魅力とインストール方法:新世代テキストエディタ Zed を徹底解説
プログラマーにとって、テキストエディタは最も基本的なツールであり、その選択は日々の生産性や開発体験に大きく影響します。歴史を振り返れば、古くはVimやEmacsといった強力なエディタが開発者の思想を形作り、その後Sublime Textが高速で洗練されたUIで人気を博しました。そして、近年はElectronベースのモダンなエディタ、特にVisual Studio Code(VS Code)が圧倒的なシェアを誇り、多くの開発者にとってデファクトスタンダードとなっています。
しかし、技術の進化は止まりません。VS Codeがその豊富な機能と拡張性で多くの開発者の心を掴む一方で、Electronベースであるがゆえのパフォーマンスの限界や、巨大化するプロジェクトでの動作の重さなどが指摘されることもありました。そんな中、新たなアプローチで「理想のテキストエディタ」を目指すプロジェクトが誕生しました。それが、今回ご紹介するZedです。
Zedは、Atomエディタやその基盤技術であるTree-sitterの開発者たちが中心となり、Rust言語を用いてゼロから開発された新世代のテキストエディタです。発表当初から、その驚異的なパフォーマンスとモダンな設計、そして革新的な共同編集機能で大きな注目を集めています。
この記事では、Zedの何がそれほど魅力的なのか、どのような機能を持っているのか、そして実際にどのようにインストールして使い始めるのかについて、詳細に掘り下げていきます。他の主要なエディタと比較しながら、Zedが開発者のワークフローにどのような変革をもたらしうるのかについても考察します。
Zedの根幹を支える技術と設計思想:なぜ速いのか?
Zedの最も大きな魅力の一つは、その圧倒的なパフォーマンスです。大規模なコードベースを開いた時の起動速度、ファイルの読み込み速度、カーソルの移動、スクロール、検索、置換など、あらゆる操作が驚くほどスムーズで高速です。この高速性は、以下の設計思想と採用技術によって実現されています。
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Rust言語での開発:
Zedは、システムプログラミング言語として近年注目を集めているRustで書かれています。Rustはメモリ安全性と並列処理に優れており、ガベージコレクションを持たないため、予測可能な高速パフォーマンスを実現できます。エディタのようにI/O処理や大量のテキストデータを扱うアプリケーションにおいて、Rustの特性は大きなアドバンテージとなります。クラッシュしにくく、メモリ消費も抑えられるため、長時間の使用でも安定した動作が期待できます。 -
GPUレンダリング:
多くのテキストエディタはCPUでUIやテキストの描画を行いますが、Zedは描画処理をGPUにオフロードしています。GPUは本来、画像や映像の高速描画に特化したプロセッサであり、テキストレンダリングのような並列処理に適したタスクを効率的にこなすことができます。これにより、特に長いファイルをスクロールしたり、大きなウィンドウで表示したりする際に、驚くほど滑らかで応答性の高い描画を実現しています。複雑な構文ハイライトやミニマップ表示なども、GPUの力を借りることでパフォーマンスへの影響を最小限に抑えています。 -
インメモリでのデータ構造:
Zedは、開いているファイルの内容やプロジェクト全体のシンボル情報などを効率的なデータ構造でメモリ上に保持します。これにより、ファイル内のテキスト検索や置換、プロジェクト全体のシンボル検索(Go To Definition, Find All Referencesなど)といった操作が、ディスクI/Oを最小限に抑えつつ、非常に高速に実行できます。特に、大量のファイルを含む大規模なリポジトリを扱う際に、その差は歴然と現れます。 -
効率的な並列処理:
Rustの強力な並列処理能力を活かし、ファイル読み込み、構文解析(Tree-sitter)、LSP通信、UIレンダリングといった異なるタスクを複数のコアで並列に実行します。これにより、ある操作が他の操作をブロックすることなく、全体として高い応答性を維持できます。例えば、ファイルの保存中に構文解析が走り、同時にユーザーが別の場所をスクロールするといった状況でも、それぞれがスムーズに動作します。
これらの技術的な要素が組み合わさることで、Zedはこれまでのテキストエディタでは到達しえなかったレベルのパフォーマンスを実現しています。特に、Electronベースのエディタで大規模プロジェクトを扱った際の「もっさり感」に不満を感じていた開発者にとって、Zedのパフォーマンスは文字通り「衝撃的」かもしれません。
Zedの魅力:パフォーマンスだけではない、モダンなUI/UXと革新的な機能
Zedの魅力は、単に高速であるという点に留まりません。最新のテキストエディタに求められる洗練されたUI/UXと、Zedならではの革新的な機能も大きな特徴です。
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洗練されたミニマリストUI:
Zedのユーザーインターフェースは、非常に洗練されており、余分な要素が削ぎ落とされたミニマリストなデザインです。macOSのネイティブアプリケーションのような、高い整合性と美しいタイポグラフィが特徴です。高速な起動時間も相まって、エディタを開いてすぐに作業に取り掛かることができます。UIテーマもダークモードとライトモードが用意されており、好みに合わせて選択できます。 -
直感的な操作感と高いカスタマイズ性:
VS Codeをはじめとするモダンなエディタに慣れているユーザーであれば、Zedの基本的な操作(ファイルツリー、コマンドパレット、タブ管理、ペイン分割など)は非常に直感的に理解できるでしょう。キーバインディングも豊富に用意されており、自分好みに詳細にカスタマイズすることも可能です。もちろん、Vimモードのようなエディタ固有の操作モードもサポートされています。 -
強力な開発支援機能:
- Tree-sitterによる高精度な構文解析: Zedは、Atom開発チームが生み出したユニバーサルな構文解析ライブラリであるTree-sitterをネイティブに統合しています。Tree-sitterは、言語の構造を正確に解析し、単なる正規表現ベースのハイライトを超えた、より意味に基づいたコード理解を可能にします。これにより、高精度な構文ハイライト、コードの折りたたみ、構造的な選択、エラーや警告の正確な表示などが実現されます。多くの言語のパーサーが利用可能です。
- LSP (Language Server Protocol) のネイティブサポート: LSPは、Microsoftが提唱した、エディタとプログラミング言語の間に立つ通信プロトコルです。LSPサーバーを介することで、エディタは様々な言語に対して、補完、定義へのジャンプ、参照の検索、型の表示、コードフォーマット、リファクタリングといった高度な開発支援機能を共通のインターフェースで利用できるようになります。ZedはこのLSPを効率的に、そして並列に処理するように設計されており、多数の言語でリッチな開発体験を提供します。
- デバッガー機能: 多くの主要なプログラミング言語に対応したデバッガー機能も内蔵されています。ブレークポイントの設定、ステップ実行(ステップオーバー、ステップイン、ステップアウト)、変数の値の検査、コールスタックの表示などが可能です。エディタ内でデバッグが完結するため、開発フローがスムーズになります。
- Git統合: ソースコード管理システムGitとの統合機能も充実しています。ファイルの変更ステータスの表示、差分の確認、ステージング、コミット、ブランチ切り替えといった基本的なGit操作をエディタ内で行うことができます。変更箇所がサイドバーや行番号の横に視覚的に表示されるため、コードの変更履歴を追うのが容易です。
- 統合ターミナル: エディタ内でコマンドを実行できる統合ターミナル機能ももちろん搭載されています。プロジェクトのビルド、テストの実行、その他のシェルコマンドなどを、エディタを切り替えることなく実行できます。高速な描画と応答性により、ターミナル操作も快適です。
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革新的な共同編集機能 (Real-time Collaboration):
Zedの最もユニークで将来性のある機能が、内蔵されたリアルタイム共同編集機能です。これは、Google Docsのように複数のユーザーが同時に同じファイルやプロジェクトを編集できる機能です。- 同時編集: 招待したチームメンバーと、同じプロジェクトの異なるファイルを開いたり、同じファイルの異なる箇所、あるいは同じ箇所を同時に編集したりできます。各ユーザーのカーソル位置や選択範囲、入力内容がリアルタイムで共有されます。
- 音声通話: さらに、共同編集セッション中にエディタ内蔵の音声通話機能を利用できます。これにより、外部の通話ツールを使うことなく、コードを見ながら会話することができます。ペアプログラミングやモブプログラミング、コードレビューなどが格段に効率化されます。
- 共有ワークスペース: 共同編集セッションは、単にファイルを共有するだけでなく、エディタのレイアウト(開いているファイル、ペイン分割、アクティブなターミナルなど)も共有されるため、より一体感のある作業が可能です。
- 分散型のアプローチ: 共同編集機能のバックエンドは、集中型サーバーに依存するのではなく、P2Pに近い分散型のアプローチを目指しているとされています。これにより、スケーラビリティが高く、プライバシーにも配慮した共同作業環境が実現される可能性があります。
この共同編集機能は、特にリモートワークが主流となる現代において、開発チームの生産性向上に大きく貢献する可能性を秘めています。コードレビューやペアプログラミングのために画面共有ツールや外部の通話ツール、共同編集プラグインを組み合わせる必要がなく、Zed一つで完結できるのは非常に強力です。
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堅牢性と安定性:
Rustの型システムとメモリ安全性は、実行時エラーやクラッシュの可能性を低減させます。また、並列処理による設計は、あるコンポーネントでの問題がエディタ全体を停止させるリスクを減らします。ベータ版である現在の段階でも、その安定性は多くのユーザーから高く評価されています。 -
将来的なオープンソース化:
現在、Zedはクローズドソースで開発が進められていますが、開発チームは将来的にオープンソースとして公開することを明言しています。これにより、コミュニティによる開発への貢献、機能拡張、バグ修正などが期待でき、エコシステムの発展が加速する可能性があります。
これらの魅力が組み合わさることで、Zedは単なる「高速なテキストエディタ」ではなく、現代の開発ワークフローに最適化された「新世代の開発ツール」としての地位を確立しようとしています。
Zedの主な機能の詳細
Zedの魅力をさらに具体的に理解するために、主要な機能をもう少し詳しく見ていきましょう。
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ファイルとプロジェクト管理:
- ファイルツリーでプロジェクトのファイル構造を視覚的に表示。
- 新しいファイル/フォルダの作成、名前変更、移動、削除といった基本的なファイル操作。
- プロジェクトのルートフォルダを簡単に開く機能。
- お気に入りのプロジェクトを登録しておき、素早くアクセスできる機能。
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コード編集:
- シンタックスハイライト(Tree-sitterによる高精度)。
- コード補完(LSPによる言語固有の補完、スニペット)。
- 複数カーソル編集。
- 矩形選択。
- Undo/Redoの無制限ヒストリー。
- 自動インデント、コード整形(LSPや外部フォーマッター連携)。
- コードの折りたたみ。
- 行番号表示。
- ミニマップ表示(ファイル全体のコード構造を縮小表示し、高速なナビゲーションを可能にする)。
- ブレッドクラム(現在のカーソル位置がコード構造のどこにあるか階層的に表示)。
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検索とナビゲーション:
- ファイル内のテキスト検索・置換(正規表現、大文字小文字区別、単語単位)。
- プロジェクト全体のテキスト検索・置換。
- ファイル名のファジー検索(Command + P でファイル名を部分一致で検索し、素早く開く)。
- シンボル検索(Go To Symbol – ファイル内、Go To Project Symbol – プロジェクト全体)。
- 定義へのジャンプ(Go To Definition)。
- 参照の検索(Find All References)。
- 実装へのジャンプ(Go To Implementation)。
- 型の表示(Hover Type)。
- エラーや警告リストの表示と、該当箇所へのジャンプ。
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ウィンドウとペイン管理:
- タブ形式でのファイル表示。
- エディタ領域の垂直・水平分割(ペイン)。
- 複数のウィンドウを開くサポート。
- ペイン間でファイルを移動する機能。
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カスタマイズ:
- テーマの変更(UIテーマ、シンタックスハイライトテーマ)。
- フォントの変更、フォントサイズの調整。
- キーバインディングのカスタマイズ。
- 各種設定(インデント幅、自動保存、LSP設定など)のJSONファイルによる編集。
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統合機能:
- 統合ターミナル(複数のタブを持つことが可能)。
- Gitステータス表示(ファイルの変更状況を行単位で表示)。
- Git差分表示。
- Gitステージング、コミット。
- デバッガーインターフェース(ブレークポイント設定、変数ウォッチなど)。
- 共同編集機能(セッションの開始、招待、参加、音声通話)。
これらの機能は、最新の開発環境に求められる標準的な機能に加え、Tree-sitterやLSPによる高精度な言語サポート、そして何よりもその実行速度によって、非常に快適な開発体験を提供します。特に、巨大なプロジェクトを扱う際に顕著な速度差は、一度体験すると手放せなくなるかもしれません。
他の主要エディタとの比較
Zedの立ち位置をより明確にするために、現在の主要なテキストエディタと比較してみましょう。
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Visual Studio Code (VS Code):
- 強み: 圧倒的な拡張機能エコシステム、デファクトスタンダードとしての豊富な情報源とコミュニティ、多くの開発者が使い慣れているUI。Microsoftによる強力なサポート。
- 弱み: Electronベースであることによるパフォーマンスの限界、大規模プロジェクトでの動作の重さ、メモリ消費量。
- Zedとの比較: Zedはパフォーマンス、特に起動速度や大規模プロジェクトでの応答性においてVS Codeを凌駕します。内蔵の共同編集機能はVS Codeにはないユニークな強みです。一方、VS CodeはZedがまだ持っていない膨大な数の拡張機能による機能拡張性が最大の強みです。多くの言語やフレームワークに対するニッチなサポートが必要な場合は、現状ではVS Codeが有利です。しかし、コアな開発体験(コード編集、ナビゲーション、デバッグ)においては、Zedのパフォーマンスが魅力となります。
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Neovim / Vim:
- 強み: テキスト編集における比類なき効率性(キーバインディングによる一切のマウス操作なしでの編集)、軽量、高いカスタマイズ性(設定ファイルによるほぼ全ての設定変更)、サーバー越しの編集など様々な環境での利用。
- 弱み: 急峻な学習曲線(特にVim芸と呼ばれる独特の操作体系)、CUIベース(GUIフロントエンドもあるが)、設定の複雑さ、モダンな開発支援機能(LSP、デバッグなど)を構築するための手間。
- Zedとの比較: ZedはGUIエディタであり、一般的なGUIアプリケーションの操作感に近いUIを提供します。これはVim/Neovimの学習コストの高さを避けたいユーザーにとって大きな利点です。Zedのパフォーマンスは非常に高いですが、テキスト編集そのものの効率性という点では、熟練したVim/Neovimユーザーには及ばないかもしれません。しかし、LSPやデバッガーなどのモダンな開発支援機能は、Zedの方がデフォルトで統合されており、設定の手間が少ないです。ZedもVimキーバインディングをサポートしているため、VimユーザーもUIはZed、操作はVimスタイルという使い方が可能です。
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Emacs:
- 強み: Lispによる究極のカスタマイズ性(エディタ内でOSのように全てをこなせる)、歴史が長く安定している、多くの機能とパッケージ。
- 弱み: Vimと同様に学習コストが高い、デフォルト設定が古い、シングルスレッドの処理が多く重くなることがある。
- Zedとの比較: Emacsが「Lispマシン」として全てをエディタ内で完結させようとする思想であるのに対し、Zedは「高速でモダンな開発に特化したエディタ」としての本質を追求しています。ZedはEmacsほどの拡張性や多機能性はありませんが、コード編集や共同作業といった開発のコア部分に集中し、それを最高のパフォーマンスで提供することを目指しています。
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Sublime Text:
- 強み: 非常に高速な起動と動作、洗練されたUI、Pythonによる簡単なプラグイン開発。
- 弱み: 開発速度が緩やか、LSPなどのモダンな技術への対応が遅れ気味、商用ライセンスが必要。
- Zedとの比較: Sublime TextはZedが登場するまで「高速なGUIエディタ」の代表格でした。ZedはSublime Textの高速性をさらに上回る(特に大規模プロジェクトや複雑な描画において)可能性を秘めています。また、ZedはTree-sitterやLSPをネイティブにサポートしている点で、Sublime Textよりもモダンな開発支援機能を提供します。共同編集機能はZed独自の強みです。
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Atom:
- 強み: Electronベースの初期のモダンエディタ、カスタマイズ性、GitHubが開発。
- 弱み: Electronのパフォーマンス問題、開発終了済み。
- Zedとの比較: Zedの開発チームはAtomの開発者と多く重複しており、Zedは事実上Atomの思想を受け継ぎつつ、技術スタックを刷新してパフォーマンス問題を克服した後継者と言えます。ElectronからRust/GPUへの移行が、Atomの最大の弱点であったパフォーマンスを劇的に改善しました。
比較まとめ:
Zedは、これまでのエディタの良い部分(Sublime TextやAtomのモダンなUI/UX、VS CodeのLSPサポート、Vim/Emacsのカスタマイズ性の一部)を取り入れつつ、RustとGPUレンダリングによる圧倒的なパフォーマンスと、独自の革新的な共同編集機能という明確な差別化ポイントを持っています。特に、パフォーマンスと共同編集は、他の主要エディタにはないZedの大きな強みです。拡張機能の豊富さではまだVS Codeに及びませんが、コアな開発体験の快適さは非常に高いレベルにあります。
Zedのインストール方法
さて、実際にZedを試してみたいと思った方のために、インストール方法を詳しく説明します。現在のところ、ZedはmacOS専用のアプリケーションとしてリリースされています。Windows版やLinux版は将来的に対応予定とされていますが、2023年12月現在ではmacOSでしか公式に利用できません。
macOSへのインストール手順:
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Zed公式サイトにアクセス:
まずは、ウェブブラウザを開き、Zedの公式サイトにアクセスします。
https://zed.dev/ -
ダウンロードページへ移動:
公式サイトのトップページに、通常は目立つ形でダウンロードボタンが表示されています。「Download for macOS」のようなボタンを探してクリックしてください。 -
Zedアプリケーションのダウンロード:
クリックすると、Zedのディスクイメージファイル(.dmg
ファイル)のダウンロードが開始されます。ファイルのサイズは比較的小さく、すぐにダウンロードが完了するでしょう。ファイル名はZed.x.y.z.dmg
のようになります(x.y.zはバージョン番号)。 -
ダウンロードしたdmgファイルを開く:
ダウンロードが完了したら、ダウンロードフォルダなどにあるZed.dmg
ファイルをダブルクリックして開きます。macOSによってディスクイメージがマウントされ、ウィンドウが表示されます。 -
アプリケーションフォルダへドラッグ&ドロップ:
表示されたウィンドウには、Zedのアプリケーションアイコンと「Applications」フォルダへのショートカットアイコンが表示されています。Zedのアプリケーションアイコンを、隣にある「Applications」フォルダのショートカットアイコンにドラッグ&ドロップしてください。これで、ZedアプリケーションがmacOSのアプリケーションフォルダにコピーされます。 -
ディスクイメージの取り出し:
アプリケーションのコピーが完了したら、開いたZedのディスクイメージウィンドウを閉じ、Finderのサイドバーやデスクトップに表示されているマウントされたディスクイメージアイコンを右クリックして「取り出す」を選択するか、ゴミ箱アイコンにドラッグして取り出します。 -
Zedの起動:
インストールはこれで完了です。Launchpadを開くか、Finderで「アプリケーション」フォルダを開き、「Zed」アイコンを探してクリックします。または、Spotlight検索(Command + Spaceキーを押して「Zed」と入力)から起動することもできます。 -
セキュリティの警告(初回起動時):
初めて起動する際には、インターネットからダウンロードしたアプリケーションであるため、macOSからセキュリティの警告が表示されることがあります。「開く」ボタンをクリックして続行してください。 -
初期設定:
Zedが起動すると、簡単な初期設定画面が表示される場合があります。ここでは、UIテーマ(ライト/ダーク)、キーバインディング(標準、Vimなど)、Git/GitHub/GitLabアカウントとの連携設定(後からでも可能)などを行います。推奨される設定を選択するか、スキップして後から設定することもできます。
これでZedのインストールと初期起動は完了です。プロジェクトフォルダを開いたり、新しいファイルを作成したりして、Zedの高速な編集体験を試してみてください。
Windows / Linux への対応について:
前述の通り、2023年12月現在、ZedはmacOSのみに対応しています。開発チームは将来的にWindows版とLinux版をリリースすることをアナウンスしています。具体的な時期は未定ですが、活発な開発が続けられているため、そう遠くないうちに利用できるようになることが期待されます。公式のアナウンスやロードマップを確認するか、開発チームのGitHubリポジトリ(将来的に公開された場合)などを注視してください。
Zedの将来性と課題
Zedは非常に有望なエディタですが、まだ若いプロジェクトであり、いくつかの課題も抱えています。同時に、その将来性には大きな期待が寄せられています。
将来性:
- クロスプラットフォーム対応: WindowsとLinux版がリリースされれば、より多くの開発者がZedを利用できるようになり、ユーザーベースとコミュニティが大きく拡大するでしょう。
- オープンソース化: オープンソース化されることで、外部の開発者からの貢献が容易になり、機能開発やバグ修正が加速します。これにより、VS Codeのような巨大なエコシステムが形成される可能性もゼロではありません(ただし、拡張機能の仕組みはVS CodeのAPIとは異なる可能性があります)。
- 共同編集機能の進化: Zed独自の強みである共同編集機能は、今後さらに洗練され、チーム開発の中心的なツールとなる可能性があります。例えば、コードレビューワークフローとの統合や、より高度な権限管理などが考えられます。
- AI連携: 近年の開発ツールではAIによるコード補完や生成、デバッグ支援などが一般的になりつつあります。Zedも将来的に 이러한 AI 기능을 통합することで、生産性をさらに向上させるでしょう。
課題:
- 現状macOS限定: WindowsやLinuxユーザーにとっては、現状では試すことすらできないという大きな課題です。クロスプラットフォーム対応が待望されています。
- 拡張機能エコシステムの未熟さ: VS Codeの最大の強みは、その膨大な数の拡張機能です。様々な言語、フレームワーク、ツールとの連携、ニッチな機能など、VS Codeの拡張機能を使えばほとんどのことができると言っても過言ではありません。ZedはTree-sitterやLSPである程度のカバーはできますが、VS Codeのような広範な拡張機能エコシステムを構築するには時間とコミュニティの力が不可欠です。
- カスタマイズ性の深さ: 設定ファイルによる詳細なカスタマイズは可能ですが、Vim/Emacsのようにエディタの挙動そのものを根本から変更するようなレベルのカスタマイズ性は、現時点では難しい可能性があります。今後、カスタマイズや拡張の仕組みがどのように進化していくかが注目されます。
- まだベータ版: 公式に「Beta」と位置づけられている通り、まだ開発途上の段階です。予期せぬバグや機能の変更、パフォーマンスの最適化などが今後も行われる可能性があります。
これらの課題はありますが、Zedの開発チームは過去に成功したエディタ開発の経験を持ち、Rustという強力なツール、そして革新的なアイデア(GPUレンダリング、共同編集)を持っています。これらの要素を考えると、Zedが今後のテキストエディタの勢力図を塗り替える可能性は十分にあります。
Zedを試すべき人
Zedがあなたの開発環境に適しているかどうか、以下のポイントを参考にしてみてください。
- macOSユーザーである: 現状必須条件です。
- パフォーマンスを何よりも重視する開発者: 大規模プロジェクトを扱うことが多い方や、エディタのちょっとした遅延にもストレスを感じる方には、Zedの高速性は大きな福音となるでしょう。
- モダンで洗練されたUI/UXを好む方: macOSライクな美しいデザインと、直感的な操作感を求める方におすすめです。
- ペアプログラミングやチームでの共同作業を頻繁に行う方: 内蔵の共同編集機能と音声通話は、チームの生産性を劇的に向上させる可能性があります。
- VS Codeが自身の環境で重いと感じている方: Electronのオーバーヘッドに悩まされている場合、ZedのRust/GPUベースのアプローチは有効な解決策となるかもしれません。
- 最先端の技術や新しいツールに触れるのが好きな方: テキストエディタの新しい可能性を追求するZedは、きっとあなたを刺激するはずです。
VS Codeの豊富な拡張機能が必須、Windows/Linux環境で使いたい、Vim/Emacsのような究極のカスタマイズ性が欲しい、といった場合は、まだ時期尚早かもしれません。しかし、macOSユーザーであれば、一度インストールして、その「速さ」だけでも体験してみる価値は十分にあります。
まとめ
テキストエディタの世界に、久々に強力な挑戦者が現れました。Zedは、Rust言語とGPUレンダリングを駆使した圧倒的なパフォーマンス、Tree-sitterとLSPによる高精度な開発支援機能、そして革新的なリアルタイム共同編集機能という独自の強みを持っています。AtomやTree-sitterの開発者が中心となって生み出されたこのエディタは、モダンな開発者のニーズに応えるべく、ゼロから設計されています。
現状はmacOS限定であり、拡張機能エコシステムもこれからという段階ですが、そのコアな開発体験の快適さ、特に大規模コードベースでの動作の滑らかさは、これまでのエディタの常識を覆す可能性があります。チームでの共同作業を効率化したいというニーズにも、強力なソリューションを提供します。
テキストエディタの選択は個人の好みや開発スタイルに大きく依存しますが、Zedが提供する新しい開発体験は、多くの開発者にとって魅力的な選択肢となるでしょう。もしあなたがmacOSユーザーで、より速く、より快適にコードを書きたい、あるいはチームとの共同作業をスムーズにしたいと考えているなら、ぜひ一度Zedをインストールし、その驚くべきパフォーマンスと機能を体験してみてください。テキストエディタの未来が、ここから始まるのかもしれません。