【解決策】Synology NASにアクセスできない!復旧手順を分かりやすく紹介

はい、承知いたしました。Synology NASにアクセスできなくなった場合の復旧手順について、詳細な説明を含む約5000語の記事を作成します。


Synology NASにアクセスできない!絶望する前に試したい復旧手順(完全ガイド)

導入:突然のパニック!なぜ私のSynology NASにアクセスできないのか?

もはや現代のデジタルライフにおいて、Synology NASは単なる外部ストレージ以上の存在です。大切な写真や動画の保管場所、家族と共有するメディアサーバー、仕事の重要ファイルのバックアップ先、時には個人的なクラウドストレージや監視カメラの録画先として、私たちのデジタル資産の中心を担っています。

それだけに、ある日突然Synology NASにアクセスできなくなったときの衝撃と不安は計り知れません。「データは消えてしまったのか?」「どうすれば元に戻せるのか?」と、頭の中が真っ白になってしまう方も多いでしょう。

しかし、ご安心ください。Synology NASにアクセスできなくなる原因は一つではなく、多くの場合、データが無事なまま復旧させることが可能です。大切なのは、原因を特定し、段階的に適切な手順を踏んでいくことです。

この記事では、Synology NASにアクセスできなくなった場合に考えられる様々な原因から、ご自身で試せる詳細な復旧手順、そして今後の再発防止策までを、初心者の方にも分かりやすく、かつ網羅的に解説します。

注意点: 以下の手順を試す際は、落ち着いて、手順通りに進めるようにしてください。誤った操作は、かえって状況を悪化させたり、最悪の場合データ損失につながる可能性もあります。この記事の情報は一般的なガイダンスであり、個々の状況によっては専門家への相談が必要となる場合があることもご留意ください。特に、HDDから異音がする、焦げ臭い匂いがするなど、物理的な異常が疑われる場合は、無理な操作は避け、専門の復旧業者やSynologyサポートに相談することをお勧めします。

さあ、パニックを抑え、冷静にNASの復旧に挑みましょう。

なぜアクセスできなくなるのか?考えられる主な原因の特定

Synology NASにアクセスできなくなる理由は多岐にわたります。まずは、何が原因であるかを推測することが、復旧への第一歩となります。ここでは、最も一般的な原因をカテゴリー別に詳しく見ていきましょう。

1. ネットワーク関連の問題

NASはネットワークデバイスです。アクセスできない原因として、ネットワークに関する問題が最も頻繁に発生します。

  • ルーター/スイッチの問題: NASとPC/スマートフォンが接続しているルーターやスイッチが正常に機能していない可能性があります。一時的な不具合、過負荷、ファームウェアの問題などが考えられます。
  • LANケーブルの断線/劣化/接続不良: シンプルですが見落としがちな原因です。ケーブルが物理的に損傷している、コネクタ部分が緩んでいる、あるいはケーブル自体が古い規格で帯域が不足している(まれですが)などが考えられます。特に猫などがいる家庭では、ケーブルをかじられて断線しているケースも報告されています。
  • IPアドレスの競合/変更:
    • DHCPの問題: ルーターのDHCPサーバーからNASに正しくIPアドレスが割り当てられていない、あるいは他のデバイスとIPアドレスが競合している可能性があります。
    • 固定IPアドレスの設定ミス: NASに固定IPアドレスを設定している場合、その設定自体が間違っている、またはネットワーク構成の変更によってアクセスできなくなっている可能性があります。
    • IPアドレスの変更: DHCPでIPアドレスを取得していた場合、NASを再起動したりルーターが再起動したりした際に、NASのIPアドレスが変わってしまうことがあります。以前のIPアドレスでアクセスしようとして失敗するケースです。
  • ファイアウォールの設定問題:
    • NASのファイアウォール: DSMのファイアウォール設定で、アクセス元のIPアドレスやポート番号(DSM管理画面の5000/5001、ファイルサービスのポートなど)からの接続がブロックされている可能性があります。誤って自身が使用しているIPアドレス範囲をブロックしてしまった、あるいは以前設定したルールが現在のネットワーク構成と合わなくなっている、といったケースです。
    • PC/クライアント側のファイアウォール/セキュリティソフト: PCやスマートフォン側のファイアウォールやセキュリティソフトが、NASへのアクセスを通信として不正と判断しブロックしている可能性があります。
    • ルーターのファイアウォール: 特に外部からのアクセス(QuickConnectやポート転送)の場合、ルーターのファイアウォール設定が問題になっている可能性があります。
  • Wi-Fi接続の問題(PC側): NASが有線LANで接続されており、アクセスしているPCやスマートフォンがWi-Fi接続の場合、Wi-Fiルーターから有線LANネットワークへの通信が正しく行われていない、あるいはWi-Fiの信号が不安定であるなどが原因となることがあります。
  • ポート転送設定の問題(外部アクセスの場合): 自宅外からQuickConnectを使わずにポート転送でアクセスしている場合、ルーターのポート転送設定が削除された、間違っている、あるいはDDNSサービスが更新されていないなどが考えられます。
  • 同一ネットワーク上にいない: NASとアクセスしようとしているデバイス(PCなど)が、異なるネットワーク(別のサブネット)に接続されている可能性があります。例えば、PCがゲストWi-Fiに接続しているなど。

2. NAS本体の問題

NASハードウェアや、その上で動作するシステムソフトウェア(DSM)自体に問題が発生している可能性があります。

  • 電源問題:
    • 電源アダプターの故障: 電源アダプターが壊れてしまい、NAS本体に電力が供給されていない、あるいは不安定になっている。
    • 電源ケーブルの接続不良/断線: コンセントやNAS本体へのケーブル接続が緩んでいる。
    • NAS本体の電源回路の故障: NAS本体の電源に関する内部部品が故障している。
  • ハードディスクの問題:
    • ハードディスクの故障: RAID構成でないシングルディスクモデルの場合、そのディスクが故障するとNAS全体が起動できなくなるか、DSMにアクセスできてもストレージにアクセスできなくなります。RAID構成でも、ディスクが複数台故障すると同様の状況になります。
    • ハードディスクの容量不足: システム領域が逼迫するほど容量がいっぱいになってしまい、DSMが正常に動作できなくなることがあります。
    • ハードディスクの認識不良: 物理的な問題やファームウェアの問題で、NASが一部または全てのハードディスクを正しく認識できていない可能性があります。
  • DSM(DiskStation Manager)の不具合/クラッシュ: NASのOSであるDSM自体に不具合が発生したり、システムがクラッシュしたりして、正常に起動しない、あるいはサービスが停止している状態です。アップデートの失敗などが原因となることがあります。
  • システムリソースの枯渇: CPU使用率やメモリ使用率が異常に高く(例えば、インデックス作成処理が長時間続いている、特定のパッケージが暴走しているなど)、システム全体の動作が不安定になっている、あるいは応答しなくなっている可能性があります。
  • 過熱: NAS内部が高温になりすぎると、システム保護のために動作が停止したり、不安定になったりすることがあります。ファンが故障している、吸排気口が塞がれているなどが原因となります。
  • 物理的な故障: マザーボード、LANポート、メモリなどのハードウェアが故障している。

