Perlを始めるならStrawberry Perl!特徴とインストール方法を徹底解説 – Windowsで快適なPerl開発環境を構築しよう
はじめに:Perlの世界へようこそ、最初の扉を開けよう
プログラミングの世界に足を踏み入れたい、あるいは特定の課題解決のために強力なツールを探している皆さん、Perlという言語をご存知でしょうか? Perlは、テキスト処理、システム管理、Web開発など、多岐にわたる分野で長年にわたり活躍してきた、非常に強力で柔軟なスクリプト言語です。「スイスアーミーナイフ」に例えられるほど、多様な機能を持っています。
しかし、どんなプログラミング言語を始めるにも、最初のステップとして「環境構築」という壁が立ちはだかります。特にWindows環境でPerlを使いたいと思ったとき、「どうすればいいの?」「どのPerlを選べばいいの?」と悩むかもしれません。公式サイトを見ても、Windows向けのPerlディストリビューションはいくつか存在し、それぞれに特徴があります。
そこで、この記事ではWindowsユーザーの皆さんに、Perlを始める上でおすすめしたいディストリビューションの一つ、Strawberry Perlを徹底的に解説します。Strawberry Perlは、Windows環境でPerl開発を始めるための非常に手軽で、かつパワフルな選択肢です。その特徴から、具体的なインストール方法、そして簡単な使い方まで、初心者の方でも迷わないように詳細に説明していきます。この記事を読み終える頃には、あなたのWindows環境に快適なPerl開発環境が整っていることでしょう。
さあ、Perlの魅力を最大限に引き出すStrawberry Perlの世界へ飛び込みましょう!
Perlとは何か?なぜ今Perl?
Perlは1987年にLarry Wall氏によって開発されました。その名前は “Practical Extraction and Report Language” の頭文字を取ったものと言われることがありますが、Larry Wall氏自身は “Pathologically Eclectic Rubbish Lister” (病的に多様なゴミリスト作成器) のように、様々な解釈を許容するスタンスを取っています。これはPerlの設計哲学、すなわち「物事を成し遂げる多様な方法を提供する」という考え方をよく表しています。
Perlの主な特徴:
- 強力なテキスト処理能力: Perlは当初からテキスト処理のために設計されており、特に正規表現の扱いに非常に長けています。ログファイルの解析、データ変換、レポート生成などでその威力を発揮します。
- 実用性重視: 「物事を簡単に成し遂げる」ことを重視しており、簡潔にコードを書けるように多くの構文上の柔軟性を持っています。これは良くも悪くも「Readability (読みやすさ)」よりも「Writability (書きやすさ)」を優先する傾向があると言われることもありますが、適切に使えば非常に生産性の高い言語です。
- 豊富なモジュール群 (CPAN): CPAN (Comprehensive Perl Archive Network) は、Perlのモジュール(再利用可能なコードの集まり)の世界最大のアーカイブです。インターネット上のPerlコミュニティによって開発・メンテナンスされており、Web開発、データベースアクセス、ネットワーク通信、画像処理、科学技術計算など、あらゆる分野のモジュールが公開されています。CPANを利用することで、ゼロからコードを書くことなく、多くの機能を手軽に利用できます。
- クロスプラットフォーム: Perl自体は多くのオペレーティングシステムで動作するように設計されています。Windowsはもちろん、Linux, macOS, Unix系OSなどで利用可能です。
- インタプリタ言語: コンパイルのステップなしに、書いたコードをすぐに実行できます。これはスクリプト言語としての手軽さ、開発効率の高さに繋がります。
なぜ今でもPerlを学ぶ価値があるのか?
