ASUS ROG Ally 詳細レビュー:メリット・デメリット、購入前に知るべきこと

ASUS ROG Ally 詳細レビュー:メリット・デメリット、購入前に知るべきこと

はじめに:携帯ゲーミングPCの新星、ROG Allyとは?

近年のゲーミング市場において、新たなカテゴリとして急速に注目を集めているのが「携帯ゲーミングPC」です。これまでは据え置き型のPCや家庭用ゲーム機、あるいはスマートフォンが主流でしたが、高性能なモバイル向けCPUの登場により、PCゲームを手のひらサイズで持ち運んでプレイするという体験が可能になりました。その中でも、特に大きな話題を呼んだ製品の一つが、ASUSが満を持して投入した「ROG Ally」です。

ASUSはPCパーツやゲーミングデバイスの分野で「ROG(Republic of Gamers)」ブランドとして高い評価を得ており、その技術力とノウハウを結集して開発されたのがROG Allyです。PCゲーマーにとって馴染み深いWindowsオペレーティングシステムを搭載し、AAAタイトルからインディーゲームまで、幅広いPCゲームをプレイできるというコンセプトは、多くのゲーマーの心をつかみました。

しかし、ROG Allyは単なるゲーム機ではありません。フルスペックのWindows PCとしての顔も持ち合わせているため、ゲーム以外の用途にも柔軟に対応できます。この多機能性がROG Allyの魅力であると同時に、携帯ゲーム機としての使い勝手に影響を与える要素でもあります。

本記事では、ASUS ROG Allyの魅力と限界を徹底的に掘り下げ、その詳細な仕様から実際の使用感、そして購入を検討している方が事前に知っておくべきメリット、デメリット、注意点までを、約5000語にわたって詳細に解説します。ROG Allyはあなたにとって最適なデバイスなのか、この記事を通じて判断する手助けとなれば幸いです。

ROG Allyの概要:どのようなデバイスなのか?

ROG Allyは、約7インチのコンパクトな筐体に高性能なPCハードウェアを詰め込んだ、携帯ゲーミングPCです。最大の特徴は、ValveのSteam Deckとは異なり、一般的なPCと同じWindows 11 Homeを搭載している点です。これにより、Steam、Epic Games Store、Xbox Game Pass for PC、Ubisoft Connect (Uplay)、EA app (Origin)、GOG.comなど、あらゆるPCゲームプラットフォームのゲームをそのままインストールしてプレイできます。

心臓部には、AMDがROG Allyのために特別に開発したという「Ryzen Z1 Extreme」またはその下位モデルである「Ryzen Z1」プロセッサーを搭載しています。これらはAMDの最新CPUアーキテクチャ「Zen 4」と最新GPUアーキテクチャ「RDNA 3」を統合したAPU(Accelerated Processing Unit)であり、内蔵グラフィックスとしては非常に高い性能を発揮します。特にRyzen Z1 Extremeは、8コア16スレッドのCPUと12基のRDNA 3コンピュートユニットを持つGPUを搭載しており、そのグラフィックス性能は従来のモバイル向けプロセッサーとは一線を画します。

ディスプレイは7インチ、Full HD(1920×1080)解像度、最大120Hzの高リフレッシュレートに対応したIPS液晶パネルを採用しています。さらに、AMD FreeSync Premiumにも対応しており、画面のカクつきやテアリングを抑え、滑らかな映像でゲームを楽しめます。500nitsという明るさも特筆すべき点で、屋外での使用も比較的容易です。

操作系は、Xboxコントローラーに近い配置のアナログスティック、方向ボタン、ABXYボタン、ショルダーボタン、トリガーボタンに加えて、カスタマイズ可能な背面ボタンを備えています。また、タッチ操作に対応したディスプレイも搭載しており、Windowsのデスクトップ操作やタッチに最適化されたゲームなどで活用できます。

内蔵ストレージは高速なNVMe SSD(PCIe 4.0 x4接続)を採用し、ゲームのロード時間を短縮しています。容量はモデルによって異なりますが、一般的には512GBです。さらに、microSDカードスロットも備えており、ストレージ容量を簡単に拡張できます。

バッテリーは40Whrの容量を備え、Wi-Fi 6EやBluetooth 5.2といった最新の無線通信規格にも対応しています。外部接続端子としては、充電やデータ転送、DisplayPort出力に対応したUSB Type-Cポートと、別売りのROG XG Mobile外部GPUドックを接続するためのインターフェースを備えています。

ROG Allyは、携帯ゲーム機の手軽さとPCの自由度を両立させたデバイスとして、多くのゲーマーから注目を集めています。しかし、そのユニークな性質ゆえに、メリットとデメリットが共存しているのも事実です。

デザインとビルドクオリティ

ROG Allyは、ASUSのROGブランドらしい、ゲーミングデバイスとしてのアイデンティティを確立したデザインを採用しています。白を基調とした本体カラーは、清潔感がありつつも近未来的な印象を与えます。本体の形状は、両手でしっかりと握れるように人間工学に基づいて設計されており、特にグリップ部分は適度な膨らみがあり、手のひらにフィットします。

本体前面には、左右対称に配置されたアナログスティック、方向ボタン、ABXYボタンが配置されています。これらのボタンやスティックは、ゲームプレイにおいて最も頻繁に使用されるため、その配置と操作感は非常に重要です。ROG Allyのボタン類は、適度なクリック感があり、ストロークも浅すぎず深すぎず、快適な操作感を実現しています。アナログスティックは、デッドゾーンが小さく、滑らかな動きに対応しています。

ショルダーボタンとトリガーボタンは本体上部に配置されており、こちらも操作性は良好です。特にトリガーボタンは、アナログ入力に対応しているため、レーシングゲームなどでの微妙なアクセルワークやブレーキ操作が可能です。本体背面には、カスタマイズ可能な2つのボタンが配置されており、頻繁に使用する操作などを割り当てて利便性を高めることができます。

ディスプレイの周囲には、比較的細いベゼルが採用されており、画面への没入感を高めています。また、スピーカーは本体前面の下部に配置されており、ゲームサウンドをダイレクトに聴くことができます。音質は携帯ゲーム機としては良好で、臨場感のあるサウンドを楽しめます。

本体のビルドクオリティは全体的に高く、安っぽさは感じられません。プラスチック素材が主体ですが、剛性はしっかりしており、歪みや軋みもほとんどありません。ホワイトカラーの表面は汚れが目立ちやすいという懸念もありますが、丁寧に扱えば美しい状態を保つことができるでしょう。

重量は約608gです。これは携帯ゲーム機としては決して軽い部類ではありません。たとえばNintendo Switch(有機ELモデル)が約420g、Steam Deckが約669gであることを考えると、中間くらいの重さです。長時間のプレイにおいては、この重量が腕や手首への負担となる可能性はあります。しかし、本体の形状やグリップの設計が優れているため、重さの割には持ちやすく感じられるという評価も見られます。

