【Vue.js】おすすめDatepickerライブラリ紹介と使い方
はじめに
Webアプリケーション開発において、日付の入力は非常に頻繁に求められる要件の一つです。予約システムの開始日・終了日、イベントの開催日、タスクの期限、レポートの対象期間など、ユーザーに特定の日付を選択してもらう場面は数多く存在します。
しかし、単なるテキストボックスに日付を文字列で入力させるだけでは、ユーザーは正確なフォーマットを覚える必要があったり、日付の有効性を手動で確認したりしなければならず、大きな手間と誤入力を招く原因となります。ここで力を発揮するのが、「Datepicker」(日付選択ピッカー)コンポーネントです。
Datepickerを使用することで、ユーザーは直感的なカレンダーインターフェースを通じて視覚的に日付を選択できます。これにより、入力ミスを減らし、ユーザーエクスペリエンス(UX)を大幅に向上させることができます。また、開発者側から見ても、閏年の考慮や月の最終日の判定、特定の日付の無効化といった複雑なロジックを自前で実装する必要がなくなり、開発効率が飛躍的に向上します。
Vue.jsのエコシステムには、数多くの高品質なDatepickerライブラリが存在します。それぞれが異なる特徴、機能セット、カスタマイズ性、デザインを持っています。プロジェクトの要件に最適なライブラリを選択することは、アプリケーションの品質と開発効率を大きく左右します。
本記事では、Vue.js開発者向けに、人気があり、機能的で、カスタマイズ性に優れたおすすめのDatepickerライブラリをいくつかご紹介し、それぞれの特徴、インストール方法、基本的な使い方、そして具体的なカスタマイズ方法について詳細に解説します。どのライブラリを選べば良いか迷っている方、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Vue.js向けDatepickerライブラリの主要候補
Vue.jsの世界には、様々なニーズに応えるDatepickerライブラリが豊富に存在します。UIフレームワークに組み込まれているものから、スタンドアロンで利用できるものまで多岐にわたります。プロジェクトに最適なライブラリを選ぶためには、いくつかの要素を考慮する必要があります。
ライブラリ選定の主な基準:
- Vueバージョン対応: プロジェクトがVue 2かVue 3かによって、利用できるライブラリや推奨されるバージョンが異なります。特にVue 3で開発を進める場合は、Composition APIやTypeScriptにネイティブに対応しているライブラリが望ましいでしょう。
- 機能セット: 必要な機能(単一選択、レンジ選択、複数選択、タイムピッカー、特定日の無効化・ハイライト、月/年ピッカーなど)を網羅しているか確認します。
- カスタマイズ性: デザイン(テーマ、スタイル上書き)、表示形式(日付フォーマット、言語設定)、挙動(自動クローズ、ポップアップ位置)など、どの程度柔軟にカスタマイズできるか。プロジェクトのデザインシステムに合わせる必要がある場合は特に重要です。
- 人気度とメンテナンス状況: 活発にメンテナンスされており、IssueやPull Requestが適切に管理されているか。GitHubのスター数や最終更新日などが参考になります。コミュニティが大きいほど、困ったときに情報を見つけやすくなります。
- 依存関係: 外部の大きなライブラリに依存しているか。特にUIフレームワーク(Element UI, Vuetifyなど)に依存するライブラリは、そのフレームワークを採用しているプロジェクト以外では選択肢になりにくいです。スタンドアロンのライブラリは、他のフレームワークとの組み合わせや軽量さを重視する場合に適しています。
- バンドルサイズ: アプリケーション全体のJavaScriptバンドルサイズにどの程度影響するか。パフォーマンスが重要なアプリケーションでは考慮すべき要素です。
これらの基準を踏まえ、現在Vue.js開発でよく利用されている、または特に機能が豊富な主要なDatepickerライブラリをいくつかピックアップします。
@vuepic/vue-datepicker
: モダンで機能が豊富。Vue 3に強く対応。vuejs-datepicker
: シンプルで軽量。Vue 2プロジェクトで実績多数。Vue 3にも対応。v-calendar
: カレンダー表示全般に強く、特にレンジ選択や属性によるカスタマイズが得意。- Element UIの
ElDatePicker
: Element UIを使っているなら第一候補。 - Vuetifyの
VDatePicker
: Vuetifyを使っているなら第一候補。 - Syncfusion Vue Componentsの
ejs-datepicker
/ejs-calendars
: 商用サポートが必要な場合や、Syncfusionを使っている場合。
今回は、特定のUIフレームワークに依存せず、スタンドアロンで広く利用できるライブラリに焦点を当てて詳細を解説します。具体的には、@vuepic/vue-datepicker
、vuejs-datepicker
、v-calendar
の3つを取り上げます。これらのライブラリは、それぞれ異なるアプローチと強みを持っており、多くのプロジェクトのニーズをカバーできるからです。
これらの3つのライブラリについて、簡単な比較表で特徴を整理してみましょう。
特徴 | @vuepic/vue-datepicker |
vuejs-datepicker |
v-calendar |
---|---|---|---|
Vue 2 対応 | Yes | Yes | Yes |
Vue 3 対応 | Yes (推奨) | Yes | Yes (推奨) |
主な機能 | 単一, レンジ, 複数, タイム, 月/年, 無効化, ハイライト, インライン | 単一, 無効化, ハイライト, 月/年, インライン | 単一, レンジ, 複数, 無効化, 利用可能日, 属性によるカスタマイズ, ポップオーバー, インライン |
カスタマイズ性 | 高い (豊富なProps, Slots, CSS variables) | 中程度 (Props, Classes) | 高い (Props, Slots, Attributes System, CSS variables) |
モダンさ/メンテ | 高い (活発にメンテ) | 中程度 (基本的なメンテ) | 高い (活発にメンテ) |
依存関係 | なし | なし | なし |
特徴的な機能 | タイムピッカー併用, 多様なフォーマット, CSS変数 | シンプル, 軽量 | 属性システム, レンジ選択の柔軟性, ポップオーバー |
学習コスト | 中程度 | 低い | 中程度 (属性システム) |
この比較を踏まえ、それぞれのライブラリについて詳しく見ていきましょう。
詳細解説: @vuepic/vue-datepicker
@vuepic/vue-datepicker
は、Vue 3環境で利用することを特に意識して開発された、モダンで機能豊富なDatepickerライブラリです。単一の日付選択だけでなく、日付レンジ選択、複数日付選択、そしてタイムピッカーとの連携も可能です。デザインも洗練されており、カスタマイズ性も高いため、多くのアプリケーションの要件を満たすことができます。
特徴
- Vue 3対応: Composition APIやTypeScriptフレンドリーに設計されています。もちろんVue 2でも利用可能です。
- 多機能: 単一、レンジ、複数選択、タイムピッカー、月/年選択など、様々なモードをサポート。
- 柔軟なフォーマット: 日付や時間の表示フォーマットを細かく指定できます。
- 国際化対応: 多言語に対応しており、日本語表示も容易です。
- カスタマイズ性: 豊富なプロパティ、スロット、CSS変数によるスタイリングが可能です。
- アクセシビリティ: WAI-ARIAに準拠した設計がなされています。
インストール
npmまたはyarnを使ってインストールします。
“`bash
npm install @vuepic/vue-datepicker
または
yarn add @vuepic/vue-datepicker
“`
基本的な使い方(単一選択)
基本的な日付選択ピッカーとして利用する手順です。
- インポート: コンポーネントとスタイルシートをインポートします。
- コンポーネント登録: テンプレートで使用できるようにコンポーネントを登録します。
- テンプレートでの利用:
<DatePicker>
タグを配置し、v-model
で選択された日付をバインディングします。
Vue 3の<script setup>
構文を使った例:
“`vue
単一日付選択
選択された日付: {{ date }}
“`
この例では、date
というref変数に選択された日付が自動的に格納されます。デフォルトでは、date
にはJavaScriptの Date
オブジェクトまたは文字列が設定されます。フォーマットやデータ形式はプロパティで制御できます。
主要プロパティ
プロパティ名 | 型 | デフォルト | 説明 |
---|---|---|---|
v-model |
Date | string | number | Array | null | null |
選択された日付データをバインディング。形式は format やモードによって変わります。 |
dark |
boolean | false |
ダークモードを有効にします。 |
enable-time-picker |
boolean | true |
時間選択ピッカーを表示するかどうか。(単一選択モード時) |
range |
boolean | false |
日付レンジ選択モードを有効にします。v-model は [start, end] の配列になります。 |
multi-dates |
boolean | false |
複数日付選択モードを有効にします。v-model は Date[] の配列になります。 |
locale |
string | 'en-US' |
ロケールを設定します。例: 'ja' 。 |
format |
string | (date: Date) => string | 'yyyy/MM/dd' |
v-model の日付データのフォーマットや、インプットフィールドの表示フォーマットを指定します。関数も指定可。 |
disabled-dates |
Array | Function | [] |
選択不可にする日付を指定します。Date[] , { start, end }[] , (date: Date) => boolean など。 |
min-date |
Date | string | number | null |
選択可能な最小日付を指定します。 |
max-date |
Date | string | number | null |
選択可能な最大日付を指定します。 |
placeholder |
string | – | インプットフィールドのプレースホルダーテキストを指定します。 |
clearable |
boolean | true |
選択された値をクリアするボタンを表示するかどうか。 |
auto-apply |
boolean | false |
日付を選択したらピッカーを自動的に閉じるかどうか。 |
week-start |
number | 1 |
週の開始曜日を指定します。(0:日, 1:月, …, 6:土)。 |
month-change-on-scroll |
boolean | true |
マウスホイールスクロールで月を変更するかどうか。 |
inline |
boolean | false |
ポップアップではなく、常にカレンダーを表示するかどうか。 |
position |
string | 'auto' |
ポップアップ表示位置 (‘auto’, ‘left’, ‘right’, ‘center’, ‘top’, ‘bottom’)。 |
主要イベント
イベント名 | 引数 | 説明 |
---|---|---|
@update:model-value |
value (v-modelと同じ型) |
v-model の値が変更されたときに発生。 |
@closed |
なし | ピッカーが閉じられたときに発生。 |
@opened |
なし | ピッカーが開かれたときに発生。 |
@text-input |
value (string) |
インプットフィールドに直接入力されたとき。 |
@internal-model-change |
value (Date | Date[]) |
内部的なモデル値が変更されたときに発生。 |
スロット
ピッカーの様々な部分をカスタムコンテンツに置き換えるためのスロットが提供されています。例えば、インプット部分やカレンダーのヘッダー、ナビゲーションなどをカスタマイズできます。
具体的なカスタマイズ例
1. 日付フォーマットの変更
format
プロパティを使用して、表示される日付の形式を変更できます。標準的な日付フォーマット文字列(例: yyyy/MM/dd
, dd-MM-yyyy HH:mm
)を使用できます。
“`vue
日付フォーマットの変更
ISO 8601 形式: {{ selectedDate }}
時間を含む形式: {{ selectedDate }}
“`
2. レンジ選択の有効化
range
プロパティを true
に設定すると、日付レンジ選択モードになります。v-model
は [開始日, 終了日]
の配列になります。
“`vue
日付レンジ選択
選択された期間: {{ dateRange }}
“`
3. タイムピッカーの有効化
enable-time-picker
プロパティを true
に設定すると、日付選択に加えて時間選択ピッカーが表示されます。(range
が false
の場合)
“`vue
日付&時間選択
選択された日時: {{ dateTime }}
“`
4. 特定の日付を無効にする
disabled-dates
プロパティを使用して、選択不可にする日付を指定できます。日付の配列、日付レンジの配列、または日付オブジェクトを受け取る関数を指定できます。
“`vue
日付の無効化
特定の日付を無効化
特定の期間を無効化
土日を無効化
“`
disabled-dates
は配列として複数の条件を組み合わせることも可能です。
5. 初期値の設定
v-model
に初期値を設定することで、ピッカーを開いたときに特定の日付や期間が選択されている状態にできます。
“`vue
初期値の設定
単一選択(現在日)
レンジ選択(2024/01/01~2024/01/10)
“`
6. 言語設定(日本語化)
locale
プロパティに 'ja'
を指定することで、曜日や月名などを日本語表示にできます。
“`vue
日本語化
選択された日付: {{ dateJa }}
“`
7. インライン表示
inline
プロパティを true
にすると、インプットフィールドをクリックしてポップアップ表示するのではなく、常にカレンダーがコンポーネントとして表示されます。
“`vue
インライン表示
選択された日付: {{ inlineDate }}
“`
8. スタイルの上書き
CSS変数(CSS Custom Properties)を使用するか、SCSS variablesを上書きすることで、ピッカーのデザインを細かくカスタマイズできます。
“`vue
カスタムスタイル
“`
このように、@vuepic/vue-datepicker
は非常に多くのプロパティとカスタマイズオプションを提供しており、モダンなアプリケーション開発において強力なツールとなります。特にVue 3環境での利用を考えている場合、まず第一に検討すべきライブラリと言えるでしょう。
利点と考慮事項
- 利点:
- Vue 3に最適化されており、 Composition APIやTypeScriptとの相性が良い。
- 単一、レンジ、複数、時間選択など、幅広い機能に対応。
- デザインがモダンで洗練されている。
- カスタマイズ性が非常に高い(プロパティ、スロット、CSS変数)。
- 活発にメンテナンスされている。
- 考慮事項(欠点となりうる点):
- 多機能ゆえに、学習コストはシンプルなライブラリに比べてやや高い。
- CSS変数によるカスタマイズは強力だが、使用できる変数を把握する必要がある。
詳細解説: vuejs-datepicker
vuejs-datepicker
は、シンプルで軽量なDatepickerライブラリです。Vue 2のプロジェクトで広く利用されてきましたが、Vue 3にも対応しています。必要最低限の機能で十分な場合や、既存のVue 2プロジェクトにDatepickerを追加したい場合に適しています。
特徴
- シンプルかつ軽量: 余計な機能がなく、導入が容易です。
- Vue 2/3対応: どちらのバージョンでも利用可能です。
- 基本的な機能: 単一日付選択、特定日の無効化・ハイライト、表示形式の制御など、基本的な機能を備えています。
- 国際化対応: 多言語に対応しています。
- カスタマイズ: 主にクラスや一部プロパティでスタイルを調整できます。
インストール
npmまたはyarnを使ってインストールします。
“`bash
npm install vuejs-datepicker
または
yarn add vuejs-datepicker
“`
基本的な使い方
- インポート: コンポーネントをインポートします。スタイルはデフォルトで組み込まれているか、別途CSSを読み込む場合がありますが、基本的にはコンポーネントをインポートするだけで使用できます。言語ファイルが必要な場合はそれもインポートします。
- コンポーネント登録: テンプレートで使用できるようにコンポーネントを登録します。
- テンプレートでの利用:
<datepicker>
タグを配置し、v-model
で選択された日付をバインディングします。
Vue 3の<script setup>
構文を使った例:
“`vue
単一日付選択 (vuejs-datepicker)
選択された日付: {{ date }}
“`
vuejs-datepicker
は、デフォルトでJavaScriptの Date
オブジェクトを v-model
にバインディングします。
主要プロパティ
プロパティ名 | 型 | デフォルト | 説明 |
---|---|---|---|
v-model |
Date | null | null |
選択された日付データをバインディング。通常 Date オブジェクト。 |
language |
Object | en |
ロケールオブジェクトを指定します。 |
format |
string | Function | 'd MMM yyyy' |
表示される日付のフォーマットを指定します。文字列または関数。 |
disabled-dates |
Object | {} |
選択不可にする日付を指定します。to , from , dates , days など。 |
highlighted |
Object | {} |
ハイライト表示する日付を指定します。to , from , dates , days など。 |
minimumView |
string | 'day' |
表示できる最小のビューレベル (‘day’, ‘month’, ‘year’)。 |
maximumView |
string | 'year' |
表示できる最大のビューレベル (‘day’, ‘month’, ‘year’)。 |
initialView |
string | 'day' |
最初に表示されるビューレベル (‘day’, ‘month’, ‘year’)。 |
placeholder |
string | – | インプットフィールドのプレースホルダーテキストを指定します。 |
clearButton |
boolean | false |
選択された値をクリアするボタンを表示するかどうか。 |
calendarClass |
string | Object | Array | null |
カレンダーコンテナに適用するCSSクラス。 |
inputClass |
string | Object | Array | null |
インプットフィールドに適用するCSSクラス。 |
wrapperClass |
string | Object | Array | null |
コンポーネント全体のラッパーに適用するCSSクラス。 |
mondayFirst |
boolean | false |
週の開始曜日を月曜日 (true) または日曜日 (false) にするかどうか。 |
inline |
boolean | false |
ポップアップではなく、常にカレンダーを表示するかどうか。 |
主要イベント
イベント名 | 引数 | 説明 |
---|---|---|
@selected |
date |
日付が選択されたときに発生。 |
@opened |
なし | ピッカーが開かれたときに発生。 |
@closed |
なし | ピッカーが閉じられたとき。 |
@input |
value |
インプット値が変更されたとき。 |
@cleared |
なし | 値がクリアされたとき。 |
具体的なカスタマイズ例
1. 日付フォーマットの変更
format
プロパティで表示形式を指定できます。
“`vue
日付フォーマットの変更 (vuejs-datepicker)
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
2. 特定の日付を無効にする/ハイライトする
disabled-dates
および highlighted
プロパティを使用します。これらのプロパティは、to
, from
, dates
, days
などのプロパティを持つオブジェクトを受け取ります。
“`vue
日付の無効化・ハイライト (vuejs-datepicker)
選択された日付: {{ selectedDate }}
“`
disabled-dates
や highlighted
では、特定の期間、特定の曜日、または特定の日付リストなど、複数の方法で対象を指定できます。
3. 言語設定(日本語化)
ロケールオブジェクトをインポートし、language
プロパティに渡します。
“`vue
日本語化 (vuejs-datepicker)
選択された日付: {{ dateJa }}
“`
4. スタイルの適用
calendarClass
, inputClass
, wrapperClass
プロパティを使って、要素にカスタムCSSクラスを適用し、スタイルを調整できます。
“`vue
カスタムスタイル (vuejs-datepicker)
選択された日付: {{ date }}
“`
vuejs-datepicker
は、デフォルトのCSSスタイルを直接上書きすることも可能ですが、クラスを適用する方が管理しやすいでしょう。ただし、内部要素のスタイル調整は、ライブラリが生成するクラス構造を理解する必要があります。
利点と考慮事項
- 利点:
- 非常にシンプルで軽量。
- Vue 2プロジェクトで実績があり、移行が容易な場合がある。
- 基本的な日付選択機能で十分なら、導入・学習コストが低い。
- 考慮事項(欠点となりうる点):
- 機能が限定的(レンジ選択やタイムピッカーがないなど)。
- カスタマイズ性は
@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
に比べて低い。 - メンテはされているものの、新しい機能の追加や活発な開発は他のライブラリに比べて少ない傾向がある。
詳細解説: v-calendar
v-calendar
は、単なるDatepickerにとどまらず、カレンダー表示全般を扱うためのライブラリです。月表示、週表示、日表示など様々なカレンダービューをサポートし、特に日付のレンジ選択や、特定の日付に「属性」(Attribute)を付けて視覚的に情報を表示する機能が強力です。Datepickerとしては、ポップアップ表示とインライン表示の両方に対応しています。
特徴
- カレンダー全般: 日付ピッカーだけでなく、月間カレンダー、週間カレンダーとしても利用可能。
- 属性システム: 特定の日付に対して、ハイライト、ドット、バー、ポップオーバーなどの「属性」を設定し、情報を視覚的に表示できます。(例: 予約済み、休日、イベントなど)
- レンジ選択: 高機能なレンジ選択に対応しています。
- 柔軟な表示: ポップアップまたはインラインで表示できます。
- カスタマイズ性: プロパティ、スロット、そして強力な属性システムによるカスタマイズが可能です。
- 国際化対応: 多言語に対応しています。
インストール
npmまたはyarnを使ってインストールします。
“`bash
npm install v-calendar
または
yarn add v-calendar
“`
プラグインとしてVueにインストールする必要があります。
“`js
// main.js または main.ts
import { createApp } from ‘vue’;
import App from ‘./App.vue’;
import VCalendar from ‘v-calendar’;
import ‘v-calendar/style.css’; // スタイルシートをインポート
const app = createApp(App);
// v-calendar プラグインをインストール
app.use(VCalendar, {}); // オプションは{}で指定可
app.mount(‘#app’);
“`
基本的な使い方(単一選択、レンジ選択)
プラグインとしてインストールされているため、個別のコンポーネント登録は不要です。DatePicker
コンポーネントをテンプレートで直接使用できます。
Vue 3の<script setup>
構文を使った例:
“`vue
単一日付選択 (v-calendar)
選択された日付: {{ singleDate }}
日付レンジ選択 (v-calendar)
選択された期間: {{ rangeDates }}
“`
単一選択の場合は mode="date"
プロパティ(デフォルト)、レンジ選択の場合は is-range
プロパティを使用します。v-model
のデータ形式も異なります。単一選択は Date
オブジェクト、レンジ選択は { start: Date, end: Date }
オブジェクトが一般的です。
主要プロパティ (DatePicker コンポーネント)
v-calendar
は DatePicker
コンポーネントを使用します。多くのプロパティは v-calendar
の基盤となる Calendar
コンポーネントから継承されています。
プロパティ名 | 型 | デフォルト | 説明 |
---|---|---|---|
v-model |
any | null |
選択された日付データをバインディング。形式は mode や is-range 、masks.modelValue などによって変わる。 |
mode |
string | 'date' |
ピッカーのモード (‘date’, ‘time’, ‘datetime’, ‘time’, ‘weeks’, ‘months’, ‘years’, ‘date&time’)。通常は ‘date’。 |
is-range |
boolean | false |
日付レンジ選択モードを有効にします。 |
is-inline |
boolean | false |
ポップアップではなく、常にカレンダーを表示するかどうか。 |
is-expanded |
boolean | false |
インライン表示時、親コンテナに合わせて幅を100%にするか。 |
masks |
Object | {} |
日付フォーマットやパース形式を定義します。masks.input , masks.modelValue など。 |
locale |
string | Object | 'en-US' |
ロケールを設定します。例: 'ja-JP' 。 |
disabled-dates |
Array | Function | null |
選択不可にする日付を指定します。Dateオブジェクト、レンジ、属性オブジェクトの配列など。 |
available-dates |
Array | Function | null |
選択可能にする日付を指定します。(disabled-dates とは排他利用)。 |
attributes |
Array | [] |
特定の日付に属性(ハイライト、ドット、ポップオーバーなど)を追加します。詳細後述。 |
min-date |
Date | string | number | null |
選択可能な最小日付を指定します。 |
max-date |
Date | string | number | null |
選択可能な最大日付を指定します。 |
popover |
Object | {} |
ポップオーバーの挙動や位置を制御します。visibility , placement など。 |
