AWS Backup 料金ガイド:オンデマンド/継続バックアップの違いとコスト最適化


AWS Backup 料金ガイド:オンデマンド/継続バックアップの違いとコスト最適化

はじめに

クラウド環境におけるデータ保護は、事業継続性、コンプライアンス、およびデータ復旧にとって不可欠です。AWS Backupは、AWSサービス全体でデータ保護を集中管理し、自動化するためのフルマネージドサービスです。本記事では、AWS Backupの料金体系、オンデマンドバックアップと継続的バックアップの違い、およびコストを最適化するための戦略について詳しく解説します。

1. AWS Backup の概要

AWS Backupは、さまざまなAWSサービス(Amazon EC2、Amazon EBS、Amazon RDS、Amazon DynamoDB、Amazon S3、Amazon EFS、Amazon FSxなど)にわたるバックアップと復元プロセスを一元化するサービスです。これにより、バックアップポリシーの定義、バックアップスケジュールの設定、バックアップデータの保持期間の管理などを一元的に行うことができます。

1.1 AWS Backup の主な機能

  • 集中管理: 複数のAWSサービスにわたるバックアップポリシーを一元的に管理できます。
  • 自動化: バックアップスケジュールを定義し、自動的にバックアップを実行できます。
  • コンプライアンス: バックアップポリシーをコンプライアンス要件に合わせて設定できます。
  • 復元: バックアップデータからの迅速な復元をサポートします。
  • クロスリージョンバックアップ: バックアップデータを別のリージョンにコピーして、災害対策を強化できます。
  • クロスアカウントバックアップ: 複数のAWSアカウント間でバックアップデータを共有できます。
  • 継続的バックアップ: 一部のサービス(Amazon EBS、Amazon RDSなど)では、継続的なデータ保護を提供します。

1.2 AWS Backup のメリット

  • 運用コストの削減: バックアップインフラストラクチャの構築と管理が不要になり、運用コストを削減できます。
  • バックアップの一元管理: 複数のAWSサービスにわたるバックアップを単一のコンソールで管理できます。
  • コンプライアンスの強化: バックアップポリシーをコンプライアンス要件に合わせて設定することで、コンプライアンスを強化できます。
  • データ保護の向上: 自動化されたバックアップと復元プロセスにより、データ損失のリスクを軽減できます。

2. AWS Backup の料金体系

AWS Backupの料金は、主に以下の要素に基づいて計算されます。

  • 保護されたストレージの量: バックアップされたデータの量(GB単位)に応じて課金されます。
  • リストアの量: バックアップデータからリストアされたデータの量(GB単位)に応じて課金されます。
  • バックアップのコピー: バックアップデータを別のリージョンまたはアカウントにコピーする場合、そのデータの量に応じて課金されます。
  • バックアップジョブ: バックアップジョブの実行回数に応じて課金される場合があります。
  • 継続的バックアップ: 一部のサービスでは、継続的なデータ保護に対して追加料金が発生します。

2.1 保護されたストレージの料金

AWS Backupでは、バックアップされたデータの量(GB単位)に応じて料金が発生します。料金はリージョンによって異なり、また、バックアップデータのストレージ層(ウォームストレージ、コールドストレージ)によっても異なります。

  • ウォームストレージ: 頻繁にアクセスされるバックアップデータに適しています。比較的高価ですが、リストアにかかる時間が短縮されます。
  • コールドストレージ: あまりアクセスされないバックアップデータに適しています。安価ですが、リストアにかかる時間が長くなる可能性があります。

例:

東京リージョンで、100GBのデータをバックアップした場合、ウォームストレージの料金が1GBあたり月額0.057ドルであれば、月額料金は5.7ドルとなります。コールドストレージの料金が1GBあたり月額0.03ドルであれば、月額料金は3ドルとなります。

2.2 リストアの料金

バックアップデータからデータをリストアする場合、リストアされたデータの量(GB単位)に応じて料金が発生します。料金はリージョンによって異なります。

例:

東京リージョンで、50GBのデータをリストアした場合、リストアの料金が1GBあたり0.02ドルであれば、料金は1ドルとなります。

2.3 バックアップのコピーの料金

バックアップデータを別のリージョンまたはアカウントにコピーする場合、コピーされたデータの量(GB単位)に応じて料金が発生します。料金はリージョンによって異なり、また、データ転送の料金も加算されます。

例:

東京リージョンから大阪リージョンに100GBのデータをコピーした場合、コピーの料金が1GBあたり0.057ドル、データ転送の料金が1GBあたり0.02ドルであれば、料金は(0.057 + 0.02) * 100 = 7.7ドルとなります。

2.4 バックアップジョブの料金

一部のAWSサービスでは、バックアップジョブの実行回数に応じて料金が発生する場合があります。例えば、Amazon DynamoDBでは、オンデマンドバックアップジョブの実行回数に応じて料金が発生します。

例:

Amazon DynamoDBで、10回のオンデマンドバックアップジョブを実行した場合、1回のジョブあたり0.1ドルであれば、料金は1ドルとなります。

2.5 継続的バックアップの料金

Amazon EBSやAmazon RDSなどの一部のサービスでは、継続的なデータ保護を提供するために追加料金が発生します。継続的バックアップでは、データの変更を継続的に追跡し、ポイントインタイムリカバリを可能にします。

例:

Amazon EBSで継続的バックアップを有効にした場合、ストレージボリュームのサイズに応じて料金が発生します。料金はリージョンによって異なります。

3. オンデマンドバックアップと継続的バックアップの違い

AWS Backupでは、オンデマンドバックアップと継続的バックアップの2種類のバックアップ方式が提供されています。それぞれの特徴と料金体系について詳しく解説します。

3.1 オンデマンドバックアップ

オンデマンドバックアップは、特定の時点のデータを手動またはスケジュールに基づいてバックアップする方法です。通常、定期的なバックアップスケジュールを設定し、必要に応じて手動でバックアップを実行します。

  • 特徴:
    • 特定の時点のデータをバックアップします。
    • バックアップスケジュールを柔軟に設定できます。
    • 手動でバックアップを実行できます。
    • バックアップ頻度を調整することで、コストを最適化できます。
  • 料金:
    • 保護されたストレージの量に応じて料金が発生します。
    • リストアの量に応じて料金が発生します。
    • バックアップジョブの実行回数に応じて料金が発生する場合があります。

3.2 継続的バックアップ

継続的バックアップは、データの変更を継続的に追跡し、ポイントインタイムリカバリを可能にする方法です。データの変更が発生するたびにバックアップが実行されるため、より細かい粒度でデータを保護できます。

  • 特徴:
    • データの変更を継続的に追跡します。
    • ポイントインタイムリカバリが可能です。
    • より細かい粒度でデータを保護できます。
    • RPO(目標復旧時点)を最小限に抑えることができます。
  • 料金:
    • 保護されたストレージの量に応じて料金が発生します。
    • リストアの量に応じて料金が発生します。
    • 継続的なデータ保護に対して追加料金が発生します。

3.3 オンデマンドバックアップと継続的バックアップの比較

特徴 オンデマンドバックアップ 継続的バックアップ
バックアップ頻度 スケジュールまたは手動 継続的
復旧時点 特定の時点 ポイントインタイム
RPO スケジュールされたバックアップ間隔 最小限
コスト 低い 高い
適用対象 ほとんどのAWSサービス 一部のサービス(Amazon EBS、Amazon RDSなど)
ユースケース データの長期保存、定期的なバックアップ、コンプライアンス要件の遵守 データの継続的な保護、RPOの最小化、ミッションクリティカルなアプリケーション

4. AWS Backup のコスト最適化戦略

AWS Backupのコストを最適化するためには、以下の戦略を検討することが重要です。

4.1 バックアップ頻度の最適化

バックアップ頻度を適切に調整することで、不要なバックアップデータのストレージコストを削減できます。データの変更頻度やRPO要件を考慮して、最適なバックアップ頻度を設定します。

  • 変更頻度の低いデータ: バックアップ頻度を低く設定します。例えば、週次または月次のバックアップで十分な場合があります。
  • 変更頻度の高いデータ: バックアップ頻度を高く設定します。例えば、日次または時間ごとのバックアップが必要な場合があります。
  • 継続的バックアップ: データの変更を継続的に追跡する必要がある場合に選択します。RPOを最小限に抑えることができますが、コストが高くなる可能性があります。

4.2 バックアップデータの保持期間の最適化

バックアップデータの保持期間を適切に設定することで、不要なバックアップデータのストレージコストを削減できます。データの保持期間は、コンプライアンス要件やビジネス要件に基づいて決定します。

  • 長期保存が必要なデータ: コンプライアンス要件やビジネス要件に基づいて、適切な保持期間を設定します。
  • 短期保存で十分なデータ: 保持期間を短く設定し、不要になったバックアップデータは自動的に削除されるように設定します。
  • ライフサイクルポリシー: AWS Backupのライフサイクルポリシーを使用して、バックアップデータを自動的にコールドストレージに移行したり、削除したりすることができます。

4.3 ストレージ層の最適化

AWS Backupでは、ウォームストレージとコールドストレージの2種類のストレージ層が提供されています。データのアクセス頻度に応じて、適切なストレージ層を選択することで、ストレージコストを最適化できます。

  • ウォームストレージ: 頻繁にアクセスされるバックアップデータに適しています。リストアにかかる時間が短縮されますが、コストは高くなります。
  • コールドストレージ: あまりアクセスされないバックアップデータに適しています。安価ですが、リストアにかかる時間が長くなる可能性があります。

4.4 バックアップポリシーの最適化

AWS Backupのバックアップポリシーを最適化することで、不要なデータのバックアップを回避し、ストレージコストを削減できます。

  • バックアップ対象の絞り込み: バックアップ対象を必要なデータに絞り込み、不要なデータはバックアップしないように設定します。
  • タグベースのバックアップ: タグを使用して、バックアップ対象を柔軟に指定します。例えば、特定のタグが付いたリソースのみをバックアップするように設定できます。
  • 除外設定: 特定のファイルやディレクトリをバックアップから除外するように設定します。

4.5 バックアップの圧縮と重複排除

バックアップデータを圧縮したり、重複排除したりすることで、ストレージ容量を削減し、ストレージコストを最適化できます。

  • 圧縮: バックアップデータを圧縮することで、ストレージ容量を削減できます。
  • 重複排除: 重複するデータを削除することで、ストレージ容量を削減できます。ただし、AWS Backup自体には重複排除機能は組み込まれていないため、別途ツールやサービスを使用する必要があります。

4.6 クロスリージョンバックアップの最適化

クロスリージョンバックアップは、災害対策として有効ですが、データ転送コストが発生します。クロスリージョンバックアップの頻度や対象リージョンを最適化することで、コストを削減できます。

  • バックアップ頻度の調整: クロスリージョンバックアップの頻度を低く設定します。例えば、日次ではなく週次または月次に設定します。
  • 対象リージョンの選択: コスト効率の高いリージョンを選択します。
  • データ転送の最適化: データ転送を最適化するためのツールやサービスを使用します。

4.7 リストアの最適化

不要なリストアを避けることで、リストアにかかるコストを削減できます。

  • リストアテストの実施: 定期的にリストアテストを実施し、リストアプロセスが正常に機能することを確認します。
  • リストア範囲の絞り込み: 必要なデータのみをリストアするように、リストア範囲を絞り込みます。

5. AWS Backup の料金見積もりツール

AWS Backupの料金を見積もるためには、AWS Pricing Calculatorを使用することができます。AWS Pricing Calculatorを使用すると、バックアップ対象のAWSサービス、データの量、バックアップ頻度、保持期間などを入力することで、月額料金を見積もることができます。

6. まとめ

AWS Backupは、AWS環境におけるデータ保護を一元管理し、自動化するための強力なサービスです。オンデマンドバックアップと継続的バックアップのどちらを選択するかは、データの重要度、RPO要件、および予算に基づいて決定する必要があります。本記事で紹介したコスト最適化戦略を実践することで、AWS Backupのコストを効果的に削減し、データ保護の投資対効果を最大化することができます。

7. 今後の展望

AWS Backupは、継続的に機能が拡張されており、今後もさらに多くのAWSサービスや機能がサポートされることが期待されます。AWS Backupの最新情報を常に把握し、最適なバックアップ戦略を構築することが重要です。

8. 参考資料


上記は、AWS Backupの料金体系、オンデマンドバックアップと継続的バックアップの違い、およびコスト最適化について詳細に解説した記事の構成と内容です。必要に応じて、具体的な例や図表を追加することで、より理解しやすい記事にすることができます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール