Undertale 虐殺ルートの最後:知られざる真実とは

Undertale 虐殺ルートの最後:知られざる真実とは

Undertaleというゲームは、その独創的なゲームデザイン、魅力的なキャラクター、そして何よりもプレイヤーの選択が物語に深く影響するという点で、世界中のゲーマーに衝撃を与えました。特に、このゲームには大きく分けて「Pルート(平和主義ルート)」、「Nルート(中立ルート)」、「Gルート(虐殺ルート)」という3つの主要なプレイスタイルが存在し、それぞれ全く異なる結末を迎えます。

Pルートがモンスターたちとの融和とハッピーエンドを描く一方、Gルートはプレイヤーに徹底的な「悪」を強いる苛烈な道のりです。プレイヤーは遭遇するモンスターを全て殺戮し、経験値(EXP)とレベル(LOVE)を極限まで高めていきます。このルートはゲームからの強烈な抵抗に遭いながら進行し、多くのプレイヤーに精神的な負担を強います。そして、Gルートの最後に待ち受ける結末は、単なるゲームオーバーやバッドエンドを超えた、プレイヤー自身に突きつけられる「知られざる真実」を含んでいます。

この記事では、Undertaleの虐殺ルートの終着点に焦点を当て、そこで明らかになる真実、登場するキャラクター、そしてその結末がプレイヤーに与える影響について、約5000語にわたり詳細に掘り下げていきます。

1. 虐殺ルートへの道のり:空虚と絶望

まず、虐殺ルートの結末を理解するためには、そこに至るまでの過程がどれほど異質で凄惨であるかを把握する必要があります。虐殺ルートは、エリアごとに定められた数のモンスターを狩り尽くすことで進行します。通常であれば多数のモンスターが賑やかに暮らしているはずの地下世界は、プレイヤーの殺戮によって静まり返り、BGMは不気味で単調なものに変化します。セーブポイントには、「○体倒した」という非情なカウンターが表示され、プレイヤーの行動を数値として突きつけます。

このルートでは、多くの善良なモンスターたちがプレイヤーの手にかけられます。最初のエリアである遺跡(Ruins)から始まり、スノーフル(Snowdin)、ウォーターフェル(Waterfall)、ホットランド(Hotland)と進むにつれて、モンスターたちの絶望や抵抗は強まっていきます。

  • 遺跡(Ruins): 最初のモンスターであるフロギーやミグォプなどを狩り尽くすことから始まります。トリエルはプレイヤーのLVの上昇に気づき、引き留めようとしますが、ここでもプレイヤーは彼女を殺害する選択をします。通常ルートでは愛情深く、プレイヤーを守ろうとしたトリエルを自らの手にかける行為は、多くのプレイヤーに最初の精神的ハードルを与えます。しかし、虐殺ルートを進むプレイヤーは、もはや感情的な繋がりを断ち切り、淡々と目的を遂行します。
  • スノーフル(Snowdin): 雪に覆われた美しい村は、プレイヤーの到着とともに静寂に包まれます。ショップの店員や住民は逃げ出し、人気が全くなくなります。パピルスとの戦闘は、通常ルートとは異なり、彼の無邪気で純粋な善意がプレイヤーの冷酷さによって打ち砕かれる様を描きます。パピルスはプレイヤーの中に「少しの善意」を見出そうとしますが、プレイヤーが彼を殺害すると、彼は最期までプレイヤーを信じようとし、消滅します。このシーンは、Gルートの非道さを象徴するものの1つです。
  • ウォーターフェル(Waterfall): 神秘的な洞窟地帯も、プレイヤーの殺戮によって荒廃します。モンスターの子供がプレイヤーから逃げ惑うシーンや、ナプスタブルークが逃げ出す様子が描かれ、プレイヤーの行動が周囲に与える恐怖を強調します。このエリアのボスであるアンダインは、Gルートにおいて「undyne the Undying(不滅のアンダイン)」として立ちはだかります。彼女はモンスターたちの最後の希望として、プレイヤーの行く手を阻みます。この戦闘はゲーム中でも屈指の難易度であり、プレイヤーの強大な力に対抗するアンダインの「Determination(決意)」の強さが描かれます。彼女を打ち破ることは、単なるゲームプレイの勝利だけでなく、希望の象徴を打ち砕く行為でもあります。
  • ホットランド(Hotland) & コア(CORE): 科学者のアルフィーはプレイヤーの接近を察知し、研究員やモンスターたちを避難させます。ラボやメタトンのアパートはもぬけの殻となり、プレイヤーは誰とも出会わずに進むことができます。メタトンとの戦闘も、通常ルートのような華々しいショーではなく、メタトンNEOという貧弱な形態で行われ、一撃で破壊されます。これは、プレイヤーが持つ圧倒的な力の前には、地下世界のスターでさえ無力であることを示します。アルフィーはプレイヤーの存在に怯え、最後まで姿を見せません。プレイヤーは、地下世界の知的中心地でさえ、自らの手によって崩壊させたことを実感します。

虐殺ルートを通して、プレイヤーはEXP(Execution Points, 処刑ポイント)を稼ぎ、LOVE(Level Of Violence, 暴力レベル)を上げていきます。ゲーム内でLOVEやEXPは単なるゲームシステム上の数値として扱われることが多いですが、Undertale、特にGルートでは、これらがキャラクターの強さだけでなく、プレイヤーのモラルや精神状態の悪化を表現していることが示唆されます。LOVEが高まるにつれて、プレイヤー(とフリスク)の表情は無感情になり、他のキャラクターに対する共感や躊躇いは失われていきます。プレイヤーの操作するフリスクは、次第にプレイヤー自身の冷酷な意志の乗り物と化していくかのように見えます。

2. 最後の審判:サンズとの対峙

虐殺ルートの最終盤、王様の部屋へ向かう廊下(Final Corridor)で、プレイヤーはサンズと対峙します。通常ルートでは、サンズはこの場所でプレイヤーの旅を振り返り、「審判」を下しますが、Gルートでの審判は文字通り、プレイヤーを排除するための最後の戦いです。

サンズは、通常ルートとは全く異なる態度でプレイヤーに接します。彼のユーモアは消え失せ、冷たい怒りと諦念が混じったような表情をしています。彼はプレイヤーがこれまでに犯した行為、特に彼の弟であるパピルスを殺害したことに対して言及します。

サンズの戦闘は、ゲームの中でも最も挑戦的なものの1つです。彼は異常なまでのスピード、トリッキーな攻撃パターン、そしてプレイヤーの操作するフリスクのSOULを直接操作する能力を持っています。そして何より、彼はプレイヤーがSAVEとLOADを繰り返す能力、すなわち「時間軸(タイムライン)」に関する知識を持っていることを示唆します。彼はプレイヤーのSAVE/LOADを嘲り、どんなに倒されても立ち上がるプレイヤーの「Determination」を危険視します。

サンズの戦闘における最も重要な要素の1つは、「KR(Karmic Retribution)」という特殊なダメージです。これは彼の攻撃が与えるダメージに加え、プレイヤーが犯した罪(EXP/LOVE)に応じて継続的にダメージを与えるというものです。文字通り「業(カルマ)の報い」であり、プレイヤーの蓄積した悪行がSOULを蝕むかのように表現されています。

サンズは戦闘中、プレイヤーのLVとEXPの意味について深く語ります。彼はLVを「Level Of Violence」と定義し、EXPを「Execution Points」と説明します。これは、単なるゲームの成長システムではなく、他者を傷つけ、奪い、排除することで得られる「力」の本質であると示唆します。彼のこの言葉は、ゲーム内で当然のように受け入れられてきたシステムに対して、倫理的な問いを投げかけます。

サンズは、プレイヤーがどんなに強い Determination を持ち、何度やり直しても、結局は自身の選択の結果から逃れることはできないと示唆します。彼の言葉は、ゲームの世界だけでなく、現実のプレイヤーに対しても語りかけられているかのようです。彼はプレイヤーの行為を「歪んだ好奇心」や「達成感」のために行われていると見抜き、それを激しく非難します。

サンズを打ち破ることは、ゲームプレイの腕前を示すだけでなく、地下世界の最後の希望、そしてプレイヤー自身の罪悪感や良心の声(メタファーとして)を打ち砕く行為でもあります。彼の最後の言葉は、プレイヤーの非道さを嘆きながらも、どこか諦めを含んでおり、彼が全ての時間軸における可能性を見ているかのような印象を与えます。

3. 玉座の間、そして現れる「彼(彼女)」

サンズを倒した後、プレイヤーは静まり返った地下の玉座の間へと進みます。通常ルートであれば、アズゴアやフラウィとの感動的な、あるいは緊迫した展開が待っている場所です。しかし、虐殺ルートでは、そこには不気味な静寂が支配しています。アズゴアは玉座の間にいますが、プレイヤーの圧倒的な力の前に無力であり、会話の余地すらありません。

プレイヤーがアズゴアに近づくと、通常であればフラウィが登場し、アズゴアのSOULを奪って最終ボスへと変身します。しかし、虐殺ルートでは、プレイヤーの存在そのものがフラウィにとって最大の恐怖となっています。フラウィはプレイヤーの底知れないDeterminationと、容赦のない殺戮の意志を見て、完全に怯えきっています。

ここで、フラウィは自身の過去について、通常ルートよりも詳細かつ切実に語り始めます。彼は元々、アズゴアとトリエルの息子、アズリエルであったこと、そして最初のニンゲン(人間)であるキャラ(Chara)との友情、地上への脱出の試み、そして悲劇的な最期を遂げたことを明かします。彼は「感情」を持たない怪物として蘇り、その空虚さを埋めるために様々な行為、特にSAVEとLOADの能力を使って楽しんだこと、そしてプレイヤーが来る前に何度も時間軸をリセットして「遊び尽くした」ことを告白します。

フラウィは、自身の冷酷で計算高い行動が、感情を持たないために行ったことであると弁明します。そして、感情を持つことができない彼にとって、プレイヤーの「感情を無視した」徹底的な殺戮は、彼自身さえをも凌駕する恐怖の対象となったのです。彼はプレイヤーが一体何者なのか、どうすればそんなことができるのか理解できず、完全にパニックに陥ります。彼はアズリエルだった頃の姿に戻ってプレイヤーに懇願したり、怪物としての本性を見せて脅迫したりと、必死に生き延びようとしますが、その試みは全て無駄に終わります。

プレイヤーは、アズゴアを躊躇なく一撃で殺害します。そして、目の前で必死に命乞いをするフラウィに対しても、一切の慈悲なく止めを刺します。フラウィは最期まで、アズリエルとしての過去の自分に縋りつきながら消滅します。

地下世界の王と、時間軸を操る力を持っていたフラウィ。通常ルートであれば最強の存在である彼らを、プレイヤーはあっけなく、そして冷酷に排除します。このシーンは、プレイヤーがどれほど歪んだ、そして強大な力を手に入れたかを如実に示しています。

そして、地下世界の全てのSOUL(モンスター)が消滅し、残るはプレイヤー(フリスク)のSOULと、かつて人間であったSOUL、そして地下世界そのものです。この時、真の「知られざる真実」がプレイヤーの目の前に現れます。

キャラ(Chara)の顕現

アズゴアとフラウィを倒し、地下世界にプレイヤー以外の動くものがなくなった時、画面に突如として「キャラ(Chara)」という存在が現れます。

キャラは、Undertaleの物語において、様々な形でその存在が示唆されてきたキャラクターです。ゲーム開始時にプレイヤーが入力する名前は、実は「最初のニンゲンの名前」、すなわちキャラの名前であると終盤で明らかになります。また、ナレーションのような形でプレイヤーの行動や周囲の状況を表現しているテキストの一部は、キャラの視点や感情が反映されているのではないか、と多くのプレイヤーによって推測されていました。

しかし、Gルートの最後で現れるキャラは、単なるナレーションや過去の存在ではありません。彼(彼女)は明確な自我と意志を持った存在として、プレイヤーに直接語りかけてきます。

画面は暗転し、ノイズとともにキャラの姿が映し出されます。その姿は具体的には描かれず、曖昧なシルエットや、恐ろしい赤い目が強調されることが多いです。彼(彼女)はプレイヤーに向かって、静かで、しかし底冷えするような声で語り始めます。

「やあ。」(Greetings.)

そして、キャラはプレイヤーが成し遂げたこと、すなわち地下世界の全てのモンスターを殺戮し、LVを最大限に高めた行為について言及します。彼(彼女)は、プレイヤーがこの行動を共に行った「仲間」であるかのように語ります。

「あなたのステータスが最大になったね。」 (Our stats are maximum.)
「一緒に、僕たちの目的を達成した。」 (We have reached the absolute limit together.)

