シグマ(Σ)が苦手な数B生必見!計算のコツと基本を解説


シグマ(Σ)が苦手な数B生必見!計算のコツと基本を徹底解説

数学Bで数列を学び始め、「Σ(シグマ)」という記号を目にしたとき、思わず「うっ…」となった人は多いのではないでしょうか? 見慣れない記号の羅列に、「これは一体何なんだ?」「どうやって計算するんだ?」と頭を抱えてしまう気持ち、よく分かります。

でも安心してください。Σは決して難しい魔法の記号ではありません。むしろ、面倒な計算を分かりやすく、そしてコンパクトに表現するための、非常に便利な道具なのです。そして、このΣを理解することは、数列の和を求めるだけでなく、将来、数学Ⅲで学ぶ微積分や、大学で学ぶ様々な分野の数学、さらには統計学や物理学、経済学といった分野を理解する上でも、必ず必要になる土台となります。

この記事は、まさに今、「Σが苦手だ…」と感じている数Bの皆さんのために書かれました。Σ記号の本当の意味から始まり、絶対に押さえておくべき基本公式、計算を劇的に楽にする性質、そしてつまずきやすい応用問題の解き方まで、これでもかというほど丁寧に解説していきます。

この記事を最後まで読めば、きっとΣへの苦手意識が薄れ、「なんだ、Σってそういうことだったのか!」と霧が晴れるはずです。そして、計算問題にも自信を持って取り組めるようになるでしょう。さあ、一緒にΣの世界を紐解いていきましょう!

1. Σ記号の基本の「き」: Σって一体何者?

まずは、Σ記号の正体から明らかにしていきましょう。

Σは、ギリシャ文字の「シグマ」の大文字です。数学では、「和(合計)をとる」という意味で使われます。つまり、Σは足し算をまとめて書くための「省略記号」なのです。

Σ記号の周りには、いくつか情報が書かれています。具体的な形は次のようになります。

n
Σ a_k
k=1

この形に含まれる要素は、それぞれ次のような意味を持っています。

  • Σ: 和をとる、という記号そのもの。
  • a_k: 和をとる対象。これを「一般項」と呼びます。kに様々な値を入れてできる項を足し合わせます。
  • k: 「和の変数」または「添え字」と呼ばれるものです。このkの値が変化しながら、一般項a_kを作っていきます。
  • k=1: 和の変数がどこから始まるかを示します。これを「初項の添え字」と呼びます。この例ではkが1から始まります。
  • n: 和の変数がどこで終わるかを示します。これを「末項の添え字」と呼びます。この例ではkがnで終わります。

つまり、上記の記号は、

kを1からnまで順番に増やしながら、一般項a_kに代入してできる項をすべて足し合わせなさい

という意味なのです。これを実際に展開して書いてみると、次のようになります。

n
Σ a_k = a_1 + a_2 + a_3 + ... + a_n
k=1

どうでしょう? Σ記号一つで、長い足し算の式をスッキリと表現できることが分かりますね。これがΣ記号を使う一番のメリットです。

具体例で慣れてみよう

いくつかの具体例を見て、Σ記号の意味をもっと深く理解しましょう。

例1: Σ[k=1 to 5] k

  • 一般項:k
  • 和の変数:k
  • 開始の添え字:1
  • 終了の添え字:5

これは、「kを1から5まで順番に増やしながら、k自身(一般項がkだから)を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
k=1 のとき: 1
k=2 のとき: 2
k=3 のとき: 3
k=4 のとき: 4
k=5 のとき: 5

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[k=1 to 5] k = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15 となります。

例2: Σ[k=1 to 4] (2k – 1)

  • 一般項:2k – 1
  • 和の変数:k
  • 開始の添え字:1
  • 終了の添え字:4

これは、「kを1から4まで順番に増やしながら、一般項 2k-1 に代入してできる項を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
k=1 のとき: 2(1) – 1 = 1
k=2 のとき: 2(2) – 1 = 3
k=3 のとき: 2(3) – 1 = 5
k=4 のとき: 2(4) – 1 = 7

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[k=1 to 4] (2k – 1) = 1 + 3 + 5 + 7 = 16 となります。
(これは初項1、公差2の等差数列の初項から第4項までの和ですね)

例3: Σ[i=3 to 6] i^2

  • 一般項:i^2
  • 和の変数:i
  • 開始の添え字:3
  • 終了の添え字:6

これは、「iを3から6まで順番に増やしながら、一般項 i^2 に代入してできる項を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
i=3 のとき: 3^2 = 9
i=4 のとき: 4^2 = 16
i=5 のとき: 5^2 = 25
i=6 のとき: 6^2 = 36

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[i=3 to 6] i^2 = 9 + 16 + 25 + 36 = 86 となります。

ポイント:添え字の文字はkじゃなくてもOK

上の例3のように、和の変数はkである必要はありません。iやj、mなど、どんな文字を使っても構いません。重要なのは、Σの下で指定された文字が、一般項の中で変化する変数であるということです。Σ[k=1 to n] a_k と Σ[j=1 to n] a_j は全く同じ意味になります。

Σの開始の添え字が1以外の場合

Σの開始の添え字は、必ずしも1である必要はありません。上の例3のように3から始まることもありますし、0から始まることや、それ以外の値から始まることもあります。

Σ[k=m to n] a_k は、kがmからnまで変化するときのa_kの和を表します。

展開すると:
Σ[k=m to n] a_k = a_m + a_{m+1} + … + a_n

この「開始の添え字が1以外」のΣの計算については、後ほど「応用的な計算テクニック」の章で詳しく解説します。まずは、Σの意味そのものをしっかりと掴んでください。

小まとめ

  • Σ記号は「和をとる」ための記号。
  • Σの下、上、右にそれぞれ「和の変数と開始の値」「終了の値」「一般項」が書かれている。
  • Σ[k=開始 to 終了] 一般項(k) は、開始から終了までkを代入してできる項をすべて足し合わせたもの。
  • 和の変数はk以外でもよい。
  • 開始の添え字は1以外でもよい。

Σの意味を理解する一番の近道は、小さな数で実際に展開して書いてみることです。Σ[k=1 to 3] k^2 なら 1^2 + 2^2 + 3^2 = 1 + 4 + 9 = 14 と、まずは書き出してみる癖をつけましょう。

2. これだけは覚える!Σの超重要公式

Σ計算を行う上で、毎回すべての項を展開して足すのは現実的ではありません。特に、項数が多かったり、nのように文字で与えられている場合は不可能です。そこで必要になるのが、「Σの公式」です。

これらの公式は、特定の形をした数列の和を、項数nなどを使って一発で計算するためのものです。これから紹介する公式は、Σ計算の基本中の基本であり、今後様々な場面で登場します。必ず覚えて使えるようにしましょう。

2-1. 定数の和の公式

一般項が、和の変数kを含まない定数cである場合、Σの計算は非常にシンプルです。

n
Σ c = nc
k=1

解説:
これは、「cという値を、k=1からk=nまでのn回足し合わせる」という意味です。
c + c + c + … + c (cがn個)
当然、その合計は c × n となります。

:
Σ[k=1 to 5] 3
これは、「3という数を、k=1, 2, 3, 4, 5 の5回足し合わせる」という意味。
展開すると 3 + 3 + 3 + 3 + 3 = 3 × 5 = 15。
公式を使えば、c=3, n=5 なので、5 × 3 = 15 とすぐに計算できます。

Σ[k=1 to n] 5
これは、「5という数を、k=1からnまでのn回足し合わせる」という意味。
展開すると 5 + 5 + … + 5 (5がn個)。
公式を使えば、c=5 なので、5n となります。

2-2. 自然数の和の公式(Σk)

一般項がk(和の変数そのもの)である場合の和です。

n
Σ k = 1 + 2 + 3 + ... + n = n(n+1)/2
k=1

解説:
これは、初項1、公差1の等差数列の初項から第n項までの和に他なりません。等差数列の和の公式「(項数) × (初項 + 末項) / 2」を思い出してください。
項数:n
初項:1
末項:n
したがって、和は n × (1 + n) / 2 = n(n+1)/2 となります。

この公式は、ドイツの数学者ガウスが子供の頃、1から100までの数をすべて足すように言われた際に、すぐに1+100=101, 2+99=101, … というようにペアを作って計算し、答えが50ペア×101=5050であることを導き出したという逸話で有名ですね。この考え方が、まさにこの公式の導出につながっています。

:
Σ[k=1 to 10] k
これは 1 + 2 + … + 10 の和です。
公式を使えば、n=10 なので、10(10+1)/2 = 10 × 11 / 2 = 55 と計算できます。

Σ[k=1 to 50] k
これは 1 + 2 + … + 50 の和です。
公式を使えば、n=50 なので、50(50+1)/2 = 50 × 51 / 2 = 25 × 51 = 1275 と計算できます。

2-3. 自然数の平方の和の公式(Σk^2)

一般項がk^2である場合の和です。

n
Σ k^2 = 1^2 + 2^2 + 3^2 + ... + n^2 = n(n+1)(2n+1)/6
k=1

解説:
この公式は、等差数列や等比数列の和の公式のように簡単に導出できるものではありません(差分の計算や数学的帰納法などを使って証明されます)。形が少し複雑なので覚えるのが大変かもしれませんが、Σ計算では本当によく使う公式です。頑張って覚えましょう!