clearable |
boolean | true |
選択された値をクリアするボタンを表示するかどうか。 |
placeholder |
string | – | インプットフィールドのプレースホルダーテキストを指定します。 |
select-attribute |
Object | null |
日付選択時に適用される属性を定義します。デフォルトの選択スタイルを上書き。 |
drag-attribute |
Object | null |
レンジ選択時のドラッグ範囲に適用される属性を定義します。 |
主要イベント
@update:model-value
以外にも、カレンダー自体のイベント(@dayclick
, @daymouseover
など)も利用できます。
イベント名 | 引数 | 説明 |
---|---|---|
@update:model-value |
value |
v-model の値が変更されたときに発生。 |
@dayclick |
{ id, date, ... } |
カレンダー上の日がクリックされたときに発生。 |
@popover-will-show |
{ event } |
ポップオーバーが表示される前に発生。 |
@popover-did-show |
{ event } |
ポップオーバーが表示された後に発生。 |
@popover-will-hide |
{ event } |
ポップオーバーが非表示になる前に発生。 |
@popover-did-hide |
{ event } |
ポップオーバーが非表示になった後に発生。 |
属性システムによるカスタマイズ
v-calendar
の最も強力な機能の一つが属性システムです。attributes
プロパティに属性オブジェクトの配列を渡すことで、特定の日付や日付レンジに様々な視覚的表現(ハイライト、ドット、バー、ポップオーバー)を追加したり、無効化したりできます。
属性オブジェクトの基本構造:
js
{
key: 'unique-key', // 必須: 属性を識別するための一意なキー
highlight?: boolean | string | Object, // 特定の日付をハイライト
dot?: boolean | string | Object, // 特定の日付にドットを表示
bar?: boolean | string | Object, // 特定の日付にバーを表示
popover?: Object, // 特定の日付にマウスオーバーまたはクリックでポップオーバーを表示
dates?: Date | string | number | Object | Array, // 属性を適用する日付または日付のリスト
excludeDates?: Date | string | number | Object | Array, // 属性の適用から除外する日付
order?: number, // 同じ日に複数の属性がある場合の表示順
customData?: any // カスタムデータを持たせる
}
highlight
, dot
, bar
は、true
(デフォルトスタイル), 色文字列, またはスタイルを詳細に定義するオブジェクトを指定できます。
dates
には、単一のDateオブジェクト、日付文字列、数値、日付レンジオブジェクト { start, end }
、特定曜日の指定 { weekdays: [] }
、またはこれらの組み合わせを含む配列を指定できます。
例:特定の日をハイライトし、別の日にドットを表示する
“`vue
属性システム (v-calendar)
選択された日付: {{ selectedDate }}
インライン表示とレンジ選択、属性
選択された期間: {{ rangeDates }}
“`
属性システムは非常に強力で、カレンダー上に様々な情報を視覚的に表示するのに役立ちます。予約可能な日、予約済みの枠、イベントのある日などを、色分けや記号で表現できます。
5. 言語設定(日本語化)
locale
プロパティにロケールコードを指定するか、ロケールオブジェクトを渡します。公式ドキュメントでサポートされているロケールコードを確認してください。日本語は 'ja-JP'
が推奨されています。
“`vue
日本語化 (v-calendar)
選択された日付: {{ dateJa }}
“`
6. スタイルの上書き
CSS変数(CSS Custom Properties)や、提供されているSCSS変数、または通常のCSSセレクターを使ってスタイルを調整できます。
“`vue
カスタムスタイル (v-calendar)
“`
CSS変数は v-calendar
のデザインシステムに基づいており、様々な要素の色や間隔などを一貫して変更するのに便利です。より細かい調整が必要な場合は、開発者ツールで要素のクラスを確認し、CSSセレクターで上書きします。
利点と考慮事項
- 利点:
- カレンダー表示全般を扱える強力なライブラリ。
- 属性システムによる情報の視覚化が非常に強力。
- レンジ選択機能が充実している。
- カスタマイズ性が高い(属性、スロット、CSS変数)。
- 活発にメンテナンスされている。
- 考慮事項(欠点となりうる点):
- シンプルさに欠け、学習コストは他のライブラリより高い傾向がある(特に属性システム)。
- Datepickerとしてのみ使う場合は、機能が多すぎる可能性がある。
- プラグインとしてのインストールが必要。
どのライブラリを選ぶか? 選択ガイド
ここまで3つの主要なDatepickerライブラリについて詳しく見てきました。それぞれに強みと弱みがあり、プロジェクトの要件によって最適な選択肢は異なります。以下のポイントを考慮して、あなたのプロジェクトに最も合ったライブラリを選びましょう。
-
あなたのVueバージョンは?
- Vue 3で新規開発する場合:
@vuepic/vue-datepicker
またはv-calendar
がおすすめです。どちらもVue 3に最適化されており、活発にメンテナンスされています。 - Vue 2プロジェクトの場合:
vuejs-datepicker
はVue 2での実績が豊富でシンプルです。ただし、よりモダンな機能やカスタマイズが必要なら、Vue 3対応の@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
もVue 2で利用可能か確認し、検討する価値があります。(Vue 2対応は公式ドキュメントで確認必須)
- Vue 3で新規開発する場合:
-
どんな機能が必要?
- 基本的な日付選択(単一)のみで十分、シンプルさを重視:
vuejs-datepicker
。 - 日付レンジ選択が必要:
@vuepic/vue-datepicker
またはv-calendar
。レンジ選択機能はどちらも強力ですが、v-calendar
の属性システムはレンジに対する表現力を高めます。 - 複数日付選択が必要:
@vuepic/vue-datepicker
またはv-calendar
(属性と組み合わせて実現する場合など)。 - 日付だけでなく時間も選択したい (DateTime picker):
@vuepic/vue-datepicker
(enable-time-picker)。 - 特定の日付を無効化したい: どのライブラリでも可能です。設定方法はライブラリによって異なります。
- 特定の日付をハイライトしたり、追加情報を表示したい (イベント、予約状況など):
v-calendar
の属性システムが最も強力で柔軟です。@vuepic/vue-datepicker
もハイライト機能はあります。
- 基本的な日付選択(単一)のみで十分、シンプルさを重視:
-
どの程度カスタマイズが必要?
- デザインを細かく調整したい、自社のデザインシステムに合わせたい:
@vuepic/vue-datepicker
またはv-calendar
が優れています。どちらもCSS変数や詳細なプロパティを提供しています。 - 国際化(多言語対応)が必要: どのライブラリも主要言語に対応しています。日本語対応も問題ありません。
- 表示形式(フォーマット)を柔軟に変えたい:
@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
は豊富なフォーマットオプションがあります。 - ポップアップの表示位置などを制御したい:
@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
にオプションがあります。
- デザインを細かく調整したい、自社のデザインシステムに合わせたい:
-
UIフレームワークを使っているか?
- Element UI, Vuetify, Ant Design Vue などのUIフレームワークを既に使用している場合、そのフレームワークが提供するDatepickerコンポーネントを利用するのが最も簡単で、デザインの統一性も保てます。例えば、Element UI なら
ElDatePicker
、Vuetify ならVDatePicker
を検討しましょう。これらのコンポーネントは、通常フレームワーク全体のデザインシステムに統合されています。 - スタンドアロンのライブラリは、特定のUIフレームワークに依存しないため、デザインを自由にカスタマイズしたい場合や、軽量なライブラリを探している場合に適しています。
- Element UI, Vuetify, Ant Design Vue などのUIフレームワークを既に使用している場合、そのフレームワークが提供するDatepickerコンポーネントを利用するのが最も簡単で、デザインの統一性も保てます。例えば、Element UI なら
-
ライブラリのメンテ状況は気になるか?
- 長期的なプロジェクトや、最新のVueバージョンで開発する場合、活発にメンテナンスされている
@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
が安心です。vuejs-datepicker
は基本的なメンテはされていますが、大きな機能追加は期待しにくいかもしれません。
- 長期的なプロジェクトや、最新のVueバージョンで開発する場合、活発にメンテナンスされている
推奨ユースケースのまとめ:
@vuepic/vue-datepicker
: Vue 3でモダンな開発をしており、単一/レンジ/複数/タイムピッカーなど多機能かつデザイン性の高いDatepickerを求めているプロジェクト。vuejs-datepicker
: シンプルな単一選択機能のみで十分、軽量さを重視、または既存のVue 2プロジェクトで実績のあるライブラリを使いたいプロジェクト。v-calendar
: Datepickerとしてだけでなく、カレンダービュー自体に情報を表示したい、予約システムなどで複雑な日付の属性管理や高機能なレンジ選択が必要なプロジェクト。
これらのポイントを考慮することで、あなたのプロジェクトに最適なDatepickerライブラリを見つけることができるはずです。
よくある質問とトラブルシューティング
Datepickerライブラリを利用する際によく遭遇する問題や、その解決策についていくつか触れておきます。
Q1: v-model
の初期値が反映されない、または値が更新されない。
- A:
v-model
にバインディングしているデータ(refやreactive)の型が、ライブラリが期待する型と一致しているか確認してください。多くのライブラリはDate
オブジェクトを期待しますが、文字列や数値、あるいは特定のオブジェクト形式(例:v-calendar
のレンジ選択{ start, end }
)である場合もあります。また、初期値がnull
の場合、ピッカーは何も選択されていない状態になります。特定の初期日付を表示したい場合は、v-model
にその日付のDate
オブジェクトなどをセットしてください。Vue 3の場合はref(new Date())
のように記述します。
Q2: 日付のフォーマットを変えたい(例: yyyy/MM/dd
にしたい)。
- A: 各ライブラリが提供する
format
または同等のプロパティを使用します。指定できるフォーマット文字列はライブラリによって若干異なる場合があるため、公式ドキュメントのフォーマットに関する説明を参照してください。@vuepic/vue-datepicker
はformat="yyyy/MM/dd"
、vuejs-datepicker
はformat="yyyy/MM/dd"
、v-calendar
はmasks.input
やmasks.modelValue
で指定します。
Q3: 特定の日付を選択不可にしたい(例: 過去の日付、特定の休日)。
- A: 各ライブラリが提供する
disabled-dates
または同等のプロパティを使用します。このプロパティは、日付の配列、期間のオブジェクト、または日付を判定する関数など、様々な形式で無効化する日付を指定できます。具体的な指定方法はライブラリのドキュメントを確認してください。
Q4: スタイルの上書きが効かない。
- A: CSSのSpecificity(詳細度)の問題や、スタイルのスコープが原因である可能性が高いです。
- CSS変数:
@vuepic/vue-datepicker
やv-calendar
のようにCSS変数をサポートしている場合、変数を定義している要素(通常はピッカーのラッパー要素)の親要素などに変数を設定することで、子孫要素にスタイルが適用されます。 - 通常のCSS/SCSS: ライブラリが生成するHTML要素のクラス名を確認し、より詳細度の高いセレクターでスタイルを定義します。Vueの
<style scoped>
を使用している場合、ライブラリのコンポーネント内部の要素にはスコープ付きスタイルは適用されません。グローバルスタイルとして定義するか、:deep()
や::v-deep()
(Vue 3) />>>
(Vue 2) ディレクティブを使用して子コンポーネント内の要素にスタイルを適用する必要があります。(例:::v-deep(.vc-container .vc-header) { ... }
) - スタイルシートの読み込み順序も確認してください。ライブラリのデフォルトスタイルシートの 後に カスタムスタイルシートが読み込まれるように配置する必要があります。
- CSS変数:
Q5: 日付を選択してもピッカーが閉じない。
- A:
auto-apply
や同等のプロパティがtrue
に設定されているか確認してください。デフォルトでは自動的に閉じない設定になっているライブラリもあります。
Q6: レンジ選択で、開始日より前の日付を終了日に選べてしまう。
- A: ライブラリのレンジ選択機能が、開始日と終了日の順序を自動的に調整するか、または選択範囲を制限するオプションがあるか確認してください。多くのライブラリは自動的に調整するか、または選択できないように制御します。
v-calendar
のレンジ選択はドラッグ選択などもサポートしており、直感的に操作できます。
これらの問題は、公式ドキュメントを丁寧に読むことで解決できる場合がほとんどです。不明な点があれば、ライブラリのIssueトラッカーやVue.jsのコミュニティフォーラムで質問してみましょう。
まとめ
本記事では、Vue.jsで利用できるおすすめのDatepickerライブラリとして、@vuepic/vue-datepicker
、vuejs-datepicker
、v-calendar
の3つを詳しく解説しました。
@vuepic/vue-datepicker
は、Vue 3に最適化されたモダンで多機能なライブラリです。単一、レンジ、複数、時間選択など幅広いニーズに対応し、デザイン性とカスタマイズ性も高い点が魅力です。vuejs-datepicker
は、シンプルで軽量なライブラリです。基本的な日付選択機能で十分な場合や、既存のVue 2プロジェクトに最小限の変更で導入したい場合に適しています。v-calendar
は、カレンダー表示全般に強く、特に属性システムを使った日付への情報表示や、柔軟なレンジ選択が得意なライブラリです。日付ピッカーとしてだけでなく、本格的なカレンダー機能が必要な場合に強力な選択肢となります。
どのライブラリを選ぶかは、プロジェクトのVueバージョン、必要な機能、カスタマイズの要件、そして開発チームの慣れなどを総合的に判断して決定するのが良いでしょう。特定のUIフレームワーク(Element UI, Vuetifyなど)を使用している場合は、そのフレームワークが提供するDatepickerを利用するのが最も手軽でデザインも統一されます。
適切なDatepickerライブラリを導入することで、ユーザーは快適に日付を入力できるようになり、開発者は日付に関する煩雑な処理から解放されます。ぜひ、この記事を参考に、あなたのプロジェクトに最適なDatepickerを見つけ、より良いUI/UXを実現してください。
今後のVue.jsエコシステムにおいても、新しい機能や改善が続けられるDatepickerライブラリが登場することが期待されます。必要に応じて、最新の情報を公式ドキュメントなどで確認しながら、最適なツールを選択していきましょう。