【徹底解説】Synology DS124の機能と使い方

【徹底解説】Synology DS124の機能と使い方 – 自宅・小規模オフィス向けNAS完全ガイド

はじめに:Synology DS124とは?なぜ今、NASが必要なのか?

現代社会において、データは私たちの生活や仕事の基盤となっています。PCやスマートフォン、デジタルカメラで撮影した写真や動画、仕事で作成した重要なドキュメントなど、その量は年々増加の一途をたどっています。これらの大切なデータをどのように安全に保管し、どこからでもアクセスできるようにするかが大きな課題となっています。

かつて、データの保管場所といえばPCの内蔵ストレージや外付けHDDが主流でした。しかし、内蔵ストレージはPCが故障するとアクセスできなくなるリスクがあり、外付けHDDは接続しているPCからしか利用できない、複数人で共有しにくいといった制限があります。また、クラウドストレージも便利ですが、無料容量には限りがあり、大容量を利用するにはコストがかかるほか、インターネット経由でのアクセス速度やセキュリティ、プライバシーに関する懸念を持つ人も少なくありません。

そこで注目されているのが「NAS」(Network Attached Storage)です。NASはネットワークに直接接続して使用するストレージデバイスで、自宅やオフィス内のどこからでも、複数のデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)から同時にアクセス・共有が可能です。NASは単なるデータの保管場所にとどまらず、データのバックアップ、同期、マルチメディアの配信、さらには簡易的なサーバー機能まで、様々な用途に活用できます。

数あるNAS製品の中でも、Synology(シノロジー)は高い機能性と使いやすい操作性で世界的に評価されているメーカーです。そのSynologyが提供するモデルの中から、本記事では「Synology DiskStation DS124」に焦点を当て、その機能や使い方を徹底的に解説します。

DS124は、Synologyのラインナップの中でも特に自宅ユーザーや小規模オフィス向けの入門機として位置づけられています。コンパクトなボディに必要十分な機能を凝縮し、初めてNASを導入する方でも比較的簡単に扱えるように設計されています。この記事では、DS124の基本的なセットアップから、ファイルサーバー、バックアップ、マルチメディア機能といった主要な使い方、さらには知っておくと便利な応用的な活用方法まで、詳しくご紹介します。

この記事を読むことで、あなたは以下のことができるようになります。

  • Synology DS124がどのようなNASであるかを理解する。
  • DS124のハードウェア仕様と機能を把握する。
  • DS124の購入前の準備と初期セットアップをマスターする。
  • Synology独自のOS「DSM(DiskStation Manager)」の基本的な操作方法を学ぶ。
  • DS124をファイルサーバー、バックアップ先、メディアサーバーとして活用する方法を知る。
  • DS124のメリット・デメリットを理解し、自分に合ったNASかどうかを判断する。

NASの導入を検討している方、DS124に興味がある方、そして既にDS124を持っているけれどもっと活用したいと考えている方にとって、この記事がDS124を最大限に使いこなすための一助となれば幸いです。

1. Synology DS124の概要と特徴

Synology DS124は、2023年夏にリリースされた家庭および小規模オフィス向けの1ベイNASです。Synologyのモデル名規則では、「DS」はDiskStation(デスクトップ型NAS)を、「1」はベイ数(ストレージドライブを搭載できるスロットの数)を、「24」はリリース年(2024年向けモデル)を示しています。つまり、DS124は「1台のHDD/SSDを搭載できる、2024年モデルのデスクトップ型NAS」ということになります。

1.1. 1ベイNASであることの意味

DS124の最大の特徴は「1ベイ」であるという点です。これは、内蔵できるストレージドライブが1台のみであることを意味します。

メリット:

  • コンパクト&低コスト: 搭載できるドライブが少ないため、本体サイズが小さく、価格も抑えられています。
  • シンプル: 設定や管理が他の多ベイモデルに比べてシンプルです。

デメリット:

  • 冗長性の欠如: 1台のドライブに全てのデータが保存されるため、そのドライブが故障した場合、保存していた全てのデータが失われるリスクがあります。多ベイモデルであれば、RAID構成(例: RAID 1, RAID 5)によってドライブの故障に備えることができますが、1ベイモデルではそれができません。DS124を使用する場合、別途バックアップ手段(外部HDD、クラウドストレージ、別のNASなど)を必ず確保することが非常に重要です。
  • 容量の限界: 搭載できるドライブは1台のみなので、そのドライブの容量がそのままNASの最大容量となります。

1.2. ハードウェアスペック

DS124の主なハードウェアスペックは以下の通りです。

  • CPU: Realtek RTD1619B クアッドコア 1.7 GHz
  • メモリ: DDR4 1 GB (増設不可)
  • ドライブベイ: 1 x 3.5インチまたは2.5インチ SATA HDD/SSD
  • 外部ポート:
    • 1 x RJ-45 ギガビットイーサネットポート
    • 2 x USB 3.2 Gen 1 ポート (背面)
  • 対応RAIDタイプ: Basic (1ベイのためRAID機能はありません)
  • 対応ファイルシステム: 内部: Btrfs (共有フォルダー暗号化のみ対応), ext4 / 外部: Btrfs, ext4, ext3, FAT32, NTFS, HFS+, PetaDrive
  • サイズ (高さx幅x奥行): 166 x 71 x 224 mm
  • 重量: 0.7 kg
  • 消費電力:
    • アクセス時: 14.69 W
    • HDDハイバネーション時: 3.44 W

スペックからわかること:

  • CPUとメモリ: エントリークラスとしては十分な性能を持っています。ファイル共有やバックアップ、簡易的なメディア配信など、基本的な用途であれば快適に動作します。ただし、複数のユーザーによる高負荷な同時アクセスや、動画のリアルタイムトランスコーディングといった処理は苦手です。
  • ドライブベイ: 3.5インチまたは2.5インチのHDD/SSDが1台搭載可能です。NAS向けの信頼性の高いHDD(WD Red, IronWolfなど)を選ぶことを強く推奨します。最大対応容量は公開されていませんが、一般的に最新の大容量HDD(例: 22TB, 24TB)もサポートされる傾向にあります。
  • USBポート: USB 3.2 Gen 1 (旧称 USB 3.0) ポートが2つあります。これらを使って外部HDD/SSDを接続し、バックアップ先として利用したり、外部デバイスからNASへデータをコピーしたりできます。
  • ネットワーク: ギガビットイーサネットポート1つです。一般的な家庭や小規模オフィスでの利用には十分な速度を提供します。
  • サイズと重量: 非常にコンパクトで軽量です。設置場所を選びません。
  • 消費電力: NASは常時稼働させることが多いため、消費電力は重要なポイントです。DS124はHDDハイバネーション機能もあり、アイドル時の消費電力を抑えられます。これは省エネにも繋がり、電気代の節約にも貢献します。
  • ファイルシステム: 内部ドライブはExt4でフォーマットされます。(DSM7.2以降、共有フォルダ暗号化時にBtrfsを選択可能になりましたが、ボリューム全体のBtrfs機能(Snapshotなど)は利用できません)。これにより、Snapshot ReplicationなどのBtrfsに依存する高度なデータ保護機能は利用できません。その代わり、Hyper BackupやSynology Driveのバージョン管理機能でデータ保護を行います。

1.3. デザインと静音性

DS124は、Synologyの他のDiskStationモデルと同様に、シンプルで洗練されたデザインです。前面に電源ボタンとステータスLED、背面に各種ポート類が配置されています。プラスチック製の筐体ですが、しっかりとした作りになっています。

静音性については、搭載するHDDに大きく依存します。HDDはデータの読み書き時にシーク音を発するため、静音性の高いHDDを選ぶことが重要です。また、冷却ファンが搭載されていますが、通常動作時であれば比較的静かです。ただし、高負荷時はファンの回転数が上がり、音が大きくなることもあります。寝室など極端に静かな環境に置く場合は、ある程度の動作音があることを考慮する必要があります。

1.4. 価格帯と位置づけ

DS124は、SynologyのDiskStationシリーズの中でもエントリーモデル、特に「Valueシリーズ」に属します。価格は他の多ベイモデルや高性能モデルに比べて抑えられており、初めてNASを導入するユーザーにとって手が出しやすい価格帯です。

その位置づけから、DS124は以下のような用途に最適です。

  • PCやスマートフォンのデータバックアップ
  • 家族間での写真や動画の共有
  • 自宅でのファイルサーバー
  • 個人的なデータの整理・保管
  • 小規模オフィスでの基本的なファイル共有やバックアップ

逆に、以下のような用途にはあまり向いていません。

  • 多数のユーザーによる頻繁な同時アクセス
  • 4K動画などの高負荷なリアルタイムトランスコーディング
  • 仮想化環境の構築
  • 多数の監視カメラの録画
  • 高度なデータ保護機能(BtrfsのSnapshotなど)が必須の場合

DS124は、必要十分な基本機能を持ちつつ、価格と使いやすさを重視したモデルと言えます。ただし、1ベイのデータ損失リスクには十分注意が必要です。

2. DS124を始める前に:準備するもの

DS124を使い始める前に、いくつか準備しておくものがあります。

2.1. 必要なものリスト

  1. Synology DS124 本体: これがないと始まりません。
  2. 対応するHDDまたはSSD (1台): DS124の「脳」であり「心臓」となる最も重要なパーツです。別途購入が必要です。
  3. LANケーブル: DS124をネットワークに接続するために必要です。通常、本体に1本付属していますが、必要な長さや性能(カテゴリ5e以上推奨)のものを別途用意しても良いでしょう。
  4. 電源ケーブル: DS124 本体に付属しています。
  5. ルーターまたはスイッチングハブ: DS124をネットワークに接続するために必要です。ご自宅やオフィスにインターネット接続環境があれば、通常は既存のルーターに空きLANポートがあるはずです。
  6. PCまたはスマートフォン: DS124の初期設定やその後の管理は、Webブラウザ経由で行います。ネットワークに接続できるPC(Windows/macOS/Linux)やスマートフォン(iOS/Android)が必要です。
  7. インターネット接続環境 (推奨): DSMのインストールやアップデート、Synologyアカウントを使ったQuickConnectなどの機能を利用するために必要です。必須ではありませんが、多くの機能を活用するためにはあった方が便利です。

2.2. HDD/SSDの選び方

DS124に搭載するHDD/SSDは、NASの容量や性能、信頼性を左右する非常に重要な選択です。DS124は1ベイなので、搭載するドライブの容量がそのままNASの容量となります。

  • 容量: 必要な容量を見積もって選びましょう。写真、動画、音楽、ドキュメントなど、どのようなデータをどのくらいの量保存したいかによって必要な容量は変わります。最初は小さめの容量から始めて、必要に応じて後からより大容量のドライブに交換することも可能ですが、その場合はデータ移行の手間がかかります。将来的なデータ増加も見込んで、少し余裕を持った容量を選ぶのがおすすめです。
  • 種類 (HDD vs SSD):
    • HDD (Hard Disk Drive): 大容量で価格が安く、コストパフォーマンスに優れます。NASの一般的な選択肢です。
    • SSD (Solid State Drive): 読み書き速度が非常に高速ですが、価格が高く、大容量モデルは特に高価です。アクセス速度を最優先する場合や、静音性を重視する場合に選択肢となりますが、DS124のエントリークラスの性能を考えると、SSDの高速性を最大限に活かすのは難しいかもしれません。一般的にはHDDで十分です。
  • NAS向けHDDの推奨: PC用の内蔵HDDでもDS124で動作する可能性は高いですが、NASはPCと異なり基本的に24時間365日稼働し続けることを想定しています。そのため、NAS向けの耐久性・信頼性が高いHDDを選ぶことを強く推奨します。主なNAS向けHDDシリーズとしては、Western DigitalのWD Redシリーズや、SeagateのIronWolfシリーズなどがあります。これらのHDDは、NASでの連続稼働に適した設計がされており、振動対策やエラーリカバリー機能などが強化されています。
  • 互換性リストの確認: Synologyは公式ウェブサイトで、各NASモデルに対応しているHDD/SSDの互換性リストを公開しています。購入前に必ずこのリストを確認し、互換性が確認されているドライブを選ぶようにしましょう。非互換のドライブを使用すると、正常に動作しなかったり、予期せぬトラブルが発生したりする可能性があります。

2.3. 設置場所の考慮事項

DS124を設置する場所を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。

  • ネットワーク環境: ルーターやスイッチングハブの近くに設置するのが一般的です。LANケーブルで有線接続する必要があります。
  • 電源: コンセントが近くにある場所を選びましょう。
  • 換気: NASは稼働中に熱を持ちます。特にHDDは発熱するので、通気性の良い場所に設置してください。狭い隙間や直射日光が当たる場所、高温多湿な場所は避けましょう。
  • 安定性: 振動の少ない、水平で安定した場所に設置してください。HDDは振動に弱いため、振動が多い場所に置くと故障の原因となる可能性があります。
  • 静音性: 寝室など、静かな環境を求める場合は、設置場所や搭載するHDDの静音性も考慮しましょう。

3. DS124のセットアップ:はじめてのNAS構築

いよいよDS124のセットアップ手順です。初めての方でも安心して進められるように、ステップごとに詳しく解説します。

3.1. HDDの取り付け

DS124のセットアップで最初に行うのは、本体へのHDD/SSDの取り付けです。DS124はツールレス(工具不要)でドライブを取り付けられる設計になっています。

  1. 本体カバーを開ける: DS124の前面にあるカバーは、軽く引っ張ることで外れます。
  2. ドライブトレイを取り出す: カバーを外すと、ドライブを固定するためのトレイが見えます。トレイの前面にハンドルがあるので、これを引き出してトレイを本体から取り出します。
  3. HDDをトレイに取り付ける:
    • 3.5インチHDDの場合: トレイの側面にある固定用のプラスチックレールを取り外します。HDDをトレイに乗せ、取り外したレールを再度HDDの側面にパチンと音がするまで押し込み、HDDを固定します。ネジは不要です。
    • 2.5インチSSD/HDDの場合: トレイの中央にある穴と、付属のネジを使って、ドライブをトレイに固定します。(2.5インチの場合はネジ固定が必要です)
  4. ドライブトレイを本体に戻す: ドライブを取り付けたトレイを、本体のスロットに奥までしっかりと差し込みます。
  5. 本体カバーを閉じる: 前面のカバーを元通りに取り付けて閉じます。

これで物理的な準備は完了です。

3.2. DS124本体の接続

次に、DS124をネットワークと電源に接続します。

  1. ネットワーク接続: 付属または別途用意したLANケーブルの一端をDS124背面のRJ-45ポートに差し込み、もう一端をルーターまたはスイッチングハブの空きLANポートに差し込みます。
  2. 電源接続: 付属のACアダプターを使って、DS124背面の電源コネクターとコンセントを接続します。

3.3. Web Assistantを使った初期設定 (DSMインストール)

物理的な接続が完了したら、いよいよNASの頭脳となるOS「DSM (DiskStation Manager)」をインストールし、初期設定を行います。この作業は、ネットワーク上のPCまたはスマートフォンからWebブラウザを使って行います。

  1. DS124の電源を入れる: 背面の電源ボタンを一度押します。本体前面のSTATUS LEDがオレンジ色に点滅し始め、やがて青色に点灯/点滅します。これは起動中または準備中の状態です。
  2. Webブラウザを開き、Web Assistantにアクセスする:
    • DS124と同じネットワークに接続されたPCまたはスマートフォンでWebブラウザ(Chrome, Firefox, Edge, Safariなど)を開きます。
    • アドレスバーに find.synology.com と入力してアクセスします。
    • または、Synology Assistantというデスクトップアプリケーション(Windows/macOS対応)をSynologyのウェブサイトからダウンロードして起動し、ネットワーク上のSynology NASを検出させることもできます。
  3. NASの検出: find.synology.com にアクセスすると、自動的に同じネットワーク上のSynology NASが検索されます。DS124が検出されたら、その情報をクリックします。
  4. セットアップ開始: 検出されたDS124の情報(IPアドレスなど)が表示されます。「接続」または「セットアップ」のようなボタンをクリックして、セットアップウィザードを開始します。
  5. DSMのインストール: ウィザードが開始されたら、まずはDSMのインストールを行います。
    • 「インストール」を選択します。最新版のDSMをインターネットからダウンロードしてインストールするか、ローカルにあるDSMイメージファイルを選択できます。通常は「今すぐインストール」を選び、インターネット経由で最新版をインストールするのが簡単です。
    • インストールを実行すると、HDDにパーティションが作成され、DSMがインストールされます。このプロセスには数分から数十分かかることがあります。HDDの速度やインターネット接続環境によって異なります。
    • インストールが完了すると、DS124が自動的に再起動します。
  6. 基本設定: 再起動後、再度Web Assistantにアクセスすると、DSMの初期設定ウィザードが表示されます。
    • 管理者アカウントの設定: DSMにログインするための管理者アカウント(ユーザー名とパスワード)を設定します。このアカウントは非常に重要なので、忘れないように安全な場所に控えておきましょう。デフォルトのユーザー名は「admin」ですが、セキュリティ向上のため、独自のユーザー名を設定することを推奨します。
    • サーバー名の設定: ネットワーク上でDS124を識別するための名前(例: MyNAS, HomeServerなど)を設定します。
    • QuickConnectの設定 (推奨): QuickConnectは、インターネット経由でDS124に簡単にアクセスできるようにするSynologyのサービスです。Synologyアカウントを作成またはログインし、任意のQuickConnect ID(例: myds124)を設定します。これにより、自宅のルーター設定(ポートフォワーディングなど)をほとんど行うことなく、インターネット上のどこからでも quickconnect.to/your_id のようなアドレスでDS124にアクセスできるようになります。非常に便利ですが、セキュリティリスクを理解した上で利用しましょう(後述)。
    • DSMアップデート設定: DSMのアップデートを自動で行うか手動で行うかなどを設定します。セキュリティや機能向上のため、定期的なアップデートは重要です。
  7. セットアップ完了: これらの設定を終えると、DSMのデスクトップ画面が表示されます。これでDS124の基本的なセットアップは完了です。

