Steamゲーム中のFPS(フレームレート)を表示させる方法:詳細ガイド
SteamでPCゲームを楽しむ上で、ゲームがどれだけ滑らかに動いているかを知ることは、快適なプレイ体験のために非常に重要です。その指標となるのがFPS(Frames Per Second)、つまり1秒間に表示されるフレーム数です。FPSが高いほど映像は滑らかになり、操作の応答性も向上します。特にアクションゲームや競技性の高いゲームでは、高いFPSを維持することが勝利に繋がることも少なくありません。
しかし、多くのゲーマーは「なんとなくカクつく」「なんだか滑らかじゃない気がする」と感じることはあっても、具体的に自分のゲームがどれくらいのFPSで動作しているのかを知らないことがあります。FPSを数値として把握することで、現在のPCの性能でゲームが快適に動作しているか、あるいはどの設定を変更すればパフォーマンスが改善するのかなど、具体的な対策を講じることができるようになります。
この記事では、Steamゲーム中にFPSを表示させるための様々な方法を、初心者の方でも理解できるように詳細に解説します。Steamクライアントの標準機能を使った簡単な方法から、より多機能でカスタマイズ可能な外部ツールを使う方法まで、それぞれの特徴や設定方法、そしてFPS表示をどのように活用すればゲーム体験が向上するのかを網羅的に説明します。
さあ、あなたのゲームパフォーマンスを視覚化し、より快適なゲーム環境を構築するための第一歩を踏み出しましょう。
1. FPSとは何か?なぜゲームで重要なのか?
記事の本題に入る前に、FPSとは具体的に何を意味し、なぜゲームプレイにおいてこれほど重視されるのかを改めて確認しておきましょう。
FPS (Frames Per Second) は、1秒間に画面が更新される回数、すなわちフレームが描画される回数を示す単位です。例えば、ゲームが60FPSで動作している場合、それは1秒間に60枚の異なる静止画(フレーム)が連続して表示されていることを意味します。
パラパラ漫画をイメージすると分かりやすいでしょう。パラパラ漫画の絵の枚数が多いほど、動きは滑らかに見えます。ゲームにおけるフレームも同様で、1秒間に表示されるフレーム数が多いほど、画面上の動きはより滑らかで自然に感じられます。
なぜFPSがゲームで重要なのか?
- 滑らかさ: 高いFPSは、キャラクターの動き、カメラの視点移動、エフェクトなどが驚くほど滑らかに見えるようにします。特に動きの速いゲームでは、この滑らかさが没入感を高め、視覚的な快適性を提供します。
- 応答性 (Input Lag): FPSが高いほど、あなたの操作(マウスの移動、キーボードの入力など)が画面上のゲームに反映されるまでの時間が短くなります。これは「入力遅延(Input Lag)」と呼ばれ、特に反応速度が要求される対戦ゲームなどでは、入力遅延が少ないほどプレイヤーの意図した動きが即座に反映され、より正確な操作が可能になります。例えば、敵が見えてから射撃ボタンを押すまでの時間が、FPSが高い環境ではわずかに短縮されます。
- 視認性: 動きが滑らかなほど、画面上の小さな変化や素早い動き(敵の出現、キャラクターの動きなど)を捉えやすくなります。これは、特に競技性の高いFPS(First-Person Shooter)やアクションゲームで大きなアドバンテージとなります。
- パフォーマンスの指標: FPSは、あなたのPCのハードウェア(特にGPUとCPU)が、実行しているゲームに対してどれだけの処理能力を持っているかを示す最も直接的な指標の一つです。FPSを見ることで、「このゲームはこのPCにとって重いのか軽いのか」「グラフィック設定を下げることでパフォーマンスがどう変化するのか」などを具体的に把握できます。
- トラブルシューティング: ゲームの動作が不安定になったり、突然カクつくようになったりした場合、FPSを確認することで問題が発生していることを客観的に把握できます。他のPC情報(CPU/GPU使用率、温度など)と合わせて表示することで、パフォーマンス低下の原因(例:PCが熱くなっている、CPU使用率が高いなど)を探る手がかりにもなります。
一般的に、PCゲームにおける快適なプレイの目安として「60FPS」がよく挙げられます。これは、多くのモニターのリフレッシュレート(1秒間に画面が書き換わる回数)が60Hzであるためです。しかし、近年では120Hz、144Hz、さらには240Hzや360Hzといった高リフレッシュレートモニターが普及しており、モニターのリフレッシュレートに対応した高いFPSを出すことで、その真価を発揮できるようになります。例えば、144Hzのモニターを使用している場合、ゲームが144FPSで動作することで、60FPSとは比較にならないほど滑らかな映像を体験できます。
このように、FPSは単なる数値ではなく、ゲーム体験の質を大きく左右する非常に重要な要素です。自分のPCでプレイするゲームがどの程度のFPSで動作しているかを知ることは、最適な設定を見つけ、より快適にゲームを楽しむための第一歩と言えるでしょう。
2. Steam標準機能でFPSを表示する方法
最も手軽で、かつ多くのSteamユーザーにとって最初に試すべき方法が、Steamクライアント自体に搭載されているFPSカウンター機能を利用することです。この機能は、ゲームのオーバーレイとしてFPS値をシンプルに表示してくれます。外部ツールをインストールしたり、複雑な設定をしたりする必要がありません。
Steam標準機能でFPSを表示する手順
この方法は非常に簡単です。以下のステップに従ってください。
- Steamクライアントを起動する: まず、お使いのPCでSteamクライアントアプリケーションを起動し、ログインします。
- 設定メニューを開く: Steamクライアントの左上にあるメニューバーから「Steam」をクリックし、ドロップダウンメニューから「設定」(または「Settings」)を選択します。これにより、Steamの設定ウィンドウが開きます。
- 「ゲーム中」タブを選択する: 設定ウィンドウの左側に様々な設定カテゴリがリスト表示されています。このリストの中から「ゲーム中」(または「In-Game」)という項目を探してクリックします。
- 「ゲーム中のフレームレートカウンター」の設定を探す: 「ゲーム中」の設定画面が表示されます。この画面の中央あたりに、「ゲーム中のフレームレートカウンター」(または「In-Game frame rate counter」)という設定項目があります。初期設定では「オフ」(または「Off」)になっていることが多いでしょう。
- FPSカウンターを有効にする: 「ゲーム中のフレームレートカウンター」のドロップダウンメニューをクリックします。表示される選択肢の中から、FPSカウンターを表示したい画面上の位置を選択します。選択肢は以下の4つです。
- 左上 (Top-left)
- 右上 (Top-right)
- 右下 (Bottom-right)
- 左下 (Bottom-left)
お好みの位置を選択してください。通常は、ゲーム画面の邪魔になりにくい隅を選択します。
- 視認性を向上させる(オプション): FPSカウンターの数値が見えにくい場合に備えて、「高コントラストカラー」(または「High contrast color」)というチェックボックスがあります。このオプションにチェックを入れると、FPSの数値が背景色とのコントラストが強調された色(通常は緑色)で表示され、より見やすくなります。必要に応じてチェックを入れてください。
