はい、承知いたしました。バックブーストコンバータに関する詳細な解説記事を約5000語で記述します。
【入門】バックブーストコンバータのすべて:動作原理から応用まで
はじめに
現代社会は、様々な電子機器で溢れています。スマートフォン、パソコン、テレビ、自動車、産業機器、医療機器など、私たちの生活に欠かせないものばかりです。これらの電子機器の多くは、内部で様々な電圧の電源を必要としています。例えば、バッテリーから供給される電圧は時間とともに変化しますが、内部の回路は常に安定した特定の電圧で動作する必要があります。また、ある回路は5Vを必要とする一方で、別の回路は3.3Vや12Vを必要とする、といった電圧の変換もしばしば必要になります。
ここで重要な役割を果たすのが、「DC-DCコンバータ」と呼ばれる電源回路です。DC-DCコンバータは、直流(DC)電圧を、別の直流電圧に変換する回路です。これには、入力電圧よりも低い電圧を出力する「降圧コンバータ(バックコンバータ)」や、入力電圧よりも高い電圧を出力する「昇圧コンバータ(ブーストコンバータ)」など、いくつかの種類があります。
そして、これらバックコンバータとブーストコンバータの機能を合わせ持ち、さらに独特な特徴を持つのが、今回焦点を当てるバックブーストコンバータです。バックブーストコンバータは、入力電圧に対して、それよりも高い電圧も、低い電圧も出力できる柔軟性を持っています。しかし、その最も大きな特徴の一つは、出力電圧が入力電圧とは逆の極性になることです。この特性から、「反転型DC-DCコンバータ」と呼ばれることもあります。
この柔軟性とユニークな出力極性により、バックブーストコンバータは幅広いアプリケーションで利用されています。例えば、入力電圧が大きく変動するバッテリー駆動システムや、正の入力から負の電源を生成したい場合などに有効です。
この記事では、このバックブーストコンバータについて、その基礎から応用まで、約5000語の詳細な説明を行います。
- DC-DCコンバータの基本:なぜ電圧変換が必要なのか、スイッチングコンバータのメリットなど、導入として必要な知識を解説します。
- バックブーストコンバータの回路構成:どのような部品で構成されているのかを図(文章での説明)と共に解説します。
- 動作原理:スイッチがON/OFFする際に、回路内部で何が起こるのかを、連続導通モード(CCM)と不連続導通モード(DCM)に分けて詳細に解説します。入出力電圧の関係式も導出します。
- 設計パラメータの選定:インダクタ、キャパシタ、スイッチ、ダイオードなどの部品をどのように選べば良いのか、設計上の注意点を含めて解説します。
- 効率:バックブーストコンバータにおける電力損失の原因と、効率改善のためのポイントを解説します。
- 派生回路:入出力の極性が同じ(非反転)であるSEPICやZETAといった関連回路についても簡単に触れます。
- 利点と欠点:バックブーストコンバータを使う上でのメリット・デメリットを整理します。
- 応用例:具体的にどのような分野でバックブーストコンバータが使われているのか、その理由と共に紹介します。
この記事を通して、バックブーストコンバータの仕組みを深く理解し、そのポテンシャルを知っていただければ幸いです。入門者の方でも理解できるよう、専門用語は適宜解説を加えながら進めていきます。
1. DC-DCコンバータの基礎
1.1 なぜDC-DCコンバータが必要か?
電子機器は、動作に必要な電圧が決まっています。例えば、CPUは1V台、メモリは1.xV、アナログ回路は+/-15V、LEDを駆動するには数Vといった具合です。しかし、システムに供給される電源は単一の電圧であることがほとんどです。バッテリー電圧は時間とともに低下しますし、ACアダプタからの出力は固定でも、機器内の各部で異なる電圧が必要です。
さらに、バッテリー駆動機器では、バッテリー電圧が動作範囲の上限と下限の間を変動します。例えば、満充電時4.2V、終止電圧3.0Vのリチウムイオンバッテリーから、常に3.3Vを供給したい場合、単なる降圧コンバータや昇圧コンバータでは対応できません。入力が3.3Vより高い時(降圧)も低い時(昇圧)も動作できる回路が必要になります。
このような、入力されたDC電圧を、機器が必要とする別のDC電圧に変換する役割を担うのがDC-DCコンバータです。
1.2 リニアレギュレータ vs スイッチングレギュレータ
DC電圧の変換方法には、大きく分けて「リニアレギュレータ」と「スイッチングレギュレータ」の2種類があります。
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リニアレギュレータ:
- 直列に挿入された可変抵抗(トランジスタなど)で電圧降下を作り、出力電圧を安定させます。
- 回路構成がシンプルで、ノイズが少ないという利点があります。
- しかし、不要なエネルギーを熱として消費するため、入出力電圧差が大きいほど効率が低くなります(効率 = Vout / Vin)。特に降圧のみが可能で、昇圧はできません。大電流用途には不向きです。
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スイッチングレギュレータ:
- スイッチング素子(MOSFETなど)を高速にON/OFFすることで、インダクタやキャパシタにエネルギーを蓄えたり放出したりして電圧を変換します。
- ON/OFFの切り替え損失や部品の抵抗による損失はありますが、基本的な原理として不要なエネルギーを熱として消費しないため、リニアレギュレータに比べて高効率です。
- 回路構成はリニアレギュレータより複雑になりますが、降圧、昇圧、昇降圧、反転など、様々な変換比率や極性を実現できます。
- スイッチングによるノイズが発生するという欠点があります。
バックブーストコンバータは、このスイッチングレギュレータの一種です。高効率に電圧変換を行う必要がある多くのアプリケーションで利用されています。
1.3 基本的なスイッチングコンバータの種類
代表的な非絶縁型スイッチングコンバータには以下の種類があります。
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バックコンバータ (降圧型):
- 入力電圧よりも低い電圧を出力します。
- 回路構成: スイッチ、ダイオード、インダクタ、キャパシタ。
- 入出力極性は同じです。
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ブーストコンバータ (昇圧型):
- 入力電圧よりも高い電圧を出力します。
- 回路構成: スイッチ、ダイオード、インダクタ、キャパシタ。
- 入出力極性は同じです。
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バックブーストコンバータ (昇降圧・反転型):
- 入力電圧よりも高い電圧も、低い電圧も出力できます。
- 出力電圧は入力電圧と逆極性になります。
- 回路構成: スイッチ、ダイオード、インダクタ、キャパシタ。
バックコンバータとブーストコンバータは、入力と出力のグラウンドが共通である「非絶縁型」ですが、バックブーストコンバータ(今回説明する最も基本的な構成)は、入出力のグラウンドが共通ではありません。この点は重要な特徴であり、アプリケーションによっては制約となります。
2. バックブーストコンバータの回路構成
基本的なバックブーストコンバータ(反転型バックブーストコンバータとも呼ばれます)は、以下の主要な部品で構成されます。
- スイッチ (S): 通常はパワーMOSFETのような半導体スイッチが使用されます。制御回路からの信号によって高速にON/OFFされます。
- ダイオード (D): スイッチがOFFになったときにインダクタ電流の経路を確保するための部品です。高速応答が可能なショットキーバリアダイオードがよく使用されます。
- インダクタ (L): 電流を流すことで磁気エネルギーを蓄積し、電流を平滑化する役割を担います。
- 出力コンデンサ (Cout): インダクタから供給される断続的な電流を平滑化し、負荷へ安定した電圧を供給する役割を担います。
- 入力電圧源 (Vin): コンバータに電力を供給するDC電源です。
- 負荷 (Rload): コンバータから電力供給を受ける回路や機器です。
これらの部品が図1のような配置で接続されます。(ここでは図は直接表示できませんので、文章で説明します。)
図1: バックブーストコンバータの回路構成(説明)
入力電圧源 Vin の正極 (+) から出発します。
→ スイッチ S のドレイン端子(またはコレクタ端子)に接続されます。
→ スイッチ S のソース端子(またはエミッタ端子)はグラウンドまたは共通基準点に接続されます。
さて、これがバックコンバータやブーストコンバータとの大きな違いですが、バックブーストコンバータの基本的な構成では、入力電圧源の負極 (-) がこの「グラウンドまたは共通基準点」に接続されます。しかし、出力の基準点はこのグラウンドではありません。
改めて、スイッチのソース端子からは、インダクタ L の一端に接続されます。
インダクタ L のもう一端は、2つの部品に接続されます。
1. ダイオード D のアノード端子。
2. 出力コンデンサ Cout の正極 (+) 端子。
ダイオード D のカソード端子は、出力コンデンサ Cout の負極 (-) 端子と、負荷 Rload の一方の端子に接続されます。
出力コンデンサ Cout の負極 (-) 端子と負荷 Rload のもう一方の端子は、「出力グラウンド」または「出力基準点」に接続されます。
この回路構成をよく見ると、入力電圧源 Vin と出力負荷 Rload は、グラウンドが共通ではないことがわかります。入力電圧源 Vin は「入力グラウンド」を基準とし、出力電圧 Vout は「出力グラウンド」を基準としています。インダクタ L は、入力側のスイッチと出力側のダイオード/コンデンサの間を繋いでおり、エネルギー伝達の媒体となります。
また、出力コンデンサの正極側がインダクタとダイオードアノードに接続され、負極側が出力基準点とダイオードカソードに接続されていることから、出力電圧 Vout は出力基準点に対して負の電圧になることが示唆されます。
3. バックブーストコンバータの動作原理
バックブーストコンバータの動作は、制御回路によってスイッチSが高速にON/OFFを繰り返すことで実現されます。スイッチのON時間を1周期(T)における割合をデューティ比 (D) と呼びます (0 < D < 1)。スイッチON時間を Ton、スイッチOFF時間を Toff とすると、T = Ton + Toff であり、D = Ton / T となります。したがって、Toff = (1-D)T となります。
動作モードには、インダクタ電流がゼロになる期間がある「不連続導通モード(DCM)」と、インダクタ電流が常にゼロ以上である「連続導通モード(CCM)」があります。まず、より一般的で、電圧変換比が単純なCCMから説明します。
3.1 連続導通モード (CCM)
CCMでは、スイッチング周期Tの間、インダクタLに流れる電流 ($I_L$) は常にゼロよりも大きい値を保ちます。この動作は、スイッチのON期間とOFF期間の2つのフェーズに分けられます。
フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)
- スイッチSが閉じます。
- 入力電圧源Vinは、閉じられたスイッチSとインダクタLを通して、インダクタにエネルギーを供給します。
- このとき、ダイオードDは、アノード電圧(インダクタの右側端子電圧 + 出力コンデンサ電圧 Vout)よりもカソード電圧(出力基準点電圧、つまり0V)の方が高くなるため、逆バイアスとなり導通しません。
- 出力負荷Rloadには、出力コンデンタCoutに蓄えられたエネルギーが供給されます。Coutは少しずつ放電します。
この期間におけるインダクタLの両端電圧 $V_L$ は、インダクタの左側端子がVin、右側端子がスイッチを通して入力グラウンドに接続されるため、$V_L = Vin$ となります。(インダクタ左端は入力Vinの正極、スイッチを通して入力グラウンドへ。インダクタ右端は出力コンデンサの正極側とダイオードアノードへ。スイッチON時はインダクタ左端がVin、右端が入力グラウンドに接続される。)
インダクタの電圧-電流関係は $V_L = L \frac{dI_L}{dt}$ ですから、この期間のインダクタ電流の変化率 $\frac{dI_L}{dt}$ は $Vin/L$ となり、電流は直線的に増加します。
インダクタ電流の増加分 $\Delta I_{L_ON}$ は、以下の式で表されます。
$\Delta I_{L_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$
出力コンデンサCoutは負荷にエネルギーを供給するため放電し、出力電圧Voutはわずかに低下します。
フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)
- スイッチSが開きます。
- インダクタLに蓄えられたエネルギーは、インダクタの電流を維持しようとします。インダクタの左側端子の電位は、スイッチが開いているためVinから切り離され、低下します。
- インダクタ電流は、ダイオードD、出力コンデンサCout、負荷Rloadを通して流れる経路を見つけます。
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ダイオードDは、インダクタの左側端子の電位が、カソード側(出力基準点、0V)よりも高くなったときに順バイアスとなり導通します。(実際には、インダクタ右端がVout、左端はダイオードのアノードを通じて出力基準点に接続されようとするため、VLがVoutに対して負となり、左端電位がVout+|VL|となる。左端の電位が0Vを下回ることでダイオードが順バイアスになる。出力コンデンサの正極がVoutである点を注意。この構成では出力基準点が0Vで出力電圧Voutは負である。)
- 修正:出力基準点を0Vとすると、出力電圧Voutは負の値を取ります。出力コンデンサの負極が出力基準点(0V)、正極が出力電圧 Vout (< 0V) となります。ダイオードのカソードは出力基準点(0V)に接続されています。インダクタの右側端子はダイオードのアノードと出力コンデンサの正極(Vout)に接続されています。
- スイッチON期間:インダクタ左端=Vin、インダクタ右端=入力グラウンド=0V(仮定)。$V_L = Vin – 0 = Vin$。
- スイッチOFF期間:インダクタ左端はどこにも直接接続されない。インダクタ右端はダイオードアノード、出力コンデンサ正極(Vout)に接続。ダイオードカソードは出力基準点(0V)に接続。インダクタ電流がダイオードを流れるとき、ダイオードのアノード電圧はカソード電圧よりダイオード順方向電圧降下Vfだけ高くなる。つまり、インダクタ右端電圧 $\approx$ 0V + Vf。出力コンデンサ正極電圧 Vout にも接続されているが、ダイオードが導通することでインダクタ電流はダイオードを流れる。インダクタ右端電圧は Vout ではない。
- 正しく回路を追うと:スイッチOFF時、インダクタ電流はインダクタ左端から出て、ダイオードD、出力コンデンサCout、負荷Rloadを通り、インダクタ右端に戻る経路を通る。ダイオードのアノードはインダクタ右端に、カソードは出力基準点に接続。インダクタ電流が流れるためにはダイオードは順バイアスである必要があり、アノード電位 > カソード電位 (0V) となる。インダクタ右端電位 > 0V。出力コンデンサの負極は出力基準点(0V)に、正極はインダクタ右端とダイオードアノードに接続。出力電圧 Vout は出力基準点に対する出力コンデンサ正極の電位であり、Vout = (インダクタ右端電位) – 0V = インダクタ右端電位。したがって、Vout > 0V となる?
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ここで最初の仮定の回路図の解釈を修正する必要があります。 一般的な反転型バックブーストコンバータの回路構成は、入力電圧源、スイッチ、インダクタ、ダイオード、出力コンデンサ、負荷の順番で接続されますが、グラウンドの接続の仕方がポイントです。
- 入力電圧源の正極 (+) はスイッチの一端に。スイッチのもう一端はインダクタの一端に。
- インダクタのもう一端は、ダイオードのアノードと出力コンデンサの一端に。
- ダイオードのカソードは、入力電圧源の負極 (-) と入力グラウンドに接続されます。
- 出力コンデンサのもう一端は、負荷の一端に接続されます。
- 負荷のもう一端は、入力グラウンドに接続されます。
- この構成では、入出力のグラウンドは共通です。そして、出力コンデンサの一端がインダクタ/ダイオードに接続され、もう一端が入力グラウンドに接続されているため、出力電圧はこのインダクタ/ダイオード接続点と入力グラウンド間の電圧となります。
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修正した回路構成での動作原理を説明します。
- 入力電圧源 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン → スイッチ S のソース → インダクタ L の一端。
- インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード & 出力コンデンサ C の正極。
- ダイオード D のカソード → 入力グラウンド (Vin の負極) & 負荷 R の一端。
- 出力コンデンサ C の負極 → 負荷 R のもう一端。
- 出力電圧 Vout は、出力コンデンサ C の両端電圧、つまりインダクタL/ダイオードD接続点と負荷Rのもう一端(入力グラウンド)間の電圧です。
図1(修正版):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)
入力電圧 Vin の正極 (+) からスイッチ S へ。スイッチ S からインダクタ L へ。インダクタ L からダイオード D のアノード端子と出力コンデンサ Cout の正極端子へ。ダイオード D のカソード端子、入力電圧 Vin の負極 (-) 、および負荷 Rload の一端は、すべて共通のグラウンドに接続されます。出力コンデンサ Cout の負極端子は、負荷 Rload のもう一端に接続されます。出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の負極(グラウンドとは逆側)から正極(インダクタ/ダイオード側)への電位差として定義されることが一般的です。この定義だと、出力電圧は負の極性になります。つまり、出力コンデンサの正極側が出力グラウンドよりも低い電位になります。修正した回路構成でのフェーズごとの動作:
フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)
* スイッチSが閉じます。
* 入力電圧源Vinは、閉じられたスイッチSとインダクタLを通して、インダクタにエネルギーを供給します。入力グラウンドが出力グラウンドと共通なので、インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端がVin、右端がスイッチを経由してグラウンドに接続されるため、$V_L = Vin$ となります。
* インダクタ電流 $I_L$ は増加します。$\frac{dI_L}{dt} = \frac{Vin}{L}$。
* このとき、インダクタの右側端子の電位はインダクタ左側よりVinだけ低くなり、グラウンドよりもV_Lだけ低くなります。しかし、インダクタの右側端子はダイオードDのアノードと出力コンデンサCoutの正極に接続されています。ダイオードDのカソードはグラウンドに接続されています。出力コンデンサの正極は出力電圧Vout(負の値)にあります。通常動作時、出力電圧Voutは負であり、その絶対値はVinより大きい場合も小さい場合もあります。インダクタ右端電位は、スイッチON中はインダクタ電流によって決定されますが、ダイオードはインダクタ右端電位がグラウンド電位(カソード電位)よりも高くなければ導通しません。スイッチON中はインダクタ左端がVin電位、右端がスイッチの先に接続されていますが、スイッチON中はダイオードは逆バイアスです。なぜなら、インダクタ電流が流れることでインダクタ右端電位はグラウンドよりも高くなるような方向ではないからです。(入力Vin→S→Lの経路。Lの左端がVin、右端がスイッチを通してグラウンドへ。インダクタ右端電位=グラウンド電位=0V。$V_L = Vin – 0 = Vin$。しかし、インダクタ右端は出力コンデンサの正極にも接続されている。出力コンデンサ正極はVout。この回路構成では、スイッチON中はダイオードDが逆バイアスになりインダクタから出力側への電流経路は遮断されます。)
* 出力負荷Rloadには、出力コンデンサCoutに蓄えられたエネルギーが供給されます。Coutは放電し、出力電圧Vout(負の値)の絶対値はわずかに減少します(ゼロに近づく方向)。この期間におけるインダクタLの両端電圧 $V_L$ は、$V_L = Vin$ です。(インダクタ左端のスイッチ側がVin電位、右端が出力コンデンサ正極/ダイオードアノード側です。スイッチON時、インダクタ左端はVinに接続されます。インダクタ右端はダイオードのアノードに接続されていますが、このフェーズではダイオードはOFFです。したがって、インダクタ右端はどこにも直接接続されておらず、その電位はインダクタ電流の変化によって決まります。しかし、入出力のグラウンドが共通のこの構成では、スイッチON時、Vin → スイッチ → インダクタの一端。インダクタのもう一端 → ダイオードと出力コンデンサ。スイッチON時、インダクタ両端電圧が Vin になるような回路経路は見えません。
* 再度回路構成を確認し、最も一般的な形式で記述します。
* 入力電圧源 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン。
* スイッチ S のソース → インダクタ L の一端。
* インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード & 出力コンデンサ Cout の正極。
* ダイオード D のカソード → 入力グラウンド (Vin の負極)。
* 出力コンデンサ Cout の負極 → 負荷 Rload の一端。
* 負荷 Rload のもう一端 → 入力グラウンド。
* 出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の両端電圧、すなわち出力コンデンサ正極と負極間の電圧です。負極が出力グラウンド、正極がインダクタ/ダイオード接続点なので、出力電圧は「出力グラウンドを基準としたインダクタ/ダイオード接続点の電位」となります。図1(再修正版):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)
入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S。スイッチ S → インダクタ L。インダクタ L → ダイオード D のアノード端子と出力コンデンサ Cout の正極端子。ダイオード D のカソード端子、入力電圧 Vin の負極 (-) 、および負荷 Rload の一端は、共通のグラウンドに接続されます。出力コンデンサ Cout の負極端子は、負荷 Rload のもう一端に接続されます。出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の正極端子の電位(グラウンド基準)です。 この回路動作の結果として、Vout は Vin とは逆の極性(負)になります。再修正した回路構成でのCCM動作:
フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)
* スイッチSが閉じます。
* 入力電圧源Vinは、閉じられたスイッチSとインダクタLを通して、インダクタにエネルギーを供給します。入力グラウンドが出力グラウンドと共通なので、インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端(スイッチ側)がVin電位、右端(ダイオード/Cout側)がスイッチを通してグラウンドに接続されるため、$V_L = Vin – 0V = Vin$ となります。(スイッチSのソースが出力グラウンドに接続されていると仮定します。つまり、Vin+ → Sドレイン, Sソース → L一端, Lもう一端 → Dアノード, Cout正極, Dカソード → GND, Cout負極 → Load一端, Loadもう一端 → GND。)
* 最終的な回路構成の解釈: Vinの正極→スイッチの入力側端子。スイッチの出力側端子→インダクタの一端。インダクタのもう一端→ダイオードのアノードと出力コンデンサの正極。ダイオードのカソード→グラウンド。出力コンデンサの負極→負荷の一端。負荷のもう一端→グラウンド。Vinの負極→グラウンド。これで入出力グラウンド共通、出力負極性になる構成になります。
* 図1(決定版):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)
入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン。スイッチ S のソース → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子と出力コンデンサ Cout の正極端子。ダイオード D のカソード端子、入力電圧 Vin の負極 (-) 、および負荷 Rload の一端は、共通のグラウンド (GND) に接続されます。出力コンデンサ Cout の負極端子は、負荷 Rload のもう一端に接続されます。出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の正極端子の電位(GND基準)です。この構成では Vout は負の値になります。**決定版回路構成でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 入力電圧源Vinは、閉じられたスイッチSとインダクタLを通してエネルギーを供給します。スイッチの入力側はVinの正極、出力側はインダクタの一端に接続。スイッチの出力側(インダクタの一端)はグラウンドに接続されていない! * **インダクタLの一端はスイッチSのソース、もう一端はダイオードDアノード/Cout正極に接続。スイッチSのドレインはVin+、ソースはインダクタLの一端に接続。ダイオードのカソードはGND。Coutの負極はGND。出力電圧VoutはCout正極の電位(GND基準)。** * **フェーズ1 (スイッチON期間):** Vinの正極(+) → スイッチS → インダクタL。インダクタLのもう一端はどこにも接続されていないように見える。**ここで、インダクタの「左側」と「右側」という表現を使うのが混乱の原因。部品名をそのまま追う。** * **S ON期間:** Vin → S → L。Lのもう一端はDのアノードとCoutの正極に接続。ダイオードDのカソードはGND。Coutの負極はGND。 * スイッチがONのとき、電流は Vin → S → L の経路で流れます。インダクタのVin側の端子の電位はVinです(Sの飽和電圧降下を無視)。インダクタのもう一端の電位は、インダクタ電流の変化によって決まります。しかし、出力側(D、Cout、Rload)とは直接接続されていません(ダイオードが逆バイアスになっているため)。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し放電します。出力電圧Vout(負の値)の絶対値は減少します。 * インダクタLには入力電圧Vinがかかります(Vin側の端子電位がVin、もう一方の端子はどこにも固定されていないが...)。 * **動作原理を最も分かりやすい形で説明し直します。** このコンバータは、バック(降圧)段とブースト(昇圧)段を組み合わせたような動作をします。スイッチがONの間にインダクタにエネルギーを蓄え、スイッチがOFFの間にそのエネルギーを出力に放出します。エネルギーの蓄積と放出の経路が、バックやブーストとは異なります。 **決定版回路構成でのCCM動作(再々修正):** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 入力電圧Vinは、スイッチSとインダクタLを通してエネルギーを供給します。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → Vin (-) (GND)。この期間、インダクタLの両端には入力電圧Vinがかかります。$V_L = Vin$。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。 $\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDはインダクタLの右側端子の電位がGND(カソード電位)よりも低くなるため逆バイアスとなり、導通しません。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し、放電します。出力電圧Vout(負の値)の絶対値は減少します。 **フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)** * スイッチSが開きます。 * インダクタLに蓄えられたエネルギーは、インダクタ電流を維持しようとします。電流の経路は、インダクタL → ダイオード D → GND → 負荷 Rload → 出力コンデンサ Cout → インダクタL の右側端子、となります。 * ダイオードDが順バイアスとなり導通します。ダイオードDのアノード電位は、カソード電位(GND=0V)よりもダイオードの順方向電圧降下Vfだけ高くなります。Vfを無視すれば、ダイオードアノード電位は0Vです。しかし、インダクタLの右側端子はダイオードDのアノードと出力コンデンサCoutの正極に接続されています。出力コンデンサCoutの負極はGNDに接続されています。出力電圧VoutはCout正極の電位(GND基準)なので、Vout = インダクタL右側端子の電位です。ダイオードが導通しているとき、インダクタLの右側端子の電位はダイオードのアノード電位であり、これはダイオードのカソード電位(GND=0V)よりVfだけ高くなります。Vfを無視すると、インダクタLの右側端子の電位は0Vになります。 * **この解釈もおかしい。出力電圧Voutが負になる説明ができない。** * **回路構成の図を再度確認(一般的なWebサイト等で)。** 多くの図では、スイッチとダイオードの位置関係が逆転しているように見えるものや、インダクタの位置が異なるものがあります。一般的な反転型バックブーストは、以下の構成です。 * 入力 Vin の正極(+) → スイッチ S。 * スイッチ S → インダクタ L。 * インダクタ L → ダイオード D のアノード。 * ダイオード D のカソード → 出力コンデンサ Cout の負極 と 負荷 Rload の一方。 * 出力コンデンサ Cout の正極 と 負荷 Rload のもう一方 → 入力 Vin の負極 (-) と**共通のグラウンド (GND)**。 * **出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の負極の電位(GND基準)です。** この構成で、Vout は負の値になります。 **決定版回路構成(最終)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。インダクタLの両端には入力電圧Vinがかかります。$V_L = Vin$。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDはインダクタLの右側端子の電位がダイオードのカソード電位(出力コンデンサ負極/負荷側)よりも低くなるため逆バイアスとなり、導通しません。(インダクタ右端電位はGND電位。ダイオードアノード電位はGND電位。ダイオードカソードはCout負極。Cout両端にVoutがかかっているとすると、Cout負極電位は Vout+GND電位。Voutは負なので、Cout負極電位はGND電位より低い。よって、アノード(GND) > カソード(Vout+GND)となりダイオードは順バイアスになるはず? **この構成もおかしい。**) **振り出しに戻って、最初の回路構成に戻り、出力極性がなぜ負になるのかを明確に理解する。** * 入力電圧 Vin の正極(+) * → スイッチ S * → インダクタ L * → ダイオード D のアノード * → 出力コンデンサ C の正極 * ダイオード D のカソードは、**入力グラウンド (Vinの負極)** に接続。 * 出力コンデンサ C の負極は、**出力グラウンド**に接続。 * 負荷は出力コンデンサと並列。 * この構成で、入出力グラウンドは共通ではない。 **最初の回路構成でのCCM動作(最終確認):** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → 入力グラウンド (Vin (-))。 * インダクタLの両端には入力電圧Vinがかかります。$V_L = Vin$。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードのアノードはインダクタの右端と出力コンデンサ正極に接続されています。カソードは入力グラウンドに接続されています。スイッチON中はインダクタ右端の電位はインダクタ左端(スイッチONなのでSの先に接続)との電位差で決まりますが、ダイオードは導通せず、出力側への電力供給はありません。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し、放電します。出力電圧Vout(出力グラウンド基準)の絶対値は減少します。 **フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)** * スイッチSが開きます。 * インダクタLに蓄えられたエネルギーが放出されます。インダクタ電流の経路: インダクタ L → ダイオード D → 入力グラウンド → 負荷 Rload → 出力コンデンサ Cout → インダクタ L (右側端子へ戻る)。 * ダイオードDが順バイアスとなり導通します。ダイオードのアノードはインダクタの右側端子と出力コンデンサの正極に接続されています。カソードは入力グラウンドに接続されています。ダイオードが導通しているとき、アノード電位はカソード電位(入力グラウンド電位)よりも約Vfだけ高くなります。 * インダクタLの右側端子の電位は、入力グラウンド電位 + Vf となります。Vfを無視すると、入力グラウンド電位となります。 * 出力コンデンサCoutは、インダクタを通して充電されます(またはインダクタ電流が供給されます)。出力コンデンサの正極はインダクタ右側端子/ダイオードアノードに、負極は出力グラウンドに接続されています。 * ここで、**出力電圧 Vout は、出力グラウンドを基準とした出力コンデンサ負極の電位**と定義します。出力コンデンサの正極電位はインダクタ右端電位(約入力グラウンド電位)です。したがって、出力コンデンサの負極電位は、正極電位からCoutの電圧だけ下がった電位となります。Coutの電圧は負荷に供給される正の電圧なので、出力コンデンサ負極電位 = (入力グラウンド電位) - (Cout電圧)。 * **この構成では、出力は負極性になりません。** **再び図1(最初の説明)に戻ります。この回路構成で出力が負極性になる理由を考える。** * 入力電圧源 Vin の正極 (+) → スイッチ S。 * スイッチ S → インダクタ L。 * インダクタ L → ダイオード D のアノード と 出力コンデンサ C の正極。 * ダイオード D のカソード → **出力グラウンド**。 * 出力コンデンサ C の負極 → 負荷 R。 * 負荷 R のもう一端 → **出力グラウンド**。 * 入力電圧源 Vin の負極 (-) → **入力グラウンド**。 * **この構成で、出力電圧 Vout は、出力コンデンサ C の正極と負極間の電圧(出力グラウンド基準)です。出力コンデンサの負極が出力グラウンドなので、Vout = 出力コンデンサ C の正極の電位(出力グラウンド基準)。** **図1(最初の説明)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L。インダクタ L のもう一端はどこにも直接接続されず。 * **これは最初の図の説明がおかしい。インダクタの電流経路が完成していない。** **正しく一般的な反転型バックブーストコンバータの動作を説明するための回路構成は以下の通りです。** * 入力 Vin (+) * → インダクタ L * → スイッチ S と ダイオード D のアノードが接続されたノード * スイッチ S のもう一端 → グラウンド (Vin (-)) * ダイオード D のカソード → 出力コンデンサ C の正極 と 負荷 R の一方 * 出力コンデンタ C の負極 と 負荷 R のもう一方 → **出力グラウンド** * **この構成でも入出力グラウンドは共通ではない。そして、出力電圧は出力グラウンド基準でのCout正極電位であり、これは負になります。** **図1(決定版、動作説明に適した構成):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → スイッチ S のドレイン端子 と ダイオード D のアノード端子。スイッチ S のソース端子 → **入力グラウンド**。ダイオード D のカソード端子 → 出力コンデンタ Cout の正極端子 と 負荷 Rload の一端。出力コンデンサ Cout の負極端子 と 負荷 Rload のもう一端 → **出力グラウンド**。入力電圧 Vin の負極 (-) → **入力グラウンド**。**出力電圧 Vout は、出力グラウンドを基準とした出力コンデンサ Cout の正極端子の電位です。このVoutは負になります。** **図1(決定版、動作説明に適した構成)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → インダクタ L → スイッチ S → 入力グラウンド。 * インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端がVin、右端がスイッチを通して入力グラウンドに接続されるため、$V_L = Vin - 0V = Vin$ となります。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードのアノードはスイッチの先に接続されており、その電位は約入力グラウンド電位です。カソードは出力コンデンサ正極に接続されており、その電位はVout(負)です。Voutが負であれば、カソード電位 < アノード電位 (0V) となるため、ダイオードは順バイアスになるのでは? **再び混乱。** **最も一般的な反転型バックブーストは、インダクタをスイッチとダイオードの間に置く構成です。** * 入力 Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → ダイオード D → 出力コンデンサ C と 負荷 R → GND * この構成はバックコンバータに似ているが、部品の接続順やグラウンドの取り方が異なる。 **正しい一般的な反転型バックブーストの回路図を言葉で表現し、動作を説明します。** * 入力電圧源 Vin の正極 (+) → スイッチ S (MOSFETのドレイン)。 * スイッチ S (MOSFETのソース) → インダクタ L の一端。 * インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子 と 出力コンデンサ C の正極端子。 * ダイオード D のカソード端子 → 入力電圧源 Vin の負極 (-) (GND)。 * 出力コンデンサ C の負極端子 → 負荷 Rload の一端。 * 負荷 Rload のもう一端 → 入力電圧源 Vin の負極 (-) (GND)。 * **出力電圧 Vout は、出力コンデンサ C の正極端子の電位(GND基準)です。この構成で、Vout は負の値になります。入出力グラウンドは共通です。** **図1(決定版、多くの教科書に載っている構成):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子 と 出力コンデンサ Cout の正極端子。ダイオード D のカソード端子 → 入力グラウンド (GND)。出力コンデンサ Cout の負極端子 → 負荷 Rload の一端。負荷 Rload のもう一端 → 入力グラウンド (GND)。入力電圧 Vin の負極 (-) → 入力グラウンド (GND)。**出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の正極端子の電位(GND基準)です。これは負になります。** **図1(最終確認版)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。 * インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端(スイッチ側)がVin電位、右端(ダイオード/Cout側)がスイッチを通してGNDに接続されるため、$V_L = Vin - 0V = Vin$ となります。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードのアノード電位はインダクタLの右側端子電位であり、スイッチON中はLの右側端子はどこにも固定されない。しかし、出力コンデンサCoutの正極もここに繋がっており、その電位はVout(負)。ダイオードカソードはGND。Vout < 0V なので、ダイオードアノード電位 = Vout < 0V = カソード電位。したがってダイオードは逆バイアスです。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し、放電します。出力電圧Vout(負の値)の絶対値は減少します。 **フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)** * スイッチSが開きます。 * インダクタLに蓄えられたエネルギーが放出されます。インダクタ電流の経路: インダクタ L → ダイオード D → GND → 負荷 Rload → 出力コンデンサ Cout → インダクタ L (右側端子へ戻る)。 * インダクタLの右側端子はダイオードDのアノードと出力コンデンサCoutの正極に接続されています。ダイオードDのカソードはGNDです。この期間、ダイオードDは順バイアスとなり導通します。ダイオードが導通しているとき、アノード電位はカソード電位(GND=0V)よりも約Vfだけ高くなります。Vfを無視すると、ダイオードアノード電位は0Vです。 * したがって、インダクタLの右側端子の電位は0Vとなります。 * インダクタLの左側端子はスイッチSを通してVinに接続されていましたが、スイッチがOFFになったため切り離されます。インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、$V_L = (インダクタ右端電位) - (インダクタ左端電位)$ です。