3. PC/クライアント側の問題

NAS側やネットワークに問題がなくても、アクセスしようとしているPCやスマートフォン自体に問題がある場合もあります。

  • PCのネットワーク設定問題: IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーなどの設定が間違っている。
  • PCのファイアウォール/セキュリティソフト: 前述の通り、NASへの通信をブロックしている可能性があります。
  • Webブラウザの問題: DSM管理画面にWebブラウザでアクセスしようとしている場合、ブラウザのキャッシュやクッキーが古い情報を記憶していて接続できない、あるいはブラウザ自体の不具合や拡張機能が悪影響を与えている可能性があります。
  • 使用しているプロトコルの問題: エクスプローラーやFinderでファイル共有にアクセスしようとしている場合、SMBやAFPといったファイル共有プロトコルに関する問題(バージョン互換性、設定ミスなど)が発生している可能性があります。
  • 認証情報の問題: ユーザー名やパスワードを間違えている。DSMアカウント、ファイル共有アカウントなど、複数のアカウント情報がある場合は混同している可能性があります。

4. ソフトウェア/設定の問題

DSM上での設定ミスや、インストールしているパッケージ(アプリ)の問題も原因となり得ます。

  • DSMアップデートの失敗: アップデート中に電源が切れた、あるいはアップデートファイルに問題があったなどで、DSMが正常に起動しない状態。
  • 特定のパッケージの問題: インストールした特定のパッケージ(例: Plex Media Server, Download Stationなど)が原因でシステムが不安定になったり、ネットワークサービスに影響を与えたりしている可能性があります。
  • 重要なサービスの停止: ファイル共有サービス(SMB, AFP)、WebDAV、SSHなどのサービスが何らかの理由で停止している可能性があります。
  • アクセス権限の問題: 特定の共有フォルダやサービスに対するアクセス権限が、誤って設定されていてアクセスできなくなっている。

これらの原因を頭に入れながら、次の初期診断に進みましょう。どのような状況でアクセスできなくなったか(特定のPCからだけか、全てのデバイスからか、外部からだけか、内部ネットワークからもか)、何か設定変更をした後か、特定のパッケージをインストールした後か、などを思い出すことも原因特定の手助けになります。

アクセスできない場合の確認事項と初期診断

NASにアクセスできないことに気づいたら、すぐに電源を切ったり再起動したりする前に、まずは落ち着いて状況を把握し、いくつかの初期診断を行いましょう。これにより、原因を絞り込み、その後の復旧手順を効率的に進めることができます。

1. 物理的な確認

まず、NAS本体や周辺機器の物理的な状態を確認します。

  • NAS本体のランプ状態の確認:
    • 電源ランプ: 点灯しているか?点滅しているか?消えているか?
    • STATUSランプ: 緑色に点灯/点滅しているか?オレンジ色に点灯/点滅しているか?消えているか?(オレンジ色は多くの場合、異常や警告を示します)
    • LANランプ(各ポート): 点灯しているか?点滅しているか?速度によって色が異なる場合もあります。ケーブルが正しく接続され、通信が行われているかを確認します。
    • HDDランプ(各ベイ): 点灯/点滅しているか?正常な状態か?(アクセスがあるたびに点滅するのが一般的です)
    • ※重要: Synologyの公式サイトやマニュアルで、お使いのモデルの正常時のランプ状態を確認し、現在の状態と比較してください。異常な点滅パターンや色の違いは、特定の不具合を示唆している可能性があります。
  • 電源ケーブルの接続確認: NAS本体側、コンセント側ともにしっかりと接続されているか確認します。
  • LANケーブルの接続確認: NAS本体側、ルーター/スイッチ側ともにしっかりと接続されているか確認します。ケーブルが抜けていないか、緩んでいないかを確認します。
  • ルーター、スイッチ、モデムのランプ状態確認: NASが接続されているネットワーク機器(ルーター、スイッチ)の電源が入っているか、WAN回線が接続されているか(モデムやルーターのインターネットランプ)などを確認します。これらの機器に問題があれば、NASだけでなく他のインターネット接続もおかしくなっているはずです。

2. ネットワーク上の確認

NASがネットワーク上で認識されているか、通信が可能かを確認します。

  • 同一ネットワーク上の他のデバイスからのアクセスを試す: 別のPC、スマートフォン、タブレットなど、同一のLANやWi-Fiに接続されている他のデバイスからNASへのアクセス(DSM管理画面へのWebブラウザでのアクセス、ファイル共有へのアクセスなど)を試してみてください。もし他のデバイスからはアクセスできるなら、問題は最初のPC側にある可能性が高いです。もし全てのデバイスからアクセスできないなら、問題はNAS本体かネットワーク全体にある可能性が高まります。
  • pingコマンドによる疎通確認:
    • アクセスしたいPCからコマンドプロンプト(Windows)またはターミナル(macOS/Linux)を開きます。
    • NASのIPアドレスが分かっている場合:ping [NASのIPアドレス] 例: ping 192.168.1.100
    • NASのホスト名が分かっている場合:ping [NASのホスト名].local (macOS/Linuxの場合) または ping [NASのホスト名] (Windowsの場合、環境による) 例: ping diskstation.local
    • コマンドを実行し、応答があるか(Reply from …)確認します。「Request timed out」(要求がタイムアウトしました)や「Destination host unreachable」(宛先ホストに到達できません)と表示される場合は、PCからNASまでのネットワーク経路に問題がある可能性が高いです。
    • pingが成功する場合、少なくともIPアドレスでの基本的な通信は可能です。この場合は、DSMサービスの停止やファイアウォール設定など、より上位の層で問題が起きている可能性があります。
  • NAS Finderツールの利用:
    • Synology Assistant: Synologyが提供するデスクトップアプリケーションです。同一ネットワーク上のSynology NASを検索し、IPアドレス、ステータス、DSMバージョンなどを表示してくれます。まだインストールしていない場合は、Synologyのダウンロードセンターからダウンロードしてインストールし、起動してスキャンしてみてください。NASが検出されるか、どのようなステータスで表示されるかを確認します。
    • Web Assistant: Webブラウザから find.synology.com または diskstation:5000 (Windowsの場合) / diskstation.local:5000 (macOSの場合) にアクセスすることで、同一ネットワーク上のNASを検索できます。これもNASが検出されるかを確認するのに役立ちます。
  • ルーターの管理画面で接続デバイスリストを確認: 使用しているルーターの管理画面にログインし、現在ネットワークに接続されているデバイスのリスト(DHCPクライアントリストなど)を確認します。リストの中にNASのホスト名やMACアドレスが見つかるか、割り当てられているIPアドレスは何かを確認できます。NASが見つかるが、他の方法ではアクセスできない場合、IPアドレスは正しいが通信に何らかの問題があることを示唆します。

3. PC側の確認

アクセスしようとしているPC自体の設定を確認します。

  • PCが正しくネットワークに接続されているか?: PCがWi-Fiまたは有線LANで、NASと同じネットワークに接続されているか確認します。インターネットには接続できるかなども確認します。
  • 他のネットワークリソースへのアクセス確認: 同一ネットワーク上の他の共有フォルダやプリンターなど、他のデバイスにアクセスできるか試してみてください。もし他のローカルネットワーク上のデバイスにもアクセスできないなら、PCのネットワーク設定やファイアウォールに広範な問題がある可能性があります。
  • PCのファイアウォールやセキュリティソフトを一時的に無効にして試す(リスクに注意): 問題の切り分けのため、PC上のファイアウォールやセキュリティソフトを一時的に無効にしてからNASへのアクセスを試みてください。ただし、これはセキュリティリスクを伴うため、問題が特定でき次第すぐに元の設定に戻すか、NASへの通信を許可する例外ルールを追加してください。特に公衆ネットワークなど、安全が確保できない場所では行わないでください。

これらの初期診断を行うことで、「物理的な問題か、ネットワークの問題か、NAS本体の問題か、それともPC側の問題か」といった大まかな原因を絞り込むことができます。診断結果に基づき、次の具体的な復旧手順に進みましょう。

段階的な復旧手順

初期診断で得られた情報をもとに、より具体的な復旧手順を順番に試していきます。簡単なものから始め、徐々に踏み込んだ手順に進むのがセオリーです。

手順1: 基本的な物理接続と電源の確認、そして再起動

最も基本的で、意外と効果のある手順です。

  1. NAS、ルーター、スイッチの電源オフ/オン(再起動):

    • まず、可能であればSynology DSMから正常な手順でNASをシャットダウンします。アクセスできない場合は、NAS本体の電源ボタンをビープ音が鳴るまで長押ししてシャットダウンします(モデルによって異なります)。
    • NAS、ルーター、そしてもし使用していればネットワークスイッチやモデムの電源をすべて切ります。
    • 重要な順番: 電源を切った後、数分間(例えば5分程度)待ちます。これはネットワーク機器の設定が完全にリセットされるのを待つためです。
    • 電源を入れる順番: モデム -> ルーター -> スイッチ -> NAS の順に電源を入れていきます。各機器が完全に起動し、ランプ状態が安定するのを待ってから次の機器の電源を入れます。
    • すべての機器が起動したら、NASへのアクセスを再度試みます。
    • なぜ効果があるのか: 一時的なフリーズ、キャッシュの問題、IPアドレスの再取得などが解消されることがあります。
  2. ケーブルの抜き差し、交換を試す:

    • NASとルーター/スイッチを結ぶLANケーブルを、両端ともに一度抜いて、しっかりと奥まで差し込み直します。カチッと音がするまで差し込んでください。
    • 可能であれば、別のLANケーブルに交換して試してみてください。ケーブル内部で断線している可能性もゼロではありません。
    • ルーター/スイッチの別のLANポートにNASを接続し直してみてください。ポート自体が故障している可能性もまれにあります。

これらの基本的な物理的な確認と再起動は、多くの一時的な問題を解決できる可能性があります。

手順2: ネットワーク設定の確認とIPアドレスの特定

NASがネットワーク上でどのように認識されているかを確認します。

  1. NASのIPアドレスの特定:

    • Synology Assistantを使用: 手順1の初期診断で試したSynology Assistantを起動し、「検索」を実行します。NASが検出されれば、そのIPアドレス、ホスト名、ステータスなどが表示されます。
    • Web Assistantを使用: find.synology.com にアクセスし、NASが検出されるか確認します。検出されればIPアドレスが表示されます。
    • ルーターの管理画面を確認: ルーターの管理画面にログインし、接続されているデバイスリスト(DHCPリース情報など)を確認します。NASのホスト名を探し、割り当てられているIPアドレスを特定します。固定IPアドレスを設定している場合は、その設定を確認します。
    • NASのIPアドレスが判明したら、控えておきましょう。 以降のDSMアクセスやファイル共有アクセスに使用します。
  2. PCのネットワーク設定確認:

    • アクセスしようとしているPCが、NASと同じネットワーク(同じサブネット)に接続されているか確認します。
    • Windowsの場合: コマンドプロンプトで ipconfig と入力し、PCのIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイを確認します。NASのIPアドレスとPCのIPアドレスの先頭部分(サブネットマスクで区切られる部分)が同じである必要があります。
    • macOSの場合: ターミナルで ifconfig または ip addr show と入力するか、システム設定のネットワーク設定で確認します。
    • もしPCがNASと異なるサブネットにいる場合、PCをNASと同じネットワークに接続し直す必要があります。
  3. pingによる詳細な疎通確認:

    • PCからNASのIPアドレスに対して再度 ping [NASのIPアドレス] を実行します。
    • 応答があるか? 応答がない場合、「要求がタイムアウトしました」となるか、「宛先ホストに到達できません」となるか?
    • 「要求がタイムアウトしました」の場合、PCからNASまでの物理的な経路は概ね正しいが、NAS側でpingに応答しない設定になっているか、NASが応答する余裕がない(システム負荷が高い)可能性があります。
    • 「宛先ホストに到達できません」の場合、PCとNASが異なるネットワークにいるか、ルーターなどの経路に問題がある可能性が高いです。
    • NASからPCへのping(上級者向け): もしSSHなどでNASにログインできる場合(後述)、NASからPCのIPアドレスに対してpingを実行してみることで、どちらの方向の通信に問題があるかを切り分けられます。
  4. ファイアウォールの確認:

    • PCのファイアウォール: PCのWindows DefenderファイアウォールやMacのファイアウォール設定、またはインストールしているセキュリティソフトの設定を確認し、NASへのアクセス(IPアドレスやファイル共有、DSM管理画面ポートなど)がブロックされていないか確認します。必要に応じて例外設定を追加します。
    • NASのファイアウォール: もしDSMにアクセスできるようになったら(後述)、DSMのファイアウォール設定を確認します。誤ってアクセス元のIPアドレス範囲をブロックしていないか、あるいは特定のポート(5000, 5001など)へのアクセスが拒否されていないかを確認します。

IPアドレスが特定でき、基本的なネットワーク疎通が確認できたら、次にDSMへのアクセスを試みます。

手順3: Synology Assistant/Web Assistantを使った診断と接続

これらのツールは、単にNASを検出するだけでなく、NASの状態を確認したり、場合によってはDSMの再インストールをガイドしたりする機能も持っています。

  1. Synology Assistantの起動: インストール済みのSynology Assistantを起動し、「検索」を実行します。
  2. NASの検出とステータスの確認: NASが検出されたら、表示される「ステータス」を確認します。
    • 「準備完了」: この場合は、NASは正常に起動しており、DSMにアクセスできる状態です。IPアドレスとポート番号(通常5000または5001)を確認し、次の手順4に進みます。
    • 「接続できません」: NASは検出されたが、Assistantからの接続に問題がある状態です。ネットワーク設定やファイアウォールが原因である可能性があります。
    • 「設定が失われました」: NASは起動したが、DSMの設定情報が失われている状態です。データはHDDに残っている可能性が高いですが、DSMの再インストールが必要です。Assistantが再インストールのプロセスを案内してくれます。
    • 「復旧可能」: DSMに問題が発生しているが、修復可能な状態かもしれません。Assistantからの操作でDSMの修復や再インストールを試みます。
    • 「DSMではありません」: NASのハードディスクにDSMがインストールされていない状態です。新規セットアップが必要ですが、HDDにデータが残っている可能性もあります(ただし保証はされません)。
    • 「シャットダウン中」: NASがシャットダウン処理中の状態です。しばらく待ってみます。
    • 「サービス停止」: 特定のシステムサービスが停止している状態です。再起動が必要かもしれません。
    • その他: その他のエラーメッセージが表示される場合は、Synologyのサポートドキュメントでメッセージの意味を調べてください。
  3. Web Assistant (find.synology.com) の利用: Webブラウザでこのアドレスにアクセスし、NASが検出されるか確認します。検出されれば、そのNASにWebブラウザで接続するためのリンクが表示されます。クリックしてDSMログイン画面にアクセスできるか試します。

Synology AssistantやWeb AssistantでNASが検出されるかどうかが、問題の所在を大きく切り分けるポイントになります。検出されない場合は、物理的な問題、ネットワーク接続の問題、あるいはNAS本体の深刻な起動不良が考えられます。検出されるが「準備完了」以外のステータスが表示される場合は、DSM自体に問題が発生している可能性が高いです。

手順4: Webブラウザを使ったDSMへのアクセス

NASのIPアドレスが特定でき、「準備完了」またはそれに近いステータスが表示されている場合は、WebブラウザでDSM管理画面へのアクセスを試みます。

  1. 正しいアドレスとポート番号の確認: 通常、DSM管理画面はHTTPプロトコルではポート5000、HTTPSプロトコルではポート5001を使用します。
    • アドレスバーに http://[NASのIPアドレス]:5000 と入力します。例: http://192.168.1.100:5000
    • HTTPSを強制している場合や、DSM設定でポート番号を変更している場合は、 https://[NASのIPアドレス]:5001 や変更したポート番号を使用します。
  2. ブラウザのキャッシュとクッキーのクリア: 以前のアクセス情報が原因で接続できない場合があります。使用しているブラウザの設定から、閲覧履歴、キャッシュ、クッキーをクリアしてから再度アクセスを試みてください。
  3. 別のブラウザを試す: 現在使用しているブラウザに問題がある可能性も考慮し、Chrome, Firefox, Edge, Safariなど、別の種類のブラウザでアクセスを試みます。
  4. シークレット/プライベートウィンドウで試す: ブラウザの拡張機能や一時ファイルの影響を受けないように、シークレットウィンドウ(またはプライベートウィンドウ)を開いてアクセスを試みます。

これらの方法でDSMのログイン画面が表示されれば、NAS本体とネットワーク接続は概ね正常に機能していることになります。問題はログイン認証、DSM内部設定、または特定のサービスにある可能性が高まります。