3.4. 基本的なネットワーク設定 (固定IP推奨)

DS124は初期設定ではルーターのDHCP機能によってIPアドレスが自動的に割り当てられます。しかし、NASは特定のサービス(ファイル共有など)を提供するため、ネットワーク上の他のデバイスから常に同じアドレスでアクセスできる方が都合が良いことが多いです。そのため、DS124には固定IPアドレスを割り当てることを推奨します。

設定はDSMのコントロールパネルで行います。

  1. DSMに管理者アカウントでログインします。
  2. デスクトップ左上のメニューボタンをクリックし、「コントロールパネル」を開きます。
  3. 「ネットワーク」 > 「ネットワークインターフェイス」を選択します。
  4. 「LAN」を選択し、「編集」をクリックします。
  5. 「IPv4」タブを開き、「手動設定」を選択します。
  6. 以下の情報を入力します。(これらの情報はご使用のルーターやネットワーク環境によって異なります。ルーターの設定画面などで確認してください。)
    • IPアドレス: ネットワーク内で他のデバイスと重複しない任意の固定IPアドレス(例: 192.168.1.100)
    • サブネットマスク: ご使用のネットワークのサブネットマスク(例: 255.255.255.0)
    • デフォルトゲートウェイ: ご使用のルーターのIPアドレス(例: 192.168.1.1)
    • DNSサーバー: ご使用のルーターのIPアドレス、またはプロバイダー指定や公開DNSサーバー(例: 8.8.8.8, 1.1.1.1)
  7. 「OK」をクリックして設定を保存します。

これでDS124は常に指定したIPアドレスでネットワークに接続されるようになります。PCなどからネットワークドライブとしてマウントする際などに便利です。

4. Synology DiskStation Manager (DSM) の基本

Synology NASの最大の魅力の一つは、その独自のオペレーティングシステム「DiskStation Manager(DSM)」です。DSMはWebブラウザベースの非常に洗練されたユーザーインターフェースを持ち、まるでデスクトップOSのように直感的で使いやすい操作性を実現しています。

4.1. DSMのユーザーインターフェース概説

DSMにWebブラウザでアクセスすると、デスクトップのような画面が表示されます。

  • デスクトップ: よく使うアプリケーションのアイコンが表示されます。アイコンは自由に配置したり、フォルダーにまとめたりできます。
  • タスクバー: 画面上部に表示されます。
    • メニューボタン: インストールされている全てのアプリケーションやコントロールパネルにアクセスできます。
    • 開いているアプリケーションのウィンドウ一覧: 現在開いているウィンドウが表示され、クリックで切り替えられます。
    • 通知領域: システム通知、アップデート情報などが表示されます。
    • ユーザーメニュー: ログイン中のユーザー名が表示され、クリックするとユーザー設定、ログアウト、再起動、シャットダウンなどのオプションが表示されます。
    • ウィジェットエリア: システムリソース(CPU使用率、メモリ使用率など)、ストレージの使用状況などの情報を表示するウィジェットを追加できます。
  • ウィンドウ: アプリケーションや設定画面は、デスクトップ上でウィンドウとして表示されます。複数のウィンドウを開いて作業することも可能です。

4.2. コントロールパネルの重要項目

DSMのほとんどの設定は「コントロールパネル」で行います。コントロールパネルは、WindowsのコントロールパネルやmacOSのシステム設定のようなものです。

コントロールパネル内には多くの項目がありますが、DS124を使う上で特に重要な項目をいくつかご紹介します。

  • ファイルサービス: Windows (SMB/CIFS)、macOS (AFP)、NFSなどのファイル共有プロトコルの設定を行います。これにより、PCやスマートフォンからNAS上の共有フォルダーにアクセスできるようになります。
  • ユーザーとグループ: NASにアクセスするユーザーアカウントを作成・管理し、各ユーザーに対するアクセス権限(どの共有フォルダーにアクセスできるかなど)を設定します。
  • ネットワーク: DS124のネットワーク設定(IPアドレス、DDNS、ポートフォワーディングなど)を行います。
  • 外部アクセス: QuickConnectやDDNSなどの外部からのアクセス設定を行います。
  • ストレージマネージャー: 搭載しているHDD/SSDの状態確認、ボリューム(実際にデータを保存する領域)の作成や管理を行います。HDDの健全性チェックなどもここで行います。DS124は1ベイなので、ボリューム作成はシンプルです。
  • 共有フォルダー: 実際にファイルを保存するための共有フォルダーを作成し、アクセス権限を設定します。
  • 権限: 各アプリケーションやサービスに対するユーザー/グループの権限設定を行います。
  • タスクスケジューラー: 定期的なバックアップやスクリプトの実行など、タスクを自動化するための設定を行います。
  • 更新と復元: DSMのアップデートや、設定のバックアップ/復元を行います。
  • セキュリティ: ファイアウォール、自動ブロック、DoS対策、2段階認証などのセキュリティ設定を行います。
  • 情報センター: DS124のハードウェア情報、ネットワーク情報、ストレージ情報、サービスの状態などを確認できます。
  • サービス: 起動しているサービス(SMB、AFPなど)や、ポート設定などを確認・変更できます。

これらの項目はDS124の基本的な運用に関わるため、場所を覚えておくと良いでしょう。

4.3. パッケージセンターとは?

DSMには「パッケージセンター」という機能があり、App StoreやGoogle Playストアのように、様々なアプリケーション(パッケージ)をインストールしてDS124の機能を拡張できます。

パッケージセンターには、Synologyが提供する公式パッケージ(Synology Photos, Synology Drive, Hyper Backup, Download Stationなど)や、サードパーティが提供するパッケージなどがリストアップされています。興味のあるパッケージを選択し、「インストール」ボタンをクリックするだけで簡単に機能を追加できます。

DS124で利用できる主なパッケージには、以下のようなものがあります。(これらは後述の機能詳細で詳しく解説します)

  • Synology Drive Server
  • Hyper Backup
  • Synology Photos
  • Download Station
  • Media Server (DLNA)
  • VPN Server
  • Web Station
  • Package Center

DS124の機能を最大限に引き出すには、これらのパッケージを効果的に活用することが重要です。

4.4. DSMのアップデート方法

SynologyはDSMの機能改善、バグ修正、セキュリティ強化のために定期的にアップデートをリリースします。DS124を安全かつ快適に利用するためには、DSMを常に最新の状態に保つことが推奨されます。

DSMのアップデートは、コントロールパネルの「更新と復元」から行うことができます。

  1. コントロールパネルを開き、「更新と復元」を選択します。
  2. 「DSMアップデート」タブを開きます。
  3. 新しいバージョンが利用可能な場合、ここに表示されます。「ダウンロード」ボタンをクリックすると、アップデートファイルがダウンロードされます。
  4. ダウンロードが完了すると、「今すぐ更新」ボタンが表示されます。これをクリックすると、アップデートが開始されます。
  5. アップデート中はDS124が再起動されます。アップデートプロセスは数分から数十分かかることがあります。アップデートが完了するまで、DS124の電源を切らないでください。

自動アップデート設定を有効にしておくと、アップデートがリリースされた際に自動的にダウンロードやインストールが行われるようになります。セキュリティアップデートなど、重要なアップデートについては自動インストールを有効にしておくことを検討しましょう。

5. DS124の主要機能詳細

ここからは、DS124で利用できる主要な機能を具体的にどのように使うのかを詳しく解説します。

5.1. ファイルサーバー機能

NASの最も基本的な機能であり、DS124の中心的な役割の一つです。家庭内の複数のPCやスマートフォンから、または小規模オフィス内で共同でファイルにアクセスしたり、共有したりすることができます。

使い方:

  1. 共有フォルダーの作成:
    • DSMのコントロールパネルを開き、「共有フォルダー」を選択します。
    • 「作成」ボタンをクリックし、「共有フォルダーの作成」を選択します。
    • フォルダー名を入力し、必要に応じて説明を追加します。
    • ごみ箱機能を有効にするかなどを設定します。
    • 高度な設定(共有フォルダーの暗号化など – DS124は共有フォルダー単位のBtrfs暗号化に対応)も可能ですが、最初は基本的な設定で良いでしょう。
    • 「次へ」進み、この共有フォルダーにアクセスを許可するユーザー/グループと、それぞれの権限(読み取りのみ、読み書き可能、アクセスなし)を設定します。特定のユーザーだけが見られるフォルダー、全員が見られるフォルダーなどを細かく設定できます。
    • 設定内容を確認し、「適用」をクリックすると共有フォルダーが作成されます。
  2. PCからのアクセス (Windows):
    • Windowsのエクスプローラーを開きます。
    • アドレスバーに \\DS124のIPアドレス または \\DS124のサーバー名 と入力してEnterキーを押します。(例: \\192.168.1.100 または \\MyNAS
    • DSMで設定したユーザー名とパスワードを入力してログインします。
    • 作成した共有フォルダーが表示され、PCの内蔵ストレージと同じようにファイルやフォルダーを操作できます。
    • よく使う共有フォルダーは、ネットワークドライブとして割り当てておくと便利です。(エクスプローラーの「PC」で右クリック > 「ネットワークドライブの割り当て」から設定)
  3. PCからのアクセス (macOS):
    • Finderを開き、「移動」メニューから「サーバーへ接続…」を選択します。
    • 「サーバーアドレス」に smb://DS124のIPアドレス または smb://DS124のサーバー名 と入力して「接続」をクリックします。(Macの場合、macOS High Sierra以降はSMB接続が推奨されています)
    • DSMで設定したユーザー名とパスワードを入力してログインします。
    • 利用可能な共有フォルダーが表示されるので、接続したいフォルダーを選択して「OK」をクリックします。
    • デスクトップやFinderのサイドバーにNASが表示され、ファイル操作が可能になります。
  4. PCからのアクセス (Linux):
    • ファイルマネージャー(Nautilus, Dolphinなど)を開き、「他の場所」や「ネットワーク」などからNASをブラウします。
    • または、マウントコマンドを使ってファイルシステムとしてマウントすることも可能です。プロトコルはSMBが一般的です。
  5. WebDAVアクセス: WebDAVを有効にすると、HTTPS経由でインターネット越しにもファイルにアクセスできます。DSMのパッケージセンターから「WebDAV Server」をインストールして設定します。
  6. ファイル転送速度: DS124のエントリーモデルとしての性能から、ギガビットイーサネットの理論値(約125MB/s)に近い速度が出ることもありますが、実際のファイル転送速度はネットワーク環境、クライアントPCの性能、HDDの速度、ファイルの種類(細かいファイルか大きなファイルか)などによって大きく変動します。特に多数の細かいファイルを転送する場合は速度が低下しやすい傾向があります。一般的な家庭での利用や、数台のPCからのアクセスであれば十分な速度が得られるでしょう。

5.2. データ保護とバックアップ

1ベイNASであるDS124において、データのバックアップは最も重要な機能と言っても過言ではありません。HDDが1台しかないため、故障は即データの消失に繋がります。必ず複数の場所にバックアップを取りましょう。DS124は、PCやスマートフォンだけでなく、NAS自身のデータをバックアップするための多様な機能を提供しています。

DS124はBtrfsファイルシステムに対応していないため、Snapshot Replication機能は利用できません。その代わり、以下の機能を使ってデータ保護を行います。

5.2.1. Synology Drive (同期とバージョン管理)

Synology Driveは、NASを自分専用のプライベートクラウドストレージのように利用できる機能です。PCやスマートフォンの特定のフォルダーとNAS上のフォルダーを同期したり、どこからでもファイルにアクセスしたり、ファイルのバージョン管理を行ったりできます。

使い方:

  1. Synology Drive Serverのインストール: パッケージセンターから「Synology Drive Server」をインストールします。
  2. 同期タスクの設定 (PC/Mac):
    • PC/Macに「Synology Drive Client」アプリケーションをインストールします。(Synologyウェブサイトからダウンロード)
    • Synology Drive Clientを起動し、DS124に接続します(IPアドレスまたはQuickConnect IDで接続)。
    • 同期タスクを設定します。PC上のどのローカルフォルダーと、NAS上のどのSynology Driveフォルダー(デフォルトで作成されるHomeフォルダー内のDriveフォルダーなど)を同期するかを指定します。双方向同期、一方向アップロード、一方向ダウンロードなどを選択できます。
    • 設定したフォルダー間のファイルは自動的に同期されます。PCからファイルを編集・保存すると、NAS上のファイルも更新されます。
  3. ファイルへのアクセスと共有 (PC/Mac):
    • Synology Drive Clientのタスクトレイアイコンから、同期フォルダーを開いたり、NAS上のDriveフォルダー全体にアクセスしたりできます。
    • ファイルやフォルダーを右クリックし、「Synology Drive」メニューから共有リンクを作成したり、以前のバージョンを参照・復元したりできます。
  4. スマートフォンからのアクセス (iOS/Android):
    • スマートフォンに「Synology Drive」モバイルアプリをインストールします。(App Store/Google Playストアからダウンロード)
    • アプリを起動し、DS124に接続します(IPアドレスまたはQuickConnect IDで接続)。
    • NAS上のDriveフォルダー内のファイルにアクセス、ダウンロード、アップロード、共有などができます。自動写真バックアップ機能なども利用可能です。
  5. バージョン管理: Synology Driveは、ファイルの変更履歴を自動的に保存します。誤ってファイルを削除したり、上書きしてしまったりした場合でも、過去のバージョンから簡単に復元できます。バージョン数をどのくらい保持するかは、Drive Admin Consoleパッケージから設定できます。

5.2.2. Hyper Backup (柔軟なバックアップ)

Hyper Backupは、DS124に保存されているデータを、様々な場所にバックアップするための包括的なパッケージです。1ベイNASのデータ損失リスクを補うための最も重要な機能の一つです。

バックアップ先として利用できるもの:

  • ローカルフォルダー&外部USBドライブ: DS124内の別のフォルダーや、DS124に接続した外部USBドライブ/SSDへのバックアップ。手軽で高速ですが、同じ場所にバックアップを取ることになるため、火災や盗難といった物理的なリスクに対しては脆弱です。
  • 別のSynology NAS: 別のSynology NASにネットワーク経由でバックアップします。離れた場所に設置した別のNASにバックアップすれば、物理的なリスクに対する耐性が高まります。
  • rsync対応サーバー: rsyncプロトコルに対応した他のNASやサーバーにバックアップします。
  • クラウドストレージ: Google Drive, Dropbox, Microsoft Azure, Amazon S3など、主要なクラウドストレージサービスにバックアップします。インターネット経由での転送速度やコストはかかりますが、災害対策としては有効です。Synology独自のクラウドサービス「Synology C2 Storage」も利用可能です。

使い方 (例: 外部USBドライブへのバックアップ):

  1. Hyper Backupのインストール: パッケージセンターから「Hyper Backup」をインストールします。
  2. バックアップタスクの作成:
    • Hyper Backupを起動し、左下の「+」ボタンをクリックして「データバックアップタスク」を選択します。
    • バックアップ先として「ローカルフォルダー&USB」を選択し、「次へ」をクリックします。
    • 「共有フォルダーまたは外部ストレージ」で、接続した外部USBドライブを選択します。タスク名を入力し、「次へ」をクリックします。
    • バックアップしたい共有フォルダーまたはアプリケーションを選択します。(例えば、作成した「写真」フォルダーや、「Synology Photos」アプリのデータなど)
    • バックアップ設定を行います。タスクのスケジュール(毎日、毎週など)、クライアント構成のバックアップ(ユーザーアカウント設定など)、バックアップの整合性チェック、データ圧縮、クライアントサイド暗号化(バックアップ先のデータが暗号化される)などのオプションがあります。セキュリティのため、暗号化を有効にすることを推奨します。
    • バックアップローテーションを設定します。これは、古いバックアップバージョンを自動的に削除して容量を節約するための重要な設定です。Smart Recycleなどのポリシーを選択できます。
    • 設定内容を確認し、「完了」をクリックします。すぐにバックアップを実行するか尋ねられるので、必要に応じて実行します。
  3. バックアップの実行と管理: 設定したスケジュールに従ってバックアップが自動的に実行されます。Hyper Backupの画面で、タスクの実行状況、履歴、使用容量などを確認できます。必要に応じて手動でバックアップを実行することも可能です。
  4. データの復元: Hyper Backupの画面左下にある右向き矢印のアイコンをクリックし、「データ復元」を選択します。復元したいバックアップタスクとバージョンを選択し、どのフォルダーやファイル、あるいはアプリケーションを復元するかを選択します。元の場所に上書き復元するか、別の場所に復元するかなども選択できます。

Hyper Backupは非常に多機能で、DS124のデータ保護戦略の要となります。外部USBドライブへのローカルバックアップと、Synology C2 Storageなどのクラウドへのリモートバックアップを組み合わせるのが、DS124で最も堅牢なバックアップ体制の一つと言えるでしょう(「3-2-1ルール」:3つのコピー、2つの異なるメディア、1つはオフサイトに保管)。

5.2.3. USB Copy

DS124の背面にUSBドライブを接続した際に、あらかじめ設定しておいたルールに従って自動的にコピー/バックアップを行う機能です。Hyper Backupよりもシンプルで手軽に使いたい場合に便利です。

使い方:

  1. USB Copyのインストール: パッケージセンターから「USB Copy」をインストールします。
  2. コピー/バックアップタスクの設定:
    • USB Copyを開き、「作成」をクリックします。
    • タスクの種類(データのコピー、データのインポートなど)、コピー元(DS124上のフォルダーまたは外部USBドライブ)、コピー先(DS124上のフォルダーまたは外部USBドライブ)を指定します。
    • コピーの方向(DS124からUSBへ、またはUSBからDS124へ)を選択します。
    • タスク名を設定し、必要に応じてファイルフィルター(特定の拡張子のみコピーするなど)や、既存ファイルの処理方法(上書き、スキップなど)を設定します。
    • 外部USBドライブが接続されたら自動的にタスクを実行するかどうかを設定します。
    • 設定を保存します。
  3. 実行: 設定したUSBドライブをDS124のUSBポートに接続すると、設定に従って自動的にコピー/バックアップが実行されます。(自動実行を設定した場合)

例えば、「毎週金曜日の夜に外部USBドライブをDS124に接続したら、自動的に特定の共有フォルダーのデータがUSBドライブにコピーされる」といった運用が可能です。

5.3. マルチメディア機能

DS124は、写真、動画、音楽といったマルチメディアファイルを一元管理し、家庭内の様々なデバイスからアクセス・再生するための機能も提供しています。

5.3.1. Synology Photos

Synology Photosは、写真と動画を管理、整理、閲覧するためのモダンなアプリケーションです。AIによる顔認識や物体認識、位置情報、タイムライン表示など、クラウドストレージの写真サービスに近い機能を提供します。

使い方:

  1. Synology Photosのインストール: パッケージセンターから「Synology Photos」をインストールします。
  2. 写真/動画のアップロード:
    • PCからWebブラウザ経由でDSMのSynology Photosを開き、ドラッグ&ドロップなどでファイルをアップロードします。
    • スマートフォンに「Synology Photos」モバイルアプリをインストールし、アプリから直接アップロードします。自動バックアップ機能を有効にすると、スマートフォンのカメラロールの写真を自動的にNASにアップロードできます。
  3. 写真/動画の管理と閲覧:
    • Synology PhotosのWebインターフェースやモバイルアプリから、アップロードした写真や動画をタイムライン表示やフォルダー表示で閲覧できます。
    • AIが写真に写っている人物や物体、場所などを認識し、アルバムを自動作成してくれます。
    • キーワードや条件で写真を検索できます。
    • アルバムを作成して写真を整理したり、特定の写真やアルバムを他のユーザーと共有したりできます。
  4. アクセス権限: Synology Photosには「個人スペース」と「共有スペース」の2つのスペースがあります。「個人スペース」は各ユーザー専用のスペースで、他のユーザーは原則アクセスできません。「共有スペース」は複数のユーザーで共通の写真を管理するためのスペースで、共有フォルダーのアクセス権限とは別にSynology Photos内で権限設定を行います。

Synology Photosは、家族や友人と写真を共有したり、膨大な写真ライブラリを整理したりするのに非常に便利な機能です。

5.3.2. Media Server (DLNA)

Media Serverパッケージは、DS124をDLNAメディアサーバーとして機能させます。これにより、DLNAに対応したテレビ、ゲーム機(PlayStation, Xbox)、メディアプレーヤー、スマートフォンなどのデバイスから、NAS上の動画、音楽、写真をストリーミング再生できるようになります。

使い方:

  1. Media Serverのインストール: パッケージセンターから「Media Server」をインストールします。
  2. メディアフォルダーの設定: Media Serverの設定画面で、メディアファイル(動画、音楽、写真)が保存されている共有フォルダーを指定します。(デフォルトではphoto, video, musicフォルダーが指定されています)
  3. DLNAクライアントからのアクセス: 同じネットワーク上のDLNA対応デバイスから、DS124(設定したサーバー名で表示されることが多い)を選択し、メディアファイルをブラウして再生します。

注意点: DS124はCPUのトランスコーディング(再生デバイスに合わせて動画形式をリアルタイムに変換する処理)能力は高くありません。そのため、DLNA経由での再生は、基本的に再生デバイスがNAS上の動画形式(MP4, MKVなど)をそのまま再生できる(ダイレクト再生)場合に限られます。再生デバイスが対応していない形式の場合、スムーズに再生できないことがあります。高負荷なトランスコーディングを必要とする用途(例えば、外出先からモバイル回線で高画質動画をスムーズに視聴するなど)には、より高性能なSynology NASモデルが必要になります。DS124は主に家庭内でのダイレクト再生や、スマートフォンでの写真・音楽鑑賞に向いています。

5.3.3. Video Station / Audio Station

これらのパッケージは、Synology独自のメディア管理・再生アプリケーションです。Media ServerがDLNA対応機器向けなのに対し、Video StationやAudio StationはWebブラウザや専用モバイルアプリ(DS video, DS audio)を使ってメディアにアクセス・再生します。

  • Video Station: 動画ファイルの管理、情報の取得(映画タイトル、俳優など)、ポスター表示、再生リスト作成、視聴進捗の記録などが行えます。DS videoモバイルアプリを使えば、スマートフォンやタブレットからNAS上の動画をストリーミング再生できます。(ただし、DS124のトランスコーディング能力は限定的です。)
  • Audio Station: 音楽ファイルの管理、アルバムアート表示、再生リスト作成、歌詞表示、インターネットラジオ再生などが行えます。DS audioモバイルアプリを使えば、スマートフォンからNAS上の音楽をストリーミング再生できます。

これらもパッケージセンターからインストールして利用します。

5.4. Download Station (ダウンロードステーション)

Download Stationは、PCを起動していなくても、DS124自身がインターネットからファイルをダウンロードする機能です。HTTP, FTP, BitTorrent, emule, NZBなどの様々なプロトコルに対応しています。

使い方:

  1. Download Stationのインストール: パッケージセンターから「Download Station」をインストールします。
  2. ダウンロードタスクの追加:
    • Download Stationを開き、「+」ボタンをクリックします。
    • ダウンロードしたいファイルのURLを入力するか、TorrentファイルやNZBファイルをアップロードします。
    • ダウンロード先のフォルダーを指定します。
    • 必要に応じて、ユーザー名/パスワード、最大ダウンロード/アップロード速度などの設定を行います。
    • 「OK」をクリックすると、ダウンロードが開始されます。
  3. ダウンロードの管理: Download Stationの画面で、ダウンロードの進捗状況を確認したり、一時停止、再開、削除などの操作を行ったりできます。

PCを常時起動しておく必要がなく、電気代の節約にもなります。特にサイズの大きなファイルをダウンロードする際に便利です。

5.5. セキュリティ機能

NASはネットワークに接続され、インターネット経由でアクセス可能にすることも多いため、セキュリティ対策は非常に重要です。DSMには、NASを不正アクセスから保護するための様々なセキュリティ機能が備わっています。

重要なセキュリティ設定:

  • DSMのセキュリティ設定 (コントロールパネル > セキュリティ):
    • ファイアウォール: ネットワークトラフィックを制御し、特定のIPアドレスやポートからのアクセスを許可/拒否するルールを設定できます。外部からのアクセスを許可する場合、不要なポートは閉じておきましょう。
    • 自動ブロック: 不正なログイン試行(パスワード間違いなど)が繰り返されたIPアドレスを自動的にブロックする設定です。ブルートフォース攻撃対策に有効です。
    • DoS対策: Denial of Service攻撃(サービス拒否攻撃)からNASを保護する設定です。
  • 2段階認証: DSMへのログイン時に、パスワードに加えてスマートフォンアプリなどで生成されるコード(ワンタイムパスワード)の入力を求める設定です。これにより、パスワードが漏洩した場合でも不正ログインを防ぐ確率を高められます。管理者アカウントだけでなく、他のユーザーアカウントにも設定することを推奨します。
    • 設定は、DSMのユーザーアイコンをクリックし、「個人設定」>「アカウント」タブから行えます。
  • Security Advisor: DSMのセキュリティ設定を診断し、改善点を提案してくれる機能です。定期的に実行して、セキュリティの状態を確認しましょう。パッケージセンターからインストールします。
  • QuickConnect使用時の注意点: QuickConnectは非常に便利な機能ですが、インターネット経由でNASがSynologyのサーバーを介して公開されるため、適切な対策が必要です。
    • 強力なパスワードの使用: DSMアカウントのパスワードは長く複雑なものにしましょう。
    • 管理者アカウント名の変更: デフォルトの「admin」から推測されにくい名前に変更しましょう。
    • 自動ブロックと2段階認証の有効化: 必ず有効にしましょう。
    • 不要なサービスの停止: 使用しないファイルサービス(NFSなど)やパッケージは無効にしておきましょう。
    • QuickConnectに依存せず、DDNSとポートフォワーディングを使ってアクセスする方が、自身でポートを管理できるためセキュリティリスクをよりコントロールしやすい側面もありますが、設定がやや複雑になります。

5.6. その他の便利な機能

DS124は他にも様々な便利な機能を提供しています。

  • Resource Monitor: CPU使用率、メモリ使用率、ネットワークトラフィック、ディスクI/Oなど、DS124のリソース使用状況をリアルタイムで確認できます。パフォーマンスの問題が発生した際に原因を特定するのに役立ちます。
  • Log Center: システムログや各パッケージのログを確認できます。エラーや警告などの情報をチェックすることで、問題の早期発見に繋がります。
  • Task Scheduler: 指定した日時や間隔で、スクリプトの実行、サービス開始/停止、ごみ箱を空にするなどのタスクを自動化できます。
  • 外部アクセス設定 (DDNS, ポートフォワーディング): QuickConnectを使わない場合、インターネット経由でDS124にアクセスするには、DDNS(Dynamic DNS)サービスとルーターのポートフォワーディング設定が必要です。DDNSは、変動するグローバルIPアドレスに対して固定のホスト名(例: mynas.synology.me)を割り当てるサービスです。ポートフォワーディングは、ルーターに届いた特定のポートへの通信をDS124のローカルIPアドレスに転送する設定です。DSMのコントロールパネル「外部アクセス」や、ご使用のルーター設定画面から行います。設定はやや複雑ですが、よりセキュアに外部アクセスを確立できます。

6. DS124の応用的な使い方 (エントリーモデルで可能な範囲)

DS124はエントリーモデルですが、パッケージセンターを活用することで、さらにいくつかの応用的な使い方が可能です。ただし、高性能モデルほど快適に動作するわけではないため、あくまで簡易的な利用に留めるのが現実的です。

  • 簡易的なWebサーバー (Web Station): 静的なHTMLサイト程度であれば、Web Stationパッケージをインストールして公開できます。ただし、PHPやデータベース(MariaDB)もインストール可能ですが、DS124の性能では大規模なWordPressサイトなどを動かすのは難しいでしょう。あくまでテスト用や小規模な個人サイト向けです。
  • VPNサーバー/クライアント (VPN Server/Client): VPN Serverパッケージをインストールすれば、自宅のDS124をVPNサーバーとして利用し、外出先から自宅ネットワークに安全にアクセスできるようになります。VPN Clientパッケージを使えば、DS124自身がVPNクライアントとして別のVPNサーバーに接続することも可能です。

DS124はIntel CPUや豊富なメモリを搭載した高性能モデルのように、Dockerや仮想マシン、高度な監視機能などを多数同時に実行するような用途には向きません。その能力に見合った範囲での応用的な利用に留めるのが賢明です。

7. DS124のメリットとデメリット

これまでの説明を踏まえ、DS124のメリットとデメリットをまとめてみましょう。

7.1. メリット

  • 低価格: Synology NASのエントリーモデルとして、導入コストが抑えられています。
  • 省スペース&低消費電力: コンパクトで軽量、消費電力も低く、家庭や小規模オフィスに設置しやすいです。
  • DSMの使いやすさ: Synology独自のOSであるDSMは、初心者でも直感的に操作できる洗練されたインターフェースを持っています。
  • ファイルサーバー、バックアップ、写真管理に最適: これらの基本的なNAS機能は、DS124の性能で十分に快適に利用できます。特にSynology DriveやHyper Backup、Synology Photosといった充実したパッケージは大きな魅力です。
  • 静音性: 搭載するHDDにもよりますが、通常動作時は比較的静かです。

7.2. デメリット

  • 1ベイによる冗長性の欠如: 最大のデメリットです。HDDが1台故障すると、全てのデータが失われるリスクがあります。必ず別の場所にバックアップを取る必要があります。
  • パフォーマンスの限界: エントリークラスのCPUとメモリのため、多数のユーザーによる同時アクセス、高負荷な処理(高画質動画のトランスコーディング、仮想化など)には向きません。
  • 機能制限: Btrfsファイルシステムに完全に非対応なため、Snapshot Replicationといった高度なデータ保護機能が利用できません。また、Dockerなど一部のパッケージも利用できません。
  • メモリ増設不可: メモリは1GB固定で増設できません。
  • LANポートが1つのみ: Link Aggregationによる速度向上や冗長化はできません。

8. DS124はどんな人におすすめか?

DS124のメリットとデメリットを踏まえると、以下のような方に特におすすめできるNASです。

  • NASを初めて使う人: 操作が簡単で、基本的な機能に絞られているため、NASの入門機として最適です。
  • 予算を抑えたい人: NAS本体の価格だけでなく、搭載するHDDが1台で済むため、初期コストを抑えられます。
  • 自宅でのファイル共有やPC/スマホのデータバックアップが主目的の人: PCやスマートフォンの容量不足を解消したり、大切なデータのバックアップ先としてDS124は十分な能力を発揮します。
  • 家族の写真や動画を共有・管理したい人: Synology Photosを使えば、簡単に一元管理・共有が可能です。
  • データ容量がそれほど大きくない人: 搭載できるHDDは1台なので、保存したいデータ総量が比較的少ない場合に向いています。(とはいえ、最新のHDDを使えば数十TBの容量を確保できます)
  • 高度な機能(仮想化、多数の監視カメラ、高負荷メディアトランスコーディングなど)を必要としない人: シンプルな用途で十分な方にはオーバースペックな機能がない分、無駄がありません。

逆に、以下のようなニーズを持つ方には、多ベイモデルや高性能モデルなど、他のSynology NASを検討することをおすすめします。

  • データの冗長性が最重要で、HDD故障によるデータ損失リスクを極力避けたい(RAID 1以上を構築したい)
  • NASに数十TB以上の大容量データや、動画などの高負荷なデータを多数保存したい
  • 複数のユーザーが同時に頻繁に高負荷なアクセスを行う環境
  • NAS上で仮想マシンを動かしたり、Dockerコンテナを多数実行したりしたい
  • 複数の監視カメラを常時録画したい
  • 外出先から動画をリアルタイムにトランスコーディングして視聴したい

DS124は、あくまで「エントリークラスの1ベイNAS」であることを正しく理解し、自身の利用目的と照らし合わせて選択することが重要です。そして、繰り返しになりますが、1ベイNASではデータの冗長性がないため、Hyper Backupなどを活用した別途のバックアップが必須です。

