なぜFedoraを選ぶ?メリットと始め方を紹介

なぜFedoraを選ぶ?メリットと始め方を紹介

はじめに

Linuxディストリビューションは数多く存在し、それぞれに特色や目的があります。初心者向けのUbuntu、安定性で定評のあるDebian、エンタープライズ用途のRHEL/CentOS、軽量なArch Linuxなど、ユーザーのニーズに合わせて多様な選択肢があります。この記事で焦点を当てるのは、その中でも特に「最新技術の積極的な採用」と「安定性」を両立しようとするユニークな立ち位置を持つディストリビューション、Fedoraです。

Fedoraは、世界最大のエンタープライズLinux企業であるRed Hatが支援するコミュニティプロジェクトであり、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の開発における最先端の研究開発の場としての役割も担っています。しかし、Fedora自身は完全に独立した、コミュニティ主導の無料オープンソースプロジェクトです。

なぜ数あるLinuxディストリビューションの中からFedoraを選ぶべきなのでしょうか? そのメリットは何で、どのようにしてFedoraの世界に足を踏み入れることができるのでしょうか? 本記事では、Fedoraの魅力、そのメリットを詳細に解説し、実際にFedoraを使い始めるための具体的なステップを丁寧に紹介します。

Fedoraとは?

Fedora Projectは、オープンソースソフトウェアの進歩を推進することを目的とした、コミュニティ主導のLinuxディストリビューション開発プロジェクトです。その名前は、Red Hatのロゴの一部である帽子(フェドラ帽)に由来しています。FedoraはRed Hatによって支援されていますが、その開発は世界中のボランティア開発者やFedora Projectの従業員によって行われています。

Fedoraの最も顕著な特徴の一つは、その「Fast mover」としての性質です。つまり、比較的新しいバージョンのカーネル、デスクトップ環境、主要ライブラリ、開発ツールなどを積極的に採用します。これは、新しい技術をいち早く試したい開発者や、最新のハードウェアサポートを必要とするユーザーにとって大きな魅力となります。

Fedoraは、約6ヶ月ごとに新しいバージョンをリリースするという、比較的短い開発サイクルを持っています。これにより、常に最新のソフトウェアパッケージを利用できるようになっています。一方で、この短いサイクルは、長期的なサポート(LTS: Long Term Support)を期待するユーザーにとっては注意が必要な点でもあります。各Fedoraリリースは、新しいバージョンが登場してから約13ヶ月間サポートされます。つまり、常に最新の状態を維持するためには、約1年ごとにメジャーバージョンアップグレードを行う必要があります。

Fedora Projectは、単一のOSを提供するだけでなく、特定の用途に特化した様々な「エディション」や「スピン」を提供しています。

  • Fedora Workstation: デスクトップユーザー向けの標準エディションです。デフォルトでGNOMEデスクトップ環境を採用しており、開発ツールや日常的なタスクに必要なソフトウェアが揃っています。多くのユーザーにとって、これが最初にFedoraを試す際の選択肢となるでしょう。
  • Fedora Server: サーバー用途に特化したエディションです。最新のサーバーソフトウェアと管理ツールを提供します。
  • Fedora IoT: IoTデバイス向けに設計されたエディションです。コンテナベースのワークロードに最適化されています。
  • Fedora Cloud: クラウド環境での利用を想定したイメージを提供します。
  • Fedora Spins: GNOME以外のデスクトップ環境をデフォルトとするバリアントです。KDE Plasma、Xfce、LXQt、Cinnamon、MATE、LXDE、i3など、様々なデスクトップ環境から好みのものを選ぶことができます。

また、開発中の新しい技術やアイデアをテストするためのExperimental Branchesや、特定の目的のためのLabs(例:Astrology Lab, Scientific Lab)なども存在します。

Fedoraは、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) の上流(アップストリーム)プロジェクトとしての役割も担っています。これは、Fedoraで開発・テストされた技術や機能が、RHELの次のバージョンに取り込まれることを意味します。したがって、FedoraはRHELの将来の姿を先取りして見ることができる場所とも言えます。しかし、FedoraはRHELのベータ版やテスト版ではありません。Fedoraはそれ自体が独立した、安定したオペレーティングシステムとして設計されており、多くのユーザーが日常的に利用しています。

なぜFedoraを選ぶのか? – メリットの詳細

数多くのLinuxディストリビューションが存在する中で、なぜあえてFedoraを選ぶのでしょうか? Fedoraが提供する独自のメリットを詳細に見ていきましょう。

1. 最新技術の積極的な採用(Cutting Edge)

Fedoraの最大の魅力の一つは、常に最新のオープンソースソフトウェアを提供している点です。Linuxカーネル、GNOMEやKDEといったデスクトップ環境、GCCやClangのようなコンパイラ、PythonやRubyのようなプログラミング言語、システムライブラリなど、主要なコンポーネントが常に最新バージョンにアップデートされます。

  • 最新カーネル: 最新のLinuxカーネルが提供されるため、新しいハードウェア(CPU、GPU、Wi-Fiチップなど)に対するサポートが迅速に追加されます。これにより、購入したばかりの最新PCや周辺機器でも問題なく動作する可能性が高まります。また、カーネルの改善によるパフォーマンス向上や新機能もいち早く利用できます。
  • 最新デスクトップ環境: デフォルトのGNOMEをはじめ、各スピンで提供されるデスクトップ環境も最新版が利用できます。これにより、最新のユーザーインターフェース、機能改善、パフォーマンス最適化を享受できます。例えば、Waylandディスプレイサーバーへの移行、PipeWireによるオーディオ処理の改善、Btrfsファイルシステムの強化など、OSの基盤に関わる大きな変更もFedoraで先行して導入されることが多いです。
  • 最新開発ツールとライブラリ: 開発者にとって、最新バージョンのコンパイラ、インタープリタ、ライブラリ、開発ツールがすぐに利用できることは大きなメリットです。新しい言語機能やフレームワーク、最適化などをすぐに試すことができます。これは、最先端の技術トレンドを追いたい開発者や、特定の最新ライブラリに依存するプロジェクトに取り組む開発者にとって非常に重要です。

もちろん、最新技術の採用にはトレードオフも存在します。新しいソフトウェアには未知のバグが含まれている可能性があり、ごく稀に予期しない問題が発生することもあります。しかし、Fedora Projectは厳しいテストプロセスを経てリリースを行っており、その安定性は多くのユーザーが日常的に利用できるレベルにあります。最先端でありながら、無闇に不安定ではないというバランスがFedoraの特徴です。

2. 安定性と信頼性

「最新技術」と聞くと「不安定」というイメージを持つかもしれません。しかし、Fedoraは単に最新のソフトウェアを詰め込んだだけではありません。Fedora Projectは、Red Hatのエンジニアリングリソースとコミュニティの広範なテストによって、高いレベルの安定性と信頼性を維持しようと努めています。

  • 厳格なテストプロセス: Fedoraの各リリースは、アルファ版、ベータ版を経て、広範なテストとバグ修正が行われます。コミュニティメンバーによるテスト、自動化されたテスト、Red Hatによる品質保証プロセスなどが連携して行われます。
  • SELinuxのデフォルト有効化: Fedoraは、セキュリティ強化のためのメカニズムであるSELinux (Security-Enhanced Linux) がデフォルトで有効(Enforcingモード)になっています。これは、Mandatory Access Control (MAC) をOSに導入することで、システムのセキュリティを大幅に向上させます。SELinuxは設定が複雑になりがちですが、Fedoraでは適切なポリシーがデフォルトで適用されており、多くの場合は意識することなくセキュリティの恩恵を受けることができます。
  • 迅速なセキュリティアップデート: 脆弱性が発見された場合、セキュリティパッチは迅速に提供されます。最新のソフトウェアを利用しているため、既知の脆弱性への対応も早くなります。

Fedoraの安定性は、Debian Stableのような長期サポート(LTS)を持つディストリビューションとは性質が異なります。Fedoraの安定性は、特定のリリースが約1年間「使える」状態であることに主眼が置かれています。システムを数年間同じ状態に保ちたいユーザーや、ミッションクリティカルなサーバー用途で最大限の安定性を求める場合は、RHELやそのクローン(AlmaLinux, Rocky Linux)が適しているかもしれません。しかし、デスクトップ用途や開発環境として、最新技術のメリットを享受しつつ、日常利用に耐えうる安定性を求めるのであれば、Fedoraは非常に優れた選択肢です。

3. 強力なコミュニティと開発体制

Fedora Projectは、世界中の開発者、テスター、翻訳者、ドキュメント作成者などからなる活発なコミュニティによって支えられています。

  • 広範なコミュニティサポート: Fedoraのユーザーや開発者は、フォーラム、メーリングリスト、IRCチャンネル、Matrixスペースなどで活発に情報交換を行っています。問題が発生した場合や疑問点がある場合、これらのコミュニティリソースを利用してサポートを受けることができます。
  • 豊富なドキュメント: Fedora Wikiや公式ドキュメントは非常に充実しており、インストールから高度な設定まで、幅広い情報が提供されています。
  • Red Hatの貢献: Red Hatは、多数のエンジニアをFedora Projectの開発に貢献させています。これにより、プロフェッショナルなエンジニアリングの知見がプロジェクトに持ち込まれ、技術的な品質と開発ペースを高いレベルで維持するのに役立っています。
  • オープンな開発プロセス: Fedoraの開発は透明性が高く、誰でもプロジェクトに参加し、コードの貢献、バグ報告、機能提案などを行うことができます。これは、ユーザーがOSの開発に影響を与えることができる機会を提供します。

活発なコミュニティは、問題解決の助けとなるだけでなく、新しい技術やアイデアに触れる機会も提供してくれます。オープンソースプロジェクトの醍醐味の一つを味わうことができるでしょう。

4. フリーソフトウェアとオープンソースの原則を強く支持

Fedora Projectは、フリーソフトウェアとオープンソースソフトウェアの原則を非常に重視しています。

  • プロプライエタリなソフトウェアの不採用: デフォルトのFedoraインストールには、プロプライエタリなソフトウェアやドライバは含まれていません。これは、完全にオープンな環境を提供することを目的としています。例えば、NVIDIAの公式ドライバや、MP3などの一部のメディアコーデックは、デフォルトでは利用できません。
  • 完全にオープンな環境: フリーソフトウェアの原則に共感するユーザーにとって、Fedoraは理想的な環境を提供します。使用しているソフトウェアが全てオープンソースであり、自由に利用、研究、改良、配布できるという安心感があります。

