Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)紹介:デバイス管理の課題を解決
現代ビジネスにおいて、モバイルデバイスは業務遂行に不可欠なツールとなりました。スマートフォン、タブレット、そしてノートPCを含む多様なエンドポイントが、場所や時間を選ばずにビジネスを推進する上で重要な役割を担っています。しかし、その一方で、企業はモバイルデバイスの管理において、かつてないほど複雑で多岐にわたる課題に直面しています。デバイスの多様化、所有形態の混在、増大するセキュリティリスク、厳格化するコンプライアンス要件、そして限られたITリソース――これら全てが、企業のデバイス管理戦略に重くのしかかっています。
このような状況下で、これらの課題を効果的に解決し、セキュアかつ効率的なモバイルワーク環境を実現するためのソリューションが求められています。その答えの一つとして、Enterprise Mobility Management(EMM)ソリューション、そしてその中でも特に包括的な機能を提供するIvanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)が注目されています。
本記事では、現代のデバイス管理が抱える具体的な課題を掘り下げ、EMMがそれらをどのように解決するのかを概説し、さらにIvanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)が提供する主要機能、その詳細、そしてそれが企業のデバイス管理の課題をどのように解決するのかについて、詳細かつ網羅的に解説します。約5000語にわたるこの記事を通じて、IEMMが企業のデジタルワークプレイス戦略においていかに重要な役割を果たしうるかをご理解いただけるはずです。
現代のデバイス管理を取り巻く環境と課題
ビジネス環境は急速に変化しています。リモートワークやハイブリッドワークの普及、クラウドサービスの利用拡大、そして働き方改革の推進は、従業員がオフィス内外で多様なデバイスを使用して業務を行うことを一般的にしました。これにより、企業が管理すべき「エンドポイント」の範囲は、従来のPCだけでなく、スマートフォン、タブレット、さらにはIoTデバイスへと広がっています。
このような環境変化は、同時にデバイス管理に新たな、そして複雑な課題をもたらしています。主要な課題は以下の通りです。
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デバイスとOSの多様化:
- 企業内で利用されるデバイスは、iOS、Android、Windows、macOSなど、異なるOSを搭載した多様な種類が存在します。
- それぞれのOSには独自の管理機能や設定方法があり、これらを個別に管理することはIT部門にとって大きな負担となります。
- 異なるOSバージョンやメーカーごとのカスタマイズも管理をさらに複雑にします。
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所有形態の混在(BYOD vs. 会社所有):
- 従業員が個人所有のデバイスを業務に利用するBYOD(Bring Your Own Device)は、導入コスト削減や従業員の利便性向上といったメリットがある一方で、セキュリティやプライバシーの面で新たな課題を生じさせます。
- 会社がデバイスを貸与するCOPE(Corporate Owned, Personally Enabled)やCOBO(Corporate Owned, Business Only)といった形態もあり、それぞれの所有形態に応じた適切なポリシー設定と管理が必要です。個人所有デバイス上の業務データと個人データの分離、会社所有デバイス上のプライベート利用の制限など、細やかな設定が求められます。
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セキュリティリスクの増大:
- モバイルデバイスは、マルウェア感染、フィッシング詐欺、公共Wi-Fi利用時の通信傍受、紛失・盗難による情報漏洩など、様々なセキュリティリスクに晒されています。
- 従業員が悪意なく行う不適切な操作(例:非公式アプリストアからのダウンロード、脱獄/root化)が、デバイスや企業ネットワーク全体のセキュリティを脅かす可能性もあります。
- これらのリスクに対して、包括的かつリアルタイムな対策を講じる必要があります。
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コンプライアンス要件の厳格化:
- 個人情報保護法(日本)、GDPR(欧州)、CCPA(カリフォルニア州)など、地域や業界ごとにデータプライバシーやセキュリティに関する規制が厳しくなっています。
- 企業はこれらの規制を遵守するために、デバイス上のデータの取り扱い、アクセス権限、監査ログの取得などを適切に管理し、その状況を証明できる必要があります。コンプライアンス違反は、多額の罰金や企業の信頼失墜に繋がる可能性があります。
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運用負荷の増加とITリソースの限界:
- デバイスの登録、初期設定、ポリシー適用、アプリケーション配布、アップデート管理、トラブルシューティング、セキュリティ監視など、手動での作業はIT部門にとって膨大な時間と労力を消費します。
- IT人材の不足や、専門知識を持つ担当者の不在も、効率的なデバイス管理を妨げる要因となります。
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ユーザーエクスペリエンスとの両立:
- セキュリティを強化するあまり、ユーザーの利便性を著しく損なう設定(例:過度に複雑なパスコード要件、頻繁な認証要求)は、従業員の生産性を低下させ、シャドーIT(IT部門が把握していないデバイスやサービスを勝手に利用すること)を招く可能性があります。
- セキュリティと利便性のバランスを取りながら、従業員がストレスなく業務に集中できる環境を提供する必要があります。
これらの課題は相互に関連しており、単一の対策で解決することは困難です。企業は、これらの課題に包括的に対処できる管理ソリューションを必要としています。
EMM(Enterprise Mobility Management)とは?
こうした現代のデバイス管理課題を解決するために登場したのが、EMM(Enterprise Mobility Management)という概念、そしてその実現のためのソリューション群です。EMMは、企業が業務で利用するモバイルデバイス、アプリケーション、データを包括的に管理・保護するための仕組み全体を指します。
EMMは、一般的に以下の主要な要素を包含しています。
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MDM (Mobile Device Management):
- デバイス自体のライフサイクル管理に焦点を当てます。
- 主な機能:デバイス登録(プロビジョニング)、設定(Wi-Fi、VPN、メールアカウントなど)、ポリシー適用(パスコード、機能制限など)、インベントリ情報の収集、リモート操作(ロック、ワイプ、位置情報取得)。
- デバイスの所有者、OSバージョン、インストールされているアプリなど、ハードウェアおよびシステムレベルの情報に基づいた管理を行います。
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MAM (Mobile Application Management):
- デバイス上のアプリケーションとそのデータ管理に焦点を当てます。
- 主な機能:企業向けアプリケーションストアからのアプリ配布、アプリごとの設定適用(Managed Configuration)、アプリ内データの保護(コピー&ペースト制限、別のアプリへの共有制限など)、アプリケーションのアップデート管理、利用状況の監視。
- BYODデバイスなど、デバイス全体を管理できない場合でも、業務関連アプリとそのデータのみをセキュアに管理することが可能です。
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MIM (Mobile Information Management) または MCM (Mobile Content Management):
- モバイルデバイス上の企業データの管理と保護に焦点を当てます。
- 主な機能:セキュアなドキュメントビューワー、企業ファイルの安全な共有、データの暗号化、保存先や共有範囲の制限。
- 機密情報が不正にアクセスされたり、デバイス外に持ち出されたりすることを防ぎます。
EMMソリューションは、これらの要素を統合することで、IT管理者が単一の管理コンソールから多様なデバイス、アプリケーション、データを一元的に管理・保護することを可能にします。これにより、セキュリティの向上、コンプライアンスの維持、そして運用効率の改善を実現します。
さらに近年では、モバイルデバイスだけでなく、PC(Windows, macOS)を含むあらゆるエンドポイントを統合的に管理するUEM (Unified Endpoint Management) へとEMMの概念は進化しています。IEMMも、Ivantiの他のソリューションと連携することで、UEMとしての機能を提供可能です。
Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)とは?
Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)は、Ivanti社が提供する包括的なEnterprise Mobility Management(EMM)ソリューションです。Ivantiは、長年にわたりIT資産管理、セキュリティ、サービス管理などの分野で多くの実績を持つ企業であり、その幅広いIT管理に関する専門知識を活かして、IEMMを開発・提供しています。
IEMMは、前述のEMMの主要要素(MDM、MAM、MIM)を高度に統合し、企業が直面するモバイルデバイス管理の様々な課題に対応できるように設計されています。その目的は、従業員がどこからでも安全かつ効率的に業務を行える環境を提供しつつ、IT部門の管理負担を軽減することにあります。
IEMMは、特に以下のような企業や状況に最適です。
- 多様なOS(iOS, Android, Windows, macOSなど)のデバイスが混在している。
- BYODと会社所有デバイスの両方を管理する必要がある。
- 高度なセキュリティ要件やコンプライアンス要件を満たす必要がある(金融、医療、公共機関など)。
- IT管理リソースが限られており、効率的な運用が求められる。
- 他のIvanti製品(ITSM, UEM, セキュリティ製品など)と連携させたい。
IEMMは、Ivanti Neurons for MDMなどの関連製品や、買収したMobileIronの技術なども包含・発展させながら、最新のモバイル環境に対応する機能を提供しています。本記事では、広義のIvantiのEMMソリューションとして、IEMMの主要機能を解説します。
IEMMの主要機能と詳細解説
IEMMが提供する機能は多岐にわたりますが、ここではデバイス管理の課題解決に特に貢献する主要機能を詳細に解説します。
1. デバイス管理(MDM機能)
IEMMの最も基本的な機能は、デバイス自体の管理です。これはMDM機能の中核をなします。
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マルチOS対応:
- iOS(iPhone, iPad)、Androidスマートフォン/タブレット、Windows 10/11ノートPC/タブレット、macOSノートPC、Chrome OSデバイスなど、主要な全てのモバイルおよびPC OSに対応しています。
- 単一の管理コンソールから、異なるOSのデバイスに対して共通またはOS固有のポリシーを適用できます。これにより、OSごとに管理ツールを使い分ける必要がなくなり、管理の複雑性が大幅に軽減されます。
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デバイス登録(プロビジョニング):
- 企業の利用形態やデバイスの種類に応じて、多様な登録方法をサポートしています。
- Apple Business Manager (ABM) / Apple School Manager (ASM) 連携 (旧DEP): 企業が購入したiOS/macOSデバイスを、箱から出した状態で自動的にIEMMに登録させ、設定を適用できます。ゼロタッチ登録が可能になり、大規模展開やキッティング作業の効率が劇的に向上します。キッティング担当者が個別にデバイスを設定する必要がなくなります。
- Android Enterprise: Android Enterprise Recommendedの機能を利用し、Work Profile(BYOD向けに個人データと業務データを分離)、Fully Managed Device(会社所有デバイスを完全に管理)、Corporate-Owned Personally-Enabled (COPE)(会社所有デバイスで個人利用を許可しつつ業務領域を分離)、Dedicated Devices (Kiosk)(単一または特定のアプリのみに利用を制限)など、様々なモードでの登録と詳細な管理が可能です。ゼロタッチ登録(Zero-Touch Enrollment)にも対応し、Androidデバイスの展開を効率化します。
- Windows Autopilot 連携: Windows 10/11デバイスのゼロタッチ展開と設定を自動化します。デバイスをエンドユーザーに直接配送し、簡単な初期設定を行うだけで、IEMMに自動登録され、企業ポリシーやアプリケーションが適用された状態にすることができます。
- URL/QRコード登録: ユーザーが特定のURLにアクセスするか、QRコードをスキャンするだけで、デバイスをIEMMに登録できます。BYODデバイスの登録などで広く利用されます。
- アカウントベース登録: ユーザーが企業アカウント情報(Active Directory連携など)を入力してデバイスを登録する方法です。
- 企業の利用形態やデバイスの種類に応じて、多様な登録方法をサポートしています。
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ポリシー管理:
- セキュリティ、接続設定、機能制限など、様々なポリシーをデバイスグループやユーザーグループに対して適用できます。
- セキュリティポリシー: パスコードの複雑性、自動ロック時間、画面キャプチャ禁止、コピー&ペースト制限(特定のアプリ間でのみ許可など)などが設定可能です。デバイスの暗号化強制も重要なポリシーの一つです。