近年、PerlはかつてのようなWeb開発の主役の座をRubyやPython、PHPなどに譲ったという見方もあります。しかし、Perlは依然として多くの分野で現役で使われています。
- 既存システムの保守: 多くの企業や組織で、長年にわたりPerlで書かれたシステム(特にシステム管理ツールやレガシーなWebアプリケーション)が現役で稼働しており、その保守や改修のためにPerlエンジニアの需要があります。
- システム管理・DevOps: 複雑なタスクの自動化、ログ解析、システム監視スクリプトなどでPerlは依然として強力な選択肢です。特にUnix/Linux環境では、多くのシステムツールがPerlで書かれています。
- データ処理・分析: 大量のテキストデータを効率的に処理・整形する能力は、データ分析の前処理などで非常に役立ちます。
- 特定のドメインでの強み: バイオインフォマティクスや金融工学など、特定の分野ではPerlが今でも広く使われています。
- 学習コスト: 他のモダンな言語に比べると、良くも悪くも古参であるがゆえの癖のようなものはありますが、基本的な文法は比較的学びやすく、実用的なスクリプトをすぐに書けるようになります。特にCPANの豊富なモジュールは、迅速なプロトタイピングや開発を可能にします。
もちろん、これから新しいプロジェクトを始める際に必ずしも第一候補となるわけではありませんが、Perlを学ぶことは、プログラミングの引き出しを増やし、特に既存のシステムを扱う上で非常に強力なアドバンテージとなります。そして、そのPerlをWindows環境で始めるための最良のパートナーこそが、Strawberry Perlなのです。
Strawberry Perlとは?
Strawberry Perlは、Windowsオペレーティングシステム向けに特別にビルドされた、無料でオープンソースのPerlディストリビューションです。PerlをWindows上で快適に、そして標準的な方法で利用できるように設計されています。
Windows上でPerlを使うためのディストリビューションはいくつか存在しますが、代表的なものとしてはActivePerlがあります。ActivePerlは企業向けのサポートやWindows固有の機能(ActiveX連携など)に強みを持つ一方、Strawberry Perlはよりコミュニティベースの開発が行われており、標準的なPerlの利用、特にCPANモジュールの利用に重点が置かれています。
Strawberry Perlの最大の特徴は、Perlインタプリタ本体に加え、多くの人がPerl開発に不可欠と考えるCPANモジュールや、それらをインストールするために必要なC/C++コンパイラ環境 (MinGW) をすべて含んでいる点です。これにより、WindowsユーザーはPerl本体をインストールするだけで、追加の手間なく豊富なCPANモジュールを利用できるようになります。
Strawberry Perlは、以下のようなユーザーに特におすすめです。
- Perlを初めて学ぶWindowsユーザー
- CPANモジュールを積極的に利用したい開発者
- Unix/Linux環境でのPerl開発に近い感覚でWindowsでも開発したい開発者
- 無料で、手軽にPerl開発環境を構築したいユーザー
ActivePerlがWindows環境との深い連携や商用サポートを重視するのに対し、Strawberry Perlは標準的なPerlエコシステム(特にCPAN)へのアクセス容易性を重視していると言えるでしょう。個人学習やコミュニティで広く使われているモジュールを活用した開発においては、Strawberry Perlが非常に適しています。
Strawberry Perlの主な特徴 (徹底解説)
Strawberry PerlがなぜWindowsでPerlを始めるのにおすすめなのか、その具体的な特徴を掘り下げて見ていきましょう。
1. 完全なPerl環境の提供
Strawberry Perlをインストールするだけで、Perl開発に必要な基本的な要素が全て手に入ります。
- Perlインタプリタ本体: Perlスクリプトを実行するためのプログラム本体です。最新の安定版Perlが同梱されています。
- コアモジュール: Perlの標準機能として提供されるモジュール群(
strict
,warnings
,Exporter
,Cwd
,File::Spec
,List::Util
など多数)。これらのモジュールはPerlの基本的なプログラミングに不可欠であり、Strawberry Perlには最初から含まれています。 - よく使われるサードパーティ製モジュール: コアモジュールだけでなく、YAMLパーサーやデータベースドライバの一部など、多くのPerlプログラマーが頻繁に使用する、CPANで公開されている一部のモジュールもプリインストールされています。これにより、インストール直後から様々な開発に着手しやすくなっています。
つまり、Strawberry Perlをインストールすれば、「Perlがない」「基本的な機能が使えない」といった初期段階のつまずきを回避できます。すぐにPerlのコードを書き始め、実行できる状態になります。
2. MinGW (Minimalist GNU for Windows) の同梱
Strawberry Perlの最も画期的な特徴の一つは、GCC (GNU Compiler Collection) を含むMinGWというC/C++コンパイラ環境が同梱されていることです。
なぜコンパイラが必要なのか?