- 設定を保存する: 設定ウィンドウの右下にある「OK」ボタンをクリックして、変更した設定を保存し、設定ウィンドウを閉じます。
これでSteamクライアント側の設定は完了です。
ゲームを起動して確認する
設定が完了したら、実際にSteamライブラリから任意のゲームを起動してみてください。ゲームが起動し、画面が表示されたら、先ほど設定で指定した画面の隅に、緑色または白の小さな数値が表示されているはずです。これが現在のゲームのFPSです。
ゲーム中にFPSカウンターが邪魔になった場合は、ゲームを終了して再度Steamの設定から「ゲーム中のフレームレートカウンター」を「オフ」に戻すことで非表示にできます。
Steam標準機能のメリットとデメリット
メリット:
- 圧倒的に簡単: 設定は数クリックで完了し、すぐに利用できます。
- 追加費用なし: Steamクライアントに内蔵されている機能なので、無料です。
- ほぼ全てのSteamゲームに対応: Steamオーバーレイに対応しているゲームであれば、基本的に利用できます。
- 非常に軽量: ゲームのパフォーマンスにほとんど影響を与えません。
デメリット:
- 機能が限定的: 表示されるのは現在のFPS値のみです。GPU使用率、CPU使用率、温度、フレームタイムなどの他の重要なパフォーマンス情報は表示できません。
- カスタマイズ性が低い: 表示位置は4隅から選ぶだけ、色も基本色と高コントラストカラーの2種類のみです。フォントのサイズや色、表示する情報の種類などを細かく設定することはできません。
- 情報の詳細さがない: 平均FPS、最低FPS、1% Low FPSといった、より詳細なパフォーマンス指標は表示できません。
Steam標準のFPSカウンターは、とにかく手軽に現在のフレームレートを知りたい、というユーザーに最適な方法です。ゲームが全体的に滑らかかカクつくか、といった大まかな目安を知るには十分な機能と言えます。しかし、より詳細なパフォーマンス情報を知りたい場合や、表示を細かくカスタマイズしたい場合は、後述する外部ツールの利用を検討する必要があります。
3. Steam以外のツールでFPSを表示する方法
Steam標準機能は非常に手軽ですが、表示される情報がFPS値のみであること、そしてカスタマイズ性が低いという欠点があります。ゲームパフォーマンスをより深く理解したり、ボトルネックを特定したりするためには、FPS以外の情報(GPU/CPU使用率、温度、フレームタイムなど)も同時に表示できるツールが非常に役立ちます。
ここでは、多くのPCゲーマーに利用されている代表的なパフォーマンス監視・表示ツールを紹介し、それぞれの特徴やSteamゲームと組み合わせて利用する方法を詳細に解説します。
3.1 NVIDIA GeForce Experience (NVIDIA GPUユーザー向け)
NVIDIA製のグラフィックボード(GeForceシリーズ)を使用しているユーザーであれば、NVIDIAが提供する公式ツール「GeForce Experience」のオーバーレイ機能を利用するのが便利です。GeForce Experienceはドライバーの更新やゲーム設定の最適化といった機能に加え、「ShadowPlay」と呼ばれるオーバーレイ機能を内蔵しており、これを使ってFPSやその他のパフォーマンス指標を表示できます。
導入と設定手順:
- GeForce Experienceのインストール: NVIDIAの公式ウェブサイトからGeForce Experienceをダウンロードし、インストールします。多くの場合、GeForceドライバーをインストールする際に同時にインストールされていることがあります。インストールされているか分からない場合は、Windowsのスタートメニューから検索するか、NVIDIAコントロールパネルから確認できます。
- GeForce Experienceを起動する: インストールされているGeForce Experienceアプリケーションを起動します。
- オーバーレイ機能を有効にする: GeForce Experienceのウィンドウ右上にある歯車アイコン(設定)をクリックします。設定画面の「全般」タブの中に、「ゲーム内のオーバーレイ」(または「In-Game Overlay」)という項目があります。これが有効になっていることを確認します。無効になっている場合は、スイッチをクリックして有効にします。
- パフォーマンスオーバーレイの設定を開く: 有効にした「ゲーム内のオーバーレイ」の項目にある「設定」ボタンをクリックします。これにより、オーバーレイに関する詳細設定画面が開きます。この画面の左側メニューにある「HUDレイアウト」(または「HUD layout」)を選択します。
- パフォーマンスの設定を開く: 「HUDレイアウト」画面の左側メニューに「パフォーマンス」(または「Performance」)という項目があります。これを選択します。
- 表示タイプと位置を選択する: 「パフォーマンス」設定画面で、表示したいパフォーマンスオーバーレイの種類と表示位置を選択します。
- 表示タイプ (Performance Overlay): ドロップダウンメニューから、表示したい情報の詳細レベルを選択できます。
- オフ (Off): オーバーレイを非表示にします。
- 基本 (Basic): FPSのみを表示します。Steam標準機能と同等です。
- 詳細 (Advanced): FPSに加え、GPU使用率、GPU温度、CPU使用率、システムメモリ使用率といった主要なパフォーマンス情報を表示します。
- レイテンシ (Latency): NVIDIA Reflexに対応したゲームで、システム遅延(クリックから画面更新までの時間)を表示します。競技性の高いゲーム向けです。
- カスタム (Custom): 表示する情報を個別に選択し、レイアウトを調整できます。このモードを選ぶと、「カスタム」の右に歯車アイコンが表示され、それをクリックして表示項目を選べます。FPS、GPU使用率、CPU使用率、GPU温度、CPU温度、RAM使用率、GPUクロック、GPU電圧、ファン速度など、非常に多くの項目から選択可能です。
- 位置 (Position): 表示位置を画面の四隅から選択します。
- 表示タイプ (Performance Overlay): ドロップダウンメニューから、表示したい情報の詳細レベルを選択できます。
- 設定を適用する: 設定が完了したら、「戻る」ボタンや設定画面を閉じるボタンをクリックして設定を終了します。変更は自動的に保存されます。
ゲームを起動して確認する
設定後、Steamからゲームを起動すると、指定した位置にパフォーマンスオーバーレイが表示され、FPSや選択したその他の情報がリアルタイムで更新されます。
オーバーレイの表示/非表示 ショートカット:
デフォルトでは、ゲーム中に「Alt + Z」キーを押すことでGeForce Experienceのオーバーレイメニューを呼び出すことができます。このメニューからパフォーマンスオーバーレイの表示/非表示を切り替えたり、設定を一時的に変更したりできます。また、「Alt + R」キーで直接パフォーマンスオーバーレイの表示タイプや位置を切り替えることも可能です(これは設定で変更できます)。
GeForce Experience オーバーレイのメリットとデメリット
メリット:
- NVIDIA GPUに最適化: 同じメーカーのハードウェアとソフトウェアなので、連携がスムーズです。
- 多機能: FPSだけでなく、GPU/CPU使用率、温度など、ゲームパフォーマンスを理解する上で重要な情報も表示できます。
- 他のオーバーレイ機能との連携: 録画機能 (ShadowPlay)、配信機能、ハイライト自動保存機能など、他の便利なオーバーレイ機能も利用できます。
- 比較的設定が簡単: MSI Afterburnerなどに比べると、設定項目が整理されており分かりやすいです。
デメリット:
- NVIDIA GPUが必須: AMDやIntelのGPUを使用している場合は利用できません。
- Steam標準機能よりはリソースを消費する: 多機能である分、Steam標準機能よりはわずかにPCのリソースを使用します。ただし、ほとんどの環境では無視できるレベルです。
- 表示のカスタマイズ性はMSI Afterburner+RTSSに劣る: フォントの種類やサイズ、個別の表示項目の色などを細かく設定することはできません(カスタムレイアウトでの項目選択は可能ですが、表示スタイルの自由度は低い)。
NVIDIA GeForce Experienceは、NVIDIA GPUユーザーにとって、FPS表示だけでなくゲームパフォーマンス全般を把握するための非常に優れた選択肢です。ドライバー管理と一体化している点も利便性が高いです。
3.2 AMD Radeon Software (AMD GPUユーザー向け)
AMD製のグラフィックボード(Radeonシリーズ)を使用しているユーザーは、AMDが提供する公式ツール「Radeon Software」のオーバーレイ機能を利用できます。GeForce Experienceと同様に、Radeon Softwareもドライバーの更新やゲーム設定の最適化といった機能に加え、ゲーム中のパフォーマンス監視オーバーレイ機能(Radeon Overlay)を備えています。
導入と設定手順:
- Radeon Softwareのインストール: AMDの公式ウェブサイトから最新のRadeon Softwareをダウンロードし、インストールします。Radeonドライバーをインストールする際に通常含まれています。
- Radeon Softwareを起動する: インストールされているRadeon Softwareアプリケーションを起動します。
- パフォーマンス設定を開く: Radeon Softwareのウィンドウ上部にあるメニューから「パフォーマンス」(または「Performance」)を選択します。
- オーバーレイを有効にする: パフォーマンス設定画面の左側メニューにある「オーバーレイ」(または「Overlay」)を選択します。ここで、「メトリクスオーバーレイを表示」または「Display Metrics Overlay」という項目を探し、スイッチを「有効」(Enabled)にします。
- メトリクスの表示項目を選択する: 有効にした「メトリクスオーバーレイ」の項目にある「メトリクスの選択」(または「Select Metrics」)ボタンをクリックします。これにより、オーバーレイに表示したいパフォーマンス項目のリストが表示されます。
- リストの中から、表示したい項目にチェックを入れます。「FPS」(または「Frames Per Second」)はもちろんのこと、GPU使用率、GPU温度、CPU使用率、CPU温度、VRAM使用量、RAM使用量、GPUクロック、CPUクロックなど、様々な情報を選択できます。
- オーバーレイの詳細設定: 「オーバーレイ」設定画面に戻り、その他の設定を調整します。
- オーバーレイ位置 (Overlay Position): 表示位置を画面の四隅から選択します。
- 透過性 (Transparency): オーバーレイの背景の透明度を調整できます。
- 表示期間 (Sampling Interval): パフォーマンス情報を更新する頻度をミリ秒単位で設定できます(デフォルトのままで問題ないことが多いです)。
- カスタム化オプション: 一部のバージョンでは、テキストの色やサイズなどをカスタマイズするオプションが提供されていることがあります。
- 設定を適用する: 設定画面を閉じます。変更は自動的に保存されます。
ゲームを起動して確認する
設定後、Steamからゲームを起動すると、指定した位置にRadeon Overlayが表示され、選択したパフォーマンス情報(FPS含む)がリアルタイムで更新されます。
オーバーレイの表示/非表示 ショートカット:
デフォルトでは、ゲーム中に「Alt + R」キーを押すことでRadeon Overlayを呼び出すことができます。このオーバーレイ上で、パフォーマンスメトリクスの表示/非表示を切り替えたり、設定を変更したりできます。
AMD Radeon Software オーバーレイのメリットとデメリット
メリット:
- AMD GPUに最適化: NVIDIAと同様、同じメーカーのハードウェアとソフトウェアなのでスムーズな連携が期待できます。
- 多機能: FPSだけでなく、GPU/CPU使用率、温度、VRAMなど、ゲームパフォーマンスの監視に必要な多くの情報を表示できます。
- 他のRadeon Software機能との連携: 録画機能、配信機能、Radeon Chill(FPS制限)、Radeon Boost(解像度動的調整)など、他の便利な機能と組み合わせて利用できます。
- 設定が比較的簡単: GeForce Experienceと同様、MSI Afterburnerなどに比べると設定は分かりやすい部類です。
デメリット:
- AMD GPUが必須: NVIDIAやIntelのGPUを使用している場合は利用できません。
- Steam標準機能よりはリソースを消費する: やはりSteam標準機能よりはわずかにPCリソースを使用しますが、通常は無視できるレベルです。
- 表示のカスタマイズ性はMSI Afterburner+RTSSに劣る: 表示項目は豊富ですが、フォントの種類やサイズ、色の自由な変更といったカスタマイズ性は限定的です。
AMD Radeon Softwareは、AMD GPUユーザーにとって、ゲームパフォーマンスを監視し、同時にRadeon Softwareの様々な便利機能を活用するための統合的なツールとして非常に有効です。
3.3 MSI Afterburner + RivaTuner Statistics Server (RTSS)
MSI Afterburnerは、GPUのオーバークロック、電圧調整、ファン制御など、詳細なハードウェア設定や監視を行うための非常に人気の高いツールです。そして、このMSI Afterburnerに同梱されている「RivaTuner Statistics Server (RTSS)」こそが、強力かつカスタマイズ性の高いゲーム内オーバーレイ(OSD: On-Screen Display)機能を提供しています。
MSI Afterburner + RTSSの組み合わせは、GPUメーカーを問わず利用できる上、表示できる情報量とカスタマイズ性の高さにおいて、他のツールを凌駕する存在と言えます。Steamゲームを含む、多くのPCゲームで利用可能です。
導入と設定手順:
このツールは多機能ゆえに設定項目が多く、他のツールに比べてやや複雑ですが、その分得られる情報や自由度は格段に向上します。
- MSI Afterburnerのダウンロードとインストール: MSIの公式ウェブサイトなどからMSI Afterburnerの最新版をダウンロードします。ダウンロードしたファイルを実行し、インストールを進めます。
- インストール中に、「RivaTuner Statistics Server」も同時にインストールするかどうかを尋ねられます。必ずRTSSにもチェックを入れて、両方ともインストールしてください。 Afterburner単体ではオーバーレイ機能は使えません。
- MSI Afterburnerを起動する: インストール完了後、MSI Afterburnerを起動します。通常はメインウィンドウと、タスクトレイにRTSSのアイコンが表示されます。
- MSI Afterburnerの設定を開く: MSI Afterburnerのメインウィンドウにある歯車アイコン(Settings)をクリックします。
- 「モニタリング」タブで表示したい項目を選択する: 設定ウィンドウの左側にあるタブから「モニタリング」(または「Monitoring」)を選択します。
- このタブには、GPU温度、GPU使用率、コアクロック、メモリクロック、ファン速度、CPU温度、CPU使用率、RAM使用率、フレームレート(FPS)、フレームタイムなど、非常に多くのパフォーマンス項目がリストアップされています。
- オーバーレイ(OSD)に表示したい項目の横にあるチェックボックスにチェックを入れます。
- 非常に重要な設定: チェックを入れた各項目のリスト上で項目を選択し、その下にある「On-Screen Displayに表示」(または「Show in On-Screen Display」)というチェックボックスにも必ずチェックを入れます。このチェックを入れないと、その項目はOSDに表示されません。FPS、GPU使用率、CPU使用率、GPU温度、CPU温度、RAM使用率、フレームタイムあたりをチェックしておくと、ゲームパフォーマンスの全体像を把握しやすくなります。
- 「On-Screen Display」タブでOSDの設定を行う: 設定ウィンドウの左側にあるタブから「On-Screen Display」(または「OSD」)を選択します。
- OSDの表示/非表示 ショートカット: 「Toggle On-Screen Display」の項目で、OSDの表示/非表示を切り替えるためのキーボードショートカットを設定できます(デフォルトでは「Ctrl + Shift + O」などになっています)。覚えやすいキーに設定しておくと便利です。
- その他ショートカット: FPS制限の切り替え、ベンチマーク開始/終了など、他の便利なショートカットもここで設定できます。
- 設定を保存してMSI Afterburnerの設定ウィンドウを閉じる: 「OK」ボタンをクリックして設定を保存し、MSI Afterburnerの設定ウィンドウを閉じます。MSI Afterburnerは閉じるボタンを押しても通常はタスクトレイに常駐します。
- RivaTuner Statistics Server (RTSS) を設定する: タスクトレイにあるRTSSのアイコン(通常は黄色の「60」のような数字アイコン)をダブルクリックして、RTSSのウィンドウを開きます。
- RTSSでオーバーレイの外観と位置を設定する: RTSSのウィンドウで、オーバーレイ(OSD)の外観と位置を細かく設定します。
- Show On-Screen Display: このスイッチがオン(緑色)になっていることを確認します。オフになっているとOSDは表示されません。
- On-Screen Display support: ゲームによっては「Off」「Support」「Low」「Medium」「High」などの互換性レベルを選択する必要がある場合があります。多くのゲームでは「Support」または「Medium」で問題なく動作します。
- On-Screen Display zoom: OSD全体の表示サイズを調整できます。
- On-Screen Display coordinate space: OSDの表示位置の基準を設定します(Viewportが一般的です)。
- On-Screen Display position: OSDの表示位置をドラッグして自由に設定できます。画面のどの位置にでも配置可能です。また、座標を指定して正確な位置に配置することもできます。
- Palette: 表示する各項目の色を設定できます。MSI Afterburnerのモニタリングタブで「グループ表示スタイル」を有効にしていると、複数の項目をまとめて同じ色で表示できます。
- Font: OSDのフォントの種類とサイズを選択できます。
- Graph settings: MSI Afterburnerのモニタリングタブで「グラフ表示」を有効にしている項目(例: フレームタイム)がある場合、そのグラフの表示設定をここで行います。グラフのサイズや表示項目、色などを細かく調整できます。特にフレームタイムのグラフは、カクつき(スタッター)の有無を視覚的に判断するのに非常に役立ちます。
- 設定を保存してRTSSウィンドウを閉じる: RTSSの設定は自動的に保存されるか、ウィンドウを閉じる際に確認されることがあります。ウィンドウを閉じてもRTSSはタスクトレイに常駐し続けます。
ゲームを起動して確認する
MSI AfterburnerとRTSSがタスクトレイで実行されている状態で、Steamからゲームを起動します。ゲームが起動すると、RTSSで設定した位置とスタイルで、MSI Afterburnerで選択した様々なパフォーマンス情報(FPS含む)が表示されているはずです。
もし表示されない場合は、以下の点をチェックしてみてください。
* MSI AfterburnerとRTSSが両方とも起動し、タスクトレイに常駐しているか。
* MSI Afterburnerの「モニタリング」タブで、表示したい項目にチェックを入れ、「On-Screen Displayに表示」にもチェックを入れているか。
* RTSSの「Show On-Screen Display」がオンになっているか。
* ゲームによってはRTSSとの互換性設定が必要な場合があります。RTSSのゲームリスト(左側のリスト)にゲームを追加し、On-Screen Display supportのレベルを調整してみてください。
MSI Afterburner + RTSSのメリットとデメリット
メリット:
- GPUメーカーを問わない: NVIDIA、AMD、Intelなど、ほぼ全てのグラフィックボードで利用できます。
- 圧倒的な情報量とカスタマイズ性: FPSだけでなく、フレームタイム、GPU/CPU/RAMの詳細な使用率、温度、クロック、ファン速度など、非常に多くの情報を表示できます。表示位置、サイズ、色、フォントなども自由に設定できます。
- フレームタイムグラフ: カクつきの発生原因を特定するのに役立つフレームタイムの推移をグラフで表示できます。
- フレームレート制限機能: ゲーム内オプションにFPS制限がない場合でも、RTSSで安定したFPSに制限することで、GPUの過負荷や無駄な発熱を防ぐことができます。
- その他機能: MSI Afterburnerの機能(オーバークロック、ファン制御、ベンチマーク記録など)も利用できます。
デメリット:
- 設定がやや複雑: 他のツールに比べて設定項目が多く、慣れるまで時間がかかるかもしれません。
- インストールが二段階: AfterburnerとRTSSの両方をインストール・設定する必要があります。
- 稀にゲームとの互換性問題: 一部のゲーム、特にオンラインゲームでは、チートツールと誤認されて問題が発生する可能性がゼロではありません(ただし、RTSSは広く使われているツールであり、ほとんどの有名ゲームでは問題なく動作します)。オンラインゲームで使用する際は、念のためリスクを理解しておきましょう。
- 他のツールよりリソースを消費する可能性: 表示項目を増やしたり、グラフを表示したりすると、他の軽量なツールよりもわずかに多くのシステムリソースを消費する可能性があります。
MSI Afterburner + RTSSは、ゲームパフォーマンスを徹底的に分析し、最適な設定を追求したいヘビーゲーマーにとって、間違いなく最も強力なツールの一つです。少し設定は手間がかかりますが、それを補って余りあるほどの機能と自由度を提供してくれます。
3.4 その他のFPS表示方法
上記で紹介した主要なツール以外にも、いくつかFPSを表示する方法が存在します。
- Windows Game Bar (Xbox Game Bar): Windows 10以降に標準搭載されている機能です。ゲーム中に「Windowsキー + G」を押すと表示されるオーバーレイの中に、パフォーマンスウィジェットがあります。このウィジェットでFPS、CPU使用率、GPU使用率、RAM使用率などを表示できます。
- 設定方法: Windowsの設定アプリを開き、「ゲーム」→「Xbox Game Bar」から有効にできます。Game Bar起動中にパフォーマンスウィジェットを右クリックし、ピン留めアイコンをクリックすると、Game Barを閉じた後もゲーム画面上にウィジェットを表示させ続けることができます。
- 特徴: OS標準機能なので導入は不要ですが、カスタマイズ性は低く、表示される情報も限定的です。
- 特定のゲーム内蔵コンソールコマンド: 一部のPCゲーム、特にSource Engineを使用したゲーム(例: CS:GO, Team Fortress 2, Dota 2)やQuake Engine系のゲーム、その他多くのオンラインゲームでは、ゲーム内のコンソール(開発者コンソール)を開いて特定のコマンドを入力することで、FPSカウンターを有効にできます。
- 例 (CS:GO): ゲーム内でコンソールを開き(設定でコンソールキー割り当てが必要)、
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と入力するとFPSが表示されます。net_graph 1
と入力すると、FPSに加えてピング、レート、ティックレートなどのネットワーク情報も詳細に表示されます。 - 特徴: そのゲーム専用の機能なので、ゲームに最適化されており非常に正確な情報が得られます。表示のカスタマイズ性はゲームによります。他のゲームでは使えません。
- 例 (CS:GO): ゲーム内でコンソールを開き(設定でコンソールキー割り当てが必要)、
- Steam Deckのパフォーマンスオーバーレイ: Steam Deckは独自のSteamOS上で動作しますが、このOS自体にパフォーマンスオーバーレイ機能が内蔵されています。クイックアクセスメニューからパフォーマンスオーバーレイのレベルを選択することで、FPSやGPU/CPU使用率などを表示できます。
- 特徴: Steam Deck専用の機能です。
これらの方法も、状況に応じて活用することができます。特にゲーム内コンソールコマンドは、そのゲームをプレイする上で最も正確で軽量なFPS表示方法であることが多いです。
4. FPS表示の重要性と活用
ここまで、Steamゲーム中にFPSを表示させるための様々な具体的な方法を解説しました。Steam標準機能の手軽さ、GeForce Experience/Radeon Softwareのメーカー最適化、MSI Afterburner + RTSSの多機能性とカスタマイズ性、それぞれの特徴を理解し、あなたの環境や目的に合ったツールを選んでください。
しかし、FPSをただ表示するだけでは不十分です。表示されたFPSという数値をどのように理解し、ゲーム体験の向上に繋げるかが重要になります。ここでは、FPS表示の重要性を改めて確認し、それをどのように活用できるのかを掘り下げて解説します。
4.1 パフォーマンスの評価とボトルネックの特定
FPS表示の最も基本的な役割は、現在のPCでゲームがどれだけ快適に動作しているかを客観的に評価することです。
- 目標FPSの達成度確認: あなたが目標としているFPS(例: モニターのリフレッシュレートである60FPSや144FPSなど)が安定して出ているかを確認します。もし目標を下回っている、あるいはFPSが大きく変動する場合は、パフォーマンスに問題があることを示唆しています。
- 設定変更の効果測定: ゲーム内のグラフィック設定(解像度、テクスチャ品質、影の品質、アンチエイリアシングなど)を変更するたびに、FPSがどのように変化するかを確認します。これにより、どの設定がパフォーマンスに最も大きな影響を与えるのかを把握し、画質とパフォーマンスのバランスを取りながら最適な設定を見つけることができます。例えば、「影の品質をUltraからHighに下げたらFPSが20上がった」といった具体的な効果を確認できます。
- ボトルネックの特定: FPSが低い場合、その原因がPCのどのパーツにあるのかを特定する手がかりとして、FPS表示は非常に役立ちます。特に、MSI Afterburner + RTSSやGeForce Experience/Radeon Softwareのように、FPSと同時にGPU使用率、CPU使用率、温度などを表示できるツールが威力を発揮します。
- GPUボトルネック: FPSが低い状況で、GPU使用率が95%〜100%に張り付いている場合、多くの場合GPUがボトルネックとなっています。これは、GPUが処理能力の限界までフレームを描画しようとしていることを意味します。この場合、グラフィック設定を下げる、解像度を下げる、あるいはより高性能なGPUに交換することでパフォーマンスが向上する可能性があります。
- CPUボトルネック: FPSが低い状況で、GPU使用率が比較的低い(例: 60%以下など)にも関わらず、CPU使用率が高い(特にシングルスレッド性能が重要なゲームでは、特定のコアの使用率が100%に近いなど)場合、CPUがボトルネックとなっている可能性があります。これは、CPUが次のフレームの準備に時間がかかっているため、GPUがフル稼働できていないことを意味します。この場合、CPUに負荷をかける設定(NPCの数、物理演算、描画距離など)を下げる、あるいはより高性能なCPUに交換することでパフォーマンスが向上する可能性があります。
- その他のボトルネック: RAMの容量不足、ストレージの速度、過熱によるサーマルスロットリングなどもパフォーマンス低下の原因となります。RAM使用率や温度などを同時に監視することで、これらの要因も考慮に入れたトラブルシューティングが可能になります。
このように、FPSだけでなく他のパフォーマンス情報も合わせて表示・分析することで、あなたのPCのどの部分がゲームの足を引っ張っているのかを具体的に把握し、効果的な対策を講じることができるようになります。
4.2 トラブルシューティングとパフォーマンスの安定化
ゲーム中に予期せぬカクつきやフレームレートの急激な低下が発生した場合、FPS表示は問題の切り分けに不可欠な情報源となります。
- 問題発生の確認: まず、FPSが実際に低下していることを数値として確認します。「なんとなく」ではなく、「以前は安定して60FPS出ていたのに、今は40FPSまで落ち込んでいる」といった具体的な状況を把握できます。
- 原因の絞り込み: FPSの低下と同時に、他のパフォーマンス情報(GPU/CPU使用率、温度など)がどのように変化しているかを確認します。例えば、
- FPS低下と同時にGPU温度が急上昇している → 過熱によるサーマルスロットリングの可能性。
- FPS低下と同時にCPU使用率が急上昇している → バックグラウンドでCPUリソースを消費するプロセスが起動した可能性。
- FPSは安定しているが、フレームタイムが大きくばらついている → スタッター(カクつき)の原因は単なる低FPSではなく、フレームの生成間隔の不安定さにある。
このように、複数の情報を組み合わせることで、問題の原因をより正確に推測できます。
- 安定性の評価: 単に平均FPSが高いだけでなく、FPSの「安定性」も重要です。FPSが頻繁に大きく変動すると、ゲーム画面がぎこちなく見えたり、操作感が不安定になったりします。最低FPS(ゲーム中に記録された最も低いFPS値)や、1% Low FPS/0.1% Low FPS(全体のフレームの中で下位1%/0.1%にあたるフレームのFPS値)といった指標は、パフォーマンスの安定性を示すのに役立ちます。MSI Afterburner + RTSSのようなツールは、これらの指標を計算・表示する機能を持っている場合があります。
4.3 最適な設定の発見
PCゲームには、グラフィック設定に関する非常に多くのオプションがあります。これらの設定は、見た目の品質とパフォーマンスのどちらに重点を置くかによって調整する必要があります。FPS表示は、このバランスを取るための強力なガイドとなります。
- 設定変更の試行錯誤: 解像度、テクスチャ品質、影、反射、アンチエイリアシング、ポストプロセスエフェクトなど、様々な設定項目を一つずつ変更してみて、FPSへの影響を確認します。
- 例: 「影の品質をUltraからHighにしても見た目の違いはほとんど分からないのに、FPSが10上がった。これは良いトレードオフだ。」
- 例: 「アンチエイリアシングを最高のオプションにしたらFPSが大幅に落ちた。見た目の改善に見合わないので、一つ下のオプションにしよう。」
- 視覚的忠実度とパフォーマンスのバランス: 自分のPCの性能と、自分がどこまでの画質を許容できるか、そしてどれくらいのFPSを目標とするかという点に基づいて、最適な設定の組み合わせを見つけます。FPS表示は、この「最適なバランス」を客観的に判断するための基準となります。
- 新しいテクノロジーの活用: DLSS (NVIDIA)、FSR (AMD)、XeSS (Intel) といったアップスケーリング技術や、レイトレーシングなどの新しいグラフィック機能を使用する際にも、その効果(見た目の変化とFPSへの影響)を具体的に確認するためにFPS表示が不可欠です。例えば、DLSSをQualityモードで有効にすることで、見た目をほとんど損なわずにFPSが大幅に向上することを確認できます。
4.4 ゲーム体験の向上
最終的に、FPS表示を活用する目的は、より快適で満足のいくゲーム体験を得ることにあります。
- 滑らかな映像と応答性の向上: 安定した高いFPSでゲームをプレイすることで、映像は驚くほど滑らかになり、キャラクターの動きやカメラ操作が意図通りに素早く反映されるようになります。これは、特に素早い反応が求められる対戦ゲームやアクションゲームで、より有利に、そしてよりストレスなくプレイできることを意味します。
- 没入感の向上: カクつきやスタッターは、ゲームへの没入感を大きく損ないます。FPSやフレームタイムを監視し、パフォーマンスを安定させることで、ゲーム世界への没入感を高めることができます。
- PC環境の最適化へのモチベーション: FPSが表示されていることで、「あと少し設定を調整すれば60FPSを安定させられる」「このパーツをアップグレードすれば144FPSが出せるようになるかもしれない」といった具体的な目標が生まれ、PC環境をさらに最適化しようというモチベーションに繋がります。
FPS表示は単なる数値の羅列ではありません。それは、あなたのPCとゲームがどのように連携しているかを示す「健康診断」のようなものです。この情報を正しく読み取り、活用することで、あなたはより快適で、より楽しく、そして場合によってはより有利なゲームプレイを実現できるのです。
5. FPSが低下した場合のトラブルシューティング
FPSを表示してゲームをプレイしていると、「あれ?いつもよりFPSが低いな」「急にカクつき始めた」といったパフォーマンスの低下に気づくことがあるでしょう。FPS表示はこの問題を発見するのに役立ちますが、さらに一歩進んで、その原因を特定し、対策を講じる必要があります。
ここでは、Steamゲーム中のFPSが低下した場合に考えられる一般的な原因と、それに対する具体的なトラブルシューティングの手順を解説します。FPS表示ツールで同時にCPU/GPU使用率や温度なども監視していると、原因の特定に役立ちます。
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PCの再起動: 最も基本的ですが、意外と効果的な方法です。一時的なシステムエラーや、バックグラウンドで実行されている不要なプロセスなどが原因でパフォーマンスが低下している場合があります。PCを再起動することで、システムがリフレッシュされ、これらの問題が解消されることがあります。
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グラフィックドライバーの更新: グラフィックボードのドライバーは、ゲームパフォーマンスに最も大きな影響を与えるソフトウェアの一つです。古いドライバーは、新しいゲームで最適なパフォーマンスを発揮できないだけでなく、互換性の問題を引き起こすこともあります。
- NVIDIA GeForce: GeForce Experienceアプリからドライバーのアップデートを確認できます。または、NVIDIAのウェブサイトから最新ドライバーをダウンロードして手動でインストールします。
- AMD Radeon: Radeon Softwareアプリからドライバーのアップデートを確認できます。または、AMDのウェブサイトから最新ドライバーをダウンロードして手動でインストールします。
- Intel: Intel Driver & Support Assistantツールを使用するか、Intelのウェブサイトから最新ドライバーをダウンロードします。
ドライバーを更新する際は、以前のドライバーをクリーンインストールするオプションを選択すると、古い設定ファイルなどが残らず、より安定した結果が得られることが多いです。
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ゲーム設定の見直し: FPSが低下した場合、まず疑うべきはゲーム内のグラフィック設定です。
- 解像度: 設定できる中で最もパフォーマンスへの影響が大きい項目の一つです。解像度を一段階下げる(例: 4Kから1440p、1440pから1080p)だけで、FPSが劇的に向上することがあります。
- グラフィック品質プリセット: ゲームによっては「低」「中」「高」「最高」といったプリセットが用意されています。まずこれを「中」や「低」に下げてみて、FPSが改善するか確認します。
- 個別の設定項目: 特にパフォーマンスへの影響が大きいとされる項目(影の品質、反射、環境遮蔽、アンチエイリアシング、ポストプロセスエフェクトなど)を個別に下げてみて、FPSへの影響を確認します。MSI Afterburnerなどのツールで設定変更ごとのFPSの変化を確認しながら調整すると効率的です。
- Vsync (垂直同期): Vsyncが有効になっていると、モニターのリフレッシュレート以上のFPSは出なくなります。また、環境によってはVsyncが原因でスタッターが発生することもあります。Vsyncをオフにしてみるか、G-Sync/FreeSyncといった可変リフレッシュレート技術を利用している場合は正しく設定されているか確認します。
- レイトレーシング/DLSS/FSR: これらの技術は高度な描画やアップスケーリングを行います。レイトレーシングを有効にしている場合はオフにしてみる、DLSS/FSRを使用している場合はQualityモードからBalanced/Performanceモードに変更してみる、といった調整も有効です。
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バックグラウンドプロセスの終了: ゲーム中にCPUやRAM、ストレージなどのリソースを大量に消費している他のアプリケーションやプロセスがないか確認します。
- タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)を開き、「プロセス」タブでCPU、メモリ、ディスク、GPUなどの使用率が高いプロセスを確認します。
- ゲーム中に不要なアプリケーション(ウェブブラウザ、動画再生ソフト、ファイルダウンロードソフトなど)は可能な限り終了させます。
- Windows Updateや他のソフトウェアのアップデートがバックグラウンドで実行されている場合、パフォーマンスに影響することがあります。
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PCの温度確認と冷却: PCのパーツ(特にGPUとCPU)が高温になりすぎると、性能を意図的に抑制する「サーマルスロットリング」が発生し、FPSが大幅に低下することがあります。
- MSI Afterburnerなどのツールでゲーム中のGPU温度とCPU温度を監視します。一般的な目安として、GPUは80℃、CPUは90℃を超えると注意が必要です(ただしパーツによって異なります)。
- PCケース内のエアフロー(空気の流れ)が良いか確認します。ファンが正常に動作しているか、吸気口や排気口がホコリで詰まっていないかを確認・清掃します。
- ラップトップの場合、冷却台を使用したり、より換気の良い場所でプレイしたりすることが有効です。
- デスクトップの場合、ケースファンの増設や、CPUクーラー/GPUクーラーの交換なども検討できます。
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ストレージの空き容量: システムドライブ(通常Cドライブ)やゲームがインストールされているドライブの空き容量が極端に少ないと、ゲームのロード時間が増加したり、ゲーム中に必要なデータを一時的に保存する際にパフォーマンスが低下したりすることがあります。不要なファイルを削除して空き容量を確保します。
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OSのアップデート: WindowsのOS自体にパフォーマンス改善やバグ修正が含まれている場合があります。最新のWindows Updateが適用されているか確認します。
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ゲームファイルの整合性確認: ゲームファイルの一部が破損したり、欠落したりしている場合、ゲームが不安定になったり、パフォーマンスが低下したりすることがあります。
- Steamライブラリから該当ゲームを選択し、右クリックメニューから「プロパティ」を開きます。
- 「インストール済みのファイル」(または「Local Files」)タブを選択し、「ゲームファイルの整合性を確認…」(または「Verify integrity of game files…」)ボタンをクリックします。Steamがゲームファイルをチェックし、問題があれば自動的に修正してくれます。
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電源設定: Windowsの電源設定が「省電力」になっている場合、PCのパフォーマンスが制限されることがあります。
- Windowsの設定アプリを開き、「システム」→「電源とスリープ」→「電源の追加設定」を開きます。
- 「高パフォーマンス」または「究極のパフォーマンス」(Windows 10/11 Pro/Pro for Workstationsなど一部エディションのみ)を選択します。ノートPCの場合は、電源に接続した状態でこの設定が適用されているか確認します。
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ハードウェアの確認: 上記のソフトウェア的な対策や簡単な清掃などで改善しない場合、ハードウェア自体に問題がある可能性も考えられます。
- CPUやGPUがゲームの推奨スペックを満たしているか再確認します。
- CPUやGPUの取り付け、電源ケーブルの接続などが正しく行われているか確認します(PC内部を開ける作業に不安がある場合は専門家に依頼しましょう)。
- メモリ(RAM)やストレージ(SSD/HDD)に異常がないか、Windowsのメモリ診断ツールやS.M.A.R.T.情報などで確認することもできます。
- ボトルネックとなっている可能性のあるパーツ(GPUやCPU)のアップグレードを検討します。
FPS表示でパフォーマンス低下の兆候を捉え、これらのトラブルシューティング手順を段階的に試していくことで、多くのパフォーマンス問題を解決できるはずです。
6. FPSに関連するその他の重要な概念
ゲームパフォーマンスを真に理解するためには、FPSだけでなく、それに密接に関連する他の概念についても知っておくことが役立ちます。FPS表示ツールの中には、これらの情報も同時に表示できるものがあります。
6.1 フレームタイム (Frame Time)
FPSが1秒間に表示されるフレームの「平均的な」数であるのに対し、フレームタイムは個々のフレームが表示されるまでにかかった時間です。通常ミリ秒(ms)単位で表されます。例えば、60FPSは理論上1フレームあたり約16.67ms(1000ms / 60フレーム)で表示されていることになります。
なぜフレームタイムが重要なのか?
ゲームが平均60FPSで動作していても、もしフレームタイムが例えば10ms、30ms、10ms、30ms…と大きく変動している場合、画面はカクついて見えます。これは「スタッター」と呼ばれます。
FPSが平均値しか示さないのに対し、フレームタイムはフレーム間の間隔の「ばらつき」を示します。フレームタイムのグラフ(MSI Afterburner+RTSSでよく表示される)がフラットで安定しているほど、ゲーム画面は滑らかに感じられます。グラフが大きくギザギザしている場合は、スタッターが発生している可能性が高いです。
したがって、真に滑らかなゲーム体験のためには、単に高いFPSを出すだけでなく、フレームタイムを安定させることも非常に重要です。
6.2 Vsync (垂直同期)
Vsyncは、ゲームのフレームレートとモニターのリフレッシュレートを同期させる技術です。これを有効にすると、グラフィックボードはモニターが新しいフレームを表示する準備ができるまで、次のフレームの表示を待機します。
なぜVsyncを使うのか?
Vsyncを無効にしていると、グラフィックボードがモニターのリフレッシュレートよりも速くフレームを生成した場合、モニターが画面を書き換えている途中で次のフレームが送られてくることがあります。これにより、画面の上半分と下半分で異なるフレームが表示される「ティアリング」(画面の分断)と呼ばれる現象が発生します。Vsyncはこれを防ぎ、滑らかな画面表示を実現します。
VsyncがFPSに与える影響
Vsyncを有効にすると、ゲームのFPSはモニターのリフレッシュレートを超えることがなくなります(例: 60Hzモニターなら最大60FPS)。これは、せっかくPCが高性能でも、それ以上のFPSが出せなくなることを意味します。また、Vsyncの仕組み上、わずかな入力遅延が発生することがあります。
代替技術
ティアリングを防ぎつつ、入力遅延を最小限に抑え、高FPSを活かせる技術として、NVIDIAのG-SyncやAMDのFreeSyncといった「可変リフレッシュレート(VRR)」技術があります。対応するグラフィックボードとモニターを組み合わせることで利用でき、モニターのリフレッシュレートをゲームのフレームレートに合わせて動的に変動させることで、ティアリングやスタッターを軽減し、滑らかな表示を実現します。
6.3 リフレッシュレート (Refresh Rate)
リフレッシュレートは、モニターが1秒間に画面の内容を何回更新できるかを示す数値で、Hz(ヘルツ)単位で表されます。60Hzのモニターは1秒間に60回、144Hzのモニターは1秒間に144回画面を更新できます。
リフレッシュレートとFPSの関係
どんなに高いFPSが出ていても、モニターのリフレッシュレートが低ければ、実際に目に映る映像の滑らかさには限界があります。例えば、ゲームが200FPSで動作していても、60Hzのモニターを使っている場合、モニターは1秒間に60枚しか新しいフレームを表示できません。したがって、200FPSの性能を活かしきるには、144Hzや240Hzといった高リフレッシュレートのモニターが必要です。
高リフレッシュレートモニターを使用している場合は、Windowsのディスプレイ設定でモニターのリフレッシュレートが正しく設定されているか確認することが重要です。
6.4 解像度とグラフィック設定
ゲームの解像度(例: 1920×1080, 2560×1440, 3840×2160など)や、テクスチャ品質、影の品質、アンチエイリアシングなどのグラフィック設定は、グラフィックボードの処理負荷に直接影響し、FPSに大きく影響します。一般的に、解像度が高いほど、グラフィック設定が高いほど、グラフィックボードへの負荷は増加し、FPSは低下します。
FPS表示は、これらの設定項目とパフォーマンスの関係を理解し、自分のPC性能とモニターのリフレッシュレート、そして自分が求める画質と滑らかさのバランスを取りながら、最適な設定を見つけるための羅針盤となります。
これらの関連概念を理解することで、単にFPSの数値を見るだけでなく、ゲームがなぜ特定のフレームレートで動作しているのか、そしてそれを改善するためには何をすれば良いのか、といったより深い洞察を得ることができるようになります。
7. まとめ
この記事では、Steamゲーム中にFPS(フレームレート)を表示させる様々な方法について、詳細に解説してきました。
まず、FPSがゲーム体験においていかに重要であるか、滑らかさ、応答性、視認性、そしてパフォーマンス評価の指標として不可欠であることを説明しました。
次に、最も手軽な方法であるSteam標準機能を使ったFPS表示方法をステップバイステップで紹介しました。これは設定が非常に簡単で、ほとんどのSteamゲームで利用できますが、表示できる情報がFPS値のみという制限があります。
より詳細な情報やカスタマイズ性を求めるユーザー向けには、NVIDIA GeForce Experience(NVIDIA GPU向け)、AMD Radeon Software(AMD GPU向け)、そしてGPUメーカーを問わず高い機能性とカスタマイズ性を持つMSI Afterburner + RivaTuner Statistics Server (RTSS) といった外部ツールを紹介し、それぞれの導入から設定方法、メリット・デメリットを詳しく解説しました。特にMSI Afterburner + RTSSは、FPSだけでなくフレームタイムや詳細なハードウェア情報を同時に表示できるため、ゲームパフォーマンスの徹底的な分析に非常に有用です。その他、Windows Game Barやゲーム内コンソールコマンドといった方法についても触れました。
さらに、表示したFPSの数値をどのように活用するかに焦点を当て、パフォーマンスの評価、ボトルネックの特定、トラブルシューティング、そして最適なゲーム設定を見つけるための具体的な方法を解説しました。FPS表示は、単なる数値ではなく、あなたのPCとゲームの「健康状態」を示す指標であり、これを通じてより快適なゲーム体験を実現するための強力なツールとなります。
最後に、フレームタイム、Vsync、リフレッシュレートといった、FPSに関連する重要な概念についても触れ、これらを合わせて理解することで、ゲームパフォーマンスの全体像をより深く把握できることを説明しました。
SteamゲームでFPSを表示させることは、単なる好奇心を満たすだけでなく、あなたのPCの性能を最大限に引き出し、ゲームの設定を最適化し、万が一のトラブルに対処するための強力な手段となります。FPS表示を積極的に活用することで、あなたはより滑らかで、より応答性が高く、そしてより満足のいくゲームプレイを楽しむことができるようになるでしょう。
この記事で紹介した情報が、あなたのSteamゲームライフをより快適なものにする一助となれば幸いです。さあ、お好みの方法でFPSを表示させ、あなたのゲームパフォーマンスを視覚化し、最高のゲーム体験を目指してください!