【初心者向け】Clash Metaの導入方法と基本的な使い方ガイド

【初心者向け】Clash Metaの導入方法と基本的な使い方ガイド:詳細解説

インターネットの世界は日々進化し、私たちは様々な情報やサービスにアクセスできるようになりました。しかし同時に、地域によるアクセス制限、プライバシーの問題、セキュリティ上の脅威なども存在します。これらの課題に対処するため、プロキシやVPNといった技術が活用されています。その中でも、柔軟なルーティング機能と高いカスタマイズ性を持つツールとして注目されているのが、Clash、そしてそのフォークであるClash Metaです。

この記事は、「Clash Metaを初めて使うけど、どうすればいいかわからない…」「Clash Metaの仕組みがよくわからない…」という初心者の方に向けて、Clash Metaの導入方法から基本的な使い方、そしてその背後にある考え方までを、できるだけ専門用語を避け、詳しく丁寧に解説することを目的としています。この記事を読めば、Clash Metaを使ってインターネットアクセスをより自由に、そして賢くコントロールできるようになるでしょう。

1. Clash Metaとは何か?なぜClash Metaを使うのか?

1.1 Clash Metaとは?

Clash Metaは、人気のプロキシクライアント「Clash」から派生(フォーク)したソフトウェアです。ClashはGo言語で書かれたネットワークプロキシツールで、YAML形式の設定ファイルに基づいて、様々なプロトコル(VMess, Shadowsocks, Trojan, HTTP, SOCKS5など)をサポートし、柔軟なルーティング(ルールベースのプロキシ振り分け)を可能にします。

Clash Metaは、このClashの機能をベースにしつつ、オリジナルのClashにはない追加機能や改善が加えられています。具体的には、より多くのプロトコル(例: Hysteria, TUICなど)への対応、パフォーマンスの向上、バグ修正などが含まれることがあります。多くの点でClashと互換性があり、Clash用の設定ファイルをそのまま使える場合が多いですが、Meta独自の機能を使う場合はMeta専用の設定が必要になることもあります。

この記事では、特に断りがない限り、「Clash Meta」という言葉を使って説明を進めます。オリジナルのClashの知識は必須ではありませんのでご安心ください。

1.2 なぜClash Metaを使うのか?

Clash Metaを使う主な理由は以下の通りです。

  • 柔軟なルーティング(ルールベースの振り分け): これがClash/Clash Metaの最大の特徴です。アクセスするウェブサイトやアプリケーションによって、使用するプロキシサーバーを自動的に切り替えたり、直接接続したりすることができます。「日本のサイトには日本のサーバーを経由せず直接アクセス」「海外の特定のサイトにはプロキシAを経由」「その他の海外サイトにはプロキシBを経由」といった複雑な設定が可能です。これにより、必要な時だけプロキシを使い、それ以外の通信速度を損なわないようにできます。
  • 複数のプロトコルへの対応: VMess, Shadowsocks, Trojanなど、様々な種類のプロキシプロトコルに対応しています。これにより、多様なプロバイダーやサーバー構成に対応できます。
  • サブスクリプション機能: プロキシサーバーリストを提供しているサービス(通常、有料VPNサービスやプロキシサービス)から、設定ファイルをURL経由で自動的に取得・更新できます。サーバー情報の変更に手動で対応する必要がなくなります。
  • GUIインターフェース: 多くのClash Metaの配布版は使いやすいグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を提供しています。これにより、コマンドライン操作に不慣れな方でも、設定のインポート、プロキシの切り替え、ログの確認などを簡単に行えます。
  • Clash Meta独自の機能: オリジナルのClashにはない新しいプロトコルへの対応やパフォーマンス改善などが含まれている場合があります。

簡単に言えば、Clash Metaは「インターネット上のどこにアクセスするか」に応じて、「どの経路で接続するか」を賢く自動で判断してくれるツールです。これにより、検閲の回避、地域制限の解除、プライバシー保護、そして通信速度の最適化などを両立させることが可能になります。

1.3 この記事の対象読者と目的

この記事は、以下のような方を対象としています。

  • Clash Metaという名前を聞いたことがあるが、使い方がわからない方。
  • プロキシやVPNを使ったことはあるが、Clash Metaの「ルールベース」という考え方がよくわからない方。
  • GUIツールを使って簡単にClash Metaを導入・運用したい方。
  • 基本的な使い方を理解し、自分でインターネットアクセスをコントロールしたい方。

この記事の目的は、Clash Metaを初めて使う方が、自信を持って導入し、基本的な機能を使いこなせるようになることです。専門的なネットワーク知識は必要ありません。順番にステップを踏んでいきましょう。

2. Clash Metaの導入準備

Clash Metaを使い始める前に、いくつか準備が必要です。

2.1 必要なもの

  1. コンピューター: Windows, macOS, またはLinuxが動作するデスクトップまたはノートパソコン。
  2. インターネット接続: Clash Metaのダウンロードや設定ファイルのインポート、そしてもちろんプロキシ経由でのインターネットアクセスに必要です。
  3. Clash Metaの実行ファイル: 後ほどダウンロード方法を説明します。
  4. 設定ファイル (Config): これが最も重要です。Clash Metaがどのプロキシサーバーに接続し、どのようなルールで通信を振り分けるかを定義したファイルです。通常、利用しているVPNサービスやプロキシサービスプロバイダーから提供されます。形式はYAML(ヤムル)というテキスト形式のファイルです。

2.2 設定ファイル(Config / サブスクリプション)について

Clash Metaは、すべての設定をYAML形式のテキストファイルから読み込みます。このファイルには、利用可能なプロキシサーバーのリスト、これらのサーバーをどのようにグループ化するか、そしてどの宛先への通信をどのプロキシまたは直接接続に振り分けるか、といったルールが記述されています。

