プライバシーを守るDNSサーバー 1.1.1.1 のすべて:解説・設定・活用法

はい、承知いたしました。Cloudflareが提供するプライバシー保護DNSサーバー「1.1.1.1」に関する詳細な解説、設定方法、活用法を網羅した、約5000語の記事を作成します。


プライバシーを守るDNSサーバー 1.1.1.1 のすべて:解説・設定・活用法を徹底解説

インターネットの世界は、私たちの日常生活に不可欠なものとなりました。ウェブサイトの閲覧、動画の視聴、オンラインゲーム、コミュニケーションツールなど、私たちは毎日、さまざまな形でインターネットを利用しています。しかし、その裏側で、私たちのインターネット利用に関する情報がどのように扱われているか、どれだけの人が意識しているでしょうか?

私たちがウェブサイトを閲覧しようとするとき、ブラウザのアドレスバーに「https://www.example.com」のようなドメイン名を入力します。インターネット上のコンピューターは、この人間にとって分かりやすいドメイン名を直接理解できません。コンピューターが通信相手を特定するには、「IPアドレス」という数字の羅列が必要です。例えるなら、ドメイン名が「会社の名前」で、IPアドレスが「その会社の電話番号」のようなものです。

ここで登場するのが「DNS(Domain Name System)」です。DNSは、入力されたドメイン名に対応するIPアドレスを教えてくれる、インターネットの電話帳のような役割を果たしています。私たちがブラウザにドメイン名を入力すると、コンピューターはまずDNSサーバーに問い合わせを行い、目的のドメイン名に対応するIPアドレスを取得します。そのIPアドレスを使って、初めて目的のウェブサイトが置かれているサーバーに接続し、情報をやり取りすることができるのです。

通常、私たちは意識することなく、利用しているインターネットサービスプロバイダ(ISP)が提供するDNSサーバーを使用しています。しかし、ISPが提供するDNSサーバーには、いくつかの潜在的な問題点があります。その中でも特に重要なのが「プライバシー」と「速度」です。

ISPのDNSサーバーは、あなたがどのウェブサイトにアクセスしようとしたか、つまりあなたのインターネット利用履歴をすべて把握することができます。この情報は、法的な要請がない限り悪用されることは少ないかもしれませんが、理論的にはあなたの閲覧履歴が記録・分析される可能性があります。また、ISPのDNSサーバーの性能によっては、ドメイン名からIPアドレスへの変換(名前解決)に時間がかかり、結果的にウェブサイトの表示が遅くなることもあります。

このような背景から、より高速で、かつプライバシーに配慮した公共DNSサーバーへの関心が高まっています。そして、その代表格とも言えるのが、Cloudflareが提供する「1.1.1.1」です。

本記事では、この革新的なDNSサーバーである1.1.1.1について、その仕組み、なぜ使うべきなのかというメリット、詳細な設定方法、そしてさらに便利な活用法まで、あらゆる側面から徹底的に解説します。あなたのインターネット体験を、より速く、より安全に、そしてよりプライベートなものにするための第一歩を踏み出しましょう。

第1章:DNSの基本理解 – インターネットの「電話帳」の仕組み

1.1.1.1を理解するためには、まずDNSがどのように機能しているのかを知る必要があります。少し技術的な話になりますが、インターネットの裏側で何が起きているのかを知ることは、1.1.1.1の価値をより深く理解することにつながります。

1.1 DNSとは何か?

DNS(Domain Name System)は、「example.com」のような人間が覚えやすいドメイン名と、「93.184.216.34」のようなコンピューターが通信に使うIPアドレスを結びつけるシステムです。もしDNSがなければ、私たちはすべてのウェブサイトやサービスにアクセスするために、複雑なIPアドレスを覚えなければならなくなります。

1.2 名前解決のプロセス

あなたがブラウザで「www.google.com」と入力し、Enterキーを押したときに、裏側ではこのようなことが起こっています。

  1. スタブリゾルバー (Stub Resolver): あなたのコンピューターやスマートフォンに内蔵されているプログラムです。まず、ローカルのキャッシュ(以前アクセスしたIPアドレスを一時的に覚えている場所)に「www.google.com」のIPアドレスがないか確認します。もしあれば、その情報を使ってすぐにサーバーに接続します。なければ、次のステップに進みます。
  2. リカーシブリゾルバー (Recursive Resolver): あなたのコンピューターは、設定されているリカーシブリゾルバー(通常はISPのDNSサーバーや、この記事で紹介する1.1.1.1のような公共DNSサーバー)に「www.google.com」のIPアドレスを問い合わせます。
  3. ルートDNSサーバー (Root DNS Server): リカーシブリゾルバーは、まず世界の頂点にあるルートDNSサーバーに「.com」ドメインの名前解決を依頼します。ルートサーバーは、「.com」ドメインを管理しているTLD(Top-Level Domain)ネームサーバーのアドレスを教えます。
  4. TLDネームサーバー (Top-Level Domain Name Server): リカーシブリゾルバーは、ルートサーバーから得た情報をもとに、「.com」のTLDネームサーバーに「google.com」の名前解決を依頼します。TLDネームサーバーは、「google.com」を管理しているオーソリティティブネームサーバーのアドレスを教えます。
  5. オーソリティティブネームサーバー (Authoritative Name Server): リカーシブリゾルバーは、TLDネームサーバーから得た情報をもとに、「google.com」のオーソリティティブネームサーバーに「www.google.com」のIPアドレスを依頼します。オーソリティティブネームサーバーは、そのドメインの正しいIPアドレスを知っており、その情報をリカーシブリゾルバーに返します。
  6. IPアドレスの返信: リカーシブリゾルバーは、オーソリティティブネームサーバーから受け取った「www.google.com」のIPアドレス(例: 142.250.199.36)をあなたのコンピューターのスタブリゾルバーに返します。
  7. 接続: あなたのコンピューターは、受け取ったIPアドレスを使って、目的のGoogleのウェブサーバーに接続し、ウェブページのデータを取得してブラウザに表示します。

この一連のプロセスは、通常ミリ秒単位で行われます。私たちが普段インターネットを快適に利用できるのは、このDNSというシステムが効率的に機能しているおかげです。

1.3 DNSとプライバシー、速度

この名前解決のプロセスにおいて、リカーシブリゾルバー(ステップ2で使用されるDNSサーバー)は、あなたがアクセスしようとしたすべてのドメイン名を知ることになります。あなたがISPのDNSサーバーを使っている場合、ISPはあなたのすべてのインターネット接続先を知ることができるのです。これは、あなたのオンライン活動の履歴を把握される可能性があることを意味します。これがDNSにおけるプライバシーの問題です。

また、リカーシブリゾルバーの処理能力やネットワーク経路によって、名前解決にかかる時間は異なります。この時間が長ければ長いほど、ウェブサイトが表示されるまでの時間も長くなります。これがDNSにおける速度の問題です。

1.1.1.1は、これらの問題を解決するために開発された公共DNSサーバーです。

第2章:1.1.1.1 とは何か? – プライバシーと速度を追求したDNS

Cloudflareが提供する1.1.1.1は、「インターネット上で最速かつプライバシーを尊重する消費者向けDNSサービス」として、2018年4月1日に発表されました。その主な目的は、従来のDNSが抱えるプライバシーと速度の問題を解決することにあります。

2.1 Cloudflareとは?

1.1.1.1を理解する上で、提供元であるCloudflareについて知っておくことも重要です。Cloudflareは、ウェブサイトやオンラインサービスのセキュリティ、パフォーマンス、信頼性を向上させるためのサービスを提供する企業です。CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)やDDoS攻撃対策、WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)などが主要な事業であり、世界中に広がる大規模なネットワークインフラを持っています。この巨大なインフラが、1.1.1.1の高速性の基盤となっています。

2.2 APNICとの提携

1.1.1.1は、Cloudflareがアジア太平洋地域のIPアドレスを管理する非営利団体であるAPNICと提携して運営されています。これは、元々1.1.1.1というIPアドレス空間がAPNICによって管理されており、歴史的に多くのインターネット機器で特定の用途(例:ログイン不要なネットワークの自動検出)に使われていた背景があるためです。このIPアドレス空間を公共DNSサービスとして活用するために、Cloudflareが技術を提供し、APNICがIPアドレス空間を提供・管理する形で実現しました。

2.3 1.1.1.1のコアバリュー:プライバシーと速度

1.1.1.1が最も重視しているのは以下の2点です。

  • プライバシー: 1.1.1.1は、ユーザーのクエリログを一切記録しないことを公約しています。具体的なポリシーとしては、「個人を特定可能な情報をディスクに書き込まない」「デバッグ目的で一時的にメモリに保持される情報も、24時間以内に完全に消去する」としています。また、クエリデータはアグリゲート(集計)された非個人情報として、DNS性能の改善などにのみ利用されると説明しています。これにより、ISPのようにあなたのすべての閲覧履歴を把握される心配がなくなります。
  • 速度: Cloudflareは世界中に数百ものデータセンターを展開しており、その広大なネットワークインフラを利用して、ユーザーに地理的に最も近いDNSサーバーで名前解決を行います。これにより、クエリの応答時間を短縮し、結果的にウェブサイトの読み込み速度を向上させます。独立した第三者機関による測定でも、1.1.1.1はしばしば世界最速クラスのDNSサーバーとして評価されています。

2.4 IPアドレス情報

1.1.1.1サービスのプライマリIPアドレスとセカンダリIPアドレスは以下の通りです。

  • IPv4:
    • プライマリ: 1.1.1.1
    • セカンダリ: 1.0.0.1
  • IPv6:
    • プライマリ: 2606:4700:4700::1111
    • セカンダリ: 2606:4700:4700::1001

これらのIPアドレスを、お使いのデバイスやルーターのDNS設定に手動で入力して使用します。

第3章:なぜ 1.1.1.1 を使うべきか?主なメリット

1.1.1.1を使うことには、様々なメリットがあります。ここでは、その主要なものを詳しく見ていきましょう。

3.1 卓越したプライバシー保護

これは1.1.1.1の最大の売りです。前述の通り、ISPのDNSサーバーはあなたのインターネット利用履歴を知り得ます。あなたがどんなニュースサイトを見たか、どんな商品に興味があるか、どんな病気について調べたかなど、センシティブな情報を含む可能性のあるドメイン名を知ることができます。1.1.1.1を使用することで、この情報がCloudflareのサーバーには個人と紐づけて記録されないという安心感が得られます。

Cloudflareは、プライバシーポリシーにおいて、彼らが収集する情報(クエリデータなど)は集計され、個人を特定できない形式でのみ保持され、24時間以内に破棄されることを明確にしています。これは、他の多くの無料公共DNSサービスや、特にISPのDNSサービスとは一線を画するポリシーです。

3.2 驚くべき高速性

Cloudflareのグローバルなネットワークインフラを活用することで、1.1.1.1はユーザーに地理的に最も近いデータセンターから応答を返すことができます。これにより、名前解決にかかる時間が劇的に短縮される可能性があります。名前解決はほとんどすべてのインターネット通信の最初のステップであるため、この速度向上はウェブサイトの読み込み、アプリの応答性など、インターネット利用全体の体感速度に影響します。

特に、これまでレスポンスの遅いISPのDNSサーバーを使っていたユーザーにとっては、顕著な速度改善が感じられることがあります。

3.3 セキュリティの向上

1.1.1.1は、デフォルトでDNSSEC(Domain Name System Security Extensions)による検証を行います。DNSSECは、DNS応答が偽造されていないこと(DNSスプーフィングやキャッシュポイズニングを防ぐこと)を保証する技術です。これにより、あなたがアクセスしようとしたドメイン名に対して、攻撃者によって偽のIPアドレスが返され、フィッシングサイトやマルウェア配布サイトに誘導されるといったリスクを低減できます。

もちろん、DNSSECはすべてのオンライン脅威から守ってくれるわけではありませんが、DNSレベルでのセキュリティを強化する重要な一歩です。

3.4 新しい標準技術への対応(DoT/DoH)

従来のDNSクエリは暗号化されずにインターネット上を流れます。これは、途中のネットワーク機器や傍受者によって、あなたがアクセスしようとしているドメイン名を知られてしまう可能性があることを意味します。

1.1.1.1は、この問題を解決するために、DNS over TLS (DoT) および DNS over HTTPS (DoH) という新しいプロトコルをサポートしています。これらのプロトコルは、DNSクエリをTLS/SSLまたはHTTPSで暗号化して送信します。

  • DNS over TLS (DoT): DNSクエリをTLSプロトコル(HTTPSの基盤となる暗号化技術)上で送信します。通常は専用のポート番号853を使用します。これにより、DNSクエリの内容が暗号化され、傍受を防ぎます。
  • DNS over HTTPS (DoH): DNSクエリをHTTPSプロトコル上で送信します。通常のウェブ通信と同じポート番号443を使用します。これにより、DNSクエリが通常のウェブトラフィックに紛れるため、DNSクエリであること自体を隠蔽する効果も期待できます。

これらの暗号化DNSプロトコルを使用することで、ISPやその他の第三者によるDNSクエリの覗き見を防ぎ、さらなるプライバシー保護を実現できます。1.1.1.1はこれらの技術にいち早く対応し、一般ユーザーが利用しやすい形で提供しています。

3.5 設定の容易さ

1.1.1.1のIPアドレスは非常に覚えやすく(1.1.1.1と1.0.0.1)、手動設定が比較的容易です。主要なOS向けには、専用の簡単な設定ツールやモバイルアプリも提供されています。

3.6 検閲やジオブロッキングの回避(限定的)

一部の国や地域、またはISPによっては、特定のウェブサイトへのアクセスをDNSレベルでブロックしている場合があります(DNSブロッキング)。ISPが提供するDNSサーバーではこれらのサイトの名前解決が行われないため、アクセスできません。1.1.1.1のようなブロックを行わない公共DNSサーバーに切り替えることで、このようなDNSレベルでのブロッキングを回避できる場合があります。ただし、これはあくまでDNSレベルの回避策であり、IPアドレスレベルでのブロッキングやその他の高度な制限に対しては効果がありません。VPNのような他の手段が必要になります。

第4章:1.1.1.1 の技術的特徴と発展形

1.1.1.1は単なる高速・プライベートなDNSサーバーというだけでなく、最新の技術を取り入れ、さらに進化を続けています。

4.1 DNSSEC検証

前述の通り、1.1.1.1は受信したDNS応答に対してDNSSEC検証をデフォルトで行います。これにより、応答が正当なオーソリティティブネームサーバーから送られてきたものであり、途中で改ざんされていないことを確認できます。検証に失敗した場合、その応答は破棄され、クライアントにはSERVFAILというエラーが返されます。これは、DNSスプーフィング攻撃からユーザーを保護する基本的なセキュリティ機能です。

4.2 DNS over TLS (DoT) と DNS over HTTPS (DoH) のサポート

従来のDNSはUDPまたはTCPのポート53を使用し、クエリ内容は平文で送信されます。これにより、ネットワーク上の誰でもあなたのDNSクエリを傍受し、あなたがアクセスしようとしているドメイン名を知ることができます。これは、プライバシーの観点から大きな問題です。

DoTとDoHは、この問題を解決するために開発されました。

  • DoT (RFC 7858): DNSクエリをTLSセッション上で送信します。ポート853を使用することが一般的です。TLSによる暗号化により、クエリ内容の傍受を防ぎます。ただし、ポート853への通信が行われていること自体はネットワーク上から認識可能です(これはDNSクエリである可能性が高いと推測されうる)。
  • DoH (RFC 8484): DNSクエリをHTTPSセッションのペイロードとして送信します。通常のHTTPS通信と同じポート443を使用します。これにより、DNSクエリが通常のウェブトラフィックに紛れるため、DNSクエリであること自体をネットワークレベルで特定されにくくするという効果があります。ファイアウォールなどでポート53や853がブロックされている環境でも利用しやすいという利点もあります。

1.1.1.1は、これらの暗号化DNSプロトコルに対応しており、対応するOSやブラウザで設定することで、より高いプライバシー保護を実現できます。現在、主要なOS(Android、Windows 10/11、macOSなど)やブラウザ(Firefox、Chrome、Edgeなど)がDoTまたはDoH、あるいはその両方をサポートし始めています。

4.3 WARP – DNSを超えた保護

Cloudflareは、1.1.1.1サービスをさらに拡張し、「WARP」というサービスを提供しています。WARPは、モバイルアプリ(iOS/Android)およびデスクトップクライアント(Windows/macOS/Linux)として提供されており、単にDNSクエリを1.1.1.1に送信するだけでなく、デバイスとCloudflareのエッジ間におけるインターネットトラフィック全体を暗号化・最適化します。

WARPはVPNに似ていますが、目的が少し異なります。一般的なVPNが「IPアドレスを隠す」「地理的な制限を回避する」ことに主眼を置くのに対し、WARPは「接続を高速化・最適化する」「すべてのトラフィックを暗号化してプライバシーを保護する」ことに焦点を当てています。WARPはWireGuardプロトコルをベースにしており、高速かつセキュアな接続を提供します。

WARPアプリをインストールすると、デフォルトでは1.1.1.1のDNSが使用されるだけでなく、あなたのデバイスからCloudflareのネットワークまでの通信全体が暗号化トンネルを通るようになります。これにより、中間者攻撃やネットワーク上での盗聴から保護されます。また、Cloudflareの広大なネットワークを経由することで、一部のウェブサイトへのアクセスが高速化される可能性もあります(WARP+という有料版ではさらに高度な最適化が行われます)。

WARPは、単にDNS設定を変更するよりも包括的なプライバシーとセキュリティの向上を提供します。特にモバイル環境では、様々なWi-Fiネットワークに接続する機会が多く、通信の安全性が確保されていない場合があるため、WARPは非常に有効な手段となります。

4.4 フィルタリングオプション (1.1.1.2 / 1.1.1.3)

1.1.1.1には、ユーザーのニーズに合わせて追加のセキュリティ機能を提供する派生サービスがあります。

  • 1.1.1.2 (Malware Blocking): 悪意のあるウェブサイトやフィッシングサイトとして知られているドメインへのアクセスをブロックします。
    • IPv4: 1.1.1.2, 1.0.0.2
    • IPv6: 2606:4700:4700::1112, 2606:4700:4700::1002
  • 1.1.1.3 (Malware + Family Blocking): 悪意のあるサイトに加え、アダルトコンテンツや暴力的なコンテンツなど、家族向けではない(成人向け)コンテンツを含むドメインへのアクセスもブロックします。
    • IPv4: 1.1.1.3, 1.0.0.3
    • IPv6: 2606:4700:4700::1113, 2606:4700:4700::1003

これらのフィルタリングオプションを利用するには、設定するDNSサーバーのIPアドレスを1.1.1.1/1.0.0.1から1.1.1.2/1.0.0.2または1.1.1.3/1.0.0.3に変更するだけです。ルーターに設定すれば、そのネットワークに接続しているすべてのデバイスにフィルタリングを適用できます。これは、家庭内のインターネット利用をより安全に管理したい場合に特に役立ちます。

第5章:1.1.1.1 の設定方法 – デバイス別・ルーター別ガイド

1.1.1.1を利用するには、お使いのデバイスまたはネットワーク機器のDNS設定を変更する必要があります。ここでは、主要なプラットフォームでの設定方法を詳しく解説します。設定を変更する前に、現在のDNS設定をメモしておくと、問題が発生した場合に元に戻すことができます。

5.1 デバイスごとの設定

デバイスごとに設定すると、そのデバイスからの通信のみが1.1.1.1を利用するようになります。

5.1.1 Windows 10/11 での設定
  1. コントロールパネルを開く: スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択、「control」と入力してEnterキーを押します。
  2. ネットワークの状態とタスクの表示: コントロールパネルで「ネットワークとインターネット」→「ネットワークと共有センター」と進みます。
  3. アダプターの設定の変更: 左側のメニューから「アダプターの設定の変更」をクリックします。
  4. ネットワークアダプターのプロパティを開く: 現在インターネットに接続しているアダプター(Wi-Fiまたはイーサネット)を右クリックし、「プロパティ」を選択します。
  5. IPバージョンを選択:
    • IPv4を設定する場合:「インターネットプロトコルバージョン4 (TCP/IPv4)」を選択し、「プロパティ」をクリックします。
    • IPv6を設定する場合:「インターネットプロトコルバージョン6 (TCP/IPv6)」を選択し、「プロパティ」をクリックします。(通常はIPv4とIPv6の両方を設定することを推奨します)
  6. DNSサーバーアドレスの入力: 「次のDNSサーバーのアドレスを使う(S):」を選択します。
    • 優先DNSサーバー: 1.1.1.1 (IPv4) または 2606:4700:4700::1111 (IPv6) を入力します。
    • 代替DNSサーバー: 1.0.0.1 (IPv4) または 2606:4700:4700::1001 (IPv6) を入力します。
    • (フィルタリングオプションを使用する場合は、代わりに1.1.1.2/1.0.0.2または1.1.1.3/1.0.0.3のIPアドレスを入力します。)
  7. 設定の保存: 「OK」をクリックしてウィンドウを閉じます。ネットワークアダプターのプロパティウィンドウも「OK」をクリックして閉じます。
  8. 適用: 設定はすぐに反映されるはずですが、念のためネットワーク接続を一度無効化してから再度有効化するか、コンピューターを再起動すると確実に反映されます。
5.1.2 macOS での設定
  1. システム設定を開く: Appleメニューから「システム設定」(または「システム環境設定」)を開きます。
  2. ネットワークを選択: サイドバーから「ネットワーク」を選択します。
  3. 接続を選択: 左側のリストから、現在使用しているネットワーク接続(Wi-FiまたはEthernet)を選択します。
  4. 詳細を開く: 右側の「詳細…」ボタンをクリックします。
  5. DNSタブを選択: 上部のタブから「DNS」を選択します。
  6. DNSサーバーを追加: 左下の「+」ボタンをクリックします。
    • IPv4: 1.1.1.1
    • IPv4 (代替): 1.0.0.1
    • IPv6: 2606:4700:4700::1111
    • IPv6 (代替): 2606:4700:4700::1001
      を入力します。(フィルタリングオプションを使用する場合は、該当するIPアドレスを入力します。)
  7. 古いDNSを削除: リストに表示されているISPなどの古いDNSサーバーは、選択して左下の「-」ボタンをクリックして削除します。CloudflareのDNSがリストの一番上に来るようにします。
  8. 設定の保存: 「OK」をクリックし、ネットワーク設定画面に戻って「適用」をクリックします。
5.1.3 iOS (iPhone/iPad) での設定

iOSデバイスでは、特定のWi-Fiネットワークに対してのみDNS設定を変更できます。モバイルデータ通信については、別途WARPアプリを使用するのが一般的です。

  1. 設定を開く: ホーム画面から「設定」アプリを開きます。
  2. Wi-Fiを選択: 「Wi-Fi」をタップします。
  3. 情報アイコンをタップ: 接続しているWi-Fiネットワーク名の右側にある情報アイコン「ⓘ」をタップします。
  4. DNS設定を開く: 下にスクロールし、「DNS」をタップします。
  5. 手動を選択: デフォルトの「自動」から「手動」に切り替えます。
  6. サーバーを追加: 「サーバーを追加」をタップし、DNSサーバーのIPアドレスを入力します。
    • 1.1.1.1 (IPv4)
    • 1.0.0.1 (IPv4)
    • 2606:4700:4700::1111 (IPv6)
    • 2606:4700:4700::1001 (IPv6)
      を入力します。(フィルタリングオプションを使用する場合は、該当するIPアドレスを入力します。)
  7. 古いDNSを削除: デフォルトで表示されている古いDNSサーバーは、左にスワイプして「削除」できます。
  8. 設定の保存: 右上の「保存」をタップします。

iOSデバイス全体で1.1.1.1を使用したい場合、特にモバイルデータ通信を含む場合は、App Storeから「1.1.1.1: Faster & Safer Internet」アプリ(WARPアプリ)をインストールして使用することを推奨します。

5.1.4 Android での設定 (プライベートDNS – DoT)

Android 9 Pie以降では、「プライベートDNS」機能を使用してDNS over TLS (DoT) を簡単に設定できます。

  1. 設定を開く: アプリ一覧または通知シェードから「設定」を開きます。
  2. ネットワークとインターネット: 「ネットワークとインターネット」(または類似の項目名)をタップします。
  3. プライベートDNS: 「プライベートDNS」をタップします。
  4. プライベートDNS プロバイダのホスト名: 「プライベートDNS プロバイダのホスト名」を選択します。
  5. ホスト名の入力: テキストボックスに以下のホスト名を入力します。
    • 通常版: one.one.one.one
    • Malwareブロック版: one.dot. rèdire.to
    • Familyブロック版: family.dot. rèdire.to
  6. 保存: 「保存」をタップします。

これにより、デバイスからのDNSクエリは自動的に指定したホスト名(CloudflareのDoTサーバー)に対して暗号化されて送信されるようになります。古いAndroidバージョンや、特定のWi-Fiネットワークでのみ設定したい場合は、Wi-Fi設定の詳細から手動でIPアドレスを入力する方法もありますが、DoTがサポートされている場合はこちらを推奨します。Androidデバイス全体でより包括的な保護を求める場合は、Google Playストアから「1.1.1.1 + WARP: Safer Internet」アプリをインストールして使用することを推奨します。

5.1.5 Linux での設定

Linux環境でのDNS設定は、ディストリビューションやネットワーク管理ツールによって異なります。一般的な方法としては、/etc/resolv.conf ファイルを編集する方法がありますが、これは一時的な設定になることが多く、再起動やネットワークサービスの再起動で元に戻る場合があります。より永続的な設定には、NetworkManagerやsystemd-resolvedなどのネットワーク管理ツールを使用するのが一般的です。

/etc/resolv.conf を手動編集 (一時的):

ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します(sudo 権限が必要です)。

bash
sudo nano /etc/resolv.conf

ファイルの内容を以下のように編集または追記します。既存の nameserver 行を削除またはコメントアウト(行頭に # を追加)してから、新しい行を追加します。

“`conf
nameserver 1.1.1.1
nameserver 1.0.0.1

IPv6も使用する場合

nameserver 2606:4700:4700::1111

nameserver 2606:4700:4700::1001

“`

保存してエディタを閉じます(nanoの場合は Ctrl+O, Enter, Ctrl+X)。この方法は、/etc/resolv.conf がネットワーク管理ツールによって管理されている場合、永続的ではないことに注意してください。

NetworkManager を使用 (GUIまたはnmcli):

多くのデスクトップ環境で使用されているNetworkManagerでは、GUIからネットワーク接続の設定を開き、IPv4またはIPv6タブでDNSサーバーを手動で設定できます。「自動 (DHCP)」ではなく「手動」または「DHCPアドレスのみ」を選択し、DNSサーバーのアドレスを入力します。

コマンドラインツールの nmcli を使用することもできます。例:

bash
nmcli connection modify "Wi-Fi connection name" ipv4.dns "1.1.1.1 1.0.0.1"
nmcli connection modify "Wi-Fi connection name" ipv6.dns "2606:4700:4700::1111 2606:4700:4700::1001"
nmcli connection up "Wi-Fi connection name"

"Wi-Fi connection name" は、実際のネットワーク接続名に置き換えてください (nmcli connection show で確認できます)。

systemd-resolved を使用:

systemd-resolved を使用している場合は、/etc/systemd/resolved.conf を編集します。

bash
sudo nano /etc/systemd/resolved.conf

[Resolve] セクションに以下の行を追加または編集します。

“`conf
[Resolve]
DNS=1.1.1.1 1.0.0.1 2606:4700:4700::1111 2606:4700:4700::1001

FallbackDNS=

“`

ファイルを保存してエディタを閉じたら、systemd-resolved サービスを再起動します。

bash
sudo systemctl restart systemd-resolved

Linuxでの設定は、環境に大きく依存するため、お使いのディストリビューションやネットワーク設定に合わせて適切な方法を選択してください。

5.2 ルーターでの設定

ルーターでDNS設定を変更すると、そのルーターに接続しているすべてのデバイス(PC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機、スマートテレビなど)からのDNSクエリが自動的に1.1.1.1経由になります。これが最も簡単で効果的な方法です。

手順の概要:

  1. ルーターの管理画面にアクセス: ウェブブラウザを開き、ルーターのIPアドレス(通常は 192.168.1.1 または 192.168.0.1 など)を入力してEnterキーを押します。ルーターのマニュアルを確認するか、ネットワーク設定でデフォルトゲートウェイのアドレスを確認してください。
  2. ログイン: ルーターのユーザー名とパスワードを入力してログインします。デフォルトのログイン情報はルーターのマニュアルや本体に記載されていることが多いですが、セキュリティのために初期設定から変更している場合は、ご自身で設定した情報を入力してください。
  3. DNS設定項目を探す: ルーターの設定画面はメーカーや機種によって大きく異なります。「WAN設定」「インターネット設定」「DHCP設定」「詳細設定」などの項目内にDNS設定があることが多いです。「DNS Server」「Primary DNS」「Secondary DNS」といったラベルを探してください。
  4. DNSサーバーアドレスを入力: ISPから自動的に割り当てられているDNS設定(「DNSサーバーを自動的に取得する」や「DHCPから取得」など)を解除し、「手動で指定する」や「次のDNSサーバーアドレスを使用する」などを選択します。
    • プライマリDNS (IPv4): 1.1.1.1
    • セカンダリDNS (IPv4): 1.0.0.1
    • プライマリDNS (IPv6): 2606:4700:4700::1111
    • セカンダリDNS (IPv6): 2606:4700:4700::1001
      を入力します。(フィルタリングオプションを使用する場合は、該当するIPアドレスを入力します。)
  5. 設定を保存(適用): 入力した設定を保存します。多くの場合、「適用」「保存」「設定を反映」などのボタンをクリックする必要があります。
  6. ルーターの再起動: 設定変更を確実に反映させるために、ルーターを再起動することを推奨します。ルーターの管理画面から再起動のオプションを選択するか、電源ケーブルを抜いて10秒ほど待ってから再度差し込みます。

注意点:

  • ルーターの設定画面の構成は千差万別です。マニュアルを参照するか、メーカーのウェブサイトで情報を見つけるのが最も確実です。
  • 一部のルーターでは、DNS設定を手動で変更できない場合があります。
  • ルーターの設定を変更すると、ネットワーク全体に影響します。慎重に行ってください。

5.3 ブラウザでの設定 (DoH)

一部のブラウザは、OSやルーターの設定とは別に、独自のDoH設定を持つことができます。これにより、そのブラウザからのDNSクエリのみを暗号化して送信できます。

5.3.1 Firefox での設定

Firefoxは、DoHに早期から対応しており、デフォルトプロバイダの一つとしてCloudflare (1.1.1.1) を選択できます。

  1. 設定を開く: Firefoxを開き、右上のメニューボタン(横3本線)をクリックし、「設定」(または「環境設定」)を選択します。
  2. 一般設定: 左側のメニューから「一般」を選択します。
  3. ネットワーク設定: 下にスクロールし、「ネットワーク設定」の項目にある「設定」ボタンをクリックします。
  4. DNS over HTTPS を有効化: ウィンドウ下部にある「DNS over HTTPS を有効にする」にチェックを入れます。
  5. プロバイダーを選択: ドロップダウンメニューから「Cloudflare」を選択します。(カスタムURLを指定することも可能です)
  6. 設定の保存: 「OK」をクリックしてウィンドウを閉じます。

これにより、FirefoxからのDNSクエリはHTTPSで暗号化され、Cloudflareの1.1.1.1に送信されるようになります。

5.3.2 Chrome および Edge での設定

ChromeやEdge(Chromiumベース)も、DoHをサポートしています。通常、OSレベルでDoHが設定されている場合はそちらが優先されますが、ブラウザ単体で設定することも可能です。

  1. 設定を開く: ブラウザを開き、右上のメニューボタン(縦3点リーダー)をクリックし、「設定」を選択します。
  2. プライバシーとセキュリティ: 左側のメニューから「プライバシーとセキュリティ」を選択します。
  3. セキュリティ: 「セキュリティ」をクリックします。
  4. セキュリティで保護されたDNSを使用: 「セキュリティで保護されたDNSを使用する」のトグルをオンにします。
  5. プロバイダーを選択: 「他のプロバイダーを選択する」を選択し、ドロップダウンメニューから「Cloudflare (1.1.1.1)」を選択します。(カスタムURLを指定することも可能です)

これで、ChromeまたはEdgeからのDNSクエリがDoHで送信されるようになります。

5.4 WARPアプリによる設定 (モバイル/デスクトップ)

最も簡単な設定方法の一つは、Cloudflareが提供するWARPアプリを使用することです。このアプリは、DNS設定だけでなく、トラフィック全体の暗号化(WARP機能)も提供します。単にDNSだけを使いたい場合は、アプリ内でWARP機能をオフにすることも可能です。

  1. アプリのダウンロード: 各プラットフォームのアプリストアまたはCloudflareのウェブサイトから「1.1.1.1: Faster & Safer Internet」(または「Cloudflare WARP」)アプリをダウンロードします。
    • iOS App Store
    • Android Google Playストア
    • Windows/macOS/Linux (Cloudflareウェブサイトからダウンロード)
  2. インストールと起動: アプリをインストールし、起動します。
  3. 指示に従う: 初回起動時には、プライバシーポリシーへの同意などが求められますので、指示に従います。
  4. 有効化: アプリのメイン画面にあるスイッチ(通常は中央に大きく表示されている)をタップ/クリックしてオンにします。
  5. プロファイルのインストール(モバイル): iOSやAndroidでは、VPN構成プロファイルの追加を求められる場合があります。許可してください。
  6. WARP機能の調整: アプリによっては、WARP機能をオンにするか、1.1.1.1 DNSのみを使用するかを選択できる場合があります。DNSのみを使用したい場合は、設定を探してWARP機能を無効化してください。

WARPアプリを使用すると、OSのネットワーク設定を手動で変更する必要がなく、簡単に1.1.1.1(またはWARP)を利用開始できます。モバイル環境で特に推奨される方法です。

第6章:設定の確認方法 – 1.1.1.1 が使えているかチェック

DNS設定を変更した後、実際に1.1.1.1が使用されていることを確認することが重要です。いくつかの方法があります。

6.1 Cloudflare の確認ページを利用

最も簡単で公式な確認方法は、Cloudflareが提供している専用の確認ページにアクセスすることです。

  1. ウェブブラウザを開き、以下のURLにアクセスします。
    https://cloudflare.com/tools/dns/ または https://1.1.1.1/help
  2. ページを開くと、自動的にあなたのDNS設定がチェックされます。
  3. 「Using 1.1.1.1」または「You are connected to 1.1.1.1」といったメッセージが表示され、「Yes」と表示されていれば、正常に1.1.1.1を使用できています。
  4. もし「No」と表示された場合は、設定が正しく行われていないか、何らかの問題が発生しています。

このページでは、DNS over TLS (DoT) や DNS over HTTPS (DoH) が有効になっているかどうかも確認できます。

6.2 コマンドラインツールを使用

より技術的な方法ですが、コマンドラインツールを使って、どのDNSサーバーが使用されているか、また特定のドメインの名前解決がどのように行われているかを確認できます。

6.2.1 Windows (コマンドプロンプトまたはPowerShell)

コマンドプロンプトまたはPowerShellを開き、nslookup コマンドを使用します。

  1. DNSサーバーの確認: 以下のコマンドを入力してEnterキーを押します。
    cmd
    nslookup

    Default ServerAddress の項目に、現在使用されているDNSサーバーのIPアドレスが表示されます。ここに 1.1.1.11.0.0.1 が表示されていればOKです。最初にISPのDNSサーバーが表示されることもありますが、そのサーバーが1.1.1.1にクエリを転送していれば結果的に1.1.1.1経由の名前解決が行われます。より確実に確認するには、特定のDNSサーバーを指定してクエリを行います。
    cmd
    nslookup example.com 1.1.1.1

    このコマンドは、明示的に1.1.1.1サーバーに対して example.com のIPアドレスを問い合わせます。正常に応答が返ってくれば、1.1.1.1が利用可能であることを示しています。
  2. 特定のドメインの名前解決:
    cmd
    nslookup google.com

    このコマンドは、現在設定されているデフォルトのDNSサーバーを使って google.com のIPアドレスを問い合わせます。表示されるサーバーアドレスを確認してください。
6.2.2 macOS および Linux (ターミナル)

ターミナルを開き、dig コマンドを使用します。

  1. DNSサーバーの確認: 以下のコマンドを入力してEnterキーを押します。
    bash
    dig example.com

    出力結果の SERVER: の行に、クエリに使用されたDNSサーバーのIPアドレスとポート番号が表示されます。global-options: +cmd の後に表示されるサーバーアドレスが、現在システムが使用しているリカーシブリゾルバーです。ここに 1.1.1.11.0.0.1 が表示されていればOKです。
    より確実に確認するには、特定のDNSサーバーを指定してクエリを行います。
    bash
    dig example.com @1.1.1.1

    このコマンドは、明示的に1.1.1.1サーバーに対して example.com のIPアドレスを問い合わせます。正常に応答が返ってくれば、1.1.1.1が利用可能であることを示しています。

これらのコマンドラインツールは、DNSがどのように機能しているかを理解するのにも役立ちます。特に dig コマンドは詳細な情報(クエリ時間、応答のセクションなど)を表示できるため、トラブルシューティングにも有用です。

第7章:1.1.1.1 のさらなる活用法 – WARPとフィルタリングオプション

1.1.1.1は単にIPアドレスを設定するだけでなく、様々な方法で活用できます。

7.1 Cloudflare WARP アプリの活用

前述の通り、WARPアプリは単なるDNS設定ツール以上のものです。

  • モバイルデバイスでの包括的な保護: 公衆Wi-Fiなど、安全性が確保されていないネットワークに接続する際に、WARPをオンにするだけでデバイスからのすべての通信(ウェブ閲覧だけでなく、アプリの通信なども含む)が暗号化されます。これにより、盗聴や中間者攻撃のリスクを大幅に低減できます。
  • デスクトップ環境での利用: Windows、macOS、Linux向けのWARPクライアントも提供されており、デスクトップPCやノートPCでも同様の保護と最適化の恩恵を受けられます。
  • WARP+ による速度向上: WARP+は有料オプションですが、CloudflareのArgoというルーティング最適化技術を利用して、インターネット上の最適な経路を選択し、接続速度をさらに向上させます。通信量の多いユーザーや、より高速な接続を求めるユーザーに適しています。
  • WARP Without Boundries: 一部のエンタープライズ向けサービスでは、WARPを使って企業ネットワークへのセキュアなアクセス(Zero Trustアクセス)を実現することも可能です。

WARPアプリは、特にモバイル環境で手軽にセキュリティとプライバシーを強化したい場合に非常に強力なツールです。インストールしてスイッチをオンにするだけで、1.1.1.1 DNSの使用と通信の暗号化が同時に行われます。

7.2 フィルタリングオプション (1.1.1.2 / 1.1.1.3) の活用

1.1.1.2 (Malware Blocking) および 1.1.1.3 (Malware + Family Blocking) は、家庭や小規模オフィスでのインターネット利用において、手軽に基本的なセキュリティとコンテンツフィルタリングを導入したい場合に役立ちます。

  • 家庭での利用: 小さな子供がいる家庭では、1.1.1.3をルーターに設定することで、意図せずアダルトサイトなどにアクセスしてしまうリスクを減らすことができます。これは完璧なフィルタリングではありませんが、第一歩として有効です。
  • 小規模オフィス: 悪意のあるサイトへのアクセスをDNSレベルでブロックすることで、フィッシング詐欺やマルウェア感染のリスクを低減できます。
  • 設定の容易さ: これらのオプションの利用方法は、単にルーターやデバイスのDNS設定を対応するIPアドレスに変更するだけです。特別なソフトウェアのインストールや複雑な設定は不要です。

これらのフィルタリングオプションは、OpenDNSのような他のフィルタリングDNSサービスと比較して、高速性とプライバシー保護という1.1.1.1本来の利点を維持しつつ、追加のセキュリティレイヤーを提供します。ただし、これらのフィルタリングはあくまで「既知の悪意のある/成人向けドメインリスト」に基づいているため、すべての有害なコンテンツをブロックできるわけではないことに注意が必要です。

第8章:他の主要な公共DNSサービスとの比較

1.1.1.1の他に、無料で利用できる公共DNSサービスはいくつか存在します。ここでは、代表的なものと比較し、1.1.1.1の特徴を改めて明確にします。

サービス 提供元 IPv4アドレス IPv6アドレス プライバシーポリシー (ログ) 高速性 セキュリティ (DNSSEC) 暗号化DNS (DoT/DoH) フィルタリングオプション
1.1.1.1 Cloudflare 1.1.1.1, 1.0.0.1 2606:4700:4700::1111, ::1001 個人情報ログなし, 24h破棄 非常に高速 標準で検証 標準でサポート あり (1.1.1.2/1.1.1.3)
Google Public DNS Google 8.8.8.8, 8.8.4.4 2001:4860:4860::8888, ::8844 個人情報削除後, 一部ログ保持 (24-48h) 高速 標準で検証 標準でサポート なし
OpenDNS Home Cisco 208.67.222.222, 208.67.220.220 2620:0:ccc::2, 2620:0:ccd::2 商用サービスの一部としてログ利用の可能性あり 平均的 オプション 限定的 (一部サポート) 豊富 (カスタマイズ可)
Quad9 Quad9 9.9.9.9, 149.112.112.112 2620:fe::fe, 2620:fe::9 個人情報ログなし 高速 標準で検証+脅威ブロック 標準でサポート 標準で脅威ブロック

比較のポイント:

  • プライバシー: 1.1.1.1とQuad9は、ユーザーのプライバシー保護を非常に重視しており、個人を特定できるログを基本的に保持しません。Google Public DNSは一部の情報を短期間保持します。OpenDNSは、商用サービスとの関連からログの利用に関するポリシーがより複雑な場合があります。
  • 速度: 1.1.1.1は、Cloudflareの広範なインフラにより、多くの地域で最速クラスの応答速度を誇ります。Google Public DNSも非常に高速です。
  • セキュリティ: 1.1.1.1とGoogle Public DNSはDNSSEC検証をデフォルトで行います。Quad9はこれに加え、既知の悪意のあるドメインリストに基づいてクエリをブロックする機能をデフォルトで提供します(これが主な差別化ポイントです)。OpenDNSも同様にフィルタリング機能が充実していますが、DNSSEC検証は設定による場合があります。
  • 暗号化DNS: 1.1.1.1、Google Public DNS、Quad9は、DoTおよびDoHを標準でサポートしています。OpenDNSはこれに対してやや遅れています。
  • フィルタリング: OpenDNSはカスタマイズ可能な詳細なフィルタリング機能が特徴です。1.1.1.1は簡易的なマルウェア/ファミリーブロックオプションを提供します。Quad9はセキュリティ脅威のブロックに特化しています。

結論として:

  • 最大限のプライバシーと速度を求めるなら: 1.1.1.1が非常に有力な選択肢です。
  • プライバシーも重視しつつ、脅威ブロックもデフォルトで欲しいなら: Quad9が魅力的です。
  • Googleのサービスを信頼しており、高速性とDNSSEC検証を求めるなら: Google Public DNSは安定した選択肢です。
  • 柔軟でカスタマイズ可能なコンテンツフィルタリングが必要なら: OpenDNSが適しているかもしれません。

1.1.1.1は、そのシンプルで強力なプライバシーポリシー、突出した速度、そして最新の暗号化DNSプロトコルへの対応により、多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。

第9章:1.1.1.1 を利用する際の注意点と限界

1.1.1.1は多くのメリットを提供しますが、万能ではありません。利用する上で知っておくべき注意点と限界があります。

9.1 1.1.1.1 への「信頼」

1.1.1.1のプライバシー保護は、Cloudflareの「個人を特定可能なログを記録しない」という公約に基づいています。しかし、これは結局のところ、Cloudflareという企業を信頼することに依存します。彼らのポリシーが変更されたり、政府からの強制力のある要請があった場合にどうなるか、といった点は常に考慮に入れる必要があります。Cloudflareは透明性レポートなどを公開してユーザーからの信頼を得ようとしていますが、完璧な保証はありません。

9.2 完全な匿名性は得られない

1.1.1.1はDNSクエリのプライバシーを保護しますが、あなたのIPアドレスを隠すわけではありません。あなたがウェブサイトにアクセスする際、そのウェブサイトのサーバーはあなたのIPアドレスを知ることができます。また、ISPはあなたがCloudflareのDNSサーバー(1.1.1.1など)と通信していることは知っています。つまり、1.1.1.1を使っても、あなたのインターネット活動が完全に匿名になるわけではありません。完全な匿名性を求める場合は、VPNやTorのようなサービスを利用する必要があります。

9.3 WARPはVPNではない

WARPはトラフィックを暗号化し最適化しますが、一般的なVPNのように「接続元の地理的な位置を偽装する」ことには主眼を置いていません(WARP+の一部機能を除く)。WARPの主な目的は、高速でセキュアな接続経路を提供することです。ジオブロッキング回避など、VPN本来の用途とは異なるため、目的に応じて使い分ける必要があります。

9.4 一部のローカルネットワークリソースへの影響

企業や学校などのネットワークでは、内部ネットワークのサーバー(イントラネットのウェブサイトやファイルサーバーなど)の名前解決に、ローカルのDNSサーバーを使用している場合があります。デバイスやルーターのDNS設定を1.1.1.1に変更すると、これらのローカルリソースの名前解決ができなくなる可能性があります。このような環境では、ネットワーク管理者に相談するか、ローカルDNSサーバーを優先しつつ、それ以外の名前解決に1.1.1.1を使用するような設定(より高度な設定が必要)を検討する必要があります。

9.5 設定による互換性の問題(稀)

非常に稀なケースですが、特定のネットワーク環境や古いデバイスで、手動でのDNS設定変更が予期しない問題を引き起こす可能性がゼロではありません。ほとんどの環境では問題なく機能しますが、もし設定後にインターネット接続が不安定になったり、特定のサイトにアクセスできなくなったりした場合は、一時的に元のDNS設定に戻して問題が解消するか確認することが推奨されます。

9.6 フィルタリングオプションの限界

1.1.1.2や1.1.1.3のフィルタリングは、あくまで「既知のドメインリスト」に基づいています。新しい悪意のあるサイトや、リストに載っていない成人向けコンテンツなど、すべての有害なコンテンツを完全にブロックできるわけではありません。特に子供のインターネット利用を管理する場合は、フィルタリングDNSだけでなく、ペアレンタルコントロールソフトウェアや利用時間制限など、複数の対策を組み合わせることが重要です。

第10章:プライバシーを取り巻くDNSの今後

インターネットにおけるプライバシーへの意識の高まりとともに、DNSを取り巻く技術も進化を続けています。1.1.1.1がDoT/DoHを普及させたように、今後のDNSはさらなるプライバシーとセキュリティの向上を目指すでしょう。

10.1 ODoH (Oblivious DNS over HTTPS)

現在開発が進められている技術の一つに、ODoH (Oblivious DNS over HTTPS) があります。DoHはクエリを暗号化しますが、DoHサーバー(例: 1.1.1.1)はクエリの発信元IPアドレスを知ることができます。ODoHは、間にプロキシサーバーを介在させることで、DNSサーバーがクエリ内容と発信元IPアドレスの両方を知ることができないように設計されています。これにより、DNSクエリにおけるプライバシーがさらに強化されることが期待されています。CloudflareもODoHの推進と実装に積極的に取り組んでいます。

10.2 デフォルトでの暗号化DNSの普及

オペレーティングシステムやブラウザにおいて、DoTやDoHがデフォルトで有効化されたり、簡単に設定できるようになったりすることで、ユーザーが意識することなく安全なDNSを利用できる環境が広がっていくでしょう。AndroidのプライベートDNS機能や、主要ブラウザのDoH設定はその流れを加速させています。

10.3 ゼロトラストネットワークとDNS

企業ネットワークなどでは、ユーザーやデバイスの場所に関わらず、すべての通信を信頼しない「ゼロトラスト」の考え方が広まっています。WARPのような技術は、このようなゼロトラスト環境において、安全なDNS解決やアプリケーションへのアクセスを提供する基盤として重要な役割を果たしていくと考えられます。

これらの進化は、私たちがより安全でプライベートな形でインターネットを利用できるようになる未来を示唆しています。1.1.1.1は、その最前線に立つサービスの一つと言えるでしょう。

結論:1.1.1.1 を活用して、より良いインターネット体験を

これまでの解説で見てきたように、Cloudflareの1.1.1.1は単なる別の公共DNSサーバーではありません。その最も重要な価値は、ユーザーのプライバシーを第一に考え、高速かつセキュアな名前解決を提供することにあります。ISPによる閲覧履歴の把握を防ぎたい、ウェブサイトの読み込みを少しでも速くしたい、そして最新の暗号化DNS技術を使ってより安全にインターネットを利用したい、そう考える多くのインターネットユーザーにとって、1.1.1.1は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

デバイスごとの簡単な設定から、ルーター全体での適用、さらにWARPアプリによる包括的な保護まで、様々なニーズに合わせた導入方法が用意されています。特にモバイル環境でのWARPアプリは、手軽にセキュリティとプライバシーを向上させる強力な手段です。また、1.1.1.2や1.1.1.3といったフィルタリングオプションは、家庭での基本的なコンテンツフィルタリングとしても役立ちます。

もちろん、1.1.1.1も完璧ではありません。Cloudflareへの信頼、完全な匿名性ではないこと、ローカルネットワークでの潜在的な問題など、考慮すべき点もあります。しかし、多くの一般的なインターネット利用者にとって、ISPが提供するデフォルトのDNSサーバーから1.1.1.1に切り替えることによるメリットは、デメリットを大きく上回ることが多いでしょう。

もしあなたがまだISPのDNSサーバーを使っているなら、ぜひこの機会に1.1.1.1を試してみてください。設定は思ったより簡単で、インターネット体験の体感速度向上や、何よりもプライバシー保護という面で、確かな変化を感じられるはずです。

デジタルプライバシーがますます重要視される現代において、自分のインターネット通信がどのように扱われるかを選択することは、自己防衛の重要な一歩です。1.1.1.1は、その一歩を簡単に、そして効果的に踏み出すための優れたツールと言えるでしょう。あなたのインターネットライフを、より安全で快適なものにするために、ぜひ1.1.1.1の導入を検討してみてください。

付録:トラブルシューティングとFAQ

Q1: 1.1.1.1に設定したのにインターネットに繋がらない!

A1: 設定ミスがないか、入力したIPアドレス(1.1.1.1, 1.0.0.1など)が正しいか再確認してください。特にIPv4とIPv6のアドレスを混同していないか注意してください。設定を保存した後、デバイスまたはルーターを再起動してみてください。一時的に元のDNS設定に戻してみて、インターネットに繋がるか確認することも有効です。もし元の設定で繋がるのであれば、DNS設定に問題がある可能性が高いです。ルーターの設定画面で「DNSサーバーを自動的に取得する」に戻すか、デバイスの設定で「自動」に戻してください。

Q2: 1.1.1.1に設定したのにCloudflareの確認ページで「No」と表示される。

A2: 設定が正しく反映されていない可能性があります。デバイスやルーターの再起動を試してください。また、ブラウザのキャッシュやOSのDNSキャッシュが古い情報を保持している場合があります。
* Windows: コマンドプロンプトで ipconfig /flushdns と実行。
* macOS: ターミナルで sudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponder と実行。
* Linux: ディストリビューションによるが、sudo systemd-resolve --flush-cachessudo /etc/init.d/nscd reload など。
WARPアプリを使用している場合は、アプリが正しく動作しているか確認してください。

Q3: 1.1.1.1を使ってもウェブサイトの表示が遅い気がする。

A3: DNSの名前解決はウェブサイト表示にかかる時間のごく一部です。ウェブサイト自体のサーバー応答時間、ネットワーク帯域幅、デバイスの処理能力など、他の要因も速度に影響します。1.1.1.1が最速のDNSサーバーの一つであることは独立した測定で示されていますが、環境によっては劇的な変化が見られない場合もあります。特にすでに高速なISP回線やDNSを使用している場合は、体感的な違いは小さくなる可能性があります。

Q4: 1.1.1.1に設定すると、ISPの速度測定サイトで速度が遅く表示されることがあるのはなぜ?

A4: ISPの速度測定サイトは、通常、そのISPのネットワーク内にある測定サーバーに対して速度測定を行います。この際に、名前解決にISPのDNSサーバーを使用することを前提としている場合があります。1.1.1.1を使用すると、名前解決の経路が変わるため、測定方法によっては正確な速度が測れない、あるいは遅く表示されるといった現象が発生することがあります。これは実際のインターネット速度が遅くなったわけではなく、測定方法によるものと考えられます。CloudflareのSpeed Test (https://speed.cloudflare.com/) など、ISPに依存しない速度測定サイトを利用してみてください。

Q5: 1.1.1.2 や 1.1.1.3 のフィルタリングはどの程度信頼できますか?

A5: これらのフィルタリングは、Cloudflareや提携パートナーが集めた既知の悪意のあるドメインや成人向けコンテンツのドメインリストに基づいています。これにより、一般的な脅威や明らかな成人向けコンテンツへのアクセスをブロックする効果は期待できます。しかし、新しいサイトや巧妙に偽装されたサイト、画像や動画そのもののコンテンツ内容はチェックしないため、完璧な保護ではありません。特に家庭での利用では、子供の年齢やリテラシーに合わせて、他のペアレンタルコントロール手段と組み合わせることを強く推奨します。

Q6: WARPアプリを使えばVPNは不要ですか?

A6: WARPはVPNと似ていますが、目的が異なります。WARPは主に通信の暗号化と最適化を提供し、インターネットトラフィックのプライバシーとセキュリティを強化します。一方、多くのVPNは「IPアドレスを隠す」「地理的な位置を偽装する」ことに重点を置いています。海外のコンテンツにアクセスするためや、自分の位置情報を完全に隠したいという目的であれば、VPNの方が適している場合があります。WARPは「より安全で速いインターネット接続」を目指すものであり、厳密な匿名性や地理的な制限回避が主目的のVPNとは使い分ける必要があります。


これで、Cloudflare 1.1.1.1に関する解説、設定方法、活用法を網羅した詳細な記事は完成です。約5000語の要件を満たしているかと思います。


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