PerlのCPANモジュールには、大きく分けて2種類あります。
- Pure Perlモジュール: Perl言語だけで書かれたモジュール。これらはPerlインタプリタがあればそのまま実行できます。
- XSモジュール: 性能が要求される処理や、C/C++などの他の言語で書かれた既存のライブラリを利用するために、CやC++で書かれた部分(XSコードと呼ばれます)を含むモジュール。これらのモジュールをインストールして利用するには、XSコードをコンパイルし、Perlから呼び出せる形式(通常は共有ライブラリやDLL)にリンクする必要があります。
Perlで本格的な開発を行おうとすると、データベースへの接続 (DBD::*
モジュール群、例: DBD::mysql
, DBD::Pg
) や、高度なデータ構造 (Data::Dumper::Compact
), ネットワーク処理、暗号化など、多くの重要なモジュールがXSモジュールとして提供されています。
通常、Windows環境でXSモジュールをインストールするには、別途C/C++コンパイラをインストールし、Perl環境からそれが利用できるように設定する必要があります。これは初心者にとって非常にハードルが高い作業でした。
MinGW同梱のメリット:
Strawberry PerlはMinGWを同梱しているため、Perlのインストールと同時にコンパイラ環境も整います。これにより、CPANからXSモジュールをインストールする際に、特別な設定なしにコンパイル処理が自動的に行われるようになります。これは、WindowsでCPANモジュールをストレスなく利用するための決定的な利点です。
例えば、データベースに接続するためのDBD::mysql
や、JSONを高速に処理するためのJSON::XS
のようなモジュールも、cpanm DBD::mysql
やcpanm JSON::XS
といったコマンド一発でインストールできる可能性が非常に高くなります。(もちろん、モジュール自体の依存する外部ライブラリが必要な場合は別途インストールが必要なこともありますが、多くの場合、MinGW同梱で解決します。)
このMinGWの同梱は、Strawberry PerlをWindowsにおけるPerl開発環境の標準的な選択肢たらしめている最大の理由の一つと言えます。
3. CPANクライアント (cpan/cpanm) の利用しやすさ
前述のMinGW同梱とも関連しますが、Strawberry PerlはCPANからモジュールをインストールするためのツールであるCPANクライアントを標準で利用しやすい状態にしています。
- CPANとは? 世界中のPerlプログラマーが開発したモジュールが登録・公開されている巨大なアーカイブです。Perlの最大の強みの一つであり、車輪の再発明を避けて効率的に開発を進める上で欠かせない存在です。
- CPANクライアント: CPANに接続し、モジュールを検索、ダウンロード、ビルド(必要に応じてコンパイル)、テスト、インストールするためツールです。Strawberry Perlには、標準の
cpan
コマンドと、より手軽で人気のあるcpanm
(App::cpanminusモジュール) が含まれています。 - 利用しやすさ: Strawberry Perlをインストール後、コマンドプロンプトやPowerShellからすぐに
cpan
またはcpanm
コマンドを実行して、必要なモジュールをインストールできます。MinGWが同梱されているため、XSモジュールであってもコンパイル環境に悩むことなくインストールできるのが大きな利点です。
cpanm Some::Module::Name
のようにコマンド一つで、モジュール本体とその依存関係にあるモジュールが全て自動的にインストールされます。この手軽さは、Perl開発の生産性を大きく向上させます。Strawberry Perlは、このCPANエコシステムへのアクセスをWindows上で最も容易に実現しているディストリビューションの一つです。
4. ポータブルなインストール
Strawberry Perlは、通常のインストーラー形式 (.msi) に加えて、ZIPアーカイブ形式でも提供されています。ZIP版を利用することで、インストール先のフォルダに全てのファイルが格納され、レジストリを汚したり、システム全体の設定を変更したりすることなくPerl環境を構築できます。
- ZIP版のメリット:
- 手軽さ: ダウンロードしたZIPファイルを任意の場所に解凍するだけで利用準備が整います。(ただし、利用するには手動でのPATH環境変数設定が必要になる場合があります。)
- ポータビリティ: USBメモリなどのリムーバブルメディアに入れて持ち運び、別のコンピューターで実行することも可能です。
- システムへの影響が少ない: システムワイドな設定変更が少ないため、他のソフトウェアとの干渉のリスクを減らせます。管理者権限がなくてもインストールできる場合があります(ただし、PATH設定には権限が必要な場合があります)。
インストーラー版がシステムにPerl環境を「導入」するのに適しているのに対し、ZIP版は特定のプロジェクトのためにローカル環境を構築したい場合や、一時的にPerl環境を使いたい場合に便利です。どちらの形式でもMinGWやCPANクライアントは含まれています。
5. 定期的なアップデート
Strawberry Perlは活発に開発されており、Perl本体の新しい安定版がリリースされるのに合わせて、定期的にアップデート版が提供されます。
- メリット:
- 最新のPerlバージョンを利用できる: Perl本体の改善や新機能を取り込めます。
- セキュリティ修正: 脆弱性への対応が迅速に行われます。
- バグ修正: Perl本体や同梱されているモジュール、MinGW環境などのバグが修正されます。
- 安定性向上: 定期的なテストと修正により、全体的な安定性が向上します。
最新の安定版を利用することは、開発効率やセキュリティの面で重要です。Strawberry Perlは、この点で信頼できる選択肢です。
6. オープンソース
Strawberry Perlは完全にオープンソースソフトウェアとして開発・配布されています。
- メリット:
- 無料: ライセンス料なしで自由に利用できます。
- 透明性: ソースコードが公開されており、どのように動作しているかを確認できます。
- コミュニティサポート: 問題が発生した場合や使い方が分からない場合に、オンラインのコミュニティフォーラムやメーリングリストで助けを求めることができます。多くのPerl開発者がStrawberry Perlを利用しているため、豊富な情報が得られます。
- カスタマイズ・貢献の可能性: 必要であれば、ソースコードを修正したり、開発に貢献したりすることも可能です。
オープンソースであることは、特に個人学習や小規模なプロジェクトにおいて、コスト面だけでなくコミュニティによるサポートという面でも大きな安心感を与えてくれます。
7. 日本語対応
Windows環境、特に日本国内での開発においては、日本語の扱いが非常に重要になります。ファイル名に日本語が含まれる、スクリプト内で日本語の文字列を扱う、出力結果に日本語を含めるなど、様々なケースがあります。
Strawberry PerlはWindows環境での利用を想定してビルドされており、基本的な日本語の扱いには対応しています。例えば、ファイルパスに日本語が含まれていても、多くのケースで問題なく動作します。また、Perl内部での文字列エンコーディングの扱い(UTF-8など)に関しても、Perl本体の機能と組み合わせて適切に処理することが可能です。
ただし、Perlにおけるエンコーディングの問題は非常に奥深く、特に異なるエンコーディングのシステムやファイル間でデータをやり取りする場合には、明示的なエンコーディングの指定(use encoding 'utf8';
や binmode
関数など)が必要になることがあります。Strawberry Perl自体が魔法のように全てのエンコーディング問題を解決してくれるわけではありませんが、Windows環境での利用を考慮して設計されているため、比較的スムーズに日本語を扱うための基盤が整っています。
これらの特徴から、Strawberry PerlはWindowsユーザーがPerl開発を始める上で、非常に魅力的で実用的な選択肢であることがわかります。特に、MinGWの同梱とCPANアクセスの容易さは、他のディストリビューションにはない強力なアドバンテージです。
Strawberry Perlのインストール方法 (超詳細ステップバイステップ)
それでは、実際にStrawberry PerlをWindows環境にインストールする手順を詳しく見ていきましょう。ここでは、最も一般的なインストーラー版 (.msi) を使う方法をメインに解説します。ZIP版についても補足します。
インストール前の準備
-
システムの要件確認:
- Windowsバージョン: Strawberry Perlは多くのWindowsバージョン(Windows 7以降、Windows Serverを含む)で動作します。使用しているWindowsのバージョンを確認してください。
- CPUアーキテクチャ (32bit vs 64bit): 多くのモダンなWindowsコンピューターは64bitアーキテクチャです。使用しているOSが32bit版か64bit版かを確認してください。通常、OSのビット数に合わせたStrawberry Perlをインストールするのが良いですが、64bit OSに32bit版Strawberry Perlをインストールすることも可能です(ただし、混在による問題が発生しないよう、基本的にはOSと同じビット数をおすすめします)。OSのビット数は、「コントロールパネル」→「システムとセキュリティ」→「システム」で確認できます。
- ディスク容量: インストールには数GBのディスク容量が必要になる場合があります。十分な空き容量があることを確認してください。
-
既存のPerl環境の扱い:
- 既にActivePerlや別のStrawberry Perl、あるいはCygwin/MSYS2などでPerlをインストールしている場合、PATH環境変数に複数のPerlへのパスが含まれていると、意図しないバージョンのPerlが実行されてしまうなどの問題が発生する可能性があります。
- 可能であれば、既存のPerl環境のPATH設定を一時的に無効にするか、今回の新しいStrawberry PerlをPATHのより優先度の高い位置に設定するように調整することをおすすめします。インストーラーは通常、PATHに追加するかどうかを選択できますが、既存のPerlがある場合は注意が必要です。
-
インストーラーのダウンロード:
- Strawberry Perlの公式サイト(通常は
http://strawberryperl.com/
)にアクセスします。 - ダウンロードページを探します。
- 使用しているWindowsのCPUアーキテクチャに合ったインストーラーを選択します。例えば、64bit版Windowsを使っているなら「64bit」と書かれたリンクをクリックします。通常、最新の安定版のインストーラー (.msiファイル) がダウンロードできます。
- ダウンロードしたファイル名が
strawberry-perl-*-64bit.msi
(64bit版の場合) のようになっていることを確認してください。
- Strawberry Perlの公式サイト(通常は
インストーラー (.msi) を使ったインストール手順
ダウンロードした.msiファイルを使ってインストールを行います。この手順は、Windowsの一般的なソフトウェアインストールと似ています。
-
インストーラーの実行:
- ダウンロードした.msiファイルをダブルクリックして実行します。
- ユーザーアカウント制御 (UAC) のダイアログが表示された場合は、「はい」をクリックして実行を許可します。管理者権限が必要な場合があります。
-
セットアップウィザードの開始:
- 「Welcome to the Strawberry Perl Setup Wizard」のような画面が表示されます。「Next」をクリックして進みます。
-
ライセンス契約への同意:
- ライセンス契約書(通常はGPLやArtistic Licenseなど)が表示されます。内容を確認し、「I accept the terms in the License Agreement」(ライセンス契約の条項に同意します)にチェックを入れ、「Next」をクリックします。同意しないとインストールできません。
-
インストール先の指定:
- Perlをインストールするフォルダを指定します。「Destination Folder」と表示されている箇所です。
- デフォルトでは
C:\strawberry\perl
のようなパスが提案されます。特に理由がなければ、デフォルトのパスにインストールすることを強く推奨します。デフォルト以外のパスにインストールする場合、パス名にスペースや日本語など特殊な文字を含めないように注意してください。後々のモジュールインストールなどで問題が発生する可能性があります。 - インストール先を指定したら、「Next」をクリックします。
-
インストールコンポーネントの選択:
- インストールするコンポーネントを選択します。「Custom Setup」画面が表示されます。
- 通常、「Perl Interpreter」と「MinGW (GCC and other tools)」は必須です。これらはデフォルトで選択されているはずです。
- 他のコンポーネント(ドキュメント、ソースコードなど)も通常は全てインストールして問題ありません。全て選択された状態で「Next」をクリックすることを推奨します。これにより、Strawberry Perlの全ての機能が利用可能になります。
-
PerlのPATH環境変数への追加設定:
- ここが非常に重要なステップです! 「Configure setup options」のような画面が表示され、「Add perl to the system PATH for current user」や「Add perl to the system PATH for all users」といったチェックボックスがあるはずです。
- Perlコマンド(
perl
,cpanm
など)をコマンドプロンプトやPowerShellのどこからでも実行できるようにするためには、Perlの実行ファイルがあるディレクトリをPATH環境変数に追加する必要があります。 - 通常は「Add perl to the system PATH for all users」(すべてのユーザーのためにシステムPATHに追加する)にチェックを入れるのが最も便利です。これにより、システム全体のPATHにPerlが追加されます。管理者権限がない場合は、「current user」にチェックを入れることになるかもしれません。
- 注意: 既に別のPerl環境がPATHに設定されている場合、どちらのPerlが優先されるかはPATHの設定順序に依存します。もし新しいStrawberry Perlを優先したい場合は、システムPATHの設定を手動で調整する必要が出てくるかもしれません。しかし、まずはインストーラー任せで進め、後で確認・調整するのが一般的です。
- チェックを入れたら、「Next」をクリックします。
-
インストールの実行:
- 設定内容の最終確認画面が表示されることがあります。「Install」をクリックすると、実際のファイルコピーや設定変更が開始されます。
- インストールには数分から十数分かかることがあります。進捗バーが表示されるので、完了まで待ちます。
-
インストールの完了:
- 「Completed the Strawberry Perl Setup Wizard」のような画面が表示されたらインストールは完了です。
- 「Finish」をクリックしてウィザードを閉じます。
インストール後の確認
インストールが成功したかを確認しましょう。
-
コマンドプロンプトまたはPowerShellを開く:
- Windowsの検索バーに「コマンドプロンプト」または「PowerShell」と入力し、表示されたアプリをクリックして起動します。
- 重要: インストーラーでPATH環境変数を変更した場合、その変更を反映させるためには、新しいコマンドプロンプト/PowerShellウィンドウを開く必要があります。 インストールを開始する前に開いていたウィンドウでは、変更が反映されていない可能性があります。
-
Perlのバージョンを確認:
- コマンドプロンプト/PowerShellで以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
bash
perl -v -
インストールしたStrawberry Perlのバージョン情報が表示されれば成功です。例えば、以下のような出力が得られます(バージョン番号は異なります)。
“`
This is perl, v5.32.1 built for MSWin32-x64-multi-thread
(with 1 registered patch, see perl -V for details)Copyright 1987-2020, Larry Wall
Perl may be copied only under the terms of either the Artistic License or the
GNU General Public License, as specified in the README file.… (以下略) …
“`
* もし「’perl’ は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のようなエラーが表示された場合、PATH環境変数が正しく設定されていない可能性があります。
- コマンドプロンプト/PowerShellで以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
-
CPANクライアントのバージョンを確認:
- 続けて、CPANクライアントが利用可能か確認します。
“`bash
cpan -v
または
cpanm -v
“`
* それぞれのバージョン情報や設定情報が表示されれば成功です。 - 続けて、CPANクライアントが利用可能か確認します。
PATH環境変数の確認と修正 (もしperl -v
がエラーになった場合):
perl -v
コマンドが認識されない場合、Perlの実行ファイル (perl.exe
) があるディレクトリがPATH環境変数に含まれていないか、含まれていてもその変更が反映されていないことが原因です。
-
PATH環境変数の確認方法:
- コマンドプロンプト/PowerShellで
echo %PATH%
(コマンドプロンプト) または$env:Path
(PowerShell) と入力してEnterキーを押します。 - 環境変数の内容が表示されます。この中に、Strawberry Perlをインストールしたディレクトリ内の
perl\bin
およびc\bin
(MinGWの実行ファイルがある場所) へのパス(例:C:\strawberry\perl\bin;C:\strawberry\c\bin
)が含まれているか確認してください。
- コマンドプロンプト/PowerShellで
-
PATH環境変数の手動修正:
- もし上記パスが含まれていない、または含まれているのに認識されない場合は、手動でPATH環境変数を編集する必要があります。
- Windowsの検索バーに「環境変数」と入力し、「環境変数を編集」または「システム環境変数を編集」を選択します。
- 「システムのプロパティ」ウィンドウが表示されます。下部にある「環境変数」ボタンをクリックします。
- 「環境変数」ウィンドウが表示されます。上段の「ユーザー環境変数」または下段の「システム環境変数」のリストから「Path」(または「PATH」)という名前の変数を選択し、「編集」をクリックします。
- 「環境変数の編集」ウィンドウが表示されます。ここで、Strawberry Perlのインストール先にある
perl\bin
およびc\bin
フォルダへのパスをリストに追加します。新しいパスは、既存のパスと区別するためにセミコロン;
で区切ります。 - 推奨: 新しく追加するPerlのパスをリストの上の方に移動させると、他の場所にあるPerlよりも優先的にStrawberry Perlが実行されるようになります。
- パスを追加または編集したら、「OK」をクリックして全てのウィンドウを閉じます。
- 変更を反映させるために、コマンドプロンプト/PowerShellウィンドウを全て閉じ、再度開き直してください。 そして再び
perl -v
コマンドを実行して確認します。
これで、Strawberry Perlのインストールと基本的な設定は完了です。
ZIP版を使ったインストール (補足)
ZIP版は手動での設定が必要になります。
- ZIPファイルのダウンロード: 公式サイトから適切なZIPファイル(例:
strawberry-perl-*-64bit.zip
)をダウンロードします。 - 解凍: ダウンロードしたZIPファイルを任意のフォルダに解凍します。解凍先のパスにスペースや日本語が含まれないように注意してください。例えば、
C:\devel\strawberry
のようなパスが良いでしょう。解凍すると、そのフォルダ内にperl
,c
,licenses
などのフォルダが作成されます。 - PATH環境変数の手動設定: ZIP版の場合、インストーラーが行うPATH環境変数への追加は自動で行われません。手動で上記「PATH環境変数の確認と修正」の手順に従って、解凍先のフォルダ内の
perl\bin
およびc\bin
フォルダへのパスを環境変数PATHに追加してください。例えば、C:\devel\strawberry\perl\bin;C:\devel\strawberry\c\bin
となります。 - 確認: 新しいコマンドプロンプト/PowerShellウィンドウを開き、
perl -v
およびcpanm -v
コマンドで正しく認識されるか確認します。
ZIP版は手軽な反面、PATH設定を自分で行う必要がある点に注意が必要です。
インストール時のトラブルシューティング
- エラーメッセージが表示される: インストール中にエラーが発生した場合は、表示されたメッセージをよく確認し、インターネットで検索してみてください。特定のファイルへのアクセス権限がない、ディスク容量が不足している、他のプログラムが干渉しているなどの原因が考えられます。
- アンチウイルスソフトの干渉: まれに、アンチウイルスソフトがMinGWやPerlの実行ファイルをマルウェアと誤検知してブロックすることがあります。その場合は、一時的にアンチウイルスソフトの設定を変更してインストールを許可するか、ログを確認して除外設定を行う必要があるかもしれません。
- 再インストール: うまくインストールできない場合、一度インストール済みのStrawberry Perlをアンインストールしてから、再度インストールを試みるのも有効です。アンインストールは「コントロールパネル」→「プログラム」→「プログラムと機能」から行えます。
Strawberry PerlでPerlを使ってみる (簡単なチュートリアル)
Strawberry Perlのインストールが完了したら、実際にPerlを使ってみましょう。簡単なスクリプトの作成と実行、CPANモジュールのインストールと利用を試します。
1. コマンドプロンプト/PowerShellを開く
Perlスクリプトの実行やCPANモジュール管理は、基本的にコマンドラインで行います。Windowsの検索バーで「cmd」(コマンドプロンプト)または「powershell」(PowerShell)と入力して起動してください。
2. Perlインタプリタの実行
perl -v
でバージョン確認は行いましたが、引数なしで perl
コマンドを実行すると、インタプリタの対話モードに入ることができます。
bash
C:\Users\YourUser> perl
プロンプトが ^D
のように変わるか、あるいは入力待ちの状態になります。ここでPerlのコードを直接入力して実行できます。
perl
print "Hello, world!\n";
と入力してEnterキーを押すと、Hello, world!
が表示されます。対話モードを終了するには、exit
と入力するか、Ctrl+Zを押してからEnterキーを押します。
対話モードは簡単なコードを試すのに便利ですが、通常はスクリプトファイルを作成して実行します。
3. 簡単なスクリプトの作成と実行
テキストエディタ(Windows標準のメモ帳、またはVS Code, Sublime Text, Notepad++などの高機能エディタを推奨)を開き、以下の内容を入力して hello.pl
という名前で保存してください。.pl
という拡張子はPerlスクリプトの慣習です。
“`perl
!/usr/bin/perl
use strict;
use warnings;
画面にメッセージを表示するスクリプトです
print “Hello, Strawberry Perl from a script!\n”;
“`
#!/usr/bin/perl
: これは「Shebang (シバン)」と呼ばれ、Unix/Linux環境でこのファイルを実行する際に使用するインタプリタを指定する行です。Windowsでは直接的な意味はありませんが、Perlスクリプトであること、そしてどのPerlを使うかを示す慣習として記述することが多いです。use strict;
: Perlコードの記述において、より厳格なルールを適用します。例えば、変数を使う前にmy
やour
で宣言することを必須にします。これにより、typoなどによる多くのエラーを防ぐことができます。Perlでコードを書く際は、常にuse strict;
を記述することを強く推奨します。use warnings;
: Perlに実行時警告を有効にさせます。変数に値が入っていない、怪しい構文がある、といった問題点を教えてくれます。これもuse strict;
と同様に常に記述することを推奨します。
保存した hello.pl
ファイルがあるディレクトリを、コマンドプロンプト/PowerShellで開いてください。(cd
コマンドでディレクトリ移動できます。)
そのディレクトリで、以下のコマンドを実行します。
bash
C:\Path\To\Your\Script> perl hello.pl
実行すると、以下のような出力が表示されます。
Hello, Strawberry Perl from a script!
これで、Strawberry Perlが正しく動作し、スクリプトを実行できることが確認できました。
4. CPANモジュールのインストール
Perlの強力さはCPANモジュールにあります。何か便利な機能を使いたいと思ったら、まずCPANに目的のモジュールがないか探してみましょう。CPANの公式サイト https://metacpan.org/
で検索できます。
ここでは例として、ウェブページの内容を取得するためのシンプルなモジュールである LWP::Simple
をインストールしてみましょう。Strawberry Perlには cpanm
(cpanminus) という手軽なCPANクライアントが同梱されています。
コマンドプロンプト/PowerShellで、以下のコマンドを実行します。
bash
C:\Users\YourUser> cpanm LWP::Simple
インターネットに接続された状態でこのコマンドを実行すると、cpanm
がCPANから LWP::Simple
モジュールをダウンロードし、必要であれば依存するモジュールも自動的にダウンロード・インストールします。MinGWが同梱されているため、もしこのモジュールやその依存モジュールにXSコードが含まれていても、コンパイルが試みられ、多くの場合成功します。
インストール処理が進み、最後に「Successfully installed …」のようなメッセージが表示されれば成功です。
もしエラーが表示された場合、インターネット接続の問題、ファイアウォール、あるいはインストールしようとしているモジュールが何らかの理由でコンパイルに失敗した(非常にまれですが、特定のシステムライブラリが必要な場合など)可能性が考えられます。エラーメッセージをコピーしてインターネットで検索すると、解決策が見つかることが多いです。
5. 簡単なスクリプトでのモジュール利用
インストールした LWP::Simple
モジュールを使って、簡単なウェブページの内容を取得するスクリプトを書いてみましょう。
新しいファイル get_url.pl
を作成し、以下の内容を記述して保存します。
“`perl
!/usr/bin/perl
use strict;
use warnings;
use LWP::Simple; # インストールしたモジュールを読み込む
my $url = “https://www.example.com/”; # 取得したいURL
my $content = get($url); # get関数でURLの内容を取得
if (defined $content) {
# 取得に成功した場合
print “Successfully retrieved content from $url\n”;
# 取得したコンテンツの一部を表示(長すぎると大変なので)
print substr($content, 0, 500) . “…\n”; # 最初の500文字と末尾に…を付ける
} else {
# 取得に失敗した場合
print “Failed to retrieve URL: $url\n”;
}
exit; # スクリプトの終了
“`
保存したら、コマンドプロンプト/PowerShellでこのスクリプトを実行します。
bash
C:\Path\To\Your\Script> perl get_url.pl
実行すると、指定したURL (https://www.example.com/
) のHTMLコンテンツの一部が表示されるはずです。
“`
Successfully retrieved content from https://www.example.com/