:
Σ[k=1 to 5] k^2
これは 1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2 + 5^2 = 1 + 4 + 9 + 16 + 25 = 55 の和です。
公式を使えば、n=5 なので、5(5+1)(2×5+1)/6 = 5 × 6 × 11 / 6 = 5 × 11 = 55 と計算できます。

Σ[k=1 to 10] k^2
これは 1^2 + 2^2 + … + 10^2 の和です。
公式を使えば、n=10 なので、10(10+1)(2×10+1)/6 = 10 × 11 × 21 / 6 = (10/2) × 11 × (21/3) = 5 × 11 × 7 = 385 と計算できます。

2-4. 自然数の立方の和の公式(Σk^3)

一般項がk^3である場合の和です。

n
Σ k^3 = 1^3 + 2^3 + 3^3 + ... + n^3 = { n(n+1)/2 }^2
k=1

解説:
この公式は、Σk の公式の結果を2乗した形になっています。Σk の公式とセットで覚えると覚えやすいかもしれませんね。これもよく使われる公式です。

:
Σ[k=1 to 3] k^3
これは 1^3 + 2^3 + 3^3 = 1 + 8 + 27 = 36 の和です。
公式を使えば、n=3 なので、{3(3+1)/2}^2 = {3 × 4 / 2}^2 = (6)^2 = 36 と計算できます。

Σ[k=1 to 6] k^3
これは 1^3 + 2^3 + … + 6^3 の和です。
公式を使えば、n=6 なので、{6(6+1)/2}^2 = {6 × 7 / 2}^2 = (21)^2 = 441 と計算できます。

2-5. 等比数列の和の公式

一般項が等比数列の形である場合の和です。Σで表現すると、初項a、公比rの等比数列の初項から第n項までの和は次のようになります。

n
Σ ar^(k-1) = a + ar + ar^2 + ... + ar^(n-1) = a(r^n - 1)/(r-1) (ただし r ≠ 1)
k=1

解説:
これは、数Bで最初に学ぶ等比数列の和の公式そのものです。Σ記号で書かれている形に慣れましょう。Σの下の k=1 から始まる場合、一般項が ar^(k-1) となっていることが多いです。これは、k=1 のときに ar^(1-1) = ar^0 = a となり、初項がaになるからです。

もし一般項が ar^k のような形になっている場合は、Σ[k=1 to n] ar^k = ar + ar^2 + … + ar^n となり、これは初項ar、公比rの等比数列の和になります。この場合の和は ar(r^n – 1)/(r-1) です。Σ記号で与えられたら、まずは k=1, 2, … と代入して、どんな数列の和になっているかを確認することが重要です。

:
Σ[k=1 to 5] 2 * 3^(k-1)
これは初項 a=2, 公比 r=3 の等比数列の初項から第5項までの和です。
公式を使えば、n=5 なので、2 * (3^5 – 1)/(3-1) = 2 * (243 – 1)/2 = 242 と計算できます。

Σ[k=1 to 4] 5 * (1/2)^k
これは一般項が 5(1/2)^k です。k=1のとき 5(1/2)^1 = 5/2、k=2のとき 5*(1/2)^2 = 5/4, … となり、初項 5/2, 公比 1/2 の等比数列です。
公式を使えば、初項 a=5/2, 公比 r=1/2, 項数 n=4 なので、(5/2) * ((1/2)^4 – 1)/((1/2)-1) = (5/2) * (1/16 – 1)/(-1/2) = (5/2) * (-15/16) / (-1/2) = (5/2) * (-15/16) * (-2/1) = 5 * 15 / 16 = 75/16 と計算できます。

重要公式のまとめ

和の形 Σ記号 公式
定数の和 Σ[k=1 to n] c nc
自然数の和 Σ[k=1 to n] k n(n+1)/2
自然数の平方の和 Σ[k=1 to n] k^2 n(n+1)(2n+1)/6
自然数の立方の和 Σ[k=1 to n] k^3 {n(n+1)/2}^2
等比数列の和 (初項a,公比r) Σ[k=1 to n] ar^(k-1) a(r^n – 1)/(r-1) (r≠1)

これらの公式は、Σ計算の土台です。完璧にマスターしましょう。特に、Σk, Σk^2, Σk^3 の公式は、今後多項式のΣを計算する際に必須となります。

3. 計算が劇的に楽になる!Σの性質(線形性)

Σ計算の公式を覚えることも重要ですが、それと同じくらい、いやそれ以上に重要なのが「Σの性質」です。この性質を使うことで、複雑に見えるΣも、いくつかの簡単なΣに分解して計算できるようになります。Σの性質は「線形性」と呼ばれ、Σ記号が持つ非常に強力な特徴です。

Σの性質は主に以下の2つです。いずれもΣの開始の添え字が1の場合で説明しますが、他の開始の添え字でも成り立ちます。

3-1. 定数倍の性質

Σの中の一般項に定数がかかっている場合、その定数をΣの外に出すことができます。

n n
Σ c a_k = c Σ a_k
k=1 k=1

ただし、cは和の変数kを含まない定数である必要があります。

解説:
考えてみれば当たり前のことです。
Σ[k=1 to n] c a_k = c a_1 + c a_2 + … + c a_n
これは、共通因数cでくくると
= c (a_1 + a_2 + … + a_n)
となります。そして、カッコの中身はまさに Σ[k=1 to n] a_k ですね。
だから、Σ[k=1 to n] c a_k = c Σ[k=1 to n] a_k が成り立つのです。

:
Σ[k=1 to 10] 3k
性質を使えば、3をΣの外に出せます。
= 3 Σ[k=1 to 10] k
ここで、Σ[k=1 to 10] k は Σk の公式で計算できます(n=10)。
= 3 × {10(10+1)/2}
= 3 × 55
= 165

もしこの性質を知らないと、
3(1) + 3(2) + … + 3(10) = 3 + 6 + … + 30
という等差数列の和を計算することになります。これでもできますが、性質を使った方がスムーズな場合が多いです。

3-2. 和・差の性質

Σの中の一般項が、いくつかの項の和や差になっている場合、Σをそれぞれの項に分けて計算することができます。

n n n
Σ (a_k + b_k) = Σ a_k + Σ b_k
k=1 k=1 k=1

n n n
Σ (a_k - b_k) = Σ a_k - Σ b_k
k=1 k=1 k=1

解説:
これも、和の定義を考えれば理解できます。
Σ[k=1 to n] (a_k + b_k) = (a_1 + b_1) + (a_2 + b_2) + … + (a_n + b_n)
足し算は順序を入れ替えても結果は同じなので、a_kの項とb_kの項をまとめても構いません。
= (a_1 + a_2 + … + a_n) + (b_1 + b_2 + … + b_n)
そして、カッコの中身はそれぞれ Σ[k=1 to n] a_k と Σ[k=1 to n] b_k ですね。
だから、Σ[k=1 to n] (a_k + b_k) = Σ[k=1 to n] a_k + Σ[k=1 to n] b_k が成り立つわけです。
差の場合も同様です。

:
Σ[k=1 to 5] (k^2 + k)
性質を使えば、Σを2つに分けられます。
= Σ[k=1 to 5] k^2 + Σ[k=1 to 5] k
ここで、Σk^2 と Σk の公式を使います(n=5)。
Σ[k=1 to 5] k^2 = 5(5+1)(2×5+1)/6 = 5 × 6 × 11 / 6 = 55
Σ[k=1 to 5] k = 5(5+1)/2 = 5 × 6 / 2 = 15
したがって、Σ[k=1 to 5] (k^2 + k) = 55 + 15 = 70 と計算できます。

これらの性質を使った複雑なΣの計算

これらの性質と基本公式を組み合わせることで、多項式の形をした一般項のΣを簡単に計算できるようになります。

:
Σ[k=1 to n] (2k^2 – 3k + 1)
このΣを計算してみましょう。一般項は 2k^2 – 3k + 1 という多項式です。
和・差の性質を使って、それぞれの項にΣを分解します。
= Σ[k=1 to n] (2k^2) – Σ[k=1 to n] (3k) + Σ[k=1 to n] 1

次に、定数倍の性質を使って、定数をΣの外に出します。
= 2 Σ[k=1 to n] k^2 – 3 Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1

これで、それぞれのΣが基本公式の形になりました。公式を適用します。
= 2 * { n(n+1)(2n+1)/6 } – 3 * { n(n+1)/2 } + { n }

あとは、これを整理していくだけです。
= n(n+1)(2n+1)/3 – 3n(n+1)/2 + n

分母を6で通分して計算することもできますし、nでくくり出すこともできます。共通因数nでくくり出してみましょう。
= n [ (n+1)(2n+1)/3 – 3(n+1)/2 + 1 ]
カッコの中を展開して整理します。
(n+1)(2n+1) = 2n^2 + n + 2n + 1 = 2n^2 + 3n + 1
3(n+1) = 3n + 3
したがって、カッコの中は
(2n^2 + 3n + 1)/3 – (3n + 3)/2 + 1
= { 2(2n^2 + 3n + 1) – 3(3n + 3) + 6 } / 6
= { 4n^2 + 6n + 2 – 9n – 9 + 6 } / 6
= { 4n^2 – 3n – 1 } / 6

よって、最終的な答えは
= n (4n^2 – 3n – 1) / 6
= n (4n + 1)(n – 1) / 6
となります。(最後の因数分解は因数定理などを使っても良いですが、係数から推測しても良いでしょう。例えば n=1 のとき Σ[k=1 to 1] (2k^2 – 3k + 1) = 2-3+1 = 0。公式にn=1を入れると 1 * (4+1)(1-1)/6 = 1 * 5 * 0 / 6 = 0 となり一致します。)

ポイント:
1. 一般項が和や差でつながっている場合は、Σを分解する(和・差の性質)。
2. 一般項に定数倍がついている場合は、定数をΣの外に出す(定数倍の性質)。
3. 残ったΣが基本公式の形になっていれば、公式を適用する。
4. 最後に式を整理する。

この手順で計算すれば、どんな多項式のΣも計算できます。

4. 応用的なΣの計算テクニック

基本公式と線形性の性質を使えば、多くのΣ計算ができるようになりますが、中には一工夫必要なΣもあります。ここでは、特によく出てくる応用的な計算テクニックを紹介します。

4-1. Σの範囲変更(開始の添え字が1以外の場合)

Σの開始の添え字が1以外(例えば m から始まる場合)のΣ[k=m to n] a_k は、どのように計算すればよいでしょうか? 公式は基本的に Σ[k=1 to n] の形になっています。

考え方はシンプルです。「1からnまでの和」から、「1から m-1 までの和」を引く、と考えます。

n n m-1
Σ a_k = Σ a_k - Σ a_k (ただし m ≤ n)
k=m k=1 k=1

もし m=1 の場合は、右辺第二項はΣ[k=1 to 0] となり、これは和をとる範囲がないため0とみなします。これにより Σ[k=1 to n] a_k = Σ[k=1 to n] a_k – 0 となり、つじつまが合います。

:
Σ[k=5 to 10] k
これは k=5, 6, 7, 8, 9, 10 の和です。
公式を使いたいので、1から始まる形に変形します。
Σ[k=5 to 10] k = Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 4] k
Σ[k=1 to 10] k = 10(10+1)/2 = 55
Σ[k=1 to 4] k = 4(4+1)/2 = 10
したがって、Σ[k=5 to 10] k = 55 – 10 = 45 となります。
実際に足してみると、5+6+7+8+9+10 = 11+7+8+9+10 = 18+8+9+10 = 26+9+10 = 35+10 = 45 となり、一致します。

:
Σ[k=3 to n] (k+1)^2
Σ[k=3 to n] (k^2 + 2k + 1)
= Σ[k=1 to n] (k^2 + 2k + 1) – Σ[k=1 to 2] (k^2 + 2k + 1)

まず、Σ[k=1 to n] (k^2 + 2k + 1) を計算します。
= Σ[k=1 to n] k^2 + 2Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1
= n(n+1)(2n+1)/6 + 2 * n(n+1)/2 + n
= n(n+1)(2n+1)/6 + n(n+1) + n
= n [ (n+1)(2n+1)/6 + (n+1) + 1 ]
= n [ (2n^2 + 3n + 1)/6 + (6n+6)/6 + 6/6 ]
= n (2n^2 + 3n + 1 + 6n + 6 + 6) / 6
= n (2n^2 + 9n + 13) / 6

次に、Σ[k=1 to 2] (k^2 + 2k + 1) を計算します。これは k=1 と k=2 の場合を足すだけなので、展開した方が早いです。
k=1 のとき: 1^2 + 2(1) + 1 = 1 + 2 + 1 = 4
k=2 のとき: 2^2 + 2(2) + 1 = 4 + 4 + 1 = 9
和は 4 + 9 = 13 です。

したがって、Σ[k=3 to n] (k+1)^2 は、
= n (2n^2 + 9n + 13) / 6 – 13
= (2n^3 + 9n^2 + 13n – 78) / 6
となります。

このテクニックを使えば、開始が1以外のΣも、既存の公式を利用して計算できるようになります。

4-2. 打ち消し合うΣ(差の形の和、望遠鏡級数)

Σの中の一般項が、「(kを含む式) – (k+1を含む式)」や「(kを含む式) – (k-1を含む式)」のような差の形になっている場合、和をとると途中の項が次々と打ち消し合って消えていくことがあります。これを「望遠鏡級数」と呼びます。

最も代表的な例は、部分分数分解を利用したΣです。

:
Σ[k=1 to n] 1/(k(k+1))
一般項は 1/(k(k+1)) です。これは、1/k – 1/(k+1) と部分分数分解できますね。
1/(k(k+1)) = A/k + B/(k+1) とおくと、1 = A(k+1) + Bk = (A+B)k + A。
係数を比較して A+B=0, A=1。よって A=1, B=-1。
したがって、1/(k(k+1)) = 1/k – 1/(k+1) です。

Σを書き直すと、
Σ[k=1 to n] (1/k – 1/(k+1))

これを展開してみましょう。
k=1 のとき: 1/1 – 1/2
k=2 のとき: 1/2 – 1/3
k=3 のとき: 1/3 – 1/4

k=n-1 のとき: 1/(n-1) – 1/n
k=n のとき: 1/n – 1/(n+1)

これらをすべて足し合わせると、
(1/1 – 1/2) + (1/2 – 1/3) + (1/3 – 1/4) + … + (1/(n-1) – 1/n) + (1/n – 1/(n+1))

途中の -1/2 と +1/2、-1/3 と +1/3、…、-1/n と +1/n が、まるで望遠鏡のように次々と打ち消し合って消えてしまいます。
残るのは、最初の項の最初の部分と、最後の項の最後の部分だけです。
= 1/1 – 1/(n+1)
= 1 – 1/(n+1)
= (n+1 – 1)/(n+1)
= n/(n+1)

このように、一般項を差の形に変形できると、Σの計算が非常に簡単になる場合があります。

差の形の見つけ方

「Σの中が差の形になっていないか?」と疑ってみることが重要です。特に、分数式や、(k+1)の式とkの式の引き算の形になっている場合にこのテクニックが使えないか考えてみましょう。

:
Σ[k=1 to n] {(k+1)^2 – k^2}
一般項は (k+1)^2 – k^2 です。これはまさに差の形ですね。
(k+1)^2 – k^2 = (k^2 + 2k + 1) – k^2 = 2k + 1
展開して計算することもできます。
Σ[k=1 to n] (2k + 1) = 2Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1
= 2 * n(n+1)/2 + n
= n(n+1) + n = n^2 + n + n = n^2 + 2n = n(n+2)

一方、望遠鏡級数の考え方を使うとどうなるでしょう?
Σ[k=1 to n] {(k+1)^2 – k^2}
展開すると:
k=1 のとき: 2^2 – 1^2
k=2 のとき: 3^2 – 2^2
k=3 のとき: 4^2 – 3^2

k=n-1 のとき: n^2 – (n-1)^2
k=n のとき: (n+1)^2 – n^2

これらをすべて足し合わせると、
(2^2 – 1^2) + (3^2 – 2^2) + (4^2 – 3^2) + … + (n^2 – (n-1)^2) + ((n+1)^2 – n^2)
途中の -2^2 と +2^2、-3^2 と +3^2、…、-n^2 と +n^2 が打ち消し合います。
残るのは最初の項の後の部分と、最後の項の最初の部分です。
= -1^2 + (n+1)^2
= -1 + (n^2 + 2n + 1)
= n^2 + 2n
= n(n+2)
となり、同じ結果が得られます。

このように、差の形になっているΣは、展開して打ち消し合いを見ることで計算が楽になる場合があります。特に、一般項を差の形に変形する問題はよく出題されます。

4-3. 一般項に和の変数以外の文字が含まれる場合

Σの計算では、和の変数(例えばk)だけが変数であり、それ以外の文字はすべて「定数」として扱います。これを意識することが重要です。

:
Σ[k=1 to n] (k + m)
このΣでは、和の変数はkです。mはkを含んでいないので、定数として扱います。
線形性を使って分解します。
= Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] m

Σ[k=1 to n] k は Σk の公式で n(n+1)/2 です。
Σ[k=1 to n] m は、一般項が定数mなので、定数の和の公式で nm です。
したがって、Σ[k=1 to n] (k + m) = n(n+1)/2 + nm となります。

:
Σ[i=1 to n] (ik + j)
このΣでは、和の変数はiです。kとjはiを含んでいないので、定数として扱います。
線形性を使って分解します。
= Σ[i=1 to n] ik + Σ[i=1 to n] j
最初の項 Σ[i=1 to n] ik では、kは定数なのでΣの外に出せます。
= k Σ[i=1 to n] i + Σ[i=1 to n] j

ここで、Σ[i=1 to n] i は、和の変数がiですが、形としてはΣ[k=1 to n] k と全く同じです。和の変数によらず、その計算結果は同じ形になります。つまり、Σ[i=1 to n] i = n(n+1)/2 です。
Σ[i=1 to n] j は、一般項が定数jなので、定数の和の公式で nj です。

したがって、Σ[i=1 to n] (ik + j) = k * n(n+1)/2 + nj となります。

Σ計算では、「どの文字が和の変数なのか」「どの文字が定数なのか」を常に意識するようにしましょう。

5. 具体的な計算練習問題に挑戦!

ここまで学んだΣの基本、公式、性質、テクニックを使って、いくつかの練習問題を解いてみましょう。解答だけでなく、考え方や計算のステップも詳しく解説します。

練習問題1:次の和を計算せよ。
Σ[k=1 to 10] (3k – 2)

考え方:
一般項が 3k-2 という多項式なので、Σの線形性(定数倍と和・差の性質)を使って分解し、ΣkとΣcの公式を利用して計算します。終了の添え字は10なので、n=10として公式を使います。

計算ステップ:
Σ[k=1 to 10] (3k – 2)
= Σ[k=1 to 10] 3k – Σ[k=1 to 10] 2 (和・差の性質)
= 3 Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 10] 2 (定数倍の性質)

ここで、
Σ[k=1 to 10] k = 10(10+1)/2 = 10 * 11 / 2 = 55 (Σkの公式、n=10)
Σ[k=1 to 10] 2 = 2 * 10 = 20 (Σcの公式、c=2, n=10)

したがって、
= 3 * 55 – 20
= 165 – 20
= 145

解答: 145

練習問題2:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] (k^2 + k)

考え方:
一般項が k^2+k という多項式なので、Σの線形性を使って分解し、Σk^2とΣkの公式を利用して計算します。終了の添え字はnなので、公式はそのままnを使って適用します。

計算ステップ:
Σ[k=1 to n] (k^2 + k)
= Σ[k=1 to n] k^2 + Σ[k=1 to n] k (和・差の性質)

ここで、
Σ[k=1 to n] k^2 = n(n+1)(2n+1)/6 (Σk^2の公式)
Σ[k=1 to n] k = n(n+1)/2 (Σkの公式)

したがって、
= n(n+1)(2n+1)/6 + n(n+1)/2

共通因数 n(n+1)/2 でくくり出しましょう。
= n(n+1)/2 * [ (2n+1)/3 + 1 ]
カッコの中を通分します。
= n(n+1)/2 * [ (2n+1)/3 + 3/3 ]
= n(n+1)/2 * [ (2n+1 + 3)/3 ]
= n(n+1)/2 * (2n+4)/3
= n(n+1)/2 * 2(n+2)/3
= n(n+1)(n+2)/3

解答: n(n+1)(n+2)/3

練習問題3:次の和を計算せよ。
Σ[k=5 to 10] k

考え方:
開始の添え字が5なので、Σ[k=1 to 10] k から Σ[k=1 to 4] k を引く、という範囲変更のテクニックを使います。

計算ステップ:
Σ[k=5 to 10] k
= Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 4] k (範囲変更のテクニック)

Σ[k=1 to 10] k は n=10 のΣkなので、10(10+1)/2 = 55。
Σ[k=1 to 4] k は n=4 のΣkなので、4(4+1)/2 = 10。

したがって、
= 55 – 10
= 45

解答: 45

練習問題4:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] 1/((k+1)(k+2))

考え方:
一般項が分数式で、kとk+1、k+1とk+2という連続した因数になっています。これは部分分数分解をして、打ち消し合う(望遠鏡級数)形にならないか疑いましょう。

計算ステップ:
一般項 1/((k+1)(k+2)) を部分分数分解します。
1/((k+1)(k+2)) = A/(k+1) + B/(k+2) とおくと、
1 = A(k+2) + B(k+1)
k=-1 を代入すると、1 = A(1) + B(0) より A=1。
k=-2 を代入すると、1 = A(0) + B(-1) より B=-1。
したがって、1/((k+1)(k+2)) = 1/(k+1) – 1/(k+2) です。

Σを書き直すと、
Σ[k=1 to n] {1/(k+1) – 1/(k+2)}

これを展開して打ち消し合いを見ます。
k=1 のとき: 1/2 – 1/3
k=2 のとき: 1/3 – 1/4
k=3 のとき: 1/4 – 1/5

k=n-1 のとき: 1/n – 1/(n+1)
k=n のとき: 1/(n+1) – 1/(n+2)

