はい、承知いたしました。Synology NASに繋がらない時の原因と解決策について、詳細な説明を含む約5000語の記事を作成します。
Synology NASに繋がらない時の原因と解決策:完全ガイド
はじめに
Synology NASは、写真、動画、ドキュメントなどの大切なデータを一元管理し、いつでもどこからでもアクセスできるようにする非常に便利なパーソナルクラウドストレージです。しかし、ある日突然NASにアクセスできなくなってしまったら、データにアクセスできず、非常に困惑し、不安を感じるでしょう。仕事のファイルにアクセスできない、家族と写真を共有できない、バックアップができないなど、NASへの接続問題は日常生活やビジネスに大きな影響を与えかねません。
Synology NASに繋がらないという問題は、様々な原因によって引き起こされます。ネットワーク設定、NAS本体のハードウェア故障、DSM(DiskStation Manager:Synology独自のOS)の設定ミス、クライアントデバイスの問題、あるいは外部からのアクセス設定の問題など、多岐にわたります。原因が一つとは限らず、複数の要因が絡み合っている可能性もあります。
しかし、ご安心ください。ほとんどの接続問題は、落ち着いて一つずつ原因を切り分け、適切な手順で対処することで解決できます。この記事では、Synology NASに繋がらない場合に考えられるあらゆる原因と、それぞれに対する詳細な解決策を網羅的にご紹介します。この記事を読めば、問題の原因を特定し、再びNASにアクセスできるようになるための手助けとなるはずです。
ネットワークの基本的な知識から、DSMの設定、ハードウェアの診断方法、そして最終手段まで、ステップバイステップで解説していきます。もし今、NASに繋がらずにお困りでしたら、ぜひこの記事を参考に、問題解決に取り組んでみてください。
Synology NAS接続の基本を知る
トラブルシューティングに入る前に、Synology NASへの接続がどのように行われているのか、その基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。
NASへの主な接続方法
Synology NASへのアクセスは、主に以下の方法で行われます。
- DSM管理画面へのアクセス(Webブラウザ): NASの設定や管理を行うためのインターフェースです。通常、Webブラウザを開き、NASのIPアドレスまたはホスト名に続けてポート番号(デフォルトは5000または5001(HTTPS))を入力してアクセスします(例:
http://192.168.1.100:5000またはhttps://192.168.1.100:5001)。 - ファイル共有へのアクセス(SMB/AFP/NFS): PCやMacからネットワークドライブとしてマウントしたり、ファイルエクスプローラー/Finderから直接アクセスしたりする方法です。
- SMB (Server Message Block): Windowsを中心に利用されるプロトコルです。NetBIOSやポート445を使用します。
- AFP (Apple Filing Protocol): macOSで主に利用されるプロトコルです。ポート548を使用します。近年ではmacOSもSMBが推奨されています。
- NFS (Network File System): LinuxなどのUnix系OSで主に利用されるプロトコルです。
- FTP/SFTP/WebDAV: FTPクライアントやWebDAVクライアントを使用してファイルにアクセスする方法です。それぞれポート21(FTP)、22(SFTP)、5005/5006(WebDAV)などが使用されます。
- モバイルアプリ(DS file, DS photoなど): スマートフォンやタブレットからSynologyが提供する専用アプリを使ってアクセスする方法です。QuickConnectまたはDDNSを使用して外部からアクセスする場合によく利用されます。
- SSH: コマンドラインインターフェースからNASを操作する方法です。ポート22を使用します。
- QuickConnect: Synologyが提供するP2P接続サービスです。複雑なネットワーク設定(ポートフォワーディングなど)なしに、インターネット経由でNASにアクセスできます。固有のIDを使用します。
- DDNS (Dynamic Domain Name System): 自宅やオフィスのグローバルIPアドレスが変わっても、常に同じホスト名(例:
mypeerlessnas.synology.me)でアクセスできるようにするサービスです。ルーターやNASで設定します。
NASへの接続問題は、これらのいずれか、あるいは複数の方法で発生します。
ネットワーク構成の基本
Synology NASは通常、ご家庭やオフィスのローカルネットワーク内に設置されます。基本的なネットワーク構成は以下のようになります。
インターネット <-> モデム <-> ルーター <-> スイッチ(必要に応じて) <-> NAS、PC、スマートフォンなどのデバイス
- モデム: インターネット回線を家庭内のネットワークに接続するための機器です。
- ルーター: 複数のデバイスをインターネットに接続させたり、デバイス間で通信させたりする役割を担います。IPアドレスの割り当て(DHCP機能)、ファイアウォール機能、ポートフォワーディング機能などを持っています。
- スイッチ: 複数の有線デバイスをルーターに接続するための分配器のようなものです。
- NAS: ルーターやスイッチにLANケーブルで接続されます。ローカルネットワーク内で他のデバイスと通信します。
- PC/スマートフォンなどのデバイス: 有線または無線(Wi-Fi)でルーターに接続され、NASにアクセスします。
NASがこれらのデバイスやインターネットと通信するためには、正確なIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーの設定が必要です。
Synology NASに繋がらない時の主な原因と解決策
ここからは、具体的な原因とそれに対する解決策を詳細に解説していきます。考えられる原因を以下のカテゴリに分けて説明します。
- ネットワーク関連の問題
- NAS本体・ハードウェアの問題
- NASのソフトウェア・設定の問題
- クライアントデバイス側の問題
- 外部からの接続(QuickConnect, DDNS)の問題
- その他の問題
問題を診断する際は、これらのカテゴリを順に追っていくと、原因を特定しやすくなります。
1. ネットワーク関連の問題
最も多い原因の一つがネットワークの問題です。物理的な接続からIPアドレス、ルーターの設定まで、確認すべき点が複数あります。
原因1-1: 物理的な接続の問題 (LANケーブル、ポート)
