はい、承知いたしました。【無料】VirusTotalで怪しいファイル/URLを瞬時にチェック!使い方ガイド の詳細な説明を含む、約5000語の記事を記述します。
【無料】VirusTotalで怪しいファイル/URLを瞬時にチェック!使い方ガイド
はじめに:デジタル世界に潜む脅威とVirusTotalの必要性
現代のデジタル世界は、私たちの生活に欠かせないものとなりました。インターネットでの情報収集、オンラインショッピング、ソーシャルネットワーキング、リモートワーク、デジタルバンキングなど、あらゆる活動がオンラインで行われています。しかし、その利便性の裏側には、常に悪意あるサイバー脅威が潜んでいます。
マルウェア(悪意のあるソフトウェア)、フィッシング詐欺、不正アクセス、個人情報の窃盗、ランサムウェアによる恐喝など、サイバー攻撃の手法は日々巧妙化・多様化しています。不審なメールの添付ファイルを開いてしまったり、怪しいウェブサイトのリンクをクリックしてしまったりするだけで、パソコンやスマートフォンが感染し、深刻な被害を受ける可能性があります。
このような状況下で、私たちは自身のデバイスや情報を守るために、様々なセキュリティ対策を講じる必要があります。OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ、信頼できるセキュリティソフトを導入する、複雑なパスワードを設定する、二段階認証を利用するなど、基本的な対策はもちろん重要です。
しかし、これらの対策だけでは防ぎきれない脅威も存在します。特に、新しい未知のマルウェア(ゼロデイ攻撃)や、正規のソフトウェアに見せかけた巧妙な罠などは、従来のセキュリティソフトでは検知が難しい場合があります。
そこで登場するのが、「VirusTotal」です。VirusTotalは、Google傘下のChronicle Securityが提供する、オンライン上の無料サービスです。世界中の様々なアンチウイルスベンダーやセキュリティ機関が提供するスキャンエンジン、Webサイト評価ツール、その他の分析ツールを活用し、アップロードされたファイルや入力されたURLがマルウェアや不正なコンテンツを含んでいるかどうかを瞬時にチェックすることができます。
VirusTotalの最大の強みは、単一のアンチウイルスソフトではなく、多数の異なるスキャンエンジンによる多角的な分析を提供することです。これにより、ある特定のベンダーのエンジンでは検知できない脅威でも、他のエンジンが検知できる可能性が高まります。まさに、多くの専門家の知見を集結させて、一つのファイルやURLの安全性を判断するようなものです。
この記事では、この強力なツールであるVirusTotalの無料版に焦点を当て、その基本的な使い方から、スキャン結果の詳細な見方、そして安全な利用のための注意点までを、約5000語にわたって徹底的に解説します。これを読めば、あなたも不審なファイルやURLを見つけたときに、自信を持ってVirusTotalでチェックできるようになるでしょう。
1. VirusTotalの基本機能とアクセス方法
まずは、VirusTotalのウェブサイトにアクセスしてみましょう。利用に特別なソフトウェアのインストールは不要で、ウェブブラウザから簡単にアクセスできます。
VirusTotal ウェブサイト: https://www.virustotal.com/
サイトにアクセスすると、シンプルで直感的なインターフェースが表示されます。画面の中央には、ファイル、URL、検索(Search)という3つの大きなタブがあります。これが、VirusTotalの主要な機能への入り口となります。
- File(ファイル): ローカルにある不審なファイルをアップロードしてスキャンします。
- URL: 不審なウェブサイトのURLを貼り付けてスキャンします。
- Search(検索): 過去にVirusTotalでスキャンされたファイルの情報(ハッシュ値)、URL、ドメイン名、IPアドレスなどを検索します。
VirusTotalのほとんどの機能は、アカウント登録なしでも利用可能です。しかし、無料でアカウントを作成すると、過去のスキャン履歴を確認できたり、コミュニティ機能(後述)を利用できたりといったメリットがあります。必須ではありませんが、継続的に利用する場合は登録を検討しても良いでしょう。登録はメールアドレスとパスワード、ユーザー名の設定程度で簡単に行えます。
2. ファイルのスキャン方法とその結果の見方
それでは、実際に不審かもしれないファイルをVirusTotalでスキャンしてみましょう。
ステップ1:ファイルタブを選択
VirusTotalのトップページで、「File」タブが選択されていることを確認します。(デフォルトで選択されていることが多いです。)
ステップ2:ファイルをアップロード
ファイルをアップロードする方法はいくつかあります。
- ファイルをドラッグ&ドロップ: スキャンしたいファイルを、ブラウザ上のVirusTotalのページに表示されている点線のエリアに直接ドラッグして離します。
- 「Choose file」ボタンをクリック: ボタンをクリックすると、ファイル選択ダイアログが表示されます。スキャンしたいファイルを選択して「開く」ボタンをクリックします。
どちらの方法でも、選択したファイルがVirusTotalのサーバーにアップロードされ、自動的にスキャンが開始されます。アップロードにはファイルサイズやインターネット接続状況に応じて時間がかかる場合があります。無料版では、アップロード可能なファイルサイズに上限があります(通常は64MBですが、変更される可能性があります)。
ステップ3:スキャン結果の確認
ファイルがアップロードされてスキャンが完了すると、結果が表示されます。スキャン結果画面は複数のタブで構成されており、様々な角度からファイルの安全性を評価するための情報が提供されます。主要なタブを見ていきましょう。
2.1. サマリー (Summary) タブ
このタブは、スキャン結果の概要を一目で確認できます。
- 検出状況 (Detection Ratio): 最も重要な情報の一つです。「[悪意があると判定したエンジンの数] / [スキャンに使用されたエンジンの総数]」という形式で表示されます。例えば「5 / 70」と表示されていれば、70個のアンチウイルスエンジンの中で5個が悪意があると判定したことを意味します。
- 多くのエンジンが検出している場合は、そのファイルが悪意のあるものである可能性が極めて高いです。
- 検出数が少ない場合でも、誤検知の可能性や、特定のエンジンしか検知できない未知のマルウェアの可能性が考えられます。
- 検出数がゼロでも、完全に安全とは限りません。新しいマルウェアや、特定の環境下でしか動作しないマルウェアは検知されないことがあります。後述する詳細情報やコミュニティの評価と合わせて判断することが重要です。
- ファイル名 (File name): アップロードしたファイルの名前です。
- サイズ (Size): ファイルの容量です。
- タイプ (Type): ファイルの種類です。例えば、「PE32 executable (GUI) Intel 80386, for MS Windows」ならWindowsの実行ファイル、「PDF document」ならPDFファイル、「Zip archive」ならZip圧縮ファイルといった情報が表示されます。
- ハッシュ値 (Hashes): ファイル固有の識別子です。MD5, SHA-1, SHA-256などの異なる種類のハッシュ値が表示されます。ファイルの内容が1バイトでも変わると、ハッシュ値は完全に異なるものになります。このハッシュ値は、後述する検索機能で過去のスキャン結果を調べる際に非常に役立ちます。全く同じ内容のファイルであれば、世界中の誰かが過去にスキャンしている可能性が高く、その結果を参照できます。
- 作成日 (Creation Date): ファイルが作成された(VirusTotalにアップロードされた)日付です。
- 初回分析日 (First submission): そのファイル(正確にはそのハッシュ値を持つファイル)が、VirusTotalに初めてアップロードされた日付です。この日付が新しいほど、比較的新しい、あるいはあまり流通していないファイルである可能性が高いです。
- 最終分析日 (Last analysis): そのファイルが最後にVirusTotalでスキャンされた日付です。この日付が新しいほど、最新の脅威情報に基づいてスキャンされていると言えます。もし古い日付であれば、「Reanalyse file」ボタンをクリックして最新の脅威情報で再スキャンを依頼することも可能です(ただし、無料版では制限がある場合があります)。
- タグ (Tags): ファイルの種類や特性に関連するタグが表示されることがあります。例えば、「peexe」(Windows実行ファイル)、「zip」、「pdf」などです。悪意のあるファイルの場合は、「malicious」「trojan」「ransomware」といったタグが付与されることもあります。
2.2. 検出 (Detection) タブ
このタブでは、VirusTotalが利用している個々のアンチウイルスエンジンによるスキャン結果がリスト形式で詳細に表示されます。
- アンチウイルスエンジン名 (Engine): スキャンを実行したアンチウイルスベンダーの名前です(例: Avast, BitDefender, Kaspersky, McAfee, Norton, Trend Microなど)。
- エンジンバージョン (Version): 使用されたエンジンのバージョンです。
- 最終更新日 (Last update): そのエンジンが最後に脅威定義ファイルを更新した日付です。この日付が新しいほど、最新の脅威に対応できている可能性が高いです。
- 結果 (Result): そのエンジンによる判定結果です。
- Clean / Undetected: 脅威は検出されませんでした。
- Malicious / Trojan / Worm / Ransomware / Virus / Gen:Variant.XYZ など: マルウェアとして検出されました。具体的なマルウェア名や種類が表示されることが多いです。
- Suspicious: 疑わしい挙動や特徴があるが、明確にマルウェアとは断定できない。
- Timeout: スキャン中に処理時間がかかりすぎたため、タイムアウトしました。
- Failure: スキャンに失敗しました。
- N/A: そのファイルタイプには対応していないなどの理由でスキャン対象外です。
- アップデートが必要 (Needs update): エンジンの脅威定義ファイルが古い可能性があることを示します。
ここで重要なのは、単に検出数だけでなく、どのエンジンが検出しているかを確認することです。
* 複数の主要なベンダー(Kaspersky, BitDefender, ESET, Trend Microなど、評判の高いベンダー)が一致して検出している場合: そのファイルが悪意のあるものである可能性は非常に高いです。
* ごく一部の、あまり聞き覚えのないベンダーのみが検出している場合: 誤検知(False Positive)の可能性があります。特に、ファイルが正規のソフトウェアの一部であったり、新しい種類のソフトウェアであったりする場合に起こりえます。
* 多くのエンジンが「Undetected」と判定している場合: そのファイルが安全である可能性は高いですが、前述のように未知の脅威である可能性も否定できません。
もし誤検知が疑われる場合は、後述するコミュニティの評価なども参考にしたり、そのファイルが信頼できる提供元から入手したものであるかを改めて確認したりすることが重要です。
2.3. 詳細 (Details) タブ
このタブには、ファイルに関するより技術的かつ詳細な情報が表示されます。これらの情報は、ファイルの性質を深く理解したり、悪意のあるファイルの特徴を特定したりするのに役立ちます。ただし、一部の情報は専門知識が必要となります。
- 基本プロパティ (Basic Properties): ハッシュ値(MD5, SHA-1, SHA-256, SSDEEPなど)、マジックバイト(ファイル形式を示す最初の数バイト)、ファイルサイズ、ファイルタイプ、パック状態(ファイルが圧縮・難読化されているかなど)、インポートハッシュ(ファイルが使用する外部関数のハッシュ値)などが表示されます。特にマジックバイトやファイルタイプは、ファイルの実際の形式が拡張子と一致しているかを確認するのに役立ちます。悪意のあるファイルは、拡張子を偽装していることがあります(例: .txtに見せかけた.exeなど)。
- サイン (Signatures): ファイルにデジタル署名がある場合に表示されます。信頼できる企業によって署名されている正規のファイルか、あるいは署名がないか、無効な署名であるかなどが確認できます。マルウェアは署名がないか、偽装された署名を持つことが多いです。
- インポート (Imports): Windowsの実行ファイル (.exe, .dllなど) の場合、そのファイルが動作するために外部のシステムライブラリ(DLLファイルなど)からどのような関数(API)を呼び出すかの一覧が表示されます。例えば、ファイル操作に関するAPI、ネットワーク通信に関するAPI、レジストリ操作に関するAPIなどが含まれます。悪意のあるファイルは、システムに損傷を与えたり情報を盗み出したりするための特定のAPI(例: CreateProcess – プロセス作成, WriteFile – ファイル書き込み, InternetOpen – インターネット接続開始など)を呼び出す傾向があります。このリストを scrutinize することで、そのファイルがどのような動作を意図しているかの手がかりを得られます。
- エクスポート (Exports): そのファイル自身が外部に提供する関数の一覧です。主にDLLファイルやシステムファイルなどで見られます。
- 静的分析 (Static Analysis): ファイルを実際に実行することなく、ファイルの内容を解析して得られる情報です。
- 埋め込み文字列 (Embedded Strings): ファイル内に含まれるテキスト文字列のリストです。エラーメッセージ、設定情報、通信先のURLやIPアドレス、コマンド文字列などが含まれていることがあります。これらの文字列の中に、悪意のある活動を示すような不審な情報(例: 特定のドメイン名、IPアドレス、隠しファイル名など)が含まれていないか確認できます。
- セクション (Sections): 実行ファイル (.exe, .dllなど) は、コード、データ、リソースといった複数のセクションに分割されています。各セクションのサイズや属性(実行可能か、書き込み可能かなど)が表示されます。正規のファイルとは異なる不審なセクション構造や属性(例: コードセクションが書き込み可能になっているなど)を持つ場合があります。
- リソース (Resources): 実行ファイルに含まれるアイコン、カーソル、画像、設定情報などのリソースが表示されます。
- バージョン情報 (Version Information): ファイルのバージョン、会社名、製品名、ファイル説明などが表示されます。正規のソフトウェアであれば、正しい情報が記載されているはずです。マルウェアは、正規のファイルになりすますために、偽のバージョン情報を設定していることがあります。
これらの静的分析情報は、ファイルの内部構造や潜在的な挙動を推測するのに役立ちますが、高度な難読化やパッカー(ファイルを圧縮・暗号化して解析を難しくするツール)が使用されている場合は、正確な情報を得られないこともあります。
2.4. 挙動 (Behavior) タブ
このタブでは、そのファイルがサンドボックス(隔離された安全な仮想環境)内で実際に実行された際の動的な挙動に関する情報が表示されます。ファイルがシステムに対してどのような変更を加えるか、どのようなネットワーク通信を行うかなどを観察することで、静的分析だけでは分からない脅威を検出できます。
- 作成/変更されたファイル (Files written/modified): ファイルが実行された結果、システム上に新しく作成されたり、既存のファイルが変更されたりしたリストです。マルウェアは、自身のコピーを作成したり、設定ファイルやシステムファイルを変更したりすることがあります。
- 作成/変更されたレジストリキー (Registry keys set/deleted): ファイルが実行された結果、レジストリに追加されたり、変更されたり、削除されたりしたキーのリストです。マルウェアは、システムの起動時に自身が自動実行されるようにレジストリを設定したり、特定の情報をレジストリに保存したりすることがあります。
- ネットワーク通信 (Network activity): ファイルが実行中に試みたネットワーク接続に関する情報です。接続先のIPアドレス、ドメイン名、ポート番号、通信プロトコルなどが表示されます。マルウェアは、攻撃者のサーバー(C&Cサーバー)と通信して指示を受け取ったり、情報を送信したり、他のマルウェアをダウンロードしたりすることがあります。見慣れない外部への通信は、マルウェア感染の強い兆候です。
- 生成されたプロセス (Processes created): ファイルが実行中に新しく起動したプロセスに関する情報です。自身以外の実行ファイルを起動したり、システムコマンドを実行したりすることがあります。
- ドロップされたファイル (Dropped files): 実行ファイルが、システム上に別のファイル(マルウェア本体や設定ファイルなど)を書き出す(ドロップする)場合に、そのリストが表示されます。
【重要】無料版における挙動分析の制限
VirusTotalの無料版では、この「挙動 (Behavior)」タブの情報が非常に限定的であるか、あるいは全く表示されない場合があります。動的解析は非常にリソースを消費するため、詳細な挙動分析レポートは通常、VirusTotalの有料サービス(VirusTotal Intelligenceなど)の機能となります。
無料版で挙動分析情報が見られない場合でも、ファイルが悪意のある挙動をする可能性は十分にあります。そのため、静的分析の結果やアンチウイルスエンジンの検出結果、コミュニティの評価などを総合的に判断することがより重要になります。
2.5. コミュニティ (Community) タブ
このタブでは、VirusTotalの他のユーザーによるコメントや投票を見ることができます。
- 投票 (Votes): そのファイルに対して、他のユーザーが「Malicious(悪意がある)」または「Harmless(無害)」のどちらに投票したかの集計が表示されます。多くのユーザーが「Malicious」に投票している場合は、注意が必要です。
- コメント (Comments): 他のユーザーがそのファイルに関する情報や分析結果、体験談などをコメントとして書き込んでいます。例えば、「これは特定のランサムウェアの亜種です」「誤検知のようです、正規のファイルでした」「このファイルを開いたらPCが異常な動作を始めました」といった情報が含まれていることがあります。
