広告・追跡をブロック!AdGuard DNS(dns.adguard.com)で快適ネット環境を

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広告・追跡をブロック!AdGuard DNS(dns.adguard.com)で快適ネット環境を

インターネットは私たちの生活に欠かせないものとなりました。情報収集、エンターテイメント、コミュニケーション、仕事、ショッピングなど、あらゆる活動の中心にあります。しかし、便利さの裏側で、私たちは常に「広告」と「追跡」という、時に煩わしく、時にプライバシーを脅かす存在に晒されています。Webサイトを開けば画面いっぱいに表示される広告、動画再生前にスキップできない広告、そして、私たちがどこを訪れ、何に興味を持っているかを常に監視し続ける追跡技術。これらはインターネット体験を著しく損なうだけでなく、私たちのプライバシーやセキュリティをも脅かす可能性があります。

このような現状に対し、さまざまな対策が登場しています。ブラウザの広告ブロック拡張機能はその代表例ですが、これはブラウザ内に限定される効果です。スマホアプリ内の広告や、OSレベルでの追跡には対応できません。VPNは通信全体を暗号化し匿名性を高めますが、主にセキュリティとプライバシー保護に重点が置かれ、広告ブロック機能は限定的です。

そこで注目されているのが、「DNSレベルでの広告・追跡ブロック」です。そして、その分野で非常に高い評価を得ているサービスの1つが「AdGuard DNS」(dns.adguard.com)です。

AdGuard DNSは、お使いのデバイスやルーターのDNS設定を変更するだけで、インターネット上のほぼ全ての広告と追跡を、ブラウザやアプリの種類に関係なくブロックできる画期的なサービスです。しかも、個人利用であれば完全に無料で利用できます。

この記事では、AdGuard DNSがなぜ効果的なのか、その仕組みはどうなっているのか、どのように設定すれば良いのか、そして利用することでどのようなメリットが得られるのかを、約5000語にわたって詳細に解説します。快適で、より安全なインターネット環境を手に入れるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

第1章 インターネットの現状:広告と追跡の問題点

私たちがインターネットを利用する際に直面する、広告と追跡に関する問題点を深く掘り下げてみましょう。これらを理解することが、なぜAdGuard DNSのような解決策が必要なのかを明確にします。

1.1 過剰な広告がもたらす悪影響

インターネット広告は、Webサイト運営者やサービス提供者にとって重要な収益源であり、私たちが無料で多くの情報やサービスを享受できる背景には、広告収入の存在があります。しかし、近年、その量と質に問題が生じています。

  • 視覚的なノイズとユーザー体験の低下: ポップアップ広告、画面全体を覆うオーバーレイ広告、自動再生される動画広告など、過剰な広告はWebサイトのコンテンツを遮り、閲覧の妨げになります。ページのレイアウトが崩れたり、誤って広告をクリックしてしまったりすることもあり、ユーザーのフラストレーションを高めます。
  • 表示速度の低下: 広告コンテンツ(画像、動画、スクリプト)は、Webサイトの読み込みに時間を要します。多くの広告が表示されるページほど、表示完了までの時間が長くなり、特にモバイル環境や低速な回線では顕著なストレスとなります。
  • データ通信量の消費: 広告の読み込みにはデータ通信が発生します。特に動画広告やリッチメディア広告はデータ量が大きく、モバイルデータ通信を利用している場合、予期せぬ通信量増加につながり、通信制限の原因となることもあります。
  • バッテリーの消費: 広告の表示や追跡スクリプトの実行は、デバイスのCPUリソースを消費し、バッテリーを早く消耗させます。
  • 悪意のある広告(マルバタイジング): 残念ながら、広告ネットワークの中にはマルウェア配布やフィッシングサイトへ誘導する悪意のある広告が紛れ込んでいることがあります。これらをうっかりクリックしてしまうと、デバイスが感染したり、個人情報が漏洩したりするリスクがあります。

1.2 トラッキング(追跡)の仕組みとプライバシー侵害

広告以上に気づきにくい、しかし深刻な問題が「トラッキング(追跡)」です。私たちがインターネット上で行うほぼ全ての行動は、さまざまな技術によって記録され、分析されています。

  • Cookie: 最も一般的な追跡技術です。Webサイトがブラウザに保存する小さなデータで、ユーザーの識別や設定の記憶に利用されます。しかし、第三者の広告事業者などが設置する「サードパーティCookie」は、複数のサイトを横断してユーザーの行動を追跡し、興味や関心をプロファイリングするために広く使われています。
  • トラッキングピクセル(Webビーコン): 1×1ピクセルなどの目に見えない小さな画像ファイルで、Webサイトやメールに埋め込まれます。ユーザーがそれを読み込むことで、開いたことや閲覧した日時、IPアドレスなどの情報がトラッキングサーバーに送信されます。
  • フィンガープリント: ブラウザの種類、OS、インストールされているフォント、画面解像度、プラグインなど、デバイスやブラウザの設定情報は一人ひとり異なります。これらの情報の組み合わせは、個人を特定するための「指紋(フィンガープリント)」として利用されることがあります。Cookieを無効にしても追跡される可能性があります。
  • その他の技術: ストレージ(Local Storage, Session Storage)、IndexedDB、HTTP ETag、Supercookieなど、さまざまな技術が追跡に利用されています。

なぜトラッキングが問題なのか?

  • プライバシー侵害: 自分の行動が常に監視され、記録されているという事実は、多くの人にとって不快であり、プライバシーの侵害と感じられます。何に興味を持ち、どこを訪れ、何を検索したかといった詳細なプロファイルが作成され、マーケティング目的だけでなく、潜在的には他の目的で利用される可能性も否定できません。
  • パーソナライズ広告の煩わしさ: トラッキングによって得られた情報に基づき、ユーザーの興味関心に合わせた「パーソナライズ広告」が表示されます。時には便利に感じることもありますが、一度検索しただけの商品の広告が延々と表示されたり、デリケートな話題に関連する広告が表示されたりすることで、不快感や監視されている感覚を強めることがあります。
  • 情報の偏り: アルゴリズムがユーザーの過去の行動に基づいて情報を選別するため、新しい情報や異なる視点に触れる機会が減り、情報の偏りが生じる可能性があります(フィルターバブル)。
  • セキュリティリスク: 追跡データが漏洩した場合、個人の行動履歴や興味関心が第三者に知られるリスクがあります。

1.3 なぜ従来の広告ブロッカーだけでは不十分な場合があるのか

ブラウザの広告ブロック拡張機能(AdBlock, uBlock Originなど)は非常に効果的で、多くのWebサイト上の広告をブロックしてくれます。しかし、万能ではありません。

