RAID6構築の決定版:必要な知識、手順、注意点を網羅

RAID6構築の決定版:必要な知識、手順、注意点を網羅

RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のハードディスクドライブを組み合わせて、性能向上やデータの冗長性(耐障害性)を高める技術です。数あるRAIDレベルの中でも、RAID6は高いデータ保護能力を持つことから、特に重要なデータを扱うサーバーやストレージシステムで広く採用されています。

本記事では、RAID6の構築を検討している方に向けて、RAID6の基礎知識から、具体的な構築手順、運用時の注意点まで、網羅的に解説します。この記事を読むことで、RAID6のメリット・デメリットを理解し、自身の環境に最適なRAID構成を選択できるようになるでしょう。

1. RAID6とは? – 冗長性とパフォーマンスのバランス

RAID6は、RAID5の拡張版であり、RAID5のストライピングとパリティという概念を引き継ぎつつ、2つのパリティブロックを使用することで、より高い耐障害性を実現しています。

1.1 RAID5との違い – 2重のパリティによる保護

RAID5では、1つのパリティブロックを分散配置することで、1台のハードディスクドライブの故障に対応できます。しかし、RAID5でドライブが故障した場合、交換後にデータを再構築(リビルド)する間、システムは脆弱な状態に置かれます。この間にさらに別のドライブが故障すると、データが失われる可能性があります。

一方、RAID6は2つのパリティブロックを持つため、同時に2台のハードディスクドライブが故障しても、データを失うことなくシステムを稼働させ続けることができます。これは、特に大容量のストレージシステムにおいて、リビルドにかかる時間が長くなるほど重要になります。

1.2 RAID6の仕組み – ストライピングとデュアルパリティ

RAID6は、データを複数のハードディスクドライブに分割して書き込む「ストライピング」と呼ばれる技術と、誤り訂正符号である「パリティ」と呼ばれるデータを生成・格納する技術を組み合わせています。

  • ストライピング: データを固定長のブロック(ストライプ)に分割し、複数のドライブに分散して書き込みます。これにより、読み書き速度が向上します。
  • デュアルパリティ: RAID6では、2種類のパリティブロックを生成し、それぞれ異なるドライブに分散して格納します。これらのパリティブロックは、故障したドライブのデータを復元するために使用されます。

1.3 RAID6のメリット – 高い耐障害性とデータ保護

  • 高い耐障害性: 同時に2台のドライブが故障してもデータが失われないため、RAID5よりも高いデータ保護能力を提供します。
  • データの可用性: ドライブが故障してもシステムを停止することなく運用を継続できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
  • 比較的高い読み取り性能: ストライピングにより、複数のドライブから同時にデータを読み込むことができるため、高速な読み取り性能を実現できます。

1.4 RAID6のデメリット – 書き込み性能の低下と容量効率

  • 書き込み性能の低下: データの書き込み時には、2つのパリティブロックを計算・書き込む必要があるため、RAID5よりも書き込み性能が低下します。
  • 容量効率の低下: 2つのパリティブロックを格納するために、使用可能な容量が減少し、ドライブ全体の容量効率は低くなります。例えば、N台のドライブでRAID6を構築した場合、(N-2)台分の容量しか使用できません。
  • 構築の複雑さ: RAIDコントローラーの設定や管理が、RAID5よりも複雑になる場合があります。
  • コスト: RAIDコントローラーの種類によっては、RAID6に対応するために高価なコントローラーが必要になる場合があります。

2. RAID6構築に必要なもの – ハードウェアとソフトウェア

RAID6を構築するには、適切なハードウェアとソフトウェアを選択する必要があります。

2.1 ハードウェア – RAIDコントローラーとハードディスクドライブ

  • RAIDコントローラー: RAIDの構成を管理し、データのストライピングやパリティ計算を行うためのハードウェアです。ハードウェアRAIDコントローラーとソフトウェアRAIDコントローラーの2種類があります。
    • ハードウェアRAIDコントローラー: 独立したハードウェアチップでRAID処理を行うため、CPUへの負荷が少なく、高速な処理が可能です。エンタープライズ環境に適しています。
    • ソフトウェアRAIDコントローラー: OSの機能を利用してRAID処理を行うため、ハードウェアRAIDコントローラーよりも安価に構築できます。ただし、CPUへの負荷が高くなり、性能が制限される場合があります。
  • ハードディスクドライブ: 同じ種類、同じ容量のハードディスクドライブを使用することを推奨します。異なる種類のドライブを使用すると、性能が低下したり、互換性の問題が発生したりする可能性があります。
    • ドライブの種類: 使用環境に応じて、HDD (Hard Disk Drive) または SSD (Solid State Drive) を選択します。
      • HDD: 大容量で安価ですが、アクセス速度はSSDよりも遅いです。
      • SSD: 高速なアクセス速度を実現できますが、容量あたりのコストはHDDよりも高くなります。
    • ドライブの規格: SATA (Serial ATA)、SAS (Serial Attached SCSI) など、マザーボードやRAIDコントローラーが対応している規格を選択します。
  • ケース: 複数のハードディスクドライブを搭載できるケースが必要です。ラックマウントケースやタワーケースなど、設置場所や要件に合わせて選択します。

2.2 ソフトウェア – OSとRAID管理ツール

  • OS: RAID6を構築するOSを選択します。Windows Server、Linux、FreeBSDなど、多くのOSでRAID6をサポートしています。
  • RAID管理ツール: RAIDコントローラーの設定や管理、監視を行うためのソフトウェアです。ハードウェアRAIDコントローラーには、専用の管理ツールが付属している場合があります。ソフトウェアRAIDコントローラーの場合は、OSに標準搭載されているツールや、サードパーティ製のツールを使用します。

3. RAID6構築手順 – 段階的なステップ

RAID6を構築する手順は、使用するハードウェアRAIDコントローラーまたはソフトウェアRAIDコントローラー、およびOSによって異なります。以下に一般的な手順を説明します。

3.1 事前準備 – データのバックアップとハードウェアの準備

  • データのバックアップ: RAID構築前に、重要なデータを必ずバックアップしてください。RAID構築中にデータが失われる可能性があります。
  • ハードウェアの準備: ハードディスクドライブをケースに設置し、マザーボードまたはRAIDコントローラーに接続します。
  • BIOS設定: BIOSでRAIDコントローラーを有効にします。
  • ブート順序の確認: OSのインストールメディアから起動できるように、ブート順序を確認します。

3.2 ハードウェアRAIDコントローラーの場合 – コントローラー設定ユーティリティ

  1. RAIDコントローラー設定ユーティリティの起動: コンピュータを起動し、RAIDコントローラーのBIOS画面で指定されたキー(例:Ctrl+H, Ctrl+I)を押して、RAIDコントローラー設定ユーティリティを起動します。
  2. RAIDアレイの作成: ユーティリティの指示に従って、RAID6アレイを作成します。
    • 使用するドライブを選択します。
    • RAIDレベルとしてRAID6を選択します。
    • ストライプサイズ(ブロックサイズ)を選択します。通常は、4KB~64KBの範囲で選択しますが、用途に応じて最適なサイズを選択します。
    • ホットスペアを設定するかどうかを選択します。ホットスペアを設定すると、ドライブが故障した場合に自動的に交換が行われます。
  3. 設定の保存と終了: RAIDアレイの作成後、設定を保存してユーティリティを終了します。

3.3 ソフトウェアRAIDコントローラーの場合 – OSの管理ツール

  1. OSのインストール: OSをハードディスクドライブにインストールします。
  2. ソフトウェアRAIDの設定: OSに標準搭載されているRAID管理ツールまたは、サードパーティ製のツールを使用してRAID6アレイを作成します。
    • Windows Serverの場合: サーバーマネージャーの「記憶域プール」または「ディスクの管理」を使用します。
    • Linuxの場合: mdadmコマンドを使用します。
    • FreeBSDの場合: graid3コマンドを使用します。
  3. ファイルシステムの作成: RAIDアレイ上にファイルシステムを作成します。NTFS、ext4、ZFSなど、使用するOSや用途に応じて適切なファイルシステムを選択します。
  4. マウント: 作成したファイルシステムをマウントし、使用できるようにします。

3.4 構築後の確認 – RAIDアレイのステータスとデータの整合性

  • RAIDアレイのステータスの確認: RAID管理ツールを使用して、RAIDアレイのステータスを確認します。正常に構築されていれば、「正常」、「オンライン」などのステータスが表示されます。
  • データの整合性の確認: 構築後、データをRAIDアレイに書き込み、読み出しテストを行い、データの整合性を確認します。
  • ストレステスト: 高負荷な読み書きテストを行い、RAIDアレイが正常に動作することを確認します。

4. RAID6運用時の注意点 – 監視、メンテナンス、バックアップ

RAID6は高い耐障害性を持つ構成ですが、適切に運用・管理を行うことで、さらに信頼性を高めることができます。

4.1 定期的な監視 – ドライブの状態とRAIDアレイの健全性

  • ドライブの状態の監視: RAID管理ツールを使用して、ハードディスクドライブの状態を定期的に監視します。S.M.A.R.T. (Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology) の情報を確認し、異常な兆候がないかを確認します。
  • RAIDアレイの健全性の監視: RAIDアレイのステータスを定期的に確認し、エラーが発生していないかを確認します。
  • ログの確認: RAIDコントローラーやOSのログを確認し、エラーメッセージや警告がないかを確認します。
  • アラート設定: ドライブの故障やRAIDアレイのエラーが発生した場合に、自動的に通知されるようにアラートを設定します。

4.2 定期的なメンテナンス – リビルドとファームウェアアップデート

  • リビルド: ドライブが故障した場合、速やかに新しいドライブに交換し、リビルドを行います。リビルド中はシステム全体の性能が低下するため、負荷の少ない時間帯に行うことを推奨します。
  • ファームウェアアップデート: RAIDコントローラーやハードディスクドライブのファームウェアを定期的にアップデートします。ファームウェアアップデートにより、性能向上やバグ修正が行われることがあります。
  • バックアップバッテリーの交換: ハードウェアRAIDコントローラーにバックアップバッテリーが搭載されている場合、定期的に交換します。バックアップバッテリーは、停電時にキャッシュデータを保護するために使用されます。

4.3 定期的なバックアップ – RAIDはバックアップの代替ではない

RAID6は高い耐障害性を持つ構成ですが、データの損失を防ぐための完全なソリューションではありません。火災、水害、盗難、ウイルス感染など、RAIDだけでは対応できない事態も想定されます。

  • バックアップ戦略の策定: 3-2-1ルール(データのコピーを3つ作成し、2種類の異なるメディアに保存し、1つはオフサイトに保管する)など、適切なバックアップ戦略を策定します。
  • バックアップスケジュールの作成: 定期的なバックアップスケジュールを作成し、確実に実行します。
  • バックアップデータの検証: 定期的にバックアップデータから復元テストを行い、バックアップデータが正常に復元できることを確認します。

5. RAID6の応用 – さまざまな環境での活用事例

RAID6は、高いデータ保護能力を持つことから、さまざまな環境で活用されています。

  • ファイルサーバー: 重要なドキュメントやメディアファイルを保存するファイルサーバーにRAID6を構築することで、データ損失のリスクを軽減できます。
  • データベースサーバー: データベースサーバーのデータをRAID6に格納することで、データベースの可用性を高めることができます。
  • 仮想化環境: 仮想マシンのイメージファイルをRAID6に格納することで、仮想化環境全体の信頼性を向上させることができます。
  • クラウドストレージ: クラウドストレージサービスでは、RAID6などの冗長化技術を使用して、データの保護と可用性を確保しています。
  • 監視カメラシステム: 監視カメラシステムの録画データをRAID6に保存することで、証拠映像の損失を防ぐことができます。
  • 医療機関: 患者の個人情報や医療記録をRAID6に保存することで、機密性の高いデータの保護を強化できます。

6. まとめ – RAID6の選択と最適な構築・運用

RAID6は、2重のパリティによる高い耐障害性を備えたRAIDレベルです。重要なデータを保護し、システムのダウンタイムを最小限に抑える必要がある場合に最適な選択肢となります。

本記事では、RAID6の基礎知識から、構築手順、運用時の注意点まで、網羅的に解説しました。RAID6を構築する際には、以下のポイントを考慮してください。

  • 要件の明確化: データ保護の重要度、予算、性能要件などを考慮し、RAID6が最適な選択肢であるかどうかを検討します。
  • 適切なハードウェアとソフトウェアの選択: RAIDコントローラーの種類、ハードディスクドライブの性能、OSの機能などを考慮し、最適なハードウェアとソフトウェアを選択します。
  • 綿密な計画と準備: RAID構築前に、データのバックアップ、ハードウェアの準備、BIOS設定などを綿密に行います。
  • 適切な構築手順の実施: RAIDコントローラーの設定ユーティリティまたはOSの管理ツールを使用して、正確にRAIDアレイを構築します。
  • 定期的な監視とメンテナンス: ドライブの状態、RAIDアレイの健全性、ファームウェアアップデートなどを定期的に監視し、メンテナンスを行います。
  • 定期的なバックアップ: RAIDはバックアップの代替ではないことを理解し、定期的なバックアップを必ず実行します。

RAID6を適切に構築・運用することで、データの安全性を高め、システムの信頼性を向上させることができます。本記事が、RAID6構築の参考になれば幸いです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール