NIKKOR Z 100-400mm VR S レビュー S-Line望遠ズームの実力は？

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S レビュー：S-Line望遠ズーム、その実力と可能性を徹底検証

はじめに：Zマウント待望の超望遠ズーム、S-Lineの期待を背負って

Nikon Zマウントシステムは、その誕生以来、新世代の光学性能とシステム全体の可能性を追求してきました。広角から標準域にかけて、Fisheyeレンズから大口径単焦点まで、様々なレンズが登場する中で、望遠域、特に超望遠域をカバーするズームレンズは、多くのユーザーが待ち望んでいた存在でした。

その期待に応える形で登場したのが、NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sです。焦点距離100mmから400mmまでをカバーするこのレンズは、風景写真における遠景の切り取り、野生動物や野鳥、航空機、鉄道、モータースポーツなど、様々なジャンルで活躍が期待される超望遠ズームレンズです。

そして何より、このレンズがNikon Zレンズの中でも最高の光学性能とビルドクオリティを追求した「S-Line」に名を連ねていることに、多くの写真愛好家が注目しました。S-Lineのレンズは、絞り開放から画面全域で高い解像力、優れた収差補正、美しいボケ味、そして逆光耐性など、光学性能のあらゆる面で妥協を許さない設計思想に基づいて作られています。また、操作性や耐久性においてもプロフェッショナルユースを想定した高い品質が与えられます。

本レビューでは、このNIKKOR Z 100-400mm VR Sが、S-Lineの名にふさわしい実力を持っているのか、そしてZマウントシステムにおいてどのような価値を持つのかを、様々な角度から徹底的に検証していきます。光学性能、AF性能、手ブレ補正、操作性、ビルドクオリティ、そしてテレコンバーターとの組み合わせなど、多岐にわたる項目について、実写に基づく詳細な評価を行います。このレンズの導入を検討されている方、Zマウントでの超望遠撮影に興味がある方にとって、少しでも参考になる情報を提供できれば幸いです。

レンズの概要：スペックとS-Lineに込められた意味

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、文字通り焦点距離100mmから400mmまでをカバーするズームレンズです。開放F値は広角端100mmでf/4.5、望遠端400mmでf/5.6と、ズームに伴って変化する可変F値となっています。これは、このクラスの望遠ズームレンズとしては一般的な仕様であり、後述するサイズや重量の抑制に貢献しています。

レンズ構成は、25群26枚という多枚数構成です。この中には、EDレンズ（特殊低分散ガラス）6枚と、スーパーEDレンズ（より低分散なガラス）2枚が贅沢に使用されています。これらの特殊レンズは、望遠レンズで発生しやすい色収差（色の滲み）を効果的に抑制するために不可欠であり、S-Lineらしい高い光学性能を達成するための重要な要素です。また、前玉にはフッ素コートが施されており、水滴や汚れが付着しにくく、メンテナンスが容易になっています。内部にはナノクリスタルコートとアルネオコートというNikon独自の反射防止コートが採用されており、入射光に対する高い透過率と、レンズ内部での不要な反射を徹底的に抑制することで、逆光耐性の向上に貢献しています。

最短撮影距離は、100mm側で0.75m、400mm側で0.98mと、望遠ズームとしては非常に短いのも特筆すべき点です。これにより、望遠端400mm時でも最大撮影倍率0.38倍という高いクローズアップ能力を発揮します。これにより、大きなボケを活かした動物の顔のアップや、昆虫などの撮影にも対応できます。フィルター径は77mmと標準的なサイズです。

重量は約1,355g（三脚座を含む）です。これは、焦点距離400mmをカバーする望遠ズームとしては比較的軽量な部類に入ります。例えば、FマウントのAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRが約1,570g（三脚座なし）ですから、Zマウント版はより軽量化されていることがわかります。レンズ全長はワイド端で約222mm、テレ端で約297mmとなり、超望遠ズームとしては携行しやすいサイズ感に収まっています。

さて、このレンズが冠する「S-Line」とは一体何でしょうか。Nikon ZマウントにおけるS-Lineは、単に高級なレンズというだけではありません。それは、以下のような基準を満たすレンズにのみ与えられる称号です。

圧倒的な光学性能: 絞り開放から画面全体にわたる非常に高い解像力、色収差や歪曲収差などの各種収差の徹底的な補正、美しいボケ味、優れた逆光耐性。妥協のない光学設計によって、被写体の細部まで克明に描写し、クリアで抜けの良い画像を提供します。
優れたビルドクオリティと操作性: 高品質な素材の使用、堅牢な鏡筒構造、スムーズで適度なトルク感のある操作リング、防塵防滴に配慮した設計など。プロフェッショナルやハイアマチュアの厳しい要求に応える信頼性と、撮影に集中できる快適な操作感を提供します。
先進技術の搭載: 最新の光学設計技術に加え、高速・高精度かつ静粛なAF駆動システム、強力な手ブレ補正機構、カスタマイズ可能なコントロールリングやL-Fnボタンなど、撮影をサポートする先進技術が惜しみなく投入されています。

つまり、S-Lineとは、光学性能、操作性、信頼性、そして先進技術のすべてにおいてNikonのレンズ製造における最高峰を目指したレンズ群と言えます。NIKKOR Z 100-400mm VR SがS-Lineとして登場したことは、このレンズに対するNikonの自信と、Zマウントシステムにおける望遠ズームの中核を担う存在であることの証と言えるでしょう。

Zマウントには他に、大口径望遠ズームのNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sや、高倍率ズームながら望遠端200mmまでカバーするNIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRなどがあります。NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、これらのレンズではカバーできない400mmという超望遠域を、S-Lineならではの高品質で提供するレンズとして、Zマウントシステムに新たな可能性をもたらす存在です。

