Vストローム800徹底紹介!注目の特徴と魅力とは?
はじめに:アドベンチャーの系譜を受け継ぐ新星
スズキの「Vストローム」シリーズは、長年にわたり「アドベンチャーツアラー」というジャンルを牽引してきた、同社のアイデンティティを象徴するモデル群です。オンロードでの快適なツーリング性能と、オフロードでの走破性をバランス良く融合させた「デュアルパーパス」の哲学は、多くのライダーから支持を集めてきました。1000cc、650ccといった排気量帯で確固たる地位を築いてきたVストロームシリーズに、新たな風を吹き込むモデルとして登場したのが、今回ご紹介する「Vストローム800」です。
Vストローム800は、既存のラインナップを補完するだけでなく、新開発の並列2気筒エンジンや最新の電子制御システムなど、多くの要素を一新して誕生しました。特に、近年注目度が高まっているミドルクラスのアドベンチャー市場において、その存在感を強く放っています。
この記事では、Vストローム800の多角的な魅力に迫ります。デザイン哲学、新開発エンジンの詳細、革新的なシャシー設計、そして豊富な電子制御システムまで、徹底的に掘り下げていきます。また、派生モデルである「Vストローム800DE」との違いや、競合モデルとの比較にも触れ、このバイクがどのようなライダーにとって最適な一台なのかを考察します。約5000語にわたる詳細な解説を通じて、Vストローム800の真価を皆様にお伝えできれば幸いです。
Vストローム800の基本情報:アドベンチャーの新基準
Vストローム800は、スズキが提案する新世代アドベンチャーツアラーです。2023年に発表され、その先進的なパッケージングと新しいエンジンによって大きな注目を集めました。まずは、その基本的なスペックと立ち位置を確認しておきましょう。
- モデル名: Vストローム800
- 型式: 8BL-ES13L
- エンジン形式: 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
- 総排気量: 776cc
- 最高出力: 62kW (84PS) / 8,500rpm
- 最大トルク: 78N・m (8.0kgf・m) / 6,800rpm
- ボア×ストローク: 84.0mm × 70.0mm
- 圧縮比: 12.8:1
- 燃料供給装置: フューエルインジェクション
- 始動方式: セルフ式
- 潤滑方式: 圧送ウェットサンプ
- 車両重量: 223kg
- 燃料タンク容量: 20L
- タイヤサイズ:
- フロント: 110/80R19 M/C 59V (チューブレス)
- リア: 150/70R17 M/C 69V (チューブレス)
- ブレーキ形式:
- フロント: 油圧式ダブルディスク (ABS)
- リア: 油圧式シングルディスク (ABS)
- 全長×全幅×全高: 2,255mm × 905mm × 1,435mm (※スクリーン最下位置)
- シート高: 835mm
- 最低地上高: 180mm
Vストローム800は、派生モデルであるVストローム800DEと比較すると、オンロードツーリングや日常使いに重点を置いたモデルとして位置づけられています。19インチのフロントホイール、比較的短いサスペンションストローク、標準装備の電子制御などが特徴です。この「スタンダード」モデルは、より幅広い層のライダーに、Vストロームシリーズが提案する冒険への扉を開くことを目指しています。
デザイン:機能美とアドベンチャーの融合
Vストローム800のデザインは、シリーズ共通のアイデンティティを踏襲しつつも、現代的な解釈と機能美が見事に融合しています。一目でVストロームとわかるデザイン要素はそのままに、最新のアドベンチャーツアラーとしての力強さと洗練された雰囲気を併せ持っています。
シリーズ共通のアイデンティティ「鳥の嘴」
Vストロームシリーズのデザインで最も特徴的なのは、フロントカウルから突き出すようにデザインされた「鳥の嘴」状のフロントノーズです。これは、1988年に登場したスズキのダカールラリー参戦マシン「DR-Z(DR800S)」に由来するデザインキューであり、Vストロームシリーズが持つアドベンチャーヘリテージを象徴しています。Vストローム800においても、このノーズデザインは健在で、力強く前方を指し示すことで、ライダーの冒険心を刺激します。ただし、800では従来のモデルよりもシャープでモダンな印象に仕上げられています。
シンプルかつ機能的なスタイリング
全体的に、Vストローム800のスタイリングは過度な装飾を排し、シンプルかつ機能的です。燃料タンクからシート、そしてリアカウルへと流れるようなラインは、ライダーがバイクとの一体感を感じやすいようにデザインされています。ボディワークはスリムにまとめられており、特に燃料タンク周辺はニーグリップしやすく、スタンディングでのライディングにも配慮されています。
カウル類は、高い防風性能と空力性能を実現するために綿密に設計されています。フロントスクリーンは上下に調整可能(手動)で、ライダーの体格や走行状況に合わせて最適な位置に設定できます。これにより、高速走行時でも風圧を軽減し、快適なロングツーリングを可能にします。
フルLED化された先進的な灯火類
ヘッドライトは、縦型の2灯式LEDを採用しています。これはスズキの最新モデルに共通するデザイン言語であり、Vストローム800にシャープでモダンな表情を与えています。LEDならではの明るくクリアな配光は、夜間走行時の視認性を向上させ、安全性に貢献します。テールランプやウインカーもLED化されており、被視認性の向上と省エネルギー化を実現しています。
カラーバリエーション
Vストローム800のカラーバリエーションは、アドベンチャーモデルらしいタフさと、洗練された都市的なイメージを両立させています。主要なカラーとして、アドベンチャーモデル定番のイエロー、落ち着いた印象のブルー、そして精悍なグレーなどが用意されています(時期によって変更の可能性あり)。それぞれのカラーは、グラフィックパターンと組み合わせることで、バイクのキャラクターを際立たせています。例えば、チャンピオンイエローはスズキのオフロードヘリテージを感じさせ、冒険的な雰囲気を強調します。
エルゴノミクス:長距離走行を快適に
Vストローム800のエルゴノミクスは、長距離ツーリングでの快適性を最優先に設計されています。シートは、ライダーが長時間座っていても疲れにくいように、形状とクッション性に配慮されています。シート高は835mmと、このクラスのアドベンチャーモデルとしては標準的ですが、シート前方が絞り込まれているため、足つき性にも配慮されています。
ハンドルバーはアップライトなポジションに設定されており、リラックスした姿勢でライディングできます。ステップ位置も、オンロードでの快適性と、必要に応じてスタンディングでのライディングがしやすい位置にバランス良く配置されています。これらのエルゴノミクス設計により、Vストローム800は市街地での取り回しから、高速道路を使った長距離移動、そしてワインディングまで、幅広いシチュエーションで快適な乗り心地を提供します。
デザイン面では、機能性と美しさを両立させながら、Vストロームシリーズの伝統と最新の技術を融合させています。このデザインは、ライダーに所有する喜びを与え、どこへでも行けるという冒険心を掻き立てます。
エンジン:新開発パラレルツインの鼓動とパワー
Vストローム800の最大のハイライトの一つは、新開発の776cc並列2気筒エンジンです。Vストロームシリーズの伝統であるVツインエンジンから、あえて並列2気筒へと変更したこのエンジンは、スズキの新たな挑戦であり、Vストローム800のキャラクターを決定づける重要な要素となっています。
並列2気筒エンジンの採用理由
Vツインエンジンは、スズキのアドベンチャーモデルのアイコンでしたが、なぜ並列2気筒が採用されたのでしょうか。その背景には、エンジンのコンパクト化、製造コストの効率化、そして新しいキャラクターの追求があります。並列2気筒エンジンは、Vツインに比べて前後長を短くできるため、車体の自由度が高まり、マス集中化や最適な重心位置の設計が容易になります。また、製造工程においてもVツインよりもシンプルになる傾向があります。
しかし、単なる効率化だけでなく、この並列2気筒エンジンはVストローム800の乗り味に独自の魅力をもたらしています。
776ccエンジンの詳細
この新開発エンジンは、ボア84.0mm、ストローク70.0mmというスクエアに近い設計を持ち、総排気量は776ccです。最高出力は84PSを8,500rpmで、最大トルクは78N・mを6,800rpmで発生します。このスペックは、ミドルクラスのアドベンチャーモデルとして十分な力強さを備えていることを示しています。
270度クランクとVツインのような鼓動感
このエンジンの最大の特徴は、270度位相クランクを採用している点です。一般的な並列2気筒エンジンは180度や360度クランクを採用することが多いですが、270度クランクはVツインエンジンのような不等間隔爆発を実現します。これにより、単なる等間隔爆発の並列2気筒にはない、独特のパルス感、鼓動感が生まれます。ライダーは、エンジンの回転に合わせて「ドッドッドッ」という心地よいフィーリングを感じることができ、これはVストロームが長年培ってきたVツインのキャラクターにも通じるものです。
この270度クランクは、フィーリングだけでなく、トラクション性能にも優れています。特にオフロードや低μ路面で、リアタイヤが路面を掴む感覚をライダーに伝えやすく、繊細なアクセルコントロールを助けます。
スズキクロスバランサーシステム
並列2気筒エンジンでは、振動の打ち消しが課題となります。特に270度クランクエンジンの場合、一般的なバランサーシャフトだけでは完全に振動を抑制することが難しい場合があります。そこでスズキは、独自の「スズキクロスバランサーシステム」をこのエンジンに採用しました。
これは、2本のバランサーシャフトをクランクシャフトに対して十字(クロス)に配置するシステムです。1本目のバランサーシャフトは一般的なバランサーシャフトと同様に配置されますが、2本目のバランサーシャフトを1本目に対して90度(クランクシャフトに対しては異なる角度)に配置することで、エンジンの一次振動と二次振動を効果的に打ち消します。これにより、並列2気筒エンジンでありながら、Vツインのような心地よい鼓動感は残しつつ、不快な振動を大幅に低減することに成功しています。長距離ツーリングでの快適性に大きく貢献する技術です。
パワー特性:低速から高速まで扱いやすく力強い
Vストローム800のエンジンは、低回転域から豊かなトルクを発生します。これにより、市街地でのストップ&ゴーや極低速での取り回しが非常にスムーズです。発進も容易で、初心者でも扱いやすい特性と言えます。
中回転域では、最大トルクが発生する6,800rpmに向けて力強くトルクが立ち上がります。この回転域は、ワインディングでの加速や高速道路での巡航、さらには緩やかな登坂などで最も頻繁に使用される領域です。トルクフルな特性により、頻繁なシフトチェンジをすることなく、快適に走行することができます。
高回転域では、最高出力が発生する8,500rpmまでスムーズに吹け上がります。ただし、このエンジンの真骨頂は高回転での爆発的なパワーよりも、低中速域の扱いやすさと力強さにあると言えます。無理なくパワーを引き出せる、ライダーに優しい特性です。
燃費性能と航続距離
燃料タンク容量は20Lと、アドベンチャーツアラーとしては十分な容量を確保しています。新開発の並列2気筒エンジンは燃費効率にも優れており、良好な燃費性能と相まって、満タンからの航続距離はかなりのものになります。これにより、給油の回数を減らし、より長距離のツーリングを楽しむことができます。公式発表の燃費データはWMTCモードで22.4km/Lです。単純計算で400km以上の航続距離が可能であり、無給油での長距離移動を現実のものとしています。
総じて、Vストローム800に搭載された新開発の776cc並列2気筒エンジンは、従来のVツインとは異なるキャラクターを持ちながらも、Vストロームシリーズに必要な「扱いやすさ」「トルク感」「長距離での快適性」を高次元で両立させています。特に270度クランクとクロスバランサーシステムは、このエンジンの独自性と魅力を際立たせています。
シャシー・足回り:あらゆる道を走破する安定性と快適性
Vストローム800は、新開発のエンジンに合わせて、シャシーも一新されています。単なるオンロードバイクの延長でも、過激なオフロードマシンでもない、まさにあらゆる道を快適かつ安全に走行するための設計がなされています。
高張力鋼管フレーム
フレームには、軽量かつ高い剛性を持つ高張力鋼管製のダイヤモンドフレームが採用されています。このフレームは、エンジンの性能を最大限に引き出しつつ、車体全体の剛性バランスを最適化することを目指して設計されました。適切な剛性は、路面からの入力をしっかりと受け止め、ライダーに安定感と安心感をもたらします。また、スリムな形状は、先述したエルゴノミクスにも貢献しています。
スイングアーム
スイングアームは、スズキ独自の技術が投入されたアルミ製が採用されています。軽量化と高剛性を両立させることで、リアタイヤの路面追従性を高め、加速時のトラクション性能や旋回時の安定性に貢献しています。
サスペンションシステム
Vストローム800のサスペンションは、オンロードでの快適性と安定性を重視したセッティングになっています。
- フロントサスペンション: 倒立式のテレスコピックフォークを採用しています。ストローク長は150mmと、オフロード性能を重視したDEモデル(220mm)と比較すると短めですが、その分、オンロードでのダイレクト感と安定感に優れます。調整機構は、主にプリロード調整が可能です(モデルによっては伸び側減衰力調整も可能)。
- リアサスペンション: リンク式モノショックサスペンションを採用しています。こちらもストローク長は150mmです。プリロード調整が可能で、タンデム走行時や積載時など、車両の負荷に応じて簡単に調整できます。油圧式リモートプリロードアジャスターが装備されているため、工具なしで手軽に調整できるのが大きなメリットです。
これらのサスペンションは、ストロークが長く設定されているため、荒れた路面やギャップを通過する際にも衝撃を効果的に吸収し、快適な乗り心地を提供します。また、適度なストロークは、多少の未舗装路でも臆することなく進める走破性も持ち合わせています。
ホイールとタイヤ
Vストローム800は、フロント19インチ、リア17インチのキャストホイールを採用しています。多くのロードスポーツモデルが採用する17インチよりも大径のフロントホイールは、アドベンチャーモデル特有の安定感と、多少の障害物を乗り越える走破性をもたらします。装着されるタイヤは、オンロード性能を重視したチューブレスタイヤです。パターンは、オンロードでのグリップ力と排水性に優れ、多少のダートにも対応できるようなものが選ばれています。
タイヤサイズは、フロント110/80R19、リア150/70R17です。このサイズは、豊富な選択肢があり、好みに応じて様々な種類のタイヤに交換できる点もメリットです。
ブレーキシステム
ブレーキシステムは、フロントに油圧式ダブルディスク、リアに油圧式シングルディスクを採用しています。フロントブレーキには、信頼性の高い対向ピストンキャリパーと大径ディスクローターが組み合わされ、強力かつコントローラブルな制動力を発揮します。リアブレーキも十分な制動力を持ち、車体姿勢のコントロールにも役立ちます。
もちろん、最新のABS(アンチロックブレーキシステム)が標準装備されており、滑りやすい路面や急制動時でもタイヤのロックを防ぎ、安全なブレーキングをサポートします。ABSは介入度を調整できるモード(S.I.R.S.の項目で後述)も備えています。
車両重量とディメンション
車両重量は223kgです。ミドルクラスのアドベンチャーモデルとしては標準的な部類に入ります。エンジンやシャシーのバランスが良い設計のため、数値以上に軽く感じられるという評価も多いようです。
ディメンションとしては、全長2,255mm、全幅905mm、全高1,435mm(スクリーン最下位置)です。ホイールベースは比較的短く、これによりハンドリングの軽快さをもたらしています。シート高は835mmですが、前述の通りシート形状によって足つき性に配慮されています。最低地上高は180mmで、舗装路の段差や多少の荒れた路面にも対応できます。
ハンドリング特性
Vストローム800のハンドリングは、高い安定性と同時に、素直で軽快な特性を持っています。19インチのフロントホイールと適切なキャスター角により、高速道路での直進安定性は抜群です。また、タイトなワインディングでも、思ったラインをトレースしやすく、スムーズに旋回することができます。市街地でのUターンや取り回しも、重心位置の最適化と軽量化の恩恵で、見た目以上に楽に行えます。
サスペンションのセッティングは、オンロードでの快適性を重視しつつ、適度な剛性感も持ち合わせています。荒れた舗装路やギャップを通過する際にも不快な突き上げは少なく、安心して走行できます。多少の未舗装路であれば、サスペンションストロークと最低地上高により、問題なく走行可能です。ただし、本格的なオフロード走行は、よりオフロードに特化したVストローム800DEに譲るべきでしょう。
シャシーと足回り全体として、Vストローム800は「オンロードツーリングを主軸に、多少の悪路も走れる」というコンセプトを高いレベルで実現しています。このバランスの良さが、このバイクを「ちょうどいい」アドベンチャーたらしめている要因の一つです。
電子制御システム:最新技術による安全性と快適性
Vストローム800には、スズキの最新技術が惜しみなく投入された電子制御システム「S.I.R.S. (Suzuki Intelligent Ride System)」が搭載されています。これらのシステムは、ライダーの負担を軽減し、様々な路面状況や走行シーンにおいて、安全性、快適性、そしてライディングの楽しさを向上させます。
S.I.R.S. (Suzuki Intelligent Ride System)
S.I.R.S.は、エンジン制御、トラクションコントロール、ABS、双方向クイックシフトシステムなどを統合的に管理するシステム群の総称です。ライダーは、TFT液晶メーターを操作することで、これらのシステムを簡単に設定・調整できます。
ライドモードセレクター (SDMS: Suzuki Drive Mode Selector)
SDMSは、エンジンの出力特性を3つのモードから選択できるシステムです。走行状況や好みに合わせて、エンジンのレスポンスやパワー感を変更できます。
- Aモード (Active): 最もシャープでスポーティなレスポンスを提供するモードです。スロットル操作に対するエンジンの反応が俊敏になり、ワインディングなどで積極的な走りを楽しみたい場合に適しています。
- Bモード (Basic): AモードとCモードの中間の特性を持つモードです。幅広い走行シーンに対応できる、スタンダードな設定と言えます。日常的なライディングやツーリングなど、多くの状況で扱いやすいバランスの取れたモードです。
- Cモード (Comfort): 最も穏やかなレスポンスを提供するモードです。スロットル操作に対するエンジンの反応が穏やかになり、雨天時や滑りやすい路面、または長距離走行で疲労を軽減したい場合に適しています。スムーズな加速が可能で、リラックスして走行できます。
ライダーは走行中でも簡単にモードを切り替えることが可能です。
トラクションコントロールシステム (STCS: Suzuki Traction Control System)
STCSは、リアタイヤの空転(スリップ)を抑制することで、加速時の安定性を向上させるシステムです。特に濡れた路面や砂利道など、滑りやすい状況で効果を発揮します。Vストローム800のSTCSは、複数のモード(介入度)から選択できます。
- モード1: 介入度が最も低く、比較的スポーティな走行を許容するモードです。
- モード2: 標準的な介入度で、一般的な走行状況に適しています。
- モード3: 介入度が最も高く、滑りやすい路面などで最大限の安全性を確保したい場合に適しています。
- OFF: システムを完全にオフにすることも可能です。ただし、オフロード走行など、意図的にリアタイヤを滑らせたい場合以外は、オンにしておくことをお勧めします。
これらのモードは、SDMSとは独立して設定可能です。ライダーのスキルレベルや路面状況に応じて最適な設定を選択することで、より安全に、より積極的にライディングを楽しむことができます。
ABS (アンチロックブレーキシステム)
Vストローム800のABSは、前後独立して制御されます。急制動時や滑りやすい路面でのブレーキング時にタイヤのロックを防ぎ、安定した車体姿勢を保ちながら減速することができます。Vストローム800のABSは、一般的なオンロードABSとしての機能を提供します。オフロード走行に特化したモード(例えばリアABSオフモード)は、Vストローム800DEにのみ搭載されています。Vストローム800は、あくまで舗装路での安全性向上を主眼としています。
双方向クイックシフトシステム
Vストローム800には、アップ側、ダウン側の両方に対応した双方向クイックシフトシステムが標準装備されています。これは、クラッチレバーやスロットル操作なしに、シフトペダルの操作だけでギアチェンジを可能にする画期的なシステムです。
- シフトアップ時: アクセルを開けたまま、シフトペダルを上げるだけで、瞬時にシフトアップが完了します。クラッチを切る必要がないため、加速が途切れることなくスムーズに行えます。
- シフトダウン時: アクセルを閉じた状態で、シフトペダルを下げるだけで、自動的にブリッピング(回転合わせ)を行いながらスムーズにシフトダウンが完了します。特にブレーキングしながらのシフトダウンで威力を発揮し、安定した状態でコーナーへ進入できます。
このシステムは、スポーティな走行時だけでなく、日常の街乗りやロングツーリングでもライダーの疲労を軽減し、ライディングの快適性を大幅に向上させます。特に、頻繁なシフトチェンジが必要な状況や、タンデム走行・積載時など、スムーズなギアチェンジが重要な場面でその恩恵を感じられます。フィーリングは非常に自然で、ほとんどの状況でストレスなく使用できます。
ローRPMアシスト
発進時や極低速走行時、エンジンの回転数をわずかに上昇させることで、エンストの可能性を低減するシステムです。クラッチミートの際に回転が落ち込みにくくなるため、スムーズな発進をサポートし、Uターンなどの低速走行時にも安心感をもたらします。特に大型バイクに慣れていないライダーや、渋滞路での走行時に非常に役立ちます。
スズキイージースタートシステム
スターターボタンをワンプッシュするだけで、エンジンが始動するまで自動的にスターターモーターを回転させるシステムです。従来のバイクのようにボタンを押し続ける必要がなくなり、より簡単にエンジンを始動できます。
フルカラーTFT液晶メーター
視認性の高い5インチフルカラーTFT液晶メーターが採用されています。速度計、回転計はもちろん、ギアポジションインジケーター、SDMSモード、STCSモード、燃料計、時計、オドメーター、トリップメーター、瞬間/平均燃費、航続距離、水温計、電圧計、メンテナンス時期お知らせなど、様々な情報を鮮やかに表示します。
表示レイアウトはシンプルで分かりやすく、走行中でも必要な情報を素早く把握できます。各電子制御システムの設定変更も、このメーターを介して直感的に行うことができます。日中の明るい場所でも、夜間でも、高い視認性を確保しています。
USBソケット
メーターパネルの横には、USBソケットが標準装備されています。スマートフォンやナビゲーションシステムなど、様々なデバイスの充電に使用でき、長距離ツーリングにおける利便性を高めています。
これらの先進的な電子制御システムは、Vストローム800を単なる新しいアドベンチャーバイクにするだけでなく、現代のライダーが求める安全性、快適性、そして利便性を高いレベルで実現しています。ライダーはこれらのシステムの恩恵を受けながら、より自信を持って、より長く、そしてより遠くへと旅をすることができます。
実用性とツーリング性能:旅を快適にする装備たち
アドベンチャーツアラーであるVストローム800にとって、実用性とツーリング性能は非常に重要な要素です。Vストローム800は、長距離走行や様々な状況に対応するための豊富な装備を備えています。
燃料タンク容量と航続距離
先述の通り、燃料タンク容量は20Lです。新開発エンジンの燃費効率と合わせて、実用的な航続距離を確保しています。これにより、給油ポイントを気にすることなく、長距離のルートプランを立てやすくなります。特に、地方や山間部など、ガソリンスタンドが少ないエリアをツーリングする際に、この大容量タンクは大きな安心感を与えてくれます。
シートの快適性
ライダーシートは、長時間の走行でも疲れにくいように、形状とクッション性に工夫が凝らされています。広すぎず狭すぎない幅と、適度な硬さのクッション材が、臀部への圧迫を軽減します。シート高は835mmですが、シート前方がスリムに絞り込まれているため、停車時の足つき性にも配慮されており、数値から想像されるよりも安心感があります。
タンデムシートも、後席ライダーの快適性を考慮して設計されています。十分な広さとクッション性があり、タンデムグリップも握りやすい位置に配置されています。後席ライダーも、Vストローム800の高いツーリング性能を十分に享受できるでしょう。
積載性
アドベンチャーツアラーにとって、荷物を積める能力は非常に重要です。Vストローム800は、純正アクセサリーとしてサイドパニアケースやトップケースが用意されており、これらを装着するためのマウントも取り付けやすいように設計されています。頑丈なリアキャリアは、大型のトップケースやロールバッグなどをしっかりと固定するのに役立ちます。また、フレームやタンデムステップ部分には荷掛けフックが設けられており、シートバッグやネットなどを固定する際に便利です。これにより、長期のキャンプツーリングから日常の買い物まで、様々な用途で十分な積載能力を発揮します。
防風性能
フロントカウルと上下調整可能なスクリーンは、走行風を効果的にライダーから逸らし、長距離走行時の疲労を軽減します。特に高速道路での走行において、風圧による体への負担を大幅に減らすことができます。スクリーンの高さは工具なしで簡単に調整できるため、走行状況や体格に合わせて最適な位置を選べます。カウル下部も、足元への走行風の巻き込みを抑制するようにデザインされています。
ライト類
ヘッドライト、テールランプ、ウインカーは全てLED化されています。LEDライトは消費電力が少なく、長寿命であることに加え、視認性にも優れています。特に夜間走行時、LEDヘッドライトは路面を明るく照らし、安全な走行をサポートします。テールランプやウインカーの明るさも、他の交通からの被視認性を向上させ、安全性を高めます。
メンテナンス性
日常的なメンテナンスや点検がしやすいように配慮されています。例えば、オイル交換やチェーン調整、エアクリーナーの点検などが比較的容易に行える設計になっています。また、信頼性の高い日本製エンジンとパーツは、長期にわたる使用においても安心感をもたらします。
その他の便利装備
- 調整式クラッチ/ブレーキレバー: ライダーの手の大きさに合わせて、レバーの位置を調整できます。これにより、より自然な操作が可能となり、疲労軽減につながります。
- ワイドなハンドルバー: アップライトなポジションと相まって、車両のコントロール性を高め、長距離走行でのリラックスした姿勢を維持できます。
- センタースタンド(アクセサリー): 洗車やチェーンメンテナンス、パンク修理などに便利なセンタースタンドは、純正アクセサリーとして用意されています。ツーリング先でのトラブル対応にも役立ちます。
Vストローム800は、これらの豊富な装備と設計により、ライダーが快適に、そして安全に長距離ツーリングを楽しむことを可能にしています。単なる移動手段としてだけでなく、「旅」そのものを豊かにするツールとして、その真価を発揮します。
Vストローム800DEとの比較:最適な一台を選ぶために
Vストローム800と同時に発表された派生モデルに「Vストローム800DE」があります。モデル名に付く「DE」は「Dual Explorer」を意味し、より本格的なオフロード走行性能を重視したモデルとして位置づけられています。Vストローム800と800DEは同じエンジン、基本的なフレーム設計を共有していますが、足回りや電子制御システムなどに明確な違いがあり、それぞれ異なるライダー層をターゲットにしています。
ここでは、両モデルの主な違いを比較し、どちらのモデルが自分の用途に合っているかを見極めるための参考にします。
主な違い
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足回り(サスペンションストローク、ホイール径、タイヤ)
- Vストローム800: フロント150mm、リア150mmのサスペンションストローク。フロント19インチ、リア17インチのキャストホイールにチューブレスタイヤ。オンロードでの快適性と安定性重視。
- Vストローム800DE: フロント220mm、リア220mmのサスペンションストローク。フロント21インチ、リア17インチのワイヤースポークホイールにチューブタイヤ(一部仕様を除く)。より長いストロークと大径フロントホイールで、本格的なオフロード走破性を向上。
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電子制御システム(ABSモード、トラクションコントロールモード)
- Vストローム800: ABSはオンロード仕様(前後連動)。STCSはモード1〜3+OFF。オフロードに特化した電子制御モードはなし。
- Vストローム800DE: ABSはオンロード/オフロードモード切替可能(オフロードモードではリアABSをオフに設定可能)。STCSには、グラベル(未舗装路)走行に特化した「Gモード」が追加。これはリアタイヤの適度なスリップを許容し、オフロードでの走行性を高めるモードです。
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エルゴノミクス(ハンドルバー、ステップ、シート高、最低地上高)
- Vストローム800: オンロードでの快適なライディングポジション。シート高835mm、最低地上高180mm。
- Vストローム800DE: オフロードでのスタンディング走行も考慮したワイドで高いハンドルバー、位置が調整可能なステップ。シート高855mm、最低地上高220mm。より高いシート高と最低地上高で、オフロードでのクリアランスを確保。
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その他装備
- Vストローム800: ハンドルバーガード、エンジンアンダーカウルなどを標準装備。ツーリングに必要な最低限の保護性能。
- Vストローム800DE: より頑丈なアルミ製テーパーハンドルバー、大型のエンジンアンダーガード、ワイドステップ、ナックルカバー、グラベル向けワイドフットペグなどを標準装備。オフロード走行時の保護性能と操作性を向上。
どちらを選ぶべきか?
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Vストローム800はこんな人におすすめ:
- 主に舗装路を走行し、長距離のオンロードツーリングを楽しみたいライダー。
- 街乗りや通勤など、日常的にバイクを使用する頻度が高いライダー。
- たまに未舗装路も走るかもしれないが、本格的なオフロード走行は考えていないライダー。
- オンロードバイクからの乗り換えで、アドベンチャーツアラーの汎用性を手に入れたいライダー。
- シート高や車重に不安があるライダー(DEより若干足つき性が良い)。
- 快適性、安定性、そして最新の電子制御による安心感を重視するライダー。
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Vストローム800DEはこんな人におすすめ:
- 林道やオフロードコースなど、本格的なオフロード走行にも積極的に挑戦したいライダー。
- 長距離ツーリングの中に、未舗装路を含むアドベンチャー要素を多く取り入れたいライダー。
- オフロードでの走破性や電子制御(Gモード、リアABSオフなど)を重視するライダー。
- 多少のシート高や重量増を受け入れられるライダー。
Vストローム800は、その高いオンロード性能と汎用性、そして快適性から、多くのアドベンチャーツアラーライダーにとって最適な選択肢となるでしょう。一方、Vストローム800DEは、よりアグレッシブなアドベンチャーやオフロード走行を求めるライダーに応えるモデルです。どちらのモデルも新開発エンジンと先進技術の恩恵を受けており、ライダーの求める用途に合わせて最適な一台を選ぶことができます。
競合モデルとの比較:市場におけるVストローム800の立ち位置
ミドルクラスのアドベンチャーモデル市場は、近年非常に競争が激化しています。Vストローム800は、この市場においてどのような強みと弱みを持ち、どのような立ち位置にあるのでしょうか。主な競合モデルと比較しながら考察します。
主な競合モデル
- ヤマハ テネレ700: 軽量でスリムな車体と、トルクフルで扱いやすいCP2並列2気筒エンジンが特徴。電子制御はシンプルで、オフロード走行性能に重点を置いたモデル。硬派なアドベンチャーを求めるライダーに人気。
- ホンダ XL750トランザルプ: アフリカツインと共通のコンセプトを持つ並列2気筒エンジンを搭載。オンロード性能とオフロード性能のバランスに優れ、ホンダらしい扱いやすさが魅力。豊富な電子制御も特徴。
- KTM 790アドベンチャー / 890アドベンチャー: 軽量な車体とパワフルなLC8c並列2気筒エンジンが特徴。電子制御も豊富で、オンロード・オフロード問わず高いパフォーマンスを発揮。スポーティなアドベンチャーを求めるライダー向け。
- BMW F750GS / F850GS: BMWらしい洗練されたデザインと高いツーリング性能が魅力。並列2気筒エンジンを搭載し、電子制御も充実。よりプレミアムなアドベンチャー体験を求めるライダー向け。