ただし、現実的にはプロプライエタリなドライバやコーデックが必要になる場面は多々あります。Fedora Project自身はこれらを提供しませんが、RPM Fusionのようなサードパーティのリポジトリを利用することで、比較的簡単にプロプライエタリなソフトウェアを追加することができます。この点は、Debianがnon-freeリポジトリを提供しているのと似ていますが、Fedoraの場合はサードパーティのリポジトリに依存することになります。

5. セキュリティへの高い意識

Fedoraは、セキュリティを非常に重視して設計されています。前述のSELinuxのデフォルト有効化はその代表例ですが、他にも様々なセキュリティ機能が組み込まれています。

  • 定期的なセキュリティパッチ: 脆弱性が発見されると、Fedora Projectは迅速にセキュリティアップデートをリリースします。システムのアップデートを定期的に行うことで、常に安全な状態を保つことができます。
  • 最新のセキュリティ技術: ASLR (Address Space Layout Randomization) や PIE (Position-Independent Executables) といった、現代のシステムにおける基本的なセキュリティ保護機能がデフォルトで有効になっています。また、新しいセキュリティ技術が開発されると、Fedoraでいち早く導入される傾向があります。
  • ファイアウォールの設定: デフォルトでファイアウォールが有効になっており、不要なネットワークアクセスをブロックします。

これらのセキュリティ対策は、特にネットワークに接続して利用するデスクトップやサーバーにとって非常に重要です。Fedoraは、ユーザーが安全にコンピュータを利用できる環境を提供することに力を入れています。

6. 開発者にとっての魅力

Fedoraは、特に開発者から高い評価を得ています。その理由は多岐にわたります。

  • 最新の開発環境: 最新バージョンのプログラミング言語、ライブラリ、フレームワーク、コンパイラ、デバッガなどがすぐに利用できます。これは、最先端の技術を用いた開発や、新しい技術の学習に最適です。
  • コンテナ技術との親和性: Fedoraは、Red Hatが主導するPodmanやBuildahといったコンテナツールとの親和性が非常に高いです。もちろんDockerも利用できます。コンテナベースの開発やデプロイメントを行う開発者にとって、Fedoraは優れたプラットフォームとなります。
  • 仮想化技術のサポート: KVM (Kernel-based Virtual Machine) やQEMUといった仮想化技術を利用して、他のOSや環境を構築・テストしやすい環境が整っています。
  • RHEL/CentOS Streamとの互換性: FedoraはRHELの上流プロジェクトであるため、Fedoraで開発したアプリケーションやスクリプトは、RHEL、CentOS Stream、そしてRHELクローンであるAlmaLinuxやRocky Linuxといったエンタープライズ系の環境に比較的容易に移植できます。これは、本番環境がRHEL系である開発者にとって大きなメリットです。

開発に必要なツールが最新かつ豊富に揃っているため、Fedoraをメインの開発マシンとして利用する開発者は少なくありません。

7. シンプルでクリーンなシステム

Fedoraは、デフォルトで必要最低限のソフトウェアのみがインストールされており、非常にシンプルでクリーンなシステムを提供します。

  • bloatware(不要なソフトウェア)の少なさ: 他の一部のディストリビューションのように、デフォルトで多数のアプリケーションがプリインストールされているわけではありません。ユーザーが必要なソフトウェアを後から追加していくスタイルです。
  • カスタマイズの容易さ: システムがシンプルであるため、ユーザーの好みに合わせてカスタマイズしやすい基盤となっています。不要なサービスが動作していないため、リソースの消費も抑えられます。

これにより、システムリソースをより効率的に利用できるだけでなく、自分が使用しているソフトウェアを把握しやすくなります。

8. デスクトップ体験

Fedora Workstationは、GNOMEデスクトップ環境との親和性が非常に高いです。Red HatはGNOMEの開発に大きく貢献しており、FedoraはGNOMEの最新機能をいち早く取り入れるディストリビューションの一つです。

  • 洗練されたGNOME体験: FedoraのGNOMEは、カスタマイズが少なく、GNOMEプロジェクトが意図するデフォルトに近い体験を提供します。シンプルで直感的なインターフェースは、多くのユーザーにとって使いやすいでしょう。
  • 他のデスクトップ環境: GNOMEが好みでない場合でも、Fedora Spinsとして他の主要なデスクトップ環境(KDE Plasma, Xfceなど)を利用できます。これにより、自分の好みに合ったデスクトップ環境を選ぶ自由があります。

GNOMEは近年大きく進化しており、Wayland、PipeWire、新しい設定ツールなど、多くの最新技術が統合されています。Fedoraはこれらの技術を早期に採用し、デスクトップLinuxの最先端を体験できる環境を提供しています。

Fedoraの注意点・デメリット

Fedoraには多くのメリットがありますが、いくつかの注意点やデメリットも存在します。これらを理解した上でFedoraを選ぶことが重要です。

1. リリースのサイクルが早いことの裏返し

約6ヶ月ごとの新しいリリースは、最新技術を享受できるメリットである反面、定期的なアップグレードが必要となるというデメリットでもあります。

  • アップグレードの必要性: 各リリースはサポート期間が限られているため、セキュリティアップデートなどを継続して受け取るには、定期的に新しいバージョンにアップグレードする必要があります。このアップグレードプロセスは通常スムーズに行われますが、稀に問題が発生する可能性もあります。
  • ソフトウェアの互換性: 比較的新しいバージョンのライブラリに依存するため、古いソフトウェアや、特定のバージョンに強く依存するサードパーティ製アプリケーションとの互換性の問題が発生する可能性があります。

頻繁な変更を避けたいユーザーや、長期的なサポートが必要なミッションクリティカルなシステムには、LTSリリースを提供するUbuntuや、RHELとそのクローンの方が適しているかもしれません。

2. プロプライエタリなソフトウェア・ドライバの扱い

前述の通り、Fedoraはフリーソフトウェアの原則を重視するため、デフォルトではプロプライエタリなソフトウェアやドライバが含まれていません。

  • 追加設定が必要: NVIDIAのグラフィックドライバ、Wi-Fiチップ用のファームウェア、MP3/AACなどのメディアコーデックが必要な場合、RPM Fusionなどのサードパーティリポジトリを追加し、そこからインストールする必要があります。これは、特に初心者にとっては少し手間がかかる作業になる可能性があります。

日常的にプロプライエタリなハードウェアやメディアを利用する場合、この点は考慮が必要です。ただし、一度設定してしまえば、その後の利用はスムーズに行えます。

3. Debian/Ubuntu系との違い

Linuxディストリビューションのユーザー層として大きいのがDebianやUbuntuとその派生です。FedoraはRed Hat系に属するため、これらとはいくつかの点で異なります。

  • パッケージ管理システム: Fedoraはdnf(旧yum)を使用しますが、Debian/Ubuntu系はaptを使用します。コマンドの基本的な使い方に違いがあります(例: sudo dnf install package vs sudo apt install package)。
  • 設定ファイルやディレクトリ構造: システムの内部的な設定ファイルの場所や構造に微妙な違いがある場合があります。
  • コミュニティや情報源: 日本語の情報も増えてきましたが、英語圏を含めても、Debian/Ubuntu系に比べるとユーザー数や情報量は少ない傾向にあります。特に特定のニッチな問題に関する情報を見つけるのが難しい場合があります。

Debian/Ubuntu系の利用経験が長いユーザーは、Fedoraに移行する際にこれらの違いに慣れる必要があります。

Fedoraを始めるには – 導入方法

Fedoraのメリットを理解し、試してみたいと思ったあなたへ。ここでは、Fedora Workstationをコンピュータにインストールする具体的な手順をステップバイステップで解説します。

ステップ0: 事前準備

インストールを始める前に、いくつか準備しておくべきことがあります。

  • コンピュータ: Fedoraをインストールするコンピュータが必要です。既存のOS(Windowsなど)をFedoraに置き換えるのか、デュアルブート(WindowsとFedoraを両方使えるようにする)にするのかを決めましょう。デュアルブートはより複雑なパーティション設定が必要になります。まずは不要なコンピュータや仮想マシンで試すのがおすすめです。
  • USBメモリ: Fedoraのインストールイメージを書き込むためのUSBメモリが必要です。8GB以上の容量を推奨します。USBメモリ内のデータは全て消去されるので、必要なデータは事前にバックアップしておきましょう。
  • インターネット接続: インストール中に最新のパッケージを取得したり、追加のソフトウェアをダウンロードしたりするために、インターネット接続が必要です。有線LANまたはWi-Fiの準備をしておきましょう。
  • システム要件の確認: Fedora Workstationは、比較的モダンなハードウェアを想定しています。公式サイトで推奨されるシステム要件(CPU、メモリ、ディスク容量など)を確認しておきましょう。一般的には、最近の数年間に製造されたPCであれば問題なく動作します。
  • データのバックアップ: 既存のOSや重要なデータがある場合、必ずバックアップを取ってください。 インストール作業中の予期せぬ問題でデータが失われるリスクはゼロではありません。

ステップ1: Fedora Workstationのダウンロード

Fedoraの公式ウェブサイトからインストール用のISOイメージファイルをダウンロードします。

  1. WebブラウザでFedora Projectの公式サイト(getfedora.org など)にアクセスします。
  2. 「Fedora Workstation」のダウンロードページを探します。
  3. 最新バージョンの「Fedora Workstation Live ISO」イメージをダウンロードします。通常はx86_64という名前の付いたものが一般的なPC向けです。ファイルサイズは数GBあります。

ダウンロードしたISOファイルが破損していないか確認するために、SHA256チェックサムなどのハッシュ値を検証することが推奨されますが、必須ではありません。

ステップ2: インストールメディアの作成

ダウンロードしたISOイメージをUSBメモリに書き込み、起動可能なインストールメディアを作成します。この作業によって、USBメモリの内容は全て消去されます。

  • Windowsの場合:

    • Fedora Media Writer (推奨): Fedora Project公式のツールです。Fedora Media Writerをダウンロードしてインストールし、画面の指示に従ってISOファイルを選択し、USBメモリに書き込みます。最も簡単で確実な方法です。
    • Rufus: 高機能なUSBブータブルメディア作成ツールです。ダウンロードして実行し、ISOファイルとUSBメモリを選択して書き込みます。
    • balenaEtcher: シンプルで使いやすいUSBブータブルメディア作成ツールです。Windows、macOS、Linuxに対応しています。
  • macOSの場合:

    • Fedora Media Writer: macOS版も提供されています。
    • balenaEtcher: macOS版を利用できます。
    • ddコマンド: ターミナルを使って手動で書き込む方法です。dd if=/path/to/downloaded.iso of=/dev/diskX bs=4M のように使用しますが、対象デバイス(diskX)を間違えると内蔵ディスクを消してしまうリスクがあるため、注意が必要です。diskutil list コマンドでUSBメモリのデバイス名を事前に確認してください。
  • Linuxの場合:

    • Fedora Media Writer (推奨): Linux版も提供されています。
    • ddコマンド: sudo dd if=/path/to/downloaded.iso of=/dev/sdX status=progress bs=4M のように使用します。/dev/sdXはUSBメモリのデバイス名です。lsblkfdisk -lコマンドで事前に確認してください。デバイス名全体(例: /dev/sdb)を指定し、パーティション番号(例: /dev/sdb1)を付けないように注意してください。

いずれの方法でも、書き込みが完了したらUSBメモリを安全に取り外します。

ステップ3: コンピュータを起動し、BIOS/UEFI設定を変更

作成したUSBインストールメディアからコンピュータを起動するように設定を変更します。

  1. コンピュータをシャットダウンします。
  2. 作成したUSBインストールメディアをコンピュータに差し込みます。
  3. コンピュータの電源を入れ、起動直後に特定のキー(メーカーやモデルによって異なる)を押してBIOS/UEFI設定画面に入るか、ブートメニューを表示させます。
    • 一般的なキー: Del, F2, F10, F12, Esc など。PCの起動時に画面に表示されることが多いです。
  4. BIOS/UEFI設定画面に入ったら、「Boot Order」(起動順序)や「Boot Priority」といった項目を探します。
  5. USBメモリ(または「Removable Device」など)を内蔵HDD/SSDよりも優先して起動するように順序を変更します。
  6. 設定を保存して終了します。コンピュータが再起動し、USBメモリから起動するはずです。
  7. Secure Boot: 一部の新しいPCではSecure Bootが有効になっている場合があります。FedoraはSecure Bootに対応していますが、稀に問題が発生することがあります。もし起動できない場合は、BIOS/UEFI設定でSecure Bootを一時的に無効にしてみてください。インストール完了後に再度有効にしても問題ない場合が多いです。

ステップ4: Fedora Liveシステムの起動

USBメモリから起動すると、Fedoraの起動メニューが表示されます。

  1. 通常は一番上の項目、「Start Fedora-Workstation-Live」やそれに類する項目を選択してEnterキーを押します。
  2. しばらく待つと、Fedoraのデスクトップ画面が表示されます。これはUSBメモリ上で動作している「Liveシステム」です。このLiveシステムからFedoraを試用することも、内蔵ディスクにインストールすることもできます。
  3. デスクトップ画面が表示されたら、画面上にある「Install to Hard Drive」(または「Install Fedora」)のようなアイコンをダブルクリックして、インストールプログラムを起動します。

ステップ5: Fedoraのインストール

インストールプログラムが起動したら、画面の指示に従って設定を進めます。

  1. 言語選択: 使用する言語を選択します。ここで選択した言語が、インストールプロセスおよびインストール後のシステムのデフォルト言語になります。
  2. インストールの概要: インストール先、キーボードレイアウト、タイムゾーンなど、主要な設定項目が表示されます。項目に赤い感嘆符が付いている場合、その設定が完了していないことを意味します。全ての項目を設定していく必要があります。
  3. キーボード: キーボードレイアウトを確認または変更します。日本語キーボードを使用している場合は、「Japanese」を選択します。
  4. 時刻と日付: タイムゾーンを設定します。インターネットに接続されていれば、自動的に時刻が同期されます。
  5. インストールの保存先 (最も重要な設定): Fedoraをインストールするディスクとパーティション構成を指定します。
    • 自動パーティション: 最も簡単な方法です。ディスク全体をFedoraに割り当てる場合や、既存のパーティション構成を全て破棄してシンプルにインストールしたい場合に適しています。「自動構成」を選択し、インストール対象のディスクを選択します。
    • 手動パーティション (カスタム): 既存のOSを残してデュアルブートにしたい場合や、パーティション構成を細かく制御したい場合に選択します。「カスタム」を選択し、「完了」をクリックすると、パーティション設定画面に移行します。
      • 手動パーティション設定の考え方:
        • Linuxでは、/ (ルートファイルシステム) が必須です。OSの大部分はこのパーティションにインストールされます。
        • /home パーティションを別に作成することを検討しましょう。ユーザーのホームディレクトリ(ドキュメント、写真、設定ファイルなど)がここに保存されます。/home を分離しておくと、将来OSを再インストールする際に/ パーティションのみをフォーマットし、/home をそのまま残すことで、ユーザーデータや設定を保持しやすくなります。
        • swap 領域(またはswapファイル)は、物理メモリが不足した場合に一時的にデータを退避させるための領域です。物理メモリの容量に応じて、同等かそれ以上のサイズを割り当てるのが一般的でしたが、最近ではswapファイルが主流になりつつあります。物理メモリが十分にある(例: 8GB以上)場合は、必ずしも大きなswap領域は必要ありません。
        • UEFIシステムの場合、EFIシステムパーティション (ESP) が必要です。既存のOS(Windowsなど)がある場合は、通常既存のESPを利用できます。新規インストールでディスク全体を使う場合は、インストーラが自動的に作成します(約500MB程度、FAT32形式、マウントポイント/boot/efi)。
        • /boot パーティションを別に作成する場合もありますが、最近は/ の中に含めることが一般的です。カーネルやブートローダーのファイルがここに置かれます。
      • カスタム設定画面では、パーティションスキーム(LVM、Btrfs、標準パーティションなど)を選択し、ディスク上の空き領域や既存のパーティションを操作して、新しいパーティションを作成し、ファイルシステムタイプとマウントポイントを割り当てます。慎重に行わないと既存のデータが失われる可能性があるため、自信がない場合は自動パーティションを選択するか、事前にしっかりと調べてから行いましょう。
    • インストール対象のディスクとパーティション構成が決まったら、「完了」をクリックして概要画面に戻ります。
  6. ネットワークとホスト名: ネットワーク接続の設定(Wi-Fi接続やIPアドレスなど)と、コンピュータのホスト名(ネットワーク上の名前)を設定します。インターネットに接続されていれば、通常は自動設定で問題ありません。
  7. SELinux: デフォルトでは「Enforcing」になっています。特別な理由がない限り、このままにしておくことを強く推奨します。システムのセキュリティが向上します。
  8. ユーザーの作成: rootアカウントはデフォルトで無効になっているため、管理者権限を持つ一般ユーザーアカウントを作成します。
    • ユーザー名、フルネーム、パスワードを設定します。
    • 「このユーザーを管理者にする」にチェックを入れることで、sudoコマンドを使って管理者権限でコマンドを実行できるようになります。通常はこの設定が必要です。
    • rootパスワードを設定することもできますが、sudoを使用するのがFedoraの推奨するやり方です。
  9. インストール開始: 全ての設定が完了したら、「インストールの開始」ボタンが有効になります。これをクリックすると、ファイルのコピーやシステムのセットアップが開始されます。インストールには時間がかかります。

ステップ6: インストール完了と再起動

インストールプロセスが完了すると、「Fedoraが正常にインストールされました。再起動して使用を開始できます。」のようなメッセージが表示されます。

  1. 「インストールの終了」をクリックします。
  2. インストールプログラムが終了し、Liveシステムに戻ります。
  3. システムをシャットダウンまたは再起動します。再起動する際は、USBインストールメディアをコンピュータから安全に取り外してください。

ステップ7: 初期設定とようこそ画面

コンピュータが再起動し、内蔵ディスクにインストールされたFedoraが起動します。

  1. 初回起動時には、いくつかの初期設定を行うための「ようこそ」画面が表示されます。
  2. プライバシー設定: 位置情報サービスや、匿名での診断データ送信を有効にするかを選択します。
  3. オンラインアカウント: Google、Microsoft、Nextcloudなどのオンラインアカウントと連携して、カレンダーや連絡先などを同期できます。必要に応じて設定します。
  4. Fedoraの概要: GNOMEデスクトップの使い方や、Fedoraの簡単な紹介が表示されます。

これらの初期設定を終えると、Fedora Workstationのデスクトップ画面が表示され、ログインできるようになります。

ステップ8: インストール後の基本的な設定

インストールが完了したら、快適にFedoraを利用するための基本的な設定を行います。

  1. システムのアップデート: 最も重要な最初のステップです。インストール後に提供されている最新のアップデートを全て適用します。これにより、セキュリティの強化やバグ修正が行われます。

    • GNOME Software(ソフトウェアセンター)を開き、「アップデート」タブを確認します。
    • または、ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
      bash
      sudo dnf update
    • パスワードを求められたら、インストール時に作成したユーザーアカウントのパスワードを入力します。sudoは管理者権限でコマンドを実行するためのものです。
    • アップデートリストが表示されたら、確認して「y」を入力しEnterを押して実行します。完了には時間がかかる場合があります。アップデート後、システムを再起動することが推奨されます。
  2. RPM Fusionリポジトリの追加(任意): プロプライエタリなソフトウェア(例: NVIDIAドライバ、一部のメディアコーデック)や、Fedora公式リポジトリには含まれない追加のソフトウェアを利用したい場合、RPM Fusionリポジトリを追加します。RPM Fusionは、フリーなソフトウェアと、非フリーなソフトウェア(法的な制約があるものなど)に分かれています。

    • ターミナルを開き、以下のコマンドを実行して両方のリポジトリを追加するのが一般的です。
      bash
      sudo dnf install https://mirrors.rpmfusion.org/free/fedora/rpmfusion-free-release-$(rpm -E %fedora).noarch.rpm https://mirrors.rpmfusion.org/nonfree/fedora/rpmfusion-nonfree-release-$(rpm -E %fedora).noarch.rpm
    • リポジトリの追加後、再度システムのアップデートを行います。
      bash
      sudo dnf update
  3. 追加ソフトウェアのインストール: 必要に応じて、アプリケーションをインストールします。

    • GNOME Software: グラフィカルなソフトウェアセンターです。カテゴリーをブラウズしたり、名前で検索したりして、アプリケーションを簡単にインストールできます。Flatpak形式のアプリケーションも統合されています。
    • dnfコマンド: ターミナルからソフトウェアをインストールできます。ソフトウェアの名前が分かっている場合や、複数のパッケージをまとめてインストールしたい場合に便利です。
      bash
      # 例:VLCメディアプレイヤーをインストールする場合
      sudo dnf install vlc
      # 例:開発ツール一式をインストールする場合
      sudo dnf groupinstall "Development Tools"
  4. メディアコーデックのインストール(任意、RPM Fusionが必要): MP3、AAC、H.264などの一般的なメディア形式を再生するには、追加のコーデックが必要です。RPM Fusionリポジトリを追加している場合、以下のコマンドでインストールできます。
    bash
    sudo dnf install gstreamer1-plugins-bad-free gstreamer1-plugins-bad-nonfree gstreamer1-plugins-ugly-free gstreamer1-plugins-ugly-nonfree gstreamer1-libav

    • 一部のコーデックは非フリーリポジトリに含まれています。
  5. NVIDIAドライバのインストール(任意、RPM Fusionが必要): NVIDIAのグラフィックカードを使用している場合、オープンソースのNouveauドライバがデフォルトで使用されますが、パフォーマンスや機能が制限されることがあります。RPM Fusion nonfreeリポジトリから公式のプロプライエタリドライバをインストールすることで、パフォーマンスを向上させることができます。

    • ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
      bash
      sudo dnf install akmod-nvidia # または kmod-nvidia if dnf install xorg-x11-drv-nvidia-cuda
      sudo dnf update -y
      sudo reboot
    • 正確なインストール手順や推奨されるパッケージはFedoraのバージョンや環境によって異なる場合があるため、RPM Fusionの公式ドキュメントやFedora Wikiで最新の情報を確認することを強く推奨します。

これで、Fedora Workstationの基本的な導入と初期設定は完了です。あとは、自分の用途に合わせて必要なソフトウェアをインストールし、環境をカスタマイズしていきましょう。

Fedoraの活用例

Fedoraは、その特性から様々な用途で活用できます。

  • 普段使いのデスクトップ環境として: 最新のハードウェアサポート、洗練されたGNOMEデスクトップ、そして必要なソフトウェアが豊富に揃っているため、Webブラウジング、オフィスワーク、メディア鑑賞など、日常的なタスクを快適に行うことができます。
  • 開発環境として: 最新の開発ツールやライブラリがすぐに利用できるため、Web開発、アプリケーション開発、システムプログラミングなど、幅広い開発ニーズに対応できます。特にコンテナ技術や仮想化技術を積極的に活用したい開発者にとって、優れたプラットフォームとなります。
  • 学習用(Linuxの基本、Red Hat系のシステム管理): FedoraはRHELの上流であるため、Fedoraで学んだLinuxの基本やシステム管理の知識は、エンタープライズ環境で広く使われているRHELやそのクローンにも応用できます。将来的にRHEL系のサーバー管理に関わる可能性がある人にとって、Fedoraは貴重な学習ツールとなります。
  • コンテナ開発・利用のプラットフォームとして: PodmanやBuildahといったコンテナツールが標準で提供されており、コンテナを使ったアプリケーションの構築、実行、デプロイを容易に行えます。

Fedoraコミュニティへの参加

Fedoraを使っていて問題に直面したり、Fedoraの開発に貢献したいと思ったりした場合、活発なコミュニティがあなたを歓迎します。

  • サポートを受ける:
    • Fedora Ask: ユーザー同士が質問や回答を共有するフォーラムです。
    • Fedora Mailing Lists: 特定のトピックに関する議論が行われるメーリングリストです。
    • IRC/Matrix: リアルタイムでのサポートや交流が可能なチャットチャンネルです。
    • Fedora Wiki: 豊富なドキュメントとガイドが提供されています。
  • 貢献する:
    • バグ報告: 使っていて見つけた問題を報告することで、Fedoraの改善に貢献できます。
    • ドキュメント翻訳: ドキュメントを自分の言語に翻訳することで、他のユーザーの役に立てます。
    • パッケージング: 新しいソフトウェアをFedora向けにパッケージングして提供する貢献です。
    • コード開発: Fedora Projectの様々なコンポーネント開発に参加できます。
    • テスト: 新しいリリースや機能のテストに参加することで、品質向上に貢献できます。

コミュニティへの参加は、Fedoraをより深く理解し、Linuxスキルを向上させるための素晴らしい機会となります。

他のディストリビューションとの比較

Fedoraを理解する上で、他の主要なLinuxディストリビューションとの比較は有用です。

  • Fedora vs. Ubuntu:

    • 位置づけ: Fedoraは最新技術の導入に積極的なR&Dディストリビューション、Ubuntuはユーザーフレンドリーで幅広い用途に対応する人気ディストリビューション。
    • パッケージ管理: Fedoraはdnf、Ubuntuはapt。
    • リリースサイクル: Fedoraは約6ヶ月ごと、Ubuntuは6ヶ月ごと(通常版)と2年ごと(LTS版)。Ubuntu LTSはFedoraよりもはるかに長いサポート期間を持ちます。
    • 哲学: Fedoraはフリーソフトウェア原則を強く支持し、プロプライエタリなものをデフォルトで含みません。Ubuntuはユーザーの利便性を重視し、プロプライエタリなドライバやソフトウェアを簡単にインストールできるようになっています。
    • ターゲット: Fedoraは開発者や最新技術に興味のあるユーザーに特に人気があります。Ubuntuは初心者からプロフェッショナルまで、幅広い層に利用されています。
    • デスクトップ環境: Fedora WorkstationのデフォルトはGNOMEです。UbuntuのメインフレーバーもGNOMEですが、デフォルト設定や見た目に違いがあります。
  • Fedora vs. CentOS Stream/RHEL:

    • 位置づけ: FedoraはRHELの上流開発プロジェクト、CentOS StreamはRHELの開発ブランチ(RHELの次期マイナーリリースに向けた開発の場)、RHELはエンタープライズ向けの商用LTS製品。
    • 安定性・ライフサイクル: Fedoraは短期間での最新化が中心、CentOS StreamはRHELよりは新しいが安定性はRHELより劣る、RHELは長期サポートと最大限の安定性が保証されています。
    • パッケージバージョン: Fedoraが最も新しいパッケージを提供し、それがCentOS Streamを経てRHELに取り込まれます。
    • 用途: Fedoraは開発、テスト、最新技術の試用。CentOS StreamはRHEL互換の環境での開発・テスト、RHELの次の機能を先取り。RHELはミッションクリティカルなサーバー用途やエンタープライズ環境。
    • 互換性: FedoraはRHELとはバイナリ互換性はありません。CentOS StreamはRHELの先行開発版であるため、RHELに近い互換性がありますが、RHELとは異なる点が多々あります。AlmaLinuxやRocky LinuxといったRHELクローンは、RHELとのバイナリ互換性を目指しています。

Fedoraは、これらのディストリビューションの中で、最新技術とある程度の安定性を両立させたいユーザーや、RHEL系のシステムに慣れたい開発者にとって、ユニークで魅力的な選択肢となります。

まとめ

本記事では、Linuxディストリビューション「Fedora」について、その概要から「なぜ選ぶのか」というメリット、そして実際に「どのように始めるのか」という導入方法までを詳細に解説しました。

Fedoraを選ぶ最大の理由は、その「最新技術の積極的な採用」にあります。常に最新のカーネル、デスクトップ環境、開発ツールが提供されるため、新しいハードウェアのサポートをいち早く受けたいユーザーや、最先端の技術を使って開発を行いたいエンジニアにとって、Fedoraは非常に魅力的な環境です。この「Cutting Edge」な性質は、Linuxデスクトップの進化を体感できるという点でも価値があります。

同時に、Fedoraは単に最新なだけでなく、Red Hatの支援や広範なコミュニティテストによって「安定性」も追求しています。SELinuxのデフォルト有効化をはじめとするセキュリティへの高い意識も、安心して利用できる理由の一つです。

「強力なコミュニティ」の存在もFedoraの重要なメリットです。困ったときに助けを求められる場所があり、また自身もプロジェクトに貢献する機会を得られます。「フリーソフトウェアとオープンソースの原則への強い支持」は、完全にオープンな環境を構築したいユーザーにとって共感できる点でしょう。

もちろん、約6ヶ月ごとのリリースサイクルによる定期的なアップグレードが必要であることや、プロプライエタリなソフトウェアの導入に一手間かかることなど、いくつかの注意点もあります。しかし、これらの点はFedoraの哲学や目的に起因するものであり、ユーザー自身のニーズと合致するかどうかが選択の鍵となります。

Fedoraを始めるのは比較的簡単です。公式サイトからISOイメージをダウンロードし、USBメモリに書き込み、そのUSBから起動してインストーラを実行するだけです。特にFedora Workstationはデスクトップ用途に最適化されており、GNOMEによる直感的で洗練されたユーザーインターフェースが提供されます。インストール後のシステムアップデートや必要に応じたリポジトリの追加、ソフトウェアのインストールといった基本的な設定を行うことで、すぐに快適なLinux環境を手に入れることができます。

Fedoraは、Linuxの世界で新しいものに触れてみたい方、開発者の方、RHEL系のシステムに興味がある方、そして常に最新のオープンソース技術と共に歩みたい方に、特におすすめできるディストリビューションです。もしあなたが現在のLinuxディストリビューションに満足しているとしても、あるいはまだLinuxを使ったことがないとしても、Fedoraを一度試してみる価値は十分にあります。

この記事が、あなたがFedoraを選び、その豊かな世界へと足を踏み入れるための一助となれば幸いです。Fedoraのコミュニティはいつでも新しいメンバーを歓迎しています。さあ、Fedoraをインストールして、最先端のLinuxデスクトップを体験してみましょう!

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