NASとルーター/スイッチ間のLANケーブルが正しく接続されていない、断線している、あるいはLANポートが故障している可能性があります。
- 解決策:
- LANケーブルの確認と抜き差し: NASとルーター/スイッチの間のLANケーブルがしっかりと奥まで差し込まれているか確認してください。ケーブルを一度抜いて、再度しっかりと差し込んでみましょう。両端とも確認してください。
- 別のLANケーブルへの交換: もし可能であれば、別の正常なLANケーブルに交換して試してみてください。ケーブル自体が断線している可能性があります。
- 別のLANポートへの接続: NASに複数のLANポートがある場合、別のポートに接続して試してみてください。特定のポートが故障している可能性が考えられます。ルーター/スイッチ側のポートも同様に別のポートに変えてみてください。
- LANポートのLEDランプ確認: NASやルーター/スイッチのLANポートには、接続状態や通信状態を示すLEDランプが付いています。ケーブルを接続したときにランプが点灯/点滅するか確認してください。ランプが全く点灯しない場合は、ケーブルやポートに問題がある可能性が高いです。
原因1-2: ルーターまたはスイッチの不具合
NASが接続されているルーターやスイッチ自体が一時的な不具合を起こしている可能性があります。
- 解決策:
- ルーター/スイッチの再起動: ルーターやスイッチの電源を一度抜き、数分待ってから再び電源を入れてみてください。多くのネットワーク機器の一時的な問題は、再起動で解決します。
原因1-3: NASのIPアドレスが変わった
通常、家庭や小規模オフィスではルーターのDHCP機能によって各デバイスに自動的にIPアドレスが割り当てられます。NASの設定でDHCPを使用している場合、ルーターやNASの再起動などのタイミングで、NASのIPアドレスが変わってしまうことがあります。以前のIPアドレスをブラウザやファイル共有設定で使用していた場合、アクセスできなくなります。
- 解決策:
- Synology Assistantを使ってNASを探す: Synologyが提供するユーティリティソフト「Synology Assistant」をPCにインストールし、起動してみてください。同じローカルネットワーク上に存在するSynology NASを検索し、現在割り当てられているIPアドレスを表示してくれます。この新しいIPアドレスを使ってブラウザやファイル共有でアクセスを試みてください。
- ルーターの管理画面で接続デバイスを確認する: ルーターの管理画面にアクセスし、現在接続されているデバイスのリストを確認してみてください。NASのホスト名(デフォルトではSynology_[MACアドレスの一部]や、設定で変更したホスト名)と、それに割り当てられているIPアドレスが表示されているはずです。ルーターの管理画面へのアクセス方法は、ルーターのマニュアルを確認するか、「ルーター メーカー名 管理画面 アクセス方法」などで検索してください。
- NASのIPアドレスを固定する: IPアドレスが頻繁に変わるのを避けたい場合は、NASに固定IPアドレスを設定することをおすすめします。DSMにアクセスできるようになったら、コントロールパネル > ネットワーク > ネットワークインターフェースで、使用しているLANポートを選択し、「編集」をクリックします。IPv4設定を「DHCPから手動で構成する」に変更し、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスを正しく入力してください。ルーターのDHCP範囲外のIPアドレスを指定するのが一般的です。
- クライアントPCのARPキャッシュをクリアする: PCに古いNASのIPアドレス情報がキャッシュされている場合に問題が発生することがあります。Windowsの場合、コマンドプロンプトで
arp -dと入力してEnterキーを押すとARPキャッシュがクリアされます。
原因1-4: IPアドレスの競合
ローカルネットワーク内で、複数のデバイスに同じIPアドレスが割り当てられている(または手動で設定されている)場合、IPアドレスの競合が発生し、通信が不安定になったり、全くできなくなったりします。
- 解決策:
- ルーターのDHCP設定を確認する: ルーターのDHCPサーバーが割り当てるIPアドレスの範囲と、手動で固定IPアドレスを設定しているデバイスのIPアドレスが重複していないか確認してください。
- NASや他のデバイスのIP設定を確認する: Synology Assistantやルーターの管理画面でNASのIPアドレスを確認し、他のデバイス(PC、プリンターなど)と重複していないか確認してください。もし重複している場合は、どちらかのIPアドレスを変更してください。DHCPを使用しているNASやデバイスは、ルーターの再起動によって新しいIPアドレスを受け取る可能性があります。
- コマンドでIP競合を検出する: Windowsの場合、コマンドプロンプトで
ipconfig /allを実行し、「IP Address Conflict Detected」のようなメッセージが出ていないか確認します。
原因1-5: サブネットの問題
NASとアクセスしようとしているクライアントデバイスが、異なるIPサブネットに属している場合、ルーターを介したルーティングが正しく設定されていない限り、直接通信できません。
- 解決策:
- NASとクライアントデバイスのIP設定を確認する: NAS(Synology Assistantまたはルーター管理画面で確認)とクライアントデバイス(PCの場合、コマンドプロンプトで
ipconfigを実行)のIPアドレスとサブネットマスクを確認してください。例えば、NASのIPが192.168.1.100でサブネットマスクが255.255.255.0、クライアントPCのIPが192.168.2.50でサブネットマスクが255.255.255.0の場合、これらは異なるサブネット(192.168.1.x系と192.168.2.x系)にいます。 - 同じサブネットになるようにIP設定を修正する: 可能であれば、NASとクライアントデバイスが同じサブネットになるようにIPアドレスを設定してください。例えば、両方とも192.168.1.xのIPアドレスと255.255.255.0のサブネットマスクを使用するように設定します。DHCPを使用している場合は、ルーターのDHCP設定を確認し、意図しないサブネット分割がされていないか確認してください。
- NASとクライアントデバイスのIP設定を確認する: NAS(Synology Assistantまたはルーター管理画面で確認)とクライアントデバイス(PCの場合、コマンドプロンプトで
原因1-6: ルーターのファイアウォール設定
ルーターのファイアウォール機能によって、NASへの特定の通信(特定のポートへのアクセスなど)がブロックされている可能性があります。
- 解決策:
- ルーターの管理画面でファイアウォール設定を確認する: ルーターの管理画面にアクセスし、ファイアウォールの設定を確認してください。DSMアクセスに使用するポート(5000/5001)、ファイル共有に使用するポート(139, 445, 548など)、その他の必要なポート(FTP 21, SSH 22など)へのアクセスが許可されているか確認してください。特に、外部からのアクセスを試みている場合は、これらのポートがインターネット側からNASのローカルIPアドレスに正しくポートフォワーディングされているか確認が必要です。ただし、ローカルネットワーク内からのアクセスであれば、通常ルーターのファイアウォール設定は影響しないことが多いです。
原因1-7: DNSの問題
IPアドレスではアクセスできるが、ホスト名(例: diskstation.local やカスタムホスト名)ではアクセスできない場合、DNS(Domain Name System)の名前解決に問題がある可能性があります。
- 解決策:
- NASのIPアドレスで直接アクセスを試みる: まずはIPアドレスでアクセスできるか確認してください。これでアクセスできれば、問題はDNSに関連している可能性が高いです。
- クライアントデバイスのDNSサーバー設定を確認する: PCやスマートフォンのネットワーク設定で、正しいDNSサーバーアドレスが設定されているか確認してください。通常はルーターのIPアドレスがDNSサーバーとして設定されます。
- ルーターのDNSリバインド設定(LAN内ホスト名解決): ルーターによっては、LAN内のデバイスのホスト名を解決するための設定(DNSリバインドやローカルDNS機能など)が必要です。ルーターのマニュアルを確認するか、設定項目を探してみてください。
- クライアントPCのDNSキャッシュをクリアする: Windowsの場合、コマンドプロンプトで
ipconfig /flushdnsと入力してEnterキーを押すとDNSキャッシュがクリアされます。Macの場合はターミナルでsudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponderを実行します(パスワード入力が必要)。 - hostsファイルを編集する(一時的な手段): 緊急の場合や特定のPCからだけアクセスしたい場合は、クライアントPCのhostsファイルにNASのIPアドレスとホスト名を直接記述することで、DNSサーバーを介さずに名前解決を行うことができます。これはあくまで一時的な手段であり、NASのIPアドレスが変わると無効になります。
2. NAS本体・ハードウェアの問題
Synology NAS本体のハードウェアに物理的な問題が発生している可能性も考えられます。
原因2-1: NASの電源が入っていない、電源が不安定
NASの電源が入っていない、または電源ユニットに問題があり、電源が不安定になっていると、もちろんアクセスできません。
- 解決策:
- 電源ケーブルの確認: NAS本体とコンセントに電源ケーブルがしっかりと差し込まれているか確認してください。
- 別のコンセントで試す: 可能であれば、別の壁のコンセントに差し替えて試してみてください。
- 電源ユニットのランプ確認: NAS本体や電源ユニットに電源状態を示すLEDランプがあれば、その状態を確認してください(通常は緑色の点灯が正常です)。点灯しない、点滅が不安定などの場合は、電源ユニットの故障が考えられます。
- 電源ユニットの交換: 電源ユニットの故障が疑われる場合は、交換が必要です。Synologyサポートに問い合わせるか、正規の交換部品を入手してください。
原因2-2: NASが起動プロセスで停止している、またはシステムに異常がある
NASの電源は入っているものの、起動プロセスが正常に完了していない、またはDSMに深刻なシステム異常が発生している場合があります。
- 解決策:
- LEDランプの状態確認: NAS本体のLEDランプの状態を確認してください。特にSTATUSランプの色や点滅パターンは、NASの状態を示しています。
- STATUSランプがオレンジ色で点滅: DSMがインストールされていない、またはシステムパーティションが失われている可能性があります。Synology AssistantでNASが検出できるか確認し、DSMの再インストールが必要か判断します。
- STATUSランプがオレンジ色で点灯: システムに異常がある、またはストレージプールが劣化/クラッシュしている可能性があります。DSMにアクセスできれば、Storage Managerやログセンターで詳細を確認できます。アクセスできない場合は、HDDやシステムに深刻な問題が発生している可能性があります。
- STATUSランプが緑色で点滅: 起動中です。しばらく待っても点滅が続く場合は、起動に失敗している可能性があります。
- STATUSランプが緑色で点灯: システムは正常に動作しています。
- ビープ音の確認: NASからビープ音が鳴っている場合、何らかの異常を示しています。ビープ音の回数やパターンで、HDDの異常、FANの停止、ボリュームの劣化などを特定できる場合があります。Synologyのマニュアルでビープ音の意味を確認してください。
- Synology Assistantで状態を確認する: Synology AssistantでNASが検出できた場合、そのステータスが表示されます。「構成が失われました」「回復可能」「システムが劣化しました」などのメッセージが表示されていないか確認してください。
- DSMの再インストール(データ保持): STATUSランプがオレンジ色で点滅している場合や、Synology Assistantで「構成が失われました」と表示される場合は、DSMの再インストールが必要なことがあります。Synology AssistantからDSMの再インストールを実行できます。この際、「データ保持」オプションを選択すれば、通常はユーザーデータは失われませんが、万が一に備えて重要なデータはバックアップしておくことが強く推奨されます。
- LEDランプの状態確認: NAS本体のLEDランプの状態を確認してください。特にSTATUSランプの色や点滅パターンは、NASの状態を示しています。
原因2-3: HDD/SSDの問題
NASに搭載されているHDDやSSDに問題が発生している場合、データの読み書きができず、結果的にNASへのアクセスに影響が出ることがあります。特にシステムパーティションが格納されているストレージに問題が発生すると、DSMが正常に起動しなくなることがあります。
- 解決策:
- HDD/SSDランプの状態確認: 各HDD/SSDに対応するLEDランプの色や点滅パターンを確認してください。通常、緑色の点灯/点滅は正常、オレンジ色の点灯/点滅は警告または異常を示します。
- ビープ音の確認: HDD関連の異常はビープ音で通知されることが多いです。
- Storage Managerでの確認(DSMアクセス可能な場合): DSMにアクセスできる場合は、ストレージマネージャーを開き、HDD/SSDの状態(S.M.A.R.T.情報)、ストレージプール/ボリュームの状態を確認してください。「異常」「劣化」「クラッシュ」などの状態が表示されている場合は、HDDの交換やボリュームの修復が必要です。
- Synology Assistantでの確認: Synology AssistantでNASが検出できた場合、ストレージの状態に関する簡単な情報が表示されることがあります。
- HDD/SSDの物理的な確認: NASの電源を切り、HDD/SSDを一旦抜き差ししてみる。複数のHDDがある場合は、1台ずつ外して(電源は入れずに)物理的な状態を確認してみる(ただし、RAID構成によっては安易な取り外しはRAID崩壊を招く可能性があります)。
- 不良HDD/SSDの交換: Storage ManagerやLEDランプで特定のHDD/SSDに異常が確認された場合は、そのHDD/SSDを交換してください。交換後の対応(RAIDリビルドなど)はRAID構成によって異なりますので、Synologyのマニュアルを参照してください。
原因2-4: メモリ(RAM)の問題
NASのシステムメモリに問題が発生すると、システムが不安定になったり、起動できなくなったりすることがあります。
- 解決策:
- メモリテストの実施: NASによってはメモリテスト機能が提供されている場合があります(Synology Assistantから実行できる機種もあります)。また、NASの電源を切り、増設したメモリを取り外して純正メモリだけで起動してみる、あるいは増設メモリを別のスロットに差し替えてみる、などの物理的な確認も有効です。
- Synologyサポートへの問い合わせ: メモリが原因のシステム不安定が疑われる場合は、Synologyサポートに問い合わせるのが最も確実です。
原因2-5: リセットボタンの誤操作または意図しない実行
NASのリセットボタンには、主に2つのモードがあります。
* モード1リセット: 管理者パスワードのリセット、ネットワーク設定(IPアドレス、DNS、ゲートウェイなど)のDHCPへのリセット、ファイアウォールルールのリセット、QuickConnect設定の無効化などが行われます。ユーザーデータは保持されます。
* モード2リセット: モード1に加え、NASの構成情報が初期化され、DSMの再インストールが必要になります。ユーザーデータは保持されますが、アプリケーションの設定やユーザーアカウントなどが初期状態に戻ります。
意図せずリセットボタンが押されてしまい、特にモード1のリセットが行われた場合、NASのIPアドレスがDHCPに変わり、以前の固定IPアドレスではアクセスできなくなったり、ファイアウォール設定が初期化されたりすることがあります。
- 解決策:
- モード1リセットの影響を確認する: もし最近NASの近くで作業をしたり、意図せずリセットボタンに触れた可能性がある場合は、モード1リセットが行われた可能性を考慮します。
- Synology AssistantでNASを探す: IPアドレスがDHCPに変わっている可能性が高いので、Synology Assistantを使って現在のIPアドレスを確認してください。
- デフォルトアカウントでログインを試す: 管理者パスワードがリセットされている可能性があるため、デフォルトの管理者アカウント(通常は
admin)とパスワードなし、またはデフォルトパスワードでログインできるか試してみてください。ログインできたら、新しい管理者アカウントを作成するか、既存のアカウントのパスワードを再設定してください。 - DSMの設定を再構成する: ネットワーク設定(必要であれば固定IP)、ファイアウォール、QuickConnect、ファイルサービスなどの設定を再度構成してください。
- モード2リセットが必要か判断する: もしシステムが不安定でモード1リセットでも改善しない場合は、最終手段としてモード2リセット(DSMの再インストール)も考慮します。ただし、モード2リセットは各種設定が初期化されるため、十分に注意して行ってください。
3. NASのソフトウェア・設定の問題
NASのDSMや個別のサービス設定に問題がある場合も、アクセスできなくなることがあります。
原因3-1: DSMのバージョンによる不具合
まれに、DSMの特定のバージョンに既知の不具合があり、アクセス問題を引き起こすことがあります。
- 解決策:
- Synologyの公式サイトやフォーラムを確認する: 現在インストールされているDSMバージョンに、接続に関する既知の問題が報告されていないか確認してください。
- DSMのアップデート: もし新しいバージョンが公開されており、そのバージョンで問題が修正されている場合は、DSMをアップデートしてみてください。DSMにアクセスできない場合は、Synology Assistantから手動でDSMをインストールすることも可能です。
- 以前のバージョンへのロールバック(非推奨): DSMのアップデート後に問題が発生した場合は、以前のバージョンに戻すことで解決できる場合がありますが、Synologyは通常、以前のバージョンへのロールバックを公式にはサポートしておらず、リスクが伴います。最後の手段として、またはSynologyサポートの指示のもとで行ってください。
原因3-2: ファイルサービス(SMB, AFPなど)が無効になっている
WindowsからのSMBアクセスやMacからのAFPアクセスに必要なサービスが、NASの設定で無効になっている可能性があります。
- 解決策:
- DSMにアクセスし、ファイルサービスを有効にする: DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネルを開きます。
- ファイルサービス > SMB/AFP/NFS: 必要なプロトコル(Windowsファイルサービス、Macファイルサービスなど)にチェックが入っており、サービスが有効になっているか確認してください。必要に応じて、詳細設定(SMBバージョンなど)も確認します。
- ファイルサービス > FTP/WebDAV: これらのプロトコルを使用している場合は、それぞれのタブでサービスが有効になっているか確認してください。
- DSMにアクセスし、ファイルサービスを有効にする: DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネルを開きます。
原因3-3: ユーザー認証情報の間違いまたは権限不足
NASにログインするためのユーザー名やパスワードが間違っている、またはアクセスしようとしている共有フォルダに対するアクセス権限がない可能性があります。
- 解決策:
- ユーザー名とパスワードを再確認する: 入力しているユーザー名とパスワードが正しいか、大文字小文字も含めて正確に入力されているか確認してください。特に、ドメインユーザーを使用している場合は、ドメイン名も正しく入力されているか確認します(例:
ドメイン名\ユーザー名)。 - 別のユーザーアカウントで試す: もし複数のユーザーアカウントがある場合は、別の正常に機能していると思われるアカウントでログインできるか試してみてください。
- 共有フォルダの権限を確認する(DSMアクセス可能な場合): DSMにログインし、コントロールパネル > 共有フォルダを開きます。アクセスしたい共有フォルダを選択し、「編集」をクリックして「権限」タブを開きます。使用しているユーザーアカウントまたはそのユーザーが属するグループに、適切な権限(読み取り/書き込み、読み取り専用、アクセスなし)が付与されているか確認してください。
- アカウントのロックアウトを確認する(DSMアクセス可能な場合): ログイン試行回数制限により、アカウントが一時的にロックアウトされている可能性があります。DSMにログインし、コントロールパネル > セキュリティ > アカウント > 自動ブロックを開きます。自動ブロックのリストに該当するIPアドレスやアカウント名がないか確認してください。もしブロックされている場合は、リストから削除してください。
- ユーザー名とパスワードを再確認する: 入力しているユーザー名とパスワードが正しいか、大文字小文字も含めて正確に入力されているか確認してください。特に、ドメインユーザーを使用している場合は、ドメイン名も正しく入力されているか確認します(例:
原因3-4: NASのファイアウォール設定(DSM)
DSMのファイアウォール機能によって、特定のIPアドレスからのアクセスや、特定のサービス(ポート)へのアクセスがブロックされている可能性があります。
- 解決策:
- DSMにアクセスし、ファイアウォール設定を確認する: DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネル > セキュリティ > ファイアウォールを開きます。「ファイアウォールを有効にする」にチェックが入っている場合、設定されているルールを確認してください。
- ルールを確認・修正する:
- NASにアクセスしようとしているクライアントデバイスのIPアドレスまたはIPアドレス範囲からのアクセスが、「拒否」ルールによってブロックされていないか確認します。
- アクセスしようとしているサービス(DSMの5000/5001、SMBの445など)へのアクセスが、「拒否」ルールによってブロックされていないか確認します。
- 「すべてのポートからのアクセスを拒否する」のような包括的な拒否ルールが設定されていないか確認します。
- 基本ルール(どのルールにも一致しなかった場合の最終的な動作)が「アクセスを拒否する」になっている場合、必要な通信を許可するルールが適切に設定されているか確認します。
- もし誤って設定されているルールがあれば、編集または削除してください。または、一時的にファイアウォールを無効にしてアクセスできるか確認し、原因がファイアウォールにあるかを切り分けます(ただし、無効化はセキュリティリスクを伴います)。
原因3-5: 自動ブロック機能によるブロック
不正アクセス対策として、ログイン試行回数が多いIPアドレスを自動的にブロックする機能が有効になっている場合、パスワードを間違え続けたことで、正規のクライアントデバイスのIPアドレスがブロックされてしまうことがあります。
- 解決策:
- DSMにアクセスし、自動ブロックリストを確認する: DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネル > セキュリティ > アカウント > 自動ブロックを開きます。「自動ブロックリスト」タブで、アクセスできないクライアントデバイスのIPアドレスがリストに登録されていないか確認してください。
- IPアドレスのブロックを解除する: リストに登録されている場合は、そのIPアドレスを選択して「削除」をクリックし、ブロックを解除してください。
- 自動ブロック設定の確認: 必要に応じて、自動ブロックの「設定」タブで、ログイン試行回数やブロック期間の設定を確認・調整してください。
4. クライアントデバイス側の問題
NASやネットワークに問題がなくても、アクセスしようとしているPCやスマートフォンの設定や状態に問題がある場合があります。
原因4-1: クライアントデバイスのネットワーク設定ミス
クライアントデバイス(PCなど)のIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスの設定が間違っていると、ローカルネットワーク内の他のデバイス(NASを含む)と通信できません。
- 解決策:
- クライアントデバイスのIP設定を確認する:
- Windowsの場合: コマンドプロンプトで
ipconfigと入力し、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスを確認します。通常は、IPアドレスはルーターのDHCPから割り当てられたもの(ルーターのIPアドレスと同じサブネット)、サブネットマスクはNASと同じ、デフォルトゲートウェイはルーターのIPアドレス、DNSサーバーもルーターのIPアドレスかプロバイダーや公開DNSサーバーのアドレスになっているはずです。 - Macの場合: システム設定(またはシステム環境設定)> ネットワークで、使用しているネットワークインターフェース(Wi-FiまたはEthernet)を選択し、「詳細」> TCP/IPタブで設定を確認します。
- Windowsの場合: コマンドプロンプトで
- 設定が間違っている場合は修正する: DHCPを使用している場合は、ネットワークアダプターの設定でDHCPが有効になっているか確認します。固定IPを使用している場合は、正しいIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーが入力されているか確認します。
- ネットワークアダプターの有効/無効を確認する: PCのネットワークアダプター(有線LANカードやWi-Fiアダプター)が無効になっていないか確認してください。
- クライアントデバイスのIP設定を確認する:
原因4-2: クライアントデバイスのファイアウォールやセキュリティソフト
クライアントPCにインストールされているファイアウォールソフトやセキュリティソフトが、NASへの通信(Synology Assistantの検索、SMB/AFPアクセス、DSMへのアクセスなど)をブロックしている可能性があります。
- 解決策:
- ファイアウォール/セキュリティソフトの設定を確認する: 使用しているセキュリティソフトの設定画面を開き、NASのIPアドレスやホスト名、または関連するアプリケーション(Synology Assistantなど)やポート(5000/5001, 445, 548など)がブロックされていないか確認してください。
- 一時的にセキュリティソフトを無効にして試す: 問題の原因がセキュリティソフトにあるか切り分けるために、自己責任において一時的にセキュリティソフトやファイアウォールを無効にして、NASにアクセスできるか試してみてください。アクセスできた場合は、セキュリティソフトの設定でNASへの通信を許可するルールを追加してください。無効にした後は、必ずすぐに有効に戻してください。
原因4-3: OSの問題またはネットワークキャッシュの問題
クライアントPCのOS自体に一時的な不具合が発生していたり、古いネットワーク情報(IPアドレスや名前解決情報)がキャッシュとして残っていたりして、問題が発生する場合があります。
- 解決策:
- クライアントデバイスの再起動: PCやスマートフォンを再起動してみてください。OSの一時的な不具合やキャッシュの問題が解消されることがあります。
- ネットワーク関連のキャッシュをクリアする: 前述の「原因1-3: NASのIPアドレスが変わった」や「原因1-7: DNSの問題」の解決策で紹介した、ARPキャッシュやDNSキャッシュのクリアコマンド(
arp -d、ipconfig /flushdns)や、ネットワーク設定のリセットコマンド(Windowsの場合:netsh int ip reset、netsh winsock reset)を試してみてください。これらのコマンド実行後はPCの再起動が必要です。 - SMB/AFPクライアント設定の問題(特にMac): MacでAFP接続が不安定だったり、SMB接続で認証エラーが発生したりする場合、Mac側の設定に問題があることがあります。キーチェーンアクセスに古い認証情報が残っている場合は削除してみてください。また、macOSのSMBクライアント設定(署名の必須化など)がNASの設定と合わない場合に接続できないことがあります。ターミナルからSMBクライアントの設定ファイルを編集する必要がある場合もありますが、これは高度なトラブルシューティングとなります。
原因4-4: ブラウザの問題(DSMへのアクセス時)
特定のWebブラウザでDSMにアクセスできない場合、ブラウザのキャッシュや拡張機能が原因となっている可能性があります。
- 解決策:
- 別のWebブラウザで試す: 別のWebブラウザ(Chrome、Firefox、Edge、Safariなど)でDSMにアクセスできるか試してみてください。
- ブラウザのキャッシュとCookieをクリアする: 使用しているブラウザの設定で、キャッシュとCookieを削除してみてください。
- ブラウザの拡張機能を無効にする: インストールしているブラウザの拡張機能がDSMへのアクセスを妨げている可能性も考えられます。一時的にすべての拡張機能を無効にして試してみてください。
- シークレット/プライベートウィンドウで試す: ブラウザのシークレットウィンドウまたはプライベートウィンドウを開き、そこでDSMにアクセスできるか試してみてください。これにより、キャッシュや拡張機能の影響を受けずにアクセスできます。
5. 外部からの接続(QuickConnect, DDNS)の問題
自宅のローカルネットワーク内からはアクセスできるが、外出先など外部ネットワークからQuickConnectやDDNSを使ってアクセスできない場合は、別途確認すべき点があります。
原因5-1: QuickConnectサービスの問題
QuickConnect IDを使って外部からアクセスできない場合、様々な原因が考えられます。
- 解決策:
- QuickConnect IDが正しいか確認する: 使用しているQuickConnect IDに間違いがないか確認してください。
- NASでQuickConnectが有効になっているか確認する(DSMアクセス可能な場合): DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネル > QuickConnectを開きます。QuickConnectが有効になっており、Synologyアカウントに正しく紐づけられているか確認してください。サービスの状態が「正常」と表示されているか確認します。
- SynologyのQuickConnectサーバーの状態を確認する: まれに、Synology側のQuickConnectサーバーに一時的な障害が発生している場合があります。Synologyのウェブサイトでシステムステータスを確認してみてください。
- ルーター設定(ポートフォワーディング): QuickConnectは通常、複雑なルーター設定なしに接続できます(リレー接続)。しかし、パフォーマンスを向上させるために直接接続(ルーターのポートフォワーディングが必要)を試みる設定になっている場合、ポートフォワーディング設定が間違っているとアクセスできません。DSMのQuickConnect設定で「QuickConnectサービスを有効にする」の下にある「詳細設定」をクリックし、「QuickConnectリレーサービスを介して接続を強制する」にチェックを入れて、リレー接続でアクセスできるか試してみてください。これにより、ルーターのポートフォワーディング設定の影響を受けずにQuickConnectで接続できるかを確認できます。
- インターネット接続の問題: NASが設置されている場所のインターネット回線が正常に動作しているか確認してください。モデムやルーターのインターネット接続ランプを確認したり、同じネットワーク内の他のデバイスからインターネットにアクセスできるか確認したりします。
原因5-2: DDNSサービスの問題
登録したDDNSホスト名を使って外部からアクセスできない場合、設定ミスやサービスの不具合が考えられます。
- 解決策:
- DDNS設定が正しいか確認する(DSMアクセス可能な場合): DSMにWebブラウザでログインし、コントロールパネル > 外部アクセス > DDNSを開きます。使用しているDDNSサービスプロバイダーの設定が正しく入力されており、ステータスが「正常」になっているか確認してください。登録したホスト名が正しいか確認します。
- グローバルIPアドレスの確認: 自宅やオフィスのグローバルIPアドレスが変動する契約の場合、そのIPアドレスがDDNSサービスに正しく通知・更新されているか確認が必要です。PCから「現在のIPアドレス 確認」などで検索してグローバルIPアドレスを確認し、DDNSサービスプロバイダーのウェブサイトで登録されているIPアドレスと比較してみてください。DSMのDDNS設定画面でも現在のグローバルIPアドレスが表示されていることがあります。
- ルーターのポートフォワーディング設定を確認する: 外部からNASの特定のサービス(DSMの5001ポート、ファイル共有の443ポートなど)にアクセスするには、ルーターで外部からのアクセスポートを、NASのローカルIPアドレスの該当ポートに転送(ポートフォワーディング)する設定が必要です。ルーターの管理画面にアクセスし、必要なポートフォワーディングルールが正しく設定されているか確認してください。
- 外部ポート -> 内部IPアドレス -> 内部ポート の形式で設定します。例えば、外部からのHTTPSアクセス(443番ポート)をNASのDSM(192.168.1.100の5001番ポート)に転送したい場合、「外部ポート: 443, プロトコル: TCP, 内部IPアドレス: 192.168.1.100, 内部ポート: 5001」のように設定します。
- 使用するポート番号がインターネットサービスプロバイダーによってブロックされていないか確認が必要な場合もあります。
- ルーターのファイアウォール設定: ポートフォワーディングだけでなく、ルーターのファイアウォールでこれらのポートへのアクセスがブロックされていないかも確認してください。
- DDNSプロバイダーのサービス障害: 利用しているDDNSサービスプロバイダー側で障害が発生している可能性もゼロではありません。プロバイダーのウェブサイトでアナウンスを確認してみてください。
- インターネット接続の問題: QuickConnectと同様に、NASが設置されている場所のインターネット回線が正常に動作しているか確認してください。
6. その他の問題
上記以外にも、以下のような原因が考えられます。
原因6-1: サービスへの過負荷やリソース不足
NASが同時に多くの処理を行っていたり、CPUやメモリなどのリソースが不足していたりすると、応答が遅くなったり、接続がタイムアウトしたりすることがあります。
- 解決策:
- DSMにアクセスし、リソースモニターを確認する: DSMにアクセスできる場合は、リソースモニターを開き、CPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率、ディスクI/Oなどを確認してください。異常に高い値を示している場合は、何らかのプロセスがリソースを消費している可能性があります。
- 負荷の高いタスクを特定し停止する: バックアップ、ファイル変換、インデックス作成、パッケージの実行など、負荷の高いタスクが実行されていないか確認し、必要であれば一時的に停止してみてください。
- NASの再起動: リソース不足が一時的なものである場合は、NASの再起動で解決することがあります。
原因6-2: インストールされているパッケージの問題
後からインストールした特定のパッケージ(例: Plex Media Server, Download Stationなど)が原因でシステムが不安定になり、接続問題を引き起こす可能性があります。
- 解決策:
- 最近インストール・アップデートしたパッケージを確認する(DSMアクセス可能な場合): 問題が発生する直前に、何か新しいパッケージをインストールしたり、既存のパッケージをアップデートしたりしなかったか思い出してください。
- 問題が疑われるパッケージを停止・アンインストールする: 可能性のあるパッケージを、パッケージセンターから一時的に停止するか、可能であればアンインストールして、NASにアクセスできるか確認してみてください。
診断と確認のための具体的な手順
これまでに述べた解決策を実行するにあたって、問題の原因を特定するための具体的な診断手順をいくつか紹介します。
- NASのLEDランプとビープ音の確認: まずはNAS本体の状態を示す最も基本的な手がかりです。電源、STATUS、LAN、Diskランプの色と点滅パターン、およびビープ音を確認し、マニュアルでその意味を調べます。
- Synology Assistantの利用: Synology Assistantを起動し、NASが検出されるか確認します。検出されれば、IPアドレス、ホスト名、ステータス(正常、構成が失われましたなど)、DSMバージョンなどの基本情報が表示されます。これが表示されるかどうかで、NASがネットワークに接続されており、ある程度起動しているかを判断できます。
- pingコマンドによる疎通確認: コマンドプロンプト(Windows)またはターミナル(Mac/Linux)を開き、
ping NASのIPアドレスと入力してEnterキーを押します。例:ping 192.168.1.100- 応答がある場合: NASまでネットワーク的に到達できています。IPアドレスや基本的なネットワーク接続は問題ない可能性が高いです。DSMやサービスの設定、またはクライアント側の問題が考えられます。
- 応答がない場合: NASまでパケットが到達できていません。物理的な接続、ルーター設定、IPアドレス、サブネットマスク、ファイアウォール(ルーター側またはDSM側)などに問題がある可能性が高いです。
- ホスト名でpingを試す:
ping NASのホスト名(例:ping diskstation)も試してみてください。IPアドレスではpingが通るがホスト名では通らない場合、DNSの名前解決に問題があります。
- traceroute/tracertコマンドによる経路確認: コマンドプロンプト(Windowsでは
tracert、Mac/Linuxではtraceroute)を開き、tracert NASのIPアドレスまたはtraceroute NASのIPアドレスと入力してEnterキーを押します。- これにより、クライアントデバイスからNASまでのネットワーク経路(経由するルーターなどの機器)が表示されます。どこかで経路が途切れている(タイムアウトする)場合、その機器や区間に問題がある可能性が高いです。
- ipconfig/ifconfigコマンドによるクライアント側の設定確認: コマンドプロンプト(Windowsでは
ipconfig)またはターミナル(Mac/Linuxではifconfig)を開き、自身のPCのIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスを確認します。NASやルーターの設定と照らし合わせて、同じネットワーク上にいるか確認します。 - ルーター管理画面へのアクセス: ルーターの管理画面にアクセスし、DHCPによってNASに割り当てられているIPアドレスを確認したり、ポートフォワーディング設定やファイアウォール設定を確認したりします。
- DSMへのアクセスと情報確認: DSMにアクセスできた場合は、コントロールパネル(ネットワーク、セキュリティ、ファイルサービスなど)、ストレージマネージャー、リソースモニター、ログセンターで詳細な情報を確認します。
- ログセンター: 特に重要です。システムログ、接続ログ、ファイアウォールログ、ファイル転送ログなどに、接続失敗の原因を示唆するエラーメッセージや警告が記録されている場合があります。どのIPアドレスからの接続が拒否されたか、どのサービスへのアクセスが失敗したかなどが確認できます。
これらの診断ツールや手順を組み合わせて使うことで、問題の発生箇所(物理層、ネットワーク層、アプリケーション層など)や具体的な原因を特定しやすくなります。
それでも解決しない場合の対処法
様々な方法を試してもSynology NASに繋がらない場合、より専門的なサポートが必要になったり、最終的な手段を検討したりする必要があります。
- Synologyサポートへの問い合わせ: Synologyの公式サイトからサポートに問い合わせることができます。問い合わせる際は、NASのモデル名、DSMバージョン、試したトラブルシューティング手順、LEDランプの状態、Synology Assistantでの表示、ログセンターのエラーメッセージなど、できるだけ詳細な情報を提供することが重要です。また、Synologyサポートから診断ログの提出を求められる場合があります。
- Synologyコミュニティフォーラムでの情報収集: Synologyの公式フォーラムや非公式のコミュニティサイトには、同様のトラブルに遭遇したユーザーの投稿や解決策が見つかる場合があります。NASのモデル名やエラーメッセージなどで検索してみてください。
- NASのリセット(モード1またはモード2): 前述の通り、リセットボタンを使ったリセットは、特に設定の問題が疑われる場合に有効な手段です。
- モード1リセット: 管理者パスワードやネットワーク設定を初期化します。データは保持されますが、再設定が必要です。
- モード2リセット: DSMを再インストールし、構成を初期化します。ユーザーデータは通常保持されますが、設定は全て失われます。最後の手段として、他の方法を試しても全くアクセスできない場合に検討します。実行する前には、データ消失の可能性もゼロではないことを理解し、慎重に行ってください。具体的な手順はSynologyの公式サイトで「ハードリセット」や「リセットボタン」で検索して確認してください。
- DSMの再インストール: Synology AssistantからDSMの再インストールを実行できます。多くの場合「データ保持」オプションを選択できますが、システムパーティションやHDD自体に深刻な問題がある場合は、データが失われる可能性もあります。これも慎重に検討すべき最終手段の一つです。
- ハードウェア故障の可能性: 上記のすべての手順を試しても解決せず、特にLEDランプの異常やビープ音が続く場合は、NAS本体やHDDのハードウェア故障の可能性が高くなります。保証期間内であれば修理または交換を検討します。保証期間外でも、Synologyや認定修理業者に修理を依頼できる場合があります。
予防策:トラブルを防ぐために日頃からできること
Synology NASへの接続トラブルは、日頃からの適切な管理や準備によって、発生リスクを減らしたり、発生した場合の復旧を容易にしたりすることができます。
- ネットワーク構成図の作成と記録: 自宅やオフィスのネットワーク構成(ルーター、スイッチ、NAS、PCなどの配置、それぞれのIPアドレス、NASのLANポート番号と接続先)を簡単な図にして記録しておきましょう。トラブル発生時に現在のネットワーク状態を把握しやすくなります。
- NASのIPアドレスの固定化: DHCPによるIPアドレスの変動を防ぐため、NASには固定IPアドレスを設定することをおすすめします。ルーターのDHCP範囲外のアドレスを使用すると、競合のリスクを減らせます。
- DSMの定期的なアップデート: DSMのアップデートには、セキュリティ修正や不具合修正が含まれています。提供されたアップデートは、リリースノートを確認した上で、定期的に適用するようにしましょう。ただし、アップデート前には重要な設定やデータをバックアップしておくことが望ましいです。
- 自動ブロック機能の適切な設定: 不正ログイン対策として自動ブロック機能は有効ですが、正規のユーザーが誤ってブロックされないように、適切なログイン試行回数やブロック期間を設定しましょう。
- 重要なデータのバックアップ: NAS自体に保存されているデータも、万が一のハードウェア故障や人為的なミスに備えて、外部ストレージやクラウドストレージ、別のNASなどに定期的にバックアップすることを強く推奨します。SynologyのHyper Backupなどのパッケージを活用しましょう。
- 冗長化(RAID)の検討・維持: 複数のHDDを使用できるNASモデルでは、RAID1やRAID5などの冗長化構成を採用することで、1台のHDDが故障してもデータが失われるリスクを減らすことができます。RAIDの状態は定期的にStorage Managerで確認し、劣化や異常があれば速やかに対応してください。
- UPS(無停電電源装置)の導入: 突然の停電は、NASのシステムやストレージに深刻なダメージを与える可能性があります。UPSを導入し、停電時にNASが安全にシャットダウンできるように設定しておくことで、データ破損やシステム異常のリスクを大幅に減らすことができます。
まとめ
Synology NASに繋がらないという問題は、様々な原因が考えられますが、そのほとんどは一つずつ可能性を潰していくことで解決できます。まずは物理的な接続から確認し、次にネットワーク設定、NAS本体の状態、DSMの設定、クライアントデバイスの状態、そして外部からのアクセス設定と、段階的に診断を進めていくことが重要です。
Synology Assistant、pingコマンド、ルーターの管理画面、そしてDSMにアクセスできた際の各種設定画面やログセンターが、原因特定のための有力なツールとなります。これらのツールや手順を慌てずに実行することで、問題の根源にたどり着くことができるはずです。
もし、この記事で紹介した手順をすべて試しても解決しない場合は、ハードウェア故障の可能性も視野に入れ、Synologyサポートに問い合わせるなどの専門的なサポートを検討してください。また、最後の手段としてリセットやDSMの再インストールも存在しますが、データ消失のリスクを理解した上で慎重に実行する必要があります。
何よりも、日頃からネットワーク構成を把握し、NASの設定を定期的に確認し、そして最も重要なデータのバックアップを怠らないことが、万が一のトラブル発生時の焦りを減らし、迅速な復旧を可能にするための最善の予防策です。
このガイドが、Synology NASへの接続問題に直面したあなたの助けとなり、再び快適なNASライフを送れるようになることを願っています。