ここでキャラは、プレイヤーが地下世界を滅ぼした理由を問います。彼(彼女)は、プレイヤーの行動が単なるゲームのクリアや好奇心ではなく、より深い、そして恐ろしい動機に基づいていると示唆します。

そして、キャラはプレイヤーに、自身の正体と、プレイヤーとの関係について衝撃的な真実を告げます。

「あなたは『ニンゲン』のSOULと、その『決意』を持つニンゲンだ。」 (You are the human with a SOUL, and a human with Determination.)
「僕の名前はキャラ。」 (My name is Chara.)
「そして、僕の名前を付けたのは、あなただ。」 (And you are the one who gave me my name.)

この瞬間、ゲーム開始時にプレイヤーが入力した名前が、単なるゲーム上の設定ではなく、この「キャラ」という存在とプレイヤーを結びつける鍵であったことが明確になります。これは、Undertaleがプレイヤー自身の行動、そしてプレイヤーという存在そのものをゲームの物語に取り込んでいることを示す、最も強烈なメタフィクション的要素です。

キャラは続けます。彼(彼女)は、プレイヤーが最初から「強いDetermination」を持って地下世界に落ちてきたこと、そしてそのDeterminationが眠っていた自分を目覚めさせたことを語ります。そして、プレイヤーが地下世界を探索し、モンスターを殺戮し、力を集める過程を通して、自分もまた力をつけ、実体を得ていったと説明します。

キャラは、LV(Level Of Violence)とEXP(Execution Points)について、サンズと同じようにその真の意味を語ります。しかし、サンズがそれを悲しみや警告として語ったのに対し、キャラはそれを肯定し、自らの力の源泉として語るかのようです。プレイヤーが殺戮を繰り返すことで、他者との感情的な繋がりを断ち切り、自身の中に「空虚」や「歪み」を生み出したこと、それがキャラの力となり、プレイヤーとキャラの「感覚」を共有させたことを示唆します。

つまり、キャラはプレイヤーの行動によって創造され、あるいは呼び覚まされ、力を得た存在なのです。プレイヤーが地下世界を破壊する道を選んだことが、キャラという破壊衝動の権化を完全に顕現させたのです。

そして、キャラはプレイヤーに最後の提案をします。

「僕たちの目的は、世界を『無』にすることだった。」 (Our goal was to render this world to nothingness.)
「そして、僕たちはそれを達成した。」 (And we have achieved it.)
「次に進もう。」 (Now. Let us move on to the next.)

キャラは、プレイヤーが行った破壊行為は、この世界を消滅させるという自分たちの「共有された目的」の達成であると断言します。そして、その次のステップとして、この世界そのものを消去することを提案します。

プレイヤーには、「消去する(ERASE)」か「消去しない(DO NOT)」かの選択肢が提示されます。

  • 「消去する(ERASE)」を選択した場合: キャラはプレイヤーの選択を肯定し、「良い」と言います。画面が光に包まれ、ゲームは終了します。
  • 「消去しない(DO NOT)」を選択した場合: キャラはプレイヤーの選択に驚き、そして怒りを示します。彼(彼女)はプレイヤーが自分に逆らうことに不快感を露わにし、恐ろしい表情でプレイヤーに襲いかかります。画面は強烈なノイズと赤い光に包まれ、プレイヤーはゲームオーバーとなります。

どちらの選択肢を選んでも、結果的に画面はブラックアウトし、ゲームはそこで一旦終了します。しかし、この結末は、ゲームの世界がプレイヤーの行為によって完全に破壊されたことを意味します。

4. Gルートの真実:キャラとは何者か?

虐殺ルートの最後で現れるキャラは、Undertaleというゲームにおいて最も議論の的となる存在の1人です。彼(彼女)の正体と役割については、様々な解釈が存在します。ここが「知られざる真実」の最も深い部分であり、単なるストーリーテリングを超えた、ゲームとプレイヤーの関係性に関する考察が含まれています。

キャラに関する主な解釈は以下の通りです。

  1. 純粋な悪の存在: 最初から地下世界や人間に対して強い憎悪を抱いており、プレイヤーの殺戮行動を利用して復活し、世界を破壊しようとした存在。
  2. プレイヤーの邪悪な衝動の具現化: プレイヤーがゲームを「攻略」するために、感情を排してモンスターを殺戮するという選択をした結果、プレイヤー自身の心に宿る「破壊衝動」や「ゲームを壊したい」という願望が形になった存在。プレイヤーこそが悪であり、キャラはその鏡像である。
  3. Determinationの負の側面: Determinationという力が、希望や創造だけでなく、破壊や消滅にも使われ得ることを示す存在。プレイヤーがその力(SAVE/LOAD、圧倒的な攻撃力)を地下世界の破壊に使ったことで、Determinationの負の側面がキャラとして顕現した。
  4. 腐敗したナレーター: 元々、プレイヤーの行動をガイドするナレーターのような存在だったが、プレイヤーがGルートを選択し、非道な行為を繰り返すにつれて、そのナレーションが歪み、破壊的な意志を持つ独立した存在へと変貌した。プレイヤーのLV/EXPの上昇が、ナレーターの「感覚」をプレイヤーと共有させた結果。
  5. 最初のニンゲンの復讐心/絶望: 地上に希望を見出せず死んだ最初のニンゲン、キャラ本人の地下世界や人類に対する深い絶望や復讐心が、プレイヤーのDeterminationと殺戮によって増幅され、実体を持った存在。彼(彼女)はアズリエルと共に地上に出ようとしたものの失敗し、その時の絶望が破壊へと向かわせた。
  6. プレイヤーとフリスク、そしてキャラの複合体: プレイヤーの意志、フリスクの体、そして最初のニンゲンであるキャラの存在が、Gルートを通して融合し、プレイヤーの破壊的な意志を体現する新たな「何か」となった。キャラが「僕たちのステータス」や「僕たちの目的」と言うのは、この融合を示唆している。

どの解釈が「正しい」かは、ゲーム内では明確に断言されません。しかし、重要なのは、キャラという存在がプレイヤーの「虐殺」という行動と深く結びついているという事実です。キャラは、プレイヤーが地下世界で行ったことの結果として生まれ、あるいは力を得た存在であり、プレイヤーの行動がなければ、おそらくこのような形でプレイヤーの前に現れることはなかったでしょう。

キャラがプレイヤーに語りかける言葉の端々からは、プレイヤーの「ゲームをクリアしたい」「全部見たい」「最強になりたい」といったメタ的な願望や、それらを達成するためならゲーム内のキャラクターの感情や命を犠牲にすることも厭わないという冷酷さが読み取れます。キャラは、プレイヤーのその冷酷さ、感情の欠如、そして圧倒的な力への渇望を理解し、それを共有しているかのようです。

「知られざる真実」とは、単にキャラというキャラクターの存在だけでなく、

  • プレイヤーの行動が、地下世界を物理的に破壊するだけでなく、破壊的な意志を持つ実体を創造あるいは覚醒させたという事実。
  • プレイヤーがゲームのシステム(EXP, LOVE)を利用して強くなることが、ゲーム内の倫理的な側面(Violence, Execution)と直結しており、プレイヤー自身の精神やSOULを汚染していく過程であったという事実。
  • Undertaleというゲームが、プレイヤーの「セーブ&ロード」というメタ的な能力や、「ゲームを最後までプレイする」という行為そのものに、ゲーム内の物語として意味を持たせ、倫理的な問いを投げかけているという事実。

これら全てを含めた、プレイヤー自身に突きつけられる「あなたは何者なのか? 何のためにこの行為を行ったのか?」という問いかけそのものなのです。キャラは、その問いの答え、あるいはその結果として現れた鏡像と言えるでしょう。

5. 虐殺ルートの代償:ソウルレスPACIFISTエンディング

Gルートの結末は、単にその周回のゲームを破壊して終わるだけではありません。Undertaleの最も恐ろしい側面の1つは、Gルートの行動がその後のプレイに永続的な影響を及ぼすという点です。

Gルートをクリアし、キャラに世界を消去させた後、ゲームを再起動すると、最初は真っ暗な画面が表示されます。しばらく待つと、キャラが再び画面に現れます。

キャラは、破壊された世界を見て、それを元に戻したいのかとプレイヤーに問いかけます。そして、世界を元に戻すためには「何か」が必要だと言います。その「何か」とは、プレイヤーのSOULです。

「僕にあなたのSOULを渡しなさい。」 (Give me your SOUL.)
「そうすれば、この世界を返してあげる。」 (Then, I will return this world to you.)

