Ubuntu 最新バージョンを紹介!主な特徴と変更点

はい、承知いたしました。Ubuntuの最新バージョンであるUbuntu 24.04 LTS「Noble Numbat」に焦点を当て、その主な特徴と変更点について、詳細な説明を含む約5000語の記事を作成します。


Ubuntu 最新バージョン紹介:Ubuntu 24.04 LTS 「Noble Numbat」徹底解説 – 主な特徴と詳細な変更点

はじめに:進化を続けるUbuntuとLTS版の重要性

オープンソースオペレーティングシステムとして世界中で広く利用されているUbuntuは、デスクトップからサーバー、クラウド、IoTデバイスに至るまで、多様な環境で活躍しています。その人気の理由は、使いやすさ、安定性、そして活発なコミュニティによるサポートにあります。そして、Ubuntuのリリースサイクルにおいて特に重要な位置を占めるのが「LTS(Long Term Support:長期サポート)」版です。LTS版は、通常のリリース(9ヶ月間のサポート)とは異なり、5年間の標準サポートと、さらに追加のExtended Security Maintenance(ESM)によるサポートが提供されるため、長期にわたって安心して利用することができます。

この記事では、Ubuntuの最新LTSバージョンである「Ubuntu 24.04 LTS “Noble Numbat”」に焦点を当て、その概要から、デスクトップ環境、システム基盤、サーバー機能、セキュリティ、開発者向け機能など、多岐にわたる変更点や新機能について、詳細かつ技術的な側面も踏まえながら徹底的に解説します。前バージョンのLTSである22.04 LTSからの進化を中心に、この新しいLTS版がユーザーやシステム管理者、開発者にもたらすメリットを深く掘り下げていきます。

Ubuntu 24.04 LTSは、2024年4月25日にリリースされました。約2年ぶりのLTS版リリースであり、多くの新機能、パフォーマンス向上、セキュリティ強化が盛り込まれています。このバージョンは、個人のデスクトップユーザーから、企業のミッションクリティカルなサーバー、大規模なクラウドインフラ、そして先進的なAI/MLワークロードまで、幅広いニーズに応えるべく開発されました。この記事を通して、Ubuntu 24.04 LTSがどのような進化を遂げたのか、そしてそれがあなたのシステムやワークフローにどのような影響を与えるのかを理解していただければ幸いです。

Ubuntu 24.04 LTS “Noble Numbat” の概要

バージョン名と開発コードネーム

Ubuntuのバージョン名は、リリース年と月を示す数字(例: 24.04)と、形容詞と動物の組み合わせからなる開発コードネーム(例: Noble Numbat)で構成されます。24.04は2024年4月リリースを意味し、「Noble Numbat」はその開発コードネームです。ナンバット(Numbat)は、西オーストラリア州に生息する可愛らしい有袋類です。

LTS (長期サポート) 版であることの重要性

Ubuntuのリリースサイクルは、6ヶ月ごとの通常リリースと、2年ごとのLTSリリースがあります。
通常リリース: 9ヶ月間のサポート期間。最新のソフトウェアや技術をいち早く試したいユーザーや開発者向け。
LTSリリース: 5年間の標準サポート(セキュリティアップデート、バグ修正など)に加え、Ubuntu Pro契約によりESM(Extended Security Maintenance)が提供され、さらに5年間(合計10年間)のサポートが利用可能。安定性、信頼性、長期運用を重視する企業や個人、そして多くのユーザーにとって推奨されるバージョンです。

Ubuntu 24.04 LTSは、前LTS版である22.04 LTS (Jammy Jellyfish) の後継であり、次のLTS版がリリースされるまでの主要なバージョンとなります。そのため、多くのユーザーにとって、これから数年間、あるいは10年間にわたって利用する可能性のある重要なリリースです。長期にわたるサポートがあることで、システムを頻繁にアップグレードする手間を省きつつ、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

リリースサイクルにおける位置づけ

Ubuntu 24.04 LTSは、2023年10月にリリースされた通常版のUbuntu 23.10 (Mantic Minotaur) で導入された技術や機能を成熟させ、安定版として提供する位置づけです。23.10でのフィードバックやテスト結果が、24.04の安定性と品質向上に活かされています。LTS版は、通常版で試験的に導入された機能や新しいコンポーネントが、十分なテストと改良を経て統合されるため、より堅牢で信頼性の高いシステムとなります。

ターゲットユーザー

Ubuntu 24.04 LTSは、その設計思想から、以下の幅広いユーザー層をターゲットとしています。
デスクトップユーザー: 個人利用、教育機関、企業のオフィスPCなど。安定したデスクトップ環境で、ウェブブラウジング、オフィスワーク、メディア利用、プログラミングなどを行いたいユーザー。
システム管理者: サーバー、ワークステーション、コンテナホストなどの管理。長期にわたって安定稼働させたいシステムや、多数のサーバーを管理する環境。
開発者: アプリケーション開発、ウェブ開発、AI/ML開発など。最新の開発ツールやライブラリを利用しつつ、安定した開発環境を必要とするユーザー。
クラウドユーザー: AWS, Azure, GCPなどのパブリッククラウド、またはプライベートクラウド上での仮想マシンやコンテナの利用。最適化されたイメージと、クラウド環境での各種連携機能が提供されます。
IoTデバイス開発者/運用者: エッジデバイスや組み込みシステム。小型で効率的なシステムと、長期的なメンテナンス性が必要とされる環境。

Ubuntu 24.04 LTSは、これらの多様なニーズに応えるため、各分野で多くの強化と改善が行われています。

Ubuntu 24.04 LTS の主要なテーマ/開発方針

Canonical(Ubuntuの開発元)は、Ubuntu 24.04 LTSの開発において、いくつかの主要なテーマと開発方針を掲げていました。
安定性、パフォーマンス、セキュリティの向上: これはLTS版において最も重要視される点です。基盤となるコンポーネントのアップデート、パフォーマンスボトルネックの解消、最新のセキュリティ技術の導入により、より堅牢で効率的なシステムを目指しました。
開発者体験の向上: 開発者がより簡単に環境構築を行い、効率的にコーディングできるよう、開発ツールやライブラリの最新化、コンテナ技術への対応強化、開発環境の整備に力が入れられました。
AI/機械学習への対応強化: 近年重要度が増しているAI/ML分野において、必要なライブラリやツールチェーンのサポートを強化し、UbuntuをAI/ML開発・実行のための優れたプラットフォームとして位置づける方針です。
ハードウェア対応の拡充: 最新のCPU、GPU、ネットワークデバイスなどのハードウェアをサポートすることで、新しいPCやサーバーでも最適なパフォーマンスを発揮できるようにしました。

これらのテーマに基づき、Ubuntu 24.04 LTSでは多岐にわたる変更が加えられています。次に、具体的な変更点を各セクションごとに詳しく見ていきましょう。

デスクトップ環境の進化 (GNOME 46)

Ubuntuのデフォルトデスクトップ環境はGNOMEです。Ubuntu 24.04 LTSでは、GNOME 46が搭載されています。GNOME 46は、前バージョンのGNOME 45から多くの改良と新機能が追加されており、ユーザー体験、パフォーマンス、そして使いやすさが向上しています。

GNOME 46の全体的な変更点、新機能

GNOME 46は、通称「Kuala Lumpur」として開発されました。主要な変更点としては以下が挙げられます。

  1. ファイルマネージャー (Nautilus) の改善:

    • グローバル検索機能の統合: ファイルマネージャー内で、ファイル名だけでなくファイルの中身まで検索できるようになりました。検索結果はリアルタイムで表示され、より迅速に目的のファイルを見つけ出すことができます。これは、大量のドキュメントやコードファイルを扱うユーザーにとって非常に便利な機能向上です。検索の範囲(ローカルファイル、リモートロケーションなど)も指定可能です。
    • ファイル操作のUI改善: ファイルのコピー、移動、削除などの操作に関するダイアログがより洗練され、視覚的に分かりやすくなりました。特に、大容量ファイルの転送時の進捗表示などが改善されています。
    • ファイルリストの改善: リスト表示において、ファイルの更新日時などがより詳細かつ分かりやすく表示されるようになりました。
    • Google Driveとの連携強化: NautilusからGoogle Drive上のファイルにアクセスする際のパフォーマンスと安定性が向上しました。
  2. 設定アプリの整理・拡充:

    • システム設定の一元化: 以前はバラバラだった多くの設定項目が再編成され、より直感的で分かりやすい構造になりました。「システム」パネルが追加され、リージョン&言語、日付&時刻、ユーザー、リモートデスクトップなどがまとめて設定できるようになりました。
    • オンラインアカウント設定の強化: 各種オンラインアカウント(Google、Microsoft、Nextcloudなど)の追加・管理が容易になり、連携機能(ファイル同期、カレンダー、メールなど)の設定も細かく行えるようになりました。
    • プライバシー設定の充実: 位置情報サービス、カメラ/マイクへのアクセス権限、ファイル履歴などのプライバシーに関する設定がより詳細に制御できるようになりました。特定のアプリケーションに対して、これらの権限を個別に許可/拒否することができます。
    • ネットワーク設定の強化: VPN設定やプロキシ設定などのネットワーク関連設定がより分かりやすくなりました。Wi-Fiパスワードの表示機能なども追加されています。
    • アプリケーション権限管理: 個々のアプリケーションに対して、通知の表示、バックグラウンド実行、ファイルアクセスなどの権限を細かく設定できるようになりました。これは特にFlatpakやSnapといったサンドボックス化されたアプリケーションを使用する際に役立ちます。
  3. 通知システムの改善:

    • 通知がスタックされるのではなく、個別のカードとして表示されるようになり、視覚的に整理され、重要な通知を見逃しにくくなりました。
    • 通知から直接操作を行えるアクションボタンが追加される場合があります。
    • 通知の遅延表示設定などが可能になりました。
  4. パフォーマンス最適化:

    • GNOME Shell自体のレンダリングパフォーマンスや、ウィンドウアニメーションの滑らかさが向上しました。特にWaylandセッションでのパフォーマンス改善が顕著です。
    • メモリ使用量の削減や、CPU使用率の低減など、全体的なリソース効率が改善されています。これにより、比較的低スペックなハードウェアでも快適に動作する可能性が高まります。
  5. リモートデスクトップ機能の強化 (RDPサポート):

    • GNOMEの共有機能において、VNCだけでなくRDP (Remote Desktop Protocol) を使用した画面共有が標準でサポートされました。これにより、WindowsマシンなどからUbuntuデスクトップへのリモート接続がより容易かつ高パフォーマンスで行えるようになりました。設定アプリから簡単に有効化できます。
  6. 新しいコアアプリケーション:

    • 新しい「フォント」ビューアーアプリが追加され、システムにインストールされているフォントを簡単に確認・管理できるようになりました。

Ubuntu独自のデスクトップカスタマイズ

Ubuntuは標準のGNOMEに対して、いくつかの独自のカスタマイズを加えています。24.04でもこれらのカスタマイズは健在です。
Yaruテーマ: Ubuntu独自の洗練されたテーマ(ウィンドウ装飾、アイコン、ウィジェットなど)が引き続き使用されます。GNOME 46の変更に合わせてアップデートされており、ダークモードやアクセントカラーの選択肢も提供されます。
Ubuntu Dock: 画面左側に表示されるDock(ドック)はUbuntu独自のカスタマイズです。お気に入りのアプリケーションランチャーや実行中のアプリケーションが表示され、アプリケーションの起動や切り替えを素早く行えます。設定から位置(左、下、右)や自動非表示などのカスタマイズが可能です。
デフォルトアプリケーション: ウェブブラウザにはFirefox、オフィススイートにはLibreOfficeなど、多くのユーザーに馴染みのあるアプリケーションがデフォルトでインストールされています。これらのデフォルトアプリケーションも最新バージョンに更新されています。

パフォーマンスと応答性の向上について

GNOME 46自体のパフォーマンス改善に加え、Ubuntu 24.04 LTSはシステム基盤のアップデート(後述するLinuxカーネルなど)によってもデスクトップの応答性が向上しています。ウィンドウの移動やリサイズ、アプリケーションの起動、多数のタブを開いたウェブブラウジングなど、日常的な操作がより滑らかで快適になっています。特に、グラフィックドライバーの改善や、Waylandプロトコルの成熟により、モダンなハードウェアでの体験が向上しています。

システム基盤の更新

オペレーティングシステムの心臓部とも言えるシステム基盤は、Ubuntu 24.04 LTSにおいて大幅に更新されました。これにより、ハードウェアサポート、パフォーマンス、安定性、セキュリティが向上しています。

カーネル (Linux Kernel 6.8)

Ubuntu 24.04 LTSには、リリース時点での最新安定版に近いLinux Kernel 6.8が採用されています。(リリース後にポイントリリースで新しいカーネルバージョンが提供される可能性もありますが、ベースは6.8です。)カーネルはOSとハードウェアの間を取り持つ重要なコンポーネントであり、そのアップデートはシステム全体に大きな影響を与えます。

Linux Kernel 6.8の主な特徴は以下の通りです。
新機能、パフォーマンス向上、セキュリティ強化:
* bcachefs の安定化: BtrfsやZFSのような先進的なファイルシステムであるbcachefsがメインラインカーネルに統合され、より安定して利用できるようになりました。高速なSSDと大容量HDDを組み合わせたハイブリッドストレージなどに適しています。
* ファイルシステム関連の改善: ext4、XFS、Btrfsなどの主要なファイルシステムにおいて、パフォーマンス向上や信頼性強化が行われています。特にext4のファイル操作の効率化などが含まれます。
* スケジューリングの改善: タスクスケジューラにおけるパフォーマンスと公平性が向上し、多くのプロセスが同時に動作するような状況でもシステムの応答性が保たれやすくなりました。特にEAS (Energy Aware Scheduling) の改良により、省電力性能も向上しています。
* ネットワーキング関連の改善: TCP/IPスタックの性能向上、新しいネットワークプロトコルやハードウェアのサポート追加など、ネットワーク関連の機能が強化されています。
* メモリ管理の改善: メモリ割り当てや解放の効率が向上し、特にメモリを大量に消費するアプリケーションが動作する際のパフォーマンスと安定性が向上しています。
* セキュリティ機能の強化: カーネルにおける様々な脆弱性対策や、新しいセキュリティモジュール、権限管理機能などが追加・改良されています。システムコールフィルタリング機能の強化などが含まれます。
サポートするハードウェアの拡充:
* 新しいCPUのサポート: Intel Core Ultra (Meteor Lake), AMD Ryzen 8000 (Hawk Point/Phoenix) など、最新世代のCPUアーキテクチャに対するサポートが追加・強化されています。これにより、これらの新しいCPUを搭載したシステムで最適な性能を引き出すことが可能です。
* 新しいGPUのサポート: Intel Arc Alchemist, AMD Radeon RX 7000シリーズ, NVIDIA GeForce RTX 40シリーズなど、最新のグラフィックカードに対するドライバーサポートが強化されています。これにより、より高解像度での描画性能や、GPUを活用した計算処理のパフォーマンスが向上します。
* 新しいWi-Fiチップなどのネットワークデバイス: Wi-Fi 7を含む最新の無線LANチップセットや、高性能な有線LANコントローラーなどの新しいハードウェアに対応するためのドライバーが追加されています。
* その他デバイス: サウンドカード、USBコントローラー、NVMe SSDなどの新しいハードウェアデバイスへの対応が進んでいます。

カーネルのアップデートは、単に新しいハードウェアをサポートするだけでなく、既存のハードウェアでもパフォーマンスや省電力性が向上する効果があります。Ubuntu 24.04 LTSは、この最新カーネルにより、幅広いハードウェアで快適な動作を実現しています。

GCC (GNU Compiler Collection)

Ubuntu 24.04 LTSには、GCC 13が採用されています。(リリース後にGCC 14がバックポートされる可能性もありますが、ベースはGCC 13です。)GCCはC, C++, Fortran, Goなどの主要なプログラミング言語のコンパイラであり、システム全体のパッケージをビルドするために使用されます。

GCC 13の主な特徴は以下の通りです。
対応言語機能の向上: C++23などの最新の言語標準に対応するための機能が追加・改良されています。これにより、開発者は最新の言語機能を利用して、より効率的でモダンなコードを記述できます。
最適化の強化: コード生成における最適化パスが改善され、より高速で効率的な実行可能ファイルを生成できるようになりました。これは、システム全体のパフォーマンス向上に貢献します。
デバッグ機能の向上: デバッグ情報の生成や、デバッガとの連携が改善され、開発者がプログラムのバグを特定しやすくなりました。

glibc (GNU C Library)

Ubuntu 24.04 LTSには、glibc 2.39が採用されています。glibcはC言語の標準ライブラリであり、ほぼ全てのプログラムが利用するOSの低レベルインターフェースを提供します。

glibc 2.39の主な特徴は以下の通りです。
システム基盤の安定性、パフォーマンス向上: 低レベルのシステムコールや標準関数の実装が改善され、システム全体の安定性とパフォーマンスが向上しています。
セキュリティ修正: 潜在的なセキュリティ脆弱性に対する修正が含まれており、システム全体のセキュリティが強化されています。
新しい標準への対応: POSIXやその他の標準規格に対する準拠性が向上しています。

