英語「not at all」はどう使う?返事、意味、ニュアンスを徹底解説
英語のフレーズ「not at all」は、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われる非常に便利な表現です。しかし、その使い方は一つではありません。返事として使われることもあれば、強い否定を表すこともあります。それぞれの状況でどのような意味やニュアンスを持つのかを理解することは、英語を自然に使いこなす上で非常に重要です。
この記事では、「not at all」の多様な使い方、それぞれの場面での正確な意味、そして込められたニュアンスについて、約5000語をかけて詳細に解説します。この解説を通じて、「not at all」を自信を持って使いこなせるようになることを目指します。
1. 「not at all」の基本的な意味と構成要素
まず、「not at all」というフレーズを構成する要素から見ていきましょう。
「not」は否定を表します。「at all」は「全く」「少しも」「完全に」といった意味で、否定や疑問文、条件文などで「強調」の役割を果たします。
この二つが組み合わさることで、「not at all」は文字通り「全く~ない」「少しも~ない」という強い否定の意味を持ちます。しかし、これがそのまま特定の返事の形として使われるときに、元の意味から派生した、より丁寧なニュアンスを持つようになるのが興味深い点です。
「at all」は、否定文では「少しも」「全く」、疑問文では「一体全体」、条件文では「もし少しでも」といった意味で使われ、文全体に強調を加えます。例えば、
* I don’t like it at all. (私はそれを全く好きではありません。)
* Did you see anyone at all? (一体全体誰か見ましたか?)
* If you have any questions at all, please ask. (少しでも質問があれば、尋ねてください。)
このように、「at all」自体が持つ「全体性」や「強調」のニュアンスが、「not」と結びつくことで「完全に~ない」「微塵も~ない」という強い否定を生み出すのです。
2. 「not at all」の主要な使い方:3つの柱
「not at all」の使い方は大きく分けて以下の3つの柱があります。
- 感謝に対する丁寧な返事:「どういたしまして」
- 強い否定:「全く~ない」「少しも~ない」
- 謝罪や懸念に対する返事:「気にしないで」「全く大丈夫です」
これらの使い方は、文脈によって明確に区別されます。それぞれの使い方について、詳しく見ていきましょう。
3. 使い方①:感謝に対する丁寧な返事「どういたしまして」
これが「not at all」の最も一般的で、特に英語学習者が最初に学ぶ使い方かもしれません。誰かに感謝されたとき、「どういたしまして」という意味で「Not at all.」と返します。
意味: 「それは全く手間ではありませんでした」「気にされることではありません」「お礼なんてとんでもない」
ニュアンス: 非常に丁寧で控えめな響きがあります。相手がしてくれたことに対して、「大したことではない」「当然のことだ」「むしろ自分が喜んでやったことだ」という気持ちを伝える際に適しています。相手への配慮や謙虚さを示す表現です。特に、相手が「手間をかけてしまったのではないか」「申し訳ない」と感じているかもしれない状況で使うと、その気持ちを和らげる効果があります。
よくあるシチュエーション:
* 小さな親切や手助けをした後
* 質問に丁寧に答えた後
* 頼まれごとを快く引き受けた後
例文と解説:
-
A: Thank you for your help! (手伝ってくれてありがとう!)
B: Not at all. (どういたしまして。)- 最も典型的なやり取りです。「手伝ったことは全く大変ではなかったですよ」という気持ちが込められています。
-
A: Thanks so much for taking the time to explain this to me. (時間を割いて説明してくれて本当にありがとう。)
B: Not at all, I was happy to help. (どういたしまして、喜んでお手伝いしましたから。)- 「Not at all」に続けて、なぜそれが手間ではなかったのか、あるいはむしろ嬉しかったのかを付け加えることで、より丁寧さが増します。
-
A: I really appreciate you picking me up at the station. (駅まで迎えに来てくれて本当に感謝しています。)
B: Oh, not at all. It was on my way. (ああ、どういたしまして。途中でしたから。)- 「Not at all」に続けて、相手の感謝の気持ちを軽く受け流し、「特別なことではないですよ」と伝えるための理由を添えています。
-
A: Thank you for the wonderful gift! (素敵なプレゼントをありがとう!)
B: Not at all. I’m glad you like it. (どういたしまして。気に入ってくれたなら嬉しいです。)- プレゼントへのお礼に対する返事としても使えます。贈った側が「喜んでもらえて当然だ」という控えめな姿勢を示します。
類義表現との比較:
* You’re welcome: 最も標準的な「どういたしまして」です。「Not at all」よりも一般的で、どのような状況でも使えます。丁寧さの度合いは「Not at all」と同等か、少しカジュアルに聞こえる場合もあります。
* No problem: ややカジュアルな「どういたしまして」です。「問題ないよ」「全然平気」というニュアンスが強く、「Not at all」よりはインフォーマルな場面でよく使われます。友達や同僚間など、親しい関係での使用が多いです。
* It’s okay / That’s okay: これらの表現も「問題ない」という意味で使われますが、「Not at all」や「No problem」ほど直接的な「どういたしまして」としては使われません。むしろ、相手が何か失敗したり心配したりしていることに対する「大丈夫だよ」という意味合いが強いです。
* My pleasure: 「どういたしまして」の非常に丁寧な表現です。「私の喜びです」という意味で、相手のために何かをすることが自分にとって喜びであった、という気持ちを強く伝えます。「Not at all」と同様に丁寧ですが、「My pleasure」の方が相手への奉仕の精神をより強調する響きがあります。
「Not at all」を選ぶ理由:
* 相手に謙虚な印象を与えたいとき。
* 自分がしたことが本当に手間のかからない、あるいは当然のことだと感じているとき。
* 相手が過剰に感謝していると感じたとき、その感謝を和らげたいとき。
* 「You’re welcome」よりも少し丁寧さや控えめさを加えたいとき。
ビジネスシーンでも問題なく使えますが、非常にフォーマルな場面では「My pleasure」などがより適している場合もあります。しかし、一般的なビジネスメールや会話であれば「Not at all」で失礼になることはまずありません。
補足:文脈による解釈
この「どういたしまして」としての使い方は、相手からの感謝の言葉(Thank you, Thanks, I appreciate it など)に対する返事として、単独で「Not at all.」と言う場合がほとんどです。もし文脈に感謝の言葉がない場合、「Not at all」とだけ言っても「どういたしまして」という意味にはなりません。例えば、何か意見を求められた際に「Not at all.」と言うと、「全くそうは思いません」という強い否定の意味になります(後述)。文脈が非常に重要です。
4. 使い方②:強い否定「全く~ない」「少しも~ない」
これは「not at all」の文字通りの意味に最も近い使い方です。動詞や形容詞、副詞などを修飾し、その否定を強調します。
意味: 「全く~ない」「少しも~ない」「微塵も~ない」「全然~ない」
ニュアンス: 非常に強い否定です。通常の否定(notを使った否定)よりも、否定の度合いが完全にゼロであることを強調します。「少しでも」「ある程度は」といった可能性を完全に排除するニュアンスがあります。
よくあるシチュエーション:
* 何かについて全く経験がない、知識がないことを強調するとき
* ある感情や状態が微塵もないことを強調するとき
* 特定の出来事が全く起こらなかったことを強調するとき
* ある主張や意見に全く同意できないことを強調するとき
文の構造:
主に、否定形(notを含む文)の文末または否定される語句の直後に置かれます。
[主語] + [否定形動詞] + […] + at all.
[主語] + [be動詞の否定形] + [形容詞/副詞] + at all.
[Not] + [否定される語句] + at all. (これは単独の応答として使われる場合など)
例文と解説:
-
I don’t understand it at all. (私はそれを全く理解していません。)
- 単に “I don’t understand it.” よりも、「少しも、微塵も理解できていない」という強い無理解を強調しています。
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She is not interested in politics at all. (彼女は政治に全く興味がありません。)
- “She is not interested in politics.” よりも、「全く、少しも興味がない」ことを強調します。
-
It didn’t rain at all yesterday. (昨日は全く雨が降りませんでした。)
- 「少しも降らなかった」「終日晴れていた」という事実を強調します。
-
He speaks English, but not very well at all. (彼は英語を話しますが、全く上手ではありません。)
- 副詞 (very well) を否定し、その度合いがゼロに近いことを強調しています。
-
A: Are you tired? (疲れていますか?)
B: No, not tired at all. (いいえ、全く疲れていません。)- 質問に対する返事として、特定の状態(tired)が微塵もないことを強調します。「Not at all.」と単独で答えることもできますが、このように続けると何についての否定かが明確になります。
-
A: Did you find the test difficult? (テストは難しいと感じましたか?)
B: Not at all. It was quite easy. (全く。かなり簡単でした。)- これは単独での応答ですが、文脈から「Test was not difficult at all.」という意味だとわかります。「全く難しくなかった」という強い否定です。
-
A: Do you mind if I open the window? (窓を開けても構いませんか?)
B: Not at all. Please do. (全く構いませんよ。どうぞ。)- この場合の「Not at all」は「I don’t mind at all.」の省略形と解釈できます。「全く気にしません」という強い肯定(許可)のニュアンスになります。これは後述の「謝罪や懸念に対する返事」とも関連が深いです。
注意点:
* 「at all」は基本的に否定文、疑問文、条件文で強調として使われます。肯定文では通常使いません。(例外的に強調として使う場合もありますが、一般的ではありませんし、「not at all」というフレーズとしては使いません。)
* 強い否定であるため、使いすぎると不自然に聞こえることがあります。本当に「全く~ない」と強調したい場合に効果的です。
5. 使い方③:謝罪や懸念に対する返事「気にしないで」「全く大丈夫です」
誰かが謝罪したり、心配や懸念を表明したりしたことに対して、「全く問題ありません」「気にしないでください」と伝える際に使われます。これは、使い方①の「どういたしまして」の意味合いとも近い、丁寧な返事の形です。
意味: 「気にしないでください」「全く大丈夫です」「問題ありません」
ニュアンス: 相手の謝罪や懸念を受け流し、自分がそれによって不快な思いをしたり、迷惑を被ったりしていないことを丁寧に伝えます。相手に安心感を与える、非常に友好的で丁寧な表現です。
よくあるシチュエーション:
* 相手が遅れて謝罪したとき
* 相手が小さなミスをして謝罪したとき
* 相手が何かを尋ねることに遠慮しているとき
* 相手が自分に手間をかけさせてしまったと心配しているとき
例文と解説:
-
A: I’m so sorry I’m late. (遅れてしまって本当にごめんなさい。)
B: Not at all. Don’t worry about it. (全く大丈夫ですよ。気にしないでください。)- 相手の謝罪に対して、「遅れたことは全く問題ではない」と伝えています。これは「It is not a problem at all.」や「I am not bothered by your lateness at all.」のような意味合いを持ちます。
-
A: Sorry for bothering you. (お邪魔してすみません。)
B: Oh, not at all. Come in. (ああ、全然大丈夫ですよ。入ってください。)- 相手が自分に負担をかけているかもしれない、という懸念に対する返事。「全く邪魔ではありませんよ」という気持ちを伝えます。
-
A: I hope I haven’t caused you any trouble. (何かご迷惑をおかけしていなければいいのですが。)
B: Not at all. Everything is fine. (全く大丈夫ですよ。何も問題ありません。)- 相手の心配に対して、「全く迷惑はかかっていない」と安心させています。
-
A: Excuse me, would you mind repeating that? (すみません、もう一度繰り返していただけますか?)
B: Not at all. I’ll say it again. (全く構いませんよ。もう一度言います。)- これは使い方②の例でも出ましたが、「I don’t mind at all」の省略形であり、相手のリクエストに対して「全く気にしない=快く応じる」という意思表示です。相手が「尋ねて迷惑ではないか」と遠慮しているかもしれない状況で、安心感を与えます。
類義表現との比較:
* No problem: これも謝罪や懸念に対する返事としてよく使われます。「Not at all」と同様に「問題ない」という意味ですが、繰り返しになりますが「No problem」の方がややカジュアルです。
* It’s okay / That’s okay: これらも「大丈夫」という意味で使えます。謝罪に対して使うと「気にしなくていいよ」という意味になります。フォーマルさの度合いは「No problem」と同等か、状況によってはもう少し柔らかい響きを持つこともあります。
* Don’t worry about it: 「そのことについて心配しないで」という意味で、非常に直接的に相手の懸念を和らげる表現です。
* It’s fine: 「大丈夫です」という一般的な返事です。
「Not at all」を選ぶ理由:
* 相手に非常に丁寧で、かつ相手の気持ち(謝罪や懸念)をきちんと受け止めていることを伝えたいとき。
* 「No problem」よりも少し改まった、あるいは控えめな印象を与えたいとき。
* 相手に「あなたは全く私に迷惑をかけていない」ということを強調したいとき。
謝罪や懸念に対する返事としての「Not at all」は、単に「いいよ」と許すだけでなく、相手が感じているであろう申し訳なさや遠慮といった感情に対して、「それは全く必要ないんですよ」と優しく伝えるニュアンスが強いと言えます。
6. 「not at all」のニュアンスの深掘り:丁寧さ、強調、そして温度感
ここまで3つの主要な使い方を見てきましたが、「not at all」が持つ共通の、あるいは使い分けによって生まれるニュアンスについてさらに掘り下げてみましょう。
丁寧さ:
「Not at all」は、特に感謝や謝罪に対する返事として使う場合、非常に丁寧な表現です。これは、単に否定するだけでなく、「あなたがお礼を言う必要は全くないほど、大したことではないのです」「あなたが謝る必要は全くないほど、私は何も気にしていません」という、相手への気遣いや配慮が根底にあるからです。
「You’re welcome」や「No problem」と比較すると、「Not at all」は特に感謝への返事として、より控えめで、自分がした行為を過小評価する(=相手を立てる)ニュアンスが強いと言えます。
強調:
「at all」が持つ本来の機能は「強調」です。この機能は、強い否定として使う場合に最も顕著に表れます。「I don’t like it at all」は、「好きではない」という事実を「少しも、全く、微塵も」という言葉で徹底的に強調します。この強調によって、単なる否定以上の強い感情や断固たる姿勢を示すことができます。
また、謝罪や懸念への返事としても、「It is not a problem at all」のように、問題が「全く、少しも」ないことを強調することで、相手の心配を完全に払拭する効果があります。
温度感:
「not at all」は、文脈によって様々な「温度感」を持ちます。
* 感謝への返事としては、温かく、謙虚で、相手への配慮に満ちたポジティブな温度感。
* 強い否定としては、冷たい、断固とした、あるいは強い感情(不満、無関心など)を示すネガティブな温度感。
* 謝罪や懸念への返事としては、安心させる、受け入れる、友好的なポジティブな温度感。
同じフレーズでも、置かれる文脈、話す人の声のトーンや表情によって、全く異なる感情や意図を伝えることができるのです。
7. 「not at all」を含むその他の表現・応用例
「not at all」は、否定的な意味を持つ様々な表現と共に使われることで、その否定の意味を強調します。
例:
* not… at all: 上記の強い否定の形で最も一般的です。
* He didn’t say anything at all. (彼は全く何も言いませんでした。)
* There was no food left at all. (全く食べ物は残っていませんでした。) – “no… at all” の形。
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none at all: 何も全くない、という意味。
- A: How much money do you have left? (いくらお金が残っていますか?)
B: None at all. I spent it all. (全くありません。全部使ってしまいました。)
- A: How much money do you have left? (いくらお金が残っていますか?)
-
nothing at all: 何も全くない、という意味。「none at all」と似ていますが、対象がモノやコトの場合に使われます。
- There’s nothing at all we can do now. (今私たちにできることは全く何もありません。)
-
nobody at all / no one at all: 誰も全くいない、という意味。
- There was nobody at all in the room. (部屋には全く誰もいませんでした。)
-
nowhere at all: 全くどこにも~ない、という意味。
- We could find the keys nowhere at all. (私たちは鍵を全くどこにも見つけられませんでした。)
これらの表現は、「at all」が否定の意味を持つ語句(none, nothing, nobody, nowhereなど)を強調している例です。文全体として「全く~ない」という強い否定を表します。
8. よくある間違いと注意点
「not at all」を使う際に注意すべき点や、英語学習者が間違いやすいポイントを確認しましょう。
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肯定的な意味で「全く」を使いたい場合: 日本語の「全く」は肯定的な文脈でも使われることがありますが(例:「全くその通りです」「彼は全く素晴らしい」)、英語の「at all」は基本的に否定文、疑問文、条件文で強調として使われます。「not at all」というフレーズ自体が強い否定なので、肯定文の強調には使えません。肯定的な「全く」「本当に」を強調したい場合は、”absolutely,” “completely,” “really,” “very” などの副詞を使います。
- 例:日本語「彼の意見は全くその通りだ。」
→ 英語: “His opinion is absolutely right.” (“His opinion is right at all.” とは言いません。)
- 例:日本語「彼の意見は全くその通りだ。」
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部分的な否定に使う: 「not at all」は完全な否定(ゼロ)を表します。「少しは~だが、全部ではない」といった部分的な否定には使えません。部分否定には “not always,” “not entirely,” “not really,” “not completely” などの表現を使います。
- 例:A: Do you like classical music? (クラシック音楽は好きですか?)
B: Not really. (あまり好きではありません。) – 部分的な否定。
B: Not at all. (全く好きではありません。) – 完全な否定。
- 例:A: Do you like classical music? (クラシック音楽は好きですか?)
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文脈を無視した単独使用: 「Not at all.」と単独で使う場合は、それがどの使い方の「Not at all」なのか、必ず直前の文脈で決まります。
- 相手が “Thank you.” と言ったら、「どういたしまして」です。
- 相手が “I’m sorry.” と言ったら、「気にしないで」です。
- 相手が “Is it difficult?” のように度合いを尋ねる質問をしたら、「全く~ない」という意味になります。
文脈がないのにいきなり「Not at all.」と言っても意味が通じません。
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過剰な使用: どの表現にも言えることですが、「not at all」も使いすぎると不自然に聞こえます。特に感謝への返事としては、「You’re welcome」「No problem」「My pleasure」など、状況や相手との関係性に応じて使い分ける方が、より自然で豊かな表現になります。強い否定として使う際も、本当に強調したい場面を選んで使うことが重要です。
9. 「not at all」を使った対話例
これまでの解説を踏まえ、様々なシチュエーションでの「not at all」の使い方を対話形式で見ていきましょう。
対話例 1:感謝への返事
Person A: Excuse me, could you tell me how to get to the library?
Person B: Sure. Go straight down this street, turn left at the second traffic light. It’s right there.
Person A: Oh, thank you so much! That was very helpful.
Person B: Not at all. Glad I could help.
(解説:Aさんは道を聞き、Bさんが丁寧に教えました。Aさんが感謝したことに対し、Bさんは「全く大変なことではなかったですよ」という意味で「Not at all」と返しています。)
対話例 2:強い否定
Person A: I heard you didn’t like the movie last night. Was it really that bad?
Person B: Bad? It was terrible! I didn’t enjoy it at all. The plot made no sense.
Person A: Oh, wow. That bad, huh?
Person B: Yeah, I wouldn’t recommend it at all.
(解説:Aさんが映画の感想を尋ねています。Bさんはその映画が「全く楽しめなかった」と強く否定しています。「didn’t enjoy it at all」「wouldn’t recommend it at all」のように、否定の意味を強調する形で使われています。)
対話例 3:謝罪への返事
Person A: I’m really sorry, I accidentally spilled a little coffee on your report.
Person B: Oh, don’t worry. It’s just a little bit. Not at all. It didn’t smudge anything important.
Person A: Are you sure? I can try to clean it.
Person B: Seriously, it’s fine. Not a problem at all.
(解説:Aさんがコーヒーをこぼして謝罪しています。Bさんはそれに対して「全く問題ないですよ」「気にしないで」という意味で「Not at all」と返しています。この後には「Not a problem at all」と、より直接的に問題がないことを強調する表現も使われています。)
対話例 4:懸念への返事
Person A: I hope I’m not asking too many questions. I feel like I’m taking up too much of your time.
Person B: Oh, not at all! Please, ask anything you need to know. That’s what I’m here for.
Person A: Thank you, I appreciate that.
(解説:Aさんが質問攻めにして迷惑をかけているのではないか、と心配しています。Bさんはその懸念に対し、「全く迷惑ではないですよ」「気にしないで」という意味で「Not at all」と返しています。「I’m not bothered at all」や「It’s not a problem at all」のような気持ちを表しています。)
対話例 5:度合いの否定
Person A: Did you find the new software difficult to learn?
Person B: Not at all. It was quite intuitive, actually. I picked it up really quickly.
Person A: Oh, that’s good to hear.
(解説:Aさんが新しいソフトウェアの習得が難しかったかどうか、度合いを尋ねています。Bさんはそれに対し、「全く難しくなかった=簡単だった」と、難しさの度合いがゼロであることを示唆する「Not at all」で答えています。これは「It was not difficult at all」の省略形と解釈できます。)
これらの対話例から、「not at all」が文脈によっていかに多様な役割を果たしているかがわかるでしょう。重要なのは、直前の相手の言葉や状況を正確に把握し、どの意味で「not at all」を使うのが適切かを判断することです。
10. 「not at all」の発音とイントネーション
テキストだけでは伝えにくい部分ですが、「not at all」の発音とイントネーションも、そのニュアンスを伝える上で重要です。
発音:
「Not at all」は、通常「ノット・アット・オール」のように発音されますが、ネイティブの会話では「t」の音が連結したり(リエゾン)、弱くなったりすることがよくあります。「ノラロー」や「ノットゥロール」のように聞こえることがあります。特に会話速度が速い場合、最後の「all」にアクセントが置かれることが多いです。
イントネーション:
* 感謝への返事(どういたしまして): 比較的フラットなイントネーションか、語尾が少し上がるような、柔らかい、友好的なトーンで発音されることが多いです。相手の感謝を受け止めている、優しい響きになります。
例:「Not at all?」(語尾上げ)← 質問ではなく、相手への配慮を示すトーン。
-
強い否定(全く~ない): 否定したい単語や「at all」自体に強いアクセントが置かれ、語尾が下がる、断定的なトーンになることが多いです。強い意志や感情が込められます。
例:「I don’t like it at ALL.」(「ALL」を強く、語尾下げ)
例:「NOT at all!」(「NOT」や「at all」を強く、語尾下げ) -
謝罪や懸念への返事(気にしないで): 感謝への返事と同様に、柔らかく、安心させるような、語尾が少し上がるようなトーンになることが多いです。相手の気持ちを解きほぐす響きになります。
例:「Not at all?」(語尾上げ)← 心配しないで、大丈夫だよ、という優しいトーン。
イントネーションは、単語の意味だけでなく、話し手の感情や意図を伝える非常に重要な要素です。「Not at all」を声に出して練習する際は、これらのイントネーションの違いも意識してみると良いでしょう。
11. まとめ:自信を持って「not at all」を使いこなすために
「not at all」は、一見シンプルなフレーズですが、文脈によって「どういたしまして」「全く~ない」「気にしないで」という全く異なる意味を持ち、それぞれが特定のニュアンス(丁寧さ、強調、配慮)を含んでいます。
この記事で解説した3つの主要な使い方を再度確認しましょう。
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感謝への返事:「どういたしまして」
- 例文:Thank you for your help. → Not at all.
- 意味:手伝うのは全く手間ではなかった。
- ニュアンス:丁寧、謙虚、相手への配慮。
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強い否定:「全く~ない」
- 例文:I don’t understand it at all.
- 意味:それを少しも理解していない。
- ニュアンス:完全な否定、強調、断固たる姿勢。
-
謝罪や懸念への返事:「気にしないで」「全く大丈夫」
- 例文:Sorry for being late. → Not at all.
- 意味:遅れたことは全く問題ではない。
- ニュアンス:丁寧、安心させる、相手の気持ちを受け流す配慮。
これらの使い方をマスターするためには、以下の点が重要です。
- 文脈の理解: 相手の言葉や状況を注意深く聞き取り、どの意味での「not at all」が適切かを判断する。特に、単独で「Not at all.」と返事する場合は、直前の文脈が全てを決定します。
- 類義表現との比較: 「You’re welcome」「No problem」「Not really」など、似た状況で使える他の表現と比較し、それぞれのニュアンスの違いを理解することで、「not at all」を使うべき状況がより明確になります。
- 実践練習: 実際にこれらのフレーズを使ってみる、あるいは英語の映画やドラマ、会話の中でどのように使われているかを観察する。様々なシチュエーションでの使用例に触れることで、自然な使い方が身についていきます。
- イントネーションの意識: 感謝や謝罪への返事では柔らかく、強い否定では断定的に、といったイントネーションの違いを意識することで、より正確に意図を伝えることができます。
「not at all」は、英語でのコミュニケーションをより豊かに、そしてスムーズにするための強力なツールです。最初は使い分けに迷うこともあるかもしれませんが、それぞれの意味とニュアンスを意識しながら積極的に使ってみてください。練習を重ねるうちに、これらの使い方が自然と身につき、自信を持って「not at all」を使いこなせるようになるでしょう。
この記事が、「not at all」の理解を深め、皆さんの英語学習の一助となれば幸いです。