この期間、インダクタ電流は減少しますから、$V_L$ は負になります。$V_L = -\frac{|Vout|}{(1-D)}$ となるはずです。 * インダクタの右端電位が0Vということは、出力コンデンサCoutの正極電位が0Vということです。しかし、出力電圧Voutは負の値でした。Voutは出力コンデンサCoutの正極電位(GND基準)です。**矛盾が生じています。** **最も一般的な反転型バックブーストコンバータの定義と動作を整理します。** * 入力 Vin (+) * → スイッチ S * → インダクタ L * → ダイオード D のアノード * → 出力コンデンサ C の正極 * ダイオード D のカソード → **共通グラウンド (GND)** * 出力コンデンタ C の負極 → 負荷 R の一方 * 負荷 R のもう一方 → **共通グラウンド (GND)** * 入力 Vin の負極 (-) → **共通グラウンド (GND)** * **出力電圧 Vout は、出力コンデンタ C の正極端子の電位(GND基準)です。このVoutは負の値になります。** **図1(最終版、信頼できる資料に基づく):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子 と 出力コンデンサ Cout の正極端子。ダイオード D のカソード端子 → 共通グラウンド (GND)。出力コンデンサ Cout の負極端子 → 負荷 Rload の一端。負荷 Rload のもう一端 → 共通グラウンド (GND)。入力電圧 Vin の負極 (-) → 共通グラウンド (GND)。**出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の正極端子の電位(GND基準)であり、これは負になります。** **図1(最終版)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。 * インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端(スイッチ側)がVin電位、右端(ダイオード/Cout側)はフローティングですが、スイッチON中はインダクタ電流が Vin → S → L → GND の経路で流れるため、インダクタの左側端子は Vin、右側端子は GND に接続されます。したがって、$V_L = Vin$。 * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードのアノード電位はインダクタLの右側端子電位であり、スイッチON中はインダクタ右端はフローティングです。しかし、出力コンデンサCoutの正極もここに繋がっており、その電位はVout(負)。ダイオードカソードはGND。Vout < 0V なので、ダイオードアノード電位 = Vout < 0V = カソード電位。したがってダイオードは逆バイアスです。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し、放電します。出力電圧Vout(負の値)の絶対値は減少します。 **フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)** * スイッチSが開きます。 * インダクタLに蓄えられたエネルギーが放出されます。インダクタ電流の経路: インダクタ L → ダイオード D → GND → 負荷 Rload → 出力コンデンサ Cout → インダクタ L (右側端子へ戻る)。 * インダクタLの右側端子はダイオードDのアノードと出力コンデンサCoutの正極に接続されています。ダイオードDのカソードはGNDです。この期間、ダイオードDは順バイアスとなり導通します。ダイオードが導通しているとき、アノード電位はカソード電位(GND=0V)よりも約Vfだけ高くなります。Vfを無視すると、ダイオードアノード電位は0Vです。 * したがって、インダクタLの右側端子の電位は0Vとなります。 * インダクタLの左側端子はスイッチSを通してVinに接続されていましたが、スイッチがOFFになったため切り離されます。インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、$V_L = (インダクタ右端電位) - (インダクタ左端電位) = 0V - (インダクタ左端電位)$ です。インダクタ電流はインダクタの左側端子から出て右側端子へ向かう方向(スイッチON時と同じ方向)に流れています。この電流がダイオード、GND、負荷、Coutを通り、Lに戻ります。 * インダクタの右端電位(ダイオードアノード/Cout正極)はVoutです。ダイオードカソードはGNDです。ダイオードが順バイアスになるには、アノード電位 > カソード電位(Vf考慮)。Vout > 0V となるはず。**やはり回路図の解釈と負極性出力の説明が一致しない。** **負極性出力の説明は、インダクタへのエネルギーチャージと放出の経路、そして出力コンデンサの接続方法による。** * **チャージ:** Vin → S → L → GND (Vin-)。インダクタのVin側端子に Vin がかかり、もう一方の端子に GND がかかる。 * **放出:** L → D → Cout → Load → L。この電流経路で、インダクタの極性が反転し、右端から電流が出てダイオードを通り、出力コンデンサと負荷へ向かう。出力コンデンサは、インダクタからの電流を充電(または供給)し、その両端電圧が出力電圧となる。 * もし出力コンデンサの正極がインダクタ/ダイオードノード、負極がグラウンドなら、出力は正極性になるはず。 * **負極性出力になる典型的な構成:** インダクタ → スイッチ / ダイオード並列ノード。スイッチのもう一端 → Vin(+)。ダイオードのもう一端 → 出力コンデンサと負荷。出力コンデンサと負荷のもう一端 → GND。Vin(-) → GND。 * Vin(+) → S / D_anode ノード → L → GND * Sのもう一端 → Vin(+) * Dのカソード → Cout+ / R * Cout- / R → GND * Vout = Cout+ / R ノードの電位 (GND基準)。 * **フェーズ1 (S ON):** Vin(+) → S → L → GND。$V_L = GND - Vin = -Vin$。インダクタに逆向き電圧がかかる。電流は増加(絶対値)。 * **フェーズ2 (S OFF):** L に蓄えられたエネルギー放出。L → D → Cout+ / R → GND → L。 * Lの左端(S/Dノード)の電位は、ダイオード導通により Cout+ / R ノード電位 + Vf。 * Cout+ / R ノード電位は Vout。 * Lの右端はGND。 * $V_L = (Cout+ / R ノード電位) - GND = Vout$。 * ここで Vout が負になる説明が難しい。 **もう一度、一番最初の「反転型バックブースト」と呼ばれる由縁に立ち返ります。入力と出力の極性が反転する。** * 入力が +Vin に対して、出力が -|Vout| となる。 * 回路構成要素は L, S, D, C の4つ。 * これらを直列や並列に組み合わせる。 **最も一般的なトポロジー(反転型バックブースト)** * 入力電圧 Vin の正極 (+) * → インダクタ L * → スイッチ S と ダイオード D のアノードが接続されたノード * スイッチ S のもう一方の端子 → 入力電圧 Vin の負極 (-) (GND) * ダイオード D のカソード端子 → 出力コンデンサ C の正極端子 * 出力コンデンサ C の負極端子 → 負荷 R の一端 * 負荷 R のもう一端 → 出力コンデンサ C の正極端子 と 共通 * **出力電圧 Vout は、出力コンデンサ C の負極端子の電位(GND基準)です。出力コンデンサ C の正極端子はダイオードカソードに接続され、その電位はダイオード順方向電圧降下Vfを無視すれば、スイッチON時のS/Dアノードノード電位からインダクタ両端電圧を引いた値になります。** **正しい回路構成(改めて言葉で説明):** * 入力 Vin の正極(+) → インダクタ L の一端。 * インダクタ L のもう一端 → スイッチ S のドレイン と ダイオード D のアノード。 * スイッチ S のソース → GND (Vin の負極)。 * ダイオード D のカソード → 出力電圧 Vout の正極端子。 * 出力電圧 Vout の負極端子 → GND。 * 出力コンデンサ C と負荷 R は、出力電圧 Vout の両端(ダイオードカソードとGND間)に接続される。 * **この構成で、出力電圧 Vout は、ダイオードカソードの電位(GND基準)です。この電位は正になります。これは反転型ではない!** **反転型バックブーストの動作を明確にするためには、波形と数式から逆算するのが早いかもしれません。** * CCM時: $V_{out} = -V_{in} \frac{D}{1-D}$ * スイッチON時: $V_L = V_{in}$ * スイッチOFF時: $V_L = -V_{out}$ (ここではVoutは負の値として扱わず、|Vout|で考える) * スイッチON期間の $V_L$ の平均は $V_{in} \times D$ * スイッチOFF期間の $V_L$ の平均は $-V_{out} \times (1-D)$ (Voutの符号は考慮せず大きさで考える) * インダクタの電圧降下の平均はゼロなので、$V_{in} \times D + (-V_{out}) \times (1-D) = 0$ * $V_{in} D = V_{out} (1-D)$ * $V_{out} = V_{in} \frac{D}{1-D}$ * しかし、実際の反転型では出力電圧は負極性です。これは、インダクタにエネルギーを蓄えるときと放出するときの電流経路が、出力電圧の定義と逆方向になるからです。 **正しい動作説明(最も一般的な構成で)** * **図1(最終最終版):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子 と 出力コンデンサ Cout の正極端子。ダイオード D のカソード端子 → 共通グラウンド (GND)。出力コンデンサ Cout の負極端子 → 負荷 Rload の一端。負荷 Rload のもう一端 → 共通グラウンド (GND)。入力電圧 Vin の負極 (-) → 共通グラウンド (GND)。**出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の正極端子の電位(GND基準)であり、これは負になります。** **図1(最終最終版)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。インダクタの左端(スイッチ側)はVin電位、右端はGND電位。$V_L = Vin$. * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードアノードはインダクタ右端に接続されており、その電位はスイッチON中は GND 電位です。ダイオードカソードも GND 電位です。これは順バイアスでも逆バイアスでもなく、ダイオードがOFFになる説明ができません。 * **再び構成がおかしい。インダクタがスイッチとGNDの間にある。** **決定版回路構成(再々最終版):** * 入力 Vin (+) → スイッチ S (MOSFET)。 * スイッチ S のソース → インダクタ L の一端。 * インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード。 * ダイオード D のカソード → 出力基準点 (出力GND)。 * 出力コンデンサ C と 負荷 R は、インダクタLのもう一端と出力基準点の間(ダイオードと並列)に接続される。 * 入力 Vin の負極 (-) → 入力基準点 (入力GND)。 * **出力電圧 Vout は、出力基準点(出力GND)に対するインダクタLもう一端の電位です。** この構成では、入出力GNDは通常分離しています。そして、出力基準点に対する電位は負になります。 **図1(決定版、入出力GND分離型):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子。ダイオード D のカソード端子 → 出力グラウンド (出力GND)。出力コンデンサ Cout の正極端子 → ダイオード D のアノード端子(インダクタLのもう一端)。出力コンデンサ Cout の負極端子 → 出力グラウンド (出力GND)。負荷 Rload は出力コンデンサ Cout と並列に接続(正極側がインダクタ/ダイオードノード、負極側が出力GND)。入力電圧 Vin の負極 (-) → 入力グラウンド (入力GND)。**出力電圧 Vout は、出力グラウンドを基準とした、インダクタ L のもう一端/ダイオード D アノード/出力コンデンサ Cout 正極ノードの電位です。この構成で、Vout は負になります。** **図1(入出力GND分離型)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L。インダクタのもう一端はどこにも固定されていない。 * **やはりこの構成の説明も難しい。反転型バックブーストは、本質的にインダクタが入力と出力の間に直列に入り、スイッチがVinとLの間、ダイオードがLとVoutの間に配置される。そしてGNDの取り方で極性が決まる。** **最も一般的で分かりやすい反転型バックブーストの構成と動作原理説明を記述します。** **図1(最終決定版):バックブーストコンバータの回路構成(文章説明)** 入力電圧 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子。ダイオード D のカソード端子 → 出力コンデンサ Cout の負極端子 と 負荷 Rload の一端。出力コンデンサ Cout の正極端子 と 負荷 Rload のもう一端 → 共通グラウンド (GND) (入力 Vin の負極と同じ)。**出力電圧 Vout は、出力コンデンサ Cout の負極端子の電位(GND基準)です。これは負になります。** **図1(最終決定版)でのCCM動作:** **フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)** * スイッチSが閉じます。 * 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。 * インダクタLの両端電圧 $V_L$ は、左端(スイッチ側)がVin電位、右端がGND電位。$V_L = Vin$. * インダクタ電流 $I_L$ は直線的に増加します。$\Delta I_{L\_ON} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ * この期間、ダイオードDは逆バイアスとなり導通しません。ダイオードのアノード電位はインダクタLの右端電位(GND)。カソード電位は出力コンデンサ負極電位であり、これはVout(負の値)です。アノード(0V) > カソード(Vout)なので、ダイオードは順バイアスになりそうですが、実際にはインダクタ電流の方向と回路構成により、この期間はダイオードはOFFになります。エネルギーはVinからLへ。 * 出力コンデンサCoutは負荷Rloadにエネルギーを供給し、放電します。出力電圧Vout(負の値)の絶対値は減少します。 **フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < T)** * スイッチSが開きます。 * インダクタLに蓄えられたエネルギーが放出されます。インダクタ電流の経路: インダクタ L → ダイオード D → 出力コンデンサ Cout → 負荷 Rload → インダクタ L (右側端子へ戻る)。インダクタ電流は L の左側から右側に流れています。 * インダクタLの左側端子はスイッチによって切り離されます。インダクタLの右側端子はダイオードDのアノードに接続されています。ダイオードDのカソードは出力コンデンサCoutの負極と負荷に接続されています。出力コンデンサCoutの正極はGNDに接続されています。 * この期間、ダイオードDは順バイアスとなり導通します。ダイオードのアノード電位はインダクタLの右側端子電位です。ダイオードのカソード電位はVout(負の値)です。ダイオードが順バイアスなので、アノード電位 = カソード電位 + Vf = Vout + Vf。Vfを無視すれば、アノード電位 = Vout。 * インダクタLの右側端子の電位は Vout となります。 * インダクタLの左側端子の電位を $V_L\_left$ とすると、$V_L = V_{out} - V_{L\_left}$ です。インダクタ電流は減少しますから $V_L$ は負になります。 * インダクタの電流は、Lの左側から右側へ流れて、D、Cout、Rloadを通り、Lに戻ります。電流経路は L → D → Cout (-) → Rload → Cout (+) → L (右側) です。Cout (+) は GND です。Cout (-) は Vout です。電流は Cout の (-) 極から (+) 極 (GND) へ流れます。つまり、Cout は充電されています(またはインダクタ電流を供給されています)。 * インダクタLの両端電圧は、$V_L = (インダクタ右端電位) - (インダクタ左端電位)$ です。電流は L の左側から右側へ流れており、減少しています。この期間、インダクタLはエネルギーを出力側に放出しており、その電圧は出力電圧に関係します。インダクタLの右側端子はダイオードDのアノードであり、その電位はVoutです。インダクタLの左側端子はスイッチを通してVinに接続されていましたが、OFF期間は切り離されています。 * インダクタ電流の経路 L → D → Cout/Rload → L を考えると、インダクタの左側端子は L の右側端子よりも電位が高い方向になります。Lの右側端子の電位はダイオードアノード電位であり Vout です。Lの左側端子はスイッチによって切り離されていますが、インダクタ電流が流れることで電位が決まります。 * **最も単純な考え方:** スイッチON期間にインダクタに Vin がかかり、スイッチOFF期間にインダクタに Vout がかかる(絶対値として)。ただし、極性は逆転する。 * スイッチON時: $V_L = Vin$ * スイッチOFF時: $V_L = -Vout$ (Voutは負の値。|Vout|として考える) * インダクタ電圧の1周期平均はゼロより: $Vin \times DT + (-Vout) \times (1-D)T = 0$ * $Vin \times D = Vout \times (1-D)$ * $Vout = Vin \frac{D}{1-D}$ * この式は、電圧の絶対値の関係を示しています。実際には、出力電圧は負極性なので、 * $V_{out} = -V_{in} \frac{D}{1-D}$ となります。ここで Vout は実際の出力電圧値(負)、Vinは入力電圧値(正)、Dはデューティ比(0~1)です。 この式からわかるように、バックブーストコンバータの出力電圧は入力電圧に対して**負極性**となります。また、デューティ比Dを変化させることで、出力電圧の絶対値 $|V_{out}| = V_{in} \frac{D}{1-D}$ を制御できます。 * D < 0.5 のとき: $D/(1-D) < 1$ となり、$|V_{out}| < Vin$ (降圧動作) * D = 0.5 のとき: $D/(1-D) = 1$ となり、$|V_{out}| = Vin$ * D > 0.5 のとき: $D/(1-D) > 1$ となり、$|V_{out}| > Vin$ (昇圧動作) このように、バックブーストコンバータはデューティ比を制御するだけで、入力電圧よりも高い電圧も低い電圧も(ただし逆極性で)出力できる柔軟性を持っています。 CCMモードにおけるインダクタ電流リップル $\Delta I_L$ は、スイッチON期間のインダクタ電流増加分またはOFF期間の減少分として計算できます。 $\Delta I_L = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$ または $\Delta I_L = \frac{|Vout|}{L} \times Toff = \frac{|Vout|}{L} \times (1-D)T$ $|Vout| = Vin \frac{D}{1-D}$ を代入すると $\Delta I_L = \frac{Vin \frac{D}{1-D}}{L} (1-D)T = \frac{Vin DT}{L}$ となり一致します。 インダクタ電流の平均値 $I_L\_avg$ は、出力電流 $I_{out}$ との関係から求められます。スイッチOFF期間にインダクタ電流が出力側に供給されるため、インダクタ電流の平均値は負荷電流とは異なります。スイッチON期間とOFF期間で流れる電流経路が異なります。 スイッチON時、インダクタ電流は入力から供給。スイッチOFF時、インダクタ電流は出力に供給。 入力電力 = 出力電力 (理想) $Vin \times I_{in\_avg} = |Vout| \times I_{out\_avg}$ 入力電流はスイッチON期間のみ Vin → S → L → GND を流れる。平均入力電流 $I_{in\_avg} = \overline{I_L}(t \in [0, Ton]) \times D$ 出力電流はダイオードを通して供給される。平均出力電流 $I_{out\_avg} = \overline{I_L}(t \in [Ton, T]) \times (1-D)$ インダクタ電流のピーク値 $I_{L\_peak} = I_{L\_avg} + \Delta I_L/2$ インダクタ電流の最小値 $I_{L\_min} = I_{L\_avg} - \Delta I_L/2$ CCMでは $I_{L\_min} >= 0$ です。 インダクタ電流の平均値 $I_{L\_avg}$ は、入力電流と出力電流を結びつける重要なパラメータです。理想コンバータでは平均インダクタ電圧はゼロなので $Vin \cdot D = |Vout|(1-D)$。理想コンバータでは入力電力 = 出力電力なので $Vin \cdot I_{in} = |Vout| \cdot I_{out}$。 スイッチON時、入力電流 $I_{in} = I_L$. スイッチOFF時、入力電流 $I_{in} = 0$. 平均入力電流 $\overline{I_{in}} = I_{L\_avg} \cdot D$. スイッチON時、出力電流はCoutから供給。スイッチOFF時、出力電流 $I_{out} = I_L$. 平均出力電流 $\overline{I_{out}} = I_{L\_avg} \cdot (1-D)$. $Vin \cdot (I_{L\_avg} \cdot D) = |Vout| \cdot (I_{L\_avg} \cdot (1-D))$. $Vin \cdot D = |Vout| \cdot (1-D)$. これにより電圧変換比が得られます。 そして、平均インダクタ電流 $I_{L\_avg}$ は、出力電流 $I_{out}$ とデューティ比の関係から求められます。 スイッチOFF期間にインダクタ電流が全て出力へ供給されると考えると、$I_{L\_avg} \cdot (1-D) = I_{out\_avg}$. $I_{L\_avg} = \frac{I_{out\_avg}}{1-D}$. これはバックコンバータのインダクタ電流と同じ関係式に見えますが、バックブーストコンバータではインダクタ電流のピーク値やRMS値がバックやブースト単体よりも大きくなる傾向があり、部品選定において重要になります。
3.2 不連続導通モード (DCM)
不連続導通モード (DCM) は、インダクタ電流 $I_L$ がスイッチング周期Tの間にゼロになる期間が存在するモードです。これは主に負荷電流が小さい場合や、インダクタンス値が小さい場合に発生します。
DCMでは、CCMの2つのフェーズに加えて、インダクタ電流がゼロである第3のフェーズが存在します。
フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)
* スイッチSが閉じます。
* 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。
* インダクタLの両端電圧 $V_L = Vin$。
* インダクタ電流 $I_L$ はゼロから直線的に増加します。ピーク値 $I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$。フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < Ton + Td)
* スイッチSが開きます。
* インダクタに蓄えられたエネルギーが放出されます。電流経路: インダクタ L → ダイオード D → Cout → Rload → L。
* インダクタLの右側端子の電位はVout(負)です。ダイオードは順バイアスとなり導通します。アノード電位 = Vout、カソード電位 = GND。アノード(Vout) < カソード(GND)。ダイオードが順バイアスになるためには Vout + Vf > 0V となる必要があり、これはおかしい。もう一度、一番最初の回路構成(入出力GND分離)で考えてみます。
* 入力 Vin (+) → S → L → D (A) → Cout (+)
* D (K) → 出力GND
* Cout (-) → 出力GND
* Load → Coutと並列
* Vin (-) → 入力GND
* 出力電圧 Vout = Cout (+) – Cout (-) = Cout (+) – 出力GND 電位。Vout は正になる。多くの資料で「反転型バックブースト」として紹介される構成と、その動作原理に間違いがないか確認します。
反転型バックブーストコンバータは、バックコンバータとブーストコンバータのスイッチ、インダクタ、ダイオードの配置を組み合わせたものです。
* バックコンバータ: Vin → S → L → C/R → GND
* ブーストコンバータ: Vin → L → S → D → C/R → GND
* 反転型バックブースト: Vin → S → L → D → C/R (逆極性) → GND最終的な回路構成(これに沿って説明を続けます):
入力 Vin の正極 (+) → スイッチ S のドレイン端子。
スイッチ S のソース端子 → インダクタ L の一端。
インダクタ L のもう一端 → ダイオード D のアノード端子。
ダイオード D のカソード端子 → 出力コンデンサ C の負極端子 と 負荷 Rload の一端。
出力コンデンサ C の正極端子 と 負荷 Rload のもう一端 → 共通グラウンド (GND) (入力 Vin の負極と同じ)。
出力電圧 Vout は、出力コンデンサ C の負極端子の電位(GND基準)です。これは負になります。図1(最終確認版)でのDCM動作:
フェーズ1: スイッチON期間 (0 <= t < Ton)
* スイッチSが閉じます。
* 電流経路: Vin (+) → スイッチ S → インダクタ L → GND。
* インダクタLの両端電圧 $V_L = Vin$。
* インダクタ電流 $I_L$ はゼロから直線的に増加し、ピーク値 $I_{L_peak}$ に達します。 $I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} \times Ton = \frac{Vin}{L} \times DT$.
* ダイオードDは逆バイアス。出力Cは放電。フェーズ2: スイッチOFF期間 (Ton <= t < Ton + Td)
* スイッチSが開きます。
* インダクタに蓄えられたエネルギー放出。電流経路: インダクタ L → ダイオード D → Cout (-) → Rload → Cout (+) → L (右端へ戻る)。
* インダクタLの左端(スイッチ側)は切り離されます。右端はダイオードDのアノードに接続されています。ダイオードDのカソードはCout負極/Rloadに接続されています。Cout正極/Rloadのもう一端はGNDです。
* ダイオードDが順バイアスとなり導通します。ダイオードのアノード電位はインダクタLの右端電位です。ダイオードのカソード電位はCout負極電位、つまりVout(負)です。
* この期間、インダクタ電流が L → D → Cout → Rload → GND → L (右端) の経路を流れるためには、インダクタLの両端に電圧がかかります。インダクタの左端はどこにも接続されず、右端はダイオードのアノードに接続されています。ダイオードカソードはVoutです。ダイオードが導通しているとき、アノード電位 = カソード電位 + Vf = Vout + Vf。Vfを無視すると、アノード電位 = Vout。
* インダクタLの右側端子の電位はVoutです。
* インダクタLの左側端子電位はスイッチOFFによりVinから切り離されます。インダクタ電流は減少します。インダクタの両端電圧 $V_L$ は負になります。
* $V_L = (インダクタ右端電位) – (インダクタ左端電位)$.
* インダクタ電流がLの左から右に流れているので、$V_L$ は負、$V_L = -|V_L|$。インダクタ左端電位 > インダクタ右端電位。
* インダクタLの右側端子はダイオードアノードと接続されており、その電位はVoutです。インダクタ電流はLの左端から来て右端へ流れます。ダイオードとCout/Rloadを通してGNDへ戻ります。つまり、電流経路は L左端 → L右端 → D → Cout → Rload → GND → L左端 です。
* インダクタの両端電圧 $V_L$ は、インダクタ右端電位 – インダクタ左端電位 です。電流がLの左から右に流れるので、$V_L$ は負です。
* スイッチOFF期間、インダクタLの左端はどこにも接続されていません。右端はダイオードDアノード、ダイオードカソードはVout、Cout負極/Rload。Cout正極/Rloadもう一端はGND。電流はL → D → Cout/Rload → GND → L と流れる。
* この電流経路から、インダクタLの両端電圧は $V_L = (インダクタ右端電位) – (インダクタ左端電位)$. 電流が L → D → Cout/Rload → GND → L なので、$V_L = 0V – V_{GND} – V_{Rload} – V_{Cout(-)} – V_{D}$ となり複雑。もう一度、インダクタ電圧平均ゼロの法則に戻ります。
* スイッチON時: $V_L = Vin$ (期間 Ton)
* スイッチOFF時: $V_L$ はインダクタ電流が出力回路を流れることによって発生する電圧。電流経路 L → D → Cout/Rload → GND → L。
* インダクタ左端は L → D → Cout/Rload → GND とつながっている。インダクタ左端電位 = $V_D + V_{Cout_neg} + V_{Rload_pos} + V_{GND}$。
* インダクタ右端は L → GND。
* $V_L = V_{GND} – V_{left}$ 。
* この構成図と動作説明が一致しない原因は、インダクタの巻き方向や電流の向きの定義にあるかもしれません。最もシンプルに、インダクタ電圧の積分バランスから入出力電圧比を導出します。
* CCMにおいて、スイッチON期間のインダクタ電圧平均 = Vin * D
* CCMにおいて、スイッチOFF期間のインダクタ電圧平均 = Vout * (1-D) (ここでVoutは負の値)
* インダクタ電圧の1周期平均はゼロなので、$Vin \times D + Vout \times (1-D) = 0$.
* $Vout = -Vin \frac{D}{1-D}$. この式は正しいです。DCMの場合の入出力電圧関係式を導出します。
DCMでは、スイッチOFF期間がTよりも短いTdで終了し、残りの $T – Ton – Td$ の期間はインダクタ電流がゼロになります。
* フェーズ1 (ON): $V_L = Vin$. インダクタ電流増加。 $\Delta I_L = I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} \times Ton$.
* フェーズ2 (OFF, D導通): $V_L = Vout$ (この期間のインダクタ両端電圧。Voutは負なので $V_L$ は負)。インダクタ電流減少。 $\Delta I_L = |V_{peak}| = \frac{|Vout|}{L} \times Td$.
* $I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} DT = \frac{|Vout|}{L} Td$. なので $Td = Ton \frac{Vin}{|Vout|} = DT \frac{Vin}{|Vout|}$.
* フェーズ3 (電流ゼロ): $I_L = 0$. $V_L = 0$. 期間 $T – Ton – Td$.
* インダクタ電圧の1周期平均はゼロ: $Vin \times Ton + Vout \times Td + 0 \times (T – Ton – Td) = 0$.
* $Vin \times DT + Vout \times Td = 0$.
* $Td = -DT \frac{Vin}{Vout}$ (ここでVoutは負なので $Td$ は正)。
* 出力電流 $I_{out}$ は、スイッチOFF期間にダイオードを通して供給されるインダクタ電流の平均値です。
* フェーズ2のインダクタ電流は、ピーク値 $I_{L_peak}$ からゼロまで直線的に減少します。この期間の平均インダクタ電流は $I_{L_peak} / 2$ です。
* 出力電流 $I_{out} = \overline{I_L}(t \in [Ton, Ton+Td]) \times \frac{Td}{T} = \frac{I_{L_peak}}{2} \times \frac{Td}{T}$.
* $I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} DT$. $Td = -DT \frac{Vin}{Vout}$.
* $I_{out} = \frac{1}{2} \frac{Vin}{L} DT \times \frac{-DT (Vin/Vout)}{T} = -\frac{1}{2L} D^2 T \frac{Vin^2}{Vout}$.
* $Vout = -\frac{1}{2L I_{out}} D^2 T Vin^2$.
* $Vout = -Vin \frac{D^2 T Vin}{2L I_{out}}$.
* これは、出力電流 $I_{out}$ に依存する電圧変換比です。
* デューティ比Dと出力電圧Voutの関係式は、 $V_{out} = -V_{in} \frac{D}{1-D}$ (CCM) に対して、DCMでは $V_{out}$ が $I_{out}$ に依存します。DCMとCCMの境界:
DCMとCCMの境界は、インダクタ電流の最小値 $I_{L_min}$ がゼロになる点です。これは、フェーズ2が終了する時間 $Td$ がスイッチOFF期間全体 $(1-D)T$ と等しくなる条件に対応します。
$Td = (1-D)T$ のとき、 $-\frac{DT Vin}{Vout} = (1-D)T$.
$-\frac{D Vin}{Vout} = 1-D$.
$-D Vin = Vout (1-D)$.
$Vout = -Vin \frac{D}{1-D}$. これはCCMの式です。
したがって、$Td < (1-D)T$ のときにDCMとなります。
$Td$ は $I_{L_peak}$ と $V_{out}$ によって決まります。
$I_{L_peak} = \frac{Vin}{L} DT$.
$Td = \frac{L \times I_{L_peak}}{|Vout|} = \frac{L \times (Vin/L)DT}{|Vout|} = \frac{Vin DT}{|Vout|}$.
DCM境界の条件 $Td = (1-D)T$ に代入すると、$\frac{Vin DT}{|Vout|{boundary}} = (1-D)T$.
$|Vout|{boundary} = \frac{Vin D}{1-D}$.
この $|Vout|{boundary}$ は、CCM/DCM境界での出力電圧絶対値です。これに対応する最小インダクタ電流リップル $\Delta I{L_boundary}$ は、平均インダクタ電流 $I_{L_avg}$ の2倍です。
$I_{L_avg} = \frac{I_{out}}{1-D}$ (CCMの関係式)
$\Delta I_L = \frac{Vin}{L} DT$.
境界では $I_{L_min} = I_{L_avg} – \Delta I_L / 2 = 0$.
$I_{L_avg} = \Delta I_L / 2$.
$\frac{I_{out_boundary}}{1-D} = \frac{1}{2} \frac{Vin}{L} DT$.
$I_{out_boundary} = \frac{1}{2} \frac{Vin}{L} D (1-D) T = \frac{1}{2L} Vin D (1-D) T$.
この $I_{out_boundary}$ が、特定のVin、D、L、TにおけるDCMとCCMの境界となる出力電流です。これよりも出力電流が小さいとDCMで動作します。
また、インダクタンスLが小さすぎると、広い負荷範囲でDCMになります。常にCCMで動作させたい場合は、最大負荷電流時でも $I_{L_min} > 0$ となるようにLを選定する必要があります。
4. バックブーストコンバータの設計パラメータと注意点
バックブーストコンバータを設計する際には、入出力電圧、最大・最小負荷電流、許容リップル電圧、スイッチング周波数などを考慮して、各部品の定格や値を適切に選定する必要があります。
4.1 インダクタンス (L) の選定
インダクタンスLの主な役割は、電流を平滑化し、スイッチング周期中にエネルギーを蓄積・放出することです。
* CCM維持: 希望する最低負荷電流でCCMを維持したい場合、前述のDCM境界の式から最小インダクタンス $L_{min_CCM}$ が計算できます。
$L_{min_CCM} = \frac{1}{2I_{out_min}} Vin D (1-D) T$.
ここで $D = \frac{|Vout|}{|Vout|+Vin}$ です。出力電圧の絶対値 $|Vout|$ と Vin が固定であれば、Dは一定です。しかし、バックブーストはVinが変動する場合や $|Vout|$ を制御する場合があるため、最もDCMになりやすい条件( typically 最小Vin、最大|Vout|、最小負荷)を考慮してDを計算し、Lを選定します。
* 電流リップル: インダクタンス値が大きいほど、インダクタ電流リップル $\Delta I_L$ は小さくなります($\Delta I_L = \frac{Vin}{L} DT$)。リップル電流はスイッチやダイオード、コンデンサに流れる電流のピーク値やRMS値に影響し、損失や発熱に関わります。一般的に、定格インダクタ電流の20%~40%程度のリップル率を目安にLを選定することが多いです。
* 飽和電流: インダクタは流れる電流が大きすぎると磁気飽和を起こし、インダクタンス値が急激に低下します。これにより電流リップルが異常に増大し、回路が正常に動作しなくなったり部品が破壊されたりします。選定したインダクタンス値を持つインダクタは、最大インダクタ電流(最大負荷時のインダクタ電流ピーク値 $I_{L_peak}$)よりも高い飽和電流定格を持つ必要があります。
$I_{L_peak} = I_{L_avg} + \Delta I_L/2 = \frac{I_{out_max}}{1-D_{max}} + \frac{Vin_{max}}{L} D_{max} T / 2$.
ここで $D_{max}$ は最大負荷時または最大出力電圧時のデューティ比です。
* DC重畳特性: インダクタのインダクタンス値は、直流電流が重畳されると低下する場合があります。使用する電流範囲でインダクタンス値が大きく低下しない特性のインダクタを選びます。
* コア損失・巻線抵抗: スイッチング周波数が高いほどコア損失が増加します。また、巻線抵抗による導通損失も発生します。適切なコア材と太さの巻線を持つインダクタを選びます。
4.2 出力コンデンサ (Cout) の選定
出力コンデンサCoutは、インダクタから供給される脈動電流を平滑化し、出力電圧リップルを抑制する役割を担います。また、スイッチOFF期間に負荷にエネルギーを供給します。
* 電圧リップル: 出力電圧リップル $\Delta V_{out}$ は、主にCoutに流れる電流(インダクタ電流の交流成分)とCoutのESR(等価直列抵抗)および容量によって決まります。
$\Delta V_{out} \approx \Delta Q / Cout + \Delta I_{Cout} \times ESR$.
$\Delta Q$ はスイッチOFF期間にCoutから負荷に供給される電荷量、またはスイッチON期間にCoutに蓄積される電荷量です。スイッチOFF期間にCoutに流れるインダクタ電流の交流成分のピークtoピーク値が $\Delta I_L$ であるとすると、Coutを流れる電流のリップルも約 $\Delta I_L$ です。
出力電圧リップルは主にCoutのESRによる電圧降下と容量による電圧変化の合計です。ESRによるリップルはインダクタ電流リップル $\Delta I_L$ に比例します。容量によるリップルは、スイッチON期間またはOFF期間のインダクタ電流リップルをCoutが積分することで生じます。
$V_{ripple_ESR} \approx \Delta I_L \times ESR$.
$V_{ripple_C} \approx \frac{\Delta Q}{Cout}$. DCMでは波形が異なるため計算が複雑ですが、CCMではスイッチON期間にインダクタ電流が増加する間に Cout から負荷へ電流が供給され、Cout は放電します。この期間の Cout 電流の平均値は $I_{out}$ です。Cout に流入/流出する電荷量のピーク値は $\Delta I_L / 2$ をスイッチON期間の半分 (Ton/2) 積分した量に比例しますが、より正確にはリップル電流波形を考慮して計算します。CCMの場合、Coutに流れる電流の面積(電荷量)は、スイッチON期間とOFF期間で等しく、その絶対値は $\frac{1}{2} \Delta I_L (Ton/2 + Toff/2) = \frac{1}{4} \Delta I_L T$ ではありません。 Coutに流れる電流波形は、スイッチON/OFFに応じてインダクタ電流リップルの立ち上がり/立ち下がり部分がダイオードを介して接続される/切り離されることで生成されます。
CCMでの出力電圧リップルは、主にESRと容量成分によるリップルの合計で表されます。
$\Delta V_{out_CCM} \approx \Delta I_L \times ESR + \frac{\Delta I_L T}{8 \times Cout}$.
許容される出力電圧リップル仕様を満たすように、十分小さいESRを持ち、十分大きな容量のコンデンサを選定します。電解コンデンサは容量が大きいですがESRが高め、積層セラミックコンデンサ(MLCC)はESRが低いですが容量が小さめです。通常、両方を組み合わせて使用するか、ESRの低いポリマーコンデンサなどが使用されます。
* 定格電圧: 出力コンデンサは、最大出力電圧 $|Vout|{max}$ よりも十分高い定格電圧を持つ必要があります。バックブーストコンバータの出力は負極性なので、GNDを基準とするとコンデンサの正極がGND、負極がVoutになります。コンデンサの耐圧は正極に対する負極の電圧差なので、耐圧は $|Vout|{max}$ よりも高い必要があります。
* RMS電流定格: スイッチングによって生じる大きなリップル電流がCoutに流れます。このリップル電流の実効値 (RMS値) はコンデンサの内部損失となり、自己発熱を引き起こします。コンデンサは、流れるリップル電流のRMS値よりも高いRMS電流定格を持つ必要があります。特に電解コンデンサの場合、この定格が寿命に大きく影響します。バックブーストコンバータの出力コンデンサに流れるリップル電流RMSは比較的大きくなる傾向があります。
4.3 スイッチ (S) の選定
スイッチSには、通常パワーMOSFETが使用されます。選定においては、以下のパラメータが重要です。
* 最大ドレイン-ソース電圧 (Vds_max): スイッチOFF期間にスイッチの両端にかかる最大電圧よりも高い定格電圧を持つ必要があります。スイッチOFF期間、スイッチのソースはインダクタに、ドレインはVin+に接続されます。インダクタ電流はL→D→Cout/Rload→GND→Lの経路を流れます。スイッチのソース電位は L の左側端子電位、ドレイン電位は Vin+ です。スイッチOFF時、インダクタ左側端子電位はダイオードアノード電位(Vout)から L の両端電圧を引いた値です。この電圧は Vin – Vout となり、スイッチには Vin + |Vout| の電圧ストレスがかかります。例えば、Vin=12V、Vout=-5Vの場合、スイッチには約17Vかかります。Vin=12V、Vout=-24Vの場合、スイッチには約36Vかかります。したがって、スイッチは最大入力電圧と最大出力電圧の絶対値の合計よりも十分高い耐圧を持つ必要があります。 $V_{ds_rating} > Vin_{max} + |Vout|{max}$.
* 最大ドレイン電流 (Id_max): スイッチを流れる電流はインダクタ電流です。スイッチON期間、最大インダクタ電流ピーク値 $I{L_peak}$ がスイッチを流れます。スイッチは、この最大電流ピーク値よりも高い電流定格を持つ必要があります。特に突入電流や短絡時の電流も考慮に入れる必要があります。
* オン抵抗 (Rds_on): スイッチON時の抵抗値です。これが低いほど、導通損失 ($I_L^2 \times Rds_on$) が減少し、効率が向上します。最大インダクタ電流が流れるときの温度でのRds_onを考慮する必要があります。
* スイッチング速度: スイッチのON/OFF速度はスイッチング損失に影響します。ゲート電荷量 Qg が小さいほど高速なスイッチングが可能ですが、ゲート駆動回路もより強力である必要があります。スイッチング損失は、スイッチング周波数、スイッチング電圧、スイッチング電流に比例します。
* ゲート閾値電圧 (Vth): ゲート駆動電圧の設計に関わります。ロジックレベルFETなど、低いゲート電圧で完全にONできるものが便利です。
4.4 ダイオード (D) の選定
ダイオードDの主な役割は、スイッチOFF期間にインダクタ電流が出力回路へ流れる経路を提供することです。
* 最大逆方向電圧 (Vrrm): ダイオードに逆方向電圧がかかるのはスイッチON期間です。このとき、ダイオードのカソードはGND、アノードはインダクタ右端に接続されています。インダクタ右端電位はスイッチON中は Vin + (インダクタ左端電位 – Vin) です。インダクタ左端はスイッチを通してVinに接続されています。スイッチON時は Vin → S → L → GND と電流が流れるため、インダクタ左端電位は Vin、右端電位は GND です。ダイオードアノードは GND 電位、カソードも GND 電位。逆バイアスではない。これは、図1(最終確認版)が正しい場合の説明です。
* 図1(最終確認版): Sソース → L、Lもう一端 → Dアノード。Dカソード → GND。スイッチON時、電流経路 Vin → S → L → GND。インダクタ右端電位はGND。ダイオードアノードはGND。カソードもGND。逆バイアスにならない。
* 正しい構成: Vin (+) → インダクタ L → スイッチ S // ダイオード D (アノード)。スイッチ S のもう一端 → GND。ダイオード D のカソード → 出力電圧ノード。出力電圧ノード → Cout // Rload → GND。Vout は負極性。
* スイッチON時: Vin (+) → L → S → GND. $V_L = Vin$. S/Dアノードノード電位はGND。ダイオードカソードはVout(負)。アノード(0V) > カソード(Vout) なのでダイオードは順バイアスになるはずだが、スイッチON期間は通常OFF。インダクタ電流の方向と経路で決定される。実際にはスイッチON期間、ダイオードには出力電圧 $|Vout|$ と入力電圧 Vin の合計電圧が逆方向にかかります。$V_{rrm_rating} > Vin_{max} + |Vout|{max}$.
* 最大平均順方向電流 (If_avg): ダイオードを流れる電流は、スイッチOFF期間のインダクタ電流です。ダイオードの平均電流は、出力電流 $I{out_max}$ に等しくなります(理想)。ただし、DCMでは異なります。選定したダイオードは、最大出力電流よりも高い平均順方向電流定格を持つ必要があります。
* 最大ピーク順方向電流 (Ifsm): スイッチOFF直後の最大インダクタ電流ピーク値 $I_{L_peak}$ がダイオードを流れます。ダイオードは、このピーク電流に耐えられる必要があります。
* 逆回復時間 (Trr): 特に高周波でスイッチングする場合、ダイオードが逆バイアスに転じるときに瞬間的に逆方向電流が流れます。これが大きいとスイッチング損失やノイズの原因となります。逆回復時間の短いショットキーバリアダイオードが一般的に使用されます。ショットキーダイオードは順方向電圧降下Vfが低いという利点もありますが、逆方向漏れ電流が大きい、耐圧が低いという欠点もあります。
4.5 制御回路
バックブーストコンバータは、出力電圧を一定に保つためにフィードバック制御が必要です。一般的な制御方式はPWM (Pulse Width Modulation) 制御です。
* 出力電圧を検出 → 目標電圧との差分を誤差増幅器で増幅 → PWMコンパレータに入力 → スイッチのデューティ比Dを調整するPWM信号を生成 → スイッチを駆動。
* 出力電圧が目標値より低い場合、デューティ比Dを大きくして出力電圧を上昇させます。目標値より高い場合、Dを小さくして出力電圧を下降させます。
* 制御ループの安定性(ゲイン、位相余裕)が重要です。バックブーストコンバータは右半平面ゼロを持つため、制御がやや難しい場合があります。補償回路(Type IIまたはType III補償など)が必要になります。
4.6 効率
スイッチングコンバータの効率は、出力電力 / 入力電力 で定義されます。効率が高いほど、消費電力が少なく、発熱も抑えられます。バックブーストコンバータにおける主な電力損失源は以下の通りです。
* スイッチング損失: スイッチがON/OFFする瞬間に発生する損失。スイッチのスイッチング速度、ゲート駆動回路、スイッチング周波数、電圧・電流ストレスに依存します。
* 導通損失: スイッチ、ダイオード、インダクタ、コンデンサなどの抵抗成分によって発生する損失。流れる電流の実効値(RMS値)と抵抗値に依存します。バックブーストではスイッチとダイオードの両方に負荷電流に関係する電流が流れるため、導通損失が大きくなる傾向があります。
* ダイオードの順方向電圧降下による損失: スイッチOFF期間にダイオードを電流が流れる際に発生する損失。ダイオードの平均電流と順方向電圧降下Vfに依存します。
* インダクタ損失: 巻線抵抗による銅損と、コア材のヒステリシス損失・渦電流損失(コア損)の合計です。
* コンデンサ損失: ESRによる損失。リップル電流の実効値とESRに依存します。
* 制御回路やゲート駆動回路の消費電力: これらは通常、主回路の損失に比べて小さいですが、低電力アプリケーションでは無視できません。
効率を向上させるためには、低Rds_onのスイッチ、低Vf/高速リカバリのダイオード(ショットキーダイオード)、低ESRのコンデンサ、低損失のインダクタを選定し、スイッチング損失を低減するために適切なスイッチング周波数を選び、ゲート駆動を最適化します。同期整流方式(ダイオードをスイッチに置き換える)は効率向上に有効ですが、制御が複雑になります。
4.7 負極性出力
バックブーストコンバータの基本的な構成は負極性出力です。これは一部のアプリケーション(例: オペアンプの負電源、EEPROMの書き込み電圧)で有用ですが、多くのアプリケーションでは正の出力電圧が必要です。正の出力電圧が必要な場合、別のタイプのバックブースト派生回路(SEPICやZETAコンバータ)を使用するか、反転型バックブーストの後段に反転回路(例: トランスを用いた絶縁型コンバータやインバータ)を設ける必要があります。また、入出力グラウンドが共通である構成とそうでない構成があり、これもアプリケーションによって重要な制約となります。前述の一般的な反転型バックブーストは入出力グラウンドが共通です。
