Clash Metaとは?旧バージョンとの違いは?

はい、承知いたしました。「Clash Metaとは?旧バージョンとの違いは?」について、約5000語の詳細な記事を作成し、ここに表示します。


Clash Metaとは?旧バージョンとの違いは? – 詳細解説

インターネットの利用において、プロキシツールは様々な目的で利用されています。検閲の回避、プライバシーの保護、セキュリティの向上、地域制限の解除など、その用途は多岐にわたります。数あるプロキシツールの中でも、特に近年、高いカスタマイズ性と柔軟性から注目を集めているのが「Clash」です。そして、そのClashから派生し、さらに進化を遂げたバージョンとして登場したのが「Clash Meta」です。

この記事では、まずClashの基本的な仕組みと旧バージョン(オリジナルClashコア)について解説し、次にClash Metaが何であり、なぜ誕生したのかを説明します。そして、最も重要なポイントとして、Clash Metaが旧バージョンと比較してどのような違いを持ち、どのような新機能や改善が施されているのかを詳細に掘り下げていきます。約5000語というボリュームで、技術的な側面も含め、Clash Metaの全体像を深く理解できるよう解説します。

第1章:Clashとは何か? – プロキシツールの基礎とClashの誕生

1.1 プロキシツールとは

まず、プロキシツールとは何かを簡単に説明します。プロキシ(Proxy)とは「代理」という意味で、インターネット通信において、ユーザーのコンピューター(クライアント)と目的地のサーバーとの間に立つ中継サーバーのことを指します。プロキシツールは、このプロキシサーバーを利用したり、自らプロキシサーバーとして機能したりすることで、様々なネットワーク制御を行います。

プロキシツールの主な役割:
* 検閲の回避: 特定のウェブサイトやサービスがブロックされている地域からアクセスする際に、プロキシサーバーを経由することでブロックを回避できます。
* プライバシーの保護: 直接目的地に接続せず、プロキシサーバーを経由することで、通信元IPアドレスを隠蔽し、匿名性を高めることができます。
* セキュリティの向上: 通信の暗号化やフィルタリングを行うことで、セキュリティリスクを低減します。
* 地域制限の解除: 特定の地域からしか利用できないコンテンツに、その地域のプロキシサーバーを経由してアクセスできるようになります。
* トラフィックの制御: 通信内容のフィルタリング、帯域制限、特定のルールに基づいたルーティングなどを行います。

1.2 Clashの登場と特徴

Clashは、Go言語で書かれたクロスプラットフォーム対応のプロキシツールです。その最大の特徴は、YAML形式の設定ファイルに基づいて、非常に柔軟かつ詳細なルールベースのルーティング制御を行える点にあります。

Clashが人気を博した背景には、以下のような特徴があります。
* ルールベースルーティング: 通信の種類(ドメイン、IPアドレス、通信ポート、プロトコルなど)に基づいて、どのプロキシサーバーを経由するか、あるいは直接接続するかを自動的に切り替えることができます。これにより、例えば特定のウェブサイトへのアクセスはプロキシAを経由し、別のウェブサイトはプロキシBを経由し、国内サイトは直接接続するといった複雑な設定が容易に行えます。
* 多種多様なプロキシプロトコルのサポート: Shadowsocks, VMess, VLESS, Trojanなど、当時主流だった様々なプロキシプロトコルをサポートしていました。これにより、ユーザーは利用可能な様々なタイプのプロキシサーバーをClashで一元管理できます。
* YAMLによる設定: 設定が人間が読解しやすいYAML形式であるため、複雑なルールも構造的に記述できます。
* クロスプラットフォーム: Windows, macOS, Linux, Androidなどの主要なプラットフォームで動作するコアが提供されました。
* GUIクライアントのエコシステム: Clashコア自体はコマンドラインツールですが、多くの開発者がGUIクライアント(Clash for Windows, ClashX, KoolClashなど)を開発し、より直感的な操作を可能にしました。
* TUNモードとFake-IP: システム全体のトラフィックを捕捉し、ルールに基づいて処理するためのTUNモードや、DNSリクエストに対して偽のIPアドレスを返すことで、ドメインベースのルーティングを効率的に行うFake-IP機能などを備えていました。

Clashは、その高度な設定能力と柔軟性から、特にネットワークに関するある程度の知識を持つユーザーや、複雑なルーティング要件を持つユーザーの間で急速に普及しました。

1.3 Clashのアーキテクチャ

Clashは、主に以下の要素で構成されるエコシステムとして理解できます。
* Clash Core: プロキシ機能、ルーティングエンジン、プロトコル処理などを担当する中核部分。Go言語で書かれたコマンドラインプログラムです。
* 設定ファイル: YAML形式で記述され、プロキシサーバー情報、プロキシグループ、ルーティングルール、DNS設定、一般的な動作設定などが含まれます。Clash Coreはこの設定ファイルを読み込んで動作します。
* GUI Client: Clash Coreの起動・停止、設定ファイルの管理・編集、プロキシの切り替え、通信状態の監視などを、グラフィカルなインターフェースから行うためのアプリケーション。Clash CoreとAPIを通じて連携します。Clash for Windows (CFW) が最も有名でした。

この分業体制により、Clash Coreの開発者はプロキシ機能やルーティングロジックに集中でき、GUIクライアント開発者はユーザーインターフェースや使いやすさに注力することができました。