- 接続設定: Wi-Fiプロファイル(企業SSIDへの自動接続、証明書認証)、VPNプロファイル(常時接続VPN、Per-App VPN)、Eメールアカウント、カレンダー、連絡先などの設定を自動配布できます。これにより、ユーザー自身が複雑なネットワーク設定を行う必要がなくなり、サポートコストが削減されます。
- 機能制限: カメラ無効化、スクリーンショット禁止、App Store/Google Playからのインストール制限、特定のWebサイトへのアクセス制限(Webコンテンツフィルタリング)、AirDrop/Bluetooth共有の制限など、デバイスの機能を制限することでセキュリティリスクを低減します。
- 構成プロファイル: OS固有の詳細な設定(例:iOSの構成プロファイル、WindowsのCSP設定)を適用できます。
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インベントリ管理:
- 登録されているデバイスのハードウェア情報(メーカー、モデル、OSバージョン、IMEI/UDID、ストレージ容量、バッテリー残量など)、インストールされているアプリケーションリスト、適用されているポリシー、ネットワーク情報などを自動的に収集し、一元管理します。
- これらの情報は、資産管理、ライセンス管理、セキュリティ監視、トラブルシューティングなどに役立ちます。
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リモート操作:
- 管理コンソールから遠隔でデバイスに対して様々な操作を実行できます。
- リモートロック: 紛失・盗難時にデバイスをロックし、不正利用を防ぎます。
- リモートワイプ: デバイス上のデータ(企業データ全体または業務領域のみ)を遠隔で消去します。退職者のデバイスや紛失したデバイスからの情報漏洩を防ぐ上で極めて重要な機能です。
- リモートメッセージ送信: デバイスのロック画面などにメッセージを表示できます(例:「このデバイスを拾った方はXXまでご連絡ください」)。
- 位置情報取得: デバイスのおおよその位置情報を取得できます(プライバシーに配慮した設定が可能)。
- リモートコントロール/画面共有: 必要に応じて、管理者が遠隔でデバイスの画面を表示したり、操作をサポートしたりできます(OSや設定による)。
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プロファイル管理:
- 上記の設定やポリシーを「プロファイル」として定義し、ユーザーグループやデバイスグループに適用します。これにより、部署や役職、デバイスの所有形態などに応じて、きめ細やかな設定を展開できます。プロファイルの優先順位を設定することも可能です。
2. アプリケーション管理(MAM機能)
業務に必要なアプリケーションを従業員が安全かつ容易に利用できるようにするための機能です。
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アプリケーション配布:
- App Store(iOS)やGoogle Play(Android)で公開されている企業向けアプリ(パブリックアプリ)や、企業が独自開発したアプリ(プライベートアプリ)を、従業員のデバイスに配布できます。
- ボリューム購入プログラム (VPP) / Managed Google Play: 企業が一括購入した有料アプリのライセンスを管理し、デバイスに配布・管理できます。ライセンスの割り当て解除・再利用も可能です。
- 企業内アプリストア: IEMMのポータルを通じて、承認された業務アプリの一覧を提供し、ユーザーが必要なアプリを自身でインストールできるようにします。これにより、従業員は安全なアプリを簡単に見つけ、インストールできます。
- 強制インストール: 特定の業務に必須なアプリを、ユーザーの操作なしに自動的にデバイスにインストールさせることができます。
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アプリケーション設定(Managed Configuration):
- アプリ開発者が提供する機能を利用し、インストールされたアプリに対して企業固有の設定(例:サーバーURL、ログイン情報、機能の有効/無効化)をリモートから適用できます。これにより、ユーザーが手動で複雑なアプリ設定を行う手間を省き、設定ミスを防ぎます。
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アプリケーションデータの保護:
- 業務アプリとそのデータに対して、高度なセキュリティポリシーを適用できます。
- アプリ間でのデータ共有制限: 業務アプリで扱われるデータ(コピー&ペースト、ファイル共有など)が、承認されていない他のアプリや個人領域に漏洩することを防ぎます。
- コンテナ化: 特にBYODデバイスにおいて、業務関連のアプリケーションとデータを、デバイス上の個人領域から論理的に分離された「 secure container 」内に格納します。これにより、個人データのプライバシーを保護しつつ、業務データに対してのみ厳格なセキュリティポリシー(暗号化、アクセス制御、ワイプなど)を適用できます。
- 認証の強化: アプリ起動時や特定の操作時に追加の認証(パスコード、生体認証など)を要求できます。
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アプリケーション利用状況の監視:
