Steam Remote Play Together とは?画面共有する方法

はい、Steam Remote Play Togetherに関する詳細な記事を作成します。特に「画面共有」にあたるゲームストリーミングの仕組み、設定、トラブルシューティングに焦点を当て、約5000語のボリュームで解説します。


Steam Remote Play Together 完全ガイド:ローカルマルチプレイをオンラインで楽しむ「画面共有」の方法

はじめに:ゲーム体験の新たな地平を切り開くSteam Remote Play Together

かつて、友達と顔を合わせてゲームをプレイするには、リビングルームや友達の家に集まるのが当たり前でした。一つの画面を囲み、コントローラーを握り、一緒に笑い、時には本気で競い合うローカルマルチプレイヤーゲームは、多くのゲーマーにとってかけがえのない思い出です。しかし、地理的な距離、時間の制約、そして時には社会的な状況によって、物理的に集まることが難しくなることもあります。

そんな状況を打破し、ローカルマルチプレイヤーゲームの楽しさをオンラインで再現するために生まれたのが、Steamの革新的な機能「Steam Remote Play Together」(リモートプレイ・アズ・ワン)です。この機能を使えば、ローカルマルチプレイや画面分割に対応したゲームを、Steamフレンドや招待した他のプレイヤーと一緒に、インターネット経由で楽しむことができます。

Remote Play Togetherは、ゲームの画面をホスト側のPCから他のプレイヤーにストリーミングし、他のプレイヤーからの入力をホスト側のPCに送り返すことで成り立っています。ユーザーにとっては、まるでホストと同じ部屋にいるかのように、一つのゲーム画面を見ながら、それぞれがコントローラーやキーボード、マウスを使って操作しているような感覚でプレイできます。この機能は、しばしば「画面共有」と表現されますが、厳密には「ゲームストリーミング」であり、単にPCのデスクトップ全体を共有する通常の画面共有機能とは異なります。ゲームプレイに特化しているため、低遅延で快適なゲーム体験を実現することを目指しています。

この記事では、Steam Remote Play Togetherとは具体的にどのような機能なのか、その仕組み、そして最も重要な「画面共有」にあたるゲームストリーミングをどのように設定し、最適化し、問題を解決するのかについて、約5000語のボリュームで詳細に解説します。ローカルマルチプレイヤーゲームをオンラインで楽しみたい方、Remote Play Togetherのパフォーマンスに悩んでいる方、あるいは単にこの機能について深く知りたい方にとって、必読のガイドとなるでしょう。さあ、Steam Remote Play Togetherの世界へ飛び込み、友達との新たなゲーム体験を始めましょう。

第1章:Steam Remote Play Togetherの基本を知る

この章では、Remote Play Togetherがどのような機能なのか、その仕組み、そして利用するために必要なものを解説します。

1.1 Remote Play Togetherとは?

Steam Remote Play Togetherは、Steamクライアントに搭載された機能の一つです。その主な目的は、もともとローカルマルチプレイヤー(同じPCやゲーム機の前で複数人がプレイする形式)にしか対応していないゲームを、インターネット経由で遠隔地のプレイヤーと一緒にプレイできるようにすることです。

この機能は、Steamアカウントを持つプレイヤーであれば誰でも利用でき、特別なサブスクリプションなどは必要ありません。重要な点は、ゲーム自体を購入しているのはホストとなるプレイヤーだけで良いということです。招待される側のプレイヤーは、Steamクライアントさえインストールしていれば、ゲームを持っていなくてもホストのゲームに参加して一緒にプレイできます。これは、これまでローカルマルチプレイのために全員が同じゲームを持っている必要があった状況を劇的に変えるメリットです。

1.2 なぜRemote Play Togetherが必要なのか?

デジタル化が進み、オンラインマルチプレイヤーゲームが主流となる中でも、ローカルマルチプレイヤーゲームには独特の魅力があります。しかし、前述の通り、物理的に集まることが困難な場合があります。Remote Play Togetherは、まさにこの問題を解決します。

  • 地理的な距離の克服: 遠く離れた場所にいる友達や家族とも、お気に入りのローカルマルチプレイヤーゲームを楽しめます。
  • 手軽さ: 個別にゲームサーバーを立てたり、複雑なネットワーク設定をしたりする必要がありません。Steamのフレンドリストから簡単に招待できます。
  • ゲーム所有のハードル低下: ホストがゲームを持っていれば、他のプレイヤーは購入する必要がありません。これにより、気軽に一緒に試せるゲームの幅が広がります。
  • 幅広いゲームへの対応: ローカル協力、ローカル対戦、画面分割、さらには単一の画面を共有して協力するタイプのゲーム(例えば、同じキーボードで操作するパズルゲームなど)にも対応しています。

1.3 Remote Play Togetherの仕組み:ホストとクライアント、そしてゲームストリーミング

Remote Play Togetherは、「ホスト」となるプレイヤーのPCでゲームを実行し、そのゲーム画面と音声を「クライアント」となる他のプレイヤーのPCやデバイスにストリーミングするという仕組みで成り立っています。

  • ホスト: ゲームを起動し、Remote Play Togetherセッションを開始するプレイヤーです。ホストのPCでゲームがネイティブに実行されます。ゲームの処理負荷はホストのPCにかかります。
  • クライアント: ホストから招待を受けてセッションに参加するプレイヤーです。ゲーム自体は実行せず、ホストから送られてくる映像と音声を受け取ります。クライアント側では、ホストからのストリームを受信し、自分の操作入力をホストに送信します。

この仕組みにおいて、「画面共有」とユーザーが認識する部分は、ホストのPCで実行されているゲームの「画面と音声」がクライアントにリアルタイムで「ストリーミング」されるプロセスを指します。クライアントは、まるで遠隔地のモニターを見ているかのようにゲーム画面を見ます。

同時に、クライアントのコントローラーやキーボード、マウスからの操作入力は、インターネット経由でホストのPCに送信されます。ホストのPCは、この入力がまるでローカルで接続されたデバイスからのものであるかのように受け取り、ゲーム内で処理します。ゲームの出力(画面と音声)は再びクライアントにストリーミングされます。この一連の流れが高速で行われることで、遠隔地にいながらにして一緒にゲームをプレイする体験が実現します。

このストリーミング技術は、ゲームの性質上、低遅延であることが非常に重要です。特にアクション性の高いゲームでは、操作入力から画面の反応までの遅延が大きいと、快適なプレイが難しくなります。Steam Remote Play Togetherは、この遅延を最小限に抑えるために、Steam Linkなどの技術で培われた最適化されたストリーミングプロトコルを使用しています。

1.4 利用するために必要なもの

Remote Play Togetherを利用するには、ホストとクライアント双方でいくつかの準備が必要です。

  • Steamアカウント: ホストもクライアントも、有効なSteamアカウントが必要です。
  • Steamクライアント: 双方のPCにSteamクライアントがインストールされ、ログインしている必要があります。
  • 対応ゲーム: ホストがRemote Play Togetherに対応したゲームを所有し、インストールしている必要があります。Remote Play Together対応ゲームは、Steamストアページにその旨が表示されています。ローカルマルチプレイに対応しているゲームの多くがRemote Play Togetherに対応しています。
  • インターネット接続: 安定した、十分な帯域幅を持つインターネット接続が不可欠です。特にホスト側は、ゲームの画面と音声をリアルタイムでアップロードするため、十分なアップロード速度が求められます。クライアント側はダウンロード速度が必要です。低遅延(Ping値が低いこと)も重要です。
  • PCまたは対応デバイス: ホストはゲームを起動するPC(Windows, macOS, Linux)が必要です。クライアントはPCのほか、Steam Linkアプリをインストールしたスマートフォン、タブレット、またはSteam Linkハードウェア(現在製造終了)でも参加できます。
  • 入力デバイス: プレイヤーごとにゲームに対応した入力デバイスが必要です。多くのローカルマルチプレイヤーゲームではゲームコントローラーが推奨されますが、ゲームによってはキーボードとマウス、あるいはキーボードのみでも操作可能です。ホストのPCには、参加するプレイヤー人数分の入力デバイスを接続する必要があります(物理的に接続するのはホストのPCだけです。クライアントの入力はネットワーク経由でホストに送られます)。

1.5 他のオンラインマルチプレイ機能との比較

Remote Play Togetherは、従来のオンラインマルチプレイとはいくつかの点で異なります。

  • 従来のオンラインマルチプレイ: ゲームが独自にオンラインプレイ機能を内蔵しており、プレイヤー同士がゲームサーバー(専用サーバーまたはP2P)に接続してゲームをプレイします。各プレイヤーのPCでゲーム全体が実行され、プレイヤー間でゲームの状態データが同期されます。この場合、参加者全員がゲームを所有している必要があります。
  • Remote Play Together: ゲーム自体にオンライン機能は不要です。ホストのPCでゲームを実行し、その画面をストリーミングするという形式です。ゲームの状態データではなく、画面と音声のストリーム、そして操作入力データをやり取りします。ホストのみがゲームを所有していれば良いのが大きな違いです。

Remote Play Togetherは、オンラインマルチプレイに対応していないローカルマルチプレイヤーゲームをオンラインで遊ぶための「橋渡し」のような機能と言えます。オンラインプレイに対応しているゲームであれば、Remote Play Togetherを使うよりも、ゲーム本来のオンライン機能を使った方が、一般的に遅延が少なく、快適にプレイできることが多いです。Remote Play Togetherは、あくまで「ローカルマルチプレイをオンライン化する」ための選択肢として理解するのが適切です。

1.6 Remote Play Togetherのメリットとデメリット

Remote Play Togetherの利用を検討する際に知っておくべきメリットとデメリットをまとめます。

  • メリット:

    • ホストがゲームを持っていれば他のプレイヤーは不要。
    • ローカルマルチプレイヤーゲームを遠隔地でプレイ可能。
    • 特別なサーバー設定が不要で手軽に始められる。
    • Steamのフレンドリストから簡単に招待できる。
    • 様々なローカルマルチプレイヤーゲームに対応。
    • 最大4人まで(場合によってはそれ以上)参加可能。
  • デメリット:

    • パフォーマンスがネットワーク環境に大きく依存する。 回線速度やPing値が低いと、画面がカクつく、遅延が大きい、音声が途切れるなどの問題が発生しやすい。
    • ホストのPCスペックが重要。 ホストのPC性能が低いと、ゲーム自体が快適に動作しないだけでなく、ストリーミング処理にも負荷がかかり、全体的なパフォーマンスが低下する。
    • 遅延が避けられない。 物理的に同じ部屋でプレイするよりは、ネットワーク遅延の分、操作入力から画面反映までの遅延が大きくなる。アクション性の高いゲームでは致命的になる場合がある。
    • 画面分割ゲームでは画面が小さくなる。 ホストの画面全体がストリーミングされるため、画面分割でプレイするゲームでは、自分の操作キャラクターが表示される画面領域が小さくなり見づらくなることがある。
    • ホストがゲームを終了するとセッションも終了する。
    • ホストのPC環境(OS設定、他のアプリケーションなど)がセッションに影響する可能性がある。

これらのメリットとデメリットを理解した上で、Remote Play Togetherがあなたのプレイスタイルや環境に合っているか検討することが重要です。特に、快適な「画面共有」(ゲームストリーミング)を実現するためには、ネットワーク環境とホストのPCスペックが鍵となります。

第2章:Remote Play Togetherを始める準備と招待方法

この章では、実際にRemote Play Togetherのセッションを開始し、他のプレイヤーを招待する具体的な手順を解説します。

2.1 ホスト側の準備:ゲームを起動する

Remote Play Togetherセッションを開始するのは、ホストとなるプレイヤーです。

  1. Steamクライアントを起動し、ログインします。
  2. Remote Play Togetherに対応しているゲームを選び、インストールされていることを確認します。 ストアページの右側に「リモートプレイ」セクションがあり、「Remote Play Together」のタグが付いているゲームが対応しています。
  3. ゲームを起動します。 ゲームはフルスクリーンモードでもウィンドウモードでも構いませんが、パフォーマンスの観点からはフルスクリーンの方が有利な場合があります。ゲームが起動し、メニュー画面などが表示された状態にします。

2.2 プレイヤーを招待する

ゲームが起動したら、Steamオーバーレイを使って他のプレイヤーを招待します。

  1. Steamオーバーレイを開きます。 デフォルトでは「Shift + Tab」キーで開けます。Steamクライアントの設定でキーバインドを変更している場合は、そのキーを押してください。
  2. Steamオーバーレイの中から「フレンドリスト」を見つけます。 オーバーレイの左側にフレンドリストが表示されていることが多いです。
  3. 招待したいフレンドを選びます。 フレンドの名前を右クリックするか、名前の上にマウスカーソルを置くとメニューが表示されます。
  4. 表示されたメニューの中から「Remote Play Together に招待」を選択します。

これにより、招待されたフレンドにSteam上でRemote Play Togetherへの参加通知が送信されます。

2.3 招待された側の参加方法

ホストから招待を受け取ったプレイヤーは、以下の手順でセッションに参加します。

  1. Steamクライアントが起動しており、ログインしていることを確認します。
  2. ホストからの招待通知を確認します。 Steamクライアントの右下や、フレンドリストに表示されることが多いです。
  3. 招待通知をクリックまたは承認します。 これにより、ホストのPCからゲーム画面のストリーミングが開始され、自分の画面に表示されます。

これで、クライアントプレイヤーはホストのゲーム画面を見ながら、自分の入力デバイスを使って操作できるようになります。

2.4 Steamフレンド以外を招待する方法(リンク招待)

Remote Play Togetherは、Steamフレンドだけでなく、フレンドリストに登録されていない他のプレイヤーも招待できます。これには招待リンクを使用します。

  1. ホスト側でゲームを起動し、Steamオーバーレイを開きます(Shift + Tab)。
  2. フレンドリストを開き、右上にある歯車アイコン(設定)をクリックします。
  3. 設定メニューの中に「招待リンクを生成」のようなオプションがあるはずです。(※UIは変更される可能性があります。現在のUIでは、フレンドリストを開いた時に、Remote Play Together対応ゲーム起動中にフレンドリストの上部に表示される「招待リンクをコピー」ボタンから行うのが最も簡単です)
  4. 生成された招待リンクをコピーします。
  5. このリンクを、Discord、チャット、メールなど、Steam以外の方法で招待したいプレイヤーに共有します。
  6. 招待されたプレイヤーは、そのリンクをクリックします。リンクをクリックすると、Steamクライアントまたはウェブブラウザ経由でSteamクライアントが起動し、セッションに参加するための手順が表示されます。

この方法を使えば、Steamで一時的にしか繋がりのないプレイヤーや、別のプラットフォームで知り合ったプレイヤーとも気軽にRemote Play Togetherセッションを楽しむことができます。ただし、リンクを知っている人なら誰でも参加できてしまうリスクもあるため、共有する相手には注意が必要です。

2.5 セッション中の管理:プレイヤーと入力デバイス

セッションが開始された後、ホストはSteamオーバーレイを使って参加しているプレイヤーと入力デバイスを管理できます。

  • Steamオーバーレイを開く: ゲーム中にShift + Tabを押します。
  • Remote Playセクション: オーバーレイの中にRemote Play Togetherに関するセクションが表示されます。ここには現在参加しているプレイヤー一覧が表示されます。
  • プレイヤーごとの設定: 各プレイヤーの名前の横に、そのプレイヤーが使用している入力デバイスのアイコンが表示されます。ここから、そのプレイヤーの入力デバイスを切り替えたり(例:コントローラー1からコントローラー2へ)、セッションから切断したりできます。
  • 入力デバイスの割り当て: 多くのローカルマルチプレイヤーゲームでは、コントローラーの番号(P1, P2など)で操作プレイヤーが決まります。Remote Play Togetherでは、ホストのPCに接続された入力デバイスと、リモートプレイヤーの入力デバイスに対して、どのプレイヤー番号を割り当てるかを設定できます。これは、ゲームによっては自動で行われますが、手動で調整が必要な場合もあります。特に、ホスト自身がコントローラーを使う場合、リモートプレイヤーにコントローラーを割り当てる順序に注意が必要です。

例えば、4人プレイのゲームで、ホストがキーボード&マウスを使用し、リモートプレイヤーAがコントローラー、リモートプレイヤーBが別のコントローラーを使用する場合、ホストはキーボード&マウスをP1に、リモートプレイヤーAのコントローラー入力をP2に、リモートプレイヤーBのコントローラー入力をP3に割り当てる、といった設定を行います。これはゲーム内の設定ではなく、Steam Remote Playの機能として行います。

第3章:画面共有(ゲームストリーミング)の詳細と技術的側面

この章では、Remote Play Togetherの最も重要な要素である「画面共有」、すなわちゲームストリーミングの技術的な仕組みに深く踏み込み、そのパフォーマンスを理解するための基礎知識を解説します。

3.1 ゲームストリーミングの基本フロー

Remote Play Togetherにおけるゲームストリーミングは、以下の基本的な流れで行われます。

  1. ゲーム実行: ホストのPC上でゲームが起動し、通常通りグラフィック処理や物理演算などが行われます。
  2. 映像・音声キャプチャ: ホストのPCが、ゲームの最終的な映像フレームと音声データをリアルタイムでキャプチャします。
  3. エンコーディング: キャプチャされた映像と音声データは、ネットワーク経由で送信するために圧縮されます。この圧縮処理をエンコーディングと呼びます。H.264やH.265(HEVC)といった標準的なビデオコーデックが使用されます。エンコーディングはCPUまたはGPUの専用ハードウェア(ハードウェアエンコーダー)で行われることが多いです。
  4. ネットワーク送信: エンコードされたデータは、UDPなどのプロトコルを使ってインターネット経由でクライアントに送信されます。
  5. ネットワーク受信: クライアントは、ホストから送られてきたデータを受信します。
  6. デコーディング: 受信した圧縮データは、元の映像と音声に戻すために解凍されます。この処理をデコーディングと呼びます。こちらもCPUまたはGPUのハードウェアデコーダーが使用されます。
  7. 表示・再生: デコードされた映像はクライアントの画面に表示され、音声はスピーカーやヘッドホンから再生されます。
  8. 入力送信: 同時に、クライアントの入力デバイス(コントローラー、キーボード、マウス)からの操作情報はキャプチャされ、ホストのPCに送信されます。この入力データは映像データほど帯域幅を必要としませんが、低遅延での送信が極めて重要です。
  9. 入力受信と処理: ホストのPCはクライアントからの入力データを受信し、ゲームに渡します。ゲームは受け取った入力に基づいて状態を更新し、次のフレームを生成します。

このサイクルが毎秒何十回も繰り返されることで、リモートでのゲームプレイが実現します。

3.2 低遅延ストリーミングのための技術的側面

快適なRemote Play Together体験には、このストリーミングサイクル全体の「遅延」をいかに小さくするかが鍵となります。遅延の要因は複数ありますが、主なものは以下の通りです。

  • エンコーディング遅延: ホスト側で映像を圧縮するのにかかる時間。ハードウェアエンコーダーを使うことで大幅に短縮できます。
  • ネットワーク遅延(Ping): データがホストからクライアント、そしてクライアントからホストへとインターネットを往復するのにかかる時間。これは物理的な距離や回線品質に依存します。
  • デコーディング遅延: クライアント側で受信した映像データを解凍するのにかかる時間。こちらもハードウェアデコーダーを使うことで短縮できます。
  • 描画遅延: クライアントの画面にデコードされた映像が表示されるまでの時間。
  • ゲーム内遅延: ゲーム自体のフレームレートや内部処理にかかる時間。
  • 入力処理遅延: クライアントの入力がホストに届き、ゲームで処理されるまでの時間。

Steam Remote Play Togetherは、これらの遅延を最小限に抑えるために、いくつかの技術的な工夫を行っています。

  • ハードウェアエンコーディング/デコーディングの活用: NVIDIA (NVENC), AMD (VCE/VCN), Intel (Quick Sync Video) など、現代のGPUやCPUに搭載されている専用のハードウェアエンコーダー/デコーダーを活用することで、エンコードとデコードの処理を高速化し、CPUへの負荷を軽減します。
  • ネットワーク最適化: UDPプロトコルを使用したり、エラー訂正や再送信のメカニズムを最適化したりすることで、限られた帯域幅でも安定したストリーミングを実現しようとします。
  • 適応的ビットレート: ネットワーク帯域幅の状況に応じて、ストリーミングする映像のビットレート(データ量)を動的に調整します。回線が混雑している場合はビットレートを下げて映像品質を犠牲にすることで、遅延や切断を防ぎます。
  • 低遅延パイプライン: 映像処理パイプライン全体を通して、遅延を意識した設計がされています。例えば、クライアントからの入力を予測してホスト側で先読み処理を行ったり、映像データの送信を急いだりするといった技術が使われている可能性があります。