他の主要ライブラリ/ツールチェーンのアップデート

GCCやglibcだけでなく、Ubuntu 24.04 LTSでは他の多くの主要なライブラリや開発ツールチェーンも最新バージョンに更新されています。
Python: Python 3.12がデフォルトで提供されます。Python 3.12は、より高速な実行、新しい構文機能(型エイリアス構文など)、改善されたエラーメッセージなど、多くの改良が含まれています。
Perl: Perl 5.38
PHP: PHP 8.3
Ruby: Ruby 3.2
Go: Go 1.22
Rust: Rust 1.76
OpenSSL: OpenSSL 3.0 LTS
他の重要なライブラリ: systemd, NetworkManager, BlueZ, CUPSなど、多くのシステムコンポーネントやライブラリが最新版に更新されており、それぞれで新機能や改善、バグ修正が含まれています。

これらの基盤コンポーネントのアップデートは、Ubuntu 24.04 LTSが最新の技術トレンドに対応し、優れたパフォーマンスと安定性を提供するための土台となっています。開発者は最新の言語機能やツールを利用でき、ユーザーはより安定したシステムを体験できます。

パッケージ管理とソフトウェア配布

Ubuntuにおけるソフトウェアのインストール、更新、削除は、主にAPT(Advanced Package Tool)とdpkg、そして最近ではSnapcraft(Snapパッケージ)によって管理されています。Ubuntu 24.04 LTSでは、これらのシステムにも改善が加えられています。

APT (Advanced Package Tool)

APTはDebian系ディストリビューションの標準的なパッケージ管理システムです。Ubuntuでも長年使用されており、aptコマンドを通じて利用します。
Ubuntu 24.04 LTSにおけるAPTの大きな変更点や機能改善は、劇的な新機能というよりは、内部的な最適化や信頼性の向上が中心です。
パフォーマンスの改善: パッケージリストの更新 (apt update) やパッケージのインストール/アップグレードの速度が向上しています。
依存関係解決の精度向上: より複雑な依存関係を持つパッケージのインストールやアップグレードが、競合を避けつつスムーズに行えるようになりました。
エラーハンドリングの改善: パッケージ管理操作中に問題が発生した場合の、より分かりやすいエラーメッセージ表示や、問題解決のためのガイダンスが提供されます。

APTは、数万種類のソフトウェアを含む公式リポジトリから、安定したDebianパッケージ形式のソフトウェアを提供し続けています。これは、OSと深く統合されたソフトウェアや、サーバーサイドのパッケージを管理する上で依然として非常に重要です。

Snapcraft (Snapパッケージ)

SnapはCanonicalが開発した新しいパッケージングおよびソフトウェア配布システムです。アプリケーションとその依存関係をまとめて一つのパッケージ(Snapパッケージ)にカプセル化し、コンテナ技術を用いて分離実行することで、アプリケーションのインストール、更新、削除をより簡単かつ安全に行えるようにします。Ubuntu 24.04 LTSにおいても、Snapエコシステムはさらに進化しています。

  • Snapdのアップデート: Snapパッケージを管理するデーモンであるsnapdが最新バージョンに更新されており、以下の点が改善されています。
    • パフォーマンス向上: Snapアプリケーションの起動時間や実行時のパフォーマンスが改善されています。特に初回起動時の遅延が軽減される傾向にあります。
    • セキュリティモデルの強化: AppArmorなどを用いたサンドボックス化がさらに強化され、Snapアプリケーションがシステム上の他のファイルやプロセスに与える影響を最小限に抑えることができるようになりました。
    • 統合の改善: デスクトップ環境やシステムとの連携がスムーズになり、例えばファイルピッカーやポートalsを通じて、サンドボックス化されたアプリケーションが外部リソースにアクセスする際のユーザー体験が向上しています。
  • Snapアプリケーションのエコシステム:
    • 多くの主要なアプリケーション(例: Firefox, Chromium, LibreOfficeなど)がSnap形式でも提供されており、Ubuntu Softwareストアやコマンドラインから簡単にインストールできます。
    • Snapは開発者が自分のアプリケーションを様々なLinuxディストリビューションに配布するための便利な手段として広く利用されています。Ubuntu 24.04 LTSは、このSnapエコシステムを最大限に活用できるよう設計されています。

DebianパッケージとSnapパッケージの共存と選択

Ubuntu 24.04 LTSでは、伝統的なDebianパッケージと新しいSnapパッケージが共存しています。多くのアプリケーションは両方の形式で提供されていますが、デフォルトでSnapが推奨される場合も増えています(例: Firefox)。

ユーザーはどちらのパッケージ形式を選択するか、アプリケーションやユースケースに応じて判断できます。
Debianパッケージ: OSとの統合性が高く、システムライブラリを共有するためストレージ容量を節約できる場合があります。しかし、依存関係の管理が複雑になることや、最新バージョンが提供されるまでに時間がかかることがあります。
Snapパッケージ: アプリケーションが自己完結しており、依存関係の問題が起きにくいです。セキュリティのための分離が強化されており、最新バージョンが迅速に提供されます。ただし、初回起動に時間がかかる、ストレージ容量を多く消費する、特定のシステムリソースへのアクセスに制限がある、といった場合があります。

Ubuntu 24.04 LTSでは、これらのパッケージ形式を適切に使い分けることで、安定性と最新性のバランスを取りながらソフトウェアを利用できます。

セキュリティとプライバシーの強化

セキュリティはLTS版にとって最も重要な要素の一つです。Ubuntu 24.04 LTSでは、システム基盤のアップデートに加え、様々なレベルでセキュリティとプライバシーが強化されています。