この設定ファイルは、主に以下の2つの形式で入手します。

  1. サブスクリプションURL: 多くのプロバイダーは、設定ファイルをインターネット上の特定のURLで公開しています。Clash MetaはこのURLからファイルをダウンロードし、定期的に自動更新することができます。これが最も一般的で便利な方法です。URLは通常、http:// または https:// で始まり、末尾が .yaml のようになっていることが多いですが、プロバイダーによって異なります。
  2. ローカルファイル: プロバイダーから直接 .yaml ファイルをダウンロードするか、自分で手動で作成したファイルをコンピューター内に保存して使用することもできます。

重要: この設定ファイルには、あなたのプロキシサービスの接続情報(サーバーアドレス、ポート、パスワード、ユーザーIDなど)や、サービス提供者が推奨するルーティングルールが含まれています。非常に機密性の高い情報を含むため、信頼できる提供元からのみ入手し、他人に共有しないでください。

もし設定ファイルまたはサブスクリプションURLをまだ持っていない場合は、ご利用予定のVPNサービスまたはプロキシサービスプロバイダーに問い合わせてください。通常、ユーザーパネルや設定ページで確認できます。

3. Clash Metaのダウンロード

Clash Metaには様々な派生版やGUIクライアントが存在します。ここでは、GitHubで公式または広く利用されているプロジェクトからダウンロードする方法を説明します。注意点として、Clash Meta自体はコマンドラインツールですが、多くのユーザーはGUI(Graphical User Interface)クライアントを介して利用します。GUIクライアントは、バックグラウンドでClash Metaコアを動かし、ユーザーが簡単に操作できるインターフェースを提供します。

どのGUIクライアントを使うかは好みが分かれますが、機能的には大きな違いがないことも多いです。ここでは、一般的なクライアントのダウンロード方法をOS別に紹介します。

注意: Clash/Clash Meta関連のプロジェクトはGitHub上で多数公開されていますが、公式な単一のプロジェクトというよりは、コミュニティ主導で開発が進められている側面があります。ダウンロード元が信頼できる場所(GitHubのスター数が多い、多くの人に利用されているなど)であることを確認することをお勧めします。

3.1 GitHubリリースページの見方

Clash Metaの多くのクライアントは、GitHubのプロジェクトページで公開されています。ダウンロードは通常、「Releases」セクションから行います。

GitHubのプロジェクトページを開くと、右側などに「Releases」という項目があります。ここをクリックすると、過去のバージョンがリスト表示されます。最新のバージョン(”Latest”または一番上の項目)を探しましょう。

リリースノート(Changelog)には、そのバージョンで追加された機能や修正されたバグなどが記載されています。

ダウンロードするファイルは、お使いのOSとCPUアーキテクチャ(通常はamd64/x64、古いPCの場合はi386/x86、ARMベースのMacや一部Linuxではarm64)に合ったものを選びます。ファイル名にOS名(windows, mac, linux)とアーキテクチャ名(amd64, x64, arm64など)が含まれています。GUIクライアントの場合は、インストーラー形式(.exe for Windows, .dmg for macOS)や実行可能なアーカイブ形式(.zip, .tar.gz)で提供されます。

3.2 Windows版のダウンロード

Windowsの場合、一般的に利用されるGUIクライアントには「Clash for Windows (CFW)」というものがあり、Clash Metaコアを内蔵または選択して使用できるバージョンが存在します。ただし、CFW自体が開発停止したため、その後継や別のクライアント(例: Clash Vergeなど)が利用されています。ここでは例として、広く使われているGUIクライアントの一つであるClash Vergeを例に説明します。

  1. Clash VergeのGitHubリポジトリページを開きます(https://github.com/MetaCubeX/clash-verge など、検索して信頼できるリポジトリを見つけてください)。
  2. 右側の「Releases」を探し、最新バージョンをクリックします。
  3. 「Assets」の項目を展開し、お使いのWindowsのバージョン(32ビットまたは64ビット)に合ったファイルをダウンロードします。
    • 通常は Clash.Verge_*-*-x64-Setup.exe (64ビット版インストーラー)を選びます。
    • ポータブル版 (Clash.Verge_*-*-x64.zip) もありますが、初心者にはインストーラー形式がおすすめです。

3.3 macOS版のダウンロード

macOSでも、Clash for Windows (後継含む) や他のGUIクライアントが利用可能です。ここではClash Vergeを例に説明します。

  1. Clash VergeのGitHubリポジトリページを開きます。
  2. 「Releases」から最新バージョンを見つけます。
  3. 「Assets」の項目を展開し、お使いのMacのCPUに合ったファイルをダウンロードします。
    • Intel Macの場合: Clash.Verge_*-*-x64.dmg
    • Apple Silicon (M1, M2など) Macの場合: Clash.Verge_*-*-arm64.dmg
    • .dmgファイルはディスクイメージで、開くとアプリケーションファイルが含まれています。

3.4 Linux版のダウンロード

Linux版も同様に、Clash Metaコア自体や、それを操作するためのGUIクライアントが提供されています。様々なディストリビューション(Ubuntu, Fedora, Arch Linuxなど)に対応した形式や、依存関係が少ないAppImage形式などがあります。ここでもClash Vergeを例に説明します。

  1. Clash VergeのGitHubリポジトリページを開きます。
  2. 「Releases」から最新バージョンを見つけます。
  3. 「Assets」の項目を展開し、お使いのLinuxディストリビューションや好みに合ったファイルをダウンロードします。
    • Clash.Verge_*-*-x64.AppImage: 多くのディストリビューションで実行可能な形式(推奨)。
    • Clash.Verge_*-*-amd64.deb: Debian/Ubuntu系のパッケージ形式。
    • Clash.Verge_*-*-x86_64.rpm: Fedora/CentOS/RHEL系のパッケージ形式。
    • Clash.Verge_*-*-x64.tar.gz: アーカイブ形式。

3.5 モバイル版への言及

Clash Metaのコアは様々なプラットフォームで動作するため、AndroidやiOS向けの互換アプリも存在します。例えば、Androidでは「ClashForAndroid」、iOSでは「Shadowrocket」や「Stash」といったアプリがClashの設定ファイル形式をサポートしている場合があります。ただし、これらのアプリはClash Meta公式のものではなく、サードパーティ製です。この記事では、デスクトップ版(Windows, macOS, Linux)のGUIクライアントに焦点を当てて説明します。

4. Clash Metaのインストール

ダウンロードしたファイルを元に、Clash MetaのGUIクライアントをインストールします。インストール方法は、ダウンロードしたファイル形式によって異なります。

4.1 Windowsの場合

  1. ダウンロードした .exe インストーラーファイルをダブルクリックして実行します。
  2. インストーラーの指示に従います。「インストール場所」や「スタートメニューへの追加」などを選択できますが、特別な理由がなければデフォルト設定で問題ありません。
  3. インストールが完了したら、「Clash Verge」(またはダウンロードしたクライアントの名前)を起動します。デスクトップやスタートメニューにアイコンが作成されているはずです。

もし .zip アーカイブをダウンロードした場合は、任意のフォルダに展開(解凍)し、その中の実行ファイル(通常は Clash Verge.exe または似た名前)をダブルクリックして起動します。この場合、インストールというよりは「配置して実行」という形になります。

4.2 macOSの場合

  1. ダウンロードした .dmg ファイルをダブルクリックして開きます。ディスクイメージがマウントされ、新しいFinderウィンドウが開きます。
  2. 開いたウィンドウの中に、アプリケーションファイル(通常は「Clash Verge.app」というアイコン)と、「Applications」フォルダへのショートカットが表示されています。
  3. アプリケーションファイルを「Applications」フォルダのショートカットにドラッグ&ドロップします。これでインストールは完了です。
  4. ディスクイメージをアンマウントするには、Finderのサイドバーでディスクイメージの名前の横にある排出(イジェクト)ボタンをクリックします。
  5. LaunchpadまたはApplicationsフォルダから「Clash Verge」を起動します。初回起動時には、インターネットからダウンロードしたアプリケーションであることの確認ダイアログが表示される場合がありますので、許可して開きます。

4.3 Linuxの場合

インストール方法はダウンロードしたファイル形式によって異なります。

  • .AppImage ファイル:
    1. ダウンロードした .AppImage ファイルが保存されているフォルダを開きます(ファイルマネージャーなど)。
    2. ファイルを右クリックし、「プロパティ」または「属性」を開きます。
    3. 「実行可能ファイルとして許可する」「実行権限を与える」といったオプションにチェックを入れます。コマンドラインで行う場合は chmod +x Clash.Verge_*-*.AppImage のように実行します。
    4. ファイルをダブルクリックして実行します。多くのデスクトップ環境では、アプリケーションメニューへの追加を促されることがあります。
  • .deb ファイル (Debian/Ubuntu系):
    1. ファイルをダブルクリックするか、ターミナルで sudo dpkg -i Clash.Verge_*-*.deb と実行します。
    2. 依存関係の問題が発生した場合は、sudo apt --fix-broken install を実行して解決できることがあります。
    3. インストール後、アプリケーションメニューから起動できます。
  • .rpm ファイル (Fedora/CentOS/RHEL系):
    1. ターミナルで sudo rpm -i Clash.Verge_*-*.rpm と実行します。
    2. インストール後、アプリケーションメニューから起動できます。
  • .tar.gz ファイル:
    1. 任意のフォルダに展開します。ターミナルで tar -xzf Clash.Verge_*-*.tar.gz -C /opt/ のように実行することが多いです(/opt/ は一例です)。
    2. 展開されたフォルダ内の実行ファイル(通常は ./Clash Verge など)をターミナルから実行します。アプリケーションメニューへの登録は手動または別途ツールが必要になる場合があります。

インストールが完了したら、Clash MetaのGUIクライアントを起動しましょう。

5. Clash Metaの起動と初期設定

Clash MetaのGUIクライアントを起動すると、最初に設定ファイル(Config)を読み込む必要があります。設定ファイルがなければ、Clash Metaはどのように動作すればよいか分からないからです。

5.1 初回起動時の注意点

初めてClash Metaを起動した際、Windowsではファイアウォールの許可を求められることがあります。これは、Clash Metaがローカルプロキシサーバーとして動作するためにネットワーク通信を行うためです。必ず許可してください。許可しないと、正常にプロキシとして機能しません。

また、macOSやLinuxでも、システムの設定変更(プロキシ設定の変更など)を行う際に、管理者権限のパスワードを求められることがあります。これも許可してください。

5.2 設定ファイル(Config)のインポート方法

GUIクライアントのインターフェースは様々ですが、基本的な操作は共通しています。「Profiles」「Config」「設定ファイル」といったタブやセクションを探してください。