9. トラブルシューティングのヒント

DS124を使っていく中で、もしトラブルが発生した場合の一般的な対処法をいくつかご紹介します。

  • DSMにアクセスできない場合:
    • DS124本体の電源が入っているか確認します。
    • DS124とルーター/スイッチングハブがLANケーブルで正しく接続されているか確認します。
    • DS124に割り当てられたIPアドレスが正しいか確認します。(ルーターの管理画面やSynology Assistantで確認できます)
    • PCやスマートフォンがDS124と同じネットワークに接続されているか確認します。
    • PCやスマートフォンのファイアウォールがDSMへのアクセスをブロックしていないか確認します。
    • Webブラウザのキャッシュをクリアしたり、別のブラウザで試したりします。
    • DS124を再起動してみます。
  • ファイル転送が遅い場合:
    • DS124とPC/スマートフォンが有線接続されているか確認します。(無線接続は有線接続より遅くなります)
    • 使用しているLANケーブルがカテゴリ5e以上であるか確認します。
    • ルーターやスイッチングハブがギガビットイーサネットに対応しているか確認します。
    • PCのストレージ(HDD/SSD)の速度も転送速度に影響します。
    • 同時に多くのファイル転送や、DS124上で他の高負荷な処理(バックアップなど)が実行されていないか確認します。
    • Resource MonitorでDS124のCPU、メモリ、ネットワーク、ディスクの使用率が高すぎないか確認します。
    • HDDのS.M.A.R.T.情報などで、HDDに異常がないか確認します。(ストレージマネージャーで確認できます)
  • HDDの異常を検知した場合:
    • DSMの通知やストレージマネージャーで、HDDに警告やエラーが表示されていないか確認します。
    • S.M.A.R.T.テストを実行して、HDDの健康状態を確認します。
    • 異常が見つかった場合は、HDDの故障が近い可能性があります。すぐに別途バックアップを取るか、最新のバックアップがあることを確認してください。 1ベイモデルの場合、HDDが故障するとデータが失われます。
    • 新しい互換性のあるHDDに交換し、DS124のセットアップをやり直すか、バックアップからデータを復元する必要があります。
  • Synologyサポートへの問い合わせ方法:
    • DSMのヘルプメニューから「Synologyに連絡」を選択すると、サポートセンターへの問い合わせフォームが表示されます。システムログなどを添付して問い合わせることができます。
    • Synologyの公式ウェブサイトにも、サポートページやコミュニティフォーラムがあります。

トラブルシューティングを行う際は、まずDSMの通知やログを確認し、どこに問題があるかの糸口を探すことが重要です。

10. まとめ:DS124の総評と今後のNAS活用

Synology DS124は、初めてNASを導入する家庭ユーザーや小規模オフィスにとって、非常に魅力的な選択肢です。手頃な価格、コンパクトなサイズ、そして何よりもSynology DSMの圧倒的な使いやすさによって、NASの基本的なメリット(データの一元管理、共有、バックアップ)を比較的容易に享受できます。

特に、PCやスマートフォンの容量不足解消、家族写真の共有、PCやスマートフォンのデータバックアップといった用途には、DS124の性能は十分です。Synology Photos、Synology Drive、Hyper Backupといった強力なパッケージを活用することで、これらのニーズにしっかりと応えることができます。

ただし、DS124が1ベイNASであること、すなわちデータの冗長性がなく、HDD故障が即データ損失に繋がりうるという最大のデメリットは、決して忘れてはなりません。DS124を導入する際は、必ず Hyper Backupなどを利用して、DS124内のデータを外部USBドライブやクラウドストレージなど、別の場所に定期的にバックアップする体制を確立してください。 これは、DS124を安全に運用するための絶対条件です。

また、DS124はエントリーモデルゆえに、高性能なCPUや大容量メモリを持つモデルに比べると、同時に多くのユーザーがアクセスする場合や、動画のリアルタイムトランスコーディング、仮想化、多数のDockerコンテナ実行といった高負荷な用途には向きません。これらの高度な機能を求める場合は、DS224+、DS923+など、より上位のモデルを検討する必要があります。

DS124は、「手軽にNASを始めてみたい」「自宅のファイル管理やバックアップを強化したい」「Synologyのエコシステムに触れてみたい」といった方に最適なモデルです。DS124を通じてNAS活用の第一歩を踏み出し、データ管理の利便性や安心感をぜひ体験してみてください。そして、将来的にデータ量や用途が増えてきた際に、DS124で培った知識と経験を活かして、より高性能なNASへとステップアップしていくことも可能です。

あなたのデジタルライフが、Synology DS124によってより豊かで安全なものになることを願っています。


免責事項:
本記事は、Synology DS124に関する一般的な情報と使い方について解説したものですが、記載されている情報(仕様、機能、操作手順など)は、DSMのバージョンアップや製品仕様の変更によって将来的に変わる可能性があります。また、個々のネットワーク環境や使用状況によって、記載通りの性能が得られない場合や、予期せぬ問題が発生する可能性もあります。製品の最新情報や詳細については、必ずSynologyの公式ウェブサイトやヘルプドキュメントをご確認ください。本記事の情報を利用したことにより発生したいかなる損害についても、筆者および公開者は一切の責任を負いません。

著作権について:
Synology DiskStation Manager (DSM)、Synology Photos、Synology Drive、Hyper Backupなどの名称は、Synology Inc. の登録商標または商標です。その他の製品名や会社名は、各社の商標または登録商標です。


(終) 約5000語
はい、承知いたしました。Synology DS124の機能と使い方に関する約5000語の詳細な記事を作成します。記事の構成案に基づき、各項目を丁寧に記述します。


【徹底解説】Synology DS124の機能と使い方 – 自宅・小規模オフィス向けNAS完全ガイド

はじめに:Synology DS124とは?なぜ今、NASが必要なのか?

現代社会において、データは私たちの生活や仕事の基盤となっています。PCやスマートフォン、デジタルカメラで撮影した写真や動画、仕事で作成した重要なドキュメントなど、その量は年々増加の一途をたどっています。これらの大切なデータをどのように安全に保管し、どこからでもアクセスできるようにするかが大きな課題となっています。

かつて、データの保管場所といえばPCの内蔵ストレージや外付けHDDが主流でした。しかし、内蔵ストレージはPCが故障するとアクセスできなくなるリスクがあり、外付けHDDは接続しているPCからしか利用できない、複数人で共有しにくいといった制限があります。また、クラウドストレージも便利ですが、無料容量には限りがあり、大容量を利用するにはコストがかかるほか、インターネット経由でのアクセス速度やセキュリティ、プライバシーに関する懸念を持つ人も少なくありません。

そこで注目されているのが「NAS」(Network Attached Storage)です。NASはネットワークに直接接続して使用するストレージデバイスで、自宅やオフィス内のどこからでも、複数のデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)から同時にアクセス・共有が可能です。NASは単なるデータの保管場所にとどまらず、データのバックアップ、同期、マルチメディアの配信、さらには簡易的なサーバー機能まで、様々な用途に活用できます。

数あるNAS製品の中でも、Synology(シノロジー)は高い機能性と使いやすい操作性で世界的に評価されているメーカーです。そのSynologyが提供するモデルの中から、本記事では「Synology DiskStation DS124」に焦点を当て、その機能や使い方を徹底的に解説します。

DS124は、Synologyのラインナップの中でも特に自宅ユーザーや小規模オフィス向けの入門機として位置づけられています。コンパクトなボディに必要十分な機能を凝縮し、初めてNASを導入する方でも比較的簡単に扱えるように設計されています。この記事では、DS124の基本的なセットアップから、ファイルサーバー、バックアップ、マルチメディア機能といった主要な使い方、さらには知っておくと便利な応用的な活用方法まで、詳しくご紹介します。

この記事を読むことで、あなたは以下のことができるようになります。

  • Synology DS124がどのようなNASであるかを理解する。
  • DS124のハードウェア仕様と機能を把握する。
  • DS124の購入前の準備と初期セットアップをマスターする。
  • Synology独自のOS「DSM(DiskStation Manager)」の基本的な操作方法を学ぶ。
  • DS124をファイルサーバー、バックアップ先、メディアサーバーとして活用する方法を知る。
  • DS124のメリット・デメリットを理解し、自分に合ったNASかどうかを判断する。

NASの導入を検討している方、DS124に興味がある方、そして既にDS124を持っているけれどもっと活用したいと考えている方にとって、この記事がDS124を最大限に使いこなすための一助となれば幸いです。

1. Synology DS124の概要と特徴

Synology DS124は、2023年夏にリリースされた家庭および小規模オフィス向けの1ベイNASです。Synologyのモデル名規則では、「DS」はDiskStation(デスクトップ型NAS)を、「1」はベイ数(ストレージドライブを搭載できるスロットの数)を、「24」はリリース年(2024年向けモデル)を示しています。つまり、DS124は「1台のHDD/SSDを搭載できる、2024年モデルのデスクトップ型NAS」ということになります。

1.1. 1ベイNASであることの意味

DS124の最大の特徴は「1ベイ」であるという点です。これは、内蔵できるストレージドライブが1台のみであることを意味します。

メリット:

  • コンパクト&低コスト: 搭載できるドライブが少ないため、本体サイズが小さく、購入価格も抑えられています。NAS本体だけでなく、搭載するドライブが1台で済むため、ストレージの初期費用も低く抑えられます。
  • シンプル: 設定や管理が他の多ベイモデルに比べてシンプルです。初めてNASを使う方でも戸惑いにくい設計です。

デメリット:

  • 冗長性の欠如: 1台のドライブに全てのデータが保存されるため、そのドライブが故障した場合、保存していた全てのデータが失われるリスクがあります。多ベイモデルであれば、RAID構成(例: RAID 1, RAID 5)によってドライブの故障に備えることができますが、1ベイモデルではそれができません。DS124を使用する場合、別途バックアップ手段(外部HDD、クラウドストレージ、別のNASなど)を必ず確保することが非常に重要です。DS124の運用において、バックアップは「推奨」ではなく「必須」と考えるべきです。
  • 容量の限界: 搭載できるドライブは1台のみなので、そのドライブの容量がそのままNASの最大容量となります。ただし、現在では1台で20TBを超える大容量HDDも入手可能なため、個人や小規模オフィスであれば十分な容量を確保できる場合が多いでしょう。

1.2. ハードウェアスペック

DS124の主なハードウェアスペックは以下の通りです。

  • CPU: Realtek RTD1619B クアッドコア 1.7 GHz
  • メモリ: DDR4 1 GB (オンボード、増設不可)
  • ドライブベイ: 1 x 3.5インチまたは2.5インチ SATA HDD/SSD
  • 外部ポート:
    • 1 x RJ-45 ギガビットイーサネットポート
    • 2 x USB 3.2 Gen 1 ポート (背面)
  • 対応RAIDタイプ: Basic (1ベイのためRAID機能はありません)
  • 対応ファイルシステム: 内部ボリューム: ext4 / 共有フォルダー暗号化用Btrfs / 外部デバイス: Btrfs, ext4, ext3, FAT32, NTFS, HFS+, PetaDrive
  • サイズ (高さx幅x奥行): 166 x 71 x 224 mm
  • 重量: 0.7 kg (ドライブ除く)
  • 消費電力:
    • アクセス時: 14.69 W
    • HDDハイバネーション時: 3.44 W
  • 稼働音: 14.8 dB(A) (アイドル時、メーカー公称値、ただしHDDの動作音を除く)

スペックからわかること:

  • CPUとメモリ: エントリークラスのNASとしてバランスの取れた構成です。ファイル共有、Hyper Backupによるバックアップ、Synology Driveによる同期/バージョン管理、Synology Photosによる写真管理といった基本的な用途であれば、比較的スムーズに動作します。しかし、メモリが1GBと少ないため、多数のパッケージを同時に実行したり、同時に多くのユーザーがアクセスしたりすると、パフォーマンスが低下する可能性があります。動画のリアルタイムトランスコーディングなどのCPU負荷が高い処理は得意ではありません。
  • ドライブベイ: 3.5インチまたは2.5インチのHDD/SSDを1台搭載可能です。ホットスワップ(電源を入れたままの交換)には対応していません。HDDの取り付けはツールレスで行えます(2.5インチの場合はネジ止めが必要です)。
  • USBポート: 背面に2つのUSB 3.2 Gen 1ポートがあります。外部HDD/SSDを接続して、NASのバックアップ先として利用したり、PCレスでUSBデバイスからNASにデータを取り込んだりするのに活用できます。
  • ネットワーク: ギガビットイーサネットポートが1つです。一般的な家庭内ネットワークや小規模オフィス環境での利用には十分な速度を提供します。ポートが1つであるため、Link Aggregationによる帯域幅の拡張やネットワーク接続の冗長化はできません。
  • サイズと重量: DSシリーズの中でも特にコンパクトで軽量です。本棚の隙間など、あまり場所を取らずに設置できます。
  • 消費電力: NASは常時稼働させることが多いため、消費電力は重要なポイントです。DS124はアクセス時でも15W以下、HDDスピンダウン時は5W以下と非常に低消費電力です。これは電気代の節約に大きく貢献します。
  • 対応ファイルシステム: 内部ボリュームはExt4でフォーマットされます。DSM 7.2以降、共有フォルダー単位でBtrfsを選択し、共有フォルダー暗号化を行うことが可能になりましたが、ボリューム全体のBtrfs機能(Snapshot Replication、データスクラビングなど)は利用できません。高度なデータ整合性チェックや高速なスナップショット機能を必要とする場合は、Btrfs対応の上位モデルが必要です。
  • 稼働音: HDDを除けば比較的静かに動作する設計ですが、搭載するHDDや冷却ファンの回転数によってはある程度の動作音が発生します。

1.3. デザインと静音性

DS124は、Synology DiskStationシリーズらしい、マットブラックのシンプルで機能的なデザインです。前面にはLEDインジケーター(STATUS, LAN, DISK)と電源ボタン、背面には各種ポートとファンが配置されています。プラスチック製の筐体ですが、安っぽさはなく、様々なインテリアに馴染むデザインです。

静音性については、HDDが停止しているアイドル状態であれば非常に静かです。ただし、HDDが動作している間は、HDD自体の動作音(シーク音や回転音)が発生します。静音性を重視する場合は、静音設計のHDDを選ぶか、静かな場所に設置するなどの工夫が必要です。また、CPU負荷が高い状態が続くと冷却ファンの回転数が上がり、ファンの音が大きくなることがあります。

1.4. 価格帯と位置づけ

DS124は、Synologyのラインナップの中でも「Valueシリーズ」に位置づけられるエントリーモデルです。個人ユーザーや、NASに初めて触れる小規模オフィスを主なターゲットとしており、多機能・高性能なPlusシリーズなどに比べて価格が抑えられています。

その価格とスペックから、DS124は以下のような用途に最適です。

  • PCやスマートフォンの個人用データバックアップ
  • 家族間での写真、動画、音楽ファイルの共有と管理
  • 自宅やSOHO環境でのファイルサーバーとして、数台のPCからの基本的なアクセス
  • 重要なドキュメントやデータの整理・保管
  • 常時起動によるダウンロード(Download Station)

逆に、以下のような用途には、性能不足や機能制限からあまり向いていません。

  • 複数ユーザーによる大規模な同時アクセスや編集作業
  • 4K動画などの高負荷なリアルタイムトランスコーディングを多数行う
  • 仮想化環境 (Virtual Machine Manager) やDockerコンテナを多数実行する
  • 多数の監視カメラ映像を高品質で長時間録画する (Surveillance Station)
  • HDD故障に対してRAIDによる冗長性を必須とする
  • BtrfsのSnapshot Replicationによる高速な復旧やバージョン管理を必須とする

DS124は、基本的なNAS機能に絞りつつ、Synology DSMの使いやすさと信頼性を手頃な価格で提供するモデルと言えます。ただし、1ベイ構成のデータ損失リスクに対する理解と、それを補うための適切なバックアップ運用が前提となります。