これらをすべて足し合わせると、
(1/2 – 1/3) + (1/3 – 1/4) + (1/4 – 1/5) + … + (1/n – 1/(n+1)) + (1/(n+1) – 1/(n+2))
途中の項が次々と打ち消し合い、
= 1/2 – 1/(n+2) が残ります。

これを整理して、
= (n+2 – 2) / (2(n+2))
= n / (2(n+2))

解答: n / (2(n+2))

練習問題5:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] {(k+1)^3 – k^3}

考え方:
一般項が (k+1)^3 – k^3 という差の形になっています。展開して打ち消し合い(望遠鏡級数)を見ましょう。

計算ステップ:
Σ[k=1 to n] {(k+1)^3 – k^3}
展開します。
k=1 のとき: 2^3 – 1^3
k=2 のとき: 3^3 – 2^3
k=3 のとき: 4^3 – 3^3

k=n-1 のとき: n^3 – (n-1)^3
k=n のとき: (n+1)^3 – n^3

これらをすべて足し合わせると、
(2^3 – 1^3) + (3^3 – 2^3) + (4^3 – 3^3) + … + (n^3 – (n-1)^3) + ((n+1)^3 – n^3)
途中の項が次々と打ち消し合い、
= -1^3 + (n+1)^3 が残ります。

これを整理して、
= -1 + (n^3 + 3n^2 + 3n + 1)
= n^3 + 3n^2 + 3n

(ちなみに、一般項 (k+1)^3 – k^3 = k^3 + 3k^2 + 3k + 1 – k^3 = 3k^2 + 3k + 1 なので、このΣは Σ[k=1 to n] (3k^2 + 3k + 1) と等しいです。線形性と公式を使って計算しても、3Σk^2 + 3Σk + Σ1 = 3n(n+1)(2n+1)/6 + 3n(n+1)/2 + n = n(n+1)(2n+1)/2 + 3n(n+1)/2 + n = {n(n+1)(2n+1) + 3n(n+1) + 2n}/2 = n{(n+1)(2n+1) + 3(n+1) + 2}/2 = n{2n^2+3n+1 + 3n+3 + 2}/2 = n{2n^2+6n+6}/2 = n(n^2+3n+3) となり、あれ?答えが違う… どこかで計算ミスをしているかもしれません。あ、望遠鏡級数の場合は最後に残る項に注意が必要です。上の計算では -1^3 + (n+1)^3 となりましたね。そのまま整理すると -1 + n^3+3n^2+3n+1 = n^3+3n^2+3n でした。これは合っています。

では、なぜ多項式として計算した場合と答えが違ったのか? 確かめてみましょう。
Σ[k=1 to n] (3k^2 + 3k + 1)
= 3 * n(n+1)(2n+1)/6 + 3 * n(n+1)/2 + n
= n(n+1)(2n+1)/2 + 3n(n+1)/2 + n
= {n(n+1)(2n+1) + 3n(n+1) + 2n} / 2
= n { (n+1)(2n+1) + 3(n+1) + 2 } / 2
= n { (2n^2 + 3n + 1) + (3n + 3) + 2 } / 2
= n { 2n^2 + 6n + 6 } / 2
= n (n^2 + 3n + 3)
はい、こちら側の計算は n(n^2+3n+3) となりました。望遠鏡級数の計算結果は n^3+3n^2+3n です。これは n(n^2+3n+3) と同じですね! (n^2+3n+3) は因数分解できないようです。最初の多項式の計算結果の因数分解が間違っていました。正しくは n^3+3n^2+3n です。

このように、計算途中で「あれ?」と思ったら、別の方法で検算したり、計算を丁寧にたどったりすることが重要です。)

この問題のように、一般項が差の形になっているΣは、公式を使うよりも、展開して打ち消し合いを見る方が簡単に計算できることが多いです。

練習問題6:次の和を計算せよ。
Σ[j=1 to m] (i*j)
ただし、iは定数とする。

考え方:
このΣでは、和の変数は j です。i は定数として扱います。Σの線形性を使います。

計算ステップ:
Σ[j=1 to m] (i*j)
和の変数は j なので、i は定数です。定数倍の性質を使って、iをΣの外に出せます。
= i Σ[j=1 to m] j

Σ[j=1 to m] j は、和の変数が j、終了の添え字が m ですが、形としては Σ[k=1 to m] k と同じです。したがって、Σj の公式を使います(nをmに置き換えるイメージ)。
Σ[j=1 to m] j = m(m+1)/2

したがって、
= i * { m(m+1)/2 }
= im(m+1)/2

解答: im(m+1)/2

これらの練習問題を通して、Σの基本的な計算方法やテクニックの使い方が掴めてきたでしょうか? 大事なのは、Σの形を見たときに「どの公式や性質が使えるか」「応用テクニックは必要か」を判断できるようになることです。

6. Σの苦手意識を克服するための心構えとアドバイス

ここまでΣの計算方法を解説してきましたが、知識をインプットするだけでは苦手意識はなかなか消えません。実際に手を動かして、経験を積み重ねることが何よりも大切です。Σの苦手意識を克服するために、ぜひ次のことを心がけてみてください。

  1. まずは Σ の意味を理解する: 公式や計算テクニックにとらわれる前に、「Σ[k=1 to 5] k^2 は 1^2+2^2+3^2+4^2+5^2 のことなんだな」というように、Σが具体的にどんな和を表しているのかを理解する練習をしましょう。簡単なΣをいくつか展開して書いてみるのが効果的です。Σの記号が「怖いもの」ではなく、「ただの省略記号」だと感じられるようになれば第一歩クリアです。
  2. 公式は「なぜそうなるか」も意識する: Σk の公式が等差数列の和であることを理解したり、定数の和の公式が「同じものを何回も足す」ことだと分かったりすれば、丸暗記よりも頭に入りやすく、忘れにくくなります。公式の導出を追ってみるのも良い勉強になります。
  3. Σの性質を使いこなす: 多項式のΣを計算する際に、線形性を使わずにすべての項を展開して計算するのは非常に大変です。Σを分解したり、定数を外に出したりする操作は、 Σ計算の効率を格段に上げます。これは慣れが必要なので、意識して練習しましょう。
  4. たくさん問題を解く: これが最も重要です。基本問題から始めて、徐々に応用問題に進みましょう。最初は時間がかかっても気にしないことです。計算ミスは誰でもします。どこで間違えたのかを丁寧に確認し、次に活かすことが大切です。
  5. 解答を見るときはプロセスを追う: 問題が解けなかったときや計算が合わなかったときは、解答の最終的な数値だけでなく、Σの分解の仕方、公式の適用、式の整理といった「計算のプロセス」を丁寧に追うようにしましょう。「あ、ここで性質を使うのか」「この部分はこうやってまとめるのか」といった発見があるはずです。
  6. Σは将来の数学で役に立つと知る: Σ記号は、数列や級数の学習で終わりではありません。数学Ⅲで区分求積法や級数、さらにはテイラー展開などを学ぶ際に不可欠な記号です。また、確率統計で平均や分散を定義したり、物理学で力のモーメントや慣性モーメントを計算したり、経済学で総生産などを議論したりと、様々な分野で和を表現するためにΣが使われます。今頑張ってΣをマスターしておくことは、将来の学習の大きな助けになります。

Σは、慣れるまでは少し難しく感じるかもしれませんが、これらのポイントを意識して学習を続ければ、必ず得意になるはずです。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。

7. Σのさらに発展的な話題(ちょっぴり紹介)

数Bの範囲を超える話になりますが、Σがどれほど強力で幅広い数学で使われる記号なのかを知るために、少しだけ発展的な話題に触れておきましょう。

無限級数

数列の和を考えるとき、Σの上に来る添え字が n の場合は「有限個」の項の和でした。これを、項の数を無限に増やした場合の和を考えることがあります。これを無限級数と呼びます。


Σ a_k = a_1 + a_2 + a_3 + ...
k=1

無限に項を足していくと、和が有限な値に収束する場合もあれば、そうでない場合もあります。これは数学Ⅲで詳しく学びますが、ここでもΣ記号が活躍します。

二重Σ(多重Σ)

Σを複数組み合わせて使うこともあります。例えば、2つの添え字 i と j を持つ項 a_{i,j} の和を考える場合です。

n m
Σ Σ a_{i,j}
i=1 j=1

これは、「まず j について1からmまで和をとり、その結果を i について1からnまで和をとる」という意味です。

Σ[j=1 to m] a_{i,j} = a_{i,1} + a_{i,2} + … + a_{i,m}
この結果(iに関する式になっているはず)を、さらにiについてΣをとります。
Σ[i=1 to n] (Σ[j=1 to m] a_{i,j}) = (a_{1,1}+…+a_{1,m}) + (a_{2,1}+…+a_{2,m}) + … + (a_{n,1}+…+a_{n,m})
これは、行列の成分の和や、多変数関数の重積分といった概念と深く関連しています。

これらの発展的な話題は、今は「へぇ、Σってこんな風にも使うんだ」くらいに思っておけば十分です。重要なのは、今学んでいるΣの基本が、より高度な数学につながる土台であるということです。

8. まとめ: Σを味方につけよう!

この記事では、シグマ(Σ)記号について、その基本的な意味から始まり、重要な公式、計算を楽にする性質、そして応用的なテクニックまでを詳しく解説しました。

  • Σは和の省略記号であり、Σ[k=開始 to 終了] 一般項(k) は、開始から終了までの添え字を一般項に代入してできる項をすべて足し合わせたものです。展開して書いてみることで、Σの意味を直感的に理解できます。
  • ** Σk, Σk^2, Σk^3, Σc, 等比数列の和**といった基本公式は、Σ計算の柱となります。これらは確実に覚えて、いつでも使えるようにしておく必要があります。
  • Σの線形性(定数倍、和・差の性質)は、複雑な一般項を持つΣを、計算可能な基本公式の形に分解するための強力な道具です。これらの性質を使いこなすことが、Σ計算を得意にする鍵です。
  • 開始の添え字が1以外の場合の範囲変更や、部分分数分解などを利用した打ち消し合い(望遠鏡級数)といった応用テクニックも、特定の形のΣ計算で非常に有効です。
  • Σ計算は、多くの問題を解いて練習することで必ず上達します。計算ミスを恐れず、間違いから学ぶ姿勢が大切です。
  • Σは、将来の数学や他の学問分野でも必ず登場する、非常に重要な記号です。今ここでしっかりマスターしておくことが、今後の学習の大きな財産となります。

Σは、決してあなたを困らせるためにある記号ではありません。むしろ、数学の世界をよりエレガントに、より効率的に表現するための、あなたの強力な「味方」になり得る記号です。

この記事で学んだことを活かして、ぜひ多くのΣ計算問題に挑戦してみてください。練習すればするほど、Σ記号を見たときの「うっ…」という感覚は薄れ、代わりに「よし、解いてやるぞ!」という自信が湧いてくるはずです。

Σを味方につけて、数列やその先の数学を楽しく学んでいきましょう! 応援しています!


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シグマ(Σ)が苦手な数B生必見!計算のコツと基本を徹底解説

数学Bで数列を学び始め、「Σ(シグマ)」という記号を目にしたとき、思わず「うっ…」となった人は多いのではないでしょうか? 見慣れない記号の羅列に、「これは一体何なんだ?」「どうやって計算するんだ?」と頭を抱えてしまう気持ち、よく分かります。

でも安心してください。Σは決して難しい魔法の記号ではありません。むしろ、面倒な計算を分かりやすく、そしてコンパクトに表現するための、非常に便利な道具なのです。そして、このΣを理解することは、数列の和を求めるだけでなく、将来、数学Ⅲで学ぶ微積分や、大学で学ぶ様々な分野の数学、さらには統計学や物理学、経済学といった分野を理解する上でも、必ず必要になる土台となります。

この記事は、まさに今、「Σが苦手だ…」と感じている数Bの皆さんのために書かれました。Σ記号の本当の意味から始まり、絶対に押さえておくべき基本公式、計算を劇的に楽にする性質、そしてつまずきやすい応用問題の解き方まで、これでもかというほど丁寧に解説していきます。

この記事を最後まで読めば、きっとΣへの苦手意識が薄れ、「なんだ、Σってそういうことだったのか!」と霧が晴れるはずです。そして、計算問題にも自信を持って取り組めるようになるでしょう。さあ、一緒にΣの世界を紐解いていきましょう!

1. Σ記号の基本の「き」: Σって一体何者?

まずは、Σ記号の正体から明らかにしていきましょう。

Σは、ギリシャ文字の「シグマ」の大文字です。数学では、「和(合計)をとる」という意味で使われます。つまり、Σは足し算をまとめて書くための「省略記号」なのです。

Σ記号の周りには、いくつか情報が書かれています。具体的な形は次のようになります。

n
Σ a_k
k=1

この形に含まれる要素は、それぞれ次のような意味を持っています。

  • Σ: 和をとる、という記号そのもの。
  • a_k: 和をとる対象。これを「一般項」と呼びます。kに様々な値を入れてできる項を足し合わせます。
  • k: 「和の変数」または「添え字」と呼ばれるものです。このkの値が変化しながら、一般項a_kを作っていきます。
  • k=1: 和の変数がどこから始まるかを示します。これを「開始の添え字」と呼びます。この例ではkが1から始まります。
  • n: 和の変数がどこで終わるかを示します。これを「終了の添え字」と呼びます。この例ではkがnで終わります。

つまり、上記の記号は、

kを1からnまで順番に増やしながら、一般項a_kに代入してできる項をすべて足し合わせなさい

という意味なのです。これを実際に展開して書いてみると、次のようになります。

n
Σ a_k = a_1 + a_2 + a_3 + ... + a_n
k=1

どうでしょう? Σ記号一つで、長い足し算の式をスッキリと表現できることが分かりますね。これがΣ記号を使う一番のメリットです。

具体例で慣れてみよう

いくつかの具体例を見て、Σ記号の意味をもっと深く理解しましょう。

例1: Σ[k=1 to 5] k

  • 一般項:k
  • 和の変数:k
  • 開始の添え字:1
  • 終了の添え字:5

これは、「kを1から5まで順番に増やしながら、k自身(一般項がkだから)を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
k=1 のとき: 1
k=2 のとき: 2
k=3 のとき: 3
k=4 のとき: 4
k=5 のとき: 5

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[k=1 to 5] k = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15 となります。

例2: Σ[k=1 to 4] (2k – 1)

  • 一般項:2k – 1
  • 和の変数:k
  • 開始の添え字:1
  • 終了の添え字:4

これは、「kを1から4まで順番に増やしながら、一般項 2k-1 に代入してできる項を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
k=1 のとき: 2(1) – 1 = 1
k=2 のとき: 2(2) – 1 = 3
k=3 のとき: 2(3) – 1 = 5
k=4 のとき: 2(4) – 1 = 7

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[k=1 to 4] (2k – 1) = 1 + 3 + 5 + 7 = 16 となります。
(これは初項1、公差2の等差数列の初項から第4項までの和ですね)

例3: Σ[i=3 to 6] i^2

  • 一般項:i^2
  • 和の変数:i
  • 開始の添え字:3
  • 終了の添え字:6

これは、「iを3から6まで順番に増やしながら、一般項 i^2 に代入してできる項を足し合わせなさい」という意味です。

展開すると:
i=3 のとき: 3^2 = 9
i=4 のとき: 4^2 = 16
i=5 のとき: 5^2 = 25
i=6 のとき: 6^2 = 36

これらをすべて足し合わせるので、
Σ[i=3 to 6] i^2 = 9 + 16 + 25 + 36 = 86 となります。

ポイント:添え字の文字はkじゃなくてもOK

上の例3のように、和の変数はkである必要はありません。iやj、mなど、どんな文字を使っても構いません。重要なのは、Σの下で指定された文字が、一般項の中で変化する変数であるということです。Σ[k=1 to n] a_k と Σ[j=1 to n] a_j は全く同じ意味になります。

Σの開始の添え字が1以外の場合

Σの開始の添え字は、必ずしも1である必要はありません。上の例3のように3から始まることもありますし、0から始まることや、それ以外の値から始まることもあります。

Σ[k=m to n] a_k は、kがmからnまで変化するときのa_kの和を表します。

展開すると:
Σ[k=m to n] a_k = a_m + a_{m+1} + … + a_n

この「開始の添え字が1以外」のΣの計算については、後ほど「応用的な計算テクニック」の章で詳しく解説します。まずは、Σの意味そのものをしっかりと掴んでください。

小まとめ

  • Σ記号は「和をとる」ための記号。
  • Σの下、上、右にそれぞれ「和の変数と開始の値」「終了の値」「一般項」が書かれている。
  • Σ[k=開始 to 終了] 一般項(k) は、開始から終了までkを代入してできる項をすべて足し合わせたもの。
  • 和の変数はk以外でもよい。
  • 開始の添え字は1以外でもよい。

Σの意味を理解する一番の近道は、小さな数で実際に展開して書いてみることです。Σ[k=1 to 3] k^2 なら 1^2 + 2^2 + 3^2 = 1 + 4 + 9 = 14 と、まずは書き出してみる癖をつけましょう。

2. これだけは覚える!Σの超重要公式

Σ計算を行う上で、毎回すべての項を展開して足すのは現実的ではありません。特に、項数が多かったり、nのように文字で与えられている場合は不可能です。そこで必要になるのが、「Σの公式」です。

これらの公式は、特定の形をした数列の和を、項数nなどを使って一発で計算するためのものです。これから紹介する公式は、Σ計算の基本中の基本であり、今後様々な場面で登場します。必ず覚えて使えるようにしましょう。

2-1. 定数の和の公式

一般項が、和の変数kを含まない定数cである場合、Σの計算は非常にシンプルです。

n
Σ c = nc
k=1

解説:
これは、「cという値を、k=1からk=nまでのn回足し合わせる」という意味です。
c + c + c + … + c (cがn個)
当然、その合計は c × n となります。

:
Σ[k=1 to 5] 3
これは、「3という数を、k=1, 2, 3, 4, 5 の5回足し合わせる」という意味。
展開すると 3 + 3 + 3 + 3 + 3 = 3 × 5 = 15。
公式を使えば、c=3, n=5 なので、5 × 3 = 15 とすぐに計算できます。

Σ[k=1 to n] 5
これは、「5という数を、k=1からnまでのn回足し合わせる」という意味。
展開すると 5 + 5 + … + 5 (5がn個)。
公式を使えば、c=5 なので、5n となります。

2-2. 自然数の和の公式(Σk)

一般項がk(和の変数そのもの)である場合の和です。

n
Σ k = 1 + 2 + 3 + ... + n = n(n+1)/2
k=1

解説:
これは、初項1、公差1の等差数列の初項から第n項までの和に他なりません。等差数列の和の公式「(項数) × (初項 + 末項) / 2」を思い出してください。
項数:n
初項:1
末項:n
したがって、和は n × (1 + n) / 2 = n(n+1)/2 となります。

この公式は、ドイツの数学者ガウスが子供の頃、1から100までの数をすべて足すように言われた際に、すぐに1+100=101, 2+99=101, … というようにペアを作って計算し、答えが50ペア×101=5050であることを導き出したという逸話で有名ですね。この考え方が、まさにこの公式の導出につながっています。

:
Σ[k=1 to 10] k
これは 1 + 2 + … + 10 の和です。
公式を使えば、n=10 なので、10(10+1)/2 = 10 × 11 / 2 = 55 と計算できます。

Σ[k=1 to 50] k
これは 1 + 2 + … + 50 の和です。
公式を使えば、n=50 なので、50(50+1)/2 = 50 × 51 / 2 = 25 × 51 = 1275 と計算できます。

2-3. 自然数の平方の和の公式(Σk^2)

一般項がk^2である場合の和です。

n
Σ k^2 = 1^2 + 2^2 + 3^2 + ... + n^2 = n(n+1)(2n+1)/6
k=1

解説:
この公式は、等差数列や等比数列の和の公式のように簡単に導出できるものではありません(差分の計算や数学的帰納法などを使って証明されます)。形が少し複雑なので覚えるのが大変かもしれませんが、Σ計算では本当によく使う公式です。頑張って覚えましょう!

:
Σ[k=1 to 5] k^2
これは 1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2 + 5^2 = 1 + 4 + 9 + 16 + 25 = 55 の和です。
公式を使えば、n=5 なので、5(5+1)(2×5+1)/6 = 5 × 6 × 11 / 6 = 5 × 11 = 55 と計算できます。

Σ[k=1 to 10] k^2
これは 1^2 + 2^2 + … + 10^2 の和です。
公式を使えば、n=10 なので、10(10+1)(2×10+1)/6 = 10 × 11 × 21 / 6 = (10/2) × 11 × (21/3) = 5 × 11 × 7 = 385 と計算できます。

2-4. 自然数の立方の和の公式(Σk^3)

一般項がk^3である場合の和です。

n
Σ k^3 = 1^3 + 2^3 + 3^3 + ... + n^3 = { n(n+1)/2 }^2
k=1

解説:
この公式は、Σk の公式の結果を2乗した形になっています。Σk の公式とセットで覚えると覚えやすいかもしれませんね。これもよく使われる公式です。

:
Σ[k=1 to 3] k^3
これは 1^3 + 2^3 + 3^3 = 1 + 8 + 27 = 36 の和です。
公式を使えば、n=3 なので、{3(3+1)/2}^2 = {3 × 4 / 2}^2 = (6)^2 = 36 と計算できます。

Σ[k=1 to 6] k^3
これは 1^3 + 2^3 + … + 6^3 の和です。
公式を使えば、n=6 なので、{6(6+1)/2}^2 = {6 × 7 / 2}^2 = (21)^2 = 441 と計算できます。

2-5. 等比数列の和の公式

一般項が等比数列の形である場合の和です。Σで表現すると、初項a、公比rの等比数列の初項から第n項までの和は次のようになります。

n
Σ ar^(k-1) = a + ar + ar^2 + ... + ar^(n-1) = a(r^n - 1)/(r-1) (ただし r ≠ 1)
k=1

解説:
これは、数Bで最初に学ぶ等比数列の和の公式そのものです。Σ記号で書かれている形に慣れましょう。Σの下の k=1 から始まる場合、一般項が ar^(k-1) となっていることが多いです。これは、k=1 のときに ar^(1-1) = ar^0 = a となり、初項がaになるからです。

もし一般項が ar^k のような形になっている場合は、Σ[k=1 to n] ar^k = ar + ar^2 + … + ar^n となり、これは初項ar、公比rの等比数列の和になります。この場合の和は ar(r^n – 1)/(r-1) です。Σ記号で与えられたら、まずは k=1, 2, … と代入して、どんな数列の和になっているかを確認することが重要です。

:
Σ[k=1 to 5] 2 * 3^(k-1)
これは初項 a=2, 公比 r=3 の等比数列の初項から第5項までの和です。
公式を使えば、n=5 なので、2 * (3^5 – 1)/(3-1) = 2 * (243 – 1)/2 = 242 と計算できます。

Σ[k=1 to 4] 5 * (1/2)^k
これは一般項が 5(1/2)^k です。k=1のとき 5(1/2)^1 = 5/2、k=2のとき 5*(1/2)^2 = 5/4, … となり、初項 5/2, 公比 1/2 の等比数列です。
公式を使えば、初項 a=5/2, 公比 r=1/2, 項数 n=4 なので、(5/2) * ((1/2)^4 – 1)/((1/2)-1) = (5/2) * (1/16 – 1)/(-1/2) = (5/2) * (-15/16) / (-1/2) = (5/2) * (-15/16) * (-2/1) = 5 * 15 / 16 = 75/16 と計算できます。

重要公式のまとめ

和の形 Σ記号 公式
定数の和 Σ[k=1 to n] c nc
自然数の和 Σ[k=1 to n] k n(n+1)/2
自然数の平方の和 Σ[k=1 to n] k^2 n(n+1)(2n+1)/6
自然数の立方の和 Σ[k=1 to n] k^3 {n(n+1)/2}^2
等比数列の和 (初項a,公比r) Σ[k=1 to n] ar^(k-1) a(r^n – 1)/(r-1) (r≠1)

これらの公式は、Σ計算の土台です。完璧にマスターしましょう。特に、Σk, Σk^2, Σk^3 の公式は、今後多項式のΣを計算する際に必須となります。

3. 計算が劇的に楽になる!Σの性質(線形性)

Σ計算の公式を覚えることも重要ですが、それと同じくらい、いやそれ以上に重要なのが「Σの性質」です。この性質を使うことで、複雑に見えるΣも、いくつかの簡単なΣに分解して計算できるようになります。Σの性質は「線形性」と呼ばれ、Σ記号が持つ非常に強力な特徴です。

Σの性質は主に以下の2つです。いずれもΣの開始の添え字が1の場合で説明しますが、他の開始の添え字でも成り立ちます。

3-1. 定数倍の性質

Σの中の一般項に定数がかかっている場合、その定数をΣの外に出すことができます。

n n
Σ c a_k = c Σ a_k
k=1 k=1

ただし、cは和の変数kを含まない定数である必要があります。

解説:
考えてみれば当たり前のことです。
Σ[k=1 to n] c a_k = c a_1 + c a_2 + … + c a_n
これは、共通因数cでくくると
= c (a_1 + a_2 + … + a_n)
となります。そして、カッコの中身はまさに Σ[k=1 to n] a_k ですね。
だから、Σ[k=1 to n] c a_k = c Σ[k=1 to n] a_k が成り立つ lecturing you.

:
Σ[k=1 to 10] 3k
性質を使えば、3をΣの外に出せます。
= 3 Σ[k=1 to 10] k
ここで、Σ[k=1 to 10] k は Σk の公式で計算できます(n=10)。
= 3 × {10(10+1)/2}
= 3 × 55
= 165

もしこの性質を知らないと、
3(1) + 3(2) + … + 3(10) = 3 + 6 + … + 30
という等差数列の和を計算することになります。これでもできますが、性質を使った方がスムーズな場合が多いです。

3-2. 和・差の性質

Σの中の一般項が、いくつかの項の和や差になっている場合、Σをそれぞれの項に分けて計算することができます。

n n n
Σ (a_k + b_k) = Σ a_k + Σ b_k
k=1 k=1 k=1

n n n
Σ (a_k - b_k) = Σ a_k - Σ b_k
k=1 k=1 k=1

解説:
これも、和の定義を考えれば理解できます。
Σ[k=1 to n] (a_k + b_k) = (a_1 + b_1) + (a_2 + b_2) + … + (a_n + b_n)
足し算は順序を入れ替えても結果は同じなので、a_kの項とb_kの項をまとめても構いません。
= (a_1 + a_2 + … + a_n) + (b_1 + b_2 + … + b_n)
そして、カッコの中身はそれぞれ Σ[k=1 to n] a_k と Σ[k=1 to n] b_k ですね。
だから、Σ[k=1 to n] (a_k + b_k) = Σ[k=1 to n] a_k + Σ[k=1 to n] b_k が成り立つわけです。
差の場合も同様です。

:
Σ[k=1 to 5] (k^2 + k)
性質を使えば、Σを2つに分けられます。
= Σ[k=1 to 5] k^2 + Σ[k=1 to 5] k
ここで、Σk^2 と Σk の公式を使います(n=5)。
Σ[k=1 to 5] k^2 = 5(5+1)(2×5+1)/6 = 5 × 6 × 11 / 6 = 55
Σ[k=1 to 5] k = 5(5+1)/2 = 5 × 6 / 2 = 15
したがって、Σ[k=1 to 5] (k^2 + k) = 55 + 15 = 70 と計算できます。

これらの性質を使った複雑なΣの計算

これらの性質と基本公式を組み合わせることで、多項式の形をした一般項のΣを簡単に計算できるようになります。

:
Σ[k=1 to n] (2k^2 – 3k + 1)
このΣを計算してみましょう。一般項は 2k^2 – 3k + 1 という多項式です。
和・差の性質を使って、それぞれの項にΣを分解します。
= Σ[k=1 to n] (2k^2) – Σ[k=1 to n] (3k) + Σ[k=1 to n] 1

次に、定数倍の性質を使って、定数をΣの外に出します。
= 2 Σ[k=1 to n] k^2 – 3 Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1

これで、それぞれのΣが基本公式の形になりました。公式を適用します。
= 2 * { n(n+1)(2n+1)/6 } – 3 * { n(n+1)/2 } + { n }

あとは、これを整理していくだけです。
= n(n+1)(2n+1)/3 – 3n(n+1)/2 + n

分母を6で通分して計算することもできますし、nでくくり出すこともできます。共通因数nでくくり出してみましょう。
= n [ (n+1)(2n+1)/3 – 3(n+1)/2 + 1 ]
カッコの中を展開して整理します。
(n+1)(2n+1) = 2n^2 + n + 2n + 1 = 2n^2 + 3n + 1
3(n+1) = 3n + 3
したがって、カッコの中は
(2n^2 + 3n + 1)/3 – (3n + 3)/2 + 1
= { 2(2n^2 + 3n + 1) – 3(3n + 3) + 6 } / 6
= { 4n^2 + 6n + 2 – 9n – 9 + 6 } / 6
= { 4n^2 – 3n – 1 } / 6

よって、最終的な答えは
= n (4n^2 – 3n – 1) / 6
= n (4n + 1)(n – 1) / 6
となります。(最後の因数分解は因数定理などを使っても良いですが、係数から推測しても良いでしょう。例えば n=1 のとき Σ[k=1 to 1] (2k^2 – 3k + 1) = 2-3+1 = 0。公式にn=1を入れると 1 * (4+1)(1-1)/6 = 1 * 5 * 0 / 6 = 0 となり一致します。)

ポイント:
1. 一般項が和や差でつながっている場合は、Σを分解する(和・差の性質)。
2. 一般項に定数倍がついている場合は、定数をΣの外に出す(定数倍の性質)。
3. 残ったΣが基本公式の形になっていれば、公式を適用する。
4. 最後に式を整理する。

この手順で計算すれば、どんな多項式のΣも計算できます。

4. 応用的なΣの計算テクニック

基本公式と線形性の性質を使えば、多くのΣ計算ができるようになりますが、中には一工夫必要なΣもあります。ここでは、特によく出てくる応用的な計算テクニックを紹介します。

4-1. Σの範囲変更(開始の添え字が1以外の場合)

Σの開始の添え字が1以外(例えば m から始まる場合)のΣ[k=m to n] a_k は、どのように計算すればよいでしょうか? 公式は基本的に Σ[k=1 to n] の形になっています。

考え方はシンプルです。「1からnまでの和」から、「1から m-1 までの和」を引く、と考えます。

n n m-1
Σ a_k = Σ a_k - Σ a_k (ただし m ≤ n)
k=m k=1 k=1

もし m=1 の場合は、右辺第二項はΣ[k=1 to 0] となり、これは和をとる範囲がないため0とみなします。これにより Σ[k=1 to n] a_k = Σ[k=1 to n] a_k – 0 となり、つじつまが合います。

:
Σ[k=5 to 10] k
これは k=5, 6, 7, 8, 9, 10 の和です。
公式を使いたいので、1から始まる形に変形します。
Σ[k=5 to 10] k = Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 4] k
Σ[k=1 to 10] k = 10(10+1)/2 = 55
Σ[k=1 to 4] k = 4(4+1)/2 = 10
したがって、Σ[k=5 to 10] k = 55 – 10 = 45 となります。
実際に足してみると、5+6+7+8+9+10 = 11+7+8+9+10 = 18+8+9+10 = 26+9+10 = 35+10 = 45 となり、一致します。

:
Σ[k=3 to n] (k+1)^2
Σ[k=3 to n] (k^2 + 2k + 1)
= Σ[k=1 to n] (k^2 + 2k + 1) – Σ[k=1 to 2] (k^2 + 2k + 1)

まず、Σ[k=1 to n] (k^2 + 2k + 1) を計算します。
= Σ[k=1 to n] k^2 + 2Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1
= n(n+1)(2n+1)/6 + 2 * n(n+1)/2 + n
= n(n+1)(2n+1)/6 + n(n+1) + n
= n [ (n+1)(2n+1)/6 + (n+1) + 1 ]
= n [ (2n^2 + 3n + 1)/6 + (6n+6)/6 + 6/6 ]
= n (2n^2 + 3n + 1 + 6n + 6 + 6) / 6
= n (2n^2 + 9n + 13) / 6

次に、Σ[k=1 to 2] (k^2 + 2k + 1) を計算します。これは k=1 と k=2 の場合を足すだけなので、展開した方が早いです。
k=1 のとき: 1^2 + 2(1) + 1 = 1 + 2 + 1 = 4
k=2 のとき: 2^2 + 2(2) + 1 = 4 + 4 + 1 = 9
和は 4 + 9 = 13 です。

したがって、Σ[k=3 to n] (k+1)^2 は、
= n (2n^2 + 9n + 13) / 6 – 13
= (2n^3 + 9n^2 + 13n – 78) / 6
となります。

このテクニックを使えば、開始が1以外のΣも、既存の公式を利用して計算できるようになります。

4-2. 打ち消し合うΣ(差の形の和、望遠鏡級数)

Σの中の一般項が、「(kを含む式) – (k+1を含む式)」や「(kを含む式) – (k-1を含む式)」のような差の形になっている場合、和をとると途中の項が次々と打ち消し合って消えていくことがあります。これを「望遠鏡級数」と呼びます。

最も代表的な例は、部分分数分解を利用したΣです。

:
Σ[k=1 to n] 1/(k(k+1))
一般項は 1/(k(k+1)) です。これは、1/k – 1/(k+1) と部分分数分解できますね。
1/(k(k+1)) = A/k + B/(k+1) とおくと、1 = A(k+1) + Bk = (A+B)k + A。
係数を比較して A+B=0, A=1。よって A=1, B=-1。
したがって、1/(k(k+1)) = 1/k – 1/(k+1) です。

Σを書き直すと、
Σ[k=1 to n] (1/k – 1/(k+1))

これを展開してみましょう。
k=1 のとき: 1/1 – 1/2
k=2 のとき: 1/2 – 1/3
k=3 のとき: 1/3 – 1/4

k=n-1 のとき: 1/(n-1) – 1/n
k=n のとき: 1/n – 1/(n+1)

これらをすべて足し合わせると、
(1/1 – 1/2) + (1/2 – 1/3) + (1/3 – 1/4) + … + (1/(n-1) – 1/n) + (1/n – 1/(n+1))

途中の -1/2 と +1/2、-1/3 と +1/3、…、-1/n と +1/n が、まるで望遠鏡のように次々と打ち消し合って消えてしまいます。
残るのは、最初の項の最初の部分と、最後の項の最後の部分だけです。
= 1/1 – 1/(n+1)
= 1 – 1/(n+1)
= (n+1 – 1)/(n+1)
= n/(n+1)

このように、一般項を差の形に変形できると、Σの計算が非常に簡単になる場合があります。

差の形の見つけ方

「Σの中が差の形になっていないか?」と疑ってみることが重要です。特に、分数式や、(k+1)の式とkの式の引き算の形になっている場合にこのテクニックが使えないか考えてみましょう。

:
Σ[k=1 to n] {(k+1)^2 – k^2}
一般項は (k+1)^2 – k^2 です。これはまさに差の形ですね。
(k+1)^2 – k^2 = (k^2 + 2k + 1) – k^2 = 2k + 1
展開して計算することもできます。
Σ[k=1 to n] (2k + 1) = 2Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] 1
= 2 * n(n+1)/2 + n
= n(n+1) + n = n^2 + n + n = n^2 + 2n = n(n+2)

一方、望遠鏡級数の考え方を使うとどうなるでしょう?
Σ[k=1 to n] {(k+1)^2 – k^2}
展開すると:
k=1 のとき: 2^2 – 1^2
k=2 のとき: 3^2 – 2^2
k=3 のとき: 4^2 – 3^2

k=n-1 のとき: n^2 – (n-1)^2
k=n のとき: (n+1)^2 – n^2

これらをすべて足し合わせると、
(2^2 – 1^2) + (3^2 – 2^2) + (4^2 – 3^2) + … + (n^2 – (n-1)^2) + ((n+1)^2 – n^2)
途中の -2^2 と +2^2、-3^2 と +3^2、…、-n^2 と +n^2 が打ち消し合います。
残るのは最初の項の後の部分と、最後の項の最初の部分です。
= -1^2 + (n+1)^2
= -1 + (n^2 + 2n + 1)
= n^2 + 2n
= n(n+2)
となり、同じ結果が得られます。

このように、差の形になっているΣは、展開して打ち消し合いを見ることで計算が楽になる場合があります。特に、一般項を差の形に変形する問題はよく出題されます。

4-3. 一般項に和の変数以外の文字が含まれる場合

Σの計算では、和の変数(例えばk)だけが変数であり、それ以外の文字はすべて「定数」として扱います。これを意識することが重要です。

:
Σ[k=1 to n] (k + m)
このΣでは、和の変数はkです。mはkを含んでいないので、定数として扱います。
線形性を使って分解します。
= Σ[k=1 to n] k + Σ[k=1 to n] m

Σ[k=1 to n] k は Σk の公式で n(n+1)/2 です。
Σ[k=1 to n] m は、一般項が定数mなので、定数の和の公式で nm です。
したがって、Σ[k=1 to n] (k + m) = n(n+1)/2 + nm となります。

:
Σ[i=1 to n] (ik + j)
このΣでは、和の変数はiです。kとjはiを含んでいないので、定数として扱います。
線形性を使って分解します。
= Σ[i=1 to n] ik + Σ[i=1 to n] j
最初の項 Σ[i=1 to n] ik では、kは定数なのでΣの外に出せます。
= k Σ[i=1 to n] i + Σ[i=1 to n] j

ここで、Σ[i=1 to n] i は、和の変数がiですが、形としてはΣ[k=1 to n] k と全く同じです。和の変数によらず、その計算結果は同じ形になります。つまり、Σ[i=1 to n] i = n(n+1)/2 です。
Σ[i=1 to n] j は、一般項が定数jなので、定数の和の公式で nj です。

したがって、Σ[i=1 to n] (ik + j) = k * n(n+1)/2 + nj となります。

Σ計算では、「どの文字が和の変数なのか」「どの文字が定数なのか」を常に意識するようにしましょう。

5. 具体的な計算練習問題に挑戦!

ここまで学んだΣの基本、公式、性質、テクニックを使って、いくつかの練習問題を解いてみましょう。解答だけでなく、考え方や計算のステップも詳しく解説します。

練習問題1:次の和を計算せよ。
Σ[k=1 to 10] (3k – 2)

考え方:
一般項が 3k-2 という多項式なので、Σの線形性(定数倍と和・差の性質)を使って分解し、ΣkとΣcの公式を利用して計算します。終了の添え字は10なので、n=10として公式を使います。

計算ステップ:
Σ[k=1 to 10] (3k – 2)
= Σ[k=1 to 10] 3k – Σ[k=1 to 10] 2 (和・差の性質)
= 3 Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 10] 2 (定数倍の性質)

ここで、
Σ[k=1 to 10] k = 10(10+1)/2 = 10 * 11 / 2 = 55 (Σkの公式、n=10)
Σ[k=1 to 10] 2 = 2 * 10 = 20 (Σcの公式、c=2, n=10)

したがって、
= 3 * 55 – 20
= 165 – 20
= 145

解答: 145

練習問題2:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] (k^2 + k)

考え方:
一般項が k^2+k という多項式なので、Σの線形性を使って分解し、Σk^2とΣkの公式を利用して計算します。終了の添え字はnなので、公式はそのままnを使って適用します。

計算ステップ:
Σ[k=1 to n] (k^2 + k)
= Σ[k=1 to n] k^2 + Σ[k=1 to n] k (和・差の性質)

ここで、
Σ[k=1 to n] k^2 = n(n+1)(2n+1)/6 (Σk^2の公式)
Σ[k=1 to n] k = n(n+1)/2 (Σkの公式)

したがって、
= n(n+1)(2n+1)/6 + n(n+1)/2

共通因数 n(n+1)/2 でくくり出しましょう。
= n(n+1)/2 * [ (2n+1)/3 + 1 ]
カッコの中を通分します。
= n(n+1)/2 * [ (2n+1)/3 + 3/3 ]
= n(n+1)/2 * [ (2n+1 + 3)/3 ]
= n(n+1)/2 * (2n+4)/3
= n(n+1)/2 * 2(n+2)/3
= n(n+1)(n+2)/3

解答: n(n+1)(n+2)/3

練習問題3:次の和を計算せよ。
Σ[k=5 to 10] k

考え方:
開始の添え字が5なので、Σ[k=1 to 10] k から Σ[k=1 to 4] k を引く、という範囲変更のテクニックを使います。

計算ステップ:
Σ[k=5 to 10] k
= Σ[k=1 to 10] k – Σ[k=1 to 4] k (範囲変更のテクニック)

Σ[k=1 to 10] k は n=10 のΣkなので、10(10+1)/2 = 55。
Σ[k=1 to 4] k は n=4 のΣkなので、4(4+1)/2 = 10。

したがって、
= 55 – 10
= 45

解答: 45

練習問題4:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] 1/((k+1)(k+2))

考え方:
一般項が分数式で、kとk+1、k+1とk+2という連続した因数になっています。これは部分分数分解をして、打ち消し合う(望遠鏡級数)形にならないか疑いましょう。

計算ステップ:
一般項 1/((k+1)(k+2)) を部分分数分解します。
1/((k+1)(k+2)) = A/(k+1) + B/(k+2) とおくと、
1 = A(k+2) + B(k+1)
k=-1 を代入すると、1 = A(1) + B(0) より A=1。
k=-2 を代入すると、1 = A(0) + B(-1) より B=-1。
したがって、1/((k+1)(k+2)) = 1/(k+1) – 1/(k+2) です。

Σを書き直すと、
Σ[k=1 to n] {1/(k+1) – 1/(k+2)}

これを展開して打ち消し合いを見ます。
k=1 のとき: 1/2 – 1/3
k=2 のとき: 1/3 – 1/4
k=3 のとき: 1/4 – 1/5

k=n-1 のとき: 1/n – 1/(n+1)
k=n のとき: 1/(n+1) – 1/(n+2)

これらをすべて足し合わせると、
(1/2 – 1/3) + (1/3 – 1/4) + (1/4 – 1/5) + … + (1/n – 1/(n+1)) + (1/(n+1) – 1/(n+2))
途中の項が次々と打ち消し合い、
= 1/2 – 1/(n+2) が残ります。

これを整理して、
= (n+2 – 2) / (2(n+2))
= n / (2(n+2))

解答: n / (2(n+2))

練習問題5:次の和をnを用いて表せ。
Σ[k=1 to n] {(k+1)^3 – k^3}

考え方:
一般項が (k+1)^3 – k^3 という差の形になっています。展開して打ち消し合い(望遠鏡級数)を見ましょう。

計算ステップ:
Σ[k=1 to n] {(k+1)^3 – k^3}
展開します。
k=1 のとき: 2^3 – 1^3
k=2 のとき: 3^3 – 2^3
k=3 のとき: 4^3 – 3^3

k=n-1 のとき: n^3 – (n-1)^3
k=n のとき: (n+1)^3 – n^3

これらをすべて足し合わせると、
(2^3 – 1^3) + (3^3 – 2^3) + (4^3 – 3^3) + … + (n^3 – (n-1)^3) + ((n+1)^3 – n^3)
途中の項が次々と打ち消し合い、
= -1^3 + (n+1)^3 が残ります。

これを整理して、
= -1 + (n^3 + 3n^2 + 3n + 1)
= n^3 + 3n^2 + 3n

(ちなみに、一般項 (k+1)^3 – k^3 = k^3 + 3k^2 + 3k + 1 – k^3 = 3k^2 + 3k + 1 なので、このΣは Σ[k=1 to n] (3k^2 + 3k + 1) と等しいです。線形性と公式を使って計算しても、3Σk^2 + 3Σk + Σ1 = 3n(n+1)(2n+1)/6 + 3n(n+1)/2 + n = n(n+1)(2n+1)/2 + 3n(n+1)/2 + n = {n(n+1)(2n+1) + 3n(n+1) + 2n}/2 = n{(n+1)(2n+1) + 3(n+1) + 2}/2 = n{2n^2+3n+1 + 3n+3 + 2}/2 = n{2n^2+6n+6}/2 = n(n^2+3n+3) となり、あれ?答えが違う? 最初の望遠鏡級数の計算 n^3+3n^2+3n は n(n^2+3n+3) と同じ形ですね!計算ミスしていませんでした。良かったです。)

この問題のように、一般項が差の形になっているΣは、公式を使うよりも、展開して打ち消し合いを見る方が簡単に計算できることが多いです。

練習問題6:次の和を計算せよ。
Σ[j=1 to m] (i*j)
ただし、iは定数とする。

考え方:
このΣでは、和の変数は j です。i は定数として扱います。Σの線形性を使います。

計算ステップ:
Σ[j=1 to m] (i*j)
和の変数は j なので、i は定数です。定数倍の性質を使って、iをΣの外に出せます。
= i Σ[j=1 to m] j

Σ[j=1 to m] j は、和の変数が j、終了の添え字が m ですが、形としては Σ[k=1 to m] k と同じです。したがって、Σj の公式を使います(nをmに置き換えるイメージ)。
Σ[j=1 to m] j = m(m+1)/2

したがって、
= i * { m(m+1)/2 }
= im(m+1)/2

解答: im(m+1)/2

これらの練習問題を通して、Σの基本的な計算方法やテクニックの使い方が掴めてきたでしょうか? 大事なのは、Σの形を見たときに「どの公式や性質が使えるか」「応用テクニックは必要か」を判断できるようになることです。

6. Σの苦手意識を克服するための心構えとアドバイス

ここまでΣの計算方法を解説してきましたが、知識をインプットするだけでは苦手意識はなかなか消えません。実際に手を動かして、経験を積み重ねることが何よりも大切です。Σの苦手意識を克服するために、ぜひ次のことを心がけてみてください。

  1. まずは Σ の意味を理解する: 公式や計算テクニックにとらわれる前に、「Σ[k=1 to 5] k^2 は 1^2+2^2+3^2+4^2+5^2 のことなんだな」というように、Σが具体的にどんな和を表しているのかを理解する練習をしましょう。簡単なΣをいくつか展開して書いてみるのが効果的です。Σの記号が「怖いもの」ではなく、「ただの省略記号」だと感じられるようになれば第一歩クリアです。
  2. 公式は「なぜそうなるか」も意識する: Σk の公式が等差数列の和であることを理解したり、定数の和の公式が「同じものを何回も足す」ことだと分かったりすれば、丸暗記よりも頭に入りやすく、忘れにくくなります。公式の導出を追ってみるのも良い勉強になります。
  3. Σの性質を使いこなす: 多項式のΣを計算する際に、線形性を使わずにすべての項を展開して計算するのは非常に大変です。Σを分解したり、定数を外に出したりする操作は、 Σ計算の効率を格段に上げます。これは慣れが必要なので、意識して練習しましょう。
  4. たくさん問題を解く: これが最も重要です。基本問題から始めて、徐々に応用問題に進みましょう。最初は時間がかかっても気にしないことです。計算ミスは誰でもします。どこで間違えたのかを丁寧に確認し、次に活かすことが大切です。
  5. 解答を見るときはプロセスを追う: 問題が解けなかったときや計算が合わなかったときは、解答の最終的な数値だけでなく、Σの分解の仕方、公式の適用、式の整理といった「計算のプロセス」を丁寧に追うようにしましょう。「あ、ここで性質を使うのか」「この部分はこうやってまとめるのか」といった発見があるはずです。
  6. Σは将来の数学で役に立つと知る: Σ記号は、数列や級数の学習で終わりではありません。数学Ⅲで区分求積法や級数、さらにはテイラー展開などを学ぶ際に不可欠な記号です。また、確率統計で平均や分散を定義したり、物理学で力のモーメントや慣性モーメントを計算したり、経済学で総生産などを議論したりと、様々な分野で和を表現するためにΣが使われます。今頑張ってΣをマスターしておくことは、将来の学習の大きな助けになります。

Σは、慣れるまでは少し難しく感じるかもしれませんが、これらのポイントを意識して学習を続ければ、必ず得意になるはずです。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。

7. Σのさらに発展的な話題(ちょっぴり紹介)

数Bの範囲を超える話になりますが、Σがどれほど強力で幅広い数学で使われる記号なのかを知るために、少しだけ発展的な話題に触れておきましょう。

無限級数

数列の和を考えるとき、Σの上に来る添え字が n の場合は「有限個」の項の和でした。これを、項の数を無限に増やした場合の和を考えることがあります。これを無限級数と呼びます。


Σ a_k = a_1 + a_2 + a_3 + ...
k=1

無限に項を足していくと、和が有限な値に収束する場合もあれば、そうでない場合もあります。これは数学Ⅲで詳しく学びますが、ここでもΣ記号が活躍します。

二重Σ(多重Σ)

Σを複数組み合わせて使うこともあります。例えば、2つの添え字 i と j を持つ項 a_{i,j} の和を考える場合です。

n m
Σ Σ a_{i,j}
i=1 j=1

これは、「まず j について1からmまで和をとり、その結果を i について1からnまで和をとる」という意味です。

Σ[j=1 to m] a_{i,j} = a_{i,1} + a_{i,2} + … + a_{i,m}
この結果(iに関する式になっているはず)を、さらにiについてΣをとります。
Σ[i=1 to n] (Σ[j=1 to m] a_{i,j}) = (a_{1,1}+…+a_{1,m}) + (a_{2,1}+…+a_{2,m}) + … + (a_{n,1}+…+a_{n,m})
これは、行列の成分の和や、多変数関数の重積分といった概念と深く関連しています。

これらの発展的な話題は、今は「へぇ、Σってこんな風にも使うんだ」くらいに思っておけば十分です。重要なのは、今学んでいるΣの基本が、より高度な数学につながる土台であるということです。

8. まとめ: Σを味方につけよう!

この記事では、シグマ(Σ)記号について、その基本的な意味から始まり、重要な公式、計算を楽にする性質、そして応用的なテクニックまでを詳しく解説しました。

  • Σは和の省略記号であり、Σ[k=開始 to 終了] 一般項(k) は、開始から終了までの添え字を一般項に代入してできる項をすべて足し合わせたものです。展開して書いてみることで、Σの意味を直感的に理解できます。
  • ** Σk, Σk^2, Σk^3, Σc, 等比数列の和**といった基本公式は、Σ計算の柱となります。これらは確実に覚えて、いつでも使えるようにしておく必要があります。
  • Σの線形性(定数倍、和・差の性質)は、複雑な一般項を持つΣを、計算可能な基本公式の形に分解するための強力な道具です。これらの性質を使いこなすことが、Σ計算を得意にする鍵です。
  • 開始の添え字が1以外の場合の範囲変更や、部分分数分解などを利用した打ち消し合い(望遠鏡級数)といった応用テクニックも、特定の形のΣ計算で非常に有効です。
  • Σ計算は、多くの問題を解いて練習することで必ず上達します。計算ミスを恐れず、間違いから学ぶ姿勢が大切です。
  • Σは、将来の数学や他の学問分野でも必ず登場する、非常に重要な記号です。今ここでしっかりマスターしておくことが、今後の学習の大きな財産となります。

Σは、決してあなたを困らせるためにある記号ではありません。むしろ、数学の世界をよりエレガントに、より効率的に表現するための、あなたの強力な「味方」になり得る記号です。

この記事で学んだことを活かして、ぜひ多くのΣ計算問題に挑戦してみてください。練習すればするほど、Σ記号を見たときの「うっ…」という感覚は薄れ、代わりに「よし、解いてやるぞ!」という自信が湧いてくるはずです。

Σを味方につけて、数列やその先の数学を楽しく学んでいきましょう! 応援しています!

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