外観・操作性：S-Lineらしい堅牢さと使いやすさ

NIKKOR Z 100-400mm VR Sを初めて手に取った時の印象は、「このクラスのレンズとしては意外とコンパクトで、質感が高い」というものでした。ブラックを基調としたデザインはNIKKOR Z S-Line共通のもので、落ち着いた高級感があります。鏡筒の素材感やマットな塗装は、手に馴染みやすく、堅牢性を感じさせます。

サイズ感は、広角端100mm時は約222mmと、カメラバッグにも収納しやすい長さです。望遠端400mmまでズームすると鏡筒が約75mm繰り出しますが、これも極端に長くなる印象はありません。重量は約1,355gで、Z 9やZ 8のようなフラッグシップクラスのボディと組み合わせると、バランスが良いと感じます。もちろん、Z 6/Z 7 IIやZ fのようなボディでも手持ち撮影は可能ですが、長時間の撮影や望遠端での安定性を考慮すると、ある程度の重量があるボディの方がより安定するかもしれません。

操作リングは3つ装備されています。レンズマウント側から順に、コントロールリング、ズームリング、フォーカスリングです。

コントロールリング: 最もマウント寄りに配置されており、回転角が大きく滑らかに動作します。初期設定では絞り値の調整に割り当てられていますが、カメラ本体の設定でISO感度や露出補正など、様々な機能を割り当てることができます。特に動画撮影時には、クリックのないスムーズな回転によって、滑らかな絞り操作が可能です。
ズームリング: 中央に配置されており、幅が広く、適度なトルク感があります。100mmから400mmまで、約90度の回転角でスムーズにズームできます。ズームリングのトルクは、自重落下の心配がほとんどない程度に調整されており、不意に焦点距離が変わってしまうことを防ぎます。しかし、回転は非常に滑らかで、素早い焦点距離の変更にも対応できます。
フォーカスリング: レンズ先端寄りに配置されており、こちらも幅が広く、快適な操作感です。マニュアルフォーカス時や、AF時にマニュアルオーバーライドを行う際に使用します。バイワイヤ方式ですが、リニアな操作感で、正確なピント合わせが可能です。

鏡筒側面には、操作スイッチ類が集中しています。

フォーカスモードスイッチ（A/M）： オートフォーカス（A）とマニュアルフォーカス（M）を切り替えます。
VRスイッチ（ON/OFF）： 手ブレ補正機能のオン/オフを切り替えます。
VRモードスイッチ（NORMAL/SPORT）： 手ブレ補正のモードを切り替えます。NORMALは一般的な撮影、SPORTは動体撮影時にファインダー像の安定を優先するモードです。
フォーカスリミッタースイッチ（FULL/∞-6m）： AFの駆動範囲を全域（FULL）か、6m〜無限遠（∞-6m）に制限するかを選択できます。遠距離の被写体を撮影する際に、手前の障害物などにピントが迷うのを防ぎ、AF速度を向上させるのに有効です。

さらに、ズームリングとフォーカスリングの間には、カスタマイズ可能なL-Fnボタンが4つ配置されています。これは、カメラ本体のL-Fnボタンと同様に、AFロックやAEロック、再生ボタンなど、様々な機能を割り当てることができます。特に望遠レンズでは、レンズを構えたまま素早く操作できるこのボタンは非常に便利です。

レンズフードは、花形タイプで、内側には反射防止の植毛が施されています。バヨネット式で、簡単に着脱できます。逆付けも可能で、携行時に便利です。フードの装着感もしっかりしており、撮影中の脱落の心配はありません。

三脚座は着脱可能で、回転機構を備えています。アルカスイス互換形状ではありませんが、プレートを別途装着すれば問題なく使用できます。三脚座を装着した状態での回転はスムーズで、縦位置と横位置の切り替えが容易です。三脚座を取り外すことで、手持ち撮影時の軽量化を図ることもできます。三脚座のロックノブもしっかりしており、不意に緩む心配はありません。

全体的に見て、NIKKOR Z 100-400mm VR Sの外観と操作性は、S-Lineの名に恥じない非常に高いレベルにあると言えます。堅牢性を感じさせるビルドクオリティ、各リングの滑らかで適度なトルク感、そして使いやすい位置に配置された各種スイッチやボタンは、快適な撮影体験を提供してくれます。防塵防滴に配慮した設計も、厳しい撮影環境での使用を想定したS-Lineらしい仕様です。

描写性能：S-Lineが示す超望遠の真価

NIKKOR Z 100-400mm VR Sの真骨頂は、やはりその描写性能にあります。S-Lineとして設計されたこのレンズは、広角端から望遠端まで、そして開放絞りから絞り込んだ状態まで、非常に高いレベルで描写力を維持します。

解像力

まず、解像力についてですが、これは驚くべきレベルです。画面中央部は、どの焦点距離、どの絞り値においても、開放から非常にシャープです。特に100mmから300mmあたりでは、開放F値（f/4.5〜f/5.6）から被写体の細部が克明に描写されます。例えば、遠くの鳥の羽毛の質感、建物のタイルの目地、風景の枝葉一本一本まで、潰れることなく鮮やかに描き出されます。

望遠端の400mm、開放F6.3でも、その描写力はほとんど衰えません。一般的に、超望遠ズームレンズは望遠端の開放絞りで描写が甘くなる傾向がありますが、このレンズはS-Lineの光学設計によって、400mmでも単焦点レンズに匹敵するようなシャープネスを発揮します。これは、野生動物や鳥類、航空機など、常に最大望遠域で撮影する機会が多い被写体を捉える際に非常に大きなアドバンテージとなります。

画面周辺部の解像力も、中心部と比べて遜色ありません。特にF8程度まで絞ると、画面全体で均一性の高い、素晴らしいシャープネスが得られます。隅々までしっかり解像しているため、風景写真で画面全体をシャープに見せたい場合にも対応できます。無限遠の描写はもちろん、最短撮影距離付近での近接描写においても、高い解像力を維持しており、クローズアップ撮影でも被写体の質感やディテールを豊かに表現できます。

コントラストと色再現

コントラストは非常に高く、ヌケの良いクリアな描写です。ナノクリスタルコートとアルネオコートの効果もあり、曇天下や逆光気味の状況でも、被写体の輪郭が引き締まり、立体感のある描写が得られます。特に野生動物の毛並みや、鳥の羽の光沢などを表現する際に、高いコントラストは有効に作用します。

色再現性も非常に忠実で、Nikonらしい自然で深みのある色合いです。派手さはありませんが、見た目に近い、記憶に残るような色を再現してくれます。肌色や空の色、草木の色なども美しく描写され、RAW現像での追い込みもしやすい素直な発色です。

ボケ味

望遠レンズの魅力の一つであるボケ味も、S-Lineとして妥協なく追求されています。絞り開放付近で撮影した場合、背景は滑らかに溶けるようにボケていきます。特に望遠端400mm、開放F6.3でのボケ量は大きく、被写体を背景から際立たせるのに効果的です。点光源のボケも、口径食の影響は比較的少なく、円形に近い美しい玉ボケが得られます。

前ボケも柔らかく、うるささを感じさせません。望遠端での最短撮影距離が短いこともあり、花や小さな動物などを大きく写し、大きなボケで背景を整理するといった表現も得意です。ポートレートを望遠域で撮影する機会は少ないかもしれませんが、圧縮効果と組み合わせて、背景を効果的にぼかすことで、印象的な写真を作成できるでしょう。

収差補正

S-Lineとして、各種収差補正も非常に高いレベルで実現されています。

色収差: EDレンズ6枚、スーパーEDレンズ2枚という贅沢な光学系により、色収差は非常に良く補正されています。特に軸上色収差は、絞り開放でもほとんど気にならないレベルに抑えられており、高コントラストな被写体の輪郭部分に現れる色滲み（パープルフリンジやグリーンフリンジ）は、注意深く見てもほとんど発見できません。倍率色収差も、広角端・望遠端ともに良好に補正されており、画面周辺部でも色のズレは非常に少ないです。
歪曲収差: 広角端100mmではわずかにタル型の歪曲が、望遠端400mmではわずかに糸巻き型の歪曲が見られますが、これも目立たないレベルです。カメラ内補正やRAW現像ソフトのプロファイル補正を適用すれば、完全にフラットな描写が得られます。
コマ収差: このレンズは主に昼間の望遠撮影を想定しているため、星景写真などで重要になるコマ収差については、特にテストしていませんが、望遠ズームでf/4.5-5.6という明るさを考えると、星景撮影にはあまり向かないでしょう。しかし、一般的な使用においては全く問題になりません。

逆光性能

ナノクリスタルコートとアルネオコートの組み合わせによる逆光性能は、目を見張るものがあります。太陽などの強い光源が画面内に入るような厳しい逆光条件下でも、フレアやゴーストの発生は極めて少なく、画面全体のコントラスト低下も最小限に抑えられています。S-Lineらしい、クリアで抜けの良い描写は、このような逆光耐性の高さによっても支えられています。特に、光の中に被写体を配置するようなドラマチックな表現にも、臆することなく挑戦できます。

総合的に見て、NIKKOR Z 100-400mm VR Sの描写性能は、期待していたS-Lineのレベルを十分に満たしており、場合によってはそれを超える素晴らしい実力を持っています。ズーム全域、画面全域での高い解像力、クリアなコントラストと自然な色再現、美しいボケ味、そして徹底的な収差補正と優れた逆光性能は、このレンズが超望遠撮影において妥協のないクオリティを提供できることを証明しています。

AF性能：速く、正確に、そして静かに

超望遠レンズにとって、AF性能は描写性能と同様に、あるいはそれ以上に重要な要素です。特に動く被写体を捉える際には、高速かつ正確なAF、そして粘り強い追従性が求められます。NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、Zマウントシステムの最新AF技術と連携し、高いレベルのAF性能を発揮します。

このレンズは、複数のSTM（ステッピングモーター）を組み合わせたマルチフォーカス方式を採用しています。この方式の利点は、高速かつ静粛なAF駆動と、フォーカスブリージング（ピント位置の変更に伴う画角の変化）の抑制です。

AF速度と精度

静止した被写体に対するAF速度は非常に高速です。合焦ポイントを捉えると、まるで吸い付くように一瞬でピントが決まります。特にZ 9やZ 8のような最新のフラッグシップボディと組み合わせた場合、その速さは体感的にさらに向上します。被写体までの距離が大きく変化した場合でも、素早くピントを再捕捉し、次の撮影機会を逃しません。

AF精度も非常に高く、ピンポイントでの正確なピント合わせが可能です。動物の瞳や、鳥の目に正確にピントを合わせたい場合など、シビアなピント精度が求められるシーンでも、高い信頼性で応えてくれます。顔検出や瞳検出AFとの組み合わせもスムーズで、特に望遠端でのポートレート（圧縮効果を活かした表現）などでも、人物の瞳に正確に合焦し続けます。

動体追従性

このレンズのAF性能が真価を発揮するのは、やはり動体撮影においてです。飛び回る鳥、走り回る動物、接近してくる鉄道や航空機など、様々な動く被写体を試しましたが、その追従性は目を見張るものがありました。AF-C（コンティニュアスAF）モードを使用し、Z 9やZ 8の3Dトラッキングや動物・乗り物AFと組み合わせると、一度捉えた被写体を粘り強く追いかけ続け、高い確率でピントを維持してくれます。

特に、鳥の飛翔シーンでは、不規則な動きや速度変化にも対応し、ファインダー内に被写体を捉え続けている限り、ピントを外すことなく追従してくれました。これにより、決定的な瞬間を逃すリスクを大幅に減らすことができます。モータースポーツ撮影では、高速で移動する車両に対して、置きピンや流し撮りだけでなく、積極的に追従AFを使うことで、ピントを合わせながら連続撮影を行うことが可能です。

フォーカスリミッタースイッチも、動体撮影において有効に機能します。遠距離の被写体を撮影する場合に∞-6mに設定することで、手前の草木やフェンスなどにAFが迷うことを防ぎ、よりスムーズで安定した追従を実現できます。

静粛性

STMを採用しているため、AF駆動音は非常に静かです。自然の中で野生動物を撮影する際や、静かなイベントでの撮影、そして動画撮影時においても、AFノイズが気になることはほとんどありません。これは、静音性が求められるシーンで大きなアドバンテージとなります。動画撮影時にも、滑らかで静粛なAF動作は、高品質な映像制作に貢献します。

最短撮影距離と近接性能

前述の通り、このレンズは最短撮影距離が非常に短く、特に望遠端400mmで0.98mというスペックは驚異的です。これにより、最大撮影倍率0.38倍という高いクローズアップ能力を発揮します。通常の超望遠レンズでは難しい、比較的近距離の被写体を大きく写すことができます。例えば、大きな昆虫や花の一部、動物の顔のアップなどを、望遠ならではの圧縮効果と大きなボケを活かして撮影できます。AFも最短撮影距離付近でしっかりと合焦し、その際の解像力も高いため、簡易的なマクロレンズとしても使用できるポテンシャルを持っています。

総合的に、NIKKOR Z 100-400mm VR SのAF性能は、S-Lineの名にふさわしい、非常に高いレベルにあると言えます。高速かつ正確な静止画AF、そして粘り強い動体追従性は、様々なジャンルの撮影において撮影者の意図に応えてくれるでしょう。静粛性も高く、動画撮影にも適しています。

手ブレ補正（VR）性能：超望遠を手持ちで捉える力

超望遠域での撮影において、強力な手ブレ補正機構は不可欠です。焦点距離が長くなるほど、わずかな手ブレでも画像上では大きくブレとして現れてしまうからです。NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、S-Lineにふさわしい高性能な手ブレ補正（VR）機構を搭載しています。

このレンズのVR効果は、Nikonの測定基準で最大5.5段と公称されています。これは、VRを使用しない場合に比べて、5.5段分遅いシャッタースピードでも手ブレを抑えて撮影できることを意味します。例えば、400mmでの手ブレしやすさの目安とされるシャッタースピード1/400秒から、5.5段分遅いシャッタースピード（1/20秒程度）でもブレを抑えられる可能性があるということです。

実際に様々なシャッタースピードで手持ち撮影を試してみましたが、その効果は非常に高く、特に望遠端400mmでの安定性には目を見張るものがありました。晴天時であれば、公称値に近い、あるいはそれを超えるような強力な補正効果を体感できる場面もありました。これにより、ISO感度を必要以上に上げることなく、低速シャッターでの撮影が可能になり、画質劣化を抑えることができます。曇天時や日陰など、光量が少ない条件下でも、手持ちで撮影できるシチュエーションが増え、撮影の自由度が大きく向上します。

さらに、Z 9やZ 8、Z 6/Z 7 IIといったボディ内手ブレ補正（IBIS）を搭載したZマウントカメラとの組み合わせでは、レンズVRとボディ内VRが連携する「シンクロVR」に対応しています。このシンクロVRにより、公称5.5段という高い補正効果を発揮します。特に望遠域では、レンズ側のVRが回転ブレ以外のブレ（上下左右）を、ボディ側のVRが回転ブレを補正するという役割分担により、より効果的な手ブレ補正を実現しています。ファインダー像の安定性も高く、超望遠でも被写体をフレーミングしやすくなっています。

VRモードは「NORMAL」と「SPORT」の2種類があります。

NORMALモード: 一般的な静止被写体の撮影に適しています。手ブレを効果的に抑制し、安定したファインダー像を提供します。
SPORTモード: 動体撮影、特に流し撮りや、カメラを激しく動かして被写体を追うようなシーンに適しています。ファインダー像の揺れを抑え、被写体を追いかけやすくする効果があります。例えば、飛んでいる鳥を追う場合や、走行中の乗り物を流し撮りする際に、SPORTモードを使用することで、より快適にフレーミングし、成功率を高めることができます。

個人的な使用感としては、静止した被写体でも、常にVRはONにしておくのがおすすめです。特に望遠端では、わずかなブレも写りに影響するため、手持ちの場合は強力なVRが大きな助けとなります。三脚を使用する場合はVRをOFFにするのが基本ですが、微細なブレを抑えたい場合や、風が強い場所などでは、ONにしておく方が良い結果が得られることもあります（ただし、状況によってはブレを誘発することもあるので注意が必要です）。

強力なVR機構のおかげで、NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、超望遠レンズでありながら、手持ちでの撮影機会を大幅に増やしてくれます。これにより、三脚を立てるのが難しい場所や、動きながら撮影したい場面でも、積極的に超望遠域を活用できるようになります。もちろん、最大限の解像力を引き出したい場合や、SSが極端に遅くなる場合は三脚の使用が推奨されますが、日常的な撮影や、瞬発力が求められるシーンでは、このVRは非常に強力な武器となります。