第2章:Clash Metaとは何か? – 誕生の背景と概要

2.1 Clash Metaの定義

Clash Metaは、オリジナルのClashコア(以降、「オリジナルClash」または「旧Clash」と呼びます)から派生したプロジェクトであり、オリジナルの開発が停滞・停止した後に、コミュニティによって開発が進められているフォーク(Fork)または拡張バージョンと位置づけられます。

「Meta」という名称が正式名称に含まれることが一般的ですが、内部的にはclash-premiumclash-enhanced、あるいは単にclashとして配布されている場合もあります。重要なのは、これがオリジナルのClashプロジェクトとは独立して、独自の機能追加や改善が行われているバージョンであるという点です。

2.2 誕生の背景

Clash Metaが誕生した背景には、主に以下の要因があります。
* オリジナルClashコアの開発停滞/停止: オリジナルのClashコアの開発が、様々な理由(開発者のモチベーション低下、政治的な圧力、技術的な課題など)により停滞または事実上停止しました。新しいプロキシプロトコルの登場や、既存プロトコルのアップデート、新たなネットワーク技術への対応が必要となる中で、オリジナルの開発が進まない状況が生まれました。
* 新機能へのニーズ: インターネット検閲技術の進化に対抗するため、より高度な耐検閲性を持つ新しいプロキシプロトコル(例: TUIC, Hysteria, VLESSの新しいTLSフロー)が次々と開発されました。また、より複雑なルーティング要件(例: スクリプトによる動的なルール適用、より細かい設定オプション)や、パフォーマンスの向上に対するコミュニティからの強いニーズがありました。
* コミュニティの活発な活動: Clashの人気に伴い、多くの開発者やユーザーがそのエコシステムに参加していました。オリジナルの開発が停滞しても、コミュニティは新しい機能や改善を強く求めており、それがフォークという形で現れました。既存のClashのコードベースはオープンソースであり、フォークしやすい環境でした。
* 既存のコードベースの活用: ゼロから新しいプロキシツールを開発するよりも、既に安定しており多くの機能を持つClashのコードをベースに改良を加える方が効率的です。

このような背景から、複数の開発者やグループがオリジナルのClashコアをフォークし、それぞれ独自の改良を加えたバージョンを開発し始めました。その中でも、特に活発に開発が行われ、多くの新機能を取り込んでいるバージョンの一つが、広く「Clash Meta」として認識されています。

2.3 「Meta」という名称の意味

公式な説明があるわけではありませんが、「Meta」という言葉には「超える」「高次の」「メタプログラミング(プログラムがプログラム自体を操作する)」といった意味合いがあります。これは、オリジナルのClashの枠を超え、新しいプロトコルや高度な機能を組み込んでいること、あるいは設定やルールに柔軟性を持たせるためのメタ的な(自己参照的、拡張的な)機能を追加していることなどを暗示していると考えられます。単なるバグ修正や小さな改良にとどまらず、Clashの機能を根本的に拡張・進化させようとする意図が込められているのかもしれません。

第3章:Clash Metaの主な特徴と機能

Clash Metaの最大の特徴は、旧バージョンと比較して格段に拡張された機能セットにあります。ここでは、その中でも特に注目すべき点を詳細に解説します。

3.1 新しいプロトコルサポート

これはClash Metaの最も重要な進化点の一つです。旧Clashがサポートしていた主要プロトコルに加え、Clash Metaは以下のような、より新しい、あるいはニッチなプロトコルを多数サポートしています。

  • TUIC (Traffic and UDP Multiplexing over ISTCP): 新しいUDPベースのプロトコル。TCPではなくUDPを使用することで、低遅延で高速な通信を目指します。ISTCPという新しい輻輳制御アルゴリズムを採用し、ネットワーク環境の変化に強く、TCPのような安定性を持ちつつUDPの利点を活かすことを目指しています。耐検閲性も考慮されており、TLSを組み合わせることでトラフィックを偽装します。
  • Hysteria: これもUDPベースのプロトコルです。QUICをベースとし、独自のTCP輻輳制御アルゴリズムを魔改造した形で組み込んでいるのが特徴です。特に高遅延・高パケットロス環境や、帯域幅を最大限に使い切りたい場合に威力を発揮するとされます。これもTLSで暗号化され、耐検閲性を持ちます。
  • VLESS with XTLS-rprx-vision: VLESSプロトコルは旧Clashでもサポートされていましたが、Clash Metaは特にXTLS-rprx-visionという高度なTLSフロー暗号化方式をサポートしています。これはTLS in TLSのような構造を持ち、TLSハンドシェイク後にデータ転送時にTLSレイヤーをバイパスするなどして、トラフィックの識別を困難にし、耐検閲性を極めて高くすることを目的としています。
  • VMess AEAD以外の暗号化: 旧ClashではVMessプロトコルの仕様変更によりAEAD暗号化が必須となりましたが、Clash Metaでは互換性のために古いVMessプロトコル(non-AEAD)や、一部の独自のVMess拡張(TLSやgRPCとの組み合わせなど)もサポートしている場合があります。
  • Shadowsocks 2022: Shadowsocksの新しい規格であり、より強力な暗号化やプラグイン機構を備えています。Clash Metaはこれもサポートし、最新のShadowsocks環境に対応しています。
  • WireGuard: 軽量で高速なVPNプロトコルであるWireGuardのクライアント機能もサポートする場合があります。これは一般的なプロキシプロトコルとは少し性質が異なりますが、トンネル技術としてClashのルーティングと組み合わせることで柔軟なネットワーク構成が可能になります。