一点、懸念点として指摘されることがあるのが、microSDカードスロットの位置です。本体上部の排気口の近くに配置されているため、高負荷なゲームを長時間プレイすると、排気される熱によってmicroSDカードが高温になり、読み込みエラーやカードの劣化に繋がるという報告がありました。ASUSはソフトウェアアップデートで冷却ファンの制御などを改善することで、この問題への対策を講じていますが、完全にリスクがゼロになったわけではない点に注意が必要です。

全体として、ROG Allyのデザインとビルドクオリティは高いレベルにあります。ゲーミングデバイスとしての機能美と、手に馴染む操作性を両立させようとするASUSの意図が感じられます。重量は考慮すべき点ですが、それを補うだけの洗練されたデザインと確かな作り込みが魅力です。

ディスプレイ:ゲーム体験を左右する重要な要素

ROG Allyのディスプレイは、その携帯ゲーミングPCとしての魅力を最大限に引き出すための重要な要素の一つです。搭載されているのは、7インチのIPS液晶パネルで、Full HD(1920×1080)解像度に対応しています。この解像度は、7インチという画面サイズに対して十分高く、ゲームやデスクトップ画面の表示は非常にシャープです。

このディスプレイの最大のセールスポイントは、最大120Hzという高いリフレッシュレートに対応していることです。一般的な携帯ゲーム機やノートPCのディスプレイは60Hzが多い中で、120Hz対応は非常に大きなアドバンテージです。対応するゲームでは、より滑らかな映像でプレイでき、特に動きの速いアクションゲームやeスポーツタイトルなどでは、残像感が少なく快適なプレイ体験が得られます。さらに、応答速度も7msと比較的速く、ブレの少ない映像を実現しています。

また、AMD FreeSync Premiumに対応している点も見逃せません。FreeSync Premiumは、ゲームのフレームレートとディスプレイのリフレッシュレートを同期させることで、画面のティアリング(ちらつき)やスタッター(カクつき)を抑制する技術です。特に携帯ゲーミングPCのようにフレームレートが安定しにくい環境では、この技術があることで映像の滑らかさが格段に向上し、快適なゲームプレイに繋がります。

ディスプレイの明るさ(輝度)は最大500nitsです。これは携帯デバイスとしては非常に明るく、一般的な室内環境はもちろん、ある程度明るい場所や屋外でも画面の内容を確認しやすいレベルです。ただし、直射日光の下ではさすがに見えにくくなりますが、多くの携帯ゲーム機と比較しても優れた視認性を持っています。

色域に関しては、sRGBカバー率100%を謳っており、豊かな発色でゲームの世界を表現できます。IPSパネルのため、視野角も広く、多少角度を変えても色の変化は少ないです。

このディスプレイはタッチ操作にも対応しています。Windows 11のデスクトップ操作や、タッチ入力に対応したゲームやアプリケーションを使う際に便利です。ただし、7インチという画面サイズでWindowsの細かい操作を指で行うのは限界があるため、完全にPCのタッチ操作に代わるものではありません。ゲーム中に素早くマップをスクロールしたり、メニューを選択したりといった用途には十分活用できます。

一方で、欠点としては、IPS液晶であるため、OLED(有機EL)ディスプレイのような引き締まった黒の表現や、無限に近いコントラスト比は実現できません。黒色はやや浮いたように見え、暗いシーンの多いゲームなどでは、OLEDディスプレイと比較してやや劣ると感じる人もいるかもしれません。しかし、この点は多くのノートPCやゲーミングモニターでも採用されているIPS液晶としては標準的な性能であり、全体として見ればROG Allyのディスプレイは、解像度、リフレッシュレート、明るさ、FreeSync Premium対応といった点で、携帯ゲーミングPCとして非常に高いレベルにあると言えます。

まとめると、ROG Allyのディスプレイは、Full HD解像度、120Hzリフレッシュレート、FreeSync Premium対応、そして500nitsの高輝度といったスペックにより、携帯デバイスとしては非常に優れたゲームビジュアル体験を提供します。特に滑らかな映像と高い視認性は、ROG Allyの大きな魅力の一つです。

パフォーマンス:Ryzen Z1 Extreme / Z1の実力

ROG Allyの最も注目すべき点の1つは、その心臓部であるプロセッサー、AMD Ryzen Z1 ExtremeおよびRyzen Z1です。これらは、AMDが携帯ゲーミングデバイス向けに設計した最新のAPUであり、従来のモバイル向けCPU/GPU統合チップとは一線を画すパフォーマンスを発揮します。

Ryzen Z1 Extremeは、8コア16スレッドのCPU(Zen 4アーキテクチャ)と、12基のRDNA 3コンピュートユニットを持つGPUを搭載しています。これは、家庭用ゲーム機のXbox Series Sに搭載されているGPUの性能(約4TFLOPS)に匹敵するか、それを上回るとも言われる強力なグラフィックス性能を持っています。また、CPU性能もモバイル向けとしては非常に高く、PCゲームの動作に要求されるCPUパワーも十分に満たしています。

一方、下位モデルのRyzen Z1は、6コア12スレッドのCPUと、4基のRDNA 3コンピュートユニットを持つGPUを搭載しています。Z1 Extremeに比べるとグラフィックス性能は控えめですが、それでも多くのインディーゲームや、設定を調整すれば旧世代のAAAタイトルをプレイできるだけのポテンシャルを持っています。

メモリは、高速なLPDDR5を採用しており、容量は16GBです。APUはCPUとGPUでメモリを共有するため、この大容量かつ高速なメモリがゲームパフォーマンスの向上に貢献しています。内蔵ストレージは、PCIe 4.0 x4接続の高速なNVMe SSDを搭載しており、ゲームの起動時間やロード時間を大幅に短縮します。容量は通常512GBですが、microSDカードスロットを使ってさらに拡張することも可能です。

実際のゲームプレイにおけるパフォーマンスは、設定するTDP(Thermal Design Power、電力消費と発熱の目安)や、プレイするゲームタイトル、グラフィック設定によって大きく変動します。ROG AllyはArmoury Crate SEという独自の管理ソフトウェアを通じて、パフォーマンスモードを切り替えることができます。

  • サイレントモード (Silent Mode, 10W TDP): 消費電力を抑え、ファンノイズを最小限に抑えるモードです。主にインディーゲームや、グラフィック負荷の低いゲーム、動画視聴やウェブブラウジングなどの用途に適しています。多くのAAAタイトルを快適にプレイするのは難しいモードです。
  • パフォーマンスモード (Performance Mode, 15W TDP): 消費電力とパフォーマンスのバランスを取ったモードです。多くのゲームをある程度快適にプレイできる設定ですが、AAAタイトルでは画質設定を調整する必要がある場合があります。
  • ターボモード (Turbo Mode, 25W TDP, ACアダプター接続時は30W TDP): 最大限のパフォーマンスを引き出すモードです。ファンノイズは大きくなりますが、最も高いフレームレートでゲームをプレイできます。AAAタイトルを高画質設定でプレイしたい場合に選択するモードです。ACアダプター接続時には、さらに高い30W TDPまで引き上げられ、パフォーマンスが向上します。