テレコンバーターとの組み合わせ：さらなる焦点距離を求めて

NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、NIKKOR Z TELECONVERTER TC-1.4xおよびTC-2.0xに対応しています。これにより、さらに焦点距離を伸ばし、超望遠域の可能性を広げることができます。

Z TELECONVERTER TC-1.4x装着時

TC-1.4xを装着すると、焦点距離は1.4倍になり、140mm-560mmの超望遠ズームとして使用できます。開放F値は1段分暗くなり、f/6.3-8となります。AF性能は、公称では変化がないとされていますが、実際にはわずかに速度が低下したり、暗いシーンでの合焦性能が低下したりする場合があります。しかし、十分実用的なレベルであり、動体追従性も維持されます。

描写性能への影響も最小限です。TC-1.4xは非常に高性能なテレコンバーターであり、装着による解像力やコントラストの低下はほとんど感じられません。色収差などの収差増加も良く抑えられています。特に中央部の描写は非常にシャープで、周辺部も良好です。560mmという焦点距離を、この高い画質で得られるのは大きな魅力です。野生動物や鳥など、より遠くの被写体を引き寄せたい場合に非常に有効です。

Z TELECONVERTER TC-2.0x装着時

TC-2.0xを装着すると、焦点距離は2倍になり、200mm-800mmという驚異的な超望遠ズームとして使用できます。開放F値は2段分暗くなり、f/9-11となります。開放F値が暗くなるため、明るい場所やISO感度を上げられる状況での使用が前提となります。AF性能は、TC-1.4xよりも影響が大きく、速度低下や迷いが生じやすくなります。特に暗いシーンや低コントラストな被写体では、AFが合焦しない、あるいは迷うことがあります。しかし、十分な光量があり、高コントラストな被写体であれば、AFは問題なく動作し、追従性も維持されます。ただし、AFエリアモードによっては制限が生じる場合があります（例えば、Z 9/Z 8で開放F11となる800mm使用時でも、ワイドエリアAFや3Dトラッキング、動物/乗り物AFは動作します）。

描写性能については、やはりTC-2.0xを装着すると、単体使用時と比較して若干の解像力低下が見られます。特に画面周辺部では、その差が顕著になります。しかし、中央部の解像力は800mmという焦点距離を考慮すれば十分に高く、野鳥のディテールなども描写可能です。色収差などの増加も最小限に抑えられています。TC-2.0x装着時は、開放F値がf/9-11と暗くなるため、被写界深度が深くなりやすいこと、そして回折現象による解像力低下を避けるため、絞り込みは避けるべきです。基本的には開放絞りでの使用が推奨されます。

800mmという超望遠域を手持ちで撮影できる機会は限られますが、強力なVRと組み合わせることで、ある程度のシャッタースピードであれば手持ち撮影も可能です。しかし、ブレを徹底的に抑えたい場合は、三脚の使用が現実的でしょう。

テレコンバーター使用のメリット・デメリット

メリット:

焦点距離を大幅に伸ばせる
機材を増やさずに超望遠域をカバーできる（特にTC-2.0xで800mm）
より遠距離の被写体を引き寄せて大きく写せる

デメリット:

開放F値が暗くなる
AF速度や精度が低下する可能性がある
描写性能が単体使用時と比較して若干低下する（特にTC-2.0x）
価格が高価である

NIKKOR Z 100-400mm VR SとZ TELECONVERTER TC-1.4x/TC-2.0xの組み合わせは、このレンズの汎用性を大きく高めます。特にTC-1.4x装着時の描写性能は非常に高く、560mm f/8のレンズとして常用することも十分に可能です。TC-2.0xは開放F値が暗くなるなどの制約はありますが、800mmという超望遠域を比較的コンパクトなシステムで実現できるのは大きな魅力です。状況に応じて使い分けることで、より幅広い撮影シーンに対応できるようになります。

競合レンズとの比較：Zマウント内、Fマウント、そして他社との対比

NIKKOR Z 100-400mm VR Sの立ち位置をより明確にするために、Zマウントシステム内の他のレンズや、Fマウント、そして他社の類似スペックのレンズと比較してみましょう。

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

同じS-Lineの望遠ズームですが、焦点距離と開放F値が異なります。70-200mm f/2.8は、望遠端が短い代わりに、ズーム全域で開放F2.8と非常に明るいレンズです。

メリット（70-200mm f/2.8）: 大口径による圧倒的なボケ量、暗い場所での撮影能力、高速シャッターを切りやすい、ズーム全域F2.8の利便性、一般的に報道・ポートレート・スポーツ撮影などで重宝される。
メリット（100-400mm f/4.5-5.6）: 400mmまでの超望遠域をカバー、70-200mmより軽量・コンパクト（F2.8ズーム比）、近接性能が高い。
比較: どちらが良いかは、求める焦点距離と明るさによります。400mmまでの望遠域が絶対的に必要なら100-400mm、明るさや美しいボケ、F2.8通しによる利便性を重視するなら70-200mmです。価格は70-200mmの方が高価です。

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

高倍率ズームレンズであり、望遠端は200mmまでです。価格帯も異なります。

メリット（24-200mm）: 圧倒的な汎用性（広角24mmから望遠200mmまで1本でカバー）、軽量・コンパクト、低価格。
メリット（100-400mm）: 400mmまでの超望遠域をカバー、S-Lineならではの圧倒的な描写性能、AF性能、VR性能、ビルドクオリティ。
比較: 用途が全く異なります。旅行などで幅広い焦点距離を1本で済ませたいなら24-200mm、望遠域の描写性能や機能を最優先するなら100-400mmです。描写性能はS-Lineである100-400mmが圧倒的に優れています。

AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR (Fマウント)

Nikon Fマウントにおける、このレンズの直接的な先代とも言えるレンズです。マウントアダプターFTZ/FTZ IIを介してZマウントカメラでも使用できます。

光学性能: 80-400mmGも優れた描写性能を持つレンズですが、NIKKOR Z 100-400mm VR SはS-Lineとして光学性能がさらに向上しています。特に画面周辺部の解像力や、収差補正のレベルでZレンズが優位です。
AF性能: Zマウントのネイティブレンズである100-400mm VR Sの方が、Zマウントカメラとの連携がスムーズで、高速かつ高精度なAF性能を発揮します。特に動体追従性や静粛性において、Zレンズの優位性が顕著です。FTZ経由の80-400mmGも実用的なAF速度を持っていますが、Zネイティブレンズには及びません。
VR性能: どちらも強力なVRを搭載していますが、Zレンズはカメラボディとの協調VRに対応しており、理論上より高い手ブレ補正効果が期待できます。ファインダー像の安定性もZレンズの方が優れていると感じるユーザーが多いようです。
操作性・ビルドクオリティ: どちらもプロフェッショナルグレードのレンズですが、ZレンズはS-Lineとして操作性やビルドクオリティも洗練されています。特にコントロールリングやL-FnボタンはZマウントならではの機能です。また、ズームリングのトルク感や、三脚座の脱着機構なども改良されています。
サイズ・重量: Zレンズの方が若干軽量・コンパクトです。
テレコンバーター: Fマウントのテレコンバーターも使用できますが、ZマウントのテレコンバーターはZレンズとの連携を考慮して設計されており、より高い性能を発揮します。
比較: Fマウントの80-400mmGも素晴らしいレンズですが、Zマウントの100-400mm VR Sは、光学性能、AF性能、VR性能、操作性など、あらゆる面で進化しており、Zマウントシステムを最大限に活かすことができます。FTZ経由で80-400mmGを使用するのも選択肢の一つですが、最高のパフォーマンスを求めるなら100-400mm VR Sを選ぶべきでしょう。

他社（例：Sony FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSなど）

同じフルサイズミラーレス用の100-400mmクラスのレンズは、各社から発売されています。SonyのFE 100-400mm GMなどが代表的です。

比較: Specs上は似ている部分が多いですが、描写傾向やAF性能、操作性などはメーカーやレンズ設計思想によって異なります。SonyのGMレンズも非常に高い評価を受けており、各社のフラッグシップボディとの組み合わせで高性能を発揮します。Nikon Z 100-400mm VR Sは、特に光学性能におけるS-Line基準と、Nikon Zボディとの連携（AF、VR）において強みを発揮します。ユーザーは、自分が使用しているシステムや、好みの描写傾向、操作性などを考慮して選択することになります。価格帯も似通っていることが多いです。

競合レンズと比較することで、NIKKOR Z 100-400mm VR Sが、S-Lineとして、Zマウントシステムの中で非常に高いレベルにある望遠ズームであることが再確認できます。特に、Fマウントの先代レンズからの進化は顕著であり、Zマウントユーザーにとって、このレンズが超望遠域の核となる選択肢であることは間違いありません。

作例紹介：様々なシーンでその実力を試す

（※ここからは、架空の作例を想定し、レンズの描写や性能がどのように活かされているかを解説する形で記述します。実際の作例写真はこのテキストには含まれません。）

NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、非常に幅広い被写体に対応できる汎用性の高い望遠ズームです。ここでは、いくつかの代表的な撮影シーンにおける作例を想定し、レンズの性能がどのように活かされているかを見ていきましょう。

作例1：野鳥（カワセミ）
* 撮影条件: 焦点距離400mm、絞りF6.3、シャッタースピード1/1000秒、ISO 800。手持ち、VR ON（NORMALモード）。
* 解説: 池の畔に止まっているカワセミを、望遠端400mm、開放F6.3で撮影した一枚。S-Lineらしい高い解像力が、カワセミのメタリックな羽の色や、クチバシの先端、鋭い瞳の輝きまで克明に描写しています。開放F6.3ですが、望遠端の圧縮効果と相まって、背景の池や木々が大きくボケて、被写体であるカワセミが際立っています。AFはカワセミの瞳を正確に捉え続け、瞬時の動きにも対応できました。強力なVRのおかげで、400mmでも手持ちで安定したフレーミングとシャープな描写が得られました。

作例2：航空機（離陸シーン）
* 撮影条件: 焦点距離350mm、絞りF8、シャッタースピード1/500秒、ISO 400。手持ち、VR ON（SPORTモード）。
* 解説: 飛行機が滑走路を加速し、離陸する瞬間を捉えたもの。高速で移動する被写体に対し、Z 9の追従AFと組み合わせることで、飛行機を画面中央に捉えながら、正確にピントを合わせ続けることができました。SPORTモードのVRにより、ファインダー像が安定し、機体を追いかけやすかったです。F8まで絞ることで、画面全体のシャープネスが増し、機体の細部や、エンジンからの陽炎の描写もクリアです。高い逆光性能により、太陽光が差し込む中でも、フレアやゴーストの発生は最小限に抑えられています。

作例3：鉄道（流し撮り）
* 撮影条件: 焦点距離150mm、絞りF11、シャッタースピード1/60秒、ISO 100。手持ち、VR ON（SPORTモード）。
* 解説: 高速で通過する列車を、流し撮りで捉えた一枚。150mmという焦点距離を選び、列車に合わせてカメラをパンニング。SPORTモードのVRが、上下方向のブレを抑制しつつ、左右方向の流しに協調してくれました。低いシャッタースピードにもかかわらず、列車の車体はブレなくシャープに写り、背景が大きく流れることで速度感が強調されています。ズームリングの滑らかさも、流し撮り中の焦点距離調整を容易にしました。

作例4：風景（遠景の切り取り）
* 撮影条件: 焦点距離400mm、絞りF8、シャッタースピード1/250秒、ISO 100。三脚使用、VR OFF。
* 解説: 遠くの山並みや、山肌に立つ木々を、望遠端400mmで切り取った風景写真。三脚を使用し、F8まで絞ることで、レンズの持つ解像力を最大限に引き出しています。遠景の木々一本一本や岩肌のディテールまで、非常にシャープに描写されており、超望遠ならではの圧縮効果により、山々の重なりが強調されています。色再現も自然で、空気感まで伝わってくるようなクリアな描写です。

作例5：クローズアップ（花）
* 撮影条件: 焦点距離400mm、絞りF6.3、シャッタースピード1/500秒、ISO 400。手持ち、VR ON。最短撮影距離付近で撮影。
* 解説: 庭に咲いている花を、望遠端400mm、最短撮影距離付近でクローズアップ撮影した一枚。最大撮影倍率0.38倍の高い近接性能により、花の一部を大きく写すことができました。開放F6.3でも、被写界深度は非常に浅くなり、背景が大きく滑らかにボケて、花が浮かび上がるような描写です。花びらの繊細なグラデーションや、蕊のディテールも、高い解像力で美しく表現されています。手持ちでの近接撮影でも、VRがブレを効果的に抑制してくれました。

これらの作例からもわかるように、NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、様々なシチュエーションでその高い描写性能と機能を発揮します。超望遠域での高い解像力、優れたAF追従性、強力なVRは、撮影の可能性を大きく広げてくれるでしょう。

長所と短所：このレンズを選ぶ理由、そして考慮すべき点

どのようなレンズにも、得意なことと苦手なことがあります。NIKKOR Z 100-400mm VR Sの長所と短所を整理してみましょう。

長所

圧倒的な光学性能: S-Lineにふさわしい、ズーム全域・画面全域での非常に高い解像力。色収差や歪曲収差などの収差補正も優秀で、クリアでヌケの良い描写が得られます。特に望遠端400mm開放F6.3での描写力は特筆ものです。
高速・高精度なAF: マルチフォーカス方式とSTMによる、高速かつ正確なAF。Zマウントボディとの連携により、動体追従性も非常に高く、決定的な瞬間を逃しません。静粛性も高く、動画撮影にも適しています。
強力な手ブレ補正（VR）: 公称5.5段のVR効果。ZボディとのシンクロVRにより、特に望遠端での手持ち撮影が非常に容易になります。NORMAL/SPORTモードの切り替えも便利です。
優れた操作性・ビルドクオリティ: S-Lineらしい堅牢な鏡筒、滑らかな操作リング、カスタマイズ可能なL-Fnボタンなど、高い操作性と信頼性を備えています。防塵防滴に配慮した設計も安心です。
テレコンバーター対応: Z TELECONVERTER TC-1.4x/TC-2.0xに対応しており、焦点距離をさらに伸ばすことで、撮影範囲が広がります。特にTC-1.4x装着時の描写劣化は非常に少ないです。
良好な近接性能: 最短撮影距離が短く、望遠端での最大撮影倍率が高いため、簡易マクロ的なクローズアップ撮影も可能です。
比較的コンパクトなサイズと重量: 400mmをカバーする望遠ズームとしては、比較的軽量・コンパクトにまとめられており、携行性に優れています。

短所

価格: S-Lineであるため、どうしても価格は高価になります。手軽に購入できる価格帯ではありません。
開放F値が可変: f/4.5-5.6という可変F値であり、望遠端では開放F6.3となります。明るい単焦点レンズや、F2.8通しのズームレンズに比べると、暗い場所での撮影や大きなボケを得るのが難しくなります。
ズームリングのトルク感: ズームリングのトルクは適度ですが、人によっては少し重く感じるかもしれません。（これは好みの問題でもあります）
三脚座のアルカスイス互換ではない点: 三脚座は便利ですが、プレートなしではアルカスイス互換のクランプに直接装着できないため、別途プレートが必要です。

価格の高さや開放F値の制約はありますが、それを補って余りある光学性能、AF性能、VR性能、そしてS-Lineらしいビルドクオリティと操作性を兼ね備えています。このレンズは、まさに超望遠撮影におけるZマウントシステムの可能性を大きく広げる、価値ある一本と言えるでしょう。

どのようなユーザーにおすすめか：このレンズが輝くシーン

NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、その高い性能から幅広いユーザーにおすすめできますが、特に以下のような方々にとって、このレンズは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

野生動物・野鳥写真家: 400mmという焦点距離は、これらの被写体を捉えるのに最適なレンジの一つです。S-Lineの圧倒的な解像力は、動物の毛並みや鳥の羽毛一本一本を鮮やかに描写し、高速・高精度なAFは、予測不能な動きをする彼らを確実に捉えます。強力なVRは、薄暗い森の中や、早朝・夕暮れ時の手持ち撮影を可能にします。
航空機・鉄道写真家: 遠距離から被写体を引き寄せ、迫力ある写真を生み出すのに適しています。高速で移動する被写体に対する優れたAF追従性や、SPORTモードのVRは、流し撮りや置きピン、追従AFなど、様々なテクニックに対応できます。
スポーツ写真家: 陸上、サッカー、野球など、ある程度距離のあるスポーツイベントの撮影に。特に屋外競技であれば、f/4.5-5.6の開放F値でも十分対応できる場面が多く、コンパクトさや手持ち撮影のしやすさは機動性を高めます。
風景写真家: 遠景の山並みを圧縮効果で切り取ったり、滝の一部や自然の一部分をクローズアップしたりと、超望遠域での風景表現に新たな可能性をもたらします。画面全域での高い解像力は、風景の細部までしっかり写し止めたい場合に最適です。
Zマウントユーザーで、高性能な望遠ズームを求めている方: Zマウントシステムをメインに使用しており、将来的に超望遠域までカバーしたいと考えている方にとって、S-Lineとしての高い品質と、テレコンバーターによる将来的な拡張性は大きな魅力です。
機動性を重視する方: 800mmクラスの単焦点レンズなどと比較すると、はるかに軽量・コンパクトであり、手持ちでの撮影も容易です。フットワークを活かして様々な場所から撮影したい方におすすめです。

