Kernel Data Inpage Errorの原因と対処法を解説

【完全解説】Kernel Data Inpage Error (0x0000007A) の原因、症状、そしてあらゆる対処法

パソコンを使用中に突然ブルースクリーンが表示され、「Kernel Data Inpage Error」というメッセージとともにPCが強制終了される経験は、非常に困惑するものです。このエラーは、Windowsが正常に動作するために必要なページングファイルやカーネルデータにアクセスしようとした際に、読み込みが失敗したことを示しています。深刻なハードウェア障害やシステムファイルの問題を示唆している場合が多く、放置するとデータ損失やさらなるシステム不安定化を招く可能性があります。

この記事では、「Kernel Data Inpage Error (エラーコード: 0x0000007A)」について、その定義、発生する主な原因、具体的な症状、そして初心者から上級者までが実践できる、あらゆる可能性を網羅した詳細な対処法を徹底的に解説します。約5000語のボリュームで、この厄介なエラーに立ち向かうための知識と手順を網羅することを目指します。

はじめに： Kernel Data Inpage Errorとは何か？なぜ理解する必要があるのか？

「Kernel Data Inpage Error」は、Windowsのブルースクリーンエラー（BSOD: Blue Screen of Death）の一つであり、一般的にエラーコード「0x0000007A」として表示されます。このエラーは、Windowsカーネルが必要とするデータやコードが、仮想メモリ管理によってディスク（ストレージデバイス）から物理メモリ（RAM）へページイン（読み込み）される際に、何らかの理由でその読み込みが失敗した場合に発生します。

Windowsは、物理メモリ（RAM）が不足した場合や、使用頻度の低いデータを一時的に保管するために、ストレージデバイス（HDDやSSD）上に「ページングファイル」（pagefile.sys）と呼ばれる領域を作成します。このページングファイルと物理メモリを組み合わせて使用する仕組みを「仮想メモリ」と呼びます。カーネルや実行中のプログラムが必要とするデータは、物理メモリにロードされますが、物理メモリに収まりきらない場合や、現在使用されていないデータはページングファイルに書き出されます（ページアウト）。そして、必要になった際にページングファイルから再び物理メモリに読み込まれます（ページイン）。

「Kernel Data Inpage Error」は、まさにこの「ページイン」のプロセス、つまりストレージデバイスからカーネルデータやその他の必要なデータが物理メモリに読み込まれる際に失敗したことを意味します。これは、データが物理的に読み込めない、読み込んだデータが破損している、あるいはその読み込みを行うためのハードウェアやソフトウェアに問題があることを強く示唆しています。

このエラーを理解し、適切に対処することは非常に重要です。なぜなら、このエラーは単なる一時的な不具合ではなく、以下のような深刻な問題のサインである可能性が高いからです。

ハードウェア障害: 特にストレージデバイス（HDD/SSD）やRAMの故障が疑われます。これらはPCの基幹部品であり、故障はデータ損失やPC全体の不安定化に直結します。
システムファイルの破損: Windowsの重要なシステムファイルが破損している場合も発生します。これはシステムの安定性を根底から揺るがします。
ドライバの問題: 特にストレージコントローラーやその他の低レベルなドライバの問題が、データの読み込みに支障をきたすことがあります。
マルウェア感染: 悪質なプログラムがシステムファイルやページングファイルに干渉し、エラーを引き起こす可能性もゼロではありません。

これらの問題は、放置するとOSが起動しなくなったり、保存している全てのデータが失われたりするリスクを伴います。そのため、「Kernel Data Inpage Error」が発生した場合は、冷静に原因を特定し、適切な対処を行うことが不可欠です。

エラーコード「0x0000007A」の詳細な解析

ブルースクリーンには、「Kernel Data Inpage Error」というメッセージとともに、括弧内にいくつかのパラメータが表示されることがあります。典型的な形式は以下の通りです。

STOP: 0x0000007A (Parameter1, Parameter2, Parameter3, Parameter4)

これらのパラメータは、エラーに関する詳細な情報を提供してくれます。

Parameter1: 読み込みに失敗したページの仮想メモリアドレス。この値自体はユーザーにとって直接的な診断にはつながりにくいことが多いですが、技術的な解析においては重要な情報となります。
Parameter2: エラーのタイプを示すコードです。
- 0xC000009C: ディスク上の不良セクタ（ECCエラー）が原因である可能性が高いです。これは物理的なディスク障害を示唆します。
- 0xC0000167: ディスクのI/Oエラー（ディスクへの書き込みまたは読み込みに失敗）が原因である可能性が高いです。これもディスク障害や接続問題を示唆します。
- 0xC0000185: デバイスの接続問題やケーブルの断線など、ハードウェア接続に関するエラーを示唆します。
- その他の値: ドライバの問題やその他の未知の要因を示唆する場合があります。
Parameter3: エラー発生時にアクセスしようとしていたプロセスタイプ。0はカーネルワーカープロセス、1はユーザースレッドなどを示します。
Parameter4: エラー発生時のディスクオフセット。これも技術的な詳細情報であり、特定のファイルやディスク上の位置を特定する際に使用されることがあります。

これらのパラメータの中でも、特にParameter2はエラーの性質を特定する上で非常に有用です。0xC000009Cや0xC0000167が見られる場合は、ほぼ間違いなくストレージデバイス自体に問題があると考えられます。0xC0000185の場合は、接続ケーブルやポートの問題が強く疑われます。これらの情報を参考にすることで、問題の切り分けがより効率的に行えます。

「Kernel Data Inpage Error」が発生する主な原因

このエラーが発生する原因は多岐にわたりますが、大きく以下のカテゴリーに分類できます。

1. ハードウェア関連の問題

ストレージデバイス (HDD/SSD) の故障:
- 不良セクタ: ディスク上の特定の領域（セクタ）が物理的に破損し、データの読み書きができなくなった状態です。ページングファイルやカーネルデータが不良セクタに配置されていると、読み込み時にエラーが発生します。Parameter2が0xC000009Cや0xC0000167を示す場合、これが最も疑われます。
- コントローラーの故障: HDDやSSD内部のコントローラーチップが正常に動作しない場合、データの読み書きコマンドに応答できずエラーとなります。
- ファームウェアの不具合: 特にSSDの場合、ファームウェアのバグが原因で不安定になったり、突然認識されなくなったりすることがあります。
- 寿命: フラッシュメモリを使用するSSDには書き込み回数の寿命があります。寿命が近づくとエラーが発生しやすくなります。
RAM (メモリ) の故障または不具合:
- 物理的な故障: メモリチップ自体が破損している場合、そこに読み込まれたデータが正しく保持されず、アクセス時にエラーとなります。
- 接触不良: メモリモジュールがマザーボードのスロットにしっかり挿入されていない、またはスロット自体に問題がある場合、正しく認識されなかったり、データ転送中にエラーが発生したりします。
- オーバークロックや設定ミス: BIOS/UEFI設定でメモリのクロック速度やタイミング設定を誤っている場合、不安定になりエラーが発生することがあります。XMPプロファイルなど、自動設定プロファイルが環境に合わない場合も同様です。
マザーボードの故障または不具合:
- SATA/NVMeコントローラーの故障: ストレージデバイスとの通信を司るマザーボード上のコントローラーが故障すると、データの読み書きにエラーが発生します。
- PCIeスロットの不具合: M.2 NVMe SSDなどが挿入されるPCIeスロットに問題がある場合、正しくデバイスが認識されなかったり、通信エラーが発生したりします。
- メモリスロットの不具合: 特定のメモリスロットだけが認識されない、または不安定になる場合があります。
ケーブル接続の問題:
- SATAケーブル/電源ケーブルの緩み、断線、不良: HDD/SSDとマザーボード/電源ユニットを繋ぐケーブルの接続が緩んでいたり、ケーブル自体が物理的に破損していたりすると、デバイスが正しく認識されなかったり、データ転送中にエラーが発生したりします。特にParameter2が0xC0000185の場合、これが強く疑われます。
- M.2スロットへの装着不良: NVMe/SATA M.2 SSDがスロットにしっかり奥まで挿入されていない、固定ネジが緩んでいるなどの場合も接触不良でエラーが発生します。
ハードウェアのオーバーヒート: CPUやチップセット、ストレージデバイスなどが異常な高温になると、一時的に不安定になったり、エラーが発生したりすることがあります。

2. ソフトウェア関連の問題

ドライバの不具合または競合:
- ストレージコントローラーのドライバ: SATA/NVMeコントローラーのドライバが古い、破損している、または他のドライバと競合している場合、ストレージへのアクセスに問題が発生します。
- チップセットドライバ: マザーボード全体の機能を制御するチップセットドライバに問題がある場合も、ハードウェア間の通信に影響が出てエラーを誘発することがあります。
- その他のドライバ: グラフィックドライバやネットワークドライバなど、他のデバイスドライバがシステムと競合し、全体の安定性を損なうことでエラーが発生することもあります。
システムファイルの破損:
- Windows OS自体や重要なシステムファイル（ntoskrnl.exe, winload.efi/comなど）が破損している場合、カーネルの正常な動作が妨げられ、必要なデータの読み込みに失敗することがあります。これは、不適切なシャットダウン、マルウェア感染、ディスクエラーなどが原因で発生します。
マルウェア（ウイルスやスパイウェア）感染:
- マルウェアがシステムファイルやページングファイルに悪意のあるコードを埋め込んだり、システムリソースを不正に消費したりすることで、データの読み込みプロセスを妨害し、エラーを引き起こすことがあります。
サードパーティ製ソフトウェアの干渉:
- 特定のセキュリティソフト（ウイルス対策ソフト）、仮想化ソフトウェア、ディスクユーティリティ、またはシステム最適化ツールなどが、Windowsの仮想メモリ管理やディスクアクセスに干渉し、エラーを発生させることがあります。

3. その他の要因

ページングファイルの設定問題:
- ページングファイルのサイズが小さすぎる、または配置されているドライブに十分な空き容量がない場合、仮想メモリとして適切に機能できずエラーの原因となることがあります。
- ページングファイル自体が破損している場合も同様です。
BIOS/UEFI設定の問題:
- ストレージコントローラーのモード設定（AHCI/IDE/RAIDなど）がOSインストール時の設定と異なっている場合、ストレージが正しく認識されずエラーが発生します。
- 前述のメモリ設定（XMPプロファイルなど）も原因となり得ます。
ディスクの空き容量不足: システムドライブ（通常Cドライブ）の空き容量が極端に少ない場合、ページングファイルの確保や一時ファイルの展開ができず、システムの安定性が損なわれエラーが発生することがあります。

これらの原因が単独で、または複数組み合わさって「Kernel Data Inpage Error」を引き起こします。原因の特定が難しい場合も多いため、段階的なトラブルシューティングが必要になります。

「Kernel Data Inpage Error」発生時の具体的な症状

このエラーが発生した場合、通常以下のような症状が現れます。

ブルースクリーン (BSOD): 最も典型的で直接的な症状です。「Kernel Data Inpage Error」というメッセージとともに、PCが突然停止し、再起動を求められます。
PCのフリーズ: ブルースクリーンが表示される前に、PCが完全にフリーズし、どの操作も受け付けなくなることがあります。
アプリケーションのクラッシュ: 特定のアプリケーション、特に多くのメモリやディスクアクセスを必要とするアプリケーション（ゲーム、動画編集ソフトなど）を使用中にエラーが発生しやすい傾向があります。
システムの不安定化: エラーが頻繁に発生したり、ブルースクリーンに至らなくてもシステムの動作が遅くなったり、応答がなくなったりすることがあります。
読み込み速度の低下: ストレージデバイスやメモリに問題がある場合、OSの起動やファイルの読み書き速度が著しく遅くなることがあります。
異音（HDDの場合）: HDDが原因の場合、異常なクリック音や回転音が聞こえることがあります。SSDの場合は物理的な可動部がないため音はしません。
ファイルアクセスの失敗: 特定のファイルやフォルダにアクセスしようとするとエラーになったり、ファイルが破損していると表示されたりすることがあります。

エラー発生時の状況（どのような操作をしていたか、いつ頃から発生するようになったかなど）を把握しておくことは、原因特定の手がかりになります。

「Kernel Data Inpage Error」の詳細な対処法（ステップバイステップ）

このエラーの対処は、ハードウェアとソフトウェアの両面から原因を切り分けていく作業になります。以下に、初心者でも試せる簡単な方法から、より専門的な診断・修復方法まで、段階的に解説します。

重要： トラブルシューティングを開始する前に、可能であれば重要なデータのバックアップを取ることを強く推奨します。エラーの性質上、データ損失のリスクが伴います。また、PCの構成情報（OSのバージョン、ハードウェア構成、最近の変更点など）を控えておくと、問題解決の際に役立ちます。

Step 1: エラーコードの確認と情報収集

まずは、ブルースクリーンに表示されたエラーコード（特にParameter2）を確認します。前述の通り、Parameter2の値によって原因の可能性が絞られます。また、エラーが発生した際の状況（特定のソフト起動中、特定の操作中など）をメモしておきましょう。これらの情報は、後で検索したり、サポートに問い合わせたりする際に非常に役立ちます。

Step 2: PCの再起動

最も基本的なステップですが、一時的なシステムグリッチやリソース不足が原因である場合、再起動するだけで問題が解消することがあります。まずは落ち着いてPCを再起動してみましょう。セーフモードで起動できる場合は、セーフモードで起動し、通常起動でエラーが出るか確認するのも有効です。セーフモードでは最低限のドライバとサービスしか読み込まれないため、特定のドライバやソフトウェアが原因の場合はセーフモードではエラーが出ないことがあります。

セーフモードでの起動方法 (Windows 10/11):
1. サインイン画面でShiftキーを押しながら電源ボタン → 再起動を選択。
2. 「オプションの選択」画面が表示されたら、「トラブルシューティング」を選択。
3. 「詳細オプション」を選択。
4. 「スタートアップ設定」を選択し、「再起動」をクリック。
5. 再起動後、オプション一覧が表示されるので、4)またはF4キーを押して「セーフモードを有効にする」を選択します。インターネット接続が必要な場合は5)またはF5で「セーフモードとネットワークを有効にする」を選択します。

Step 3: Windows Updateの確認と実行

OSのバグが原因でエラーが発生している可能性もゼロではありません。Windows UpdateによってOSのバグが修正されたり、互換性の問題が解消されたりすることがあります。

Windowsの設定を開きます（Windowsキー + I）。
「更新とセキュリティ」（または「Windows Update」）を選択します。
「更新プログラムのチェック」をクリックし、利用可能な更新プログラムがあれば全てインストールします。
更新後、PCを再起動します。

Step 4: ストレージデバイスのチェック (CHKDSK)

「Kernel Data Inpage Error」はストレージデバイスの問題が原因であることが非常に多いです。Windowsに標準搭載されているCHKDSK（チェックディスク）ツールを使用して、ディスクのエラー（特に不良セクタ）をチェックし、修復を試みます。

注意： CHKDSKはディスクの状態によっては時間がかかる場合があります。また、不良セクタの修復はデータを失う可能性があります。実行前に可能な限り重要なデータはバックアップしてください。

管理者としてコマンドプロンプトを開きます。
- スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択、「cmd」と入力し、Ctrl+Shift+Enterで実行します（または、スタートメニューの検索バーに「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックして「管理者として実行」を選択します）。
チェックするドライブを指定して、以下のコマンドを入力しEnterキーを押します。通常、OSがインストールされているCドライブをチェックします。
chkdsk C: /f /r /x
- /f: ディスク上のエラーを修復します。
- /r: 不良セクタを特定し、読み取り可能な情報を回復します（時間がかかります）。
- /x: 実行前に必要に応じてボリュームを強制的にマウント解除します。
システムドライブ（Cドライブ）に対して実行する場合、「次回のシステム再起動時に実行するようスケジュールしますか？」と聞かれます。yを入力してEnterキーを押し、PCを再起動します。
PC再起動時にCHKDSKが実行され、ディスクのエラーチェックと修復が行われます。完了するまでPCの電源を切らないでください。
他のドライブにも問題の可能性がある場合は、同様の手順で実行します。

CHKDSKでエラーが多数見つかったり、修復できなかったりする場合、ストレージデバイスが物理的に故障している可能性が高いです。

Step 5: RAM (メモリ) のチェック (Windowsメモリ診断ツール, MemTest86+)

メモリの問題もこのエラーの一般的な原因です。Windowsには標準でメモリ診断ツールが搭載されています。より詳細なチェックには、専門ツールであるMemTest86+が推奨されます。

Windowsメモリ診断ツール:

Windowsの検索バーに「メモリ診断」と入力し、「Windowsメモリ診断」アプリを開きます。
「今すぐ再起動して、問題があるか確認する (推奨)」を選択します。
PCが再起動し、メモリ診断が自動的に開始されます。テストには時間がかかります。
テスト完了後、Windowsが起動します。テスト結果は、Windowsのイベントビューアーで確認できます。（イベントビューアーを開き、「Windows ログ」→「System」を選択し、右側の「操作」ペインで「検索」を選び、「MemoryDiagnostic」または「MemoryDiagnostics-Results」で検索します）。

MemTest86+ (より詳細な診断):

MemTest86+は、OS起動前のUEFI環境で動作するメモリ診断ツールです。Windowsのツールよりも徹底的なチェックが可能です。

MemTest86+の公式サイトからISOイメージまたはUSBインストーラーを作成するためのファイルをダウンロードします。
Rufusなどのツールを使用して、ダウンロードしたイメージファイルをUSBメモリに書き込み、起動可能なUSBメモリを作成します。
作成したUSBメモリをPCに挿入し、PCを再起動します。
PC起動時にBIOS/UEFI設定画面に入り（PCメーカーによってキーが異なります。通常DEL, F2, F10, F12など）、起動順序をUSBメモリが最初になるように変更して保存し終了します。
PCがUSBメモリから起動し、MemTest86+が実行されます。複数のテストが自動的に実行されます。数時間かかる場合があります。
エラーが検出された場合、そのメモリモジュールまたはスロットに問題がある可能性が高いです。
テスト完了後、PCを再起動し、BIOS/UEFI設定で起動順序を元に戻します。

MemTest86+でエラーが検出された場合、メモリの交換が必要になる可能性が高いです。複数のメモリモジュールを搭載している場合は、1枚ずつ抜き差ししながらテストを実行することで、問題のあるモジュールを特定できます。

Step 6: ドライバの更新/ロールバック/再インストール

特にストレージコントローラー、チップセット、グラフィックドライバなど、ハードウェアとOSの間の低レベルな通信を司るドライバに問題がある場合、このエラーが発生しやすいです。

ストレージコントローラーのドライバ:
- デバイスマネージャーを開きます（Windowsキー + X → デバイスマネージャー）。
- 「IDE ATA/ATAPI コントローラー」または「記憶域コントローラー」（SATAコントローラー、NVMeコントローラーなど）を展開します。
- 該当するコントローラーを右クリックし、「ドライバーの更新」を選択します。
- 「ドライバーを自動的に検索」を試します。
- もし自動で最新が見つからない場合、PCまたはマザーボードのメーカー公式サイトから、お使いのモデルに対応した最新のチップセットドライバおよびストレージコントローラードライバをダウンロードして手動でインストールします。特に最近OSをアップグレードした場合などは、ドライバの互換性が問題になることがあります。
- 最近ドライバを更新してからエラーが出始めた場合は、「ドライバーのロールバック」を試すことも有効です。（右クリック → プロパティ → ドライバータブ → ドライバーを元に戻す）
チップセットドライバ:
- マザーボードのメーカー（Intel, AMDなど）およびPCメーカーの公式サイトから、お使いのチップセットに対応した最新のドライバをダウンロードしてインストールします。
その他のドライバ:
- 問題が発生し始めた時期に特定のハードウェアを追加したり、ドライバを更新したりした場合は、そのドライバを調査します。グラフィックドライバなど、他のドライバの不具合が間接的にシステム不安定化を招くこともあります。念のため、グラフィックドライバも最新版に更新しておくと良いでしょう。

Step 7: システムファイルの確認と修復 (SFC, DISM)

Windowsのシステムファイル自体が破損している場合、カーネルや仮想メモリ関連の機能が正常に動作せずエラーが発生することがあります。Windowsには、システムファイルをチェックし修復するためのツールが搭載されています。

システムファイルチェッカー (SFC):
- 管理者としてコマンドプロンプトを開きます（Step 4参照）。
- 以下のコマンドを入力しEnterキーを押します。
  sfc /scannow
- このコマンドは、保護されたシステムファイルが破損または変更されていないかスキャンし、問題が見つかった場合は、キャッシュされているコピーで置き換えます。
- スキャンには時間がかかります。完了後、結果が表示されます。問題が検出され修復されたか確認してください。
Deployment Image Servicing and Management (DISM):
- SFCで問題が修復できない場合や、SFC自体が正常に実行できない場合は、DISMツールを使用してWindowsイメージ自体を修復する必要があります。
- 管理者としてコマンドプロンプトを開きます。
- 以下のコマンドを入力しEnterキーを押します。
  DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
- このコマンドは、Windows Updateを使って破損したシステムファイルを修復します。インターネット接続が必要です。
- 完了後、再度sfc /scannowコマンドを実行して、システムファイルが修復されたか確認します。

Step 8: マルウェアスキャンの実行

マルウェアが原因でシステムが不安定になっている可能性も考慮し、マルウェアスキャンを実行します。

お使いのセキュリティソフトでフルスキャンを実行します。
Windowsに標準搭載されているWindows Defender（Windows Security）でもスキャンできます。設定を開き、「更新とセキュリティ」→「Windows セキュリティ」→「ウイルスと脅威の防止」を選択し、「スキャンのオプション」から「フルスキャン」または「オフラインスキャン」を実行します。特にオフラインスキャンは、OS起動前に実行されるため、常駐型のマルウェア検出に有効です。

Step 9: ページングファイルの設定確認/再設定

ページングファイルの設定が不適切であったり、配置されているドライブに問題があったりする場合もエラーの原因となります。

システムのプロパティを開きます。（Windowsキー + X → システム → 関連設定 → システムの詳細設定）
「詳細設定」タブを選択し、「パフォーマンス」セクションの「設定」をクリックします。
「パフォーマンスオプション」ウィンドウで「詳細設定」タブを選択し、「仮想メモリ」セクションの「変更」をクリックします。
「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」にチェックが入っているか確認します。通常はこの設定が推奨されます。チェックが入っていない場合は、システムが管理するサイズに設定するか、各ドライブの推奨サイズを確認して手動で設定します。
ページングファイルが配置されているドライブに十分な空き容量があるか確認します。
もし特定のドライブに手動で設定している場合は、一度「ページングファイルなし」を選択して「設定」をクリックし、PCを再起動します。その後、再度この設定画面を開き、「システム管理サイズ」または適切なサイズに設定し直してPCを再起動します。これにより、ページングファイルが再作成され、破損が修復される可能性があります。

Step 10: ハードウェアの物理的な確認 (ケーブル接続、温度)

ハードウェアの原因が疑われる場合、PCケースを開けて物理的な状態を確認します。

注意： PCケースを開ける作業は、感電や部品の破損のリスクが伴います。自信がない場合は、詳しい人に依頼するか、専門業者に相談してください。作業前には必ずPCの電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜いて数分待ち、内部の帯電が放電されるのを待ちます。静電気防止手袋を着用するか、PCケースの金属部分に触れて放電してから作業してください。

ストレージデバイスのケーブル: SATAケーブルがマザーボードとストレージデバイスにしっかりと挿入されているか確認します。緩んでいる場合は一度抜き差しします。可能であれば、別のSATAケーブルや別のSATAポートを試してみます。電源ケーブルも同様に確認します。M.2 SSDの場合は、スロットに奥までしっかり挿入されているか、固定ネジが緩んでいないか確認します。
RAMモジュール: メモリモジュールがスロットにしっかりと固定されているか確認します。両端のクリップがパチンと閉まっている状態が正常です。緩んでいる場合は一度抜き差しします。複数のモジュールを搭載している場合は、1枚ずつ挿した状態でPCを起動・テストし、問題のあるモジュールやスロットを特定します。（ただし、OSが起動する状態でないとテストしにくいです。MemTest86+などの起動前ツールと組み合わせて診断します。）
その他のケーブル: マザーボードの電源ケーブル、CPU電源ケーブル、グラフィックカードの電源ケーブルなども念のため確認します。
PC内部の清掃: 長期間使用しているPCの場合、内部にホコリが溜まっていることがあります。ホコリはショートやオーバーヒートの原因となります。エアダスターなどを使用して、マザーボード、メモリ、グラフィックカード、ストレージデバイス、ファンなどのホコリを丁寧に除去します。
温度の確認: PCの主要なコンポーネント（CPU, GPU, SSD/HDD）の温度が異常に高くないか確認します。Windows起動中にエラーが発生しない場合は、HWMonitorなどのツールを使用して温度を監視できます。アイドル時や高負荷時の温度を確認し、異常な高温であれば冷却系の問題（ファン故障、グリス劣化など）も検討します。

Step 11: BIOS/UEFI設定の確認

BIOS/UEFI設定が原因でハードウェアの認識や動作に問題が出ている可能性もあります。

PC起動時にBIOS/UEFI設定画面に入ります（Step 5参照）。
SATAモード: ストレージコントローラーの動作モードが、Windowsをインストールした時の設定（通常はAHCIモード）になっているか確認します。もし変更されている場合は、元の設定に戻します。注意： OSインストール後にこの設定を変更すると、Windowsが起動しなくなる可能性があります。変更する場合は慎重に行い、必要であればOSの再インストールも覚悟してください。
XMPプロファイル: メモリのXMP（Extreme Memory Profile）設定を有効にしている場合、メモリの定格を超える速度で動作させているため、システムが不安定になることがあります。一度XMPを無効にして（AutoまたはDisabledに設定）、デフォルトのJEDEC速度で動作させてエラーが発生するか確認します。エラーが解消される場合は、メモリのオーバークロックが原因です。XMPプロファイルを有効にする場合は、メモリやマザーボードのQVL（Qualified Vendor List）で互換性を確認するか、マニュアルで電圧やタイミングを調整する必要があります。
BIOS/UEFIのアップデート: 古いBIOS/UEFIバージョンにバグが含まれている可能性もあります。マザーボードメーカーの公式サイトを確認し、利用可能な最新バージョンがあればアップデートを検討します。注意： BIOS/UEFIアップデートは失敗するとPCが起動不能になるリスクがあります。手順をよく確認し、自己責任で行ってください。

Step 12: サードパーティ製ソフトウェアの干渉確認 (クリーンブート)

インストールされている特定のソフトウェアが、Windowsのシステム動作と競合し、エラーを誘発している可能性もあります。

クリーンブートの実行: Windowsを最小限のドライバとスタートアッププログラムで起動する「クリーンブート」を実行し、エラーが発生するか確認します。
- Windowsの検索バーに「msconfig」と入力し、「システム構成」アプリを開きます。
- 「サービス」タブを選択し、「Microsoft のサービスをすべて隠す」にチェックを入れます。
- 残ったサービスのうち、全てまたは怪しいものを「すべて無効」にします。
- 「スタートアップ」タブを選択し、「タスクマネージャーを開く」をクリックします。
- タスクマネージャーのスタートアップタブで、全てのスタートアップ項目を右クリックして「無効にする」を選択します。
- システム構成ウィンドウに戻り、「適用」→「OK」をクリックし、PCを再起動します。
クリーンブートの状態でエラーが発生しない場合、無効にしたサービスまたはスタートアッププログラムのいずれかが原因です。無効にした項目を半分ずつ有効に戻し、エラーが発生するかを繰り返すことで、問題の原因となっているソフトウェアを特定します（二分探索法）。
問題の原因が特定できたら、そのソフトウェアをアンインストールするか、設定を変更してエラーが発生しないようにします。

Step 13: 最近インストールしたソフトウェア/ハードウェアのアンインストール/取り外し

エラーが発生し始める直前に、何か新しいソフトウェアをインストールしたり、ハードウェアを追加したりした場合、それが原因である可能性が非常に高いです。

最近インストールしたソフトウェアを、コントロールパネルの「プログラムのアンインストール」またはWindowsの設定の「アプリと機能」からアンインストールします。
新しく追加したハードウェア（拡張カード、USBデバイスなど）がある場合は、一度取り外してPCを起動し、エラーが発生しないか確認します。

Step 14: システムの復元ポイントを使用する

以前にシステムの復元ポイントを作成してある場合、エラーが発生し始める前の状態にシステムを戻すことで問題が解決することがあります。

注意： システムの復元を実行すると、復元ポイント作成後にインストールしたソフトウェアやドライバは削除されます。個人的なファイル（ドキュメント、写真など）には影響しません。

Windowsの検索バーに「復元ポイントの作成」と入力し、「システムのプロパティ」の「システムの保護」タブを開きます。
「システムの復元」をクリックします。
「次へ」をクリックし、利用可能な復元ポイントの一覧を表示します。
エラーが発生し始める前の日付の復元ポイントを選択します。表示されていない場合は、「その他の復元ポイントを表示する」にチェックを入れます。
「影響を受けるプログラムの検出」をクリックすると、復元によって削除されるプログラムの一覧を確認できます。
選択した復元ポイントで問題なければ、「次へ」→「完了」をクリックし、システムの復元を開始します。
復元には時間がかかります。完了後、PCが再起動します。

Step 15: Windowsの初期化/クリーンインストール

上記のどの方法を試してもエラーが解消されない場合、OS自体に深刻な問題があるか、ハードウェアの問題である可能性が高まります。OSの問題であれば、Windowsの初期化やクリーンインストールが有効な解決策となります。

Windowsの初期化（設定のリセット）: 設定を開き、「更新とセキュリティ」（または「システム」）→「回復」を選択し、「このPCをリセット」の「開始する」をクリックします。「個人用ファイルを保持する」または「すべて削除する」を選択できます。まず「個人用ファイルを保持する」を試すと、データ損失のリスクを減らせます。
Windowsのクリーンインストール: Windowsインストールメディア（USBメモリなど）を使用して、OSを完全に新規インストールする方法です。これにより、システムパーティションがフォーマットされ、OS関連の問題はほぼ解消されます。ただし、全てのデータ、設定、インストール済みソフトウェアは失われます。実行前に必ず重要なデータのバックアップを取ってください。
- Windowsインストールメディアの作成方法は、Microsoftの公式サイトで確認できます。
- インストールメディアからPCを起動し、画面の指示に従ってインストールを進めます。カスタムインストールを選択し、システムドライブをフォーマットしてからインストールすることをお勧めします。

Step 16: ハードウェア交換の検討 (特にSSD/HDD, RAM)

システムファイルのチェックやOSの再インストールでもエラーが解消されない場合、ハードウェア障害である可能性が非常に高いです。特にストレージデバイス（SSD/HDD）やRAMは、このエラーの主要な原因として知られています。

ストレージデバイス: CHKDSKでエラーが多数検出されたり、SMART情報（ディスクの自己診断情報。CrystalDiskInfoなどのツールで確認可能）で異常が報告されている場合、ストレージデバイスの寿命または故障が考えられます。新しいストレージデバイスに交換することを検討します。
RAM: Windowsメモリ診断ツールやMemTest86+でエラーが検出された場合、メモリモジュールの故障が考えられます。問題のあるメモリモジュールを交換します。複数のモジュールがある場合は、問題のないものと差し替えてみるなどで特定します。
マザーボード/ケーブル: ストレージやメモリを交換してもエラーが続く場合、マザーボードのコントローラー故障やメモリスロットの不具合、あるいはケーブルの問題が考えられます。別のケーブルを試したり、可能であれば他のPCでストレージやメモリが正常に動作するか確認したりすることで、問題のある部品を特定します。マザーボードの交換は専門知識が必要であり、コストもかかるため、最終手段として検討します。

ハードウェア交換の判断:

CHKDSKやメモリ診断で繰り返しエラーが検出される。
クリーンインストール後もすぐに同じエラーが発生する。
エラーコードParameter2が0xC000009C、0xC0000167（ディスク関連）、または0xC0000185（接続関連）を頻繁に示す。
特定のハードウェア（例：特定のSSD、特定のRAMモジュール）を取り外したり交換したりするとエラーが止まる。

