手順を詳しく見ていきましょう。
準備:インストールを始める前に最も重要なこと
アップグレードプロセス中に予期せぬ問題が発生する可能性はゼロではありません。データの損失を防ぎ、問題が発生した場合に元の環境に戻せるように、以下の準備を必ず行ってください。
- データのバックアップ:
- 最重要ステップです。 Time Machineを使用するのが最も簡単で確実な方法です。外付けハードディスクをMacに接続し、Time Machineを設定して、必ず最新のバックアップを作成しておきましょう。
- Time Machine以外にも、iCloud Drive、Dropbox、Google Driveなどのクラウドストレージ、あるいはサードパーティ製のバックアップソフトウェアを利用することも有効です。重要なデータは複数の場所にバックアップしておくことをお勧めします。
- アプリケーションの互換性確認:
- 特に、日常的に使用している重要なアプリケーションがmacOS Mojaveで正常に動作するか確認しましょう。ソフトウェア開発元のウェブサイトで対応状況を確認するか、Mojave対応表などをまとめた情報サイト(例: RoaringAppsなど)を参考にしてください。
- 特に32ビットアプリケーションはMojaveで警告が表示され、その後のOSで動作しなくなるため、代替アプリケーションの検討が必要になる場合があります。
- プロフェッショナル向けのソフトウェア(DAW, 映像編集ソフト, グラフィックデザインソフトなど)や、プリンタ、スキャナなどの周辺機器のドライバも、Mojaveに対応しているか確認しましょう。
- 十分な空きストレージ容量の確保:
- 前述の通り、インストールには最低限必要な容量がありますが、スムーズなプロセスとインストール後の安定稼働のためには、推奨されるよりも多くの空き容量を確保することが望ましいです。不要なファイル(古いダウンロードファイル、大きなビデオや写真、使っていないアプリケーションなど)を削除するか、外部ストレージに移動して容量を確保しましょう。
- 安定したネットワーク環境:
- macOSインストーラはサイズが大きい(通常約5GB〜6GB)ため、信頼性の高いWi-Fi接続または有線接続を利用してダウンロードしてください。ダウンロード中にネットワークが中断すると、やり直しになる可能性があります。
- 電源アダプタの接続:
- 特にノート型Macの場合、インストールプロセスは数十分から1時間以上かかる場合があります。バッテリー切れによる中断を防ぐため、必ず電源アダプタを接続した状態で行ってください。
これらの準備を怠らないことが、安全かつスムーズなアップグレードの鍵となります。
ダウンロード方法
macOS Mojaveのインストーラは、通常App Storeを通じて提供されていました。しかし、現在(この記事執筆時点)では、最新のmacOSからApp Storeを検索しても見つからない場合があります。これは、AppleがApp Storeでは最新またはその前の2つのバージョンのみを表示することが一般的であるためです。
Mojaveをダウンロードするには、Appleの公式サポートページからダウンロードリンクを探すのが最も確実な方法です。
- Appleのサポートページにアクセス: ウェブブラウザを開き、「macOS Mojaveをダウンロードする方法」といったキーワードでAppleの公式サイトを検索してください。Appleのサポート記事が見つかるはずです。
- ダウンロードリンクを探す: サポート記事の中に、「App StoreからmacOS Mojaveをダウンロードする」といったセクションがあります。そこにMojaveのMac App Storeへのリンクが掲載されています。
- App Storeでダウンロード: リンクをクリックするとMac App Storeが開き、「macOS Mojave」のページが表示されます。「入手」ボタンをクリックしてダウンロードを開始します。
- インストーラの保存: ダウンロードが完了すると、「macOS Mojaveインストール」という名前のアプリケーションが「アプリケーション」フォルダに保存されます。インストーラはダウンロード完了後に自動的に起動することがありますが、すぐにインストールを開始せず、一度閉じて準備が整っているか再度確認することをお勧めします。
注意: 既にmacOS Catalina以降のバージョンをお使いの場合、App Storeのリンクをクリックしても「macOS Mojaveをダウンロードできません。このバージョンのmacOSは互換性がありません。」といったメッセージが表示されることがあります。その場合でも、インストーラ自体はダウンロードできる場合があります。インストーラをダウンロードし、後述の「インストール用USBドライブの作成」に進んでください。または、互換性のある古いMacからダウンロードする必要があります。
インストール方法(標準アップグレード)
準備が整い、インストーラが「アプリケーション」フォルダにダウンロードされたら、標準的な方法でアップグレードインストールを行います。この方法は、既存のファイル、アプリケーション、設定を残したままmacOSだけを新しいバージョンに置き換えるものです。
- インストーラを起動: 「アプリケーション」フォルダにある「macOS Mojaveインストール.app」をダブルクリックして起動します。
- インストールウィンドウ: 「macOS Mojaveをインストール」というウィンドウが表示されます。「続ける」をクリックします。
