はい、承知いたしました。「Photoshop vs Illustrator|機能・用途の違いと選び方を紹介」というテーマで、約5000語の詳細な記事を執筆します。
Photoshop vs Illustrator|デザインの二巨頭、機能・用途の違いと最適な選び方を紹介
デザインの世界に足を踏み入れたとき、あるいはグラフィック制作に携わることになったとき、必ずと言っていいほど耳にするのが「Adobe Photoshop」と「Adobe Illustrator」という名前です。どちらもAdobe社が提供するプロフェッショナルなデザインツールであり、多くのクリエイターにとって欠かせない存在です。
しかし、これからデザインを学ぶ方や、それぞれのツールの具体的な違いを知らない方にとっては、「結局、PhotoshopとIllustratorって何が違うの?」「自分はどっちを使えばいいの?」といった疑問が浮かんでくることでしょう。どちらも「絵を描いたり、デザインを作ったりするソフト」という漠然としたイメージはあるものの、その核となる技術や得意なこと、向いている用途は大きく異なります。
この記事では、PhotoshopとIllustratorという二つの強力なツールについて、その根本的な違い、主要な機能、得意とする用途、そして最終的にあなたがどちらを選ぶべきか、あるいは両方をどのように使い分けるべきかについて、約5000語にわたる詳細な解説を行います。それぞれのツールの奥深さに触れながら、あなたの目的に合ったツールを見つける手助けができれば幸いです。
導入:デザインツールを理解する重要性
デジタルデザインの世界は、写真編集、イラスト制作、ロゴデザイン、Webデザイン、印刷物のレイアウトなど、非常に多様な分野で構成されています。これらの制作活動を行う上で、適切なツールを選択することは、作業効率、作品の質、そして最終的なアウトプットの表現力を大きく左右します。
Adobe Creative Cloudは、これらの多様なニーズに応えるための包括的なソフトウェア群を提供しており、その中でもPhotoshopとIllustratorは、それぞれの分野でデファーストスタンダードとも言える地位を確立しています。しかし、その普及度ゆえに、それぞれのツールが持つ真の力や使い分けの妙が十分に理解されていないケースも少なくありません。
「何となくPhotoshopで全てを済ませている」「Illustratorで写真を加工しようとしてうまくいかない」といった経験があるなら、それはそれぞれのツールの特性を十分に把握していないからかもしれません。この記事を通じて、PhotoshopとIllustratorの明確な違いを理解し、あなたのクリエイティブな活動をより豊かにするための知識を深めていきましょう。
Photoshopとは? – 画像編集と描画のプロフェッショナル
Adobe Photoshop(フォトショップ)は、主にラスター画像を扱うための強力な編集・描画ツールです。1990年の登場以来、写真編集、デジタルペインティング、合成、Webデザイン、UIデザインなど、幅広い分野で活用されています。
Photoshopの基本理念:ピクセルを操る
Photoshopの根幹を成すのは、「ピクセル(Pixel)」です。デジタル画像は、無数の小さな色の点(ピクセル)が集まってできています。Photoshopは、これらのピクセル一つ一つ、あるいはピクセルの集まりに対して、色、明るさ、コントラスト、シャープネスなどの様々な編集を加えることで、画像を加工・修正・合成します。
カメラで撮影した写真や、スキャナーで取り込んだ画像は、基本的にすべてピクセルデータ(ラスター画像)です。Photoshopは、これらの「ピクセルの集合体」を編集することに特化しています。
Photoshopが得意なこと
- 写真編集・レタッチ: 写真の色調補正、明るさ調整、傷やゴミの除去、人物の肌修正、体型補正など、写真そのものを美しく加工することに圧倒的な強みを発揮します。
- 画像合成・加工: 複数の写真素材を組み合わせて、現実にはありえないようなシーンを作り出したり、特殊効果を加えたりする「フォトマニピュレーション」が得意です。
- デジタルペインティング: 豊富なブラシツールと描画機能を駆使して、まるで絵の具や筆を使っているかのような感覚で、デジタルイラストを描くことができます。
- Webデザイン・UIデザイン(モックアップ制作): Webサイトやアプリのレイアウト、デザインイメージ(モックアップ)を作成したり、バナーやアイコンなどの画像アセットを制作したりするのに使われます。
- 印刷物の画像処理: ポスターやチラシなどの印刷物に使用する写真素材の解像度調整や色補正を行います。
Photoshopの主要機能詳細
- レイヤー: 画像を複数の透明な層に分けて管理する機能。各レイヤーで独立して編集を行い、重ね合わせることで複雑な画像を作成できます。非破壊編集の基本となる非常に重要な機能です。
- 選択範囲: 画像の一部を切り取ったり、特定の範囲だけを編集したりするための機能。様々な選択ツール(選択ブラシ、マジックワンド、投げ縄ツールなど)があります。
- 調整レイヤー: 明るさ、コントラスト、色調などを非破壊で調整できるレイヤー。元の画像を傷つけずに、何度でも調整をやり直すことができます。
- フィルター: 画像に様々な効果を適用する機能(ぼかし、シャープ、ノイズ除去、アーティスティックな効果など)。
- ブラシツール: 描画やマスク、消しゴムなど、様々な用途に使えるツール。豊富なブラシの種類があり、質感のある描画が可能です。
- スマートオブジェクト: レイヤーを元の情報(ラスター画像またはベクトルデータ)を保持したまま変換する機能。拡大縮小や変形を繰り返しても画質の劣化を防いだり、フィルターを後から編集可能な形で適用したりできます。
- レタッチツール: スポット修復ブラシ、修復ブラシ、コピースタンプツール、パッチツールなど、写真の不要な部分を自然に除去・修正するための専用ツール群。
- パスツール(シェイプツール含む): Photoshopにもパスツールはありますが、Illustratorのような精緻なベクトル描画・編集が主目的ではなく、主に選択範囲の作成、マスク、シンプルな図形描画、テキストのパスに沿わせるなどの用途で使われることが多いです。
- 文字ツール: 画像上にテキストを配置・編集できます。ただし、Illustratorほどの高度なタイポグラフィ機能や、アウトライン化して拡大縮小しても劣化しないというベクトル文字の特性は活かせません(ラスタライズされるため)。
- WebおよびUI関連機能: アートボード機能による複数画面デザイン、アセット書き出し機能、スペック抽出機能など、Web/UIデザインを効率化するための機能も充実しています。
Photoshopが向いている人
- 写真編集やレタッチをメインに行いたい人(フォトグラファー、レタッチャー)。
- 複数の画像を組み合わせて合成写真やコラージュを作成したい人。
- 水彩画や油絵のような質感でデジタルイラストを描きたい人(デジタルペインター)。
- Webサイトやアプリのビジュアルデザイン、バナー、SNS用画像などを制作したい人(Webデザイナー、UIデザイナー)。
- 既存の画像に対して、複雑な修正や加工を施したい人。
Illustratorとは? – ベクトルグラフィック制作のマスター
Adobe Illustrator(イラストレーター)は、主にベクトルグラフィックを扱うための描画ツールです。Photoshopと同様に長年の歴史を持ち、イラスト制作、ロゴデザイン、DTP(デスクトップパブリッシング)、インフォグラフィック、パッケージデザインなど、幅広い分野で活用されています。
Illustratorの基本理念:計算式で図形を描く
Illustratorの根幹を成すのは、「ベクトル(Vector)」です。ベクトルグラフィックは、ピクセルではなく、点(アンカーポイント)と点の間を結ぶ線(パス)、そしてそのパスの形状を決定するハンドルによって定義される数学的な計算式に基づいています。
この方式の最大の利点は、解像度に依存しないことです。ベクトルデータで作成されたオブジェクトは、どれだけ拡大しても、あるいは縮小しても、線や図形の鮮明さが失われることなく、常に滑らかな状態を保ちます。これは、拡大・縮小の際に数学的な計算によって形状が再生成されるためです。
Illustratorが得意なこと
- ロゴデザイン・アイコン制作: 拡大縮小しても劣化しないため、名刺から看板まで様々なサイズで使用されるロゴやアイコンの制作に最適です。
- イラスト制作: 線や塗りを組み合わせた、クリアでシャープなイラストレーションの制作が得意です。キャラクターデザイン、テクニカルイラスト、ファッションイラストなど。
- DTP・印刷物制作: 名刺、チラシ、ポスター、パンフレット、書籍の表紙など、印刷を前提としたデザイン(特に文字や図形が中心のもの)の制作に広く使われます。文字のアウトライン化やCMYKカラーでの出力など、印刷に必要な機能が充実しています。
- タイポグラフィ: 高度な文字組みや、文字そのものをデザイン・変形することに特化した機能が豊富です。
- 図解・インフォグラフィック・地図制作: 正確な図形やラインを組み合わせて、分かりやすい図解、グラフ、地図などを作成するのに適しています。
- パッケージデザイン: 製品のパッケージやラベルデザインは、拡大縮小や変形が容易なベクトルデータで制作されることがほとんどです。
Illustratorの主要機能詳細
- パスとアンカーポイント: ベクトルグラフィックの基本要素。ペンツールなどでアンカーポイントを打ち、パスでつなぎ、ハンドルで曲線を調整することで、自由な形状を作成します。
- 図形ツール: 長方形、楕円形、多角形などの基本的な図形を簡単に描画できます。
- ペンツール: Illustratorの中核となるツールの一つ。自由なパスを作成し、複雑な曲線や図形を描くために使用します。
- ライブペイント: 複数のオブジェクトが重なり合っている部分を、塗り絵のように直感的に塗り分けることができる機能。
- アピアランス: オブジェクト自体の形状を変えることなく、複数の線、塗り、効果などを重ねて適用できる機能。非破壊でデザインのバリエーションを試したり、複雑な表現を実現したりするのに便利です。
- シンボル: 繰り返し使用するオブジェクトをシンボルとして登録し、効率的に配置・編集できます。後からシンボルを編集すれば、配置された全てのインスタンスが同時に更新されます。
- ブラシツール: Photoshopとは異なり、Illustratorのブラシは基本的にパスに沿って線を描くものです。様々なブラシ形状や質感があり、イラストやカリグラフィなどに活用できます。ブラシ自体もベクトルデータで定義されているものが多いです。
- 文字ツール: 非常に強力な文字組み機能を持ちます。フォント選択、サイズ、行間、字間、カーニング、ベースラインシフトなどの細かい設定に加え、文字を変形させたり、アウトライン化して図形として扱ったりすることも可能です。
- アートボード: 複数のデザインを一つのファイル内で管理するための機能。様々なサイズの印刷物やWeb用デザインをまとめて制作する際に便利です。
- パスファインダー: 複数の図形を組み合わせて、合体、分割、交差、型抜きなどの複雑な図形を作成する機能。ロゴデザインなどで頻繁に使用します。
- グラデーション・メッシュ: 滑らかな色の変化を表現する機能。メッシュツールを使えば、より立体的な表現も可能です。
Illustratorが向いている人
- ロゴやアイコン、キャラクターなど、拡大縮小しても劣化しないイラストを制作したい人。
- 名刺、チラシ、ポスター、パンフレットなどの印刷物をデザイン・作成したい人(DTPデザイナー)。
- 書籍の装丁や雑誌のレイアウトなど、文字と図形を組み合わせたデザインを多く手掛ける人。
- 正確な図形やラインを使った、テクニカルイラスト、地図、グラフなどを作成したい人。
- 独自のフォントやカリグラフィを作成したい人(タイポグラファー)。
- Webサイトやアプリで使用する、軽量で拡大縮小可能なSVG形式のアイコンやイラストを作成したい人。
PhotoshopとIllustratorの決定的な違い:ラスタ vs ベクタ
ここまでそれぞれのツールの概要と得意なことを見てきましたが、両者の最も根本的な違いは、扱うデータの種類にあります。
- Photoshop = ラスタースイート: ピクセル情報を扱います。
- Illustrator = ベクタースイート: 数学的な計算式に基づいたパス情報を扱います。
この違いが、機能や用途のあらゆる面に影響を与えています。
1. 編集方法の違い
- Photoshop: ピクセルを直接編集します。例えば、ブラシで色を塗る、消しゴムで消すといった操作は、その部分のピクセルの色情報を直接書き換えていることになります。
- Illustrator: パスやオブジェクトの数学的な定義(位置、形状、色など)を編集します。例えば、図形の色を変えるのは、その図形を定義する計算式に色情報が追加・変更されるイメージです。
2. 解像度と拡大縮小耐性
- Photoshop: ラスタ画像は、作成時またはスキャン時などに「解像度」(1インチあたりのピクセル数、dpiやppiで表される)が決まります。画像を拡大すると、ピクセルが引き延ばされてしまい、ギザギザになったり(ジャギー)、ぼやけたりして画質が劣化します。縮小はある程度可能ですが、拡大には限界があります。
- Illustrator: ベクトルデータは、解像度に依存しません。拡大・縮小しても、パスの形状は数学的に再計算されるため、常に滑らかでクリアな状態が保たれます。どんなサイズで使用しても、元の品質が維持されます。これがロゴやアイコン制作にIllustratorが選ばれる最大の理由です。
3. 表現方法
- Photoshop: 現実の絵画のような、ぼかし、にじみ、筆跡、写真のようなグラデーション、テクスチャといった、ピクセルの集合体ならではの豊かな質感や写実的な表現が得意です。
- Illustrator: 線と面によるシャープでクリアな表現、複雑な図形、正確なグラデーション、洗練された文字組みなどが得意です。現実世界の質感を再現するというよりは、デザインされた人工的な美しさを追求するのに向いています。
4. ファイルサイズとデータ構造
- Photoshop: 画像のサイズやレイヤー数、解像度に比例してファイルサイズが大きくなる傾向があります。
- Illustrator: オブジェクトの数や複雑さによってファイルサイズが変わりますが、写真のようにピクセル情報を持たないため、同程度の情報量であればPhotoshopファイルより軽量になることが多いです。また、編集が容易で、個々のオブジェクトを独立して操作できます。
5. 主なファイル形式
- Photoshop: PSD形式(レイヤーなどの編集情報を含むPhotoshop独自の形式)、JPEG、PNG、GIF、TIFFなど、様々なラスター形式に対応しています。
- Illustrator: AI形式(レイヤーや編集情報を含むIllustrator独自の形式)、EPS、SVG、PDFなど、ベクトル形式や、ベクトル情報を埋め込める形式に対応しています。
機能・用途の具体的な比較対照
これまでの内容を踏まえ、具体的な機能や用途について、PhotoshopとIllustratorの違いを比較してみましょう。
機能/用途 | Photoshop | Illustrator | 備考 |
---|---|---|---|
基本データ形式 | ラスタ(ピクセル) | ベクタ(パス/数式) | 根本的な違い |
得意な作業 | 写真編集、レタッチ、画像合成、デジタルペイント | ロゴ、アイコン、イラスト、DTP、タイポグラフィ | それぞれのツールの核となる用途 |
拡大縮小 | 拡大すると劣化(ジャギー発生) | 無限に拡大縮小可能(劣化しない) | 解像度依存性の違い |
描画ツール | 質感豊かなブラシ(ピクセル描画) | シャープな線・図形(パス描画) | ブラシの特性が異なる |
文字ツール | 画像上の文字(ラスタライズされやすい) | 高度な文字組み、アウトライン化(ベクトル文字) | タイポグラフィの得意不得意 |
色の表現 | 写真の色調補正、グラデーション(ピクセル) | 面や線の塗り、正確なグラデーション(ベクトル) | 写実的な色 vs デザインされた色 |
パスツール | 選択範囲作成、マスク、シンプルな図形用 | 図形描画、編集の基本ツール(高機能) | パスの役割が異なる |
レイヤー/管理 | ピクセルレイヤー、調整レイヤー(重ね合わせ) | オブジェクト単位のレイヤー(独立して操作) | レイヤーの目的と性質が異なる |
ファイルサイズ | 解像度やレイヤー数に依存して大きくなりやすい | オブジェクト数や複雑さに依存(比較的軽量なことも) | データ構造の違い |
Web/UI関連 | モックアップ、バナー、画像アセット書き出し | SVGアイコン、図解、グラフィックアセット作成 | どちらも使用されるが役割が異なる |
印刷 | 写真などの画像処理、大判印刷(解像度管理重要) | ロゴ、文字、図形中心の印刷物(DTP)、線画の印刷 | それぞれの得意な印刷物 |
写真加工 | ○(非常に得意) | △(限定的、写真そのものの加工はほぼ不可) | Photoshopの独壇場 |
写実的な絵 | ○(得意) | △(パスで表現できる範囲) | デジタルペイントはPhotoshopが優位 |
シンプル・クリアな絵 | △(パス編集の自由度低い) | ○(得意) | ベクトルイラストはIllustratorの強み |
複雑な図形作成 | △(パスツール限定的) | ○(得意、パスファインダーなど) | Illustratorのベクター編集能力 |
それぞれのツールで「できること」と「できないこと(または苦手なこと)」
それぞれのツールの特性をさらに深く理解するために、具体的な例を挙げてみましょう。
Photoshopで得意なこと(Illustratorでは難しい、またはできないこと)
- 写真のシミやシワを自然に消す: レタッチツール(修復ブラシなど)はピクセル情報を周囲と馴染ませて修正するため、Photoshopならではの機能です。Illustratorにはこのような機能はありません。
- 複数の写真から人物だけを切り抜いて、別の背景に合成する: 高度な選択範囲ツールやマスク機能を使って、髪の毛のような複雑な部分も正確に切り抜き、合成することができます。Illustratorでもクリッピングマスクなどで画像の一部を表示することはできますが、境界線の調整や背景との馴染ませる処理はできません。
- 夕日の写真をドラマチックな色合いに調整する: 調整レイヤーやフィルターを使って、写真全体のトーンや雰囲気を大きく変えることができます。これはピクセル単位の色情報を操作するPhotoshopの得意技です。
- 水彩絵の具のような質感で絵を描く: 豊富なブラシの種類と描画エンジンにより、アナログ画材のようなリアルな質感を表現できます。Illustratorのブラシはパスに沿う性質上、このようなピクセル単位の繊細な質感表現は苦手です。
- 画像の一部を「ゆがみ」フィルターで変形させる: 写真の特定の箇所を拡大・縮小したり、ねじ曲げたりといったピクセルレベルの細かい変形処理はPhotoshopのフィルター機能ならではです。
- Webサイトの見た目をデザインし、画像として書き出す: Webデザインのモックアップ作成や、バナーなど具体的な画像アセットの書き出し機能はPhotoshopが先行して搭載してきました。
Illustratorで得意なこと(Photoshopでは難しい、またはできないこと)
- どんなサイズにも使えるロゴを作成する: ベクトルデータなので、名刺サイズの小ささからビルの壁面に貼るような巨大なサイズまで、劣化なく使用できます。Photoshopでロゴを作成した場合、拡大するとジャギーが発生し、使い物になりません。
- 名刺やパンフレットをデザインし、印刷会社に入稿する: CMYKカラーモードでの正確な色指定、文字のアウトライン化、トリムマークの追加など、印刷に必要な機能が充実しています。Photoshopも印刷に使いますが、文字や図形のシャープさ、レイアウトの自由度ではIllustratorが優位です。
- 図形や線を組み合わせて正確な地図やグラフを作成する: ベクトルデータなので、正確な寸法で図形を描いたり、線を引いたりすることが容易です。後から線の太さや色を変更するのも簡単です。
- 複雑なパス(曲線)で美しいイラストを描く: ペンツールやその他の図形ツールを駆使して、滑らかで洗練されたラインアートやイラストを作成できます。Photoshopのパスツールは補助的な役割が中心です。
- 文字を自由にデザイン・変形する: 文字をアウトライン化して図形として扱ったり、パスに沿って配置したり、複雑な文字組みを行ったりといった高度なタイポグラフィはIllustratorの独壇場です。
- 軽量で拡大縮小可能なアイコンをSVG形式で書き出す: Webサイトやアプリで使用されるSVG形式はベクトルデータです。Illustratorで作成すれば、どんなデバイスや画面サイズでもクリアに表示されるアイコンやイラストを簡単に作成できます。
PhotoshopとIllustratorの連携と使い分け
プロの現場では、PhotoshopとIllustratorのどちらか一方だけを使うということは稀です。多くの場合は、それぞれのツールの得意な部分を活かして連携させながら一つの制作物を完成させます。
典型的な連携例
-
印刷物制作(ポスター、パンフレットなど):
- Photoshop: 使用する写真素材の色調補正やレタッチ、切り抜きを行う。
- Illustrator: レイアウトを作成し、テキストを配置、ロゴやイラストを配置、Photoshopで加工した写真データを配置。最終的な印刷用データ(AI、PDFなど)を書き出す。
- 理由: 写真の加工はPhotoshopが得意。文字組みや正確なレイアウト、ロゴ配置、印刷用データ作成はIllustratorが得意だからです。
-
Webサイトデザイン:
- Photoshop: Webサイト全体のビジュアルデザイン、各ページのモックアップを作成。写真素材の加工やバナー画像の制作。
- Illustrator: ロゴやアイコン、図解などのSVG形式のアセットを作成。これらのアセットをPhotoshopのモックアップに配置。
- 理由: 全体のデザインイメージや写真加工はPhotoshopが得意。Webで使用するベクトル形式のグラフィック作成はIllustratorが得意だからです。最近ではAdobe XDやFigmaなどもUIデザインに使われますが、Photoshopも依然として広く使われています。
-
イラスト制作(背景に写真を使うなど):
- Photoshop: 背景となる写真素材を加工したり、全体の空気感を出すためのテクスチャや効果を描き加えたりする。
- Illustrator: イラストのキャラクターやオブジェクトをパスで描く。
- 両方: Photoshopで描いた背景の上に、Illustratorで作成したベクトルキャラクターを配置・合成する。
- 理由: 写実的な背景や質感を出すのはPhotoshopが得意。シャープなキャラクターを描くのはIllustratorが得意だからです。
連携のポイント
- ファイル形式: PhotoshopのPSDファイルをIllustratorに配置したり、IllustratorのAIファイルをPhotoshopにスマートオブジェクトとして配置したりすることができます。これにより、一方のツールで編集した内容がもう一方のツールにも反映されるように設定できます(リンク配置)。
- コピー&ペースト: パスやオブジェクトをコピー&ペーストすることも可能ですが、属性が完全に引き継がれない場合や、ピクセルに変換されてしまう場合があるので注意が必要です。
- Creative Cloudライブラリ: よく使う素材(ロゴ、色、スタイルなど)をライブラリに登録しておけば、PhotoshopとIllustrator、さらには他のAdobe製品間で簡単に共有・利用できます。
このように、PhotoshopとIllustratorは全く異なるツールでありながら、密接に連携することで、それぞれの限界を超えた表現や効率的なワークフローを実現します。プロのデザイナーにとって、両方のツールの基本的な使い方を理解し、適切に使い分ける能力は非常に重要です。
結局、どちらを選ぶべきか?(選び方)
さあ、いよいよあなたがどちらのツールから始めるべきか、あるいはどちらのツールがあなたの目的に合っているかを判断する段階です。もちろん、予算や学習時間があるならば両方を学ぶのが理想的ですが、まずは一つに絞って集中したいという方もいるでしょう。
あなたの「やりたいこと」で選ぶ
最も重要な判断基準は、「あなたが何を作りたいか」「どんな分野のデザインに興味があるか」です。
- 写真を加工したい(色補正、レタッチ、合成など) → Photoshop
- 人物写真の肌をきれいにしたい。
- 風景写真の色合いを変えたい。
- 複数の写真を組み合わせてファンタジーのような絵を作りたい。
- 古い写真を修復したい。
- 絵を描きたい(アナログ画材のような質感、写実的な表現) → Photoshop
- 油絵風、水彩風、厚塗りなどのタッチでデジタルイラストを描きたい。
- 背景込みの風景や人物を描き込みたい。
- WebサイトやSNS用の画像を作りたい(バナー、投稿画像など) → Photoshop が多い傾向
- 写真とテキストを組み合わせたバナーを作りたい。
- ブログ記事の見出し画像を作りたい。
- SNSのプロフィール画像や投稿画像を作りたい。
- Webサイト全体のデザインイメージを作りたい。
- ロゴやアイコンを作りたい → Illustrator
- 会社のロゴ、ブランドロゴを作りたい。
- Webサイトやアプリで使うアイコンを作りたい。
- キャラクターデザイン(特にシンプルな線画や塗り分けの多いもの)。
- 印刷物を作りたい(名刺、チラシ、ポスター、パンフレットなど) → Illustrator が多い傾向(写真部分はPhotoshopで加工)
- 名刺のデザインをしたい。
- イベントの告知チラシを作りたい。
- 商品のパッケージデザインをしたい。
- 書籍の表紙や雑誌のページレイアウトをしたい。
- イラストを描きたい(シンプル、クリアな線画、拡大縮小可能なもの) → Illustrator
- マンガやアニメのようなキャラクターイラストを描きたい。
- ファッションイラスト、テクニカルイラストを描きたい。
- 線と塗りを組み合わせたフラットデザイン風のイラストを描きたい。
- 図解やグラフ、地図を作りたい → Illustrator
- プレゼン資料用のグラフを作成したい。
- Webサイトに掲載する説明用の図を作りたい。
- オリジナルの地図を作成したい。
- 文字を使ったデザインをしたい(タイポグラフィ) → Illustrator
- ロゴの一部として文字をデザインしたい。
- ポスターなどで印象的な文字組をしたい。
- 独自のフォントのようなものを作成したい。
目的別簡易診断チャート
あなたのやりたいことは?
- 主に写真を加工・修正したい → Photoshop
- 主にイラストを描きたい(写実的、質感重視) → Photoshop
- 主にロゴやアイコン、シンプルなイラストを描きたい(拡大縮小耐性重視) → Illustrator
- 主に印刷物のデザイン(名刺、チラシ、パンフレットなど)をしたい → Illustrator
- 主にWebサイトやアプリの画像アセット、バナーを作りたい → Photoshop
- 主に図解、グラフ、地図を作成したい → Illustrator
- 主に文字を使ったデザインをしたい(高度なタイポグラフィ) → Illustrator
- Webサイト全体のデザインイメージを作りたい → Photoshop または Adobe XD (または Figma など) + Illustrator (アイコン・図解)
あくまで目安ですが、多くのケースでこの診断が当てはまるでしょう。
初心者はどちらから始めるべきか?
これも目的によりますが、一般的に:
- 写真編集や簡単な画像加工から始めたい人: Photoshopの方が直感的に操作できる部分が多いかもしれません。レイヤー概念は少し難しいですが、ブラシで塗る、消しゴムで消すといった操作は理解しやすいでしょう。
- デザインの基礎(パス、ベクトル、タイポグラフィなど)を体系的に学びたい人: Illustratorの方が、デザインの構成要素となる「パス」や「オブジェクト」の概念、正確な図形作成、文字組みといった基礎を学ぶのに適していると言えます。Illustratorでパスを理解すると、Photoshopのパスツールもより有効に使えるようになります。
どちらから始めても、最終的には両方のツールを学ぶことが、プロのデザイナーとしては必須スキルとなります。もし時間と予算が許すなら、同時並行で学ぶのも良いでしょう。Adobe Creative Cloudのサブスクリプションであれば、両方のツールを利用できます。
補足情報:学習方法、料金、関連ツール
学習方法
- Adobe公式チュートリアル: Adobe公式サイトには、各ツールの基本的な使い方から応用テクニックまで、豊富なチュートリアルが用意されています。動画形式のものも多く、初心者でも取り組みやすいでしょう。
- 書籍: 体系的に学びたい場合は、入門書から専門書まで様々なレベルの書籍が出版されています。
- オンライン学習プラットフォーム: Udemy, Coursera, Skillshareなど、様々なプラットフォームでPhotoshopやIllustratorの講座が提供されています。動画形式で講師の説明を聞きながら学べるのがメリットです。
- YouTube: 無料のチュートリアル動画が数多くアップされています。特定の機能の使い方を知りたい場合などに便利です。
- 実際に手を動かす: 何よりも重要なのは、実際にツールを開いて色々な機能を試してみることです。チュートリアル通りに作業してみたり、自分で何か作ってみたりする中で、操作に慣れていきましょう。
料金
PhotoshopとIllustratorは、Adobe Creative Cloudというサブスクリプションサービスの一部として提供されています。
- 単体プラン: Photoshop単体、またはIllustrator単体を契約するプラン。
- フォトプラン: PhotoshopとLightroom(写真管理・編集ソフト)がセットになった、写真編集に特化したお得なプラン。
- コンプリートプラン: Photoshop, Illustrator, InDesign, Premiere Pro, After Effectsなど、全てのAdobeアプリが利用できるプラン。デザインだけでなく、動画編集やWeb制作なども行う場合はこちらが便利です。
個人向け、学生・教職員向け、法人向けなど、様々なプランがあります。詳細はAdobe公式サイトをご確認ください。
関連ツール
Adobe Creative Cloudには、PhotoshopやIllustrator以外にも様々なデザイン・制作ツールがあります。
- Adobe InDesign: 書籍、雑誌、カタログなどの複雑なページレイアウトに特化したツール(DTP分野でIllustratorと並んで重要)。
- Adobe XD: WebサイトやアプリのUI/UXデザイン、プロトタイプ作成に特化したツール。
- Adobe Fresco: タッチデバイス向けに開発された、PhotoshopのピクセルブラシとIllustratorのベクトルブラシの両方を使える描画ツール。
- Adobe Lightroom: 写真の管理とRAW現像、基本的な写真編集に特化したツール。
これらのツールも、あなたの目的に合わせて活用を検討すると良いでしょう。特にInDesignは、Illustratorと同じく印刷分野で非常に重要なツールです。
まとめ:それぞれの道を極める、そして連携する
この記事では、Adobe PhotoshopとAdobe Illustratorという、デザイン制作における二つの主要なツールについて、その機能、用途、そして根本的な違いを詳しく解説しました。
- Photoshopは「ピクセルベース」で画像を扱い、写真編集、レタッチ、合成、デジタルペインティング、Web/UIデザインなど、既存の画像の加工や、写実的・質感豊かな表現が得意です。
- Illustratorは「ベクトルベース」で図形を扱い、ロゴ、アイコン、イラスト、DTP、タイポグラフィ、図解など、拡大縮小しても劣化しない、シャープでデザイン性の高いグラフィック制作が得意です。
どちらのツールにも独自の強みと、それぞれには難しいこと、苦手なことがあります。あなたのデザイン制作の目的が「写真の美しさを引き出すこと」なのか、「無限に拡大できるロゴを作ること」なのかによって、選ぶべきツールは明確に異なります。
そして、プロフェッショナルな制作現場では、これらのツールを単独で使用するのではなく、それぞれの得意な機能を活かして連携させながら、より高品質で効率的なワークフローを構築するのが一般的です。Photoshopで写真素材を完璧に仕上げ、Illustratorでその写真と文字、ロゴなどを組み合わせて美しいレイアウトを作成するといったように、両方のツールを使いこなすことで、表現の幅は大きく広がります。
デザインの旅は始まったばかりかもしれません。まずは、あなたの「これが作りたい!」という強い思いに合ったツールを選び、そのツールの基本的な使い方をしっかりと習得することから始めましょう。一つでも使いこなせるようになれば、もう一方のツールの習得もスムーズに進むはずです。
PhotoshopもIllustratorも、非常に奥深く、学ぶべきことは尽きません。しかし、その分だけあなたのクリエイティブな可能性を大きく広げてくれる強力な味方となるでしょう。この記事が、あなたがデザインツールの世界へ足を踏み出す、あるいはさらに深く探求していく上での一助となれば幸いです。あなたの素晴らしいデザイン制作を応援しています!