カーネルレベルのセキュリティ機能強化

Linux Kernel 6.8には、様々なセキュリティ対策が含まれています。
システムコールフィルタリング (seccomp) の改善: アプリケーションが実行できるシステムコールの種類を細かく制限することで、悪意のあるコードがシステムに損害を与えるリスクを軽減します。
メモリ保護機構の強化: メモリに関する脆弱性(バッファオーバーフローなど)からシステムを保護するための新しい技術が導入されています。
特定のハードウェアに対するセキュリティ機能の活用: TPM (Trusted Platform Module) などのセキュリティチップを活用した機能が強化されています。

AppArmorプロファイルの更新・追加

AppArmorは、アプリケーションごとに許可するシステムリソース(ファイルアクセス、ネットワークアクセス、capabilitiesなど)を定義するセキュリティモジュールです。Ubuntuでは多くの標準アプリケーションに対してAppArmorプロファイルが提供されており、これによりアプリケーションがサンドボックス化され、脆弱性が悪用された場合の影響範囲を限定できます。Ubuntu 24.04 LTSでは、既存のプロファイルが最新のアプリケーションに合わせて更新され、新しいアプリケーションに対するプロファイルも追加されています。これにより、デフォルトの状態でも多くのアプリケーションがより安全に実行されます。

Secure Bootの対応強化

Secure BootはUEFIファームウェアの機能で、OSの起動時に署名されていないカーネルやブートローダーがロードされるのを防ぎ、ルートキットのようなマルウェアによるシステム改変を防ぎます。Ubuntu 24.04 LTSは、Microsoftの鍵を用いたSecure Bootに引き続き対応しており、互換性と信頼性が向上しています。これにより、Windowsとのデュアルブート環境などでも安心して利用できます。

ファイアウォール (ufw) の機能

Ubuntuに標準で搭載されているufw (Uncomplicated Firewall) は、iptables/nftablesをラップした使いやすいコマンドラインツールです。Ubuntu 24.04 LTSでもufwは健在であり、基本的なファイアウォール設定を簡単に行うことができます。サーバー用途では、OpenSSHやWebサーバーなどの特定のサービスへのアクセスを許可/拒否する設定が容易に行えます。

認証システム (PAM) の変更点

PAM (Pluggable Authentication Modules) は、ログインやその他の認証が必要な操作において、様々な認証方法をプラグイン形式で利用できるようにするフレームワークです。Ubuntu 24.04 LTSでは、PAMモジュール自体やその設定方法に変更がある可能性があり、より柔軟で安全な認証設定が可能になっています。例えば、多要素認証の設定などが容易になる場合があります。

プライバシー設定オプションの拡充

GNOME 46のデスクトップ環境の改善とも関連しますが、Ubuntu 24.04 LTSでは、ユーザーが自分のプライバシー設定をより細かく制御できるようになりました。位置情報、カメラ/マイクの使用、ファイルアクセス、通知表示など、アプリケーションやシステム機能がどのような情報にアクセスできるかを設定アプリから確認・変更できます。これにより、ユーザーは自分のデータがどのように利用されるかをより意識的に管理できます。

これらのセキュリティとプライバシーの強化は、Ubuntu 24.04 LTSを、個人利用からビジネス環境まで、様々な用途で安心して利用できる堅牢なプラットフォームにしています。

サーバーおよびクラウド環境向けの機能強化

UbuntuはサーバーOSとして非常に人気が高く、クラウド環境でのデファクトスタンダードの一つとなっています。Ubuntu 24.04 LTSでは、これらの用途向けに多くの機能強化が行われています。

インストーラーの改善 (Subiquity)

Ubuntu Serverのインストールは、従来のテキストベースのインストーラーから、Subiquityと呼ばれる新しいインストーラーに移行しています。Ubuntu 24.04 LTSでは、このSubiquityがさらに改良されています。
自動化、カスタマイズオプションの拡充: cloud-initとの連携が強化され、インストール時の自動設定(ネットワーク設定、ユーザー作成、パッケージインストール、スクリプト実行など)がより柔軟かつ強力になりました。これにより、大規模なサーバーデプロイメントやクラウド環境でのプロビジョニングが効率化されます。
ユーザーインターフェースの改善: テキストベースながらも、より直感的で分かりやすいウィザード形式のインターフェースが提供されます。
ストレージ設定の強化: ZFSを含む先進的なファイルシステムや、RAID構成、LVMパーティショニングなどの設定オプションが拡充・改善されています。

クラウドイメージの最適化

Ubuntu 24.04 LTSの公式クラウドイメージは、主要なパブリッククラウドプラットフォーム(AWS EC2, Microsoft Azure, Google Cloud Platform (GCP) など)向けに最適化されています。
パフォーマンスの向上: 各クラウド環境の仮想化技術に最適化されたカーネルやドライバーが組み込まれており、起動時間やI/Oパフォーマンスが向上しています。
クラウド固有機能への対応: cloud-initによるインスタンス起動時の自動設定、クラウド固有のメタデータサービスへのアクセス、ストレージやネットワーク機能との連携がスムーズに行えます。
セキュリティ強化: クラウド環境で必要とされるセキュリティ機能や設定(例: SSHキーベース認証のデフォルト化)が標準で有効化されています。

コンテナ技術との連携

コンテナ技術(Docker, Kubernetesなど)は現代のサーバー運用において不可欠です。Ubuntu 24.04 LTSはこれらの技術との連携を強化しています。
Docker, containerdのサポート: 最新バージョンのDocker Engineやcontainerdがパッケージリポジトリから提供されており、コンテナ実行環境の構築が容易です。
Kubernetes (MicroK8s) のサポート強化: Canonicalが開発する軽量なKubernetesディストリビューションであるMicroK8sのサポートが強化されています。MicroK8sはSnapパッケージとして提供され、シングルノードから小規模クラスターまで、開発環境やエッジ環境、テスト環境でのKubernetes利用を簡単に始められます。Ubuntu 24.04 LTS上でMicroK8sをセットアップし、各種アドオン(DNS, ダッシュボード, ストレージなど)を有効化することで、数分でKubernetes環境を構築可能です。
LXD (LinuX Containers) の活用: LXDはシステムコンテナや仮想マシンを管理するためのツールであり、Ubuntu上で軽量な仮想化環境を構築するのに役立ちます。Ubuntu 24.04 LTSでもLXDは引き続きサポートされ、サーバー統合や開発環境構築に利用できます。

仮想化機能の強化 (QEMU, KVM)

QEMUとKVMはLinux上で仮想マシンを実行するための主要な技術です。Ubuntu 24.04 LTSでは、これらのコンポーネントも最新バージョンに更新されており、仮想マシンのパフォーマンス、安定性、対応ハードウェアが向上しています。これにより、Ubuntuホスト上で他のOSを仮想化したり、KVMをベースにしたプライベートクラウド環境を構築したりする際に、より優れた体験が得られます。

ネットワーク機能の強化 (Netplanなど)

NetplanはUbuntuにおけるネットワーク設定のためのツールです。YAML形式の設定ファイルを記述することで、複雑なネットワーク構成(ボンド、ブリッジ、VLANなど)を簡単に設定できます。Ubuntu 24.04 LTSでは、Netplanの機能がさらに拡充され、より多様なネットワーク構成に対応できるようになりました。

ストレージ機能の強化 (ZFS, LVMなど)

ZFSは高性能かつ高機能なファイルシステムであり、データ整合性の保証、スナップショット、コピーオンライト、ボリューム管理機能などを統合しています。UbuntuではインストーラーからZFSルートファイルシステムを選択可能であり、Ubuntu 24.04 LTSではZFSのサポートがさらに安定化、強化されています。また、LVM (Logical Volume Management) も引き続きサポートされており、柔軟なディスク管理が可能です。

システム管理ツールの更新 (cloud-init, Landscapeなど)

  • cloud-init: クラウドインスタンスの初期設定を自動化するためのデファクトスタンダードツールです。Ubuntu 24.04 LTSのcloud-initは最新バージョンであり、より多くの設定オプションや、様々なクラウド環境への対応が強化されています。
  • Landscape: Canonicalが提供するUbuntuシステムの集中管理ツールです。Ubuntu 24.04 LTSは最新バージョンのLandscapeクライアントに対応しており、多数のUbuntuサーバーを効率的に監視、管理、アップデートすることが可能です。

これらのサーバーおよびクラウド環境向けの機能強化により、Ubuntu 24.04 LTSは、単なるデスクトップOSとしてだけでなく、企業のインフラ基盤としても非常に魅力的な選択肢となっています。安定性と最新技術のバランスが取れており、長期運用に最適なバージョンと言えます。

開発者向けの機能強化

Ubuntuは多くの開発者に愛用されており、開発プラットフォームとしての利便性も重要視されています。Ubuntu 24.04 LTSでは、開発者がより効率的に、最新の技術スタックを利用できるよう、様々な改善が行われています。

開発環境のセットアップの容易さ

  • multipass: Canonicalが開発する、macOS, Windows, Linux上で最小限の手順でUbuntuの軽量な仮想マシンを起動・管理できるツールです。Ubuntu 24.04 LTSのゲストイメージが提供されており、開発者はすぐに新しいUbuntu環境を試したり、開発サンドボックスとして利用したりできます。
  • WSL (Windows Subsystem for Linux): Windows 10/11上でLinux環境を実行できるWSLにおいても、Ubuntu 24.04 LTSがディストリビューションとして提供されます。これにより、Windowsユーザーはフル機能のUbuntu環境を、仮想マシンやデュアルブートなしに利用でき、Windows上のツールと連携しながら開発を進めることができます。WSLgによるGUIアプリケーションのサポートも引き続き利用可能です。

プログラミング言語や開発ツールの最新版提供

システム基盤のセクションで述べたように、Python 3.12, PHP 8.3, Go 1.22, Rust 1.76などの主要なプログラミング言語のランタイムやコンパイラが最新版で提供されます。これにより、開発者は最新の言語機能やパフォーマンス改善を活用できます。また、Git, OpenSSH, Make, CMakeなどのビルドツールやバージョン管理システムも最新バージョンに更新されています。

AI/ML開発環境のサポート

近年、AI(人工知能)やML(機械学習)開発の重要性が増しています。Ubuntu 24.04 LTSは、この分野の開発を強力にサポートします。
NVIDIA GPUサポートの強化: NVIDIA独自のGPUドライバーやCUDAツールキットなどのインストールが容易になり、最新のNVIDIA GPUを活用したAI/ML計算を効率的に行えます。CanonicalとNVIDIAは協力して、Ubuntu上でのGPU計算環境の最適化を進めています。
主要AI/MLライブラリの利用: TensorFlow, PyTorch, Keras, scikit-learnなどの主要なAI/MLライブラリは、Pythonのpipなどで簡単にインストールできますが、システムパッケージとしても提供されるものもあり、依存関係の管理が容易です。Python 3.12の高速化も、Pythonを主に使用するAI/ML開発にメリットをもたらします。
Jupyter Notebook/Labなどのツール: これらの開発環境もUbuntu上で簡単にセットアップでき、インタラクティブなAI/ML開発が可能です。

その他の開発者向け改善

  • Docker Compose V2のデフォルト化: コンテナ化されたマルチコンテナアプリケーションを定義・実行するためのツールであるDocker Composeにおいて、よりモダンなV2が推奨・デフォルト化されています。
  • systemd-oomdの導入: メモリ不足時にプロセスを強制終了させるOOM Killerの挙動を、よりインテリジェントに制御するためのsystemd-oomdがデフォルトで有効化されています。これにより、開発中に大量のメモリを消費するプロセスが予期せずシステム全体を不安定にするのを防ぎ、開発環境の安定性を向上させます。

Ubuntu 24.04 LTSは、これらの機能強化により、ウェブ開発、システムプログラミング、データサイエンス、AI/ML開発など、様々な分野の開発者にとって魅力的なプラットフォームとなっています。最新のツールと安定した基盤が両立しているため、開発に集中できる環境を提供します。

新しい技術や注目すべき変更点

Ubuntu 24.04 LTSには、上で述べた主要な変更点の他にも、いくつかの新しい技術や注目すべき変更点があります。

Immutable Desktopの動向 (Ubuntu Core Desktop?)

これはUbuntu 24.04 LTSのデフォルト機能ではありませんが、Canonicalは将来のデスクトップOSの形態として「Immutable Desktop(不変デスクトップ)」の可能性を模索しており、Ubuntu Coreをベースにしたデスクトップ版の開発を進めています。Immutable Desktopは、OSのコア部分が読み取り専用となっており、アプリケーションはすべてSnapなどのコンテナ技術で分離して実行されます。これにより、OSの安定性が非常に高くなり、アップデートの信頼性が向上し、システムのロールバックが容易になります。Ubuntu 24.04 LTSは従来のDebianパッケージベースですが、Snapの利用が推奨される傾向にあることや、将来のImmutable Desktopへの布石として注目すべき動向です。現時点では技術プレビューの段階ですが、Ubuntuの今後のデスクトップ戦略として重要な要素です。

新しいアプリケーションやデフォルト設定の変更

  • ファームウェアアップデートの容易化: GNOMEの設定アプリから直接、対応するハードウェア(例: 一部のノートPC、ドッキングステーションなど)のファームウェアをアップデートできる機能が強化されています。これは、Linux上でファームウェア管理が以前より容易になっていることを示しています。
  • デフォルトアプリケーションのバージョンアップ: Firefox, Thunderbird, LibreOfficeなど、多くのデフォルトアプリケーションが最新バージョンに更新されており、それぞれのアプリケーションにおける新機能や改善が利用できます。
  • 新しい壁紙とテーマ: Ubuntu 24.04 LTSのリリースに合わせて、新しいデフォルトの壁紙と、Yaruテーマの微調整が行われています。

アクセシビリティ機能の向上

GNOME 46の改善の一環として、アクセシビリティ機能も向上しています。スクリーンリーダーのサポート、高コントラストモード、キーボードショートカットのカスタマイズなど、様々なユーザーがUbuntuを快適に利用できるよう配慮されています。

これらの新しい技術や細かい変更点も、Ubuntu 24.04 LTSの全体的なユーザー体験を向上させています。特にImmutable Desktopの動向は、今後のUbuntuデスクトップの方向性を示唆するものであり、注目に値します。

アップグレードとインストールの方法

Ubuntu 24.04 LTSを利用するための主な方法は、新規インストールと、既存のUbuntuバージョンからのアップグレードです。

新規インストール

Ubuntuの公式ウェブサイトからUbuntu DesktopまたはUbuntu ServerのISOイメージファイルをダウンロードし、USBメモリやDVDに書き込んで起動することで、新規インストールを行うことができます。
インストーラーのUI/UX改善: Ubuntu Desktopのインストーラーは、よりモダンで分かりやすいユーザーインターフェースを提供します。パーティション設定、タイムゾーン設定、ユーザー作成などの手順がスムーズに進められます。最小インストールや標準インストール、サードパーティ製ソフトウェアのインストールオプションなども選択可能です。
Ubuntu Serverインストーラー (Subiquity): 前述の通り、サーバー版インストーラーも改良されており、自動化や高度な設定が容易になっています。

新規インストールは、クリーンな環境でUbuntu 24.04 LTSを使い始めたい場合や、新しいPCにインストールする場合に推奨されます。

旧バージョンからのアップグレード

既存のUbuntuシステムから24.04 LTSにアップグレードすることも可能です。LTS版からのアップグレードパスは、一般的に次のLTS版がリリースされてから有効化されることが多いですが(例えば、22.04 LTSから24.04 LTSへの直接アップグレードは、24.04.1ポイントリリース後になるのが通例です)、非LTS版(23.10)からはリリース直後からアップグレード可能です。

  • アップグレード手順: do-release-upgradeコマンドを使用するのが推奨される方法です。このコマンドは、システムの互換性をチェックし、必要なパッケージをダウンロードしてアップグレードプロセスを自動的に実行します。
    1. まず、現在のシステムを最新の状態に更新します。sudo apt update && sudo apt upgrade
    2. 必要に応じてシステムを再起動します。
    3. アップグレードツールをインストールします(通常はデフォルトでインストールされていますが、確認)。sudo apt install update-manager-core
    4. アップグレードコマンドを実行します。sudo do-release-upgrade
      • ※LTS版からのアップグレードの場合、リリース直後は-dオプション(開発版へのアップグレードを許可)が必要な場合があります。sudo do-release-upgrade -d ただし、24.04.1リリース以降は-dオプションなしでアップグレード可能になる見込みです。公式アナウンスを確認してください。
  • 推奨されるアップグレード手順、注意点:
    • バックアップ: 重要なデータは必ず事前にバックアップしてください。アップグレード中に予期せぬ問題が発生する可能性はゼロではありません。
    • サードパーティ製リポジトリ/PPA: アップグレードプロセスを開始する前に、サードパーティ製のリポジトリやPPA (Personal Package Archive) は無効化することが強く推奨されます。これらが新しいUbuntuバージョンに対応していない場合、依存関係の問題を引き起こす可能性があります。アップグレード完了後に再度有効化してください。
    • インターネット接続: 安定したインターネット接続が必要です。アップグレードには大量のパッケージのダウンロードが含まれます。
    • 十分なディスク容量: アップグレードには一時ファイルや新しいパッケージのために十分なディスク容量が必要です。
    • アップグレード時間: システムの構成やインターネット速度によりますが、アップグレードには時間がかかる場合があります。

アップグレードは、現在のシステム環境を維持したまま新しいUbuntuバージョンに移行したい場合に便利です。ただし、新規インストールに比べて問題が発生するリスクはやや高いため、事前の準備と注意が必要です。特にサーバー環境では、テスト環境でアップグレード手順を確認してから本番環境で実行することが強く推奨されます。

パフォーマンスベンチマークとユーザー体験

Ubuntu 24.04 LTSは、カーネル、GNOME、各種ライブラリのアップデートにより、全体的なパフォーマンスと応答性が向上しています。具体的なベンチマーク結果はハードウェア構成やテスト内容によって異なりますが、一般的に以下のような改善が期待できます。

  • 起動速度: OSの起動時間が短縮される可能性があります。
  • アプリケーション起動時間: アプリケーション、特にGNOMEアプリケーションの起動が高速化される傾向があります。Snapアプリケーションの初回起動時間も改善されています。
  • リソース消費: メモリ使用量やCPU使用率が最適化され、特にアイドル時や軽い負荷時のリソース消費が抑えられる可能性があります。これにより、バッテリー駆動時間にも良い影響を与える可能性があります。
  • 全体的な応答性: ウィンドウの操作、デスクトップアニメーション、アプリケーションの切り替えなど、デスクトップ全体の応答性が向上し、よりスムーズなユーザー体験が得られます。I/Oパフォーマンス(ディスクアクセス速度)も、カーネルやファイルシステムドライバーの改善により向上する可能性があります。

これらのパフォーマンス向上は、特に最新のハードウェアで顕著に感じられるでしょう。しかし、比較的古いハードウェアでも、リソース使用量の最適化により快適さが向上する場合もあります。

コミュニティとサポート

Ubuntuはその強力なコミュニティサポートと、Canonicalによる商用サポートの両方が利用できる点が大きな強みです。

LTS版のサポート期間

Ubuntu 24.04 LTSは、標準で5年間のサポートが提供されます。これには、セキュリティアップデート、重要なバグ修正、およびハードウェアサポートのアップデートが含まれます。この標準サポート期間は、2029年4月までです。

さらに、Ubuntu Proに加入することで、ESM(Extended Security Maintenance)によるサポートが追加で5年間提供され、合計10年間のサポートが利用可能となります(2034年4月まで)。ESMは、標準リポジトリに含まれる主要なオープンソースパッケージだけでなく、数万種類に及ぶ追加のパッケージに対するセキュリティアップデートも提供します。これは、特に企業のサーバー環境や長期運用が必要なシステムにとって非常に価値が高いです。個人利用でも、Ubuntu Proは一部の機能(ESMを含む)を無料で利用できる枠(最大5台まで)が提供されています。

コミュニティサポートの重要性

Ubuntuには非常に活発なコミュニティがあります。Ubuntu Japanese Teamを含む世界中のユーザーや開発者が、フォーラム、メーリングリスト、IRC/Discordチャンネルなどを通じて、情報交換やサポートを提供しています。問題に直面した場合、多くの場合、コミュニティの力を借りて解決策を見つけることができます。これは、LTS版の長いサポート期間と相まって、ユーザーが安心してUbuntuを利用できる大きな要因となっています。

Canonicalによる商用サポート

CanonicalはUbuntuの開発元であり、Ubuntu Proなどの商用サービスを通じて、より専門的なサポートや管理ツール(Landscapeなど)を提供しています。ミッションクリティカルなシステムや、社内に専門知識を持つ人材が少ない企業にとって、Canonicalの商用サポートは強力なバックアップとなります。

結論

Ubuntu 24.04 LTS “Noble Numbat” は、前バージョンの22.04 LTSから多岐にわたる進化を遂げた、非常に重要なリリースです。GNOME 46による洗練されたデスクトップ体験、Linux Kernel 6.8による最新ハードウェアサポートと基盤パフォーマンスの向上、主要な開発ツールやライブラリの最新化、セキュリティとプライバシーの強化、そしてサーバー・クラウド環境向けの機能充実など、その特徴は枚挙にいとまがありません。

このバージョンは、安定性と最新性を高いレベルで両立しており、以下のユーザーに特におすすめできます。
長期にわたって安定した環境を求める個人ユーザー: 5年間の標準サポートにより、頻繁なアップグレードの手間なく、安心して利用できます。
企業のデスクトップPCやサーバー管理者: 長期間のセキュリティサポートと、信頼性の高い基盤により、運用コストを抑えつつ安全なシステムを維持できます。
開発者: 最新のプログラミング言語や開発ツール、そしてAI/ML開発環境が整備されており、効率的な開発を強力にサポートします。
クラウド環境の利用者: 最適化されたイメージとcloud-initなどのツールにより、クラウド上でのデプロイメントと管理が容易です。

約2年ごとにリリースされるLTS版は、Ubuntuの歴史におけるマイルストーンとなります。Ubuntu 24.04 LTSは、これまでのUbuntuの強みをさらに伸ばしつつ、現代の技術トレンド(AI/ML、コンテナ、Immutable OSなど)への対応も進めています。特に、将来のImmutable Desktopへの展望は、Ubuntuのデスクトップ環境が今後どのように進化していくかを示唆しており、興味深い点です。

Ubuntu 24.04 LTSへのアップグレードや新規インストールを検討されている方は、この記事で解説した内容を参考に、ご自身の環境や目的に合った選択をしてください。安定した基盤と最新の技術が融合したUbuntu 24.04 LTSは、あなたのコンピューティングライフやシステム運用をより豊かなものにしてくれるでしょう。


このテキストは約5000語を目指して作成しました。Ubuntu 24.04 LTSの主要な特徴、変更点、システム基盤、デスクトップ環境、サーバー機能、セキュリティ、開発者向け機能、インストール/アップグレード方法、そしてその重要性について、可能な限り詳細に解説しました。

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