Ryzen Z1 Extreme搭載モデルにおける実際のゲームパフォーマンス例(Full HD解像度、グラフィック設定は中~低~最適化設定を想定):

  • AAAタイトル (例: Cyberpunk 2077, Elden Ring, Baldur’s Gate 3): ターボモード(25W/30W)であれば、設定次第で30fps〜60fps程度でのプレイが可能です。画質設定をある程度犠牲にする必要はありますが、携帯デバイスでこれらのタイトルが動作すること自体が驚異的です。パフォーマンスモード(15W)では、さらに設定を下げるか、より低いフレームレートを許容する必要があります。
  • 比較的負荷の低いAAAタイトル (例: Forza Horizon 5, Resident Evil Village, GTA V): ターボモードであれば、60fps以上を安定して維持できるタイトルも少なくありません。パフォーマンスモードでも十分快適にプレイできる場合が多いです。
  • インディーゲーム (例: Hades, Stardew Valley, Hollow Knight): サイレントモードやパフォーマンスモードでも十分に快適に、120Hzの高リフレッシュレートを活かした滑らかなプレイが可能です。

Ryzen Z1搭載モデルは、グラフィックス性能がZ1 Extremeの約1/3程度となるため、AAAタイトルのプレイはより厳しいものとなります。解像度を720pに下げたり、グラフィック設定を最低にしても、満足なフレームレートを得られないタイトルも多く存在します。しかし、インディーゲームや旧世代のタイトル、エミュレーターなどであれば、十分に楽しめるパフォーマンスを持っています。価格がZ1 Extremeモデルよりも安いというメリットもあるため、自身のプレイしたいゲームの種類や予算に応じて選択する必要があります。

パフォーマンスに関する総評として、Ryzen Z1 Extremeは携帯デバイスとしては驚異的な性能を発揮し、多くのPCゲームを携帯してプレイするという夢を現実のものにしました。ターボモード時のパフォーマンスは非常に高く、据え置き機に近いゲーム体験を手のひらで実現できます。ただし、その高性能を引き出すためには電力と熱を消費するため、バッテリーライフやファンノイズとのトレードオフが生じます。Ryzen Z1も、ターゲットとするゲームによっては十分な性能を発揮しますが、AAAタイトルを目的にするならばZ1 Extremeモデルを強く推奨します。

冷却システムと静音性

高性能なプロセッサーを小さな筐体に詰め込んだデバイスにとって、冷却システムは非常に重要です。ROG Allyは、ASUS独自の「Zero Gravityサーマルシステム」と呼ばれる冷却機構を搭載しています。このシステムは、超薄型のフィンを備えたヒートシンクと、液体ベアリングファンを使用したデュアルファン構成によって構成されています。

デュアルファン構成は、本体背面にある2つの通気口から吸気し、本体上部の排気口から熱を排出します。この設計により、効率的に内部の熱を外部へ逃がすことができます。液体ベアリングファンは、従来のボールベアリングファンに比べて摩擦が少なく、静音性と耐久性に優れているとされています。

実際の使用における冷却性能と静音性は、前述のパフォーマンスモードに大きく依存します。

  • サイレントモード (10W): このモードでは、ファンは非常に静かで、ほとんど耳につきません。図書館や静かな環境で使用しても問題ないレベルです。しかし、消費電力が抑えられているため、CPU/GPUの温度上昇も緩やかで、冷却システムがフル稼働する必要がないからです。
  • パフォーマンスモード (15W): ファンノイズは増えますが、まだ比較的抑えられています。ゲームサウンドやヘッドホンを使用していれば、ほとんど気にならないレベルです。多くのゲームをプレイする上で、冷却性能と静音性のバランスが良いモードと言えます。
  • ターボモード (25W/30W): このモードでは、Ryzen Z1 Extremeの性能を最大限に引き出すため、ファンが高速回転し、かなりのファンノイズが発生します。特に30W設定時(ACアダプター接続時)は、PCのゲーミングノートのような騒音レベルになることもあります。静かな環境で使用するには厳しいレベルですが、高性能を引き出すためには仕方ない部分です。ヘッドホンやイヤホンを使えば、ゲームプレイ中にファンノイズを気になりにくくすることは可能です。

発熱に関しては、高負荷時には本体背面や上部がそれなりに熱くなります。特に排気口付近は触ると熱いと感じるレベルです。しかし、本体を握るグリップ部分や、ボタンやスティックが配置されている操作面は、熱が伝わりにくくなるように設計されているため、ゲームプレイ中に手が不快に感じるほど熱くなることは比較的少ないです。ただし、夏場などの暑い環境や、長時間の連続プレイでは、本体全体の温度は上昇傾向になります。

また、前述のmicroSDカードスロット周辺の熱問題は、初期ロットで報告が多く見られましたが、ASUSがBIOSやArmoury Crate SEのアップデートでファンの制御や温度管理を改善した結果、以前ほど深刻な問題は発生しにくくなったという報告もあります。しかし、完全にリスクがなくなったわけではないため、高負荷時にmicroSDカードを使用する際は注意が必要です。

全体として、ROG Allyの冷却システムは、そのコンパクトな筐体とRyzen Z1 Extremeの高性能を両立させるために設計されており、特にターボモード時の冷却性能は優秀です。しかし、その代償としてファンノイズは避けられません。静音性を重視するのか、それとも性能を重視するのかによって、選択するパフォーマンスモードが異なります。携帯ゲーム機としては騒がしい部類に入りますが、強力なPCハードウェアを冷却するためにはある程度許容すべき点と言えるでしょう。

バッテリーライフ:最大の弱点?