- デバイスにインストールされているアプリのリスト、利用状況(起動回数、利用時間など)、バージョン情報などを収集し、不適切なアプリの利用や古いバージョンのアプリの検出に役立てます。
3. セキュリティ管理
IEMMは、デバイス、アプリケーション、データの各レベルで多層的なセキュリティ機能を提供し、企業が直面する様々な脅威から情報を保護します。
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コンプライアンスポリシーと自動監視:
- 企業が定めるセキュリティ基準や規制(例:OSの最低バージョン、特定のセキュリティパッチの適用、脱獄/root化されていないこと、パスコード設定)に基づいたコンプライアンスポリシーを設定します。
- IEMMはデバイスの状態を常に監視し、ポリシーに違反しているデバイス(コンプライアンス違反デバイス)を自動的に検出します。
- 自動アクション: コンプライアンス違反が検出された場合、事前に設定された自動アクションを実行できます。例:
- ユーザーへの警告通知。
- 企業ネットワークへのアクセス制限(VPN切断、Wi-Fi接続拒否)。
- 業務アプリへのアクセス制限。
- 特定のデータへのアクセス制限。
- 最終手段として、業務領域またはデバイス全体のワイプ。
- これにより、セキュリティリスクが放置される時間を最小限に抑え、自動的にリスクを排除・軽減できます。
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条件付きアクセス(Conditional Access)連携:
- IEMMで収集したデバイスのコンプライアンス情報やセキュリティ状態を、Microsoft Azure Active Directory (Azure AD)などのアイデンティティ管理システムや、各種SaaSアプリケーションと連携させます。
- 例えば、「IEMMによってコンプライアンス違反と判定されたデバイスからのアクセスは、Office 365や社内システムへの接続を許可しない」といったポリシーを設定できます。これにより、デバイスの状態に基づいた動的なアクセス制御が可能となり、セキュリティを大幅に強化できます。
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認証機能:
- デバイスや業務リソースへのアクセスに、よりセキュアな認証方法を提供します。
- 証明書ベース認証: 各デバイスに固有の証明書を自動的に配布し、Wi-Fi、VPN、Eメール、Webサイトへのアクセス認証に利用できます。パスワード認証に比べて、フィッシングやブルートフォース攻撃に強く、セキュリティレベルが向上します。証明書のライフサイクル管理(発行、配布、失効)もIEMMで行えます。
- シングルサインオン (SSO): 連携するIdP(Identity Provider)と組み合わせて、一度認証すれば複数の業務アプリケーションにアクセスできるSSO環境を構築できます。これにより、ユーザーの利便性を高めつつ、パスワード管理の負担を軽減します。
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VPN/Per-App VPN:
- セキュアな企業ネットワークへの接続手段としてVPN設定を配布・管理できます。
- Per-App VPN: 特定の業務アプリを起動した際にのみVPN接続を確立する設定が可能です。これにより、個人利用時にはVPNがオフになるためバッテリー消費を抑え、業務アプリ利用時のみセキュアな通信を保証できます。
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モバイル脅威防御(MTD: Mobile Threat Defense)連携:
- IEMMは、Ivanti Neurons for MDMといったIvantiの高度なセキュリティソリューションや、主要なサードパーティMTDソリューションとの連携を強化しています。
- MTDソリューションは、マルウェア、フィッシング、ネットワーク攻撃、OSの脆弱性など、モバイルデバイス固有の脅威をリアルタイムに検出・分析します。
- MTDソリューションが脅威を検出すると、IEMMにその情報が連携され、IEMMは設定されたポリシーに基づいて自動的に対応アクション(例:感染デバイスの隔離、業務データへのアクセス遮断、ユーザーへの警告)を実行します。これにより、未知の脅威や高度な攻撃にも迅速に対応できるようになります。
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データ漏洩防止(DLP: Data Loss Prevention)機能:
- 前述のアプリケーションデータの保護機能(コピー&ペースト制限、アプリ間でのファイル共有制限など)に加えて、IEMMはコンテンツ管理機能と連携し、機密情報が不適切に扱われることを防ぎます。
- 特定の種類のファイル(暗号化されていない企業ドキュメントなど)をデバイスに保存させない、特定の場所(クラウドストレージや個人メールなど)へのアップロードを禁止する、といったポリシー設定が可能です。
4. コンテンツ管理(MCM機能)
モバイルデバイス上で企業コンテンツを安全に共有・アクセスするための機能です。
- セキュアなドキュメント配布とアクセス:
- 業務に必要なドキュメント(プレゼンテーション資料、レポート、マニュアルなど)をIEMM経由でデバイスに配布し、組み込みのセキュアなビューワーで閲覧させることができます。
- ビューワー内でコピー、ペースト、印刷、スクリーンショットなどの操作を制限することで、ドキュメントの内容が外部に漏洩するリスクを低減します。
- コンテンツの暗号化:
- デバイス上に保存される企業コンテンツを自動的に暗号化し、デバイスが紛失・盗難された場合でもデータの内容を保護します。
- ストレージ連携:
- SharePoint, OneDrive, Box, Dropboxなどの企業向けクラウドストレージサービスと連携し、IEMM管理下のセキュアなコンテナ内でこれらのストレージ上のファイルにアクセスできるようにします。これにより、ネイティブアプリや個人領域からのアクセスを防ぎ、セキュリティを確保します。
5. ユーザーおよびアイデンティティ管理
効率的でセキュアなユーザー管理を実現します。
- ディレクトリサービス連携:
- Active Directory (AD) や Azure Active Directory (Azure AD)、LDAPなどの既存のディレクトリサービスと連携できます。
- これにより、既存のユーザーアカウントやグループ情報をIEMMに取り込み、ユーザーやグループ単位でデバイスやアプリケーションのポリシーを適用できます。手動でのユーザー管理の手間を省き、一貫性のある管理を実現します。
- ユーザーの追加・変更・削除がディレクトリサービス側で行われると、IEMMにも自動的に反映されるため、管理の二重化を防ぎます。
- ロールベースアクセス制御 (RBAC):
- IEMMの管理コンソールへのアクセス権限を、管理者の役割(例:デバイス管理者、アプリケーション管理者、セキュリティ管理者、ヘルプデスク)に基づいて細かく設定できます。
- これにより、不必要な権限の付与を防ぎ、管理操作におけるセキュリティリスクを低減します。
6. レポートと分析
デバイスの状態、セキュリティ状況、コンプライアンス遵守状況などを可視化し、IT管理者が迅速な意思決定を行えるようにします。
- 標準レポート:
- 登録デバイス数(OS別、所有形態別)、コンプライアンス違反デバイスリスト、インストール済みアプリリスト、セキュリティイベントログなど、様々な事前定義されたレポートを生成できます。
- カスタムレポート:
- 収集されたインベントリ情報やイベントログに基づいて、独自の条件でカスタムレポートを作成できます。
- ダッシュボード:
- 管理コンソールのダッシュボード上で、デバイスの全体像、コンプライアンス状況、セキュリティアラートなどをグラフィカルに表示します。現在の状況を一目で把握し、対応が必要な項目を迅速に特定できます。
- 監査ログ:
- 管理コンソール上で行われた全ての操作(ポリシー変更、リモート操作、デバイス登録解除など)に関する詳細なログが記録されます。セキュリティ監査や問題発生時の原因究明に不可欠です。
7. 自動化と連携
IT運用効率を最大化し、既存のITインフラとの連携を強化します。
- ワークフローの自動化:
- 特定のイベント(例:コンプライアンス違反の検出、デバイスの登録解除)をトリガーとして、一連の自動アクションを実行するワークフローを設定できます。これにより、定型的な管理タスクを自動化し、IT担当者の負担を軽減します。
- 他のIvanti製品との連携:
- Ivanti Neuronsプラットフォームの一部として、他のIvanti製品(例:Ivanti Neurons for UEM, Ivanti Service Manager (ITSM), Ivanti Neurons for Discovery, Ivanti Endpoint Securityなど)とシームレスに連携できます。これにより、デバイス管理、ITサービス管理、セキュリティ管理、IT資産管理などを統合し、より効率的でインテリジェントなIT運用を実現できます(UEM機能の実現)。
- サードパーティ連携:
- オープンなAPIを提供しており、主要なクラウドサービス、セキュリティソリューション(MTD、SIEMなど)、アイデンティティ管理システム、ITSMツールなど、様々なサードパーティ製品と連携できます。既存のIT環境にIEMMを組み込み、より包括的なソリューションを構築できます。
IEMMがデバイス管理の課題をどのように解決するか
前述の主要機能を通じて、Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)は、現代の企業が直面するデバイス管理の様々な課題に対して具体的な解決策を提供します。
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多様なデバイスとOSへの対応:
- 解決策: シングルコンソールからのマルチOS管理機能。Apple ABM/ASM, Android Enterprise, Windows Autopilotなどのゼロタッチ登録連携。
- 効果: IT部門はOSごとに異なる管理ツールを学ぶ必要がなくなり、単一の知識セットで全てのデバイスを管理できます。デバイス展開の自動化により、初期設定やキッティングにかかる時間とコストを大幅に削減できます。標準化されたポリシーを異なるOSに適用することで、管理の一貫性が保たれます。
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BYODと会社所有デバイスの混在:
- 解決策: 所有形態に応じた登録方法(BYOD向けURL/QRコード、会社所有向けゼロタッチ登録)。BYODデバイスに対するWork Profileやセキュアコンテナによる個人領域と業務領域の分離。きめ細やかなポリシー設定(例:会社所有デバイスでは全ての機能を管理、BYODデバイスでは業務アプリとデータのみを管理)。
- 効果: 従業員のプライバシーに配慮しつつ、業務データのセキュリティを確実に保護できます。IT部門は、デバイスの所有形態に関わらず、必要なレベルで管理とセキュリティを適用できます。BYODの導入を安全に進め、コスト削減と従業員の柔軟な働き方を支援できます。
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セキュリティリスクの増大:
- 解決策: 多層的なセキュリティ機能(強力なパスコード強制、暗号化、機能制限、証明書ベース認証、DLP)。コンプライアンス違反の自動検出と自動アクション。MTDソリューションとの連携。条件付きアクセス連携。
- 効果: デバイスの紛失・盗難、マルウェア感染、不正アクセス、情報漏洩といったリスクを効果的に低減します。セキュリティポリシーの適用漏れを防ぎ、リスク発生時には自動で対応することで、被害を最小限に抑えます。最新の脅威にも迅速に対応できる体制を構築できます。
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コンプライアンス要件の厳格化:
- 解決策: 厳格なポリシー適用と強制。コンプライアンス状況のリアルタイム監視。詳細なレポート機能と監査ログ。
- 効果: 企業は各種規制(個人情報保護法、GDPRなど)や業界標準に準拠したデバイス管理を自動的に行うことができます。コンプライアンス違反デバイスを特定し、必要な是正措置を迅速に講じることができます。監査が必要な際に、デバイスの状態や管理操作に関する証跡を容易に提供できます。
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運用負荷の増加とITリソースの限界:
- 解決策: デバイスのゼロタッチ登録・初期設定の自動化。プロファイルによる一括ポリシー適用。アプリの自動配布と設定。リモート操作機能による遠隔サポート・対応。自動化ワークフロー。ディレクトリサービス連携。
- 効果: IT部門の定型的な手作業(デバイスセットアップ、設定変更、トラブル対応など)を大幅に削減し、IT担当者はより戦略的な業務に時間を割けるようになります。ユーザーアカウント管理の自動化により、入社・異動・退職時のデバイス・アクセス権管理が効率化されます。限られたITリソースでも、多くのデバイスを効率的に管理できるようになります。
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ユーザーエクスペリエンスとの両立:
- 解決策: デバイス登録の簡素化。設定プロファイルによるWi-Fi/VPN/メールの自動設定。企業内アプリストアによるアプリへの容易なアクセス。Per-App VPNによる必要な時のみのセキュア接続。SSO連携。
- 効果: 従業員はデバイスのセットアップや設定、業務に必要なリソースへのアクセスを簡単に行えるようになります。セキュリティが確保されつつも、過度な制限なく、快適に業務を進めることができます。これにより、生産性が向上し、シャドーITのリスクも低減されます。
IEMMの導入検討にあたって考慮すべき点
Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)の導入を検討する際には、自社の状況や要件に合わせていくつかの点を考慮する必要があります。
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導入形態:クラウド vs オンプレミス:
- IEMMはクラウド(SaaSとして提供)またはオンプレミス(自社データセンターに構築)の両方の形態で提供される場合があります(製品バージョンや地域による)。
- クラウド: 初期コストが低い、運用管理の手間が少ない(Ivantiがインフラやアップデートを管理)、スケーラビリティが高いといったメリットがあります。迅速な導入やITリソースが限られている場合に適しています。
- オンプレミス: データやシステムを自社内で完全に管理できるため、特定のセキュリティ要件やコンプライアンス要件(データ主権など)を満たしやすい場合があります。カスタマイズの自由度が高いこともあります。ただし、初期コストや運用管理の負担は大きくなります。
- どちらの形態が適切かは、企業のセキュリティポリシー、ITリソース、予算、拡張計画などによって異なります。
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価格体系:
- EMMソリューションの価格は、通常、管理対象デバイス数に基づいて設定されます。
- 提供される機能レベルによって価格が異なるプランが用意されている場合もあります(例:MDMのみ、MDM+MAM、フル機能EMM/UEM)。
- 自社のデバイス数、必要な機能、将来的なデバイス増加を見込んで、総コストを評価する必要があります。
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既存ITシステムとの連携:
- 既に利用しているID管理システム(Active Directory, Azure ADなど)、ITSMツール、SIEM、セキュリティソリューション、クラウドストレージサービスなどとIEMMが円滑に連携できるかを確認することが重要です。
- API連携や標準的なプロトコル(LDAP, SAML, SCIMなど)による連携機能が提供されているか、 Ivantiが公式にサポートしている連携先リストを確認します。
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サポート体制:
- 導入時および運用中に適切なサポートを受けられるかは、成功に不可欠です。
- Ivanti自身が提供するサポート、あるいは国内の正規代理店が提供するサポートの体制(対応時間、言語、問い合わせ方法、サポートレベルなど)を確認します。導入支援サービスやトレーニングの有無も重要です。
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導入事例と評判:
- 自社の業界や規模に近い企業のIEMM導入事例を参考にすることで、導入効果や潜在的な課題について具体的なイメージを持つことができます。
- IT専門調査会社のレポートやユーザーレビューサイトなども参考に、製品の評判や実際の利用者の声を確認します。
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トライアル:
- 可能であれば、実際の環境に近い形でIEMMのトライアルを実施することを強く推奨します。
- 自社で利用している主要なデバイスやOS、アプリケーションを登録し、主要な機能(登録、ポリシー適用、アプリ配布、リモート操作、レポートなど)が期待通りに動作するか、IT担当者の操作感や習熟度、ユーザーの利便性などを実際に評価できます。
これらの点を総合的に検討することで、自社にとってIEMMが最適なソリューションであるか、またどのように導入を進めるべきかを判断するための材料となります。
まとめ
Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)は、現代の企業が直面する複雑で多岐にわたるデバイス管理の課題に対し、包括的かつ強力な解決策を提供するEMM/UEMソリューションです。
デバイスとOSの多様化、BYODと会社所有の混在、増大するセキュリティリスク、厳格化するコンプライアンス要件、そしてITリソースの制約――これら全てが、企業のIT部門にとって大きな負担となっています。IEMMは、MDM、MAM、セキュリティ、コンテンツ管理、ID管理、レポート、自動化といった幅広い機能を単一のプラットフォームに統合することで、これらの課題に効果的に対応します。
IEMMを導入することで、企業は以下のような多大なメリットを享受できます。
- 一元管理による運用効率の向上: 異なるOSや所有形態のデバイスを単一コンソールから管理することで、IT管理者の負担を軽減し、管理コストを削減します。ゼロタッチ展開や自動化機能は、デバイスのライフサイクル管理を大幅に効率化します。
- 包括的なセキュリティ強化: デバイス、アプリケーション、データレベルでの多層的なセキュリティ機能、コンプライアンスの自動監視と対応、MTDや条件付きアクセス連携により、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを最小限に抑えます。
- コンプライアンス遵守の支援: 自動的なポリシー適用、監視、詳細なレポート・監査ログ機能は、企業が国内外の規制や標準に準拠したIT環境を維持し、その状況を証明することを支援します。
- 柔軟な働き方の実現と生産性向上: BYODを含む多様な働き方をセキュアにサポートし、必要な業務リソースへの容易なアクセスを提供することで、従業員の生産性と満足度を向上させます。
- 既存IT投資の有効活用: ディレクトリサービスや他のIT管理ツールとの連携により、既存のITインフラストラクチャを有効活用しつつ、管理プロセスを統合・合理化できます。
ビジネス環境が進化し続ける中で、モバイルデバイス管理はますます重要かつ複雑になっています。Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)は、その進化に対応するための強力な基盤を提供します。企業のデジタル変革を推進し、セキュアで生産性の高いワークプレイスを実現するためには、IEMMのような先進的なEMM/UEMソリューションの導入を真剣に検討する価値があると言えるでしょう。
自社の具体的な要件や課題を踏まえ、 Ivanti または Ivanti の正規代理店に相談し、IEMMの詳細な機能や導入オプション、トライアルについて情報収集を進めることを推奨します。適切なソリューションを選択し、導入することで、デバイス管理の課題を解決し、企業の競争力を一層強化できるはずです。
免責事項: 本記事は、Ivanti Endpoint Manager Mobile(IEMM)に関する一般的な情報提供を目的として記述されたものです。製品の機能、名称、仕様、価格、導入形態、サポート体制などは、提供時期や地域、契約内容によって異なる場合があります。最新かつ正確な情報については、必ずIvanti公式ウェブサイトまたは正規販売代理店にご確認ください。また、本記事の内容は、特定の導入や運用方法、セキュリティ効果を保証するものではありません。セキュリティ対策およびシステム導入にあたっては、専門家にご相談の上、自己責任において行ってください。