  • ブラウザに依存: 拡張機能は特定のブラウザ(Chrome, Firefox, Safariなど)内で動作します。そのため、ブラウザ以外のアプリケーション(スマホアプリ、デスクトップアプリ)内に表示される広告や、OSレベルでの追跡には効果がありません。
  • 検出を回避する広告: Webサイト運営者や広告事業者は、広告ブロッカーの検出を回避するための技術を常に開発しています。そのため、ブロックリストが更新されるまでの間、一時的に広告が表示されてしまうことがあります。
  • パフォーマンスへの影響: 拡張機能はWebページが読み込まれた後に、ページ内の要素を分析・変更して広告を非表示にしています。この処理自体が、わずかではありますがページの表示速度に影響を与えることがあります。
  • 設定の複雑さ: 高度な設定を行おうとすると、技術的な知識が必要になる場合があります。

DNSレベルでのブロックは、これらの従来の広告ブロッカーがカバーできない範囲を補完し、より包括的な広告・追跡対策を可能にします。

第2章 DNSとは何か? 基本的な解説

AdGuard DNSの仕組みを理解するために、まず「DNS」とは何かを簡単に理解しておきましょう。インターネットの基礎を支える非常に重要な技術です。

2.1 インターネット上の住所録:IPアドレスとドメイン名

インターネットに接続されている全てのデバイス(サーバー、PC、スマートフォンなど)には、「IPアドレス」という固有の識別番号が割り当てられています。これはインターネット上の「住所」のようなものです。例えば、Webサイトを公開しているサーバーにもIPアドレスがあります。

IPアドレスは数字の羅列で構成されています(例: IPv4なら 192.168.1.1、IPv6なら 2001:0db8::1234:5678)。しかし、私たちはWebサイトにアクセスする際に、このような数字の羅列ではなく、「google.com」や「yahoo.co.jp」といった分かりやすい名前を使います。これを「ドメイン名」と呼びます。ドメイン名は、人間が覚えやすく、Webサイトやサービスを識別するための名前です。

2.2 DNSサーバーの役割:名前解決

さて、私たちは「google.com」というドメイン名を入力してWebサイトにアクセスしますが、コンピューターはIPアドレスで通信を行います。ここで必要になるのが、「ドメイン名を対応するIPアドレスに変換する」仕組みです。この変換作業を「名前解決」と呼び、その役割を担っているのが「DNSサーバー」です。

DNSサーバーは、例えるなら「インターネット上の電話帳」のようなものです。私たちがWebサイトにアクセスしようとしてブラウザに「google.com」と入力すると、まずお使いのデバイスが設定されているDNSサーバーに「『google.com』のIPアドレスは何ですか?」という問い合わせ(DNSクエリ)を行います。

DNSサーバーは、その問い合わせに対し、保有している情報や他のDNSサーバーに問い合わせるなどして、「『google.com』のIPアドレスは『xxx.xxx.xxx.xxx』です」という回答を返します。このIPアドレスを受け取ったデバイスは、初めてそのIPアドレスを持つサーバーに接続し、Webサイトのデータを取得して表示することができるのです。

2.3 標準的なDNSの動作における広告・追跡

標準的なDNSサーバー(例えば、契約しているプロバイダが提供するDNSサーバー)は、名前解決の要求に対して、登録されているIPアドレスをそのまま返します。広告を表示するサーバーのドメイン名(例: adserver.com)を問い合わせれば、その広告サーバーの正しいIPアドレスを返しますし、トラッキングを行うサーバーのドメイン名(例: tracker.com)を問い合わせれば、その追跡サーバーの正しいIPアドレスを返します。

デバイスはこれらのIPアドレスを知ることで、広告サーバーから広告データをダウンロードしたり、追跡サーバーにデータを送信したりすることが可能になります。つまり、標準のDNSは、広告や追跡を阻止する機能は持っていません。

第3章 AdGuard DNSとは何か? その特徴

ここでいよいよ、AdGuard DNSが登場します。AdGuard DNSは、この標準的なDNSの仕組みを応用して、広告や追跡をブロックするサービスです。

3.1 DNSレベルでの広告・追跡ブロックの仕組み

AdGuard DNSの基本的な仕組みは非常にシンプルですが効果的です。お使いのデバイス(PC、スマホ、ルーターなど)のDNS設定を、標準のプロバイダのDNSサーバーからAdGuard DNSのサーバーに変更します。

ユーザーがWebサイトにアクセスしたり、アプリを開いたりする際に、デバイスは様々なドメイン名に対してDNSクエリをAdGuard DNSサーバーに送信します。このDNSクエリの中には、Webサイトのコンテンツを配信するサーバーのドメイン名だけでなく、広告を表示するサーバーのドメイン名や、ユーザーの行動を追跡するサーバーのドメイン名も含まれています。

AdGuard DNSサーバーは、受け取ったDNSクエリのドメイン名が、自社の広告・追跡サーバーのブロックリストに登録されているドメイン名と一致するかどうかを照合します。

  • ブロックリストに登録されていないドメイン名(通常のWebサイトなど): 対応する正しいIPアドレスをデバイスに返します。デバイスは通常通りそのサーバーと通信を行います。
  • ブロックリストに登録されているドメイン名(広告サーバー、追跡サーバーなど): 対応するIPアドレスは返しません。代わりに、存在しないIPアドレス(例: 0.0.0.0)や、AdGuard自身のブロックページ用IPアドレスなどを返します。

広告サーバーや追跡サーバーのドメイン名に対して正しいIPアドレスが得られないデバイスは、それらのサーバーと通信を開始することができません。結果として、広告データのダウンロードや追跡データの送信が行われなくなり、広告が表示されず、追跡も阻止されるのです。

3.2 通常の広告ブロッカーとの違いと優位性

AdGuard DNSは、ブラウザ拡張機能のような従来の広告ブロッカーとは根本的に異なるアプローチを取ります。

  • 動作レイヤーの違い: 従来のブロッカーはブラウザの「アプリケーションレイヤー」で動作し、Webページの内容を分析して広告部分を非表示にします。一方、AdGuard DNSはネットワークの最も基本的な部分である「DNSレイヤー」で動作します。通信が始まる前に、そもそも広告サーバーや追跡サーバーへの「接続先」を解決させないことでブロックします。
  • ブラウザ依存がない: AdGuard DNSの効果は、ブラウザの種類に依存しません。Internet Explorer/Edge, Chrome, Firefox, Safariなど、どのブラウザを使っていても効果を発揮します。
  • アプリやOS全体に効果: Webサイトだけでなく、スマートフォンやPCのアプリケーションが表示する広告(ニュースアプリ、ゲームアプリなど)や、OSレベルで行われる追跡なども、そのアプリやOSが通信のためにDNSを利用していればブロックの対象となります。
  • ネットワーク全体に適用可能: ルーターにAdGuard DNSを設定すれば、そのルーターに接続されている家庭内の全てのデバイス(PC, スマホ, タブレット, スマートTV, ゲーム機, IoTデバイスなど)にまとめて広告・追跡ブロックの効果を適用できます。
  • パフォーマンスへの影響が少ない: DNSクエリの処理は通信の非常に初期段階で行われます。Webページが読み込まれた後にページ内容を解析する必要がないため、従来のブロッカーと比較してパフォーマンスへの影響が少ない、あるいはむしろ表示速度を向上させる効果があります。

3.3 AdGuard DNSが提供するサーバーの種類

AdGuard DNSは、利用者のニーズに合わせていくつかの異なるタイプのサーバーを提供しています。これらは設定時に選択できます。

  • Default servers (デフォルトサーバー):
    • IPアドレス (IPv4): 94.140.14.14, 94.140.15.15
    • IPアドレス (IPv6): 2a10:a500::14:2, 2a10:a500::15:2
    • DNS over TLS (DoT): dns.adguard.com
    • DNS over HTTPS (DoH): https://dns.adguard.com/dns-query
    • 特徴: 広告と追跡のみをブロックします。最も一般的で、基本的なAdGuard DNSの機能を利用したい場合に選択します。
  • Family protection servers (ファミリープロテクションサーバー):
    • IPアドレス (IPv4): 94.140.14.15, 94.140.15.16
    • IPアドレス (IPv6): 2a10:a500::14:1, 2a10:a500::15:1
    • DNS over TLS (DoT): dns-family.adguard.com
    • DNS over HTTPS (DoH): https://dns-family.adguard.com/dns-query
    • 特徴: デフォルトサーバーの機能に加え、成人向けサイトや暴力的なコンテンツを含むサイトなどの不適切なコンテンツをブロックします。さらに、多くの検索エンジンでセーフサーチ(安全な検索結果のみを表示する機能)を強制的に有効にします。子供がいる家庭など、家族全員が安全にインターネットを利用できるようにしたい場合に適しています。
  • Non-filtering servers (フィルタリングなしサーバー):
    • IPアドレス (IPv4): 94.140.14.140, 94.140.14.141
    • IPアドレス (IPv6): 2a10:a500::140, 2a10:a500::141
    • DNS over TLS (DoT): dns-unfiltered.adguard.com
    • DNS over HTTPS (DoH): https://dns-unfiltered.adguard.com/dns-query
    • 特徴: DNSクエリに対して一切のフィルタリングを行いません。純粋な高速パブリックDNSとして機能します。AdGuard DNSのサーバーインフラは利用したいが、広告ブロックやファミリープロテクションは不要な場合(非常に限定的ですが)に選択します。主に、AdGuard DNSが提供するDoT/DoH接続や高い信頼性のみを利用したいユーザー向けです。

通常は「Default servers」を選択すれば、広告・追跡ブロックのメリットを最大限に享受できます。家族での利用であれば「Family protection servers」も強力な選択肢となります。

3.4 セキュリティ機能:悪意のあるサイト、フィッシングサイトのブロック

AdGuard DNSのブロックリストには、広告や追跡だけでなく、既知の悪意のあるWebサイト(マルウェアを配布するサイト)やフィッシングサイトのドメイン名も含まれています。

ユーザーがこのような危険なサイトにアクセスしようとした際に、AdGuard DNSはそのドメイン名をブロックリストと照合し、名前解決を行いません。これにより、ユーザーが誤って危険なサイトに接続してしまうリスクを低減できます。これは、一般的なDNSサービスにはない、AdGuard DNSの重要なセキュリティ機能です。

3.5 高いパフォーマンスと安定性、プライバシーへの配慮

AdGuardは世界中に分散した高性能なDNSサーバーネットワークを構築しています。ユーザーからのDNSクエリは、地理的に最も近いサーバーで処理されるように設計されており(Anycastネットワーク技術を利用)、高速な名前解決を実現しています。これにより、Webサイトの表示速度向上にも貢献します。

また、パブリックDNSサービスを選ぶ上で非常に重要なのが、プライバシーポリシーです。AdGuardは、ユーザーのDNSクエリログを記録しない「ノーログポリシー」を公言しています。これにより、ユーザーがインターネット上で何を見ているか、どのようなサイトにアクセスしているかといった情報がAdGuard側で追跡・保存される心配がなく、プライバシーが保護されます。これは、一部の無料DNSサービスやプロバイダ提供のDNSでは保証されない重要な点です。

第4章 AdGuard DNSの導入メリット

AdGuard DNSを利用することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか?

4.1 Webサイト表示速度の向上

広告や追跡スクリプトの読み込みがブロックされることで、Webページのデータ量が削減されます。これにより、ページ全体のダウンロード時間が短縮され、Webサイトの表示速度が体感できるレベルで向上することがあります。特に広告が多いサイトでは効果を実感しやすいでしょう。

4.2 データ通信量の削減

広告コンテンツ(画像、動画など)のダウンロードが阻止されるため、データ通信量が削減されます。これは、モバイルデータ通信を利用しているスマートフォンや、データ通信量に制限がある環境でインターネットを利用する場合に大きなメリットとなります。通信量の節約は、結果として通信費の節約にもつながる可能性があります。

4.3 煩わしい広告の非表示化によるユーザーエクスペリエンスの向上

視覚的に邪魔な広告がなくなることで、Webサイトのコンテンツに集中しやすくなります。動画視聴中のノンストップ再生、ゲームアプリ内の広告中断の減少など、さまざまな場面でインターネット体験が快適になります。不要な広告に煩わされることなく、本来の目的(情報収集、娯楽など)に集中できるようになります。

4.4 プライバシー保護の強化

多くのトラッキングスクリプトや追跡サーバーへの通信がDNSレベルでブロックされるため、オンライン上での行動追跡が困難になります。これにより、広告事業者などに自分の閲覧履歴や興味関心を収集・利用されるリスクを減らし、プライバシーを強力に保護できます。ノーログポリシーを持つAdGuard DNS自体も、ユーザーのプライバシーを守る上で重要な役割を果たします。

4.5 セキュリティリスクの低減

既知の悪意のあるサイトやフィッシングサイトへの接続試行をDNSレベルでブロックする機能により、マルウェア感染や個人情報詐取といったセキュリティリスクを未然に防ぐことができます。これは、特にセキュリティ対策が十分でないデバイスや、インターネット利用に不慣れな家族がいる環境で大きな安心感をもたらします。

4.6 デバイスを選ばない幅広い適用範囲

AdGuard DNSは特定のブラウザやアプリに依存しません。DNS設定を変更できるデバイスであれば、PC、Mac、スマートフォン(iPhone, Android)、タブレット、さらにはルーター、スマートTV、ゲーム機など、さまざまなデバイスに適用できます。ルーターに設定すれば、家庭内の全てのデバイスを一括して保護できます。

4.7 コスト(無料)と手軽さ

AdGuard DNSのパブリックDNSサービスは、個人利用であれば完全無料です。高機能な広告・追跡ブロック、セキュリティ機能、ファミリープロテクション機能を、追加費用なしで利用できます。設定方法も、お使いのデバイスやルーターのネットワーク設定画面でDNSサーバーのアドレスを変更するだけで完了することが多く、非常に手軽に導入できます。

第5章 AdGuard DNSの設定方法(詳細)

AdGuard DNSのメリットを享受するためには、お使いのデバイスまたはルーターのDNS設定を変更する必要があります。ここでは、主要なデバイスやルーターでの設定方法を詳細に解説します。基本的な考え方は同じですが、OSやデバイスによって設定画面の名称や手順が異なります。

設定を行う前に確認すること:

  • AdGuard DNSのサーバーアドレス: 前述の「Default servers」「Family protection servers」「Non-filtering servers」の中から、使用したいサーバーのIPアドレスまたはドメイン名(DoT/DoH用)を控えておきます。通常はDefault serversをお勧めします。
  • 現在のネットワーク設定: 念のため、現在のDNS設定をメモしておくと、問題が発生した場合に元の設定に戻しやすくなります。
  • 管理者権限: DNS設定の変更には、デバイスやルーターの管理者権限が必要となる場合があります。

5.1 全般的な考え方:パブリックDNSの設定

インターネット接続設定において、「DNSサーバー」は通常、自動的に割り当てられる設定(DHCPでプロバイダから取得する設定)になっていることが多いです。AdGuard DNSを利用するためには、この自動設定を解除し、「手動」または「静的」設定に変更して、AdGuard DNSのサーバーアドレスを指定します。

設定項目は、主に以下のいずれか(または複数)を指定します。

  • 優先DNSサーバー / 代替DNSサーバー (IPv4/IPv6): DNSサーバーのIPアドレスを直接指定します。
  • DNS over TLS (DoT) / DNS over HTTPS (DoH): 暗号化されたDNS通信を設定する場合、対応するドメイン名やURLを指定します。後述しますが、可能であればDoTまたはDoHを利用することを強く推奨します。

5.2 各デバイスでの設定例

ここでは、一般的なOSでの設定手順の概要を示します。詳細な手順はOSのバージョンによって異なる場合があるため、具体的なメニュー名はご使用の環境に合わせて読み替えてください。

5.2.1 Windows

  1. ネットワーク設定を開く: スタートボタンを右クリックし、「ネットワーク接続」を選択します。
  2. アダプターのオプションを変更: 表示されたウィンドウで、現在使用しているネットワーク接続(Wi-Fiまたはイーサネット)を右クリックし、「プロパティ」を選択します。
  3. IP設定を開く: プロパティウィンドウで、「インターネット プロトコル バージョン 4 (TCP/IPv4)」を選択し、「プロパティ」をクリックします。IPv6も設定する場合は、「インターネット プロトコル バージョン 6 (TCP/IPv6)」も同様に設定します。
  4. DNSサーバーアドレスを手動で入力: 「次のDNSサーバー アドレスを使う」を選択し、優先DNSサーバーと代替DNSサーバーの入力欄にAdGuard DNSのIPv4アドレスを入力します。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14 (優先), 94.140.15.15 (代替)
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15 (優先), 94.140.15.16 (代替)
  5. 設定を保存: 「OK」をクリックして設定を保存します。
  6. (オプション) DoH/DoTの設定: Windows 10 (バージョン 20H2以降) や Windows 11 では、暗号化DNS (DoH) の設定も可能です。ネットワークアダプターのプロパティからTCP/IP設定に進み、「IP 設定」または「DNS サーバーの割り当て」の編集ボタンをクリックします。手動設定を選び、DNS入力欄の下にある「DNS over HTTPS (DoH)」のドロップダウンメニューで「暗号化のみ (DNS over HTTPS)」を選択します。指定するDNSサーバーアドレスはDoHに対応している必要があります(AdGuard DNSのIPv4/IPv6アドレスはDoH対応です)。この設定方法はWindowsのバージョンによって大きく異なるため、Microsoftの公式ドキュメントを参照してください。

5.2.2 macOS

  1. ネットワーク環境設定を開く: システム設定 (またはシステム環境設定) を開き、「ネットワーク」を選択します。
  2. 接続を選択: 左側のリストから、現在使用しているネットワーク接続(Wi-FiまたはEthernet)を選択します。
  3. 詳細設定: 選択した接続の下にある「詳細…」ボタンをクリックします。
  4. DNSタブを開く: 詳細設定ウィンドウで、「DNS」タブを選択します。
  5. DNSサーバーを追加: 左側のリストの下にある「+」ボタンをクリックし、AdGuard DNSのIPアドレスを入力します。優先DNSサーバーと代替DNSサーバーをそれぞれ追加します。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14, 94.140.15.15
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15, 94.140.15.16
    • IPv6アドレスを設定する場合は、IPv6アドレスも追加します。
  6. 設定を適用: 「OK」をクリックし、ネットワーク設定ウィンドウに戻って「適用」をクリックします。
  7. (オプション) DoT/DoHの設定: macOSは標準でDoT/DoHのGUI設定を提供していませんが、プロファイルなどを利用して設定することは可能です。より高度な知識が必要となるため、一般的にはIPアドレスでの設定で十分です。

5.2.3 iPhone/iPad (iOS)

  1. 設定アプリを開く: ホーム画面から「設定」アプリを起動します。
  2. Wi-Fiまたはモバイルデータ通信: 「Wi-Fi」または「モバイル通信」を選択します。Wi-Fi接続に対して設定する場合はWi-Fiを選択し、現在接続しているネットワークの右側にある情報アイコン(iマーク)をタップします。モバイルデータ通信に対して設定する場合は、モバイル通信を選択し、画面をスクロールして「DNS設定」など関連する項目を探します(ただし、モバイルデータ通信でのDNS設定はプロファイルなどが必要な場合が多く、キャリアによって制限があることもあります)。
  3. DNS設定: Wi-Fi設定の場合、「DNSを構成」をタップします。
  4. 手動設定: 「手動」を選択します。
  5. DNSサーバーを追加: 既存のサーバーは削除し、「サーバーを追加」をタップしてAdGuard DNSのIPアドレスを入力します。複数のサーバーを追加できます。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14, 94.140.15.15
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15, 94.140.15.16
    • IPv6アドレスも設定できます。
  6. 設定を保存: 右上の「保存」をタップします。
  7. (推奨) DoT/DoH (暗号化DNS) の設定: iOS 14以降では、暗号化DNS (DoH/DoT) に対応しています。これを利用するには、AdGuardが提供する構成プロファイルをインストールするのが最も簡単です。AdGuardの公式サイトにアクセスし、iOSデバイス用のDNSプロファイルダウンロードページから、使用したいサーバー(DefaultまたはFamily)のプロファイルをダウンロードしてインストールします。インストール後、設定アプリの「ダウンロード済みのプロファイル」から確認できます。このプロファイルを使用することで、Wi-Fiおよびモバイルデータ通信の両方で暗号化DNSが有効になります(モバイルデータ通信の設定はキャリアによる制限がない場合に限ります)。プロファイルのインストールは自己責任で行ってください。