手順5: DSMログイン画面は表示されるがログインできない場合

ログイン画面までたどり着けたものの、ユーザー名とパスワードを入力してもログインできない場合の対処法です。

  1. ユーザー名とパスワードの確認:
    • 入力しているユーザー名とパスワードが正しいか、再度慎重に確認します。大文字・小文字の区別、数字、記号などが正確に入力されているか確認します。
    • Caps LockやNum Lockキーが意図せず有効になっていないか確認します。
    • 複数のSynologyアカウントやサービス用パスワードを混同していないか確認します。
  2. パスワードリセットの方法:
    • 物理リセットボタンを使用(モード1リセット): NAS本体にあるリセットボタンを、ビープ音が鳴るまで(約4秒)長押しします。これにより、管理者アカウントのパスワードがリセットされ、ネットワーク設定(DHCPに設定されていた場合はDHCPクライアントに戻る)もリセットされます。この操作では、保存されているデータや他の設定(共有フォルダ、ユーザーアカウント、パッケージなど)は削除されません。
      • リセット後、Synology Assistantを使ってNASを再度検索します。ステータスが「復旧可能」または「準備完了」となり、DHCPで新しいIPアドレスを取得している可能性があります。
      • 新しいIPアドレスでDSMログイン画面にアクセスし、ユーザー名「admin」(モデルによっては無効になっている場合あり)または元々使用していた管理者アカウント名(通常はadminとは別の名前に変更することを推奨されています)、パスワードは空欄(または一部モデルではデフォルトのパスワード)でログインを試みます。ログイン後、すぐに新しい強力なパスワードを設定してください。
    • Synology Account経由でのリセット: DSM設定でSynology Accountとの連携を設定しており、「パスワードを忘れた場合」機能が有効になっている場合、ログイン画面に表示されるリンクからSynology Accountに登録したメールアドレス宛にパスワードリセットの案内を送信できる場合があります。
  3. 二段階認証の問題: 二段階認証を設定していて、認証コードの入力に問題がある場合もログインできません。
    • 認証アプリ(Google Authenticatorなど)の時刻が正確に同期されているか確認します。
    • DSM設定でリカバリーコードを保存していた場合、リカバリーコードを使ってログインできるか試します。
    • 物理リセットボタン(モード1リセット)は、管理者パスワードと共に二段階認証設定もリセットします。二段階認証が原因でログインできない場合は、この方法が有効です。

パスワードリセット(モード1リセット)は、多くのログイン問題を解決できる強力な手段です。データに影響しないため、比較的安心して試せる最初の物理的な操作となります。

手順6: DSMにログインできた場合の診断

無事にDSMにログインできた場合、NAS自体は起動しており、システムも動作していると考えられます。ここからは、DSMの管理画面を使って、問題の根源を特定し、解決を図ります。

  1. ストレージマネージャーの確認:
    • DSMのメインメニューから「ストレージマネージャー」を開きます。
    • 左側のメニューで「HDD/SSD」または「ストレージプール」「ボリューム」を選択します。
    • 搭載されているHDD/SSDのステータスを確認します。正常(正常)、劣化(警告)、故障(異常)、未初期化などの状態が表示されます。特に、赤やオレンジ色のアイコンが表示されている場合は、ディスクに問題が発生している可能性が高いです。
    • ストレージプールの状態も確認します。デグレードモードになっていないか、完全にクラッシュしていないかなど。
    • ボリュームの容量使用率を確認します。システムボリューム(通常systemrootと表示される見えない領域)を含む、いずれかのボリュームが容量不足になっていないか確認します。特にシステム領域がいっぱいになると、DSMが不安定になります。
  2. リソースモニターの確認:
    • DSMの右上にあるウィジェットや、メインメニューの「リソースモニター」を開きます。
    • CPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク転送量などを確認します。
    • 特定のプロセス(パッケージやシステムサービス)が異常に多くのリソースを消費していないか確認します。CPU使用率が常に100%に近い場合、システムが応答しにくくなっている可能性があります。
    • 稼働時間(アップタイム)を確認し、NASが予期せず再起動していないかなどを確認します。
  3. ログセンターの確認:
    • メインメニューから「ログセンター」を開きます。
    • 「システム」ログや「接続」ログなどを確認します。
    • エラーメッセージ、警告メッセージ、異常な接続試行などが記録されていないか確認します。特にNASにアクセスできなくなった時刻前後に、何か関連するログが出力されていないか丹念に調べます。例えば、ネットワークエラー、ディスクエラー、サービス起動失敗、ファイアウォールによるブロックなどの情報が見つかることがあります。
  4. DSMアップデートの確認と実行:
    • メインメニューから「コントロールパネル」→「更新と復元」を開きます。
    • DSMのバージョンが最新か確認します。利用可能なアップデートがある場合は、適用してみることを検討します。既知の不具合が修正されている可能性があります。ただし、不安定な状態で大型アップデートを行うのはリスクも伴います。 緊急度とリスクを考慮して判断してください。まずマイナーアップデートから試すのが安全です。
  5. パッケージセンターの確認:
    • メインメニューから「パッケージセンター」を開きます。
    • インストール済みのパッケージリストを確認します。特に、問題が発生する直前にインストールまたはアップデートしたパッケージがないか確認します。
    • 特定のパッケージが「停止」している、あるいは異常な状態になっていないか確認します。問題を起こしていそうなパッケージがあれば、一時的に停止してみるか、一度アンインストールして再インストールしてみることを検討します。
  6. ネットワーク設定の確認:
    • 「コントロールパネル」→「ネットワーク」→「ネットワークインターフェース」を開きます。
    • 使用しているLANポート(通常LAN 1)のIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーの設定が正しいか確認します。固定IPアドレスを設定している場合は、特に慎重に確認します。DHCPで取得している場合は、ルーターから正しい情報が取得できているか確認します。
    • 「ファイアウォール」設定も再確認し、アクセス元のIPアドレスや必要なポートがブロックされていないか確認します。
  7. サービス設定の確認:
    • どのサービス(DSM管理画面、ファイル共有SMB/AFP、WebDAVなど)にアクセスできないのかに応じて、関連するサービスが有効になっているか確認します。
    • 例: ファイル共有にアクセスできない場合、「コントロールパネル」→「ファイルサービス」を開き、SMB、AFP、NFSなどが有効になっているか確認します。
    • DSM管理画面にアクセスできない場合は、「コントロールパネル」→「ネットワーク」→「DSM設定」でHTTP/HTTPSのポート番号や自動リダイレクト設定などを確認します。

DSMにログインできたということは、システムそのものは起動している証拠です。これらの診断項目を虱潰しに確認することで、問題の具体的な原因(ディスクの問題、リソース不足、設定ミス、パッケージの不具合など)を特定し、適切な対処を行うことができます。

手順7: NAS本体の物理リセット(モード2リセット)

手順5で説明したモード1リセット(パスワードとネットワーク設定のリセット)では解決しない、DSM自体が正常に機能しない深刻な問題の場合、DSMを再インストールする必要があります。この操作は、NAS本体のリセットボタンをより長く押すことで行います(モード2リセット)。

警告: この操作はDSMを工場出荷時の状態に再インストールします。通常、データはストレージボリューム上に保持されますが、システムパーティションは再構築されるため、一部の設定やインストール済みのパッケージは失われます。また、万が一のシステム領域の損傷によっては、データが失われるリスクもゼロではありません。重要なデータは事前にバックアップしておくことが強く推奨されます。

  1. リセットボタンの場所を確認: お使いのSynology NASモデルのマニュアルで、リセットボタンの正確な位置を確認します。多くの場合、本体前面または背面に小さな穴の中にあります。
  2. リセット手順(モード2):
    • NASの電源が入っている状態で、ペーパークリップや細いピンなどを使ってリセットボタンを押し込みます。
    • 最初のビープ音が鳴るまで(約4秒)押し続けます。 → これはモード1リセットです。ここで指を離さず、さらに押し続けます。
    • さらに押し続け、2回目のビープ音が鳴るまで(合計約10秒程度)押し続けます。 2回目のビープ音が鳴ったら、指を離します。
  3. リセット後の挙動: NASはシステムパーティションの初期化を開始します。ステータスランプがオレンジ色に点滅するなど、通常とは異なるランプパターンになる場合があります。完全に準備ができるまで数分から数十分かかることがあります。
  4. Synology Assistantを使ったDSMの再インストール:
    • NASがリセット処理を終え、ネットワーク上に検出可能な状態になったら、Synology Assistantを起動します。
    • AssistantがNASを検出し、「設定が失われました」または「DSMではありません」のようなステータスで表示します。
    • NASを選択し、「接続」または「セットアップ」ボタンをクリックします。
    • Webブラウザが開き、DSMの初期セットアップウィザードが開始されます。このウィザードに従って、DSMのバージョンを選択し(最新版を推奨)、ダウンロードしてインストールします。
    • インストールにはNASのモデルに合ったDSMの.patファイルが必要です。ウィザードが自動でダウンロードするか、Synologyダウンロードセンターから手動でダウンロードして指定します。
    • インストールが完了すると、NASは再起動します。
  5. DSM再インストール後の設定: NASが再起動したら、再度DSMにログインします。
    • 初期設定(管理者アカウントの作成、ネットワーク設定など)を行います。
    • 重要なデータが保存されていたボリュームは、通常マウントされた状態でデータが残っているはずです。 ストレージマネージャーを開いてボリュームの状態を確認します。
    • 失われた設定(共有フォルダのアクセス権限、ユーザーアカウント、インストール済みのパッケージ、各種サービス設定など)を再構成します。Hyper Backupなどで設定をバックアップしていた場合は、復元することも可能です。

モード2リセットはデータ領域には影響しないとされていますが、システムの根幹に触れる操作です。実行する際は、リスクを理解した上で行ってください。

手順8: SSH/Telnetでの接続(上級者向け)

WebブラウザやSynology Assistantでのアクセスが全くできない場合でも、NAS上のSSHまたはTelnetサービスが有効になっていれば、コマンドラインインターフェース経由でNASに接続できる可能性があります。この手順は、コマンドライン操作に慣れている上級者向けです。

  1. SSHサービスの有効化: 通常、SSH/Telnetサービスはデフォルトで無効になっています。もし以前にDSM上で有効にしていた場合のみ、この方法が有効です。
    • 「コントロールパネル」→「端末とSNMP」→「端末」タブで、「SSHサービスを有効にする」にチェックが入っているか確認します。SSHポート番号(デフォルトは22)も確認します。
  2. SSHクライアントの準備: PCにSSHクライアントソフトウェア(WindowsではPuTTYやOpenSSH、macOS/Linuxでは標準のターミナル)が必要です。
  3. NASへの接続:
    • SSHクライアントを起動し、ホスト名またはNASのIPアドレス、ポート番号(通常22)を指定して接続します。
    • DSMの管理者アカウントのユーザー名とパスワードを入力してログインします。
  4. コマンドによる診断: ログインできたら、いくつかのコマンドを実行してNASの状態を診断できます。
    • df -h: ストレージ容量の使用状況を確認します。特にシステム領域が逼迫していないか確認します。
    • top: システムリソース(CPU, メモリ)の使用状況をリアルタイムで確認します。異常なプロセスがないか確認します。
    • dmesg: カーネルのメッセージログを表示します。ハードウェアに関するエラー(ディスクエラーなど)が出力されている可能性があります。
    • synopkg list: インストールされているパッケージのリストを表示します。
    • ip addr show または ifconfig: ネットワークインターフェースのIPアドレスや状態を確認します。
    • synoservicectl --list: 稼働しているSynologyサービスの一覧を表示します。
    • sudo synoservicectl --restart [サービス名]: 特定のサービス(例: sshd, smbd, synorelaydなど)を再起動できます。
  5. 注意: SSH/Telnetでの操作は、誤ったコマンドの実行がシステムに深刻なダメージを与える可能性があります。コマンドの意味を理解してから実行してください。

SSHでログインできるということは、NASのOSカーネルが起動しており、SSHサービスが動作している状態です。これは、Webサーバーやファイル共有サービスなどが停止しているだけで、システム自体は生きている可能性を示唆します。コマンドラインから問題のあるサービスを特定して再起動したり、ログを確認したりといった高度な診断・復旧が可能になります。

手順9: ハードディスクの検証/交換

ストレージマネージャーの確認やログから、ハードディスクに異常があることが強く疑われる場合の対処法です。

  1. HDDの状態確認: DSMにログインできる場合は、ストレージマネージャーのS.M.A.R.T.情報を確認したり、拡張テストを実行したりして、HDDの健康状態を詳しく診断します。
  2. 故障したHDDの特定: どのHDDベイのディスクに問題があるか特定します。多くの場合、ストレージマネージャーでエラーが発生しているディスクが表示されます。
  3. 故障したHDDの交換:
    • NASの電源を正常な手順でシャットダウンします。
    • 故障したHDDを取り出し、新しい互換性のあるHDDに交換します。Synologyの互換性リストを確認してください。
    • NASの電源を入れます。
    • RAID構成の場合: DSMが起動し、ストレージマネージャーで交換した新しいHDDを認識し、ストレージプールの修復(リビルド)オプションを提示するはずです。手順に従って修復を実行します。修復には時間がかかりますが、完了すれば元の冗長性が回復します。
    • RAID構成ではない場合(SingleまたはJBODで故障ディスクにデータがあった場合): そのディスクに保存されていたデータは基本的に失われます。新しいディスクでストレージプール/ボリュームを再作成し、DSMを再インストールする必要があります。
  4. HDDの診断ツール(上級者向け): NASから取り出したHDDをPCに接続し、HDDメーカーが提供している診断ツール(例: Western DigitalのData Lifeguard Diagnostic, SeagateのSeaToolsなど)を使って詳細な物理診断を行うことも可能です。
  5. データ復旧専門業者への相談: 複数のHDDが故障した、RAIDが完全にクラッシュした、あるいは物理的な衝撃や水濡れなどによりデータが非常に重要な場合は、自己判断せずに専門のデータ復旧サービスに相談することを検討してください。

ハードディスクの故障はNASのデータに直結する深刻な問題ですが、RAID構成の場合はディスク1台程度の故障であればデータの損失なく復旧できる可能性が高いです。

手順10: DSMのクリーンインストール(最終手段)

これまでの手順を試してもNASにアクセスできず、DSMが全く起動しない、あるいはシステム領域の破損が疑われる場合の最終手段です。この方法は、ストレージボリューム上のデータは保持しつつDSMを再インストールするモード2リセットと似ていますが、場合によっては全てのデータが初期化される可能性も考慮に入れる必要があります。Synology Assistantを使ったモード2リセットがうまくいかない場合に検討します。

  1. データ損失のリスクを理解する: この手順は、DSMをゼロから再構築するものです。通常、Synology NASはシステム領域とデータ領域を分けて管理しており、DSMの再インストールではシステム領域のみが上書きされます。しかし、システム領域とデータ領域の損傷が広範囲に及んでいる場合や、誤った操作を行った場合、データが失われる可能性があります。最重要データのバックアップがない場合は、この手順は最後の手段として、十分なリスクを理解した上で実行してください。
  2. 準備:
    • 別の正常なPC(WindowsまたはmacOS)
    • Synology Assistantの最新版
    • お使いのSynology NASモデルに対応する最新のDSM .patファイル(Synologyダウンロードセンターからダウンロード)
    • NASとPCを直接接続できるLANケーブル(ルーター経由でも構いませんが、直接接続の方が確実性が高い場合があります)
  3. クリーンインストール手順:
    • NASの電源をオフにします。
    • NASに搭載されている全てのHDD/SSDを取り出します。(このステップは通常不要ですが、万が一データが失われるリスクを極力減らしたい場合や、システム領域の問題が特定できない場合に、システム領域の初期化を確実に行うために行うことがあります。ただし、HDDを取り出したままDSMをインストールすると、新しいボリュームを強制的に作成される可能性があるため、推奨されません。まずはHDDを装着したままモード2リセットと再インストールを試みてください。
    • (HDDを取り出した場合)NASにLANケーブルと電源ケーブルを接続し、電源を入れます。
    • PCとNASを同一ネットワークに接続します。
    • Synology Assistantを起動し、「検索」を実行します。
    • NASが検出され、「DSMではありません」のようなステータスで表示されるはずです。
    • NASを選択し、「セットアップ」または「インストール」ボタンをクリックします。
    • Webブラウザが開き、DSMの初期設定画面になります。
    • DSMの.patファイルを選択し、インストールを開始します。
    • インストールオプションの選択に注意! 通常の再インストールでは「データを保持してDSMを再インストール」のようなオプションがあるはずですが、完全に初期化する場合はそのオプションが選択できないか、新規インストールとして進みます。ここで誤ってボリュームを削除したり、HDDをフォーマットしたりする指示に従わないように注意が必要です。Synology Assistantからの指示をよく確認してください。
    • インストールが完了すると、NASは再起動し、DSMの初期設定ウィザードが表示されます。管理者アカウントの作成など、必須の設定を行います。
  4. データボリュームの確認: 新しいDSMにログインできたら、ストレージマネージャーを開き、以前のデータが保存されていたボリュームが正常にマウントされているか確認します。もしマウントされていなければ、手動でのマウントやインポートが必要になる場合があります(Synologyのサポートドキュメントを参照)。データが残っていれば、共有フォルダなどを再設定することでデータにアクセスできるようになります。

クリーンインストールは強力な復旧手段ですが、リスクも伴います。実行前には可能な限りの情報収集と準備を行い、指示に注意深く従ってください。

手順11: Synologyサポートへの問い合わせ

ここまでの手順を試してもNASにアクセスできない、あるいは原因が全く分からない、物理的な故障が疑われる、といった場合は、Synologyの公式サポートに問い合わせることを検討してください。

  1. Synologyサポートサイトへのアクセス: Synologyの公式サイトからサポートページに進みます。
  2. 情報収集: お使いのNASモデル、DSMバージョン、発生している現象、試した復旧手順とその結果などを整理しておきます。NASのシリアル番号も必要になります。
  3. サポートチケットの発行: サポートチケット発行システムを通じて、状況を詳しく説明し、問い合わせを行います。スクリーンショットやログ情報(もし取得できれば)を添付すると、サポートの対応がスムーズになる場合があります。
  4. 診断ログの提供: サポートから、NASの診断ログの提出を求められる場合があります。これは、NASの内部状態やエラー情報をSynology側で解析するために使用されます。DSMにログインできる場合はログセンターからエクスポートできます。ログインできない場合でも、特定のキー操作でログを収集できる場合があります(サポートの指示に従ってください)。
  5. 修理・交換: NASが保証期間内であれば、ハードウェア故障の場合に修理や交換対応を受けられる可能性があります。

Synologyのサポートは、製品に関する専門知識を持っており、複雑な問題の解決やハードウェア故障の対応において最も頼りになります。自分でできることに限界を感じたら、迷わずプロの助けを借りましょう。

データ復旧について

Synology NASにアクセスできなくなった場合、最も懸念されるのがデータの安否でしょう。

  • データはどこにある?: 通常、Synology NASのデータは搭載しているHDD/SSDのストレージボリュームに保存されています。DSM(オペレーティングシステム)は、これらのHDD/SSDの特定領域(システムパーティション)にインストールされますが、ユーザーデータが保存されるデータボリュームとは基本的に分離されています。
  • データが保持される可能性が高いケース:
    • ネットワーク設定やPC側の問題
    • DSMの設定ミスや軽微な不具合
    • パスワード忘れ
    • RAID構成で一部のディスクが故障したが、まだ許容範囲内(デグレードモード)
    • DSMの再インストール(モード2リセット) – 通常、データボリュームは保持されます。
  • データが失われる可能性が高いケース:
    • RAID構成でないシングルディスクモデルのHDDが物理的に故障した場合
    • RAID構成で許容範囲を超える数のディスクが故障した場合(例: RAID 5で2台以上の故障)
    • ストレージプールやボリュームが完全にクラッシュした場合
    • ストレージ領域に対して、フォーマットや削除などの誤った操作を行った場合
    • NAS本体の深刻なハードウェア故障(マザーボード故障など)により、ディスクにアクセスできなくなった場合
  • 自分でHDDからデータをサルベージ: RAID構成されたSynology NASのHDDは、Linuxのext4またはbtrfsファイルシステムでフォーマットされています。Windows PCに単体で接続しても通常は直接読み取ることはできません。Linux環境(UbuntuなどのLive CD/USB、WSLなど)を用意し、そこにHDDを接続してデータを読み出す試みは可能ですが、専門知識が必要です。また、RAID構成の場合は複数台のディスクを揃えてRAIDを再構築する必要があり、非常に複雑で失敗リスクも高いです。
  • 専門のデータ復旧サービス: 自力での復旧が困難な場合や、データが非常に重要で何としても取り戻したい場合は、NASやRAIDからのデータ復旧に対応している専門業者に依頼することを検討してください。ただし、費用は高額になる傾向があります。

結論として、Synology NASのトラブルシューティングにおいて最も重要なのは、データ損失のリスクを常に意識し、データを安全に保つための操作を優先することです。安易なフォーマットや初期化は避け、可能であれば復旧作業に入る前にデータのバックアップを試みるのが理想です(アクセスできない状況では難しいですが)。

再発防止策:トラブルを未然に防ぐために

一度NASにアクセスできなくなると、その精神的な負担は大きいものです。今後のトラブルを減らし、万が一の事態に備えるために、以下の再発防止策を講じることを強くお勧めします。

  1. 定期的なバックアップの実施: これが最も重要です。
    • NAS内部のデータのバックアップ: Synology Hyper Backupを使って、NAS内のデータを外付けHDD、別のSynology NAS、またはクラウドストレージ(Synology C2 Storage, S3互換ストレージなど)に定期的にバックアップします。複数世代のバックアップを残しておくことで、過去の時点の状態に戻すことも可能です。
    • NAS自体の設定バックアップ: Hyper BackupはDSMの設定自体(ユーザー、共有フォルダ、パッケージ設定など)もバックアップできます。DSMの再インストールや移行時に役立ちます。
    • Snapshot Replicationの活用: btrfsファイルシステムを使用している場合、Snapshot Replicationを使って共有フォルダやiSCSI LUNのスナップショットを定期的に取得し、別ボリュームや遠隔地に複製することで、ランサムウェア対策や誤削除からの高速復旧に役立ちます。
  2. DSMとパッケージの定期的なアップデート: Synologyはセキュリティ脆弱性の修正や機能改善のために定期的にDSMやパッケージのアップデートをリリースしています。安定した環境を維持するため、スケジュールを設定して自動アップデートを有効にするか、定期的に手動でアップデートを確認・適用しましょう。ただし、メジャーアップデート適用前にはリリースノートを確認し、重要な変更点や既知の問題がないか確認することをお勧めします。
  3. UPS(無停電電源装置)の導入: 停電や瞬電はNASのシステムやハードディスクにダメージを与える可能性があります。UPSを導入し、NASと接続することで、停電時にはNASを安全にシャットダウンさせることができます。Synology NASは多くのUPSモデルに対応しており、USBケーブルなどで接続することで停電を検知し、自動シャットダウンを実行する設定が可能です。
  4. HDD/SSDの定期的な健康チェック: ストレージマネージャーでHDD/SSDのS.M.A.R.T.情報を定期的に確認し、劣化の兆候がないかチェックします。スケジュール設定でS.M.A.R.T.テストを自動実行することも可能です。異常が見られた場合は、故障する前に交換を検討しましょう。
  5. ネットワーク設定の見直しと文書化: 複雑なネットワーク構成やファイアウォール設定はトラブルの原因となりやすいです。設定はシンプルに保ち、必要な設定(ポート転送、ファイアウォールルール、固定IPなど)はメモや図で残しておくことをお勧めします。
  6. 管理者アカウント以外の利用制限: DSMへのログインには、強力なパスワードを設定した管理者アカウントを使用し、日常的なファイルアクセスや特定のサービス利用には、必要最低限の権限を与えた一般ユーザーアカウントを使用する運用にしましょう。これにより、誤操作やマルウェア感染による被害を最小限に抑えられます。
  7. Synology Accountと二段階認証の設定: Synology Accountを登録し、QuickConnectやDDNS、パスワードリセット機能などを有効にしておくと便利です。また、セキュリティ向上のため、管理者アカウントには必ず二段階認証を設定しましょう。
  8. 通知設定の構成: DSMの通知設定で、システムエラー(ディスクエラー、停電検知、DSMアップデート通知など)が発生した際に、メールやSMSで通知が届くように設定しておくと、問題の早期発見につながります。

これらの対策を講じることで、トラブル発生のリスクを大幅に減らし、万が一の際にも迅速かつ確実にデータを復旧できるようになります。

まとめ:焦らず、段階的に、そしてバックアップが命綱

Synology NASにアクセスできなくなったときの絶望感は、想像に難くありません。しかし、多くの場合、原因を特定し、この記事で紹介した段階的な手順を踏むことで、データは無事なまま復旧させることが可能です。

重要なのは、パニックにならず、まずは落ち着いてNASや周辺機器の状態を確認し、ネットワーク上の診断を行うことです。そして、基本的な物理接続の確認や再起動から始め、DSMへのアクセス、DSM上での診断、物理リセット、そして最終手段としてのクリーンインストールやサポートへの問い合わせ、という順番で復旧作業を進めていきましょう。

特に、物理リセット(モード1、モード2)は強力な手段ですが、その機能とリスク(特にモード2での設定初期化)を十分に理解した上で実行してください。

そして、何よりも大切なのがデータのバックアップです。日頃から定期的なバックアップを取る習慣をつけておくことが、万が一のトラブル発生時におけるデータ損失への最大の防御策となります。

この記事が、あなたのSynology NASのトラブル解決の一助となれば幸いです。困難に直面しても、一つずつ問題を切り分け、解決策を試していく粘り強さが、大切なデジタル資産を守ることにつながります。


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