3.3 解像度、フレームレート、ビットレート

ゲームストリーミングの品質とパフォーマンスは、主に以下の3つの設定要素に影響されます。

  • 解像度 (Resolution): ストリーミングする映像のピクセル数です。ホストのゲーム画面の解像度がそのままクライアントに送られるわけではなく、Remote Playの設定で送信する解像度を指定できます。高い解像度(例:1920×1080, 4K)ほど映像は鮮明になりますが、必要な帯域幅が増え、エンコード/デコードの負荷も高まります。
  • フレームレート (Frame Rate): 1秒あたりに送信する映像フレームの数です。高いフレームレート(例:60fps)ほど映像は滑らかになりますが、これも必要な帯域幅が増え、エンコード/デコードの負荷が高まります。特に動きの速いゲームではフレームレートが重要です。
  • ビットレート (Bitrate): 1秒あたりに送信される映像データの量です(通常Mbps: Megabits per secondで表されます)。ビットレートが高いほど、同じ解像度とフレームレートでも映像の圧縮率が低くなり、より詳細でクリアな映像になります(特に複雑な動きや細かいテクスチャがあるシーンで差が出やすい)。しかし、ビットレートが高いほど必要なネットワーク帯域幅が増えます。Remote Play Togetherでは、帯域幅を自動で調整する機能もありますが、手動で上限を設定することも可能です。

これらの設定は、パフォーマンス、映像品質、ネットワーク負荷の間でトレードオフの関係にあります。回線が遅い場合やPCスペックが低い場合は、解像度やフレームレート、ビットレートを下げることで、遅延を減らしたり、ストリームの安定性を向上させたりできる可能性があります。

3.4 ホスト側のハードウェア要件と推奨設定

Remote Play Togetherのパフォーマンスは、ホスト側のPCスペックに大きく依存します。

  • CPU: ゲーム自体の実行に加えて、映像のキャプチャ、エンコーディング、そしてクライアントからの入力処理を行います。特にソフトウェアエンコーディングを使用する場合は、CPU性能が非常に重要になります。ゲームの推奨スペックを満たすCPUがあれば十分なことが多いですが、余裕があるに越したことはありません。
  • GPU: ゲームのレンダリング(描画処理)を行います。また、ハードウェアエンコーディング/デコーディングをサポートしているGPUであれば、エンコード/デコード処理を肩代わりし、CPU負荷を大幅に軽減できます。新しい世代のGPUほど、エンコーディング性能や品質が向上しています。NVIDIA GeForce GTX 650以降、AMD Radeon HD 7000シリーズ以降、Intel Ivy Bridge以降のCPU内蔵グラフィックスなどがハードウェアエンコーディングをサポートしています。
  • メモリ (RAM): ゲーム自体が必要とするメモリに加えて、ストリーミングバッファなどのためにある程度の余裕が必要です。通常、ゲームの推奨メモリ容量があれば問題ありません。
  • ネットワークインターフェース: 有線LAN接続が最も推奨されます。Wi-Fiでも可能ですが、無線は環境によって不安定になりやすく、遅延が発生しやすいです。Wi-Fiを使用する場合は、最新の規格(Wi-Fi 5/acやWi-Fi 6/ax)に対応したルーターとアダプターを使用し、電波干渉の少ない環境を整えることが望ましいです。
  • ストレージ: ゲームの読み込み速度はセッションの開始には影響しますが、ストリーミング中のパフォーマンスには直接的な影響は少ないです。ただし、ゲーム自体がカクつくような低速なストレージ(古いHDDなど)を使用している場合は、その影響がストリームにも現れます。

推奨設定(ホスト側):

  • 有線LAN接続: 可能であれば、ホストPCはルーターと有線LANケーブルで接続してください。
  • 高性能なPC: ゲームの推奨スペックを十分に満たし、ハードウェアエンコーディングに対応したGPUを搭載していることが望ましいです。
  • 最新のグラフィックドライバー: GPUメーカー(NVIDIA, AMD, Intel)のウェブサイトから最新のドライバーをダウンロードしてインストールしてください。ハードウェアエンコーディングのパフォーマンスや安定性が向上することがあります。
  • ゲーム以外の不要なアプリケーションを閉じる: ゲームとストリーミング処理にリソースを集中させるため、不要なアプリケーションは終了させてください。
  • Windowsの電源設定を「高パフォーマンス」にする: PCが最高の性能を発揮できるように設定します。

3.5 クライアント側のハードウェア要件

クライアント側のPCやデバイスは、ホスト側ほど高いスペックは要求されません。主な役割は、ストリームの受信、デコード、表示、そして入力の送信だからです。

  • CPU/GPU: デコード処理をハードウェアで行える環境であれば、比較的低スペックなPCでも対応可能です。フルHD 60fpsのストリームをデコードするには、それなりの処理能力が必要ですが、現代のほとんどのPCやスマートフォンであれば問題なく対応できることが多いです。古いPCや、ハードウェアデコーダーを持たない環境では、ソフトウェアデコードに頼ることになり、CPU負荷が高まる可能性があります。
  • メモリ (RAM): ストリームのバッファリングなどのためにある程度のメモリが必要です。
  • ネットワークインターフェース: こちらも有線LAN接続が最も推奨されます。PC以外(スマートフォン、タブレットなど)で参加する場合は、安定した高速なWi-Fi接続が必要です。ホストとの物理的な距離、壁や他のデバイスによる干渉などが通信品質に影響します。
  • 入力デバイス: ゲームに対応したコントローラー、キーボード、マウスなどが必要です。

推奨設定(クライアント側):

  • 有線LAN接続(PCの場合): 可能であれば有線接続が最も安定します。
  • 安定したWi-Fi接続(モバイルデバイスなどの場合): ルーターの近くで、他の無線機器との干渉が少ない場所で使用することが望ましいです。
  • ハードウェアデコーディングに対応したデバイス: デコード処理をハードウェアで行えるデバイスの方が、低遅延で滑らかなストリームを楽しめます。
  • 最新のグラフィックドライバー(PCの場合): ホスト側と同様に、最新ドライバーが推奨されます。
  • SteamクライアントまたはSteam Linkアプリの最新バージョン: アプリケーションのバージョンが古いと、互換性の問題やパフォーマンスの問題が発生する可能性があります。

第4章:快適なリモートプレイのための設定と最適化

Remote Play Togetherのパフォーマンスは、デフォルト設定のままだと最適な状態ではない場合があります。この章では、Steamクライアントの設定やネットワーク環境を見直すことで、より快適なゲームストリーミングを実現するための具体的な方法を解説します。

4.1 SteamクライアントのRemote Play設定

Steamクライアントには、Remote Play Togetherを含むRemote Play機能に関する詳細な設定項目があります。これらの設定を調整することで、パフォーマンスを改善できる場合があります。

  1. Steamクライアントを開きます。
  2. 左上のメニューから「Steam」->「設定」を選択します。
  3. 設定ウィンドウの左側のリストから「リモートプレイ」を選択します。

ここで、リモートプレイに関する様々な設定を行うことができます。

  • コンピューター: リモートプレイのホストとして登録されているPCが表示されます。ホストとして使うPCが正しくリストアップされているか確認できます。
  • 詳細ホストオプション: ホスト側の設定です。
    • ハードウェアエンコーディングを有効にする: これをチェックすると、対応するGPUがエンコーディング処理を行います。多くの場合、パフォーマンスが向上し、CPU負荷が軽減されます。問題が発生しない限り、有効にすることをおすすめします。ただし、一部の環境や古いGPUでは、逆に問題を引き起こすこともあります。問題が発生した場合は無効にしてみてください。
    • HEVC エンコーディングを有効にする: H.265 (HEVC) コーデックは、H.264 (AVC) よりも圧縮効率が高い新しい規格です。有効にすると、同じ画質をより低いビットレートでストリーミングできる可能性がありますが、ホストとクライアント双方のハードウェアがHEVCエンコーディング/デコーディングに対応している必要があります。対応していない環境で有効にしても効果がないか、問題が発生する可能性があります。最新のハードウェアを使用している場合は試してみる価値があります。
    • 対応している場合、特定のNVFBCキャプチャ方式を使用: NVIDIA GPUを使用している場合の設定です。NVFBCは、NVIDIAの特定の技術を使って画面をキャプチャする方式で、より効率的なキャプチャができる可能性があります。通常はデフォルト設定のままで問題ありません。
  • 詳細クライアントオプション: クライアント側の設定ですが、Remote Play Togetherの場合はホストがクライアントの代わりに設定を調整することになります。
    • ハードウェアデコーディングを有効にする: クライアント側(ストリームを受信する側)で、対応するハードウェアデコーダーを使ってデコード処理を行います。こちらも有効にすることでデコード処理が高速化し、遅延が減少する可能性があります。問題が発生しない限り有効にすることをおすすめします。
    • HEVC デコーディングを有効にする: HEVCでエンコードされたストリームをデコードできるようになります。ホスト側でHEVCエンコーディングを有効にする場合は、こちらも有効にする必要があります。
    • デコーディングのスレッド数: ソフトウェアデコードを使用する場合に、デコード処理に使うCPUスレッド数を調整できます。通常は自動設定で問題ありません。

4.2 パフォーマンス設定の調整

「リモートプレイ」設定画面の左下にある「詳細なクライアント設定」ボタン(ホストが他のプレイヤーの設定を調整する場合も、ここから行うことが多いです)または「詳細なホスト設定」ボタンをクリックすると、ストリーミングに関するさらに詳細な設定を行うことができます。Remote Play Togetherでは、ホストがこれらの設定をコントロールします。

  • パフォーマンスオーバーレイ: ゲーム中に画面にパフォーマンス統計(フレームレート、Ping、帯域幅使用量など)を表示するかどうかを設定できます。トラブルシューティングやボトルネックの特定に非常に役立ちます。表示レベルを「シンプル」または「詳細」に設定できます。常に表示させておくと、セッション中のパフォーマンス状況を把握しやすくなります。
  • 品質設定:
    • 画質 (Quality):
      • 高速 (Fast): 可能な限り遅延を最小限に抑える設定です。画質は低下しますが、動きの速いゲームなど遅延を嫌う場合に有利です。帯域幅の使用量も比較的少なくなります。
      • バランス (Balanced): 遅延と画質のバランスが取れた設定です。多くの環境で推奨される設定です。
      • 高画質 (Beautiful): 画質を最優先する設定です。遅延は増加し、必要な帯域幅も増えますが、最も鮮明な映像で楽しめます。回線速度に余裕があり、ホストPCのエンコード性能が高い場合に適しています。
    • 解像度の上限: クライアントにストリーミングする解像度の最大値を設定します。ホストPCの画面解像度より低い解像度を指定することで、必要な帯域幅を減らし、エンコード負荷を軽減できます。クライアントの画面解像度に合わせて設定するか、ネットワーク環境に合わせて下げてみてください。
    • フレームレートの上限: クライアントにストリーミングするフレームレートの最大値を設定します。通常は60 fpsで十分ですが、ホストPCの性能が低い場合や回線が遅い場合は、30 fpsに制限することで安定性が向上する場合があります。ゲームによってはフレームレートが低いと操作感が悪化する場合があるので、ゲームの種類に応じて調整してください。
    • 帯域幅の上限 (Limit bandwidth): ストリーミングに使用するネットワーク帯域幅の最大値を手動で設定できます。回線速度に余裕がない場合や、同じネットワーク上で他のデバイスもインターネットを使用している場合に、帯域幅の上限を設定することで、Remote Play Togetherが帯域幅を使いすぎないように制御できます。「自動 (Automatic)」設定がデフォルトですが、手動で具体的な値を指定することも可能です。パフォーマンスオーバーレイで実際の帯域幅使用量を確認しながら調整すると良いでしょう。例えば、回線の上り速度が10Mbpsしかないのに、自動設定で20Mbpsを使おうとしてしまっている場合などに、手動で8Mbpsなどに制限することでかえって安定することがあります。
  • ネットワークテスト: ホストPCとSteamサーバー間のネットワーク接続品質をテストできます。ストリーミングパフォーマンスに影響を与える可能性のあるネットワークの問題を診断するのに役立ちます。

これらの設定は、ホストのPCスペック、ネットワーク環境、そしてクライアント側の環境によって最適な値が異なります。パフォーマンスオーバーレイを表示しながら、画質設定や帯域幅の上限などを少しずつ変更して、最も快適にプレイできる設定を見つけるのがおすすめです。

4.3 ゲーム内設定の最適化

Remote Play TogetherはホストのPCでゲームが実行されるため、ゲーム自体の設定もストリーミングパフォーマンスに影響します。

  • グラフィック設定: ホストPCのグラフィック設定は、ゲームの実行フレームレートとGPU負荷に直接影響します。Remote Play Togetherを使用する場合、ゲームのフレームレートを安定させることが重要です。ホストPCの性能が十分に高くない場合は、ゲーム内のグラフィック設定(解像度、テクスチャ品質、影、エフェクトなど)を下げて、ゲームが常に安定して高いフレームレート(理想的には60fps以上)で動作するように調整してください。ゲームがカクついている状態では、いくらストリーミング設定を最適化しても滑らかな画面共有はできません。
  • フルスクリーン vs ウィンドウモード: 一般的に、フルスクリーンモードの方がシステムリソースをゲームに集中させやすいため、ゲーム自体のパフォーマンスが向上し、結果としてストリーミングにも良い影響を与えることが多いです。ただし、ホストがゲーム中に他の作業をする必要がある場合などはウィンドウモードが便利です。

4.4 ネットワーク環境の最適化

Remote Play Togetherのパフォーマンスを最も左右するのはネットワーク環境です。ホストとクライアント双方のネットワーク環境が重要です。

  • インターネット回線速度:
    • 上り(アップロード)速度(ホスト側): ホストはゲーム画面の映像データをアップロードする必要があります。高い解像度やフレームレートでストリーミングする場合、数Mbpsから数十Mbpsの上り速度が必要です。快適なストリーミングのためには、少なくとも10Mbps以上、可能であれば20Mbps以上の安定した上り速度が推奨されます。契約しているインターネット回線の速度プランを確認し、速度テストサイトなどで実際の速度を測定してみましょう。
    • 下り(ダウンロード)速度(クライアント側): クライアントはホストから送られてくる映像データをダウンロードする必要があります。ホストの上り速度と同等かそれ以上の下り速度が必要です。
  • Ping値(遅延): データがネットワークを往復するのにかかる時間です。ゲームストリーミングにおいて、Ping値は操作遅延に直結します。Ping値が低いほど、操作してから画面に反映されるまでの時間が短くなります。理想的には数ミリ秒(ms)から数十ミリ秒であるべきです。100msを超えるようなPing値では、多くのアクションゲームで快適なプレイは難しいでしょう。Ping値はホストとクライアント間の物理的な距離、インターネットプロバイダの経路、ルーターの性能、ネットワークの混雑状況など様々な要因で変動します。
  • 有線LAN接続の推奨: 可能であれば、ホストPCもクライアントPCも、Wi-Fiではなく有線LANケーブルでルーターに接続してください。有線接続は無線接続よりも安定しており、遅延が少なく、帯域幅も確保しやすいため、Remote Play Togetherのパフォーマンスを劇的に改善する可能性があります。
  • Wi-Fi環境の改善: 有線接続が難しい場合は、Wi-Fi環境を最適化します。
    • ルーターの設置場所: ルーターは家の中央付近に置き、壁や障害物を避けて高い場所に設置するのが理想的です。
    • 周波数帯: 2.4GHz帯よりも5GHz帯の方が高速で電波干渉を受けにくい傾向がありますが、壁などの障害物に弱いです。環境に合わせて適切な周波数帯を選びましょう。Wi-Fi 6E対応ルーターであれば、より広い6GHz帯も利用可能です。
    • チャンネルの選択: 近隣のWi-Fiルーターが使用しているチャンネルと競合していると、通信が不安定になります。ルーターの設定画面やWi-Fi分析アプリを使って、空いているチャンネルを選択すると良いでしょう。
    • ルーターの再起動/ファームウェア更新: ルーターの調子が悪い場合は再起動してみたり、メーカーのウェブサイトで最新のファームウェアが公開されていないか確認してみましょう。
    • Wi-Fiエクステンダー/メッシュWi-Fi: 広い家で電波が届きにくい場所がある場合は、Wi-FiエクステンダーやメッシュWi-Fiシステムを導入するのも有効です。
  • ルーター設定:
    • UPnP (Universal Plug and Play): UPnPが有効になっていると、アプリケーション(Steamなど)が自動的に必要なポートを開放できるようになります。これにより、Remote Play Togetherの接続がスムーズになる場合があります。ルーターの設定画面で確認し、有効になっているか確認してください。セキュリティ上の懸念から無効にしている場合は、手動で必要なポート(Steam Remote Playで使用されるポートなど、Steamサポートページで確認可能)を開放する必要があります。
    • QoS (Quality of Service): QoS機能は、特定の種類の通信(例えばゲームのデータ)に優先順位を付けて帯域幅を割り当てる機能です。ルーターがQoSに対応している場合、Remote Play Togetherの通信に優先順位を高く設定することで、他のネットワークアクティビティ(動画視聴やダウンロードなど)の影響を受けにくくし、安定したストリーミングを実現できる可能性があります。ルーターのマニュアルを参照して設定方法を確認してください。
  • 他のネットワーク使用状況: Remote Play Togetherセッション中に、同じネットワーク上の他のデバイスで大量の帯域幅を使用するアクティビティ(高画質動画のストリーミング、大容量ファイルのダウンロード、他のオンラインゲームなど)が行われていると、Remote Play Togetherに使用できる帯域幅が圧迫され、パフォーマンスが低下します。可能な限り、他の帯域幅消費を抑えるように協力してもらうと良いでしょう。

これらのネットワーク環境の最適化は、特にパフォーマンス問題が発生している場合に最も効果的な改善策となることが多いです。ホスト側だけでなく、クライアント側のネットワーク環境も重要です。

第5章:トラブルシューティングとよくある問題の解決策

Remote Play Togetherは便利な機能ですが、ネットワーク環境やPC環境は千差万別なため、様々な問題が発生する可能性があります。この章では、よくある問題とその解決策を詳しく解説します。

5.1 接続できない、招待が届かない、セッションに参加できない

  • Steamクライアントの確認: ホストもクライアントも、最新バージョンのSteamクライアントが起動しており、オンラインになっていることを確認してください。
  • フレンド状態の確認: 招待する側とされる側がSteam上でフレンドになっているか確認します(フレンド以外を招待する場合はリンク招待を使用します)。
  • 招待の再送: 一度招待をキャンセルし、もう一度招待を送り直してみてください。
  • Steamサーバーの状態: まれにSteamのサーバー側で問題が発生している可能性があります。Steam Statusなどのサイトでサーバーの状態を確認してみましょう。
  • ファイアウォールとアンチウイルスソフト: ホストとクライアント双方のPCで動作しているファイアウォールやアンチウイルスソフトが、Steamの通信をブロックしている可能性があります。Steamやゲームの実行ファイル、そしてSteam Remote Playで使用されるポート(UDP 27031, 27036; TCP 27036, 27037など。正確なポート情報はSteamサポートページで確認してください)を例外として許可するように設定してください。
  • ルーターのファイアウォール: ルーターにもファイアウォール機能がある場合があります。Steam Remote Playに関連する通信がブロックされていないか確認してください。UPnPを有効にするか、手動でポート開放が必要な場合があります。
  • VPNの使用: VPNを使用している場合、Remote Play Togetherの通信が適切に行われないことがあります。VPNを一時的に無効にして試してみてください。
  • 招待リンクの確認: リンク招待の場合、リンクが正しくコピーされ、招待される側が正しくアクセスできているか確認してください。リンクは使い捨てなので、セッションごとに新しいリンクを生成する必要があります。

5.2 ストリームがカクつく、遅延が大きい、映像が途切れる

これは最もよくある問題で、主にネットワーク環境やホストPCのパフォーマンスが原因です。

  • パフォーマンスオーバーレイの確認: ゲーム中にパフォーマンスオーバーレイを表示し、何がボトルネックになっているかを確認します。
    • Ping値: Ping値が高い(例えば100ms以上)場合、ネットワーク遅延が主な原因です。ホストとクライアントの間の物理的な距離が遠すぎる、回線品質が悪い、ルーターの性能が低い、ネットワークが混雑している、Wi-Fiが不安定などが考えられます。ネットワーク環境の最適化(第4章参照)を試してください。
    • フレームレート: ゲームのフレームレートが低い(例えば60fpsを下回っている)場合、ホストPCの性能不足が考えられます。ゲーム内のグラフィック設定を下げるか、ホストPCのハードウェアをアップグレードすることを検討してください。
    • エンコード/デコード時間: エンコードまたはデコードに時間がかかっている場合、ホストPCのエンコーディング能力、またはクライアントPCのデコーディング能力が不足している可能性があります。ハードウェアエンコーディング/デコーディングが有効になっているか確認し、必要に応じてパフォーマンス設定(画質、解像度、フレームレート)を下げるか、ホストPCのGPUドライバーを更新してみてください。
    • 帯域幅使用量: 帯域幅が不足している場合、ストリームの品質が低下したり、途切れたりします。ホストの上り速度、クライアントの下り速度、そしてネットワーク全体の使用状況を確認します。Remote Play設定で帯域幅の上限を手動で設定し、利用可能な帯域幅よりも低い値に制限してみると安定することがあります。
  • 有線LAN接続への切り替え: 最も効果的な改善策の一つです。ホストとクライアント双方、可能であれば有線LAN接続に切り替えてみてください。
  • Wi-Fi環境の改善: 有線が難しい場合は、Wi-Fiルーターの設置場所、周波数帯、チャンネルなどを最適化します。
  • ルーターのQoS設定: Remote Play Togetherの通信に優先順位を付けてみてください。
  • パフォーマンス設定の調整:
    • 画質設定を「バランス」または「高速」に下げる。
    • 解像度の上限、フレームレートの上限を低く設定する(例:1920×1080 → 1280×720, 60fps → 30fps)。
    • 帯域幅の上限を手動で設定する。
  • ハードウェアエンコーディング/デコーディングの切り替え: 環境によっては、ハードウェアエンコーディング/デコーディングを無効にした方が安定する場合もあります。有効/無効を切り替えて試してみてください。
  • ホストPCの負荷軽減: ホストPCでゲーム以外の不要なアプリケーションを全て終了させ、ゲームとストリーミング処理にリソースを集中させます。
  • 最新ドライバーの確認: ホストとクライアント双方のグラフィックドライバー、ネットワークアダプタードライバーが最新であることを確認します。

5.3 音声が出ない、途切れる、遅延する

  • ホストPCの音声設定: ホストPCでゲームの音声が正しく出力されているか確認します。Windowsのミキサー設定なども確認してください。
  • クライアントPC/デバイスの音声設定: クライアント側のスピーカーやヘッドホンが正しく接続されており、音量設定が適切か確認します。Steam Linkアプリなどを使用している場合は、アプリ内の音声設定も確認します。
  • Steam Remote Playの音声設定: Steam設定のリモートプレイオプションに関連する音声設定があるか確認します(通常は自動でゲーム音声をキャプチャします)。
  • ネットワークの問題: 音声の途切れは、ネットワークの不安定さを示すサインでもあります。映像のカクつきと同様に、ネットワーク環境の最適化を試してください。
  • パフォーマンス設定: 帯域幅の上限を低く設定しすぎると、音声品質も低下したり途切れたりすることがあります。自動設定に戻してみるか、帯域幅を増やしてみてください。

5.4 コントローラーが認識されない、誤動作する

  • Steam Inputの設定: Steamには「Steam Input」という、様々なコントローラーの入力をカスタマイズ・標準化する機能があります。これがRemote Play Togetherのコントローラー認識に影響することがあります。
    • Steam設定の「コントローラー」->「一般コントローラー設定」で、使用するコントローラーの種類(Xbox、PlayStation、Genericなど)に対応するサポートにチェックが入っているか確認します。
    • ゲームによっては、Steam Inputの「ゲームごとのコントローラー設定」で特定のゲームに対して個別の設定を行う必要があります。
    • 「Steam Inputを使用しない」または「ゲーム設定を使用」を選択することで、ゲーム本来のコントローラー認識機能を使うこともできます。ゲームやコントローラーとの相性を見ながら試してみてください。
  • 入力デバイスの割り当て: ホスト側のSteamオーバーレイから、参加しているプレイヤーに正しい入力デバイスが割り当てられているか確認・調整します。
  • 複数の入力デバイス: ホストPCに複数のコントローラーが接続されている場合や、仮想コントローラーソフトウェアなどがインストールされている場合、意図しないコントローラーが割り当てられたり、入力が競合したりすることがあります。不要なコントローラーや仮想デバイスは物理的に切断するか無効にして試してみてください。
  • コントローラーの接続方法: 有線接続のコントローラーの方が、無線接続(Bluetoothなど)よりも安定していることが多いです。
  • クライアントデバイスのOS設定: クライアント側のPCやモバイルデバイスのOSレベルで、コントローラーが正しく認識されているか確認します。
  • Steam Linkアプリの設定: スマートフォンなどでSteam Linkアプリを使用している場合、アプリ内のコントローラー設定を確認します。

5.5 画面が真っ暗になる、フリーズする

  • ホストPCのゲーム状態: ホスト側のPC画面でゲームが正常に動作しているか確認します。ホストPC自体でゲームがクラッシュしたりフリーズしたりしている場合、当然クライアント側も画面が停止します。
  • ホストPCの画面解像度/リフレッシュレート: まれに、ホストPCの画面解像度やリフレッシュレートがRemote Play Togetherと相性が悪い場合があります。一般的な解像度(1920×1080など)やリフレッシュレート(60Hzなど)に設定してみてください。
  • ハードウェアエンコーディング/デコーディングの問題: 特定のハードウェアエンコーダー/デコーダーやドライバーのバージョンで問題が発生し、画面が真っ暗になることがあります。Steam設定でハードウェアエンコーディング/デコーディングを無効にして、ソフトウェア処理に切り替えてみてください。これで解決する場合、GPUドライバーのバグや互換性の問題が考えられます。最新のドライバーに更新するか、以前の安定したバージョンに戻すことを検討してください。
  • ゲームの互換性: ごくまれに、Remote Play Togetherとの互換性に問題があるゲームが存在する可能性があります。Steamコミュニティハブなどで他のユーザーの報告を確認してみましょう。
  • セキュリティソフトの影響: ファイアウォールやアンチウイルスソフトがストリーム自体を誤ってブロックしている可能性もゼロではありません。一時的に無効にして試す(ただし自己責任で)か、Steamとゲームを例外として登録してください。

5.6 Steamサポートへの問い合わせ

上記で解決しない問題が発生した場合、Steamサポートに問い合わせることも検討しましょう。その際には、以下の情報を提供すると、より迅速かつ的確なサポートを受けられる可能性が高まります。

  • 発生している問題の詳細(具体的な状況、エラーメッセージなど)
  • ホストPCのOS、CPU、GPU、メモリなどのスペック
  • クライアントPC/デバイスのOS、ハードウェア情報
  • 使用している入力デバイス
  • ホストとクライアント双方のネットワーク環境(インターネット回線の種類、速度、有線/無線接続、ルーターの機種など)
  • 試したトラブルシューティング手順
  • 問題が発生しているゲームタイトル
  • Steamクライアントのバージョン

第6章:応用的な使い方と今後の展望

この章では、Remote Play Togetherのその他の活用方法や、将来的な可能性について少し触れます。

6.1 Steam Linkアプリとの連携

Remote Play Togetherは、Steam Linkアプリと組み合わせて使用することで、さらに様々なデバイスからゲームに参加できるようになります。Steam Linkアプリは、Windows、macOS、Linux、Android、iOS、Raspberry Piなど、多くのプラットフォームで利用可能です。

  • モバイルデバイスからの参加: スマートフォンやタブレットにSteam Linkアプリをインストールすれば、Wi-Fi経由でホストのRemote Play Togetherセッションに参加し、画面を見ながらプレイできます。タッチ操作や、Bluetoothで接続したコントローラーを使ってプレイできます。
  • リビングルームのテレビで: Raspberry PiにSteam Linkをインストールしてテレビに接続すれば、PCをリビングに持ち運ばなくても、ホストPCで実行されているゲームを大画面で楽しむことができます。

Steam Linkアプリは、もともとSteamの「Remote Play Anywhere」(自宅内でのストリーミング)のために開発されたものですが、Remote Play Togetherにもそのまま利用できます。

6.2 Steam Deckでの利用

Valveが開発した携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」も、Remote Playクライアントとして機能します。Steam Deckを使ってRemote Play Togetherセッションに参加すれば、ホストPCで実行されているゲームを携帯機スタイルで楽しむことができます。Steam Deckの高い携帯性と内蔵コントローラーは、Remote Play Togetherクライアントとして非常に相性が良いと言えます。もちろん、ホストとしてRemote Play Togetherセッションを開始することも可能です。

6.3 キーボード&マウス操作の共有

Remote Play Togetherは主にコントローラー操作を想定していますが、ゲームによってはキーボードとマウスを使ったローカルマルチプレイに対応しているものもあります。Remote Play Togetherでも、これらの入力デバイスを共有してプレイすることが可能です。

ホストはキーボードとマウスを通常通り使用し、クライアントも自分のPCに接続したキーボードとマウスを使って操作入力をホストに送信できます。ただし、複数のプレイヤーが同時にキーボードやマウスを使用するゲーム(例えば、特定のポイント&クリック協力ゲームなど)は限られているため、対応ゲームは少なくなります。主に、ホストがキーボード&マウス、クライアントがコントローラー、といった組み合わせで利用されることが多いでしょう。

6.4 ゲーム以外の用途(限定的)

Remote Play Togetherはあくまでゲームプレイに特化した機能であり、一般的なPCの画面共有機能とは異なります。ホストPCのゲーム画面のみがストリーミングされ、デスクトップ全体や他のアプリケーションのウィンドウは通常ストリーミングされません。

しかし、フルスクリーン表示に対応していないごく一部のアプリケーションで、ホストPCの画面全体をキャプチャしてRemote Playストリームに乗せることが可能な場合があります。ただし、これは非公式な使い方であり、安定性やセキュリティの面で推奨されません。また、ゲームに特化しているため、通常の画面共有ツール(Discordの画面共有、Zoomなど)に比べて、ゲーム以外の用途での使い勝手は劣ります。あくまでゲームを共有するための機能として割り切って利用するのが賢明です。

6.5 今後の展望

Steam Remote Play Togetherは、リリース以降も継続的に改善が続けられています。

  • パフォーマンスと安定性の向上: ストリーミング技術の最適化や新しいコーデックのサポートにより、さらなる低遅延化や高画質化が進む可能性があります。
  • 互換性の拡大: より多くのローカルマルチプレイヤーゲームがRemote Play Togetherに正式対応していくことが期待されます。
  • 新機能の追加: セッション管理機能の強化、より詳細なパフォーマンス診断ツール、異なるプラットフォーム間での連携強化などが考えられます。
  • Steam Deckとの連携強化: Steam Deckの普及に伴い、Remote Play機能がSteam Deckとさらにシームレスに連携していく可能性も高いでしょう。

Remote Play Togetherは、ローカルマルチプレイヤーゲームという特定のジャンルにオンラインプレイの可能性をもたらす画期的な機能です。技術的な制約やネットワーク環境に依存する面はありますが、適切に設定し最適化することで、遠く離れた友達とも昔ながらのゲーム体験を共有できる素晴らしいツールとなります。

まとめ:Remote Play Togetherで広がるゲームの可能性

Steam Remote Play Togetherは、地理的な制約を越えてローカルマルチプレイヤーゲームを楽しむための革新的な機能です。ホストがゲームを所有していれば、他のプレイヤーはゲームを持っていなくても一緒にプレイできます。その仕組みは、ホストのPCでゲームを実行し、その「画面と音声」をクライアントに「ストリーミング」し、クライアントの操作入力をホストに送り返すという、ゲームストリーミング技術によって成り立っています。ユーザーにとっては、まるで一つの画面を囲んでプレイしているかのような感覚で楽しめます。

快適な「画面共有」(ゲームストリーミング)を実現するためには、ホストPCのスペック、特にGPUとCPU性能、そしてホストとクライアント双方の安定した高速なネットワーク環境(特に低Ping値と十分な帯域幅)が非常に重要です。SteamクライアントのRemote Play設定で、画質、解像度、フレームレート、帯域幅などを調整し、ハードウェアエンコーディング/デコーディングを有効にすることで、パフォーマンスを最適化できます。また、ネットワーク環境を有線LANに切り替えたり、Wi-Fi環境を改善したり、ルーター設定を見直したりすることも、遅延や不安定さを解消する上で極めて有効な手段となります。

もし問題が発生した場合は、Steamのパフォーマンスオーバーレイを活用してボトルネックを特定し、本記事で紹介したトラブルシューティング手順(接続問題、遅延、音声、コントローラーなど)を試してみてください。

Remote Play Togetherは完璧な機能ではなく、物理的なローカルマルチプレイに比べて遅延が避けられないという限界はあります。特にシビアなタイミングが要求されるゲームでは、遅延がプレイに影響を与える可能性があります。しかし、多くのゲームにおいては、設定と環境を最適化することで、十分に快適に楽しめるレベルになります。

Steam Remote Play Togetherは、眠っていたローカルマルチプレイヤーゲームに新たな命を吹き込み、友人や家族との繋がりをゲームを通じて再発見する機会を与えてくれます。この記事が、あなたがRemote Play Togetherを最大限に活用し、素晴らしいゲーム体験を共有するための一助となれば幸いです。さあ、お気に入りのローカルマルチプレイヤーゲームを起動し、Remote Play Togetherで遠くの仲間を招待してみましょう!


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