これらの状況が見られる場合、ハードウェア交換が最も有効な解決策となります。

Step 17: 専門業者への相談

ここまでの手順を試しても問題が解決しない、あるいはハードウェア交換などの作業に自信がない場合は、PC修理の専門業者に相談することを検討しましょう。プロの診断ツールや経験により、原因を正確に特定し、適切な修理を行ってもらえる可能性があります。

Kernel Data Inpage Errorを予防するために

このエラーは突然発生することが多いですが、日頃のメンテナンスや注意によって発生リスクを低減させることができます。

定期的なシステムメンテナンス:
- CHKDSKやSFC、DISMコマンドを定期的に実行し、システムファイルやディスクのエラーがないかチェックします。
- ディスクの最適化（デフラグメント – HDDの場合）やTRIM（SSDの場合）を適切に実行します。Windowsは通常これらを自動で行いますが、設定を確認しておくと良いでしょう。
- ディスククリーンアップや一時ファイルの削除を行い、システムドライブの空き容量を十分に確保します。
ドライバの適切な管理:
- ドライバは、PCまたはマザーボード、各ハードウェアメーカーの公式サイトからダウンロードし、信頼できるソースから入手します。Windows Update任せだけでなく、主要なドライバ（チップセット、ストレージ、グラフィックなど）は定期的に公式サイトで最新版を確認します。
- ただし、最新版が必ずしも安定しているとは限らないため、評判などを確認することも重要です。問題が発生した場合は、ドライバのロールバックも検討します。
信頼できるソフトウェアのみインストール:
- 出所の不明なソフトウェアや、評判の悪いフリーソフトのインストールは避けます。
- 特にシステムに深く関わるようなユーティリティソフト（レジストリクリーナー、システム最適化ツールなど）は、かえってシステムを不安定にすることがあるため、使用には注意が必要です。
ハードウェアの監視:
- ハードウェア監視ツール（例：HWMonitor, CrystalDiskInfoなど）を使用して、CPUやGPU、ストレージデバイスの温度、ストレージの健康状態（SMART情報）を定期的に確認します。異常な兆候を早期に発見できます。
データのバックアップ:
- 最も重要な予防策は、定期的に重要なデータのバックアップを取ることです。ハードウェア障害や深刻なシステムエラーは突然発生し、データ損失につながる可能性があります。外付けHDD、NAS、クラウドストレージなど、複数の場所にバックアップすることをお勧めします。
適切なシャットダウン:
- PCの電源を強制的に切るのではなく、必ずWindowsのシャットダウン手順で終了させます。不適切なシャットダウンは、システムファイルやページングファイルの破損を引き起こす可能性があります。
PC内部の清掃と冷却:
- 定期的にPC内部のホコリを清掃し、適切な冷却が行われているか確認します。オーバーヒートはハードウェアの寿命を縮め、不安定化を招きます。

まとめ：諦めずに、一つずつ原因を潰していくことが重要

「Kernel Data Inpage Error」は、ハードウェアとソフトウェアの両方に原因が考えられる厄介なエラーです。しかし、その多くはストレージデバイスまたはRAMの故障、あるいはドライバやシステムファイルの問題に起因しています。

この記事で解説したステップを、上から順番に試していくことで、原因を特定し、問題を解決できる可能性は非常に高いです。

まずエラーコードを確認し、情報収集する。
基本的な再起動、Windows Update、CHDSK、メモリ診断ツールを試す。
ドライバ、システムファイル、マルウェア、ページングファイルの設定などをソフト面からチェック・修復する。
物理的な接続、温度、BIOS/UEFI設定など、ハード面からチェック・調整する。
クリーンブートや復元ポイントでソフトウェア干渉の有無を確認する。
最終手段としてOSの初期化やクリーンインストールを検討する。
ハードウェア障害の可能性が高い場合は、部品交換または専門業者への相談を検討する。

これらの手順を一つずつ、根気強く試してみてください。特にハードウェア関連の診断ツール（CHKDSK, Windowsメモリ診断, MemTest86+, CrystalDiskInfoなど）の結果は、原因特定の強力な手がかりとなります。

PCは複雑なシステムですが、エラーメッセージは問題解決のためのヒントを与えてくれます。「Kernel Data Inpage Error」に直面しても諦めず、この記事を参考に冷静に対処していきましょう。適切な処置を行えば、多くの場合は問題を解決し、PCを再び安定して使用できるようになります。

免責事項: 本記事に記載されている情報は、一般的な対処法に基づいていますが、個々のPC環境やエラーの具体的な状況によっては、必ずしも問題が解決しない場合や、予期せぬ問題が発生する可能性があります。特にハードウェアの物理的な作業やBIOS/UEFI設定の変更、OSの再インストールなどは、誤った手順で行うとPCに損傷を与えるリスクがあります。これらの作業は自己責任で行ってください。自信がない場合や、重要なデータが含まれている場合は、専門家への相談を強く推奨します。