Vストローム800の強み
- 新開発エンジンのバランスの良さ: 776cc並列2気筒エンジンは、270度クランクによる鼓動感とトラクション性能、そしてスズキクロスバランサーによる低振動性を高次元で両立しています。低回転から力強く、扱いやすさとトルク感を兼ね備えた特性は、幅広い走行シーンでライダーをサポートします。
- 充実した電子制御システム: S.I.R.S.として統合された豊富な電子制御(SDMS、STCS、ABS、双方向クイックシフト)は、競合モデルと比較しても遜色ないか、それ以上の充実度と言えます。特に双方向クイックシフターの標準装備は大きなアドバンテージです。これらのシステムは、安全性、快適性、そしてライディングの楽しさを大きく向上させます。
- 高いオンロードツーリング性能: 快適なエルゴノミクス、優れた防風性能、十分な積載性、そして安定したシャシーは、長距離の舗装路ツーリングにおいて大きな強みとなります。
- 「ちょうどいい」汎用性: Vストローム800は、オンロードでの快適性を重視しつつも、19インチフロントホイールや適度なサスペンションストローク、最低地上高により、多少の未舗装路にも対応できる汎用性を持っています。これは、多くのユーザーが実際にアドベンチャーバイクを使用するであろうシチュエーションに合致しています。
- スズキらしい信頼性と造り込み: 長年培ってきたスズキの技術力による、信頼性の高いエンジンと車体構造は安心感があります。
Vストローム800の弱み(または競合との違い)
- 本格的なオフロード性能: Vストローム800はオンロード寄りのモデルであり、本格的なオフロード走行性能では、テネレ700や800DE、KTMアドベンチャーなど、よりオフロードに特化したモデルに一歩譲ります。特にサスペンションストロークや最低地上高、ホイールサイズなどが異なります。
- デザインの好み: 「鳥の嘴」デザインはシリーズのアイコンですが、好みが分かれる可能性もあります。
- ブランドイメージ: 一部のプレミアムブランドと比較すると、ブランドイメージで劣ると感じるユーザーもいるかもしれません。
市場における立ち位置
Vストローム800は、テネレ700のような硬派なオフロード寄りアドベンチャーと、BMW Fシリーズやトランザルプのようなオンオフバランス型アドベンチャーの中間に位置しつつも、特に「充実した電子制御による快適で安全なオンロードツーリング性能」を際立たせたモデルと言えます。
オフロード性能は800DEに任せ、Vストローム800は「アドベンチャーバイクのデザインと雰囲気を持ちつつ、日常使いからロングツーリングまで、舗装路を快適かつ安全に楽しみたい」という層に強くアピールするモデルです。最新技術による高い快適性や利便性を重視するライダーにとっては、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
ユーザーインプレッション・評価(想定)
Vストローム800は新しいモデルですが、国内外のメディア試乗や、初期ユーザーからの評価が出始めています。これらを参考に、想定されるユーザーインプレッションや評価のポイントをまとめてみます。
高評価ポイント(想定)
- エンジン:扱いやすさと鼓動感の両立: 新開発の並列2気筒エンジンは、低速トルクが豊富で非常に扱いやすいという評価が多く聞かれるでしょう。特に市街地での発進や渋滞路での走行が楽になったと感じるユーザーは多いはずです。また、270度クランクによる独特の鼓動感やパルス感が、エンジンのキャラクターとして好評を得る可能性があります。クロスバランサーによる振動の少なさも、長距離ツーリングでの快適性向上に貢献していると評価されるでしょう。
- クイックシフター:標準装備の恩恵: 双方向クイックシフターが標準装備されている点は、多くのライダーにとって大きなメリットです。スムーズなシフトアップ/ダウンは、疲労軽減だけでなく、ライディングの楽しさも向上させます。
- 電子制御の充実度と効果: SDMS、STCS、ABSといった電子制御システムが豊富で、それぞれの効果を実感しやすいという評価が見られるでしょう。特に、雨天時や未舗装路での走行における安心感は、これらのシステムによって大きく向上しています。
- オンロードでの安定性と快適性: 19インチフロントホイール、適切なサスペンションストローク、そしてバランスの取れたシャシーにより、舗装路での直進安定性やコーナリング性能が高いレベルにあると評価されるでしょう。長距離走行におけるシートの快適性や防風性能も好評を得る可能性があります。
- デザインと質感: Vストロームシリーズの伝統を受け継ぎつつ、モダンに進化させたデザインは、多くのライダーに受け入れられるはずです。メーター周りや各部の質感も、価格帯に対して十分なレベルにあると評価されるでしょう。
- 積載性の高さ: 純正アクセサリーのパニアケースやトップケース装着を考慮した設計や、しっかりとしたリアキャリアは、ツーリングユーザーにとって大きなメリットです。
改善点・留意点(想定)
- 本格的なオフロード性能: オンロード寄りのモデルであるため、より本格的なオフロード走行を求めるライダーにとっては、サスペンションストロークやホイールサイズなどで物足りなさを感じるかもしれません。
- 車重: 223kgという車両重量は、特別重いわけではありませんが、超軽量なオフロード寄りアドベンチャー(例:テネレ700)と比較すると、取り回しや極低速での操作に差を感じる可能性があります。
- ABSのモード設定: オフロード走行を重視するライダーにとっては、Vストローム800DEのようにリアABSをオフにできるモードが標準装備されていない点は惜しいと感じるかもしれません。
どのようなライダーにおすすめか?
想定される高評価ポイントを踏まえると、Vストローム800は以下のようなライダーに特におすすめできます。
- 日常的にバイクを使用し、週末にはロングツーリングに出かけるライダー: 街乗りでの扱いやすさ、高速道路での快適性、長距離走行での疲労軽減能力が高いレベルでバランスされています。
- オンロードバイクからの乗り換えで、アドベンチャーモデルに興味があるライダー: 驚くほど扱いやすいエンジン、豊富な電子制御、そして高いオンロード性能により、スムーズにアドベンチャーの世界へ入っていくことができます。
- 安全装備や快適装備を重視するライダー: 最新のS.I.R.S.は、ライディングの安全性と快適性を大幅に向上させます。特にクイックシフターは日々のライディングをより楽しく、楽にしてくれます。
- 「ちょうどいい」一台を探しているライダー: 過度なオフロード性能は求めず、オンロードでの快適性を最優先しつつ、たまの林道程度であれば対応できる汎用性を求めるライダーにとって、Vストローム800はまさに「ちょうどいい」存在です。
- コストパフォーマンスを重視するライダー: 充実した装備内容や性能を考えると、価格に対して高いコストパフォーマンスを持っていると評価されるでしょう。
逆に、バイクの用途の8割以上が本格的な林道ツーリングやオフロード走行である、あるいはとにかく軽いバイクでオフロードを楽しみたい、というライダーには、Vストローム800DEや他のオフロード特化型モデルの方が適している可能性があります。
まとめ:新世代アドベンチャーの「最適解」へ
スズキ Vストローム800は、長年のVストロームシリーズの歴史と哲学を受け継ぎながら、新開発の並列2気筒エンジン、革新的なシャシー、そして最新の電子制御システムを搭載することで、現代のアドベンチャーツアラーに求められる要素を高次元で融合させた新世代モデルです。
その最大の魅力は、まさに「ちょうどいい」バランス感覚にあります。過激すぎず、しかし退屈でもない。オンロードでの快適性と安定性を核としながら、アドベンチャーモデルらしい走破性や汎用性も兼ね備えています。
新開発の776cc並列2気筒エンジンは、270度クランクとクロスバランサーシステムによって、Vツインのような心地よい鼓動感と、並列2気筒ならではのコンパクトさ・効率性を両立。低速から力強いトルクを発揮し、どこからでも扱いやすい特性は、市街地から高速道路、ワインディング、そして多少の未舗装路まで、あらゆるシーンでライダーを力強くサポートします。
シャシーは、オンロードでの安定性と快適性を重視した設計でありながら、長めのサスペンションストロークと19インチフロントホイールにより、荒れた路面や段差にも臆することなく対応できます。人間工学に基づいたライディングポジションは、長距離ツーリングでの疲労を軽減し、ライダーに快適な旅を提供します。
S.I.R.S.として統合された電子制御システムは、Vストローム800のキャラクターをさらに際立たせています。SDMSによる走行モード選択、STCSによるトラクションコントロール、そして特に双方向クイックシフターの標準装備は、安全性、快適性、そしてライディングの楽しさを大きく向上させる強力な武器です。フルカラーTFTメーターやUSBソケットといった実用的な装備も、ツーリングにおける利便性を高めています。
Vストローム800は、兄貴分であるVストローム1050シリーズや、オフロード志向の強いVストローム800DEとは明確に異なる立ち位置にいます。それは、「アドベンチャーバイクのデザインと雰囲気、そして多少の走破性を持ちつつ、日常使いから長距離ツーリングまで、舗装路を中心に快適かつ安全に楽しみたい」という、多くのアドベンチャーバイクユーザーのニーズに応える「最適解」の一つと言えるでしょう。
バイクによる「旅」を愛するライダーにとって、Vストローム800はまさに理想の相棒となり得ます。その高い実用性、快適性、そして信頼性は、どこへでも行けるという自信を与え、ライダーを新たな冒険へと誘います。
もしあなたが、最新技術による快適な旅を求め、日常からロングツーリングまで一台でこなせる汎用性の高いアドベンチャーバイクを探しているのであれば、スズキ Vストローム800は間違いなく検討すべき最有力候補の一台です。このバイクが持つ多くの魅力に触れ、あなただけのアドベンチャーを始めてみませんか?