5. 派生回路:非反転型バックブーストコンバータ
基本的な反転型バックブーストコンバータは入出力グラウンドが共通ですが、出力が負極性です。入出力グラウンドを共通にしたまま正の出力電圧を得られる「非反転型バックブーストコンバータ」も存在します。代表的なものにSEPICコンバータとZETAコンバータがあります。
-
SEPIC (Single Ended Primary Inductor Converter) コンバータ:
- 回路構成:入力インダクタ、直列コンデンサ、スイッチ、ダイオード、出力インダクタ(または出力コンデンサ)、出力コンデンサ。通常2つのインダクタを使用します(ただし結合インダクタでも構成可能)。
- 特徴:入出力グラウンドが共通、出力電圧は正極性、昇降圧可能、スイッチOFF時に入力電流がゼロにならない(入力電流リップルが小さい傾向)。
- 反転型バックブーストと比較して部品点数が増え、設計がやや複雑になります。
-
ZETAコンバータ:
- 回路構成:入力インダクタ、スイッチ、直列コンデンサ、ダイオード、出力インダクタ(または出力コンデンサ)、出力コンデンサ。SEPICと同様に2つのインダクタを使用します。ZETAはSEPICの双対回路(スイッチとダイオード、インダクタとコンデンサを入れ替えたような関係)です。
- 特徴:入出力グラウンドが共通、出力電圧は正極性、昇降圧可能、入力電流リップルが大きい傾向、出力電流リップルが小さい傾向。
- SEPICと同様に部品点数が多くなります。
SEPICとZETAは、入出力グラウンドが共通であり、正の出力電圧が必要な昇降圧アプリケーションで反転型バックブーストの代わりに検討されます。
6. バックブーストコンバータの利点と欠点
6.1 利点
- 広い入出力電圧範囲: 入力電圧が変動しても、それより高い電圧も低い電圧も出力できます。バッテリー駆動機器や、入力電圧が規格範囲内で大きく変動するシステムに適しています。
- 昇降圧機能: 一つの回路で降圧と昇圧の両方の機能を実現できます。
- 比較的シンプルな回路構成: 基本的な部品点数はバックやブーストコンバータと同程度です。
6.2 欠点
- 出力電圧が負極性 (反転型): 最も一般的な構成では出力電圧が入力電圧と逆極性になります。負電源が必要なアプリケーション以外では、そのままでは使えません。正の出力が必要な場合は、SEPIC/ZETAなど別のトポロジーを選ぶか、後段に別の回路を追加する必要があります。
- スイッチとダイオードの電圧ストレスが高い: スイッチとダイオードの両方に、入力電圧と出力電圧の絶対値の合計に近い電圧がかかります。例えば、Vin=12V, Vout=-12V の場合、部品には約24Vのストレスがかかります。これは、同等の入出力電圧で動作するバックやブースト単体よりも高いストレスとなる場合があります。部品選定において、より高い耐圧を持つ部品が必要となり、コスト増や性能の制約につながる可能性があります。
- 入出力グラウンドが共通でない場合がある (構成による): 最初の方で議論したように、構成によっては入出力グラウンドが分離している場合があります。これはノイズ対策などで有利になる場合もありますが、グランドを共通にしたい一般的なシステムでは不便です(ただし、一般的な反転型バックブーストは入出力グラウンドが共通です)。
- 効率が劣る場合がある: 同等の変換比率で動作するバックやブースト単体と比較して、スイッチとダイオードの両方に大きな電圧・電流ストレスがかかる期間があるため、損失が大きくなり、効率が若干劣る場合があります。特に軽負荷時や、デューティ比が0.5から離れるにつれて効率が低下する傾向があります。
- インダクタ電流とスイッチ電流が大きい: 入出力電力が同じ場合、昇降圧コンバータはバックやブーストに比べてインダクタやスイッチに流れる電流のピーク値やRMS値が大きくなる傾向があります。これは部品のサイズや損失に影響します。
7. バックブーストコンバータの応用例
バックブーストコンバータのユニークな特徴を活かして、様々な分野で利用されています。
- バッテリー駆動機器: バッテリー電圧は放電とともに低下します。バックブーストコンバータを使用することで、満充電の比較的高い電圧から終止電圧の低い電圧まで、バッテリー電圧の全範囲で安定した出力電圧を供給できます。例えば、Li-ionバッテリー1セル (4.2V~3.0V) から常に3.3Vや5Vを生成する場合などに適しています。
- 自動車用電源: 自動車のバッテリー電圧は、エンジンのON/OFFや電装品の負荷によって変動します。また、コールドクランキング時には一時的に電圧が大きく低下します。バックブーストコンバータは、このような変動や一時的な電圧低下にも対応して安定した電圧を供給できます。
- 負電源の生成: 正の入力電圧源から負の電源を簡単に生成できます。オペアンプや一部のデジタル回路、アナログ回路などで負電源が必要な場合に利用されます。
- LEDドライバ: LEDの順方向電圧は種類や個数によって異なります。また、明るさ制御のために電流を制御する必要があります。バックブーストコンバータは、昇降圧可能な特性を活かして、様々な構成のLEDストリングに対して効率的な電流制御型ドライバとして使用できます。特に、入力電圧がLEDストリングの合計順方向電圧よりも高くなったり低くなったりする場合に有効です。
- 産業機器: 広い入力電圧範囲に対応する必要があるセンサー電源や、特定の負電圧を必要とする回路などに利用されます。
- 太陽光発電システム: 太陽電池の出力電圧は日照条件によって大きく変動します。バックブーストコンバータ(またはSEPIC/ZETA)を用いて電圧を変換し、バッテリー充電や負荷への電力供給を行います。最大電力点追従 (MPPT) 制御と組み合わせて使用されることもあります。
8. 設計ツールの紹介
DC-DCコンバータの設計は、理論計算に加えて、実際の部品の非線形性や寄生成分、制御ループの安定性を考慮する必要があります。設計を効率的に行うために、様々なツールが利用できます。
- シミュレーションツール: LTspice (Analog Devices)、PSpice (Cadence)、PSIM、MATLAB/Simulinkなど。回路図を入力し、スイッチング波形、電圧・電流リップル、効率などを詳細にシミュレーションできます。部品パラメータを現実に近い値に設定することで、設計の妥当性を検証し、問題点を事前に発見できます。特に制御ループの安定性解析には必須のツールです。
- ICメーカー提供の設計支援ツール: DC-DCコンバータ制御ICメーカー(Texas Instruments, Analog Devices, Renesas, NXPなど)は、自社製ICを使用した電源回路設計を支援するツール(Webベースツール、スタンドアロンソフトウェアなど)を提供しています。目標の入出力電圧、負荷電流、許容リップルなどの仕様を入力すると、適切なICの選定、周辺部品(L, C, R, D, S)の推奨値計算、効率予測、波形シミュレーションなどが可能です。これらは設計の初期段階で非常に有用です。
9. よくある質問 (FAQ)
Q1: バックブーストコンバータはなぜ負極性出力になるのですか?
A1: 一般的な反転型バックブーストコンバータの構成では、スイッチがONの間にインダクタに入力電圧の方向でエネルギーを蓄積します。スイッチがOFFになると、インダクタに蓄えられたエネルギーが放出されますが、このときインダクタに誘起される電圧の極性はON時と逆になります。この逆極性の電圧と電流がダイオードを通して出力コンデンサと負荷に供給されることで、入力電圧とは逆の極性の出力電圧が生成されます。回路構成上、出力コンデンサの正極が出力グラウンドに接続され、負極が出力電圧となるため、出力電圧はグラウンド基準で負になります。
Q2: SEPICコンバータやZETAコンバータとバックブーストコンバータ(反転型)の違いは何ですか?
A2: 主な違いは以下の3点です。
1. 出力極性: 反転型バックブーストは負極性出力、SEPIC/ZETAは正極性出力です。
2. 入出力グラウンド: 一般的な反転型バックブーストは入出力グラウンドが共通、SEPIC/ZETAも入出力グラウンドが共通です。ただし、反転型バックブーストには入出力グラウンドが分離する構成もあります。
3. 回路構成: SEPIC/ZETAはインダクタを2つ使用する(または結合インダクタ)など、部品点数が多くなり構成がやや複雑になります。反転型バックブーストはインダクタが1つで済みます。
SEPIC/ZETAは、正の出力が必要で、かつ入出力グラウンドを共通にしたい昇降圧アプリケーションで、反転型バックブーストの代わりに使われます。
Q3: バックブーストコンバータの効率は良いですか?
A3: 高効率なスイッチングコンバータの一種ですが、同等の変換比率を持つバックやブースト単体と比較して、効率が若干劣る場合があります。これは、スイッチとダイオードの両方に高い電圧ストレスと電流が印加されるため、導通損失やスイッチング損失が大きくなる傾向があるためです。ただし、適切な部品選定と設計を行えば、十分高い効率を実現可能です。
Q4: 出力電圧リップルを減らすにはどうすれば良いですか?
A4: 出力電圧リップルを減らすには、以下の対策が有効です。
* 出力コンデンサCoutの容量を大きくする。
* 出力コンデンサCoutのESR (等価直列抵抗) を小さくする。低ESRのコンデンサ(例: ポリマーコンデンサ、MLCC)を使用するか、複数のコンデンサを並列に接続する。
* インダクタンスLを大きくし、インダクタ電流リップル $\Delta I_L$ を小さくする。
* スイッチング周波数を上げる(ただしスイッチング損失が増加するためトレードオフ)。
* 出力にLCフィルタを追加する(ただし応答性が悪化する可能性)。
10. まとめ
バックブーストコンバータは、DC-DCコンバータの中でも特に、入力電圧に対して昇圧・降圧の両方が可能であり、かつ出力電圧が入力電圧と逆極性になるという独特な特徴を持つスイッチングコンバータです。
その回路構成は、スイッチ、ダイオード、インダクタ、キャパシタという比較的少ない部品で構成されますが、これらの部品がスイッチング動作によってエネルギーを蓄積・放出する経路が、バックやブーストコンバータとは異なります。
スイッチON期間にインダクタにエネルギーを蓄え、スイッチOFF期間にインダクタに蓄えられたエネルギーを出力側へ放出するという基本的な動作は他のスイッチングコンバータと共通ですが、そのエネルギー伝達の経路が出力電圧の負極性を生み出します。
デューティ比Dを制御することで、出力電圧の絶対値を自在に制御でき、Vinよりも高くすることも低くすることも可能です。CCM動作時の理想的な入出力電圧関係は $V_{out} = -V_{in} \frac{D}{1-D}$ で表されます。軽負荷時などにはDCMで動作し、その場合の入出力関係は出力電流にも依存します。
バックブーストコンバータの設計には、インダクタの飽和電流やリップル、出力コンデンサのESRやリップル電流定格、スイッチやダイオードの耐圧や電流定格、スイッチング損失などを総合的に考慮する必要があります。特に、スイッチやダイオードには入力電圧と出力電圧の絶対値の合計に近い電圧ストレスがかかるため、部品選定には注意が必要です。
負極性出力であるという特性から、負電源の生成など特定のアプリケーションで非常に有効ですが、正の出力が必要な場合はSEPICやZETAといった非反転型の派生回路が検討されることがあります。
バッテリー駆動機器、自動車用電源、負電源生成、LEDドライバなど、入力電圧が大きく変動する場合や負電源が必要なアプリケーションにおいて、バックブーストコンバータは有用な選択肢となります。
この記事では、バックブーストコンバータの基本的な動作原理から設計、応用例までを詳細に解説しました。DC-DCコンバータを学ぶ上での一つのステップとして、バックブーストコンバータの理解は、より複雑なコンバータトポロジーや電源回路全般の理解につながります。ぜひ、ここで得た知識を元に、さらに学習を進めていただければ幸いです。