これらの新しいプロトコルは、旧来のプロトコル(Shadowsocks, VMess, Trojanなど)が検閲によってブロックされやすくなった現状に対応するために開発されたものが多く、Clash Metaを使う最大の動機の一つとなっています。ユーザーは、利用可能なプロキシサーバーの種類に応じて、最適なプロトコルを選択できるようになります。

3.2 ルーティング機能の強化

Clashの強力なルールベースルーティングはそのままに、Clash Metaではさらに機能が拡張されています。

  • より詳細なルールタイプ: PROCESS-NAME(プロセス名によるマッチング)、RULE-SETの高度な機能、SCRIPTルールなど、様々な条件でトラフィックを識別・処理できるようになりました。
  • SCRIPTルール: JavaScriptなどのスクリプト言語を用いて、より複雑な条件でルーティングを決定できる機能です。例えば、HTTPヘッダーの内容をチェックしたり、特定の時間帯だけ異なるルールを適用したりといった、静的なルールでは実現困難な動的な制御が可能になります。
  • IP CIDRマッチングの改善: 大量のIPレンジを含むルールセットを効率的に処理できるよう、パフォーマンスと精度が向上しています。GeoIPデータベースとの連携も強化されています。
  • DOMAIN-SET: 大量のドメインを効率的にマッチングするための仕組みが強化されています。
  • より柔軟なRule Provider: ルールリストを外部から取得するRule Provider機能が強化され、より多様な形式や取得方法に対応しています。

これらの強化により、ユーザーは自分のネットワーク環境や用途に合わせて、さらにきめ細かく、かつ動的にトラフィックを制御できるようになりました。

3.3 DNS機能の強化

DNS(Domain Name System)は、ウェブサイトのドメイン名(例: google.com)をIPアドレスに変換する仕組みであり、プロキシツールにおいて非常に重要な役割を果たします。Clash Metaは、このDNS機能も大幅に強化しています。

  • 強化されたDoT/DoHサポート: DNS over TLS (DoT) および DNS over HTTPS (DoH) は、DNSクエリを暗号化することでプライバシーとセキュリティを向上させる技術です。Clash Metaは、これらのプロトコルを用いた外部DNSサーバーの利用をより柔軟かつ高性能にサポートします。
  • DNSリライタ (DNS Rewriter): 特定のドメインに対するDNS応答を書き換える機能です。例えば、プライベートネットワーク内の特定サービスへのアクセスを強制的に内部IPアドレスに向ける、広告ドメインをlocalhostに向ける(広告ブロック)、あるいは特定のドメインに対するDNSリクエストをブロックするといった用途に利用できます。
  • 偽装DNS (Fake-IPの進化): 旧ClashでもFake-IPはありましたが、Clash Metaではその実装や設定が改善されています。Fake-IPは、TUNモードで動作する際に、DNSリクエストに対して偽のローカルIPアドレス(例: 198.18.0.1など)を即座に返し、実際の名前解決は後で行うことで、ルールマッチングを高速化する技術です。これにより、大量のドメインを含むルールセットでも効率的に処理できます。
  • マルチアップストリームDNSサーバー: 複数のDNSサーバーを設定し、信頼性や速度に応じて使い分けたり、特定のドメインは特定のDNSサーバーで解決するといった設定が可能になっています。
  • GeoSite/GeoIPベースのDNSフィルタリング: DNSクエリの発信元IPや、解決されたIPアドレスの地域情報に基づいて、DNSリクエストや応答をフィルタリングする機能が強化されています。

これらのDNS機能の強化により、Clash Metaはプライバシー保護、広告ブロック、地域判定に基づくルーティングなど、より高度なネットワーク制御を可能にしています。

3.4 パフォーマンスの最適化

新しい機能の追加だけでなく、Clash MetaはオリジナルのClashコアと比較して、パフォーマンスの向上にも力が入れられています。

  • メモリ使用量の削減: 大量のプロキシやルールを設定した場合でも、メモリ使用量が最適化され、リソース消費が抑えられています。
  • 接続処理の高速化: 新しいプロトコルの効率的な実装や、ネットワークスタックの最適化により、接続の確立やデータ転送速度が向上しています。
  • ルーティングエンジンの効率化: 特に大量のルールを扱う際のルールマッチング速度が向上しています。

これらの最適化により、Clash Metaはより多くのトラフィックや複雑な設定を、安定かつ高速に処理できるようになっています。

3.5 設定の柔軟性向上

YAML設定ファイルにおいて、旧Clashには存在しなかった、あるいは限定的だった多くの設定オプションが追加されています。これにより、ユーザーはClash Metaの挙動をより細かく、自分のニーズに合わせて調整できます。例えば、TCP/UDPのタイムアウト設定、特定の接続に対するKeep-Alive設定、各プロキシプロトコルの詳細なパラメータ(TLSバージョン、暗号スイートなど)など、多岐にわたります。

3.6 その他の機能

  • APIの拡張: 外部のGUIクライアントやスクリプトからClash Metaを制御・監視するためのAPIが拡張され、より多くの情報取得や操作が可能になっています。
  • より高度なロギング: デバッグや問題解決に役立つ詳細なロギング機能が提供されています。
  • HTTP/Sインジェクション: 特定のリクエスト/レスポンスに対してHTTPヘッダーなどを追加・変更する機能など、より低レベルなトラフィック操作機能を持つバージョンも存在します(これはClash Metaの中でも特定のフォークに限定される場合があります)。

これらの機能は、Clash Metaが単なるオリジナルClashの保守バージョンではなく、プロキシツールとしての能力を大きく拡張したものであることを示しています。

第4章:旧バージョン (オリジナルClashコア) とClash Metaの具体的な違い

これまでに述べてきたClash Metaの特徴を踏まえ、旧バージョン(オリジナルClashコア)との具体的な違いを項目ごとに比較します。

4.1 プロトコルサポート

項目 旧バージョン (オリジナルClash) Clash Meta 違いの要点
主要プロトコル Shadowsocks, VMess (AEADのみ), VLESS, Trojan, HTTP, SOCKS5 上記に加えて、TUIC, Hysteria, VLESS XTLS-rprx-vision, SS2022, (WireGuard) など 最新かつ耐検閲性の高いプロトコルへの対応が大幅に強化されている。特にUDPベースプロトコルやVLESS拡張が重要。
VMess互換性 AEAD必須 (旧VMess非対応) AEADに加え、一部の旧VMessや拡張にも対応する場合がある 古いVMessサーバーとの互換性が一部改善されている可能性がある。
TLS/XTLS/Vision TLS対応 (VMess, VLESS, Trojan) より高度なXTLS-rprx-visionに対応 TLSハンドシェイク後のデータ転送効率と耐検閲性が向上している。
UDPベースプロトコル 限定的 (SOCKS5 UDPなど) TUIC, Hysteriaなど、検閲耐性・高速性を謳うUDPベースプロトコルを多数サポート 低遅延や特定のネットワーク環境でのパフォーマンスを重視するユーザーにとって重要。検閲回避手段の多様化。

4.2 ルーティング機能

項目 旧バージョン (オリジナルClash) Clash Meta 違いの要点
ルールタイプ DOMAIN, IP-CIDR, GEOIP, DST-PORT, PROCESSなど 上記に加え、SCRIPT, PROCESS-NAMEなど、より多様なルール プロセス名でのマッチングや、スクリプトによる動的な、より複雑なルール適用が可能になった。
SCRIPTルール なし 対応 HTTPヘッダーや時間など、静的ルールでは難しい条件でのルーティング制御が可能。
IP/CIDR処理 基本的な処理 効率化、大規模ルールセット対応、GEOIP連携強化 大量のIPリストやGeoIPルールを扱う際のパフォーマンスと精度が向上。
Rule Provider 基本的な外部ルール取得 より柔軟な取得オプション、形式対応 外部で管理されているルールリストの利用が容易に。

4.3 DNS機能

項目 旧バージョン (オリジナルClash) Clash Meta 違いの要点
DoT/DoH サポート サポート強化、より柔軟な設定 暗号化DNSの安定性・性能向上。
DNSリライタ なし 対応 特定ドメインのDNS応答書き換えによる広告ブロックや内部アクセス制御が可能。
Fake-IP サポート 実装改善、設定の柔軟性向上 TUNモードでのルーティング効率化に寄与。
マルチDNSサーバー 限定的 より高度な設定、特定ドメインとサーバーの紐付けなどに対応 DNSサーバーの選択や、ドメインに応じた使い分けが細かく設定可能。
DNSフィルタリング GEOIPベースなど GEOIP/GeoSiteに加え、より詳細なフィルタリングルールに対応 DNSレベルでのアクセス制御が強化。

4.4 パフォーマンスとリソース使用

項目 旧バージョン (オリジナルClash) Clash Meta 違いの要点
メモリ使用量 設定によっては増加傾向 最適化、削減傾向 大量のプロキシやルールを使用する環境での安定性が向上。
処理速度 一般的なレベル 新プロトコル対応、ルーティング効率化により向上 全体的なスループットやレスポンス速度が改善される可能性がある。
安定性 比較的安定 新機能導入による潜在的な不安定要素あり 最新機能が多い反面、枯れていない技術も含むため、旧バージョンよりバグのリスクがある可能性はゼロではない。ただし、活発な開発で改善が進む。

4.5 設定ファイルの互換性

Clash Metaの設定ファイルは、基本的にはオリジナルのClashのYAML形式を継承しています。proxies, proxy-groups, rules, dns, generalといった主要なセクションの構造は共通です。

しかし、Clash Metaで追加された新しいプロトコル(TUIC, Hysteriaなど)や新しいルールタイプ(SCRIPT, PROCESS-NAMEなど)、新しいDNSオプションなどは、旧Clashの設定ファイルには存在しないため、Clash Meta固有の記述が必要になります。逆に、旧Clash向けの設定ファイルをClash Metaでそのまま利用することは可能ですが、Metaの新しい機能を活かすことはできません。

したがって、設定ファイルの互換性については、「基本的な構造は互換性があるが、Clash Metaの独自機能を利用するにはMeta固有の記述が必要であり、厳密な意味での完全互換ではない」と理解するのが適切です。

4.6 開発体制とコミュニティ

  • 旧バージョン: オリジナル開発者による開発は事実上停止または極めて低調です。公式リポジトリの活動はほとんどありません。
  • Clash Meta: 複数の非公式開発者やコミュニティによって活発に開発が進められています。GitHub上の様々なリポジトリでコードが管理されており、新しい機能のリクエストやバグ報告に対する反応も比較的迅速です。

この開発体制の違いは非常に大きく、新しい技術への対応速度やバグ修正の頻度に直結します。Clash Metaは常に新しい機能を取り込もうとする「攻め」の開発姿勢、旧バージョンは現状維持または「守り」の姿勢と言えます。

4.7 GUIクライアントの対応

Clash Metaコアは、オリジナルのClash Coreとはバイナリレベルで異なります。そのため、GUIクライアントもClash Metaコアに対応している必要があります。かつて主流だったClash for Windows (CFW) はオリジナルのClash Coreをベースに開発されていたため、そのままではClash Metaの独自機能をフルに利用できませんでした(CFWのフォークや後継プロジェクトがMeta対応版をリリースしている場合もあります)。

現在では、Clash Vergenekorayなど、Clash Metaコアをデフォルトでサポートしている、あるいは容易にMetaコアに切り替えられるGUIクライアントが登場しており、Clash Metaを利用する上でのGUI環境は整備されています。

第5章:Clash Metaを使うメリット・デメリット

Clash Metaが旧バージョンと比較して優れている点、そして注意すべき点をまとめます。

5.1 メリット

  • 最新プロトコルへの対応: TUIC, Hysteria, VLESS XTLS-rprx-visionなど、検閲耐性が高く、パフォーマンスに優れた新しいプロトコルを利用できます。これは、特に厳しい検閲環境下で安定した接続を維持するために非常に重要です。
  • 高度なルーティング機能: SCRIPTルールや強化されたRule Providerなどにより、旧Clashでは不可能だった複雑なルーティングや動的な制御が可能になります。
  • 強化されたDNS機能: DNSリライタや詳細なフィルタリング設定により、プライバシー保護、広告ブロック、ローカルネットワークとの連携などが容易になります。
  • パフォーマンスの向上: メモリ使用量の最適化や処理速度の改善により、特に大規模な設定や多数の接続を扱う場合に安定した動作が期待できます。
  • 活発な開発: コミュニティ主導で開発が進んでいるため、新しい機能が迅速に追加され、バグが修正されるサイクルが速い傾向にあります。

5.2 デメリット

  • 非公式開発によるリスク: オリジナルの公式プロジェクトではなく、複数の非公式な開発者やグループによって開発されているため、開発の継続性、信頼性、セキュリティ(意図しないバックドアや脆弱性の混入)といった面で、公式プロジェクトほどの保証はありません。コードはオープンソースで検証可能ですが、利用者は自己責任で使用する必要があります。
  • 安定性の潜在的な問題: 新しい機能が積極的に取り込まれる反面、機能が十分にテストされていなかったり、予期しないバグが含まれていたりする可能性が、旧バージョンと比較すると高いかもしれません。ただし、これも活発な開発によって日々改善されています。
  • 設定の複雑さ: 新しい機能が増えた分、設定オプションも増え、YAML設定ファイルはより複雑になる傾向があります。特にSCRIPTルールなどの高度な機能を利用するには、相応の知識と労力が必要です。
  • GUIクライアントの選択肢: かつて主流だったGUIクライアントがClash Metaに公式対応していない場合、対応している新しいGUIクライアントに乗り換える必要があります。

第6章:Clash Metaの導入方法

Clash Metaを使い始めるには、基本的に以下の手順を踏みます。

  1. Clash Metaコアの入手: GitHubなどで公開されているClash Metaコアのバイナリをダウンロードします。複数のフォークが存在するため、信頼できるソースから入手することが重要です。通常は利用するOS(Windows, macOS, Linuxなど)に合わせたバイナリを選択します。
  2. 対応GUIクライアントの入手(推奨): Clash Metaコア単体でもコマンドラインで実行可能ですが、設定の管理や操作にはGUIクライアントが便利です。Clash Metaコアに対応したGUIクライアント(例: Clash Verge, nekorayなど)をダウンロード・インストールします。多くのGUIクライアントは、Clash Metaコアを内蔵しているか、外部からダウンロードしたコアを指定できるようになっています。
  3. 設定ファイルの準備:
    • 既存のClash設定ファイルがあれば、それをベースにClash Metaの独自機能を利用するための記述を追加・修正します。
    • 新しい設定ファイルを作成する場合は、プロキシ情報、プロキシグループ、ルーティングルール、DNS設定などをYAML形式で記述します。プロキシサーバー提供者からClash Meta形式の設定ファイル(URLやファイル)が提供されている場合、それをダウンロードまたは購読するのが最も手軽です。
  4. Clash Metaの起動:
    • GUIクライアントを使用する場合、クライアントに設定ファイルを読み込ませ、Clash Metaコアを選択して起動します。
    • コマンドラインで直接実行する場合、ダウンロードしたClash Metaコアの実行ファイルと設定ファイルを指定して起動します。
  5. システムプロキシの設定: Clash Metaがシステムプロキシとして機能するように設定します。GUIクライアントを使用する場合、通常はクライアントのボタン一つで設定できます。これにより、ウェブブラウザや他のアプリケーションの通信がClash Metaを経由するようになります。TUNモードを使用する場合は、システム全体または指定したアプリケーションのトラフィックがClash Metaによって捕捉・処理されます。

第7章:Clash Metaの設定例(YAML形式)

Clash Metaの設定はYAML形式のファイルで行います。以下に、基本的な構成要素と、Clash Meta独自の機能を含む簡単な設定例を示します。

“`yaml

General Settings

port: 7890 # HTTP Proxy Port
socks-port: 7891 # SOCKS5 Proxy Port
redir-port: 7892 # Redir Port (for Linux/macOS)
tproxy-port: 7893 # TProxy Port (for Linux)
mixed-port: 7890 # Combined HTTP and SOCKS5 port (Clash Meta specific)
tun:
enable: true
stack: system # or lwip
# auto-route: true # Optional: automatically set routes
# auto-redir: true # Optional: automatically set redirection
# dns-hijack:
# – 198.18.0.2:53 # Hijack DNS traffic to Fake-IP DNS
# fake-ip-range: 198.18.0.1/16 # Fake-IP range
# fake-ip-filter: # Domains not to use Fake-IP for
# – +.media.microsoft.com
# – +.wonius.com
# … more tun options specific to Meta

mode: rule # Global, Rule, Direct
log-level: info # debug, info, warning, error, silent
allow-lan: true # Allow connections from LAN
bind-address: “*” # Bind to all interfaces (0.0.0.0)

unified-delay: true # Show unified delay in GUI (Clash Meta specific)
tcp-concurrent: true # Enable concurrent TCP connections (Clash Meta specific)

— Proxies Definition —

proxies:
# Old Clash supported protocols
– name: “SS Example”
type: ss
server: example.com
port: 8443
cipher: aes-256-gcm
password: “your-password”
udp: true # UDP relay

  • name: “VMess Example”
    type: vmess
    server: example.com
    port: 443
    uuid: “your-uuid”
    alterId: 0 # alterId is often 0 in newer Vmess
    cipher: auto # auto or aes-128-gcm, chacha20-poly1305
    network: ws # or tcp, grpc, http
    tls: true
    # ws-path: “/your-path” # For websocket
    # ws-headers: # For websocket
    # Host: example.com
    # grpc-servicename: “your-service” # For grpc

  • name: “Trojan Example”
    type: trojan
    server: example.com
    port: 443
    password: “your-password”
    network: tcp # or grpc, ws
    tls: true
    # skip-cert-verify: true # Use with caution!

  • name: “VLESS Example”
    type: vless
    server: example.com
    port: 443
    uuid: “your-uuid”
    network: tcp # or ws, grpc
    tls: true
    # flow: “xtls-rprx-vision” # !!! Clash Meta specific VLESS flow !!!
    # ws-path: “/your-path”
    # ws-headers:
    # Host: example.com
    # grpc-servicename: “your-service”

# — Clash Meta specific protocols —
– name: “TUIC Example”
type: tuic
server: example.com
port: 443
uuid: “your-uuid”
password: “your-password”
congestion_controller: cubic # or bbr
udp_relay_mode: quic
tls: true
skip_cert_verify: false # Use with caution!
alpn:
– h3

  • name: “Hysteria Example”
    type: hysteria
    server: example.com
    port: 443
    auth: “your-password” # Or your auth string/number
    up: 50 # Upload bandwidth in Mbps
    down: 100 # Download bandwidth in Mbps
    obfs: “your-obfs-password” # Optional obfuscation
    tls:
    sni: example.com
    skip_cert_verify: false
    alpn:
    – h3

  • name: “SS2022 Example”
    type: ss
    server: example.com
    port: 8488
    cipher: 2022-blake3-aes-128-gcm # SS2022 cipher
    password: “your-password”
    plugin: obfs # Optional plugin
    plugin-opts:
    mode: http

— Proxy Groups Definition —

proxy-groups:
– name: “🌐 Proxy”
type: select # or url-test, fallback, load-balance, relay, direct
proxies:
– “🇭🇰 Hong Kong” # Assume these are defined in proxies section
– “🇸🇬 Singapore”
– “🚀 Direct”

  • name: “🌍 Global”
    type: select
    proxies:

    • “🌐 Proxy”
    • “🚀 Direct”
  • name: “📺 Streaming”
    type: url-test # Automatically selects the fastest proxy
    url: http://cp.cloudflare.com/generate_204 # Health check URL
    interval: 300 # Health check interval in seconds
    tolerance: 50 # Tolerance for delay difference
    proxies:

    • “🇭🇰 Hong Kong”
    • “🇸🇬 Singapore”
    • “🇺🇸 United States”
  • name: “🎮 Game”
    type: select
    proxies:

    • “🇸🇬 Singapore Low Ping”
    • “🚀 Direct”
  • name: “🚀 Direct”
    type: direct

  • name: “⛔ Reject”
    type: reject

# — Clash Meta specific group type —
– name: “⚖️ Load Balance”
type: load-balance
url: http://cp.cloudflare.com/generate_204
interval: 300
proxies:
– “Proxy A”
– “Proxy B”
# Load balance distributes traffic across proxies

  • name: “♻️ Relay”
    type: relay
    proxies:

    • “Proxy A” # First hop
    • “Proxy B” # Second hop (A -> B)
      # Traffic goes through Proxy A then Proxy B

— Rules Definition —

rules:
# — Clash Meta specific rules —
# PROCESS-NAME rule
– PROCESS-NAME,firefox.exe,🌍 Global # Route Firefox traffic through Global group

# SCRIPT rule example (Needs JavaScript engine enabled in core/client)
# – SCRIPT,example_rule.js,🌍 Global # Execute external JS script for rule matching

# DOMAIN-SET rule (Clash Meta efficiency improvement)
# – RULE-SET,applications,🌍 Global # Rule list defined in a separate file/url using DOMAIN-SET/IP-CIDR-SET format

# Standard Rules (mostly compatible with old Clash)
– DOMAIN-SUFFIX,google.com,🌍 Global
– DOMAIN-KEYWORD,youtube,📺 Streaming
– DOMAIN,netflix.com,📺 Streaming
– GEOIP,CN,🚀 Direct # Route Chinese IPs directly
– GEOIP,private,🚀 Direct # Route private IPs directly
– IP-CIDR,192.168.0.0/16,🚀 Direct,no-resolve
– IP-CIDR,10.0.0.0/8,🚀 Direct,no-resolve
– IP-CIDR,172.16.0.0/12,🚀 Direct,no-resolve
– MATCH,🌍 Global # Default rule: Route all remaining traffic through Global group

— DNS Settings —

dns:
enable: true
listen: 0.0.0.0:53 # Listen address for DNS requests
enhanced-mode: fake-ip # redir-host or fake-ip
fake-ip-range: 198.18.0.1/16
# fake-ip-filter: # See tun section above

# — Clash Meta specific DNS rewrite —
# rewrite-rules:
# – ‘qtype == A && (domain == “example.com” || domain == “test.com”) ? “1.2.3.4” : “”‘ # Simple rewrite
# – ‘qtype == AAAA && domain == “example.com” ? “::1” : “”‘ # Rewrite AAAA

# — Upstream DNS Servers —
default-nameserver: # Used for general queries or when specific servers fail
– 114.114.114.114
– 223.5.5.5
nameserver: # Used before default-nameserver, can be protocol specific
– 8.8.8.8 # Standard DNS
– 1.1.1.1 # Standard DNS
– tls://1.0.0.1:853 # DoT (DNS over TLS)
– https://dns.google/dns-query # DoH (DNS over HTTPS)
– quic://dns.adguard.com:853 # DoQ (DNS over QUIC) – Clash Meta specific
– fake-ip # Special internal DNS server for fake-ip

# — Specific domain to specific DNS server (Clash Meta feature) —
# nameserver-policy:
# “geosite:cn”:
# – 114.114.114.114
# – 223.5.5.5
# “example.com”: 8.8.8.8
# “.cn”: 114.114.114.114

# — Fallback DNS Servers (used if nameserver fails) —
fallback:
– 8.8.4.4
– 1.1.1.1

# — Domains that bypass Fake-IP and use real DNS —
# fallback-filter:
# geoip: true # Filter based on GeoIP
# geoip-code: CN # Apply filter for CN
# domains: # Specific domains to fallback
# – +.google.com
# – +.youtube.com

“`

設定例の解説:

  • port, socks-port, mixed-port: 待ち受けポートの設定。mixed-portはHTTPとSOCKS5を一つのポートで提供するClash Metaの機能です。
  • tun: TUNモードの設定。システム全体のトラフィックを捕捉するために必須です。fake-ip-rangefake-ip-filterなど、Fake-IPに関する設定もここに含まれます。Clash MetaではTUNモードに関する詳細なオプションが追加されていることがあります。
  • mode: ルーティングモード。ruleモードが一般的です。
  • allow-lan, bind-address: LANからの接続を許可するか、どのネットワークインターフェースにバインドするか。
  • unified-delay, tcp-concurrent: Clash Meta独自のパフォーマンスやGUI表示に関する設定オプションの例です。
  • proxies: 利用可能なプロキシサーバーをリストアップします。typeでプロトコルを指定し、server, port, 認証情報などを設定します。flow: "xtls-rprx-vision"はClash Meta独自のVLESS設定です。type: tuic, type: hysteriaはMetaで追加されたプロトコルの設定例です。
  • proxy-groups: proxiesで定義したプロキシをグループ化し、ルーティングルールから参照できるようにします。select, url-test, fallbackなどが基本的なタイプです。load-balance, relayはClash Metaで追加されたグループタイプの例です。
  • rules: トラフィックをどのproxy-groupsにルーティングするかを定義します。PROCESS-NAME, SCRIPT, RULE-SETなど、Clash Metaで追加されたルールタイプが使用可能です。ルールは上から順に評価され、最初の一致したルールが適用されます。MATCHルールは、どのルールにも一致しなかった場合のデフォルトルールです。
  • dns: DNS設定。enhanced-mode: fake-ipはFake-IPを有効にする設定です。nameserverfallbackで利用するDNSサーバーを指定します。tls://, https://, quic://といったプレフィックスでDoT, DoH, DoQを指定できます。rewrite-rulesnameserver-policyはClash Meta独自の高度なDNS制御機能です。

この例はあくまで一部であり、Clash Metaにはさらに多くの設定オプションや機能が存在します。公式ドキュメント(利用しているClash Metaフォークのリポジトリで公開されていることが多い)を参照することで、より詳細な設定方法や利用可能なオプションを確認できます。

第8章:注意点とリスク

Clash Metaを利用する上で知っておくべき注意点とリスクを改めてまとめます。

  • 非公式性: 繰り返しになりますが、Clash MetaはオリジナルのClashプロジェクトから派生した非公式なバージョンです。開発元が明確でない場合や、複数の開発者が並行して開発している場合があり、開発の継続性やソフトウェアの品質に対する公式な保証はありません。
  • セキュリティリスク: オープンソースであるためコードの検証は可能ですが、悪意のあるコードが混入していないか、あるいは未知の脆弱性が含まれていないかといったリスクは、公式に監査された商用ソフトウェアなどと比較すると高くなる可能性があります。信頼できるソースからバイナリをダウンロードし、利用する際はそのリスクを理解しておく必要があります。
  • 安定性と互換性: 新しい機能が多い分、バグが含まれていたり、特定の環境で予期しない挙動をしたりする可能性があります。また、古い設定ファイルとの互換性が完全に保たれない場合もあります。
  • サポート体制: 公式なサポート窓口はなく、問題が発生した場合はコミュニティのフォーラムや開発者向けのリポジトリのIssueなどを通じて解決策を探る必要があります。
  • 法的な問題: プロキシツールの利用は、利用する国や地域の法律、あるいは利用しているネットワークやサービスプロバイダの規約によって制限されている場合があります。Clash Metaを含むプロキシツールの利用は、常に自己責任であり、現地の法律や規約を遵守する必要があります。特に、検閲を回避するための利用は、一部の国では違法となる可能性があるため、十分な注意が必要です。

これらのリスクを理解した上で、Clash Metaのメリット(最新技術の利用、高度な機能)が、これらのデメリットを上回ると判断できる場合に利用を検討するのが良いでしょう。

第9章:将来展望

Clash Metaの将来は、主にコミュニティの活動と、インターネット検閲技術やプロキシプロトコルの進化に依存します。

  • 新しいプロトコルの採用: 今後も、検閲を回避するための新しいプロトコルや技術が登場する可能性は高く、Clash Metaはそうした最新技術を迅速に取り込んでいくことが期待されます。
  • 高度なルーティングと制御: SCRIPTルールのような機能がさらに発展し、AI/MLを用いたトラフィック分析に基づいて自動的に最適なルーティングを判断するなど、より高度な自動化・インテリジェント化が進むかもしれません。
  • セキュリティとプライバシーの強化: DNS over QUIC (DoQ) のような新しい暗号化DNSプロトコルや、より強固な認証・暗号化方式が導入される可能性があります。
  • 他のプロジェクトとの連携: 他のネットワークツールやセキュリティツールとの連携機能が強化され、より統合的なネットワーク管理ソリューションの一部となる可能性も考えられます。

一方で、非公式プロジェクトであるため、主要な開発者が開発を停止したり、コミュニティが分裂したりといったリスクも常に存在します。また、プロキシツールの利用に対する法的規制が厳しくなる可能性も、無視できない外部要因です。

第10章:まとめ – どのようなユーザーがClash Metaを選ぶべきか?

Clash Metaは、オリジナルのClashコアから派生し、新しいプロトコルサポート、高度なルーティング機能、強化されたDNS機能など、多くの面で進化を遂げたプロキシツールです。その最大の特徴は、厳しい検閲環境下での利用を想定した最新技術への対応と、非常に柔軟で詳細なカスタマイズ能力にあります。

Clash Metaの利用が特に向いているユーザー:

  • 厳しい検閲環境下で安定した接続を求めるユーザー: 旧来のプロトコルがブロックされがちな環境で、TUICやHysteria、VLESS XTLS-rprx-visionといった最新の耐検閲プロトコルを利用したい。
  • プロキシツールに高度なカスタマイズを求める技術ユーザー: SCRIPTルールや詳細なDNS設定など、旧Clashでは不可能だった複雑なルーティングや動的な制御を実現したい。
  • 常に最新のプロキシ技術を試したい、あるいは開発に貢献したいユーザー: 最新のプロトコルや機能が迅速に取り込まれるClash Metaの開発ペースに魅力を感じる。
  • パフォーマンスを重視するユーザー: 最適化されたコアによる高速な処理能力や、新しいプロトコルの低遅延性を活用したい。

一方で、以下のようなユーザーには、旧バージョンや他の安定したプロキシツールの方が適しているかもしれません:

  • 基本的なプロキシ機能だけが必要なユーザー: 単に数個のプロキシサーバーを切り替えたい、基本的なルールでルーティングしたいといった目的であれば、旧Clashや他のGUIクライアントでも十分です。
  • 設定の複雑さを避けたいユーザー: Clash Metaの高度な機能は、その分設定が複雑になりがちです。シンプルな操作性を求める場合は、よりGUIが洗練された、機能が限定的なツールの方が使いやすい可能性があります。
  • 非公式ソフトウェアの使用に抵抗があるユーザー: 公式なサポートや保証がない点、セキュリティに関する潜在的なリスクを許容できない場合は、より信頼性の高い公式プロジェクトや商用サービスを検討すべきです。

Clash Metaは、プロキシ技術の最前線を走り続ける、パワフルで拡張性の高いツールです。その機能を最大限に引き出すには、ある程度の技術的な知識と、設定ファイルを編集する意欲が必要になります。しかし、その能力は、特にネットワークの自由が制限されている環境において、大きなメリットをもたらす可能性があります。自身のニーズとリスク許容度をよく検討し、Clash Metaが最適な選択肢であるかを判断してください。

この記事が、Clash Metaとその旧バージョンとの違いについて、読者の皆様の深い理解の一助となれば幸いです。


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