設定ファイルをインポートする方法は主に2つあります。

5.2.1 URLからのインポート(サブスクリプション)

これが最も一般的で推奨される方法です。プロバイダーから提供されたサブスクリプションURLを使用します。

  1. GUIクライアントを開き、「Profiles」または「設定ファイル」のようなタブ/セクションに移動します。
  2. 「Add Profile from URL」または「Import from URL」といったボタンや入力欄を探します。
  3. プロバイダーから提供されたサブスクリプションURLを貼り付けます。
  4. プロファイルに名前を付けるための入力欄がある場合があります(例: MyVPNProfile)。分かりやすい名前をつけましょう。
  5. 「Download」「Import」「OK」のようなボタンをクリックします。
  6. Clash Metaが指定されたURLから設定ファイルをダウンロードし、ローカルに保存します。ダウンロードが成功すると、プロファイルリストに新しい項目が表示されるはずです。
  7. リストに追加されたプロファイルをクリックして選択し、「Use」「Apply」のようなボタンをクリックして、この設定を現在アクティブな設定として適用します。

一度URLからインポートしておけば、多くのクライアントは定期的にこのURLをチェックし、設定ファイルが更新されていれば自動的にダウンロードして適用する機能を持っています(この機能は設定で有効/無効を切り替えられます)。

5.2.2 ローカルファイルからのインポート

プロバイダーから直接 .yaml ファイルを入手した場合や、自分で設定ファイルを作成した場合は、この方法を使います。

  1. GUIクライアントを開き、「Profiles」または「設定ファイル」のようなタブ/セクションに移動します。
  2. 「Import Local Profile」または「From File」といったボタンを探します。
  3. ファイル選択ダイアログが表示されるので、コンピューター内に保存されている .yaml 設定ファイルを選択します。
  4. 「Open」「Import」「OK」のようなボタンをクリックします。
  5. ファイルの内容が読み込まれ、プロファイルリストに新しい項目として追加されるはずです。
  6. リストに追加されたプロファイルをクリックして選択し、「Use」「Apply」のようなボタンをクリックして、この設定を現在アクティブな設定として適用します。

ローカルファイルからのインポートの場合、元のファイルが更新されてもClash Metaは自動的にそれを検知しません。設定を更新したい場合は、新しいファイルを再度インポートするか、元ファイルを編集してClash Metaに再読み込みさせる必要があります。そのため、サブスクリプションURLが利用できる場合は、そちらを使う方が管理が楽です。

設定ファイルが正常に読み込まれると、Clash MetaのGUIにプロキシリストやルールなどの情報が表示されるようになります。

5.3 System Proxyの有効化

設定ファイルを読み込んだだけでは、まだインターネット通信はプロキシを経由しません。Clash Metaを実際に機能させるには、「System Proxy」を有効にする必要があります。

GUIクライアントのメイン画面や「Settings」「General」タブなどに、「System Proxy」「Set as System Proxy」「システムプロキシとして設定」といったチェックボックスやスイッチがあります。

このオプションをONにしてください。

System Proxyを有効にすると、Clash Metaはオペレーティングシステムのネットワーク設定を変更し、コンピューターからのインターネット通信(通常はHTTP, HTTPS, SOCKS通信など)を、Clash Metaがローカルで起動しているプロキシサーバー(通常は127.0.0.1のアドレス、特定のポート番号)を経由するように設定します。これにより、ウェブブラウザや多くのアプリケーションからの通信がClash Metaによって捕捉され、設定ファイルに基づいたルーティングが適用されるようになります。

System ProxyをOFFにすると、システムのプロキシ設定は元の状態に戻り、Clash Metaを経由しない直接接続になります。これは、Clash Metaを一時的に停止したい場合や、別のプロキシ/VPNツールと切り替えたい場合に使用します。

5.4 Start with Windows / Start at Boot の設定

コンピューターを起動するたびに手動でClash Metaを起動するのが面倒な場合は、「Start with Windows」「Start at Boot」「Login Item」といったオプションを有効にすることをお勧めします。

このオプションは通常、「Settings」「General」タブなどにあります。これをONにすると、OSの起動時にClash Metaが自動的に起動し、System Proxyも自動的に有効になるように設定されます(設定によりますが、デフォルトでSystem ProxyもONになることが多いです)。

6. Clash Metaの基本的な使い方

設定ファイルのインポートとSystem Proxyの有効化が完了すれば、Clash Metaはプロキシとして機能し始めます。ここからは、GUIクライアントを使ってClash Metaの基本的な機能を確認し、操作する方法を見ていきましょう。GUIのレイアウトはクライアントによって多少異なりますが、主要なタブや機能は共通しています。

主要なタブとして、一般的に以下のようなものがあります。

  • Proxies (プロキシ)
  • Rules (ルール)
  • Logs (ログ)
  • Settings (設定)
  • Overview / Status (概要/状態) – 現在の接続状況などを表示

6.1 Proxiesタブ

このタブは、設定ファイルで定義されている利用可能なプロキシサーバー(ノード)や、それらをまとめたプロキシグループを確認・操作する場所です。

6.1.1 プロキシグループの種類

設定ファイルでは、複数のプロキシノードを組み合わせて「グループ」を作成できます。これにより、ユーザーはグループの中から手動でノードを選択したり、特定の基準で自動的にノードを切り替えたりすることが可能になります。主なプロキシグループの種類は以下の通りです。

  • select: これが最も一般的なグループタイプです。グループ内に含まれるプロキシノードや他のプロキシグループのリストが表示され、ユーザーが手動でどれを使用するかを選択できます。通常、「Proxy」や「プロキシ」といった名前のグループがこのタイプで、これがインターネットアクセスの出口を選ぶ主要なポイントになります。
  • url-test: このグループに含まれるプロキシノードに対して定期的に接続テストを行い、最も応答速度が速い(遅延が少ない)ノードを自動的に選択して使用します。サーバーの負荷状況やネットワークの状態に応じて最適なノードを自動的に選んでくれるため便利です。通常、「Auto」や「URL-Test」といった名前のグループに使われます。
  • fallback: このグループに含まれるプロキシノードを順番にテストし、最初に正常に接続できたノードを使用します。現在のノードが利用できなくなった場合、リストの次のノードに自動的に切り替わります。主に、複数の予備サーバーを用意しておき、どれか一つが使えれば良い場合に利用されます。通常、「Fallback」といった名前のグループに使われます。
  • load-balance: このグループに含まれるプロキシノードに、設定されたポリシー(例: ラウンドロビン)に基づいて通信を分散させます。複数のサーバーに負荷を分散したい場合に利用されます。

GUIのProxiesタブでは、これらのグループがリスト表示されます。selectグループの場合、クリックするとそのグループに含まれるプロキシノードや他のグループのリストが表示され、使いたいノード/グループを手動で選択できます。

6.1.2 利用可能なプロキシノードの確認

各グループを展開したり、グループ名をクリックしたりすることで、そのグループに含まれる具体的なプロキシサーバーのリスト(例: US-Server-1, Japan-Node-A, Singapore-Proxy など)を確認できます。これらの名前は設定ファイルで定義されています。

6.1.3 接続テスト(Latency test)の実行

多くのGUIクライアントでは、プロキシノードのリストの横に「Ping値」(応答速度、遅延)が表示されます。この数値は、Clash Metaがそのプロキシサーバーに接続し、応答が返ってくるまでの時間(ミリ秒、ms)を示しています。数値が小さいほど応答が速く、快適に通信できる傾向があります。

表示されているPing値が古い、または表示されていない場合は、「Latency test」「Connection Test」「接続テスト」といったボタンをクリックすることで、現在のPing値を測定し直すことができます。特にselectグループでどのノードを選ぶか迷った際に、このテスト結果を参考にすることができます。

6.2 Rulesタブ

このタブは、Clash Metaの「ルールベースルーティング」の中核となる設定を確認する場所です。設定ファイルに記述されている、どの宛先への通信をどのプロキシやグループに振り分けるか、というルールがリスト表示されます。

6.2.1 ルールの構造と種類

ルールは通常、上から順番に評価されます。ある通信が発生した際、Clash Metaはルールのリストを先頭から順にチェックし、最初に条件に一致したルールに基づいて通信を処理します。一致するルールが見つからない場合は、リストの最後にある最終ルール(通常は「MATCH」ルール)が適用されます。

主なルールの種類(Rule Types)は以下の通りです。

  • DOMAIN-SUFFIX: 指定したドメインとそのサブドメインに一致する通信に適用されます。例: DOMAIN-SUFFIX,google.com,Proxy は、google.com および mail.google.com, drive.google.com など、.google.com で終わるすべてのドメインへの通信を「Proxy」という名前のプロキシグループに振り分けます。
  • DOMAIN-KEYWORD: 指定したキーワードを含むドメインに一致する通信に適用されます。例: DOMAIN-KEYWORD,youtube,Proxy は、youtube.com, m.youtube.com, googlevideo.com など、ドメイン名に「youtube」を含む通信を「Proxy」グループに振り分けます。
  • DOMAIN: 指定した完全に一致するドメインに適用されます。例: DOMAIN,www.example.com,Direct は、厳密にwww.example.com への通信のみを直接接続(Direct)にします。
  • IP-CIDR / IP-CIDR6: 指定したIPアドレスの範囲(CIDR形式)に一致する通信に適用されます。例: IP-CIDR,192.168.1.0/24,Direct は、192.168.1.x のローカルネットワークIPへの通信を直接接続にします。
  • GEOIP: 通信先のIPアドレスの地理的な場所(国コード)に基づいて適用されます。例: GEOIP,CN,Proxy は、IPアドレスが中国国内にあるサーバーへの通信を「Proxy」グループに振り分けます。GEOIP, приватный, Direct は、プライベートIPアドレス(ローカルネットワークなど)への通信を直接接続にします。
  • PROCESS-NAME: (一部クライアント/コアがサポート) 特定のプロセス名(アプリケーション名)からの通信に適用されます。例: PROCESS-NAME,firefox.exe,Proxy は、Firefoxからの通信のみをプロキシ経由にします。
  • MATCH: これがリストの最後のルールとしてよく使われます。上記のどのルールにも一致しなかったすべての通信に適用されます。例: MATCH,Proxy は、どのルールにも一致しなかった通信をすべて「Proxy」グループに振り分けます。MATCH,Direct とすれば、ルールに指定された通信以外はすべて直接接続になります。
6.2.2 ルールリストの見方と理解

Rulesタブには、これらのルールがリスト形式で表示されます。各ルールの項目には、ルールタイプ、条件(ドメイン、IP、国コードなど)、そしてそのルールにマッチした場合に適用されるプロキシ/グループ名が表示されています。

このリストを見ることで、現在Clash Metaがどのように通信を振り分けているかの概要を理解できます。「ああ、このサイトへのアクセスは、このルールにマッチして、あのプロキシを経由するんだな」といったことが分かります。

通常、このタブでルールを直接編集することはできません(設定ファイルを編集する必要があります)。ここでは、あくまで現在のルールセットを確認するためのものです。

6.3 Logsタブ

このタブは、Clash Metaが処理した通信のログを表示する場所です。どの通信がどのルールにマッチし、どのプロキシノードを経由したか、あるいは直接接続されたか、といった詳細を確認できます。

Logsタブを開くと、リアルタイムで新しい通信ログが次々と表示されるはずです。各ログエントリーには、通信の方向(例: [TCP])、送信元アドレスとポート、宛先アドレスとポート、宛先ドメイン名(利用可能な場合)、マッチしたルール、そして最終的に使われたプロキシ/グループ名が表示されます。

このログは、Clash Metaが意図通りに動作しているかを確認したり、特定のサイトにアクセスできない、プロキシが効かないといったトラブルが発生した際に原因を特定したりするのに非常に役立ちます。「このサイトへのアクセスはDirectになってしまっているが、本当はProxyを経由させたい」といった問題を発見し、Rulesタブで確認したルールセットを見直すきっかけになります。

6.4 Settingsタブ

このタブでは、Clash Metaクライアント自体の動作に関する様々な設定を変更できます。

  • General (一般):
    • System Proxy: 前述のシステムプロキシの有効/無効切り替え。
    • Start at Boot / Launch at Login: OS起動時の自動起動設定。
    • Allow LAN: 同じローカルネットワーク上の他のデバイスから、このClash Metaが動作しているコンピューターを経由してプロキシを利用することを許可するかどうか。通常はセキュリティ上の理由から無効(デフォルト)にしておきますが、家庭内ネットワークなどで他のデバイスの通信もまとめてプロキシ経由にしたい場合に有効にします。
    • Mixed Port / HTTP Port / SOCKS Port: Clash Metaがローカルでリッスンしているポート番号。通常はデフォルトのままで問題ありませんが、他のアプリケーションとポートが競合する場合などに変更します。Mixed PortはHTTPとSOCKSの両方のプロキシとして機能します。
    • GeoLite2 Database: GEOIPルールなどで使用するIPアドレスの地理情報データベースの設定や更新。
  • Profile (プロファイル):
    • 現在使用中の設定ファイルの情報表示。
    • サブスクリプションの自動更新間隔設定など。
  • Network (ネットワーク):
    • IPv6の扱いなど、ネットワークに関する詳細設定。
  • Update (更新):
    • Clash Metaクライアント自体のアップデート確認や設定。
  • Interface (インターフェース):
    • UIの言語、テーマなどの表示設定。

これらの設定項目はクライアントによって多少異なりますが、System Proxyや自動起動、サブスクリプション更新間隔といった基本的な設定は多くのクライアントで変更可能です。

6.5 Modes (ルーティングモード)

多くのGUIクライアントは、Clash Metaのルーティングモードを簡単に切り替える機能を提供しています。これは、現在の通信の振り分け方を一時的に変更したい場合に便利です。主なモードは以下の通りです。

  • Rule (ルールモード): これがデフォルトのモードです。設定ファイルに記述されたルールに基づいて、通信をプロキシ経由にするか直接接続にするかを判断します。通常はこのモードを使用します。
  • Global (グローバルモード): すべてのインターネット通信を、設定ファイルで指定されたデフォルトのプロキシノード(またはProxyグループ)を経由させます。Rulesタブで確認できるルールは完全に無視されます。特定のプロキシノードをテストしたい場合や、すべての通信を確実にプロキシ経由にしたい場合に使用できますが、国内サイトへのアクセスなどもプロキシを経由するため、通信速度が遅くなることがあります。
  • Direct (ダイレクトモード): すべてのインターネット通信をプロキシを経由せず、直接接続します。Clash Metaは起動していますが、プロキシとしての機能は実質的に停止した状態になります。System ProxyをOFFにするのと同じような効果が得られますが、クライアント上でモードを切り替える方が手軽です。プロキシが不要な場合や、プロキシが原因で問題が発生しているかを確認したい場合に使用します。

GUIクライアントのメイン画面やステータスバーなどに、現在のモードが表示されており、クリックすることで簡単に切り替えられるようになっています。

6.6 基本的な使い方のまとめ

Clash Metaの基本的な使い方の流れは以下のようになります。

  1. Clash Metaクライアントを起動する。
  2. 「Profiles」タブなどで設定ファイル(サブスクリプションURLまたはローカルファイル)をインポートし、適用する。
  3. 「Settings」タブなどで「System Proxy」をONにする。
  4. 必要に応じて「Start at Boot」もONにする。
  5. 「Proxies」タブで、selectグループなどの手動選択可能なグループから、使用したいプロキシノード(サーバー)を選択する。Ping値を参考にすると良い。
  6. 通常は「Rule」モードになっていることを確認する。
  7. ウェブブラウザなどでインターネットにアクセスし、通信がプロキシ経由になっているか確認する(IPアドレス確認サイトなど)。
  8. 問題があれば「Logs」タブで通信ログを確認する。

これで、設定ファイルに基づいたルールベースのプロキシ接続が利用できるようになりました。

7. 詳細設定とカスタマイズ (初心者向けに範囲を絞る)

Clash Metaの真の力は、設定ファイル(config.yaml)を直接編集することで最大限に引き出されます。しかし、YAML形式やClash Metaの設定構文にはある程度の知識が必要です。初心者の方が最初から手動で編集するのはハードルが高いかもしれません。

ここでは、初心者の方が比較的触れやすい範囲での詳細設定やカスタマイズについて少し触れておきます。

7.1 設定ファイル (config.yaml) の簡単な構造

設定ファイルはYAML形式で記述されており、通常以下のような主要なセクションで構成されています。

  • port, socks-port, mixed-port: ローカルプロキシとしてリッスンするポート設定。
  • allow-lan: LANからのアクセス許可設定。
  • mode: デフォルトのルーティングモード(Rule, Global, Direct)。
  • log-level: ログの表示レベル(info, warning, errorなど)。
  • external-controller: GUIクライアントなどが通信するためのAPI設定。
  • secret: external-controllerへのアクセスに使う秘密鍵。
  • dns: DNS設定。非常に重要で複雑になる可能性がある部分ですが、多くの設定ファイルでは自動で適切な設定が提供されます。
  • proxies: 利用可能なすべてのプロキシノードの定義リスト。各ノードのタイプ(ss, vmess, trojanなど)、サーバーアドレス、ポート、認証情報などが記述されます。
  • proxy-groups: select, url-test, fallbackなどのプロキシグループの定義。どのノードや他のグループをメンバーとして含むか、などが記述されます。selectグループがUIでの手動切り替え対象になります。
  • rules: ルールリスト。RULE_TYPE,条件,対象プロキシ/グループ の形式で記述されます。

サブスクリプションURLから設定ファイルをインポートした場合、このファイルはClash Metaのデータフォルダ内に保存されます。多くのGUIクライアントには、現在使用中の設定ファイルをGUI上で表示したり、テキストエディタで開いたりする機能があります。

YAML形式は、インデント(行頭のスペース)が構造を示す上で非常に重要です。少しでも間違えるとファイルが無効になり、Clash Metaが起動できなくなることがあります。そのため、手動で編集する場合は慎重に行い、YAML構文エラーをチェックできるツール(オンラインのYAMLバリデーターなど)を利用することをお勧めします。

7.2 サブスクリプション更新の設定

「Settings」タブの「Profile」または「Update」セクションには、サブスクリプションURLからインポートした設定ファイルを自動更新するための設定があります。

  • Auto Update / Subscription Update: 自動更新を有効にするかどうかのチェックボックス。通常はONにしておくと便利です。
  • Update Interval / Update every: 自動更新を行う間隔(例: 1時間ごと、1日ごと)。プロバイダーから頻繁に情報が更新される場合は短めに、そうでない場合は長めに設定します。短すぎるとサーバーに負荷をかける可能性もあります。

これらの設定を適切に行うことで、プロバイダー側でプロキシ情報が変更された場合でも、Clash Metaの設定が自動的に最新の状態に保たれます。

8. よくある質問 (FAQ) とトラブルシューティング

Clash Metaを使っていて遭遇しやすい問題とその対処法について説明します。

8.1 Q: Clash Metaが起動しない/エラーが出る

A: いくつか原因が考えられます。

  • 設定ファイルの読み込みエラー: インポートした設定ファイルに構文エラーがあるか、ファイルが存在しない可能性があります。GUIクライアントによっては、起動時にエラーメッセージが表示されます。「Profiles」タブで設定ファイルを再インポートするか、ローカルファイルの場合はYAML構文をチェックしてみてください。
  • ポートの競合: Clash Metaが使用しようとしているポート番号(通常は7890, 7891など)が、他のアプリケーションによって既に使われている可能性があります。「Settings」タブでポート番号を変更してみてください。
  • ファイアウォールやセキュリティソフト: Windows Firewallなどのファイアウォールやインストールしているセキュリティソフトが、Clash Metaのネットワーク通信をブロックしている可能性があります。Clash Metaを許可リストに追加するか、一時的に無効にして試してみてください。
  • 管理者権限: System Proxyの設定変更には管理者権限が必要な場合があります。クライアントを右クリックして「管理者として実行」(Windows)するか、適切に権限が付与されているか確認してください。
  • クライアントやコアの破損: ダウンロードしたファイルが壊れているか、インストールに失敗した可能性があります。一度アンインストールし、再度公式サイト/GitHubからダウンロードして再インストールしてみてください。

8.2 Q: プロキシに接続できない/インターネットに繋がらない

A: これも複数の原因が考えられます。

  • System Proxyが有効になっていない: GUIクライアントで「System Proxy」がONになっているか確認してください。
  • 選択したプロキシノードが利用できない: 「Proxies」タブで選択しているプロキシノード(またはurl-test, fallbackグループが選択したノード)が、現在オフラインになっているか、サーバー側で問題が発生している可能性があります。「Proxies」タブで別のプロキシノードを選択するか、「Latency test」を実行して応答があるか確認してください。多くのノードが反応しない場合は、設定ファイル自体が古いか、プロバイダー側に全体的な問題が発生している可能性もあります。
  • 設定ファイルが古い: プロバイダーのサーバー情報が更新されたのに、Clash Metaの設定ファイルが更新されていない可能性があります。「Profiles」タブでサブスクリプションを手動で更新するか、自動更新が有効になっているか確認してください。
  • ファイアウォール: お使いのコンピューターのファイアウォールだけでなく、ネットワーク全体のファイアウォール(会社や学校のネットワークなど)がプロキシ通信をブロックしている可能性もあります。
  • プロバイダーのサービス障害: ご利用のVPN/プロキシサービス自体に問題が発生している可能性もあります。プロバイダーのアナウンスを確認してみてください。
  • Clash Metaのコアが停止している: GUIクライアントは起動していても、バックエンドで動作しているClash Metaコアがエラーで停止している可能性があります。クライアントを再起動してみてください。
  • ルール設定の問題: 特定のサイトにアクセスできない場合、そのサイトへの通信が意図しないルールにマッチしてしまっている可能性があります。「Logs」タブでそのサイトへの通信がどのように処理されているか確認してください。Directになってしまっている場合は、ルール設定を見直す必要があります(ただし、設定ファイル編集は初心者には難しい場合があります)。

8.3 Q: 特定のサイトだけブロックされる/プロキシが効かない

A: これはほとんどの場合、ルール設定の問題です。

  • ルールにマッチしていない: アクセスしたいサイトが、期待するプロキシグループに振り分けるルールにマッチせず、別のルール(特にMATCH,Directのような最終ルール)にマッチして直接接続になってしまっている可能性があります。「Logs」タブでそのサイトのドメイン名やIPアドレスを含むログを探し、どのルールにマッチし、どのプロキシ/グループが使われているか確認してください。
  • GEOIPルール: アクセスしたいサイトのIPアドレスが、設定ファイル内のGEOIPルールにマッチして意図しない振り分けになっているかもしれません。
  • サイト側のブロック: プロキシサーバーのIPアドレスが、アクセスしたいサイトによってブロックされている可能性も考えられます。別のプロキシノードや、別の国のプロキシノードを試してみてください。
  • DNS問題: Clash Meta内部のDNS設定が正しくない場合、ドメイン名解決に問題が発生することがあります。これは設定ファイルの詳細な部分に関わるため、プロバイダーに問い合わせるか、提供されている設定ファイルが推奨するDNS設定を使用しているか確認してください。

8.4 Q: サブスクリプションを更新しても設定が反映されない

A:

  • 更新エラー: サブスクリプションURLからのダウンロードに失敗している可能性があります。インターネット接続を確認し、手動で更新を試みてください。URL自体が間違っている可能性もゼロではありません。
  • ファイルの内容が同じ: プロバイダー側で設定ファイルの内容がまだ更新されていないか、更新された内容がClash Metaが認識できない形式になっている可能性があります。
  • クライアントのバグ: ごく稀に、クライアント側のバグで更新が正しく適用されない場合があります。クライアントを再起動したり、最新バージョンにアップデートしたりしてみてください。

8.5 デバッグのヒント

  • Logsタブをよく見る: トラブル発生時には、まずLogsタブを開いて通信ログを確認するのが最も重要です。どの通信がどのように処理されているかの手がかりが得られます。
  • System ProxyのON/OFFを切り替える: System ProxyをOFFにして直接接続でインターネットにアクセスできるか確認することで、問題がClash Metaやプロキシサーバー側にあるのか、それともネットワーク全体の問題なのかを切り分けられます。
  • 別のプロキシノードを試す: 「Proxies」タブで別のプロキシノードを手動で選択して試してみてください。特定のノードだけが問題なのか、それともすべてのノードが使えないのかが分かります。
  • 設定ファイルを再インポート/更新する: 設定ファイルが壊れているか古い可能性があるため、再度インポートまたは更新を試みてください。
  • クライアントを再起動する: 一時的な不具合であれば、クライアントの再起動で解決することがよくあります。
  • プロバイダーに問い合わせる: 設定ファイルの内容に関する問題や、サーバー側の障害については、ご利用のプロバイダーに問い合わせるのが最も確実です。

9. Clash Metaを使いこなす次のステップ

この記事ではClash Metaの基本的な導入と使い方を解説しました。Clash Metaはさらに多くの高度な機能を備えています。基本的な使い方に慣れてきたら、以下のようなステップでさらに深くClash Metaを使いこなすことに挑戦できます。

  • 設定ファイル(config.yaml)の理解を深める: YAML構文を学び、設定ファイルの各セクション(proxies, proxy-groups, rules, dnsなど)の意味を理解することで、自分のニーズに合わせて設定をカスタマイズできるようになります。
  • Proxy ProviderやRule Providerを利用する: 設定ファイルを分割管理したり、外部ソースからルールやプロキシリストを動的に取得したりする機能です。大規模な設定を扱う場合に便利です。
  • APIを利用する: Clash MetaコアはAPIを提供しており、サードパーティ製のツールやスクリプトからClash Metaの状態を監視したり、設定を変更したりすることができます。
  • TUN/TAPモード: System Proxy(redir-hostモード)ではなく、システムレベルでネットワークインターフェースを作成してすべての通信を捕捉するモードです。アプリケーションの種類に関わらず全ての通信をClash Metaで処理したい場合に利用されますが、設定が少し複雑になります。
  • コミュニティリソースの活用: Clash MetaやClashのユーザーコミュニティ、関連フォーラム、GitHubリポジトリのIssueなどを活用して、情報を収集したり、問題を解決したりすることができます。

ただし、これらの高度な機能はより専門的な知識が必要になる場合が多いです。焦らず、まずは基本的な使い方に慣れることから始めましょう。

10. まとめ

Clash Metaは、ルールベースの柔軟なルーティング機能を持ち、様々なプロトコルに対応した強力なプロキシクライアントです。この記事では、Clash Metaが何か、なぜ使うのかという導入部分から、Windows, macOS, LinuxにおけるGUIクライアントのダウンロード・インストール方法、そして設定ファイルのインポート、System Proxyの有効化、Proxies・Rules・Logs・Settingsタブの見方、モードの切り替えといった基本的な使い方を詳しく解説しました。

Clash Metaを使いこなすことで、インターネットへのアクセスをより自由に、安全に、そして効率的にコントロールできるようになります。しかし、そのためには信頼できるプロキシサービスプロバイダーを選び、提供される設定ファイルを正しく扱うことが非常に重要です。

インターネット上の情報は常に変化しており、プロキシ技術も進化し続けています。新しい情報や技術動向に注意を払いながら、賢くインターネットを活用していきましょう。

この記事が、あなたがClash Metaを理解し、使い始めるための一助となれば幸いです。安全で快適なインターネットライフをお楽しみください!


免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、Clash Metaの使用を推奨するものではありません。Clash Metaの使用はご自身の責任において行ってください。また、インターネットアクセスに関する規制は地域によって異なります。お住まいの地域やアクセス先の地域の法令を遵守してください。悪用は厳禁です。

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