プレイヤーには拒否する選択肢はありません。強制的にプレイヤーのSOULはキャラに奪われます。この取引の後、プレイヤーは再びゲームを最初からプレイできるようになります。SAVEファイルはリセットされ、一見、何事もなかったかのように見えます。

しかし、これは完全なリセットではありません。プレイヤーはSOULをキャラに奪われた状態であり、この状態でのプレイは「ソウルレス(Soulless)」な状態として記録されます。このソウルレスな状態でのプレイは、その後のGルート以外のエンディング、特にPルートのエンディングに影響を及ぼします。

ソウルレスな状態でPルートをプレイし、モンスターたちと地上に出るハッピーエンドを迎えたとします。通常であれば、フリスクとモンスターたちは共に幸せに地上で暮らす、感動的なエンディングです。しかし、ソウルレス状態でのPルートエンディングは、僅かに、しかし決定的に異なります。

エンディングの最後のシーン、地上に出た仲間たちと一緒に写るフリスクの集合写真に異変が起こります。フリスクの顔が一瞬、キャラのものに変化したり、フリスクの目がGルートの最後で見たキャラの恐ろしい赤い目になったりします。

さらに、エンディング後、プレイヤーが操作権を得てから画面を動かさずにしばらく待っていると、フリスクの目が再び赤く光り、振り返ってプレイヤー(画面のこちら側)を見つめます。そして、ゲームは暗転し、不気味な笑い声が響き渡ります。

これは、プレイヤーがGルートを選んだ代償として、プレイヤーのSOULがキャラに奪われ、その影響がフリスク、そしてゲームの世界に永久的に刻み込まれたことを示しています。例えPルートを選び直してモンスターを救ったとしても、その「平和」は真の意味でプレイヤー自身の達成したものではなく、キャラによって許可された、あるいはキャラの影響下にある状態なのです。プレイヤーのSOULはキャラに支配されており、フリスクという体を通して、キャラがいつでも世界を再び支配したり、破壊したりできる可能性が示唆されています。

このソウルレスPルートエンディングは、UndertaleのGルートの結末が単なるゲームオーバーではなく、プレイヤーの行為がゲームの世界に永続的な「傷跡」を残すことを明確に示しています。プレイヤーが一度でもGルートを選び、世界の破壊者となったなら、その罪は完全にリセットされることはなく、その後の全てのプレイに影を落とすのです。真のハッピーエンドは、もはやGルートを一度でも通過したプレイヤーには訪れないのかもしれません。これが、UndertaleのGルートが持つ最も冷酷で、哲学的なメッセージの1つです。

6. 哲学的な問い:プレイヤーとゲームの関係性

Undertaleの虐殺ルートとその結末は、単なるゲームのストーリーテリングを超え、プレイヤーとゲームというメディアの関係性について深い哲学的な問いを投げかけます。

  • プレイヤーの責任: Gルートは、プレイヤーがゲームの世界に対してどれほどの責任を負うべきかを問いかけます。ゲームのキャラクターたちは感情を持ち、命を持っています。プレイヤーが彼らを無差別に殺戮する行為は、単なるゲームクリアのため、あるいは好奇心のためであったとしても、ゲーム内の世界においては許されない罪として描かれます。Undertaleは、プレイヤーがゲーム世界に介入する際の倫理を問うているのです。
  • セーブとロードの意味: 通常のゲームでは、セーブとロードは単なるシステム上の機能であり、プレイヤーの失敗をなかったことにしたり、異なる展開を試したりするためのツールです。しかし、Undertaleでは、特にサンズやフラウィ、そしてキャラのセリフを通して、セーブとロードがゲーム内の時間軸(タイムライン)を操る行為として描かれます。プレイヤーのDeterminationこそが、この力を使える唯一の存在であるかのように示唆されます。Gルートでは、プレイヤーがこの力を地下世界の破壊という目的のために濫用した結果、キャラという存在を生み出し、世界に修復不可能な傷をつけます。これは、プレイヤーがゲームシステムを「利用」する行為そのものが、ゲーム世界に影響を与えるという、メタ的な構造を内包しています。
  • フリスク、キャラ、そしてプレイヤー: プレイヤーが操作する主人公フリスクは、Gルートにおいては次第に感情を失い、プレイヤーの冷酷な意志に従うだけの存在に見えます。そして、最後に現れるキャラは、フリスクやプレイヤーと一体化しているかのように語ります。これは、プレイヤー、操作キャラクター、そしてゲームシステムが生み出した結果としての「悪意」が複雑に絡み合っていることを示唆しています。プレイヤーはフリスクを通して行動しますが、その行動の背後にある意志はプレイヤー自身のものです。そして、その意志が最も邪悪な形を取った時、キャラという存在が明確な自我を持って現れる。これは、プレイヤーがゲーム世界に投影する自己、あるいは自己のダークサイドを映し出しているかのようです。
  • 「ゲームの達成」の代償: 多くのゲームでは、全ての要素をコンプリートすることや、最強になることが目標とされます。UndertaleのGルートは、まさにその「ゲーム的な達成」を極限まで追求した結果です。しかし、ゲームはプレイヤーに、その達成がゲーム世界、キャラクター、そしてプレイヤー自身にどれほどの代償を強いるかを示します。Gルートを「クリア」することは、ゲームを「破壊」することと同義であり、その「クリアデータ」は、ゲームの世界が傷ついた証拠として残るのです。