コミュニティの情報は、他のユーザーの経験に基づいた貴重な手がかりとなる可能性があります。特に、アンチウイルスエンジンの検出数が少ない場合や、誤検知が疑われる場合に、他のユーザーの意見を参考にすることができます。ただし、コミュニティの情報はあくまで個人の主観や経験に基づいているため、鵜呑みにせず、他の分析結果と合わせて総合的に判断することが重要です。悪意のあるユーザーが意図的に誤った情報を書き込む可能性もゼロではありません。
2.6. グラフ (Graph) タブ
このタブでは、そのファイルに関連する他のファイル、URL、IPアドレス、ドメインなどが視覚的にグラフとして表示されます。例えば、そのファイルが特定のURLからダウンロードされたものである場合、ファイルノードとURLノードが線で結ばれて表示されるといった具合です。また、そのファイルが通信を試みたIPアドレスやドメインも関連付けられて表示されることがあります。
この機能は、攻撃キャンペーンの一部や、マルウェアの感染経路、C&Cサーバーなどを追跡するのに役立ちます。しかし、無料版ではこのグラフ機能も非常に制限されており、表示される情報は断片的なことが多いです。有料版のVirusTotal Graphは、より複雑な関連性を詳細に表示し、セキュリティ調査に強力な機能を提供します。
2.7. スキャン結果の解釈と判断のポイント
ここまで見てきたように、VirusTotalのスキャン結果は多岐にわたる情報を含んでいます。これらの情報をどのように解釈し、そのファイルが安全かどうかを判断すれば良いのでしょうか。
- 検出数が多い場合:
- 信頼できる複数の主要ベンダーが一致して検出している場合は、ほぼ確実に悪意のあるファイルです。実行したり開いたりせず、すぐに削除してください。
- 多くのベンダーが検出しているが、ファイルが正規のソフトウェアの一部である場合(例: クラックツールや違法なアクティベーターなど)、それはマルウェアではありませんが、一般的に「潜在的に迷惑なプログラム(PUP)」や「ハッキングツール」として検出されます。使用は推奨されず、リスクを伴います。
- 検出数が少ない場合:
- 一部のエンジンのみが検出しており、それが信頼できるベンダーである場合:新しい未知のマルウェアの可能性があります。慎重に対処し、実行は避けてください。
- 一部のエンジンのみが検出しており、あまり聞き覚えのないベンダーである場合、またはコミュニティで誤検知の報告が多い場合:誤検知の可能性があります。ただし、誤検知ではない可能性も考慮し、ファイルが信頼できるソースから入手したものであるかを確認してください。
- 検出数がゼロの場合:
- 完全に安全である可能性は高いですが、決して100%安全とは断言できません。特に、ファイルが非常に新しいものである場合、最新の未知のマルウェア(ゼロデイ脅威)である可能性や、特定の環境下でしか動作しないように設計された標的型攻撃のマルウェアである可能性があります。
- 静的分析結果(インポート、文字列、セクションなど)や、無料版で限定的に表示される可能性のある挙動情報(ネットワーク通信先など)を慎重に確認してください。不審な点があれば、実行は避けるべきです。
- ファイルが正規の配布元からダウンロードしたものであるか、ダウンロード中にエラーが発生しなかったかなども確認してください。
- スキャン結果の日付:
- 「初回分析日」が古く、「最終分析日」が新しい場合:過去にスキャンされている一般的なファイルであり、最新の脅威情報でも検出されていないことを示唆します。安全である可能性が高いです。
- 「初回分析日」が新しく、「最終分析日」も新しい場合:比較的新しいファイルであり、最近になって初めてVirusTotalにアップロードされ、スキャンされたことを示唆します。未知のファイルである可能性が高いため、検出数がゼロでもより慎重な判断が必要です。
- 「最終分析日」が古い場合:最新の脅威情報でスキャンされていない可能性があります。「Reanalyse file」ボタンで再スキャンを試みてください。
【重要】過信は禁物!
VirusTotalは強力なツールですが、万能ではありません。検出数がゼロであっても、ファイルが完全に安全であるという保証はありません。また、アップロードされたファイルはVirusTotalのサーバーに保存され、アンチウイルスベンダーと共有される可能性があります。機密情報や個人情報が含まれるファイルは、絶対にVirusTotalにアップロードしないでください。
3. URL/ドメインのスキャン方法とその結果の見方
ファイルと同様に、VirusTotalでは不審なウェブサイトのURLやドメイン名をチェックすることもできます。これは、フィッシング詐欺メールに記載されたリンクや、信頼できるか分からないウェブサイトにアクセスする前に、その安全性を確認したい場合に非常に有用です。
ステップ1:URLタブを選択
VirusTotalのトップページで、「URL」タブを選択します。
ステップ2:URLを入力または貼り付け
チェックしたいURL(例: https://www.suspicious-site.example.com/phishing/login.html
)またはドメイン名(例: suspicious-site.example.com
)を、入力フィールドに正確に貼り付けます。
ステップ3:スキャンを実行
入力フィールドの横にある虫眼鏡アイコン(検索ボタン)をクリックするか、キーボードのEnterキーを押します。VirusTotalがそのURL/ドメインのスキャンを開始します。もしそのURL/ドメインが過去にスキャンされている場合は、最新のスキャン結果がすぐに表示されます。まだスキャンされていない場合は、スキャンが実行されるのを待ちます。
ステップ4:スキャン結果の確認
URLのスキャン結果画面も、ファイルの画面と同様に複数のタブで構成されています。
3.1. サマリー (Summary) タブ
ファイルの場合と同様に、スキャン結果の概要が表示されます。
- 検出状況 (Detection Ratio): 「[悪意があると判定したエンジンの数] / [スキャンに使用されたエンジンの総数]」で表示されます。ファイルのスキャンと同様に、多くのエンジンが検出している場合は、そのURLが不正である可能性が非常に高いです。検出数が少なくても油断は禁物です。
- URL情報 (URL Info):
- Canonical URL: スキャン対象のURLが表示されます。
- Title: そのURLのウェブページのタイトルが表示されます。フィッシングサイトの場合、偽のログインページであることを示唆するタイトルが表示されることがあります。
- IPアドレス (Final destination IP address): 最終的にアクセスしたサーバーのIPアドレスが表示されます。
- 最終リダイレクト先 (Final redirect URL): もし入力したURLが別のURLにリダイレクトされる場合、最終的なリダイレクト先のURLが表示されます。悪意のあるURLは、正規のURLに見せかけておき、実際には不正なサイトにリダイレクトさせることがよくあります。リダイレクトチェーンを確認することは非常に重要です。
- 初回分析日 (First submission): そのURLがVirusTotalに初めて送信された日付です。
- 最終分析日 (Last analysis): そのURLが最後にスキャンされた日付です。古い場合は再スキャンを検討します。
- タグ (Tags): URLに関連するタグが表示されることがあります。例えば、「phishing」「malware」「spam」「redirector」などです。
3.2. 検出 (Detection) タブ
ファイルの場合と同様に、個々のURLスキャンエンジンやデータベースによる判定結果がリスト形式で表示されます。VirusTotalでは、Google Safe Browsing, ESET, Kaspersky, Trend Microなど、ウェブサイトの安全性を評価する様々なサービスやエンジンを利用しています。
- ベンダー名 (Vendor): スキャンを実行したベンダーの名前です。
- 結果 (Result): そのベンダーによる判定結果です。
- Clean / Undetected: 脅威は検出されませんでした。
- Malicious / Phishing / Malware site / Spam / Suspended / Fraudulent など: 不正なサイト、フィッシングサイト、マルウェア配布サイト、スパム関連サイト、停止されたサイトなどとして検出されました。具体的な分類が表示されることが多いです。
- Timeout / Failure: スキャンに失敗しました。
複数の信頼できるベンダーが一致して「Phishing」や「Malware site」と判定している場合は、そのURLにアクセスすることは非常に危険です。
3.3. 詳細 (Details) タブ
URLに関するより技術的な情報が表示されます。
- 基本プロパティ (Basic Properties):
- IPアドレス (IP address): 最終的にアクセスしたサーバーのIPアドレス。
- AS番号 (ASN): そのIPアドレスが所属する自律システム(Autonomous System)の番号と名称。そのIPアドレスがどのネットワーク事業者に割り当てられているかなどが分かります。
- 国 (Country): IPアドレスが登録されている国。
- 最終解決日 (Last resolved): そのURLが最後にIPアドレスに解決された日付。
- HTTP応答 (HTTP Redirect Chain): 入力したURLから最終的なリダイレクト先までの経路がリスト形式で表示されます。それぞれのステップでのHTTPステータスコード(例: 302 Found – リダイレクト)やLocationヘッダー(リダイレクト先URL)が確認できます。これは、特に複数のリダイレクトを経由して不正サイトに誘導するような手口の場合に、その仕組みを理解するのに非常に重要です。
- 最終HTTP応答コード (Final HTTP response code): 最終的なURLにアクセスした際のHTTPステータスコード(例: 200 OK – 成功, 404 Not Found – ページなし, 500 Internal Server Error – サーバーエラーなど)。
- WHOIS情報 (WHOIS): ドメインの登録情報が表示されます。ドメイン名、登録者組織名、登録者連絡先(プライバシー保護のため非公開の場合も多い)、登録年月日、有効期限などが含まれます。不審なドメインの場合、登録情報が不完全だったり、海外の怪しい組織名になっていたりする場合があります。ただし、プライバシー保護サービスを利用している正規のドメインも多いため、WHOIS情報だけで安全性を判断するのは難しいです。
- SSL証明書 (Certificates): そのウェブサイトがSSL/TLS証明書(HTTPS通信で使用される証明書)を使用している場合に、その情報が表示されます。証明書の発行者、有効期間、対象ドメイン名などが含まれます。正規のウェブサイトは通常、有効で信頼できる認証局から発行された証明書を使用しています。フィッシングサイトの中には、証明書を使用していないか、自己署名証明書を使用しているか、または正規のサイトのドメイン名とよく似たドメイン名で証明書を取得している場合があります。証明書の詳細(発行者や有効期間、対象ドメイン名)を確認することで、サイトの信頼性を判断する手がかりが得られます。
3.4. 関連 (Relations) タブ
ファイルの場合と同様に、そのURLに関連する他のドメイン、IPアドレス、ファイルなどが視覚的に表示されます。例えば、そのURLからダウンロードされるファイルや、そのURLが埋め込まれている他のウェブページなどが関連付けられて表示されることがあります。
【重要】無料版における関連情報の制限
ファイルの場合と同様に、この「関連 (Relations)」タブの情報も、VirusTotalの無料版では非常に限定的であるか、全く表示されない場合があります。詳細な関連性の分析は、通常、有料サービスで提供されます。
3.5. コミュニティ (Community) タブ
ファイルの場合と同様に、他のユーザーによるコメントや投票を見ることができます。そのURLがフィッシングサイトである、マルウェアを配布している、といった情報や、アクセスした際の挙動に関する報告などがコメントとして含まれていることがあります。ここでも、情報の信頼性には注意が必要です。
3.6. URLスキャン結果の解釈と判断のポイント
URLスキャン結果から、そのウェブサイトが安全かどうかを判断するためのポイントです。
- 検出数が多い場合: 複数の信頼できるベンダーが「Phishing」「Malware site」などと判定している場合は、そのURLには絶対にアクセスしないでください。フィッシング詐欺に遭ったり、マルウェアに感染したりするリスクが極めて高いです。
- 検出数が少ない場合: 一部のベンダーのみが検出している場合や、「Suspicious」と判定している場合は、注意が必要です。フィッシング詐欺サイトは新しいものが次々と出現するため、全てのエンジンが即座に検知できるわけではありません。
- 検出数がゼロの場合: アクセスしても安全である可能性は高いですが、こちらも100%安全とは言えません。特に、新しいフィッシングサイトや、特定のユーザーを狙った標的型攻撃の一部である場合は、検出されないことがあります。
- リダイレクトチェーンを確認し、見慣れないURLにリダイレクトされていないかを確認してください。
- 詳細タブの情報(IPアドレス、国、WHOIS情報、SSL証明書)を確認し、不審な点がないかチェックしてください。例えば、日本の正規サイトのはずなのに、IPアドレスが遠い海外の国のデータセンターになっている、WHOIS情報が不完全である、SSL証明書が無効である、といった場合は非常に疑わしいです。
- コミュニティのコメントも参考にしてください。
- URLの文字列自体を確認することの重要性: VirusTotalでチェックする前に、不審なURLの文字列を目視で確認することも重要です。正規のサイト(例:
https://www.amazon.co.jp/
)と比べて、ドメイン名が少しだけ異なっている(例:https://www.amaz0n.co.jp/
– ‘o’が’0’になっている)、サブドメインが不自然である(例:https://login.amazon.co.jp.suspicious-site.example.com/
– amazon.co.jpはサブドメインになっているだけで、実際のドメインはsuspicious-site.example.com)、HTTPSではなくHTTPになっている、といった点はフィッシングサイトの典型的な特徴です。
【重要】URLスキャンに関する注意点
- VirusTotalでURLをスキャンしても、それはVirusTotalがそのURLにアクセスしてスキャンした結果を表示しているだけであり、あなたがそのURLにアクセスしたことにはなりません。そのため、VirusTotalでチェックすること自体によって直接マルウェアに感染したりフィッシングサイトに個人情報を入力してしまったりすることはありません。ただし、チェックしたURLを間違えてクリックしてしまわないように注意が必要です。
- 入力したURLは、VirusTotalによって保存され、他のユーザーや提携ベンダーと共有される可能性があります。
4. 検索機能の利用 (Search)
VirusTotalの「Search」タブは、過去にVirusTotalでスキャンされたファイルやURLの情報を検索するための機能です。これは、あるファイルやURLについて、すでに他の誰かがスキャンしていて結果が存在するかどうかを確認したい場合に非常に便利です。自分でファイルをアップロードしたりURLをスキャンしたりする手間を省き、すぐに結果を参照できます。
検索できる主な項目は以下の通りです。
- ファイルのハッシュ値: MD5, SHA-1, SHA-256などのハッシュ値を入力して検索します。完全に同じ内容のファイルであれば、ハッシュ値も同じになります。
- URLまたはドメイン名: URLまたはドメイン名を入力して検索します。
- IPアドレス: IPアドレスを入力して検索します。そのIPアドレスに関連する過去の活動(そのIPアドレスからアクセスされたURLなど)が確認できる場合があります。
使い方:
- VirusTotalのトップページで「Search」タブを選択します。
- 検索したいハッシュ値、URL/ドメイン、またはIPアドレスを入力フィールドに貼り付けます。
- 虫眼鏡アイコンをクリックするか、Enterキーを押します。
検索結果の見方:
検索したハッシュ値、URL、またはIPアドレスが過去にVirusTotalでスキャンされている場合、その最新のスキャン結果ページに直接ジャンプします。表示される結果画面は、前述のファイルまたはURLのスキャン結果画面と同じ構成です。
もし検索しても何も表示されない場合、または「No matches found」のようなメッセージが表示される場合は、そのハッシュ値を持つファイルやそのURL/IPアドレスは、まだVirusTotalに登録されていない(つまり、誰も過去にスキャンしていないか、非常に新しい)ことを意味します。この場合は、「File」タブまたは「URL」タブに移動して、自分でファイルをアップロードするかURLをスキャンする必要があります。
検索機能のメリット:
- 時間の節約: 既にスキャン済みの情報であれば、すぐに結果を得られます。
- 情報の参照: 他のユーザーが過去にスキャンした結果を参照することで、特定のファイルやURLが過去にどのような判定を受けているかを知ることができます。
- 関連性の発見: IPアドレス検索などは、特定のIPアドレスに関連する様々なURLやファイルを見つける手がかりとなることがあります。
5. その他の機能と無料版の注意点
VirusTotalの無料版を利用する上で、知っておくべきその他の機能や、特に重要な制限事項、注意点について解説します。
5.1. コミュニティ機能の活用と注意点
前述の通り、ファイルやURLのスキャン結果画面には「Community」タブがあります。ここでは、他のユーザーがその対象物に対してコメントを残したり、安全か悪意があるか投票したりしています。
- 活用方法:
- アンチウイルスエンジンの検出結果だけでは判断が難しい場合(例: 検出数が少ない、誤検知が疑われる場合)に、他のユーザーの経験や知見を参考にすることができます。
- 特定のマルウェアや攻撃キャンペーンに関する詳細な情報(例: 感染経路、目的、関連するファイルやURLなど)がコメントとして投稿されていることがあります。
- 誤検知であるという情報があれば、不必要に正規のファイルを削除してしまうことを防ぐのに役立ちます。
- 注意点:
- コミュニティの情報は、公式な分析結果ではなく、ユーザーの主観や経験に基づくものです。情報の正確性は保証されていません。
- 悪意のあるユーザーが、意図的に誤った情報(例: マルウェアを「無害」と投票/コメントする、正規のファイルを「悪意がある」と報告するなど)を投稿する可能性もゼロではありません。
- コミュニティの情報のみで最終的な判断を下すのは危険です。必ず他の分析結果(検出数、詳細情報など)と合わせて総合的に判断してください。
- コメントを投稿したり投票に参加したりするには、無料アカウントでのログインが必要です。
5.2. ユーザー登録のメリット
無料でVirusTotalのアカウントを作成すると、以下のメリットがあります。
- スキャン履歴の確認: 過去に自分でアップロードまたはスキャンしたファイルやURLの履歴を確認できます。これにより、同じものを重複してスキャンすることを避けたり、過去の結果を簡単に参照したりできます。
- コミュニティ機能の利用: ファイルやURLに対するコメント投稿や投票に参加できます。他のユーザーと情報を共有したり、自分の知見を提供したりできます。
- より詳細な情報の一部表示: 無料アカウントでも、一部のより詳細な情報(例えば、API呼び出しの一部や、限定的な関連情報など)が表示される場合があります。ただし、これは有料版ほど網羅的ではありません。
- API(限定的): 非営利目的や研究目的であれば、無料版のPublic APIを利用できる場合があります。ただし、呼び出し回数などに厳しい制限があります。
アカウント登録は必須ではありませんが、VirusTotalを継続的に活用したい場合は検討する価値があります。
5.3. 無料版の主要な制限事項
VirusTotalの無料版は非常に強力で多くの情報を提供しますが、有料版と比較するといくつかの制限があります。これらの制限を理解しておくことは、分析結果の限界を知る上で重要です。
- アップロード可能なファイルサイズの上限: 通常、無料版でアップロードできるファイルのサイズには上限があります(一般的には64MBですが、変動する可能性があります)。これより大きなファイルは、無料版では直接スキャンできません。
- 動的解析(Behavior analysis)の詳細度: 前述の通り、サンドボックスでの詳細な挙動分析レポートは、無料版ではほとんど提供されないか、ごく限定的な情報のみとなります。ファイルが実際にどのような挙動をするか(ネットワーク通信先、ファイル変更、レジストリ変更など)の詳細な情報は、有料版(VirusTotal Intelligenceなど)の主要な機能です。
- 関連情報(Relations, Graph)の詳細度: ファイルやURLに関連する他のエンティティ(ファイル、URL、IPアドレスなど)を視覚的に表示するグラフ機能や、関連情報を詳細に表示する機能は、無料版では非常に制限されています。
- 検索機能の制限: より高度な検索クエリ(例えば、特定の条件に一致するファイルを検索するなど)や、過去の広範なデータへのアクセスは、有料版(VirusTotal Intelligence)の機能です。無料版では、特定のハッシュ値、URL、またはIPアドレスに対する既存の結果を検索する機能が中心です。
- API利用の制限: 無料版で提供されるPublic APIは、非営利目的の研究や個人の利用に限定されており、厳しい呼び出し回数制限があります。商用利用はできません。
- 同時スキャン数/頻度の制限: 無料版ユーザーが同時に実行できるスキャン数や、一定時間内に実行できるスキャン回数には制限がある場合があります。
これらの制限により、無料版では分析できる範囲や深度に限界があります。特に、新しい未知の脅威や、高度に難読化されたマルウェア、標的型攻撃に使用されるようなファイルやURLの場合、無料版の情報だけでは正確な判断が難しいことがあります。
5.4. プライバシーに関する重要な注意点
VirusTotalを利用する上で、最も重要視すべき点の一つがプライバシーに関する取り扱いです。
VirusTotalにアップロードされたファイルや、スキャンされたURLは、VirusTotalのシステムに保存されます。そして、その情報は提携している世界中のアンチウイルスベンダーやセキュリティ機関と共有されます。これは、これらのベンダーが新しい脅威のサンプルを入手し、自社の製品の検知能力を向上させるために行われます。
したがって、以下の点に十分注意してください。
- 機密情報が含まれるファイルは絶対にアップロードしない: 社外秘の文書、個人情報(マイナンバー、クレジットカード情報、パスワードリストなど)、契約書、顧客リストなど、第三者に知られたくない情報が含まれるファイルをVirusTotalにアップロードすることは、情報漏洩のリスクがあります。
- 個人を特定できる情報が含まれるURLはスキャンしない: ログイン後の画面のURL、個人専用のダウンロードリンク、注文履歴画面のURLなど、あなた自身や特定の個人を識別できる情報がURLに含まれている場合、そのURLをスキャンすることであなたの活動が追跡されたり、情報が漏洩したりするリスクがあります。
- 組織内部の非公開URLはスキャンしない: 社内システムやイントラネットのURLなど、一般に公開されていないURLをスキャンすることで、そのURLの存在や構造が外部に知られる可能性があります。
VirusTotalは、公開された、あるいは広く流通している可能性のあるファイルやURLの安全性をチェックするために利用すべきツールです。個人的なファイルや組織の機密情報が含まれるファイル/URLには絶対に使用しないでください。
5.5. VirusTotalを過信しないこと
繰り返しになりますが、VirusTotalは非常に有用なツールですが、万能ではありません。
- 検出数がゼロでも安全ではない: 特に新しい脅威に対しては、全てのエンジンが即座に対応できるわけではありません。
- 誤検知の可能性: 正規のファイルやURLが、誤って悪意があると判定される可能性もゼロではありません。
- 静的分析や挙動分析には限界がある: 特に高度な回避技術を使用するマルウェアは、静的分析を回避したり、サンドボックス環境での挙動分析を検出して動作を停止したりすることがあります。
VirusTotalは、あくまで「安全性を判断するための強力な手がかりを提供するツール」として捉えてください。VirusTotalの結果と合わせて、以下の点も考慮して総合的に判断することが重要です。
- そのファイルやURLはどこから入手しましたか?信頼できる正規の提供元ですか?
- そのファイルやURLは、あなたにとって予期されたものですか?不審なメールの添付ファイルや、見慣れないサイトへのリンクではありませんか?
- 他のセキュリティ対策(OSの更新、セキュリティソフトの導入、ファイアウォール設定など)は適切に実施されていますか?
VirusTotalは、これらの他の対策を補完するツールとして活用することで、その真価を発揮します。
6. 応用例/活用シーン
VirusTotalの無料版は、私たちの日常生活や仕事の中で、様々なシーンで活用できます。いくつか具体的な例を挙げます。
- 不審なメールの添付ファイルをチェックする:
- 見慣れない送信元からのメールに添付ファイルが付いている場合。
- 差出人が知人でも、内容が不自然な場合(例: 請求書のはずがzipファイルでパスワードがかかっているなど)。
- 添付ファイルを直接開く前に、VirusTotalにアップロードしてスキャンします。もし複数のエンジンが悪意ありと判定したら、そのファイルは絶対に開かずに削除します。検出数が少なくても、不審な点があれば開くのは避けるべきです。
- ダウンロードしたソフトウェアをチェックする:
- 公式サイト以外のミラーサイトや、P2Pファイル共有ソフトなどからソフトウェアをダウンロードした場合。
- フリーソフトやシェアウェアなど、提供元があまり知られていないソフトウェアをダウンロードした場合。
- インストールや実行をする前に、VirusTotalにアップロードしてスキャンします。特に実行ファイル(.exe, .msiなど)やインストーラー、圧縮ファイル(.zip, .rarなど)は注意が必要です。
- 不審なメール本文中のリンクをチェックする:
- フィッシング詐欺が疑われるメール(例: 大手企業を装った偽の通知、当選詐欺など)に記載されたURL。
- SNSや掲示板などで見つけた、すぐにアクセスを促すような不審な短縮URL。
- リンクを直接クリックするのではなく、リンクの上にマウスカーソルを置いて表示されるURLを確認し、そのURLをコピーしてVirusTotalのURLタブに貼り付けてスキャンします。これにより、危険なサイトに誤ってアクセスすることを防ぎます。
- アクセスしようとしているウェブサイトをチェックする:
- 初めて訪問するオンラインショップやサービスサイト。
- 検索エンジンの結果に表示された、見慣れないドメイン名のサイト。
- ウェブサイトにアクセスする前に、そのURLをVirusTotalでスキャンして、フィッシングサイトやマルウェア配布サイトとして登録されていないか確認します。
- USBメモリや外部ストレージ内のファイルをチェックする:
- 友人から借りたUSBメモリや、どこかで入手した外部ストレージ内に不審なファイルが含まれていないか確認したい場合。
- 念のため、重要なファイルをコピーしたり開いたりする前にVirusTotalでスキャンします。
- セキュリティ侵害の兆候が見られた場合に、疑わしいファイルをチェックする:
- パソコンの動作が急に遅くなった、身に覚えのないファイルが作成された、見慣れない通信が発生しているなど、マルウェア感染の兆候が見られた場合に、システムのログや不審なプロセスに関連するファイルを特定し、VirusTotalでスキャンしてマルウェアであるか確認します。
これらのシーンでVirusTotalを効果的に活用することで、サイバー脅威に遭遇するリスクを大幅に低減することができます。重要なのは、「少しでも不審に思ったら、まずVirusTotalでチェックする」という習慣を身につけることです。
7. まとめ:VirusTotalを使いこなし、より安全なデジタルライフを
この記事では、無料版のVirusTotalの機能、使い方、スキャン結果の見方、そして利用上の重要な注意点について、詳細に解説しました。
VirusTotalは、世界中の膨大なアンチウイルスエンジンやセキュリティデータベースを活用し、不審なファイルやURLの安全性を多角的に評価できる非常に強力な無料ツールです。単一のセキュリティソフトでは見逃してしまう可能性のある脅威も、VirusTotalを使えば早期に発見できる可能性が高まります。
特に、不審なメールの添付ファイルや本文中のリンク、ダウンロードしたばかりのファイルなどを、実際に開いたりアクセスしたりする前にチェックするという習慣は、サイバー攻撃から身を守る上で非常に有効です。
ただし、VirusTotalは万能ではありません。無料版には機能的な制限があり、検出数がゼロでも100%安全とは限りません。また、プライバシー保護のため、機密情報を含むファイルや個人を特定できるURLは絶対にスキャンしないように注意が必要です。
VirusTotalは、あなたのセキュリティ対策の一つとして、他の対策(OSやソフトウェアの更新、信頼できるセキュリティソフトの導入、複雑なパスワードの設定、不審な要求に応じないなど)と組み合わせて利用することが重要です。VirusTotalの分析結果を参考にしつつ、ファイルやURLの提供元、自身の状況などを総合的に判断してください。
この記事で紹介した使い方や結果の見方を参考に、ぜひVirusTotalを積極的に活用してみてください。それは、あなたのデジタルライフをより安全で安心なものにするための、大きな一歩となるはずです。常に最新の脅威情報を意識し、適切なツールを活用して、自身のデバイスと情報を守りましょう。
免責事項
本記事は、VirusTotalの無料版の一般的な機能と使い方について情報提供のみを目的として記述されたものです。VirusTotalの機能やインターフェースは予告なく変更される可能性があります。また、本記事の情報を利用した結果、またはVirusTotalの利用によって生じたいかなる損害についても、筆者および公開元は一切の責任を負いません。VirusTotalの利用は、ご自身の判断と責任において行ってください。特に、機密情報や個人情報を含むファイル/URLのアップロードには十分ご注意ください。