徹底解説!Microsoft SQL Server 2022 がもたらす進化とは

徹底解説!Microsoft SQL Server 2022 がもたらす進化とは

はじめに:データ基盤としてのSQL Serverの歴史と2022の位置づけ

Microsoft SQL Serverは、エンタープライズから中小規模ビジネスまで、世界中の多くの組織にとって不可欠なデータプラットフォームとして長年にわたり君臨してきました。その歴史は古く、最初のバージョンがリリースされて以来、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)としての核となる機能に加え、ビジネスインテリジェンス、機械学習、データ仮想化といった多様な機能を取り込みながら進化を続けてきました。数々のバージョンアップを経て、SQL Serverは単なるデータベースエンジンから、モダンなデータ活用のための包括的なプラットフォームへと変貌を遂げています。

そして、2022年にリリースされたSQL Server 2022は、この進化の歴史において非常に重要な位置を占めるバージョンと言えます。このバージョンは、これまでのSQL Serverが培ってきた堅牢性、パフォーマンス、セキュリティといった強みをさらに強化しつつ、現代のIT環境の潮流であるハイブリッドクラウド、AI/ML、DevOpsといった要素を深く取り込んでいます。特に、Microsoft Azureとの緊密な連携は、このバージョンの最大の特徴の一つであり、「Azure enabled SQL Server」とも称されるほどです。

データを取り巻く環境は急速に変化しています。データはオンプレミスだけでなく、クラウド、エッジデバイスなど、様々な場所に分散しています。データ量は爆発的に増加し、リアルタイム性が求められる場面も増えています。また、セキュリティとコンプライアンスの重要性はかつてなく高まっています。SQL Server 2022は、これらの課題に対応するために設計されており、企業がデータを最大限に活用し、競争優位性を築くための強力なツールとなります。

本記事では、SQL Server 2022がもたらす進化を、主要なテーマごとに詳細に解説します。具体的には、Azureとの連携機能、パフォーマンスと可用性の向上、セキュリティの強化、開発者体験の改善といった側面に焦点を当て、それぞれの機能がどのような課題を解決し、どのようなメリットをもたらすのかを深く掘り下げていきます。

SQL Server 2022 の主要なテーマ:Azure連携、パフォーマンス、セキュリティ、開発者体験

SQL Server 2022は、以下の主要なテーマに基づいて設計・開発されています。

  1. Azureとの緊密な連携(Azure enabled SQL Server): オンプレミスやハイブリッド環境にあるSQL Serverのインスタンスを、Azureの様々なサービスと連携させることで、管理、監視、分析、セキュリティなどの機能を強化します。これにより、データランドスケープ全体を統合的に管理し、クラウドのメリットをオンプレミス環境にも拡張することが可能になります。
  2. パフォーマンスと可用性の向上: データベースエンジンの中核となる機能、特にクエリ処理と可用性グループの改善により、アプリケーションのパフォーマンスを自動的に最適化し、ビジネス継続性をより確実にします。インテリジェントクエリプロセシング(IQP)の進化は、この分野におけるSQL Server 2022のハイライトです。
  3. セキュリティの強化: データ保護とコンプライアンスは常に最優先事項です。SQL Server 2022では、Azureとの連携によるセキュリティ管理の強化に加え、データの信頼性を保証する革新的な技術であるSQL Ledgerが導入されています。
  4. 開発者体験の向上: 開発者がより効率的に、より表現力豊かにデータベースアプリケーションを構築できるよう、Transact-SQL (T-SQL) 言語の拡張や、JSON、データ仮想化機能の強化が行われています。

これらのテーマは互いに関連しており、SQL Server 2022が提供する価値は、これらの機能が組み合わされることで最大限に引き出されます。次の章から、それぞれのテーマに沿って具体的な進化を詳細に見ていきましょう。

Azureとの緊密な連携 (Azure enabled SQL Server):ハイブリッド環境の力を解き放つ

SQL Server 2022の最も注目すべき進化は、Microsoft Azureとの深い連携機能です。これは、企業が抱えるハイブリッドクラウド環境の管理という課題に対して、具体的なソリューションを提供することを目的としています。オンプレミス、エッジ、そしてAzureクラウドに存在するデータとデータベースインスタンスを、あたかも単一の環境であるかのように管理、保護、分析できるようになります。

Azure Arc enabled SQL Server

現代の企業は、データセンター、ブランチオフィス、さらにはエッジデバイスといった様々な場所にSQL Serverインスタンスを運用しています。これらの分散した環境を効率的に管理し、一貫した運用ポリシー、セキュリティポリシーを適用することは容易ではありませんでした。ここで登場するのが「Azure Arc」です。

Azure Arcは、Azureの管理機能をオンプレミスやマルチクラウド環境に拡張するためのサービス群です。Azure Arc enabled SQL Serverは、このAzure Arcの機能を利用して、オンプレミスや他のクラウドで稼働しているSQL ServerインスタンスをAzure Resource Managerの一部として管理できるようにします。

具体的には、Azure Arc enabled SQL Serverを利用することで、以下のことが可能になります。

  • 一元的なインベントリと可視化: Azure Portalから、ハイブリッド環境全体のSQL Serverインスタンスを一覧表示し、バージョン、エディション、ステータスなどを一元的に確認できます。これは、多数のインスタンスを抱える組織にとって、資産管理とコンプライアンスチェックを大幅に簡素化します。
  • Azure Defender for Cloudとの連携: Azure Arc enabled SQL Serverは、Microsoft Defender for Cloudのデータセキュリティ機能と統合されます。これにより、SQL Serverインスタンスに対する脆弱性評価、脅威検出、セキュリティ推奨事項の提供を受けることができます。セキュリティ態勢の可視化と強化がハイブリッド環境全体で実現します。
  • Azure Monitorとの連携: インスタンスのパフォーマンスメトリック、アクティビティログなどをAzure Monitorに集約し、一元的な監視とアラート設定が可能になります。これにより、問題の早期発見と対応が容易になります。
  • Azure Policyとの連携: セキュリティ構成、命名規則などのポリシーをAzure Policyで定義し、Azure Arc enabled SQL Serverを通じてハイブリッド環境のSQL Serverインスタンスに適用できます。これにより、コンプライアンス要件の遵守が容易になります。
  • Azure Purviewとの連携: (後述) Azure Purviewによるデータガバナンス機能も連携します。

メリット: Azure Arc enabled SQL Serverの導入は、ハイブリッド環境におけるSQL Serverの管理、運用、セキュリティ管理を劇的に簡素化し、効率化します。一元的な可視化と管理によって、運用コストを削減し、セキュリティリスクを低減できます。これは、クラウドへの移行を検討している組織だけでなく、永続的にハイブリッド環境を維持する組織にとっても非常に価値のある機能です。

利用シナリオ:
* 複数のデータセンターやリージョンに分散したSQL Serverインスタンスの一元管理。
* クラウド移行前のオンプレミス環境のセキュリティ態勢評価と強化。
* コンプライアンス要件に基づいたセキュリティポリシーの一貫した適用。

Azure Synapse Link for SQL

従来のデータ分析ワークロードでは、OLTP (Online Transaction Processing) データベースからデータを抽出し、変換し、分析用データウェアハウスにロードするETL (Extract, Transform, Load) またはELTプロセスが一般的でした。しかし、このプロセスは多くの場合バッチ処理であり、データ鮮度に遅延が発生し、分析のリアルタイム性が損なわれるという課題がありました。また、OLTPデータベースに負荷がかかることも問題でした。

Azure Synapse Link for SQLは、この課題に対する革新的なソリューションです。SQL Server 2022は、この機能のソースとして直接統合されました。これにより、SQL Serverのトランザクションデータを、ニアリアルタイムでAzure Synapse Analyticsに継続的にレプリケーションできます。

Synapse Link for SQLの仕組みは、SQL Serverの変更追跡メカニズムを利用して、トランザクションログからデータの変更をキャプチャし、これをAzure Synapse Analyticsの専用SQLプール、Sparkプール、またはData Explorerプールに自動的にフィードするというものです。これにより、OLTPワークロードにほとんど影響を与えることなく、最新のデータを分析環境に提供できます。

具体的な連携機能:

  • ニアリアルタイムデータ同期: SQL Serverの変更が検知されると、数分以内にAzure Synapse Analyticsで利用可能になります。
  • OLTPワークロードへの影響最小化: 変更追跡プロセスは軽量であり、OLTPデータベースのパフォーマンスへの影響を最小限に抑えます。
  • Synapse Analyticsでの多様な分析: 同期されたデータは、Synapse Analytics内でTransact-SQL、Spark、Kusto Query Language (KQL) など、様々なエンジンを使って分析できます。データサイエンス、機械学習、BIレポートなど、幅広い分析ニーズに対応できます。
  • スキーマ変更の自動処理: ソースSQL Serverのテーブルにスキーマ変更があった場合も、Synapse Linkがある程度自動的に検出し、対応します。

メリット:
* データ鮮度の向上: ニアリアルタイムのデータにより、よりタイムリーな意思決定が可能になります。
* 分析効率の向上: ETL/ELTパイプラインの開発・運用負荷が大幅に軽減されます。
* OLTPパフォーマンスの保護: 分析クエリによるOLTPデータベースへの負荷を排除できます。
* コスト効率: ETL/ELTツールのライセンスや運用コストを削減できる場合があります。

利用シナリオ:
* 最新の販売データを基にしたニアリアルタイムの売上レポート作成。
* IoTデバイスから収集されるデータのリアルタイムに近いストリーミング分析。
* 顧客行動データの分析に基づいたパーソナライズされたレコメンデーション。
* 運用分析(Operational Analytics)のためのダッシュボード構築。

Microsoft Purviewとの連携

データガバナンスは、増大し分散するデータを効果的に管理し、コンプライアンスを遵守し、データの信頼性を確保するために不可欠です。Microsoft Purviewは、データ探索、データガバナンス、リスクとコンプライアンス管理のための統合的なサービスです。SQL Server 2022は、このMicrosoft Purviewとの連携機能を強化しています。

SQL Server 2022は、Purview Data Mapに直接接続し、メタデータを自動的にスキャンして取り込むことができます。これにより、SQL Serverデータベース内のテーブル、ビュー、ストアドプロシージャなどの情報をカタログ化し、検索可能にします。

具体的な連携機能:

  • 自動的なメタデータ収集とカタログ化: SQL Serverインスタンスとデータベースの構造、スキーマ、統計情報などをPurview Data Mapに登録します。
  • データリネージ(Data Lineage)の把握: Synapse Link for SQLなどでデータがSQL Serverから他のシステムに流れる際、その経路を追跡し、リネージを視覚化できます。
  • データ分類と機密ラベル付け: Purviewのスキャナーは、SQL Server内のデータをスキャンし、個人情報や機密情報などのデータ分類を自動または手動で行うことができます。Microsoft Information Protectionの機密ラベルを適用することも可能です。
  • データポリシーの適用: Purview Access Policiesを利用して、SQL Serverデータへのアクセス権限をPurviewから一元的に管理できます(プレビュー機能を含む)。

メリット:
* データ探索の促進: 組織内のデータを簡単に見つけ、理解するための統一されたカタログを提供します。
* コンプライアンスの強化: データの場所、分類、アクセス権限を可視化し、GDPRやCCPAなどの規制遵守を支援します。
* データガバナンスの効率化: メタデータ管理、リネージ追跡、セキュリティポリシー適用を一元的に行えます。
* データセキュリティの向上: 機密データの特定と保護を強化します。

利用シナリオ:
* データサイエンティストが分析に必要なデータセットを組織全体から探索。
* データガバナンス担当者が機密データがどこに存在するかを特定し、監査する。
* 規制遵守のために、特定のデータの取得元から最終的な利用先までのデータフローを追跡する。

Azure Active Directory (AAD) Authentication

セキュリティの観点から、認証の一元化は非常に重要です。SQL ServerはこれまでもActive Directory (AD) 認証をサポートしていましたが、SQL Server 2022ではAzure Active Directory (AAD) 認証のサポートがさらに強化されています。

これにより、Azureクラウド上のリソースやMicrosoft 365など、他のAAD対応サービスと同じIDでSQL Serverにサインインすることが可能になります。SQL Server 2022では、Contained Database Users for AADプリンシパルや、Azure AD Groupメンバーシップに基づいたアクセス制御などが強化されています。

メリット:
* シングルサインオン (SSO): ユーザーは複数のシステムで同じIDとパスワードを使用できます。
* セキュリティ強化: 多要素認証 (MFA) など、AADの高度なセキュリティ機能をSQL Server認証に適用できます。
* 管理の簡素化: ユーザーアカウントと権限管理をAADで一元化できます。
* クラウドリソースとの親和性: クラウドネイティブなアプリケーションやサービスからの接続が容易になります。

利用シナリオ:
* Azure Virtual MachinesやAzure App Services上で稼働するアプリケーションからのSQL Server接続にAAD認証を利用。
* オンプレミスのSQL Serverに、ハイブリッドID環境のユーザーがAADアカウントでサインイン。
* データベース管理者による権限管理をAADグループに基づいて行う。

これらのAzure連携機能は、SQL Server 2022が単なるデータベースエンジンではなく、Azureエコシステムと密接に統合されたハイブリッドデータプラットフォームであることを明確に示しています。これにより、組織は既存のオンプレミス投資を活かしつつ、クラウドの俊敏性、スケーラビリティ、そして豊富なサービスを活用することが可能になります。

パフォーマンスと可用性の向上:インテリジェントな最適化と堅牢性

SQL Server 2022は、パフォーマンスと可用性の面でも significant な進化を遂げています。特に注目すべきは、ユーザーの介入なしにクエリパフォーマンスを自動的に改善する「インテリジェントクエリプロセシング(IQP)」のさらなる強化です。これにより、データベースの運用管理負担を軽減しつつ、アプリケーションの応答性を向上させることができます。

クエリインテリジェンス (Query Intelligence) / インテリジェントクエリプロセシング (IQP) の進化

SQL Server 2017で導入され、2019でさらに進化を遂げたIQPは、データベースエンジンがクエリ実行計画をより効率的に生成・実行するための機能群です。SQL Server 2022では、このIQPがさらに強化され、より多くのシナリオで自動的なパフォーマンス改善が期待できるようになりました。

主なIQPの進化点は以下の通りです。

  • Parameter Sensitive Plan (PSP) Optimization:
    • 課題: SQL Serverのクエリプランは、多くの場合、クエリが最初に実行された際のパラメータ値に基づいて生成されます(パラメータスニッフィング)。しかし、その後に大きく異なるパラメータ値で同じクエリが実行された場合、最初に生成されたプランが非効率になる(PSP問題)ことがありました。
    • SQL Server 2022の解決策: SQL Serverは、単一のクエリに対して複数の実行プランをキャッシュし、異なるパラメータ値の特性に合わせて最適なプランを選択できるようになります。これにより、PSP問題によるパフォーマンス劣化を自動的に軽減します。これは、既存のアプリケーションコードを変更することなく、多くのシナリオでパフォーマンスを向上させる可能性を秘めています。
  • Cardinality Estimation (CE) Feedback:
    • 課題: クエリプロセッサが生成する実行プランは、データの分布やフィルタリング後の行数(基数)を推定する基数推定(CE)の精度に大きく依存します。推定が大きく外れると、非効率な結合アルゴリズムやインデックス選択が行われ、パフォーマンスが劣化します。
    • SQL Server 2022の解決策: SQL Serverは、実際のクエリ実行結果と基数推定の間の大きな乖離を検出し、その情報(フィードバック)を保持します。同じクエリが次に実行される際に、このフィードバックを利用してより正確な基数推定を行い、より効率的な実行プランを生成します。この学習プロセスは、時間の経過とともにクエリパフォーマンスを自動的に改善します。
  • Degree of Parallelism (DOP) Feedback:
    • 課題: 大規模なクエリでは、複数のCPUコアを使って並列実行することでパフォーマンスを向上させますが、適切な並列度(DOP)の設定は難しく、不適切な設定はリソースの枯渇やパフォーマンスの低下を招くことがあります。特に、Max Degree of Parallelism (MAXDOP) 設定はインスタンスレベルで設定されることが多く、個々のクエリにとって最適なDOPとは限りません。
    • SQL Server 2022の解決策: SQL Serverは、クエリの実行時間やリソース使用率を監視し、現在のDOP設定が最適かどうかを判断します。もし、より低いDOPで同様の実行時間またはより良いリソース効率が得られると判断した場合、そのクエリに対して推奨されるDOPを学習し、次回の実行から自動的に適用します。これにより、リソースを効率的に利用しつつ、クエリパフォーマンスを安定させます。
  • Memory Grant Feedback Persistence:
    • 課題: メモリ許可フィードバック(Memory Grant Feedback – MGF)は、クエリ実行に必要なメモリ量の推定誤差を学習し、次回の実行でより適切なメモリ量を割り当てる機能です。しかし、従来のMGFはインスタンスの再起動や計画のキャッシュからの削除によってフィードバックが失われていました。
    • SQL Server 2022の解決策: SQL Server 2022では、メモリ許可フィードバックの情報がクエリストア(Query Store)に永続化されるようになります。これにより、インスタンスが再起動されてもフィードバックが失われず、MGFによるパフォーマンス改善効果が継続的に得られます。
  • Optimized Plan Forcing with Query Store:
    • 課題: クエリストアを利用して特定のクエリプランを固定(Forcing)できますが、固定されたプランが無効になる(例えば、参照しているオブジェクトが削除されるなど)と、クエリの実行に失敗する可能性がありました。
    • SQL Server 2022の解決策: プラン固定が無効になった場合でも、SQL Serverは代わりにコンパイル時に生成される最適なプランを使用してクエリを実行しようとします。これにより、アプリケーションの可用性を高めます。
  • Query Store On Secondary Replicas:
    • 課題: 可用性グループのセカンダリレプリカは、レポートクエリなどで利用されることがありますが、従来のクエリストアはプライマリレプリカでのみ有効でした。セカンダリレプリカでのクエリパフォーマンス分析やプラン固定は困難でした。
    • SQL Server 2022の解決策: セカンダリレプリカでもクエリストアを有効にできるようになります。これにより、セカンダリでのワークロードパフォーマンスを監視、分析し、必要に応じてプラン固定などのチューニングを行うことが可能になります。これは、読み取りワークロードをセカンダリにオフロードしている環境で特に有用です。

メリット: これらのIQP機能の進化は、DBAや開発者が手動でパフォーマンスチューニングを行う労力を大幅に軽減します。SQL Server自体がワークロードの特性を学習し、自動的に最適な実行プランを選択・調整するため、導入するだけで多くのアプリケーションでパフォーマンスの安定化や向上が見込まれます。

テンポラルテーブルの自動クリーンアップ (Temporal Table Auto Cleanup)

テンポラルテーブルは、テーブルの過去のデータを自動的に履歴テーブルに保持する機能であり、データの変更履歴追跡や特定の時点のデータを参照する際に非常に便利です。しかし、履歴テーブルのデータは時間とともに増加し続け、ストレージ容量を圧迫する可能性があります。

SQL Server 2022では、テンポラルテーブルに対して履歴データの保持期間ポリシーを設定し、そのポリシーに基づいて古いデータを自動的にクリーンアップする機能が追加されました。これにより、履歴テーブルの肥大化を防ぎ、ストレージ管理の負担を軽減できます。

メリット:
* 履歴データのストレージ管理の自動化。
* ストレージコストの最適化。
* コンプライアンス要件に基づいたデータ保持ポリシーの強制。

バッファープールのスキャン時間制限 (Buffer Pool Scan Limits)

大規模なSQL Serverインスタンス、特にTBクラスのメモリを持つサーバーでは、メンテナンス操作(例えば、データベース全体のチェックポイント、バックアップ、復元など)や特定のクエリ実行時に、バッファープール(メモリ上のデータキャッシュ)全体をスキャンする必要が生じることがあります。このスキャン処理が長時間かかる場合、他のアクティブなワークロードに悪影響を及ぼす可能性がありました。

SQL Server 2022では、バッファープール全体のスキャン操作に対して時間制限を設定できるようになります。これにより、スキャン処理が指定した時間を超過した場合、SQL Serverはその操作を中断するか、リソースの使用を制限し、他のワークロードへの影響を最小限に抑えます。

メリット:
* 巨大なメモリを持つサーバーでの安定性向上。
* メンテナンス操作中のワークロードパフォーマンスへの影響軽減。
* リソース競合の抑制。

並列バックアップ/復元 (Parallel Backup/Restore to S3-Compatible Storage)

データのバックアップと復元は、事業継続計画において非常に重要な操作です。データ量が増加するにつれて、バックアップと復元の時間も増加し、RTO (Recovery Time Objective) や RPO (Recovery Point Objective) の目標達成を困難にする場合があります。

SQL Server 2022は、Microsoft Azure Blob Storageだけでなく、Amazon S3やその他のS3互換オブジェクトストレージへのバックアップと復元をネイティブにサポートします。さらに、これらのストレージに対してバックアップ操作を並列実行する機能が強化されました。これにより、大容量データベースのバックアップと復元時間を大幅に短縮できます。

メリット:
* バックアップ/復元時間の短縮。
* RTO/RPO目標の達成容易性向上。
* 多様なクラウドストレージオプションの活用。

Containment for Availability Group Metadata

Always On 可用性グループは、高可用性とディザスターリカバリのための重要な機能です。可用性グループを構成する際、通常、ログインやエージェントジョブなどのメタデータは、各レプリカの master データベースに個別に作成・管理する必要がありました。これにより、フェールオーバー後のログインの問題や、ジョブの同期に関する課題が生じることがありました。

SQL Server 2022では、この可用性グループに関連するメタデータを、可用性グループ自体の中に包含する「Contained Availability Groups」の概念が導入されました。これにより、ログイン、エージェントジョブ、資格情報などのメタデータを、可用性グループのメンバーシップとともにレプリケートできるようになります。

メリット:
* フェールオーバー時間の短縮と信頼性の向上(マスターデータベース同期の課題解消)。
* 可用性グループの管理の簡素化。
* レプリカ間でのメタデータの一貫性確保。

Link to Azure SQL Managed Instance

ハイブリッド環境におけるディザスターリカバリ(DR)やクラウドへの移行戦略は、多くの組織にとって重要な課題です。SQL Server 2022は、オンプレミスのSQL ServerインスタンスとAzure SQL Managed Instanceの間で、マネージドな分散型可用性グループを構築する機能を提供します。

これにより、オンプレミスとAzure SQL Managed Instanceの間でレプリカを作成し、フェールオーバーやフェールバックを容易に行うことができます。これは、オンプレミスのワークロードに対するクラウドベースのDRサイトを構築したり、ダウンタイムを最小限に抑えながら既存のSQL ServerワークロードをAzure SQL Managed Instanceに移行したりするための強力な手段となります。

メリット:
* オンプレミス環境のクラウドDRサイト構築の簡素化。
* Azure SQL Managed Instanceへのオンライン移行の実現。
* ハイブリッド環境における可用性の向上。

これらのパフォーマンスと可用性の向上機能は、SQL Server 2022をより高速に、より安定して、そしてより管理しやすくします。特にIQPの進化は、DBAの日常的なチューニング作業を軽減し、より戦略的なタスクに集中することを可能にします。

セキュリティの強化:データ保護と信頼性の確保

データセキュリティは、あらゆる組織にとって最優先事項です。SQL Serverはこれまでも堅牢なセキュリティ機能を提供してきましたが、SQL Server 2022では、ハイブリッドクラウド環境におけるセキュリティ管理の強化に加え、データの信頼性を保証する画期的な技術が導入されています。

Microsoft Defender for SQLとの連携

前述のAzure Arc enabled SQL Serverの一部として触れましたが、SQL Server 2022はMicrosoft Defender for Cloudの一部であるMicrosoft Defender for SQLと深く連携します。Azure Arcを通じてオンプレミスや他のクラウド上のSQL ServerインスタンスがAzureに接続されると、Defender for SQLによるセキュリティ機能が利用可能になります。

具体的な機能:

  • 脆弱性評価 (Vulnerability Assessment): データベース構成のセキュリティホール、権限の過剰な割り当て、不適切な暗号化設定など、一般的な脆弱性をスキャンし、修正のための具体的な推奨事項を提供します。
  • 脅威検出 (Threat Detection): SQLインジェクション、ブルートフォースアタック、不正なアクセスパターンなど、異常なデータベースアクティビティを継続的に監視し、疑わしい脅威が検出された場合にセキュリティアラートを生成します。
  • セキュリティ推奨事項: 全体的なセキュリティ態勢を改善するためのアクション可能な推奨事項が提供されます。

メリット:
* ハイブリッド環境全体のSQL Serverセキュリティ態勢の可視化と一元管理。
* プロアクティブな脆弱性管理。
* 潜在的な脅威の早期検出と対応。
* セキュリティ専門知識を持つDBAが少ない環境でも、効果的なセキュリティ対策が可能。

Azure Active Directory (AAD) Authentication (再掲)

セキュリティの観点から、AAD認証のサポート強化は非常に重要です。認証情報の管理を一元化し、MFAなどの高度なセキュリティ機能を活用することで、不正アクセスリスクを大幅に低減できます。

SQL Ledger

SQL Ledgerは、SQL Server 2022で導入された最も革新的なセキュリティ機能の一つです。これは、ブロックチェーン技術にインスパイアされた機能であり、データベース内のデータが改ざんされていないことを暗号学的に証明することを可能にします。SQL Ledgerは、改ざん防止機能と改ざん検知機能を提供します。

仕組み:

  • 改ざん防止: Ledgerテーブルと呼ばれる特定の種類のテーブルを作成します。このテーブルに対するINSERT操作は許可されますが、UPDATEやDELETE操作は許可されません。行が更新または削除された場合、実際には新しいバージョンの行が挿入され、古い行は「論理的に」無効としてマークされます。
  • 改ざん検知: 各行には、直前の行のハッシュ値を含むハッシュチェーンが構築されます。さらに、データベースの定期的な間隔で、すべてのLedgerテーブルの状態を表すrootハッシュが計算されます。このrootハッシュは、Azure Blob Storageなどの信頼できるストレージに永続化されます。もしデータベース内のデータが改ざんされた場合(意図的または偶発的)、ハッシュチェーンが壊れるため、この改ざんを検出できます。保存されたrootハッシュと現在のデータベースから計算されるrootハッシュを比較することで、整合性を検証できます。

種類:

  • Updatable Ledger Tables: UPDATEやDELETE操作を含むトランザクションを記録し、変更履歴を自動的に保持します。
  • Append-Only Ledger Tables: INSERT操作のみが可能なテーブルで、ログや監査証跡などに適しています。

メリット:
* データの信頼性: データベース内のデータが改ざんされていないことを外部に対して証明できます。
* 監査証跡の強化: 誰が、いつ、どのようにデータを変更したかの記録が暗号学的に保証されます。
* コンプライアンス要件のサポート: 金融、医療、サプライチェーンなど、データの完全性が厳しく求められる業界の規制遵守に役立ちます。
* 内部不正対策: データベース管理者がデータを改ざんした場合でも、それを検知できます。

ユースケース:
* 金融取引記録の保管。
* サプライチェーンにおける製品の追跡と履歴管理。
* 医療記録や監査ログの保管。
* 契約や法的文書の変更履歴管理。
* 内部監査や規制対応のためのデータ完全性証明。

SQL Ledgerは、従来のデータベースセキュリティ機能では提供できなかったレベルのデータの信頼性を提供し、データベースが単なるデータストアではなく、信頼できる記録システムとして機能することを可能にします。

Always Encrypted の改善

Always Encryptedは、アプリケーション側でデータを暗号化し、暗号化されたままデータベースに保存する機能です。これにより、データベース管理者が機密データにアクセスできないように保護します。SQL Server 2022では、Always Encrypted with Secure Enclaves 機能がさらに強化されました。

Secure Enclavesは、CPU内の保護された領域を利用して、暗号化されたデータ上で限定的な計算(比較、ソート、結合など)を実行できるようにする技術です。SQL Server 2022では、このSecure Enclaves内での計算可能な操作の種類が拡大され、より複雑なクエリ(パターンマッチング、LIKE演算子、範囲比較など)を暗号化されたデータに対して直接実行できるようになりました。

メリット:
* 機密性の高いデータを高いレベルで保護しながら、実用的なデータベース操作が可能。
* アプリケーション側での復号化の必要性を最小限に抑え、セキュリティリスクを低減。
* セキュリティと機能性のバランスが向上。

これらのセキュリティ機能は、SQL Server 2022を現代のデータ保護とコンプライアンスの要件を満たすための非常に安全なプラットフォームにしています。特にSQL Ledgerは、データベース技術におけるデータの信頼性に関する考え方に新たな地平を切り開く可能性を秘めています。

開発者体験の向上:T-SQL、JSON、データ仮想化の進化

SQL Server 2022は、データベース開発者がより効率的に、より柔軟に、そしてより表現力豊かにアプリケーションを構築できるよう、多くの機能強化がなされています。T-SQL言語の拡張、JSON操作の改善、データ仮想化の拡張などがその代表例です。

JSON機能の拡張

JSON形式のデータは、現代のアプリケーションにおいて広く利用されています。SQL Serverは以前のバージョンからJSONデータの保存、クエリ、生成機能をサポートしていましたが、SQL Server 2022ではその操作性がさらに向上しています。

主な新関数・機能:

  • JSON_OBJECT(): キーと値のペアからJSONオブジェクトを簡単に生成できます。ネストされたオブジェクトの生成も容易になります。
  • JSON_ARRAY(): 値のリストからJSON配列を簡単に生成できます。
  • ISJSON ( [value], [type constraint] ): JSON形式のデータが有効であるかをチェックする関数ですが、SQL Server 2022では、厳格なJSON形式 (strict) か許容範囲の広いJSON形式 (lax) かを指定できるようになり、より正確なバリデーションが可能になります。
  • JSON_PATH_EXISTS(): 指定したJSONパスに要素が存在するかどうかをチェックできます。

メリット:
* SQL Server内でJSONデータの操作がより直感的かつ効率的に行えるようになります。
* 外部システムとのJSON形式でのデータ連携が容易になります。
* アプリケーション側でJSONを組み立てるロジックを減らし、データベース側で処理できるようになります。

Transact-SQL (T-SQL) の新機能

SQL Serverの核となるT-SQL言語も、開発者の生産性を向上させるための多くの機能拡張が行われています。

  • DATE_BUCKET 関数:
    • 指定した日付/時刻値を、指定した間隔(バケットサイズ、例えば1時間、1日、1週間など)で切り捨て(バケット化)する関数です。時系列データの集計や分析に非常に便利です。例えば、ログデータを時間帯別に集計したり、売上データを週別に集計したりする際に簡単に利用できます。
  • Window 関数の改善:
    • ORDER BY 句での DISTINCT ON サポート:Window関数でパーティション内の先頭または末尾の重複しない行を取得する際に便利です。
    • Windowフレーム句の拡張:より柔軟なWindowフレーム(処理対象行の範囲)の定義が可能になります。
  • NULL 処理関数の追加:
    • GREATEST() および LEAST() 関数:複数の式のリストから、NULL以外の最大値または最小値を返します。これにより、複数の列や値の中からNULLを除外して最大/最小を求めるロジックがシンプルになります。
  • STRING_SPLIT の改善:
    • 文字列を指定した区切り文字で分割し、テーブル形式で返すSTRING_SPLIT関数に、分割された要素の順序(order)や序数(ordinal)を取得するオプションが追加されました。これにより、分割された文字列の元の順序を保持したり、特定のn番目の要素を取得したりする処理が容易になります。
  • MERGE ステートメントの改善:
    • MERGEステートメントは、INSERT, UPDATE, DELETE操作を単一のステートメントでターゲットテーブルに適用するためのものですが、SQL Server 2022では、MERGEステートメントの出力に元の行と変更後の行の両方を含めることができるようになります。これにより、MERGE操作の結果を詳細に確認・記録する際に便利です。
  • ビット操作関数の追加:
    • GET_BIT, SET_BIT, COUNT_BIT, LEFT_SHIFT, RIGHT_SHIFT など、ビットレベルの操作を行うための関数が追加されました。特定のフラグ管理やコンパクトなデータ表現を行う際に有用です。

メリット:
* 複雑なデータ処理ロジックをより簡潔かつ効率的に記述できます。
* 開発時間が短縮され、コードの保守性が向上します。
* 新しい分析シナリオやデータ処理パターンに対応しやすくなります。

データ仮想化の拡張

PolyBaseは、SQL Serverから外部データソース(Hadoop、Azure Blob Storage、Azure Data Lake Storageなど)に透過的にアクセスするための機能です。SQL Server 2022では、このPolyBaseの機能が拡張され、アクセス可能なデータソースが増加しました。

主な拡張:

  • S3互換オブジェクトストレージへの対応: Azure Blob StorageやAzure Data Lake Storage Gen2に加え、Amazon S3やその他のS3互換ストレージに格納されたデータへのアクセスが可能になります。これにより、異なるクラウド環境やオンプレミスのオブジェクトストレージに分散したデータも、SQL Serverから直接クエリできるようになります。
  • Azure Data Lake Storage Gen2 (ADLS Gen2) への対応強化: ADLS Gen2のファイルシステム機能や階層型名前空間の利用がより効率的になります。
  • Parquet/Delta Lake形式への対応強化: オープンソースのデータファイル形式であるParquetやDelta Lake形式のファイルに対するクエリ性能が向上しています。

メリット:
* データを物理的に移動またはコピーすることなく、様々なデータソースにアクセスできます。
* データのサイロ化を防ぎ、組織全体のデータを統合的に分析できます。
* データレイクやクラウドストレージに格納された非構造化データや半構造化データとの連携が容易になります。

コンテナとKubernetesへの対応強化

モダンなアプリケーション開発において、コンテナ化とオーケストレーションプラットフォーム(Kubernetesなど)は標準的なデプロイメントモデルになりつつあります。SQL Server 2022は、これらの環境でのデプロイメントと運用をさらに容易にするための対応が強化されています。

Microsoftは、SQL Serverの公式Dockerイメージを提供しており、SQL Server 2022のイメージも利用可能です。また、Kubernetes上でのSQL Serverのデプロイメント、スケーリング、高可用性を管理するためのKubernetesオペレーターも提供されています。

メリット:
* 環境依存性の低いポータブルなデプロイメントが可能。
* Kubernetesのスケーリング、回復性、自動化機能を利用してSQL Serverを運用。
* DevOpsパイプラインへの組み込みが容易。
* 開発、テスト、本番環境間での一貫性確保。

これらの開発者向け機能は、SQL Serverが従来のエンタープライズアプリケーションだけでなく、マイクロサービス、クラウドネイティブアプリケーション、データ分析ワークロードなど、多様なモダンアプリケーションのバックエンドとして引き続き有力な選択肢であることを示しています。

管理と運用:監視と自動化の進化

データベースの管理と運用は、システムの安定稼働と効率性の維持に不可欠です。SQL Server 2022では、DBAや運用担当者が日々のタスクをより効率的に行えるよう、監視機能の強化や管理ツールの改善が行われています。

新しい DMV (Dynamic Management Views) / DMF (Dynamic Management Functions)

SQL Serverの内部状態を監視し、トラブルシューティングを行う上で、DMVやDMFは非常に重要なツールです。SQL Server 2022では、新しい機能(特にIQP、SQL Ledger、Azure連携など)に対応するための新しいDMV/DMFが追加されており、より詳細なパフォーマンス情報や内部動作の状況を把握できるようになっています。

例えば、IQPのParameter Sensitive Plan OptimizationやCE Feedbackに関する情報を取得するためのDMVや、SQL Ledgerの整合性検証に関する情報を取得するためのDMFなどが追加されています。これにより、新しい機能の有効性や動作状況を確認し、必要に応じてトラブルシューティングを行うことが容易になります。

メリット:
* データベースの内部状態やパフォーマンスに関する詳細な洞察が得られる。
* 問題の診断とトラブルシューティングが効率化される。
* 新しい機能の活用状況を監視できる。

SQL Server Agent の改善

SQL Server Agentは、データベースのメンテナンス(バックアップ、インデックス再構築など)やETL処理、カスタムスクリプト実行など、定期的なタスクをスケジュールするための重要なツールです。SQL Server 2022では、SQL Server Agentの安定性や利便性に関するいくつかの改善が含まれています。具体的な詳細はバージョンアップのマイナーリリースで追加されることもありますが、基本的な信頼性とハイブリッド環境での利用シナリオを考慮した改良が行われています。

メリット:
* 自動化された運用タスクの信頼性向上。
* DBAの運用負担軽減。

これらの管理・運用機能は、SQL Server 2022をより運用しやすいプラットフォームにしています。Azure Arcとの連携による一元管理機能と併せて利用することで、ハイブリッド環境全体の管理効率を大幅に向上させることが期待できます。

まとめ:モダンなデータプラットフォームとしてのSQL Server 2022

本記事では、Microsoft SQL Server 2022がもたらす様々な進化について詳細に解説しました。このバージョンは、単なるデータベースエンジンとしての機能強化に留まらず、現代のデータ環境の課題(ハイブリッドクラウド、大量データ、セキュリティ、リアルタイム分析など)に包括的に対応するための戦略的なリリースです。

SQL Server 2022の最も大きな特徴は、Microsoft Azureとの緊密な連携です。「Azure enabled SQL Server」として、Azure Arc、Azure Synapse Link、Microsoft PurviewといったAzureの主要なデータ・管理サービスとの連携を強化し、オンプレミス、エッジ、クラウドに分散するデータランドスケープを統合的に管理・活用することを可能にします。これにより、ハイブリッド環境の運用効率向上、データ活用の加速、そしてセキュリティとコンプライアンスの強化を実現します。

パフォーマンスの面では、インテリジェントクエリプロセシング (IQP) がさらに進化し、Parameter Sensitive Plan Optimization、Cardinality Estimation Feedback、DOP Feedbackなどが導入されました。これにより、多くのワークロードにおいて、手動でのチューニングなしにクエリパフォーマンスが自動的に改善されることが期待できます。可用性に関しても、Contained Availability GroupsメタデータやAzure SQL Managed InstanceへのLink機能など、ハイブリッド環境での高可用性・ディザスターリカバリ戦略を支援する機能が追加されています。

セキュリティにおいては、Azure Defender for SQLとの連携による脅威管理の強化に加え、データベースデータの完全性を暗号学的に証明する革新的な技術であるSQL Ledgerが導入されました。これは、データの信頼性が極めて重要となるシナリオにおいて、新たなレベルの安心感を提供します。Always Encryptedの改善も、機密データの保護と利便性の両立を further 推進します。

開発者体験の向上も重要なテーマです。T-SQL言語の拡張、JSON操作の強化、データ仮想化の拡張などにより、開発者はより表現力豊かに、より効率的にデータベースアプリケーションを開発できるようになりました。コンテナやKubernetesへの対応強化は、モダンな開発・デプロイメントワークフローとの親和性を高めています。

SQL Server 2022は、これらの進化を通じて、単一のサーバーで稼働するデータベースから、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境に対応するモダンなデータプラットフォームへとその姿を further 変えています。既存のSQL Serverユーザーにとっては、既存資産を活かしながら最新の技術を活用できるメリットがあり、新規ユーザーにとっては、堅牢かつ柔軟なデータ基盤を選択肢として検討する価値が大いにあります。

データがビジネスの成功に不可欠な要素となった現代において、SQL Server 2022は、企業がデータを安全に、効率的に、そしてインテリジェントに活用するための強力なパートナーとなるでしょう。その豊富な機能とAzureエコシステムとの統合は、デジタルトランスフォーメーションを推進する企業にとって、間違いなく注目すべき技術進化と言えます。この解説が、SQL Server 2022の理解を深め、その導入や活用を検討する上で役立つことを願っています。

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