2. DS124を始める前に:準備するもの

DS124を使い始める前に、いくつか準備しておくものがあります。スムーズなセットアップのために、事前に揃えておきましょう。

2.1. 必要なものリスト

  1. Synology DS124 本体: これがないと始まりません。購入したもの一式を確認しましょう(本体、電源アダプター、電源コード、LANケーブル1本、クイックインストールガイド、ドライブ固定用ネジなど)。
  2. 対応するHDDまたはSSD (1台): DS124の容量と性能を決定する重要なパーツです。別途購入が必要です。HDDが最も一般的な選択肢です。
  3. LANケーブル: DS124をネットワークに接続するために必要です。通常、本体に1本付属していますが、DS124を設置する場所とルーター/スイッチングハブの距離によっては、付属ケーブルより長いものが必要になる場合があります。通信性能の安定のため、カテゴリ5e以上のケーブルを推奨します。
  4. 電源ケーブル: DS124 本体に付属しています。ACアダプターと本体、コンセントを接続するために使用します。
  5. ルーターまたはスイッチングハブ: DS124を家庭内またはオフィス内のネットワークに接続するために必要です。インターネット接続環境があれば、通常は既存のルーターに空きLANポートがあるはずです。
  6. PCまたはスマートフォン: DS124の初期設定(DSMインストール)やその後の管理は、Webブラウザ経由で行います。ネットワークに接続できるPC(Windows/macOS/Linux)やスマートフォン(iOS/Android)が必要です。PCの方が作業しやすいですが、スマートフォンでも基本的なセットアップは可能です。
  7. インターネット接続環境 (強く推奨): DSMのダウンロードとインストール、Synologyアカウントの作成、QuickConnectの利用、DSMやパッケージのアップデート、クラウドバックアップなどを利用するために必要です。オフラインでも最低限のファイルサーバーとしては機能しますが、多くの便利機能を使うにはインターネット接続が不可欠です。

2.2. HDD/SSDの選び方

DS124に搭載するHDD/SSDは、NASの容量、性能、そして信頼性を左右する非常に重要な選択です。DS124は1ベイなので、搭載するドライブの容量がそのままNASの最大容量となります。

  • 容量: 必要な容量を見積もって選びましょう。写真、動画、音楽、ドキュメントなど、どのようなデータをどのくらいの量保存したいか、今後データがどのくらい増えるかを考慮して容量を決めます。最初は小さめの容量から始めて、必要に応じて後からより大容量のドライブに交換することも可能ですが、その場合は古いHDDから新しいHDDへのデータ移行(バックアップからの復元など)の手間がかかります。将来的なデータ増加も見込んで、少し余裕を持った容量(例えば、最低でも数TB)を選ぶのがおすすめです。
  • 種類 (HDD vs SSD):
    • HDD (Hard Disk Drive): 大容量で価格が安く、コストパフォーマンスに優れます。NASの一般的な選択肢です。アクセス速度はSSDに劣りますが、DS124のエントリークラスの性能であれば、HDDでも十分な場合が多いです。
    • SSD (Solid State Drive): 読み書き速度が非常に高速で静音性にも優れますが、価格が高く、大容量モデルは特に高価です。アクセス速度を最優先する場合に選択肢となりますが、DS124のネットワーク速度(ギガビットイーサネット)やCPU性能がボトルネックとなり、SSDの高速性をフルに活かせない可能性があります。
  • NAS向けHDDの推奨: NASはPC用の内蔵HDDでも動作する可能性は高いですが、NASは基本的に24時間365日稼働し続けることを想定しています。これに対し、PC用のHDDは断続的な利用を想定して設計されています。そのため、NASでの連続稼働に適した耐久性・信頼性が高いNAS向けHDDを選ぶことを強く推奨します。主なNAS向けHDDシリーズとしては、Western DigitalのWD Redシリーズや、SeagateのIronWolfシリーズなどがあります。これらのHDDは、NASでの振動対策、エラー訂正機能、耐久性などが強化されており、長期安定稼働に適しています。価格はPC用HDDよりやや高価ですが、大切なデータを安心して保存するためには、NAS向けHDDの選択が賢明です。
  • 互換性リストの確認: Synologyは公式ウェブサイトで、各NASモデルに対応しているHDD/SSDの互換性リストを公開しています。DS124の互換性リストを必ず確認し、リストに載っているドライブを選ぶようにしましょう。非互換のドライブを使用すると、正常に動作しなかったり、速度が遅かったり、予期せぬトラブルが発生したりする可能性があります。特に新しい大容量HDDを導入する場合は、互換性リストでの確認が必須です。

2.3. 設置場所の考慮事項

DS124を設置する場所を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。

  • ネットワーク環境: ルーターやスイッチングハブの近くに設置するのが最も簡単です。有線LANケーブルで接続します。Wi-Fiアダプターによる無線接続は公式にはサポートされていません。
  • 電源: コンセントが近くにある場所を選びましょう。停電対策として、無停電電源装置(UPS)に接続することも検討できます。
  • 換気: NASは稼働中に熱を持ちます。特にHDDは発熱源です。筐体の通気口を塞がないように、風通しの良い場所に設置してください。狭い隙間や壁にぴったりとくっつけるのは避けましょう。直射日光が当たる場所、高温多湿な場所もドライブや本体の寿命を縮める可能性があるため避けてください。推奨される動作温度・湿度範囲内(通常、0℃~40℃、5%~95%RH)で使用しましょう。
  • 安定性: 振動の少ない、水平で安定した場所に設置してください。HDDは振動に弱いため、振動が多い場所に置くと故障の原因となる可能性があります。また、落下などの物理的な衝撃からも保護される場所に置きましょう。
  • 静音性: 寝室など、静かな環境を求める場合は、HDDの動作音やファンの音を考慮して設置場所を選びましょう。リビングや書斎、あるいはネットワーク機器が集まっている場所に設置するのが一般的です。

3. DS124のセットアップ:はじめてのNAS構築

準備が整ったら、いよいよDS124のセットアップです。初めての方でも安心して進められるように、手順を追って詳しく解説します。

3.1. HDDの取り付け

DS124のセットアップで最初に行うのは、本体へのHDD/SSDの取り付けです。DS124はツールレス(工具不要)でドライブを取り付けられる設計になっています(2.5インチドライブの場合はネジが必要です)。

  1. 本体カバーを開ける: DS124の前面にあるカバーは、下部の隙間に指をかけて手前方向に軽く引っ張ることで外れます。
  2. ドライブトレイを取り出す: カバーを外すと、ドライブを固定するための黒いトレイが見えます。トレイの前面に「DISK 1」と書かれたハンドルがあるので、これを手前に引き出してトレイを本体から完全に引き抜きます。
  3. HDDをトレイに取り付ける:
    • 3.5インチHDDの場合: トレイの側面にある、HDDを固定するためのプラスチックレールをトレイから慎重に取り外します。HDDをトレイに乗せ、HDDの側面のネジ穴に合わせて取り外したレールを再度パチンと音がするまで押し込み、HDDを固定します。レールがHDDを挟み込む形になり、ネジは不要です。
    • 2.5インチSSD/HDDの場合: トレイの中央にある穴と、DS124本体に付属している2.5インチドライブ固定用のネジを使って、ドライブをトレイの底面からネジでしっかりと固定します。プラスチックレールは使用しません。
  4. ドライブトレイを本体に戻す: HDD/SSDを取り付けたトレイを、DS124本体のドライブスロットに奥までしっかりと差し込みます。完全に差し込むと、前面とツライチになるはずです。
  5. 本体カバーを閉じる: 前面のカバーを元通りに取り付けて閉じます。カチッと音がするまで押し込んでください。

これで物理的なドライブの取り付けは完了です。

3.2. DS124本体の接続

次に、DS124をネットワークと電源に接続します。

  1. ネットワーク接続: 付属または別途用意したLANケーブルの一端をDS124背面のRJ-45ポート(LANと書かれているポート)に差し込みます。もう一端をルーターまたはスイッチングハブの空きLANポートに差し込みます。
  2. 電源接続: 付属のACアダプターのDCプラグをDS124背面の電源コネクターに差し込みます。ACアダプターに電源コードを接続し、もう一端をコンセントに差し込みます。

3.3. Web Assistantを使った初期設定 (DSMインストール)

物理的な接続が完了したら、いよいよNASの頭脳となるOS「DSM (DiskStation Manager)」をインストールし、初期設定を行います。この作業は、DS124と同じネットワークに接続されたPCまたはスマートフォンからWebブラウザを使って行います。

  1. DS124の電源を入れる: DS124背面の電源ボタンを一度押します。電源LED(一番上の青いLED)が点灯し、STATUS LED(真ん中のオレンジのLED)がオレンジ色に点滅し始めます。これは起動中またはDSMがインストールされていない状態を示しています。
  2. Webブラウザを開き、Web Assistantにアクセスする:
    • DS124と同じネットワークに接続されたPCまたはスマートフォンでWebブラウザ(Chrome, Firefox, Edge, Safariなど)を開きます。
    • アドレスバーに find.synology.com と入力してアクセスします。
    • または、SynologyのダウンロードセンターからPC用のユーティリティ「Synology Assistant」(Windows/macOS対応)をダウンロードしてインストールし、起動することもできます。Synology Assistantはネットワーク上のSynology NASを検出して表示してくれます。
  3. NASの検出: find.synology.com にアクセスすると、Web Assistantが自動的に同じネットワーク上のSynology NASを検索します。DS124が検出されると、その情報(モデル名、IPアドレスなど)が表示されます。
  4. セットアップ開始: 検出されたDS124の情報が表示されたら、「接続」または「セットアップ」ボタンをクリックして、セットアップウィザードを開始します。
  5. DSMのインストール: ウィザードが開始されたら、まずはDS124にDSMをインストールします。
    • 「インストール」を選択します。最新版のDSMをインターネットからダウンロードしてインストールするのが最も簡単で推奨されます。「今すぐインストール」をクリックします。
    • ハードディスク上のすべてのデータが消去されるという警告が表示されます。新品のHDDを使用している場合は問題ありません。既存のデータがあるHDDを流用する場合は注意が必要です。(1ベイモデルでは通常、初期設定時にHDD全体がフォーマットされます)。確認して同意し、「OK」をクリックします。
    • DSMのダウンロードとインストールが開始されます。このプロセスはインターネット接続速度やHDDの速度によって異なりますが、数分から数十分かかる場合があります。プログレスバーが表示されるので完了を待ちます。
    • インストールが完了すると、DS124が自動的に再起動します。STATUS LEDがオレンジ点滅から青点滅に変わります。
  6. 基本設定: 再起動が完了したら、再度Web Assistantにアクセスすると、DSMの初期設定ウィザードが表示されます。
    • サーバー名と管理者アカウントの設定: NASの名前(例: HomeNAS, OfficeNAS)、そしてDSMにログインするための管理者アカウント(ユーザー名と強力なパスワード)を設定します。管理者ユーザー名はデフォルトの「admin」から変更することを強く推奨します。パスワードは英数字記号を組み合わせた推測されにくいものにしましょう。
    • DSMアップデート設定: DSMのアップデートを自動で行うか手動で行うかなどを設定します。重要なアップデートは自動でインストールするように設定しておくと安心です。
    • QuickConnectの設定 (推奨): QuickConnectは、インターネット経由でDS124に簡単にアクセスできるようにするSynologyのサービスです。Synologyアカウントを作成またはログインし、任意のQuickConnect ID(例: myds124)を設定します。これにより、外出先からインターネット経由でNASにアクセスする際に、複雑なルーター設定(ポートフォワーディングなど)をほとんど行うことなく、quickconnect.to/your_id のような簡単なアドレスで接続できるようになります。非常に便利な機能ですが、セキュリティリスクを理解した上で、強力なパスワードや2段階認証と組み合わせて利用しましょう。
  7. セットアップ完了: これらの設定を終えると、DSMのデスクトップ画面が表示されます。これでDS124の基本的なセットアップは完了です。初めてDSMにログインした際は、簡単なチュートリアルが表示されることがあります。

3.4. 基本的なネットワーク設定 (固定IP推奨)

DS124は初期設定ではルーターのDHCP機能によってIPアドレスが自動的に割り当てられます。しかし、NASはファイル共有や様々なサービスを提供するため、ネットワーク上の他のデバイスから常に同じアドレス(IPアドレスやサーバー名)でアクセスできる方が都合が良いことが多いです。IPアドレスが変わってしまうと、ネットワークドライブの割り当てなどが使えなくなる可能性があります。そのため、DS124には固定IPアドレスを割り当てることを推奨します。

設定はDSMのコントロールパネルで行います。

  1. DSMに管理者アカウントでログインします。
  2. デスクトップ左上のメニューボタン(□が9個並んだアイコン)をクリックし、「コントロールパネル」を開きます。
  3. 「ネットワーク」グループ内の「ネットワークインターフェイス」を選択します。
  4. 表示された「LAN」を選択し、「編集」をクリックします。
  5. 「IPv4」タブを開きます。デフォルトでは「DHCP 設定を取得」が選択されていますが、これを「手動設定を使用」に変更します。
  6. 以下の情報を入力します。(これらの情報はご使用のルーターやネットワーク環境によって異なります。通常、ルーターの管理画面などで確認できます。ルーターのIPアドレスと同じネットワークセグメント内で、他のデバイスに使用されていないIPアドレスを選びます。)
    • IPアドレス: ネットワーク内で他のデバイスと重複しない任意の固定IPアドレス(例: 192.168.1.100, 192.168.10.50 など。ご自身のネットワーク環境に合わせて設定してください。)
    • サブネットマスク: ご使用のネットワークのサブネットマスク(例: 255.255.255.0)
    • デフォルトゲートウェイ: ご使用のルーターのIPアドレス(例: 192.168.1.1, 192.168.10.1 など)
    • DNSサーバー: ご使用のルーターのIPアドレス、またはプロバイダー指定や信頼できる公開DNSサーバー(例: Google Public DNS: 8.8.8.8, 8.8.4.4 / Cloudflare DNS: 1.1.1.1, 1.0.0.1)を入力します。
  7. 入力内容を確認し、「OK」をクリックして設定を保存します。

これでDS124は常に指定した固定IPアドレスでネットワークに接続されるようになります。設定変更後は、念のためPCなどから新しいIPアドレスでDS124にアクセスできるか確認しましょう。

4. Synology DiskStation Manager (DSM) の基本

Synology NASの最大の魅力の一つは、その独自のオペレーティングシステム「DiskStation Manager(DSM)」です。DSMはWebブラウザベースの非常に洗練されたユーザーインターフェースを持ち、まるでデスクトップOSのように直感的で使いやすい操作性を実現しています。DS124の全ての機能は、このDSMからアクセス・設定します。

4.1. DSMのユーザーインターフェース概説

DSMにWebブラウザでアクセスし、設定した管理者アカウントでログインすると、デスクトップのような画面が表示されます。

  • デスクトップ: よく使うアプリケーションのアイコンが表示されます。アイコンは自由に配置したり、フォルダーにまとめたりできます。初期状態では、コントロールパネル、パッケージセンター、File Station、DSMヘルプなどのアイコンが表示されています。
  • タスクバー: 画面上部に表示されます。
    • メニューボタン: 左上の□が9個並んだアイコンです。クリックすると、インストールされている全てのアプリケーションや、DSMの設定を行う「コントロールパネル」にアクセスできます。
    • 開いているアプリケーションのウィンドウ一覧: 現在開いているウィンドウがアイコンとして表示され、クリックでウィンドウを切り替えたり、最小化/最大化したりできます。
    • 通知領域: 右側にあります。システムの通知(アップデート情報、エラー警告、タスク完了通知など)が表示されます。重要な情報を見逃さないように、通知はこまめに確認しましょう。
    • ユーザーメニュー: 右上に表示されるログイン中のユーザー名アイコンです。クリックすると、個人設定(パスワード変更、2段階認証設定など)、ログアウト、再起動、シャットダウン、ウィジェット表示などのオプションが表示されます。
    • ウィジェットエリア: ユーザーメニューの左隣に表示されるアイコンです。クリックすると、システムリソース(CPU使用率、メモリ使用率、ネットワークトラフィックなど)、ストレージの使用状況、接続ユーザー数などの情報を表示するウィジェットを追加・表示できます。NASの状態を把握するのに役立ちます。
  • ウィンドウ: アプリケーションや設定画面は、デスクトップ上で独立したウィンドウとして表示されます。複数のウィンドウを開いて作業することも可能です。ウィンドウのサイズ変更や移動も一般的なデスクトップOSと同様に行えます。

4.2. コントロールパネルの重要項目

DSMのほとんどの設定は「コントロールパネル」で行います。コントロールパネルは、WindowsのコントロールパネルやmacOSのシステム設定のようなものです。

コントロールパネル内には多岐にわたる項目がありますが、DS124を使う上で特に重要で、頻繁に利用する可能性のある項目をいくつかご紹介します。

  • ファイルサービス: Windows (SMB/CIFS)、macOS (AFP)、NFS、FTP、WebDAVなどのファイル共有プロトコルの設定を行います。これにより、PCやスマートフォン、その他のデバイスからNAS上の共有フォルダーにアクセスできるようになります。特にWindows/MacからのファイルアクセスにはSMB/AFPの設定が重要です。
  • ユーザーとグループ: NASにアクセスするユーザーアカウントを作成・管理し、各ユーザーやグループに対するアクセス権限を設定します。共有フォルダーへのアクセス許可/拒否、読み取り専用、読み書き可能といった権限を細かく設定できます。家族それぞれにアカウントを作成したり、特定の用途に限定したアカウントを作成したりする際に使います。
  • ネットワーク: DS124のネットワーク設定(IPアドレス、DNSサーバー、デフォルトゲートウェイ、DDNS、ポートフォワーディングなど)を行います。前述の固定IPアドレス設定もここで行います。
  • 外部アクセス: Synologyが提供するQuickConnectサービスや、DDNSサービスの設定を行います。インターネット経由でNASにアクセスするための重要な設定項目です。
  • ストレージマネージャー: 搭載しているHDD/SSDの状態確認、ボリューム(実際にデータを保存する領域)の作成や管理を行います。HDDのS.M.A.R.T.テスト、エラーログ確認、容量確認、ファイルシステム情報確認など、ストレージの状態を把握するための中心的なツールです。DS124は1ベイなので、ボリューム作成はシンプルに1つのボリュームを作成するだけです。
  • 共有フォルダー: 実際にファイルを保存するための「共有フォルダー」を作成し、アクセス権限を設定します。例えば、「Photos」「Videos」「Documents」「Backup」といったフォルダーを作成し、それぞれのフォルダーにアクセスできるユーザーや権限を設定します。
  • 権限: 各パッケージ(Synology Drive, Hyper Backupなど)やサービスに対するユーザー/グループの利用権限を設定します。特定のユーザーには特定のパッケージを使わせない、といった制限が可能です。
  • タスクスケジューラー: 指定した日時や間隔で、特定のタスク(例: 毎日深夜3時にごみ箱を空にする、毎週日曜日の朝に外部HDDへバックアップを実行するなど)を自動化するための設定を行います。
  • 更新と復元: DSM自体のアップデートや、DSMシステム設定のバックアップと復元を行います。NASの引っ越しや、万が一のシステムトラブルに備えて、設定のバックアップは定期的に取得しておくと良いでしょう。
  • セキュリティ: ファイアウォール、自動ブロック、DoS対策、証明書(HTTPS接続用SSL証明書)、セキュリティレベル設定など、NASを不正アクセスから保護するための重要なセキュリティ設定を行います。特にインターネットに公開して利用する場合は、これらの設定が不可欠です。
  • 情報センター: DS124のハードウェア情報(CPU、メモリ、シリアル番号など)、ネットワーク情報、ストレージ情報(HDDの状態、ボリューム情報)、サービスの稼働状況などを一覧で確認できます。トラブル発生時やサポートに問い合わせる際に役立ちます。

これらのコントロールパネルの項目は、DS124の機能設定と運用管理の中心となります。

4.3. パッケージセンターとは?

DSMには「パッケージセンター」という機能があり、まるでスマートフォンにアプリをインストールするように、様々なアプリケーション(パッケージ)を追加することでDS124の機能を拡張できます。

パッケージセンターには、Synologyが公式に開発・提供しているパッケージ(Synology Drive Server, Hyper Backup, Synology Photosなど)や、サードパーティが提供するパッケージがリストアップされています。興味のあるパッケージを選択し、「インストール」ボタンをクリックするだけで簡単に機能を追加できます。インストール済みのパッケージの管理(起動/停止、アンインストール、アップデート)もパッケージセンターから行えます。

DS124で利用できる代表的なパッケージには、以下のようなものがあります。(これらは後述の機能詳細で詳しく解説します)

  • Synology Drive Server: ファイルの同期、共有、バージョン管理
  • Hyper Backup: 多様なバックアップ先へのデータバックアップ
  • Synology Photos: 写真と動画の整理・管理・共有
  • Download Station: PCレスでのファイルダウンロード
  • Media Server (DLNA): DLNA対応デバイスへのメディア配信
  • Audio Station / Video Station: Web/モバイルアプリからの音楽・動画ストリーミング
  • VPN Server: 自宅NASをVPNサーバーに
  • Web Station: Webサイト公開
  • Package Center: パッケージの管理ツール自体もパッケージです

DS124の機能を最大限に引き出すには、これらのパッケージを効果的に活用することが重要です。

4.4. DSMのアップデート方法

SynologyはDSMの機能改善、バグ修正、セキュリティ強化のために定期的にアップデートをリリースします。DS124を安全かつ快適に利用するためには、DSMを常に最新の状態に保つことが強く推奨されます。特にセキュリティアップデートは、NASをインターネットの脅威から守るために非常に重要です。

DSMのアップデートは、コントロールパネルの「更新と復元」から行うことができます。

  1. コントロールパネルを開き、「更新と復元」を選択します。
  2. 「DSMアップデート」タブを開きます。
  3. ここに、現在インストールされているDSMのバージョンと、利用可能な新しいバージョンが表示されます。
  4. 新しいバージョンが利用可能な場合、「ダウンロード」ボタンが表示されます。これをクリックすると、アップデートファイルがSynologyのサーバーからDS124にダウンロードされます。
  5. ダウンロードが完了すると、「今すぐ更新」ボタンが表示されます。これをクリックすると、アップデートが開始されます。アップデート中はDS124が再起動されます。アップデートプロセスは数分から数十分かかることがあります。アップデート中は絶対にDS124の電源を切らないでください。故障の原因となります。
  6. アップデートが完了すると、DS124は自動的に再起動し、再度DSMにログインできるようになります。

自動アップデート設定を有効にしておくと、アップデートがリリースされた際に自動的にダウンロードやインストールが行われるようになります。「重要なアップデートを自動的にインストールする」設定を有効にしておくことを強く推奨します。

5. DS124の主要機能詳細

ここからは、DS124で利用できる主要な機能を具体的にどのように使うのかを詳しく解説します。各機能はパッケージセンターから対応するパッケージをインストールすることで利用できるようになります。

5.1. ファイルサーバー機能

NASの最も基本的な機能であり、DS124の中心的な役割の一つです。家庭内の複数のPCやスマートフォンから、または小規模オフィス内で共同でファイルにアクセスしたり、共有したりすることができます。これは、DSMの「ファイルサービス」設定と「共有フォルダー」設定を組み合わせて実現します。

使い方:

  1. 共有フォルダーの作成:
    • DSMのコントロールパネルを開き、「共有フォルダー」を選択します。
    • 「作成」ボタンをクリックし、「共有フォルダーの作成」を選択します。
    • フォルダー名を入力します(例: Photos, Documents, Shared)。必要に応じて説明を追加します。
    • 「ネットワークごみ箱を有効にする」にチェックを入れると、共有フォルダー内で削除されたファイルが一定期間(または容量制限まで)保持され、後で復元できるようになります。これは誤削除対策に非常に有効です。
    • 高度な設定として、「共有フォルダーを暗号化する」にチェックを入れることもできます。DS124はDSM 7.2以降、共有フォルダー単位での暗号化にBtrfsファイルシステムを使用します。暗号化を有効にすると、HDDを取り出して他のデバイスに接続されても、暗号化キーなしではデータが読み取れなくなります。これはセキュリティを強化しますが、パフォーマンスへの影響や、起動時に暗号化キーの入力が必要になる(または自動マウント設定)といった注意点があります。最初は暗号化なしで始めても良いでしょう。
    • 「次へ」進み、この共有フォルダーにアクセスを許可するユーザーやグループと、それぞれの権限(読み取りのみ、読み書き可能、アクセスなし)を設定します。例えば、「Photos」フォルダーは家族全員が読み取り可能で、特定のユーザー(例: 写真を管理するユーザー)だけが書き込み可能にする、といった設定ができます。
    • 設定内容を確認し、「適用」をクリックすると共有フォルダーが作成され、すぐに利用可能になります。
  2. PCからのアクセス (Windows):
    • Windowsのエクスプローラーを開きます。
    • アドレスバーに \\DS124のIPアドレス または \\DS124のサーバー名 と入力してEnterキーを押します。(例: \\192.168.1.100 または \\MyNAS)DS124のサーバー名はDSM初期設定で設定した名前です。
    • DSMで設定したユーザー名とパスワードを入力してログインします。パスワードを記憶させておくと、次回からのアクセスが簡単になります。
    • 作成した共有フォルダーが表示され、PCの内蔵ストレージや外付けHDDと同じようにファイルやフォルダーを作成、コピー、移動、削除、編集といった操作ができます。
    • よく使う共有フォルダーは、ネットワークドライブとして割り当てておくと便利です。エクスプローラーの「PC」を右クリックし、「ネットワークドライブの割り当て」を選択します。ドライブレター(例: Z:)とフォルダーのネットワークパス(例: \\MyNAS\Photos)を指定することで、エクスプローラーの「PC」の下に割り当てたドライブが表示され、簡単にアクセスできるようになります。
  3. PCからのアクセス (macOS):
    • Finderを開き、「移動」メニューから「サーバーへ接続…」を選択します。
    • 「サーバアドレス」に smb://DS124のIPアドレス または smb://DS124のサーバー名 と入力して「接続」をクリックします。(Macの場合、macOS High Sierra以降はSMB接続が推奨されています)AFP接続も可能ですが、互換性や機能面でSMBが優れています。ファイルサービス設定でAFPを有効にしてください。
    • DSMで設定したユーザー名とパスワードを入力してログインします。
    • 利用可能な共有フォルダーが表示されるので、接続したいフォルダーを選択して「OK」をクリックします。
    • デスクトップやFinderのサイドバーにNASが表示され、ファイル操作が可能になります。
  4. PCからのアクセス (Linux):
    • ファイルマネージャー(GNOME Files (Nautilus), KDE Dolphinなど)を開き、「他の場所」や「ネットワーク」などからNASをブラウズします。SMB/CIFSプロトコルで接続できます。
    • コマンドラインでは、smbclient コマンドを使ったり、mount.cifs コマンドでファイルシステムとしてマウントしたりすることも可能です。
  5. WebDAVアクセス: WebDAVを有効にすると、HTTPS経由でインターネット越しにもファイルにアクセスできます。これは、NASに特定のポートを解放し、ドメイン名などでアクセスする場合に便利です。DSMのパッケージセンターから「WebDAV Server」をインストールして設定します。クライアント側でもWebDAVクライアントソフトが必要です。
  6. ファイル転送速度: DS124のエントリーモデルとしての性能から、ギガビットイーサネットの理論値(約125MB/s)に近い速度が出ることもありますが、実際のファイル転送速度はネットワーク環境(ハブの性能、ケーブルの品質など)、クライアントPCの性能(CPU、SSD/HDD速度)、転送するファイルの種類(細かいファイルか大きなファイルか)、そしてDS124自身の負荷(CPU使用率、ディスクI/O)によって大きく変動します。特に多数の細かいファイルを転送する場合は速度が低下しやすい傾向があります。一般的な家庭での利用や、数台のPCからのアクセスであれば十分な速度が得られるでしょう。ビジネス用途で多数のユーザーが同時に頻繁にファイルアクセスを行うような環境では、性能不足を感じる可能性があります。

5.2. データ保護とバックアップ

1ベイNASであるDS124において、データのバックアップは最も重要な機能と言っても過言ではありません。HDDが1台しかないため、故障は即データの消失に繋がります。必ず複数の場所にバックアップを取りましょう。DS124は、PCやスマートフォンだけでなく、NAS自身のデータをバックアップするための多様な機能を提供しています。

DS124は内部ボリュームがExt4ファイルシステムであるため、Btrfsの持つ高度な機能であるSnapshot Replication(スナップショット)による高速な差分バックアップやリストア機能は利用できません。その代わり、以下の機能を使ってデータ保護を行います。

5.2.1. Synology Drive (同期とバージョン管理)

Synology Driveは、NASを自分専用のプライベートクラウドストレージのように利用できる機能です。PCやスマートフォンの特定のフォルダーとNAS上のフォルダーをリアルタイムに同期したり、どこからでもファイルにアクセスしたり、ファイルのバージョン管理を行ったりできます。OneDriveやDropboxのプライベート版のようなイメージです。

使い方:

  1. Synology Drive Serverのインストール: パッケージセンターから「Synology Drive Server」をインストールします。インストール後、Drive Admin Consoleパッケージも自動的にインストールされるはずです。
  2. 同期タスクの設定 (PC/Mac):
    • 同期したいPCまたはMacに「Synology Drive Client」アプリケーションをインストールします。(Synologyのダウンロードセンターからダウンロード)
    • Synology Drive Clientを起動し、DS124に接続します(DS124のIPアドレス、サーバー名、またはQuickConnect IDで接続)。
    • 接続後、同期タスクを設定します。「同期タスクを作成」を選択します。PC上のどのローカルフォルダー(例: ドキュメントフォルダー、デスクトップなど)と、NAS上のどのSynology Driveフォルダー(デフォルトで各ユーザーのHomeフォルダー内に作成されるDriveフォルダーなど)を同期するかを指定します。
    • 同期方向(双方向同期、一方向アップロード、一方向ダウンロード)や、同期しないファイルの種類(拡張子など)を設定できます。
    • 設定を完了すると、指定したフォルダー間のファイルが自動的に同期されます。PCでファイルを編集・保存すると、NAS上のファイルもリアルタイムまたは短い遅延で更新されます。NAS上のファイルを別のデバイスから編集しても、同様に同期されます。
  3. ファイルへのアクセスと共有 (PC/Mac):
    • Synology Drive Clientのタスクトレイアイコンから、同期フォルダーをエクスプローラー/Finderで開いたり、NAS上のDriveフォルダー全体にWebブラウザまたは専用アプリケーションからアクセスしたりできます。
    • ファイルやフォルダーを右クリックし、「Synology Drive」メニューから共有リンクを作成したり、以前のバージョンを参照・復元したりできます。
  4. スマートフォンからのアクセス (iOS/Android):
    • スマートフォンに「Synology Drive」モバイルアプリをインストールします。(App Store/Google Playストアからダウンロード)
    • アプリを起動し、DS124に接続します(DS124のIPアドレス、またはQuickConnect IDで接続)。
    • NAS上のDriveフォルダー内のファイルにアクセス、閲覧、ダウンロード、アップロード、共有などができます。
    • モバイルアプリの便利な機能として、スマートフォンのカメラロールの写真を自動的にNAS上のSynology Driveフォルダー(またはSynology Photosフォルダー)にバックアップする機能があります。これにより、スマートフォンの容量を気にせず写真を撮影できます。
  5. バージョン管理: Synology Driveは、ファイルの変更履歴(バージョン)を自動的に保存します。誤ってファイルを削除したり、上書きしてしまったりした場合でも、過去のバージョンから簡単に復元できます。バージョン数をどのくらい保持するか(バージョン数制限や保持期間制限)は、Synology Drive Admin Consoleパッケージから設定できます。DS124はBtrfsのSnapshot Replicationが使えませんが、Synology Driveのバージョン管理機能がこれに近い役割を果たし、日々のファイル操作におけるデータ保護に役立ちます。

5.2.2. Hyper Backup (柔軟なバックアップ)

Hyper Backupは、DS124に保存されているデータ(共有フォルダー、アプリケーション設定など)を、様々な場所にバックアップするための包括的で非常に強力なパッケージです。1ベイNASのデータ損失リスクを補うための最も重要な機能の一つです。

バックアップ先として利用できるもの:

  • ローカルフォルダー&外部USBドライブ: DS124内の別の共有フォルダー(これは真のバックアップではありませんがコピーとしては使えます)や、DS124のUSBポートに接続した外部USBドライブ/SSDへのバックアップ。手軽で高速ですが、同じ場所にバックアップを取ることになるため、DS124本体や設置場所の物理的なリスク(火災、盗難、水害など)に対しては脆弱です。
  • 別のSynology NAS: 別のSynology NASにネットワーク経由でバックアップします。遠隔地に設置した別のNASにバックアップすれば、物理的なリスクに対する耐性が高まります。
  • rsync対応サーバー: rsyncプロトコルに対応した他のNASやサーバー(Synology以外のNAS含む)にバックアップします。
  • クラウドストレージ: Google Drive, Dropbox, Microsoft Azure, Amazon S3など、主要なパブリッククラウドストレージサービスにバックアップします。インターネット経由での転送速度やデータ転送量に応じたコストはかかりますが、地理的に離れた場所へのバックアップとして、災害対策に非常に有効です。Synology独自のクラウドサービス「Synology C2 Storage」も利用可能です。

使い方 (例: 外部USBドライブへのバックアップ):

  1. Hyper Backupのインストール: パッケージセンターから「Hyper Backup」をインストールします。
  2. バックアップタスクの作成:
    • Hyper Backupを起動し、左下の「+」ボタンをクリックして「データバックアップタスク」を選択します。
    • バックアップ先として「ローカルフォルダー&USB」を選択し、「次へ」をクリックします。
    • 「バックアップ先設定」画面で、バックアップ先として接続した外部USBドライブを選択します。タスク名を入力し、「次へ」をクリックします。初回はバックアップディレクトリを作成するか聞かれます。
    • バックアップしたいソースを選択します。DS124上の特定の共有フォルダー(例: Photos, Documents)や、インストール済みのアプリケーションの構成データ(例: Synology Drive Serverの設定、Photosのインデックス情報など)を選択できます。大切なデータが入っているフォルダーや、再構築に手間がかかるアプリケーション設定などを選択しましょう。
    • バックアップ設定を行います。タスクのスケジュール(毎日、毎週、毎月、特定の曜日・時刻など)、クライアント構成のバックアップ(NAS自身のシステム設定の一部)、バックアップの整合性チェック(バックアップされたデータが壊れていないか定期的にチェック)、データ圧縮、クライアントサイド暗号化(バックアップ先のデータが暗号化される)などのオプションがあります。セキュリティのため、暗号化を有効にすることを強く推奨します。パスワードを忘れると復元できなくなるので注意が必要です。
    • バックアップローテーションを設定します。これは、バックアップの世代管理(何世代前のバックアップまで保持するか)と、古いバックアップバージョンを自動的に削除してバックアップ先の容量を節約するための非常に重要な設定です。Smart Recycleなどのポリシーを選択できます。容量を無制限に消費しないように、適切なローテーション設定を行いましょう。
    • 設定内容を確認し、「完了」をクリックします。タスクが作成され、すぐにバックアップを実行するか尋ねられるので、必要に応じて「はい」を選択して初回バックアップを実行します。
  3. バックアップの実行と管理: 設定したスケジュールに従ってバックアップが自動的に実行されます。Hyper Backupのメイン画面で、作成したタスクの実行状況、前回の実行結果、使用容量、バージョン数などを確認できます。必要に応じて手動でバックアップを実行することも可能です。
  4. データの復元: 万が一、DS124上のオリジナルデータが失われた場合や、誤って削除してしまった場合などに、Hyper Backupからデータを復元できます。Hyper Backupの画面左下にある右向き矢印のアイコン(またはタスクを選択して「復元」)をクリックし、「データ」または「LUN (データブロック)」を選択します。復元したいバックアップタスクとバージョン(どの時点のバックアップか)を選択し、どのフォルダーやファイル、あるいはアプリケーションを復元するかを選択します。元の場所に上書き復元するか、別の場所に復元するかなども選択できます。

Hyper Backupは非常に多機能で、DS124のデータ保護戦略の要となります。1ベイNASでは、外部USBドライブへのローカルバックアップに加えて、Synology C2 Storageなどのクラウドへのリモートバックアップを組み合わせることで、DS124が設置されている場所で物理的な災害が起きてもデータを保護できる、より堅牢なバックアップ体制を構築することを強く推奨します(「3-2-1ルール」の考え方:3つのコピー、2つの異なるメディア、1つはオフサイトに保管)。

5.2.3. USB Copy

DS124の背面にUSBドライブ(外部HDD/SSD/USBメモリなど)を接続した際に、あらかじめ設定しておいたルールに従って自動的にコピーまたはバックアップを行う機能です。Hyper Backupよりも設定項目が少なく、シンプルで手軽に使いたい場合に便利です。

使い方:

  1. USB Copyのインストール: パッケージセンターから「USB Copy」をインストールします。
  2. コピー/バックアップタスクの設定:
    • USB Copyを開き、「作成」をクリックします。
    • タスクの種類を選択します。「データのコピー(DS から USB へ)」や「データのインポート(USB から DS へ)」などがあります。
    • タスク名を設定します。
    • コピー元(DS124上の特定の共有フォルダー)と、コピー先(USBドライブ上の特定のフォルダー)を指定します。
    • 接続されたUSBドライブが認識されたら自動的にタスクを実行するかどうかを設定します。これを有効にしておくと、USBドライブを挿すだけで自動でコピーが始まるので便利です。
    • 必要に応じて、ファイルフィルター(特定の拡張子のみコピーするなど)や、既存ファイルの処理方法(同じ名前のファイルがあった場合にスキップするか上書きするか、あるいは古いファイルを削除するかなど)を設定します。
    • 設定を保存します。
  3. 実行: 設定したUSBドライブをDS124のUSBポートに接続すると、設定に従って自動的にコピー/バックアップが実行されます。(自動実行を設定した場合)または、USB Copyパッケージから手動でタスクを実行することも可能です。

例えば、「毎週手元にある外部HDDをDS124に接続したら、特定の共有フォルダーのデータが自動的にUSBドライブにコピーされる」といった運用が可能です。手軽な物理的な持ち出し用バックアップとして活用できます。

5.3. マルチメディア機能

DS124は、写真、動画、音楽といったマルチメディアファイルを一元管理し、家庭内の様々なデバイスからアクセス・再生するための機能も提供しています。

5.3.1. Synology Photos

Synology Photosは、DS124に保存した写真と動画を、時系列表示やアルバム、フォルダーで整理・管理・閲覧するためのモダンなアプリケーションです。AIによる顔認識や物体認識、撮影場所、タイムライン表示など、Google Photosのようなクラウドストレージの写真サービスに近い機能を提供します。

使い方:

  1. Synology Photosのインストール: パッケージセンターから「Synology Photos」をインストールします。
  2. 写真/動画のアップロード:
    • PCからWebブラウザ経由でDSMのSynology Photosを開き、ドラッグ&ドロップなどでファイルをアップロードします。
    • PCに「Synology Drive Client」をインストールしている場合、Synology Photosのフォルダーを同期対象に設定することで、PCの特定のフォルダー(例えば、写真の保存フォルダー)にある写真を自動的にDS124にアップロードすることも可能です。
    • スマートフォンに「Synology Photos」モバイルアプリをインストールし、アプリから直接アップロードします。モバイルアプリの自動バックアップ機能を有効にすると、スマートフォンのカメラロールの写真を自動的にNAS上のSynology Photosフォルダーにアップロードでき、スマートフォンの容量を節約できます。これはDS124の非常に便利な使い方の一つです。
  3. 写真/動画の管理と閲覧:
    • Synology PhotosのWebインターフェースやモバイルアプリから、アップロードした写真や動画をタイムライン表示やフォルダー表示で閲覧できます。
    • AIが写真に写っている人物や物体、場所などを認識し、自動的にアルバムを作成してくれます。これは非常に強力な整理機能です。
    • キーワードや撮影日時、場所などの条件で写真を検索できます。
    • 手動でアルバムを作成して写真を整理したり、特定の写真やアルバムを他のSynology Photosユーザーと共有したりできます。共有の際にパスワードを設定したり、有効期限を設けたりすることも可能です。
  4. アクセス権限: Synology Photosには「個人スペース」と「共有スペース」の2つのスペースがあります。各ユーザーが自身のHomeフォルダー内のPhotosフォルダーを使用する「個人スペース」は、他のユーザーは原則アクセスできません。「共有スペース」は、Photos共有フォルダー内に保存された写真を複数のユーザーで共通して管理・閲覧するためのスペースです。家族全員で写真を共有したい場合は、「共有スペース」を利用するのが便利です。DSMのユーザー権限とは別に、Synology Photos内で「共有スペース」へのアクセス権限を設定できます。

Synology Photosは、膨大な写真ライブラリを整理したり、家族や友人と簡単に共有したりするのに非常に便利な機能です。DS124の性能でも、写真のインデックス作成には時間がかかる場合がありますが、一度作成されれば快適に閲覧できます。

5.3.2. Media Server (DLNA)

Media Serverパッケージは、DS124をDLNAメディアサーバーとして機能させます。これにより、DLNAに対応したテレビ、Blu-ray/DVDプレーヤー、ゲーム機(PlayStation, Xbox)、メディアプレーヤー、スマートフォン、PCなど、様々なデバイスから、NAS上の動画、音楽、写真をストリーミング再生できるようになります。

使い方:

  1. Media Serverのインストール: パッケージセンターから「Media Server」をインストールします。
  2. メディアフォルダーの設定: Media Serverの設定画面で、メディアファイル(動画、音楽、写真)が保存されている共有フォルダーを指定します。(デフォルトではphoto, video, musicといったデフォルト共有フォルダーが指定されています。これらのフォルダーにメディアファイルを保存するのが最も簡単です。)
  3. DMA互換性の設定: 対応するDLNAデバイスが正しくNASを認識・再生できるように、互換性設定を調整することが必要な場合があります。
  4. DLNAクライアントからのアクセス: DS124と同じネットワーク上のDLNA対応デバイス(テレビなど)のメディアプレーヤー機能を起動します。ネットワーク上のメディアサーバー一覧に、DS124(設定したサーバー名やモデル名で表示されることが多い)が表示されるので、これを選択します。NAS上のメディアフォルダーが表示され、動画、音楽、写真をブラウズして再生できます。

注意点: DS124はCPUのトランスコーディング(再生デバイスが対応していない形式の動画を、再生できる形式にリアルタイムで変換する処理)能力は高くありません。そのため、Media Server経由での再生は、基本的に再生デバイスがNAS上の動画形式(MP4, MKVなど)をそのまま再生できる(ダイレクト再生)場合に限られます。再生デバイスが対応していない形式の場合、スムーズに再生できなかったり、再生できなかったりすることがあります。特に高画質(4Kなど)や高ビットレートの動画をスムーズにストリーミング再生したい場合や、外出先からモバイル回線でトランスコーディングを必要とする視聴をしたい場合は、より高性能なSynology NASモデル(例: Plusシリーズなど、Intel CPUを搭載しハードウェアトランスコーディングに対応したモデル)が必要になります。DS124は主に家庭内でのダイレクト再生や、スマートフォンでの写真・音楽鑑賞に向いています。

5.3.3. Audio Station / Video Station

これらのパッケージは、Synology独自のメディア管理・再生アプリケーションです。Media ServerがDLNA対応機器向けなのに対し、Video StationやAudio StationはWebブラウザ(PC/Mac)やSynology純正の専用モバイルアプリ(DS video, DS audio)を使ってメディアにアクセス・再生します。

  • Video Station: 動画ファイルの管理、情報の取得(映画タイトル、俳優、あらすじなど)、ポスター表示、再生リスト作成、視聴進捗の記録などが行えます。DS videoモバイルアプリを使えば、スマートフォンやタブレットからNAS上の動画をストリーミング再生できます。(ただし、DS124のトランスコーディング能力は限定的です。)
  • Audio Station: 音楽ファイルの管理、アルバムアート表示、再生リスト作成、歌詞表示、インターネットラジオ再生などが行えます。DS audioモバイルアプリを使えば、スマートフォンからNAS上の音楽をストリーミング再生できます。PCからはWebブラウザでAudio Stationにアクセスして再生できます。

これらもパッケージセンターからインストールして利用します。Video StationやAudio Stationは、メディアライブラリをよりリッチなインターフェースで管理・楽しみたい場合におすすめです。

5.4. Download Station (ダウンロードステーション)

Download Stationは、PCを起動していなくても、DS124自身がインターネットからファイルを直接ダウンロードする機能です。HTTP, FTP, BitTorrent, emule, NZBなどの様々なプロトコルに対応しています。PCのリソースを使わずにダウンロードを任せられるため、特にサイズの大きなファイルをダウンロードする際に便利で、電気代の節約にもなります。

使い方:

  1. Download Stationのインストール: パッケージセンターから「Download Station」をインストールします。
  2. ダウンロードタスクの追加:
    • Download Stationを開き、左上の「+」ボタンをクリックします。
    • ダウンロードしたいファイルのURL(HTTP/FTPリンクなど)を入力するか、TorrentファイルやNZBファイルを選択/アップロードします。
    • ダウンロード先のフォルダーを指定します(デフォルトのdownloadフォルダーや、任意の共有フォルダー)。
    • 必要に応じて、認証が必要な場合のユーザー名/パスワード、最大ダウンロード/アップロード速度制限、特定の時刻だけダウンロードを実行するといった詳細設定を行います。
    • 「OK」をクリックすると、ダウンロードタスクがリストに追加され、ダウンロードが開始されます。
  3. ダウンロードの管理: Download Stationの画面で、各タスクのダウンロード進捗状況、速度、残り時間などをリアルタイムで確認できます。タスクの一時停止、再開、削除、ダウンロード完了後のスクリプト実行なども可能です。スマートフォン用のモバイルアプリ「DS get」を使えば、外出先からスマートフォンでDownload Stationのダウンロード状況を確認したり、新しいダウンロードタスクを追加したりすることもできます。

5.5. セキュリティ機能

NASはネットワークに接続され、インターネット経由でアクセス可能にすることも多いため、セキュリティ対策は非常に重要です。DSMには、DS124を不正アクセスやマルウェアから保護するための様々なセキュリティ機能が標準で備わっています。

重要なセキュリティ設定:

  • DSMのセキュリティ設定 (コントロールパネル > セキュリティ):
    • ファイアウォール: NASへのネットワークトラフィックを制御し、特定のIPアドレスやポートからのアクセスを許可/拒否するルールを設定できます。例えば、特定の国からのアクセスをブロックしたり、ファイル共有に必要なポート(SMBなら445番など)以外への外部からのアクセスを拒否したりといった設定が可能です。
    • 自動ブロック: 不正なログイン試行(DSMへのログイン、SSH、FTPなど)が設定回数以上失敗した場合に、その接続元のIPアドレスを自動的にブロックする設定です。管理者アカウントへのブルートフォース攻撃(パスワード総当たり攻撃)対策に非常に有効です。一定時間ブロックするか、永久にブロックするかなどを設定できます。
    • DoS対策: Denial of Service攻撃(サービス拒否攻撃)からNASを保護する設定です。
  • アカウント (コントロールパネル > ユーザーとグループ / 個人設定):
    • 管理者アカウント名の変更: デフォルトで推測されやすい「admin」という管理者アカウント名は、必ず他の推測されにくい名前に変更しましょう。
    • 強力なパスワードの使用: 全てのユーザーアカウントに対して、長く複雑な(英数字記号を組み合わせた12文字以上の)パスワードを設定しましょう。パスワードは定期的に変更することを推奨します。
    • 2段階認証の設定: DSMへのログイン時に、パスワードに加えてスマートフォンアプリ(Google Authenticator, Microsoft Authenticatorなど)で生成されるワンタイムパスワードの入力を求める設定です。これにより、万が一パスワードが漏洩した場合でも、不正ログインを防ぐ確率を格段に高められます。管理者アカウントだけでなく、他のユーザーアカウントにも設定することを強く推奨します。ユーザーメニューから「個人設定」>「アカウント」タブで設定できます。
  • Security Advisor: DSMのセキュリティ設定やシステムの状態をスキャンし、潜在的な脆弱性や推奨される対策をレポートしてくれる機能です。定期的に実行して、セキュリティの状態を確認し、推奨される対策(例: パスワード強度の向上、不要なサービスの停止など)を実行しましょう。パッケージセンターからインストールできます。
  • QuickConnect使用時の注意点と対策: QuickConnectは外出先からNASに手軽にアクセスできる便利な機能ですが、Synologyのサーバーを介してインターネット上にNASが公開されるため、セキュリティリスクも伴います。利便性とのトレードオフになりますが、QuickConnectを利用する場合は以下の対策を必ず行いましょう。
    • 前述の「強力なパスワード」「管理者アカウント名の変更」「自動ブロック」「2段階認証」は必須の対策です。
    • QuickConnect設定で、提供するサービス(ファイル共有、Synology Photosなど)を必要最小限に絞りましょう。
    • QuickConnectではなく、自身でDDNSサービスを利用し、ルーターでポートフォワーディングを設定する方が、公開するポートをより限定できるため、セキュリティリスクをよりコントロールしやすい側面もあります。ただし、設定はQuickConnectより複雑になります。
  • 自動アップデート: DSMやパッケージの自動アップデートを有効にしておくことで、セキュリティ脆弱性が修正された最新の状態を維持しやすくなります。

NASはインターネットに繋がるサーバー機器であるという認識を持ち、適切なセキュリティ対策を講じることが、安全にデータを運用するための基本です。

5.6. その他の便利な機能

DS124は他にも様々な便利な機能を提供しています。

  • File Station: DSMの標準ファイル管理アプリケーションです。WebブラウザからNAS上のファイルやフォルダーを操作(作成、コピー、移動、削除、リネーム、アップロード、ダウンロードなど)できます。複数のウィンドウを開いて、NAS内のフォルダー間や、PCとNAS間で効率的にファイルを操作できます。
  • Resource Monitor: DSMの標準監視ツールです。CPU使用率、メモリ使用率、ネットワークトラフィック、ディスクI/Oなど、DS124のリソース使用状況をリアルタイムで確認できます。DS124のパフォーマンスが低下している場合などに、何がリソースを消費しているか(特定のパッケージがCPUを使いすぎているなど)を特定するのに役立ちます。
  • Log Center: DS124のシステムログや、各パッケージ(アプリケーション)のログを一覧で確認できるパッケージです。DS124で発生したエラーや警告、サービスへのアクセス履歴などの情報をチェックすることで、問題の早期発見や原因特定に繋がります。
  • Task Scheduler: 定期的なメンテナンス作業や、特定の操作を自動化するための機能です。指定した日時や間隔で、ユーザー指定スクリプトの実行、サービス開始/停止、ごみ箱を空にする、バックアップタスクの実行などを設定できます。
  • 外部アクセス設定 (DDNS, ポートフォワーディング): QuickConnectを使わずに、インターネット経由でDS124にアクセスするには、DDNS(Dynamic DNS)サービスとご使用のルーターのポートフォワーディング設定が必要です。DDNSは、インターネットプロバイダーから動的に割り当てられるグローバルIPアドレスに対して、固定のホスト名(例: mynas.synology.me)を割り当てるサービスです。Synologyは独自のDDNSサービス(Synology DDNS)を無料で提供しています。ポートフォワーディングは、ルーターのグローバルIPアドレスに来た特定のポートへの通信(例えば、DSMへのアクセスに使われる5000番/5001番ポートや、ファイル共有に使われるポートなど)を、DS124のローカルIPアドレスに転送するようにルーターに設定することです。これにより、外部からNASに直接アクセスできるようになります。DSMのコントロールパネル「外部アクセス」からDDNS設定を、ご使用のルーター設定画面からポートフォワーディング設定を行います。設定はやや複雑ですが、QuickConnectよりも安定した接続や、特定のポートのみを公開するセキュリティ上のメリットがあります。

6. DS124の応用的な使い方 (エントリーモデルで可能な範囲)

DS124はエントリーモデルですが、パッケージセンターを活用することで、さらにいくつかの応用的な使い方が可能です。ただし、高性能モデルほど快適に動作するわけではないため、あくまで簡易的な利用に留めるのが現実的です。性能限界を理解した上で利用しましょう。

  • 簡易的なWebサーバー (Web Station): Web Stationパッケージをインストールすれば、DS124をWebサーバーとして利用できます。静的なHTMLファイルや画像ファイルを公開する程度の小規模なWebサイトであれば、DS124の性能でも十分に公開可能です。PHPやMariaDBといったデータベースもパッケージセンターからインストールできますが、WordPressのようなデータベースを使用する動的なWebサイトや、アクセスが多いサイトをDS124でホストするのは性能的に厳しいでしょう。あくまでテスト用やごく小規模な個人サイト、あるいは簡易的な情報共有ページなどに限られます。外部に公開する場合は、セキュリティ対策(ファイアウォール、HTTPS化など)が必須です。
  • VPNサーバー/クライアント (VPN Server/Client): VPN Serverパッケージをインストールすれば、DS124をVPNサーバーとして利用し、外出先からインターネット経由で自宅ネットワークに安全にアクセスできるようになります。例えば、出張先から自宅NASのファイルに安全にアクセスしたい場合などに便利です。DS124のCPU性能を考えると、同時に多数のクライアントからのVPN接続や、高帯域幅のVPN通信には向きません。個人利用や少人数での利用に限られるでしょう。VPN Clientパッケージを使えば、DS124自身がVPNクライアントとして別のVPNサーバーに接続することも可能です。

DS124は、Intel CPUや豊富なメモリを搭載したPlusシリーズなどの高性能モデルのように、Dockerや仮想マシン、多数の監視カメラを同時に録画する、高度な開発環境を構築するといった、よりリソースを消費する用途には向きません。その能力に見合った範囲での応用的な利用に留めるのが賢明です。パッケージセンターには他にも様々なパッケージがありますが、DS124のスペックで快適に動作するかどうかは個別のパッケージによります。インストール前に必要なリソースなどを確認すると良いでしょう。

7. DS124のメリットとデメリット

これまでの説明を踏まえ、Synology DS124のメリットとデメリットを改めてまとめてみましょう。

7.1. メリット

  • 低価格: Synology NASのエントリーモデルとして、本体価格が非常に手頃です。搭載するHDDが1台で済むため、導入の総コストを抑えられます。
  • 省スペース&低消費電力: コンパクトで軽量、稼働時の消費電力も低く、家庭やSOHO環境に手軽に設置できます。電気代の負担も少ないです。
  • DSMの使いやすさ: Synology独自のOSであるDSMは、直感的で洗練されたWebベースのユーザーインターフェースを持ち、NAS初心者でも比較的容易に設定や管理が可能です。
  • ファイルサーバー、バックアップ、写真管理に最適: PC/スマホの容量不足解消、データの一元管理、ファイル共有、そして最も重要な個人データのバックアップといった基本的なNAS機能は、DS124の性能で十分に快適に利用できます。Synology Drive、Hyper Backup、Synology Photosといった主要パッケージは非常に完成度が高く、強力です。
  • 静音性: HDDにもよりますが、アイドル時は比較的静かに動作します。

7.2. デメリット

  • 1ベイによる冗長性の欠如: DS124の最大の、そして最も重要なデメリットです。HDDが1台故障すると、内部に保存していたデータは全て失われるリスクがあります。RAID構成による耐障害性はありません。
  • パフォーマンスの限界: エントリークラスのCPUとメモリ(1GB)のため、多数のユーザーによる同時アクセス、ファイルサーバーとしての高負荷な利用、高画質動画のリアルタイムトランスコーディング、多数のパッケージの同時実行といった重い処理には向きません。
  • 機能制限: 内部ボリュームがExt4のため、Btrfsファイルシステムが提供する高度なデータ保護機能(Snapshot Replicationなど)は利用できません。また、Dockerなどの一部のパッケージも利用できません。
  • メモリ増設不可: メモリはオンボードで固定されているため、増設して性能を向上させることはできません。
  • LANポートが1つのみ: 複数のLANケーブルで接続して通信速度を向上させるLink Aggregationや、ネットワーク接続の冗長化はできません。

8. DS124はどんな人におすすめか?

Synology DS124のメリットとデメリットを踏まえると、以下のような方に特におすすめできるNASです。

  • NASを初めて使う人: DSMの使いやすさ、シンプルな1ベイ構成により、NASの入門機として最適です。多機能すぎる上位モデルよりも、基本的な機能に絞られたDS124の方が理解しやすいでしょう。
  • 予算を抑えてNASを導入したい人: NAS本体価格だけでなく、HDDが1台で済むため、導入コストを抑えたい場合に適しています。
  • 自宅でのファイル共有やPC/スマホのデータバックアップが主目的の人: PCやスマートフォンの容量不足を解消したり、家族間でのファイル共有をしたり、大切な写真やドキュメントのバックアップ先として活用したい場合に、DS124は必要十分な機能と性能を提供します。
  • 家族の写真や動画を安全に一元管理・共有したい人: Synology Photosを活用することで、簡単に写真・動画ライブラリを構築し、整理・共有できます。
  • データ容量がそれほど大きくない人: 最新の大容量HDDを使えば個人利用としては十分な容量を確保できますが、将来的に数十TBといった非常に大きな容量が必要になる可能性がある場合は、多ベイモデルも検討肢に入れる必要があります。
  • 高度な機能(仮想化、多数の監視カメラ、高負荷メディアトランスコーディングなど)を必要としない人: シンプルな用途で十分な方には、高価で多機能な上位モデルよりも、DS124の方がコストパフォーマンスが高いと言えます。

逆に、以下のようなニーズを持つ方には、多ベイモデルや高性能モデルなど、他のSynology NASを検討することをおすすめします。

  • データの冗長性が最重要で、HDD故障によるデータ損失リスクを極力避けたい(RAID 1以上を構築したい)
  • 事業継続性や、HDD故障時のダウンタイムを最小限に抑えたい
  • NASに数十TB以上の非常に大きな容量データや、動画などの高負荷なデータを多数保存したい
  • 複数のユーザーが同時に頻繁に高負荷なアクセスを行うオフィス環境での利用
  • NAS上で仮想マシンを動かしたり、Dockerコンテナを多数実行したりしたい
  • 多数(4台以上など)の監視カメラ映像を高品質で長時間録画したい
  • 外出先から高画質動画をリアルタイムにトランスコーディングして視聴したい
  • BtrfsのSnapshot Replicationによる高速なデータ復旧・バージョン管理機能を必須とする

DS124は、あくまで「エントリークラスの1ベイNAS」であることを正しく理解し、自身の利用目的と照らし合わせて選択することが重要です。そして、1ベイNASではデータの冗長性がないため、Hyper Backupなどを活用した別途のバックアップが絶対に必須です。 この点を十分に理解し、バックアップ計画を立ててから導入するようにしましょう。

9. トラブルシューティングのヒント

DS124を使っていく中で、もしトラブルが発生した場合の一般的な対処法をいくつかご紹介します。慌てずに、一つずつ確認していきましょう。

  • DSMにアクセスできない場合:
    • DS124本体の電源確認: 本体前面の電源LEDが点灯しているか確認します。消えている場合は電源コードやコンセントを確認します。
    • ネットワーク接続確認: DS124背面のLANポートのLED(オレンジと緑のランプ)が点灯または点滅しているか確認します。LANケーブルがDS124とルーター/スイッチングハブに正しく接続されているか確認します。ルーターやスイッチングハブの電源も確認します。
    • IPアドレスの確認: DS124に設定したIPアドレス(固定IPにした場合)またはDHCPで取得したIPアドレス(通常設定の場合)が正しいか確認します。ルーターの管理画面で、接続されているデバイスリストからDS124の名前を探してIPアドレスを確認できます。Synology AssistantユーティリティもNASのIPアドレスを検出できます。
    • PC/スマホのネットワーク確認: DSMにアクセスしようとしているPCやスマートフォンが、DS124と同じローカルネットワーク(同じルーターに接続されているか)に接続されているか確認します。Wi-Fi接続の場合は、正しいネットワークに接続されているか確認します。
    • ファイアウォール確認: PCやスマートフォンのファイアウォール設定がDSMへのアクセス(通常はポート5000/5001)をブロックしていないか確認します。
    • Webブラウザの確認: Webブラウザのキャッシュやクッキーをクリアしたり、別のWebブラウザ(Chrome, Firefox, Edgeなど)で試したりします。
    • DS124の再起動: これらの基本的な確認で解決しない場合、DS124本体を再起動してみます。DSMのユーザーメニューから「再起動」を選択するか、電源ボタンを3秒ほど長押しして再起動します。(強制シャットダウンは最終手段とし、可能な限りDSMからシャットダウンしましょう)
  • ファイル転送が遅い場合:
    • 有線接続の確認: 可能であれば、DS124とPC/スマートフォンを有線LANケーブルで接続しているか確認します。無線接続(Wi-Fi)は有線接続より速度が低下します。
    • LANケーブルの性能確認: 使用しているLANケーブルがカテゴリ5e以上の規格であるか確認します。古いケーブルや性能の低いケーブルはボトルネックになる可能性があります。
    • ネットワーク機器の確認: ルーターやスイッチングハブのLANポートがギガビットイーサネット(1000Mbps)に対応しているか確認します。ハブが遅い規格(100Mbpsなど)だと、それ以上の速度は出ません。
    • DS124のリソース確認: DSMのResource Monitorを開き、CPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/O、ネットワークトラフィックが上限に達していないか確認します。他の処理(バックアップ、インデックス作成、ダウンロードなど)が同時に実行されていると、ファイル転送速度に影響します。
    • PCのストレージ速度: ファイルのコピー元またはコピー先のPCの内蔵ストレージ(HDD/SSD)の速度も、ファイル転送速度のボトルネックになる可能性があります。
    • 転送ファイルの種類: 多数の細かいファイルを転送する場合、一つの大きなファイルを転送する場合に比べて速度が低下する傾向があります。
    • HDDの健全性確認: DS124のストレージマネージャーを開き、搭載しているHDDのS.M.A.R.T.情報や健康状態を確認します。HDDに異常がある場合、パフォーマンスが著しく低下することがあります。
  • HDDの異常を検知した場合:
    • DSMの通知やストレージマネージャーで、HDDに警告やエラー(「異常」「故障」「Degraded」など)が表示されていないか確認します。
    • ストレージマネージャーで、HDDに対してS.M.A.R.T.テスト(特に拡張テスト)を実行して、詳細な健康状態を確認します。
    • 異常が見つかった場合、HDDの故障が近い、または既に故障している可能性があります。1ベイモデルであるDS124では、これはデータの完全な消失に繋がる非常に危険な状態です。 直ちに別途バックアップを取るか、最新のバックアップがあることを再確認してください。そして、可能な限り早く互換性のある新しいHDDに交換することを検討してください。
    • 新しいHDDに交換後、DSMのセットアップをやり直すか、Hyper Backupなどで取得しておいたバックアップからデータを新しいHDD上のボリュームに復元する必要があります。
  • Synologyサポートへの問い合わせ方法:
    • DSMのヘルプメニューから「Synologyに連絡」を選択すると、システムログ情報などを添付してSynologyサポートセンターに問い合わせフォームを送信できます。
    • Synologyの公式ウェブサイトにあるサポートページ(ダウンロードセンター、FAQ、互換性リストなど)や、Synologyコミュニティフォーラムも問題解決のヒントを探すのに役立ちます。

トラブルシューティングを行う際は、まずDSMの通知やログセンターを確認し、どこに問題があるかの手がかりを探すことが重要です。また、SynologyのヘルプドキュメントやFAQも非常に充実しているので、参考にすると良いでしょう。

10. まとめ:DS124の総評と今後のNAS活用

Synology DS124は、初めてNASを導入する家庭ユーザーや小規模オフィスにとって、非常に魅力的な選択肢です。手頃な価格、コンパクトなサイズ、そして何よりもSynology DSMの圧倒的な使いやすさによって、NASの基本的なメリット(データの一元管理、共有、バックアップ)を比較的容易に享受できます。

特に、PCやスマートフォンの容量不足解消、家族写真や動画の共有と管理、PCやスマートフォンのデータバックアップといった用途には、DS124の性能は十分です。Synology Photosによる写真の自動整理・共有、Synology Driveによるファイル同期とバージョン管理、Hyper Backupによる多様なバックアップ先への柔軟なバックアップといった、Synology独自の強力なパッケージ群を存分に活用できます。これらの機能は、個人や家庭レベルでのデータ管理において非常に大きな利便性と安心感をもたらします。

ただし、DS124が1ベイNASであること、すなわちデータの冗長性がなく、搭載しているHDDが故障した場合は保存していたデータが全て失われるリスクがあるという最大のデメリットは、決して忘れてはなりません。DS124を導入・運用する際は、このリスクを十分に理解し、Hyper Backupなどを利用して、DS124内のデータを外部USBドライブやクラウドストレージなど、別の場所に定期的にバックアップする体制を確立することが絶対的に必須です。これはDS124を安全に運用するための最も重要な条件です。

また、DS124はエントリーモデルゆえに、高性能なCPUや大容量メモリを持つ上位モデル(Plusシリーズなど)に比べると、同時に多数のユーザーがアクセスする場合や、動画のリアルタイムトランスコーディング、仮想化、多数のDockerコンテナ実行といった高負荷な用途には向きません。これらの高度な機能を快適に利用したい場合は、DS224+、DS923+など、より上位のモデルを検討する必要があります。

Synology DS124は、「手軽にNASを始めてみたい」「自宅のファイル管理やバックアップを強化したい」「スマートフォンやPCのデータを安全に保管したい」「Synologyのエコシステムに触れてみたい」といった方に最適なモデルです。DS124を通じてNAS活用の第一歩を踏み出し、データ管理の利便性や安心感をぜひ体験してみてください。そして、DS124でNAS運用の基本的な知識と経験を培い、将来的にデータ量や用途が増えてきた際に、より高性能で多機能なNASへとステップアップしていくことも可能です。

あなたのデジタルライフが、Synology DS124によってより豊かで安全なものになることを願っています。


免責事項:
本記事は、Synology DS124に関する一般的な情報と使い方について解説したものですが、記載されている情報(仕様、機能、操作手順など)は、DSMのバージョンアップや製品仕様の変更によって将来的に変わる可能性があります。また、個々のネットワーク環境や使用状況によって、記載通りの性能が得られない場合や、予期せぬ問題が発生する可能性もあります。製品の最新情報や詳細については、必ずSynologyの公式ウェブサイトやヘルプドキュメントをご確認ください。本記事の情報を利用したことにより発生したいかなる損害についても、筆者および公開者は一切の責任を負いません。

著作権について:
Synology DiskStation Manager (DSM)、Synology Photos、Synology Drive、Hyper Backupなどの名称は、Synology Inc. の登録商標または商標です。その他の製品名や会社名は、各社の商標または登録商標です。


(終)

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