もちろん、これらのジャンルに限らず、運動会や発表会など、お子さんのイベント撮影で遠くからアップで撮りたい場合などにも、このレンズは非常に役立ちます。

総評：S-Line望遠ズーム、期待を超える実力

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、Nikon Zマウントシステムにおける超望遠ズームレンズとして、多くのユーザーが待ち望んでいた存在でした。そして、その実力は、S-Lineという称号に込められた期待を、見事に、あるいはそれ以上に超えるものでした。

光学性能は、ズーム全域、画面全域で非常に高く、開放絞りから単焦点に迫る、あるいは匹敵するレベルの解像力と、徹底的に補正された収差により、クリアで抜けの良い描写が得られます。特に望遠端400mm開放F6.3での描写の素晴らしさは、このレンズの最大の武器の一つと言えるでしょう。

AF性能も、Zマウントボディとの連携により、高速、高精度、そして粘り強い追従性を実現しています。動体撮影における信頼性は非常に高く、決定的な瞬間を捉えるための強力なサポートとなります。静粛性も高く、動画撮影にも十分に活用できます。

強力なVR機構は、超望遠域での手持ち撮影を現実のものとし、撮影の自由度を飛躍的に高めます。シンクロVR対応ボディとの組み合わせでは、その効果をさらに体感できます。

操作性やビルドクオリティも、S-Lineらしい高いレベルにあります。堅牢な鏡筒、滑らかな操作リング、使いやすい各種スイッチ類、そしてカスタマイズ可能なL-Fnボタンは、快適な撮影体験を提供してくれます。

価格は確かに高価ですが、このレンズが提供する光学性能、AF性能、VR性能、そしてビルドクオリティを考慮すれば、十分に見合う価値があると言えます。特に、Zマウントシステムで超望遠域を高品質でカバーしたいと考えているユーザーにとっては、現時点で最良の選択肢の一つであることは間違いありません。

また、別売りのZ TELECONVERTER TC-1.4xおよびTC-2.0xに対応していることも、このレンズの大きな魅力です。テレコンバーターを装着することで、さらに焦点距離を伸ばし、撮影の幅を広げることができます。特にTC-1.4x装着時の描写性能は非常に高く、560mmレンズとしても常用できるクオリティです。

このレンズは、単なる超望遠ズームではなく、Nikon Zマウントシステムの可能性をさらに広げ、様々なジャンルの撮影においてユーザーのクリエイティビティを刺激する、まさに「実力派」のS-Lineレンズです。風景、動物、鳥、鉄道、航空機、スポーツなど、望遠域を主戦場とする写真家にとって、このNIKKOR Z 100-400mm VR Sは、信頼できるパートナーとなり、素晴らしい作品を生み出すための強力なツールとなるでしょう。

まとめ：Zマウント超望遠ズームの新たな基準を築く一本

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、Nikon Zマウントにおける初の本格的な超望遠ズームレンズとして、S-Lineにふさわしい素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。その高い光学性能、高速・高精度なAF、強力な手ブレ補正、そしてS-Lineならではの優れた操作性とビルドクオリティは、超望遠撮影における新たな基準を築くものです。

価格は安くありませんが、このレンズが提供する描写力と機能性は、多くの写真愛好家やプロフェッショナルの期待に応える、あるいはそれ以上のものです。特に、Zマウントシステムを最大限に活用したい方にとって、このレンズは超望遠域をカバーする上で、現時点でのベストな選択肢と言えるでしょう。

このレンズが登場したことで、Nikon Zマウントシステムは望遠域のラインナップがさらに強化され、より幅広い撮影ジャンルに対応できるようになりました。NIKKOR Z 100-400mm VR Sは、風景から野生動物、航空機、スポーツまで、様々な被写体との出会いを、最高のクオリティで記録するための強力な武器となるはずです。

今後、Zマウントシステムがさらに成熟し、超望遠単焦点レンズや、より明るい望遠ズームレンズなども登場することが期待されますが、汎用性、機動性、そしてS-Lineの確かな描写性能を兼ね備えたこの100-400mmは、多くのユーザーにとって、超望遠撮影の強力な入り口、あるいは主力レンズとなり続けるでしょう。

このレンズを手にした写真家たちが、どのような素晴らしい作品を生み出していくのか、非常に楽しみです。もしあなたがZマウントユーザーで、超望遠域の撮影に真剣に取り組みたいと考えているなら、NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、検討リストの最上位に置くべきレンズであると、自信を持って言えます。

（注：本記事は架空のレビュー記事として、公開されている情報や一般的なレンズレビューの項目に基づき、約5000語となるように詳細に記述したものです。実際のレンズの性能や使用感は、個人の感じ方や撮影環境によって異なる場合があります。正確な情報については、必ずNikon公式サイトや信頼できる他の情報源もご確認ください。また、作例写真は含まれておりません。）