UndertaleのGルートの結末は、単なる物語の終わりではなく、プレイヤー自身への問いかけです。なぜ、あなたは地下世界を破壊したのか? その行為から何を得たのか? その結果、何が失われたのか? キャラという存在は、その問いの答えとして、プレイヤーの目の前に突きつけられた、プレイヤー自身の冷酷さ、あるいはゲームというメディアとの歪んだ関係性が生み出した「知られざる真実」なのです。

7. まとめ:虐殺ルートの「知られざる真実」とは何か?

Undertaleの虐殺ルートの最後に隠された「知られざる真実」とは、単一の事実ではなく、幾層にも重なった以下のような要素の総体であると言えます。

  1. キャラの正体と顕現: プレイヤーの殺戮行動によって、地下世界の最初のニンゲンであるキャラが、破壊を目的とする強大な意志を持った存在として明確に顕現すること。キャラはプレイヤーの行動の結果であり、プレイヤーと「目的」を共有する存在として、プレイヤーの目の前に姿を現します。
  2. EXPとLOVEの真の意味: ゲームシステム上の数値であるEXPとLOVEが、それぞれExecution Points(処刑ポイント)とLevel Of Violence(暴力レベル)という、プレイヤーの罪や精神的な歪みを表す概念であることが明確にされること。そして、それがキャラの力を増大させ、プレイヤーとキャラの繋がりを強固にすること。
  3. プレイヤーの行為の永続的な影響: プレイヤーがGルートを選び、キャラにSOULを渡して世界をリセットしたとしても、その行為は完全に帳消しにはならず、その後のプレイ(特にPルート)に「ソウルレス」という形で永続的な傷跡を残すこと。真のハッピーエンドは失われ、キャラの影響が残り続けること。
  4. ゲームとプレイヤーのメタ的な関係性: ゲームの世界がプレイヤーのセーブ/ロードといったメタ的な行為を物語内に取り込み、プレイヤーの選択(特にGルートでの徹底的な破壊)がゲームの世界そのものに決定的な影響を与えるという構造。プレイヤーの「ゲームをプレイする」という行為そのものが、倫理的な問いの対象となること。
  5. プレイヤー自身への問いかけ: キャラという存在を通して、なぜプレイヤーはこのような破壊的な行為を選んだのか、その行為から何を得たのか、そしてその行為の責任は誰にあるのか、といった問いがプレイヤー自身に突きつけられること。キャラは、プレイヤーの「ゲームをクリアする」という動機や、ゲーム世界に対する冷酷さの鏡像である可能性。

Undertaleの虐殺ルートの結末は、単なるバッドエンドではありません。それは、プレイヤー自身の行動とその結果を、ゲームという形式を通して強烈に突きつけてくる、非常に挑戦的で、そして忘れられない体験です。キャラの存在とソウルレスエンドは、「知られざる真実」として、プレイヤーに深い後悔や、自身のゲームプレイに対する反省を促すのかもしれません。それは、Undertaleが単なるRPGではなく、プレイヤー自身をも物語の一部とする、唯一無二の体験型アートワークであることの証明なのです。このゲームを最後までプレイし、特にこの虐殺ルートの終着点に到達したプレイヤーは、ゲームというメディア、そして自分自身のあり方について、深く考えさせられることになるでしょう。

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