- 使用許諾契約: ソフトウェア使用許諾契約が表示されます。内容を確認し、「同意する」をクリックします。再度確認を求められるので、「同意する」を選択します。
- インストール先の選択: macOSをインストールするディスクを選択します。通常は現在のmacOSがインストールされている「Macintosh HD」(またはユーザーが名前を変更したディスク)が表示され、それがデフォルトで選択されているはずです。他のディスクにインストールしたい場合や、複数のパーティションがある場合はここで選択します。間違いがないか慎重に確認してください。選択したら「インストール」をクリックします。
- パスワードの入力: 管理者パスワードの入力を求められるので、入力してロックを解除します。
- インストールの開始と再起動: インストールに必要なファイルのコピーが開始されます。しばらくするとMacが自動的に再起動し、本格的なインストールプロセスが始まります。
- インストールプロセスの進行: 再起動後、画面にAppleロゴと進行状況バーが表示され、インストールが進みます。このプロセスは数十分から1時間以上かかる場合があります。Macが数回再起動することもあります。絶対に途中で電源を切ったり、Macを閉じたりしないでください。
- セットアップアシスタント: インストールが完了すると、Macが起動し、簡単なセットアップアシスタントが表示される場合があります(位置情報サービスの設定など)。指示に従って初期設定を完了させます。
- インストール完了: セットアップが完了すると、macOS Mojaveのデスクトップが表示されます。これでインストールは完了です。
インストール後、システム環境設定やApp Storeから、macOS Mojaveの最新の追加アップデート(例: 10.14.6など)が提供されていないか確認し、必要に応じて適用することをお勧めします。
インストール方法(クリーンインストール)
標準アップグレードではなく、Macのストレージを一度完全に消去し、まっさらな状態からmacOS Mojaveをインストールする方法を「クリーンインストール」と呼びます。この方法は、以下のような場合に有効です。
- 現在のシステムに不具合や不安定さがある場合
- Macのパフォーマンスが低下している場合
- 不要なファイルを一掃してストレージ容量を確保したい場合
- 完全に新しい環境で始めたい場合
クリーンインストールを行うと、ディスク上の全てのデータが消去されます。必ず事前に完全なバックアップを取ってください。
クリーンインストールには、macOSインストーラを含む起動可能なUSBドライブ(または他の外部ストレージ)を作成する必要があります。
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インストール用USBドライブの作成:
- 8GB以上のUSBフラッシュドライブ(または他の外部ストレージ)を用意します。重要なデータが含まれていないことを確認してください。このドライブは初期化されます。
- MacにUSBドライブを接続します。
- ディスクユーティリティを開き、接続したUSBドライブを選択します。ドライブ自体(物理的なディスク名)を選択し、「消去」ボタンをクリックします。
- フォーマットは「Mac OS 拡張(ジャーナリング)」、方式は「GUIDパーティションマップ」を選択し、任意の名称(例:
MojaveInstaller
)を付けて「消去」を実行します。 - ダウンロードした「macOS Mojaveインストール.app」が「アプリケーション」フォルダにあることを確認します。
- 「ターミナル」アプリケーションを開きます(Spotlight検索で「ターミナル」と入力するか、「アプリケーション」→「ユーティリティ」フォルダから起動)。
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以下のコマンドを正確に入力し、Enterキーを押します。
<ボリューム名>
の部分は、先ほどディスクユーティリティでUSBドライブに付けた名前に置き換えてください(例:MojaveInstaller
)。大文字小文字を区別してください。bash
sudo /Applications/Install\ macOS\ Mojave.app/Contents/Resources/createinstallmedia --volume /Volumes/<ボリューム名> -
管理者パスワードの入力を求められるので、入力します(入力しても画面には何も表示されません)。Enterキーを押します。
- 「To continue we need to erase the volume at /Volumes/<ボリューム名>. Do you want to continue? (y/n)」と表示されます。「y」と入力してEnterキーを押します。
- USBドライブの消去とインストーラファイルのコピーが開始されます。これには時間がかかります。進行状況が表示され、完了すると「Install media now available at “/Volumes/Install macOS Mojave”」といったメッセージが表示されます。ターミナルを閉じます。これで起動可能なインストールメディアが完成しました。
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インストール用USBドライブからの起動:
- 作成したインストール用USBドライブをMacに接続したまま、Macを再起動します。
- 起動音が鳴ったらすぐに、キーボードの Option (Alt) キーを押し続けます。
- しばらくすると、起動可能なボリュームを選択する画面が表示されます。ここに「Install macOS Mojave」(USBドライブの名前)が表示されるはずです。矢印キーで選択し、Enterキーを押すか、クリックします。
- macOSユーティリティ画面が表示されます。
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ディスクの初期化:
- macOSユーティリティ画面で「ディスクユーティリティ」を選択し、「続ける」をクリックします。
- ディスクユーティリティのサイドバーで、macOSをインストールしたい内蔵ストレージ(通常は「Macintosh HD」やその親となる物理的なディスク名)を選択します。左上の「表示」メニューから「すべてのデバイスを表示」を選択すると、物理ディスク名が表示されます。
- 警告: この操作は選択したディスク上の全てのデータを消去します。間違いなくインストール先のディスクを選択しているか、再度確認してください。
- 選択したディスクが論理ボリューム(例: APFSコンテナ内のボリューム)の場合は、まずその親となる物理的なデバイスを選択し、「消去」ボタンをクリックします。
- 名前を付けます(例: Macintosh HD)。
- フォーマットは通常「APFS」を選択します(MojaveではデフォルトでAPFSが推奨されます。古いSSD以外のHDDの場合は「Mac OS 拡張(ジャーナリング)」でも構いませんが、APFSが推奨です)。
- 方式は「GUIDパーティションマップ」を選択します。
- 「消去」ボタンをクリックします。ディスクの初期化が実行されます。完了したらディスクユーティリティを終了します。
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新しいmacOSのインストール:
- macOSユーティリティ画面に戻るので、「macOSをインストール」を選択し、「続ける」をクリックします。
- インストールウィンドウが表示されるので、「続ける」をクリックします。
- 使用許諾契約に同意します。
- インストール先ディスクの選択画面が表示されます。先ほど初期化したディスク(例: Macintosh HD)を選択し、「インストール」をクリックします。
- インストーラが必要なファイルをコピーし、Macが再起動してインストールが開始されます。以降の手順は標準アップグレードの場合と同様です。
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セットアップとデータ復元:
- インストールが完了すると、Macが起動し、初期設定(国、言語、Apple IDサインインなど)を求められます。
- セットアップアシスタントの過程で、バックアップ(Time Machineなど)からデータや設定を移行するかどうかを選択できます。「移行アシスタント」を使用して、必要なデータ(ユーザーアカウント、アプリケーション、書類など)を選択的に復元できます。
- 完全にまっさらな状態で始めたい場合は、移行せずに新しいMacとしてセットアップを進めます。
クリーンインストールは手間がかかりますが、システムの問題を解決したり、Macのパフォーマンスを向上させたりするのに効果的な方法です。
トラブルシューティング
インストールプロセス中に問題が発生する可能性もあります。一般的なトラブルと対処法をいくつか紹介します。
- ダウンロードが始まらない、途中で止まる、遅い:
- インターネット接続を確認してください。ルーターやモデムの再起動を試みます。
- Appleのサーバーに一時的な問題がある可能性があります。時間を置いてから再度試してください。
- Macのネットワーク設定(DNSなど)を確認します。
- Macのストレージ空き容量が十分か再確認します。
- インストーラが起動しない、エラーメッセージが表示される:
- ダウンロードしたインストーラファイルが破損している可能性があります。「アプリケーション」フォルダから削除し、再度ダウンロードを試みます。
- Macのシステム日付と時刻が正しく設定されているか確認します(古いOSからアップグレードする場合などに問題になることがあります)。「システム環境設定」の「日付と時刻」で自動設定になっているか確認します。
- インストール中にエラーが発生し、完了できない:
- 最も多い原因はストレージの問題です。 macOSユーティリティのディスクユーティリティで、インストール先のディスクに対して「First Aid」を実行し、エラーがないか確認・修復してください。
- メモリ(RAM)に問題がある可能性も考えられますが、これは専門的な診断が必要です。
- MacがMojaveのシステム要件を満たしているか、特に対応機種リストに含まれているか再確認します。
- 可能であれば、標準アップグレードではなくクリーンインストールを試してみてください。ディスクを完全に初期化することで問題が解決する場合があります。
- インストール後にMacが起動しない、リンゴループになる:
- Macをセーフモードで起動できるか試します(起動時にShiftキーを押し続ける)。セーフモードで起動できれば、起動項目に問題がある可能性があります。
- macOS復旧モードで起動します(起動時にCommand + Rキーを押し続ける)。ここからディスクユーティリティでディスクの修復を試みたり、Time Machineバックアップから復元したり、macOSの再インストールを試みたりできます。
- PRAM/NVRAMのリセット(起動時にOption + Command + P + Rキーを押し続ける)や、SMCのリセット(Macの種類によって手順が異なります)を試してみてください。
- インストール後、特定のアプリケーションが動作しない:
- そのアプリケーションがmacOS Mojaveに対応しているか確認します。開発元のウェブサイトで最新バージョンが入手できないか、またはMojabilityな代替アプリケーションがないか探します。
- 32ビットアプリケーションの場合は、Mojaveでは警告が表示されるだけで起動するはずですが、Catalina以降では起動しません。将来的な互換性の問題に備える必要があります。
- アプリケーションを一度アンインストールし、再インストールしてみてください。
これらのトラブルシューティング手順を試しても問題が解決しない場合は、Appleサポートに問い合わせるか、Apple Storeまたは正規サービスプロバイダに相談することを検討してください。
macOS Mojaveの使用感と評価(リリース当時の視点から)
macOS Mojaveは、リリース当時、ユーザーやメディアから概ね肯定的な評価を受けました。特にダークモードやスタックといったUIの改善は、多くのユーザーに歓迎されました。
- パフォーマンス:
- 一般的に、MojaveはHigh Sierraから劇的なパフォーマンス向上をもたらすものではありませんでしたが、多くのMacでスムーズに動作しました。
- ただし、古い機種や、最低限のシステム要件(特にメモリ2GB)に近いMacでは、一部の新しい機能(特にUIアニメーションなど)が若干重く感じられる場合がありました。
- グラフィックスAPI「Metal」の採用がさらに進み、対応アプリケーションでのグラフィックスパフォーマンスは向上しました。
- 新しいUI (ダークモード, ギャラリー表示):
- ダークモードは、見た目の新鮮さと目の疲れ軽減効果から非常に好評でした。多くのサードパーティ製アプリも迅速に対応を進めました。
- ギャラリー表示は、特に写真家やデザイナーなど、ビジュアルコンテンツを扱うユーザーから高く評価されました。
- スタックは、デスクトップがすぐに散らかってしまうユーザーにとって、非常に実用的な機能として歓迎されました。
- iOSアプリ移植(UIKit For Mac):
- News, Stocks, Home, Voice Memosといったアプリの移植は、Macユーザーに新たな選択肢を提供しましたが、これらのアプリのUI/UXは、ネイティブのMacアプリと比較して違和感があるという声も一部で見られました。これは、異なるプラットフォーム向けに設計されたUIフレームワークを Mac に移植した初期段階であったためです。しかし、将来的なクロスプラットフォーム開発の可能性を示すものとして注目されました。
- セキュリティとプライバシー:
- アプリケーションのデータアクセスに対する許可システムは、ユーザーのプライバシー保護意識の高まりに応えるものであり、重要なセキュリティ強化と見なされました。
- 32-bitアプリの警告:
- これは、特に古いアプリケーションを使用しているユーザーにとっては懸念材料でした。Mojaveを使い続けるか、新しい環境に移行するかの判断を迫られるきっかけとなりました。この点は、評価が分かれる部分でした。
全体として、macOS Mojaveは、UIのモダン化、日常的な作業効率を高める機能追加、そしてセキュリティとプライバシーの強化といった点で、堅実なアップデートであったと言えます。特に、ダークモードとスタックは、その後のmacOSの標準的な機能となりました。
macOS Mojaveのサポート状況と現在の位置づけ
macOSの各バージョンは、通常、リリースされてから3年程度、セキュリティアップデートが提供されます。macOS Mojaveは2018年9月にリリースされたため、そのサポートは2021年秋頃に終了しました(macOS Montereyのリリース前後)。
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現在のサポート状況:
- セキュリティアップデートは提供されていません。 これは、新しいセキュリティ上の脆弱性が発見されても、Appleからその修正を含むアップデートが提供されないことを意味します。インターネットに接続して使用する場合、マルウェアやその他の脅威に対して脆弱になるリスクがあります。
- 多くの最新のアプリケーションやWebサービスは、最新または比較的最近のmacOSバージョン(例: Ventura, Sonomaなど)を必要とします。Mojaveでは、これらの新しいアプリケーションをインストールしたり、特定のWebサービス(特にセキュリティ要件の高いもの)を利用したりできない場合があります。
- macOS Mojave自体は、現在でもAppleのウェブサイトからダウンロードできる場合がありますが、推奨されるのは最新の対応OSへのアップグレードです。
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なぜ今Mojaveに関する記事を読むのか?
- 古いMacを使用している: お使いのMacがMojave以降のmacOSバージョン(Catalina, Big Sur, Monterey, Ventura, Sonomaなど)に対応していない場合、MojaveがそのMacでインストールできる最新のOSバージョンである可能性があります。このような場合、セキュリティリスクを理解した上でMojaveを使い続けるか、新しいMacに買い替えるかという選択になります。
- 特定のアプリケーションを使いたい: どうしても32ビットアプリケーションを使用する必要があり、かつそのアプリケーションの64ビット版や代替がない場合、32ビットアプリケーションが動作する最後のOSとしてMojaveを選択するユーザーもいます。ただし、これもセキュリティリスクを伴います。
- 懐古趣味や検証用: 過去のmacOS環境を体験したい、あるいは特定の目的で古いOS環境が必要な場合に、Mojaveをインストールすることがあります(仮想環境など)。
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現在の利用における考慮事項:
- セキュリティリスクがあるため、インターネット接続を伴う重要な作業(ネットバンキング、オンラインショッピング、機密情報の扱いなど)には使用しないことが強く推奨されます。
- やむを得ずMojaveを使用する場合は、最新のセキュリティソフトを導入し、怪しいウェブサイトへのアクセスやファイルのダウンロードは避けるなど、自己防衛策を講じる必要があります。
- 可能であれば、サポートが継続している最新のmacOSバージョンに対応したMacへの買い替えを検討しましょう。
Mojaveは過去のOSとなりつつありますが、その導入した機能(ダークモード、スタックなど)は現在のmacOSに受け継がれており、macOSの進化を知る上で重要なバージョンです。
まとめ:macOS Mojaveの遺産
macOS Mojave (10.14) は、2018年に登場したmacOSのメジャーアップデートとして、その後のmacOSの方向性を定める上でいくつかの重要な変化をもたらしました。
最も視覚的に大きな変更は、システム全体に適用されるダークモードの導入でした。これは単なる見た目の変更にとどまらず、ユーザーの目の負担軽減や集中力向上に寄与し、以降のOSバージョンや他のOSでも標準的な機能となるほどのインパクトを与えました。
デスクトップの整理に役立つスタック機能は、多くのユーザーの日常的なファイル管理を効率化しました。また、Finderのギャラリー表示やクイックアクションは、ファイルのプレビューと簡単な操作をより直感的かつ迅速に行えるようにし、特にメディアファイルを扱うユーザーにとって有用な機能となりました。
スクリーンショット機能の強化とフローティングサムネイル、そして画面収録機能の統合は、画面キャプチャのワークフローを大幅に改善しました。さらに、Continuity MarkupやContinuity Cameraといった機能は、MacとiPhone/iPad間の連携を強化し、Appleエコシステム内でのシームレスな作業環境を推進しました。
Mac App Storeの刷新は、アプリケーションの発見と利用体験を向上させ、主要なサードパーティ製アプリケーションを取り込むことでプラットフォームとしての魅力を高めました。
セキュリティとプライバシーの強化は、ユーザーのデータ保護とデジタルアイデンティティの保護に対するAppleの継続的な取り組みを示すものでした。アプリケーションの権限管理の厳格化は、その後のOSバージョンでもさらに強化されていきます。
一方で、32ビットアプリケーションのサポート終了予告は、古いソフトウェア資産を持つユーザーにとって大きな影響を与え、今後のOS移行における互換性の問題を浮き彫りにしました。Mojaveは、32ビットアプリが動作する最後のメジャーバージョンの一つとして、ある種の区切りとなりました。
現在、macOS Mojaveはセキュリティサポートが終了しており、最新の環境での使用は推奨されません。しかし、ダークモードやスタック、強化されたFinder機能など、Mojaveで導入された多くの改善点は、今日のmacOSに受け継がれ、私たちのMac体験の一部となっています。macOS Mojaveは、モダンなUIへの移行、iOSとの連携強化、そしてセキュリティの基盤構築において重要な役割を果たした、macOSの歴史における記憶に残るバージョンと言えるでしょう。
もしお使いのMacがMojave以降のOSに対応している場合は、セキュリティと互換性の観点から、可能な限り最新のOSにアップグレードすることを強くお勧めします。しかし、古いMacでMojaveが利用できる最後のOSである場合や、特定の事情でMojaveが必要な場合は、本記事がその特徴を理解し、安全に導入・利用するための手助けとなれば幸いです。繰り返しになりますが、サポート終了OSの利用にはセキュリティリスクが伴うことを十分に理解しておいてください。