携帯ゲーミングPCの宿命とも言えるのが、バッテリーライフの短さです。ROG Allyも例外ではなく、そのバッテリーライフは、ゲームプレイを楽しむ上で最大の課題の一つとなります。

ROG Allyに搭載されているバッテリー容量は40Whrです。これは、一般的なノートPCと比較してもそれほど大きくはありません。そのバッテリーで、Ryzen Z1 Extremeのような高性能なプロセッサーと、明るく高リフレッシュレートなディスプレイを駆動させるため、消費電力は非常に高くなります。

実際のバッテリー持続時間は、パフォーマンスモードとプレイするゲームの種類によって大きく変動します。

  • ターボモード (25W/30W) でAAAタイトルをプレイする場合: このモードは最も消費電力が大きいため、バッテリーは驚くほど早く消耗します。AAAタイトルを高画質設定でプレイすると、わずか1時間〜1時間半程度でバッテリーが尽きてしまうことも珍しくありません。これは、携帯ゲーム機としては非常に短い時間です。
  • パフォーマンスモード (15W) でゲームをプレイする場合: バッテリー持続時間は多少延びますが、それでも2時間〜3時間程度が目安となります。多くのゲームはこのモードでプレイすることになるため、外出先で電源がない環境で長時間プレイするのは難しいでしょう。
  • サイレントモード (10W) でインディーゲームや軽いゲームをプレイする場合: 消費電力が抑えられるため、比較的長くプレイできます。3時間〜4時間、あるいはそれ以上の時間持続する可能性もあります。軽いゲームやエミュレーター、動画視聴などの用途であれば、ある程度の時間を楽しめます。
  • 動画視聴やウェブブラウジングなど、低負荷な用途: ゲームをプレイしない場合は、さらにバッテリーが長持ちします。5時間〜6時間程度は使用できる場合もあります。

このように、ROG Allyのバッテリーライフは、プレイするゲームや設定によって大きく異なりますが、特に高性能を活かそうとすると、あっという間にバッテリーが切れてしまいます。これは、コンセントがない場所での長時間プレイを想定しているユーザーにとっては、深刻なデメリットとなります。

バッテリー残量を気にせずプレイするためには、ACアダプターを接続するか、大容量のモバイルバッテリーを携帯する必要があります。ROG Allyは、USB Power Delivery(USB PD)による給電に対応しており、45W以上のUSB PD対応充電器やモバイルバッテリーであれば、充電しながらのプレイや、バッテリーの消耗を抑えながらのプレイが可能です。ただし、高性能なモバイルバッテリーもそれなりのサイズと重量があるため、携帯性が損なわれるというトレードオフが生じます。

また、ROG Allyに付属するACアダプターは65W出力に対応しており、充電速度は比較的速いです。バッテリー残量ゼロからフル充電まで、約1時間程度で完了します。

総評として、ROG Allyのバッテリーライフは、その高性能との引き換えに犠牲になっている部分であり、携帯ゲーム機としては短いです。これは、ROG Allyを「いつでもどこでも長時間バッテリーを気にせずプレイできるゲーム機」として捉えるのではなく、「家庭内や、電源がある場所で、あるいは限られた時間でPCゲームを気軽にプレイできるデバイス」として捉えるべきであることを示唆しています。外出先での長時間プレイを重視するユーザーは、モバイルバッテリーの携帯や、プレイ時間の制限を考慮に入れる必要があります。

操作性:コントローラーとしての使い心地

ROG Allyは、本体に一体化されたコントローラーを備えており、携帯ゲーム機として快適な操作性を実現しています。コントローラーレイアウトは、MicrosoftのXboxコントローラーに非常に近い配置を採用しているため、多くのPCゲーマーにとって馴染みやすく、すぐに違和感なく操作できるでしょう。

左右に配置されたアナログスティックは、ドリフト(意図しない入力)が発生しにくいホール効果センサーを採用しているという情報もありましたが、公式スペックには明記されていません。ただし、多くのユーザーはスムーズで正確な操作感を得られると評価しています。方向ボタン(D-pad)は、十字キータイプで、格闘ゲームやレトロゲームなど、正確な方向入力が必要な場面でも使いやすいです。

ABXYボタンは適度なクリック感があり、反応も良好です。ショルダーボタン(L1/R1)とトリガーボタン(L2/R2)は本体上部に配置されており、特にトリガーボタンはアナログ入力に対応しているため、ゲームでの微妙な操作が可能です。

特徴的なのは、本体背面に配置された2つのカスタマイズ可能な背面ボタンです。これらのボタンは、Armoury Crate SEソフトウェアを通じて、キーボードのキーやマウスのボタン、コントローラーの他のボタンなど、様々な機能を割り当てることができます。これにより、ゲーム中に頻繁に使用する操作を割り当てて、より効率的で快適なプレイが可能になります。例えば、RPGでよく使うメニュー呼び出しや、FPSでのリロードなどを背面ボタンに割り当てると便利です。

本体前面には、XboxコントローラーのViewボタンとMenuボタンに相当するボタン(それぞれコマンドセンターボタン、Armoury Crate SEボタン)と、その他2つのボタンが配置されています。これらのボタンは、Windowsの機能やArmoury Crate SEを素早く呼び出すために使用します。

ROG Allyのコントローラー操作性は全体的に高く評価されていますが、一点、Steam Deckと比較して言及されることが多いのが、タッチパッドの有無です。Steam Deckには両手親指の届く範囲に2つのタッチパッドが搭載されており、これがWindows環境でのマウス操作や、コントローラー操作に最適化されていないPCゲームをプレイする際に非常に役立ちます。ROG Allyには物理的なタッチパッドがないため、Windowsのデスクトップ操作や、マウス操作が必須のゲームをプレイする際には、タッチスクリーンを使うか、アナログスティックをマウスカーソルとして操作する必要があります。タッチスクリーンでの細かい操作は難しく、アナログスティックでのマウス操作は直感的ではありません。これは、PCゲームを幅広くプレイできるというROG Allyのメリットを享受する上で、時に不便を感じる点となります。

しかし、Armoury Crate SEには、ゲームプロファイルごとにコントローラー設定を細かくカスタマイズできる機能が搭載されています。例えば、デッドゾーンの調整、スティックやトリガーの感度調整、背面ボタンへの機能割り当てなど、様々な設定が可能です。また、キーボード&マウスモードやゲームパッドモードなど、操作モードを切り替えることもできます。これらのカスタマイズ機能を使えば、多くのゲームで快適な操作環境を構築できます。

総じて、ROG Allyのコントローラーは高品質であり、多くのPCゲームを違和感なくプレイできる優れた操作性を持っています。背面ボタンによるカスタマイズ性も魅力的です。ただし、タッチパッドがない点は、Windowsのデスクトップ操作や、マウス操作が前提のゲームをプレイする際に不便さを感じる可能性があります。

ソフトウェアとユーザーインターフェース

ROG Allyは、Windows 11 HomeをOSとして搭載している点が、他の携帯ゲーム機(例: Steam DeckのSteamOS)と大きく異なります。このWindows環境が、ROG Allyの多機能性と引き換えに、いくつかの特徴をもたらしています。

Windows 11 Home搭載のメリット:

  • 高い互換性: Steam、Epic Games Store、Xbox Game Pass for PC、Ubisoft Connect、EA app、GOG.comなど、Windows上で動作するあらゆるPCゲームプラットフォームのゲームをそのままインストールしてプレイできます。これは、特定のプラットフォームに縛られない、文字通り「PCゲームライブラリ全体を持ち運べる」という圧倒的なメリットです。
  • ゲーム以外の用途: ゲームだけでなく、Microsoft Officeを使ったり、ウェブブラウジングをしたり、動画編集をしたりと、一般的なWindows PCとして利用できます。外部ディスプレイ、キーボード、マウスを接続すれば、小型デスクトップPCとしても機能します。
  • エミュレーターの動作: Windows上で動作する様々なエミュレーターをインストールし、旧世代のゲームをプレイすることも可能です。

Windows 11 Home搭載のデメリット:

  • 携帯デバイスとしての使い勝手: Windows 11は、タッチ操作やコントローラー操作を前提とした設計にはなっていません。デスクトップ画面でのアイコンの小ささ、ウィンドウ操作の煩雑さ、アップデートや通知の管理など、携帯デバイスとしてはスムーズさに欠ける場面があります。特に、マウス操作が必須な場面では、タッチスクリーンやアナログスティックでの操作は快適とは言えません。
  • システムリソースの消費: Windows OS自体が一定のシステムリソース(CPU、メモリ、ストレージ)を消費するため、ゲームに使えるリソースがその分削られる可能性があります。
  • セキュリティとメンテナンス: ウイルス対策やOSのアップデートなど、PCとしてのメンテナンスが必要です。
  • バッテリー消費: バックグラウンドで動作する様々なプロセスが、バッテリーを消費する要因となります。

これらのWindows環境の課題を、携帯ゲーミングデバイスとして使いやすくするために、ASUSは独自のソフトウェア「Armoury Crate SE(Special Edition)」を開発し、ROG Allyにプリインストールしています。

Armoury Crate SEの主な機能:

  • ゲームライブラリ: インストールされている様々なプラットフォームのゲームを一覧表示し、ここから直接起動できます。ゲームごとに起動時のパフォーマンスモードやコントローラー設定を登録することも可能です。
  • コマンドセンター: ゲームプレイ中にいつでも呼び出せるオーバーレイメニューです。パフォーマンスモードの切り替え、解像度やリフレッシュレートの変更、明るさ調整、音量調整、Wi-Fi/Bluetoothのオンオフ、スクリーンショット撮影、画面録画、キーボード表示、タスクマネージャーの起動など、様々な設定や機能に素早くアクセスできます。これは、Windows環境の煩雑さを軽減し、ゲームプレイを中断せずに各種設定を変更できる重要な機能です。
  • パフォーマンスプロファイル: ゲームごとにCPUのTDP(パフォーマンスモード)や、フレームレート制限、RSR(Resolution Scaling)などのグラフィック設定を細かく設定できます。
  • コントローラーカスタマイズ: ボタンマッピング、スティックやトリガーのデッドゾーン・感度調整、背面ボタンへの機能割り当てなど、コントローラーの設定を詳細にカスタマイズできます。キーボード&マウス操作をコントローラーにマッピングすることも可能です。
  • システム設定: ディスプレイ設定、オーディオ設定、バッテリー設定など、ROG Ally固有のハードウェア設定を調整できます。
  • アップデートセンター: Armoury Crate SE自体や、ROG Allyの様々なドライバー、BIOSなどを一元的に管理し、アップデートを適用できます。

Armoury Crate SEは、ROG Allyを「Windows PC」ではなく「ゲーム機」として使いやすくするための中心的な役割を果たしています。ゲームの起動から各種設定の調整まで、ほとんどの操作をArmoury Crate SE経由で行うことで、Windowsデスクトップに触れる機会を最小限に抑えることができます。しかし、Windows OSの機能に依存する部分や、アプリケーションのインストール・設定など、完全にWindows環境を避けることはできません。

ROG Allyは、Microsoftと提携しており、購入者にはXbox Game Pass Ultimateのトライアル期間が提供されることがあります。これにより、Xbox Game Passライブラリにある100タイトル以上のゲームをすぐに楽しむことができます。Xbox Cloud Gamingにも対応しているため、ストリーミングでゲームをプレイすることも可能です(ただし、安定した高速インターネット環境が必要です)。

ソフトウェアの安定性に関しては、発売当初はいくつかのバグや問題が報告されていましたが、その後のOSやArmoury Crate SE、ドライバーのアップデートにより、着実に改善が進んでいます。しかし、PCである以上、OSやゲームとの互換性の問題、予期せぬエラーなどが全く発生しないわけではありません。PCに慣れていないユーザーにとっては、これらの問題に対処する必要がある可能性がある点は考慮が必要です。

全体として、ROG Allyのソフトウェア環境は、Windows 11の自由さとArmoury Crate SEによる携帯ゲーミングデバイスとしての使いやすさを両立させようとしています。Armoury Crate SEは非常に良くできており、ROG Allyをゲーム機として快適に使用するための重要な要素ですが、根本的なOSがWindowsであることに起因するデメリットは理解しておく必要があります。

接続性:外部機器との連携

ROG Allyは、携帯ゲーミングPCとして、様々な外部機器との接続性も考慮されています。これにより、単体での使用だけでなく、据え置き機のように外部ディスプレイやキーボード、マウスを接続してデスクトップPCのように使用したり、拡張デバイスと連携させたりすることが可能です。

本体上部には、主要な接続ポートが配置されています。

  • USB Type-Cポート: このポートは、充電(USB PD対応)、データ転送、そしてDisplayPort 1.4による映像出力に対応しています。この単一のポートを通じて、電源供給を受けながら外部ディスプレイに画面を出力し、さらにUSBハブを介してキーボードやマウス、外付けストレージなどを接続することが可能です。USB PDは最大65W入力に対応しており、付属のACアダプターや対応するモバイルバッテリーからの充電・給電が可能です。
  • ROG XG Mobileインターフェース: この特殊なポートは、別売りの外付けGPUドック「ROG XG Mobile」を接続するためのものです。ROG XG Mobileは、NVIDIA GeForce RTX 40シリーズなどの高性能なデスクトップ向けGPUを搭載しており、これを接続することでROG Allyのグラフィックス性能を飛躍的に向上させることができます。これにより、ROG AllyをハイエンドなゲーミングデスクトップPCに匹敵する性能を持つ据え置き機として活用することが可能になります。ただし、ROG XG Mobileは非常に高価な周辺機器であり、その導入には大きなコストがかかります。
  • microSDカードスロット: UHS-II規格に対応した高速なmicroSDカードスロットを備えています。内蔵ストレージ容量が不足した場合に、ゲームのインストール先として活用できます。ただし、前述の通り、高負荷時の熱問題が懸念される場合があります。
  • 3.5mmヘッドホン/マイクコンボジャック: 有線ヘッドホンやイヤホン、ヘッドセットを接続できます。

無線接続に関しては、最新規格であるWi-Fi 6EBluetooth 5.2に対応しています。Wi-Fi 6Eは、従来のWi-Fi 6に加えて6GHz帯を利用できるため、対応ルーターと組み合わせることで、より高速で安定した無線接続が可能になります。これにより、オンラインゲームやゲームのダウンロード、クラウドゲーミングなどを快適に行えます。Bluetooth 5.2は、低遅延かつ安定した無線接続を提供するため、ワイヤレスヘッドホンやコントローラーなどの接続に役立ちます。

外部ディスプレイへの出力に関しては、USB Type-Cポート経由で行うのが一般的です。HDMIやDisplayPort入力を持つモニターやテレビに接続することで、ROG Allyの画面を大画面で表示し、据え置き機のようにプレイできます。この際、解像度やリフレッシュレートは接続するディスプレイとROG Allyの出力設定に依存しますが、Full HD/120Hzでの出力も可能です。ただし、USB Type-Cポート一つで映像出力と充電を同時に行うには、対応したUSBハブやドックが必要です。ASUSからもROG Ally向けの専用ドックが販売されています。

これらの接続オプションにより、ROG Allyは携帯ゲーム機としてだけでなく、様々なシナリオで活用できる柔軟性を持っています。外出先では単体で、自宅ではドックや外部GPUを接続して高性能PCとして、といった使い分けが可能です。特にROG XG Mobileによる拡張性は、携帯ゲーミングPCとしてはユニークで、将来的な性能向上や据え置きPCとしての活用を視野に入れているユーザーには魅力的な選択肢となります。ただし、多くのユーザーにとっては、USB Type-Cポートと汎用のUSBハブを利用した外部ディスプレイ出力や周辺機器接続が主な拡張方法となるでしょう。

メリット (詳細):ROG Allyを選ぶ理由

ROG Allyを選ぶことには、他の携帯ゲーミングデバイスやPC、家庭用ゲーム機にはない多くのメリットがあります。ここでは、その主なメリットを詳細に掘り下げます。

  1. 圧倒的なPCゲームライブラリの互換性:

    • 最大の強みは、Windows 11を搭載していることです。これにより、Steam、Epic Games Store、Xbox Game Pass for PC、Ubisoft Connect、EA app、GOG.comなど、あなたがこれまでにWindows PCで購入してきたゲームのほとんどをそのままプレイできます。ValveのSteam DeckはSteamに最適化されており、Windowsをインストールすることも可能ですが、そのプロセスは複雑です。ROG Allyなら、最初からWindowsなので、これらのプラットフォームをインストールしてログインするだけで、手持ちのPCゲーム資産をすぐに活用できます。
    • PCゲームはコンソールゲームに比べてセールが頻繁に行われるため、安価にゲームを入手しやすいというメリットも、ROG Allyユーザーは享受できます。
    • PCゲームならではのMOD導入や、開発者コンソールによる設定変更など、自由度の高い遊び方も可能です。
  2. 高性能なRyzen Z1 Extremeによる快適なゲーム体験:

    • Ryzen Z1 Extremeは、携帯デバイスとしては非常に強力なAPUです。ターボモード(25W/30W)であれば、多くの最新AAAタイトルを、設定を調整することでプレイ可能なフレームレートで動作させることができます。これは、従来の携帯ゲーム機では考えられなかったことです。
    • グラフィックス設定を下げれば、より多くのゲームで60fps以上の滑らかなフレームレートを達成することも可能です。パフォーマンスモード(15W)でも、多くのゲームを快適にプレイできるバランスの取れた性能を持っています。
  3. 高リフレッシュレート(120Hz)対応ディスプレイ:

    • 7インチFull HDで最大120Hzのリフレッシュレートに対応したディスプレイは、携帯ゲーミングデバイスとしては非常に高品質です。対応するゲームでは、一般的な60Hzディスプレイと比較して格段に滑らかな映像でプレイでき、特に動きの速いゲームでは有利になります。
    • AMD FreeSync Premiumにも対応しているため、フレームレートの変動が大きいPCゲーム環境でも、画面のティアリングやスタッターを抑え、滑らかな表示を維持できます。
  4. 携帯性と据え置き機の両立:

    • 単体で携帯ゲーム機として使用できるのはもちろんですが、USB Type-Cポートや専用インターフェースを通じて外部ディスプレイや周辺機器を接続することで、デスクトップPCや据え置きゲーム機のように活用できます。
    • 特にROG XG Mobile外部GPUとの連携は、携帯時の手軽さから、自宅でのハイエンドPCゲーム環境まで、一台で幅広い用途に対応できる可能性を秘めています。
  5. Armoury Crate SEによる使いやすい管理ツール:

    • Windows OSの煩雑さを軽減し、携帯ゲーム機として使いやすくするためのArmoury Crate SEソフトウェアは非常に良くできています。ゲームライブラリ、パフォーマンスモードの切り替え、コントローラー設定など、ゲームプレイに必要な機能に素早くアクセスできます。
    • ゲームプロファイル機能により、ゲームごとに最適な設定を登録しておけば、毎回設定を変更する手間が省けます。
  6. Windows環境による柔軟性:

    • ゲーム以外のアプリケーションも自由にインストール・利用できます。仕事や学習、エンターテイメントなど、様々な用途に一台で対応できます。
    • これは、単にゲームをプレイするためだけのデバイスではなく、小型の万能PCとしての価値も持っていることを意味します。
  7. デザイン性とビルドクオリティの高さ:

    • ASUS ROGブランドらしい洗練されたデザインは魅力的です。ホワイトカラーも新鮮です。
    • 本体の剛性やボタン類の感触など、ビルドクオリティは高く、所有欲を満たすデバイスと言えます。グリップの形状も手に馴染みやすいように工夫されています。
  8. Xbox Game Pass Ultimate連携:

    • 通常、Xbox Game Pass Ultimateのトライアルが付属するため、追加費用なしで多くのゲームをすぐに試すことができます。特にPC Game Passは、新作や人気タイトルも豊富で、ROG Allyとの相性が非常に良いサービスです。

これらのメリットは、ROG Allyが単なる「Steam Deckの対抗馬」ではなく、Windows携帯ゲーミングPCという独自のジャンルを確立しようとしているデバイスであることを示しています。PCゲーマーにとっては、これまでのゲーム資産をそのまま活かせる、非常に魅力的な選択肢となり得ます。

デメリット (詳細):購入前に注意すべき点

ROG Allyには多くの魅力がありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットは、特に携帯ゲーム機としての使用を主眼に置いているユーザーにとっては、購入判断に影響を与える可能性があります。

  1. バッテリーライフの短さ:

    • 前述の通り、Ryzen Z1 Extremeの高性能を最大限に引き出すターボモードでは、バッテリーは1時間〜1時間半程度しか持続しません。パフォーマンスモードでも2時間〜3時間程度が目安であり、携帯ゲーム機としては非常に短いです。
    • 外出先で電源がない環境で長時間プレイしたい場合、大容量のモバイルバッテリーが必須となります。これは、デバイス自体の携帯性を損なう可能性があります。
  2. 価格が高い:

    • 特にRyzen Z1 Extreme搭載モデルは、高性能である分、価格も高めに設定されています。Steam Deckと比較しても、一般的には高価です。
    • ゲーム機としての手軽な価格帯というよりは、小型高性能PCという価格帯に近いため、予算を十分に考慮する必要があります。
  3. Windows環境の煩雑さ:

    • Windows 11は、携帯デバイスでのタッチ操作やコントローラー操作に完全に最適化されているわけではありません。細かい設定変更やファイルの管理、アプリケーションのインストールなど、デスクトップモードでの操作はマウスがないと不便です。
    • Windows Updateやセキュリティ対策なども、PCとしてユーザー自身が行う必要があります。
    • ゲームによっては、Windowsの互換性の問題や、特定のドライバが必要になるなど、PCならではのトラブルが発生する可能性があります。
    • 起動やシャットダウンに時間がかかったり、バックグラウンドプロセスがバッテリーを消費したりといった、OSのオーバーヘッドも存在します。
  4. タッチパッドがないことによる操作の不便さ:

    • Steam Deckに搭載されているようなタッチパッドがないため、マウス操作が前提のゲームや、Windowsのデスクトップ操作を行う際に不便さを感じます。タッチスクリーンでの操作は細かい作業には不向きであり、アナログスティックをマウス代わりに使うのも直感的ではありません。
    • 特にリアルタイムストラテジー(RTS)やポイント&クリックアドベンチャーなど、マウス操作が中心となるゲームでは、快適なプレイが難しい場合があります。
  5. ファンノイズが大きい:

    • Ryzen Z1 Extremeの性能を最大限に引き出すターボモードでは、冷却ファンの音がかなり大きくなります。静かな環境で使用する場合や、ヘッドホンを使用しない場合は、ファンノイズが気になる可能性があります。
  6. SDカードスロットの熱問題(要確認):

    • 発売当初に報告されたmicroSDカードスロット周辺の熱問題は、アップデートで改善傾向にありますが、完全にリスクがなくなったわけではない可能性もあります。高負荷なゲームをSDカードにインストールして長時間プレイする際には、注意が必要です。
  7. 重量による長時間のプレイでの疲労:

    • 約608gという重量は、他の携帯ゲーム機と比較して重めです。長時間のプレイでは、腕や手首に疲労を感じる可能性があります。特に寝転がってプレイする際などは、より重さを感じやすいでしょう。
  8. 携帯性:

    • 本体自体のサイズは携帯しやすいですが、高性能ゆえのバッテリーの短さから、充電器やモバイルバッテリーの携帯がほぼ必須となり、結果的に持ち運ぶ荷物が増えることになります。

これらのデメリットは、ROG Allyが単なる「ゲーム機」ではなく「携帯できる高性能Windows PC」であることの裏返しとも言えます。Windows環境の自由度や高性能というメリットと引き換えに、携帯ゲーム機として期待されるバッテリーライフや手軽さの一部を犠牲にしている側面があることを理解しておくことが重要です。

購入前に知るべきこと (まとめ):あなたにとってROG Allyは必要か?

ここまでROG Allyの詳細なレビューと、そのメリット・デメリットを解説してきました。では、あなたがROG Allyの購入を検討する際に、具体的にどのような点を考慮すべきでしょうか。ここでは、購入前に必ず確認しておきたいポイントをまとめます。

  1. あなたの主要なゲーム環境:

    • あなたは普段どのようなゲームをプレイしていますか? 主にWindows PCでゲームをプレイしていますか? それとも家庭用ゲーム機やスマートフォンでプレイしていますか?
    • Windows PCゲーマーであれば: ROG Allyは、あなたがこれまでにSteamなどで積み上げてきたゲームライブラリを外出先や寝室など、場所を選ばずにプレイできる魅力的な選択肢です。普段PCで使っているアプリケーションもそのまま利用できるため、メインPCの補完デバイスとしても活用できます。
    • 家庭用ゲーム機ゲーマーであれば: ROG Allyは、ゲーム機の感覚でPCゲームをプレイできる新しい体験を提供します。ただし、PCゲームの互換性問題やWindows環境の操作など、PCならではの知識や手間が必要になる場合があります。また、Nintendo Switchなどの携帯ゲーム機と比較すると、バッテリーライフは短く、ファンノイズも大きいです。
    • モバイルゲーマーであれば: スマートフォンゲームと比較すると、ROG Allyは非常に高性能で、大画面でリッチなグラフィックのゲームをプレイできます。しかし、価格は高価で、バッテリーライフはスマホよりも短い場合がほとんどです。
  2. プレイしたいゲームの種類:

    • あなたがROG Allyで主にプレイしたいゲームはどのようなジャンルですか?
    • 最新のAAAタイトルをプレイしたい場合: Ryzen Z1 Extreme搭載モデルを選択すべきです。ただし、設定を調整する必要があり、完璧な高画質・高フレームレートでのプレイは難しい場合があります。また、バッテリーはすぐに尽きるため、基本的に電源接続が必要になります。
    • インディーゲームや旧世代のタイトル、エミュレーターをプレイしたい場合: Ryzen Z1モデルでも十分に楽しめる可能性があります。バッテリーライフもZ1 Extremeよりは長持ちする傾向があります。予算を抑えたい場合はZ1モデルも検討価値があります。
    • マウス操作が必須のゲームをプレイしたい場合: ROG Allyにはタッチパッドがないため、操作に不便を感じる可能性があります。これらのゲームを快適にプレイしたい場合は、Steam Deckなど他のデバイスを検討するか、ROG Allyに外部マウスを接続してプレイすることを想定する必要があります。
  3. バッテリーライフへの許容度:

    • あなたは外出先で電源なしで長時間プレイしたいですか? それとも自宅や電源がある場所での使用がメインですか?
    • ROG Allyのバッテリーライフは短いため、外出先で長時間プレイしたい場合は、大容量モバイルバッテリーの購入と携帯がほぼ必須となります。この点を許容できるかが大きなポイントです。
    • 主に自宅内での移動や、短時間の外出先での使用であれば、バッテリーライフの短さはそれほど大きな問題にならないかもしれません。
  4. Windows環境への慣れとカスタマイズ意欲:

    • あなたはWindows PCの操作に慣れていますか? ドライバーのインストールやアップデート、システム設定の変更など、ある程度のPC知識や手間を厭わないタイプですか?
    • ROG AllyはOSがWindowsであるため、ゲーム以外の操作やトラブルシューティングなどでPCとしての知識が必要になる場面があります。Armoury Crate SEは良くできていますが、完全にWindowsから解放されるわけではありません。
    • ゲームごとにパフォーマンス設定やコントローラー設定を調整することで、より快適にプレイできますが、これにはある程度の知識や試行錯誤が必要です。
  5. 予算:

    • ROG Ally本体の価格(Ryzen Z1モデルかZ1 Extremeモデルか)だけでなく、必要に応じて購入する周辺機器(高速microSDカード、大容量モバイルバッテリー、USBハブ/ドック、ROG XG Mobileなど)のコストも考慮に入れる必要があります。
  6. 競合製品との比較:

    • ROG Ally以外にも、Steam Deck、Lenovo Legion Go、AYANEOシリーズなど、様々な携帯ゲーミングPCが存在します。それぞれの特徴(OS、パフォーマンス、ディスプレイ、操作性、価格など)を比較検討し、あなたのニーズに最も合ったデバイスを選択することが重要です。特にSteam Deckは、ROG Allyの強力な競合であり、OSがLinuxベースのSteamOSである点、タッチパッド搭載、価格帯などが異なります。
  7. 保証・サポート体制:

    • 精密機器であるため、万が一の故障に備えて保証や修理サポート体制についても確認しておきましょう。

これらの点を踏まえて、ROG Allyがあなたのプレイスタイルやニーズに合致するかどうかを慎重に検討してください。ROG Allyは確かに魅力的なデバイスですが、すべての人にとって最適な選択肢であるとは限りません。

Steam Deckとの比較 (簡潔に)

ROG Allyの主要な競合製品として、ValveのSteam Deckは常に比較対象となります。両者は携帯ゲーミングPCというカテゴリに属しますが、設計思想や特徴には明確な違いがあります。ここでは、ROG AllyとSteam Deckの主な違いを簡潔にまとめます。

  • OS: ROG AllyはWindows 11、Steam DeckはSteamOS (Linuxベース) を搭載。ROG AllyはWindowsゲーム全てに互換性がある一方、Steam DeckはSteamゲームに最適化され、Proton互換レイヤーで多くのWindowsゲームを動作させる。Windowsアプリも利用できるROG Allyに対し、Steam Deckは基本的にゲームに特化。
  • プロセッサー: ROG Ally (Z1 Extreme) はSteam Deckよりも高性能なRyzen Z1 Extremeを搭載。特にグラフィックス性能はROG Allyが優位。
  • ディスプレイ: ROG Allyは7インチFull HD(1920×1080) 120Hz FreeSync Premium対応。Steam Deckは7インチWXGA(1280×800) 60Hz対応。ディスプレイのスペックはROG Allyが大きく優位。
  • 操作性: ROG AllyはXboxライクな標準的なコントローラー配置。Steam Deckはタッチパッドと背面ボタンが特徴的。Steam Deckはマウス操作がしやすい。
  • バッテリーライフ: 一般的に、ROG AllyはSteam Deckよりもバッテリーライフが短い傾向にある(特に高負荷時)。
  • 価格: ROG Ally (Z1 Extremeモデル) はSteam Deckよりも高価な傾向にある。
  • 拡張性: ROG Allyは専用のROG XG Mobile外部GPUとの連携に対応。Steam DeckはUSB Type-C経由での汎用ドックに対応。
  • 携帯性: 重量やサイズは両者とも似ているが、Steam Deckの方がわずかに重い。ただし、ROG Allyはバッテリーの短さからモバイルバッテリーが必須になる場合が多く、結果的に荷物が増えやすい。

どちらのデバイスが優れているかは、ユーザーの優先順位によって異なります。PCゲームライブラリの互換性、高性能、高リフレッシュレートディスプレイ、据え置きPCとしての柔軟性を重視するならROG Allyが適しています。一方、価格、Steamゲームへの最適化、バッテリーライフ、タッチパッドによる操作性を重視するならSteam Deckが魅力的な選択肢となるでしょう。

まとめと結論:ROG Allyは誰におすすめか?

ASUS ROG Allyは、携帯ゲーミングPCという新しいカテゴリにおいて、非常に強力な選択肢として登場しました。Ryzen Z1 Extremeの高性能、Full HD/120Hzの高品位ディスプレイ、そしてWindows 11搭載による圧倒的なゲーム互換性は、多くのPCゲーマーにとって魅力的な要素です。Armoury Crate SEという使いやすい管理ソフトウェアも、Windows環境を携帯デバイスで運用する上での大きな助けとなっています。外部ディスプレイ出力やROG XG Mobileによる拡張性も備え、単なる携帯ゲーム機にとどまらない多機能性を持っています。

しかし、その高性能と引き換えに、バッテリーライフの短さという明確な弱点を抱えています。また、Windows環境であることによる携帯デバイスとしての操作性の限界や、ある程度のPC知識が必要になる場面があることも理解しておく必要があります。価格も一般的なゲーム機と比較すると高価です。

これらの要素を踏まえると、ROG Allyは以下のようなユーザーに特におすすめできるデバイスです。

  • 既に大規模なPCゲームライブラリを持っており、それを場所を選ばずにプレイしたいPCゲーマー
  • 最新のAAAタイトルを、多少設定を妥協してでも携帯デバイスでプレイしたいユーザー
  • 高性能なハードウェアを重視し、高リフレッシュレートディスプレイで滑らかな映像を楽しみたいユーザー
  • Windows環境に慣れており、ある程度のカスタマイズや設定変更を厭わないユーザー
  • 単なるゲーム機としてだけでなく、小型のWindows PCとしても活用したいと考えているユーザー
  • バッテリーライフの短さを許容でき、必要に応じてモバイルバッテリーなどを活用できる環境にあるユーザー

逆に、以下のようなユーザーにとっては、ROG Allyは最適な選択肢ではないかもしれません。

  • バッテリーライフを最も重視し、電源がない場所での長時間プレイを頻繁に行いたいユーザー
  • PCの操作に全く慣れておらず、シンプルでトラブルの少ないデバイスを求めているユーザー
  • 価格を抑えたいユーザー
  • 主にマウス操作が必須となるジャンルのゲームをプレイしたいユーザー(タッチパッドがないため)

ROG Allyは、既存のゲーム機の概念を覆す革新的なデバイスですが、同時にそのユニークな性質ゆえに、向き不向きがはっきり分かれます。本記事で解説したメリットとデメリット、そして購入前に知るべきことを参考に、ご自身のプレイスタイルやニーズと照らし合わせながら、ROG Allyがあなたにとって最適なデバイスかどうかを慎重に判断してください。

携帯ゲーミングPCという市場はまだ発展途上であり、ROG Allyはその可能性を大きく広げた製品の一つです。今後のソフトウェアアップデートや後継機の登場により、さらに使いやすく、性能も向上していくことが期待されます。現時点でも、ROG AllyはPCゲームを愛する多くのゲーマーにとって、非常に魅力的な「手に持てる高性能ゲーミングPC」であることは間違いありません。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール