Microsoft SQL Server 2022 導入前に知っておくべきこと
はじめに
データは現代ビジネスにおいて、ますますその重要性を増しています。意思決定、顧客理解、業務効率化、新しいサービスの創造など、あらゆる活動の基盤となります。このデータ管理の中核を担うのがデータベースシステムです。Microsoft SQL Serverは、長年にわたりエンタープライズレベルのデータ管理プラットフォームとして信頼され、進化を続けてきました。そして、2022年には最新バージョンであるSQL Server 2022がリリースされました。
SQL Server 2022は、「Azure enabled data platform」を標榜し、オンプレミス、ハイブリッド、マルチクラウド環境において、パフォーマンス、セキュリティ、可用性、分析、開発者エクスペリエンスを大幅に強化しています。特に、Azureサービスとの連携がこれまで以上に緊密になり、クラウドの持つ柔軟性やスケーラビリティといったメリットをオンプレミス環境でも享受できるような機能が多く盛り込まれています。
しかし、どのような新しいテクノロジーを導入する際にも言えることですが、十分な準備と理解なしに進めることは、予期せぬ問題やコスト増加につながりかねません。SQL Server 2022を最大限に活用し、スムーズな導入を実現するためには、その新機能や強化点、そして導入に関わる様々な側面(計画、要件、互換性、ライセンス、運用など)について深く理解しておくことが不可欠です。
本記事では、Microsoft SQL Server 2022の導入を検討している方々に向けて、導入前に知っておくべき重要な情報について、詳細かつ網羅的に解説します。SQL Server 2022の主な機能強化点から、導入計画の具体的なステップ、互換性の確認方法、エディションとライセンスの考え方、ハードウェア・OS要件、さらにはセキュリティや高可用性の計画、導入後の運用と最適化に至るまで、多岐にわたる側面から掘り下げていきます。この記事が、皆様のSQL Server 2022導入プロジェクトを成功に導く一助となれば幸いです。
SQL Server 2022の主な新機能と強化点
なぜSQL Server 2022を導入する価値があるのでしょうか?その理由は、前述の通り、多くの領域で significant な機能強化が図られているからです。ここでは、主要なカテゴリに分けて、SQL Server 2022の注目すべき新機能や強化点を見ていきましょう。
1. パフォーマンスとスケーラビリティの向上
SQL Serverは常にパフォーマンスの最適化に注力してきましたが、2022ではさらにその取り組みが進んでいます。
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Query Store enhancements (クエリ ストアの機能強化):
- Automatic Plan Feedback (自動的なプランフィードバック): Query Storeはクエリの実行プランと統計情報を記録する機能です。SQL Server 2022では、Query Storeが収集した情報に基づいて、パフォーマンスが劣化した実行プランを検知し、過去の良好なプランに戻したり、ヒントを自動的に適用したりする機能が追加されました。これにより、DBAの手を煩わせることなく、特定のクエリのパフォーマンス劣化を自動的に是正することが期待できます。これは、特にワークロードが変動する環境や、多数のデータベースを管理する環境で大きなメリットとなります。
- Parameter Sensitive Plan (PSP) Optimization: パラメータによって最適な実行プランが大きく異なるクエリ(いわゆる”Parameter Sniffing”問題)に対して、複数の実行プランをキャッシュし、パラメータ値に応じて適切なプランを選択するメカニズムが強化されました。これにより、特定のパラメータ値でのみパフォーマンスが極端に悪化する問題を緩和できます。
- Cardinality Estimation (CE) feedback: クエリ最適化の重要な要素であるカーディナリティ推定(特定の条件を満たす行数の予測)が不正確な場合、誤った実行プランが生成されることがあります。SQL Server 2022では、実際の実行結果に基づいてカーディナリティ推定のフィードバックを行い、最適化プロセスを改善する機能が追加されました。
- Query Store for Replicas: Always On Availability GroupsのセカンダリレプリカでもQuery Storeが利用できるようになり、読み取りワークロードのパフォーマンス分析が容易になりました。
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TempDBの最適化:
- グローバルロックの競合が緩和され、TempDBを使用するワークロード(一時テーブル、カーソル、ソート、ハッシュ結合など)の同時実行性が向上しました。特に高負荷なシステムでは、TempDBの競合がボトルネックとなることが多かったため、この改善は大きな効果をもたらす可能性があります。
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バッファープールの並列スキャン:
- バッファープール全体のスキャン(バックアップ、チェックポイント、遅延書き込みなど)が並列化され、大規模なメモリを持つシステムでのこれらの操作の効率が向上しました。
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最大サーバーメモリ圧縮 (Integrated Acceleration & Offload):
- Intel QuickAssist Technology (QAT)などのハードウェアアクセラレーターを利用して、バックアップや圧縮などの操作を高速化し、CPU負荷を軽減する機能が導入されました。これにより、システムリソースをより効率的に利用できるようになります。
2. セキュリティの強化
データ漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まる中、データベースセキュリティは最優先事項です。SQL Server 2022では、セキュリティ機能も強化されています。
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Azure Active Directory (AAD) 認証の強化:
- スタンドアロンSQL ServerインスタンスでもAAD認証がサポートされるようになりました。これにより、オンプレミスSQL Serverへのアクセス管理を、Azure ADを通じて一元化・簡素化できます。Conditional AccessやMulti-Factor Authentication (MFA) といったAzure ADの強力なセキュリティ機能と連携させることが可能になり、セキュリティ体制が大幅に強化されます。
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Ledger機能 (改ざん防止):
- ブロックチェーン技術の原則に基づき、データベース内でデータの改ざんを検知・防止するLedger機能が追加されました。テーブルに加えられた変更はハッシュ化され、変更履歴は不変の形式で記録されます。これにより、特定のデータがいつ、どのように変更されたかの信頼できる監査証跡を提供できます。機密性の高いデータやコンプライアンス要件が厳しい場合に非常に有用です。
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SQL Server EndpointでTLS 1.3を有効化:
- 最新かつ最も安全なTLSプロトコルであるTLS 1.3がサポートされ、クライアントとSQL Server間の通信のセキュリティが強化されました。
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Always Encrypted with secure enclavesの機能強化:
- Always Encryptedは、クライアント側でデータを暗号化し、SQL Server側では暗号化されたまま処理できる機能です。Secure enclavesを使用することで、暗号化されたデータに対するより複雑な操作(パターンマッチング、比較、ソートなど)が可能になります。SQL Server 2022では、enclavesを使用する際の機能がさらに拡張されています。
3. 可用性と災害復旧 (HADR)
ビジネス継続性を確保するために、データベースの高可用性と迅速な災害復旧は不可欠です。
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Always On 可用性グループの機能強化:
- 可用性グループ内のレプリカ間のデータ転送において、圧縮オプションが追加され、帯域幅の利用効率が向上しました。
- 分散可用性グループ (Distributed AG) における機能強化も行われています。
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Accelerated Database Recovery (ADR) の機能強化:
- ADRは、クラッシュリカバリや大規模なロールバックをほぼ瞬時に行えるようにする機能です。SQL Server 2019で導入されましたが、2022ではさらにパフォーマンスとスケーラビリティが向上しています。
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Link feature for Azure SQL Managed Instance (ハイブリッドシナリオ):
- オンプレミスのSQL Server 2022データベースとAzure SQL Managed Instanceの間で、ほぼリアルタイムのデータレプリケーションを実現する新機能です。これは、オンプレミスからAzureへの移行、クラウドへのDRサイト構築、クラウドでの読み取りワークロードオフロードなど、様々なハイブリッドシナリオを簡素化します。SQL Serverのネイティブなバックアップ/リストア技術を基盤としており、可用性グループのような複雑な構成は不要です。
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バックアップ/リストアの機能強化:
- S3互換のオブジェクトストレージへのバックアップ/リストアがネイティブにサポートされました。Azure Blob Storageはもちろん、AWS S3やS3互換のストレージアプライアンスにも直接バックアップできます。これにより、クラウドへの長期保存やコスト効率の高いストレージ利用が容易になります。
4. 分析機能と機械学習
トランザクション処理と分析処理を統合するHTAP (Hybrid Transactional/Analytical Processing) は近年のトレンドです。
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Azure Synapse Link for SQL Server (リアルタイムHTAP):
- オンプレミスのSQL ServerデータベースからAzure Synapse Analyticsへ、ほぼリアルタイムでデータを自動的に同期する機能です。ETLプロセスを別途構築・実行することなく、運用データベースの変更がSynapse Analyticsに反映されるため、常に最新のデータに基づいて分析を行うことができます。これにより、運用ワークロードへの影響を最小限に抑えつつ、強力な分析プラットフォームを活用することが可能になります。
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Data Virtualization (PolyBase) の強化:
- 外部データソースへのクエリ実行を可能にするPolyBaseが強化され、S3互換ストレージやAzure Data Lake Storage (ADLS) Gen2など、対応するデータソースが増えました。また、パフォーマンスや使いやすさも向上しています。これにより、SQL Server内で様々な外部データソースを統合し、クエリを実行できます。
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Azure Machine Learningとの連携強化:
- Azure Machine LearningのモデルをSQL Server内で実行する機能などが強化され、データベースに格納されたデータに対する機械学習の適用がよりスムーズになりました。
5. 開発者エクスペリエンス
開発者がより効率的に、より強力なアプリケーションを構築できるよう、様々な機能が追加・改善されています。
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JSON関数の強化:
- JSONデータの操作に関する新しい関数(IS JSON、JSON_ARRAY、JSON_OBJECTなど)が追加され、JSONデータの生成や解析がより容易になりました。
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時間系列データのサポート強化:
- 時間系列データ分析に便利な新しい関数(DATE_BUCKETなど)が追加されました。
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システムカタログビューの機能強化:
- 新しい機能や内部構造に関する情報を取得するためのシステムカタログビューが増え、管理やトラブルシューティングが容易になりました。
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コンテナサポートの強化:
- DockerコンテナやKubernetes上でのSQL Serverの実行が引き続きサポートされ、デプロイや管理の柔軟性が向上しています。
6. ハイブリッドシナリオとAzure連携
SQL Server 2022の最大の特徴の一つは、Microsoft Azureとの緊密な連携です。
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Azure Arc enabled SQL Server:
- オンプレミスや他のクラウドで実行されているSQL ServerインスタンスをAzure Arcに接続することで、Azure管理プレーン(Azure Portal, Azure Resource Manager, Azure Policyなど)から一元的に管理できるようになります。これにより、構成管理、セキュリティパッチ適用、監視などをAzureのツールで行うことが可能になり、ハイブリッド環境全体の管理が大幅に簡素化されます。
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Microsoft Purview連携:
- SQL Server 2022のデータをMicrosoft Purviewに登録し、データの検出、分類、ガバナンスポリシーの適用などを一元的に行うことができます。これにより、データ資産全体の可視性を高め、コンプライアンス要件への対応を支援します。
これらのAzure連携機能は、オンプレミスのSQL Serverを「Azure enabled data platform」として位置づけるSQL Server 2022の哲学を体現しています。単なるデータベースのバージョンアップではなく、オンプレミス環境をクラウド管理と統合し、クラウドサービスと連携することで、新たな価値を生み出すことが可能なプラットフォームへと進化しています。
導入計画と準備
SQL Server 2022の新機能に魅力を感じ、導入を決定した場合、次に必要となるのが詳細な導入計画と十分な準備です。計画段階での検討が不足すると、後工程で手戻りや問題が発生するリスクが高まります。以下のステップに沿って、慎重に進めていきましょう。
1. 導入の目的と要件の定義
まず、SQL Server 2022を導入する「なぜ」を明確にすることが重要です。
- 導入の目的:
- 現行バージョンのサポート終了 (EOL) に伴うリプレースか?
- SQL Server 2022の新機能(パフォーマンス、セキュリティ、ハイブリッド連携など)を活用したいのか?
- 既存の課題(パフォーマンスボトルネック、セキュリティリスク、管理負荷など)を解決したいのか?
- 新しいアプリケーションやサービスを構築するためか?
- クラウド(Azure)との連携を強化したいのか?
- 必要な機能セット:
- トランザクション処理のみか?それとも分析処理 (HTAP) も行うのか?
- 高可用性・災害復旧 (HADR) の要件は? (必要なダウンタイム、RTO/RPOレベル)
- セキュリティ要件は? (暗号化、監査、認証)
- Azure連携機能 (Synapse Link, Azure Arc, MI Linkなど) は利用するか?
- 機械学習やデータ仮想化機能は必要か?
- 非機能要件:
- 目標とするパフォーマンスレベル (スループット、応答時間)。
- 必要な可用性レベル (稼働率)。
- セキュリティポリシーとコンプライアンス要件。
- 運用・管理の容易性。
- 将来的なスケーラビリティの要件。
- 予算、導入期間。
これらの目的と要件を明確にすることで、適切なエディションの選定、ハードウェア構成、導入オプション、さらには導入後の評価基準が定まります。関係者(ビジネス部門、開発チーム、運用チーム、セキュリティ担当など)間でこれらの要件を共有し、合意形成を図ることが重要です。
2. 環境の評価
現在のシステム環境を詳細に評価します。
- 現行システムの構成:
- 現在使用しているSQL Serverのバージョンとエディション。
- 稼働しているOSのバージョンとパッチレベル。
- ハードウェア構成(サーバーの種類、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク)。
- 仮想化環境を利用している場合はその構成(Hyper-V, VMwareなど)。
- SQL Server上で動作しているアプリケーション。
- SQL Serverと連携している外部システムやツール(BIツール、ETLツール、監視ツールなど)。
- リソース要件:
- 現在のワークロードにおけるCPU、メモリ、ストレージI/O、ネットワークの利用状況。
- SQL Server 2022を導入する際に必要となるであろう追加リソース。
- 将来的なワークロード増加の見込み。
- 互換性の確認:
- 現在稼働しているOSがSQL Server 2022でサポートされているか。
- 使用しているアプリケーションがSQL Server 2022に対応しているか。
- 外部ツールや連携システムがSQL Server 2022と連携可能か。
3. 互換性の確認とアップグレードパス
現行環境とSQL Server 2022の互換性を詳細に確認します。
- サポートされるOSバージョン:
- SQL Server 2022は、Windows Server 2019以降(Desktop Experience または Server Core)、または特定のLinuxディストリビューション(Red Hat Enterprise Linux, SUSE Linux Enterprise Server, Ubuntu)でサポートされます。現在使用しているOSバージョンがサポートされているか確認し、必要であればOSのアップグレードも考慮します。
- 現行バージョンからのアップグレードパス:
- SQL Server 2022へのアップグレードは、SQL Server 2012以降から可能です(一部制限あり)。それ以前のバージョンを使用している場合は、一度SQL Server 2012以降にアップグレードするか、マイグレーション(移行)手法をとる必要があります。SQL Server 2022 Setupは、直接サポートされるバージョンからのインプレースアップグレードをサポートします。
- データベース互換性レベル:
- アップグレード後も、データベースの互換性レベルを以前のバージョンに保つことができます。これにより、アプリケーションへの影響を最小限に抑えつつ、SQL Server 2022の新しい機能(但し、互換性レベルに依存しない機能のみ)を利用できます。ただし、SQL Server 2022の最新のパフォーマンス強化機能(Query Storeの自動フィードバックなど)の多くは、互換性レベルをSQL Server 2022 (160) に設定することで初めて有効になります。段階的に互換性レベルを上げる計画を立てることを推奨します。
- 互換性チェックツールの利用 (Data Migration Assistant – DMA):
- Microsoftが提供するData Migration Assistant (DMA) ツールは、既存のデータベースを評価し、SQL Server 2022への移行やアップグレードにおける互換性の問題を検出するのに役立ちます。データベースのスキーマ、データ、およびSQL Server機能の互換性をチェックし、潜在的な破壊的変更、非推奨機能、動作の変更、およびサポート対象外の機能に関するレポートを生成します。このツールを必ず実行し、検出された問題を事前に修正または計画に盛り込みます。
- アプリケーションの互換性テスト:
- 最も重要なステップの一つです。SQL Server 2022へのアップグレード(または移行)後、既存のアプリケーションが正しく動作するか、パフォーマンスに問題がないかを十分にテストする必要があります。開発/テスト環境にSQL Server 2022のインスタンスを構築し、現行環境からリストアしたデータベースを使用して、アプリケーションの全機能を網羅的にテストします。特に、ストアドプロシージャ、関数、ビュー、クエリ、およびデータベース接続に関するコードを入念に確認します。
4. エディションの選定
SQL Server 2022には、用途や規模に応じた複数のエディションがあります。
- Enterprise Edition:
- 最も高機能で、大規模なミッションクリティカルなワークロード、高い可用性、セキュリティ、パフォーマンスが求められる環境向けです。Always On Availability Groups (AG) の無制限レプリカ、カラムストアインデックス、メモリ内データベース、高度なセキュリティ機能、Azure連携機能などが含まれます。CPUコア数やメモリ容量の制限もありません。
- Standard Edition:
- 中規模のアプリケーションおよびデータウェアハウス向けです。Enterprise Editionの機能の一部(AGは基本AGのみ、メモリやCPUの制限あり、一部高度な機能なし)が利用できます。多くのビジネスアプリケーションにとって十分な機能を提供します。
- Developer Edition:
- 開発およびテスト環境向けの無償エディションです。Enterprise Editionの全機能が含まれますが、本番環境での使用は許可されていません。
- Express Edition:
- 小規模なアプリケーションや学習向けの無償エディションです。機能が大きく制限されており(データベースサイズ10GBまで、CPU 1ソケットまで、メモリ1GBまでなど)、本番環境での利用は限定的です。
自社の要件(必要な機能、パフォーマンス、可用性、予算など)に基づいて、最適なエディションを選択します。機能比較表を参考に、将来的な拡張性も考慮して決定します。
5. ライセンス
SQL Serverのライセンスは複雑であり、特に仮想化環境では注意が必要です。
- ライセンスモデル:
- SQL Server 2022の主要なライセンスモデルは「コアライセンス」です。サーバー上の物理コア数、または仮想マシンに割り当てられた仮想コア数に基づいてライセンスを購入します。Standard Editionでは、CAL (Client Access License) モデルも選択可能ですが、通常はコアライセンスの方が大規模環境では有利になります。Enterprise Editionはコアライセンスのみです。
- 仮想化環境でのライセンス計算:
- 仮想マシン (VM) あたりでライセンスを購入する場合、VMに割り当てられた仮想コア数に基づいて計算します(最小4仮想コア)。
- 物理サーバー全体でライセンスを購入し、そのサーバー上で実行されるすべてのVMをカバーすることも可能です。この場合、物理サーバーの全物理コア数に基づいてライセンスを購入し、Software Assuranceを契約することで、無制限のVMをそのサーバー上で実行できます。これは、仮想化密度が高い場合にコスト効率が良くなります。
- Azureハイブリッド特典 (Azure Hybrid Benefit):
- Software Assurance付きのSQL Serverライセンスを所有している場合、オンプレミスのライセンスをAzure SQL DatabaseやAzure SQL Managed Instanceの割引に充当できます。これにより、オンプレミスとクラウドの両方でライセンスコストを最適化できます。
- Software Assurance (SA):
- SAは、バージョンアップ権、Azureハイブリッド特典、DRサイトへのフェールオーバー権利、ライセンスモビリティなどの特典を提供する年間契約です。新しいバージョンが出た際にアップグレードを予定している場合や、Azure連携機能を利用したい場合は、SAの契約を検討する必要があります。
- 購入方法:
- ライセンスは、Open Valueなどのボリュームライセンスプログラム、またはCSP (Cloud Solution Provider) プログラムを通じて購入するのが一般的です。
ライセンス計算は、構成や契約形態によって複雑になるため、Microsoftまたは認定パートナーと相談して正確な見積もりと最適な購入方法を確認することを強く推奨します。
6. ハードウェア要件
SQL Server 2022を安定して高性能に実行するためには、適切なハードウェアを選択することが重要です。
- 推奨されるハードウェア構成:
- CPU: ワークロードに応じた十分なコア数と高い周波数のCPUが推奨されます。コアライセンスの場合、必要なコア数を考慮して選択します。
- メモリ: データベースサイズ、ワークロード、インスタンス数に応じて、できるだけ多くのメモリを搭載することが推奨されます。SQL Serverは積極的にメモリを使用してパフォーマンスを向上させます。特にEnterprise Editionではメモリ容量の制限はありません。Standard Editionでは物理メモリの上限があります(通常128GB)。
- ストレージ: データベースファイル(MDF)、ログファイル(LDF)、TempDB、バックアップファイルなど、用途に応じて適切なストレージを選択し構成します。パフォーマンスが重要な場合は、高速なSSD (Solid State Drive) やNVMeドライブの利用が必須です。
- ストレージの種類と構成:
- システムドライブ: OSやSQL Serverプログラムをインストール。
- データファイル用ドライブ: MDFファイルを配置。I/O性能が最も重要。
- ログファイル用ドライブ: LDFファイルを配置。シーケンシャル書き込み性能が重要。データファイルとは別の物理ドライブに配置することが推奨されます。
- TempDB用ドライブ: TempDBファイルを配置。ワークロードに応じてI/O性能が重要。データファイルやログファイルとは別の物理ドライブに配置することが推奨されます。ファイルの数をCPUコア数の論理コア数の半分〜コア数に設定することが一般的です。
- バックアップ用ドライブ: バックアップファイルを保存。容量が重要ですが、リストア時のI/O性能も考慮。
- RAID構成:
- RAID 1 (ミラーリング): OS、ログファイルなど、可用性と書き込み性能が必要な場合。
- RAID 10 (ストライピング+ミラーリング): データファイル、TempDBなど、高いI/O性能と可用性が同時に必要な場合。最も推奨される構成です。
- RAID 5/6: 容量効率は良いが、書き込み性能やリビルド時のリスクに注意が必要。バックアップファイルなどに使用されることがあります。
- ストレージの種類と構成:
- ネットワーク要件: サーバー間の通信(Always On AG、分散クエリなど)やクライアントからのアクセスに対して、十分な帯域幅と低いレイテンシを持つネットワークが必要です。特にAGのレプリケーションでは、帯域幅がボトルネックになることがあります。
物理サーバー、仮想マシン、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ (HCI) など、基盤となるハードウェアプラットフォームも検討が必要です。仮想化は管理の柔軟性やリソース効率の面でメリットがありますが、物理サーバーはディスクI/O性能などで有利な場合があります。
7. OS要件
SQL Server 2022が稼働するOSは、その安定性やパフォーマンスに直結します。
- サポートされるWindows Serverバージョン:
- Windows Server 2019 Datacenter / Standard (Desktop Experience, Server Core)
- Windows Server 2022 Datacenter / Standard (Desktop Experience, Server Core)
- Windows 10/11 Pro/Enterprise/Education (SQL Serverの機能限定 – Express, Developerのみ)
- Linuxサポート (ディストリビューション):
- Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 8.6 / 8.7 / 8.8 / 9.0 / 9.1 / 9.2
- SUSE Linux Enterprise Server (SLES) 15 SP4 / SP5
- Ubuntu 20.04 LTS / 22.04 LTS
- これらのサポートされるバージョンと、特定のカーネルバージョンに注意が必要です。
- コンテナ環境 (Docker, Kubernetes):
- Docker Desktop on Windows/Mac/Linux
- Docker Engine on Windows/Linux
- Kubernetes (Azure Kubernetes Service (AKS), Azure Arc enabled Kubernetes, OpenShiftなど)
SQL Server 2022は、コンテナイメージとして提供されており、コンテナ環境へのデプロイも容易です。軽量な環境やDevOpsパイプラインに組み込む場合に適しています。
OSの選定は、既存のスキルセット、標準化ポリシー、アプリケーションの互換性、そしてLinux上でSQL Serverの機能がすべて利用可能か(一部機能はWindows版のみ)を考慮して決定します。OSのバージョンは、SQL Serverのサポートマトリックスを確認し、最新のセキュリティパッチが適用された状態を維持できるように計画します。
8. インストールの計画
具体的なインストール方法と構成を計画します。
- 新規インストールかアップグレードか:
- 既存のSQL Serverインスタンスをインプレースでアップグレードするか、新しいサーバーに新規インストールし、データベースを移行するかを決定します。新規インストール+移行の方が、クリーンな環境を構築でき、リスクを分散できることが多いですが、手間はかかります。
- インストールオプション:
- Standalone Instance: 単一のサーバー上にSQL Serverインスタンスをインストール。最もシンプルですが、サーバー障害時には利用できなくなります。
- Failover Cluster Instance (FCI): Windows Server Failover Clustering (WSFC) を利用し、共有ストレージ上のSQL Serverインスタンスを複数のサーバー間でフェールオーバー可能にします。サーバー障害には対応できますが、ストレージ障害には対応できません。
- Always On Availability Groups (AG): WSFCを利用し、データベース単位で可用性グループを構成し、非共有ストレージ上のレプリカ間でフェールオーバー可能にします。データベース障害やサーバー障害に対応でき、読み取り可能なセカンダリレプリカを作成することで読み取りワークロードをオフロードすることも可能です。SQL Server 2022のHADR機能の多くはAGを前提としています。
- 必要なコンポーネント:
- データベースエンジン、SQL Server Agent、Full-Text Search、Analysis Services (SSAS)、Reporting Services (SSRS)、Integration Services (SSIS)、Master Data Services (MDS)、Data Quality Services (DQS) など、必要なコンポーネントを選択します。
- サービスアカウントと権限:
- SQL Serverサービス(データベースエンジン、Agentなど)を実行するための専用のドメインアカウントを作成し、最小限の権限を付与することがセキュリティのベストプラクティスです。
- インストールメディア/方法:
- ISOファイル、またはWebからのダウンロード。インストールウィザードまたはコマンドラインによるサイレントインストール。Azure VMへのデプロイでは、マーケットプレイスイメージを利用することも可能です。
9. セキュリティ構成の計画
SQL Serverのセキュリティは、インストール前から計画する必要があります。
- 認証方式:
- Windows認証を基本とし、SQL Server認証は限定的に利用することが推奨されます。SQL Server 2022ではAzure AD認証もサポートされており、Azure ADとの連携も検討します。
- 最小特権の原則:
- ユーザーやアプリケーションに必要な最小限の権限のみを付与します。Publicロールやdb_ownerロールの乱用を避けます。
- ファイアウォール設定:
- SQL Serverのポート(デフォルトはTCP 1433)や、SQL Server Browserサービス、およびその他の必要なポート(AGのエンドポイントなど)について、許可が必要なIPアドレス/サブネットからの通信のみを許可するようにファイアウォールを設定します。
- パッチ管理計画:
- SQL ServerおよびOSのセキュリティパッチや累積的な更新プログラム (CU) を定期的に適用する計画を立てます。
- 監査設定:
- 重要な操作(ログイン失敗、オブジェクトへのアクセス、権限変更など)について監査を設定し、セキュリティインシデント発生時に原因究明ができるようにします。SQL Server Audit 機能などを活用します。
- 暗号化:
- 機密データは、Transparent Data Encryption (TDE) や Always Encrypted を利用して暗号化を検討します。通信経路の暗号化もTLS設定で行います。
- アクセス制御:
- インスタンスレベル、データベースレベル、オブジェクトレベルでのアクセス制御(ログイン、ユーザー、スキーマ、ロール、権限)を適切に設計・実装します。
10. 高可用性・災害復旧 (HADR) の計画
ビジネス要件で定められた可用性・復旧目標 (RTO/RPO) を達成するためのHADR戦略を計画します。
- HADRオプションの検討:
- FCI、Always On AG、Basic AG (Standard Edition)、Log Shipping、Database Mirroring (非推奨)、Replicationなど、SQL Serverが提供するHADR機能から最適なものを選択します。SQL Server 2022では、AGが推奨される高可用性ソリューションです。
- 必要なレプリカ数、同期モード(同期コミット/非同期コミット)、フェールオーバーモード(自動/手動)を決定します。
- レプリケーション戦略:
- AG以外にも、特定のシナリオ(データ分散、レポーティング、移行など)でReplication (Snapshot, Transactional, Merge) を利用するか検討します。
- バックアップ戦略とリカバリモデル:
- 完全バックアップ、差分バックアップ、トランザクションログバックアップの取得頻度と保存期間を定義します。
- データベースのリカバリモデル(Full, Bulk-Logged, Simple)を選択します。Point-in-Time Recoveryが必要な場合はFullまたはBulk-Loggedを選択します。
- バックアップの保存先(ローカルディスク、ネットワーク共有、テープ、Azure Blob Storage/S3互換ストレージなど)を検討します。
- バックアップの暗号化と圧縮を検討します。
- DRサイトの検討:
- オンプレミス間、またはオンプレミスとAzure間でのDRサイト構築を検討します。SQL Server 2022のAzure SQL Managed InstanceへのLink featureは、特にオンプレミスからのDRサイト構築を簡素化する魅力的な選択肢です。
- DRサイトへのデータのレプリケーション方法(AG、Log Shipping、Azure Link featureなど)を選択します。
HADR構成はシステムの安定性と継続性に直接影響するため、ビジネス要件と照らし合わせて慎重に設計する必要があります。
11. 監視・運用管理の計画
導入後の運用フェーズを見据えた計画も重要です。
- パフォーマンス監視方法:
- SQL Server Profiler (非推奨、Extended Eventsに移行)、Extended Events、Dynamic Management Views (DMV)、Performance Monitor (PerfMon)、SQL Server Agent Jobによる定期的なヘルスチェックなど。
- サードパーティ製の監視ツールや、Azure Monitor for SQL (Azure Arc経由でオンプレミスも監視可能) の活用を検討します。
- 特にSQL Server 2022では、Query Storeの機能強化が運用監視に非常に役立ちます。自動的なプランフィードバックの効果をモニタリングする方法も考慮します。
- ログ管理:
- SQL Server Error Log、Windows Event Log (Application, System) を収集・監視する仕組みを構築します。
- メンテナンス計画:
- インデックスの再構築/再編成、統計情報の更新、DBCC CHECKDBによるデータベースの整合性チェック、バックアップ取得など、定期的なメンテナンス作業のスケジュールと方法を定義します。SQL Server Agent JobやMaintenance Plansを利用します。
- 運用ツール:
- SQL Server Management Studio (SSMS) は引き続き主要な管理ツールです。
- Azure Data Studio (ADS) は、SSMSよりも軽量でクロスプラットフォーム対応しており、ノートブック機能や拡張機能が豊富です。用途に応じて使い分けます。
- PowerShell、sqlcmdなどのコマンドラインツールも自動化に役立ちます。
- Azure Arcを利用したハイブリッド運用の検討:
- オンプレミスのSQL Server 2022インスタンスをAzure Arcに接続することで、Azure Portalから一元的な監視、セキュリティパッチ適用、Azure Policyによる構成管理などが可能になります。ハイブリッド環境全体の運用管理を効率化したい場合は、Azure Arc enabled SQL Serverの導入も合わせて検討します。
12. テスト計画
導入計画の集大成として、徹底的なテスト計画を策定します。
- 機能テスト:
- アプリケーションの全ての機能が期待通りに動作するか。特に、データベースアクセスに関わる部分(INSERT, UPDATE, DELETE, SELECT、ストアドプロシージャ、関数など)を重点的にテストします。
- パフォーマンステスト (負荷テスト):
- 想定される最大負荷、またはそれ以上の負荷をかけて、応答時間、スループット、リソース使用率(CPU, Memory, Disk I/O)を測定し、目標とするパフォーマンスレベルが達成できるかを確認します。ボトルネックがあれば特定し、チューニングを行います。互換性レベル 160でのパフォーマンスを評価し、以前の互換性レベルと比較することも重要です。
- 特に、SQL Server 2022の新しいパフォーマンス強化機能(PSP, CE Feedbackなど)がワークロードに効果があるかを確認します。
- 互換性テスト:
- DMAで検出された問題が解消されているか、非推奨機能がアプリケーションに影響しないかを確認します。
- 外部ツールや連携システムとの接続および動作を確認します。
- HADRテスト:
- Always On AGなどのHADR構成が正しく機能するか、手動/自動フェールオーバーが期待通りに発生するか、フェールオーバー時のダウンタイムが目標RTO内に収まるかを確認します。
- バックアップ/リカバリテスト:
- 取得したバックアップから、正常にデータベースをリストアできるか、Point-in-Time Recoveryが必要な場合にそれが可能かを確認します。定期的なバックアップテストは運用フェーズでも必須です。
- ロールバック計画:
- 万が一、導入後に重大な問題が発生した場合に、以前のバージョンや状態に戻すための明確なロールバック計画を準備しておきます。データベースのバックアップはもちろん、アプリケーションや関連システムを以前の状態に戻す手順も含めます。
テストは、開発環境、テスト環境、ステージング環境など、本番環境に準じた環境で段階的に行うのが理想です。十分なテスト期間を確保し、発見された問題は必ず解消してから本番導入に進みます。
導入時の考慮事項
計画が完了したら、いよいよ導入の実行段階です。導入時にもいくつかの重要な考慮事項があります。
- インストール手順の実行:
- 計画に基づき、SQL Server 2022のセットアップウィザードまたはスクリプトを実行します。インストールウィザードはグラフィカルで分かりやすいですが、複数台のサーバーへのインストールや自動化が必要な場合は、構成ファイルを使用したサイレントインストールが効率的です。
- 必要なコンポーネント、インストールディレクトリ、サービスアカウント、照合順序 (Collation) などを間違えないように設定します。照合順序はデータベース作成後にも変更できますが、システムデータベースの照合順序はインストール時にしか設定できないため、将来的な要件を考慮して慎重に選択します。
- セキュリティパッチの適用:
- インストール後、最新の累積的な更新プログラム (CU) やセキュリティパッチを直ちに適用します。通常、SQL Serverはリリース後も定期的にCUが提供されるため、常に最新の状態に保つことがセキュリティと安定性のために重要です。
- 初期構成:
- インストール後、パフォーマンス向上のためにいくつかの初期構成を行います。
- 最大サーバーメモリの設定: OSや他のアプリケーションが必要とするメモリを考慮し、SQL Serverが使用する最大メモリ量を設定します。通常、物理メモリの70-90%程度を目安としますが、環境によって調整が必要です。
- CPUアフィニティマスクの設定: 特定のCPUコアにSQL Serverの処理を割り当てることで、他のアプリケーションとの競合を避ける場合に利用しますが、通常はデフォルト設定(すべてのCPUを使用)で問題ありません。
- TempDB構成: TempDBのファイル数とファイルサイズを適切に設定し、別の高速なディスクに配置します。インスタンスの作成後に設定を変更できます。
- トレースフラグ: 特定の動作を変更するために利用する場合がありますが、安易な設定は避けます。
- インストール後、パフォーマンス向上のためにいくつかの初期構成を行います。
- データベースの移行:
- 新規インストールの場合、既存のデータベースをSQL Server 2022に移行する必要があります。主な移行方法としては、バックアップ/リストア、デタッチ/アタッチ、データポンプツール(SSISなど)、またはData Migration Assistant (DMA) を利用する方法があります。Azure SQL Managed InstanceへのLink featureを利用してオンラインで移行することも可能です。
- 接続文字列の更新:
- アプリケーションや外部ツールが、新しいSQL Server 2022インスタンスに接続するように接続文字列を更新します。サーバー名やインスタンス名、認証情報などが変更される可能性があります。
- ユーザー権限の設定:
- 移行したデータベースのユーザーや、新しいインスタンスのログインに対して、計画に基づいた最小限の権限を付与します。孤立ユーザー (Orphaned Users) の問題が発生しないように注意します(特にログインとユーザーがSIDでリンクされているWindows認証の場合)。
- アプリケーションとの連携確認:
- データベース移行後、改めてアプリケーションとの連携テストを実施し、予期せぬ問題が発生していないかを確認します。
- 監視設定:
- 計画に基づき、パフォーマンスカウンタ、Extended Events、SQL Server Agentアラートなどの監視設定を行います。監視ツールとの連携設定も行います。
導入後の運用と最適化
SQL Server 2022の導入はゴールではなく、スタート地点です。導入後も継続的な運用管理と最適化が不可欠です。
- 継続的なパフォーマンス監視とチューニング:
- DMV、Extended Events、Query Storeなどを活用して、システムのパフォーマンスを継続的に監視します。
- パフォーマンスボトルネック(CPU使用率、メモリ不足、ディスクI/Oの遅延、ブロック、デッドロック、非効率なクエリなど)が検出された場合は、特定してチューニングを行います。
- SQL Server 2022の新しい自動チューニング機能(自動プランフィードバック、PSP、CEフィードバックなど)の効果をモニタリングし、必要に応じて設定を調整します。
- インデックスの状態を監視し、定期的な再構築/再編成や、不足しているインデックスの作成を検討します。統計情報も定期的に更新します。
- パッチ管理とバージョンアップ戦略:
- MicrosoftからリリースされるセキュリティパッチやCUを計画的に適用し、システムのセキュリティと安定性を維持します。適用前にテスト環境での影響確認は必須です。
- 新しいメジャーバージョンがリリースされた際のアップグレード戦略も検討しておきます。
- バックアップとDR訓練:
- バックアップが正常に取得されているか毎日確認します。
- 定期的にバックアップからのリストア訓練を実施し、災害発生時に確実に復旧できる体制を維持します。
- Always On AGなどのHADR構成についても、定期的なフェールオーバー訓練を実施し、運用手順を確認します。
- セキュリティレビュー:
- 定期的にセキュリティ設定を見直し、脆弱性がないか確認します。ユーザー権限、ファイアウォール設定、監査ログなどをチェックします。
- 新しい脅威情報に注意し、必要な対策を講じます。
- 新しい機能の活用検討:
- 導入時点では利用しなかったSQL Server 2022の新しい機能についても、運用を進める中でその有効性を再評価し、活用を検討します。例えば、Azure Synapse Linkによる分析オフロード、Ledgerによる監査強化などです。
- Azure連携機能の活用:
- Azure Arc enabled SQL Serverによる一元管理、Microsoft Purviewによるデータガバナンス、Azure SQL Managed InstanceへのLink featureによるDRサイト構築など、Azure連携機能を活用して、運用効率向上や新たなシナリオ実現を目指します。
まとめ
Microsoft SQL Server 2022は、オンプレミス、ハイブリッド、マルチクラウド環境におけるデータ管理プラットフォームとして、これまでにないレベルのパフォーマンス、セキュリティ、可用性、分析機能、そして特にAzureとの連携機能を提供します。Query Storeの自動フィードバックによるパフォーマンスの自動最適化、Azure AD認証の強化やLedger機能によるセキュリティ向上、Azure SQL Managed InstanceへのLink featureやS3互換ストレージ連携によるハイブリッドシナリオの簡素化、Azure Synapse LinkによるリアルタイムHTAPなど、多くの魅力的な機能が搭載されています。
これらの新機能を最大限に活用し、SQL Server 2022の導入プロジェクトを成功させるためには、事前の十分な計画と準備が不可欠です。本記事で詳述したように、導入の目的と要件定義から始まり、既存環境の評価、互換性の確認、エディションとライセンスの検討、ハードウェア・OSの準備、インストール計画、セキュリティ・HADR・監視の計画、そして徹底的なテストまで、各ステップを丁寧に進めることが重要です。
特に、現行システムからの互換性確認(DMAツールの利用)とアプリケーションのテストは、予期せぬ問題を回避するために最も時間をかけるべき工程の一つです。また、SQL Server 2022はAzureとの連携が強化されているため、Azure環境の利用やAzure Arc enabled SQL Server、Microsoft PurviewなどのAzureサービスとの連携についても、導入計画段階から検討に含めることで、ハイブリッド環境全体の価値を最大化できます。
導入後も、継続的なパフォーマンス監視、セキュリティ対策、パッチ管理、そして新しい機能の活用検討を通じて、SQL Server 2022を最大限に活用し続けることが重要です。適切な計画と準備を行い、SQL Server 2022を強力なデータプラットフォームとして、皆様のビジネスの成長に貢献できるよう願っています。