5.2.4 Android

  1. 設定アプリを開く: アプリ一覧から「設定」を起動します。
  2. ネットワーク設定: 「ネットワークとインターネット」または「接続」などの項目を選択します。
  3. プライベートDNS: Android 9 Pie 以降では、「プライベートDNS」という機能が利用できます。これをタップします。
  4. プライベートDNSホスト名: 「プライベートDNS プロバイダのホスト名」を選択し、AdGuard DNSのDoTホスト名を入力します。
    • Default servers (DoT): dns.adguard.com
    • Family protection servers (DoT): dns-family.adguard.com
  5. 保存: 設定を保存します。

Android 9 より前のバージョンや、プライベートDNS機能がない場合、または特定のWi-Fi接続でのみ設定したい場合は、Wi-Fi設定から手動でIPアドレスを指定します。

  1. Wi-Fi設定を開く: 設定から「Wi-Fi」を選択し、現在接続しているネットワークを長押しするか、設定アイコン(歯車マーク)をタップします。
  2. ネットワーク設定を編集: 「ネットワーク設定を変更」または同様の項目を選択します。
  3. IP設定を静的にする: IP設定が「DHCP」になっているのを「静的」に変更します。
  4. DNSサーバーアドレスを入力: IPアドレス、ゲートウェイ、ネットワークプレフィックス長は現在の設定(自動取得された値)をメモしてそのまま入力し、DNS 1とDNS 2の入力欄にAdGuard DNSのIPアドレスを入力します。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14 (DNS 1), 94.140.15.15 (DNS 2)
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15 (DNS 1), 94.140.15.16 (DNS 2)
    • IPv6アドレスも設定できます。
  5. 保存: 設定を保存します。

5.2.5 Linux

Linuxディストリビューションによって設定方法は異なりますが、一般的な方法としては、ネットワークマネージャーの設定を変更するか、/etc/resolv.conf ファイルを編集します。ネットワークマネージャーを使用するのが簡単です。

  1. ネットワーク設定を開く: システム設定やネットワーク設定ツールを開きます。
  2. 接続を選択: 使用しているネットワーク接続(有線または無線)を選択し、設定を編集します。
  3. IPv4/IPv6設定: IPv4設定またはIPv6設定のタブを開きます。
  4. DNSサーバーを手動で設定: DNSサーバーの設定が自動になっているのを手動に変更し、AdGuard DNSのIPアドレスを入力します。複数のサーバーを指定する場合はカンマやスペースで区切るなど、UIの指示に従います。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14, 94.140.15.15
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15, 94.140.15.16
    • IPv6アドレスも設定できます。
  5. 設定を保存/適用: 設定を保存し、ネットワーク接続を再起動または再接続して変更を適用します。
  6. (推奨) systemd-resolved でのDoT設定: systemd-resolved を使用しているディストリビューションでは、DoTを設定できます。resolvconf ファイルを編集するか、resolved.conf を編集します。詳細な設定方法は使用しているディストリビューションのドキュメントを参照してください。

5.2.6 ルーターでの設定

ルーターでDNS設定を変更すると、そのルーターに接続されている全てのデバイスにAdGuard DNSの効果を適用できるため、最も推奨される方法です。設定方法はルーターのメーカーやモデルによって大きく異なります。

  1. ルーターの管理画面にアクセス: Webブラウザを開き、ルーターのIPアドレス(例: 192.168.1.1192.168.0.1 など)を入力して管理画面にログインします。ログイン情報(ユーザー名とパスワード)は、ルーター本体や取扱説明書に記載されていることが多いです。
  2. DNS設定項目を探す: 管理画面のメニューの中から、「WAN設定」「インターネット設定」「DHCP設定」「詳細設定」などに関連する項目を探します。その中に「DNSサーバー」または「DNSアドレス」といった設定項目があるはずです。
  3. DNSサーバーを手動で入力: DNSサーバーの設定を「自動取得」から「手動入力」または「静的」に変更し、AdGuard DNSのIPアドレスを入力します。通常、優先DNSサーバーと代替DNSサーバーの入力欄があります。
    • Default servers IPv4: 94.140.14.14 (優先), 94.140.15.15 (代替)
    • Family protection servers IPv4: 94.140.14.15 (優先), 94.140.15.16 (代替)
    • IPv6アドレスも設定できます。
  4. 設定を保存/適用: 設定を保存し、ルーターを再起動(設定変更を適用するために必要な場合があります)します。

ルーターによってはDoTやDoHの設定に対応しているモデルもありますが、まだ限定的です。ルーターが対応している場合は、IPアドレスよりも暗号化されたDoT/DoHでの設定を検討しましょう。

5.2.7 ゲーム機、スマートTVなど

ゲーム機(PlayStation, Nintendo Switch, Xboxなど)やスマートTVなど、インターネット接続機能を持つ多くのデバイスは、ネットワーク設定でDNSサーバーを手動指定できる場合があります。それぞれのデバイスのネットワーク設定画面を開き、上記のデバイス設定と同様にAdGuard DNSのIPアドレスを入力してください。ただし、これらのデバイスはDoT/DoHに対応していないことが多いです。

5.3 DNS over TLS (DoT) および DNS over HTTPS (DoH) について

DNS over TLS (DoT) および DNS over HTTPS (DoH) は、従来のDNS通信(UDPまたはTCPのポート53を使用)を暗号化する技術です。

  • 従来のDNSの問題点: 従来のDNS通信は暗号化されていません。これは、インターネットプロバイダや途中のネットワークを傍受する第三者が、ユーザーがどのドメイン名にアクセスしようとしているか(=どのWebサイトやサービスを利用しようとしているか)を知ることができる、つまりユーザーのインターネット利用履歴を覗き見できることを意味します。これはプライバシー上の大きな懸念です。また、DNS応答を改ざんされて、偽のIPアドレスに誘導される「DNSスプーフィング」や「DNSポイズニング」といった攻撃のリスクもあります。
  • DoT/DoHの利点: DoTはTLS暗号化(WebサイトのHTTPSで使われる技術)をDNS通信に適用します。DoHはHTTPSプロトコルを使ってDNS通信を行います。どちらもDNSクエリと応答を暗号化するため、第三者による盗聴や改ざんを防ぎ、プライバシーとセキュリティを大幅に向上させます。
  • AdGuard DNSでの対応: AdGuard DNSは、IPアドレスでの接続だけでなく、DoT (dns.adguard.com / dns-family.adguard.com) および DoH (https://dns.adguard.com/dns-query / https://dns-family.adguard.com/dns-query) にも対応しています。これらの暗号化接続は、対応するOSやデバイスで利用可能です(Android 9+ のプライベートDNS、iOS 14+ (プロファイル利用), Windows (バージョンによる), 一部のLinuxディストリビューション, 一部のルーターなど)。

可能な限り、IPアドレスによる設定よりも、DoTまたはDoHによる暗号化DNS設定を利用することを強く推奨します。これにより、DNSレベルでの広告・追跡ブロック効果に加え、DNS通信自体のプライバシーとセキュリティを保護できます。

設定時には、使用したいサーバー(DefaultまたはFamily)に対応するDoTホスト名またはDoH URLを指定します。

第6章 AdGuard DNSの仕組みと技術的な側面(深掘り)

AdGuard DNSがどのようにして広告や追跡を効果的にブロックしているのか、もう少し技術的な側面から掘り下げてみましょう。

6.1 ブロックリストの作成と管理

AdGuard DNSの核となるのは、広告サーバーや追跡サーバー、悪意のあるサイトなどのドメイン名が登録された膨大なブロックリストです。AdGuardは、自社でメンテナンスしているリストに加え、様々なオープンソースのブロックリストやコミュニティが作成したリストを集約・統合し、常に最新の状態に保っています。

このリスト作成・更新プロセスは継続的に行われます。新しい広告配信ドメインやトラッカー、悪意のあるサイトが日々生まれるため、それらを迅速に特定し、リストに追加していく必要があります。機械学習やクローラーを用いた自動的なドメイン分析と、ユーザーからのフィードバックや専門家による手動での検証が組み合わされています。

「Default servers」と「Family protection servers」では、使用されるブロックリストの種類が異なります。ファミリープロテクションサーバーでは、通常の広告・追跡リストに加えて、成人向けサイトなどを分類したリストが適用されます。

6.2 DNSクエリの処理フロー(ブロック判定)

ユーザーデバイスからAdGuard DNSサーバーにDNSクエリ(例: www.example.com のIPアドレスを教えてください)が到着すると、サーバーは以下の処理を行います。

  1. クエリの受信: 暗号化されている場合(DoT/DoH)、まず復号化します。
  2. ブロックリストとの照合: 問い合わせられたドメイン名(www.example.com)が、有効なブロックリストに登録されているかどうかを高速に照合します。
  3. 判定と応答:
    • ブロックリストに登録されていない場合: 通常の名前解決プロセスを行います。必要な権威DNSサーバーなどに問い合わせて、対応するIPアドレスを取得し、ユーザーデバイスに返します。
    • ブロックリストに登録されている場合: ブロック応答を返します。この応答は、0.0.0.0127.0.0.1 といった「存在しない」または「自身を指す」IPアドレス、あるいはAdGuardが用意したブロック通知ページ用のIPアドレスなどです。これにより、デバイスは正しいサーバーに接続できず、広告や追跡は阻止されます。
  4. ログポリシーの適用: AdGuardのノーログポリシーに基づき、問い合わせ内容や発信元IPアドレスなどのユーザーを特定できる情報は、永続的に保存されません。

この処理はミリ秒単位で行われるため、ほとんどの場合、ユーザーは名前解決にかかる時間を意識することなくインターネットを利用できます。

6.3 パブリックDNSとしてのインフラストラクチャ

AdGuard DNSは、世界中の様々な場所にデータセンターを設置し、サーバーを分散配置しています。これにより、ユーザーからの距離が短縮され、名前解決の応答速度が向上します(遅延が減少)。また、Anycastネットワーク技術を利用することで、同じIPアドレスやホスト名で世界中からアクセスできるようになり、ユーザーからのリクエストは自動的に地理的に最も近いサーバーにルーティングされます。

サーバーインフラは冗長化されており、特定のサーバーやデータセンターに障害が発生しても、他のサーバーが処理を引き継ぐことで、サービス全体の安定性と可用性を高めています。

6.4 DNSSEC対応について

DNS Security Extensions (DNSSEC) は、DNS応答の正当性を検証するための仕組みです。従来のDNSは応答を簡単に偽装できてしまう脆弱性がありましたが、DNSSECを利用することで、受け取ったIPアドレスが確かにそのドメイン名の正当なIPアドレスであり、途中で改ざんされていないことを暗号技術を用いて検証できます。

AdGuard DNSはDNSSECに対応しています。つまり、AdGuard DNSサーバーが他のDNSサーバーから名前解決の結果を受け取る際に、その応答がDNSSEC署名されていれば検証を行います。これにより、DNSスプーフィングなどの攻撃からユーザーを保護する層がさらに追加されます。ユーザー側のデバイスやルーターがDNSSEC検証に対応している必要はありません。AdGuard DNSサーバー側で検証が行われます。

第7章 他の広告ブロック方法・DNSサービスとの比較

AdGuard DNSは強力なツールですが、インターネット上の問題を解決する唯一の方法ではありません。他のサービスや技術と比較することで、AdGuard DNSの位置づけや最適な使い方が見えてきます。

7.1 ブラウザ拡張機能(AdBlock, uBlock Originなど)との比較

  • ブラウザ拡張機能:
    • 利点: Webページ内の広告要素を非表示にするのが得意(要素の削除や隠蔽)。特定のWebサイトで広告ブロッカーを無効にしたり、詳細なフィルタリングルールを設定したりしやすい。
    • 欠点: ブラウザ内に限定。アプリ内広告やOSレベルの追跡には無効。Webページ読み込み後に処理を行うため、パフォーマンスに影響する可能性がある。検出回避されることがある。
  • AdGuard DNS:
    • 利点: デバイス全体(ブラウザ、アプリ、OSなど)に効果が及ぶ。通信が始まる前のDNSレベルでブロックするため、パフォーマンスへの影響が少ない(むしろ高速化)。設定が比較的簡単(特にルーター設定時)。セキュリティ・プライバシー機能が統合されている。
    • 欠点: Webページ内の特定の広告要素をピンポイントで非表示にするような細かい制御はできない。DNSレベルでブロックできない広告(コンテンツと同じドメインから配信される広告など)も存在する。特定のWebサイトでブロックを無効にするのが難しい(DNS設定を戻す必要がある)。

結論: ブラウザ拡張機能とAdGuard DNSは、アプローチが異なりますが、互いに補完し合う関係にあります。ブラウザでのWeb閲覧を最大限に快適にしたい場合は、AdGuard DNSとブラウザ拡張機能を併用することで、より多くの広告をブロックし、快適性を高めることができます。特にブラウザ外の広告や追跡もブロックしたい場合は、AdGuard DNSが不可欠です。

7.2 VPNとの違い

  • VPN (Virtual Private Network):
    • 主な機能: インターネット接続全体を暗号化し、VPNサーバーを経由させることで、IPアドレスを隠し、匿名性を高める。通信内容の盗聴や検閲を防ぐ。地理的な制限を回避できる。
    • 広告ブロック機能: 一部のVPNサービスは、オプションとして広告ブロック機能を提供しています。これは、VPNサーバー側でDNSレベルまたはHTTPレベルで広告関連の通信をブロックする仕組みであることが多いです。
  • AdGuard DNS:
    • 主な機能: DNSクエリに基づいて広告・追跡をブロックする。通信自体を暗号化するわけではない(ただし、DoT/DoHでDNSクエリ自体は暗号化できる)。IPアドレスを隠す機能はない。
    • 広告ブロック機能: 広告・追跡ブロックに特化しており、その精度や網羅性が高い。

結論: VPNは主にプライバシーとセキュリティ、匿名性の向上を目的とし、AdGuard DNSは広告・追跡ブロックとDNS通信のセキュリティ・プライバシー保護を目的とします。両者は目的が異なるため、併用することが可能です。VPNを利用している場合でも、そのVPNサービスが十分な広告ブロック機能を持たない場合は、VPN接続中にAdGuard DNSを利用することで、広告ブロック効果を補完できます。ただし、VPN接続中にDNS設定を変更すると、VPNが提供するDNSではなくAdGuard DNSが使われるようになります。

7.3 他の主要なパブリックDNSサービスとの比較

AdGuard DNS以外にも、様々な企業や団体が無料のパブリックDNSサービスを提供しています。代表的なものとしては、Google Public DNS (8.8.8.8), Cloudflare DNS (1.1.1.1), OpenDNSなどがあります。

  • Google Public DNS / Cloudflare DNS:
    • 利点: 高速で安定している。Anycastネットワークにより世界中で利用可能。DoT/DoHに対応していることが多い。
    • 欠点: 基本的に広告ブロックや追跡ブロック、セキュリティフィルタリング機能はない。名前解決のみを行う。ログポリシーは各社異なる(Googleは一部ログを保持する)。
  • OpenDNS:

    • 利点: カテゴリベースのフィルタリング(アダルト、フィッシングなど)や、一部広告ブロック機能を提供している(有料プランでより高機能)。
    • 欠点: 無料プランの機能は限定的。
  • AdGuard DNS:

    • 利点: 広告・追跡ブロックに特化した強力なフィルタリング機能(Defaultサーバー)。セキュリティフィルタリングやファミリープロテクション機能も提供(Familyサーバー)。ノーログポリシーによる高いプライバシー保護。高速で安定したインフラ(Anycast, DoT/DoH対応)。
    • 欠点: 純粋な名前解決のみを求める場合はフィルタリングなしサーバーを選ぶ必要がある。他のサービスと比較して、より積極的にフィルタリングを行う設計になっている。

結論: 単に高速で安定したDNSサービスを求めるだけで、広告ブロックやセキュリティフィルタリングが不要であれば、Google Public DNSやCloudflare DNSは良い選択肢です。しかし、DNSレベルでの広告・追跡ブロック、セキュリティ保護、ファミリーフィルタリングといった付加価値を求める場合は、AdGuard DNSが優れた選択肢となります。OpenDNSもフィルタリング機能を提供しますが、無料プランではAdGuard DNSの方が広告・追跡ブロック能力が高い場合が多いです。

7.4 AdGuard Home(セルフホスト型DNS)との違い

AdGuard Homeは、ユーザー自身が自宅のサーバーやRaspberry Piなどにインストールして運用する、セルフホスト型のDNSサーバーソフトウェアです。AdGuard DNSと同様に広告・追跡ブロック機能などを提供します。

  • AdGuard Home:
    • 利点: 完全に自分で制御できる。詳細なカスタマイズが可能(独自のブロックリスト追加、ホワイトリスト/ブラックリスト設定、個別デバイスごとの設定など)。ネットワーク内の全てのデバイスに適用しやすい。
    • 欠点: 自分でサーバーを用意し、インストール・設定・メンテナンスを行う必要がある。ある程度の技術知識が必要。インターネット接続が切れるとDNSが使えなくなる。自宅外からは基本的に利用できない。
  • AdGuard DNS:
    • 利点: サーバーの運用・メンテナンスは全てAdGuardが行うため、ユーザーは設定を変更するだけで利用できる。技術知識がほとんど不要。自宅外でも(デバイスごとに設定すれば)利用可能。無料で利用できる。
    • 欠点: カスタマイズ性はAdGuard Homeほど高くない。利用できるブロックリストはAdGuardが提供するものに限られる。

結論: 技術的な知識があり、最大限のカスタマイズ性やネットワーク全体の詳細な制御を求めるユーザーにはAdGuard Homeが適しています。一方、手軽に広告・追跡ブロックのメリットを享受したい、自分でサーバー運用はしたくない、というユーザーにはAdGuard DNSが最適な選択肢です。

第8章 AdGuard DNS利用上の注意点・Q&A

AdGuard DNSは非常に便利ですが、利用にあたっていくつか注意しておきたい点や、よくある疑問があります。

8.1 ブロックできない広告もある(仕組み上の限界)

AdGuard DNSはDNSレベルで広告サーバーへの通信をブロックします。これは、Webサイトのコンテンツを配信するサーバーとは別のドメイン名を持つ広告サーバーからの広告をブロックするのに非常に効果的です。

しかし、Webサイトのコンテンツと同じドメイン名を使用して配信される広告(例: www.example.com/ads/ad.jpg のように、メインサイトと同じドメインのサブディレクトリやサブドメインから配信される広告)は、メインコンテンツの表示に必要な通信をブロックすることなく広告だけをブロックすることが、DNSレベルでは原理的に困難です。なぜなら、www.example.com のIPアドレスを知ることは、サイトを表示するために不可欠だからです。

このような広告に対しては、ブラウザ拡張機能のような「要素非表示型」の広告ブロッカーの方が効果的です。前述のように、AdGuard DNSとブラウザ拡張機能を併用することで、ブロックできる広告の種類を増やすことができます。

8.2 Webサイトが正しく表示されない場合の対処法

ごく稀に、必要なコンテンツや機能がAdGuard DNSによって誤ってブロックされてしまい、Webサイトが正しく表示されない、機能しないといった問題が発生する場合があります。これは、コンテンツ配信や機能提供に利用されているドメイン名が、誤ってブロックリストに含まれてしまった場合に起こり得ます。

このような場合は、以下の手順で対処できます。

  1. 問題の切り分け: まず、AdGuard DNSが原因かどうかを確認します。デバイスのDNS設定を一時的に元の設定(プロバイダのDNSなど)に戻してみて、問題が解消されるか確認します。問題が解消されれば、AdGuard DNSが原因である可能性が高いです。
  2. ホワイトリスト登録を依頼: AdGuard DNSが原因である場合、AdGuardの公式サイトなどから、誤ってブロックされているドメイン名をホワイトリスト(ブロック対象外のリスト)に追加するよう依頼します。AdGuardのブロックリストはコミュニティからのフィードバックに基づいて改善されるため、報告が重要です。
  3. 一時的な回避策: ホワイトリスト登録が反映されるまで、一時的にDNS設定を元の設定に戻して利用するか、そのWebサイトを閲覧する時だけAdGuard DNSを無効にする、といった方法で回避します。ルーターで設定している場合は、特定のデバイスだけ手動で別のDNSを設定する、などの方法もあります。

8.3 パフォーマンスに関する考慮事項

AdGuard DNSはAnycastネットワークを利用しており、多くのユーザーにとって高速な名前解決を提供しますが、お住まいの地域やネットワーク環境によっては、他のパブリックDNS(例: プロバイダのDNS, Google DNS, Cloudflare DNS)の方が応答速度が速い場合もあります。

DNSの応答速度が体感できるほど遅いと感じる場合は、いくつかのパブリックDNSサービス(AdGuard DNS、Google DNS、Cloudflare DNSなど)をいくつか試してみて、最も応答速度の速いサービスを選択するという方法も考えられます。ping コマンドや専用のDNS速度測定ツールを使って比較することも可能です。ただし、応答速度だけでなく、広告ブロックやプライバシーといった機能面も考慮して選択することが重要です。

8.4 他のDNSサービスとの併用について

通常、デバイスやルーターで設定できる優先DNSサーバーと代替DNSサーバーには、複数のDNSサーバーアドレスを指定できます。この場合、デバイスは優先DNSサーバーにまず問い合わせ、応答がなければ代替DNSサーバーに問い合わせる、という挙動をします。

しかし、広告ブロックという観点からは、優先DNSサーバーと代替DNSサーバーの両方にAdGuard DNSのアドレスを指定することを強く推奨します。優先にAdGuard DNS、代替にプロバイダのDNSなどを設定した場合、AdGuard DNSが応答しない場合に代替のプロバイダDNSが使われてしまい、広告ブロックの効果が失われることがあるからです。

もしAdGuard DNS以外にバックアップとして別のDNSを設定したい場合は、フィルタリングを行わない別のパブリックDNS(例: Cloudflare Non-filtering DNSなど)を指定することを検討できます。ただし、基本的には優先・代替ともにAdGuard DNSのアドレスを指定するのが最も効果的です。

8.5 ログポリシーの詳細

AdGuardはパブリックDNSサービスにおいて「ノーログポリシー」を採用していると明言しています。これは、ユーザーのDNSクエリ(どのドメイン名にアクセスしようとしたか)や、クエリを行ったユーザーのIPアドレスなどの個人を特定できる情報を記録・保存しないということです。

これにより、AdGuard側がユーザーのインターネット利用履歴を知ることはありません。プライバシーを重視するユーザーにとって、これは非常に重要な要素です。透明性を確認したい場合は、AdGuardの公式プライバシーポリシーを参照することをお勧めします。

8.6 無料利用の限界や収益モデルについて

AdGuard DNSのパブリックDNSサービス(dns.adguard.com)は、個人利用であれば無料で提供されています。では、AdGuardはどのように収益を上げているのでしょうか?

AdGuardの主な収益源は、より高度な広告ブロック機能や、様々な機能(VPN機能、高度なカスタマイズ、独自の暗号化プロトコルなど)を備えた有料製品である「AdGuard」アプリや「AdGuard Home」ソフトウェア、そして「AdGuard VPN」サービスです。

無料のパブリックDNSサービスは、より多くのユーザーにAdGuardの名前を知ってもらい、有料製品への関心を高めるためのマーケティング戦略や、インターネット全体のプライバシー・セキュリティ向上への貢献といった側面が大きいと考えられます。無料だからといって、機能やプライバシー面で妥協があるわけではありません。

第9章 まとめ:快適で安全なインターネット環境へのステップ

この記事では、インターネット上の広告と追跡の問題点から始まり、DNSの基本的な仕組み、そしてAdGuard DNSがどのようにそれらをブロックし、どのようなメリットをもたらすのかを詳細に解説しました。

AdGuard DNS(dns.adguard.com)は、以下のような点で、あなたのインターネット体験を劇的に改善する可能性を秘めた強力なツールです。

  • 広範なブロック効果: ブラウザ内外の広告、アプリ内広告、OSレベルの追跡など、DNSを利用するほぼ全ての通信に対して効果を発揮します。
  • パフォーマンス向上: 不要な広告やスクリプトの読み込みを防ぎ、Webサイトの表示速度を向上させ、データ通信量を節約します。
  • プライバシー保護: オンライン行動の追跡を阻止し、ノーログポリシーにより利用履歴が保存される心配がありません。
  • セキュリティ強化: 悪意のあるサイトやフィッシングサイトへの接続を未然に防ぎます。
  • 手軽な導入と無料利用: デバイスのDNS設定を変更するだけで利用開始でき、個人利用であれば費用は一切かかりません。
  • ファミリー保護: 成人向けコンテンツなどをブロックする機能も提供しています。
  • 暗号化DNS対応: DoT/DoHにより、DNS通信自体のプライバシーとセキュリティも保護できます。

特にルーターにAdGuard DNSを設定すれば、家庭内の全てのデバイスをまとめて保護できるため、非常に効率的です。スマートフォンやPC単体で設定すれば、外出先のネットワークでもその効果を得られます。

AdGuard DNSは万能ではありません。一部ブロックできない広告や、稀に発生する互換性の問題も存在します。しかし、そのメリットはデメリットを大きく上回ります。ブラウザ拡張機能との併用など、他の対策と組み合わせることで、さらに快適で安全なインターネット環境を実現できます。

今日のデジタルライフにおいて、自身のオンラインプライバシーとセキュリティを守ることは、ますます重要になっています。AdGuard DNSは、そのための手軽かつ効果的な第一歩となるでしょう。煩わしい広告から解放され、追跡の心配を減らし、より高速で安全なインターネットを、ぜひAdGuard DNSで体験してみてください。

設定は非常に簡単です。この記事で解説した手順を参考に、お使いのデバイスやルーターのDNS設定をAdGuard DNSに変更し、快適なネット環境を手に入れましょう。

インターネットは、広告や追跡に邪魔されることなく、自由に情報を得たり、コミュニケーションを楽しんだり、創造的な活動をしたりするための場所であるべきです。AdGuard DNSは、その「あるべき姿」に一歩近づくための強力な味方となるはずです。

さあ、今すぐDNS設定を変更して、新しいインターネット体験を始めてみましょう。


参考情報・関連リンク:


この詳細な記事が、AdGuard DNSの理解と導入の一助となれば幸いです。快適なインターネットライフをお楽しみください!

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